説明

貼付材

【課題】長期間にわたって使用可能であり、傷跡、創傷表面を意図した形状に矯正することが可能な貼付材で、好適には線維性増殖疾患の治療又は傷跡の治療に用いる貼付材を提供する。
【解決手段】支持体11と、支持体の一面に設けられた接着剤層12とを少なくとも含む貼付材において、貼付材の伸長率が、5N荷重時のとき1%未満であり、10N荷重時のとき5%未満である。貼付材の伸張力が、1%伸長時に5N/25mm以上。貼付材の吸収率が、1時間後において70%以上。貼付材の厚みが、1mm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付材に関する。より詳しくは、線維増殖性疾患(ケロイド・肥厚性瘢痕)、事故や手術などの傷跡の治療;美容整形などの審美治療;創傷の治癒などに使用する貼付材に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚組織や粘膜は種々の原因によりしばしば損傷を受ける。
通常であれば、自然治癒過程によって損傷が修復されるが、ケロイド・肥厚性瘢痕が形成される場合がある。
【0003】
ケロイド・肥厚性瘢痕の発生メカニズムはいまだ解明されていないが、損傷を受けた患部が外力によって刺激されると、患部の炎症が増強・促進されて炎症が長期的に持続され、炎症が長期持続されると組織が肥厚し、最終的にケロイド・肥厚性瘢痕が発生するものと考えられている。
【0004】
ケロイド・肥厚性瘢痕の管理は、依然として大きな未解決の臨床問題である。多くの治療方法が用いられてきたが、いずれも一貫して信頼性があることは証明されていない。現在の治療方法としては、閉鎖包帯の使用、圧縮療法、病巣内副腎皮質ステロイド注射、放射線療法、及び手術が挙げられる。
【0005】
しかし、上記記載の温存療法の場合は、目立った効果が現れにくく、長期間にわたり包帯や圧縮装置を装着する必要があり、目に付くか敏感な位置の瘢痕に対しては行えないなどの問題がある。そのため、患者の精神的、金銭的負担が大きくなる。また、手術等の侵襲療法の場合は、組織除去により一旦は良くなるものの、術創で再発する危険性がある。
放射線療法は放射線によるDNA変異などによる癌化リスクも考えなくてはいけない。
【0006】
一方、事故や病気などによる組織除去によって皮膚が窪んだ場合には、窪んだ部分に代替物質を入れ、形状を補正する必要がある。また、美容整形手術において、鼻などの軟骨を矯正したりした場合には、所定期間、施術部を固定する必要がある。
【0007】
しかしながら、矯正や施術部の固定のために金属などを配した場合には、非常に目立つため、長期間にわたり使用することは困難であり、変形の矯正が適切に行えないといった問題がある。
【0008】
そこで、長期間にわたり使用することのできる貼付材が報告されている。特許文献1に記載の貼付材は、透明な基材にゲルを積層したものからなり、貼付した際に目立たないようになっている。また、シリコーンなどで構成された貼付材なども報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平01−34370
【特許文献2】特開平11-319065
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような従来の貼付材は、長期間の使用を考慮して患者に苦痛を与えないように皮膚の伸縮阻害を考え、支持体に柔軟な素材を使用しているが、却ってこの為、貼付材自体が外力によって容易に変形してしまうこととなる。このように容易に変形するような従来の貼付材では、傷跡、創傷表面を意図した形状に矯正することが不可能であるという実状があった。
【0011】
そこで、本発明は、長期間にわたって使用可能であり、傷跡、創傷表面を意図した形状に矯正することが可能な貼付材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題解決のため、本発明は、支持体と、該支持体の一面に設けられた接着剤層とを少なくとも含む貼付材において、貼付材の伸長率が、5N荷重時のとき1%未満であり、10N荷重時のとき5%未満である貼付材を提供する。
また、本発明は、支持体と、該支持体の一面に設けられた接着剤層とを少なくとも含む貼付材において、1%伸長時の伸長力が5N/25mm以上である貼付材を提供する。
前記貼付材の吸水率が、1時間後において70%以上であることが好ましい。
前記支持体の厚みが100μm以下であることが好ましい。
前記支持体がポリエステル又はポリプロピレンであることが好ましい。
前記貼付材の厚みが1mm以下であることが好ましい。
前記貼付材は、線維性増殖疾患の治療に用いるか或いは傷跡の治療に用いることが好ましい。
ここで、「伸長率」とは、荷重を加えた際の伸び率をいい、荷重前の状態を0%としたときの伸び率を意味する。
また、「伸長力」とは、試験片に所定の伸び(n%)を与えたときの引張力のことであり、伸び引張応力ともいう。
また、「破断強度」とは、試験片が破断するまで加えた引張力(荷重力)のことであり、切断時引張応力ともいう。
また、「吸水率(%)」とは、吸水前の検体の質量と、吸水(所定時間経過)後の検体の質量から算出した吸水割合を意味する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の貼付材により、長期間にわたって使用可能であり、傷跡、創傷表面を意図した形状に矯正することが可能である。本発明の貼付材は、外力や瘢痕組織などの伸縮などの力学的作用によっても変形しにくいため、このケロイド・肥厚性瘢痕を適切な形に矯正することが可能である。つまり、本発明の貼付材は、鋳型に嵌め込む様にケロイド・肥厚性瘢痕の形状を整え、整容的な目的も達する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係わる貼付材1の概略図である。
【図2】実施例1〜2の貼付材及び比較例1〜11の貼付材の伸長率と荷重力との関係を示す。
【図3】実施例1〜2の貼付材及び比較例1〜11の貼付材の伸長率と荷重力との関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。説明は以下の順序で行う。
<貼付材>
1.貼付材
2.支持体
3.粘着剤層
<貼付材の製造方法>
【0016】
<貼付材>
1.貼付材
本発明に係る貼付材は、支持体と、該支持体の少なくとも一面に設けられた粘着剤層と、を少なくとも備える。ここで、「支持体の少なくとも一面」とは、支持体の片面又は両面をいう。
【0017】
前記貼付材の伸長率は、5〜8N荷重時(5N、8Nのそれぞれの荷重時)に、0%以上1%以下とするのが好ましく、0.05%以上1%以下とするのがさらに好ましい。具体的には、5N荷重時のとき、0%以上1%以下が好ましく、0%以上0.8%以下がより好ましく、0.01%以上0.5%以下がさらに好ましい。また、8N荷重時のとき、0%以上1%以下が好ましく、0%以上0.9%以下がより好ましく、0.01%以上0.8%以下がさらに好ましい。
5〜8N荷重時の伸長率が1.0%以下だと、外力や瘢痕組織などの伸縮などによって貼付材が変形することがなく、施術部を適切な形に矯正することができる。
【0018】
また、前記貼付材の伸長率は、10〜20N荷重時(10N、15N、20Nのそれぞれの荷重時)のとき、0.1%以上5%以下とするのが好ましく、0.2%以上5%未満とするのがさらに好ましい。
具体的には、10N荷重時のとき0.1%以上5%以下が好ましく、0.1%以上3%以下がより好ましく、0.2%以上2%以下がさらに好ましい。また、15N荷重時のとき0.1%以上5%以下が好ましく、0.1%以上3%以下がより好ましく、0.2%以上3%以下がさらに好ましい。また、20N荷重時のとき0.1%以上5%以下が好ましく、0.1%以上3%以下がより好ましく、0.2%以上4%以下がさらに好ましい。
10〜20N荷重時の伸長率が5%以下だと、外力や瘢痕組織などの伸縮などによって貼付材が変形することなく、施術部を適切な形に矯正することができる。
【0019】
前記貼付材の伸長力は、1〜3%伸長時(1%、2%、3%のそれぞれの伸長時)のとき、5〜120N/25mmとするのが好ましく、8〜100N/25mmとするのがさらに好ましい。
具体的には、1%伸長時に5〜120N/25mmが好ましく、5〜100N/25mmがより好ましく、8〜100N/25mmがさらに好ましい。また、2%伸長時に8〜120N/25mmが好ましく、12〜100N/25mmがより好ましく、15〜100N/25mmがさらに好ましい。また、3%伸長時に10〜120N/25mmが好ましく、15〜100N/25mmがより好ましく、18〜100N/25mmがさらに好ましい。
伸びにくい素材であるほど好ましいことから、1%伸長時の伸長力が5N/25mm以上であったり、5%伸長時の伸長力が7.0N/25mmであれば良く、特に上限は制限されない。一方、1%伸長時の伸長力が、5N/25mm未満であったり、2%伸長時の伸長力が7N/25mmだと、外力や瘢痕組織などの伸縮などによって貼付材が変形してしまい、施術部を適切な形に矯正することができない。
【0020】
前記貼付材の吸水率は、特に限定されない。この吸水率は、1時間後において、20%以上であることが好ましく、50〜300%であることがより好ましく、70〜230%であることが更に好ましい。また、3時間後において、40%以上であることが好ましく、60〜600%であることがより好ましく、200〜500%であることが更に好ましい。さらに、24時間後において、60%以上であることが好ましく、100〜700%であることがより好ましく、350〜700%であることが更に好ましい。
吸水率が1000%以上だと吸水後のゲルが崩壊しやすくなってしまう。24時間後の吸水率が50%以下だと、汗などを吸水できず、皮膚と貼付材の間にたまった汗などによって皮膚が浸軟してしまう。
【0021】
前記貼付材の厚みは、0mm超1mm以下であることが好ましく、0mm超0.5mm以下であることがより好ましい。
【0022】
本発明に係る貼付材の形態は、支持体と粘着剤層と、を備えていれば特に限定されず、例えば、三角形、四角形、菱形等の多角形、円形、楕円形、又はこれらの形状を適宜組み合わせたシート状の形態、特定の方向に連続的に形成したテープ状、ロール状の形態等、自由な形態に形成することができる。また、貼付する部位に合わせて立体的に形成したり、切り込みやスリット等を設けるなど、自由に設計することができる。
また、貼付材の粘着剤層が設けられる面の表面形状は、平坦であることが好ましい。
さらに、貼付材は目立たないものであることが好ましく、例えば、透明または半透明であることが好ましい
【0023】
後記〔実施例〕の表1からも明らかなように、本発明に係る貼付材は、伸長力が比較例に比べて著しく高い。そのため、外力や瘢痕組織の伸縮などの力学的作用によっても変形しにくい。
従来は、追従しない、すなわち硬い貼付材は患者に苦痛を与えるものとして避けられてきた。しかしながら、逆に、傷跡、創傷などの表面に硬い貼付材を用いることで、流動性のある皮膚を貼付材の形状に矯正して、治療することができる。
このように、本発明に係る貼付材は、非常に引張応力が高いため、皮膚の変形を抑制するとともに、本発明に係る貼付材を貼り付けることで、皮膚を平滑に矯正することができる。
また、汗などの体液についてはハイドロコロイド粘着剤が吸収するため、皮膚の浸軟なども起こりにくい。しかも、この粘着剤が柔らかさを持っているため粘着剤が皮膚の伸縮による外力を吸収することができるため、支持体の硬さによって皮膚が傷つくことを防いでいる。ただし、支持体の伸長力のほうが著しく高いため、ハイドロコロイド粘着材の柔らかさによる従来のような問題は生じない。
さらに、本発明に係る貼付材は、矯正や施術部の固定のために金属を配した場合よりも目立たないため、患者の不快感を軽減できる。また、例えば、貼付材を透明又は半透明にすることで、顔面などの目に付きやすい場所に用いた場合でも目立たず好適である。
すなわち、本発明に係る貼付材は、外力や皮膚の伸縮などの力学的作用を軽減し、傷跡、創傷表面を意図した形状に矯正することが可能である。
そして、このようなことから、本発明に係わる貼付材は、線維増殖性疾患(ケロイド・肥厚性瘢痕)、事故や手術などの傷跡の治療;美容整形などの審美治療;創傷の治癒に用いることが好ましい。
【0024】
2.支持体
本発明に係る支持体としては、プラスチックフィルムが挙げられる。
【0025】
前記プラスチックフィルムの材料(樹脂)としては、例えば、ポリウレタン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリプロピレン、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン・メタクリル酸重合体(EMAA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)等のオレフィン系共重合体;ポリビニルアルコール;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン;シリコーンなどから選ばれる1種又は2種以上のものを挙げることができる。このうち、ポリエステル又はポリオレフィンが好ましい。
【0026】
前記支持体の破断強度が、35N/25mm以上であることが好ましく、40N/25mm以上であることがより好ましく、45N/25mm以上であることがさらに好ましく、45〜1000N/25mm以上であることがよりさらに好ましい。水蒸気透過性が良好で、不感蒸散などを妨げることが少ないポリウレタン、ポリエステル、ポリアミドなどが好ましい。また、上限値はあくまで例示に過ぎず、破断しない限り、上記数値を超えるものであっても良い。
なお、これらの材料は、単一で使用してもよく、二種類以上を混合して使用してもよい。
【0027】
前記支持体の厚さとしては、5〜1000μmの範囲が好ましく、5〜100μmの範囲がより好ましく、10〜100μmの範囲がさらに好ましい。厚さが5μm未満より薄いと、支持体の強度が十分でなく、使用時に繰り返し摩擦によって破れる可能性があるので5μm以上が好適である。また、厚さが1000μm超より厚いと、嵩高になり身体に貼付したときに違和感が生じ、特に曲面部位への追従性が悪くなるおそれがあるので1000μm以下が好適である。
【0028】
前記支持体の形態としては、貼付部の観察が容易な透明又は半透明のプラスチックフィルムが好ましい。
【0029】
3.粘着剤層
本発明に係る粘着剤層は、少なくとも粘着剤を含むものである。
本発明に用いる粘着剤層の粘着剤としては、例えばエラストマーを用いることができる。エラストマーとしては、その種類は特に限定されず、公知のもの、例えば以下のものを1種又は2種以上自由に選択することが可能である。
エラストマーとしては、例えば、スチレン系ポリマー、オレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリビニルエーテル系ポリマーなどが挙げられる。
このスチレン系ポリマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、水添スチレン−ブタジエンラバー(HSBR)、スチレン−エチレン/ブチレン−オレフィン結晶ブロック共重合体(SEBC)などを挙げることができる。また、他のポリマーとしては、ウレタン系共重合体、アクリル系共重合体、オレフィン結晶−エチレン/ブチレン−オレフィン結晶ブロック共重合体(CEBC)、ポリイソブチレン、天然ゴム、ポリイソプレン、ニトリルゴムなどを挙げることができる。これらを1種又は2種以上選択して用いてもよい。
この中でも特に、スチレン系ポリマー、オレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマーなどの熱可塑性エラストマー;ウレタン系ポリマー;シリコーン系ポリマーを1種又は2種以上選択して用いることが好ましい。
エラストマーとしては、スチレン系エラストマーを用いることが好ましく、特に水添スチレン−ブタジエンラバー(HSBR)を用いることが好ましい。
【0030】
本発明においては、粘着剤全質量に対し、エラストマーの含有範囲が3〜30質量%であることが好ましく、10〜25質量%であることがより好ましい。エラストマーの含有量を3質量%以上に設定することにより、吸水時による崩壊をより防ぐことができる。また、エラストマーの含有量を30質量%以下に設定することにより、粘着剤が硬くならず、また、粘着力が発現しやすくなるため、好適に用いることができる。
【0031】
また、水を含むヒドロゲルや、有機溶媒を含むオルガノゲルの形態として使用したり、前記エラストマーに、親水性高分子化合物を加えた、いわゆるハイドロコロイドの形態として使用することがより好ましい。また、必要に応じて軟化剤、粘着付与剤などの任意成分を加えることもできる。ハイドロコロイド粘着剤を使用することにより、汗や創傷からの滲出液等を吸収することができ、蒸れによるカブレや掻痒感を軽減することができる。
【0032】
前記親水性高分子化合物としては、公知の粘着剤に用いることができる親水性物質を1種又は2種以上を自由に選択して用いることができる。このうち、後述する多価アルコール類によって膨潤させることができるものであることが好ましく、また粉状又は粒状であるものが好ましい。
前記親水性高分子化合物としては、例えば、コーンスターチ、グアーガム、ローカストビーンガム、デンプン、アルギン酸塩、カラギーナン、寒天、ゼラチン、キチン、キトサンペクチン、カラヤガム、アラビアゴム、キサンタンガム、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、メチルセルロース、デンプンアセテート、デンプンフォスフェート、ヒドロキシエチル化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、デキストリン化デンプン、デンプン・アクリル酸グラフト重合体、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリN−ビニルピロリドン、カオリン、含硫ケイ酸アルミニウム、クオタニウム−18ヘクトライト、シリカ、タルク、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等を挙げることができる。なお、親水性物質としては、膨潤後に透明性を有するものが好ましい。
このうち、カルボキシメチルセルロース(ナトリウム型)を用いることが好ましい。
【0033】
さらに、本発明においては、親水性高分子化合物を膨潤させるために、多価アルコール類を加えることが好ましい。親水性高分子化合物を膨潤させることで、ハイドロコロイドの透明性、吸水性、柔軟性を向上させることができる。
【0034】
前記多価アルコール類は、親水性高分子化合物を膨潤させることができるものであればその種類は限定されず、公知の多価アルコールや多価アルコール重合体(多価アルコール類)を1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。
例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなどの多価アルコールを挙げることができる。
また、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリンなどの多価アルコール重合体を使用することもできる。
前記多価アルコール類のうち、グリセリンを用いることが好ましい。
【0035】
本発明においては、親水性高分子化合物と多価アルコール類との合計が、粘着剤全質量に対し、10〜60質量%であることが好ましく、30〜50質量%であることがより好ましい。親水性高分子化合物と多価アルコール類との合計を30質量%以上に設定することにより、吸水速度をより速くすることができるからである。また、親水性高分子化合物と多価アルコール類との合計を60質量%未満に設定することにより、透明性をより向上させることができる。
なお、本発明においては、多価アルコール類は任意成分であるため、含まれていなくても良い。
【0036】
更に、多価アルコール類/親水性物質<0.85であることが好ましい。多価アルコールの親水性物質に対する割合を0.85よりも少なくすることにより、凝集力をより向上させ、安定性をより高めることができるからである。
【0037】
前記軟化剤の種類は、本発明の目的を損なわなければ特に限定されず、公知の軟化剤を自由に選択することができる。前記軟化剤は、エラストマーの弾性を低下させて柔軟性を付与すると共に、粘着性を高める働きもするので用いるのが好ましい。例えば、鉱油、植物油、動物油及び合成油などからなどから選ばれる1種又は2種以上のものを挙げることができる。
前記鉱油としては、例えば、流動パラフィン、流動イソパラフィン、ナフテン油等を挙げることができる。
前記植物油としては、例えば、オリーブ油、オリーブスクワラン、マカデミアナッツ油、ホホバ油、アーモンド油、落花生油、ひまし油、やし油、パーム油、サフラワー油、ひまわり油、綿実油、硬化やし油、硬化パーム油、アボガド油、杏仁油、グレープシード油等を挙げることができる。
前記動物油としては、例えば、ラノリン、タートル油、ミツロウ、スクワレン、プリスタン等を挙げることができる。
前記合成油としては、例えば、グリセリントリ−2−エチルヘキサノエート等の脂肪酸トリグリセライド;ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、アミノシリコン等のシリコーンオイル;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル等のエステル類等を挙げることができる。
【0038】
本発明においては、このうち鉱油を用いることが好ましく、この鉱油の中でも流動パラフィンを用いることがより好ましい。
前記軟化剤の含有範囲は、粘着剤全質量に対し、0〜35質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましい。これにより、適度な柔軟性を付与しつつ、凝集破壊しにくくすることができる。
【0039】
前記粘着付与剤の種類は、本発明の目的を損なわなければ特に限定されず、公知の粘着付与剤を自由に選択することができる。例えば、天然ロジン誘導体、クマロン−インデン樹脂、テルペンオリゴマー、脂肪族石油樹脂、アルキル変性フェノール樹脂、ポリテルペン樹脂、ガムロジン、ロジンエステル、油性フェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、及び石油系炭化水素樹脂などから選ばれる1種又は2種以上のものを挙げることができる。本発明においては、このうち石油系炭化水素樹脂などを用いることが好ましく、この石油系炭化水素樹脂の中でも脂環族飽和炭化水素樹脂を用いるとより好ましい。
なお、軟化材、粘着付与剤は必須ではない。
前記粘着付与剤の含有範囲は、粘着剤全質量に対し、10〜40質量%であることが好ましく、20〜30質量%であることがより好ましい。これにより、適度な柔軟性を付与しつつ、凝集破壊しにくくすることができる。
【0040】
前記粘着剤層には、任意成分として、pH調整剤を含有させることも可能である。pH調整剤の種類は、本発明の目的を損なわなければ特に限定されず、公知のpH調整剤を自由に選択することができる。一例としては、カラヤガム、クエン酸、リン酸、リン酸水素ナトリウム、無水リン酸水素ナトリウム、ペクチン、無水クエン酸、アルカリ金属水酸化物、有機酸の緩衝液を挙げることができる。
前記pH調整剤の中でも無水クエン酸を用いることが好ましい。また、正常な皮膚のpHに合わせ、pH4.0〜6.0の範囲に調整することが好ましい。
【0041】
前記粘着剤層には、任意成分として、薬効成分を含有させることも可能である。薬効成分の種類は、本発明の目的を損なわなければ特に限定されず、目的に応じて自由に選択することができる。一例としては、生理活性剤、抗菌剤、消炎鎮痛剤、ステロイド剤、麻酔剤、抗真菌剤、気管支拡張剤、鎮咳剤、冠血管拡張剤、抗高血圧剤、降圧利尿剤、抗ヒスタミン剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、ビタミン剤、性ホルモン剤、抗うつ剤、脳循環改善剤、制吐剤、抗腫瘍剤など、あらゆる薬剤を配合することができる。これらの薬剤は、経皮吸収により全身又は局所においてその効果を発揮したり、あるいは貼付された部位において、局所的に効果を発揮する。
【0042】
前記薬効成分の中でも、皮膚の生理機能(皮膚バリア機能等)を保持又は向上させる目的で、局所的な効果を発揮する生理活性剤を添加することが好ましい。生理活性剤の具体例としてはスフィンゴ脂質、尿素、グリコール酸、アミノ酸(アルギニン、システイン、グリシン、リシン、プロリン、セリン等)及びその誘導体、タンパク質加水分解物(コラーゲン、エラスチン、ケラチン等)、ムコ多糖(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン等)及びその誘導体、ビタミンB群(チアミン、リボフラビン、ニコチン酸、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン、ビオチン、葉酸、シアノコバラミン等)、アスコルビン酸(ビタミンC及びその誘導体)、レチノイド(ビタミンA、レチナール、レチノイン酸等)、ビタミンD(D2、D3等)、ビタミンE及びその誘導体、カロチノイド(カロチン、リコピン、キサントフィル等)、酵素、補酵素等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0043】
前記粘着剤層は、その厚さが30〜1000μmであることが好ましく、100〜500μmであることがより好ましい。また、前記粘着剤層の塗工重量は、1〜1000g/mの範囲が好ましく、5〜500g/mの範囲がより好ましい。
前記粘着剤層の厚さ、塗工重量がこの範囲内にあることにより、貼付時に適度な粘着力を示し、皮膚に対する密着性及び追従性にも優れ、良好な透湿度を得ることができる。
【0044】
なお、本発明に係る貼付材には、粘着剤層を保護する剥離シートをさらに備えていても良い。剥離シートとしては、公知の剥離紙、剥離フィルムが利用でき、紙やフィルムの表面にシリコーン樹脂処理やフッソ樹脂処理等を施したものを利用できる。
【0045】
<貼付材の製造方法>
本発明に係る貼付材1の製造方法は、特に限定されず、一例である図1のような貼付材1を製造できればよい。
貼付材1の製造に使用する前記粘着剤の作製は、特に限定されないが、例えば、前記粘着剤層の粘着剤の原材料と前記親水性物質を混合する混合工程と、この混合物中の前記親水性物質を膨潤する膨潤工程とを少なくとも行うことなどが挙げられる。
本発明に係わる貼付材1の製造としては、例えば、前記粘着剤を前記支持体11の少なくとも片面に設けるように塗工して粘着剤層12を形成する粘着剤層形成工程を行うことが挙げられる。
この塗工の方法は、公知のあらゆる技術を自由に用いることができる。例えば、前記粘着剤を、圧力などをかけながら、適当な厚さになるように支持体11に圧延する方法が挙げられる。この際、必要に応じて加熱などを行ってもよい。
また、他の一例としては、前記粘着剤を、剥離シート(図示せず)に一旦塗工し、その後、支持体11に転写させることで粘着剤層12を形成することもできる。
【0046】
前記組成物の支持体11又は剥離シート(図示せず)への具体的塗工方法は、特に限定されず、公知のあらゆる方法を自由に採用することができる。例えば、コンマダイレクト、ナイフコーター、グラビアダイレクト等の塗工方式を利用して、塗工パターンや厚さを目的に合わせて適宜、制御することができる。
【0047】
また、粘着剤層12の塗工パターンとしては、支持体11の表面を全面的に被覆しても良いが、部分的に被覆することも可能である。部分的に被覆する場合は、格子状、ネット状、粒状、唐草模様などの任意の形態を選択できる。このように、支持体11の片面に、部分的に粘着剤層12を設けることにより、通気性、透湿性などをより向上させることもでき、また、皮膚からの剥離時の刺激をより軽減することもできる。
【0048】
本発明に係る貼付材の製造時においては、支持体11と粘着剤層12との接着性を向上させるために、支持体11に表面処理又はプライマー処理を施すことも自由である。支持体11の表面処理としては、例えば、エンボス加工、サンドマット加工、コロナ放電処理、プラズマ処理、アルカリ処理など、公知のあらゆる処理方法を採用することができる。プライマー処理としては、例えば、シランカップリング剤などからなるプライマーを用いるなど、本発明に係る組成物に使用可能なプライマーであれば、公知のあらゆるプライマーを用いてプライマー処理を行うことが可能である。
【0049】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0050】
(1)粘着剤の作製
まず、以下に示す方法で、実施例1〜2、比較例1〜11に係る粘着剤を作製した。
【0051】
<実施例1>
エラストマーの一例としてHSBR(JSR株式会社製、以下同じ)20.1質量%と、軟化剤の一例として流動パラフィン(カネダ株式会社製、以下同じ)15.3質量%と、粘着付与剤の一例として脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学工業株式会社製、以下同じ)29.6質量%とを加圧ニーダに仕込み、十分均一になるまで混合した。次に、親水性物質の一例としてCMC−Na(ダイセル化学工業株式会社製、以下同じ)5.0質量%を加え、均等になるまで加圧混合した。その後、多価アルコールの一例としてグリセリン(三洋化成工業株式会社製、以下同じ)30.0質量%を加え、更に混合し、粘着剤を作製した。
得られた粘着剤を、支持体の一例として破断強度が45.9Nのポリエステルフィルムに塗工し、実施例1に係る貼付材を作成した。
なお、このポリエステルフィルム(支持体)には、伸長率が、10N荷重時のとき1%未満であり、20N荷重時のとき5%未満である。
また、実施例1にかかる貼付材の支持体の厚みは25μm、粘着剤層の厚みは300μm、全体の厚みは325μmである。
<実施例2>
実施例1と同様に作成した粘着剤を、支持体の一例として破断強度が143N以上のポリエステルに塗工し、実施例2に係る貼付材を作成した。なお、このポリエステルは、伸長率が、30N荷重時のとき1%未満であり、80N荷重時のとき5%未満である。
また、実施例2にかかる貼付材の支持体の厚みは50μm、粘着剤層の厚みは300μm、全体の厚みは350μmである。
【0052】
<比較例1>
比較例1の貼付材としては、市販品のマイクロポア(登録商標、スリーエム カンパニー製)を用いた。
【0053】
<比較例2>
比較例2の貼付材としては、市販品のキノホワイト(登録商標、日東メディカル株式会社製)を用いた。
【0054】
<比較例3>
比較例3の貼付材としては、市販品のプラポア(登録商標、アルケア株式会社製)を用いた。
【0055】
<比較例4>
比較例4の貼付材としては、市販品のMepitac(登録商標、Molnlycke社製)を用いた。
【0056】
<比較例5>
比較例5の貼付材としては、市販品のMepifoam(登録商標、Molnlycke社製)を用いた。
【0057】
<比較例6>
比較例6の貼付材としては、市販品のTegasorb thin(登録商標、スリーエム カンパニー製)を用いた。
【0058】
<比較例7>
比較例7の貼付材としては、市販品のアブソキュアサージカル(登録商標、日東電工株式会社製)を用いた。
【0059】
<比較例8>
比較例8の貼付材としては、市販品のビジダーム(登録商標、ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社製)を用いた。
【0060】
<比較例9>
比較例9の貼付材としては、市販品のコムフィールアルカス(登録商標、Coloplast社製)を用いた。
【0061】
<比較例10>
比較例10の貼付材としては、市販品のアブソキュアーウンド(登録商標、日東電工株式会社製)を用いた。
【0062】
<比較例11>
比較例11の貼付材としては、市販品のデュオダームCGF(登録商標、Convatec社製)を用いた。

【0063】
【表1】




【0064】
【表2】



【0065】
<貼付材の吸水率の測定>
表1に記載した吸水率は、次のようにして測定した。
各サンプルから直径30mmの試験片を3枚採取し、各試験片の重量を測定した。試験片を生理食塩水(0.9%NaCl水溶液)150mlに浸漬し、37℃恒温槽中に静置した。浸漬後1、3、24時間に試験片の重量を測定し、下記式により吸水率を算出した。
なお、比較例1〜3はテープであり、吸水性がないため測定を行っていない。また、比較例4,5は粘着剤層がシリコーンであり、吸水性がないため測定を行っていない。
【0066】
(数1)
吸水率(%)={(吸水後検体重量/吸水前検体重量)−1}×100
【0067】
<貼付材の伸長率及び伸長力の測定>
伸長率及び伸長力は、次のようにして測定した。
各サンプルから、縦100mm横25mmの試験片を採取し、チャック間距離50mmで引張試験を行った。引張試験は、温度23℃、湿度65%RHの環境下で、引張試験機(インストロン社製、商品名「INSTRON5564」)を使用し、引張速度は50mm/分の引張速度で試験行った。そして、所定伸びE(mm)ごとの所定荷重を測定し、その結果に基づいて、下記数式2から伸長率(%)を算出した。
また、所定の伸び(n%)に伸長したときの応力(N/25mm)を測定し、その値を伸長力(N/25mm)とした。
実施例1及び2の貼付材の伸長率及び伸長力は、上述の如く、支持体及び粘着剤層からなる貼付材を測定した結果である。
実施例1〜2の貼付材並びに比較例1〜11の貼付材の測定結果を表1及び2に示す。
なお、チャック幅Wは120mm、チャック間距離Lは50mmとする。
【0068】
(数2)
伸長率(%)=(E/L)×100
E:伸び(mm) L:チャック間距離(mm)
【0069】
表1に記載の破断強度とは、サンプルが破断するまでに加えた荷重のうち、最大値を意味する。
【0070】
また、表1に記載の破断したときの伸長率とは、荷重前の状態を0%としたときの伸長率を意味する。例えば、荷重前のサンプルの長さが5cmであり、破断したときの伸長率が100%の場合、破断したときの長さは10センチであったことを意味する。
【0071】
図2、3は、各実施例・比較例における伸長率と荷重力との関係を示したグラフである。
図2と図3は、荷重力と伸長率のいずれかを縦軸にとったグラフである。
【0072】
図2は伸長率を縦軸に取ったグラフである。表1及び図2に示すように、本発明に係る貼付材は1%伸長時の伸長力が10N/25mm以上であることがわかる。特に、実施例2においては、1%伸長時の伸長力が30N/25mm以上であることがわかる。
実施例1と比較例1を比べた場合、実施例1が1%伸長する際に必要な荷重力は、比較例1の約3倍となっている。このことからも、本発明に係る貼付材が非常に伸びにくいものであることがわかる。
【0073】
図3は荷重力を縦軸に取ったグラフである。表2及び図3に示すように、本発明に係る貼付材(実施例1,2)は10N荷重時の伸長率が1%未満であることがわかる。特に、実施例2においては、30N荷重時の伸長率が1%未満となっている。これに対して、比較例では、5N未満の荷重時において伸長率が1%を越えていることがわかる。別の表現をすると、実施例と比較例を比べた場合、5N荷重時には、実施例に係る貼付材は比較例の約6分の1以下しか伸びていない。
【0074】
つまり、本発明の実施例に係る貼付材は、比較例に比べ、所定の伸長を得るのに、非常に大きな力を要し、また、所定荷重をかけたときの伸長率が非常に低いという特性を持っている。
これに対して、比較例に係る貼付材は、肌に追従するために支持体が伸びやすく、皮膚を固定する能力がないことがわかる。そのため、本発明の目的である皮膚の流動性を制限することによって、皮膚を固定・矯正するという目的が達成できない。
【0075】
表1からも明らかなように、実施例1及び2に係る貼付材は、比較例6〜11に比べて高い吸水率を示した。特に、1時間後において70%以上の高い吸水率を示し、24時間後においても300%以上の高い吸水率を示している。
このように、本発明に係る貼付材は高い吸水性を有するので、長時間貼付した場合であっても汗等を吸水し、貼付材の剥離を防ぐことができる。また、汗などによる皮膚の浸軟を防ぐことができる。さらに、長期間の貼付による患者の不快感を軽減することができる。
【0076】
つまり、本発明の実施例に係る貼付材は、比較例に比べ、所定の伸長を得るのに、非常に大きな力を要し、また、所定荷重をかけたときの伸長率が非常に低いという特性を持っている。
これに対して、比較例に係る貼付材は、肌に追従するために支持体が伸びやすく、皮膚を固定する能力がないことがわかる。そのため、本発明の目的である皮膚の流動性を制限することによって、皮膚を固定・矯正するという目的が達成できない。
【0077】
表1からも明らかなように、実施例1,2に係る貼付材は、比較例6〜11に比べて高い吸水率を示した。特に、1時間後において70%以上の高い吸水率を示し、24時間後においても300%以上の高い吸水率を示している。
このように、本発明に係る貼付材は高い吸水性を有するので、長時間貼付した場合であっても汗等を吸水し、貼付材の剥離を防ぐことができる。また、汗などによる皮膚の浸軟を防ぐことができる。さらに、長期間の貼付による患者の不快感を軽減することができる。
【0078】
本発明に係る貼付材を用いた場合の作用メカニズムは次のように考えられる。
本発明に係る貼付材は、表1からも明らかなように、この伸長力が従来(比較例)の貼付材に比べて著しく高い。そのため、外力や瘢痕組織の伸縮などの力学的作用によっても変形しにくい。
これに対して、本発明にかかる貼付材と比較して瘢痕組織は柔軟性を有するものであるから、本発明に係る貼付材を貼付した場合、瘢痕組織は本発明の貼付材の形状に沿って馴染むように矯正される。すなわち、柔らかいものに硬いものを当てた際に、柔らかいものが硬いもの形状に沿って変形することを利用したものである。その結果、貼付材の表面形状、好ましくは平坦な表面形状によって、瘢痕組織を本来あるべき姿に矯正することができるものと考えられる。
【0079】
また、本発明に係る貼付材を貼付した場合、上述の特定の外力を阻止する事により、ケロイド・肥厚性瘢痕の発生が抑制される。ケロイド・肥厚性瘢痕の切除除去という外科的治療方法もあるが、ケロイド・肥厚性瘢痕を切り取らなくとも、本願発明に係わる貼付材を貼付すればケロイド・肥厚性瘢痕の原因の一つである運動刺激を除くことが可能となり、ケロイド・肥厚性瘢痕が引いていくことになるので、有利である。
また、本発明に係わる貼付材を用いることによって、ケロイド・肥厚性瘢痕の患部の拡大防止、治療等を行うことができることで、本発明の貼付材は有利である。
【0080】
なお、貼付材の支持体が硬いと、エッジなどによって皮膚が傷つく恐れがあるとも考えられる。しかしながら、本発明に係る貼付材には粘着剤層が備えられていて、この粘着剤が柔らかさを持っているため粘着剤が皮膚の伸縮による外力を吸収することができるため、支持体の硬さによって皮膚が傷つくことを防ぐことができる。
【0081】
従来は追従しない貼付材は患者に苦痛を与えるものとして避けられてきた。しかしながら、逆に硬い貼付材を用いることで、流動性のある皮膚を貼付材の形状に矯正することができるため、治療することができる。
【0082】
また、本発明に係る貼付材は、手術などの傷跡の治療に使用する貼付材に好適である。
本発明に係わる貼付材の使用の一例として、例えば、鼻などに癌ができた場合、まず鼻の組織の一部とともに癌を切除・除去する。その後、切除箇所に脂肪などを注入し、鼻の再形成を行う。このとき、脂肪などを注入した施術部の形状は本来の鼻の形状にはならず、凸凹してしまう。そこで本発明に係る貼付材を貼付することで、鼻の形状を適切な形状に矯正・固定することができる。
また、施術部の痕を平坦化することができる。
なお、上記のような手術の場合、鼻の形が整うまで貼付することが望ましく、使用期間としてはおおよそ2〜3ヶ月程度である。
【0083】
さらに、本発明に係る貼付材は、美容整形などの審美治療においても有用である。例えば、瞼の皺に貼ることで、皺を伸ばすことができる。さらに、施術部の痕を平坦化することで、より施術箇所を目立たなくさせることができる。
【0084】
本発明に係る貼付材は、非常に引張応力が高いため、皮膚の流動性を抑制するとともに、本発明に係る貼付材を貼り付けることで、皮膚を平滑に矯正することができる。また、血液などの浸出液についてはハイドロコロイド粘着剤が吸収するため、皮膚の浸軟なども起こりにくい。さらに、本発明に係る貼付材は、矯正や施術部の固定のために金属を配した場合よりも目立たないため、患者の不快感を軽減できる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明に係る貼付材は、以下の用途に好適に使用される。
(1)線維増殖性疾患(ケロイド・肥厚性瘢痕)に対し、患部の拡大防止・治療等を目的とした貼付材として好適に使用できる。
(2)事故や手術等の傷跡治療に対し、施術部の形状矯正・固定や施術部の平坦化を目的とした創傷被覆材として好適に使用できる。
(3)美容整形等の審美治療に対し、施術部の形状矯正・固定や施術部の平坦化を目的とした貼付材として好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体の一面に設けられた接着剤層とを少なくとも含む貼付材において、
貼付材の伸長率が、5N荷重時のとき1%以下であり、10N荷重時のとき5%以下である貼付材。
【請求項2】
前記貼付材の伸長力が、1%伸長時に5N/25mm以上である請求項1に記載の貼付材。
【請求項3】
前記貼付材の吸水率が、1時間後において70%以上である請求項1に記載の貼付材。
【請求項4】
前記貼付材の厚みが、1mm以下である請求項1に記載の貼付材。
【請求項5】
線維性増殖疾患の治療に用いる請求項1〜4の何れか1項に記載の貼付材。
【請求項6】
傷跡の治療に用いる請求項1〜4の何れか1項に記載の貼付材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−135582(P2012−135582A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291740(P2010−291740)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)