説明

貴金属の選択的回収剤及び貴金属含有液中からの貴金属の選択的回収方法

【課題】貴金属含有液中からの貴金属の分離沈殿・回収が、高度の選択性を持って実施できる、貴金属の選択的回収剤及び貴金属含有液中からの貴金属の選択的回収方法を提供する。
【解決手段】カチオン性の高分子化合物を有効成分とすることを特徴とする貴金属の選択的回収剤及び、当該貴金属の選択的回収剤を、酸性条件下で貴金属を含有する液中に添加して、貴金属の凝集体を形成させ、これを分離回収することを特徴とする貴金属の選択的回収方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属をリサイクルするための技術分野に属し、カチオン性高分子を用いた貴金属の選択的回収剤、及び当該回収剤を用いた貴金属の選択的回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
希少性で価格的にも高価な貴金属を効率的に利用するためには、使用済みの貴金属含有液から貴金属を分離・回収する技術が不可欠であり、様々な方法が提案されている。例えば、イオン交換樹脂に貴金属を吸着させた後、イオン交換樹脂に塩化ナトリウム又は塩化アンモニウムの水溶液を接触させ、イオン交換樹脂から貴金属を脱離させる方法(特許文献1)、貴金属含有液中に還元剤を添加し、貴金属の粒子を形成させ、分離回収する方法(特許文献2)、貴金属の選択的抽出剤を含有する抽出溶媒を貴金属含有液と液−液接触させて貴金属を選択的に抽出する方法(特許文献3)、アミノ化合物又はアミノ化合物とヘテロポリ酸を組み合わせた選択沈澱剤を使用する方法(特許文献4)、高分子基体にキレート形成基を導入した吸着剤に貴金属を吸着させた後、吸着剤に無機酸、有機酸又は有機溶剤を接触させることによって吸着剤から貴金属を脱離させる方法(特許文献5)がある。しかしながら、特許文献1や特許文献5に記載のイオン交換基やキレート基に貴金属を吸着させる方法では後段に吸着した貴金属を溶離させる工程があるため、溶離液の処理が問題となり、特許文献2に記載の還元剤を添加する方法ではスズや銅等の卑金属も還元され沈殿を生成するため、貴金属の選択的分離は困難である。また、特許文献3に記載の抽出剤を用いる方法では抽出溶媒にクロロホルム、トルエン等の有機溶媒の使用が必須であることが問題であり、特許文献4に記載の選択的沈殿剤を使用する方法では使用するアミノ化合物が低分子であるため臭気の問題があり、実用に際しては困難である。このため簡便、低コスト且つ選択性に優れた貴金属の分離・回収プロセスが切望されている。
【先行技術文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−192162号公報
【特許文献2】特開2001−032025号公報
【特許文献3】特開2001−115216号公報
【特許文献4】特開2005−194546号公報
【特許文献5】特開2006−026588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、貴金属含有液中からの貴金属の分離沈殿・回収が、高度の選択性を持って実施できる、貴金属の選択的回収剤及び貴金属含有液中からの貴金属の選択的回収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意研究を積み重ねた結果、特定のカチオン性高分子化合物を有効成分とする貴金属の選択的回収剤を強酸性条件下で使用することにより、貴金属含有液中からの貴金属の分離沈殿・回収が、簡便に、高選択性で実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち本発明の貴金属の選択的回収剤は、〔1〕A)ジシアンジアミド、B)下記の一般式(1)で示される化合物
【化11】

[ただし、式中Xは(NHCHCH)m又は(CH)nを示す。また、mは1〜6の整数を示し、nは0〜16の整数を示す。]
C)ホルムアルデヒドの内、A)を必須成分とし、これとB)の内の少なくとも1種又は2種以上及び/又はC)とを共縮合した水溶性のカチオン性高分子の内、1種又は2種以上のカチオン性高分子、〔2〕D)アルキルアミン類若しくはアルカノールアミン類の少なくとも1種又はアルキルアミン類若しくはアルカノールアミン類の少なくとも1種とアンモニアの混合物、E)エピハロヒドリン、F)下記一般式(2)で示される化合物
【化12】

[式中、R、R及びRは同一又は異なって水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示し、Yはハロゲン原子を示す。Xは陰イオンを示す。]の内、D)を必須成分とし、これとE)及び/又はF)とを共縮合した縮合物の内、1種又は2種以上のカチオン性高分子、〔3〕下記一般式(3)で示される化合物
【化13】

[式中、R及びRは同一又は異なって水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。Xは陰イオンを示す。]、下記一般式(4)で示される化合物
【化14】

[式中、Rは水素原子又はメチル基を、R、R及びRは同一又は異なって水素原子又はC〜Cの低級アルキル基を示す。ZはCOO(CH又はCONH(CHを示す。またnは1〜3の整数を示す。Xは陰イオンを示す。]、下記一般式(5)で示される化合物
【化15】

[式中、R10は水素原子又はメチル基を、R11は水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。Xは陰イオンを示す。]、下記一般式(6)で示される化合物
【化16】

[式中、R11、R12及びR13は同一又は異なって水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。Xは陰イオンを示す。]、下記一般式(7)で示される化合物
【化17】

[式中、R15は水素原子又はメチル基を、R16、R17及びR18は同一又は異なって水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。Xは陰イオンを示す。]、下記一般式(8)で示される化合物
【化18】

[式中、R19は水素原子又はメチル基を、R20は水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。Xは陰イオンを示す。]、下記一般式(9)で示される化合物
【化19】

[式中、R21は水素原子又はメチル基を、R22は水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。Xは陰イオンを示す。]
から選ばれる少なくとも1種を重合して成る、重量平均分子量が1,000から50,000の重合体の内、1種又は2種以上のカチオン性高分子、〔4〕下記一般式(10)で示される化合物
【化20】

[式中、R23は水素原子又はメチル基を、R24及びR25は同一又は異なって水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。ZはCOO(CH又はCONH(CHを示す。またnは1〜3の整数を示す。Xは陰イオンを示す。]
を重合して成るカチオン性高分子、〕表面にカチオン性の高分子鎖を有し、内部が疎水性の高分子化合物から構成され、且つ、平均粒子径が10nm〜20μmの水分散性のカチオン性高分子微粒子、
の中から選ばれる少なくとも1種から成ることを特徴とする。
【0007】
さらには、本発明の貴金属の選択的回収方法は、上記貴金属の選択的回収剤の少なくとも1種を、酸性条件下で貴金属を含有する液に混合して、貴金属の凝集体を形成させ、これを分離回収することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の貴金属の選択的回収剤及び貴金属含有液中からの貴金属の選択的回収方法は、貴金属含有液中からの貴金属の分離沈殿・回収が、簡便、低コスト且つ高度の選択性を持って実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。先ず、本発明の貴金属の選択的回収剤の一つであるジシアンジアミドを必須成分とする前記カチオン性高分子について説明する。本発明で用いる化合物A)としては、ジシアンジアミドを用いる。
【0010】
本発明で用いる化合物B)としては、下記の一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
【化21】

[ただし、式中Xは(NHCHCH)m又は(CH)nを示す。また、mは1〜6の整数を示し、nは0〜16の整数を示す。]
これらのうち、反応生成物の得やすさや、反応制御および原料、反応生成物の取扱の容易さを考慮するとジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、エチレンジアミン、テトラエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンが特に適している。
【0011】
本発明で用いる化合物C)としては、ホルムアルデヒドの水溶液若しくはホルムアルデヒドのアルコール溶液を使用することができる。またパラホルムアルデヒド、ウロトロピン、又はトリオキシメチレン等のホルムアルデヒドを放出する化合物も使用することができる。
【0012】
また、塩酸、硫酸などの無機酸およびこれらの塩、塩化アンモニウムなどの無機酸のアンモニウム塩のような酸発生物質を添加することにより反応を良好に進行させ、かつ、溶解性などの面で取扱いが容易となり、性能の良好な反応生成物を得ることも可能である。
【0013】
A)を必須成分とし、これとB)の内の少なくとも1種又は2種以上及び/又はC)を混合し加熱することにより縮合反応物が生成する。
【0014】
例えば、ジシアンジアミド1〜2モルとホルムアルデヒド1〜2モルを混合し40℃に加熱した後、塩酸0.1〜0.5モルを滴下して、1〜10時間攪拌することにより縮合生成物が得られる。
【0015】
ジシアンジアミド1〜2モル、ポリエチレンポリアミン1〜2モル、塩酸0.1〜0.5モルを混合し140℃に加熱して、この温度で5〜20時間攪拌することにより縮合反応物が得られる。
【0016】
ジシアンジアミド1〜2モル、ジエチレントリアミン1〜2モル、ホルムアルデヒド1〜2モル、塩化アンモニウム0.1〜0.5モルを混合し140℃に加熱して、この温度で5〜10時間攪拌することにより縮合反応物が得られる。
【0017】
A)、B)を共縮合させる時のA),B)の重量比率は通常1:0.1〜10であり、好ましくは1:0.5〜4である。
【0018】
A)、C)を共縮合させる時のA),C)の重量比率は通常1:0.1〜10であり、好ましくは1:0.5〜4である。
【0019】
A)、B)、C)を共縮合させる時のA),B),C)の重量比率は通常1:0.1〜10:0.1〜10であり、好ましくは1:0.5〜4:0.5〜4である。
【0020】
次に、本発明の貴金属の選択的回収剤の一つである、アルキルアミン類若しくはアルカノールアミン類の少なくとも1種又はアルキルアミン類若しくはアルカノールアミン類の少なくとも1種とアンモニアの混合物を必須成分とする前記カチオン性高分子について説明する。本発明で用いる化合物D)のアルキルアミン類としては、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、ピペリジン、ピロール、カルバゾール、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等が挙げられ、アルカノールアミン類としてはエチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール等が挙げられる。
【0021】
本発明で用いる化合物E)としては、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン等が挙げられるが、特にエピクロルヒドリンが好ましい。
【0022】
本発明で用いる化合物F)としては、下記の一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
【化22】

[式中、R、R及びRは同一又は異なって水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示し、Yはハロゲン原子を示す。Xは陰イオンを示す。]
クロロヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、クロロヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウムクロライド、ブロモヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられるが、特にクロロヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドが好ましい。また、一般式(2)を発生する化合物であっても良く、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジルトリエチルアンモニウムクロライド、グリシジルトリメチルアンモニウムブロマイド等も挙げることができる。
【0023】
本発明の、アルキルアミン類若しくはアルカノールアミン類の少なくとも1種又はアルキルアミン類若しくはアルカノールアミン類の少なくとも1種とアンモニアの混合物を必須成分とする前記カチオン性高分子は、D)を水等の水溶性溶媒中に溶かした後、E)及び/又はF)を滴下後、さらに30〜100℃で加熱する事により簡単に反応させる事が出来る。
【0024】
D)のアルキルアミン類若しくはアルカノールアミン類及びE)を共縮合させる時の各々のモル比は、好ましくは1:0.4〜4、さらに好ましくは1:0.5〜2である。
【0025】
D)のアルキルアミン類若しくはアルカノールアミン類及びF)を共縮合させる時の各々のモル比は、好ましくは1:0.8〜3、さらに好ましくは1:1〜2.5である。
【0026】
D)のアルキルアミン類若しくはアルカノールアミン類、E)及びF)を共縮合させる時の各々のモル比は、好ましくは1:0.4〜4:0.8〜3、さらに好ましくは1:0.5〜2:1〜2.5である。
【0027】
アルキルアミン類若しくはアルカノールアミン類、アンモニア及びE)を共縮合させる時の各々のモル比は1:0.001〜0.2:0.4〜4、さらに好ましくは1:0.01〜0.1:0.5〜2である。
【0028】
アルキルアミン類若しくはアルカノールアミン類、アンモニア及びF)を共縮合させる時の各々のモル比は1:0.001〜0.2:0.8〜3、さらに好ましくは1:0.01〜0.1:1〜2.5である。
【0029】
アルキルアミン類若しくはアルカノールアミン類、アンモニア、E)及びF)を共縮合させる時の各々のモル比は1:0.001〜0.2:0.4〜4:0.8〜3、さらに好ましくは1:0.01〜0.1:0.5〜2:1〜2.5である。
【0030】
本発明の縮合物の例としては、ジメチルアミン−エピクロルヒドリン縮合物、ジエチルアミン−エピクロルヒドリン縮合物、エチレンジアミン−エピクロルヒドリン縮合物、ジメチルアミン−アンモニア−エピクロルヒドリン縮合物、ジメチルアミン−エピクロルヒドリン−クロロヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド縮合物、ジエチルアミン−エチルアミノエタノール−エピクロルヒドリン縮合物、ジメチルアミン−エピブロモヒドリン縮合物、ジエチルアミン−エピブロモヒドリン縮合物、ジエチルアミン−イソプロピルアミン−エピブロモヒドリン縮合物、ジメチルアミン−エチルアミノエタノール−エピクロロヒドリン等を挙げることができる。
【0031】
次に、本発明の貴金属の選択的回収剤の一つである下記一般式(3)で示される化合物
【化23】

[式中、R及びRは同一又は異なって水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。Xは陰イオンを示す。]下記一般式(4)で示される化合物
【化24】

[式中、Rは水素原子又はメチル基を、R、R及びRは同一又は異なって水素原子又はC〜Cの低級アルキル基を示す。ZはCOO(CH又はCONH(CHを示す。またnは1〜3の整数を示す。Xは陰イオンを示す。]、下記一般式(5)で示される化合物
【化25】

[式中、R10は水素原子又はメチル基を、R11は水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。Xは陰イオンを示す。]、下記一般式(6)で示される化合物
【化26】

[式中、R12、R13及びR14は同一又は異なって水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。Xは陰イオンを示す。]、下記一般式(7)で示される化合物
【化27】

[式中、R15は水素原子又はメチル基を、R16、R17及びR18は同一又は異なって水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。Xは陰イオンを示す。]、下記一般式(8)で示される化合物
【化28】

[式中、R19は水素原子又はメチル基を、R20は水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。Xは陰イオンを示す。]、下記一般式(9)で示される化合物
【化29】

[式中、R21は水素原子又はメチル基を、R22は水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。Xは陰イオンを示す。]から選ばれる少なくとも1種を重合して成るカチオン性高分子について説明する。
【0032】
上記一般式(3)におけるR及びRは同一又は異なって水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基等が挙げられ、中でもメチル基が特に好ましい。一般式(3)におけるXはフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン等が挙げられ、中でも塩素イオンが特に好ましい。一般式(3)で示される化合物としては、例えばジアリルアミン塩酸塩、メチルジアリルアミン塩酸塩、エチルジアリルアミン塩酸塩、n−プロピルジアリルアミン塩酸塩、iso−プロピルジアリルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチルジアリルアンモニウムクロライド、N,N−エチルメチルジアリルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチルジアリルアンモニウムブロマイド等を挙げることができるが、特にN,N−ジメチルジアリルアンモニウムクロライドが好ましい。
【0033】
これらの重合体の製造条件は、水などの水性溶媒中、60〜90℃の反応温度で、重合開始剤、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、t−ブチルヒドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロ二トリル、アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩等及び分子量調整剤、例えばメタリルスルホン酸ソーダ、ジ亜リン酸ソーダ、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール等の存在下で重合させれば良い。
【0034】
このようにして得られる重合体の分子量は、1,000〜50,000であり、より好適なものは3,000〜30,000の分子量のものである。
【0035】
上記一般式(4)のZにおける(CHとしては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられ、中でもエチレン基が特に好ましく、一般式(4)Xにおける陰イオンとしては上記(3)に準じる。一般式(4)で示される化合物としては、例えばアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムクロライド、アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルアミノエチルトリエチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノエチルトリエチルアンモニウムクロライド等が挙げられ、これらの重合体の製造条件は、上記(3)を用いた重合体の製造条件に準ずる。
【0036】
このようにして得られる重合体の分子量は、1,000〜50,000であり、より好適なものは3,000〜30,000の分子量のものである。
【0037】
上記一般式(5)のXにおける陰イオンとしては上記(3)に準じ、一般式(5)で示される化合物としては、例えばビニルピリジン塩酸塩、ビニルピリジンのメチルクロライド4級化物、或いはエチルクロライド4級化物等が挙げられ、これらの重合体の製造条件は、上記(3)を用いた重合体の製造条件に準ずる。
【0038】
このようにして得られる重合体の分子量は、1,000〜50,000であり、より好適なものは3,000〜30,000の分子量のものである。
【0039】
上記一般式(6)のXにおける陰イオンとしては上記(3)に準じ、一般式(6)で示される化合物としては、例えばアリルアミン塩酸塩、アリルアミンのメチルクロライド4級化物、或いはエチルクロライド4級化物等が挙げられ、これらの重合体の製造条件は、上記(3)を用いた重合体の製造条件に準ずる。
【0040】
このようにして得られる重合体の分子量は、1,000〜50,000であり、より好適なものは3,000〜30,000の分子量のものである。
【0041】
上記一般式(7)のXにおける陰イオンとしては上記(3)に準じ、一般式(7)で示される化合物としては、例えばビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニルベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ビニルベンジルトリブチルアンモニウムクロライド等が挙げられ、これらの重合体の製造条件は、上記(3)を用いた重合体の製造条件に準ずる。
【0042】
このようにして得られる重合体の分子量は、1,000〜50,000であり、より好適なものは3,000〜30,000の分子量のものである。
【0043】
上記一般式(8)或いは(9)のX、Xにおける陰イオンとしては上記(3)に準じ、(8)或いは(9)で示される化合物としては、例えばN−ビニルイミダゾール塩酸塩、N−ビニルイミダゾールのメチルクロライド4級化物、或いはエチルクロライド4級化物等が挙げられ、これらの重合体の製造条件は、上記(3)を用いた重合体の製造条件に準ずる。
【0044】
このようにして得られる重合体の分子量は、1,000〜50,000であり、より好適なものは3,000〜30,000の分子量のものである。
【0045】
なお上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリエチレングリコールを標準物質として測定した値である。測定方法の詳細については、後で説明する。
【0046】
上記一般式(3)〜(9)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種を用いて構成される重合体で本発明の効果を発揮することができるが、他の共重合可能な化合物と共重合することもでき、例えば(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド等を適用することができる。これらは1種だけでなく、2種以上を組み合わせて用いることもでき、上記(3)を用いた重合体の製造条件に準ずる。
【0047】
上記一般式(3)〜(9)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種を30〜100モル%用いることが好ましく、50〜100モル%用いることがより好ましい。
【0048】
次に、本発明の貴金属の選択的回収剤の一つである下記一般式(10)で示される化合物
【化30】

[式中、R23は水素原子又はメチル基を、R24及びR25は同一又は異なって水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。ZはCOO(CH又はCONH(CHを示す。またnは1〜3の整数を示す。Xは陰イオンを示す。]
から選ばれる少なくとも1種を重合して成るカチオン性高分子について説明する。
【0049】
上記一般式(10)のZにおける(CHとしては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられ、中でもエチレン基が特に好ましく、一般式(10)Xにおける陰イオンとしてはフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン等が挙げられ、中でも塩素イオンが特に好ましい。一般式(10)で示される化合物としては、例えばアクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルベンジルジエチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルベンジルジエチルアンモニウムクロライド、アクリロイルアミノエチルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルアミノエチルベンジルジエチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノエチルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノエチルベンジルジエチルアンモニウムクロライド等を挙げることができるが、特にメタクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウムクロライドが好ましい。
【0050】
これらの重合体の製造条件は、水などの水性溶媒中、60〜90℃の反応温度で、重合開始剤、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、t−ブチルヒドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロ二トリル、アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩等及び分子量調整剤、例えばメタリルスルホン酸ソーダ、ジ亜リン酸ソーダ、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール等の存在下で重合させれば良い。
【0051】
上記一般式(10)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種を用いて構成される重合体で本発明の効果を発揮することができるが、他の共重合可能な化合物と共重合することもでき、例えば(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド等を適用することができる。これらは1種だけでなく、2種以上を組み合わせて用いることもでき、上記(10)を用いた重合体の製造条件に準ずる。
【0052】
上記一般式(10)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種を30〜100モル%用いることが好ましく、50〜100モル%用いることがより好ましい。
【0053】
上記一般式(10)から選ばれる少なくとも1種を重合して成るカチオン性高分子の分子量は特に限定されないが、1,000〜300,000の分子量ものが好ましい。
【0054】
次に、水分散性である前記カチオン性高分子微粒子を有効成分とする貴金属の選択的回収剤について説明する。粒子表面を構成するカチオン性の高分子鎖は、カチオン性基を複数有する水溶性の化合物であればいかなるものでもよい。具体的には例えば下記一般式(11
【0055】
【化31】

[式中、Rは水素原子又はメチル基を、R、R及びRは同一又は異なって水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。ZはCOO(CH又はCONH(CHを示す。またnは1〜3の整数を示す。Xは陰イオンを示す。]
【0056】
又は下記一般式(12
【0057】
【化32】

[式中、Rは水素原子又はメチル基を、Rは水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。Xは陰イオンを示す。]
【0058】
又は下記一般式(13
【0059】
【化33】

[式中、Rは水素原子又はメチル基を、R、R及びR10は同一又は異なって水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。Xは陰イオンを示す。]
【0060】
又は下記一般式(14
【0061】
【化34】

[式中、R11は水素原子又はメチル基を、R12は水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。Xは陰イオンを示す。]
【0062】
又は下記一般式(15
【0063】
【化35】

[式中、R13は水素原子又はメチル基を、R14は水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。Xは陰イオンを示す。]
【0064】
又は下記一般式(16
【0065】
【化36】

[式中、R15は水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。]
【0066】
から選ばれる1種以上のモノマーをラジカル重合して成る高分子化合物を挙げることができるが、カチオン性を付与できるのであれば特に限定しない。
【0067】
本発明の貴金属の選択的回収剤の粒子内部を構成する疎水性の高分子化合物は、疎水性モノマーをラジカル重合して得られる化合物であればいかなるものでもよい。具体的には例えば、下記一般式(17
【0068】
【化37】

[式中、R16は水素原子又はメチル基を、R17及びR18は同一又は異なって水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はハロゲン原子又はCHYを示す。Yはハロゲン原子を示す。]
【0069】
又は下記一般式(18
【0070】
【化38】

[式中、R19は水素原子又はメチル基を、R20はC〜C18の直鎖又は分岐又は環状のアルキル基又はベンジル基又はヒドロキシプロピル基を示す。]
【0071】
又は下記一般式(19
【化39】

[式中、R21は水素原子又はメチル基を、R22はC〜C18の直鎖又は分岐又は環状のアルキル基又はフェニル基を示す。]
【0072】
又は下記一般式(20
【化40】

[式中、R23は水素原子又はメチル基を、R24はシアノ基を示す。]
【0073】
から選ばれる1種以上の疎水性モノマーをラジカル重合して成る高分子化合物を挙げることができるが特に限定しない。
【0074】
カチオン性の親水性高分子鎖が表面に集積した高分子微粒子は、(I)親水性高分子の合成、(II)親水性高分子末端へのラジカル重合性基の導入、(III)高分子微粒子の合成の三段階で例えば以下のような方法により合成することができる。
【0075】
(親水性高分子の合成)
上記一般式(11)をラジカル重合して成る高分子化合物を表面に集積させた高分子微粒子に関して、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩及び/又は(メタ)アクリロイルアミノアルキルトリアルキルアンモニウム塩等の単量体を連鎖移動剤及び重合開始剤の存在下、エタノール等のアルコール及び/又は水のような極性溶媒中でラジカル重合させることにより、末端に水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を有するカチオン性の親水性高分子を得ることができる。
【0076】
一般式(11)のZにおける(CHとしては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられ、中でもエチレン基が特に好ましい。一般式(11)のXにおける陰イオンとしてはフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン等が挙げられ、中でも塩素イオンが特に好ましい。
【0077】
(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩としては、アクリロイルオキシメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシメチルトリエチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシメチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシメチルトリエチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられ、(メタ)アクリロイルアミノアルキルトリアルキルアンモニウム塩としては、アクリロイルアミノメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルアミノメチルトリエチルアンモニウムクロライド、アクリロイルアミノエチルトリエチルアンモニウムクロライド、アクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノメチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノメチルトリエチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノエチルトリエチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられ、これらの中でもメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドが特に好ましい。
【0078】
上記一般式(12)をラジカル重合して成る高分子化合物を表面に集積させた高分子微粒子に関しては、ビニルピリジンの4級化物等の重合によって末端に水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を有するカチオン性の親水性高分子を得る事が出来る。一般式(12)のXにおける陰イオンとしては上記一般式(11)に準じ、例えばビニルピリジン塩酸塩、ビニルピリジンのメチルクロライド4級化物、或いはエチルクロライド4級化物等が挙げられる。
【0079】
上記一般式(13)をラジカル重合して成る高分子化合物を表面に集積させた高分子微粒子に関しては、ビニルベンジルトリアルキルアンモニウム塩等の重合によって末端に水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を有するカチオン性の親水性高分子を得る事が出来る。一般式(13)のXにおける陰イオンとしては上記一般式(11)に準じ、例えばビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニルベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ビニルベンジルトリブチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0080】
上記一般式(14)或いは(15)をラジカル重合して成る高分子化合物を表面に集積させた高分子微粒子に関しては、N−ビニルイミダゾールの4級化物等の重合によって末端に水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を有するカチオン性の親水性高分子を得る事が出来る。一般式(14)或いは(15)のX及びXにおける陰イオンとしては上記一般式(11)に準じ、例えばN−ビニルイミダゾールの塩酸塩、N−ビニルイミダゾールのメチルクロライド4級化物、或いはエチルクロライド4級化物が挙げられる。
【0081】
上記一般式(16)をラジカル重合して成る高分子化合物を表面に集積させた高分子微粒子に関しては、例えばN−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等の重合によって末端に水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を有する親水性高分子を得る事が出来る。
【0082】
これらの単量体は単独で、あるいは適宜組み合わせて用いることができる。
【0083】
連鎖移動剤としては、チオール基を有するアルキルアルコール、アルキルアミン、アルキルカルボン酸等のメルカプタン化合物が好ましい。チオール基を有するアルキルアルコールとしては例えば2−メルカプトエタノール、3−メルカプトプロパノール等が挙げられ、チオール基を有するアルキルアミンとしてはα−メルカプトエチルアミン、β−メルカプトエチルアミン等が挙げられ、チオール基を有するアルキルカルボン酸としてはメルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酪酸等が挙げられるが、メルカプト酢酸が特に好ましい。メルカプタン化合物はラジカル重合において連鎖移動剤として作用し、重合体の片末端に結合する。連鎖移動剤の好ましい使用量は、求めるカチオン性の親水性高分子鎖の数平均分子量及び反応条件によるが、親水性高分子鎖の好ましい数平均分子量は500〜100,000であり、数平均分子量が500〜100,000の親水性高分子鎖を得る場合、連鎖移動剤の使用量は単量体100モルに対して0.1〜50モル程度である。数平均分子量が500未満の場合は親水性高分子が表面に集積した高分子微粒子が得られないので好ましくない。また数平均分子量が100,000を超えると親水性高分子の末端に結合したラジカル重合性基の重合性が損なわれるので好ましくない。
【0084】
重合温度としては50℃〜100℃が好ましく、溶媒としてはメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、水等の極性溶媒が使用でき、アルコール類/水又はケトン類/水等の混合溶媒も使用できる。重合開始剤としては、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、t−ブチルヒドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロ二トリル、アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩等が挙げられる。重合開始剤の好ましい使用量は単量体100モルに対して0.02〜2モル程度である。重合時間は重合開始剤の種類及び使用量、重合温度等によって変化するが通常30分〜10時間であり、単量体が重合によって消費されるまで重合を行うのが好ましい。重合は単量体及び連鎖移動剤を極性溶媒に溶解、昇温後、重合開始剤を添加してもよいし、昇温した極性溶媒中に単量体、連鎖移動剤、重合開始剤をそれぞれ別々に又は混合して添加してもよい。
【0085】
(親水性高分子末端へのラジカル重合性基の導入)
次いで末端に水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を有するカチオン性の親水性高分子をクロロメチルスチレン等のビニルベンジルハライド又は、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレートと反応させて、末端にラジカル重合性基を導入したカチオン性の親水性高分子を合成する。本反応はジメチルホルムアミド等の極性媒体中において、塩基や、相間移動触媒の存在下、10℃〜80℃の温度を保つことによって行うことができる。
【0086】
塩基としては水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、又は、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の有機アミン或いはトリクロロ酢酸ナトリウム等のようなアルカリ発生剤等を挙げることが出来るが、特に限定されない。塩基の使用量は、末端に水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を有するカチオン性の親水性高分子を合成する際に使用した連鎖移動剤のモル数に対して1〜10倍で用いるのが好ましい。
【0087】
相間移動触媒としてはテトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラエチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライドのようなホスホニウム塩又はテトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライドのようなアンモニウム塩が挙げられるが、特に限定されない。相間移動触媒の使用量は、末端に水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を有するカチオン性の親水性高分子を合成する際に使用した連鎖移動剤のモル数に対して0.05〜1倍で用いるのが好ましい。
【0088】
ビニルベンジルハライドとしてはクロロメチルスチレン、ブロモメチルスチレン、ヨードメチルスチレン等が挙げられ、エポキシ基含有(メタ)アクリレートとしてはグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレート等が挙げられるが、クロロメチルスチレンが特に好ましい。ビニルベンジルハライド又はエポキシ基含有(メタ)アクリレートの使用量は、末端に水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を有するカチオン性の親水性高分子を合成する際に使用した連鎖移動剤のモル数に対して1〜10倍で用いるのが好ましい。
【0089】
末端に水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を有するカチオン性の親水性高分子とビニルベンジルハライド又はエポキシ基含有(メタ)アクリレートとの反応に要する時間は、上記カチオン性の親水性高分子及びビニルベンジルハライド又はエポキシ基含有(メタ)アクリレートの使用量、触媒の種類や使用量、反応温度等によって変化するが、通常10時間〜100時間であり、上記カチオン性の親水性高分子の末端にラジカル重合性基が導入されるまで反応を行うのが好ましい。
【0090】
末端に水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を有するカチオン性の親水性高分子とビニルベンジルハライド又はエポキシ基含有(メタ)アクリレートとの反応で使用する極性溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、水等を使用することができるが、水に対する溶解度の高いカチオン性の親水性高分子と水に対する溶解度の低いビニルベンジルハライド又はエポキシ基含有(メタ)アクリレートとの馴染みを良くするために、水に上述のアルコール類、ケトン類又はジメチルホルムアミド等の極性有機溶媒を混合するのが好ましい。その場合の混合比としては水に対して上述のアルコール類、ケトン類又はジメチルホルムアミド等の極性有機溶媒を5重量%〜50重量%で使用するのが好ましい。
【0091】
(親水性高分子鎖が表面に集積した高分子微粒子の合成)
得られた末端にラジカル重合性基を有するカチオン性の親水性高分子及び重合開始剤の存在下、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、水等の極性溶媒中でスチレン系モノマー又は(メタ)アクリル系モノマー等の疎水性のモノマーをラジカル重合させることにより、カチオン性の親水性高分子鎖が表面に集積した高分子微粒子が得られる。
【0092】
一般式(17)をラジカル重合して成る重合体を、カチオン性の親水性高分子鎖が表面に集積した高分子微粒子の内部の構成要素とするためには、例えばスチレン、モノメチルスチレン、ジメチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、クロロメチルスチレン等が疎水性モノマーとして挙げられる。
【0093】
一般式(18)をラジカル重合して成る重合体を、カチオン性の親水性高分子鎖が表面に集積した高分子微粒子の内部の構成要素とするためには、例えばエチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等が疎水性モノマーとして挙げられる。
【0094】
一般式(19)をラジカル重合して成る重合体を、カチオン性の親水性高分子鎖が表面に集積した高分子微粒子の内部の構成要素とするためには、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル等が疎水性モノマーとして挙げられる。
【0095】
一般式(20)をラジカル重合して成る重合体を、カチオン性の親水性高分子鎖が表面に集積した高分子微粒子の内部の構成要素とするためには、例えばアクリロニトリル等が疎水性モノマーとして挙げられる。
【0096】
これらの単量体は単独で、あるいは適宜組み合わせて用いることができる。
【0097】
重合温度としては50℃〜100℃が好ましく、溶媒としてはメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、水等が使用でき、アルコール類/水又はケトン類/水等の混合溶媒も使用できる。重合開始剤としては、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、t−ブチルヒドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロ二トリル、アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩等が挙げられる。重合開始剤の好ましい使用量は疎水性モノマー100モルに対して0.02〜2モル程度である。重合時間は重合開始剤の種類及び使用量、重合温度等によって変化するが通常30分〜10時間であり、末端にラジカル重合性基を有するカチオン性の親水性高分子及び疎水性モノマーが重合によって消費されるまで重合行うのが好ましい。
【0098】
カチオン性の親水性高分子鎖が表面に集積した高分子微粒子の合成において、末端にラジカル重合性基を有するカチオン性の親水性高分子と疎水性モノマーとの比率は、上記親水性高分子の数平均分子量や求める粒子径、反応条件によるが、モル比として、上記親水性高分子を構成する繰返し単位:疎水性モノマー=10:90〜90:10が好ましい。
【0099】
上記一般式(16)をラジカル重合して成る高分子化合物を表面に集積させた高分子微粒子に関しては、続いて塩酸等の酸の存在下で、アルコール又は/及び水のような極性溶媒中でアミド基を加水分解することにより、1級アミノ基を有する親水性高分子鎖が表面に集積した高分子微粒子が得られる。
親水性高分子鎖の1級アミノ基を4級化する場合は、例えばメチルクロライド、エチルクロライド等のハロゲン化アルキル(ハロゲン原子が塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子)やベンジルクロライド等のハロゲン化ベンジル等のハロゲン化合物が用いられる。4級化は種々の公知の方法によって容易に達成される。
【0100】
図1は、例えばメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドから合成した末端にラジカル重合性基を有するカチオン性の親水性高分子とスチレンを使用した場合に、高分子微粒子が得られる典型的なメカニズムを図式的に表したものである。末端ラジカル重合性基含有カチオン性高分子1はメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド単位1aとビニルベンジル基1bとから成る。先ず上記カチオン性高分子1とスチレンモノマー2とを混合し(工程A)、スチレンモノマーを重合させると、スチレンモノマーの単独重合(工程B)が部分的に起こるが、ビニルベンジル基1bとの共重合(工程C)が同時に起こる。共重合の結果、あたかもスチレン重合体に上記カチオン性高分子がグラフト化したかのような構造を有する高分子が得られる。反応は極性媒体中で行われるので、疎水性のスチレン単位は内側に、上記カチオン性高分子1は外側に選択的に集積する(工程D)。このようにして重合が完了すると、スチレン単位のコア部3の表面にカチオン性高分子鎖4が位置する高分子微粒子5が得られる(工程E)。
【0101】
カチオン性の親水性高分子鎖が表面に集積した高分子微粒子の平均粒子径は一般に数nm〜数十μmの範囲で、反応条件を変えることで、平均粒子径や粒度分布を変えることができる。液中に含まれる貴金属の吸着効果の観点から、平均粒子径は10nm〜20μmの範囲が好ましく、50nm〜5μmの範囲がより好ましい。平均粒子径が10nm以下では粒子自体の水溶性が高くなり、貴金属の吸着効果が低下する。平均粒子径が20μmを超えると単位重量当りの粒子の表面積が小さくなるため、貴金属の吸着効果が低下する。
【0102】
本発明の貴金属の選択的回収剤は、前記の方法に従えば、カチオン性の親水性高分子鎖が表面に集積した高分子微粒子を10重量%〜80重量%の濃度で水性媒体中に分散した状態として得ることができる。
【0103】
本発明の方法において処理の対象とする貴金属を含有する液(以下、貴金属含有液ということがある)とは、各種工業の過程において得られる貴金属ないしその化合物(特にコロイド状態のもの)を含んでなる強酸性の液をいう。これは、水性の液が通常であるが、有機性のものを排除しない。このような貴金属含有液の例としては、各種の触媒反応で使用された貴金属コロイド粒子を含有する触媒液が例示される。本発明においてはこのような触媒液が好ましい。なお、本発明において触媒液というときは、前記のように、触媒反応において使用済みの触媒液(すなわち触媒廃液)の外に、使用前の触媒液や触媒洗浄液等も含まれる。
【0104】
本発明において好ましい貴金属含有液は、無電解メッキ処理を行う際の所謂触媒化工程、すなわちメッキ対象物に白金族系の金属のような触媒の活性核を種付けする工程において使用された(もしくは使用される)触媒液である。
【0105】
また、本発明でいう貴金属としては、白金族金属(パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、白金)及び金、銀が例示される。工業的観点から特にパラジウムの回収に本発明は有用である。
【0106】
工業的観点から有用な態様においては、貴金属含有液は、パラジウムを含む強酸性液、特にパラジウムとスズを含む強酸性液又はパラジウムと銅を含む強酸性液であり、より詳しくは、塩化パラジウムを含む強酸性触媒液、特に塩化パラジウムとスズを含む強酸性触媒液又は塩化パラジウムと銅を含む強酸性触媒液である。通常、パラジウムはこの液中でコロイド状態として存在しており、少なくとも直径が1μmより小さく、さらに詳しくは、例えば10〜20オングストローム程度であると考えられている。
【0107】
本発明の処理対象とされる貴金属含有液中の貴金属の濃度は、液中に少なくとも貴金属が含まれているのであれば、いずれの濃度であっても良いが、例えば無電解メッキ処理の触媒化工程における触媒液の場合には、塩化パラジウム量で換算して、0.1〜0.5g/Lの触媒液管理範囲より少ない量であるのが普通である。なお、このような貴金属含有液は、必要に応じて、予め濃縮もしくは希釈させた後、本発明の方法に供してもよい。また、本発明の処理対象とされる貴金属含有液は強酸性溶液であり、具体的には−1〜3の範囲のpHであり、特に−0.5〜2.5の範囲のpHが好ましい。
【0108】
次に、本発明の貴金属の選択的回収剤を用いた貴金属含有液中の貴金属の選択的回収方法について説明する。貴金属含有液中の貴金属と選択的回収剤との吸着・凝集体形成反応は、常温常圧下で迅速に進行するため、特別な反応装置を用意する必要はなく、貴金属含有液と本発明の選択的回収剤を、十分混合することで吸着反応は進行し、凝集体を形成する。貴金属含有液と選択的回収剤との接触時間は、通常1分〜30分で十分であり、この時間内に凝集体形成反応は完結する。
【0109】
貴金属含有液と当該貴金属の選択的回収剤を混合し、凝集体を形成後、例えば高分子凝集剤を混合し、凝集体を粗大化させた後、固液分離しても良く、当該貴金属の選択的回収剤を混合して形成された凝集体が貴金属含有液中から取除くことができればいかなる方法でも良く、特に限定されない。
【0110】
高分子凝集剤としては、例えば、アクリルアミド−アクリル酸塩の共重合物、ポリアクリルアミド部分加水分解物、ポリアクリル酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩等が挙げられるが、これらの高分子化合物の1種又は2種以上組み合わせても良く、特に限定されない。
【0111】
アクリルアミド−アクリル酸塩の共重合物としては、例えばアクリルアミド−アクリル酸ナトリウムの共重合物、アクリルアミド−アクリル酸カリウムの共重合物、アクリルアミド−アクリル酸アンモニウムの共重合物等が挙げられる。ポリアクリル酸塩としては、例えばポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム等が挙げられる。ポリスチレンスルホン酸塩としては、例えばポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸カリウム、ポリスチレンスルホン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0112】
高分子凝集剤としては、アクリルアミド−アクリル酸塩の共重合物が好ましく、分子量は100万〜3000万程度であり、好ましくは200万〜2000万程度の分子量のものである。
【0113】
生成した貴金属の沈殿物は、固液分離が容易なため、分離ろ過操作により、効率良く溶液中の固液分離することができ、一般的な脱水機で脱水することができる。脱水機としては、例えば真空脱水機、ベルトプレス機、スクリュープレス機、遠心脱水機等が挙げられるが、特に限定されない。
【0114】
分離した貴金属の沈殿物は焼却処理することにより貴金属を回収することができ、種々の利用分野で再利用することができる。
【作用】
【0115】
本発明でいう貴金属としては、白金族金属(パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、白金)及び金、銀が例示されるが、これらは強酸性水溶液(例えば王水)中で陰イオン性の錯イオンとして存在し易いと考えられる。一方、スズや銅のような卑金属はパラジウムのような貴金属の共存下では陰イオン性の錯イオンを形成し難いと考えられる。貴金属由来の陰イオン性の錯イオンが本発明の特定の構造を有するカチオン性高分子に効果的に吸着(結合)し、選択的な回収効果が発現すると考えられる。
【実施例】
【0116】
以下、実施例及び比較例を挙げる事により、本発明の特徴をより一層明確なものとするが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、比較製造例および製造例におけるポリマーの重量平均分子量は、以下の方法に従って測定した。
〈ポリマーの重量平均分子量および重合収率の測定〉
カラム恒温槽には島津製作所製CTO−20A、検出器には島津製作所製RID−10A、溶離液流路ポンプには島津製作所製LC−20AD、デガッサには島津製作所製DGU−20A、オートサンプラーには島津製作所製SIL−20Aを用いてGPC法によって測定した。カラムはメタクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウムクロライド系ポリマーは東ソー製の水系SECカラムTSKgelG3000PWXL−CP(排除限界分子量9×10)とTSKgelG5000PWXL−CP(排除限界分子量1×10)とTSKgelG6000PWXL−CP(排除限界分子量2×10)を接続したものを用い、上記以外の水溶性ポリマーは東ソー製の水系SECカラムTSKgelG3000PWXL(排除限界分子量2×10)とTSKgelG5000PWXL(排除限界分子量2.5×10)とTSKgelG6000PWXL(排除限界分子量5×10)を接続したものを用いた。サンプルは溶離液で0.2g/100mlの濃度に調製し、測定に用いた。溶離液にはメタクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウムクロライド系ポリマーは0.05モル/リットル硝酸ナトリウム水溶液とアセトニトリルを70/30vol%に調整した水溶液を使用し、上記以外の水溶性ポリマーは酢酸、酢酸ナトリウム各々0.5モル/リットルに調整した水溶液を使用した。カラム温度は40℃で、流速は1.0ml/分で実施した。標準サンプルとして分子量1065、5050、24000、50000、107000、140000、250000、540000、920000の9種のポリエチレングリコールを用いて較正曲線を求め、その較正曲線を基に、ポリマーの重量平均分子量を求めた。また、本発明によるカチオン性高分子微粒子の粒子径はレーザー回折・光散乱法(日機装製:マイクロトラックMT3300EX)により測定した。また、以下の略号は次の化合物を意味する。
DCDA:ジシアンジアミド
FA:ホルムアルデヒド
DETA:ジエチレントリアミン
DMA:ジメチルアミン
NH3:アンモニア
ECH:エピクロロヒドリン
CTA:クロロヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド
DADMAC:ジアリルジメチルアンモニウムクロライド
MATMAC:メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド
ATMAC:アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド
AAm:アクリルアミド
VBTMAC:ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド
VAm:ビニルアミン
NVF:N−ビニルホルムアミド
St:スチレン
MABDMAC:メタクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウムクロライド
【0117】
[回収剤合成例1]
DCDA・FA縮合物の合成(回収剤1)
ジシアンジアミド84.1g(1モル)とホルムアルデヒドの37重量%水溶液162g(2モル)を混合し40℃に加熱した後、塩酸35%水溶液52g(0.5モル)を滴下して1時間攪拌し縮合した。その後、乾燥させ水溶液がpH7に成るように苛性ソーダで調整しジシアンジアミド・ホルムアルデヒド縮合物を得た。
【0118】
[回収剤合成例2]
DCDA・DETA縮合物の合成(回収剤2)
ジシアンジアミド84.1g(1モル)、ジエチレントリアミン60.1g(1モル)、塩化アンモニウム5.4g(0.1モル)を混合し140℃に加熱し10時間攪拌しジシアンジアミド・ジエチレントリアミン縮合物を得た。
【0119】
[回収剤合成例3]
DCDA・DETA・FA縮合物の合成(回収剤3)
ジシアンシアミド84.1g(1モル)、ジエチレントリアミン60.1g(1モル)、ホルムアルデヒドの37重量%水溶液40.5g(0.5モル)、塩化アンモニウム5.4g(0.1モル)を混合し140℃に加熱し10時間攪拌しジシアンジアミド・ジエチレントリアミン・ホルムアルデヒド縮合物を得た。
【0120】
[回収剤合成4]
DMA・NH3・ECH縮合物(モル比1:0.1:1.1)の合成(回収剤4)
撹拌装置、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器中にジメチルアミンの50重量%水溶液90.2g(1モル)と25重量%アンモニア水6.8g(0.1モル)と水172.6gを入れ、撹拌して均一に溶解させた後、この混合物に滴下ロートからエピクロルヒドリン101.8g(1.1モル)を約3時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃にて6時間反応を続け樹脂分39%の無色〜淡黄色液状水溶液を得た。得られた重合物のGPC(液体クロマトグラフィー)より求めた重量平均分子量は20,000であった。
【0121】
[回収剤合成5]
DMA・ECH・CTA縮合物(モル比1:0.5:1)の合成(回収剤5)
撹拌装置、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器中にジメチルアミンの50重量%水溶液90.2g(1モル)と水172.6gを入れ、撹拌して均一に溶解させた後、この混合物に滴下ロートからエピクロルヒドリン46.3g(0.5モル)を約2時間かけて滴下した後、クロロヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの65重量%水溶液289.4g(1モル)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃にて6時間反応を続け樹脂分39%の無色〜淡黄色液状水溶液を得た。得られた重合物のGPC(液体クロマトグラフィー)より求めた重量平均分子量は2,000であった。
【0122】
[回収剤合成6]
ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)重合物の合成(回収剤6)
攪拌装置、還流冷却機、滴下ロート2個、窒素ガス導入管及び温度計を備えた反応容器中に、水483.4gを仕込み、加熱して温度を80℃まで昇温した。窒素気流下、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(DADMAC)の65重量%水溶液480.1g(1.93モル)とメルカプト酢酸20.3g(0.22モル)の混合溶液及び過硫酸カリウムの5重量%水溶液16.2g(0.003モル)を、同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃にて3時間保ち、DADMAC高分子溶液(固形分濃度33.1%)を得た。得られた重合物のGPC(液体クロマトグラフィー)より求めた重量平均分子量は8,000であった。
【0123】
[回収剤合成7]
MATMAC重合物の合成(回収剤7)
攪拌装置、還流冷却機、滴下ロート2個、窒素ガス導入管及び温度計を備えた反応容器中に、水463.5gを仕込み、加熱して温度を80℃まで昇温した。窒素気流下、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(MATMAC)の80重量%水溶液500g(1.93モル)とメタリルスルホン酸ソーダ17.4g(0.11モル)の混合溶液及び過硫酸カリウムの5重量%水溶液16.2g(0.003モル)を、同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃にて3時間保ち、MATMAC高分子溶液(固形分濃度42.1%)を得た。反応終了後、アセトンで再沈殿を数回行ってMATMAC高分子を精製した。得られた重合物のGPC(液体クロマトグラフィー)より求めた重量平均分子量は30,000であった。
【0124】
[回収剤合成例8]
ATMAC/AAm重合物の合成(回収剤8)
攪拌装置、還流冷却機、滴下ロート2個、窒素ガス導入管及び温度計を備えた反応容器中に、水463.5gを仕込み、加熱して温度を80℃まで昇温した。窒素気流下、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(ATMAC)の80重量%水溶液422g(1.75モル)とアクリルアミド(AAm)の50重量%水溶液124g(0.87モル)とメタリルスルホン酸ソーダ34.8g(0.22モル)の混合溶液及び過硫酸カリウムの5重量%水溶液16.2g(0.003モル)を、同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃にて3時間保ち、ATMAC/AAm共重合体の高分子溶液(固形分濃度41.8%)を得た。反応終了後、アセトンで再沈殿を数回行ってATMAC高分子を精製した。得られた重合物のGPC(液体クロマトグラフィー)より求めた重量平均分子量は20,000であった。
【0125】
[回収剤合成例9]
MATMAC高分子鎖が表面に集積した高分子微粒子の合成(回収剤9)
(MATMAC高分子の合成)
攪拌装置、還流冷却機、滴下ロート2個、窒素ガス導入管及び温度計を備えた反応容器中に、水463.5gを仕込み、加熱して温度を80℃まで昇温した。窒素気流下、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(MATMAC)の80重量%水溶液500g(1.93モル)とメルカプト酢酸20.3g(0.22モル)の混合溶液及び過硫酸カリウムの5重量%水溶液16.2g(0.003モル)を、同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃にて3時間保ち、末端にカルボキシル基を有するMATMAC高分子溶液(固形分濃度42.1%)を得た。反応終了後、アセトンで再沈殿を数回行ってMATMAC高分子を精製した。得られた重合物のGPC(液体クロマトグラフィー)より求めた重量平均分子量は12,000、数平均分子量は6,000であった。
【0126】
(MATMAC高分子末端へのラジカル重合性基の導入)
次に攪拌装置、還流冷却機及び温度計を備えた反応容器中に、上記MATMAC高分子溶液(固形分濃度42.8%)700.0g[メルカプト酢酸単位として0.15モル(前仕込みより求めた)]を仕込み、エタノール280.0gを加え、水酸化ナトリウムの48重量%水溶液16.7g(0.20モル)、テトラブチルアンモニウムブロミド13.0g(0.04モル)、及びp−クロロメチルスチレン30.2g(0.20モル)を加えて60℃で6時間反応させ、末端ビニルベンジル基含有MATMAC高分子溶液(固形分濃度32.8%)を得た。反応終了後、アセトンで再沈殿を行って末端ビニルベンジル基含有MATMAC高分子を精製した。H−NMR測定の結果、末端へのビニルベンジル基導入率はほぼ100%であることが分かった。また、GPC(液体クロマトグラフィー)により測定した末端ビニルベンジル基含有MATMAC高分子の数平均分子量は6,100であった。
【0127】
(MATMAC高分子鎖が表面に集積した高分子微粒子の合成)
次いで攪拌装置、還流冷却機、窒素ガス導入管及び温度計を備えた反応容器中に、上記末端ビニルベンジル基含有MATMAC高分子溶液532.0g[MATMAC繰返し単位として0.70モル(前仕込みより求めた)]、スチレン67.9g(0.65モル)、水319.0gを仕込み、60℃に昇温した。窒素気流下、過硫酸カリウムの5重量%水溶液81.1g(0.015モル)を加え、6時間共重合させ、乳白色の分散液(固形分濃度23.8%)を得た。
【0128】
このようにして得られたMATMAC高分子鎖が結合したポリスチレン微粒子(PMATMAC/PS)の平均粒子径は100nmであった。この高分子微粒子を生成する反応式(20)は
【0129】
【化41】

(ただし、l、m、nは重合度を表す整数である。)により表されると考えられる。
【0130】
[回収剤合成例10]
MATMAC高分子鎖が表面に集積した高分子微粒子の合成(回収剤10)
上記回収剤合成例9のMATMAC高分子鎖が表面に集積した高分子微粒子の合成において、末端ビニルベンジル基含有MATMAC高分子溶液を266.0g[MATMAC繰返し単位として0.35モル(前仕込みより求めた)]とし、水を585.0gとした以外は回収剤合成例4と同様に反応を行った。乳白色の分散液(固形分濃度21.1%)が得られ、MATMAC高分子鎖が結合したポリスチレン微粒子(PMATMAC/PS)の平均粒子径は150nmであった。
【0131】
[回収剤合成例11]
VBTMAC高分子鎖が表面に集積した高分子微粒子の合成(回収剤11)
攪拌装置、還流冷却機、滴下ロート2個、窒素ガス導入管及び温度計を備えた反応容器中に、水452.6gを仕込み、加熱して温度を80℃まで昇温した。窒素気流下、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTMAC)408.7g(1.93モル)、メルカプト酢酸20.3g(0.22モル)、水102.2gの混合溶液及び過硫酸カリウムの5重量%水溶液16.2g(0.003モル)を、同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃にて3時間保ち、末端にカルボキシル基を有するVBTMAC高分子溶液(固形分濃度42.4%)を得た。反応終了後、アセトンで再沈殿を数回行ってVBTMAC高分子を精製した。得られたVBTMAC高分子の数平均分子量は7,000であった。以下、回収剤合成例4と同様に反応を行った。得られた末端ビニルベンジル基含有VBTMAC高分子の数平均分子量は7,100であった。最終的に乳白色の分散液(固形分濃度23.6%)が得られ、得られたVBTMAC高分子鎖が結合したポリスチレン微粒子(PVBTMAC/PS)の平均粒子径は120nmであった。
【0132】
[回収剤合成例12]
VAm高分子鎖が表面に集積した高分子微粒子の合成(回収剤12)
(NVF高分子の合成)
攪拌装置、還流冷却機、滴下ロート2個、窒素ガス導入管及び温度計を備えた反応容器中に、アセトン200.0g、水358.0gを仕込み、加熱して温度を60℃まで昇温した。窒素気流下、N−ビニルホルムアミド(NVF)300.0g(4.22モル)、2−メルカプトエタノール40.0g(0.52モル)、水75.0gの混合溶液及びアゾビスイソブチロニトリルの20重量%アセトン溶液27.0g(0.033モル)を、同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃にて3時間保ち、末端に水酸基を有するNVF高分子溶液(固形分濃度35.2%)を得た。反応終了後、アセトンで再沈殿を数回行ってNVF高分子を精製した。得られたNVF高分子の数平均分子量は12,000であった。
【0133】
(NVF高分子末端へのラジカル重合性基の導入)
次に攪拌装置、還流冷却機及び温度計を備えた反応容器中に、上記NVF高分子溶液855.0g[メルカプトエタノール単位として0.44モル(前仕込みより求めた)]を仕込み、水酸化カリウムの48重量%水溶液56.4g(0.48モル)、テトラブチルアンモニウムブロミド16.1g(0.05モル)、及びp−クロロメチルスチレン73.3g(0.48モル)を加えて60℃で6時間反応させ、末端ビニルベンジル基含有NVF高分子溶液(固形分濃度38.9%)を得た。反応終了後、アセトンで再沈殿を行って末端ビニルベンジル基含有NVF高分子を精製した。H−NMR測定の結果、末端へのビニルベンジル基導入率はほぼ100%であることが分かった。得られた末端ビニルベンジル基含有NVF高分子の数平均分子量は12,100であった。
【0134】
(NVF高分子鎖が表面に集積した高分子微粒子の合成)
次いで攪拌装置、還流冷却機、窒素ガス導入管及び温度計を備えた反応容器中に、上記末端ビニルベンジル基含有NVF高分子溶液445.0g[NVF繰返し単位として1.60モル(前仕込みより求めた)]、スチレン45.8g(0.44モル)、水330.8gを仕込み、60℃に昇温した。窒素気流下過硫酸カリウムの5重量%水溶液178.4g(0.033モル)を加え、6時間共重合させ、淡黄色の懸濁液(固形分濃度21.8%)を得た。
【0135】
(VAm高分子鎖が表面に集積した高分子微粒子の合成)
次いで攪拌装置、還流冷却機及び温度計を備えた反応容器中に、上記NVF高分子鎖が表面に集積した高分子微粒子分散液797gを仕込み、塩酸(36%水溶液)203g(2.00モル)を加えて80℃で24時間反応させ、アセトアミド基をアミノ基に転化した。加水分解後、メチルクロライドガスを封入し、30℃で5時間攪拌した。トルイジンブルーを指示薬としポリビニル硫酸カリウムで滴定したところ、1級アミノ基の約80%が4級化されていた。反応物を遠心分離(14000rpm/15分)で数回精製し、沈降物を真空乾燥して淡黄色粉末を得た。収率は50%であった。得られたVAm高分子鎖が結合したポリスチレン(PVAm/PS)微粒子の平均粒子径は1.3μmであった。
【0136】
[回収剤合成13]
MABDMAC重合物の合成(回収剤13)
攪拌装置、還流冷却機、滴下ロート2個、窒素ガス導入管及び温度計を備えた反応容器中に、水473.8gを仕込み、加熱して温度を80℃まで昇温した。窒素気流下、メタクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウムクロライド(MABDMAC)の60重量%水溶液500g(1.06モル)とメタリルスルホン酸ソーダ10.0g(0.06モル)の混合溶液及び過硫酸カリウムの5重量%水溶液16.2g(0.003モル)を、同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃にて3時間保ち、MABDMAC高分子溶液(固形分濃度31.6%)を得た。反応終了後、アセトンで再沈殿を数回行ってMABDMAC高分子を精製した。得られた重合物のGPC(液体クロマトグラフィー)より求めた重量平均分子量は20,000であった。
【0137】
[回収剤合成14]
MABDMAC重合物の合成(回収剤14)
攪拌装置、還流冷却機、窒素ガス導入管及び温度計を備えた反応容器中に、メタクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウムクロライド(MABDMAC)の60重量%水溶液667g(1.41モル)とメタリルスルホン酸ソーダ1.0g(0.006モル)及び水124.4gを仕込み、加熱して温度を80℃まで昇温した。窒素気流下、過硫酸カリウムの5重量%水溶液7.6g(0.0015モル)を添加し、80℃にて5時間保った後、水200gを添加してMABDMAC高分子溶液(固形分濃度42.1%)を得た。反応終了後、アセトンで再沈殿を数回行ってMABDMAC高分子を精製した。得られた重合物のGPC(液体クロマトグラフィー)より求めた重量平均分子量は300,000であった。
【0138】
[比較回収剤1合成例]
攪拌装置、還流冷却機、窒素ガス導入管及び温度計を備えた反応容器中に、水483.8gとメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(MATMAC)の80重量%水溶液500g(1.93モル)を仕込み、加熱して温度を80℃まで昇温した。窒素気流下、過硫酸カリウムの5重量%水溶液16.2g(0.003モル)を添加し、80℃で5時間保持して重合させ、重量平均分子量10万のカチオンポリマーを含有する無色透明液体(固形分濃度40.2%)を得た。
【0139】
[比較回収剤2合成例]
ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)重合物
攪拌装置、還流冷却機、窒素ガス導入管及び温度計を備えた反応容器中に、水166.0gとジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)の65重量%水溶液769.2g(3.09モル)を仕込み、加熱して温度を80℃まで昇温した。窒素気流下、過硫酸カリウムの5重量%水溶液64.8g(0.012モル)を添加し、80℃で5時間保持して重合させ、重量平均分子量7万のカチオンポリマーを含有する無色透明液体(固形分濃度50.6%)を得た。
【0140】
[比較回収剤3合成例]
攪拌装置、還流冷却機及び温度計を備えた反応容器中に、回収剤合成例1で得た末端ビニルベンジル基含有MATMAC高分子溶液532.0g[MATMAC繰返し単位として0.70モル(前仕込みより求めた)]、スチレン3.0g(0.029モル)、水383.9gを仕込み、60℃に昇温した。窒素気流下過硫酸カリウムの5重量%水溶液81.1g(0.015モル)を加え、6時間共重合させ、淡黄色の微濁液体(固形分濃度17.6%)を得た。
【0141】
[比較回収剤4合成例]
回収剤合成例1のMATMAC高分子鎖が表面に集積した高分子微粒子の合成において、末端ビニルベンジル基含有MATMAC高分子溶液を33.3g[MATMAC繰返し単位として0.044モル(前仕込みより求めた)]とし、水を817.7gとした以外は回収剤合成例1と同様に反応を行った。乳白色の分散液(固形分濃度8.9%)が得られ、MATMAC高分子鎖が結合したポリスチレン微粒子(PMATMAC/PS)の平均粒子径は30μmであった。
【0142】
各回収剤のポリマーの形態、構成単位、各構成単位のモル比(括弧内は重量平均分子量を示す)、水分散性の微粒子においては平均粒子径を表1に示す。
【0143】
【表1】

【0144】
本発明の方法に従って使用済みの触媒液から下記の通りにしてパラジウムを回収した。触媒液中に含まれるパラジウム、スズ並びに銅の濃度は原子吸光光度計(島津製作所製:島津原子吸光度計/フレーム分光光度計AA−670)により求めた。
【0145】
[例1]無電解メッキ処理の触媒化工程に使用された、パラジウムとスズを含有する使用済み触媒液を処理対象液(以下、触媒液Aという)として使用した。触媒液Aのパラジウム濃度は103.9mg/L、スズ濃度は1.45%であり、pHは−0.38であった。この触媒液を100ml用意し、ここに上記各貴金属回収剤、比較回収剤及び市販のジチオカルバミン酸系高分子重金属捕捉剤(比較回収剤5)を各々添加し、攪拌、混合後、各処理液をろ紙(ADVANTEC製、No5A)でろ過し、ろ液中のパラジウムとスズの濃度を求めた。結果を表2に示す。
【0146】
【表2】

【0147】
触媒液Aに対して本発明に従う方法により、触媒液中のパラジウムがほとんど凝集体として沈殿し、触媒液中のパラジウムの濃度が低減された一方、スズの濃度はほとんど低減しなかった。比較回収剤1〜4ではパラジウムの低減率が低く、比較回収剤5ではパラジウム、スズ共に低減され、選択性はなかった。
【0148】
[例2]例1と同じ触媒液を使用して、貴金属回収剤を添加し、攪拌、混合後、さらにアクリルアミド/アクリル酸ナトリウム(モル比80/20)共重合物の高分子凝集剤を2mg/L添加、攪拌、混合し、以下例1と同じ操作を行った。結果を表3に示す。
【0149】
【表3】

【0150】
触媒液Aに対して本発明の回収剤を添加後、高分子凝集剤を添加することにより、凝集体が粗大化された。
【0151】
[例3]無電解メッキ処理の触媒化工程に使用された、パラジウムと銅を含有する使用済み触媒液を処理対象液(以下、触媒液Bという)として使用した。触媒液Bのパラジウム濃度は302.8mg/L、銅濃度は16.0mg/Lであり、pHは2.31であった。この触媒液を100ml用意し、ここに上記各貴金属回収剤、比較回収剤及び市販のジチオカルバミン酸系高分子重金属捕捉剤(比較回収剤5)を各々添加し、攪拌、混合後、各処理液をろ紙(ADVANTEC社製、No5A)でろ過し、ろ液中のパラジウムとスズの濃度を求めた。結果を表4に示す。
【0152】
【表4】

【0153】
触媒液Bに対して本発明に従う方法により、触媒液中のパラジウムが凝集体として沈殿し、触媒液中のパラジウムの濃度が低減された一方、銅の濃度はほとんど低減しなかった。比較回収剤1〜4ではパラジウムの低減率が低く、比較回収剤5ではパラジウム、スズ共に低減され、選択性はなかった。
【0154】
[例4]例3と同じ触媒液を使用して、貴金属回収剤を添加し、攪拌、混合後、さらにポリスチレンスルホン酸ナトリウムを35mg/L、アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム(モル比80/20)共重合物の高分子凝集剤を2mg/L添加、攪拌、混合し、以下例1と同じ操作を行った。結果を表5に示す。
【0155】
【表5】

【0156】
触媒液Bに対して本発明の回収剤を添加後、高分子凝集剤を添加することにより、凝集体が粗大化された。
【0157】
[比較例5]触媒液Bに水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを3.5に調整した以外は例4と同じ操作を行った。結果を表6に示す。
【0158】
【表6】

【0159】
pHを上げると銅の低減率が上昇し、パラジウムとの選択性が低下した。
【0160】
[例6]金及び銅、鉄を含有する使用済みメッキ液を処理対象液(以下、メッキ廃液Cという)として使用した。メッキ廃液Cの金濃度は73.7mg/L、銅濃度は1.31%、鉄濃度は0.69%であり、pHは−0.20であった。この触媒液を100ml用意し、ここに上記各貴金属回収剤13及び14、市販のジチオカルバミン酸系高分子重金属補捉剤(比較回収剤5)を各々添加し、攪拌、混合後、各処理液をろ紙(ADVANTEC社製、No5A)でろ過し、ろ液中の金及び銅、鉄の濃度を求めた。結果を表7に示す。
【0161】
【表7】

【0162】
メッキ廃液Cに対して本発明に従う方法により、メッキ廃液中の金がほとんど凝集体として沈殿し、メッキ廃液中の金の濃度が低減された一方、銅及び鉄の濃度はほとんど低減しなかった。比較回収剤5では金の低減率が低かった。
【0163】
[例7]例6と同じメッキ廃液を使用して、貴金属回収剤を添加し、攪拌、混合後、さらにアクリルアミド/アクリル酸ナトリウム(モル比80/20)共重合物の高分子凝集剤を25mg/L添加、攪拌、混合し、以下例6と同じ操作を行った。結果を表8に示す。
【0164】
【表8】

【0165】
メッキ廃液Cに対して本発明の回収剤を添加後、高分子凝集剤を添加することにより、凝集体が粗大化された。
【0166】
本発明の貴金属回収剤を添加、攪拌、混合することにより、短時間で容易に貴金属含有液中の貴金属を選択的に凝集、回収することが可能であった。一方、比較例による方法では、ほとんど貴金属含有液中の貴金属を選択的に凝集、回収することができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】高分子微粒子が得られるメカニズムを表す概略図である。
【符号の説明】
1・・・末端ラジカル重合性基含有カチオン性高分子
1a・・メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド単位
1b・・ビニルベンジル基
2・・・スチレンモノマー
3・・・スチレン単位のコア部
4・・・カチオン性高分子鎖
5・・・高分子微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記〔1〕〜〔5〕の中から選ばれる少なくとも1種から成ることを特徴とする貴金属の選択的回収剤。
〔1〕A)ジシアンジアミド、B)下記の一般式(1)で示される化合物
【化1】

[式中Xは(NHCHCH)m又は(CH)nを示す。また、mは1〜6の整数を示し、nは0〜16の整数を示す。]、C)ホルムアルデヒドの内、A)を必須成分とし、これとB)の内の少なくとも1種又は2種以上及び/又はC)とを共縮合した縮合物の内、1種又は2種以上のカチオン性高分子。
〔2〕D)アルキルアミン類若しくはアルカノールアミン類の少なくとも1種又はアルキルアミン類若しくはアルカノールアミン類の少なくとも1種とアンモニアの混合物、E)エピハロヒドリン、F)下記一般式(2)で示される化合物
【化2】

[式中、R、R及びRは同一又は異なって水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示し、Yはハロゲン原子を示す。Xは陰イオンを示す。]の内、D)を必須成分とし、これとE)及び/又はF)とを共縮合した縮合物の内、1種又は2種以上のカチオン性高分子。
〔3〕下記一般式(3)で示される化合物
【化3】

[式中、R及びRは同一又は異なって水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。Xは陰イオンを示す。]、下記一般式(4)で示される化合物
【化4】

[式中、Rは水素原子又はメチル基を、R、R及びRは同一又は異なって水素原子又はC〜Cの低級アルキル基を示す。ZはCOO(CH又はCONH(CHを示す。またnは1〜3の整数を示す。Xは陰イオンを示す。]、下記一般式(5)で示される化合物
【化5】

[式中、R10は水素原子又はメチル基を、R11は水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。Xは陰イオンを示す。]、下記一般式(6)で示される化合物
【化6】

[式中、R12、R13及びR14は同一又は異なって水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。Xは陰イオンを示す。]、下記一般式(7)で示される化合物
【化7】

[式中、R15は水素原子又はメチル基を、R16、R17及びR18は同一又は異なって水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。Xは陰イオンを示す。]、下記一般式(8)で示される化合物
【化8】

[式中、R19は水素原子又はメチル基を、R20は水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。Xは陰イオンを示す。]、下記一般式(9)で示される化合物
【化9】

[式中、R21は水素原子又はメチル基を、R22は水素原子又はC〜Cの低級アルキル基又はベンジル基を示す。Xは陰イオンを示す。]
から選ばれる少なくとも1種を重合して成る、重量平均分子量が1,000から50,000の重合体の内、1種又は2種以上のカチオン性高分子。
〔4〕下記一般式(10)で示される化合物
【化10】

[式中、R23は水素原子又はメチル基を、R24及びR25は同一又は異なって水素原子又はC〜Cの低級アルキル基を示す。ZはCOO(CH又はCONH(CHを示す。またnは1〜3の整数を示す。Xは陰イオンを示す。]
を重合して成るカチオン性高分子。
〕表面にカチオン性の高分子鎖を有し、内部が疎水性の高分子化合物から構成され、且つ、平均粒子径が10nm〜20μmの水分散性のカチオン性高分子微粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の貴金属の選択的回収剤の少なくとも1種を、酸性条件下で貴金属を含有する液に混合して、貴金属の凝集体を形成させ、これを分離回収することを特徴とする貴金属の選択的回収方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−97349(P2012−97349A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88637(P2011−88637)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(391003473)センカ株式会社 (20)
【Fターム(参考)】