説明

貼り合わせ装置及びそれを用いた貼り合わせ方法

【課題】表面に微細な構造部分を有する部材同士を気泡が入らないように、位置を合わせて貼り合わせる装置を提供する。
【解決手段】(1)平滑な表面αと該表面α上に微細な構造部分aとを有する第1部材を保持する第1ホルダと、
(2)前記第1ホルダに対向し、平滑な表面βと該表面β上に微細な構造部分bとを有し、更に可撓性を有する第2部材を保持する第2ホルダと、
(3)前記第1部材と前記第2部材の位置関係を検出する位置検出機構と
(4)前記第1部材と前記第2部材の位置を調整する位置合わせ機構と
(5)前記第2部材と前記第2ホルダの間に気体を導入する気体導入口とを有し、
前記第2部材と前記第2ホルダ間の一部に前記気体導入口から気体を導入して、前記第2部材を前記第1部材方向に膨らませることにより、両部材を貼り合わせる機能を有する貼り合わせ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に微細な構造部分を有する部材と、やはり表面に微細な構造部分を有する、可撓性のある板状又はフィルム状の部材とを、前記構造部分形成面を貼り合わせ面として、互いに位置を合わせて貼り合わせる貼り合わせ装置、及び上記部材を互いに位置を合わせて貼り合わせる貼り合わせ方法に関する。本発明は、マイクロ流体デバイスの製造方法に好ましく適用できる。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体デバイスは、部材中に微細な毛細管状の流路を有し、該流路中で反応や分析を行うデバイスである。その代表的な製造方法は、溝を有する板状又はフィルム状の部材の溝形成面にカバーとなる板状又はフィルム状の部材を貼り合わせることにより、該溝と該カバーとで毛細管状の流路を形成する製造方法である。この場合には、前記二つの部材の精密な位置あわせは不要であるため、ガラス製マイクロ流体デバイスの製造においては、単に重ねて圧迫し、熱融着する方法が広く用いられている。また、前記二つの部材の少なくとも一方が粘着性である場合、例えば粘着性を有するポリマー製部材である場合や、接着剤を塗布した部材である場合には、両部材を端から順に接触するように重ねることで、間に気泡を残さずに積層することが出来る。
【0003】
それに対し、該マイクロ流体デバイスに、例えば立体交差する流路、バルブ、ポンプ機構、濾過機構、内壁に多孔質体が固定された流路、内壁にプローブが固定された流路などの、さらに複雑な構造を形成する場合には、前記カバーとなる部材の表面にも、溝、孔、プローブ固定部分、多孔質層形成部分などの微小な構造部分を形成し、これらの位置を合わせて貼り合わせる必要がある。そのため、例えば部材がガラス製である場合には、上側ホルダと下側ホルダにそれぞれ部材を固定し、両部材を接触又は非接触の状態で、光学的に位置を検出して位置合わせして、非接触の場合には該二つの部材間のギャップを縮めて行き、密着させた後に加熱融着させる装置と方法が知られている。
【0004】
しかしながら、上記表面に微小な構造を有する部材または表面に微小な構造を有する部材の少なくとも一方が、半硬化状態の樹脂のように粘着性を有する場合や、接着剤を流動しない程度に極薄く、例えば0.5〜5μmの厚さに塗布したものである場合には、接触した状態では相互位置をずらすことは出来ないし、非接触の状態で位置を合わせ、両部材間のギャップを平行状態を保って縮めていって接触させる方法では、貼り合わせ面に気泡が入りがちであり、微細な毛細管状の流路をうまく形成できなかった。また、該部材の端から順に接触するように重ねる方法では精密な位置合わせが出来なかった。
【0005】
一方、特許文献1には、第1の基板と第2の基板のそれぞれ対向する表面の端部に沿って環状に接着剤が塗布され、上記接着剤と上記両基板とにより形成される、所定の厚さの隙間に液晶材料が充填された液晶表示装置の製造装置として、真空容器と、第1の基板の下表面全面を真空吸着で保持する第1の吸着機構と、第2の基板の上表面全面を真空吸着で保持する第2の吸着機構と、上記真空容器内の気圧の減圧時に、真空容器内にて、該第2の吸着機構及び第2の基板を鉛直方向に下降させて、第2の基板の下表面を上記液晶材料又は上記接着剤と接触させる、第1の加圧力を備える第1の加圧機構と、同じく上記真空容器内の気圧の減圧時に、真空容器内にて、第2の吸着機構及び第2の基板をさらに鉛直方向に下降させ、第2の基板を接着剤を介して第1の基板に貼り合わせ所定の間隔になるまで加圧する、第1の加圧力より大きい第2の加圧力を備える第2の加圧機構と、から構成される液晶表示装置製造装置が開示されている。
【0006】
しかしながら、真空容器を用いると、接着面に気泡の入る恐れはなくなるが、貼り合わせ装置が大がかりになる上、貼り合わせ工程のスループットが低下しがちであった。
【0007】
また、特許文献2には、やはり液晶表示装置の製造装置として、下固定治具の上に下圧着治具を配置し、この下圧着治具の上に前記第1の基板と第2の基板とを積層した貼り合わせ空セルと、中圧着治具とを交互に積み重ね、最上部に位置する貼り合わせ空セルの上に上圧着治具と上固定治具とを順次配置し、更に個々の圧着治具にシートを設け、このシートにヒーターを設けるとともに、複数個のほぼ同一形状のシートと複数個のほぼ同一形状の貼り合わせ空セルとを交互に積み重ね、上記シート内に流体を流して該シートの膨張により複数個の液晶表示用貼り合わせ空セルを同時に圧着するようにした圧着装置が開示されている。
【0008】
しかしながら、この場合には、あらかじめ前記第1の基板と第2の基板に相当する部材とを積層して、貼り合わせ空セルを作製した上で、圧着するものである。このように、貼り合わせ部分が前記両基板の周囲部だけであるように幅が小さく、しかも、接着剤を流動可能な厚さに塗布した場合には、圧着することで気泡を追い出すことが可能であろうが、マイクロ流体デバイスのように、微細な流路となる欠損部を持つ部材を貼り合わせる場合には、接着剤を流動する程度に塗布すると、前記欠損部が接着剤により埋められてしまい、微細な流路が閉塞されてしまう。即ちこの製造装置と製造方法では、マイクロ流体デバイスの部材の微細な欠損部を除いた全面を、気泡を残さずに貼り合わせることは出来なかった。
【0009】
【特許文献1】特開2001−051284号公報
【特許文献2】特許第3439787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、表面に微細な構造部分を有する部材、及び、やはり表面に微細な構造部分を有する、可撓性のある板状又はフィルム状の部材の少なくとも一方が粘着性である場合のように、両部材を接触させてからずらして位置を合わせることが出来ない場合でも、真空容器を使用することなく、部材間に気泡が入らないように、位置を合わせて貼り合わせる貼り合わせ装置、及び貼り合わせ方法を提供することにある。特に、上記のような部材を貼り合わせる工程を含むマイクロ流体デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、表面に微細な構造部分を有する部材である第1部材と、やはり表面に微細な構造部分を有する、可撓性のある板状又はフィルム状の部材である第2部材をわずかな間隔を開けて保持し、相対位置を合わせた後、該第2部材の、貼り合わせ面の裏側に気体を導入して前記第2部材を前記第1部材方向に膨らませ、中央部から周辺部へ、又は一方の端から他方の端へと順に前記第1部材と接触させて両部材を貼り合わせることにより、上記課題を解決出来ることを見いだし、本発明に到達した。
【0012】
即ち本発明は、平滑な表面αと該平滑な表面α上に微細な構造部分aとを有する第1部材と、平滑な表面βと該平滑な表面β上に微細な構造部分bとを有し、更に可撓性を有する板状又はフィルム状の第2部材とを、
前記表面αと前記表面βを貼り合わせ面として、前記微細な構造部分aと前記微細な構造部分bの位置関係を調整して貼り合わせるための貼り合わせ装置であって、
(1)前記第1部材を保持する機構を有する第1ホルダと、
(2)前記第1ホルダに対向し、前記第2部材を保持する機構を有する第2ホルダと、
(3)前記第1ホルダに保持された前記第1部材と前記第2ホルダに保持された前記第2部材の、前記貼り合わせ面に平行な面内に於ける位置関係を検出する位置検出機構と
(4)前記第1ホルダに保持された前記第1部材と前記第2ホルダに保持された前記第2部材の、前記貼り合わせ面に平行な面内における位置を調整する位置合わせ機構と
(5)前記第2部材を前記第2ホルダに保持した状態で、前記第2部材と前記第2ホルダの間に気体を導入する気体導入口
とを有し、
前記表面αと前記表面βとが対向するように、前記第1部材と前記第2部材とをそれぞれ前記第1ホルダ及び前記第2ホルダに保持させ、
前記第2部材と前記第2ホルダ間の一部に前記気体導入口から気体を導入して、前記第2部材を前記第1部材方向に膨らませたときには、前記第2部材の一部が前記第1部材と接触し、その後、前記接触した部分から周辺部へと順に接触することにより、前記第2部材が前記第1部材に貼り合わされることを特徴とする貼り合わせ装置を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、(1)上記の貼り合わせ装置を使用し、
(2)前記第1部材を、前記表面αが前記第2ホルダと対向するように前記第1ホルダに保持させ、
(3)前記第2部材を、前記表面βが前記表面αと対向するように前記第2ホルダに保持させ、
(4)前記位置検出機構により、前記第1部材と前記第2部材の、前記貼り合わせ面に平行な面内に於ける位置関係を検出し、
(5)前記位置合わせ機構により、前記第1部材と前記第2部材を前記貼り合わせ面に平行な面内において位置を合わせ、
(6)前記気体導入口から気体を前記第2部材と前記第2ホルダ間の一部に導入して、前記第2部材を前記第1部材方向に膨らませて、前記第2部材の一部を前記第1部材と接触させ、
その後、前記接触した部分から周辺部へと順に接触させることにより、前記第2部材を前記第1部材に貼り合わせることを特徴とする貼り合わせ方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、表面に微細な構造部分を有する部材、及び、やはり表面に微細な構造部分を有する可撓性のある板状又はフィルム状の部材、の少なくとも一方が粘着性である場合のように、両部材を接触させてからずらして相互の位置を合わせることが出来ない場合でも、真空容器を使用することなく、部材間に気泡が入らないように、位置を合わせて貼り合わせる貼り合わせ装置、及び、位置を合わせて貼り合わせる貼り合わせ方法を提供できる。本発明はまた、表面に微細な凹状構造を有する部材を位置を合わせて貼り合わせる工程を含むマイクロ流体デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を、図1〜図8に示された態様により説明する。
[第1ホルダ]
図1に第1ホルダ1の平面図とA部断面図を示す。本態様の第1ホルダ1は、第1部材11を保持(固定)する機構(第1部材保持機構3と称する)として真空溝式の真空チャック3を有する。真空溝の幅は任意であるが、第1部材11が柔軟なフィルム状である場合にも対応出来るように、該真空溝の幅を0.03〜0.5mm、より好ましくは0.05〜0.3mm程度に細くすることが好ましく、また、真空溝の代わりに、直径0.03〜1mm程度、より好ましくは直径0.05〜0.5mmの微小な多数の孔が穿たれた細孔式の真空チャック(図示略)や、金属焼結体などの、平均孔径0.1〜100μmの多孔質体を用いた多孔質体式の真空チャック(図示略)とすることも好ましい。第1部材保持機構3が第1部材を保持する方式は任意であり、上記の他、例えばクランプやネジなどによる機械的固定、粘着力や静電気力や磁力による固定、ワックスなどの液体の冷却凝固による固定などであっても良い。真空チャック3は、図4に示されたように、切り替えバルブ21を経て、真空24と大気25に接続して使用される。第1部材保持機構3として、ワックスなどの液体の冷却凝固による固定方式を用いた場合には、固定の解除のための加熱機構を設けることが出来る。磁力によるものの場合には、第1部材11を強磁性体で形成された板やフィルム状などの一時的な支持体に粘着力などで貼り付けて使用する。粘着力や静電気力や磁力による保持方式を用いた場合には、それらの保持力の強さを、第1部材11と第2部材12の粘着力や最終的な固着力の強さより弱く設定しておけば、該両部材の貼り付け後、剥離により固定を解除できる。
【0016】
第1ホルダ1は、図4、図5に示された例のように第1部材11が板状又はフィルム状である場合は、第1ホルダ1の第1部材固定面は平面とし、水平に配置されることが好ましい。一般的に、第1ホルダ1は前記第1部材11を、第2部材12と貼り合わせする面(貼り合わせ面と称する)を外向きにして保持できるものであれば、第1部材11の形状に応じた任意の形状であって良い。
図1に示された第1ホルダ1は、中心部に孔4が開けられており、該孔4を通して、例えば図6、図7に示された様な第1部材11の位置決めマーク107、108と第2部材12の位置決めマーク117、118を光学的に観察し、位置決めできるようになっている。該孔4は、より小さな複数の孔であっても良いし、第1ホルダ1をガラスや透明プラスチックなどの光学的に透明な素材で作製した場合には、孔4を設けなくても良い。
【0017】
[第2ホルダ]
〔第1態様〕
図2に第2ホルダ2の第1態様の平面図とA部断面図を示す。第2ホルダ2の本第1態様に於いては、第2部材12を保持する機構(第2部材保持機構5と称する)は環状になっている。第2部材保持機構5は、実質的に環状であれば良く、一部途切れた環状であっても良いし、多数の点が環状に並んだ形状であっても良い。
図2に示したように、第2部材保持機構5は吸着面に多孔質体6を用いた多孔質体式の真空チャック5が好ましいが、固定する方式は任意であり、細孔式や真空溝式の真空チャックの他、例えば電磁気や圧力気体による着脱可能なクランプなどの機械的固定、粘着力による固定、或いはワックスなどの液体の冷却凝固による固定などであっても良い。真空チャック5は、図4に示されたように、切り替えバルブ22を経て、真空24と大気25に接続して使用される。
【0018】
第2部材保持機構5の環の内径は任意であり、製造するマイクロ流体デバイスの外寸から好適な寸法にすればよいが、例えば、第2部材の一辺の長さの80%以下が好ましく、70%以下が更に好ましく、60%以下が最も好ましい。該内径の下限は任意であるが、貼り合わせ面に残存する気泡を減じる点から、第2部材の最大径の10%以上が好ましく、20%以上が更に好ましく、30%以上が最も好ましい。第2部材保持機構5の環の外径は任意であり、第2部材の長さと同じにしてよいし、或いは、該外径を第2部材より大きく作製しておき、第2部材で覆われない部分にダミーの板状又はフィルム状部材を置いて、空気の漏洩をなくす方法も好ましい。
【0019】
本第2ホルダ2には、前記環状の第2部材保持機構5の環の内側に、気体導入口7が設けられている。該気体導入口7の形式や形状は任意であり、1個の孔の他、前記真空チャックと同様の構造を例示できるが、図2に示したように、多孔質体8を通して気体を導入する多孔質体式の気体導入口7が好ましい。
気体導入口7は真空チャックを兼ねるものが好ましい。真空チャックを兼ねる気体導入口7は、例えば図4に示されたように、切り替えバルブ23を経て、真空24と加圧気体26に接続する方法で実施できる。
【0020】
本第1態様の第2ホルダ2を用いると、第2部材保持機構5で第2部材12を固定(保持)しつつ気体導入口7から気体を第2部材12の貼り合わせ面の裏側(第2部材12と第2ホルダ2間の一部;以下、単に「裏側」と称する場合がある)に導入すると、第2部材12は中央部が球状に膨らむように変形する(図5(b))。
次いで、第2部材保持機構5(真空チャック5)の固定を解除すると、第2部材は第2ホルダから離れ、第1部材に貼り合わされる(図5(c))。
【0021】
気体導入口7を実質的に環状の、真空チャックと兼ねる構造にして、その環の内側にさらに別の気体導入口(図示略)を設けてもよく、これを更に多段にしてもよい。これらの場合は、最内側の気体導入口から外側の気体導入口へと順次気体を導入することにより、第1部材11と第2部材12の貼り合わせ面への気泡の残留をより軽減することができる。逆に、真空チャック式の第2部材保持機構5が気体導入口の機能を有しても良い。例えば、図4において切り替えバルブ22が大気25の代わりに加圧気体26に接続することで実施できる。その場合には、本気体導入口からは最後に気体を導入する。
【0022】
気体導入機構への気体導入と、第2部材保持機構5の固定の解除を好適なタイミングで実施するための、遅延タイマーやシーケンサーによる制御機構を設けることが、再現性が増し好ましい。第2部材保持機構5として、ワックスなどの液体の冷却凝固による固定方式を用いた場合には、固定の解除は加熱により実施できる。第2部材保持機構5として粘着力や静電気力による固定方式を用いた場合には、粘着力や静電気力を好適な保持力に設定しておけば、気体導入機構7からの気体導入により、第2部材12は自然に第2ホルダ2から剥がれる。
【0023】
〔第2態様〕
図3に第2ホルダの第2態様の平面図とA部断面図を示す。本第2態様では、第2部材保持機構は第2ホルダの両端に設けられており、気体導入口7がその間に配置される。第2部材保持機構5、5’は必ずしも平行である必要はない。第2部材保持機構5、5’として、図3では多孔質体式の真空チャック5、5’が好ましく用いられているが、前記第1の態様で述べたようなその他の方式を用いてもよい。
【0024】
気体導入口7の構造は上記第1の態様と同様に任意であるが、多孔質体8を通して気体を第2部材の裏側に導入する機構が好ましく、真空チャックを兼ねる構造にすることが好ましい。真空チャックを兼ねる気体導入口7の構造は、前記第1態様と同様である。二つの第2部材保持機構5、5’の間の距離は任意であり、製造するマイクロ流体デバイスの外寸から好適な寸法にすればよいが、例えば、第2部材12の図中左右の長さの80%以下が好ましく、70%以下が更に好ましく、60%以下が最も好ましい。該距離の下限は任意であるが、貼り合わせ面に残存する気泡を減じる点から、第2部材12の図中左右の長さの10%以上が好ましく、20%以上が更に好ましく、30%以上が最も好ましい。二つの第2部材保持機構5、5‘の外側の距離は任意であり、第2部材の長さと同じにしてよいし、或いは、該外寸を第2部材より大きく作製しておき、第2部材で覆われない部分にダミーの板状又はフィルム状部材を置いて、空気の漏洩をなくす方法も好ましい。本第2態様の第2ホルダ2を用いると、二つの第2部材保持機構5、5’で第2部材12を固定しつつ気体導入口7から気体を噴出させると、第2部材12は中央部が円筒状に膨らむように変形する。
【0025】
この気体導入口7を図の左右方向に複数個、好ましくは3個並べて設けてもよい。中央部の気体導入口から外側の気体導入口へと順次気体を導入することにより、第1部材11と第2部材12の貼り合わせ面への気泡の残留をより減じることができる。この場合、複数の気体導入口7は必ずしも平行である必要はない。逆に、真空チャック式の第2部材保持機構5、5’が気体導入口の機能を有しても良い。その場合には、本気体導入口からは最後に気体を導入する。
【0026】
〔第三態様〕
図3に示した第2ホルダ2は、第三態様の第2ホルダ2としても使用できる。この場合は、第2ホルダ2の左端の多孔質式真空チャック5が第2部材保持機構として用いられ、右側2個の多孔質式真空チャック7、5’が気体導入口を兼ねる。さらに多くの気体導入口を図の左右方向に並べて設けても良い。これにより、第1部材11と第2部材12の貼り合わせ面への気泡の残留をより減じることが容易になる。気体導入に当たっては、右端の気体導入口5’(真空チャック)から左方へと順次気体を噴出させる。この場合も、複数の気体導入口7は必ずしも平行である必要はない。また、第2部材保持機構5(左端の真空チャック5)が気体導入口の機能を有していても良い。その場合には、本気体導入口からは最後に気体を導入する。
【0027】
[位置検出機構]
本発明の貼り合わせ装置は、前記第1部材11と前記第2部材12の、貼り合わせ面に平行な方向の位置関係を検出する位置検出機構14を有する。位置検出機構14は任意であるが、光学的検出が好ましく、第1ホルダ1を通して、例えば図6、図7に示したような、第1部材11と第2部材12の位置決めマーク107、108、117、118を観察する方式が好ましい。このような光学的な位置検出機構14は、第1部材11の貼り合わせ面に垂直な方向から観察する向きに設けることが、貼り合わせ精度が向上し、好ましい。
その他の位置検出機構14としては、例えば、部材の外周を突き当てる位置決めピンや、部材に穿たれた孔に差し込む位置決めピンのような機械的な位置検出と位置決めを同時に行う機構、電極の導通/非導通や電極間の静電容量を検出する電気的検出機構を例示できる。
【0028】
[位置合わせ機構]
本発明の貼り合わせ装置は、第1ホルダ1に固定された第1部材11の前記構造部分と、第2ホルダ2に固定された前記第2部材12の前記構造部分の位置を合わせる位置合わせ機構13を有する。位置合わせ機構13は、前記第1部材11と前記第2部材12の貼り合わせ面に平行な面内で相対的に移動させる位置合わせ機構13が好ましい。図4の例では、位置合わせ機構13として直交する3方向への移動および回転が可能なXYZθ移動ステージ13を使用しているが、一般には、前記第2ホルダ2を前記貼り合わせ面に平行な面内で、X軸方向(図4の紙面内左右方向とする)、Y軸方向(図4の紙面に対して垂直な方向とする)への平行移動、及び、好ましくはθ方向の回転(図4の紙面内上下方向にとったZ軸回りの回転とする)が可能な機構である。第1部材11と第2部材12の位置合わせ部分が1点である場合はθ方向の移動は不要である。これらの、X、Y、θ方向の移動機構は、第1ホルダ1と第2ホルダ2の両方に設けても良いし、どちらか一方に設けてもよいし、第1ホルダと第2ホルダで分担しても良い。
【0029】
位置検出機構14が、位置決めピンのように位置検出と同時に位置合わせも行う機構である場合には、位置合わせ機構13として、第1ホルダ1や第2ホルダ2を移動させる機構ではなく、第1部材11及び第2部材12を各ホルダに装着する際に、前記X、Y、θ方向に移動させて位置合わせする機構が設けられる。
【0030】
位置合わせ機構13は上記Z軸方向、即ち、第1ホルダ1と第2ホルダ2間の距離を変える方向に移動できる機構を有していることが好ましい。該Z方向移動機構(垂直移動機構と称する場合がある)を備えることにより、第1部材や第2部材に種々の異なる厚さの部材を使用しても、その間隔を好適な一定距離に調節することが出来る。第1部材や第2部材の間隔は、好ましくは2[mm]以下、更に好ましくは1.5[mm]以下、最も好ましくは1[mm]以下である。この範囲とすることにより、第2部材を変形させる際に、僅かな変形で第1部材と接触するためずれが少なくなる。また、下限は、互いに接触しなければ任意であるが、好ましくは0.3[mm]以上、更に好ましくは0.4[mm]以上、最も好ましくは0.5[mm]以上である。また、該垂直移動機構を備えることにより、気体導入により第2部材を変形させてその一部を第1部材と接触させた後、該垂直移動機構により第1部材と第2部材の距離を縮めてゆくことにより、位置合わせの誤差をより少なくできる。該垂直移動機構は、第1ホルダ1と第2ホルダ2のどちらに設けてもよいし、両方に設けても良い。
【0031】
位置検出機構と位置合わせ機構による位置合わせの精度(誤差)は、好ましくは0.1μm〜100μm、更に好ましくは0.2μm〜30μm、最も好ましくは0.3μm〜10μmである。かつ該誤差は、第1部材と第2部材に設けられた位置合わせすべき構造部分の寸法の1/10以下とすることが好ましく、1/30以下とすることがさらに好ましい。この範囲とすることで、位置検出機構と位置合わせ機構を簡単で安価な機構で実現でき、かつ、マイクロ流体デバイスなどの貼り合わせ形成物を十分な精度と再現性で得ることができる。
【0032】
[その他の機構]
本発明の貼り合わせ装置の姿勢は任意であり、例えば図4に例示された配置の上下逆であってもよいし、横向きであってもよい。本発明の貼り合わせ装置は、気体導入機構7への気体導入と、第2部材保持機構5の固定の解除を好適なタイミングで実施するための、遅延タイマーやシーケンサーによる制御機構を設けることが、再現性が増し好ましい。
また、本貼り合わせ装置は、第1部材11と第2部材12が半硬化のエネルギー線硬化性樹脂で形成されている場合には、貼り合わせ後完全に貼り合わせさせるためのエネルギー線照射を行うエネルギー線照射装置を有することも好ましい。この場合、第1ホルダ側にエネルギー線照射装置を設け、第1ホルダに貼り合わされた両部材が保持されている状態でエネルギー線照射を行えることが好ましい。
【0033】
[マイクロ流体デバイス]
本発明の貼り合わせ装置や貼り合わせ方法で貼り合わせる部材について、マイクロ流体デバイスの例で説明する。本発明により好ましく製造することの出来るマイクロ流体デバイスは、表面に設けられた微細な溝状の流路や、その内部に設けられた微細な空洞状の流路の中で反応や分析を行うデバイスである。マイクロ流体デバイスを使用することにより、反応や分析の迅速化、分析試料量の必要量の減少、省資源・省エネルギー、さらには廃棄物の減少が可能となる。このようなマイクロ流体デバイスを使用して、例えば濾過、抽出、反応などの試料の前処理部と、マイクロ・クロマトグラフィー、マイクロ電気泳動などの分離部と、蛍光や可視・紫外吸収などの検出部を一体化し、医療診断、生化学分析、化学分析の方面で微量の試料を分析するマイクロ・トータル・アナリシス・システム(μ−TAS)を構築する試みが行われている。また、前記微細な流路の内表面に触媒を固定し、反応装置(マイクロリアクター)としての応用も検討されている。
【0034】
本発明で作製するマイクロ流体デバイスは、内部に空洞状の流路を有するマイクロ流体デバイスであり、平滑な表面αと、その平滑な表面α上に微細な構造部分aを有する第1部材と、やはり平滑な表面βと、その平滑な表面β上に微細な構造部分bを有する、可撓性のある板状又はフィルム状の第2部材とが、表面αと表面βを貼り合わせ面として、微細な構造部分aと微細な構造部分bの位置関係を調整して互いに貼り合わせされた、マイクロ流体デバイスである。
【0035】
部材の表面の微細な構造部分a及びbとしては、表面のみに微細な構造部分がある場合と、部材内部の構造が表面まで達している場合とがあり、例えば、他方の部材と積層貼り合わせされることにより空洞状の流路となる溝や凹部、該部材に穿たれた孔、フィルム状部材の一部にU字型の長孔で囲まれて形成された、逆止弁の弁体となるフラップ、濾過膜、該部材の表面の一部に形成された多孔質層等の物理的構造部分や、該部材の表面の一部に固定されたプローブ、該部材の表面の一部に固定された、種々の物質を固定するためのアンカーとなる官能基等の化学的構造部分が上げられる。これらの微細な構造部分が前記第1部材と第2部材にそれぞれ形成される組み合わせは任意であるが、本発明に於いては、特に前記構造部分の一方が、前記の溝、凹部、または孔である場合に効果的であり好ましい。
【0036】
このような、位置合わせすべき対象となる微細な構造部分の寸法は任意であるが、その短辺(又は短径)方向の寸法は好ましくは1μm〜5mm、更に好ましくは3μm〜1mm、最も好ましくは5μm〜0.5mmである。この範囲とすることで、本発明の効果が最も発揮される。該微細な構造部分の長辺(又は長径)方向の寸法は任意であり、例えば、該構造が溝である場合の長さ方向の寸法は、マイクロ流体デバイスの最大寸法、例えば10cmであり得る。
【0037】
第1部材11と第2部材12に設ける位置決めマーク107、108、117、118は、専用のマークであっても良いし、位置合わせする構造部分そのものであってもよい。該位置決めマークの位置は、第2部材12の裏側に気体を導入したときに第2部材12が第1部材11と最初に接触する分部に近い部分とすることが、位置決め精度が高くなり、好ましい。また、2点で位置決めを行う場合であって、引き続き気体そ導入したときに第1部材11と第2部材12の接触面が広がってゆく際の接触/非接触の境界が直線状である場合には、該2つの位置決めマークは、該境界線に略平行な線上に設けることが、位置決め精度が高くなり、好ましい。位置決めが、位置決めピンによるものである場合には、位置決めマークは部材の外周となる。
【0038】
第1部材11は任意の形状の部材であるが、板状又はフィルム状であることが好ましい。第1部材11を両面が実質的に平行な板状又はフィルム状とすることにより、本第1部材11を通して光学的に位置合わせすることが容易になる。厚みや形状は任意である。材質も任意であるが、光学的に透明であることが、該第1部材11を通して、光学的に第2部材12の位置を検出できるため好ましい。
【0039】
第2部材12は可撓性のある板状又はフィルム状の部材である。第2部材12の可撓性の程度は、第2ホルダ2の第2部材装着面殿間に気体を導入して、第1部材側に膨らませる工程で破壊することが無ければ、硬度や厚みは任意である。そのためには、第2部材12は、円筒形に曲げたときに破壊しない半径が1[m]以下、好ましくは0.5[m]以下、さらに好ましくは0.2[m]以下のものである。該半径の下限は実質的にゼロ、即ち角を付けて折り曲げられるものであってよい。
【0040】
第2部材12の厚みは任意であり、例えば1μm〜1cmであり得るが、10μm〜1mmが好ましい。また、第2部材保持機構5により保持しつつ、裏側に気体を導入して、第1部材側に膨らませるためには、気体導入口から導入する気体の圧力が100kPa以下で、上記の半径に変形するような柔軟性を有する必要があるから、引張弾性率と厚みの積が、好ましくは3×10〜3×10「Pa・m]、さらに好ましくは3×10〜3×10「Pa・m]の範囲とする。
【0041】
第2部材の材質は任意であるが、上記の可撓性を示す素材として、有機重合体、金属、ガラス、石英などの結晶が好ましく、有機重合体が更に好ましい。勿論、本発明で製造するマイクロ流体デバイスは、前記第1部材11と第2部材12の他に、更に他の部材を積層貼り合わせすることによって作製されるものであっても良い。
【0042】
[製造方法]
本発明のマイクロ流体デバイスの製造方法は、
(1)本発明の貼り合わせ装置を使用し、
(2)前記第1部材を、前記表面αが前記第2ホルダと対向するように前記第1ホルダに保持させ、
(3)前記第2部材を、前記表面βが前記表面αと対向するように前記第2ホルダに保持させ、
(4)前記位置検出機構により、前記第1部材と前記第2部材の、前記貼り合わせ面に平行な面内に於ける位置関係を検出し、
(5)前記位置合わせ機構により、前記第1部材と前記第2部材を前記貼り合わせ面に平行な面内において位置を合わせ、
(6)前記気体導入口から気体を前記第2部材と前記第2ホルダ間の一部に導入して、前記第2部材を前記第1部材方向に膨らませて、前記第2部材の一部を前記第1部材と接触させ、
その後、前記接触した部分から周辺部へと順に接触させることにより、前記第2部材を前記第1部材に貼り合わせる。
【0043】
本発明の貼り合わせ装置のバリエーションにより、それぞれ好適な製造方法を採ることが出来るが、その方法は前記本発明の貼り合わせ装置の各項に於いて説明したとおりである。
本発明の製造方法により貼り合わされた第1部材11と第2部材12は粘着力で貼り合わされているが、さらに強固に貼り合わせさせる場合には、半硬化の樹脂の硬化を進めたり、接着剤を硬化させて貼り合わせさせる。
本発明の貼り合わせ方法は、マイクロ流体デバイスの製造方法に好ましく用いることができる。即ち、前記第1部材又は前記第2部材の少なくとも一方が、表面にまたは表面に達する微細な構造部分が、流路となる該部材の欠損部であるような、マイクロ流体デバイスを構成する部材であり、これらを貼り合わせて空洞状の流路を形成する工程を含むマイクロ流体デバイスの製造方法に好ましく適用できる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例の範囲に限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
本実施例では、本発明における第2ホルダ2の第1態様による貼り合わせ装置を用いたマイクロ流体デバイスの製造方法を示す。
【0046】
[貼り合わせ装置]
第1ホルダ1は、図1の形状とし、外寸が15cm×15cm×1.5cm、第1部材保持機構3である真空チャックの真空溝は直径8cm、孔4は直径6cmである。
第2ホルダ2は、図2の形状とし、外寸が15cm×15cm×1.5cm、第2部材保持機構5である真空チャック5の金属粉焼結型多孔質体の外径は10cm,内径は6cm、真空チャックを兼ねる気体導入口7の同多孔質体の直径は5cmである。
【0047】
図4に示したように、上記第1ホルダ1を真空チャック3面を下向きにして配置し、一方、第2ホルダ2を真空チャック5面を上向きにして、位置合わせ機構13と垂直移動機構を兼ねるXYZθ移動ステージ13に装着し、第1ホルダ1の上方に光学顕微鏡14を2基平行に設置した。また、図4に示したように、第1ホルダ1の真空チャック3は切り替えバルブ21を経て真空24と大気25に接続した。第2ホルダ2の真空チャック5は切り替えバルブ22を経て真空24と大気25に接続した。気体導入口7は、切り替えバルブ23を経て、真空24と加圧気体26に接続した。加圧気体26として、圧力200kPa(ゲージ圧)に調節した加圧空気を用いた。上記のように、本貼り合わせ装置の気体導入口7は、真空チャックの機能も有する。
【0048】
[マイクロ流体デバイスの製造方法]
〔紫外線照射方法〕
本実施例における紫外線照射の方法を以下に示す。
(紫外線ランプ1による照射)
3kWメタルハライドランプを光源とするアイグラフィックス株式会社製のUE031−353CHC型UV照射装置を用い、365nmにおける紫外線強度が40mW/cmの紫外線を特に指定が無い限り室温、窒素雰囲気中で照射した。
(紫外線ランプ2による照射)
250W高圧水銀ランプを光源とするウシオ電機株式会社製のマルチライト250Wシリーズ露光装置用光源ユニットを用い、365nmにおける紫外線強度が50mW/cmの紫外線を、特に指定が無い限り室温、空気雰囲気中で照射した。
【0049】
〔組成物(X)の調製〕
エネルギー線重合性化合物として平均分子量2000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー「ユニディックV−4263」(大日本インキ化学工業株式会社製)70部、ヘキサンジオールジアクリレート「ニューフロンティアHDDA」(第1工業製薬株式会社製)30部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュアー184」(チバガイギー社製)3部、及び重合遅延剤として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(関東化学株式会社製)0.5部を混合して、組成物(X)を調製した。
【0050】
〔第1部材の作製〕
10cm×10cm×1mmのアクリル樹脂製の基板101の上に、スピンコーターを用いて組成物(X)を塗工し、流路121、導入路105、流出路106と成す部分、及び2つの位置決めマーク107、108以外の部分にフォトマスクを通して紫外線ランプ2による紫外線照射を40秒照射して組成物(X)を半硬化させ、非照射部分の未硬化の該組成物(X)を50%エタノール水溶液で洗浄除去して、流路121を構成する溝104、導入路105となる溝105、流出路106となる溝106が形成された樹脂層102を形成した。該半硬化の樹脂層102は粘着性を有していた。この、基板101と樹脂層102からなる部材を第1部材11とした。
【0051】
〔第2部材の作製〕
片面がコロナ放電処理された厚さ30μmの2軸延伸ポリプロピレンシート(二村化学株式会社製)を一時的な支持体111として、この上に組成物(X)をスピンコーターを用いて塗工し、紫外線ランプ1により紫外線を40秒照射して、該組成物を半硬化させて樹脂層112とした。
さらに、上記樹脂層112の上に組成物(X)をスピンコーターを用いて塗工し、流路121、導入路115、流出路116と成す部分、及び2つの位置決めマーク117、118以外の部分にフォトマスクを通して紫外線ランプ2による紫外線照射を40秒照射して組成物(X)を半硬化させ、非照射部分の未硬化の該組成物(X)を50%エタノール水溶液で洗浄除去して、流路121を構成する溝114、導入路115となる溝115、第1流出路116となる溝116が形成された樹脂層113を形成した。該半硬化の樹脂層113は粘着性を有していた。一時的な支持体111、樹脂層112及び樹脂層113からなる部材を第2部材12とした。
【0052】
〔貼り合わせ〕
第5図(a)に示したように、上記第1部材11を溝形成面を下向きにして第1ホルダ1に真空チャック3で固定し、また上記第2部材12をの溝形成面を上向きにして第2ホルダ2に真空チャック5及び気体導入口7を兼ねる真空チャック7で固定し、XYZθ移動ステージ13をZ軸方向に移動させて、両部材間の距離を0.7mmに調節した。第1ホルダ1の上方から孔4を通して、二つの位置検出機構(光学顕微鏡)14で位置決めマーク107、108、117、118を観察しながら位置調節ステージのX、Y、θを調節して、位置決めマーク107と117、及び位置決めマーク108と118の位置をそれぞれ合わせた。
【0053】
切り替えバルブ23を操作して真空24を遮断し、加圧空気26を徐々に導入すると、真空チャック7が気体導入口7となって第2部材12の裏側に加圧空気が導入され、第5図(b)に示したように、第2部材12は球状に膨らみ中央部分が第1部材11に接触した。その後、外側の真空チャック5に接続された切り替えバルブ22を真空24から遮断し、大気25に接続すると、第2部材12は中心から周辺部方向へと徐々にd第2ホルダから離れて第1部材11に接触し、最終的には第5図(c)に示したように、第2部材12全体が第1部材11に貼り付き、第1部材11と第2部材12が粘着力によって貼り合わせされた。
【0054】
〔貼り合わせ、及びその他の工程〕
切り替えバルブ21により第1ホルダの真空チャック3の真空を解いて大気圧とし、第1部材11と第2部材12の貼り合わせ体を取り外し、紫外線照射装置1を用いて60秒間紫外線を照射してエネルギー線硬化性組成物(X)を完全硬化させ、第1部材11と第2部材12を完全に貼り合わせした。
その後、第2部材12から一時的な支持体111を剥離除去し、導入路105、流出路106、導入路115、流出路116の各端部において、基板101側からドリルでもって穴を開けて、導入口109、流出口110、導入口119、流出口120を形成し、図8に示されたようなマイクロ流体デバイスを得た。
得られたマイクロ流体デバイスは、第1部材11の溝104と第2部材12の溝114が完全に重なり合い、毛細管状の流路121が形成されていた。
【0055】
〔各部の寸法〕
得られたマイクロ流体デバイスは、外寸100mm×100mm、基板101の厚さが1mm、樹脂層102、樹脂層113、及び樹脂層112が全て厚さ100μmであり、流路121が幅200μm、深さ200μm、長さ60mmであり、導入路105、流出路106、導入路115、及び流出路116が全て幅200μm、深さ100μmであり、導入口109、流出口110、導入口119、及び流出口120の孔の直径が全て500μmであった。また、流路121を構成する溝104と溝114の位置合わせ誤差は、流路121の全範囲で5μm以下であった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の貼り合わせ装置の第1ホルダの(a)平面図および(b)A部断面図である。
【図2】本発明の貼り合わせ装置の第2ホルダの第1態様の(a)平面図および(b)A部断面図である。
【図3】本発明の貼り合わせ装置の第2ホルダの第2態様及び第3態様の(a)平面図および(b)A部断面図である。
【図4】本発明の貼り合わせ装置の配管接続模式図を含む正面図模式図である。
【図5】本発明の貼り合わせ方法を示す、(a)気体導入前、(b)気体導入中、及び(c)最終状態を示す正面図模式図である。
【図6】本発明で作製するマイクロ流体デバイスの第1部材の(a)平面図模式図および(b)側面図模式図である。
【図7】本発明で作製するマイクロ流体デバイスの第2部材の(a)平面図模式図および(b)側面図模式図である。
【図8】本発明で作製するマイクロ流体デバイスの(a)平面図模式図および(b)側面図模式図である。
【符号の説明】
【0057】
1 第1ホルダ
2 第2ホルダ
3 第1部材保持機構(真空チャック)
4 孔
5、5’ 第2部材保持機構(真空チャック)
6、8 多孔質体
7 気体導入口(兼真空チャック)
11 第1部材
12 第2部材
13 位置合わせ機構(XYZθ移動ステージ)
14 位置検出機構(光学顕微鏡)
21、22、23 切り替えバルブ
24 真空
25 大気
26 加圧気体(加圧空気)
101 基板
102、112、113 樹脂層
104、114 流路となる溝
105、115 流入路(溝)
106、116 流出路(溝)
107、108、117、118 位置決めマーク
111 一時的な支持体
109、119 流入口
110、120 抽出口
121 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平滑な表面αと該平滑な表面α上に微細な構造部分aとを有する第1部材と、平滑な表面βと該平滑な表面β上に微細な構造部分bとを有し、更に可撓性を有する板状又はフィルム状の第2部材とを、
前記表面αと前記表面βを貼り合わせ面として、前記微細な構造部分aと前記微細な構造部分bの位置関係を調整して貼り合わせるための貼り合わせ装置であって、
(1)前記第1部材を保持する機構を有する第1ホルダと、
(2)前記第1ホルダに対向し、前記第2部材を保持する機構を有する第2ホルダと、
(3)前記第1ホルダに保持された前記第1部材と前記第2ホルダに保持された前記第2部材の、前記貼り合わせ面に平行な面内に於ける位置関係を検出する位置検出機構と
(4)前記第1ホルダに保持された前記第1部材と前記第2ホルダに保持された前記第2部材の、前記貼り合わせ面に平行な面内における位置を調整する位置合わせ機構と
(5)前記第2部材を前記第2ホルダに保持した状態で、前記第2部材と前記第2ホルダの間に気体を導入する気体導入口
とを有し、
前記表面αと前記表面βとが対向するように、前記第1部材と前記第2部材とをそれぞれ前記第1ホルダ及び前記第2ホルダに保持させ、
前記第2部材と前記第2ホルダ間の一部に前記気体導入口から気体を導入して、前記第2部材を前記第1部材方向に膨らませたときには、前記第2部材の一部が前記第1部材と接触し、その後、前記接触した部分から周辺部へと順に接触することにより、前記第2部材が前記第1部材に貼り合わされることを特徴とする貼り合わせ装置。
【請求項2】
前記第2ホルダの、前記第2部材を保持する機構が、実質的に環状の真空チャックであり、
前記気体導入口が、前記環状の真空チャックの環の内側に設けられている請求項1に記載の貼り合わせ装置。
【請求項3】
前記気体導入口が、前記環状の真空チャックの環の内側に設けられた第2の真空チャックを兼ねるものである請求項1又は2に記載の貼り合わせ装置。
【請求項4】
更に、前記第1ホルダ及び/又は前記第2ホルダを、前記第1部材と前記第2部材の貼り合わせ面に対して垂直方向に移動することのできる垂直移動機構を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の貼り合わせ装置。
【請求項5】
更に、前記第1部材と前記第2部材を接触させた状態で、前記第1部材を通して光線を照射することのできる光線照射機構を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の貼り合わせ装置。
【請求項6】
(1)請求項1〜5のいずれか1項に記載の貼り合わせ装置を使用し、
(2)前記第1部材を、前記表面αが前記第2ホルダと対向するように前記第1ホルダに保持させ、
(3)前記第2部材を、前記表面βが前記表面αと対向するように前記第2ホルダに保持させ、
(4)前記位置検出機構により、前記第1部材と前記第2部材の、前記貼り合わせ面に平行な面内に於ける位置関係を検出し、
(5)前記位置合わせ機構により、前記第1部材と前記第2部材を前記貼り合わせ面に平行な面内において位置を合わせ、
(6)前記気体導入口から気体を前記第2部材と前記第2ホルダ間の一部に導入して、前記第2部材を前記第1部材方向に膨らませて、前記第2部材の一部を前記第1部材と接触させ、
その後、前記接触した部分から周辺部へと順に接触させることにより、前記第2部材を前記第1部材に貼り合わせることを特徴とする貼り合わせ方法。
【請求項7】
前記第1部材及び前記第2部材がマイクロ流体デバイスを構成する部材であり、前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方の表面に形成された微細な構造部分が、流路となる欠損部である請求項6に記載の貼り合わせ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−307643(P2007−307643A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137639(P2006−137639)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000173751)財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】