説明

貼付剤

【課題】 皮膚への接着性、保型性などの基剤の基本物性と効率的な薬剤の放出性を兼ね備えた親水性基剤からなる貼付剤を提供する。
【解決手段】 (a)構成単量体の1〜30モル%が、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び/又はその塩、スチレンスルホン酸及び/又はその塩、N−ビニルピロリドンから選択される1種又は2種以上の単量体であり、70〜99モル%がアクリル酸及び/又はその塩、並びに共重合可能なその他の単量体が0〜10モル%からなる単量体混合物を重合して得られる1種又は2種以上の水溶性共重合体であり、酸の20〜60モル%が中和され、微粉末で未反応単量体の含有量が0.5質量%以下である水溶性共重合体、(b)多価アルコール、(c)多価金属化合物、(d)界面活性剤及び(e)水を含有する貼付剤用基剤と、経皮吸収性の薬剤又は化粧料成分とを含む水性ゲル膏体を支持体上に施してなる貼付剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貼付剤用基剤、薬剤成分及び水分などからなる含水ゲル膏体を支持体に施してなる貼付剤に関する。より詳細には、膏体からの薬剤又は化粧料成分の放出性に優れ、高い接着性や保型性を兼ね備えた貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
親水性又は水溶性ポリマー及び水を主成分とする基剤に、保湿剤や薬剤などを含有させた膏体を不織布などの支持体上に展着した貼付剤が広く用いられ、その用途も拡大している。それに伴って、薬剤の経皮吸収性の向上や冷却時間の持続性の向上などを目的として、貼付剤用基剤及び貼付剤の研究、開発が進められている。
親水性の貼付剤用基剤には、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースやポリアクリル酸(塩)などの親水性ポリマーが用いられている。一般的に親水性の基剤は非水系の基剤に比して、皮膚に対する安全性が高く、保水性に優れているが、粘着力が不十分である。粘着力を上げようとすると、親水性ポリマーの凝集力が低下し、膏体を皮膚から剥がす際に皮膚に膏体が残留し易くなるという問題がある。
【0003】
親水性の基剤において、従来の親水性ポリマーに代え、架橋型の親水性ポリマーを用いたり、親水性ポリマーの基剤中に多価金属塩を添加することで分子間架橋を生じせしめ、基剤の接着性や保型性の向上が試みられている。
例えば、スルホン酸基を有する架橋型ポリマーから構成される基剤として、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)及びアクリル酸(塩)を、多官能性架橋剤の存在下で共重合して得られる架橋型水溶性ポリマーからなるパップ剤(特許文献1参照)や、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)、アクリル酸(塩)及びエチレン性不飽和結合を2個以上有する架橋性単量体を架橋重合して得た架橋型親水性ポリマーが開示されている(特許文献2参照)。
このような架橋型親水性ポリマーを用いた膏体は、膏体を構成する粒状のゲル粒子自体にはある程度の保型性はあるが、各々のゲル粒子には流動性が無い。そのために、これらのゲル粒子を含む膏体は支持体上への展延性に劣り、膏体層をの表面を滑らかに仕上げ難い。また、各々のゲル粒子が完全に架橋されているため、膏体は接着力に乏しくなる。そこで、接着力を上げるために支持体に展延した後の架橋反応を緩和すると、膏体の保型性が不足して、接着力と保型性を両立させることができず、貼付剤としては十分に機能しなくなる。
また、ポリアクリル酸(塩)に加えて、スルホン酸基を有する架橋型高吸水性ポリマーと、分子間架橋を目的とした多価金属化合物を添加した膏体も開示されている。しかしながら、スルホン酸基を有する高吸水性ポリマーの配合量が多い場合には、接着力が不足したり、膏体の表面を滑らかにできない等の問題があった(特許文献3参照)。
【0004】
一方、ゲル組成物をシート状に賦形する方法には、アクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の単量体成分を重合して得られる親水性ポリマーを、薬剤などの成分と均一に混練し、これを支持体に塗布する方法、あるいは親水性ポリマーを構成する原料の単量体、架橋剤及び薬剤、その他の添加物などを予め配合し、支持体又は型枠に流し込んだ状態で紫外線照射等により重合し、賦形する方法がある。
例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)と架橋性単量体を、湿潤剤である多価アルコールと共に、pH5.5以上の水性媒体中で紫外線照射し共重合させることにより、高粘着性ハイドロゲルを得ている(特許文献4参照)。そのほか、エチレン性不飽和結合を有する単量体、薬剤、及び光重合開始剤を含有する組成物を、活性エネルギー線で光重合する経皮吸収製剤用基剤の製造方法(特許文献5参照)や、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸等からなる単官能性単量体、エチレン性不飽和結合を2個以上有する架橋性単量体、保湿剤、薬剤等含む溶液を、フィルム上に塗布し、紫外線を照射することで重合、ゲル化させる方法(特許文献6参照)等がある。
これらの方法は、重合による親水性ポリマーの生成と同時に膏体層が形成されるので、低粘度の単量体溶液の混合が容易で、光重合を採用するため短時間で架橋反応が行える利点がある。しかしながら、紫外線により分解する薬剤を使用できないことや、このような直接的な重合方法により得られる膏体層には、未反応の単量体が多く残り易いという問題があった。また、膏体層自体を精製することも困難である。
【0005】
また、基剤からの薬物放出性を向上させる試みとして、特定の非ステロイド系抗炎症剤と、ポリアクリル酸(塩)などの複数の水溶性ポリマーと複数の多価金属元素を含有する皮膚外用剤(特許文献7)が開示されているが、薬物放出性は十分とは言い難い。さらに、水難溶性薬物と多価アルコールと該多価アルコールに溶解又は膨潤が可能なポリマーと電解質を含有するゲル組成物なども開示されている(特許文献8)。しかしながら、ある程度薬物放出性は改善されても、膏体ゲルに電解質が配合されているため、膏体ゲルの接着性と保型性を両立できず、貼付剤の基本性能を満足できない。
【0006】
【特許文献1】特開平4−91021号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平9−124466号公報(第1−2頁)
【特許文献3】特願2001−353185号明細書(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平6−200224号公報(段落〔0006〕〜〔0008〕)
【特許文献5】特開平9−124465号公報(第4欄)
【特許文献6】特公平5−502239号公報(第1−2頁)
【特許文献7】特開平11−199515号公報(特許請求の範囲)
【特許文献8】特開2005−162692号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、これまでの親水性の基剤を用いた貼付剤では、薬剤の放出性が不足して配合量に見合った薬効が得られなかったり、薬剤の放出性を向上するためにアルコール類や長鎖脂肪酸及びそれらのエステル等の液状成分を多量に配合する必要があると、皮膚への接着性が劣ったり、不織布等の支持体から膏体の滲み出しがあったり、貼付剤を皮膚から剥がす際に膏体が皮膚に残留し、きれいに剥がれないなどの問題があった。つまり貼付剤として、皮膚への接着性、保水性、保型性、硬度等の基剤の物性と、効果的な薬剤の放出性を両立する点で十分に満足のゆくものではなかったのである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、
(a)水溶性共重合体が、構成単量体の1〜30モル%が2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び/又はその塩、スチレンスルホン酸及び/又はその塩、N−ビニルピロリドンから選択される1種又は2種以上の単量体であり、70〜99モル%がアクリル酸及び/又はその塩、並びに共重合可能なその他の単量体が0〜10モル%である単量体混合物を重合して得られる1種又は2種以上の水溶性共重合体であり、酸の20〜60モル%が中和されており、微粉末で未反応単量体の含有量が0.5質量%以下である水溶性共重合体、
(b)多価アルコール
(c)多価金属化合物
(d)界面活性剤
(e)水
を含有する貼付剤用基剤と、経皮吸収性の薬剤又は化粧料成分とを含む水性ゲル膏体を支持体上に施してなる貼付剤が、従来の基剤としての接着性、保型性、展延性と共に、膏体からの薬剤や化粧料成分の放出性に優れ、膏体の滲み出しや皮膚への残留性が無いことを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0009】
本発明の貼付剤は、膏体からの薬剤又は化粧料成分の放出性に優れている。また、本発明の貼付剤用基剤は皮膚などへの接着性、保型性に優れ、不織布等の支持体から膏体の滲み出しが無く、その上膏体の皮膚への残留が無く、長時間貼付可能である。
しかも、水溶性共重合体を得た後に、薬剤又は化粧料成分を配合し水性ゲル膏体を調製するので、不純物である未反応の残存単量体の含有量が少なく、赤斑、かぶれ、発疹などの皮膚障害を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
1.貼付剤の構成
本発明の貼付剤は、貼付剤用基剤と経皮吸収性の薬剤又は化粧料成分とを含有する水性ゲル膏体を支持体上に施してなるものである。
【0011】
[1.1]貼付剤用基剤
貼付剤用基剤は、下記に詳細に説明する(a)水溶性共重合体、(b)多価アルコール、(c)多価金属化合物、(d)界面活性剤及び(e)水を必須成分とする。
【0012】
(a)水溶性共重合体
水溶性共重合体は、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び/又はその塩、スチレンスルホン酸及び/又はその塩、N−ビニルピロリドンから選択される1種又は2種以上の単量体と、アクリル酸及び/又はその塩からなる単量体混合物、或いは前記単量体混合物に所望により加えられる共重合可能な他の単量体を含んでなる単量体混合物、を重合して得られる共重合体であるが、この重合時に多官能性のラジカル重合性架橋剤等を少量添加して適度に分岐又は架橋しても良いが、通常は架橋剤無しで重合して得られる直鎖状重合体が接着性の高い点で好ましく、この共重合体の1種又は2種以上から構成される水溶性共重合体である。
【0013】
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び/又はその塩、スチレンスルホン酸及び/又はその塩、N−ビニルピロリドンから選択される1種又は2種以上の単量体は、膏体の硬度を付与し保型性を維持することに加え、膏体に含有する薬剤又は化粧料成分の放出性を高めるために用いられるもので、重合の際の使用量、すなわち、実質的に重合体を構成する量は、水溶性共重合体を構成する全単量体単位の合計モル数を基準として、通常、1〜30モル%である。
【0014】
1モル%未満では、アルコールや脂肪酸を配合したり、水分を80質量%以上で含有すると保型性が不足して支持体から膏体が滲み出したり、膏体の硬度が低下して剥がす際に膏体が皮膚に残留し易くなる。
また、30モル%を越えると、剥がす際に膏体が皮膚に残留し難くなるが、接着力が低下するために膏体の接着性と保型性を両立させることが困難になる。
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の塩、又はスチレンスルホン酸の塩、としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、又は、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩等が挙げられ、これらは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、又はスチレンスルホン酸を、対応するアルカリで中和することにより容易に得られるものである。
【0015】
アクリル酸及び/又はその塩の量としては、上記と同様に、水溶性共重合体を構成する全単量体単位の合計モル数を基準に、通常、70〜99モル%である。70モル%未満では接着性と保型性を両立し難くなる。また、99モル%を超えると、アルコールや脂肪酸を配合したり、水分を80質量%以上で含有すると保型性が不足して支持体から膏体が滲み出したり、膏体の硬度が低下して剥がす際に膏体が皮膚に残留し易くなる。
アクリル酸の塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、又は、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩等が挙げられ、これらはアクリル酸を対応するアルカリで中和することにより容易に得られるものである。
【0016】
この水溶性共重合体は、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び/又はその塩、スチレンスルホン酸及び/又はその塩、N−ビニルピロリドンから選択される1種又は2種以上の単量体と、アクリル酸及び/又はその塩を必須構成単量体とするが、本発明においては、必要に応じてこれらと共に、基剤の性能を損なわない範囲(好ましくは全単体量単位の合計モル数を基準に、10モル%以下)で、共重合可能なその他の単量体を併用することができる。
【0017】
共重合可能なその他の単量体としては、例えば、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸以外の(メタ)アクリルアミドアルキルアルカンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸などの不飽和スルホン酸、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0018】
前記に挙げた共重合可能な単量体のなかでも、下記式(1)で表される化合物又はその塩を用いることがより好ましい。
【0019】
【化1】

【0020】
式(1)の化合物又はその塩は、膏体に含有する薬剤又は化粧料成分の放出性をより高める目的で用いるが、nは1〜12の範囲の整数であり、好ましくはnが1〜6であり、さらに好ましくはnが1〜3である。nが0ではその効果が不十分であり、nが12を超えても効果の向上は見込まれず、また、得られる基剤の硬度と接着力のバランスがとれなくなる場合があるために好ましくない。当該化合物は上記の範囲内でnが1種類である単一化合物であっても、nが異なる複数の化合物の混合物であってもよい。なお、式(1)の化合物としては市販のものを使用することができ、例えば、東亞合成(株)製;商品名「アロニックスM−5600」が挙げられる。
【0021】
式(1)の化合物の使用範囲は、通常0.1〜10モル%であるが、好ましくは0.1〜5モル%である。使用範囲が0.1モル%未満では、その効果は不十分であり、10モル%を超えても効果の向上は見込まれず、また、残存モノマーが生じやすくなるために好ましくない。式(1)の塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩又は、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩等が挙げられる。
【0022】
水溶性共重合体は、ラジカル重合性架橋剤を用いて、得られる共重合体の水溶性が損なわない範囲で少量添加して適度に分岐又は架橋させることもできる。本発明で言う水溶性を損なうとは、後述する測定方法により求めた不溶解分の量が10mlを超える場合である。
ラジカル重合性架橋剤としては、例えば、エチレングリコール・ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール〔オキシエチレン(以下、EOと略記する。)の平均付加モル数=2〜30モル〕・ジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパン・トリ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アリルアミン、ジメチルジ(メタ)アリルアンモニウムクロリドなどを挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0023】
水溶性共重合体の中和率は20〜60モル%である。中和率が20モル%未満では、膏体のpHが低下し過ぎて皮膚刺激性の点で好ましくない。また、中和率が60モル%を越えると、接着力が低下するために接着性と保型性を両立できなくなる。
なお、中和率とは、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸及びアクリル酸と必要に応じて用いるその他の全ての酸基を含む単量体とそれらの塩との合計量に対する塩の割合を示すものである。
目的の中和率を有する水溶性共重合体は、単量体として酸と塩を用いて重合することにより、あるいは酸の重合中や、得られた酸の重合体をアルカリで中和することにより調製されるものである。
【0024】
水溶性共重合体は重合体中に残存する未反応の単量体の含有率は重合体総質量に対して0.5質量%以下である。未反応の残存単量体含有量が0.5質量%を越えると、皮膚刺激性の点で好ましくない。
水溶性共重合体の分子量は、ポリエチレンオキサイドを基準物質とする水系ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略す)法による重量平均分子量100万〜2000万である。
分子量が100万未満では、保型性が不足して支持体から膏体が滲み出したり、膏体の硬度が低下して剥がす際に膏体が皮膚に残留し易くなる。分子量が2000万を越えると、水不溶解分が増加するために水溶性の優れた共重合体を得ることが実質的に困難となる。
【0025】
本発明に用いられる水溶性共重合体は微粉末状である。固形分は90質量%以上であることが好ましい。固形分が90質量%未満では、多価アルコールに対する重合体の分散安定性が悪化する場合がある。
また、粉末全量に対して90質量%以上が粒子径180μm以下の粒子からなり、且つ、75μm以下の粒子が80質量%以下である粒度分布を有する微粉末であることがより好ましい。粒子径が180μm以上の粒子が10質量%を越えると、膏体の表面を滑らかに仕上げることが困難になる場合がある。粒子径が75μm以下の粒子が80質量%を越えると、分子量が低下し易く、また作業性も悪くなる場合がある。
【0026】
水溶性共重合体の合成には、公知の重合法が採用できる。具体的には、ゲル重合法、水溶液重合法及び逆相懸濁重合法などが挙げられる。
重合開始剤としてはレドックス重合開始剤が好ましく、またレドックス重合開始剤の替わりに、光重合開始剤を含有させた単量体水溶液に、紫外線等の活性エネルギー線を照射してラジカル重合させることもできる。
重合開始剤の具体例としては、過硫酸ナトリウムや過硫酸カリウム等の過硫酸アルカリ金属塩、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、クメンヒドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、2,2’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0027】
また、重合に際し、遷移金属塩や亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)、アミン化合物等のレドックス形成用の還元剤を併用することが好ましい。
また、添加する重合開始剤の量は、使用する重合開始剤の種類や目的とする重合体の組成、重合度、粘度などに応じて調整される。通常、全単量体の合計量を基準にして、5〜10,000質量ppmが用いられる。好ましくは10〜5,000質量ppm、特に15〜3,000質量ppmがより好ましい。
【0028】
水溶性共重合体の基剤中の含有量は、基剤全量を基準にして、通常、1〜30質量%であり、好ましくは3〜15質量%である。水溶性共重合体の使用量が1質量%未満の場合には、得られる基剤の保型性や硬度が低下し、皮膚から膏体を剥がす際に、膏体が皮膚に残留し易くなる場合がある。また、30質量%を越えると、得られる基剤の硬度と接着力のバランスがとれなくなる場合がある。
【0029】
(b)多価アルコール
本発明の貼付剤用基剤は、多価アルコールを必須成分とするもので、この多価アルコールは、保湿剤又は保水剤として作用する。
好適に用いられる多価アルコールの具体例としては、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
その使用量は、基剤全量を基準にして、通常、1〜50質量%であり、好ましくは5〜30質量%である。使用量が1質量%未満の場合には、得られる基剤から水分が揮発して乾燥し、基剤中に薬剤が析出する場合がある。また、50質量%を越えると、得られる基剤の硬度と接着力のバランスがとれなくなる場合がある。
【0030】
(c)多価金属化合物
本発明の貼付剤用基剤は、多価金属化合物を必須成分とする。この多価金属化合物は多価金属イオンを放出し、放出された多価金属イオンは、(a)水溶性共重合体中のアニオン基(カルボン酸基、スルホン酸基など)とイオン結合することによって架橋構造を形成して、基剤に接着性、ゲル形成能、高含水性、保型性及び硬度などの特性を付与するのである。
かかる多価金属化合物としては、例えば、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、カドミウムイオン、チタンイオン、クロムイオン、マンガンイオン、鉄イオンなどの多価金属イオンを放出する多価金属化合物を挙げることができる。
本発明の貼付剤は、人の皮膚などに直接貼着して用いられるものであって、安全であることが必要である。その点から多価金属化合物としては、安全性に優れるアルミニウム化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、亜鉛化合物が好ましく用いられる。
【0031】
好適に用いられる多価金属化合物の具体例としては、アルミニウムサクシネート、アルミニウムグリシネート、酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸カルシウム、酢酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン、鉄ミョウバンなどを挙げることができる。また、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0032】
そのうちでも、水酸化アルミニウム、アルミニウムグリシネート、塩化アルミニウムが、ゲル強度が強くなる点から好ましい。
その使用量は、基剤全量を基準にして、通常、0.001〜3質量%であり、好ましくは0.003〜1質量%であり、更に好ましくは0.005〜0.5質量%である。多価金属化合物の使用量が0.001質量%未満の場合には、(a)水溶性共重合体中のアニオン基と架橋構造を形成し難くなり、基剤に接着性、ゲル形成及び保型性などの特性を付与することが困難になる。また、3質量%を越えると、架橋し過ぎて接着力が不足する場合がある。
【0033】
(d)界面活性剤
本発明の貼付剤用基剤は、界面活性剤を必須成分として配合される。本発明の貼付剤用基剤で使用する界面活性剤は、後記の薬剤又は化粧料成分を可溶化及び/又は分散することにより、水性ゲル膏体中でこれらの薬剤等の成分の濃度を均一化させると共に、水性ゲル膏体から薬剤等の成分をバラツキなく均等に且つ安定に放出させるために配合する。そのため、使用する界面活性剤は、配合する薬剤等の成分の種類によっても異なるが、少量の添加で可溶化及び/又は分散でき、そして安全性に優れることから、ノニオン性の界面活性剤が好ましい。
【0034】
具体的なノニオン性界面活性剤には、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(EO=6〜20);ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO=5〜100);ポリオキシエチレンアルキルエーテル(C=12〜14、EO=3〜12);ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO=3〜40)等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(C=6〜12、EO=3〜40);ポリオキシエチレンオレイルエーテル(EO=2〜50)、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(EO=2〜20)等のポリオキシエチレンと高級脂肪族アルコールのエーテル等が挙げられる。
なかでも特に好ましいノニオン性の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(EO=20)とポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO=40)である。
界面活性剤の使用量は、基剤全量を基準にして、通常、0.01〜10質量%であり、特に好ましくは0.03〜5質量%である。界面活性剤の使用量が0.01質量%未満の場合、薬剤又は化粧料成分の各成分を可溶化及び/又は分散することが困難となり、その使用量が10質量%を超えると、水性ゲル膏体の調製時に著しく気泡を生じて貼付剤を製造し難くなるとか、膏体からの薬剤等の成分の放出性を低下させる場合がある。
【0035】
(e)水
本発明の貼付剤で使用される基剤は、水性基剤として用いられ、水を必須成分として含有するものである。水としては、通常、精製水等の水が用いられる。
具体的な水の使用量は、貼付剤用基剤に求められる特性に応じて定められる、上記の(a)〜(d)成分の量に依存するものであるが、通常、10〜85質量%である。

【0036】
(f)水酸基を有する有機酸又はその塩
本発明の貼付剤は上記必須成分(a)〜(e)の他に、水酸基を有する有機酸又はその塩を配合することができる。この水酸基を有する有機酸又はその塩は、上記成分(c)である多価金属化合物から多価金属イオンを放出しやすいように、分子内に有する水酸基とカルボキシル基によって、難溶性金属化合物の溶解を助長するものである。
かかる水酸基を有する有機酸又はその塩としては、皮膚への刺激性や安全性の観点から、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸、グルコン酸及びそれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。特に好ましくは酒石酸、クエン酸、リンゴ酸及びそれらのアルカリ金属塩である。例えば、酒石酸は、上記(c)多価金属化合物である水酸化アルミニウムやアルミニウムグリシネートとの併用によりゲル硬化速度が速くなる点でも好ましい。
また、その使用量は、基剤全量を基準にして、好ましくは0.001〜5質量%であり、特に好ましくは0.003〜2質量%である。
【0037】
(g)水溶性のポリアクリル酸及び/又はその塩
本発明の貼付剤は上記必須成分(a)〜(e)の他に、膏体の皮膚接着性やゲル強度を増強、改善するために増粘剤や粘着付与剤として、水溶性のポリアクリル酸及び/又はその塩を配合することができる。
水溶性のポリアクリル酸及び/又はその塩としては、アクリル酸のカルボキシル基の全てが塩の形態のもの、カルボキシル基の一部が塩の形態のもの、カルボキシル基の全てが酸基のままのもの、またはそれらの2種以上の混合物などのいずれもが使用できる。
ポリアクリル酸のカルボキシル基の一部又は全部が塩になっている場合は、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられるが、そのうちでもナトリウム塩であることが安全性及び生産性の点から好ましい。
【0038】
好適に使用し得る水溶性のポリアクリル酸及び/又はその塩は、市販されているので、それらをそのまま用いてもよい。
市販の水溶性のポリアクリル酸及び/又はその塩としては、例えば、日本純薬株式会社製の粉末ポリアクリル酸部分中和物(商品名「アロンビスAH-105」)、日本純薬株式会社製の粉末ポリアクリル酸ナトリウム(商品名「アロンビスS」)、日本純薬株式会社製のポリアクリル酸水溶液(濃度20質量%、商品名「ジュリマーAC-10H」)、日本純薬株式会社製の粉末状架橋型ポリアクリル酸(商品名「ジュンロンPW-110」)などを挙げることができる。これらは単独で使用しても、または2種以上を併用してもよい。
その使用量は、基剤全量を基準に、通常、1〜30質量%であり、好ましくは3〜15質量%である。水溶性のポリアクリル酸及び/又はその塩の使用量が1質量%未満の場合には、得られる基剤の皮膚接着性が低下したり、膏体のゲル強度が不足する場合がある。また、30質量%を越えると、得られる基剤の硬度と接着力のバランスがとれなくなる場合がある。
【0039】
(h)炭素数2〜6の一価アルコール
本発明の貼付剤用基剤には、目的に応じて、炭素数2〜6の一価アルコールを配合することができる。
この炭素数2〜6の一価アルコールは、清涼化剤や、疎水性の薬剤や添加物を基剤中に均一に溶解させる溶解補助剤として、或いは経皮吸収促進剤として作用する。
上記の炭素数2〜6の一価アルコールとしては、安全性や効果の点から、エタノール、イソプロパノールが好ましく用いられる。特に好ましくはエタノールである。
その使用量は、基剤全量を基準にして、好ましくは0.1〜20質量%であり、より好ましくは1〜15質量%である。使用量が20質量%を越える場合には、皮膚に発疹や炎症を生じ易くしてしまう。
【0040】
(i)長鎖脂肪酸及び/又はそのエステル
本発明の貼付剤用基剤には、目的に応じて、長鎖脂肪酸及び/又はそのエステルを配合することができる。この長鎖脂肪酸及び/又はそのエステルは、基剤に配合する疎水性の添加物や、薬剤の溶解補助剤として、或いは薬剤の経皮吸収性を向上させるために用いられる。
長鎖脂肪酸又はそのエステルとしては、安全性や効果の点から、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸、並びにそれらのエステルが好ましく用いられる。
その使用量は、基剤全量を基準にして、好ましくは0.1〜20質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。使用量が0.1質量%未満の場合には、疎水性の添加物や薬剤の溶解性の向上に寄与することが少なく、添加物や薬剤が基剤中で析出したり、薬剤の経皮吸収性が低下する場合がある。
【0041】
上記に記述した成分(f)〜(i)は各々単独で添加使用しても、又は2種以上を併用して上記必須成分(a)〜(e)に添加してもよい。
それらの組み合わせとしては、以下のようなものが例えば例示できる。
1)(f)水酸基を有する有機酸又はその塩と(g)水溶性のポリアクリル酸及び/又
はその塩との組み合わせ。
2)(f)水酸基を有する有機酸又はその塩と(h)炭素数2〜6である一価の低級ア
ルコール。
3)(f)水酸基を有する有機酸又はその塩と(i)長鎖脂肪酸及び/又はそのエステ
ルの組み合わせ。
4)(g)水溶性のポリアクリル酸及び/又はその塩と(i)長鎖脂肪酸及び/又はそ
のエステルの組み合わせ。
5)(h)炭素数2〜6の一価アルコールと(i)長鎖脂肪酸及び/又はそのエステル
の組み合わせ。
6)(f)水酸基を有する有機酸又はその塩、(g)水溶性のポリアクリル酸及び/又
はその塩、(h)炭素数2〜6の一価アルコールとの組み合わせ。
7)(f)水酸基を有する有機酸又はその塩、(g)水溶性のポリアクリル酸及び/又
はその塩、(h)炭素数2〜6の一価アルコールと(i)長鎖脂肪酸及び/又はそ
のエステルの組み合わせ。
【0042】
[1.2]薬剤又は化粧料成分
本発明の貼付剤は、医薬貼付剤又は化粧用貼付剤に用いられるもので、かかる用途に使用するに際して、上記[1.1]貼付剤用基剤に、薬剤又は化粧料成分を配合する。
かかる薬剤又は化粧料成分としては、抗炎症剤、鎮痛剤、気管支拡張剤、抗喘息剤や強心剤などの医薬品、又は美白剤などの化粧料成分などを挙げることができる。
薬剤の具体例としては、例えば、インドメタシン、ケトプロフェン、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、フルルビプロフェン、イブプロフェン、スプロフェン、ロキソプロフェン、フェルビナク、プロキシカム、メロキシカム、ツロブテロール、ジフェンヒドラミン、ジブカイン、プロカイン、リドカイン、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、ニコチン、ビタミン類等が挙げられる。
【0043】
化粧料成分として美白剤の具体例としては、例えば、アスコルビン酸ナトリウム、リン酸L−アスコルビルマグネシウム、L−アスコルビン酸硫酸エステル二ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸ステアリル等のアスコルビン酸誘導体及びその塩、コウジ酸及びその誘導体、カンゾウエキス、プラセンタエキス、ハイドロキノン及びその誘導体、アルブチン、イソフラボン誘導体、p−ヒドロキシ桂皮酸誘導体、ゲラニイン、没食子酸、システイン、グルタチオン、コロイド硫黄、テプノレン、2−クロマノン誘導体、スピロエーテル化合物等が挙げられる。
薬剤又は化粧料成分の配合比率は、貼付剤全量を基準にして0.01〜20質量%が好ましい。
【0044】
[1.3]その他の成分
本発明の貼付剤には、上記成分以外にも、貼付剤に一般に用いられる添加物、すなわち、製造時の適性や使用時の品質を改善するために、酸化防止剤、防腐剤、乳化剤などの各種成分の1種又は2種以上を配合することができる。
かかる、その他の成分としては、L−メントール、カンフル、チモール、ハッカ油、ヒマシ油、ウイキョウ油、ダイウイキョウ油、ケイヒ油、チョウジ油、チアミン油、テレピレン油、ユーカリ油、ラベンダー油、レモン油、オレンジ油、ベルガモット油、ローズ油等の香料・清涼化剤;唐辛子エキス、サンショウエキス等の温感剤;ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等の酸化防止剤;パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル等の防腐剤;乳化剤;カオリン、酸化チタン、無水ケイ酸等の無機粉末などを挙げることができる。
香料・清涼化剤、無機添加物などの配合比率の具体例としては、貼付剤全量を基準にして0.1〜20質量%である。
【0045】
2.水性ゲル膏体の調製方法
本発明の貼付剤を構成する水性ゲル膏体の調製方法は特に制限されない。
一般的には、(a)水溶性共重合体、(b)多価アルコール、(c)多価金属化合物、(d)界面活性剤、及び必要に応じてその他の成分と、[1.2]薬剤又は化粧料成分を混合した分散スラリーと、(e)水に(f)水酸基を有する有機酸又はその塩を溶解して必要に応じてその他の成分を配合した水性成分とを混合して、室温で均一になるまで混練し減圧下で脱泡して含水性の膨潤ゲル(水性ゲル膏体)を得ることができる。
好ましくは、(d)界面活性剤で[1.2]薬剤又は化粧料成分を予め可溶化及び/又は分散しておき、上記成分(a)〜(c)及び必要に応じてその他の成分を加えて分散スラリーを作成する。そこに、別途(e)水に(f)水酸基を有する有機酸又はその塩を溶解して必要に応じてその他の成分を配合した水性成分を加えて混合し、上記と同様に室温で均一になるまで混練し減圧下で脱泡して水性ゲル膏体を得ることができる。
【0046】
3.貼付剤の製造方法
本発明の貼付剤の製造方法は特に制限されない。
一般的には、[1.1]貼付剤用基剤と[1.2]薬剤又は化粧料成分、及び必要に応じて[1.3]その他の成分からなる上記2.水性ゲル膏体を、不織布、編布、織布、紙、プラスチックフィルムなどからなる支持体上の展着などにより層状に施す。
ついで、必要に応じて、その表面を、例えばポリエチレンフィルムなどのような離型性のフィルムやシートなどで覆うことによって貼付剤を製造することができる。使用の際にはこれらの離型性のフィルム等を剥して直接皮膚に貼付して使用することができる。
【0047】
4.貼付剤の用途
本発明の貼付剤は種々の用途に使用可能である。
例えば、抗炎症剤、気管支拡張剤、喘息治療剤や狭心症治療剤などの医薬品、美白剤やフェイスマスクなどの化粧品及び冷感剤や冷却シート、温感剤や携帯式カイロ等の医療用具や日用品などの領域でも貼付剤として使用できる。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
尚、以下の各例において、特に表示されていない場合の「%」は、「質量%」を意味する。
【0049】
(合成例1)
<重合体1の合成>
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液180.7g(10モル%相当)、アクリル酸ナトリウムの36質量%水溶液309.0g(30モル%相当)、アクリル酸170.4g(60モル%相当)及び純水539.9gを混合して単量体濃度31質量%の単量体水溶液1.2kgを調製した。この単量体水溶液をステンレス製デュアー瓶(反応容器)に仕込み、反応容器内の温度を10℃に温調しながら30分間窒素バブリングを行った。次いで重合開始剤として、t−ブチルハイドロパーオキサイド30ppm(全単量体の合計量に対しての質量基準に換算、以下同様)、過硫酸ナトリウム200ppm及びエリソルビン酸ナトリウム30ppmを添加し、そのまま8時間放置して断熱静置レドックス重合を行った。8時間の反応終了後、生成した含水ゲル状重合体を反応容器から取り出し、チョッパーに投入して挽肉状に細断した。細断された含水ゲルを熱風乾燥機で乾燥し、粉砕機で粉砕した。更に、83meshのステンレス製標準篩(JIS Z 8801、内径200mm、目開き180μm)を用いて180μmよりも大きい粒子を除去した後、仕上げ乾燥して目的とする微粉末状の重合体1を得た。
【0050】
(合成例2)
<重合体2の合成>
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液356.9g(20モル%相当)、アクリル酸ナトリウムの36質量%水溶液203.4g(20モル%相当)、アクリル酸168.3g(60モル%相当)及び純水471.4gを混合して単量体濃度35質量%の単量体水溶液1.2kgを調製した。それ以外は合成例1と同様に操作して目的とする微粉末状の重合体2を調製した。
【0051】
(合成例3)
<重合体3の合成>
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液507.4g(30モル%相当)、アクリル酸ナトリウムの36質量%水溶液192.8g(20モル%相当)、アクリル酸132.9g(50モル%相当)及び純水366.9gを混合して単量体濃度38質量%の単量体水溶液1.2kgを調製した。それ以外は合成例1と同様に操作して目的とする微粉末状の重合体3を調製した。
【0052】
(合成例4)
<重合体4の合成>
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液179.0g(10モル%相当)、アクリル酸ナトリウムの36質量%水溶液204.1g(20モル%相当)、アクリル酸197.0g(70モル%相当)及び純水619.9gを混合して単量体濃度30質量%の単量体水溶液1.2kgを調製した。それ以外は合成例1と同様に操作して目的とする微粉末状の重合体4を調製した。
【0053】
(合成例5)
<重合体5の合成>
合成例1と同様に、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液180.7g(10モル%相当)、アクリル酸ナトリウムの36質量%水溶液309.0g(30モル%相当)、アクリル酸170.4g(60モル%相当)及び純水539.9gを混合して単量体濃度31質量%の単量体水溶液1.2kgを調製して重合した後、細断、乾燥した。次に、微粉末状の重合体の粒子径がさらに細かくなるように粉砕機の設定を変えて粉砕した。それ以外は合成例1と同様に操作して目的とする微粉末状の重合体5を調製した。
【0054】
(合成例6)
<重合体6の合成>
81.2質量%のスチレンスルホン酸ナトリウムを102.6g(10モル%相当)、アクリル酸ナトリウムの36質量%水溶液316.7g(30モル%相当)、アクリル酸174.7g(60モル%相当)及び純水606.0gを混合して単量体濃度31質量%の単量体水溶液1.2kgを調製したこと、及び、重合開始剤として、t−ブチルハイドロパーオキサイド100ppm、過硫酸ナトリウム200ppm及びエリソルビン酸ナトリウム100ppmを添加したこと以外は合成例1と同様に操作して目的とする微粉末状の重合体6を調製した。
【0055】
(合成例7)
<重合体7の合成>
81.2質量%のスチレンスルホン酸ナトリウムを30.3g(3モル%相当)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液127.3g(7モル%相当)、アクリル酸ナトリウムの36質量%水溶液311.3g(30モル%相当)、アクリル酸171.8g(60モル%相当)及び純水559.3gを混合して単量体濃度31質量%の単量体水溶液1.2kgを調製したこと、及び、重合開始剤として、t−ブチルハイドロパーオキサイド80ppm、過硫酸ナトリウム200ppm及びエリソルビン酸ナトリウム80ppmを添加したこと以外は合成例1と同様に操作して目的とする微粉末状の重合体7を調製した。
【0056】
(合成例8)
<重合体8の合成>
N−ビニルピロリドンを50.1g(10モル%相当)、アクリル酸ナトリウムの36質量%水溶液353.1g(30モル%相当)、アクリル酸194.9g(60モル%相当)及び純水601.9gを混合して単量体濃度31質量%の単量体水溶液1.2kgを調製したこと、及び、重合開始剤として、t−ブチルハイドロパーオキサイド300ppm及びエリソルビン酸ナトリウム450ppmを添加したこと以外は合成例1と同様に操作して目的とする微粉末状の重合体8を調製した。
【0057】
(合成例9〜12)
<重合体9〜12の合成>
式(1)の化合物としてアクリル酸ダイマー(商品名「アロニックスM−5600」;東亞合成(株)製)を用い、表1の単量体組成になるように単量体水溶液を調製した以外は合成例1、6、7、8と同様に操作して、それぞれ目的とする微粉末状の重合体9〜12を調製した。
【0058】
(比較合成例1)
<比較重合体1の合成>
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液775.1g(50モル%相当)、アクリル酸ナトリウムの36質量%水溶液220.9g(25モル%相当)、アクリル酸60.9g(25モル%相当)及び純水143.1gを混合して単量体濃度44質量%の単量体水溶液1.2kgを調製した。それ以外は合成例1と同様に操作して目的とする微粉末状の比較重合体1を調製した。
【0059】
(比較合成例2)
<比較重合体2の合成>
合成例1と同様の単量体水溶液に、重合開始剤として、t−ブチルハイドロパーオキサイド300ppm、過硫酸ナトリウム200ppm及びエリソルビン酸ナトリウム300ppm、及び二官能性架橋剤としてN,N‘−メチレンビスアクリルアミド150ppmを添加した。それ以外は合成例1と同様に操作して目的とする微粉末状の比較重合体2を調製した。
【0060】
(比較合成例3)
<比較重合体3の合成>
ビニルスルホン酸ナトリウムの25質量%水溶液229.2g(10モル%相当)、アクリル酸ナトリウムの36質量%水溶液345.2g(30モル%相当)、アクリル酸190.5g(60モル%相当)及び純水435.1gを混合して単量体濃度31質量%の単量体水溶液1.2kgを調製したこと、及び、重合開始剤として、t−ブチルハイドロパーオキサイド5ppm、過硫酸ナトリウム100ppm及びエリソルビン酸ナトリウム5ppmを添加したこと以外は合成例1と同様に操作して目的とする微粉末状の比較重合体3を調製した。
【0061】
(比較合成例4)
<比較重合体4の合成>
アクリル酸ナトリウムの36質量%水溶液566.2g(50モル%相当)、アクリル酸156.2g(50モル%相当)及び純水477.6gを混合して単量体濃度30質量%の単量体水溶液1.2kgを調製した。それ以外は合成例1と同様に操作して目的とする微粉末状の比較重合体4を調製した。
【0062】
次に、合成例1〜12で得られた重合体1〜12並び比較合成例1〜4で得られた比較重合体1〜4の物性を以下に示す試験方法に従って行った。その結果を表1に示す。
【0063】
(試験方法)
◇固形分
合成例1〜12並びに比較合成例1〜4で得られた重合体を各々1.00gアルミカップに計量し、105℃の乾燥機で3時間過熱して加熱減量から固形分を求めた。
【0064】
◇0.2質量%水溶液粘度
純水500mlに合成例1〜12並びに比較合成例1〜4で得られた重合体を各々1.00gずつ加えて3時間攪拌し、十分に溶解して0.2質量%濃度の重合体水溶液を調製した。この重合体水溶液の粘度をB型粘度計(東京計器(株)製、形式:BM型)により、30℃、30rpmのローター回転数で測定した。
【0065】
◇未反応単量体(残存モノマー)の含有量
80容量%アセトニトリル水溶液20mlに、合成例1〜12並びに比較合成例1〜4で得られた重合体を各々1.00g添加して1時間攪拌した後、1時間静置して抽出を行った。この上澄み液を採取し、高速液体クロマトグラフィー法により測定して、各々の単量体による検量線法で定量した。使用した分離カラムは、(株)日立製作所製HPLCパックドカラム#3056であり、溶離液は0.1質量%リン酸緩衝液である。未反応単量体の含有量は重合体全量に対する質量%で算出した。
【0066】
◇重量平均分子量
合成例1〜12並びに比較合成例1〜4で得られた重合体の分子量は、水系GPC法により測定した。使用した分離カラムは、東ソー(株)製水系GPC用カラムTSKgel−G6000PWXLを2本と東ソー(株)製水系GPC用カラムTSKgel−G3000PWXLを1本であり、これら3本を直列に繋いで使用した。溶離液には溶質として硫酸ナトリウム(1.33g/l)と水酸化ナトリウム(0.33g/l)を含む水溶液を用いた。重量平均分子量は、ポリエチレンオキサイドを基準物質として検量線を作成し算出した。
【0067】
◇粒子径180μm以上の粒子の含有量
合成例1〜12並びに比較合成例1〜4で得られた重合体を各々100g秤量し、83meshのステンレンス製標準篩(JIS Z 8801、内径200mm、目開き180μm)で篩分した。粒子径180μm以上の粒子の含有量は重合体全量に対する質量%で算出した。
【0068】
◇粒子径75μm以下の粒子の含有量
合成例1〜12並びに比較合成例1〜4で得られた重合体を各々100g秤量し、200meshのステンレンス製標準篩(JIS Z 8801、内径200mm、目開き75μm)で篩分した。粒子径75μm以下の粒子の含有量は重合体全量に対する質量%で算出した。
【0069】
◇不溶解分
合成例1〜12並びに比較合成例1〜4で得られた重合体について、上記0.2質量%水溶液粘度の測定と同様に調製した0.2質量%濃度の重合体水溶液400mlを83meshのステンレス製標準篩(JIS Z 8801、内径200mm)で、濾過し、篩上に残った不溶解物の容量を測定した。
【0070】
【表1】



表中の略号は以下のものを示す。
ATBS-Na:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム
ANa:アクリル酸ナトリウム
AA:アクリル酸
NaSS:スチレンスルホン酸ナトリウム
NVP:N−ビニルピロリドン
SVS:ビニルスルホン酸ナトリウム
尚、ATBSは東亞合成株式会社の登録商標である。
【0071】
◎実施例1〜21及び比較例1〜6
[貼付剤の製造方法]
1)貼付剤用基剤の調製
下記の表2〜4に示す各成分を各表に示す割合(質量部)で混合して貼付剤用基剤を調整した。まず、薬剤又は化粧料成分を界面活性剤に加えて適度に加温し可溶化した。これにグリセリンを加えて十分に混合後、水溶性共重合体、多価金属化合物およびその他の成分を加えて攪拌し、グリセリンスラリーを調製した。別途、精製水に酒石酸を溶解した水溶液(水相)を調整しておき、グリセリンスラリーに水相を加えて攪拌した後、混合装置(ニーダー)を用いて、室温で均一になるまで混練し減圧下で脱泡して水性ゲル膏体である貼付剤用基剤を調製した。
2)貼付剤の製造
上記1)で得られた水性ゲル膏体を、伸縮性不織布(目付が105g/m2のポリエステル製不織布)に12g/140cm2の塗布量で塗布し、剥離フィルムを被せて貼付剤を製造した。
3)包装・成型
上記2)で得られた貼付剤を、ホイルラミネートフィルム2枚を用いて貼付剤の両面方向から挟み込んだ後、フィルムの周囲をヒートシールして気密包装した。これを、25℃、65%RHで720時間保管・成型した。
【0072】
[貼付剤の評価方法]
成型された貼付剤を、気密包装材から取り出して、以下に示す項目について評価した。
【0073】
a)接着性:
貼付剤を5名以上の腕に貼り付けて剥がれ落ちるまでの時間を測定し、その平均値か
ら下記の基準で接着性を評価した。
◎: 剥がれ落ちるまでの平均時間が5時間以上。
○: 剥がれ落ちるまでの平均時間が3時間以上5時間未満。
△: 剥がれ落ちるまでの平均時間が3時間未満。
【0074】
b)耐滲み出し性:
ポリエステル製不織布の裏面を目視により観察して、下記の基準で評価した。
○: 全く滲み出しがない。
△: 一部に滲み出しがある。
×: 全体に滲み出しがある。
【0075】
c)膏体残り:
貼付剤を腕に貼り付けてさらに掌で軽く圧着した後、すぐに貼付剤を剥がし取り、腕
に残った膏体の有無を目視により観察し、下記の基準で評価した。
○: 膏体が腕に全く残っていない。
△: 膏体の一部が腕に残った。
【0076】
d)硬度:
約90°に曲げた肘の外側に貼付剤を貼り付けて掌で軽く圧着した後、肘を伸ばして
密着状態を目視により観察した。
◎: 浮いた部分が全くなく、良好に密着している。
○: 一部に浮きが見られたが、全体的に安定して密着している。
△: 肘全体に浮いた部分が見られた。
【0077】
e)膏体表面の仕上り状態:
剥離フィルムを剥がして貼付剤の膏体表面の仕上り状態を目視により観察して、下記
の基準で評価した。
○: 表面が滑らかな平坦であり、良好な仕上りである。
△: 表面に少し凹凸が見られる。
【0078】
f)薬物放出性:
貼付剤を直径φ35mmの円形に切り抜き試験片とした。次いで、内径φ20mm、
容積20mlのガラス製フランツ型拡散セルにレシーバー液(リン酸緩衝液/PEG
400=60/40質量%)を満たして液温を32℃に調節し、試験片のゲル面にセル
ロース膜を介してレシーバー液に接触させて密封した。30分、1、2、3、4、5時
間の各時間経過後にレシーバー液を採取し、高速液体クロマトグラフィー法により測定
し、検量線法で定量して各時間経過時の累積薬物濃度を求めた。使用した分離カラムは
(株)資生堂製HPLCカラムUG120であり、溶離液は0.1mol%リン酸緩衝液
/アセトニトリル混合液を使用した。
【0079】
<インドメタシン>
◎: 5時間後の累積薬物濃度が10ppm以上。
○: 5時間後の累積薬物濃度が5ppm以上、10ppm未満。
△: 5時間後の累積薬物濃度が5ppm未満。
<ケトプロフェン>
◎: 5時間後の累積薬物濃度が25ppm以上。
○: 5時間後の累積薬物濃度が20ppm以上、25ppm未満。
△: 5時間後の累積薬物濃度が20ppm未満。
<フルルビプロフェン>
◎: 5時間後の累積薬物濃度が20ppm以上。
○: 5時間後の累積薬物濃度が15ppm以上、20ppm未満。
△: 5時間後の累積薬物濃度が15ppm未満。
<システイン>
◎: 5時間後の累積薬物濃度が30ppm以上。
○: 5時間後の累積薬物濃度が25ppm以上、30ppm未満。
△: 5時間後の累積薬物濃度が25ppm未満。
<持続性>
1時間当りに増加した累積薬物濃度の増加量が10%未満となる時間
を持続性(時間)とした。
【0080】
【表2】


表中の名称は以下のものを示す。
PEOSM(EO=20モル):ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート
PEO硬化ヒマシ油:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
アロンビスAH-105:粉末状ポリアクリル酸部分中和物(日本純薬製)
ジュリマーAC-10H:濃度20質量%ポリアクリル酸水溶液(日本純薬製)
ジュンロンPW-110:粉末状架橋型ポリアクリル酸(日本純薬製)
尚、「アロンビス」、「ジュリマー」及び「ジュンロン」は日本純薬株式会社の登録商標である。
【0081】
【表3】

【0082】
【表4】

【0083】
表2〜4に示すように、実施例の貼付剤は比較例に比べて良好な結果が得られた。
すなわち、実施例1〜21において、各々の貼付剤の接着性は極めて良好であった。特に、実施例1、4及び5では、ゲル膏体の硬度も良好に確保され、薬物放出性に優れていた。また、基剤に水溶性共重合体の他、水溶性ポリアクリル酸及びその塩を添加した実施例6〜8も、接着性及び硬度も良好なものであった。
基剤の水溶性共重合体で、スチレンスルホン酸を共重合した重合体6(実施例9)を用いたものや、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とスチレンスルホン酸を併用して共重合した重合体7(実施例10)についても、接着性及び硬度は良好であり薬物の放出性にも優れるものであった。また、共重合可能な単量体として式(1)で示される化合物を共重合した重合体9〜12(実施例18〜21)についても、接着性及び硬度は良好であり薬物放出性に優れるものであった。
一方、水溶性共重合体として、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の代わりにビニルスルホン酸を共重合した比較例3では、接着性、滲み出し、膏体残り、硬度、表面仕上りの点においては問題はなかったものの、薬物の放出性が著しく劣るものであった。さらに、水溶性共重合体で、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を50モル%にした比較重合体1を用いた比較例1では、薬物の放出性については問題がなかったものの著しく滲み出しを生じた上、接着性、膏体残り、硬度、表面仕上りの点で難があった。又、水溶性共重合体として、水不溶解成分が多くて水溶性が十分でない比較重合体2を用いた比較例2では、接着性、硬度及び表面仕上げの点で難があった。
なお、これらの実施例の傾向は、実施例12〜17に示すように、使用する界面活性剤や薬物の種類、美白剤成分の配合等の条件が違っていても同じであった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の貼付剤は、膏体から薬剤又は化粧料成分の放出性に優れ、基剤の接着性、保型性に優れ、膏体の滲み出しや皮膚への残留が無く、長時間にわたって貼付可能である。しかも基剤を構成する水溶性重合体中の未反応単量体含有量が少なく、赤斑、かぶれ、発疹などの皮膚障害を防止することができることから、広く医薬品・化粧品分野での貼付剤及び医療用具や日用品への応用展開が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】実施例1〜4の薬物放出性を示す図面である(薬物:インドメタシン)。
【0086】
【図2】実施例6〜8の薬物放出性を示す図面である(薬物:インドメタシン)。
【0087】
【図3】実施例9〜11の薬物放出性を示す図面である(薬物:インドメタシン)。
【0088】
【図4】実施例12〜14の薬物放出性を示す図面である(薬物:ケトプロフェン)。
【0089】
【図5】実施例15及び16の薬物放出性を示す図面である(薬物:フルルビプロフェン)。
【0090】
【図6】実施例17の美白成分(L−システイン)の放出性を示す図面である。
【0091】
【図7】実施例18及び19での薬物放出性を示す図面である(薬物:インドメタシン)。
【0092】
【図8】実施例20及び21での薬物放出性を示す図面である(薬物:インドメタシン)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(e)を必須成分として含有することを特徴とする貼付剤用基剤と経皮吸収性の薬剤又は化粧料成分とを含有する水性ゲル膏体を支持体上に施してなる貼付剤。
(a)水溶性共重合体は、
構成単量体の1〜30モル%が、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び/又はその塩、スチレンスルホン酸及び/又はその塩、N−ビニルピロリドンから選択される1種又は2種以上の単量体であり、70〜99モル%がアクリル酸及び/又はその塩、並びに共重合可能なその他の単量体が0〜10モル%からなる単量体混合物を重合して得られる1種又は2種以上の水溶性共重合体であり、酸の20〜60モル%が中和されており、微粉末で未反応単量体の含有量が0.5質量%以下である水溶性共重合体、
(b)多価アルコール
(c)多価金属化合物
(d)界面活性剤
(e)水
【請求項2】
請求項1記載の貼付剤用基剤の(a)水溶性共重合体で、共重合可能なその他の単量体が下記式(1)で表される化合物又はその塩であることを特徴とする貼付剤。
【化1】

【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の貼付剤用基剤において、基剤全量を基準に、各成分の配合割合が下記のとおりであることを特徴とする貼付剤。
(a)水溶性共重合体:1〜30質量%
(b)多価アルコール:1〜50質量%
(c)多価金属化合物:0.001〜3質量%
(d)界面活性剤:0.01〜10質量%
(e)水:残部
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の貼付剤用基剤が、さらに下記成分の1種又は2種以上を有することを特徴とする貼付剤。
(f)水酸基を有する有機酸又はその塩
(g)水溶性のポリアクリル酸及び/又はその塩
(h)炭素数が2〜6である一価の低級アルコール
(i)長鎖脂肪酸及び/又はそれらのエステル
【請求項5】
経皮吸収性の薬剤又は化粧料成分が界面活性剤により可溶化及び/又は分散されている請求項1〜4のいずれかに記載の貼付剤。
【請求項6】
界面活性剤がノニオン性界面活性剤である請求項1〜5のいずれかに記載の貼付剤。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−40685(P2009−40685A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320425(P2005−320425)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【出願人】(390039974)日本純薬株式会社 (13)
【Fターム(参考)】