説明

貼付治具及び位相差板の貼付方法

【課題】位相差板の位置合わせが困難である。
【解決手段】貼付治具は、位相差板を表示部に貼り付ける貼付治具であって、前記貼付治具は、前記位相差板を前記表示部へと押圧する押圧部と、前記押圧部を取り外し可能に前記位相差板に貼り付ける粘着層と、前記押圧部に設けられた把持可能な把持部とを備える。位相差板の貼付方法は、把持可能な把持部が設けられた押圧部を有する貼付治具を、粘着層によって位相差板に取り外し可能に貼り付ける段階と、前記位相差板を表示部に載置する載置段階と、前記把持部を把持して、前記位相差板の位置合わせをする位置合わせ段階と、前記位相差板から前記貼付治具を取り外す取り外し段階とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付治具及び位相差板の貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディプレイ等の表示部に貼り付ける位相差板が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2010−284873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、位相差板の位置合わせにおいて、表示部への位相差板の貼り合わせは、粘着剤または接着剤等を介して行う。この場合、位相差板を表示部上に置いてしまうと粘着剤等の存在により位置の調整が難しく、円滑に移動させかつ微調整することが困難であるといった課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、位相差板を表示部に貼り付ける貼付治具であって、前記貼付治具は、前記位相差板を前記表示部へと押圧する押圧部と、前記押圧部を取り外し可能に前記位相差板に貼り付ける粘着層と、前記押圧部に設けられた把持可能な把持部とを備える貼付治具を提供する。
【0005】
本発明の第2の態様においては、把持可能な把持部が設けられた押圧部を有する貼付治具を、粘着層によって位相差板に取り外し可能に貼り付ける段階と、前記位相差板を表示部に載置する載置段階と、前記把持部を把持して、前記位相差板の位置合わせをする位置合わせ段階と、前記位相差板から前記貼付治具を取り外す取り外し段階とを備える位相差板の貼付方法を提供する。
【0006】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】位相差板18が貼り付けられた制御装置10の全体構成図である。
【図2】図1のII−II線に沿った縦断面図である。
【図3】表示部16及び位相差板18の分解斜視図である。
【図4】位相差板18を表示部16に貼り付けるための貼付治具の全体斜視図である。
【図5】貼付治具60による位相差板18の貼り付け方法を説明する図である。
【図6】貼付治具60による位相差板18の貼り付け方法を説明する図である。
【図7】貼付治具60による位相差板18の貼り付け方法を説明する図である。
【図8】貼付治具60による位相差板18の貼り付け方法を説明する図である。
【図9】貼付治具60による位相差板18の貼り付け方法を説明する図である。
【図10】貼付治具60による位相差板18の貼り付け方法を説明する図である。
【図11】貼付治具60による位相差板18の貼り付け方法を説明する図である。
【図12】位相差板18の位置合わせ方法を説明する概略平面図である。
【図13】位相差板18の位置合わせ方法を説明する概略平面図である。
【図14】位相差板18の位置合わせ方法を説明する概略平面図である。
【図15】形状を変更した貼付治具の全体斜視図である。
【図16】形状を変更した貼付治具の全体斜視図である。
【図17】形状を変更した貼付治具の全体斜視図である。
【図18】形状を変更した貼付治具の全体斜視図である。
【図19】形状を変更した貼付治具の全体斜視図である。
【図20】形状を変更した貼付治具の全体斜視図である。
【図21】貼付治具の一部として保護膜を適用した実施形態を説明する図である。
【図22】貼付治具の一部として保護膜を適用した実施形態を説明する図である。
【図23】貼付治具の一部として保護膜を適用した実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、位相差板18が貼り付けられた制御装置10の全体構成図である。図1に示すように、制御装置10の一例は、パーソナルコンピュータである。制御装置10は、各部を収容及び保持する枠体12と、ユーザが指示等を入力する操作部14と、画像を表示する表示部16とを有する。位相差板18は、表示部16よりも一回り小さい長方形状に形成されている。例えば、表示部16の大きさがA4サイズである場合、位相差板18は、250mm×150mmの長方形状である。位相差板18は、例えば、0.2mmの厚みを有する。位相差板18は、表示部16の中央部に貼り付けられる。
【0010】
図2は、図1のII−II線に沿った縦断面図である。図2に示すように、位相差板18は、位相差板接着層22と、位相差部24とを有する。
【0011】
位相差板接着層22は、表示部16の前面に設けられている。位相差板接着層22は、位相差板18を表示部16に直接的または間接的に接着して保持する。
【0012】
位相差部24は、位相差板接着層22を介して、表示部16の前面に設けられている。位相差部24には、同じ偏光特性の偏光からなる右目用画像及び左目用画像が入力される。位相差部24は、両画像を互いに偏光特性の異なる偏光からなる右目用画像及び左目用画像に変換して出力する。ユーザは、三次元画像用の眼鏡30を介して、これらの画像を見る。
【0013】
図3は、表示部16及び位相差板18の分解斜視図である。図3に示すように、表示部16は、光源32と、偏光板34と、画像出力部36と、偏光板38とを備える。
【0014】
光源32は、面内において略均一な強度で、白色の無偏光を出力する。光源32は、ユーザから見て、表示部16の最後方に配置されている。光源32には、拡散板と冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)とを組み合わせた光源、フレネルレンズと発光ダイオードとを組み合わせた光源、有機EL(Electro-Luminescence)を含む光源等を適用できる。
【0015】
偏光板34は、光源32の前面に接着されている。偏光板34は、PVA(ポリビニルアルコール)を含む樹脂によって構成されている。尚、偏光板34を構成する材料は、適宜変更してよい。図3の矢印で示すように、偏光板34は、水平方向から45°傾斜した透過軸と、透過軸と直交する吸収軸とを有する。これにより、光源32から出力されて、偏光板34に入射した無偏光の光のうち、振動方向が偏光板34の透過軸と平行な成分は透過するとともに、吸収軸と平行な成分は吸収されて遮断される。このため偏光板34から出力される光は、偏光板34の透過軸と平行な偏光軸を有する直線偏光となる。
【0016】
画像出力部36は、偏光板34の前面に設けられている。画像出力部36は、画像を生成する複数の画素(=ピクセル)を有する。複数の画素は、鉛直方向及び水平方向に一定のピッチで二次元に配列されている。画素は、画像を扱うときの単位をいい、色調及び階調の色情報を出力する。各画素は、3個の副画素(=サブピクセル)を有する。各副画素は、液晶部と、液晶部の前後面に形成された一対の透明電極とを有する。透明電極は、液晶部に電圧を印加する。電圧が印加された副画素の液晶部は、直線偏光の偏光軸を90°回転させる。これにより、画像出力部36は、後述する偏光板38を透過する光と遮断される光とを出力して、画像を生成する。各画素に含まれる3個の副画素は、それぞれ赤色のカラーフィルタと、緑色のカラーフィルタと、青色のカラーフィルタとを含む。副画素の透明電極の電圧印加を制御することにより、副画素から出力される赤色、青色、緑色の光の程度を調整して、カラー画像が生成される。
【0017】
画像出力部36は、二次元画像及び三次元画像を出力する。画像出力部36は、二次元画像を出力する場合、全面から画像を出力する。一方、画像出力部36は、三次元画像を出力する場合、中央部の三次元領域40から画像を出力する。三次元領域40は、図3に「R」及び「L」で示すように、右目用の画像を出力する右目用画像出力部42及び左目用画像出力部44を有する。右目用画像出力部42及び左目用画像出力部44は、水平方向に延びる長方形状であって、互いに同形状である。右目用画像出力部42及び左目用画像出力部44は、鉛直方向に沿って、交互に配置されている。
【0018】
偏光板38は、画像出力部36の前面に設けられている。偏光板38は、PVA(ポリビニルアルコール)を含む樹脂によって構成されている。偏光板38は、透過軸と、透過軸と直交する吸収軸とを有する。偏光板38の透過軸は、偏光板34の透過軸と直交する。これにより、画像出力部36によって偏光軸が、90°回転された直線偏光は、偏光板38を透過して画像光となり画像を形成する。一方、画像出力部36によって偏光軸が回転されなかった直線偏光は、偏光板38によって遮断される。尚、偏光板38の透過軸と偏光板34の透過軸とを90°以外の角度で交差させてもよい。
【0019】
図3に示すように、位相差板18の位相差部24は、右目用位相差部46及び左目用位相差部48を有する。右目用位相差部46及び左目用位相差部48は、水平方向に延びる長方形状であって、右目用画像出力部42及び左目用画像出力部44と同形状である。右目用位相差部46は、右目用画像出力部42の前方に配置されている。左目用位相差部48は、左目用画像出力部44の前方に配置されている。従って、前方から見ると、右目用位相差部46は右目用画像出力部42と重なり、左目用位相差部48は左目用画像出力部44と重なる。
【0020】
右目用位相差部46は、入力された直線偏光の偏光特性を変調させて、円偏光にする1/4波長板である。右目用位相差部46の光学軸は、図3の右目用位相差部46の左端に記載する矢印のように、鉛直方向と平行である。これにより、右目用位相差部46は、光学軸の矢印の右側に示す矢印のように、表示部16から入力された直線偏光を右回りの円偏光に変調する。尚、光学軸は、進相軸または遅相軸である。
【0021】
左目用位相差部48は、入力された直線偏光の偏光特性を変調させて、右目用位相差部46が出力する円偏光とは異なる円偏光にする1/4波長板である。左目用位相差部48の光学軸は、図3の左目用位相差部の右端に記載する矢印のように、水平方向と平行である。これにより、左目用位相差部48は、光学軸の矢印の右側に示す矢印のように、表示部16から入力された直線偏光を左回りの円偏光に変調する。従って、右目用位相差部46及び左目用位相差部48は、入力する偏光の偏光特性を変調させて、互いに異なる偏光特性を有する右目用画像及び左目用画像を出力する。
【0022】
ユーザが三次元画像を見る場合に使用する眼鏡30は、右目用レンズ26と左目用レンズ28とを有する。右目用レンズ26は、右回りの円偏光のみを透過する。左目用レンズ28は、左回りの円偏光のみを透過する。これにより、ユーザの右目は、右目用位相差部46から出力された右目用の画像のみを視認して、ユーザの左目は、左目用位相差部48から出力された左目用の画像のみを視認する。
【0023】
各右目用位相差部46及び左目用位相差部48は、基板と、基板上に形成された配向膜及び液晶膜を含む。基板は、シクロオレフィン系のフィルムによって構成することができる。シクロオレフィン系フィルムとして、シクロオレフィンポリマー(=COP)、より好ましくは、シクロオレフィンポリマーの共重合体であるシクロオレフィンコポリマー(=COC)を使用することができる。また、基板は、トリアセチルセルロース(=TAC)を含む材料によって構成してもよい。尚、シクロオレフィン系フィルムを使用する場合は、脆弱性の観点から高靭性タイプのフィルムを使用することが好ましい。更に、基板は、ガラスによって構成してもよい。配向膜は、公知の光配向性化合物を適用できる。光配向性化合物の例として、光分解型、光二量子型、光異性型等の化合物をあげることができる。液晶膜は、紫外線または加熱等によって硬化可能な液晶ポリマーによって構成することができる。液晶膜は、各右目用位相差部46及び左目用位相差部48の領域に形成された配向膜の配向に沿って、配向される。
【0024】
上述した位相差板18が貼り付けられた表示部16を有する制御装置10の三次元画像の表示動作を説明する。尚、二次元画像の表示動作については、通常の表示動作と同様のため省略する。
【0025】
まず、光源32から出力された無偏光の光のうち、偏光板34は、透過軸と平行な方向に振動する光の成分のみを透過する。これにより、偏光板34は、透過軸と平行な直線偏光を出力する。画像出力部36の右目用画像出力部42及び左目用画像出力部44は、この直線偏光の一部の偏光軸を90°回転させてから同じ偏光特性を有する右目用画像及び左目用画像を出力する。偏光板38は、画像出力部36によって偏光軸が90°回転された直線偏光のみを透過させる。位相差板18では、右目用画像出力部42が偏光板38を透過した直線偏光を右回りの円偏光に変調させるとともに、左目用画像出力部44が偏光板38を透過した直線偏光を左回りの円偏光に変調させる。これにより、眼鏡30をかけたユーザの右目には、右目用画像出力部42から出力されて、右目用位相差部46によって右回りの円偏光に変調された右回りの円偏光からなる右目用画像が入射する。また、ユーザの左目には、左目用画像出力部44から出力されて、左目用位相差部48によって左回りの円偏光に変調された左回りの円偏光からなる左目用画像が入射する。これにより、ユーザは、三次元画像を視認する。
【0026】
図4は、位相差板18を表示部16に貼り付ける貼付治具の全体斜視図である。貼付治具60は、治具粘着層62と、押圧部64と、一対の把持部66とを有する。
【0027】
治具粘着層62は、押圧部64を取り外し可能に、且つ、直接的または間接的に位相差板18に貼り付ける。治具粘着層62は、押圧部64の一方の面の全面に設けられている。尚、ここでいう間接的に接着するとは、例えば、保護膜等を介して、貼付治具60を位相差板18に接着することをいう。
【0028】
押圧部64は、位相差板18を表示部16へと押圧する。押圧部64は、長方形状に形成されている。押圧部64は、位相差板18よりも一回り小さい。押圧部64の中央には、長方形状の開口部68が形成されている。従って、押圧部64は、開口部68を囲むように形成されている。開口部68の面積の一例は、位相差板18の50%〜90%である。押圧部64は、軽量な材料によって構成される。押圧部64を構成する材料の一例は、厚紙、耐水性の高いコート紙である。また、押圧部64を構成する材料の他の例は、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエステル等のプラスチックである。押圧部64の厚みの一例は、0.5mm〜5.0mmである。
【0029】
一対の把持部66は、位相差板18の貼付工程において、ユーザによって把持される。把持部66は、押圧部64の他方の面に設けられている。把持部66は、押圧部64を挟み治具粘着層62と反対側に配置される。一方の把持部66は、押圧部64の中心を挟み他方の把持部66と反対側に配置されている。把持部66は、押圧部64から突出している。これにより、ユーザは、容易に把持部66を把持できる。把持部66は、円柱状に形成されている。尚、把持部66は、円柱状以外であってもよい。把持部66を構成する材料の一例は、押圧部64と同じ材料である。把持部66は、押圧部64と一体的に構成してもよく、押圧部64と別部品にしてもよい。尚、把持部66の形状、個数、位置、材料は適宜変更してよい。
【0030】
図5〜図11は、貼付治具60による位相差板18の貼り付け方法を説明する図である。図5、図7、図8、図10、図11は斜視図である。図6は、図5のVI−VI線に沿った断面図である。図9は、図8のIX−IX線に沿った断面図である。
【0031】
図7〜図11において、制御装置10の操作部14は、省略する。尚、制御装置10が完成している状態で、この貼り付け方法を実行するが、制御装置10の完成前に実行してもよい。この貼り付け方法は、表示部16を水平または水平に近い状態で実行することが好ましい。
【0032】
まず、図5及び図6に示すように、保護膜70が設けられた位相差板18及び貼付治具60を準備する。尚、保護膜70は、省略してもよい。保護膜70は、位相差部24の面のうち、位相差板接着層22と反対側の面に設けられている。保護膜70は、保護粘着層72を介して、位相差板18に貼り付けられている。貼付治具60が、保護膜70を介して、治具粘着層62により位相差板18の一面に貼り付けられる。位相差板接着層22の接着力及び治具粘着層62の粘着力は、保護粘着層72の粘着力よりも強いことが好ましい。尚、粘着力の強さの関係は、粘着剤の硬さ、剥がし方(90°方向、180°方向の剥がし方)、凝集破壊、界面破壊など複数の要因を考慮して適宜変更してよい。
【0033】
次に、図7に示すように、表示部16の前面の一部に流体76を塗布する。流体76を塗布する領域は、位相差板18が貼り付けられる領域の内部のみであることが好ましい。流体76の一例は、界面活性剤を含む水である。流体76の他の例は、グリセリンを含む水溶液である。この場合、以下の利点がある。まず、粘着層を介さずとも位相差板18と表示部16とを密着させることができる。また、粘着層を介さないので、コストが下がる。更に、粘着層があり、水を介す場合に比べ、なめらかに移動させることができるとともに、位相差板18を何回も貼り直しできる。流体76を塗布する前に、枠体12と表示部16との境界の全周にわたって、当該境界を跨ぐように遮蔽部材78を設けることが好ましい。遮蔽部材78には、防水テープ等を適用することができる。これにより、流体76が、枠体12と表示部16との隙間から内部へ流入することを抑制できる。
【0034】
図8及び図9に示すように、流体76が塗布された表示部16上に、貼付治具60とともに、位相差板18を載置する。この状態では、図9に示すように、流体76が、表示部16と位相差板18との間に存在するので、位相差板18は、表示部16の一面を低抵抗で移動できる。ユーザは、把持部66を把持して、位相差板18を表示面上で滑らすことによって、位相差板18を表示部16に対して移動させる。これにより、ユーザは、位相差板18を表示部16内の三次元領域40へと位置合わせする。
【0035】
次に、位置合わせが終了すると、ユーザは、把持部66を介して押圧部64により位相差板18を表示部16に押圧して固定しつつ、図10に示すように、表示部16と位相差板18との間に介在する流体76を押し出す。流体76の吐き出し方法の一例は、ゴムベラ80等を貼付治具60の開口部68の内部で摺動させる。
【0036】
吐き出した流体を表示部16上から除去した後、遮蔽部材78を除去する。最後に、図11に示すように、位相差板18から保護膜70とともに貼付治具60を取り外して除去する。尚、位相差板18及び保護膜70を別々に取り外してもよい。ここで、保護粘着層72の粘着力は、位相差板接着層22の接着力及び治具粘着層62の粘着力よりも弱い。従って、ユーザは、把持部66を持ち上げることによって、位相差板18の位置ずれを抑制しつつ、保護膜70及び貼付治具60を位相差板18から剥がすことができる。これにより、表示部16への位相差板18の貼り付け工程が終了する。尚、貼付治具60は、保護膜70から取り外して再利用してもよい。
【0037】
図12、図13、図14は、位相差板18の位置合わせ方法を説明する概略平面図である。尚、図12、図14において、説明の都合上、右目用画像出力部42及び左目用画像出力部44の位置を、右目用位相差部46及び左目用位相差部48の位置より左側にしているが、両位置は略同じである。右目用画像出力部42及び左目用画像出力部44の形状及び周期は、右目用位相差部46及び左目用位相差部48の形状及び周期と見掛け上一致する。しかし、厳密には、両者の形状及び周期は異なる。具体的には、右目用位相差部46及び左目用位相差部48の形状及び周期は、右目用画像出力部42及び左目用画像出力部44の形状及び周期よりも小さい。尚、右目用位相差部46は、第1位相差部の一例であって、左目用位相差部48は、第2位相差部の一例である。
【0038】
三次元領域40のうち、図12に細線ハッチングで示す上半分の右目用画像出力部42を緑色領域90とする。位置合わせにおいて、緑色領域90では、緑色単色のベタ画像が全面から出力される。緑色単色のベタ画像は、右目用位相差部46用の画像であって第1画像の一例である。緑色領域90は、右目用位相差部46が設置される領域である。三次元領域40のうち、図12に太線ハッチングで示す下半分の左目用画像出力部44を赤色領域92とする。位置合わせにおいて、赤色領域92では、緑色領域90とは色の異なる赤色単色のベタ画像が全面から出力される。赤色単色のベタ画像は、左目用位相差部48用の画像であって第2画像の一例である。赤色領域92は、左目用位相差部48が設置される領域である。三次元領域40のうち、図12にドットハッチングで示す領域を無画像領域94とする。位置合わせにおいて、無画像領域94では、光が出力されず、黒色の画面である。
【0039】
まず、図12に示すように、右目用位相差部46及び左目用位相差部48が、右目用画像出力部42及び左目用画像出力部44と完全に重なって、正確に位置合わせされている場合について説明する。この状態では、緑色領域90から出力された緑色の直線偏光は、右目用位相差部46によって右回りの円偏光に変調される。また、赤色領域92から出力された赤色の直線偏光は、左目用位相差部48によって左回りの円偏光に変調される。ユーザの右目は、右目用位相差部46と同じ長方形状の緑色の画像を視認するとともに、ユーザの左目は、左目用位相差部48と同じ長方形状の赤色の画像を視認する。この状態では、ユーザは、表示部16の水平方向に平行な中心線に関して、上下線対称のモアレを観察する。これにより、ユーザは位置合わせができていることを認識する。
【0040】
次に、図13に示すように、位相差板18が、三次元領域40に対して、右周りに回転している場合について説明する。この状態では、上半分において、左目用位相差部48の右上部及び左上部の領域91が、右目用画像出力部42の左下部と重なる。これにより、上半分において、右目用画像出力部42から出力された緑色の光の一部が、左目用位相差部48の三角形状の領域91を透過して漏れる。また、下半分において、右目用位相差部46の右上部及び左下部の領域93が、左目用画像出力部44の右上部と重なる。これにより、下半分において、左目用画像出力部44から出力された赤色の光の一部が、右目用位相差部46の三角形状の領域93を透過して漏れる。このため、ユーザは、これらの漏れ画像を含む画像を、水平方向から傾斜した歪んだ縞状、即ち、モアレ縞として観察する。従って、ユーザは、位相差板18が正常な位置から回転または傾斜していることを認識できる。ユーザは、このモアレ縞が水平になるように位相差板18を回転または傾斜させて、位相差板18の回転方向における位相差板18の位置合わせする。
【0041】
次に、図14に示すように、位相差板18が、三次元領域40よりも紙面の上方にずれている場合について説明する。この状態では、右目用位相差部46及び左目用位相差部48が、対応する右目用画像出力部42及び左目用画像出力部44に対して、紙面の上方にずれている。この場合、図12と同様の画像を出力すると、左目用位相差部48の領域91が、右目用画像出力部42の下部と重なる。これにより、上半分において、右目用画像出力部42から出力された緑色の光の一部が、左目用位相差部48の上部を透過して漏れる。また、右目用位相差部46の領域93が、左目用画像出力部44の上部と重なる。これにより、下半分において、左目用画像出力部44から出力された赤色の光の一部が、右目用位相差部46の上部を透過して漏れる。ここで、上述したように、右目用位相差部46及び左目用位相差部48の形状及び周期は、右目用画像出力部42及び左目用画像出力部44の形状及び周期よりも小さい。従って、これらの漏れる光の領域が、上述した形状及び周期の違いによって、中心線を挟み上下で非対称になる。このため、ユーザは、これらの漏れ画像を含む画像を、水平方向に略平行ではあるが、中心線を挟み上下方向に非対称な縞状、即ち、モアレ縞として観察する。これにより、ユーザは位相差板18が上下方向のいずれかに位置ずれしていることを認識できる。従って、ユーザは、このモアレ縞が中心線を挟み上下対称になるように位相差板18を移動させることにより、位相差板18の各辺に沿った方向における位相差板18の位置合わせをする。
【0042】
上述したように、貼付治具60は、ユーザが把持可能な把持部66を備えている。これにより、ユーザは、把持部66を把持することによって、位相差板18を容易に移動させることができる。この結果、ユーザは、位相差板18を容易にかつ正確に位置合わせできる。
【0043】
貼付治具60では、把持部66が押圧部64に対して立設している。これにより、ユーザは、把持部66をより容易に把持できる。これにより、ユーザが、直接、指等で位相差板18を押圧する場合に比べて、局所的な押圧力が位相差板18に作用することを抑制することができる。
【0044】
本実施形態による貼り付け工程では、表示部16と位相差板18との間に流体76を塗布した状態で、位相差板18の位置合わせをする。これにより、位相差板18が、表示部16の一面を低抵抗で移動できる。また、流体76によって、表示部16と位相差板18との間に気体等が混入することを抑制できるので、面内において表示部16と位相差板18とを均一に密着させて、位相差板18に皺等が生じることを抑制できる。これにより、位相差板18の貼り合わせ後、表示部16は、高画質の三次元画像を提供できる。また、流体76によって、位相差板18が、位置合わせする前に、表示部16に固定されることを抑制できる。
【0045】
本実施形態の貼り付け工程では、三次元画像に対応した画像を出力しつつ、ユーザが位相差板18を位置合わせできる。これにより、位相差板18の位置合わせの精度を向上させることができる。この結果、三次元画像のクロストークを抑制して、画質を向上させることができる。
【0046】
図15〜図20は、形状を変更した貼付治具の全体斜視図である。図15〜図20を参照して、貼付治具の実施形態について説明する。
【0047】
図15に示すように、貼付治具160を直線状に形成してもよい。本実施形態の貼付治具160は、直線状の押圧部164と、押圧部164の一方の面の両端に設けられた一対の把持部166と、押圧部164の他方の面に設けられた貼付接着層162とを有する。押圧部164は、位相差板18の長辺よりも短く、短辺よりも長い。貼付治具160は、位相差板18の一面の何れに配置してもよい。例えば、貼付治具160は、位相差板18の中央部に配置してもよく、移動させる方向に合わせて、位相差板18のいずれかの辺の近傍に設けてもよい。更には、貼付治具160は、位相差板18の辺に対して平行であってもよく、傾斜させて配置してもよい。
【0048】
図16に示すように、貼付治具260を一対の略正方形状に形成してもよい。本実施形態の貼付治具260は、略正方形状の一対の押圧部264と、各押圧部264の一方の面に設けられた一対の把持部266と、押圧部264の他方の面に設けられた貼付接着層262とを有する。貼付治具260は、位相差板18の一面の何れに配置してもよい。貼付治具260は、位相差板18の中心を挟み両側に押圧部264を配置してもよく、位相差板18の一面のうち、何れかの辺の近傍に偏らせて配置してもよい。また、一方の押圧部264のみを位相差板18に配置してもよい。
【0049】
図17に示すように、平面視において、貼付治具360の一方を開口させてもよい。本実施形態の貼付治具360は、押圧部364と、押圧部364の一方の面のうち一辺の両端に設けられた一対の把持部366と、貼付接着層362とを備える。押圧部364は、長方形状の四辺のうち三辺に沿って形成されている。押圧部364は、残りの一辺が開口された長方形状に形成される。従って、押圧部364は、中央の開口の一部を囲むように形成されている。貼付治具360では、表示部16と位相差板18との間の流体76を吐き出す場合、当該開口から吐き出すことができる。これにより、ユーザは、容易に流体76を吐き出させることができる。
【0050】
図18に示すように、貼付治具460を一対の長方形状に形成してもよい。本実施形態の貼付治具460は、一対の押圧部464と、押圧部464の一方の面の中央部に設けられた一対の把持部466と、押圧部464の他方の面に設けられた貼付接着層462とを備える。押圧部464は、位相差板18の短辺よりも短い。本実施形態においても、位相差板18上における貼付治具460の配置は適宜変更してよい。また、一方の押圧部464のみを位相差板18に配置してもよい。
【0051】
図19に示すように、貼付治具560を一対の長方形状に形成してもよい。本実施形態の貼付治具560は、一対の押圧部564と、一方の押圧部564の一方の面の両端に設けられた一対の把持部566と、押圧部564の他方の面に設けられた貼付接着層562とを備える。押圧部564は、位相差板18の長辺よりも短く、短辺よりも長い長方形状に形成されている。
【0052】
図20に示すように、貼付治具660を一本の長方形状に形成してもよい。本実施形態の貼付治具660は、位相差板18の短辺よりも短い一本の長方形状の押圧部664と、押圧部664の両端に設けられた一対の把持部666と、押圧部664の他方の面に設けられた貼付接着層662とを備える。
【0053】
図21〜図23は、貼付治具の一部として保護膜を適用した実施形態を説明する図である。
【0054】
図21及び図22は、保護膜770の内部の一部を把持部766として利用する貼付治具760の斜視図である。図21及び図22に示すように、本実施形態の貼付治具760は、保護膜770と、貼付接着層762とを備える。保護膜770は、平面視において、位相差板18と略同形状に形成されている。保護膜770には、3本の切断線782及び切込線784が二対形成されている。3本の切断線782及び切込線784は、保護膜770の一部を長方形状に囲む。切断線782は、当該長方形の三辺に沿って形成されている。切込線784は、残りの一辺に沿って形成されている。切断線782は、保護膜770を切断している。一方、切込線784は、折り曲げ可能に保護膜770に形成されている。切込線784及び切断線782は、保護膜770の短辺の中央部の内側近傍に形成されている。切込線784は、当該短辺に平行であって、切断線782よりも当該短辺に近い位置に配置されている。切込線784に沿って、切断線782に囲まれた保護膜770の一部を上側に折り曲げることによって、ユーザが把持可能な把持部766が、保護膜770の短辺近傍に形成される。保護膜770のうち、把持部766以外の領域は、押圧部764として機能する。貼付接着層762は、保護膜770の一面の全面に設けられている。貼付接着層762は、保護膜770を位相差板18に接着する。尚、保護膜770のうち、把持部766として機能する領域は、貼付接着層762を省略してもよい。
【0055】
本実施形態では、保護膜770を貼付治具760として利用することにより、部品点数の低減及び環境保護を実現させることができる。尚、本実施形態では、貼付治具760を位相差板18に接着した状態で、流通させてもよく、別部品として流通させてもよい。
【0056】
図23は、保護膜870の外周の一部を把持部866として利用する貼付治具860の斜視図である。図23に示すように、本実施形態の貼付治具860は、保護膜870と、貼付接着層862とを備える。保護膜870は、平面視において、位相差板18よりも一回り大きい。従って、保護膜870が位相差板18に接着されると、保護膜870の外周部は、位相差板18の外周からはみ出す。保護膜870の当該はみ出し領域のうち、二隅が折り曲げられる。この折り曲げられた外周部の領域が、把持部866として機能する。保護膜870の把持部866以外の領域は、押圧部864として機能する。
【0057】
上述の実施形態では、位相差板18が入力された直線偏光を円偏光に変調させる例を示したが、位相差板が、直線偏光を偏光軸の方向が異なる偏光に変調させるように構成してもよく、円偏光を直線偏光に変調させるように構成してもよい。
【0058】
上述の実施系形態の各構成の形状、個数、数値、配置等は適宜変更してよい。
【0059】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0060】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0061】
10 制御装置、 12 枠体、 14 操作部、 16 表示部、 18 位相差板、 22 位相差板接着層、 24 位相差部、 26 右目用レンズ、 28 左目用レンズ、 30 眼鏡、 32 光源、 34 偏光板、 36 画像出力部、 38 偏光板、 40 三次元領域、 42 右目用画像出力部、 44 左目用画像出力部、 46 右目用位相差部、 48 左目用位相差部、 60 貼付治具、 62 治具粘着層、 64 押圧部、 66 把持部、 68 開口部、 70 保護膜、 72 保護粘着層、 76 流体、 78 遮蔽部材、 80 ゴムベラ、 90 緑色領域、 91 領域、 92 赤色領域、 93 領域、 94 無画像領域、 160 貼付治具、 162 貼付接着層、 164 押圧部、 166 把持部、 260 貼付治具、 262 貼付接着層、 264 押圧部、 266 把持部、 360 貼付治具、 362 貼付接着層、 364 押圧部、 366 把持部、 460 貼付治具、 462 貼付接着層、 464 押圧部、 466 把持部、 560 貼付治具、 562 貼付接着層、 564 押圧部、 566 把持部、 660 貼付治具、 662 貼付接着層、 664 押圧部、 666 把持部、 760 貼付治具、 762 貼付接着層、 764 押圧部、 766 把持部、 770 保護膜、 782 切断線、 784 切込線、 860 貼付治具、 862 貼付接着層、 864 押圧部、 866 把持部、 870 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相差板を表示部に貼り付ける貼付治具であって、
前記貼付治具は、
前記位相差板を前記表示部へと押圧する押圧部と、
前記押圧部を取り外し可能に前記位相差板に貼り付ける粘着層と、
前記押圧部に設けられた把持可能な把持部と
を備える貼付治具。
【請求項2】
前記押圧部は、平面視において、中央部に形成された開口部を囲むように形成されている
請求項1に記載の貼付治具。
【請求項3】
前記押圧部は、平面視において、中央部に形成された開口部の一部を囲むように形成されている
請求項2に記載の貼付治具。
【請求項4】
前記押圧部は、前記位相差板の外周部から外周部がはみ出す保護膜の一部であって、
前記把持部は、前記保護膜の外周部によって形成される
請求項1から3のいずれか1項に記載の貼付治具。
【請求項5】
前記押圧部は、保護膜を介して、前記粘着層により前記位相差板に貼り付けられ、
前記粘着層の粘着力は、前記保護膜と前記位相差板との粘着力よりも強い
請求項1から3のいずれか1項に記載の貼付治具。
【請求項6】
把持可能な把持部が設けられた押圧部を有する貼付治具を、粘着層によって位相差板に取り外し可能に貼り付ける段階と、
前記位相差板を表示部に載置する載置段階と、
前記把持部を把持して、前記位相差板の位置合わせをする位置合わせ段階と、
前記位相差板から前記貼付治具を取り外す取り外し段階と
を備える位相差板の貼付方法。
【請求項7】
前記載置段階では、前記位相差板と前記表示部との間に流体を塗布する
請求項6に記載の位相差板の貼付方法。
【請求項8】
前記流体は、グリセリンを含む水溶液である
請求項7に記載の位相差板の貼付方法。
【請求項9】
前記位相差板は、入力された偏光の偏光特性を変調させる第1位相差部と、入力された偏光を前記第1位相差部と異なる偏光特性の偏光に変調させる第2位相差部とを有し、
前記位置合わせ段階では、
前記表示部が、前記第1位相差部が設置される領域に第1画像を出力するとともに、前記第2位相差部が設置される領域に前記第1画像とは異なる第2画像を出力する
請求項6または7に記載の位相差板の貼付方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2012−234039(P2012−234039A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102431(P2011−102431)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000155698)株式会社有沢製作所 (117)
【出願人】(509136183)株式会社アスナ (3)
【Fターム(参考)】