説明

貼付製剤

【課題】薬物(但し、2−(4−エチル−1−ピペラジニル)−4−(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[b]ピリジン及びその生理学的に許容される酸付加塩を除く。)を含有し、皮膚透過性及び水中での貼付性が共に優れる貼付製剤を提供すること。
【解決手段】支持体の片面に粘着剤層を有する貼付製剤であって、該粘着剤層が、薬物(但し、2−(4−エチル−1−ピペラジニル)−4−(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[b]ピリジン及びその生理学的に許容される酸付加塩を除く。)、アクリル系ポリマー、乳酸及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含むことを特徴とする貼付製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚面又は粘膜面に貼付して使用する貼付製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、粘着剤による皮膚刺激を緩和する目的で、粘着剤と相溶する液状成分を添加した粘着剤層を有する貼付製剤が知られている。しかし、このような液状成分を添加した粘着剤を有する貼付製剤は、使用目的によっては液状成分が被貼付物(貼付対象の皮膚や粘膜)や支持体に移行する等の問題が生じやすい。そこで、例えば、特許文献1には、このような問題に対処するための粘着剤として、粘着剤の40〜80重量%を架橋により不溶化した粘着剤層が記載され、当該粘着剤層は、適度な接着力を有しつつ凝集力が向上するとされている。しかし、このような粘着剤層であっても、なお、発汗による汗成分の存在下では、粘着剤層の接着性が低下するという問題が生じることがある。なお、特許文献2には、金属塩化物を粘着剤層に添加することで前記問題を回避し、発汗による汗成分の存在下でも、粘着剤層の凝集力が低下しないようにした粘着剤が記載されている。しかし、粘着剤層に十分な接着力を付与することは検討されておらず、そのような粘着剤層はさらなる改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−319793号公報
【特許文献2】特開2007−16019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、粘着剤層の凝集力及び薬物の皮膚透過性だけでなく、水存在下での貼付性を十分に増強させた貼付製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、粘着剤層に乳酸とともにメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを添加することで上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 支持体の片面に粘着剤層を有する貼付製剤であって、該粘着剤層が、薬物(但し、2−(4−エチル−1−ピペラジニル)−4−(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[b]ピリジン及びその生理学的に許容される酸付加塩を除く。)、アクリル系ポリマー、乳酸及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含むことを特徴とする貼付製剤。
[2] 粘着剤層中の乳酸の含有量が、粘着剤層の総重量に対し0.1〜10重量%である、上記[1]記載の貼付製剤。
[3] 粘着剤層が乳酸1重量部当たりメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを0.03〜7重量部含有する上記[1]または[2]記載の貼付製剤。
[4] メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが、アルミニウム、マグネシウム及びケイ素原子が酸素原子を介して3次元的に重合した非晶質複合酸化物である、上記[1]〜[3]のいずれか一つ記載の貼付製剤。
[5] 薬物(但し、2−(4−エチル−1−ピペラジニル)−4−(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[b]ピリジン及びその生理学的に許容される酸付加塩を除く。)が、塩基性薬物である、上記[1]〜[4]のいずれか一つ記載の貼付製剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の貼付製剤は、粘着剤層が薬物と乳酸とを含むことにより、薬物の皮膚透過効果を促進させることができる。また、従来の乳酸を含むこの種の製剤は、水存在下で貼付性が低下し、剥離し易くなる傾向にあったが、本発明の貼付製剤は、粘着剤層がメタケイ酸アルミン酸マグネシウムをさらに含むことにより、水存在下での粘着性の低下を抑制でき、皮膚等からの剥離を抑制することができる。したがって、本発明によれば、薬物の皮膚透過性、および水存在下での貼付性が共に優れる貼付製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して説明する。
本発明の貼付製剤は、粘着剤層に、薬物、アクリル系ポリマー、乳酸及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有するものである。
【0009】
本発明の貼付製剤に配合される薬物は、2−(4−エチル−1−ピペラジニル)−4−(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[b]ピリジン(一般名「ブロナンセリン」)及びその生理学的に許容される酸付加塩が除かれる以外は特に限定されず、ヒト等の哺乳動物にその皮膚を通して投与し得る、すなわち経皮吸収可能な薬物が好ましい。そのような薬物としては、具体的には、全身性麻酔薬、催眠・鎮静薬、抗癲癇薬、解熱鎮痛消炎薬、鎮暈薬、精神神経用薬、中枢神経薬、抗痴呆薬、局所麻酔薬、骨格筋弛緩薬、自律神経用薬、鎮痙薬、抗パーキンソン薬、抗ヒスタミン薬、強心薬、不整脈用薬、利尿薬、血圧降下薬、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、動脈硬化用薬、循環器用薬、呼吸促進薬、鎮咳去痰薬、ホルモン薬、化膿性疾患用外用薬、鎮痛・鎮痒・収斂・消炎用薬、寄生性皮膚疾患用薬、止血用薬、痛風治療用薬、糖尿病用薬、抗悪性腫瘍用薬、抗生物質、化学療法薬、麻薬、禁煙補助薬等が挙げられる。
【0010】
また、薬物は、フリー塩基である薬物だけでなく、その生理学的に許容される塩も含む。そのような塩は特に限定されないが、例えば、ギ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、アジピン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩等が挙げられ、無機酸の付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等が例示できる。また、本発明において、薬物は、溶媒和物であってもよく、水和物及び非水和物であってもよい。
【0011】
なお、薬物が、粘着剤層に架橋処理を施す際に、反応性の高い架橋剤(例えば、イソシアネート系、金属塩系、エポキシ系等)と反応して架橋剤およびそれ自体に変質が生じやすいものである場合に本発明は特に好適である。そのような薬物としては、例えば、アルコール性ヒドロキシル基、チオール基、フェノール性ヒドロキシル基、アミノ基(例えば、1級(-NH2)、2級(-NRH)、3級(-NRR’))群より選ばれる一または二以上の官能基を有する薬物が挙げられる。
【0012】
また、薬物が塩基性基を有する塩基性薬物である場合に本発明は特に好適である。そのような薬物としては、例えば、アルコール性ヒドロキシル基、チオール基、フェノール性ヒドロキシル基、アミノ基(例えば、1級(-NH2)、2級(-NRH)、3級(-NRR’))群より選ばれる一または二以上の官能基を有する薬物が挙げられる。すなわち、本発明では、酸性添加剤である乳酸が粘着剤層に添加される。粘着剤層中に塩基性薬物と酸性添加剤が共存する場合、塩基性薬物及び酸性添加剤から塩が生成し、これが粘着剤層と皮膚との界面へと移行し、界面活性剤のような働きをすることで水中での貼付製剤の剥離を引き起こす可能性がある。しかし、粘着剤層中にメタケイ酸アルミン酸マグネシウムが添加されている場合、この塩がメタケイ酸アルミン酸マグネシウムに保持され、粘着剤層と皮膚との界面への移行を妨げることができる。
【0013】
本発明の貼付製剤において、薬物は固体薬物が好ましい。ここにいう固体薬物は、室温(25℃)で固体である薬物、すなわち、融点が25℃より高い薬物を意味する。なお、ここでいう融点は、示差走査熱量測定(DSC)による値である。メタケイ酸アルミン酸マグネシウムに吸着されることで粘着剤層から放出されにくい傾向にある液体薬物と比較して、固体薬物はそのような傾向を有さないため、固体薬物は本発明において特に有利である。また、固体薬物は貼付製剤の保管中に粘着剤層からブリードし難い。
【0014】
薬物は、疾患、状態または障害の治療において所望の結果、例えば所望の治療結果をもたらすのに十分な、本明細書中で有効量とも呼ばれる量で粘着剤層中に存在することができる。有効量の薬物とは、例えば非毒性ではあるが、しかし特定の時間にわたって選択された効果をもたらすのに十分な量の薬物を意味する。このような量は当業者によって容易に決定することができる。その有効量は、貼付製剤の面積にもよるが、粘着剤層の総重量に対して好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、特に好ましくは0.8重量%以上である。また、過剰量は粘着剤層の物性に悪影響を与える恐れがあるため、好ましくは50重量%程度以下、より好ましくは40重量%程度以下、特に好ましくは30重量%程度以下である。
【0015】
粘着剤層に含有される乳酸は、当技術分野で通常用いられるものであればよい。ラセミ体であるDL−乳酸であってもよく、光学活性体であるL−乳酸あるいはD−乳酸であってもよい。入手の容易さの点からDL−乳酸が好ましい。また、特に流動性の観点からDL−乳酸が好ましい。粘着剤層における、乳酸の含有量は、適宜設定でき特に限定されるものではないが、粘着剤層の総重量に対して0.1〜10重量%であることが好ましい。0.1重量%未満であると、有効量の薬物が血中に移行しない恐れがある。また、10重量%を超えると、粘着剤層の凝集力が低下する恐れがある。乳酸は皮膚刺激への影響を考慮すると6重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることがさらに好ましい。
【0016】
メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、例えば、ノイシリンの商品名の下で、富士化学工業から入手可能である。また、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、アルミニウム、マグネシウム及びケイ素原子が酸素原子を介して3次元的に重合した非晶質の複合酸化物からなるものが好ましく、かかる複合酸化物は、より具体的には、一般式:Al/aMgO/bSiO・nHO(式中、a=0.3〜3、b=0.3〜5である。)で表されるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムである。このようなメタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、その多孔性構造により、水存在下での接着性向上により有利に作用すると考えられる。
【0017】
粘着剤層における、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの含有量は、適宜設定でき特に限定されるものではないが、粘着剤層の乳酸1重量部に対する換算で0.03〜7重量部であることが好ましい。0.03重量部未満であると、水中での貼付製剤の剥離が起こる恐れがある。7重量部を超えると十分な接着性を示さない恐れがある。メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、皮膚への粘着力を十分に維持することを考慮すると0.03〜5重量部であることがさらに好ましい。
【0018】
本発明では、粘着剤層中の粘着剤としてアクリル系ポリマーを含む。好ましくは、粘着剤はアクリル系ポリマーのみで構成される。粘着剤としてアクリル系ポリマー以外の粘着性ポリマーを含む場合、アクリル系ポリマー以外の粘着性ポリマーは粘着剤層中の粘着剤の総重量に対して10重量%以下(アクリル系ポリマーが90重量%以上)である。アクリル系ポリマー以外の粘着性ポリマーとしてはゴム系粘着性ポリマー、シリコーン系粘着性ポリマー等が挙げられる。
【0019】
本発明におけるアクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単位を主たる構成単位とするアクリル系ポリマーが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主たる構成単位とするアクリル系ポリマーとしては、例えば、人間の皮膚への接着性、製剤調製の際の薬物の溶解性等の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(第1モノマー成分)と、架橋反応に関与できる官能基を有するビニルモノマー(第2モノマー成分)との共重合体か、或いは、これら以外の他のモノマー(第3モノマー成分)がさらに共重合した共重合体が好ましい。
【0020】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(第1モノマー成分)の例としては、アルキル基が炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状又は環状アルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、3−メチルペンチル、n−ヘプチル、シクロヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、シクロオクチル、n−ノニル、シクロノニル、n−デシル、シクロデシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル等)からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられ、好ましくはアルキル基が炭素数4〜18の直鎖状、分岐鎖状又は環状アルキル基(例えば、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、3−メチルペンチル、n−ヘプチル、シクロヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、シクロオクチル、n−ノニル、シクロノニル、n−デシル、シクロデシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル等)からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。特に常温での粘着性を与えるために、重合体のガラス転移温度を低下させるモノマー成分の使用が好適であることから、アルキル基が炭素数4〜8の直鎖状、分岐鎖状又は環状アルキル基(例えば、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、3−メチルペンチル、n−ヘプチル、シクロヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、シクロオクチル等)からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、とりわけ好ましくは、アルキル基がn−ブチル、2−エチルヘキシル又はシクロヘキシルからなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
【0021】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(第1モノマー成分)の特に好ましい具体例としては、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸シクロへキシルが挙がられ、中でも、アクリル酸2−エチルへキシルが最も好ましい。これら(メタ)アクリル酸アルキルエステル(第1モノマー成分)は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
一方、上記の架橋反応に関与できる官能基を有するビニルモノマー(第2モノマー成分)において、架橋反応に関与できる官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ビニル基等が挙げられ、ヒドロキシ基およびカルボキシ基が好ましい。当該モノマー(第2モノマー成分)の具体例としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステル、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸等が挙げられる。これらのうち、入手の容易性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ヒドロキシエチルエステルが好ましく、アクリル酸が最も好ましい。これらのモノマー(第2モノマー成分)は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
また、上記他のモノマー(第3モノマー成分)は、主として、粘着剤層の凝集力調整や薬物(化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩)の溶解性・放出性の調整等のために使用される。当該モノマー(第3モノマー成分)としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニルアミド類;(メタ)アクリル酸メトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル等の(メタ)アクリル酸アルコキシエステル;ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルアクリレート等のヒドロキシ基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有する(メタ)アクリル酸誘導体;(メタ)アクリル酸アミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルエステル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル;(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールエステル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキレングリコールエステル;(メタ)アクリロニトリル;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、アクリルアミドメチルスルホン酸等のスルホ基を有するモノマー;ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン等のビニル基含有モノマー等が挙げられる。これらの中でも、ビニルエステル類、ビニルアミド類が好ましく、ビニルエステル類は酢酸ビニルが好ましく、ビニルアミド類はN−ビニル−2−ピロリドンが好ましい。これらのモノマー(第3モノマー成分)は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
当該アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(第1モノマー成分)と、架橋反応に関与できる官能基を有するビニルモノマー(第2モノマー成分)との共重合体である場合、その共重合比(第1モノマー成分/第2モノマー成分)は85〜99重量%/1〜15重量%が好ましく、90〜99重量%/1〜10重量%がより好ましい。
【0025】
また、当該アクリル系ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(第1モノマー成分)と、架橋反応に関与できる官能基を有するビニルモノマー(第2モノマー成分)と、これら以外の他のモノマー(第3モノマー成分)との共重合体である場合、その共重合比(第1モノマー成分/第2モノマー成分/第3モノマー成分)は40〜94重量%/1〜15重量%/5〜50重量%が好ましく、50〜89重量%/1〜10重量%/10〜40重量%がより好ましい。
【0026】
アクリル系ポリマーの重合反応は、自体公知の方法で行えばよく特に限定されないが、例えば、上記のモノマーを、溶媒(例えば、酢酸エチル等)中で、重合開始剤(例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等)の存在下に50〜70℃で5〜48時間反応させる方法が挙げられる。
【0027】
本発明における特に好ましいアクリル系ポリマーは、アクリル酸2−エチルへキシルエステル/アクリル酸/N−ビニル−2−ピロリドン共重合体、アクリル酸2−エチルへキシルエステル/アクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル/酢酸ビニル共重合体、アクリル酸2−エチルへキシルエステル/アクリル酸共重合体等であり、より好ましくは、アクリル酸2−エチルへキシルエステル/アクリル酸/N−ビニル−2−ピロリドン共重合体である。
【0028】
また、本発明におけるアクリル系ポリマーのガラス転移温度は、共重合組成によっても異なるが、貼付製剤としての粘着性の観点から、通常−100℃〜−10℃であることが好ましく、より好ましくは−90℃〜−20℃である。ガラス転移温度は示差走査熱量計での測定値である。
【0029】
本発明の貼付製剤において、粘着剤層中の粘着剤(粘着性ポリマー)の含有量は、粘着剤層の総重量に対し20〜90重量%が好ましく、より好ましくは30〜80重量%である。
【0030】
本発明の貼付製剤においては、粘着剤層へのソフト感の付与、貼付製剤を皮膚から剥離する時の皮膚接着力に起因する痛みや刺激(物理的刺激)の軽減等の観点から、粘着剤層に有機液状成分を含有させることができる。
【0031】
かかる有機液状成分は、それ自体室温(25℃)で液状であり、可塑化作用を示し、上記のアクリル系ポリマーと相溶するものであれば、特に制限なく使用できる。有機液状成分は粘着剤層を柔軟化させ、貼付製剤の皮膚への物理的刺激を軽減させる。有機液状成分の具体例としては、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸オクチル等の炭素数8〜18(好ましくは12〜16)の脂肪酸と炭素数が1〜18の1価アルコールとの脂肪酸エステル(以下、「C8〜18(12〜16)−C1〜18脂肪酸エステル」とも略称する。);炭素数8〜9の脂肪酸〔例えば、カプリル酸(オクタン酸、C8)、ペラルゴン酸(ノナン酸、C9)等〕;脂肪酸グリセリンエステル(好ましくは、炭素数が8〜12の脂肪酸のグリセリンエステル(モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドの何れであってもよい。));エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;オリーブ油、ヒマシ油、スクアレン等の油脂類;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルラウリルアミド、ドデシルピロリドン、イソソルビトール、オレイルアルコール、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、オクチルアルコール、ポリエチレングリコールモノ−p−イソオクチルフェニルエーテル、α−モノイソステアリルグリセルエーテル、ラウロマクロゴール、ラウリルアルコール、セスキオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ステアリン酸ポリオキシル、ラウリン酸デカグリセリル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレエート、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、グリセロールモノオレエート、ショ糖脂肪酸エステル、トコフェロール等の液状の界面活性剤;流動パラフィン等の炭化水素類;ジイソプロピルアジぺート、フタル酸エステル、ジエチルセバケート等の従来より公知の可塑剤;ラウリン酸;オレイン酸;エトキシ化ステアリルアルコール;グリセリン等が挙げられる。これらの有機液状成分は1種を単独で又は2種以上の組み合わせで使用される。これらの中でも、C8〜18(12〜16)−C1〜18脂肪酸エステルが好ましく、ミリスチン酸イソプロピルが特に好ましい。
【0032】
本発明において、有機液状成分の配合量は粘着剤層の総重量に対して5〜60重量%が好ましく、より好ましくは10〜50重量%である。配合量が5重量%未満のとき、粘着剤層の可塑化が不充分なために良好なソフト感が得られなかったり、皮膚刺激性の低減効果が十分に得られない場合があり、逆に60重量%を超えるとき、粘着剤が有する凝集力によっても有機液状成分を粘着剤中に保持できず、粘着剤層表面にブルーミングして粘着力が弱くなり過ぎて、貼付使用中に皮膚面から製剤が脱落する可能性が高くなる。
【0033】
本発明の貼付製剤では、粘着剤層には、公知の化学的架橋処理(架橋剤を用いた架橋処理等)や物理的架橋処理(γ線のような電子線照射や紫外線照射による架橋処理等)等で架橋処理を施すことができる。当該架橋処理は、当分野で一般的に行われている手法により行うことができる。なお、架橋処理は薬物に悪影響を及ぼしにくいという観点から、架橋剤を用いた化学的架橋処理が好ましい。
【0034】
粘着剤層に架橋剤を用いた化学的架橋処理を施す場合、架橋剤には薬物によって架橋の形成が阻害されない架橋剤であれば特に制限されないが、例えば、過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル(BPO)等)、イソシアネート系化合物(例えば、多官能性イソシアネート化合物)、有機金属化合物(例えば、ジルコニウムおよび亜鉛アラニネート、酢酸亜鉛、グリシンアンモニウム亜鉛、チタン化合物等)、金属アルコラート(例えば、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート等)、および金属キレート化合物(例えば、ジプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、テトラオクチレングリコールチタン、アルミニウムイソプロピレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等)等が挙げられる。粘着剤と有機液状成分とが配合された粘着剤層中の粘着性ポリマーを架橋させた、いわゆるゲル状態の粘着剤層は、皮膚にソフト感を与えつつ適度な接着性と凝集力を有するので好ましい。架橋処理には、上記架橋剤を1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。とりわけ、粘着剤層がイソシアネート系化合物を含むことで、貼付製剤をヒト皮膚に貼付した状態で、粘着剤層の凝集力の低下が軽減され、粘着剤層を剥離する際の凝集破壊が生じにくくなる観点からイソシアネート系化合物が好ましい。架橋剤の配合量は、架橋剤や粘着剤の種類によって異なるが、架橋する粘着剤(アクリル系ポリマー)の100重量部に対して、通常0.03〜0.6重量部、好ましくは0.05〜0.4重量部(すなわち、アクリル系ポリマーの全量に対して通常3〜60重量%、好ましくは5〜40重量%)である。
【0035】
イソシアネート系化合物としては、例えばテトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。また、上記イソシアネート系化合物は単独で用いても、同種または類似の粘着剤(高分子成分)を混合して用いてもよい。
【0036】
化学的架橋処理は、例えば、架橋剤の添加後、架橋反応温度以上に加熱して保管する工程、すなわち、熟成工程を経ることにより実施することができ、このときの加熱温度は、架橋剤の種類に応じて適宜選択されるが、好ましくは60〜90℃であり、より好ましくは60〜80℃である。加熱時間としては、好ましくは12〜96時間であり、より好ましくは24〜72時間である。
【0037】
本発明の貼付製剤において、粘着剤層の厚みは20〜300μmが好ましく、30〜300μmがより好ましく、50〜300μmが最も好ましい。粘着剤層の厚みが20μm未満であると、十分な粘着力を得ること、有効量の薬物を含有させることが困難となるおそれがあり、粘着剤層の厚みが300μmを超えると粘着剤層形成に支障(塗工困難)をきたすおそれがある。
【0038】
本発明の貼付製剤において、皮膚接着力の観点から、粘着剤層は非含水系の粘着剤層が好ましい。ここにいう非含水系の粘着剤層は、必ずしも完全に水分を含まないものに限定されるわけではなく、空中湿度、皮膚等に由来する若干量の水分(例:粘着剤層の総重量の1重量%未満)を含むものは包含される。
【0039】
本発明の貼付製剤は、支持体と粘着剤層を含み、好ましくは剥離ライナーを備える。すなわち、本発明の貼付製剤は、前述の粘着剤層を支持体の少なくとも片面に積層した構造を有し、粘着剤層の粘着面(粘着剤層の支持体に積層した面と反対の面)は、使用の直前まで剥離ライナーで被覆して保護されていることが好ましい。また、シリコーン系、フッ素系、ワックス等の背面処理剤を支持体上に塗布し、剥離ライナーを用いずにロール状の形態とすることもできる。
【0040】
支持体は、特に限定はされないが、粘着剤層中の薬物と有機液状成分が支持体中を通って背面から失われてそれらの割合が低下しないもの(即ち、有機液状成分および薬物に対して不透過性を有する材料)が好ましい。
【0041】
具体的には、ポリエステル(例えば、ポエチレンテレフタレート等)、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、アイオノマー樹脂等の単独フィルム、金属箔、又はこれらから選ばれる2種以上のフィルムを積層したラミネートフィルム等が挙げられる。これらのうち、支持体として粘着剤層との接着性(投錨性)を向上させるために支持体を上記材質からなる無孔性フィルムと下記の多孔性フィルムとのラミネートフィルムとし、多孔性フィルム側に粘着剤層を形成することが好ましい。なお、無孔性フィルムの厚みは2〜100μmが好ましく、2〜50μmがより好ましい。
【0042】
多孔性フィルムとしては、粘着剤層との投錨性が向上するものであれば特に限定されず、例えば紙、織布、不織布(例えば、ポリエステル不織布等)、上記のフィルム(例えば、ポリエステル(例えば、ポエチレンテレフタレート等)、ナイロン、サラン(商品名)、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、金属箔等の単独フィルム、およびこれらの1種または2種以上のフィルムを積層したラミネートフィルム等)に機械的に穿孔処理したフィルム等が挙げられ、特に紙、織布、不織布(例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)不織布等)が支持体の柔軟性の点から好ましい。多孔性フィルムは、紙、織布、不織布等の場合、これらの目付量を5〜30g/mとすることが投錨力の向上の点で好ましい。
【0043】
支持体におけるラミネートフィルムは、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、エクストルージョン(押し出し)ラミネート法、ホットメルトラミネート法、コ・エクストルージョン(共押し出し)ラミネート法等の公知のラミネートフィルムの製造方法によって製造される。
【0044】
支持体の厚みは、特に限定されないが、好ましくは2〜200μm、より好ましくは10〜50μmである。2μm未満であると、自己支持性等の取扱い性が低下する傾向となり、200μmを超えると、違和感(ごわごわ感)を生じ、追従性が低下する傾向となる。
【0045】
剥離ライナーとしては、特に制限されず、公知の剥離ライナーを用いることができる。具体的には、剥離ライナーとしては、剥離処理剤からなる剥離処理剤層が剥離ライナー用の基材の表面に形成された剥離ライナーや、それ自体が剥離性の高いプラスチックフィルム、剥離ライナー用の基材の表面に、前記剥離性の高いプラスチックフィルムの素材による剥離層を形成した構成の剥離ライナー等が挙げられる。剥離ライナーの剥離面は、基材の片面のみであってもよく、両面であってもよい。
【0046】
このような剥離ライナーにおいて、剥離処理剤としては、特に制限されず、例えば、長鎖アルキル基含有ポリマー、シリコーンポリマー(シリコーン系剥離剤)、フッ素系ポリマー(フッ素系剥離剤)等の剥離剤が挙げられる。剥離ライナー用の基材としては、例えば、PETフィルム、ポリイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエステル(PETを除く)フィルム等のプラスチックフィルムやこれらのフィルムに金属を蒸着した金属蒸着プラスチックフィルム;和紙、洋紙、クラフト紙、グラシン紙、上質紙等の紙類;不織布、布等の繊維質材料による基材;金属箔等が挙げられる。
【0047】
また、それ自体が剥離性の高いプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体(ブロック共重合体又はランダム共重合体)の他、これらの混合物からなるポリオレフィン系樹脂によるポリオレフィン系フィルム;テフロン(登録商標)製フィルム等を用いることができる。
【0048】
なお、前記剥離ライナー用の基材の表面に形成される剥離層は、前記剥離性の高いプラスチックフィルムの素材を、前記剥離ライナー用の基材上に、ラミネート又はコーティングすることにより形成することができる。
【0049】
剥離ライナーの厚み(全体厚)としては、特に限定するものではないが、通常200μm以下、好ましくは25〜100μmである。
【0050】
本発明の貼付製剤の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、以下の製造方法により製造することができる。
【0051】
まず、粘着性ポリマー、薬物及び充てん剤を、必要に応じて有機液状成分やその他の添加剤と共に適当な溶媒に加えて均一になるまで十分に混合する。溶媒としては、例えば、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、2−プロパノール、メタノール、エタノール等が挙げられる。そして、架橋剤を配合する場合は、この混合液にさらに架橋剤を加えて十分に混合する。この際、必要に応じて、架橋剤とともに溶媒を加えて混合でもよい。
【0052】
次に、得られた混合液を、支持体の片面又は剥離ライナーの剥離処理面に塗布し、乾燥して粘着剤層を形成する。なお、前記塗布は、例えば、キャスティング、プリンティング、その他の当業者に自体公知の技法により実施可能である。その後、粘着剤層に剥離ライナー又は支持体を貼り合わせて積層体を形成する。なお、架橋処理を行う場合は、剥離ライナー又は支持体を粘着剤層上に貼りあわせた後、60〜90℃、好ましくは60〜70℃で24〜48時間放置して架橋反応を促進させて、架橋粘着剤層を形成する。
【0053】
次に、剥離ライナーを剥がして、粘着剤層の露出面から溶媒に乳酸を溶解させた乳酸溶液を含浸させ、40〜100℃程度で乾燥させ、乾燥後に、前記とは別の剥離ライナーの剥離処理面を粘着剤層に貼り合わせる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、後記において「部」および「%」とあるのは、特記する場合を除き、「重量部」および「重量%」をそれぞれ意味する。
【0055】
[アクリル系ポリマーAの調製]
不活性ガス雰囲気下、アクリル酸2−エチルヘキシル75部、N−ビニル−2−ピロリドン22部、アクリル酸3部およびアゾビスイソブチロニトリル0.2部を酢酸エチル(60℃)中にて溶液重合させてアクリル系共重合体(アクリル系ポリマーA)の溶液を調製した。
【0056】
[実施例1]
58.01部のアクリル系ポリマーA、5.82部のリドカイン(以下、「LDC」と称す)、32.98部のミリスチン酸イソプロピル(以下「IPM」と称す)及び0.1部のメタケイ酸アルミン酸マグネシウム(ノイシリン(商品名)、タイプ:UFL2、富士化学工業製)を適量の酢酸エチルを加えて均一になるまで十分に混合した後、架橋剤として0.09部の三官能性イソシアネート(コロネートHL(日本ポリウレタン工業製))を加え、酢酸エチルでベース濃度を30重量%に調整し、均一になるまで十分に混合撹拌を行い、塗工液を得た。得られた塗工液をシリコーン系剥離剤にて剥離処理を施した厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と称す)フィルムからなる剥離ライナーの剥離処理を施した面に、乾燥後の粘着剤層の厚みが約60μmとなるように塗工し、乾燥を行い粘着剤層を形成した。形成した粘着剤層の粘着面を、厚さ3.5μmのPETフィルムと、目付量12g/mのPET不織布とを積層した支持体の不織布側に貼り合わせて積層体を作製した。その後、70℃で48時間放置し、架橋粘着剤層を有する積層体を調製した。放置後、この架橋粘着剤層を有する積層体の剥離ライナーを剥離し、97部の架橋粘着剤層に対して、乳酸の最終含有量が3部となるように、架橋粘着剤層に乳酸を含有させた。その後、前記剥離ライナーと同じ剥離ライナーを別に用意しこれを、架橋粘着剤層の粘着面に貼り合わせして実施例1の貼付製剤を得た。なお、リドカインの融点は66〜69℃である。該融点はDSC装置(セイコーインスツルーメンツ(SII)製、型番DSC6220)で測定した。また、上記ベース濃度は、塗工液重量(g)から、酢酸エチルの重量を引いた重量(g)を、塗工液重量(g)で除した値に100を乗じた値(重量%)である。
【0057】
[実施例2]
実施例1において、アクリル系ポリマーA56.61部、ノイシリン1.5部に置き換えたほかは実施例1と同様にして実施例2の貼付製剤を得た。
【0058】
[実施例3]
実施例1において、アクリル系ポリマーA55.22部、ノイシリン2.9部、架橋剤0.08部に置き換えたほかは実施例1と同様にして実施例3の貼付製剤を得た。
【0059】
[実施例4]
実施例1において、アクリル系ポリマーA53.72部、ノイシリン4.4部、架橋剤0.08部に置き換えたほかは実施例1と同様にして実施例4の貼付製剤を得た。
【0060】
[実施例5]
実施例1において、アクリル系ポリマーA47.93部、ノイシリン10.2部、架橋剤0.07部に置き換えたほかは実施例1と同様にして実施例5の貼付製剤を得た。
【0061】
[実施例6]
実施例1において、アクリル系ポリマーA43.53部、ノイシリン14.6部、架橋剤0.07部に置き換えたほかは実施例1と同様にして実施例6の貼付製剤を得た。
【0062】
[実施例7]
実施例1において、アクリル系ポリマーA38.74部、ノイシリン19.4部、架橋剤0.06部に置き換えたほかは実施例1と同様にして実施例7の貼付製剤を得た。
【0063】
[比較例1]
実施例1において、アクリル系ポリマーA58.11部、ノイシリン0.0部に置き換えたほかは実施例1と同様にして比較例1の貼付製剤を得た。
【0064】
[実施例8]
58.01部のアクリル系ポリマーA、5.82部のビペリデン(以下「BPD」と称す)、32.98部のIPM、0.1部のメタケイ酸アルミン酸マグネシウム(ノイシリン(商品名)、タイプ:UFL2、富士化学工業製)を適量の酢酸エチルを加えて均一になるまで十分に混合した後、架橋剤として0.09部の三官能性イソシアネート(コロネートHL(日本ポリウレタン工業製))を加え、酢酸エチルでベース濃度を30重量%に調整し、均一になるまで十分に混合撹拌を行い、塗工液を得た。得られた塗工液を片面に剥離処理を施した厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(以下「PET」)製フィルムの剥離ライナーの剥離処理を施した面に、乾燥後の粘着剤層が約60μmとなるように塗工し、乾燥を行い粘着剤層を形成した。形成した粘着剤層の粘着面を、厚さ3.5μmのPETフィルムと12g/mのPET不織布との積層フィルムの不織布側に貼り合わせて積層体を作製した。その後、70℃で48時間放置し、架橋粘着剤層を有する積層体を調製した。放置後、この架橋粘着剤層を有する積層体の剥離ライナーを剥離し、97部の架橋粘着剤層に対して、乳酸の最終含有量が3部となるように、架橋粘着剤層に乳酸を含有させた。その後、前記剥離ライナーと同じ剥離ライナーを別に用意し、これを架橋粘着剤層の粘着面に貼り合わせして実施例8の貼付製剤を得た。上記ベース濃度は、塗工液重量(g)から、酢酸エチルの重量を引いた重量(g)を、塗工液重量(g)で除した値に100を乗じた値(重量%)である。
【0065】
[実施例9]
実施例8において、アクリル系ポリマーA56.61部、ノイシリン1.5部に置き換えたほかは実施例8と同様にして実施例9の貼付製剤を得た。
【0066】
[実施例10]
実施例8において、アクリル系ポリマーA55.22部、ノイシリン2.9部、架橋剤0.08部に置き換えたほかは実施例8と同様にして実施例10の貼付製剤を得た。
【0067】
[実施例11]
実施例8において、アクリル系ポリマーA53.72部、ノイシリン4.4部、架橋剤0.08部に置き換えたほかは実施例8と同様にして実施例11の貼付製剤を得た。
【0068】
[実施例12]
実施例8において、アクリル系ポリマーA47.93部、ノイシリン10.2部、架橋剤0.07部に置き換えたほかは実施例8と同様にして実施例12の貼付製剤を得た。
【0069】
[実施例13]
実施例8において、アクリル系ポリマーA43.53部、ノイシリン14.6部、架橋剤0.07部に置き換えたほかは実施例8と同様にして実施例13の貼付製剤を得た。
【0070】
[実施例14]
実施例8において、アクリル系ポリマーA38.74部、ノイシリン19.4部、架橋剤0.06部に置き換えたほかは実施例8と同様にして実施例14の貼付製剤を得た。
【0071】
[比較例2]
実施例8において、アクリル系ポリマーA58.11部、ノイシリン0.0部に置き換えたほかは実施例8と同様にして比較例2の貼付製剤を得た。
【0072】
[接着力測定試験]
ステンレス板に幅24mm、長さ50mmに切断したサンプルを重さ2kgのローラーを一往復させて圧着し、30分経過後、引き剥がし角度180°、引張速度300mm/分にて引き剥がし、その際の剥離力を測定した。試験数はn=3で行い、各試験で3点の荷重を測定し計9点を平均した。試験点は剥離開始位置から20、40、60mmの位置とした。結果を表1及び2に示す。
【0073】
[保持力測定試験]
10mm、長さ50mmに切断したサンプルの一端約25mmをベークライト(フェノール樹脂)板に重さ850gのローラーを一往復させて圧着し、逆の一端を補助紙で補強する。これを40±2℃の温度で安定した装置内のフックに取り付け30分放置した後、荷重(300g)を取り付け、自然落下するまで放置する。その際の保持時間を測定した。試験数はn=3で行い、計3回の測定値を平均した。結果を表1及び表2に示す。
【0074】
[定荷重剥離試験]
12mm、長さ50mmに切断したサンプルの一端を約5mm剥がし補助紙を付けて補強する。ベークライト(フェノール樹脂)板にこの試験片を重さ850gのローラーを一往復させて圧着し、30分経過後、試験片の貼り付けた部分の長さが30mmになるまで試験片を試験板から剥がす。この試験片を40±2℃の水浴中の試験架台上に水平に置いた状態で、30gの荷重を補助紙に取り付け、試験片が試験板から自然落下するまでの時間を計測し、製剤の水存在下での剥離速度(mm/min)を求めた。ただし30分経過しても試験片が落下しない場合は30分時点での剥離長さを定規で計測し、これを30で除して剥離速度とした。試験はn=3で行い、計3点を平均した。結果を表1及び表2に示す。
【0075】
[投錨性]
貼付製剤からライナーを剥がす(ライナー剥離操作)際に、粘着剤層が支持体側に投錨しているか否かを目視観察により評価した。さらに、貼付製剤をフェノール樹脂板に貼付し、貼付製剤を引き剥がす際に、粘着剤層が支持体に投錨しているか否かを目視観察により評価した(接着性試験)。なお、投錨性は、以下の基準にしたがって評価した。評価結果を表1及び表2に示す。
○:ライナー剥離操作、接着性試験のいずれでも、粘着剤層は支持体に投錨していた。
△:ライナー剥離操作では粘着剤層は支持体に投錨していたが、接着性試験では粘着剤層は支持体に投錨していなかった。
×:ライナー剥離操作で、粘着剤層は支持体に投錨していなかった。
【0076】
[粘着感]
ライナーを剥離後、露出した粘着剤層を指で触った際の粘着感について以下の基準で官能評価を行った。評価結果を表1及び表2に示す。
○:粘着感は十分にあった。
△:粘着感はやや弱かった。
×:粘着感は弱かった。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
比較例1及び比較2と比較して、実施例1〜7及び実施例8〜14では水中での剥離速度が遅く、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを配合した製剤では水中での接着性が優れていることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の片面に粘着剤層を有する貼付製剤であって、
該粘着剤層が、薬物(但し、2−(4−エチル−1−ピペラジニル)−4−(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[b]ピリジン及びその生理学的に許容される酸付加塩を除く。)、
アクリル系ポリマー、乳酸及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含むことを特徴とする貼付製剤。
【請求項2】
粘着剤層中の乳酸の含有量が、粘着剤層の総重量に対し0.1〜10重量%である、請求項1記載の貼付製剤。
【請求項3】
粘着剤層が乳酸1重量部当たりメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを0.03〜7重量部含有する請求項1または2記載の貼付製剤。
【請求項4】
メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが、アルミニウム、マグネシウム及びケイ素原子が酸素原子を介して3次元的に重合した非晶質複合酸化物である、請求項1〜3のいずれか1項記載の貼付製剤。
【請求項5】
薬物(但し、2−(4−エチル−1−ピペラジニル)−4−(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[b]ピリジン及びその生理学的に許容される酸付加塩を除く。)が、塩基性薬物である、請求項1〜4のいずれか1項記載の貼付製剤。

【公開番号】特開2012−176942(P2012−176942A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20281(P2012−20281)
【出願日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】