説明

貼付剤

【課題】消炎鎮痛剤の皮膚透過性が高く、剥離後のべたつきがなく、かつ貼り付けた後にはがれ・めくれが少ない貼付剤を提供する。
【解決手段】(A)水難溶性非ステロイド系消炎鎮痛剤と、(B)N−メチル−2−ピロリドンと、(C)スメクタイト系粘土鉱物と、(D)非イオン性界面活性剤と、(E)グリセリン5〜25質量%と、(F)ポリアクリル酸、その塩又はその部分中和物と、(G)多価金属塩とを含有し、含水率が55〜80質量%である含水性膏体が、支持体に積層されてなる貼付剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水難溶性非ステロイド系消炎鎮痛剤を含有する含水性膏体と、支持体とからなる貼付剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアクリル酸、その塩又はその部分中和物と、多価金属塩の架橋体とを含有する水性膏体に、フェルビナク等の水難溶性非ステロイド系消炎鎮痛剤を配合した消炎鎮痛用貼付剤が提案されているが、これらの水難溶性非ステロイド系消炎鎮痛剤は水に難溶であるため製剤化が困難であり、上記消炎鎮痛剤の皮膚透過量(経皮吸収)が悪くなるといった問題があった。消炎鎮痛剤の皮膚透過量を促進させるためには可溶化剤が有効であるが、可溶化剤を用いると、べたつきを生じるという問題があった。さらに、貼付剤の有効性及び使用性から、貼り付けた後に、はがれ・めくれが少ないことが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−020274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、さらに、貼付剤の使用性から、貼り付けた後に、はがれ・めくれが少ないことが求められることから、消炎鎮痛剤の皮膚透過性が高く、剥離後のべたつきがなく、かつ貼り付けた後にはがれ・めくれが少ない貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、(F)ポリアクリル酸、その塩又はその部分中和物を(G)多価金属塩で架橋させた架橋体とを含有する含水性膏体に、(A)フェルビナク等の水難溶性非ステロイド系消炎鎮痛剤、(B)N−メチル−2−ピロリドン、(C)スメクタイト系粘土鉱物、(D)非イオン性界面活性剤、及び(E)グリセリン5〜25質量%を配合し、かつ含水率を55〜80質量%とすることで、(A)消炎鎮痛剤の皮膚透過性が高く、剥離後のべたつきがなく、かつ貼り付けた後にはがれ・めくれが少ない貼付剤が得られることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0006】
従って、本発明は下記貼付剤を提供する。
[1].(A)水難溶性非ステロイド系消炎鎮痛剤と、(B)N−メチル−2−ピロリドンと、(C)スメクタイト系粘土鉱物と、(D)非イオン性界面活性剤と、(E)グリセリン5〜25質量%と、(F)ポリアクリル酸、その塩又はその部分中和物と、(G)多価金属塩とを含有し、含水率が55〜80質量%である含水性膏体が、支持体に積層されてなる貼付剤。
[2].(B)/(C)で表される、含水性膏体中の(B)成分と(C)成分との含有質量比が8以下である[1]記載の貼付剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、消炎鎮痛剤の皮膚透過性が高く、剥離後のべたつきがなく、かつ貼り付けた後にはがれ・めくれが少ない、消炎鎮痛剤含有貼付剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の貼付剤は、(A)水難溶性非ステロイド系消炎鎮痛剤と、(B)N−メチル−2−ピロリドンと、(C)スメクタイト系粘土鉱物と、(D)非イオン性界面活性剤と、(E)グリセリン5〜25質量%と、(F)ポリアクリル酸、その塩又はその部分中和物と、(G)多価金属塩とを含有し、含水率が55〜80質量%である含水性膏体が、支持体に積層されてなる貼付剤である。
【0009】
(A)水難溶性非ステロイド系消炎鎮痛剤
本発明において、「水難溶性薬物」とは、20℃の水に対する溶解度が0〜30mg/mLであり、好ましくは0〜10mg/mLである薬物を示す。水難溶性非ステロイド系消炎鎮痛剤としては、その種類は特に限定されず、具体的には、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、アセトアミノフェン、インドメタシン、ブフェキサマック、アスピリン、ジクロフェナック、アルクロフェナック、フェンクロフェナック、フェルビナク、エトドラック、フルルビプロフェン、メフェナミック、メクロフェナミック、ピロキシカム等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。特に、本発明においては、ケトプロフェン、インドメタシン、フェルビナク、フルルビプロフェン等が好適に使用でき、顕著な皮膚透過性を示す。
【0010】
(A)成分の含有量は、含水性膏体中0.1〜5質量%が好ましく、0.2〜2質量%がより好ましく、0.4〜2質量%がさらに好ましい。含有量が少ないと消炎鎮痛効果が得られず、多すぎる場合は皮膚刺激等が生じる場合がある。
【0011】
(B)N−メチル−2−ピロリドン
N−メチル−2−ピロリドンを用いることで、(A)成分の消炎鎮痛剤を溶解し、皮膚透過性を高めることができる。(B)成分の含有量は、(A)成分含有量の1〜20倍(質量)が好ましく、2.5〜12倍がより好ましい。(B)成分の含有量が(A)成分含有量の1倍未満だとフェルビナクの溶解性が悪くなるおそれがあり、20倍を超えると、皮膚刺激等が生じるおそれがある。なお、表記倍率は、小数点第1位を四捨五入した値である。(B)成分の含有量は、含水性膏体中0.5〜10質量%が好ましく、2〜8質量%がより好ましい。
【0012】
(C)スメクタイト系粘土鉱物
スメクタイト系粘土鉱物を用いることで、(A)成分の皮膚透過性を損なうことなく(B)成分配合によるべたつきを抑制することができる。スメクタイト系粘土鉱物として、具体的にはベントナイト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等を挙げることができ、これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いられる。このようなスメクタイト系粘土鉱物は、天然より産出されるものとしては、例えばモンモリロナイトを含有する製品として、水澤化学工業(株)のベンクレーSL、(株)ホージュンのベントナイトW、ベンゲル、クニミネ工業(株)のクニピアG及びクニピアF、(株)ツチヨシアクティーのウエスタンボンド等、サポナイトを含有する製品として、クニミネ工業(株)のスメクトンSA、バンダービルド社のビーガムT、ビーガムHV、ビーガムF及びビーガムK等、ヘクトライトを含有する製品として、(株)ボルクレイ・ジャパンのヘクタブライト、ヘクタライト等が市販されている。また、合成スメクタイト系粘土鉱物も各種販売されており、水澤化学工業(株)社のイオナイト、コープケミカル(株)社からルーセンタイトSWN、SPN、SAN等が市販されている。
【0013】
(C)成分の含有量は、含水性膏体中0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜3質量%がより好ましく、0.5〜2質量%がさらに好ましい。0.1質量%未満だと、べたつき抑制の効果が得られない場合があり、5質量%を超えると、粘着力が低下してはがれやすくなるおそれがある。
【0014】
本発明においては、(B)/(C)で表される(B)成分と(C)成分の含有質量比は8以下が好ましい。この比が8を超えると、(B)成分配合による皮膚へのべたつき抑制が不十分になるおそれがある。さらに、べたつきを抑制し、かつはがれ・めくれを抑制する点からは、上記比率が1.5〜8がより好ましい。
【0015】
(D)非イオン性界面活性剤
非イオン性界面活性剤を用いることで、(A)成分の消炎鎮痛剤を溶解させ、含水性膏体中に十分に混合させる作用をする。非イオン性界面活性剤は特に限定されず、従来使用されている合成及び天然界面活性剤であって、皮膚に対して安全なものを使用することができ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0016】
例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、ビタミン等が挙げられる。具体的には、ジグリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレン(10)グリセリルモノオレエート、ポリオキシエチレン(25)ラウリルエーテル、ソルビタンモノオレエート、グリセリルモノオレエート、デカグリセリルモノオレエート、ジグリセリルジオレエート、ヘキサグリセリルモノラウレート、プロピレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(60)ソルビットテトラオレエート、ポリオキシエチレン(40)モノステアレート、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(5)オレイン酸アミド、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)ブロック共重合体等が挙げられる。
【0017】
中でも、HLB値が10以上の非イオン界面活性剤が好ましく、具体的には、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(HLB15)、ポリオキシエチレン(25)ラウリルエーテル(HLB19.5)、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油(HLB14)が特に好ましい。
【0018】
本発明において、HLB値は、通常使われているHLB値の測定方法の一つであり、「新化粧品ハンドブック(平成18年10月30日発行、日光ケミカルズ株式会社、日本サーファクタント工業株式会社、東色ピグメント株式会社、株式会社コスモテクニカルセンター、株式会社ニコダームリサーチ)」に記載されている乳化法により測定する。界面活性剤の標準物質としてモノステアリン酸ソルビタン(NIKKOL SS−10)とモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(NIKKOL TS−10)とを組み合わせて使用する。被乳化剤には流動パラフィンを使う。流動パラフィンを上記2種の界面活性剤で乳化し、最適な界面活性剤の割合を求め、流動パラフィンの所要HLB値を求める。計算式は次のとおりである。
流動パラフィンのHLB値=((TS−10のHLB値(14.9)×使用質量%)+(SS−10のHLB値(4.7)×使用質量%))/100
流動パラフィンの所要HLB値は10.1〜10.3ぐらいである。
次に、未知の界面活性剤のHLBを、HLB値を求めた流動パラフィンを使って測定する。未知の界面活性剤が親水性であればSS−10と組み合わせ、親油性であればTS−10と組み合わせて、流動パラフィンを乳化し、安定性のあるところの最適割合を求め、未知の界面活性剤のHLB値をXとして前記計算式にあてはめて算出する。
乳化の処方は流動パラフィン40質量%、使用する界面活性剤は油相の10質量%、すなわち全体の4質量%、水が50質量%で行なう。界面活性剤4質量%は二つの界面活性剤の全量であり、界面活性剤の全量は一定にしておき、割合のみを変えて乳化できるところまで乳化する。界面活性剤の割合は0.1質量%ずつ変えて行なう。できたエマルジョンは水が蒸発しないようにふたをする。乳化が終わればできたエマルジョンをおのおの1質量%に希釈し、共栓付試験管に同じ量を取り、一昼夜放置し、クリーミング量、白濁度、下層の水分離等から判定し、最も安定性の良いものを最適割合とする。
【0019】
(D)成分の含有量は、(A)成分の可溶化の点から、含水性膏体中0.05〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましく、0.5〜2質量%がさらに好ましい。
【0020】
(E)グリセリン
グリセリンは、三価のアルコールで毒性が極めて低く吸湿性を有する液状成分であり、日本薬局方に適合するものを用いることができる。グリセリンは、保湿効果を有し、医薬品や化粧品では主に保湿・湿潤剤や保水剤として配合される他、粘度低下剤、皮膚保護剤、溶剤等としても配合される。本発明においては、保湿・湿潤剤や保水剤、ポリアクリル酸、その塩又はその部分中和物の可塑剤として機能する。
【0021】
(E)成分の含有量は、含水性膏体中5〜25質量%であり、10〜20質量%が好ましい。含有量が5質量%未満だと、含水性膏体の乾燥が速くなるため、はがれ・めくれやすくなる場合があり、25質量%を超えると、べたつきが残るおそれがある。
【0022】
本発明の含水性膏体の含水率は55〜80質量%であり、55〜75質量%が好ましく、60〜70質量%がより好ましい。含水率が55質量%未満だと、(A)成分の皮膚透過性が悪くなり、80質量%を超えると、貼付剤の乾燥が速くなるため、はがれ・めくれやすくなったり、保型性が悪くなる。
【0023】
(F)ポリアクリル酸、その塩又はその部分中和物
ポリアクリル酸、その塩又はその部分中和物は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。ポリアクリル酸としてはいずれのものでも使用でき、その分子量及び直鎖状、分岐鎖状等の形状には特に制限はないが、重量平均分子量1万〜1000万のものを用いることが好ましい。特に、使用感が向上する点から、重量平均分子量1万〜50万未満、50万〜200万未満、200万〜700万のポリアクリル酸及びその塩を2種以上組み合わせると好適である。なお、通常のアクリル酸を重合して得られた重合体のほか、カルボキシビニルポリマー、例えば、カーボポール(商品名:米国ノベオン社製)、ジュンロンPW−110(商品名:東亞合成(株)製、粘度8000〜20000mPa・s(0.2質量%水溶液、25℃))等のアクリル酸重合体を一部架橋したものも好適に使用し得る。
【0024】
本発明において、重量平均分子量は、標準物質としてポリエチレンオキサイドを用い、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)法によって測定することができる。
【0025】
ポリアクリル酸塩としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム等のポリアクリル酸の一価金属塩、ポリアクリル酸モノエタノールアミン、ポリアクリル酸ジエタノールアミン、ポリアクリル酸トリエタノールアミン等のポリアクリル酸のアミン塩、ポリアクリル酸のアンモニウム塩等が挙げられる。ポリアクリル酸とポリアクリル酸塩とを組み合わせて使用する場合、これらの配合比(質量比)は、ポリアクリル酸:ポリアクリル酸塩が1:10〜10:1が好ましく、1:9〜9:1がより好ましい。
【0026】
また、ポリアクリル酸を部分中和してポリアクリル酸塩が上記比率になるようにしたものを用いてもよい。ポリアクリル酸部分中和物を使用する場合、中和度が10〜50モル質量%が好ましい。
【0027】
ポリアクリル酸としてジュリマーAC−108H(東亞合成(株)製、13.3質量%水溶液、重量平均分子量は130万)、ポリアクリル酸ナトリウムとして、アロンビスS(東亞合成(株)製、重量平均分子量は400万〜500万)、ポリアクリル酸部分中和物としてアロンビスAH−106X(東亞合成(株)製、重量平均分子量は400万〜500万、中和度40モル%)、アロンビスAH−105X(東亞合成(株)製、重量平均分子量は400万〜500万、中和度50モル%)等が挙げられる。
【0028】
含有量は、含水性膏体中0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜8質量%がさらに好ましい。含有量が0.1質量%未満だと粘着力が不足する場合があり、20質量%を超えると粘度が高くなり、製造時の作業性に問題が生じたりするおそれがある。
【0029】
本発明の含水性膏体には、上記成分以外に水溶性高分子化合物を配合することができる。例えば、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩、カリウム塩、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルボキシル基を有する天然ゴム等を挙げることができ、これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。なお、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸塩以外の金属で架橋する水溶性高分子化合物を使用する場合、その含有量はポリアクリル酸及びポリアクリル酸塩を使用する場合と同程度とすると好適である。
【0030】
(G)多価金属塩
(F)ポリアクリル酸、その塩又はその部分中和物と、(G)多価金属塩とを併用することにより、(F)成分を(G)成分で架橋させた架橋体となる。
【0031】
多価金属塩としては、例えば、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン、鉄ミョウバン等のミョウバン類、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、酢酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、これら金属を含む複塩等の水可溶性化合物、水難溶性化合物等が挙げられる。また、アルミニウム、マグネシウムを含む制酸剤も多価金属塩として配合し得る。この中でも、合成ヒドロタルサイト、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミニウムが好ましい。
【0032】
多価金属塩は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、その含有量は、ゲル形成の点から含水性膏体中0.01〜2.5質量%が好ましく、0.05〜1.0質量%がより好ましい。2.5質量%を超えると粘着剤の粘着力が不足するおそれがある。
【0033】
本発明の含水性膏体には、(A)成分以外の薬効成分、上記成分以外に貼付剤に通常用いられる保湿剤、無機粉体、防腐剤、硬化調整剤、清涼化剤、香料、色素等を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて、通常量を配合することができる。
【0034】
薬効成分としては、l−メントール、dl−カンフル、トウガラシエキス、アルニカチンキ、セイヨウトチノキ(種子)エキス、サンシシ末、サンショウ末、ヨウバイヒ末、オオバクチンキ、アロエエキス、ベラドンナエキス、チモール、サリチル酸エチル、サリチル酸グリコール、クロタミトン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、トコフェロール酢酸エステル、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、ノニル酸ワニリルアミド等が挙げられる。
【0035】
保湿剤としては、例えば、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリグリセリン、マルチトール、キシリトール等の多価アルコール等が挙げられる。
【0036】
無機粉体としては、例えば、カオリン、パイロフィライト、タルク、バーミキュライト、雲母、脆雲母、縁泥石等が挙げられる。
【0037】
防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、チモール等を挙げることができる。
【0038】
硬化調整剤としては、その種類は特に制限されず、従来より、含水性膏体に使用されているものを使用することができ、このような硬化調整剤として、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、エデト酸二ナトリウム(EDTA−2Na)等を挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。硬化調整剤の配合量は、適宜選定することができるが、通常、含水性膏体全量に対して0.001〜5質量%が好適である。配合量が少なすぎると配合による効果が十分に得られないおそれがあり、多すぎると硬化速度を調整することが困難となるおそれがある。
【0039】
香料としては、その種類は特に限定されず、従来より、貼付剤の香料として使用されているものを使用することができ、このような香料として、例えば、アニス、アンジェリカ、安息香、イモーテル、カモミール、ガーリック、カルダモン、ガルバナム、キャラウェイ、キャロットシード、グアアックウッド、グレープフルーツ、サイプレス、サンダルウッド、シダーウッド、ジュニパー、スターアニス、セージ、ゼラニウム、セロリ、タイム、タラゴン、テレビン、トウヒ、乳香、バイオレット、ハッカ、マジョラム、ウイキョウ、クラリセージ、パイン、パセリ、バーチ、パチュリー、バラ、ヒソップ、フェンネル、ペパーミント、ブラックペッパー、ボダイジュ花、没薬、ヤロウ、レモン、レモングラス、ローズマリー、ローレル、シモツケギク、モモ、ヤグルマギク、ユーカリ、ユズ、ラベンダー、オレンジ等のハーブ系製油類又はエキス類、その他、低級アルコール類、アルデヒド類等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。香料の配合量は、適宜選定することができるが、通常、含水性膏体全量に対して0.0001〜1質量%程度が好適である。配合量が少なすぎると配合による効果が十分に得られず、多すぎると皮膚刺激を発生するおそれがある。
【0040】
本発明の含水性膏体は、上記成分、任意成分及び水を混合し得ることができる。混合は高速/高せん断ミキサーを用いることができ、具体的には、例えばヘンシェルミキサー(ドイツ、ヘンシェル社)、スーパーミキサー(坂田工業(株))、ハイスピードミキサー(深江工業(株))、ハイビスミックス(特殊機化工業(株))等の市販品が挙げられる。
【0041】
本発明の貼付剤は、通常上記含水性膏体を支持体に積層する。支持体としては特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ウレタン・塩化ビニル共重合体及びポリウレタンから選ばれる少なくとも1種の樹脂からなるフィルム、不織布、織布、編布等が挙げられる。不織布を用いる場合、ニードルパンチ法、スパンレース法、スパンボンド法、ステッチボンド法、メルトブローン法等で製造したものが挙げられる。編布を用いる場合は、編み方は特に制限されるものではなく、例えば、経編み(トリコット編み、デンビートリコット編み、サテン編み、アトラス編み、平編み、リム編み、パール編み)、丸編み(両面メリヤス編み、片面メリヤス編み、フライスメリヤス編み)、横編み、マルチフィラメント糸により編成された丸編み、複数段の両面メリヤス編み、ニットミス編み、クロスインレイ編み、インレイ編み等が採用される。好ましくは、トリコット編み、両面メリヤス編み、片面メリヤス編み、フライスメリヤス編み、マルチフィラメント糸により編成された丸編み、複数段の両面メリヤス編みが採用される。また、樹脂製の前記フィルムと不織布、織布又は編布等とが一体成形されたものを用いることもできる。支持体の坪量は特に制限はないが、50〜150g/m2程度である。
【0042】
含水性膏体を支持体に積層する方法としては、例えば、前記支持体上に、前記含水性膏体を塗工する方法により製造することができ、適当な大きさに裁断することにより貼付剤を得ることができる。支持体への含水性膏体の塗工量は300〜1500g/m2程度である。
【0043】
また、本発明の貼付剤は、通常支持体上に塗工した含水性膏体の塗工面を、ライナーで被覆する。ライナーとしては、塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートセパレータ、剥離紙(離型紙)等が好ましく用いられる。
【0044】
本発明の含水性膏体は、(A)水難溶性非ステロイド系消炎鎮痛剤を含有するため、消炎鎮痛効果を発揮でき、消炎鎮痛用貼付剤として好適である。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、比率は質量比を示す。
【0046】
[実施例1〜22、比較例1〜5]
下記方法で、貼付剤を得た。得られた貼付剤について下記評価を行った。結果を表1〜6中に併記した。
(A)フェルビナクを、(B)N−メチル−2−ピロリドン及び(D)成分等で溶解した液、(C)スメクタイト系粘度鉱物、(E)グリセリン、ポリアクリル酸、その塩又は部分中和物、多価金属塩及びその他成分を、高速/高せん断ミキサーを用いて、温度条件(25〜35℃)、攪拌条件(300〜700rpm)によって撹拌し、表1〜6に示す組成の含水性膏体を得た。直ちにこれを1枚(140×100mm)当り表1〜6に示す膏体量となるようにマルチフィラメント糸により編成された両面メリヤス編布の支持体に展延、裁断(140×100mm)し、貼付剤(湿布シート)を得た。
【0047】
<(A)成分の皮膚透過性>
Hos:HR−1雌性ヘアレスマウス(7週齢)の背部から採取した皮膚を、37℃のリン酸緩衝液(pH7.4等張緩衝液)を循環させたフランツ型拡散セル(有効面積4.91cm2)に装着した。装着した皮膚上に、直径4.5cmの円に切り取った貼付剤をそれぞれ積層し、単位時間毎にセル内の試料(緩衝液)を採取した。
採取した試料は、高速液体クロマトグラフィー分析に供し、皮膚を透過した各薬物の量(薬物の皮膚透過量、μg/cm2)を求めた。評価は8時間後の薬物の皮膚透過量から以下の基準により判定した。なお、8時間後の皮膚透過量が多いことは、薬物の経皮吸収性に優れることを表す。60μg/cm2以上を良好と判断した。(A)成分の皮膚透過性を皮膚透過量に基づき、下記基準に従って示す。
[基準]
◎:皮膚透過量が、90μg/cm2以上
○:皮膚透過量が、60μg/cm2以上90μg/cm2未満
△:皮膚透過量が、30μg/cm2以上60μg/cm2未満
×:皮膚透過量が、30μg/cm2未満
【0048】
<剥離後の皮膚のべたつき(ゲル凝集力)>
健常成人10人の肘に、10cm×14cmに裁断した貼付剤を貼り、約1時間後剥離した際に、貼付部位に粘着剤が残ることによるべたつきを観察し、下記基準により評価した。10人の評価結果の合計点から、下記剥離後の皮膚のべたつき評価基準に基づき判定した結果を表に併記した。
[基準]
5:感じない
4:ややべたつきを感じる
3:べたつきを感じる
2:かなりべたつきを感じる
1:非常にべたつきを感じる
[剥離後の皮膚のべたつき評価基準]
◎:10人の評価結果の合計点が40点以上
○:10人の評価結果の合計点が30点以上40点未満
△:10人の評価結果の合計点が20点以上30点未満
×:10人の評価結果の合計点が20点未満
【0049】
<8時間後のはがれ・めくれ>
健常成人10人の肘に、10cm×14cmに裁断した貼付剤を貼り、8時間後の状態を、下記基準により評価した。10人の評価結果の合計点から、下記基準に基づき判定した結果を表に併記した。
[基準]
5:貼付剤のはがれ・めくれなし
4:貼付剤の周囲にはがれ・めくれあり(全体の20%未満)
3:貼付剤の周囲にはがれ・めくれあり(全体の20%以上40%未満)
2:貼付剤の周囲にはがれ・めくれあり(全体の40%以上60%未満)
1:貼付剤の周囲60%以上にはがれ・めくれあり又は剥がれ落ちた
[8時間後のはがれ・めくれ評価基準]
◎:10人の評価結果の合計点が40点以上
○:10人の評価結果の合計点が30点以上40点未満
△:10人の評価結果の合計点が20点以上30点未満
×:10人の評価結果の合計点が20点未満
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
【表5】

【0055】
【表6】

【0056】
[実施例23〜27]
上記実施例の製造方法に準じて、表7の組成の貼付剤を調製した。得られた貼付剤は、良好な皮膚透過性を有し、剥離後のべたつき、8時間後のはがれ・めくれもなかった。
【0057】
【表7】

【0058】
上記例で使用した原料を下記に示す。なお、特に明記がない限り、表中の各成分の量は純分換算量である。
モンモリロナイト:ベンクレーSL(水澤化学工業(株)製)
ポリアクリル酸:ジュリマーAC−108H(13.3%水溶液)(東亞合成(株)製)、重量平均分子量130万
ポリアクリル酸ナトリウム:アロンビスS(東亞合成(株)製)重量平均分子量は400〜500万
ポリアクリル酸部分中和物:アロンビスAH−106X(東亞合成(株)製)重量平均分子量400万〜500、中和度40モル%)
香料:ラベンダー油:ペパーミント油:ローズマリー油:オレンジ油=5:3:1:1(質量比)
【0059】
[実施例28]
実施例3のフェルビナク0.7%をフルルビプロフェン0.2%に変更する以外は同様に貼付剤を調製した。
【0060】
[実施例29]
実施例3のフェルビナク0.7%をフルルビプロフェン0.5%に変更する以外は同様に貼付剤を調製した。
【0061】
[実施例30]
実施例3のフェルビナク0.7%をケトプロフェン0.3%に変更する以外は同様に貼付剤を調製した。
【0062】
[実施例31]
実施例3のフェルビナク0.7%をケトプロフェン0.5%に変更する以外は同様に貼付剤を調製した。
【0063】
上記実施例28〜31の貼付剤は、良好な皮膚透過性を有し、剥離後のべたつき、8時間後のはがれ・めくれもなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水難溶性非ステロイド系消炎鎮痛剤と、(B)N−メチル−2−ピロリドンと、(C)スメクタイト系粘土鉱物と、(D)非イオン性界面活性剤と、(E)グリセリン5〜25質量%と、(F)ポリアクリル酸、その塩又はその部分中和物と、(G)多価金属塩とを含有し、含水率が55〜80質量%である含水性膏体が、支持体に積層されてなる貼付剤。
【請求項2】
(B)/(C)で表される、含水性膏体中の(B)成分と(C)成分との含有質量比が8以下である請求項1記載の貼付剤。

【公開番号】特開2011−184319(P2011−184319A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48888(P2010−48888)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】