説明

貼付薬用包装袋

【課題】沈痛消炎剤等の経皮浸透性薬剤を含有させたシート状貼付薬の包装袋であって、内容物保存性の促進試験として60℃で2週間の保存試験にも耐え、保存後、袋の開封時の手切れ性もよく、更に袋に用いる積層体の製造の際の有機溶剤の排出量も低減できる貼付薬用包装袋を提供する。
【解決手段】貼付薬用包装袋を、少なくとも基材層、接着層、バリヤー層、アンカーコート層(AC層)、ポリオレフィン系樹脂層をこの順に積層した積層体をヒートシールして形成すると共に、該積層体のAC層は、不飽和カルボン酸又はその無水物0.01〜5質量%含むポリオレフィン共重合樹脂を不揮発性水性化助剤を用いずに数平均粒子径1μm以下に分散した水性分散液をバリヤー層面に厚み0.1〜2μmに塗布、加熱乾燥して形成し、ポリオレフィン系樹脂層はAC層の上に押出しコート法又は押し出しラミネート法で積層して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付薬用包装袋に関し、更に詳しくは、沈痛消炎剤等の経皮浸透性薬剤を含有させた粘着シート状の貼付薬を安全に密封包装できると共に、包装袋に用いる積層体の製造の際に排出される有機溶剤の量を削減でき、更に、包装された内容物を取り出す際の包装袋の開封性も向上させた貼付薬用包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、沈痛消炎剤等の経皮浸透性薬剤を含有させた粘着シート状の貼付薬を密封包装する包装袋としては、例えば、基材層、バリヤー層、シーラント層(通常はポリオレフィン系樹脂層)などを、それぞれ接着層を介して積層した積層体をヒートシールして作製した包装袋が使用されていた。しかし、包装される内容物に浸透性の強い成分が含まれる場合は、長期の保存中にその成分がシーラント層に浸透してバリヤー層とシーラント層の間の接着層を侵すことがあり、両者の接着性を弱め、著しい場合にはシーラント層が剥離(デラミネーション)して包装袋が破損する問題があった。
【0003】
上記バリヤー層にシーラント層を積層する方法として、一般的には、バリヤー層面に接着層としてアンカーコート層を設け、その上にシーラント層の樹脂を押し出しコートして積層する方法、またはバリヤー層面に予めフィルム状に製膜したシーラント層のフィルムを、接着層として二液硬化型ポリウレタン系接着剤などのドライラミネート用接着剤を用いて、ドライラミネーション法で貼り合わせて積層する方法が採られている。
そして、上記アンカーコート層に用いるアンカーコート剤(以下、AC剤と記載する)としては、有機チタン系AC剤、イソシアネート系AC剤(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系AC剤、ポリブタジエン系AC剤などのAC剤が市販され使用されているが、いずれも内容物が浸透性の強い薬効成分を含む場合、その耐性が不足し、前記内容物を密封包装した包装袋の保存性の促進試験として、例えば、60℃で2週間程度の保存試験を行うとシーラント層がバリヤー層から剥離する問題があった。
また、バリヤー層にシーラント層を前記ドライラミネーション法で貼り合わせる場合も同様に、前記ドライラミネート用接着剤の耐性が不足し、前記保存試験によりシーラント層がバリヤー層から剥離する問題があった。
また、前記AC剤やドライラミネート用接着剤は、一部のものを除いて、その塗布液に有機溶剤を使用しており、塗布の際に有機溶剤を排出して環境に悪影響を及ぼす問題もあった。
【0004】
このような問題を解決する手段として、前記バリヤー層にシーラント層の樹脂を押し出しコートして積層する方法において、バリヤー層面にアンカーコート層を設けずに、バリヤー層としてアルミニウム箔を使用すると共に、アルミニウム箔などの金属に優れた接着性を示すとされるエチレン−メタクリル酸のランダム共重合体(EMAA樹脂)をシーラント層の樹脂として使用し、それを直接アルミニウム箔面に押し出しコートして積層する方法で前記積層体を作製し、その積層体で包装袋を作製した結果、その包装袋に前記浸透性の強い薬効成分を含む内容物を密封包装し、且つ前記保存試験を行っても、シーラント層がバリヤー層から剥離することのない包装袋を作製することができた。
しかし、この包装袋でも、前記保存試験によるシーラント層の剥離(デラミネーション)は防止できたものの、バリヤー層に対するシーラント層のラミネート強度自体は必ずしも十分ではなく、そのために包装袋を開封する際の引き裂き性、即ち、手切れ性がよくないという問題があった。
【0005】
上記のような問題点を完全に解決するために、更に、バリヤー層にシーラント層を押し
出しコートなどで積層する際に使用するAC剤について種々研究した結果、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01〜5質量%含むポリオレフィン共重合樹脂をその数平均粒子径が1μm以下のように小さくなるように分散した水性分散液であって、且つその水性分散体中には不揮発性水性化助剤を含まないように形成した水性分散液をAC剤として、乾燥時の厚みが0.1〜2μmとなるように薄く塗布することにより、バリヤー層の塗布面がアルミニウム箔などの金属箔や二軸延伸ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチックフィルムであってもその面に良好に接着すると共に、その上にシーラント層として押し出しコートなどで積層されたポリオレフィン系樹脂層も良好に接着させ、更にこのAC剤を使用して作製した積層体を用いて製袋された包装袋は、前記のような浸透性の強い薬効成分を含む粘着シート状の貼付薬を密封包装して前記のような保存試験を行ってもシーラント層が剥離することがなく、また、開封時の手切れ性についても良好であることを見出し本発明を完成するに至った。
【0006】
尚、前記のような浸透性の強い薬効成分を含む内容物を密封包装し、安全に長期保存できる包装袋に関する先行技術文献は見当たらないが、例えば、特許文献に〔発明の名称〕として「外装材およびそれを用いたパップ剤用外装袋」があり、そこには、紙層を主体とした印刷基材の裏面に、アルミニウムが蒸着されたシーラントフィルムの蒸着面が、接着剤を介してラミネートされた外装材が記載され、前記シーラントフィルムに無延伸ポリプロピレンフィルムを用いた構成、更に、その外装材を用いてパップ剤用外装袋を製造することも記載されている(特許文献1参照)。
しかし、この特許文献1には、その外装袋にパップ剤を密封包装して長期保存した時の保存性に関する記載は全くなく、本発明の参考にはならない。
只、前記AC剤に用いたような構成のポリオレフィン樹脂水性分散体及びその製造方法に関する特許文献はあり、その水性分散体を含有してなるコーティング剤組成物及び接着剤組成物も記載され、その塗膜が耐水性に優れていることも記載されている(特許文献2参照)。
しかし、この特許文献2に記載されたポリオレフィン樹脂水性分散体の塗膜が、沈痛消炎剤等の経皮浸透性薬剤に対する耐性にも優れ、包装袋に用いる積層体の製造において、シーラント層の積層の際のAC剤としてこの水性分散体を用いることにより、前記のような浸透性の強い薬効成分を含む内容物を密封包装して前記のような保存試験を行っても、それに耐える優れた耐性を有する包装袋を製造できることは一切記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−166495号公報(第2頁〜第3頁)
【特許文献2】特許第3699935号公報(第1頁〜第15頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述のような問題点を解決するためになされたものであり、その課題は、沈痛消炎剤等の経皮浸透性薬剤を含有させた粘着シート状の貼付薬を密封包装する積層体をヒートシールしてなる包装袋であって、その内容物を密封包装した後、保存性の促進試験として、60℃、2週間の条件で保存試験をしてもシーラント層などの剥離(デラミネーション)がなく、優れた耐内容物性および内容物の保存性を有し、袋を開封する際の開封性、即ち、手切れ性もよく、更に、積層体を製造する際の有機溶剤の排出量も少なくできるという、性能、使用適性に優れると共に、環境に対しても悪影響の少ない貼付薬用包装袋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は、以下の本発明により解決することができる。
即ち、本発明は、沈痛消炎剤等の経皮浸透性薬剤を含有させた粘着シート状の貼付薬を密封包装する包装袋であって、該包装袋が、少なくとも基材層、接着層、バリヤー層、アンカーコート層、ポリオレフィン系樹脂層をこの順に積層してなる積層体をヒートシールして形成され、且つ、前記積層体のアンカーコート層は、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01〜5質量%含むポリオレフィン共重合樹脂をその数平均粒子径が1μm以下となるように分散した水性分散液であって、且つその水性分散体中には不揮発性水性化助剤を実質的に含まないように形成された水性分散液を、前記バリヤー層面に乾燥時の厚みが0.1〜2μmとなるように塗布、加熱乾燥して形成され、また、前記ポリオレフィン系樹脂層は、前記アンカーコート層面にポリオレフィン系樹脂を押し出しコートする方法、またはポリオレフィン系樹脂フィルムを同様なポリオレフィン系樹脂を用いて押し出しラミネートする方法で形成されていることを特徴とする貼付薬用包装袋からなる。
【0010】
また本発明は、前記バリヤー層が、アルミニウム箔、または、アルミニウムもしくはアルミニウム酸化物もしくは珪素酸化物を基材フィルムに蒸着してなる蒸着フィルムであることを特徴とする貼付薬用包装袋である。
【0011】
また本発明は、前記基材層が紙または二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする貼付薬用包装袋である。
【0012】
また本発明は、前記貼付薬用包装袋の開封位置に易開封性手段が設けられていることを特徴とする貼付薬用包装袋からなる。
【0013】
さらに本発明は、沈痛消炎剤等の経皮浸透性薬剤を含有させた粘着シート状の貼付薬を密封包装する包装袋であって、該包装袋が、少なくとも基材層、接着層、バリヤー層、アンカーコート層、ポリオレフィン系樹脂層をこの順に積層してなる積層体をヒートシールして形成され、且つ、前記基材層の外表面側または内面側に印刷層が設けられ、
また、前記アンカーコート層は、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01〜5質量%含むポリオレフィン共重合樹脂をその数平均粒子径が1μm以下となるように分散した水性分散液であって、且つその水性分散体中には不揮発性水性化助剤を実質的に含まないように形成された水性分散液を、前記バリヤー層面に乾燥時の厚みが0.1〜2μmとなるように塗布、加熱乾燥して形成され、
また、前記ポリオレフィン系樹脂層は、前記アンカーコート層面にポリオレフィン系樹脂を押し出しコートする方法、またはポリオレフィン系樹脂フィルムを同様なポリオレフィン系樹脂を用いて押し出しラミネートする方法で形成されていることを特徴とする貼付薬用包装袋である。
【0014】
前記易開封性手段としては、印刷による切り取り線や、文字、記号などによる開封を指示する表示のほか、ノッチ、ハーフカット線、切り取り方向に先が狭くなるハの字状の複数の筋押し(基材層が紙の場合に特に有効)などがあり、これらの何れかを単独で使用してもよいが、例えば、印刷による切り取り線とノッチとハーフカット線または前記ハの字状の筋押しなど、複数を適宜組み合わせて用いることが更に好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、貼付薬用包装袋を前記のように構成しているので、以下に列挙するような作用効果が得られる。
(1)貼付薬用包装袋を形成する積層体を、少なくとも基材層、接着層、バリヤー層、アンカーコート層、ポリオレフィン系樹脂層をこの順に積層して形成しているので、包装袋に必要な略全ての性能を付与することができる。即ち、基材層により必要な強度および剛性、印刷適性を付与し、バリヤー層により外部からの水蒸気その他のガスの侵入は元より内容物の外部への透過を確実に遮断し、内容物の保存性を高めることができる。また、包装袋のシーラント層にポリオレフィン系樹脂層を使用できるので、優れたヒートシール性と耐内容物性を付与することができる。
(2)バリヤー層にシーラント層のポリオレフィン系樹脂層を積層する際のバリヤー層面に設けるアンカーコート層を前記のように構成しているので、バリヤー層のアンカーコート層積層面がアルミニウム箔などの金属箔であっても、蒸着フィルムなどのプラスチックフィルム面であっても良好に接着し、且つピンホールなどの欠陥のない均一なアンカーコート層を形成できる。また、アンカーコート層の上にシーラント層のポリオレフィン系樹脂層を積層する際には、ポリオレフィン系樹脂を押し出しコートするか、またはポリオレフィン系樹脂フィルムを同様なポリオレフィン系樹脂を用いて押し出しラミネートする方法で積層しているので、シーラント層はアンカーコート層面に強固に熱接着され、シーラント層のラミネート強度は優れたものになる。
従って、本発明の包装袋に、内容物として、沈痛消炎剤等の経皮浸透性薬剤を含有させた粘着シート状の貼付薬を密封包装し、60℃、2週間のような保存試験を行ってもシー
ラント層が剥離(デラミネーション)するようなことのない貼付薬用包装袋とすることができる。
(3)また、アンカーコート層を前記のようなポリオレフィン共重合樹脂の水性分散液で形成しているので、沈痛消炎剤等の経皮浸透性薬剤に対しても良好な耐性を有すると共に、積層体製造時の有機溶剤の排出量も低減することができ、環境に対する悪影響も少なくすることができる。
【0016】
本発明によれば、前記貼付薬用包装袋の構成において、前記バリヤー層が、アルミニウム箔、または、アルミニウムもしくはアルミニウム酸化物もしくは珪素酸化物を基材フィルムに蒸着してなる蒸着フィルムである構成としているので、さらに、貼付薬用包装袋のガスバリヤー性を一層優れたものにできると同時に、内容物中の薬効成分の外部への透過も一層少なくでき、内容物の保存性を一層向上させることができる。
【0017】
本発明によれば、前記貼付薬用包装袋の構成において、前記基材層が紙または二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである構成としているので、さらに、貼付薬用包装袋の剛性、機械的強度、それに印刷適性、手切れ性などを一層確実に優れたものにできる。
【0018】
本発明によれば、前記貼付薬用包装袋の開封位置に易開封性手段を設けた構成としているので、さらに、前記包装袋に密封包装された内容物を取り出す際に、包装袋を一層容易に開封して内容物を取り出せるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の貼付薬用包装袋に使用する積層体の一実施例の構成を示す模式断面図である。
【図2】本発明の貼付薬用包装袋の一実施例の構成を示す模式平面図である。但し、包装袋は内容物を密封包装した状態で示した。
【図3】本発明の貼付薬用包装袋の別の実施例の構成を示す模式平面図である。但し、包装袋は内容物を密封包装した状態で示した。
【図4】図2、図3のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の貼付薬用包装袋は、包装袋の製造に用いる積層体の構成に特徴を有するものであり、例えば、図1に示すような構成の積層体を袋状にヒートシールして製造することができる。従って、袋自体の形式は、特に限定はされず、例えば、三方シール形式や四方シール形式の袋、或いは、ピロー形式の袋などの平袋のほか、スタンディングパウチなどの自立袋、更にはガセット袋などいずれの形式の袋でもよい。
【0021】
以下、図面を用いて本発明を具体的に説明する。
図1は、本発明の貼付薬用包装袋に使用する積層体の一実施例の構成を示す模式断面図である。
図2は、本発明の貼付薬用包装袋の一実施例の構成を示す模式平面図である。但し、包装袋は内容物を密封包装した状態で示した。
図3は、本発明の貼付薬用包装袋の別の実施例の構成を示す模式平面図である。但し、包装袋は内容物を密封包装した状態で示した。
図4は、図2、図3のA−A線断面図である。
また、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの図面に限定されるものではない。
【0022】
図1に示した積層体20は、図において上側から、基材層1、接着層2、バリヤー層3、アンカーコート層4、ポリオレフィン系樹脂層5が順に積層されて構成されている。
この積層体20を用いて本発明の貼付薬用包装袋を製造する際には、ポリオレフィン系樹脂層5をシーラント層として使用するもので、ポリオレフィン系樹脂層5が袋の内面側になるように向けて積層体20を配置し、ヒートシールして製袋するものである。
【0023】
図1に示した積層体20の構成において、基材層1としては、紙のほか一軸または二軸延伸プラスチックフィルムなどを使用することができる。
上記紙としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、純白ロール紙、片艶晒クラフト紙、特殊両更クラフト紙、晒クラフト紙などのほか、合成紙なども使用することができる。
上記一軸または二軸延伸プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートポリエチレンナフタレートなどの一軸または二軸延伸ポリエステルフィルム、ナイロン6、ナイロン66、MXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)などのポリアミドの一軸または二軸延伸ポリアミドフィルム、そして、一軸または二軸延伸ポリプロピレンフィルムなどを使用することができる。
これらの紙、あるいは一軸または二軸延伸プラスチックフィルムは、単独または複数を積層して使用することができる。
【0024】
また、バリヤー層3としては、アルミニウム箔などの金属箔のほか、アルミニウムなどの金属やアルミニウム酸化物、珪素酸化物などの無機酸化物を二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの基材フィルムに蒸着した蒸着フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物フィルム、ポリアクリロニトリルフィルムなどを使用することができる。前記蒸着フィルムを使用する場合、蒸着層の厚みは150〜2000Åの範囲が適当であり、200〜1000Åの範囲が更に好ましい。
【0025】
前記基材層1とバリヤー層3の間の接着層2は、基材層1とバリヤー層3とを貼り合わせる方法によって異なり、両者をドライラミネーション法で貼り合わせることが接着強度を強くでき、袋を開封する際の引き裂き性も向上できる点で好ましいが、その場合は接着層2として、例えば、ドライラミネート用の二液硬化型ポリウレタン系接着剤などを使用することができる。
また、基材層1とバリヤー層3とを押し出しラミネート法で貼り合わせることも可能であり、その場合は接着層2として、ポリオレフィン系の熱接着性樹脂、例えば、低密度ポリエチレンのほか、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマーなどの単体、またはこれらにハードレジンなどの接着性向上剤をブレンドした樹脂などを使用することができる。
【0026】
図1に示した積層体20の構成において、アンカーコート層4は、前述したように、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01〜5質量%含むポリオレフィン共重合樹脂をその数平均粒子径が1μm以下となるように分散した水性分散液であって、且つその水性分散体中には不揮発性水性化助剤を実質的に含まないように形成された水性分散液を、前記バリヤー層3面に乾燥時の厚みが0.1〜2μmとなるように塗布、加熱乾燥して形成するものである。
【0027】
次に、シーラント層となるポリオレフィン系樹脂層5は、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、アイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体などのポリオレフィン系樹脂を使用することができる。
また、ポリオレフィン系樹脂層5は、前記アンカーコート層4面に、前記ポリオレフィン系樹脂を押し出しコートする方法、またはポリオレフィン系樹脂フィルムを同様なポリオレフィン系樹脂を用いて押し出しラミネート(所謂、サンドイッチラミネート)する方法で形成することができる。
【0028】
図2は、本発明の貼付薬用包装袋の一実施例の構成を示す模式平面図であり、内容物を密封包装した後の包装袋の形状を示したものである。
図2に示した貼付薬用包装袋100は、図1に示した構成の積層体20を用いて四方シール形式の袋に形成したものであり、両側の側部と底部の端縁部を側部シール部6a、6bと底部シール部7でヒートシールして上部が開口する袋を作製し、上部の開口部から内容物としてシート状の貼付薬30(複数枚を重ねたもの)を充填し、次いで、上部の開口部を上部シール部8でヒートシールして密封したものである。
尚、前記貼付薬用包装袋100の製袋に際しては、袋の開封位置となる上部シール部8の下側に、易開封性手段として予め両側の積層体20に、図示したように、切り取り方向に先が狭くなる横向きのハの字状の筋押し部9を複数個配列して設け、また、その切り取り開始側の端部にノッチ10を設けて構成したものである。
この場合、前記筋押し部9による易開封性を効果的に得るためには、積層体20の基材層1として、前述したように紙を用いることがより好ましい。
基材層1の紙に前記のような筋押し部9を設けることにより、その部分の紙層のパルプ繊維の絡みによる立体構造が押し潰され、パルプ繊維の絡みが一部破壊されてバラバラになるため、引き裂きに対する抵抗力が低下するものである。
従って、筋押し部の形状は、図示したような切り取り方向に先が狭くなる横向きのハの字状の筋押し部9を複数個配列した形状のほか、直線状、破線状、或いは、前記横向きのハの字状の配列の中心部に直線状、破線状の筋押しを加えた形状など、引き裂きの方向を安定化できる形状であれば任意の形状に設けることができる。
【0029】
図3は、本発明の貼付薬用包装袋の別の実施例の構成を示す模式平面図であり、この場合も、内容物を密封包装した後の包装袋の形状を示したものである。
図3に示した貼付薬用包装袋200は、袋の本体は図2に示した貼付薬用包装袋100と同様に、図1に示した構成の積層体20を用いて四方シール形式の袋に形成したものであり、両側の側部と底部の端縁部を側部シール部6a、6bと底部シール部7でヒートシールして上部が開口する袋を作製し、上部の開口部から内容物としてシート状の貼付薬30(複数枚を重ねたもの)を充填し、次いで、上部の開口部を上部シール部8でヒートシールして密封したものである。
只、図3に示した貼付薬用包装袋200が、図2に示した貼付薬用包装袋100と異なる点は、袋の開封位置に易開封性手段として設けた前記筋押し部9とノッチ10のうち、筋押し部9をハーフカット線11に変更して両側の積層体20の表面に設けると共に、更に、ハーフカット線11の下側の位置の積層体20の内面に、袋に再封性を付与するためのチャックテープ12を熱接着して取り付けた構成とした点である。
【0030】
前記ハーフカット線11は、図では5本のハーフカット線を平行に設けた構成で示したが、中心のハーフカット線一本のみでもよく、また、中心のハーフカット線の両側に各一本または各二本のハーフカット線を平行に設けた構成でもよく、更に、前記平行な複数のハーフカット線にそれと斜めに交差するハーフカット線を加えた構成など任意の形状に設けることができる。
ハーフカット線11を設ける方法は、ロータリー方式またはプラテン方式の刃物による機械的方法のほか、レーザー光照射による方法を採ることができる。特に、袋の表面、即ち、積層体20の基材層が二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのプラスチックフィルムの場合は、レーザー光照射による方法が簡便であり、また、ハーフカット線11の深さの調節も容易で安定した深さのハーフカット線11を設けることができる。
【0031】
次に、図4は、図2、図3のA−A線断面図であり、図2、図3に示した貼付薬用包装袋100、200のA−A線断面は、いずれも図4に示した構成となる。即ち、図4において、内容物であるシート状の貼付薬30は、その上下が積層体20、20で囲まれると共に、積層体20、20の左右の端縁部が側部シール部6a、6bでヒートシールされて密閉された構成である。
【0032】
以下に、実施例、比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【実施例1】
【0033】
貼付薬用包装袋に用いる積層体として、図1に示した構成の積層体20を、基材層1に厚みが12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムと記載する)を用いてその裏面にグラビア印刷で絵柄等の印刷を施し、バリヤー層3には一方の面に厚み500Åの酸化珪素の蒸着膜を設けた厚みが12μmのPETフィルムを用いて、前記基材層1の印刷面とバリヤー層3のPETフィルム面とを両者の間に接着層2としてドライラミネート用の二液硬化型ポリウレタン系接着剤を乾燥時の塗布量が2.5g/m2 となるように用いてドライラミネーション法で両者を貼り合わせ、次いで、前記バリヤー層3の酸化珪素の蒸着面に、アンカーコート層(以下、AC層と記載する)4に用いるAC剤として、無水マレイン酸2質量%を含有するポリオレフィン共重合樹脂の水性分散液(分散樹脂の数平均粒子径0.6μm、乳化剤不使用)を使用して、乾燥時の厚みが0.5μmとなるように塗布、加熱乾燥してAC層4を形成し、その上にポリオレフィン系樹脂層5として、低密度ポリエチレン(以下、LDPEと記載)を押し出し温度295℃で厚み30μmに押し出しコートして作製した。
(上記積層体の構成)
PETフィルム(厚み12μm)・印刷層/ドライラミネート用接着剤層(塗布量2.5g/m2 )/PETフィルム(厚み12μm)・酸化珪素の蒸着膜(厚み500Å)/AC層(厚み0.5μm)/LDPE層(厚み30μm)
以上のように作製した積層体を用いて、外形寸法が縦170mm、横130mmの長方形で四方シール形式の包装袋を作製すべく、両側の側部と底部の端縁部をそれぞれシール幅6mmでヒートシールして上部が開口する包装袋を作製し、実施例1の貼付薬用包装袋とした。
尚、上記包装袋は、上部の開口部から内容物としてシート状の貼付薬を充填した後、開口端縁部を上部シール部でヒートシールして密封されるが、内容物を取り出す際の開封位置を上部シール部の下側として、その開封位置に易開封性手段として製袋の際にレーザー光照射により平行な3本のハーフカット線を上部シール部の予定位置に沿って設け、更に、そのハーフカット線の端部にノッチを設けて構成した。
【実施例2】
【0034】
前記実施例1の貼付薬用包装袋の構成において、包装袋に用いた前記積層体の構成のうち、バリヤー層3に用いた酸化珪素の蒸着膜を設けた厚みが12μmのPETフィルムを、厚みが7μmのアルミニウム箔(以下、AL箔と記載する)に換えて積層体を作製したほかは総て実施例1と同様に形成して、実施例2の貼付薬用包装袋を作製した。
(上記積層体の構成)
PETフィルム(厚み12μm)・印刷層/ドライラミネート用接着剤層(塗布量2.5g/m2 )/AL箔(厚み7μm)/AC層(厚み0.5μm)/LDPE層(厚み30μm)
【実施例3】
【0035】
貼付薬用包装袋に用いる積層体として、図1に示した構成の積層体20を、基材層1に米坪量209.3g/m2 の上質紙を用いてその表面にグラビア印刷で絵柄等の印刷を施
し、更にその表面に、袋にした時に開封位置に相当する箇所に、易開封性手段として、金型を使用して前記切り取り方向に先が狭くなる横向きのハの字状の筋押し部9(図2参照)を複数個配列して設け、また、バリヤー層3には厚みが7μmのAL箔を用いて、前記上質紙の裏面にAL箔を対向させて、両者の間に接着層2としてLDPEを用いてそれを押し出し温度295℃で厚み15μmに押し出しながら圧着して貼り合わせる押し出しラミネート法で前記上質紙とAL箔とを貼り合わせ、次いで、そのAL箔面に、AC層4に用いるAC剤として、無水マレイン酸2質量%を含有するポリオレフィン共重合樹脂の水性分散液(分散樹脂の数平均粒子径0.6μm、乳化剤不使用)を使用して、乾燥時の厚みが0.5μmとなるように塗布、加熱乾燥してAC層4を形成し、更にその上にポリオレフィン系樹脂層5として、LDPEを押し出し温度295℃で厚み30μmに押し出しコートして作製した。
(上記積層体の構成)
印刷層・上質紙(米坪量209.3g/m2 )/LDPE層(厚み15μm)/AL箔(厚み7μm)/AC層(厚み0.5μm)/LDPE層(厚み30μm)
以上のように作製した積層体を用いて、外形寸法が縦170mm、横130mmの長方形で四方シール形式の包装袋を作製すべく、両側の側部と底部の端縁部をそれぞれシール幅6mmでヒートシールして上部が開口する包装袋を作製した。この場合、袋の易開封性手段としては、前記のように基材層1の上質紙に切り取り方向に先が狭くなる横向きのハの字状の筋押し部9を複数個配列して設けているが、製袋後、更に前記ハの字状の筋押し部の切り取り開始側の端部にノッチを設けて実施例3の貼付薬用包装袋とした。
【0036】
〔比較例1〕
実施例1の貼付薬用包装袋の構成において、包装袋に用いた積層体の構成のうち、バリヤー層3の酸化珪素の蒸着膜を設けたPETフィルムの蒸着膜面に形成したAC層4を、イソシアネート系AC剤(有機溶剤で溶解、希釈したタイプ)を用いて、乾燥時の厚みが0.3μmとなるように塗布、加熱乾燥して形成した構成に変更したほかは総て実施例1と同様に形成して、比較例1の貼付薬用包装袋を作製した。
(上記積層体の構成)
PETフィルム(厚み12μm)・印刷層/ドライラミネート用接着剤層(塗布量2.5g/m2 )/PETフィルム(厚み12μm)・酸化珪素の蒸着膜(厚み500Å)/イソシアネート系AC剤によるAC層(厚み0.3μm)/LDPE層(厚み30μm)
【0037】
〔比較例2〕
実施例2の貼付薬用包装袋の構成において、包装袋に用いた積層体の構成のうち、バリヤー層3のAL箔面に設けたAC層を取り除き、更にポリオレフィン系樹脂層5に使用したLDPEをエチレン−メタクリル酸ランダム共重合体(以下、EMAA樹脂と記載)に変更して直接AL箔面に厚み30μmに押し出しコートして積層したほかは総て実施例2と同様に形成して、比較例2の貼付薬用包装袋を作製した。
(上記積層体の構成)
PETフィルム(厚み12μm)・印刷層/ドライラミネート用接着剤層(塗布量2.5g/m2 )/AL箔(厚み7μm)/EMAA樹脂層(厚み30μm)
【0038】
〔貼付薬用包装袋の評価〕
以上のように作製した実施例1〜3、および比較例1、2の貼付薬用包装袋について、その耐内容物性、および開封時の手切れ性を評価するため以下の試験を行った。
【0039】
(1)耐内容物性の試験
各包装袋に、開口部から内容物として沈痛消炎剤(サリチル酸グリコール、l−メントール等を主成分とする)を含むシート状の貼付薬5枚を充填した後、開口部をヒートシールして内容物を密封包装した実施例1〜3、および比較例1、2の包装体を作製した。
上記の各包装体を60℃で2週間の保存テストを行った後、それぞれの包装体を切り開いてその積層体の層間剥離、特にシーラント層の剥離(デラミネーション)の有無、およびシーラント層のラミネート強度を調べた。
尚、シーラント層のラミネート強度は、引張試験装置(テンシロン)を用いて引張速度100mm/分、試料幅15mmで測定した。
(試験結果)
・実施例1:シーラント層の剥離なし、ラミネート強度 4.7N/15mm幅
・実施例2:シーラント層の剥離なし、ラミネート強度 4.5N/15mm幅
・実施例3:シーラント層の剥離なし、ラミネート強度 4.6N/15mm幅
・比較例1:シーラント層の剥離あり、ラミネート強度 測定できず。
・比較例2:シーラント層の剥離なし、ラミネート強度 3.4N/15mm幅
【0040】
(2)手切れ性の試験
前記内容物の保存テストを行った後の各包装袋について、包装袋の開封位置の端部に設けたノッチを始点として、ハーフカット線またはハの字状筋押し部の配列に沿って包装袋を手で引き裂いて、引き裂きラインの大きな曲がりの有無、また、引き裂かれた端部にシーラント層の剥がれに伴うシーラント層の伸び破断など引き裂きラインの乱れの有無を調べた。
(試験結果)
・実施例1:引き裂きラインに大きな曲がりはなく、シーラント層の伸び破断による引き裂きラインの乱れもなく手切れ性は良好。
・実施例2:引き裂きラインに大きな曲がりはなく、シーラント層の伸び破断による引き裂きラインの乱れもなく手切れ性は良好。
・実施例3:引き裂きラインの曲がりはハの字状筋押し部の配列の範囲内であり、シーラント層の伸び破断による引き裂きラインの乱れもなく手切れ性は良好。
・比較例1:シーラント層の剥離が発生しており、手切れ性も不良。
・比較例2:前記保存テストによるシーラント層の剥離はなかったが、ラミネート強度が弱いため、引き裂きラインにシーラント層の剥がれに伴う伸び破断など引き裂きラインの乱れがあり、手切れ性は不良。
【0041】
以上の試験結果から明らかなように、実施例1、2、3の貼付薬用包装袋は、前記内容物の保存テストによる耐内容物性および開封時の手切れ性のいずれにおいても良好であった。これに対して比較例1、2の貼付薬用包装袋のうち、比較例1の貼付薬用包装袋は、前記保存テストでシーラント層の剥がれがあり耐内容物性に劣り、また、比較例2の貼付薬用包装袋は、前記保存テストでシーラント層の剥離は無かったが、シーラント層のラミネート強度が3.4N/15mm幅と弱いため、開封時の手切れ性が劣っており好ましくなかった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の貼付薬用包装袋は、特に、沈痛消炎剤等の経皮浸透性薬剤を含有させた粘着シート状の貼付薬を密封包装するための包装袋として好適に使用できるものであるが、その性能を有効に利用できる用途であれば、内容物や用途などに関して特に制限はない。
【符号の説明】
【0043】
1 基材層
2 接着層
3 バリヤー層
4 アンカーコート層
5 ポリオレフィン系樹脂層
6a、6b 側部シール部
7 底部シール部
8 上部シール部
9 筋押し部
10 ノッチ
11 ハーフカット線
12 チャックテープ
20 積層体
30 シート状の貼付薬
100、200 貼付薬用包装袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈痛消炎剤等の経皮浸透性薬剤を含有させた粘着シート状の貼付薬を密封包装する包装袋であって、該包装袋が、少なくとも基材層、接着層、バリヤー層、アンカーコート層、ポリオレフィン系樹脂層をこの順に積層してなる積層体をヒートシールして形成され、且つ、前記基材層の外表面側または内面側に印刷層が設けられ、
また、前記アンカーコート層は、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01〜5質量%含むポリオレフィン共重合樹脂をその数平均粒子径が1μm以下となるように分散した水性分散液であって、且つその水性分散体中には不揮発性水性化助剤を実質的に含まないように形成された水性分散液を、前記バリヤー層面に乾燥時の厚みが0.1〜2μmとなるように塗布、加熱乾燥して形成され、
また、前記ポリオレフィン系樹脂層は、前記アンカーコート層面にポリオレフィン系樹脂を押し出しコートする方法、またはポリオレフィン系樹脂フィルムを同様なポリオレフィン系樹脂を用いて押し出しラミネートする方法で形成されていることを特徴とする貼付薬用包装袋。
【請求項2】
前記バリヤー層が、アルミニウム箔、または、アルミニウムもしくはアルミニウム酸化物もしくは珪素酸化物を基材フィルムに蒸着してなる蒸着フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の貼付薬用包装袋。
【請求項3】
前記基材層が、紙または二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の貼付薬用包装袋。
【請求項4】
前記貼付薬用包装袋の開封位置に易開封性手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の貼付薬用包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−75725(P2013−75725A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−286453(P2012−286453)
【出願日】平成24年12月28日(2012.12.28)
【分割の表示】特願2006−312880(P2006−312880)の分割
【原出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】