説明

貼付製剤

【課題】種々の薬物に対し、優れた放出性を実現し得る貼付製剤を提供すること。
【解決手段】
本発明の貼付製剤は、支持体と該支持体の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを備える。粘着剤層は、(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(b)ジケトン基含有モノマーとを含有するモノマー混合物を共重合してなるアクリル系共重合体と、薬物とを含み、アクリル系共重合体は架橋剤により架橋されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体と、その支持体の少なくとも一方の面に薬物を含有させた粘着剤層とを有する貼付製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物の経皮投与の目的で皮膚に貼付して用いる貼付製剤には、皮膚に貼付する際には十分な接着性を示し、使用後には皮膚表面を汚染する(例えば、糊残りやベタツキなどを生じる)ことなく剥離除去できることが求められる。また、貼付製剤は、薬物の放出性が良好であることが望まれている。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、カルボキシル基含有モノマー(例えば、アクリル酸)および(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として有する共重合体を含む粘着剤を用いた貼付製剤が提案されている。しかし、このような粘着剤を用いた貼付製剤は、含有させる薬物の種類によっては(例えば、塩基性薬物を用いた場合)、例えば、経皮吸収促進剤として多量の液状成分を含有させても、薬物の放出性が低いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−241179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的とするところは、種々の薬物に対し、優れた放出性を実現し得る貼付製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の貼付製剤は、支持体と該支持体の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを備え、該粘着剤層が、(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(b)ジケトン基含有モノマーとを含有するモノマー混合物を共重合してなるアクリル系共重合体と、薬物とを含み、該アクリル系共重合体が架橋剤により架橋されている。
好ましい実施形態においては、上記粘着剤層が、7.5重量%以下の上記ジケトン基含有モノマー(b)を含有するモノマー混合物を共重合してなるアクリル系共重合体を含む。
好ましい実施形態においては、上記モノマー混合物が、ビニル系モノマーを含有する。
好ましい実施形態においては、上記モノマー混合物が、(c)水酸基を含有するビニル系モノマーを含有する。
好ましい実施形態においては、上記粘着剤層が、上記水酸基含有ビニル系モノマー(c)を7.5重量%〜20重量%含有するモノマー混合物を共重合してなるアクリル系共重合体を含む。
好ましい実施形態においては、上記粘着剤層が、上記アクリル系共重合体と相溶性を有する可塑剤をさらに含み、該アクリル系共重合体と該可塑剤との重量比が1:0.1〜1:5である。
好ましい実施形態においては、上記薬物が、塩基性薬物である。
好ましい実施形態においては、上記塩基性薬物が、第1級および/または第2級アミン基を有する薬物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとジケトン基含有モノマーとを含有するモノマー混合物を共重合して得られるアクリル系共重合体を粘着剤層に用いることにより、凝集力および接着性を維持しつつ、かつ、種々の薬物に対して優れた放出性を実現し得る。具体的には、上記アクリル系共重合体は、実質的に酸性基を含まないので、粘着剤層に薬物を含有させた場合に当該アクリル系共重合体と薬物とが所望でない反応を起こすことがない。その結果、種々の薬物に対して(特に、塩基性薬物を用いた場合)、優れた放出性を実現し得る貼付製剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の貼付製剤は、支持体と該支持体の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを備える。当該粘着剤層は、(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(b)ジケトン基含有モノマーとを含有するモノマー混合物を共重合してなるアクリル系共重合体と、薬物とを含む。このようなアクリル系共重合体を用いることにより、凝集力および接着性を維持しつつ、かつ、種々の薬物に対して優れた放出性を実現し得る。以下、それぞれの構成要素および材料等について詳細に説明する。
【0009】
A.アクリル系共重合体
A−1.(メタ)アクリル酸アルキルエステル
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(モノマー(a))は、代表的には下記式(I)で示される。
【0010】
【化1】

【0011】
式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはアルキル基を示す。アルキル基としては、炭素数が4〜18個のアルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数が4〜18個である場合、十分に低いガラス転移温度を有する粘着剤を得ることが容易となる。その結果、良好な接着性(タック)を有する貼付製剤を得ることが容易となる。
【0012】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、n−ブチル、n−ペンチル、n−へキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル等の直鎖アルキル基、イソブチル、イソペンチル、イソヘキシル、イソオクチル、2−エチルヘキシル等の分岐鎖アルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等の環状アルキル基などを有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
上記エステルのうちでも、式(I)中、Rで示されるアルキル基の炭素数が4〜12個である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、ガラス転移温度を良好に低下させることができ、その結果、得られる粘着剤層に常温で良好な接着性を付与し得るからである。具体的には、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸シクロへキシルなどが好ましく、アクリル酸2−エチルヘキシルが最も好ましい。重合させた場合に十分に低いガラス転移温度(−70℃)を有する重合体が得られ、しかも入手が容易だからである。
【0014】
上記モノマー(a)は、それにより形成されるホモ重合体のガラス転移温度が好ましくは−80℃〜−40℃、特に好ましくは−70℃〜−50℃となるように選択することが好ましい。
【0015】
上記モノマー混合物におけるモノマー(a)の含有量は、モノマー混合物の全量に対して、好ましくは50重量%以上である。モノマー(a)の含有量が50重量%以上であると、粘着剤として用いる際の接着性(タック)が良好である。モノマー(a)の含有量は、さらに好ましくは60重量%以上であり、特に好ましくは70重量%以上である。モノマー(a)の含有量が60重量%以上であると、より良好なタックが得られ得る。一方、モノマー(a)の含有量は、モノマー混合物の全量に対し、好ましくは95重量%以下であり、より好ましくは90重量%以下である。モノマー混合物におけるモノマー(a)の含有量が多過ぎると、得られる共重合体の物性が上記モノマー(a)のホモ重合体の物性に近くなり、粘着剤として適切な物性が得られにくくなる傾向がある。
【0016】
A−2.ジケトン基含有モノマー
上記ジケトン基含有モノマー(モノマー(b))の代表例としては、アセトアセチル基含有ビニルモノマー、アセトアセチル基含有(メタ)アクリル系モノマーおよびジアセトンアクリルアミドが挙げられる。アセトアセチル基含有ビニルモノマーの具合例としては、アセト酢酸ビニル、アセト酢酸アリルエステル、ジアセト酢酸アリルエステル、(2−アセトアセトキシプロピル)アリルエーテルが挙げられる。アセトアセチル基含有(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、アセトアセトキシプロピルアクリレート、アセトアセトキシブチルメタクリレート、アセトアセトキシブチルアクリレートが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
上記モノマー混合物におけるモノマー(b)の含有量は、モノマー混合物の全重量に対して、好ましくは0.1重量%以上である。一方で、モノマー(b)の含有量は、好ましくは7.5重量%以下、より好ましくは2.5重量%以下である。モノマー(b)の含有量が0.1重量%未満である場合、得られる粘着剤層の凝集力が不十分となる場合がある。モノマー(b)の含有量が7.5重量%を超えると、得られる粘着剤層の接着性が不十分となる場合がある。
【0018】
上記モノマー混合物におけるモノマー(a)およびモノマー(b)の合計の含有量は、モノマー混合物の全重量に対し、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上である。このような組成の共重合体から得られる粘着剤を用いると、皮膚面に接着した際の凝集力および接着性が良好な貼付製剤を得ることができる。
【0019】
A−3.その他のモノマー
上記モノマー混合物は、モノマー(a)およびモノマー(b)に加えて、これらのモノマーと共重合可能なその他のモノマーを含有し得る。モノマー混合物は、好ましくは、ビニル系モノマーを含有する。適切なビニル系モノマーを加えることにより、接着力および凝集力を調整し、特に、接着性を良好に向上させることができる。また、薬物の溶解性および放出性を調整することができる。
【0020】
好ましくは、上記モノマー混合物は、水酸基を含有するビニル系モノマー(モノマー(c))を含有する。モノマー(c)を加えることにより、接着性を極めて良好に向上させることができる。また、モノマー(c)は、薬物の放出性向上にも寄与し得る。モノマー(c)としては、代表的には、下記式(II)で表されるN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0021】
【化2】

【0022】
式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはヒドロキシアルキル基を示す。
【0023】
式(II)において、上記ヒドロキシアルキル基としては、炭素数2〜4個のヒドロキシアルキル基が好ましい。上記ヒドロキシアルキル基におけるアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよい。式(II)で表されるN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(1−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(1−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、好ましくは、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドおよびN−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミドが挙げられる。特に好ましくは、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA)が挙げられる。親水性と疎水性とのバランスがよく、接着性のバランスに優れた粘着剤層を形成し得るからである。例えば、モノマー(c)の好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは実質的にすべてがHEAAである。すなわち、モノマー(c)の99.9重量%以上がHEAAである。
【0024】
モノマー(c)の別の代表例としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを併用してもよい。
【0025】
上記モノマー混合物におけるモノマー(c)の含有量は、モノマー混合物の全重量に対して、好ましくは7.5重量%〜20重量%であり、より好ましくは7.5重量%〜12重量%である。モノマー(c)の含有量がこのような範囲であれば、より良好な凝集力および接着性を示す貼付製剤が得られる。モノマー(c)の含有量が7.5重量%未満である場合、得られる粘着剤層の接着性が不十分となる場合がある。モノマー(c)の含有量が20重量%を超えると、凝集物が発生する等の不具合が生じてモノマー混合物を共重合できない場合がある。
【0026】
ビニル系モノマーとしては、上記モノマー(c)以外に、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;N−ビニル−2−ピロリドン、1−ビニルカプロラクタム、2−ビニル−2−ピペリドン、1−ビニルイミダゾール等の窒素原子を含む複素環を有するビニル系モノマーを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくは、窒素原子を含む複素環を有するビニル系モノマーが用いられる。
【0027】
窒素原子を含む複素環を有するビニル系モノマーを用いる場合、モノマー混合物における含有量は、モノマー混合物の全量に対して、好ましくは5重量%〜40重量%であり、より好ましくは10重量%〜30重量%である。ビニル系モノマーの含有量が40重量%を超えると、得られる貼付製剤のタックや接着力が低下する場合がある。
【0028】
本発明においては、上記モノマー混合物は、好ましくは、カルボキシル基含有モノマーを実質的に含有しない。カルボキシル基含有モノマーとしては、代表的には、一分子内に少なくとも一つのカルボキシル基(無水物を形成した形態であってもよい)を有するエチレン性不飽和モノマー(代表的には、ビニル系モノマー)が挙げられる。カルボキシル基含有モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物が挙げられる。なお、本明細書において「モノマー混合物がカルボキシル基を有するモノマーを実質的に含有しない」とは、モノマー混合物がカルボキシル基を有するモノマーを全く含有しない場合のみならず、その含有量がモノマー混合物の全量に対し0.1重量%以下である場合を包含する。このように、カルボキシル基含有モノマーを実質的に含有せずに、優れた凝集力、さらには接着性を達成したことが本発明の特徴の一つである。
【0029】
さらに、本発明においては、上記モノマー混合物は、カルボキシル基含有モノマーを実質的に含有しないのみならず、カルボキシル基以外の酸性基(スルホ基、リン酸基等)を有するモノマーについても、実質的に含有しないことが好ましい。すなわち、上記モノマー混合物は、好ましくは、カルボキシル基含有モノマーとその他の酸性基を有するモノマーとを全く含有しないか、モノマー混合物の全量に対してこれらのモノマーを0.1重量%以下で含有する。このようなモノマー混合物を共重合して得られる共重合体を含む粘着剤層によれば、例えば、薬物のカルボキシル基等との反応による変性、粘着剤層における薬物の移動阻害等を未然に防ぐことができる。
【0030】
A−4.架橋剤
アクリル系共重合体は、好ましくは、架橋剤により化学的に架橋されている。架橋剤としては、好ましくは、金属のアルコラートまたはキレート化合物が用いられる。当該金属としては、反応性や取り扱い性の観点から、好ましくは、チタン、ジルコニウム、亜鉛およびアルミニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属が用いられる。このような架橋剤によれば、塗工、乾燥までは塗工液の増粘が抑制され、極めて作業性に優れている。
【0031】
架橋剤の添加量は、アクリル系共重合体100重量部に対して、好ましくは0.01重量%〜5重量%、より好ましくは0.01重量%〜2重量%である。
【0032】
A−5.アクリル系共重合体の重合方法
上記モノマー混合物からアクリル系共重合体を得るための重合方法は特に限定されず、任意の適切な重合方法を採用し得る。例えば、熱重合開始剤を用いて行う重合方法(溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法等の熱重合法);光や放射線等の活性エネルギー線(高エネルギー線ともいう)を照射して行う重合方法などを採用することができる。
【0033】
上記の重合方法のうち、溶液重合法を好ましく採用することができる。作業性や品質安定性等に優れるからである。該溶液重合の態様は特に限定されず、任意の適切な態様が採用され得る。具体的には、任意の適切なモノマー供給方法、重合条件(重合温度、重合時間、重合圧力等)、使用材料(重合開始剤、界面活性剤等)を採用することができる。上記モノマー供給方法としては、モノマー混合物の全量を一度に反応容器に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等のいずれをも採用することができる。好ましい一態様として、モノマー混合物の全量および開始剤を溶媒に溶かした溶液を反応容器内に供給し、該モノマー混合物を一括して重合させる態様(一括重合)が例示される。このような一括重合は、重合操作および工程管理が容易であるので好ましい。他の好ましい一態様としては、反応容器内に開始剤(典型的には開始剤を溶媒に溶かした溶液)を用意し、モノマー混合物を溶媒に溶かした溶液を該反応容器に滴下しながら重合させる態様(滴下重合または連続重合)が例示される。モノマー混合物の一部(一部の成分および/または一部の分量)を、典型的には溶媒とともに反応容器内に入れ、その反応容器に残りのモノマー混合物を滴下してもよい。
【0034】
熱重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート等のアゾ系化合物(アゾ系開始剤);過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物(過酸化物系開始剤);フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの混合剤、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの混合剤等のレドックス系開始剤などが挙げられる。モノマー混合物を熱重合法により重合させる場合は、重合温度は、好ましくは約20℃〜約100℃であり、さらに好ましくは約40℃〜約80℃である。
【0035】
光(典型的には紫外線)を照射して行う重合方法は、典型的には光重合開始剤を使用して行われる。該光重合開始剤は特に制限されず、例えば、ケタール系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等を用いることができる。このような光重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
ケタール系光重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[例えば、商品名「イルガキュア651」(チバ・ジャパン社製)]等が挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[例えば、商品名「イルガキュア184」(チバ・ジャパン社製)]、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノン等が挙げられる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、商品名「ルシリンTPO」(BASF社製)等を使用することができる。α−ケトール系光重合開始剤としては、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン等が挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、2−ナフタレンスルホニルクロライド等が挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム等が挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤としてはベンゾインが挙げられる。ベンジル系光重合開始剤としてはベンジルが挙げられる。ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。チオキサントン系光重合開始剤としては、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン等が挙げられる。
【0037】
上記の重合開始剤の使用量は特に限定されない。例えば、重合開始剤の使用量は、モノマー混合物の全量100重量部に対して、好ましくは約0.01重量部〜約2重量部、より好ましくは約0.01重量部〜約1重量部である。
【0038】
B.粘着剤層
上記粘着剤層は、上記A項に記載のアクリル系共重合体を含む。粘着剤層の厚みは、好ましくは10μm〜400μmであり、さらに好ましくは20μm〜200μmであり、より好ましくは30μm〜100μmである。粘着剤層は連続的に形成されてもよく、目的に応じて所定のパターン(例えば、点状、ストライプ状等の規則的パターン、あるいはランダムなパターン)で形成されてもよい。
【0039】
粘着剤層は、好ましくは、上記アクリル系共重合体に対して相溶性を有する可塑剤をさらに含有し得る。可塑剤は、粘着剤層を可塑化させてソフト感を付与することができる。その結果、貼付製剤を皮膚から剥離する際に、皮膚接着力に起因して生じる痛みや皮膚刺激を低減させ得る。したがって、可塑剤としては、可塑化作用を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。好ましくは、経皮吸収性を向上させるため、吸収促進作用を有するものが用いられる。
【0040】
上記可塑剤としては、例えば、オリーブ油、ヒマシ油、パーム油等の植物性油脂;ラノリン等の動物性油脂;ジメチルデシルスルホキシド、メチルオクチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルラウリルアミド、メチルピロリドン、ドデシルピロリドン等の有機溶剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の液状の界面活性剤;アジピン酸ジイソプロピル、フタル酸エステル、セバシン酸ジエチル等の可塑剤;スクワラン、流動パラフィン等の炭化水素;オレイン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソトリデシル、ラウリン酸エチル等の脂肪酸アルキルエステル、好ましくは、炭素数8〜18(より好ましくは12〜16)の脂肪酸と炭素数1〜18の1価のアルコールとのエステル;グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等の多価アルコールの脂肪酸エステル;エトキシ化ステアリルアルコール;ピロリドンカルボン酸脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
上記可塑剤は、アクリル系共重合体に対する重量比で、好ましくは1:0.1〜1:5、より好ましくは1:0.1〜1:2、さらに好ましくは1:0.1〜1:0.7の割合で粘着剤層に含有され得る。本発明によれば、接着性を損なわない範囲で、このような高い可塑剤の含有量を達成し得る。また、可塑剤の量がこのような範囲であれば、皮膚刺激の小さい粘着剤層が得られ得る。
【0042】
粘着剤層は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の他の成分をさらに含有してもよい。このような任意成分としては、例えば、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール、天然ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等の酸化防止剤、2,6−tert−ブチル−4−メチルフェノール等のアミン−ケトン系老化防止剤、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等の芳香族第2級アミン系老化防止剤、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体等のモノフェノール系老化防止剤、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)等のビスフェノール系老化防止剤、2,5−tert−ブチルヒドロキノン等のポリフェノール系老化防止剤、カオリン、含水二酸化ケイ素、酸化亜鉛、アクリル酸デンプン1000などの充填剤、プロピレングリコール、ポリブテン、マクロゴール1500等の軟化剤、安息香酸、安息香酸ナトリウム、塩酸クロルヘキシジン、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸ブチル等の防腐剤、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄、カーボンブラック、カルミン、β−カロテン、銅クロロフィル、食用青色1号、食用黄色4号、食用赤色2号、カンゾウエキス等の着色剤、ウイキョウ油、d−カンフル、dl−カンフル、ハッカ油、d−ボルネオール、l−メントール等の清涼化剤、スペアミント油、チョウジ油、バニリン、ベルガモット油、ラベンダー油等の香料などが挙げられる。含有されるべき他の成分の種類および量は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0043】
粘着剤層のゲル分率は、好ましくは50重量%〜95重量%、より好ましくは60重量%〜85重量%である。ゲル分率がこのような範囲であれば、粘着剤層に十分な凝集力が付与され、貼付製剤の剥離時に、凝集破壊に起因する糊残り、糸引き、強い皮膚刺激等が発現するおそれがない。粘着剤層のゲル分率は、例えば、上記アクリル系共重合体および上記可塑剤の含有量を調整することにより、上記好ましいゲル分率を達成することができる。
【0044】
「ゲル分率」とは、粘着剤層を酢酸エチル等の有機溶媒に浸漬したときに得られる不溶分の重量の、粘着剤層の架橋に関与する成分の総重量に対する比率を意味する。ゲル分率は、粘着剤層を、酢酸エチル等の有機溶媒に常温(23℃)にて所定期間浸漬して得られる不溶分の重量により、次式を用いて求めることができる。
ゲル分率(重量%)=(W×100)/(W×A/B)
A:重合体及び架橋剤の重量
B:粘着剤層構成成分の総重量
:試料とした粘着剤層の重量
:試料とした粘着剤層を有機溶媒に浸漬した後の不溶分の重量
【0045】
粘着剤層は、紫外線照射、電子線照射等の放射線照射などによる物理的架橋処理が施されていてもよい。
【0046】
C.支持体
上記支持体としては、特に限定されない。支持体としては、粘着剤層に含有される成分(例えば、薬物等の有効成分、添加剤)が支持体を透過して背面から失われ、含有量の低下を起こすことのないもの、すなわち粘着剤層含有成分を透過しない材質で構成されるものが好ましい。
【0047】
本発明の貼付製剤において用いられ得る支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ナイロン等のポリアミド系樹脂;サラン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、サーリン(登録商標)等のオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂;エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のアクリル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン等のフッ化炭素樹脂;金属箔などの単独フィルム、およびこれらのラミネートフィルムなどが挙げられる。支持体の厚みは、好ましくは10μm〜500μmであり、さらに好ましくは10μm〜200μmである。
【0048】
上記支持体は、好ましくは、上記の材料からなる無孔シートと、多孔シートとのラミネートシートである。このような構成であれば、支持体と粘着剤層との間の接着性(投錨性)を向上させることができる。この場合、多孔シート側に粘着剤層を形成することが好ましい。上記多孔シートとしては、支持体と粘着剤層との間の投錨性を向上させるものであれば特に限定されず、例えば、紙、織布、不織布、機械的に穿孔処理したシートなどが挙げられ、特に紙、織布、不織布が好ましい。多孔シートの厚みは、好ましくは10μm〜500μmである。このような厚みであれば、投錨性が向上し、粘着剤層の柔軟性に優れる。また、多孔シートとして織布や不織布を用いる場合、当該多孔シートの目付量は、好ましくは5g/m〜30g/m、さらに好ましくは8g/m〜20g/mである。投錨性が向上するからである。なお、支持体が上記ラミネートシートである場合には、無孔シートの厚みは、好ましくは1μm〜25μmである。
【0049】
上記支持体のうち、特に好適な支持体としては、1.5μm〜6μm厚のポリエステルフィルム(好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルム)と、目付量8g/m〜20g/mのポリエステル(好ましくは、ポリエチレンテレフタレート)製不織布との積層フィルムである。
【0050】
D.貼付製剤
本発明の貼付製剤は、上記C項に記載の支持体の少なくとも一方の面に、上記A項およびB項に記載の粘着剤で粘着剤層が形成され、粘着剤層に薬物を含有させてなる。本発明の貼付製剤は、経皮吸収型製剤として提供されるものであり、マトリクス型貼付製剤、リザーバー型貼付製剤等として提供され、特に好ましくは、マトリクス型貼付製剤として提供される。
【0051】
本発明の貼付製剤において粘着剤層に含有させる薬物は、代表的には、経皮的に投与可能な薬物である。粘着剤層に含有させる薬物の種類は、目的に応じて適切に選択され得る。薬物の具体例としては、副腎皮質ステロイド剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗リウマチ剤、睡眠剤、抗精神病剤、抗うつ剤、気分安定剤、精神刺激剤、抗不安剤、抗てんかん剤、片頭痛治療剤、パーキンソン病治療剤、脳循環・代謝改善剤、抗認知症剤、自律神経作用剤、筋弛緩剤、降圧剤、利尿剤、血糖降下剤、高脂血症治療剤、痛風治療剤、全身麻酔剤、局所麻酔剤、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤、ビタミン剤、狭心症治療剤、血管拡張剤、抗不整脈剤、抗ヒスタミン剤、メディエーター遊離抑制剤、ロイコトリエン拮抗剤、女性ホルモン剤、甲状腺ホルモン剤、抗甲状腺剤、制吐剤、鎮暈剤、気管支拡張剤、鎮咳剤、去痰剤、禁煙補助剤などの種類の薬物であって、経皮投与可能な薬物が挙げられる。なかでも、本発明の貼付製剤においては、その粘着剤層に含まれる共重合体の特徴から、カルボキシル基を含有する粘着剤層中で放出性が極端に低下してしまうような薬物を好適に含有させることができる。
【0052】
皮膚透過性(放出性)の高い貼付製剤を得る観点から、本発明では、薬物として塩基性薬物を用いることが有利である。塩基性薬物とは、その分子中に塩基性基を有する薬物を意味する。粘着剤層に、カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系共重合体を含む本発明の貼付製剤では、塩基性薬物の塩基性基とカルボキシル基の反応により生じる、粘着剤層における塩基性薬物の移動阻害等を抑制することが可能となる。その結果、優れた薬物の放出性を達成し得る。かかる観点から、塩基性薬物としては、塩基性窒素原子を有する塩基性薬物が好ましく、第1級〜第3級アミノ基を有する薬物がより好ましく、第1級および/または第2級アミン基を有する薬物がさらに好ましい。なお、塩基性薬物に限らず、薬物として酸性薬物や中性薬物(ISDNのような)を用いることが可能であることはいうまでもない。
【0053】
本発明の貼付製剤における上記薬物の含有量は、薬物の種類や投与目的、患者の年齢、性別、症状等に応じて適宜設定することができる。薬物は、粘着剤層中に、代表的には0.01重量%〜40重量%、好ましくは0.1重量%〜30重量%程度含有される。選択した薬剤によっても異なるため一概には言えないが、一般的に含有量が0.01重量%未満である場合には、治療に有効な量の薬物の放出が期待できず、一方、40重量%を超えても治療効果に改善が見られない場合が多く、経済的にも不利である。
【0054】
本発明の貼付製剤の製造方法は特に限定されず、当分野で慣用されている手法を用いることができる。以下、本発明の貼付製剤の一実施態様であるマトリクス型貼付製剤を例に具体的に説明する。まず、溶媒に、上記アクリル系共重合体、架橋剤、可塑剤および薬物等を溶解または分散させて塗工液を調製する。この塗工液を、支持体の少なくとも一方の面に塗布し、乾燥して粘着剤層を形成する。さらに、以下に述べる剥離ライナーを圧着し、積層することもできる。また、塗工液を剥離ライナー上に塗布し、乾燥して剥離ライナーの表面に粘着剤層を形成させ、その後支持体を粘着剤層上に圧着して貼り合わせることによっても製造することができる。
【0055】
上記剥離ライナーとしては、グラシン紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、アルミフィルム、発泡ポリエチレンフィルム又は発泡ポリプロピレンフィルム等、もしくはこれらから選ばれたものの積層物、さらにこれらにシリコーン加工したものや、エンボス加工を施したものなどが挙げられる。該剥離ライナーの厚みは、好ましくは10μm〜200μmであり、さらに好ましくは25μm〜100μmである。
【0056】
上記剥離ライナーとしては、バリアー性、価格の点からポリエステル(特に、ポリエチレンテレフタレート)樹脂製剥離ライナーが好ましい。さらに、この場合、取り扱い性の点から、厚みは好ましくは25μm〜100μm程度である。
【0057】
上記塗工液の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用のコーターを用いて行うことができる。上記乾燥は、架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、加熱下で行うことが好ましい。乾燥温度は、例えば、支持体の種類に応じて変化し得る。乾燥温度は、例えば、約40℃〜約150℃である。
【0058】
また上記したような方法で貼付製剤を製造した後、例えば、架橋反応を完了させるため、粘着剤層と支持体の投錨性を向上させる目的で、エージングを行ってもよい。エージング温度は、代表的には室温以上、好ましくは25℃〜80℃であり、さらに好ましくは40℃〜70℃である。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における「部」および「%」は重量基準である。
【0060】
<実施例1>
還流冷却器、窒素ガス導入管、温度計、滴下漏斗および攪拌機を備えたセパラブルフラスコに、アクリル酸2−エチルヘキシル(以下、2−EHAとする)95部、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート(以下、AAEMとする)5部、および酢酸エチル150部を入れ、室温において窒素ガスバブリング(100mL/分)を行いながら1時間攪拌した。その後、内容物を加熱し、60℃に達した時点で、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部を加えた。内容物の温度を60℃に保つよう制御し、窒素ガス流中で6時間反応させた後、76℃で18時間さらに反応させた。上記方式の溶液重合により、アクリル系共重合体(2−EHA/AAEM=95/5)の溶液を得た。
【0061】
上記で得られたアクリル系共重合体95部(固形分)に、薬物A(プラミペキソール)5部およびアクリル系共重合体の固形分に対して0.5%の金属キレート化合物(アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、商品名:ALCH、川研ファインケミカル社製)を添加し、さらに、酢酸エチルを加えて粘度調整を行い、塗工液を調製した。この塗工液を、厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム製剥離ライナーの剥離面に、乾燥後の厚みが50μmとなるようにアプリケータで塗布し、100℃で3分間乾燥して、粘着剤層を形成した。支持体として、厚み2μmのPETフィルムと目付け量12g/mのポリエステル不織布との積層体を用いた。粘着剤層に、支持体の不織布面を圧着して貼り合せた後、アルミ包材で密封して70℃で24時間エージングし、貼付製剤を得た。
【0062】
<実施例2>
実施例1と同様にして得られたアクリル系共重合体75部(固形分)に、ミリスチン酸イソプロピル(以下、IPMとする)20部、薬物A(プラミペキソール)5部およびアクリル系共重合体の固形分に対して0.5%のALCHを添加し、さらに、酢酸エチルを加えて粘度調整を行って塗工液を調製したこと以外は実施例1と同様にして、貼付製剤を得た。
【0063】
<実施例3>
実施例1と同様にして、以下の処方のアクリル系共重合体を得た。
2−EHA:85部、AAEM:5部、HEAA(N−ヒドロキシエチルアクリルアミド)10部
【0064】
上記のアクリル系共重合体65部(固形分)に、IPM30部、薬物A(プラミペキソール)5部およびアクリル系共重合体の固形分に対して0.5%のALCHを添加し、さらに、酢酸エチルを加えて粘度調整を行って塗工液を調製したこと以外は実施例1と同様にして、貼付製剤を得た。
【0065】
<実施例4>
以下の処方のアクリル系共重合体を用いたこと以外は実施例3と同様にして貼付製剤を得た。
2−EHA:89部、AAEM:1部、HEAA:10部
【0066】
<実施例5>
以下の処方のアクリル系共重合体を用いたこと以外は実施例3と同様にして貼付製剤を得た。
2−EHA:70部、AAEM:5部、VP(N−ビニル−2−ピロリドン):25部
【0067】
<実施例6>
薬物A(プラミペキソール)のかわりに薬物B(オキシブチニン)を用いたこと以外は実施例3と同様にして貼付製剤を得た。
【0068】
<比較例1>
以下の処方のアクリル系共重合体を用いたこと以外は実施例1と同様にして貼付製剤を得た。
2−EHA:95部、AA(アクリル酸):5部
【0069】
<比較例2>
以下の処方のアクリル系共重合体を用いたこと以外は実施例2と同様にして貼付製剤を得た。
2−EHA:95部、AA(アクリル酸):5部
【0070】
<比較例3>
以下の処方のアクリル系共重合体を用いたこと以外は実施例3と同様にして貼付製剤を得た。
2−EHA:95部、AA(アクリル酸):5部
【0071】
<比較例4>
以下の処方のアクリル系共重合体を用いたこと以外は実施例6と同様にして貼付製剤を得た。
2−EHA:95部、AA(アクリル酸):5部
【0072】
<評価>
上記各実施例および比較例で得られた貼付製剤に対し、下記の評価を行った。
(1)薬物利用率
φ9mmの円形状に切断した貼付製剤を、ユカタンミニブタ摘出皮膚(φ20mmの円形状)に貼り付けて、これを全自動フロースルー拡散セル装置(バンガードインターナショナル社製)のドナーセルに装着し、レシバーセルにはPBS(−)(phosphate buffered saline、32℃)を適用した。所定時間毎にレシバー液を採取して、透過した薬物量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量した。薬物利用率は下記式から求められ、HPLCによる測定条件は以下のとおりである。
薬物利用率(%)=24時間累積透過量/製剤中薬物含量×100
(HPLCの条件)
(薬物A)
移動相:1%トリエチルアミン水溶液(pH7.0):メタノール(80:20)
カラム:TSK−gel ODS−80Ts QA 4.6mmID×150mm(TOSOH)
カラム温度:30℃
検出波長:262nm
(薬物B)
移動相:0.1%リン酸−50mM 酢酸アンモニウム水溶液:アセトニトリル(30:70)
カラム:TSK−gel ODS−80Ts QA 4.6mmID×150mm(TOSOH)
カラム温度:40℃
検出波長:220nm
(2)指タック
得られた貼付製剤から剥離ライナーを剥離し、膏体(粘着剤層)表面が上面となるようにして水平な台上に載置した。膏体に指を押し当て、タック力を評価した。評価値の詳細は以下のとおりであり、5名の評価者の平均を求めた。
1:非常に良好
2:良好
3:普通
4:やや弱い
(3)ゲル分率
貼付製剤を10cmに裁断して得られたサンプルの粘着剤層の重量(W)を測定した。次に、このサンプルを酢酸エチル100mLに24時間浸漬した後、酢酸エチルを交換した。この操作を3回繰り返し、溶剤可溶分を抽出した。その後、サンプルを取り出して乾燥させた後の粘着剤層の重量(W)を測定し、次式を用いてゲル分率を求めた。
ゲル分率(重量%)=(W×100)/(W×A/B)
A:重合体及び架橋剤の重量
B:粘着剤層構成成分の総重量(重合体、架橋剤、薬物および可塑剤の総重量)
:試料とした粘着剤層の重量
:試料とした粘着剤層を有機溶媒に浸漬した後の不溶分の重量
【0073】
薬物利用率の比および指タックの評価結果を表1に示す。薬物利用率の比は、IPMの含有量および薬物の種類を同じとする比較例との比を示す。具体的には、実施例1については比較例1との比を示し、実施例2については比較例2との比を示し、実施例3〜5については比較例3との比を示し、実施例6については比較例4との比を示す。
【0074】
【表1】

【0075】
表1から明らかなように、本発明の実施例の貼付製剤は、比較例に比べて、薬物利用率が格段に高い。第3級アミン基を有する薬物を用いた実施例6と比較すると、第1級および第2級アミン基を有する薬物を用いた実施例1から5は、顕著に優れている。実施例3と実施例5とを比較すると、ビニル系モノマーとしてHEAAを用いた実施例3の方が優れている。
なお、いずれの実施例、比較例においても、ゲル分率は70重量%以上で、十分な凝集力を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の貼付製剤は、種々の薬物の経皮投与に好適に利用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と該支持体の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを備え、
該粘着剤層が、(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(b)ジケトン基含有モノマーとを含有するモノマー混合物を共重合してなるアクリル系共重合体と、薬物とを含み、
該アクリル系共重合体が架橋剤により架橋されている、
貼付製剤。
【請求項2】
前記粘着剤層が、7.5重量%以下の前記ジケトン基含有モノマー(b)を含有するモノマー混合物を共重合してなるアクリル系共重合体を含む、請求項1に記載の貼付製剤。
【請求項3】
前記モノマー混合物が、ビニル系モノマーを含有する、請求項1または2に記載の貼付製剤。
【請求項4】
前記モノマー混合物が、(c)水酸基を含有するビニル系モノマーを含有する、請求項1から3のいずれかに記載の貼付製剤。
【請求項5】
前記粘着剤層が、前記水酸基含有ビニル系モノマー(c)を7.5重量%〜20重量%含有するモノマー混合物を共重合してなるアクリル系共重合体を含む、請求項4に記載の貼付製剤。
【請求項6】
前記粘着剤層が、前記アクリル系共重合体と相溶性を有する可塑剤をさらに含み、該アクリル系共重合体と該可塑剤との重量比が1:0.1〜1:5である、請求項1から5のいずれかに記載の貼付製剤。
【請求項7】
前記薬物が、塩基性薬物である、請求項1から6のいずれかに記載の貼付製剤。
【請求項8】
前記塩基性薬物が、第1級および/または第2級アミン基を有する薬物である、請求項7に記載の貼付製剤。

【公開番号】特開2012−219044(P2012−219044A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84712(P2011−84712)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】