説明

貼付剤

【課題】 安定性が高く、製造が容易でコストも安価であり、粘着力も高い貼付剤を提供する。
【解決手段】 粘着層14中に、安定化剤としてトレハロースを0.1〜10質量%、好ましくは3〜7質量%含有する。粘着層14は、ポリアクリル酸塩からなる含水ゲルや、SIS系粘着剤からなる。粘着層14には、メントール等の薬剤を含有したものや、温感効果のあるトウガラシエキス等の薬剤を含有したものでも良く、サリチル酸メチル等の消炎鎮痛剤やその他の薬剤を含有したものでも良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発熱時や関節等の炎症時に冷却のため適宜の部位に貼付したり、皮膚の保湿、リフレッシュ等に用いられ、医療補助具や薬剤等として用いられる貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、身体に貼付する冷却用の貼付剤としては、オレフィン系不織布に含水ゲルを展膏したものが汎用されている。このような貼付剤は、ポリアクリル酸塩などの粘着剤とグリセリンなどの賦形薬を20〜40%配合したものである。この含水ゲルは、ポリアクリル酸塩などの架橋反応により水分を保有しゲル化しているものであり、粘着性を有したものである。
【0003】
また、特許文献1に開示されているように、片面に合成ゴム系の粘着剤が塗布された不織布の繊維層中に、寒天やゼラチン等の水溶性高分子材料のゲルが含浸し安定に存在している貼付剤や、特許文献2に開示されているように、片面に繊維層から成る支持体が設けられ、この支持体の他方の面には、水分が90重量%以上の水溶性高分子材料のゲル層が安定に一体に積層されて成るものも提案されている。
【特許文献1】特開2002−248121号公報
【特許文献2】特開2003−70898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の含水ゲル等の粘着層においては、不織布に塗布した含水ゲルの安定性が悪く、加水分解等による成分含量の低下、着色、臭い、更に粘着力の低下や、経時的にゲル強度が落ち賦形性も低下する場合等があった。
【0005】
この発明は上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、安定性が高く、製造が容易でコストも安価であり、粘着力も高い貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、粘着層中に、安定化剤としてトレハロースを0.1〜10質量%、好ましくは3〜7質量%含有した貼付剤である。前記粘着層は、ポリアクリル酸塩からなる含水ゲルや、SIS系粘着剤からなる。
【0007】
また、前記貼付剤は、粘着層中に、メントール等の薬剤を含有したものや、温感効果のあるトウガラシエキス等の薬剤を含有したものでも良い。さらに、サリチル酸メチル等の消炎鎮痛剤やその他の薬剤を含有したものでも良い。
【0008】
貼付剤の支持体としては、不織布等を用いることができ、その繊維層にアクリル酸・アクリル酸エステル系共重合体ナトリウム塩による高吸水性ポリマーである高分子材料の含水ゲルの粘着層が安定に存在する。また、粘着層は、SIS(スチレンイソスチレン高ポリマー)系粘着剤からなるオイルゲルでも良く、粘着層は、筋状に部分的に塗工されているものでも良い。
【0009】
また、前記貼付剤は、冷却シートやパップ剤、または化粧用シートである。さらに、前記粘着層は、生薬を配合したものでも良く、その他、ビタミンC、尿素、及び塩酸ジフェヒドラミンのうち少なくとも一つを含むものでも良い。
【発明の効果】
【0010】
この発明の貼付剤は、安定性が高く、粘着力を長期間維持することができる。さらに、粘着層は、清涼剤やその他の薬剤、ハーブ類等を高濃度で配合することができ、種々の薬効を期待することができる。さらに、有効成分の消失を抑え含量低下を防止し、変色や臭いも抑える。その他、粘着層の物理的特性の変化も抑制し形態を長時間維持する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1はこの発明の第一実施形態を示すもので、この実施形態の貼付剤10は、不織布12を支持体として備える。不織布12は、ポリエステル、レーヨン、ポリプロピレン、コットン、またはこれらの混紡等で作られ、目付けは70〜150g/mの範囲が好ましい。
【0012】
不織布12には、不織布12の一側面12aには、ある程度の厚みの含水ゲルの粘着層14が形成されている。この粘着層14の含水ゲルは、水溶性高吸水性ポリマーと架橋剤の水溶液を塗布したものである。
【0013】
粘着層14には、安定化剤としてトレハロースを0.1〜10質量%、好ましくは3〜7質量%含有している。トレハロースは、ブドウ糖2分子が結合した非還元性の糖質である。
【0014】
また、粘着層14には、l−メントール等の清涼剤を溶解・混合することにより清涼感を高めることができる。パップ剤として用いる場合は、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール等の消炎鎮痛剤を配合しても良い。また、温感効果のあるトウガラシエキス等の薬剤を含有したものでも良い。
【0015】
粘着層14は、不織布12の側面12a全面に塗布するか、またはスジ塗工する。特に、スジ塗工する場合は、より好ましい冷涼感が得られる。
【0016】
粘着層14の外側面には、非透湿性の樹脂フィルム等の剥離材である剥離シート16が取り付けられている。剥離シート16は、シリコンを塗布したポリエステルフィルムやポリプロピレンエンボスフィルムが用いられる。
【0017】
次に、この実施形態の貼付剤10の製造方法について説明する。この製造方法は、水溶性高吸水性ポリマーと架橋剤を精製水に溶かした水溶液を作り、この水溶液を不織布12の片面12aに所定重量塗布する。また、全面塗布のほかにスクリーン印刷等によりパターン塗布を行うようにしても良い。
【0018】
次に、この実施形態の貼付剤10の作用・効果について説明する。貼付剤10には、不織布12中の高吸水性ポリマーによる含水ゲルの粘着層14に大量の水分が含まれており、人体に貼った使用時には、その水分が徐々に蒸発する。ポリアクリル酸塩系の含水ゲルによる貼付剤10は、水分蒸発量が30〜80mg/cmで、冷却温度が3〜6℃である。冷却効果は、気化熱により数分以内に5℃以上の急速な温度低下を得ることができる。
【0019】
また、貼付剤10の粘着層14の形態安定性が高いので、l−メントール等の清涼剤を高い濃度で粘着層14に溶解することができ、強い清涼感を得ることができる。また、ハーブ類やその他気化しやすい薬剤等も安定に配合することができる。その他、従来の含水ゲルでは不安定なため配合が困難であった、カフェインやビタミンCなどの薬剤も、高い濃度で容易に配合することができる。
【0020】
なお、この実施形態の貼付剤10は、不織布を二層構造にしても良く、第一不織布は、コットン、レーヨンなどの親水性不織布であり、第二不織布は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンなどの疎水性不織布とする。これにより、表面を触ってもべたつきがない貼付剤とすることができる。
【0021】
また、この発明の貼付剤は、プラスター剤やテーピング剤等にも利用することができる。例えば、不織布12の側面12aに粘着層を形成する粘着剤として、オイルゲル、疎水性粘着剤、含水ゲル粘着剤等を使用しても良い。素材は例えばホットメルト樹脂、ゴム系粘着剤、SIS系粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリアクリル酸塩系粘着剤、またはSIS系粘着剤にグリセリンを混合したオイルゲル等を用いることができる。特に、オイルゲルは粘着性が高く密着して貼り付けられ、しかも人体から貼付剤10を剥がすときに角質が剥がれにくく、安全性が高い。
【0022】
この発明に用いたトレハロースは、脂肪酸等の分解を抑える効果を有する。トレハロースを含有せしめることにより、脂肪酸類又は脂肪酸類含有物からの揮発性アルデヒド類の生成を抑制し、脂肪酸類の分解自体も抑制するものである。従って、この発明では、トレハロースを有効成分とする揮発性アルデヒド類の生成抑制剤、及び脂肪酸類の分解抑制剤と、それらの用途を提供することができる。また、トレハロースが、非還元性の糖質で安定であることから、脂肪酸類又は脂肪酸類含有物、例えば、飲食物、化粧品、医薬品又はそれらの原料又は中間加工物を、保存または加工処理するに際して、それに含まれるビタミン、アミノ酸、ペプチド等の栄養成分、旨味成分を破壊することが少なく、得られる組成物は高品質を安定に保つ。従って、脂肪酸類又は脂肪酸類含有物の新たな保存及び加工処理手段を提供するのみならず、利用面においても高品質で安定な飲食物、化粧品、医薬品など各種組成物を提供する。とりわけ、農水畜産品、飲食品、健康食品、更には、化粧品、医薬品等の利用分野での効果が極めて大きい。
【0023】
また、トレハロースは、活性酸素消去能の低減を抑制することができる。即ち、トレハロースを有効成分とする活性酸素消去能低減抑制剤と、トレハロース又は該低減抑制剤を含有させた活性酸素消去能の低減抑制方法を提供することができる。併せて該方法により活性酸素消去能の低減を抑制した植物性可食物、及び植物性抗酸化物質含有組成物を提供するものである。
【0024】
本組成物の摂取は、生体にとっては、植物性可食物等のもつビタミン、ミネラル、食物繊維等の機能性成分に加えて、新たに活性酸素消去能の低減が少なく、より安定した活性酸素消去能を容易に強化、補給できることとなり、健康の維持増進、老化防止、成人病の予防、難病の治療促進、発癌の抑制等に大きく寄与できることになる。従って、植物性可食物等の加工、利用分野に第四の機能性成分とも言うべき新たな健康資源を開拓することとなりこれが与える影響は広く、とりわけ、飲食物、化粧品、医薬品等の産業界に与える工業的意義はきわめて高い。
【0025】
さらに、トレハロースを含有する経粘膜投与用薬剤組成物を使用することにより、従来の経粘膜投与用製剤に比べ、薬理活性物質の粘膜吸収性が良好でかつ、粘膜刺激性の非常に少ない経粘膜投与用製剤が得られる。このため、有用で安全性の高い経粘膜投与用医薬品を提供することが可能となり、医薬産業上極めて有用である。例えば、経鼻投用製剤に利用することができる。
【0026】
また、経皮吸収促進剤の種類によって、トレハロースの配合量は、効果に大きな影響を与える。
【0027】
例えば、吸収促進剤HPE-101(1−(2−(デシルチオ)エチルアザシクロペンタン2-オン)の場合、トレハロース5%の添加量が最適である。促進効果増強と刺激最低減・吸収促進剤BL-9(ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル)の場合、トレハロース5%〜20%を添加量してもあまり影響はない。
【0028】
また、本発明において、アミノ酸又はこれらの塩類からなるアミノ酸の一種又は二種以上とトレハロースを含有する皮膚外用製剤及び化粧料は、褐色・変色が起きず、品質の安定化に非常に優れたものであり、保湿作用や創傷を治癒する効果を有し、更に、使用に当っては、皮膚老化防止や肌荒れを改善するという優れた効果を有する。従って、利用分野としては、医薬品、医薬部外品、化粧品等の外用剤に適用することが出来る。例えば、エモリエントクリームにトレハロースを6%配合しても良い。
【0029】
さらに、この発明の貼付剤は上記実施形態に限定されるものではなく、冷却シートや各種パップ剤、または化粧パック等の化粧用シートでも良い。粘着層には、種々の生薬を配合しても良く、その他、ビタミンC、尿素、及び塩酸ジフェヒドラミン等の分解しやすい薬剤を安定に配合することができる。
【0030】
その他、各部材の素材は適宜変更可能である。各不織布の目付けや素材は、用途や他の部材の成分の配合に合わせて適宜変更可能である。
【実施例1】
【0031】
次に、この発明の第一実施例の貼付剤について説明する。この実施例の貼付剤の配合割合を表1に示す。この実施例は、冷感を得るパップ剤である。比較のため従来の冷感パップ剤の処方を表2に示す。
【0032】
この実施例の貼付剤は、トレハロースを貼付剤に0.5〜10.0%配合することにより、薬剤の安定性が高い優れた貼付剤を得ることができる。また、加水分解などによる膏体の変色と臭いを防止する。トレハロースを配合した含水ゲルはミクロゲルを生成するため、含水率70〜85%の極めて高い含水ゲルが得られる。ポリアクリル酸塩やCMCNaの配合量を減らしても高い粘着力がある。また、トレハロースを配合した膏体は不織布等への塗布前の段階では粘度が低いため展膏速度を早くすることができるため、製造コストの低減を図ることができる。
【0033】
製造方法は、酒石酸、精製水、グリセリン、ポリアクリル酸ナトリウム、トレハロース、アクリル酸ナトリウムグラフト重合体を計量し、約30分攪拌混合した後、ポリソルベート80、合成メントール、サリチル酸メチル、セスキオレイン酸ソルビタン、乾燥水酸化アルミニウムゲルを均一に混合し、目付け100g/m2のポリエステル製不織布に、膏体重量850g/m2の割合で均一に塗工した。セパレーターとしてはポリプロピレン製のエンボスフイルムを使用した。塗工後、100mm×140mmに裁断し、アルミニウムラミネート袋に密封包装した。得られた製品は含水率が高く、また粘着力に優れたパップ剤であった。
【0034】
【表1】



【0035】
【表2】



【実施例2】
【0036】
次に、この発明の第二実施例の貼付剤の配合割合を表3に示す。この実施例は、温感パップ剤である。比較のため従来の温感パップ剤の処方を表4に示す。
【0037】
【表3】



【0038】
【表4】



【実施例3】
【0039】
次に、この発明の第三実施例の貼付剤について説明する。この実施例の貼付剤の配合割合を表5示す。この実施例は、冷却シートについてのものである。比較のため従来の冷却シートの処方を表6に示す。
【0040】
製造方法は、酒石酸、ポリアクリル酸ナトリウム、トレハロース、アクリル酸ナトリウムグラフト重合体、グリセリンを約30分攪拌混合した後、ジプロピレングリコール、合成メントール、パラオキシ安息香酸エステル、乾燥水酸化アルミニウムゲルを均一に混合し、目付け80g/m2のポリエステル製不織布に、膏体重量2500g/m2の割合で均一に塗工しセパレーターとしてポリプロピレン製のエンボスフイルムを使用した。塗工後、50mm×130mmに裁断し、アルミニウムラミネート袋に密封包装した。製品は含水率が高く、また冷却力に優れた冷却シートが得られた。
【0041】
【表5】



【0042】
【表6】



【実施例4】
【0043】
次に、この発明の第四実施例の貼付剤について説明する。この実施例の貼付剤の配合割合を表7示す。この実施例は、化粧用パックの目元シートについてのものである。比較のため従来の目元シートの処方を表8に示す。
【0044】
製造方法は、酒石酸、ポリアクリル酸ナトリウム、CMCNa、グリセリン、カオリンを約30分攪拌混合した後、乾燥水酸化アルミニウムゲル、トレハロース、パラオキシ安息香酸エステル、グリセリン、ポリソルベート80、セスキオレイン酸ソルビタン、カモミラエキス、ラベンダーエキス、シャクヤクエキス、香料を均一に混合し、目付け80g/m2のポリエステル製不織布に、膏体重量700g/m2の割合で均一に塗工しセパレーターとしてポリエステル製のフイルムを使用した。塗工後、100mm×70mmの目元シート形状に打ち抜き裁断し、アルミニウムラミネート袋に密封包装した。製品は使用感の優れた目元シートが得られた。
【0045】
【表7】



【0046】
【表8】



【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の第一実施形態の貼付剤の縦断面図である。
【符号の説明】
【0048】
10 貼付剤
12 不織布
14 粘着層
16 剥離シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着層中に、安定化剤としてトレハロースを0.1〜10質量%含有したことを特徴とする貼付剤。
【請求項2】
前記粘着層は、ポリアクリル酸塩からなる含水ゲルであることを特徴とする請求項1記載の貼付剤。
【請求項3】
前記粘着層は、SIS系粘着剤からなることを特徴とする請求項1記載の貼付剤。
【請求項4】
前記貼付剤は、粘着層中に消炎鎮痛剤を含有したことを特徴とする請求項1,2または3記載の貼付剤。
【請求項5】
前記貼付剤は、粘着層中に温感効果のある薬剤を含有したことを特徴とする請求項1,2または3記載の貼付剤。
【請求項6】
前記貼付剤は、冷却シートであることを特徴とする請求項2または4記載の貼付剤。
【請求項7】
前記貼付剤は、パップ剤であることを特徴とする請求項3,4または5記載の貼付剤。
【請求項8】
前記貼付剤は、化粧用シートであることを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載の貼付剤。
【請求項9】
前記粘着層は、粘着層中に生薬を配合して成ることを特徴とする請求項1、2または3記載の貼付剤。
【請求項10】
前記貼付剤は、粘着層中に、ビタミンC、尿素、及び塩酸ジフェヒドラミンのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1,2または3記載の貼付剤。



【図1】
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【公開番号】特開2006−321720(P2006−321720A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143724(P2005−143724)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(397043190)ライフケア技研株式会社 (11)
【出願人】(505180313)株式会社モリモト医薬 (9)
【Fターム(参考)】