説明

貼付剤および貼付製剤の製造方法

【課題】本発明は、端部から粘着剤がはみ出したり、流れ出したりしにくい貼付剤および貼付製剤の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】支持体、粘着剤層、および剥離ライナーを備える貼付剤の製造方法であって、該貼付剤のある端部における貼付剤の断面形状を、該貼付剤の端部における粘着剤層の端部の少なくとも一つの部位が、該貼付剤の端部における支持体の端部から剥離ライナーへ垂下した線分よりも、貼付剤の中央部側に位置するものであり、かつ粘着剤層の端部が露出しており、粘着剤層の端部の少なくとも一つの該部位が、支持体の該端部または剥離ライナーの該端部よりも、貼付剤の中央部側に位置し、該貼付剤の該ある端部における貼付剤の断面形状は、粘着剤層の端部の断面形状が貼付剤の中央部側に湾曲した形状であり、かつ支持体の端部と、粘着剤層の端部が支持体に接する部位との間の距離が、0〜25μmとする、貼付剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付剤および貼付製剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、皮膚を保護するため、または薬物を皮膚面を通して生体内へ投与するためなどの目的で、種々の貼付剤および貼付製剤が開発されている。特に近年、剥離時に皮膚への物理的刺激を低減し、またはソフトな貼付感を持たせるために、粘着剤層に有機液状成分を含有させた柔らかい粘着剤層が開発されている。また、粘着剤層に多量の薬物を溶解、保持させるなどの目的で厚い粘着剤層が使用されることがある。
しかし、このような貼付剤は、粘着剤層が柔らかい、または厚いため、端部から粘着剤層がはみ出したり、貼付剤保管中にいわゆるコールドフロー現象により、粘着剤層が流れ出し、貼付剤の包装体の内面へ付着し、貼付剤を包装体から取り出しにくかったり、使用時に手がべとついて不快感を与えることがある。このような現象を回避する技術としていわゆるドライエッジが知られている。
特開平11−1432号公報(特許文献1)には、剥離ライナーを支持体および粘着剤層の端部から延出させた、いわゆるドライエッジを有する貼付剤が開示されている。このような貼付剤は、剥離ライナーに接する粘着剤層の端部から粘着剤層がはみ出したり、流れ出すことはある程度まで抑制される。しかし、このような貼付剤は、支持体に接する粘着剤層の端部から粘着剤層がはみ出したり、あるいは流れ出す恐れがあり、十分満足できるものではない。
【0003】
特開平06−063071号公報(特許文献2)には、輪郭形成され皮膚になじむ粘着剤層を有する傷用被包材(dressing)が開示されている。この傷用被包材の一例を図9に示す。このような傷用被包材は、端部が面一に切断されているため、粘着剤層が端部からはみ出したり、粘着剤層が流れ出し、包装体の内面へ付着する恐れがある。
【0004】
また、この文献の別の例を図10に示す。この例では、被包材端部が支持体にて覆われている。しかし、このような貼付剤は、支持体の端部が粘着剤層の端部を覆い、貼付剤の端部において支持体の端部と剥離ライナーの端部とが一致するので、使用時に剥離ライナーの端部に手指をかけてこれを剥離することが困難となる可能性がある。また、支持体の端部は、湾曲して粘着剤層の端部を覆う形状を可能とするために、その材料および形状、特に厚さなどの選択の自由度が低い。特に、粘着剤層が厚い場合には、支持体の端部を粘着剤層の端部まで回りこませてこれを覆うことは現実的には困難なようである。事実、この例における貼付剤の粘着剤の端部の厚さは、中央部のそれよりも薄くなるよう成形されている。
【特許文献1】特開平11−1432号公報
【特許文献2】特開平06−063071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に鑑み本発明は、端部から粘着剤がはみ出したり、流れ出したりしにくい貼付剤および貼付製剤の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、本発明の課題は、貼付剤の粘着剤層の端部における断面形状を所定形状とすることによって達成される。かくして、本発明は:
(1)
支持体、粘着剤層、および剥離ライナーを備える貼付剤の製造方法であって、
該貼付剤のある端部における貼付剤の断面形状を、該貼付剤の端部における粘着剤層の端部の少なくとも一つの部位が、該貼付剤の端部における支持体の端部から剥離ライナーへ垂下した線分よりも、貼付剤の中央部側に位置するものであり、かつ粘着剤層の端部が露出しており、
粘着剤層の端部の少なくとも一つの該部位が、支持体の該端部または剥離ライナーの該端部よりも、貼付剤の中央部側に位置し、
該貼付剤の該ある端部における貼付剤の断面形状は、粘着剤層の端部の断面形状が貼付剤の中央部側に湾曲した形状であり、かつ支持体の端部と、粘着剤層の端部が支持体に接する部位との間の距離が、0〜25μmとする、貼付剤の製造方法;
(2)
剥離ライナーの該端部は、支持体の該端部から剥離ライナーまで垂下した線分が剥離ライナーと交わる剥離ライナー上の位置よりも、貼付剤の端部側に位置する、(1)記載の貼付剤の製造方法;
(3)
粘着剤層が有機液状成分を含む、(1)または(2)記載の貼付剤の製造方法;
(4)
粘着剤層の厚さが10μm以上である、(1)ないし(3)いずれかに記載の貼付剤の製造方法;
(5)
(1)ないし(4)いずれかに記載の貼付剤の製造方法において、粘着剤層がさらに薬物を含む、貼付製剤の製造方法;
を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、粘着剤層の端部の少なくとも一つの部位が、貼付剤の中央部側の所定の位置に位置するので、貼付剤の端部から粘着剤層がはみ出したり、貼付剤保管中にいわゆるコールドフロー現象により、粘着剤層が流れ出すことが抑制される。それによって、粘着剤層が貼付剤の包装体の内面へ付着が抑制されるので、貼付剤を包装体から容易に取り出すことができ、使用時に手がべとついて不快感を与えることも少ない。
また、本発明の貼付剤の製造方法では、粘着剤層の端部が露出され、すなわち支持体の端部および剥離ライナーの端部により覆われていない。このことと、上述の粘着剤層のはみ出しおよび流れ出しが抑制されて使用時に手がべとつきにくいこととがあいまって、本発明の貼付剤は、使用時に剥離ライナーの端部に手指をかけてこれを剥離することがきわめて容易である。
以上のように、本発明によれば、スムーズに使用できる貼付剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施態様を示すが、それらの詳細な説明および特定の例は、例示の目的のみのためのものであることが意図されており、本発明の範囲を限定しない。以下の好ましい実施態様の説明は、単に例示的な性質のものであり、決して本発明、その応用、または用途を限定することが意図されるわけではない。
【0009】
図1Aは、本発明の一例の貼付剤10の斜視図であり、図1Bは、その断面図である。図1Aを参照すると、本発明の貼付剤10は、粘着剤層1、支持体2、および剥離ライナ3ーを備える。図1Bを参照すると、貼付剤10のある端部における貼付剤の断面形状は、該貼付剤10の端部における粘着剤層1の端部の少なくとも一つの部位4が、該貼付剤の端部における支持体2の端部から剥離ライナ3ーへ垂下した線分5よりも、貼付剤の中央部側に位置するものである。
図1Aを参照すると、本発明の貼付剤の形態は特に限定されないが、この実施態様の貼付剤10は、実質的な平面状のシート状の形態であり、その平面形状は略矩形である。その大きさは特に限定されないが、特定の例では、ある一辺の長さが約20〜80mm、他の一辺の長さが約20〜80mmである。他の平面形状、例えば略三角形、略五角形などの略多角形、略楕円形、略円形、無定形なども考えられる。
粘着剤層の厚さは特に限定されないが、例えば1〜1000μm、好ましくは10〜700μm、より好ましくは50〜600μm、もっとも好ましくは100〜500μmである。通常の貼付剤では、粘着剤層がある程度厚い形態、すなわち厚さが10μm以上である場合に、粘着剤層がはみ出したり流れ出す可能性が増大する傾向にある。本発明はこれを効果的に抑制できることから、このような場合に特に有利である。一方、粘着剤層の厚さが1000μmを超えると、粘着剤層が一定形状を保持することが困難となる傾向にある。
【0010】
支持体2の厚さは、例えば10〜200μm、好ましくは15〜150μm、より好ましくは20〜100μmである。10μm以上であることで粘着剤層の端部からはみ出しまたは流れ出した粘着剤層が支持体の粘着剤層とは反対側表面へ回りこむことが抑制される。また200μmを超えると貼付剤の使用時にゴワゴワ感が発生する恐れがある。
支持体2の端部と、粘着剤層1の端部が支持体2に接する部位との間の距離6は特に限定されないが、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜90μm、もっとも好ましくは2〜80μmである。1μm以上であることで粘着剤層1が支持体2に接する粘着剤層1の端部から粘着剤層1がはみ出したり、貼付剤10の保管中に粘着剤層1が流れ出すことが効果的に抑制される。一方、100μmより大きいと貼付剤10の貼付時に支持体2の端部が被着面から浮き上がりやすくなる可能性がある。
【0011】
また、剥離ライナー3の端部と、粘着剤層1の端部が剥離ライナー3に接する部位との間の距離7は特に限定されないが、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜90μm、もっとも好ましくは2〜80μmである。1μm以上であることで粘着剤層1が剥離ライナー3接する粘着剤層1の端部から粘着剤層1がはみ出したり、貼付剤10の保管中に粘着剤層1が流れ出すことが効果的に抑制される。一方、100μm以下であることで、貼付剤10を小型化し、資材を節約することができる。
また、粘着剤層1の端部が支持体2と接する部位において、支持体2の粘着剤層1側の表面を含む平面と、粘着剤層1の端面の接平面(図1の場合は粘着剤層1の端面そのものに一致する)とが、貼付剤の中央部側になす角度8は特に限定されないが、図1の例ではほぼ直角、例えば80〜100度である。粘着剤層1の端部が剥離ライナー3と接する部位において、剥離ライナー3の粘着剤層1側の表面を含む平面と、粘着剤層1の端面の接平面(図1の場合は粘着剤層1の端面そのものに一致する)とが貼付剤の中央部側になす角度9についても同様である。
【0012】
さらに、本発明では、粘着剤層1の端部が露出している、すなわち支持体2の端部および/または剥離ライナー3の端部により覆われておらず、かつ前述のように貼付剤10の端部における粘着剤層1の端部の少なくとも一つの部位4が所定位置に位置する。それによって、使用時に剥離ライナー3の端部に手指をかけてこれを剥離する際に、手指が過度にべとつくことなく、かつ手指の取り掛かりが得やすいので、剥離ライナー3を容易に剥離することができる。
【0013】
図1の貼付剤は、粘着剤層1の端部の断面形状は実質的に直線状であるが、この形状は直線状に限定されるものではなく、例えば曲線状、例えば貼付剤の中央部側または端部側に湾曲した形状、波線状、ジグザグ線状などであることができる。
所望により、剥離ライナー3の端部は、支持体2の端部から剥離ライナー3まで垂下した線分5が剥離ライナー3と交わる剥離ライナー上の位置よりも、貼付剤10の端部側へ突出することができる。この効果は図5を参照しつつ後述する。
【0014】
図1のような貼付剤は例えば、常法にしたがって製造した貼付剤において、貼付剤の端部近傍の剥離ライナーを一旦剥離し、支持体を傷つけないように注意しつつ粘着剤層の端部を刃物などで一部除去し、その後剥離ライナーを元に戻すことで製造される。
【0015】
次に図2を参照すると、図2は、本発明の別の例の貼付剤10の断面図である。この例においても、貼付剤10のある端部における貼付剤の断面形状は、該貼付剤10の端部における粘着剤層1の端部の少なくとも一つの部位4が、該貼付剤の端部における支持体2の端部から剥離ライナー3へ垂下した線分5よりも、貼付剤の中央部側に位置するものである。
この例は、粘着剤層1の端部の断面形状が、貼付剤10の中央部側に湾曲した形状である。すなわち、貼付剤10のある端部における貼付剤の断面形状において、該貼付剤10の端部における粘着剤層1の端部の少なくとも一つの部位4(例えば、貼付剤10の厚み方向の略中央部)が、粘着剤層1の端部が支持体2に接する部位と、粘着剤層1の端部が剥離ライナー3に接する部位とを結ぶ線分よりも、ある距離によって、貼付剤10の中央部側に位置する。当該距離は、貼付剤支持体または剥離ライナーと平行な方向に好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上である。予測困難なことに、このような形状とすることで、粘着剤層1のはみ出しおよび流れ出しが特に効果的に抑制される。なおこの距離は大きいほど係る効果は大きくなるが、製造容易性の点で200μm以下が好ましい。
【0016】
また、図2の例では、支持体2の端部と、粘着剤層1の端部が支持体2に接する部位とが実質的に一致しても(図1の例における距離6に相当する距離が約0〜25μmであっても)、十分に粘着剤層1のはみ出しおよび流れ出しが抑制される。同様に、この例では、剥離ライナー3の端部と、粘着剤層1の端部が剥離ライナー3に接する部位とが実質的に一致していても(図1の例における距離7に相当する距離が約0〜25μmであっても)、十分に粘着剤層1のはみ出しおよび流れ出しが抑制される。これらの効果は、支持体2の粘着剤層1側の表面を含む平面と、粘着剤層1の端面の接平面とがなす角度8、および、剥離ライナー3の粘着剤層1側の表面を含む平面と、粘着剤層1の端面の接平面とがなす角度9のいずれか、好ましくは両方が鋭角であることにより達成される。
なお、図2の例は、特記しない点は図1の例と同様の構成である。
図2の例のような貼付剤は、例えば、次のようにして製造される:貼付剤の端部において、刃物を所定の角度で支持体表面から貼付剤にあて、支持体および粘着剤層の中心部付近までの部分を切断し、支持体および粘着剤層の一部を除去する;その後、貼付剤の端部において、刃物を所定の角度で剥離ライナー表面から貼付剤にあて、剥離ライナーおよび粘着剤層の中心部付近までの部分を切断し、剥離ライナーおよび粘着剤層の一部を除去する。
【0017】
次に、図3を参照すると、図3は、本発明の別の例の貼付剤10の断面図である。この例においても、貼付剤10のある端部における貼付剤の断面形状は、該貼付剤10の端部における粘着剤層1の端部の少なくとも一つの部位4が、該貼付剤の端部における支持体2の端部から剥離ライナー3へ垂下した線分5よりも、貼付剤の中央部側に位置するものである。
【0018】
この例は、その断面図において、支持体2の端部と、粘着剤層1の端部が支持体2に接する部位とが実質的に一致している。この例では、図1の例における距離6に相当する距離が約0〜25μmである。しかし、貼付剤10の端部における支持体2側からの粘着剤層のはみ出しまたは流れ出しは抑制される。この効果は、支持体2の粘着剤層1側の表面を含む平面と、粘着剤層1の端面の接平面とが、貼付剤の中央部側になす角度8が、鋭角、好ましくは80度以下であることにより達成される。なお、剥離ライナー3側からの粘着剤層1のはみ出しおよび流れ出しを、抑制するためには、図5について後述するように、剥離ライナー3の端部を、支持体2の端部から剥離ライナー3まで垂下した線分5が剥離ライナー3と交わる剥離ライナー上の位置よりも、貼付剤10の端部側へ突出させればよい。
【0019】
粘着剤層1の端部の断面形状は、両者を結ぶ実質的に直線状の線分で表されるがこれに限定されない。なお、図3の例は、特記しない点は図1の例と同様の構成である。
図3の例のような貼付剤は、例えば、次のようにして製造される:貼付剤の端部において、刃物を所定の角度で支持体表面から貼付剤にあて、支持体および粘着剤層を切断し、生じた支持体および粘着剤層の端部側の断片を除去する;ただし、剥離ライナーは切断しない。
【0020】
次に、図4を参照すると、図4は、本発明の別の例の貼付剤10の断面図である。この例においても、貼付剤10のある端部における貼付剤の断面形状は、該貼付剤10の端部における粘着剤層1の端部の少なくとも一つの部位4が、該貼付剤の端部における支持体2の端部から剥離ライナー3へ垂下した線分5よりも、貼付剤の中央部側に位置するものである。
【0021】
この例は、その断面図において、支持体2の端部と、粘着剤層1の端部が支持体2に接する部位とは、ある距離6を提供する。このような距離6によって、貼付剤10の端部における支持体2側からの粘着剤層のはみ出しまたは流れ出しは抑制される。この距離6は、図1の例におけるものと同じである。
一方、剥離ライナー3の端部と、支持体2の端部から剥離ライナー3まで垂下した線分5が剥離ライナー3と交わる剥離ライナー上の位置とは、実質的に一致する。この例では、図1の例における距離7に相当する距離が約0〜25μmである。この例では、剥離ライナー3側からの粘着剤層1のはみ出しおよび流れ出しが効果的に抑制される。この効果は、剥離ライナー3の粘着剤層1側の表面を含む平面と、粘着剤層1の端面の接平面とが、貼付剤の中央部側になす角度9が、鋭角、好ましくは80度以下であることにより達成される。そして、粘着剤層1の端部の断面形状は、両者を結ぶ実質的に直線状の線分で表されるがこれに限定されない。なお、図4の例は、特記しない点は図1の例と同様の構成である。
【0022】
図4の例のような貼付剤は、例えば、次のようにして製造される:貼付剤の端部において、刃物を所定の角度で剥離ライナー表面から貼付剤にあて、剥離ライナーおよび粘着剤層を切断し、生じた剥離ライナーおよび粘着剤層の端部側の断片を除去する;ただし、支持体は切断しない。
【0023】
次に図5を参照すると、図5は、本発明の別の例の貼付剤10の断面図である。この例は、図2に示した本発明の例において、剥離ライナー3の端部は、支持体2の端部から剥離ライナー3まで垂下した線分5が剥離ライナー3と交わる剥離ライナー上の位置よりも、貼付剤10の端部側へ突出している貼付剤の例である。この例は、図2について述べたような効果のほか、剥離ライナー3の端部が上記のように突出することで、特に剥離ライナー3側からの粘着剤層1のはみ出しおよび流れ出しが一層効果的に抑制されるものである。
【0024】
剥離ライナー3の端部と、支持体2の端部から剥離ライナー3まで垂下した線分5が剥離ライナー3と交わる剥離ライナー上の位置との間の距離は、特に限定されないが、好ましくは0.5〜10mm、より好ましくは1〜8mmである。0.5mm以上であることで粘着剤層1のはみ出しおよび流れ出しが効果的に抑制される。また10mm以下であることで貼付剤10全体が大型化および、剥離ライナー3の資材の無駄が増大することが抑制される。
【0025】
なお、図5の例は、特記しない点は図1の例と同様の構成である。また、図5では、図2の例の変形を示したが、図1、図3および図4の例においても、同様の変形が可能であり、これらは図1〜図4について説明したのと同様の製造方法により製造できる。
【0026】
図6の例は、従来の貼付剤10のある例の断面図を示す。この例では、貼付剤10の断面形状は、粘着剤層1の端部が、支持体2の端部から剥離ライナー3へ垂下した線分5の上に位置するため、粘着剤層1のはみ出しおよび流れ出しが生じやすい。
【0027】
図7の例は、従来の貼付剤10の別の例の断面図を示す。この例では、貼付剤10の断面形状は、粘着剤層1の端部が、支持体2の端部から剥離ライナー3へ垂下した線分5よりも貼付剤10の端部側に位置するため、粘着剤層1のはみ出しおよび流れ出しが生じやすい。なお、本明細書における貼付剤の断面形状に関する評価値は、実施例に記載の方法により得られる値を意味する。
【0028】
以上のような本発明の貼付剤において、支持体としては特に限定されず、自体公知のフィルム状またはシート状材料が用いられる。そのような支持体は、実質的に薬物、添加剤などの粘着剤層中の成分が不透過性であるもの、これらが支持体中を通って背面から失われて含有量の低下を引き起こさないものが好ましい。
【0029】
このような支持体としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、サラン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、サーリン(登録商標)、金属箔等の単独フィルム又はこれらの積層フィルム等が挙げられる。
粘着剤層としては、特に限定されず:アクリル系重合体からなるアクリル系粘着剤;スチレン−ジエン−スチレンブロック共重合体(例えばスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体など)、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のゴム系粘着剤;シリコーンゴム、ジメチルシロキサンベース、ジフェニルシロキサンベース等のシリコーン系粘着剤;ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系粘着剤;酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル系粘着剤;ジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、ジメチルフタレート等のカルボン酸成分とエチレングリコール等の多価アルコール成分からなるポリエステル系粘着剤等が挙げられる。粘着剤層は、架橋粘着剤層でも非架橋粘着剤層でもよい。皮膚接着性の観点から疎水性粘着剤が好ましく、非含水系の粘着剤層が好ましい。
なかでも、ゴム系粘着剤は、粘着剤層のはみ出しまたは流れ出しが起こりやすい傾向にあることから、これを効果的に抑制できる本発明は、ゴム系粘着剤を粘着剤層に採用する場合に特に有利である。同じ理由により、非架橋粘着剤層で本発明は有利である。
ゴム系粘着剤は、適度な粘着力および薬剤溶解性を得るために、同一成分または異なる成分で平均分子量の異なるものを混合して使用することができる。例えば、ポリイソブチレンを例に挙げて説明すると、粘度平均分子量1,800,000〜5,500,000の高分子量のポリイソブチレンと、粘度平均分子量40,000〜85,000の中分子量のポリイソブチレン、および必要によりさらに低分子量のポリイソブチレンとの混合物が好ましい。
【0030】
ここで、高分子量のポリイソブチレンを10〜80重量%、好ましくは10〜50重量%、中分子量のポリイソブチレンを0〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、低分子量のポリイソブチレンを0〜80重量%、好ましくは0〜60重量%の割合で配合することが好適である。ここにいう粘度平均分子量とは、Flory の粘度式から計算される粘度平均分子量である。
ゴム系粘着剤には、適度な粘着性を付与するために、例えば、ロジン系樹脂、ポリテルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂、テルペン−フェノール樹脂、キシレン樹脂等の粘着付与剤が配合されていてもよく、これらは一種でまたは2種以上混合して用いられる。粘着付与剤は、粘着剤層中に例えば10〜40重量%である。
【0031】
所望により、粘着剤層は薬物を含み、貼付製剤を提供することができる。ここにいう薬物は特に限定されず、ヒトなどの哺乳動物にその皮膚を通して投与し得る、すなわち経皮吸収可能な薬物が好ましい。
【0032】
有機液状成分としては、特に限定されず、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類、オリーブ油、ヒマシ油、ラノリン等の油脂類、スクアラン、流動パラフィンのような炭化水素類、各種界面活性剤、エトキシ化ステアリルアルコール、オレイン酸モノグリセリド、カプリル酸モノグリセリド、ラウリル酸モノグリセリドのようなグリセリンモノエステル、ポリプロピレン(一般的には、ポリアルキレン)グリコールジアルキルエステルなどのグリセリンジエステル、グリセリントリアセテートなどのグリセリントリエステル、またはそれらの混合物、クエン酸トリエチルなどの脂肪酸アルキルエステル、長鎖アルコール、オレイン酸、カプリル酸のような高級脂肪酸、N−メチルピロリドン、N−ドデシルピロリドンのようなピロリドン類、デシルメチルスルホキシドのようなスルホキシド類、1,3−ブタンジオール等が挙げられ、これらは1種でも2種以上混合してもよい。有機液状成分は粘着剤層の全重量基準で、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜60重量%、最も好ましくは20〜60重量%含有させることができる。10重量%以上含有される場合に、粘着剤層が可塑化しやすく、粘着剤層のはみ出しまたは流れ出しが起こりやすいので、これを効果的に抑制できる本発明はこのような場合に有利である。なお、60重量%を超えて含有される場合、粘着剤層が一定形状を保持することが困難となる可能性がある。
【0033】
剥離ライナーとしては特に限定されず、その材質としては、この分野で自体既知のものが挙げられ、具体的にはポリエチレンテレフタレートをはじめとするポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、各種アクリル系及びメタクリル系ポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、酢酸セルロース(アセテート)、再生セルロース(セロファン)、セルロイド等のプラスチックフィルム、あるいは上質紙またはグラシン紙等とポリオレフィンとのラミネートフィルム等が例示される。安全性、経済性、薬物移行性の点でポリエステルフィルムを用いることが好ましい。剥離ライナーは、粘着剤層との剥離を容易にするように粘着剤との界面側が易剥離処理されるものが好ましい。
【実施例】
【0034】
(1)塗工液の調合
トルエン625.0g、n−ヘキサン875.0g、高分子量ポリイソブチレン(粘度平均分子量4,000,000)104.3g、中分子量ポリイソブチレン(粘度平均分子量55,000)208.7g、脂環族飽和炭化水素樹脂 208.7g、トルエン50.0gを秤量し、均一となるまで攪拌した。その後、油性液状成分(ミリスチン酸イソプロプロピル) 228.2g、トルエン 200.0gを秤量し、ポリイソブチレン溶液に投入し均一となるまで攪拌して塗工液とした。
【0035】
(2)塗工
塗工液を、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(以下「PET」)製の剥離ライナーの軽剥離面に、乾燥後の粘着剤層厚さが160μmとなるように塗布した。乾燥後、粘着剤層を、PET製フィルムとPET製不織布との積層体(厚さ40μm)である支持体のPET不織布面と貼り合わせて貼付剤の原反を作製した。
【0036】
(3)貼付剤の調製
(実施例1)
貼付剤の原反を、カミソリ刃で30mm×20mmの略矩形にカットし、端部の粘着剤層をピンセットで掻き出して、図1に示す本発明の貼付剤を製造した。
(実施例2〜3)
貼付剤の原反に、カミソリ刃を、カミソリ刃と貼付剤の原反とがなす角度の小さいほうの角度が鋭角となるようにあてて貼付剤の原反を30mm×20mmの略矩形にカットして、図2に示す実施例2の本発明の貼付剤、および図3に示す実施例3の本発明の貼付剤を製造した。
【0037】
(比較例1)
貼付剤の原反に、カミソリ刃を、カミソリ刃と貼付剤の原反とがなす角度が略直角となるようにあてて貼付剤の原反を30mm×20mmの略矩形にカットして、図6に示す比較例1の貼付剤を製造した。
(比較例2)
貼付剤の原反に、カミソリ刃を、カミソリ刃と貼付剤の原反とがなす角度が略直角となるようにあてて、貼付剤の端部近傍を指で押圧しつつ、貼付剤の原反を30mm×20mmの略矩形にカットして、図7に示す比較例2の貼付剤を製造した。
【0038】
(4)評価
(断面形状)
実施例および比較例の貼付剤の断面形状を、デジタルマイクロスコープ(KEYENCE、VHX−500)にて撮像した(500倍)。実施例1の結果を図8Aに、実施例2の結果を図8Bに、実施例3の結果を図8Cに示した。比較例1の結果を図8Dに、比較例2の結果を図8E示した。また、撮影された画像に基づき、支持体の端部と、粘着剤層の端部が支持体に接する部位との間の距離(距離6)、剥離ライナーの端部と、粘着剤層の端部が剥離ライナーに接する部位との間の距離(距離7)、支持体の粘着剤層側の表面を含む平面と、粘着剤層の端面の接平面とがなす角度(角度8)、および剥離ライナーの粘着剤層側の表面を含む平面と、粘着剤層の端面の接平面とがなす角度(角度9)等を測定し、結果を表1に示した。
【0039】
【表1】

【0040】
また、実施例2の貼付剤の断面図において、該貼付剤の端部の、粘着剤層の厚み方向の略中央の部位は、粘着剤層の端部が支持体に接する部位と、粘着剤層の端部が剥離ライナーに接する部位とを結ぶ線分よりも、支持体または剥離ライナーに平行な方向に35μmだけ貼付剤の中央部側に位置した。
(端部のべたつき)
実施例および比較例の貼付剤に、評価者が手で触れて次の基準で評価した。
〇:べたつかない
△:若干べたつくが許容範囲内である
×:べたつく
(ライナーの剥離性)
実施例および比較例の貼付剤の剥離ライナーを、評価者が手で剥離して、次の基準で評価した。
〇:容易に剥離できる
△:剥離できる
×:剥離が困難である
(粘着剤層のはみ出し)
実施例および比較例の貼付剤に、別のPETフィルム(厚さ25μm)を重ねて、荷重(約290g重)を12時間かけ、貼付剤端部の粘着剤層はみ出しを次の基準で評価した。
○:はみ出しは見られない
△:端部の一部の領域ではみ出しが見られるが許容範囲内である
×:端部のほぼすべての領域ではみ出しが見られる
結果を表2に示した。
【0041】
【表2】

【0042】
(6)評価結果
実施例3では、端部のべたつきおよび粘着剤層のはみ出しが若干みられたほかは、実施例1〜3では、いずれも端部のべたつきおよび粘着剤層のはみ出しはない、または許容範囲内であり、ライナーを容易に剥離することができた。
これに対して比較例1〜2では、端部のべたつきが発生するものがあり、ライナーの剥離性および粘着剤層のはみ出しがみられた。
このことにより、次のことが実証された:
(i)粘着剤層の端部の少なくとも一つ部位が、貼付剤の端部における支持体の端部から剥離ライナーへ垂下した線分よりも貼付剤の中央部側に位置する形状によって、端部のべたつきが抑制され、剥離ライナーの剥離性が良好となり、粘着剤層のはみ出しが抑制される。
(ii)支持体または剥離ライナーとが接する、粘着剤層の端部の部位が、支持体または剥離ライナーの端部よりも貼付剤の中央部側に位置する形状が、端部のべたつきおよび粘着剤層のはみ出しの点で好ましい。
(iii)粘着剤層の端部の断面形状が貼付剤の中央部側に湾曲した形状が、端部のべたつきおよび粘着剤層のはみ出しの点で好ましい。
【0043】
本発明の説明は、単に例示的な性質のものであり、かくして本発明の要旨から離れないその変形態様は、本発明の範囲内であるべきことが意図される。そのような変形態様は、本発明の精神および範囲から離れるものとしてみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明の貼付剤の例の模式的な斜視図(A)および断面図(B)である。
【図2】図2は、本発明の貼付剤の例の模式的な断面図である。
【図3】図3は、本発明の貼付剤の例の模式的な断面図である。
【図4】図4は、本発明の貼付剤の例の模式的な断面図である。
【図5】図5は、本発明の貼付剤の例の模式的な断面図である。
【図6】図6は、比較例の貼付剤の例の模式的な断面図である。
【図7】図7は、比較例の貼付剤の例の模式的な断面図である。
【図8】図8は、実施例の貼付剤の断面の写真(A〜C)、および比較例の貼付剤の断面の写真(D〜E)である。
【図9】図9は、従来の貼付剤の例の断面図である。
【図10】図10は、従来の貼付剤の例の断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 貼付剤
1 粘着剤層
2 支持体
3 剥離ライナー
4 部位
5 線分
6 距離
7 距離
8 角度
9 角度
20 被包材
22 吸収層
24 フランジ層
26 支持体
32 剥離ライナー
34 第二主表面
36 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、粘着剤層、および剥離ライナーを備える貼付剤の製造方法であって、
該貼付剤のある端部における貼付剤の断面形状を、該貼付剤の端部における粘着剤層の端部の少なくとも一つの部位が、該貼付剤の端部における支持体の端部から剥離ライナーへ垂下した線分よりも、貼付剤の中央部側に位置するものであり、かつ粘着剤層の端部が露出しており、
粘着剤層の端部の少なくとも一つの該部位が、支持体の該端部または剥離ライナーの該端部よりも、貼付剤の中央部側に位置し、
該貼付剤の該ある端部における貼付剤の断面形状は、粘着剤層の端部の断面形状が貼付剤の中央部側に湾曲した形状であり、かつ支持体の端部と、粘着剤層の端部が支持体に接する部位との間の距離が、0〜25μmとする、貼付剤の製造方法。
【請求項2】
剥離ライナーの該端部は、支持体の該端部から剥離ライナーまで垂下した線分が剥離ライナーと交わる剥離ライナー上の位置よりも、貼付剤の端部側に位置する、請求項1記載の貼付剤の製造方法。
【請求項3】
粘着剤層が有機液状成分を含む、請求項1または2記載の貼付剤の製造方法。
【請求項4】
粘着剤層の厚さが10μm以上である、請求項1ないし3いずれかに記載の貼付剤の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれかに記載の貼付剤の製造方法において、粘着剤層がさらに薬物を含む、貼付製剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−27716(P2013−27716A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−206990(P2012−206990)
【出願日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【分割の表示】特願2008−173178(P2008−173178)の分割
【原出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】