説明

貼り付け用光り触媒酸化チタン繊維及びレースカーテン

【課題】
貼り直しが可能で酸化チタンを含んだ貼り付け可能な繊維及びレースカーテンの提供
【解決手段】
光触媒酸化チタン系化合物を固着した貼り付け用光触媒酸化チタン繊維を粘着物質により板状面等に1又は2回以上貼り直し可能とし、さらにレースカーテン状にする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化チタン系化合物の光触媒作用により、防臭、防菌又は遮光、飛散防止その他多くの効果を有するガラス等の板状面に貼り付け可能な酸化チタン繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
近年さまざまな産業分野において、酸化チタンが有する光触媒作用が注目を集めており、脱臭、有害物質の除去、防汚等の目的で、空気清浄器や外壁・建材等の種々の用途に酸化チタンが用いられている。
【0003】
また、カーテンに熱反射フィルムを貼り付けて形成したカーテンを提供するものとして、特許文献1がある。
【0004】
【特許文献1】特許2597769号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
酸化チタンの光触媒作用を効果的に生じさせるため、酸化チタンは日光を受け易いところで使用されるのが一般的である。
【0006】
しかし、フィルムに酸化チタンを固着した場合、酸化チタンが触媒する反応により生じる活性酸素の漂白作用により、フィルムに混在された顔料の色素が分解されるため、十分な遮光効果を発揮し得なかった。
【0007】
フィルムに酸化チタンを固着させる場合、スプレーによりフィルム表面に付着される方法が、一般的に用いられているが、該方法では、酸化チタンが容易に剥がれてしまい、効果の持続性に問題があった。
【0008】
また、フィルムの性質上、通気性が無いため、貼り付ける際にフィルムとガラス面の間に多数の気泡が生じ易いため、貼り付け作業が困難であった。また、薄くて破れ易いため、一度ガラス面等に貼り付けると、再度、貼り直すことが非常に困難であり、再利用できない問題があった。
【0009】
一方、レースカーテンに酸化チタンを固着した場合には、上記のフィルムの欠点を補うことは可能であるが、取り付けにはカーテンレール等の取り付け具が必須であり、場所や空間によっては用途が限定されるという問題を有している。また、レースとガラス面等とが密着していないことから、邪魔になったり、汚れれば洗濯の必要があった。
【0010】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、フィルムとレースカーテンの欠点を補いつつ、防臭、防菌等作用を有し、複数回の貼り直しが可能な光触媒酸化チタンを固着したガラス等の板状面等に貼る酸化チタン繊維およびレースカーテンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、請求項1記載の貼り付け用光触媒酸化チタン繊維は、複数回の貼り直しが可能であり、光触媒作用を有する酸化チタンが固着されていることを要旨とする。
【0012】
上記の課題を解決するために、請求項2記載の貼り付け用光触媒酸化チタンレースカーテンは、複数回の貼り直しが可能であり、光触媒作用を有する酸化チタンが固着されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る酸化チタン繊維及びレースカーテンによれば、光触媒作用を有する酸化チタンを固着して構成したため、遮光効果を有しつつ、紫外線に照射される酸化チタンの光触媒作用により、防菌、防臭効果を併せ持つ複数回貼り直し可能な酸化チタン繊維を提供することができる。
さらに、本発明に係る酸化チタン繊維のレースカーテンによれば、地震等による衝撃に対して、その衝撃を吸収し、ガラス等の板状面を保護し、かつガラス損傷時の飛散防止も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る酸化チタン繊維を含むフィルムは、「二酸化チタン」(「TiO」、本発明では簡略名称「酸化チタン」を用いる)が有する光触媒作用を活用したものである。
酸化チタンは、主として顔料によく用いられ、その他化粧品や歯磨き粉、さらに食品添加物としても認められる安全無害な物質であるが、紫外線が当たると光触媒として作用する物質であることが知られている。
酸化チタンの光触媒作用とは、紫外線の照射による触媒作用により、空気中の酸素と水に反応して活性酸素を発生し、その活性酸素によって空気中に含まれる悪臭成分等の有機物質、微生物、細菌などを酸化分解して、無害な水と二酸化炭素に変化させるというものである。
【0015】
太陽光には紫外線がエネルギーとして約3%含まれており、また蛍光灯の光にもわずかではあるが紫外線が含まれる。屋外であれば、たとえ日陰でも十分な紫外線量が得られるが、屋内では、窓から入る太陽光を除けば、蛍光灯のわずかな紫外線しかないこととなる。しかしながら、屋内であっても、ペットが発する悪臭や細菌のような微細な量の処理であれば、酸化チタンの光触媒作用による効果を十分に得ることができる。
酸化チタンは、活性酸素を生成する過程において、それ自体が変化したり劣化したりするものではないため、紫外線が当たる限り、その効果を持続させることが可能である。
【0016】
酸化チタンは粉末体であるため、酸化チタンを光触媒として利用するためには、風で飛んだり、水に流されたりすることがないように、レースを形成する繊維に酸化チタンを固着する必要がある。固着方法は、酸化チタンが光触媒作用を生じ得るものであれば、如何なる方法であってもよい。
また、防臭・抗菌の効果を有効に得るために、なるべく繊維の全体に酸化チタンを固着させることが好ましいが、繊維の一部のみに酸化チタンを固着させることとしても構わない。
【0017】
繊維の熱可塑性を利用して繊維の表面に固定したり、樹脂バインダーで繊維に結合・付着させて固定することもできるが、このような方法では、酸化チタンの繊維に対する結合力が弱く繊維表面から脱落しやすいため、酸化チタンを繊維に含有して固着させることが好ましい。
すなわち、酸化チタンを含有させる繊維を湿式紡糸法などにより紡糸後、乾燥処理されていない未乾燥状態で酸化チタンの分散液を接触させることにより、繊維に酸化チタンを強固に固着させることが好ましい。酸化チタン分散液を繊維に接触させる方法は、繊維を酸化チタン分散液に侵漬する他、繊維に酸化チタン分散液をスプレーで噴霧する等、いずれの手段でもよい。
酸化チタンを含有させる繊維としては、ポリビニルアルコール系繊維、アクリル系繊維等の合成繊維、酢酸セルロース繊維等の半合成繊維、レーヨンなどの再生繊維等が好ましい。
酸化チタンを含有させた繊維は、該繊維を単独で用いることとしてもよいし、該繊維を含む紡績糸、織物、編物、不織布などの形態として用いることとしてもよい。
【0018】
また、酸化チタンを繊維に含有する場合、その強力な光触媒作用によって有害有機物だけでなく繊維自身も分解される場合があるため、例えば、酸化チタンの表面をリン酸カルシウムによって被覆すると一層好ましい。リン酸カルシウムは光触媒として不活性であり、かつ多孔質であるため、酸化チタン表面に被覆することにより、酸化チタンが有する光触媒機能を損なうことなく、繊維の耐久性を高めることが可能となる。
【0019】
また、請求項1に係る酸化チタン繊維をガラス等の板状面に貼り付けるには、粘着剤等を使用する。該粘着剤は水溶性の粘着剤を始め布等に一般に使用可能な粘着剤が使用可能である。
さらに繊維の貼り付け面は窓ガラス、壁、ドア、天井、仕切り板等のあらゆる板状面に可能である。
【実施例1】
【0020】
本発明の第1の実施例を図面に基づいて説明する。本実施例は、光触媒作用を有する酸化チタンが固着されてなる酸化チタン繊維を使用したレースカーテンに関する。
【0021】
図1に示すように、本実施例に係るレースは裏面に粘着剤(A)が塗布されており、剥がし用のフィルム(2)が粘着剤保護として貼り付けられている。使用時にあっては、レースカーテンを貼り付けようとするガラス面(3)の近くにおいて、ガラス面の形状にフィルム付レースカーテンを切り整え、図1に示すように保護フィルム(2)を→方向に剥がし、接着面をガラス表面に接着させる。すると図2のように、ガラス面にレースが貼り付けられることとなる。このとき、レースそのものは布地であり、厚みを有しているため、何度でも張り直しは可能である。また、好みの形状にして貼り付けることが可能であり、レースは光触媒作用を有する酸化チタンを含有した繊維(1)を用いて形成されるが、本実施例においては、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルからなる芯部と、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリステル、ブチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステル、及びリン酸カルシウムで被覆された光触媒酸化チタンからなる鞘部を有する芯鞘構造の繊維を用いて形成する。
このような繊維であれば、酸化チタンがリン酸カルシウムで被覆されているため、酸化チタンの光触媒作用によるポリエステル繊維自体の劣化を防ぐことができる。さらに、芯鞘構造であるため、製糸時に、酸化チタンの凝集によるフィラメントの糸切れを防止することができて好ましい。
【0022】
リン酸カルシウムは、酸化チタンに対して0.2重量%以上10重量%以下で被覆することが好ましい。0.2重量%未満であると、ポリエステル繊維の劣化を防ぐことが難しく、逆に10重量%を超えると、光触媒酸化チタンの十分な性能が得られないためである。
酸化チタンの含有量は0.1重量%以上5重量%以下が好ましく、0.5重量%以上2重量%以下がより好ましい。0.1重量%未満であると、十分な消臭効果が得られにくく、逆に5重量%を超えても、消臭性能に変化が無くコストが無駄となるためである。
芯部と鞘部との重量比率は40:60〜80:20が好ましく、50:50〜70:30がより好ましい。重量比率が40:60未満であると、繊維表面に露出しない酸化チタンが増加してコストが無駄となり、逆に80:20を超えると、安定して鞘部が形成されないためである。
【0023】
本実施例に係る芯鞘繊維は、以下のごとく製造する。すなわち、リン酸カルシウムで被覆された酸化チタンを、ブチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルに混練してマスターバッチを形成し、該マスターバッチを、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルに混合して鞘成分とする。そして、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルからなる成分を芯成分とし、既知の芯鞘型複合紡糸機にて溶融紡糸すれば、上記のような芯鞘構造繊維を得ることができる。
【0024】
図2は、本実施例に係る貼り付け用酸化チタン繊維を使用したレースカーテンを窓ガラスに使用した場合の使用状態を示す図である。
【0025】
上記のごとく貼り付け用酸化チタン繊維を含むフィルム(1)が貼付されると、貼り付け用酸化チタン繊維を含むフィルムを形成する繊維に含有された酸化チタンの光触媒作用によって、貼り付け用酸化チタン繊維を含むフィルムに紫外線が照射される限り、悪臭や細菌やタバコの消臭・殺菌の効果が、持続的に得られることとなる。
【0026】
表1は、本実施例に係る貼り付け用酸化チタン繊維を含むフィルムに用いた繊維の、消臭性に関する試験結果を示すものである。
試験は、500ミリリットル三角フラスコ内に、12×12cmの大きさの試料を入れ、ガス(ホルムアルデヒド)初期濃度を60ppmとし、検知管法によって2時間後と24時間後のガス濃度を測定することにより行った。また、試験室温度は20℃、紫外線強度は1mW/cm(試料表面)とした。
なお、比較例1は、試料を入れないで同様に操作したものである。
【0027】
【表1】

【0028】
表1によれば、本実施例に係る貼り付け用酸化チタン繊維(1)に用いた繊維は、三角フラスコ内のホルムアルデヒド濃度を24時間後には7.5分の1に削減し、その効果は比較例1の約6倍であった。
【0029】
以上、本実施例によれば、酸化チタンの光触媒作用により、持続的に防臭・抗菌性を発揮する貼り付け用酸化チタン繊維を提供することが可能となる。
特に本実施例では、酸化チタンをリン酸カルシウムで被覆したため、繊維自体の劣化を防ぐことができるとともに、芯鞘構造の繊維によって貼り付け用酸化チタン繊維を含むフィルム(1)を形成したため、紡糸の際の糸切れ等を防止することも可能となる。このようなレースカーテンを窓や壁に貼付すると空気清浄の機能も認められ好ましい。
【実施例2】
【0030】
本発明の第2の実施例を図面に基づいて説明する。本実施例は、光触媒作用を有する酸化チタンが固着された貼り付け用酸化チタン繊維(半透明のスモークガラス形成用)に関し、車内での使用に関する。
【0031】
図3に示すように、本実施例に係る貼り付け用酸化チタン繊維(7)は、フィルムのように自動車の窓ガラスに密着して貼り付ける必要から、厚さは1ミリから5ミリ程度の繊維であることが好ましい。このような薄い繊維を用いるため、窓の開閉を妨げることはない。また、遮光効果を維持しながら、酸化チタンによる防菌・防臭効果を奏することができる。
【0032】
また、レースカーテンと比較して室内空間に圧迫感を与えず、事故の際のガラスの飛散を防止する効果も期待できる。さらに、車内の空気清浄効果があり、別の消臭剤等を用意する必要がなく、便利である。さらに繊維状であるため、従来のスモークフィルムと異なり、貼り付けに失敗しても剥がすことが容易にでき、取り扱いしやすい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、持続的に防臭・抗菌性、飛散防止効果を発揮し得る貼り直し可能な光触媒酸化チタン繊維を含むフィルムを提供するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1の実施例に係る貼り付け用酸化チタン繊維使用時の断面図である。
【図2】第1の実施例に係る貼り付け用酸化チタン繊維のレースカーテンの使用状態を示す図である。
【図3】第2の実施例に係る酸化チタン繊維を車のスモークとして使用した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 光触媒酸化チタン繊維を含むレースカーテン
A 粘着剤
2 粘着剤保護フィルム
3 ガラス
4 窓枠
5、7、9 酸化チタン繊維を貼付けしたガラス
6、8 乗用車のドア枠





【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着物質により板状面等に1又は2回以上貼り直しが可能なことを特徴とする光触媒酸化チタン系化合物を固着した貼り付け用光触媒酸化チタン繊維
【請求項2】
請求項1記載の光触媒酸化チタン繊維をレース状にしたことを特徴とする貼り付け用光触媒酸化チタン繊維レースカーテン

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−225811(P2006−225811A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−43180(P2005−43180)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000103688)オクイ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】