説明

貼り付け用銅箔

【課題】基材との良好な密着性を示しつつ、高精細な配線パターンを形成することができる貼り付け用銅箔を提供する。
【解決手段】基材に貼り付けるために用いられる貼り付け用銅箔10であって、基材に貼り付ける側の表面の表面粗さ(Rz)が0.500μm以下であり、正方形のボックスの一辺の大きさを1nm〜10nmに設定したボックスカウント法を適用して算出した、銅箔10の断面における基材に貼り付ける側の表面の輪郭線のフラクタル次元が1.020〜1.400である、貼り付け用銅箔10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼り付け用銅箔に関する。
【背景技術】
【0002】
金属銅は電気の良導体であり比較的安価で取り扱いも容易であることから、銅箔はプリント配線基板などの基礎材料として広く使用されている。
プリント配線基板を製造する際には、通常、銅箔と所定の基材とを合わせて積層し、加熱圧着して銅張積層体を得る。なお、一般的に、銅箔の基材と貼り合わる面は、基材との密着性を向上させるために、粗面化処理が施されている(特許文献1)。
【0003】
一方、近年、プリント配線基板の高密度化、高信頼性、および小型軽量化が強く望まれており、それに伴って、幅が狭く、高精細な配線パターンを形成することが求められている。
しかしながら、従来の粗面化処理が施された銅箔を使用して配線パターンの形成を行うと、銅箔の粗面化処理が施された表面の凹凸の影響により、得られる配線パターンの配線幅のバラツキが大きくなるという問題があった。
【0004】
高精細な配線パターンを形成するためには銅箔の粗面をより低プロファイル化する手がある。しかしながら、この方法では、銅箔と基材との密着性が低下するために、銅箔回路のはがれ、浮き、デラミネーションなどの問題が生じる。
このように、従来、基材との高密着性と配線パターンの高精細化とは、互いにトレードオフの関係にあり、両者を満足することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3476264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、基材との良好な密着性を示しつつ、高精細な配線パターンを形成することができる貼り付け用銅箔を提供することを目的とする。
また、本発明は、該貼り付け用銅箔を用いて得られる積層体およびプリント配線基板を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、貼り付け用銅箔の基材に貼り付ける側の表面が所定の構造を有することによって、上記課題を解決できることを見出した。
即ち、以下に示す手段により上記目的を達成しうることを見出した。
【0008】
(1) 基材に貼り付けるために用いられる貼り付け用銅箔であって、
前記基材に貼り付ける側の表面の表面粗さ(Rz)が0.500μm以下であり、
正方形のボックスの一辺の大きさを1nm〜10nmに設定したボックスカウント法を適用して算出した、前記銅箔の断面における前記基材に貼り付ける側の表面の輪郭線のフラクタル次元が1.020〜1.400である、貼り付け用銅箔。
【0009】
(2) 基材と、前記基材上に貼り付けられた(1)に記載の貼り付け用銅箔とを有する積層体。
【0010】
(3) (2)に記載の積層体を含有するプリント配線基板。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基材との良好な密着性を示しつつ、高精細な配線パターンを形成することができる貼り付け用銅箔を提供することができる。
また、本発明によれば、該貼り付け用銅箔を用いた積層体およびプリント配線基板を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(A)本発明の貼り付け用銅箔の模式的斜視図である。(B)A−A線断面の表面側の拡大図である。
【図2】本発明の貼り付け用銅箔の製造方法の一実施形態の製造工程を示したフローチャートである。
【図3】(A)〜(D)は、本発明の貼り付け用銅箔の製造方法の一実施形態の各製造工程を順に示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本実施形態の貼り付け用銅箔について説明する。
本実施形態の貼り付け用銅箔は、その貼り付け面が所定の表面粗さRzを示すと共に、ボックスカウント法によって算出される、断面における貼り付け面の輪郭線のフラクタル次元が所定の値を示す。貼り付け面が所定の表面粗さRzを示すことにより、該貼り付け面においてマクロな凹凸が少なく(低プロファイル)、結果としてパターン形成時において高精細な配線パターンを形成することができる。また、貼り付け面の断面輪郭線が所定のフラクタル次元を示すことにより、ミクロで複雑な表面性状を有することになる。つまり、貼り付け面の表面粗さRzが小さいものであっても、その複雑な表面形状に起因して十分な表面積を有するものとなり、結果として基材に対して十分なアンカー効果を示し、基材に対して優れた密着性を示す。つまり、従来トレードオフの関係であった、密着性の向上と、配線パターンの高精細性とを両立することができる。
まず、以下では貼り付け用銅箔の態様について詳述し、その後該銅箔の製造方法について詳述する。
【0014】
[貼り付け用銅箔(貼り合わせ用銅箔)]
本実施形態の貼り付け用銅箔(以後、単に銅箔とも称する)は、基材表面に貼り付けるために用いられる。使用される基材については、後述する。
図1(A)は、貼り付け用銅箔10の模式的斜視図であり、図1(B)は図1(A)中のA−A線断面における表面近傍の拡大図である。なお、図1(B)中、貼り付け用銅箔10の上辺が、基材に貼り付ける側の表面の輪郭線に該当する。該図に示すように、貼り付け用銅箔10の基材と貼り付ける側の表面は、表面粗さRzは小さく巨視的には平坦な面であるが、微視的には複雑な表面形状を有している。
【0015】
銅箔の基材に貼り付ける側の表面の表面粗さRzは、0.500μm以下である。上記範囲内であれば、高精細な配線パターンを効率よく形成することができる。なかでも、より間隙の狭い配線パターンを高精細に形成できる点から、0.300μm以下が好ましく、0.200μm以下がより好ましい。なお、下限は特に制限されず、最も好ましくは0μmであるが、工業的な生産性の点より、0.050μm以上の場合が多い。
なお、Rzが0.500μm超の場合、配線幅のバラツキが大きくなり、高精細な配線パターンを得ることができない。
【0016】
なお、表面粗さRzとは、JIS B 0601(2001年)に規定される最大高さ粗さであり、これは公知の表面形状測定装置(例えば、会社名:ULVAC、装置名:Dektak150)等で測定できる。
【0017】
銅箔の断面における、銅箔の基材に貼り付ける側の表面の輪郭線(断面輪郭線)はフラクタル状で、正方形のボックスの一辺の大きさを1nm〜10nmに設定したボックスカウント法を適用して算出した、表面の輪郭線のフラクタル次元が1.020〜1.400である。フラクタル次元が上記範囲内であれば、銅箔が基材に対して優れた密着性を示す。なかでも、基材に対する密着性がより優れる点で、フラクタル次元は1.050〜1.400が好ましく、1.100〜1.300がより好ましく、1.150〜1.250がさらに好ましい。
なお、フラクタル次元が1.020未満および1.400超の場合、銅箔の基材に対する密着性に劣る。
【0018】
以下に、ボックスカウント法について詳述する。
ボックスカウント法とは、一定の領域を一定の大きさ(ボックスサイズ)で分割して見たときに、フラクタルな図形がどの程度含まれているのかを調べることで、フラクタル次元を推定する方法である。
「フラクタル次元(ボックスカウント次元)」は、形の複雑さ、表面の凹凸の度合いなどを表す指標であって、フラクタル次元の値が大きいほど凹凸が複雑であることを示し、以下のように定義される。ある図形Fを、一辺の大きさδの正方形の箱(ボックス)で覆うために必要なボックスの個数をNδ(F)とすると、フラクタル次元は下記式で定義される。
【0019】
【数1】

【0020】
つまり、本発明においては、銅箔の断面を等間隔δの格子状の領域に分割し(一辺の大きさがδの正方形の小領域で分割し)、δの大きさを変化させながら、銅箔の基材に貼り付ける側の表面の輪郭線の一部を含む、一辺の大きさがδの正方形のボックス(セル)の個数をカウントする。次に、カウントしたボックスの個数を縦軸、そのときのδの大きさを横軸として両対数グラフにプロットし、そのグラフの傾きからフラクタル次元を求める。
なお、本発明において、δは1〜10nmの範囲である。
【0021】
また、本発明においては、測定面積は1μm×1μmである。
さらに、本発明においてのフラクタル次元は、少なくとも5か所以上の断面測定領域(1μm×1μm)からそれぞれフラクタル次元を計算し、それらを算術平均した値である。
【0022】
より具体的には、本発明のフラクタル次元は、銅箔の断面構造写真(銅箔の厚み方向に平行な面の写真)から算出する。まず、Dual−Beam FIB装置(FEI製、Dual Beam Nova200 Nanolab、加速電圧30kV)を用いて、銅箔をサンプル加工し、断面出しを行う。次に、その断面を集束イオンビーム装置(セイコーインスツルメンツ社製、SMI9200)にて観察して、画像データとして得る。その後、画像処理によって、銅箔の粗化表面部(線分)を抽出する。この断面写真を基に、上記ボックスカウント法を用いて、少なくとも5か所の測定領域(1μm×1μm)にて輪郭線のフラクタル次元(ボックスカウント次元)をそれぞれ算出し、それらを算術平均して本発明のフラクタル次元(平均フラクタル次元)を求める。
【0023】
銅箔の基材に貼り付ける側の表面の表面粗さRaは特に制限されないが、高精細な配線パターンを効率よく形成することができる点で、0.200μm以下が好ましく、0.100μm以下がより好ましい。なお、下限は特に制限されず、最も好ましくは0μmであるが、工業的な生産性の点より、0.010μm以上の場合が多い。
なお、表面粗さRaとは、JIS B 0601(2001年)に規定され、これは公知の表面形状測定装置(例えば、会社名:ULVAC、装置名:Dektak150)等で測定できる。
【0024】
銅箔の厚みは特に制限されず、使用目的に応じて適宜調整できる。基材に対する密着性、および、パターンの高精細性がより優れる点から、2〜30μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。
【0025】
銅箔は、通常、銅から構成されるが、銅以外の金属(例えば、銀、錫、パラジウム、金、ニッケル、クロムなど)が一部含まれていてもよい。
【0026】
なお、上述したように、銅箔の基材と貼り付ける面が所定の表面粗さRzおよびフラクタル次元の要件を示せばよく、一方の主面(片面)のみが該要件を満たしていてもよい。また、銅箔の両主面(両面)が該要件を満たしていてもよい。
なお、一方の主面のみが該要件を満たしている場合、他方の主面の形状は特に制限されない。通常、平坦な光沢面である場合が多い。
【0027】
また、銅箔は種々の態様(用途)に使用することができる。例えば、プリント配線基板、電磁波シールド材料、導通(アース)用材料、リチウムイオン電池などが挙げられる。
さらに、必要に応じて、該銅箔は、公知の方法(例えば、後述するエッチング工程に記載のエッチング方法)によってパターン状に形成されてもよい。
【0028】
[銅箔の製造方法]
上記銅箔の製造方法は特に制限されず、表面粗さRzおよびフラクタル次元が所定の範囲となるような方法であれば、いずれの方法も使用することができる。
図2は、銅箔の製造方法の好適態様における各工程を示すフローチャートであり、該態様は、被めっき層形成工程S102、触媒付与工程S104、めっき工程S106、支持体除去工程S108、被めっき層除去工程S110を備える。該態様であれば、得られる銅箔の表面粗さRzおよびフラクタル次元の調整が容易であると共に、生産性にもより優れる。
以下に、該好適態様の各工程について詳述する。
【0029】
(被めっき層形成工程S102)
本工程S102は、支持体上に、めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する官能基(以後、適宜相互作用性基と称する)および重合性基を有するポリマーを含む層を形成し、その後ポリマーを含む層に対してエネルギーを付与して、支持体上に被めっき層を形成する工程である。
該工程S102によって形成される被めっき層は、ポリマー中に含まれる相互作用性基の機能に応じて、後述する触媒付与工程S104でめっき触媒またはその前駆体を吸着(付着)する。つまり、被めっき層は、めっき触媒またはその前駆体の良好な受容層として機能する。また、重合性基は、エネルギー付与による硬化処理によってポリマー同士の結合に利用され、硬さ・硬度に優れた被めっき層を得ることができる。
より具体的には、図3(A)に示すように、該工程S102においては支持体12上に被めっき層14が形成される。
まず、本工程S102で使用される材料(支持体、ポリマー、被めっき層形成用組成物など)について詳述し、その後該工程S102の手順について詳述する。
【0030】
(支持体)
支持体は、後述する各層を支持するための部材であり、従来知られているいずれの支持基板(例えば、樹脂基板、セラミック基板、ガラス基板、金属基板など。好ましくは、絶縁性基板。)も使用することができる。
【0031】
なかでも、後述する支持体除去工程S108において支持体をより容易に除去できる点から、易剥離性を示す表面を有する剥離性支持体を使用することが好ましい。なお、剥離性支持体の表面が有する易剥離性とは、後述する銅箔を有する積層体に剥離性支持体を剥離するための外力を加えた場合、銅箔と被めっき層の界面で剥離すること無く、剥離性支持体と被めっき層の界面で剥離する性質を意味する。
剥離性支持体の易剥離性を示す表面の水接触角は、剥離性支持体と被めっき層との界面での剥離がより進行しやすい点から、70°以上であることが好ましく、70〜110°であることがより好ましく、80〜100°であることがさらに好ましい。
水接触角の測定方法としては、滴下した水の頂点と支持体との2点の接点を用いる接線法を用いる。
【0032】
なお、支持体の大きさ、および、厚みは特に制限されず、適宜最適な大きさ、および、厚みが選択される。
また、支持体の形状は特に制限されないが、通常、平板状である。
【0033】
(ポリマー)
使用されるポリマーは、重合性基と、相互作用性基とを有する。
重合性基は、エネルギー付与により、ポリマー同士の間に化学結合を形成しうる官能基であり、例えば、ラジカル重合性基、カチオン重合性基などが挙げられる。なかでも、反応性がより優れる点から、ラジカル重合性基が好ましい。ラジカル重合性基としては、例えば、アクリル酸エステル基(アクリロイルオキシ基)、メタクリル酸エステル基(メタクリロイルオキシ基)、イタコン酸エステル基、クロトン酸エステル基、イソクロトン酸エステル基、マレイン酸エステル基などの不飽和カルボン酸エステル基、スチリル基、ビニル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基などが挙げられる。なかでも、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基、ビニル基、スチリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基が好ましく、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基、スチリル基が特に好ましい。
【0034】
相互作用性基は、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基であり、めっき触媒またはその前駆体と静電相互作用を形成可能な官能基、あるいは、めっき触媒またはその前駆体と配位形成可能な含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などを使用することができる。
相互作用性基としては、例えば、非解離性官能基(解離によりプロトンを生成しない官能基)なども挙げられる。
【0035】
相互作用性基としてより具体的には、アミノ基、アミド基、イミド基、ウレア基、3級のアミノ基、アンモニウム基、アミジノ基、トリアジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基、キノリン基、ピリジン基、ピリミジン基、ピラジン基、ナゾリン基、キノキサリン基、プリン基、トリアジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピロリジン基、ピラゾール基、アニリン基、アルキルアミン構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基;エーテル基、水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、カーボネート基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基、N−ヒドロキシ構造を含む基などの含酸素官能基;チオフェン基、チオール基、チオウレア基、チオシアヌール酸基、ベンズチアゾール基、メルカプトトリアジン基、チオエーテル基、チオキシ基、スルホキシド基、スルホン基、サルファイト基、スルホキシイミン構造を含む基、スルホキシニウム塩構造を含む基、スルホン酸基、スルホン酸エステル構造を含む基などの含硫黄官能基;ホスフォート基、ホスフォロアミド基、ホスフィン基、リン酸エステル構造を含む基などの含リン官能基;塩素、臭素などのハロゲン原子を含む基などが挙げられ、塩構造をとりうる官能基においてはそれらの塩も使用することができる。
なかでも、極性が高く、めっき触媒またはその前駆体などへの吸着能が高いことから、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、およびボロン酸基などのイオン性極性基や、エーテル基、またはシアノ基が特に好ましく、カルボキシル基またはシアノ基がさらに好ましい。
相互作用性基としてのこれら官能基は、ポリマー中に2種以上が含まれていてもよい。
【0036】
ポリマーの重量平均分子量は特に制限されないが、1000以上70万以下が好ましく、更に好ましくは2000以上20万以下である。特に、重合感度の観点から、20000以上であることが好ましい。
また、ポリマーの重合度は特に制限されないが、10量体以上が好ましく、20量体以上がさらに好ましい。また、7000量体以下が好ましく、3000量体以下がより好ましく、2000量体以下が更に好ましく、1000量体以下が特に好ましい。
【0037】
ポリマーの好ましい態様として、下記式(a)で表される重合性基を有するユニット(以下、適宜重合性基ユニットとも称する)、および、下記式(b)で表される相互作用性基を有するユニット(以下、適宜相互作用性基ユニットとも称する)を含む共重合体が挙げられる。なお、ユニットとは繰り返し単位を意味する。
【0038】
【化1】

【0039】
上記式(a)および式(b)中、R1〜R5は、それぞれ独立して、水素原子、または置換若しくは無置換のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基など)を表す。なお、置換基は特に制限されないが、メトキシ基、塩素原子、臭素原子、またはフッ素原子などが挙げられる。
なお、R1としては、水素原子、メチル基、または、臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。R2としては、水素原子、メチル基、または、臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。R3としては、水素原子が好ましい。R4としては、水素原子が好ましい。R5としては、水素原子、メチル基、または、臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
【0040】
上記式(a)および式(b)中、X、Y、およびZは、それぞれ独立して、単結合、または、置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基としては、置換若しくは無置換の二価の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜8。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などのアルキレン基)、置換若しくは無置換の二価の芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数6〜12。例えば、フェニレン基)、−O−、−S−、−SO2−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、またはこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。
【0041】
X、Y、およびZとしては、後述する被めっき層除去工程において被めっき層の除去効率がより優れる点から、エステル基(−COO−)が好ましい。
【0042】
上記式(a)および式(b)中、L1およびL2は、それぞれ独立して、単結合、または、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義としては、上述したX、Y、およびZで述べた二価の有機基と同義である。
1としては、ポリマーの合成が容易で、被めっき層の触媒吸着性が優れる点で、脂肪族炭化水素基、または、ウレタン結合若しくはウレア結合を有する二価の有機基(例えば、脂肪族炭化水素基)が好ましく、なかでも、総炭素数1〜9であるものが好ましい。なお、ここで、L1の総炭素数とは、L1で表される置換または無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
【0043】
また、L2は、ポリマーの合成が容易で、被めっき層の触媒吸着性が優れる点で、単結合、二価の脂肪族炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基が好ましい。なかでも、L2は、単結合、または、総炭素数が1〜15の脂肪族炭化水素基が好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、L2の総炭素数とは、L2で表される置換または無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
【0044】
上記式(b)中、Wは、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を表す。該官能基の定義は、上述の相互作用性基の定義と同じである。
【0045】
上記重合性基ユニットの含有量は、ポリマー中の全ユニットに対して、5〜50モル%が好ましく、5〜40モル%がより好ましい。5モル%未満では反応性(硬化性、重合性)が落ちる場合があり、50モル%超では合成の際にゲル化しやすく合成しにくい。
また、上記相互作用性基ユニットの含有量は、めっき触媒またはその前駆体に対する吸着性の観点から、ポリマー中の全ユニットに対して、5〜95モル%が好ましく、10〜95モル%がより好ましく、60〜95モル%がさらに好ましい。
なお、重合性基ユニットおよび相互作用性基ユニットは、それぞれ異なる種類のユニットが2種以上含まれていてもよい。
また、ポリマーには、重合性基ユニットおよび相互作用性基ユニット以外のユニットが含まれていてもよい。
【0046】
上記ポリマーの具体例としては、例えば、特開2009−007540号公報の段落[0106]〜[0112]に記載のポリマー、特開2006−135271号公報の段落[0065]〜[0070]に記載のポリマー、US2010−080964号の段落[0030]〜[0108]に記載のポリマーなどが挙げられる。
該ポリマーは、公知の方法(例えば、上記で列挙された文献中の方法)により製造することができる。
【0047】
(工程S102の手順)
まず、支持体上に上記ポリマーを含む層(被めっき層前駆体層)を形成する方法は特に制限されず、公知の方法を使用できる。例えば、上記ポリマーを含む被めっき層形成用組成物を支持体上に塗布する方法(塗布法)や、ポリマーを支持体上に直接ラミネートする方法も挙げられる。なかでも、被めっき層の膜厚制御がしやすい点から、塗布法が好ましい。被めっき層形成用組成物の態様については、後述する。
【0048】
塗布法の場合に、被めっき層形成用組成物を支持体上に塗布する方法は特に制限されず、公知の方法(例えば、スピンコート、ダイコート、ディップコートなど)を使用できる。
取り扱い性や製造効率の観点からは、被めっき層形成用組成物を支持体上に塗布し、必要に応じて乾燥処理を行って残存する溶媒を除去して、ポリマーを含む層(被めっき層形成用組成物層)を形成する態様が好ましい。
なお、乾燥処理の条件は特に制限されないが、生産性がより優れる点で、室温〜220℃(好ましくは50〜120℃)で、1〜30分間(好ましく1〜10分間)実施することが好ましい。
【0049】
次に、支持体上のポリマーを含む層(被めっき層形成用組成物層)にエネルギー付与する方法は特に制限されない。例えば、加熱処理や露光処理などが用いられることが好ましく、処理が短時間で終わる点より、露光処理が好ましい。ポリマーを含む層にエネルギーを付与することにより、ポリマー中の重合性基が活性化され、ポリマー間の架橋が生じ、層の硬化が進行する。
露光処理には、UVランプ、可視光線などによる光照射等が用いられる。光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などもある。具体的な態様としては、赤外線レーザによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や、赤外線ランプ露光などが好適に挙げられる。
露光時間としては、ポリマーの反応性および光源により異なるが、通常、10秒〜5時間の間である。露光エネルギーとしては、10〜8000mJ程度であればよく、好ましくは50〜3000mJの範囲である。
【0050】
なお、エネルギー付与として加熱処理を用いる場合、送風乾燥機、オーブン、赤外線乾燥機、加熱ドラムなどを用いることができる。
【0051】
被めっき層の厚みは特に制限されないが、生産性の点から、0.01〜10μmが好ましく、0.2〜5μmがより好ましく、0.3〜1.0μmが特に好ましい。
また、被めっき層の表面(支持体側とは反対側の表面)の表面粗さRzは特に制限されないが、銅箔の表面粗さRzがより低下する点で、0.2μm以下が好ましく、0.1μm以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、製造上の制約から、0.01μm以上の場合が多い。
【0052】
(被めっき層形成用組成物)
被めっき層形成用組成物には上記ポリマーが含有される。
被めっき層形成用組成物中のポリマーの含有量は特に制限されないが、組成物全量に対して、2〜50質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の取扱い性に優れ、被めっき層の層厚の制御がしやすい。
【0053】
被めっき層形成用組成物は、溶媒を含有していてもよい。溶媒を含有することにより、取扱い性が向上する。
使用できる溶媒は特に限定されず、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶媒、酢酸などの酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート系溶媒、この他にも、エーテル系溶媒、グリコール系溶媒、アミン系溶媒、チオール系溶媒、ハロゲン系溶媒などが挙げられる。
この中でも、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、カーボネート系溶媒が好ましく、具体的には、アセトン、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネートが好ましい。
【0054】
被めっき層形成用組成物中の溶媒の含有量は特に制限されないが、組成物全量に対して、50〜98質量%が好ましく、90〜97質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の取扱い性に優れ、被めっき層の層厚の制御などがしやすい。
【0055】
[触媒付与工程S104]
触媒付与工程S104は、被めっき層形成工程S102で得られた被めっき層にめっき触媒またはその前駆体を付与する工程である。
本工程S104においては、ポリマー由来の相互作用性基がその機能に応じて、付与されためっき触媒またはその前駆体を付着(吸着)する。より具体的には、被めっき層中および被めっき層表面上に、めっき触媒またはその前駆体が吸着される。
まず、本工程S104で使用される材料(めっき触媒またはその前駆体など)について詳述し、その後該工程S104の手順について詳述する。
【0056】
(めっき触媒またはその前駆体)
めっき触媒またはその前駆体は、後述するめっき工程S106における、銅めっき処理の触媒や電極として機能するものである。そのため、使用されるめっき触媒またはその前駆体の種類は、めっき処理の種類により適宜決定される。
以下では、めっき触媒またはその前駆体として、主に、無電解めっきまたはその前駆体などについて詳述する。
【0057】
無電解めっき触媒としては、無電解めっき時の活性核となるものであれば、如何なるものも用いることができ、具体的には、自己触媒還元反応の触媒能を有する金属(Niよりイオン化傾向の低い無電解めっきできる金属として知られるもの)などが挙げられる。より具体的には、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。中でも、触媒能の高さから、Ag、Pdが特に好ましい。
無電解めっき触媒として、金属コロイド(金属粒子)を用いてもよい。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤または荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。
【0058】
無電解めっき触媒前駆体としては、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には、上記無電解めっき触媒として挙げた金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、被めっき層へ付与した後、無電解めっき液への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてもよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき液に浸漬し、無電解めっき液中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
【0059】
無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、金属塩を用いて被めっき層に付与することが好ましい。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO3)n、MCln、M2/n(SO4)、M3/n(PO4)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数および触媒能の点で、Agイオン、Pdイオンが好ましい。
【0060】
本工程において、無電解めっきを行わず直接電気めっきを行うために用いられる触媒として、上述した以外の0価金属を使用することもできる。
【0061】
上記めっき触媒またはその前駆体は、これらを含むめっき触媒液(めっき触媒またはその前駆体を、溶媒に分散または溶解させた分散液または溶液)の形態で使用されることが好ましい。
めっき触媒液で使用される溶媒は、有機溶媒および/または水が用いられる。めっき触媒液が有機溶媒を含有することで、被めっき層に対するめっき触媒液の浸透性が向上し、相互作用性基に効率よくめっき触媒またはその前駆体を吸着させることができる。
【0062】
めっき触媒液に用いられる有機溶媒としては、被めっき層に浸透しうる溶媒であれば特に制限はないが、具体的には、アセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、エチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、アセトフェノン、2−(1−シクロヘキセニル)シクロヘキサノン、プロピレングリコールジアセテート、トリアセチン、ジエチレングリコールジアセテート、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブなどを用いることができる。
【0063】
(工程S104の手順)
めっき触媒またはその前駆体を被めっき層に付与する方法は、特に制限されない。
例えば、上記めっき触媒液(金属を適当な分散媒に分散した分散液、または、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液)を調製し、めっき触媒液を被めっき層上に塗布する方法、または、めっき触媒液中に被めっき層が形成された支持体を浸漬する方法などが挙げられる。
被めっき層とめっき触媒液との接触時間は、30秒〜10分程度であることが好ましく、1分〜5分程度であることがより好ましい。
接触時のめっき触媒液の温度は、20〜60℃程度であることが好ましく、30〜50℃程度であることがより好ましい。
【0064】
[めっき工程S106]
めっき工程S106は、触媒付与工程S104でめっき触媒またはその前駆体が付与された被めっき層に対して銅めっき処理を行い、被めっき層上に銅箔を形成し、支持体と被めっき層と銅箔とをこの順で有する積層体を得る工程である。より具体的には、図3(B)に示すように、本工程S106において、被めっき層14上に銅箔10が形成され、積層体16が得られる。
【0065】
本工程S106において行われる銅めっき処理の種類は、無電解銅めっき、電解銅めっき等が挙げられ、上記工程S104において、被めっき層に付与されためっき触媒またはその前駆体の機能によって、選択することができる。
なかでも、基材に対してより良好な密着性を示す銅箔が得られる点から、無電解銅めっきを行うことが好ましい。また、所望の層厚の銅箔を得るために、無電解銅めっきの後に、更に電解銅めっきを行うことがより好ましい態様である。
以下、本工程S106において好適に行われる銅めっき処理について説明する。
【0066】
(無電解銅めっき)
無電解銅めっきとは、銅イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって銅を析出させる操作のことをいう。
本工程S106における無電解銅めっきは、例えば、無電解めっき触媒が付与された被めっき層を、水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解銅めっき浴に浸漬して行う。使用される無電解銅めっき浴としては、公知の無電解銅めっき浴を使用することができる。なお、無電解銅めっき浴としては、入手のしやすさの点から、アルカリ性の無電解銅めっき浴(pHが9〜14程度が好ましい)を使用する場合が好ましい。
また、無電解めっき触媒前駆体が被めっき層に吸着または含浸した状態で無電解銅めっき浴に浸漬する場合には、被めっき層を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解銅めっき浴中へ浸漬させる。この場合には、無電解銅めっき浴中において、めっき触媒前駆体の還元とこれに引き続き無電解銅めっきが行われる。ここで使用される無電解銅めっき浴としても、上記同様、公知の無電解銅めっき浴を使用することができる。
【0067】
なお、無電解めっき触媒前駆体の還元は、上記のような無電解銅めっき液を用いる態様とは別に、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解銅めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、無電解めっき触媒前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤を溶解した液で、液全体に対する該還元剤の濃度が0.1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。還元剤としては、公知の還元剤(例えば、水素化ホウ素ナトリウムまたはジメチルアミンボランなどのホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸など)を使用できる。
浸漬の際には、無電解めっき触媒またはその前駆体が接触する被めっき層表面付近の無電解めっき触媒またはその前駆体の濃度を一定に保つ上で、攪拌または揺動を加えながら浸漬することが好ましい。
【0068】
一般的な無電解銅めっき浴の組成としては、例えば、溶媒(例えば、水)の他に、1.めっき用の銅イオン、2.還元剤、3.銅イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。
【0069】
無電解銅めっき浴に用いられる有機溶媒としては、水に可能な溶媒であることが好ましく、その点から、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好ましく用いられる。
【0070】
無電解銅めっき浴に用いられる金属の種類としては、銅が使用されるが、必要に応じて、他の金属(例えば、銅、すず、鉛、ニッケル、金、銀、パラジウム、ロジウム)を併用してもよい。
【0071】
無電解銅めっきにより得られる銅箔の厚みは、銅イオン濃度、無電解銅めっき浴への浸漬時間、または、無電解銅めっき浴の温度などにより制御することができるが、無電解銅めっきによる銅箔を導通層として、後述する電解銅めっきを行う場合は、少なくとも0.1μm以上の銅箔が均一に付与されていることが好ましい。また、導電性の観点から、後述する電解銅めっきを行わない場合には、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、3〜10μmが最も好ましい。
また、無電解銅めっき浴への浸漬時間としては、1分〜10時間程度であることが好ましく、10分〜3時間程度であることがより好ましい。
【0072】
(電解銅めっき(電気銅めっき))
本工程S106においては、上記工程S104において付与されためっき触媒またはその前駆体が電極としての機能を有する場合、そのめっき触媒またはその前駆体が付与された被めっき層に対して、電解銅めっきを行うことができる。
また、前述の無電解銅めっきの後、形成された銅箔を電極とし、更に、電解銅めっきを行ってもよい。これにより、新たに任意の厚みをもつ銅箔を容易に形成することができる。
【0073】
電解銅めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、電解めっきに用いられる金属としては、銅が使用されるが、必要に応じて銅以外の金属(例えば、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛など)を併用してもよい。
【0074】
また、電解銅めっきにより得られる銅箔の厚みは、電解銅めっき浴中に含まれる銅イオン濃度、または、電流密度などを調整することで制御することができる。
なお、一般的な電気配線などに適用する場合、銅箔の厚みは、導電性の観点から、1μm以上であることが好ましく、3〜30μmがより好ましい。
なお、無電解銅めっきと電解銅めっきとの間に、必要に応じて、無電解銅めっき上の酸化銅を除去するために、酸性溶液(例えば、硫酸水溶液)と無電解銅めっきとを接触させる処理を施してもよい。
【0075】
[支持体除去工程]
支持体除去工程S108は、上記めっき工程S106で得られた積層体から支持体を除去する工程である。より具体的には、図3(C)に示すように、図3(B)に記載の積層体16から支持体12を除去して、被めっき層14と銅箔10とを含む被めっき層付き銅箔18を得る。
【0076】
支持体を除去する方法は特に制限されず、使用される支持体の種類に応じて適宜最適な方法が選択される。
例えば、積層体中の支持体のみが溶解する溶液と積層体とを接触させ、支持体を溶解除去する方法、積層体中から支持体を物理的に剥離する方法、積層体中の支持体にプラズマ処理やオゾン処理などの酸化処理を施して除去する方法などが挙げられる。
【0077】
上述したように、支持体として剥離性支持体を用いた場合は、物理的な作用によって被めっき層と支持体との界面で剥離を生じさせ、容易に剥離性支持体を分離除去することができる。
【0078】
[被めっき層除去工程]
被めっき層除去工程S110は、上記支持体除去工程S108で得られた被めっき層と銅箔との積層体から、被めっき層を除去する工程である。より具体的には、図3(D)に示すように、図3(C)に記載の被めっき層付き銅箔18から被めっき層14を除去して、銅箔10を得る。
【0079】
被めっき層を除去する方法は特に制限されず、被めっき層を構成する材料の種類に応じて適宜最適な方法が選択される。
例えば、被めっき層のみが溶解する溶液(例えば、アルカリ水溶液)と被めっき層付き銅箔とを接触させ、被めっき層を溶解除去する方法、被めっき層付き銅箔中から被めっき層を物理的に剥離する方法、被めっき層にプラズマ処理やオゾン処理などの酸化処理を施して除去する方法などが挙げられる。
【0080】
なお、上記被めっき層を溶解除去する方法においては、必要に応じて、超音波処理などを併用してもよい。超音波処理を併用することにより、被めっき層の除去効率が向上する。また、被めっき層を溶解する溶液を、一定の圧力をかけて被めっき層に噴きつけてもよい。
【0081】
なお、支持体除去工程S108と被めっき層除去工程S110は、上述したように別々に実施してもよいし、同時に実施してもよい。
つまり、上記めっき工程S106で得られた積層体から、支持体および被めっき層を除去して銅箔を得る工程を実施してもよい。この場合、例えば、支持体と被めっき層とが溶解する溶液と積層体とを接触させ、支持体と被めっき層を溶解除去する方法、積層体中から被めっき層付き支持体を物理的に剥離する方法、支持体および被めっき層にプラズマ処理やオゾン処理などの酸化処理を施して除去する方法などが挙げられる。
【0082】
上記工程S102〜S110を経て得られる銅箔の被めっき層と接していた表面は、上述したように所定の表面粗さRzとフラクタル次元とを満たす。
【0083】
[銅箔を有する積層体(銅箔含有積層体)]
上述した銅箔の所定の表面粗さRzおよびフラクタル次元を示す表面を基材表面と接するように、銅箔と基材と貼り合わせることにより、基材と銅箔とを有する積層体が得られる。
該積層体中において、銅箔表面の微細な凹凸構造を有する面上に基材が隣接するため、基材と銅箔との密着性が優れる。
まず、以下では使用される基材について詳述し、その後積層体を得る手順について詳述する。
【0084】
(基材)
銅箔が貼り付けられる基材の種類は特に制限されず、公知の基材を使用することができる。例えば、樹脂基材、ガラス基材、セラミック基材、紙基材などが挙げられる。なかでも、銅箔との密着性に優れ、プリント配線基板への応用の点から、樹脂基材を使用することが好ましい。
【0085】
樹脂基材を構成する材料の種類は特に制限されないが、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、イソシアネート樹脂などが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリ乳酸、シクロオレフィンコポリマー(COP)、液晶ポリマー(LCP)などが挙げられる。
【0086】
なお、樹脂基材には、ガラス織布(ガラスクロス)、ガラス不織布、アラミド織布、アラミド不織布などのフィラーが含まれていてもよい。
【0087】
また、基材の形状は特に制限されないが、密着性がより良好である点から、平板状であることが好ましい。
【0088】
(積層体の製造方法)
基材に銅箔を貼り付ける方法は特に制限されず、公知の方法を使用することができる。例えば、銅箔と基材(特に、樹脂基材)とを張り合わせて積層し、プレスなど圧力をかけて圧着することにより所望の積層体を得ることができる。
【0089】
圧着の際には、必要に応じて、加熱処理を合わせて実施してもよい。
加熱圧着する際の温度は使用される基材の材料によって適宜最適な条件が選択されるが、汎用的に用いられるエポキシ系の樹脂基材を使用する場合は、銅箔の密着性がより優れ、樹脂基材の流動性、熱硬化性、熱分解性などの点で、150〜200℃が好ましく、165〜185℃がより好ましい。また、加熱圧着を行う時間は、銅箔の密着性がより優れ、生産性がより優れる点で、0.5〜4時間が好ましく、1〜2時間がより好ましい。
【0090】
なお、積層体を製造する際には、平板状の基材の片面のみに銅箔を貼り付けても、両面に貼り付けてもよい。
【0091】
(用途)
得られた積層体は、種々の用途に使用することができる。例えば、半導体パッケージ、マザーボード、FPC、COF、TAB、アンテナなどの種々の用途に適用することができる。
【0092】
[エッチング工程]
必要に応じて、上記基材と銅箔とを含む積層体中の銅箔をパターン状にエッチングすることで、パターン状の銅箔を表面に備える積層体を製造することができる。
このエッチング工程について以下に詳述する。
【0093】
エッチング工程は、積層体中の銅箔をパターン状にエッチングする工程である。即ち、本工程では、形成された銅箔の不要部分をエッチングで取り除くことで、所望の銅箔パターンを形成することができる。
この銅箔パターンの形成には、如何なる手法も使用することができ、具体的には一般的に知られているサブトラクティブ法、セミアディティブ法が用いられる。
【0094】
サブトラクティブ法とは、形成された銅箔上にドライフィルムレジスト層を設けパターン露光、現像により銅箔パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジストパターンをマスクとしてエッチング液で銅箔を除去し、銅箔パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジストとしては如何なる材料も使用でき、ネガ型、ポジ型、液状、フィルム状のものが使用できる。また、エッチング方法としては、プリント配線基板の製造時に使用されている方法が何れも使用可能であり、湿式エッチング、ドライエッチング等が使用可能であり、任意に選択すればよい。作業の操作上、湿式エッチングが装置などの簡便性の点で好ましい。エッチング液として、例えば、塩化第二銅、塩化第二鉄等の水溶液を使用することができる。
【0095】
また、セミアディティブ法とは、銅箔上にドライフィルムレジスト層を設け、パターン露光、現像により非銅箔パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジストパターンをマスクとして電気めっきを行い、ドライフィルムレジストパターンを除去した後にクイックエッチングを実施し、銅箔をパターン状に除去することで、銅箔パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジスト、エッチング液等はサブトラクティブ法と同様な材料が使用できる。また、電気めっき手法としては上記記載の手法が使用できる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例により、本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、実施例で使用されるポリマーの合成方法について詳述する。
【0097】
(合成例1:ポリマーAの合成)
1000mlの三口フラスコに、N−メチルピロリドン(35g)を入れ、窒素気流下、75℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート(東京化成製)(6.60g)、2−シアノエチルアクリレート(28.4g)、およびV−601(和光純薬製)0.65gを含むN−メチルピロリドン(35g)溶液を、2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、反応溶液を80℃まで加熱し、更に3時間撹拌した。その後、室温まで、反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、ジターシャリーブチルハイドロキノン(0.29g)、ジブチルチンジラウレート(0.29g)、カレンズAOI(昭和電工(株)製)(18.56g)、およびN−メチルピロリドン(19g)を加え、55℃、6時間反応を行った。その後、反応液にメタノール(3.6g)を加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、ポリマーA(25g)を得た。
【0098】
(構造の同定)
ポリマーAを重DMSOに溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。シアノ基含有ユニットに相当するピークが4.3−4.05ppm(2H分)、2.9−2.8ppm(2H分)、2.5−1.3ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニットに相当するピークが7.3−7.2ppm(1H分)、6.4−6.3ppm(1H分)、6.2−6.1ppm(1H分)、6.0−5.9ppm(1H分)、4.3−4.05ppm(6H分)、3.3−3.2ppm(2H分)、2.5−1.3ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:シアノ基含有ユニット=22:78(mol%)であることが分かった。
【0099】
(分子量の測定)
ポリマーAを、THFに溶解させ、東ソー製高速GPC(HLC−8220GPC)を用いて分子量の測定を行った。その結果、23.75分にピークが現れ、ポリスチレン換算でMw=5300(Mw/Mn=1.54)であることが分かった。
なお、以下のポリマーAの化学式中の数値は、各ユニットのモル%を表す。
【0100】
【化2】

【0101】
<実施例1>
[被めっき層形成工程]
ポリマーAを10重量%含むアセトニトリル溶液(被めっき層形成層組成物A)をスピンコート法にて支持体(会社名:PANAC、商品名:TP05、水との接触角:95°)上に塗布(条件:被めっき層の乾燥後膜厚が0.5μmになるように塗布)し、80℃で10分乾燥させた後、UV露光機(三永電機製作所社製、型番:UVF-502S、ランプ:UXM-501MD)を用い、1000mJの露光エネルギーで、露光を行った。
露光後の支持体を、1質量%NaHCO3水溶液中に10分間浸漬し、続いて、蒸留水にて洗浄し、支持体Aを得た。なお、得られた被めっき層の露出表面の表面粗さRzは、0.01μmであった。
【0102】
[触媒付与工程]
0.5質量%酢酸パラジウム水溶液を用意し、これをめっき触媒液とした。該めっき触媒液(液温:室温)に、支持体Aを5分間浸漬した後、純水で洗浄した。
【0103】
[めっき工程]
次に、支持体Aに対して、無電解銅めっきを行った。無電解銅めっきはスルカップPGT(上村工業製)を使用した下記組成の無電解銅めっき浴を用い、浴温度30℃にて15分間支持体Aを浸漬させ、めっき析出厚みが0.5μmとなるように銅箔を形成した。
無電解銅めっき液の調液順序および原料は以下の通りである。
蒸留水 約60容量%
PGT−A 9.0容量%
PGT−B 6.0容量%
PGT−C 3.5容量%
ホルマリン液* 2.3容量%
最後に、全量が100容量%となるように蒸留水にて液面調整した。
*ここで用いたホルマリンは、和光純薬のホルムアルデヒド液(特級)である。
【0104】
次に、得られた銅箔付き支持体Aを1質量%硫酸水溶液に15秒間浸漬し、銅箔上の酸化皮膜を除去した。
次に、上記で得られた銅箔を給電層として、以下の組成の電解銅めっき浴を用いて銅厚が12μmとなるように電解銅めっき(2.5A/dm2:20分間)を施し、銅箔を有する積層体Aを得た。
(電解銅めっき浴の組成)
・水 1000重量部
・硫酸銅5水和物 110重量部
・98%硫酸 270重量部
・35%塩酸 0.2重量部
・メルテックス製、カパーグリーム ST−901M 30重量部
【0105】
[支持体除去工程]
次に、得られた積層体A中の支持体を手で剥離して、被めっき層と銅箔とを有する被めっき層付き銅箔Aを得た。
【0106】
[被めっき層除去工程]
さらに、被めっき層付き銅箔A中の被めっき層に対して、4質量%NaOH水溶液を0.2MPaのスプレー圧で噴き付けて、被めっき層を除去し、銅箔を得た。
【0107】
[銅箔含有積層体の製造]
次に、得られた銅箔の被めっき層と接触していた面がプリプレグ(日立化成、GEA−67N、0.2mm)と接触するように、銅箔をプリプレグの両面に敷き、真空プレスにて接合し、両面銅張り板を得た。
【0108】
<実施例2>
上記[被めっき層除去工程]にて実施した4%NaOH水溶液によるスプレー除去の代わりに、プラズマ処理(ニッシン、マイクロ波ダウンフロー方式)を行い被めっき層の除去を実施した以外は、実施例1と同様の手順に従って、両面銅張り板を得た。
【0109】
<実施例3>
上記[被めっき層形成工程]にて、同様のUV露光機にて500mJの露光エネルギーで、露光を行った以外は、実施例1と同様の手順に従って、両面銅張り板を得た。
【0110】
<実施例4>
上記[触媒付与工程]にて、0.2質量%酢酸パラジウム水溶液を用意し、これをめっき触媒液とし、該めっき触媒液(液温:室温)に支持体Aを2分間浸漬した後、純水で洗浄した以外は、実施例1と同様の手順に従って、両面銅張り板を得た。
【0111】
<比較例1>
ロー・プロファイル電解銅箔(福田金属製、品名SV、Rz=1.840μm、銅厚12μm)を用いて、実施例1で実施した[銅箔含有積層体の製造]と同様の手順に従って、両面銅張り板を得た。
【0112】
<比較例2>
上記[めっき工程]における電解銅めっきの条件を8A/dm2、7分間とし、めっきの露出表面(被めっき層がある側とは反対側の表面)を意図的に粗化して、Rz=0.135μmのめっき表面を得た(銅厚は12μm)以外は、実施例1と同様の手順によって、銅箔を得た。次に、意図的に粗面化した銅箔の露出表面をプリプレグとの密着面として、実施例1で実施した[銅箔含有積層体の製造]と同様の手順に従って、両面銅張り板を得た。
【0113】
<比較例3>
上記[めっき工程]における電解銅めっきの条件を13A/dm2、4.5分間とし、めっきの露出表面(被めっき層がある側とは反対側の表面)を意図的に粗化して、Rz=0.310μmのめっき表面を得た(銅厚は12μm)以外は、実施例1と同様の手順によって、銅箔を得た。次に、意図的に粗面化した銅箔の露出表面をプリプレグとの密着面として、実施例1で実施した[銅箔含有積層体の製造]と同様の手順に従って、両面銅張り板を得た。
【0114】
<比較例4>
実施例1の[被めっき層形成工程]および[触媒付与工程]の後に、再び実施例1の[被めっき層形成工程]を実施し、触媒分布を持たせた構成で被めっき層を形成した。すなわち、下層に位置する被めっき層には触媒が担持されているが、上層の被めっき層には触媒は存在しないという状態を形成した。なお、得られた被めっき層の露出表面の表面粗さRzは、0.014μmであった。
その後、[めっき工程]での無電解銅めっき浴への浸漬時間を30分から80分に変更して、めっき析出厚みが0.5μmとなるように銅箔を形成した以外は、実施例1と同様の手順に従って、両面銅張り板を得た。
【0115】
<各種評価>
(剥離強度の測定)
JIS C 6481:1996に基づいて、実施例1〜4、および、比較例1〜4で得られた両面銅張り板の銅箔に対して90℃剥離強度試験を行った。結果を表1にまとめて示す。
【0116】
(表面粗さRzおよびRaの測定)
実施例1〜4の[被めっき層除去工程]にて得られた銅箔の被めっき層と接した表面、および、比較例1〜4の銅箔のプリプレグと密着させる側の表面の表面粗さRzおよびRaを、JIS B 0601:2001に基づいて測定した。なお、測定に際しては、表面形状測定装置(会社名:ULVAC、装置名:Dektak150)を使用した。結果を表1にまとめて示す。
【0117】
(フラクタル次元の測定)
実施例1〜4の[被めっき層除去工程]にて得られた銅箔、および、比較例1〜4で使用した銅箔に対して、Dual−Beam FIB装置(FEI製、Dual Beam Nova200 Nanolab、加速電圧30kV)を用いてサンプル加工し、断面出しを行った。次に、その断面を集束イオンビーム装置(セイコーインスツルメンツ社製、SMI9200)にて観察して、画像データとして得た。その後、画像処理によって、銅箔のプリプレグと密着させる側の粗化表面部(線分)を抽出し、この断面写真を基に、5か所の測定領域(1μm×1μm)にて輪郭線のフラクタル次元をそれぞれ算出し、それらを算術平均して表1に記載のフラクタル次元(平均フラクタル次元)を求めた。なお、ボックスカウント法における、ボックスサイズ(正方形のボックスの一辺の大きさ)は1nm〜10nmであった。
【0118】
(パターン配線形成(L/S=25μm/25μm))
実施例1〜4、および、比較例1〜4で得られた両面銅張り板の銅箔上に、DFR(日立化成、RY3310)をラミネートした。次に、ドライレジストフィルムがラミネートされた基板に、JPCA−ET01に定める櫛型配線(JPCA−BU01−2007準拠)が形成できるガラスマスクを密着させ、レジストを中心波長405nmの露光機にて70mJの光エネルギーを照射した。露光後の基板に、1%Na2CO3水溶液を0.2MPaのスプレー圧で噴きつけ、現像を行なった。その後、基板の水洗・乾燥を行い、銅箔上に、サブトラクティブ法用のレジストパターンを形成した。
レジストパターンを形成した基板を、FeCl3/HCl水溶液(エッチング液)に温度40℃で浸漬することによりエッチングを行い、レジストパターンの非形成領域に存在する銅箔を除去した。その後、3%NaOH水溶液を0.2MPaのスプレー圧で基板上に噴き付けることで、レジストパターンを膨潤剥離し、10%硫酸水溶液で中和処理を行い、水洗することで櫛型配線(パターン状銅箔)を得た。得られた配線は、L/S=25μm/25μmであった。
その後、線幅のバラツキを見積もるために、任意の箇所50点の配線幅(ボトム値)を測定して、標準偏差を算出した。結果を表1にまとめて示す。
なお、比較例2〜4に関しては、銅箔のプリプレグに対する密着性が低いため、上記エッチング時に銅箔が剥離してしまい、配線を形成することができなかった。
【0119】
【表1】

【0120】
表1に示すように、本実施形態の銅箔(実施例1〜4)においては、表面粗さRzが非常に小さいにも関わらず、優れた剥離強度を示すことが確認された。また、配線幅のバラツキも小さく、高精細な配線パターンを形成できることも確認された。
一方、比較例1に示すように、従来公知の銅箔においては、表面粗さRzが大きいため、剥離強度には優れているが、配線幅のバラツキが大きく、高精細な配線パターンを得ることができなかった。
また、比較例2〜4に示すように、フラクタル次元が所定の範囲外の場合、銅箔の剥離強度が劣っており、配線を形成することができなかった。
【符号の説明】
【0121】
10 銅箔
12 支持体
14 被めっき層
16 積層体
18 被めっき層付き銅箔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に貼り付けるために用いられる貼り付け用銅箔であって、
前記基材に貼り付ける側の表面の表面粗さ(Rz)が0.500μm以下であり、
正方形のボックスの一辺の大きさを1nm〜10nmに設定したボックスカウント法を適用して算出した、前記銅箔の断面における前記基材に貼り付ける側の表面の輪郭線のフラクタル次元が1.020〜1.400である、貼り付け用銅箔。
【請求項2】
基材と、前記基材上に貼り付けられた請求項1に記載の貼り付け用銅箔とを有する積層体。
【請求項3】
請求項2に記載の積層体を含有するプリント配線基板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−77702(P2013−77702A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216780(P2011−216780)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】