説明

貼り合わされた板の剥離方法および剥離装置

【課題】2枚の板を貼り合わせてなるワークから自動でかつ破損させることなく精度よく両板を互いに剥離する。
【解決手段】両面粘着シート4を介してガラス板1と表示パネル3を貼り合わせてなるワークWを一対の上保持部材5と下部保持部材6とにより両面から吸着保持し、保持面の一端側に設けた支軸8の回りに、例えば下部保持部材6を揺動下降させ、当該下部保持部材6の吸着面によってガラス板1の全面を平坦に保持したまま他方の表示パネル3から剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートまたは硬化性樹脂層を介して貼り合わされた2枚の板からなるワークから再利用可能に当該板を剥離する板の剥離方法および剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイは、衝撃が加わった場合に、その衝撃が表示パネルに伝わらないように、表示パネルと、当該表示パネルを保護するアクリル板やガラス板などの透明板を含む保護パネルとは、一定の間隙を介して設けられている。
【0003】
例えば、液晶ディスプレイにおいて、液晶パネルと保護パネルの隙間に空気層を無くすために、アクリル系粘着剤からなる透明粘着シートを介して液晶パネルと保護用の透明板を貼り合わせる技術が知られている(特許文献1)。また、同様の目的で、特定の可塑度を有するポリオルガノシロキサン組成物からなる粘着剤(シリコーン系粘着剤)をシート状に加工したものを使用することも提案されている(特許文献2)。
【0004】
しかしながら、上記のように、液晶ディスプレイにおける液晶パネルに透明粘着シートを介して保護透明板を貼り合わせる場合、液晶パネルと保護透明板を、位置ズレがなく、しかも、液晶パネル及び保護透明板と両面粘着シートとの間にディスプレイの視認性を低下させる光の反射損失の原因となる気泡を存在させることなく貼り合わせることは容易でない。つまり、このような不具合を完全に無くすことはできない。また、貼り合わせの際に肉眼で気泡を巻き込むことなく貼り合わすことができても、粘着シートに内包されていた微小な気泡成分が経時的に粘着シートと表示パネルまたは保護透明板との境界に移行し、光の反射損失の原因となる気泡になり、ディスプレイの視認性を低下させてしまう場合もある。
【0005】
また、シリコーン系やアクリル系の透明粘着シートは保護透明板や液晶パネルに一旦接着すると剥離が困難である。したがって、上記のような不具合が生じると、高価な表示パネル及び保護透明板を廃棄しなければならないといった問題が生じている。
【0006】
また、携帯電話機、スマートフォン、タブレット型パソコン、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)、携帯ゲーム機、カーナビゲーションシステム等の可搬型表示機能付機器は、近年、目覚ましいスピードで薄型化が進んでおり、それに搭載される液晶ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイの厚みもより薄くすることが要求されている。このため、例えば、可搬型表示機能付機器に組み込まれるフラットパネルディスプレイの表示パネルはより一層薄く設計され、また、表示パネルの保護用透明板も、例えば、ガラス板の場合は1.0mmよりもさらに薄い厚みの板が検討されている。
【0007】
しかし、このような薄厚の表示パネルとその保護用透明板を粘着シートを介して貼り合わせた場合は、表示パネル及び保護用透明板は柔軟性に乏しいため、これらに破損や割れを生じさせることなく再剥離することができない。また、可搬型表示機能付機器に搭載するフラットパネルディスプレイにおいては、その表示パネルにタッチパネルが付設されることがある。タッチパネルの操作板である透明電極付きガラス板に透明両面粘着シートを介して保護用透明板を貼り合わせることも検討されている。この場合も、透明電極付きガラス板と保護用透明板をこれらに破損や割れを生じさせることなく再利用可能に剥離することができないという問題が生じている。
【0008】
また、熱や紫外線で硬化するアクリル系、ウレタンアクリレート系、シリコーン系等の高透明性の硬化性樹脂層を表示パネルと保護用透明板の間に充填形成して両者間を接着一体化することも提案されている。しかしながら、このような熱や紫外線で硬化するアクリル系、ウレタンアクリレート系、シリコーン系の硬化性樹脂層も表示パネルと保護用透明板に対して比較的高い接着力で固着する。そのため、表示パネルと薄い厚みの保護用透明板の貼り合わせのやり直しが必要になったときに、破損や割れを生じさせることなく保護用透明板を再利用可能に剥離することは困難である。
【0009】
上記の問題を解決するために、剪断力の弱い粘着シートまたは硬化性樹脂を利用してガラス板と保護用透明板を貼り合わせている。すなわち、当該粘着シートなどに剪断力を与えることにより、ガラス板と保護用透明板を容易に剥離できるようにしている。具体的には、ガラス板と保護用透明板とが一体となったワークを両面粘着テープで接着固定する。上側の板の一端を作業者が手で押さえ込んで軸にし、他端を握って水平方向に揺動させることにより、粘着シートに剪断応力を与えながら保護用透明板をガラス板から剥離している(特許文献3)。
【0010】
【特許文献1】特開2002−348546号公報
【特許文献2】特開2004−212521号公報
【特許文献3】特開2010−121134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の剥離方法では、粘着シートおよび硬化性樹脂層に剪断応力の弱いものしか利用することができず、その用途が限定されるといった不都合が生じている。
【0012】
さらに、数値的にみれば歩留まりが高く生産性が向上しているように見えても、可搬型表示機能付機器の急速な市場の拡大にともなう増産によって、ガラス板などの貼り合わせ時に生じる不良品の発生頻度が増加傾向にあり、不良品の修正作業について、従来の作業者の手作業による修正では間に合わなくなっている。さらに、単価の高い部品を廃棄することなく再利用することが要望されている。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、粘着シートまたは硬化性樹脂層の種類に関わりなく貼り合わされた2枚の板を破損や割れを生じさせることなく自動で精度よく剥離することができる、板の剥離方法および剥離装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、粘着シートまたは硬化性樹脂層を介して少なくとも2枚の板を貼り合わされてなるワークから当該板を剥離する剥離方法であって、
一対の保持部材で前記ワークの両面を保持する保持過程と、
前記ワークの保持面の一端側に設けた支軸の回りに一方の保持部材を揺動させ、当該保持部材により板の全面を平坦に保持したまま他方の板から剥離する剥離過程と、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
(作用・効果) 上記方法によれば、保持部材によって板の全面が保持されているので、当該保持部材の揺動に伴って他方の板から剥離されてゆく側の板が反り返って破損することがない。また、保持部材の揺動の支点となる支軸が、板の端部側に位置しているので、支点にかかる荷重が板の中央寄りかかって当該板を破断させることがない。なお、ここで、支軸の位置を規定する板の一端側とは、板の一端に限定されるものではなく、当該一端から外側の位置をも含む。外側の位置とは、保持部材の支点となる端部が、ワークに接触して不要な荷重がかからない位置に設定する。
【0016】
なお、上述方法において、保持部材の少なくとも一方に加熱器を備え、当該保持部材を介して粘着シートまたは硬化性樹脂層を加熱しながら一方の板を他方の板から剥離することが好ましい。
【0017】
この方法によれば、粘着シートおよび硬化性樹脂が加熱によって軟化されるので、非加熱状態のとき付与する応力よりも小さい応力で板同士を剥離することができる。
【0018】
なお、ワークを構成する板および粘着シートなどは、例えば板が光学板であり、粘着シートは透明な粘着シートがあげられる。
【0019】
さらに、2枚の光学板は、例えば一方がフラットパネルディスプレイの表示パネルであり、他方が表示パネルを保護する保護用透明板である組合せ、或いは、一方がフラットパネルディスプレイの表示パネルであり、他方がタッチパネルの透明電極付きガラス板である複数の組合せがあげられる。
【0020】
また、この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
【0021】
すなわち、粘着シートまたは硬化性樹脂層を介して少なくとも2枚の板を貼り合わされてなるワークから当該板を剥離する剥離装置であって、
前記ワークの両面を保持する一対の保持部材で保持するとともに、当該ワークの保持面の一端側に支軸を備え、当該支軸回りに少なくとも一方の保持部材を揺動可能にする保持機構と、
前記保持部材を揺動させる駆動機構と、
を備えたことを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、上記方法を好適に実施することができる。
【0023】
なお、当該構成において、保持部材の少なくとも一方に加熱器を備えることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、粘着シートおよび硬化性樹脂が加熱器によって加熱されて軟化するので、非加熱状態のとき粘着シートなどに付与される応力よりも小さい応力で板同士を剥離することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の板の剥離方法および剥離装置によれば、粘着シートまたは硬化性樹脂層を介して2枚の板が貼り合わされたワークについて、粘着シートや硬化性樹脂層の種類に関わらず、両板を分離するときに板を破断させることなく剥離することができる。したがって、分離した後の板を再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ワークの縦断面図である。
【図2】剥離装置の概略構成を示す正面図である。
【図3】剥離装置の動作を説明する正面図である。
【図4】剥離装置の動作を説明する正面図である。
【図5】変形例装置の概略構成を示す正面図である。
【図6】変形例装置の概略構成を示す正面図である。
【図7】変形例装置の概略構成を示す平面図である。
【図8】変形例装置の概略構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。なお、本実施例では、図1に示すように、ワークWとして、タッチパネルの操作が可能な透明電極付きガラス板1と偏光板2を備えた表示パネル3を、透明の両面粘着シート4を介して貼り合わせたフラットパネルディスプレイを例にとって説明する。ここで、両面粘着シート4は、基材4Bの両面に異なる粘着剤層4A、4Cが塗布されている。ガラス板1と貼り合わせる側の粘着剤層4Aが、他方の粘着剤層4Cよりも粘着力の弱いものが利用されている。したがって、本実施例では、粘着力の小さい側の粘着剤層4Aとガラス板1との接着界面から剥離するようにしている。なお、上記例においては、両面粘着シート4は基材4Bを有するものとして説明しているが、本発明の実施において、粘着シートにおける基材は必須ではなく、粘着剤層のみで構成された粘着シートであってもよい。
【0028】
図2に剥離装置の正面図が示されている。
【0029】
剥離装置は、上下一対の上部保持部材5および下部保持部材6と、下部保持部材6を揺動させる駆動機構7とから構成されている。以下、各構成について詳述する。
【0030】
上部保持部材5は、装置フレームに水平固定されている。また、上部保持部材5は、真空源と連通接続されており、その裏面側でワークWを表示パネル3側から吸着保持するように構成されている。当該吸着面は、吸着溝または孔の形成された金属製またはセラミックなどの多孔質部材で構成される。また、表面に通気性を有する発泡スポンジのような弾性体で被覆してもよい。これら吸着面は、保持するワークWに応じて適宜に設定変更される。
【0031】
下部保持部材6は、一端側を、水平な支軸8を通して軸支され、他端側をその裏面に装着されたフランジ継手9を介してエアーシリンダ10のロッド11の先端が枢動可能に連結支持されている。下部保持部材6は、表面側でワークWを吸着保持するよう構成されている。当該吸着面は、上部保持部材5と同様に、吸着溝または孔の形成された金属製またはセラミックなどの多孔質部材で構成される。また、表面に通気性を有する発泡スポンジのような弾性体で被覆してもよい。吸着面は、保持するワークWに応じて適宜に設定変更される。
【0032】
また、吸着面には、吸着するワークWの位置合わせをするためのピンなどの位置決め部材12がワークWのサイズに応じて装着位置が変更可能に設けられている。
【0033】
ここで、下部保持部材6が揺動するときに、支軸8は支点となる。それ故に支軸8は、ワークの一端に設け、好ましくは、図2に示すように、一端から外れた位置に設けることが好ましい。すなわち、下部保持部材6の揺動時に荷重のかかる支点をワークWの保持面から外すことにより、剥離されるガラス板1の破損を回避することができる。
【0034】
エアーシリンダ10は、基端側を基台13に装着されたフランジ継手14を介して枢動可能に設けられている。
【0035】
なお、上部保持部材5および下部保持部材6は、本発明の一対の保持部材に相当し、支軸8、エアーシリンダ10は、本発明の駆動機構を構成している。
【0036】
次に、上記実施例装置を用いて表示パネル3からガラス板1を剥離する動作について説明する。
【0037】
図3に示すように、エアーシリンダ10のロッド11を縮めさせて下部保持部材6を揺動下降させる。下部保持部材6が、所定角度をもって開放されると下降を停止し、予め装着された位置決め部材12内にワークWをセットする。このとき、ガラス板1の面を下にして下部保持部材6の吸着面にセットする。
【0038】
セットが完了すると、下部保持部材6によりワークWを吸着しながらエアーシリンダ10のロッド11を延出し、図2示す下部保持部材6を水平姿勢へと戻す。水平位置に下部保持部材6が達すると、エアーシリンダ10の延出作動を停止するとともに、上部保持部材5によってワークWの表示パネル3側を吸着保持する。
【0039】
次に、エアーシリンダ10のロッド11を予め決めた速度で縮めながら、下部保持部材6を揺動下降させる。下部保持部材6の揺動下降に伴って、図4に示すように、下部保持部材6に平面保持されたままガラス板1が他端から徐々に剥離されてゆく。
【0040】
なお、下部保持部材6を揺動下降させるときの速度や力は、使用する粘着シートまたは硬化性樹脂層の種類に応じて、実験やシミュレーションを行いガラス板などが破損しない最適な条件が予め決定されている。また、下部保持部材6を揺動下降させるときの速度や力は、揺動下降動作中に、一定若しくは可変とすることができる。
【0041】
ガラス板1の他端までの剥離が完了すると下部保持部材6の揺動下降を停止するとともに、ガラス板1の吸着を解除し、当該ガラス板1を取り出す。
【0042】
以上で、表示パネル3からガラス板1を剥離する際の一連の処理が完了し、以後、同じ処理が繰り返される。
【0043】
なお、上記実施例における「粘着シート」とは、種々の分野の装置や機器において、金属板、プラスチック板などの貼り合わせに使用されているアクリル系、シリコーン系、ウレタン系などの公知の感圧性粘着剤によるシート状物である。厚みは特に限定されないが、概ね10〜1000μmである。
【0044】
また、本実施例において、「透明な粘着シート(透明粘着シート)」とは、透明性が高い粘着剤組成物からなる両面粘着シートであり、特に2枚の光学板の貼り合わせに使用されるものである。2枚の光学板間の接着強度及びフラットパネルディスプレイの薄型化の点から、通常、20〜800μm程度の厚みで使用される。
【0045】
当該透明粘着シートとしては、光学用途に使用される公知の透明粘着シートを挙げることができ、特に好ましいものとして、アクリル系、シリコーン系などの透明粘着シートや、本願の出願人が特開2008-266473号公報にて提案したポリオキシアルキレン系重合体を主成分とする透明粘着シートが挙げられる。
【0046】
[アクリル系透明粘着シート]
アクリル系透明粘着シートとしては、具体的には、アルキル(メタ)アクリレートのモノマーユニットを主骨格とするアクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤からなる粘着シートが挙げられる(ここで、「(メタ)アクリレート」は「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味する)。
【0047】
アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の平均炭素数は1〜12程度のものであり、アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独または組み合わせて使用される。中でもアルキル基の炭素数1〜9のアルキル(メタ)アクリレートが好ましいものである。
【0048】
アクリル系ポリマー中には、接着性や耐熱性の改善を目的に、1種類以上の各種モノマーが共重合により導入される。そのような共重合モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐酸基含有モノマーなどが挙げられる。また、窒素含有ビニルモノマーが挙げられ、例えば、マレイミド、N−シクロへキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド;N−アクリロイルモルホリン;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミドやN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル、3−(3−ピリニジル)プロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド、N−アクリロイルモルホリンなどのスクシンイミド系モノマーなどが挙げられる。
【0049】
さらに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマーなども挙げられる。
【0050】
これらの中でも、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を用いる場合に、イソシアネート基との反応性が良好である点から、ヒドロキシル基含有モノマーが好適である。また、液晶パネルや保護透明板への接着性、接着耐久性の点から、アクリル酸などのカルボキシル基含有モノマーが好適であり、特に好ましくはアクリル酸である。
【0051】
アクリル系ポリマー中の共重合モノマーの割合は、重量比率において、0.1〜10重量%程度であるのが好ましい。
【0052】
アクリル系ポリマーの平均分子量は特に制限されないが、重量平均分子量は、一般に30万〜250万程度である。
【0053】
アクリル系ポリマーは各種公知の手法により製造され、たとえば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法等のラジカル重合法を適宜選択できる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを使用できる。反応温度は通常50〜80℃程度、反応時間は1〜8時間とされる。また、アクリル系ポリマーは、光重合開始剤を使用した紫外線重合でも調整することができる。
【0054】
アクリル系粘着剤にはベースポリマーに加えて架橋剤を含有することができ、架橋剤により、光学板との密着性や耐久性を向上でき、また高温での信頼性や粘着剤自体の形状の保持を図ることができる。架橋剤としては、イソシアネート系、エポキシ系、過酸化物系、金属キレート系、オキサゾリン系、多官能アクリレート系などの公知の架橋剤を適宜に使用可能である。これら架橋剤は1種を、または2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤の使用量は、特に限定するものではないが、アクリル系ポリマー100重量部に対して、10重量部以下、好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.02〜3重量部である。
【0055】
前記粘着剤には、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等の各種の添加剤を適宜に使用することもできる。
【0056】
粘着シートの製造方法は、特に制限されず、例えば、ベースポリマーの主骨格用モノマーと共重合用モノマーにラジカル重合開始剤、架橋剤等を配合してなる光重合性組成物を、離型シートの剥離処理面上に所定厚みの塗膜となるように塗布し、その上に離型シートの剥離処理面を貼り合わせ、これに紫外線を照射して重合反応を進行させることにより粘着シートを形成する方法が挙げられる。
【0057】
本発明における粘着シート(透明粘着シート)は、基材を有した構成でもよく、基材を有さない粘着剤層のみからなる構成(基材レス粘着シート)でもよい。粘着シートが基材を有する場合、その材質等は特に限定されず、プラスチックフィルムや金属箔、紙、織布、不織布等が使用できる。なかでも、透明粘着シートとして基材を有した構成とする場合には、基材自体も透明性を有する必要があり、この点からは透明プラスチックフィルム、具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリオレフィン系フィルム等が使用できる。
【0058】
[シリコーン系透明粘着シート]
シリコーン系透明粘着シートとしては、特に限定されず、例えば、ポリオルガノシロキサン組成物等による公知のシリコーン系透明粘着シートが挙げられる。
【0059】
[ポリオキシアルキレン系透明粘着シート]
ポリオキシアルキレン系透明粘着シートとしては、A:1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体、B:1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を含有する化合物、およびC:ヒドロシリル化触媒の成分を含む組成物を硬化せしめた硬化物よりなる透明粘着シートが挙げられる。
【0060】
[光学板]
光学板とは、光学的特性(例えば、偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性、視認性、透明性など)を有する部材をいう。光学板としては、光学的特性を有する部材であれば、特に限定されないが、例えば、表示装置(画像表示装置)や入力装置等の光学製品を構成する部材又はこれらの機器(光学製品)に用いられる部材が挙げられ、例えば、偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、透明導電フィルム(ITOフィルムなど)、透明電極付きガラス板、意匠フィルム、装飾フィルム、保護用透明板(表面保護板)、プリズム、レンズ、カラーフィルター、透明基板や、さらにはこれらが積層されている部材(これらを総称して「機能性フィルム」と称する場合がある)が挙げられる。なお、上記の「板」及び「フィルム」は、それぞれ板状、フィルム状、シート状等の形態を含むものとし、たとえば、「偏光フィルム」は、「偏光板」、「偏光シート」も含むものとする。また、「機能性フィルム」は「機能性板」、「機能性シート」を含むものとする。
【0061】
上記表示装置(フラットパネルディスプレイの表示パネル)としては、例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどが挙げられる。また、上記入力装置としては、タッチパネルなどが挙げられる。
【0062】
上記の光学板としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ガラス、金属薄膜などからなる部材(例えば、上記のシート状やフィルム状、板状の部材など)などが挙げられる。なお、本発明における「光学板」には、表示装置や入力装置の視認性を保ちながら加飾や保護の役割を担う部材(意匠フィルム、装飾フィルムや表面保護板、意匠性のあるウィンドウなど)も含むものとする。
【0063】
本発明の剥離方法や剥離装置が適用されるワークとしては、「板/粘着シートまたは硬化性樹脂層/板」の構成以外にも、「板/粘着シートまたは硬化性樹脂層/板/粘着シートまたは硬化性樹脂層/板」の如く、3つ以上の板が粘着シートまたは硬化性樹脂層を介して積層された構成体でも良い。より具体的には、「保護用透明板/粘着シートまたは硬化性樹脂層/透明電極付きガラス板/粘着シートまたは硬化性樹脂層/フラットパネルディスプレイの表示パネル」からなるワークへも適用できる。
【0064】
上記実施例装置によれば、下部保持部材6によってガラス板1の全面が保持されているので、下部保持部材6の揺動に伴って他方の表示パネル3から当該ガラス板1が剥離されてゆくとき、反り返って破損することがない。また、下部保持部材6の揺動の支点となる支軸8が、ガラス板1の端部の外側に位置しているので、支点にかかる荷重がガラス板1の中央寄りかかって当該ガラス板1を破断させることがない。
【0065】
なお、本発明は以下のような形態で実施することも可能である。
【0066】
(1)上記実施例装置において、駆動機構7はエアーシリンダ10に限定されるもではなく、下部保持部材6を揺動下降できるものであればよい。例えば、図5に示すように、トルクモータ15の正逆転駆動によって下部保持部材6を揺動させてもよい。つまり、トルクモータ15に装着したギア16から支軸8に装着したとギア17に回転駆動力を伝達するように構成する。
【0067】
また、別の変形例として、図6および図7に示すように、下部保持部材6の先端側を上部保持部材5よりも長く拡張する。当該拡張部分の先端側の両端と1対のフレーム18とにわたって伸縮可能なアクチュエータ19を連結し、当該アクチュエータ19の出退動作によって下部保持部材6を押し下げながら揺動させるように構成してもよい。
【0068】
この構成において、一方のアクチュエータ19を僅かに延出し、ワークWのコーナに剥離の起点を形成し、その後に両アクチュエータ19の延出距離を調整しながら、当該コーナから他端側に向けてガラス板1を徐々に剥離してもよい。
【0069】
(2)上記実施例装置では、下部保持部材6に代えて、上部保持部材5を揺動させる構成であってもよい。また、上部保持部材5または下部保持部材6のいずれかにワークWをセットするときに、セットする側の吸着面が水平となるように構成してもよい。例えば、図8に示すように、上部保持部材5が180°揺動開放するよう構成する。
【0070】
(3)上記実施例装置では、下部保持部材6のみを揺動させる構成であったが、上部保持部材5も同時に揺動させる構成であってもよい。
【0071】
(4)上記実施例装置では、上部保持部材5および下部保持部材6のいずれか一方に加熱器を埋設し、粘着シート4を加熱してもよい。すなわち、粘着シート4を加熱することにより、粘着剤が軟化して剥離しやすくなる。なお、加熱温度は、タッチパネルを構成する電極や表示パネル3が破損しない温度に設定される。
【0072】
(5)上記実施例装置では、3枚以上の板を重ね合わせてなるワークから各板を剥離することもできる。この場合、板同士の間に介在させる粘着剤層の接着強度を調整し、接着力の弱い部分から順番に剥離すればよい。
【符号の説明】
【0073】
1 … ガラス板
3 … 表示パネル
4 … 粘着シート
5 … 上部保持部材
6 … 下部保持部材
7 … 駆動機構
8 … 支軸
10 … エアーシリンダ
W … ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着シートまたは硬化性樹脂層を介して少なくとも2枚の板を貼り合わされてなるワークから当該板を剥離する剥離方法であって、
一対の保持部材で前記ワークの両面を保持する保持過程と、
前記ワークの保持面の一端側に設けた支軸の回りに一方の保持部材を揺動させ、当該保持部材により板の全面を平坦に保持したまま他方の板から剥離する剥離過程と、
を備えたことを特徴とする板の剥離方法。
【請求項2】
請求項1に記載の板の剥離方法において、
前記保持部材の少なくとも一方に加熱器を備え、当該保持部材を介して前記粘着シートまたは硬化性樹脂層を加熱しながら一方の板を他方の板から剥離する
ことを特徴とする板の剥離方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の板の剥離方法において、
2枚の前記板は光学板であり、前記粘着シートは透明な粘着シートである
ことを特徴とする板の剥離方法。
【請求項4】
請求項3に記載の板の剥離方法において、
2枚の前記光学板の一方はフラットパネルディスプレイの表示パネルであり、他方は前記表示パネルを保護する保護用透明板である
ことを特徴とする板の剥離方法。
【請求項5】
請求項3に記載の板の剥離方法において、
2枚の前記光学板の一方はフラットパネルディスプレイの表示パネルであり、他方はタッチパネルの透明電極付きガラス板である
ことを特徴とする板の剥離方法。
【請求項6】
粘着シートまたは硬化性樹脂層を介して2枚の板を貼り合わされてなるワークから当該板を剥離する剥離装置であって、
前記ワークの両面を保持する一対の保持部材で保持するとともに、当該ワークの保持面の一端側に支軸を備え、当該支軸回りに少なくとも一方の保持部材を揺動可能にする保持機構と、
前記保持部材を揺動させる駆動機構と、
を備えたことを特徴とする剥離装置。
【請求項7】
請求項6に記載の剥離装置において、
前記保持部材の少なくとも一方に加熱器を備えた
ことを特徴とする剥離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−23526(P2013−23526A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157821(P2011−157821)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】