説明

貼付剤

【課題】貼付剤の粘着力を低下させることなく、無意識かつ容易に剥離フィルムを剥がすことができる剥離フィルムを被覆した貼付剤を提供することを課題とする。
【解決手段】支持体と該支持体の一面の略全面に展着された粘着性を有する含水性の膏体と、前記膏体に貼着される膏体面より大きな剥離フィルムを備えたことを特徴とする外用貼付剤であり、膏体に貼着される膏体面より大きな剥離フィルムが、膏体面において突出する膏体に対する非貼着部を備えたものである外用貼付剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消炎・鎮痛・冷却等を目的とした含水性外用貼付剤に関する。更に詳しくは、健常者のみならず高齢者等であっても、外用貼付剤に貼着されている剥離フィルムの剥離作業を容易に、且つ短時間で行える貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高齢化或いはハードワーク等により生じる腰痛、関節痛、肩こり等の対症療法として、消炎・鎮痛作用、或いは冷却作用を有する貼付剤が広く利用されている。
【0003】
従来のパップ剤等の貼付剤10は、例えば図3に示すように、白色や肌色等の支持体20と当該支持体の一面のほぼ全面に展着された粘着性を有する膏体30と、該膏体の全面を被覆する一枚の剥離フィルム40からなる積層構造として構成されているのが一般的である。
【0004】
また、一部の貼付剤にあっては、図4が示すように、剥離フィルム40の中央部に破断線50を設け、貼付剤を左右に引っ張ることで剥離フィルムを破断させ、露出した膏体30を患部に仮止めし、破断した剥離フィルムを引きはがしながら貼付する貼付剤10も提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
しかしながら、これらの貼付剤にあっては、剥離フィルムを剥離し、貼付する際に、例えば、以下のような問題点を有していた。
すなわち、図3に示した一般的な貼付剤10にあっては、剥離フィルム40を剥がす場合には、図5に示すように、貼付剤10の端部を手指で擦り合わせて剥離フィルム40を浮き上がらせる必要があり、多くの患者は高齢者であり、指先の動きがスムースでないため、この作業が困難で面倒であった。
【0006】
上記の作業を簡易に行えるために、図4に示した貼付剤が開発されてきたと考えるが、貼付剤10自体を左右に強引に引っ張り、剥離フィルム40を破断させるため、貼付剤に皺が発生し、仮に左右の剥離フィルムを引きはがし患部に貼付しても、一度貼付剤を患部から剥がし取り、皺をなくしてから再貼付する必要がある。したがって、この作業により、膏体自体の粘着力が低下してしまい、日常生活の動作でも貼付剤が剥がれやすくなってしまう虞がある。
【0007】
更には、高齢者は従来の図5に示した従来からの剥離方法に慣れているために、貼付剤10の端部を擦り合わせて剥離フィルム40を剥がしてしまい、剥離フィルム40が破断線部50で破断されることで、再度端部から擦り合わせて剥離フィルムを剥がすという同様の作業が必要になる場合が多い。また、剥離フィルムの剥離方法がフィルム自体に大きく記載されていたとしても、ほとんどの患者はそれを認識していないのが現状である。
【0008】
このような問題点を解決するものとして、例えば、膏体に貼着する剥離フィルムを2枚の剥離フィルムから構成し、1枚の剥離フィルムの端部を膏体の中間部位において上側に折り曲げ、折り曲げられた剥離フィルムの上側に2枚目の剥離フィルムを重合し、剥離フィルムの剥離を容易ならしめた貼付剤も提案されている(例えば、特許文献2及び3)。
また、支持体の一側辺に膏体を塗布しない部位を施したもの、或いは支持体及び膏体の一角部を切断し保護シートの一部を露出させた貼付剤も提供されている(例えば、特許文献4及び5)。
【0009】
しかしながら、膏体を2枚の剥離フィルムで被覆させる場合には、製造工程が複雑になり、また、下方に位置する剥離フィルムの端部を上方に折り曲げる設定が均一にできにくいといった問題点があった。
また、支持体上の一側辺に膏体を塗布しない部位を施したものでは、貼付している間にその部位から剥がれ易いという問題点がある。また支持体及び膏体の一角部位を切断して保護シートの一部を露出させたものは、露出部を余り大きく取り難いので、依然として高齢者にとって露出部を掴み難いといった問題点がある
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−112305号公報
【特許文献2】特開2000−219622号公報
【特許文献3】特開2000−351717号公報
【特許文献4】特開2000−175960号公報
【特許文献5】特開2000−175961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来の貼付剤における剥離フィルムの剥離方法に慣れた患者でも、貼付剤の粘着力を低下させることなく、無意識かつ容易に剥離フィルムを剥がすことができる剥離フィルムを被覆した貼付剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決するための、本発明の基本的態様としての請求項1に記載の貼付剤は、支持体と該支持体の一面の略全面に展着された粘着性を有する含水性の膏体と、前記膏体に貼着される膏体面より大きな剥離フィルムを備えたことを特徴とする外用貼付剤である。
【0013】
より具体的な一つの態様として、請求項2に記載の貼付剤は、請求項1に記載の貼付剤において、膏体に貼着される膏体面より大きな剥離フィルムが、膏体面の全辺において突出する膏体に対する非貼着部を有するものである外用貼付剤であり、また、請求項3に記載の貼付剤は、請求項1に記載の貼付剤において、膏体に貼着される膏体面より大きな剥離フィルムが、膏体面の任意の1辺又は2辺において突出する膏体面への非貼着部を有する上記の外用貼付剤である。
【0014】
すなわち、本発明が提供する外用貼付剤は、膏体面に貼着される剥離フィルムを膏体面よりも大きなものを使用し、膏体面への非貼着部を設けることにより、剥離フィルムの剥離を容易ならしめた点に特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0015】
上記で提案される本発明の外用貼付剤にあっては、剥離フィルムと膏体の面積差から生じる段差、すなわち、剥離フィルムの膏体面への非貼着部は、剥離フィルムを膏体面から剥離する際のきっかけとなるものであり、貼付剤の端部を手指で擦り合わさずとも容易に剥離フィルムの剥離作業が可能となる。
したがって、手先が器用である必要がないために、高齢者等でも無意識のうちに、容易に剥離フィルムを剥離できるものである。
【0016】
また、万一、剥離フィルムの剥離方法を誤ったとしても、従来通り貼付剤の支持体端部を手指で擦り合わせることにより、何の問題もなく剥離作業が行える利点を有している。
したがって、誰でも無意識のうちに上記の剥離作業が行えることから、必ずしも剥離フィルムの剥離方法をフィルム自体に表記する必要がなく、それにかかる費用が軽減されるため経済的である。
また、基本的に膏体に貼着する剥離フィルムは1枚であることから、剥離行為にかかる時間は、図4に示したような2分割剥離フィルムよりも大幅に短縮することができ、更に貼り損じ等の問題も軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1における貼付剤を示す図であり、図中(I)はその斜視図であり、(II)は長手方向における側面図であり、(III)は上下方向における側面図である。
【図2】本発明の実施の形態2における貼付剤を示す図であり、図中(I)はその斜視図であり、(II)は長手方向における側面図であり、(III)は上下方向における側面図である。
【図3】従来の貼付剤を示す図であり、図中(I)はその斜視図を、(II)は長手方向における側面図である。
【図4】別の従来の貼付剤を示す図であり、図中(I)はその斜視図を、(II)は長手方向における側面図である。
【図5】従来の貼付剤における剥離フィルムの剥がし方法を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
1 外用貼付剤
2 支持体
3 膏体
4 剥離フィルム
5 非貼着部
6 弛み部
10 外用貼付剤
20 支持体
30 膏体
40 剥離フィルム
50 破断線
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、基本的には、支持体と該支持体の一面の略全面に展着された粘着性を有する含水性の膏体と、前記膏体に貼着される膏体面よりも大きな剥離フィルムを備えたことを特徴とする外用貼付剤である。
【0020】
本発明で使用される剥離フィルムとしては、無延伸ポリプロピレン(CPP)、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等のプラスチックフィルム、紙、合成紙、合成樹脂を単体又はラミネートして複合させたものや、アルミ箔、蒸着フィルムと上記素材をラミネートさせたもの、及び上記単一素材又は複合素材にシリコン加工やエンボス加工、更には印刷又は着色を施したものが用いられる。
【0021】
剥離フィルムの厚みは6μm〜200μm、好ましくは12μm〜75μmの範囲で形成されることが好ましい。剥離フィルムの厚みが6μmより小さくなるにつれ、その薄さから製造時に皺が発生し易くなるので好ましくない。また、剥離フィルムの厚みが200μmより大きくなるにつれて、製造時における裁断性が低下する傾向があるのでコストアップの要因となり、更に剥離フィルム自体もより高価になることから好ましくない。
【0022】
当該剥離フィルムには、剥離行為の際に手指がすべることを防止するために、エンボス加工を施すことが好ましい。エンボス加工部は、剥離フィルムの全面または局部的な箇所、たとえば掴み部分等に形成することが好ましい。
【0023】
剥離フィルムにおけるエンボス加工の有無、その形状は、特に限定されるものではないが、好ましくは手指が滑ることなく掴み易いものであれば、ダイヤ柄、格子型、亀甲柄、波形、その他種々の形状に形成されることが好ましい。
また、貼付剤の製品(販売)名称や注意事項等を明確にするために、剥離フィルムに、文字、記号、イラスト等を表示または着色したものであっても良い。
【0024】
本発明の外用貼付剤における支持体としては、織布、不織布、ラミネート品等が挙げられ、その伸縮性の有無は限定されない。
支持体の具体的な材料としては、紙、綿、大麻、黄麻等の靱皮繊維、マニラ麻等の葉脈繊維等のセルロース繊維、羊毛等の獣毛繊維や、絹繊維、羽毛繊維等のタンパク繊維等の天然繊維、レーヨン、キュプラ等の再生セルロース繊維、や再生タンパク繊維等の再生繊維、酢酸セルロース繊維やプロミックス等の半合成繊維、ナイロンアラミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリウレタン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズビスチアゾール繊維、ポリイミド繊維等を単体または複合した織布、不織布に加工し利用できる。
【0025】
支持体は、その引っ張り強度、厚さ、伸縮性等を貼付部位に応じて考慮し、また薬物の支持体への移行等を考慮して選択される。
【0026】
本発明の外用貼付剤において使用する膏体は、基剤に薬物を含有等させることにより、外用のパップ剤等の貼付剤として有効に利用させるものである。膏体は、皮膚に対する薬効成分の効果が十分に得られるように水分を含有し、かつ粘着性を有し、常温またはそれ以上の温度においても軟化せず、膏体が皮膚に残らない適度な凝集性を有するように形成されるものである。
【0027】
膏体を構成する基剤に含有される増粘剤としては、膏体に水分を30%〜80%程度安定に保持することでき、かつ保水性を有するような増粘剤が望ましい。このような増粘剤の具体例としては、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、寒天、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ペクチン、澱粉等の植物系、ザンタンガム、アカシアガム等の微生物系、ゼラチン、コラーゲン等の動物系の天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン等のデンプン系等の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメタクリレート等のビニル系、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム等のアクリル系、その他ポリエチレンオキサイド、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体等の合成高分子等の水溶性高分子等を好適に用いることができる。
【0028】
そのなかでも、特にポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。このポリアクリル酸ナトリウムは、ゲル強度が強く、かつ保水性に優れるものである。なかでも、平均重合度20,000〜70,000のポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。平均重合度が20,000より小さくなるにつれ増粘効果が乏しくなり、十分なゲル強度を得ることができなくなり、また、平均重合度が70,000より大きいと増粘効果が強すぎ、作業性が低下する傾向が現れ、いずれも好ましくない。また、ポリアクリル酸ナトリウムには、前記した水溶性高分子を2種類以上併用すること、例えばポリアクリル酸ナトリウムの強イオン高分子と高分子コンプレックスを形成させ、より一層ゲル強度の大きい弾性ゲルを得ることができる。
【0029】
膏体成分としての湿潤剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール等の多価アルコール等をあげることができ、充填剤として、カオリン、酸化亜鉛、タルク、チタン、ベントナイト、珪酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、メタ珪酸アルミニウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム等を添加してもよい。また、溶解補助剤または吸収促進剤を配合することもでき、そのようなものとして、炭酸プロピレン、クロタミトン、l−メントール、ハッカ油、リモネン、ジイソプロピルアジペート等をあげることができる。さらに、薬効補助剤として、サルチル酸メチル、サリチル酸グリコール、l−メントール、チモール、ハッカ油、ノニル酸ワニリルアミド、トウガラシエキス等を添加することもでき、必要に応じて、安定化剤や抗酸化剤、乳化剤等を添加してもよい。
【0030】
その他、膏体成分として、膏体をより強固にすると共に、保水性を持たせる目的で、必要に応じて、架橋剤や重合剤を添加してもよい。このような架橋剤は、増粘剤等の種類に応じて適宜選択される。例えば、増粘剤としてポリアクリル酸又はポリアクリル酸塩を選択した場合は、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物、Ca、Mg、Al等の塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩等の無機酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、ステアリン酸塩等の有機酸塩、酸化亜鉛、無水珪酸等の酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物等の多価金属化合物等である架橋剤が好適に使用することができる。
【0031】
また、増粘剤としてポリビニルアルコールを選択した場合には、架橋剤或いは重合剤としてアジピン酸、チオグリコール酸、エポキシ化合物(エピクロルヒドリン)、アルデヒド類、N−メチロール化合物、Al、Ti、Zr、Sn、V、Cu、B、Cr等の化合物等の錯化物等を好適に使用することができる。
【0032】
さらにまた、増粘剤としてポリビニルピロリドンを選択した場合には、架橋剤或いは重合剤としてメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリアシッド化合物又はそのアルカリ金属塩(ポリアクリル酸やタンニン酸及びその誘導体)等を好適に使用することができる。
【0033】
また、増粘剤としてポリエチレンオキサイドを選択した場合には、架橋剤或いは重合剤としてパーオキサイド、ポリスルホンアザイド等が好適に用いられる。また、増粘剤にメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体を選択した場合には、架橋剤或いは重合剤として多官能ヒドロキシ化合物、ポリアミン、ヨウ素、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、鉄、水銀、鉛塩等を好適に使用することができる。
【0034】
さらに、増粘剤としてゼラチンを選択した場合には、架橋剤或いは重合剤としてホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドデンプン等のアルデヒド類、グルオキサール、ブタジエンオキシド等のジエポキシド類、ジビニルケトン等のジケトン類、ジイソシアネート類等を好適に使用することができる。また、増粘剤としてポリアクリル酸ナトリウムを選択した場合には、架橋剤として、水酸化リチウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、ホウ酸ナトリウム等の多価金属塩が添加されるのが好ましい。特に亜鉛塩、アルミニウム塩は架橋反応が促進されるので好ましい。
【0035】
架橋剤として添加される多価金属塩の濃度は、増粘剤(又は水溶性高分子)1当量に対して0.5〜1.5当量使用するのが好ましい。多価金属塩の濃度が0.5当量未満であると架橋反応が遅すぎ、ゲル強度が低くなる傾向が現れ、また多価金属塩の濃度が1.5当量を超える場合には、架橋反応が早すぎて、ゲル化が不均一になり、作業性が低下する傾向が現れ、いずれも好ましいものではない。
【0036】
外用貼付剤としては、皮膚密着性がよいこと、有効成分の皮膚透過吸収性を高めること、水分を可及的に多く含有していること等が要求される。膏体中の水分が蒸発するときに皮膚から熱を奪い、この吸熱量が清涼感を与え、また角質層が内部から蒸散してくる水分子によって水和され、薬物の吸収性が促進される。なお膏体の特性として、常温又はその近辺の温度でもだれないこと、剥がすときに痛くなく、膏体が皮膚に残らないこと、べとつかないこと等が挙げられる。
【0037】
そのためには、膏体は増粘剤5〜20重量%、好ましくは10〜15重量%、湿潤剤5〜40重量%、充填剤20重量%以下、水分10〜80重量%、溶解補助剤0〜8重量%、薬物5重量%以下、好ましくは0.5〜5重量%配合するのが好ましい。
【0038】
本発明の外用貼付剤において、有効成分として配合される薬物は、その用途に合わせて種々の薬物が選択され、配合することができる。例えば、鎮痛・抗炎症成分としては、インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、フェルビナク、サリチル酸グリコール、サリチル酸メチル、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、β−グリチルリチン酸等をあげることができる。
【0039】
血行促進成分として、酢酸トコフェロール、トウガラシエキス、カプサイシン、ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジル、ベンジルアルコール等をあげることができる。また、抗アレルギー成分としては、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等をあげることができる。さらに、局所刺激成分として、l−メントール、カンフル、ハッカ油、ユーカリ油等、さらに、局所麻酔成分として、リドカイン、ベンゾカイン、ジブカイン、テトラカイン等を挙げることができる。
なお、本発明の外用貼付剤に使用される薬物としては、上記のものに限定されるものではなく、また、薬物は必要に応じて2種類以上併用することも可能であることはいうまでもない。
【0040】
膏体中に配合される薬物の配合量は、患者に適用した際にあらかじめ設定された有効量を患部に適用できるように、パップ剤等の貼付剤の種類、用途に応じて適宜選択される。
【0041】
本発明の外用貼付剤における剥離フィルムの突出部または弛み部分、すなわち、膏体面への非貼着部は、剥離フィルムの剥離作業の際における掴み部分である。この掴み部分の幅の大きさは、特に限定されないが、5mm〜20mm程度が好ましく、更には10mm〜15mm程度が好ましい。
【0042】
掴み幅が5mmより小さくなると、剥離フィルム自体が掴みにくくなるので、好ましくない。また、掴み幅が15mm以上になると、掴み易くなるものの、剥離フィルムの面積が広くなるので不経済であり、また貼付剤を充填する内袋フィルムのサイズも大きくなるので更に不経済になる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の外用貼付剤を、具体的実施例となるいくつかの実施形態により、図面を参照しながら説明する。
【0044】
[実施の形態1]
図1に、本発明の一つの実施例である実施の形態1における外用貼付剤を示した。図1の(I)はその斜視図であり、図1の(II)は長手方向における側面図であり、(III)は上下方向における側面図である。
【0045】
図1に示した実施例としての外用貼付剤1は、支持体2と、該支持体2の表面の略全面に展着された膏体3と、当該膏体3の膏体面に貼着される剥離フィルム4からなる積層物としての基本的構成を有するものであり、かつ、膏体面に貼着される剥離フィルム4は、当該膏体面よりも大きなものであり、貼付剤1の4辺より、膏体面に対する非貼着部5としての剥離フィルムが各々突出する構成を有する。
【0046】
より具体的には、支持体2は伸縮性を有する不織布からなり、膏体3は支持体2の表面の略全面に展着されたポリアクリル酸ナトリウム等を基剤とするものに、消炎・鎮痛剤であるフェルビナク等の薬物成分や水分等を含有させたものであり、この膏体3の表面に、厚み30μmの無延伸ポリプロピレン等からなる、ダイヤ柄エンボス加工が施された剥離フィルム4を貼着した貼付剤1であって、当該貼付剤1の上下左右の4辺より、剥離フィルム4が各々10mm程度膏体面に対する非貼着部5として突出している。
【0047】
以上のように構成された、本発明の実施例としての上記実施の形態1における貼付剤について、その使用方法を、以下に説明する。
外用貼付剤を目的の患部に貼付するにあたっては、剥離フィルムで貼着された膏体面を露出するために、剥離フィルムを剥離しなればならない。そのためには、まず、膏体面より突出している非貼着部5としての剥離フィルム4を片手指で掴み、もう一方の手指で貼付剤端部の段差部分をめくると容易に膏体面が露出するので、そのまま最後まで剥離フィルム4を剥がし、露出した膏体面を患部に貼着する。
【0048】
以上のような本発明の実施の形態1における貼付剤は、基本的に上記の構成を有していることから、以下の特異的な作用を発揮することとなる。
すなわち、剥離フィルム4と膏体3の面積差から生じる段差、すなわち剥離フィルムの膏体面への非貼着部5は、剥離フィルム4の剥離のきっかけとなり、貼付剤1の端部を手指で擦り合わさずとも、どの辺からでも容易に剥離作業が可能となる。
したがって、手先が器用である必要がないために、高齢者でも無意識のうちに剥離できるものであり、万一、剥離方法を誤ったとしても、従来通り支持体端部を手指で擦り合わせても何の問題もなく剥離作業が行えることとなる。
【0049】
[実施の形態2]
図2に、本発明の別の実施例である、実施の形態2における外用貼付剤を示した。図2の(I)はその斜視図であり、図2の(II)は長手方向における側面図であり、(III)は上下方向における側面図である。
なお、図中の符号は、図1に示した符号と同一の意味を有する。
【0050】
本実施の形態2における外用貼付剤1は、先の実施の形態1における外用貼付剤と異なり、膏体3面に貼着される剥離フィルム4が、貼付剤1の長手方向の両端部(両短辺)の2辺において、膏体面に対する非貼着部5としての剥離フィルムが各々突出している構成を有するものである。
【0051】
例えば、より具体的には、支持体2は伸縮性を有する不織布からなり、膏体3は支持体2の表面の略全面に展着されたポリアクリル酸ナトリウム等を基剤成分とし、これにインドメタシン等の薬物や水分等を含有したものに、厚み38μmのポリエチレンテレフタレートからなる透明の剥離フィルム4で形成された貼付剤であり、貼付剤1の両短2辺より剥離フィルム4が、膏体面に対する非貼着部5として、各々10mm突出している構成を有する。
【0052】
以上のように構成された本実施の形態2における外用貼付剤1の使用方法については、前述した実施の形態1と同様の方法であるが、剥離フィルム4にあっては、実施の形態1の貼付剤に比較して、貼付剤の長手方向上下の両長辺部分に非貼着部としての剥離フィルムが突出していないため、その分だけ剥離フィルムの必要面積が減少する。したがって、実施の形態1よりも経済的である利点を有している。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上記載したように、発明は、支持体と該支持体の一面の略全面に展着された粘着性を有する含水性の膏体と、前記膏体に貼着される膏体面よりも大きな剥離フィルムを備えたことを特徴とする外用貼付剤であり、剥離フィルムと膏体の面積差から生じる段差は、剥離フィルムの剥離のきっかけとなるので、貼付剤端部を手指で擦り合わさずとも容易に剥離作業が可能であり、高齢者でも容易に剥離できるものであり、その医療上の貢献度は多大なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と該支持体の一面の略全面に展着された粘着性を有する含水性の膏体と、前記膏体に貼着される膏体面より大きな剥離フィルムを備えたことを特徴とする外用貼付剤。
【請求項2】
膏体に貼着される膏体面より大きな剥離フィルムが、膏体面の全辺において突出する膏体に対する非貼着部を有するものである請求項1に記載の外用貼付剤。
【請求項3】
膏体に貼着される膏体面より大きな剥離フィルムが、膏体面の任意の1辺又は2辺において突出する膏体面への非貼着部を有するものである請求項1に記載の外用貼付剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−144562(P2012−144562A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−93542(P2012−93542)
【出願日】平成24年4月17日(2012.4.17)
【分割の表示】特願2006−42496(P2006−42496)の分割
【原出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(000215958)帝國製薬株式会社 (44)
【Fターム(参考)】