説明

貼付部材

【課題】 十分な剥離強度を持ち、かつ短時間で容易に剥離できる貼付部材を提供する。
【解決手段】 粘着層2のうち板金4に粘着する接着面5の一部に補強部材3が設けられ、貼付部材20が板金4に接触する領域における接着面5と補強部材3との占める割合が、板金4に対して要求される粘着強度に応じて調整されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、緩衝材、制振材、吸音材などの用途にゴム、発泡材、不織布等が用いられている。
【0003】
これらの材料は粘着層を付加され、板金、樹脂材料等に貼付け使用される。しかし、これらは廃棄の際、環境負荷、リサイクル性を考慮して容易に被着体との分別ができる設計が求められている。従来では、粘着層の接着力を調整することで対策がとられていたが、接着力と剥離性との相反する関係があり、その適用範囲は狭かった。
【0004】
強接着かつ再剥離可能な粘着テープとしては、特許文献1などで、加熱発泡処理により接着強度を低下させ被着体より容易に剥離できるようにしたものがある。
【0005】
また、特許文献2では、粘着層の被着体と対向する側に補強のためのフィルム層を有し、破れを防ぐ手法がとられている。しかし、粘着層とフィルム層間で剥離が起こり、粘着層が被着体に残る問題は解決されていない。
【特許文献1】特開平7−61458号公報
【特許文献2】特開平10−60396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような特許文献1などで開示されている手法では、剥離のために加熱処理を要するため、作業効率が低下する問題があった。
【0007】
また、特許文献2で開示されている手法では、粘着層とフィルム層間で剥離が起こり、粘着層が被着体に残る問題は解決されていない。
【0008】
このように、接着強度を維持しつつ、任意の時に容易に剥離できる貼付部材には、作業効率の低下や貼付部材の一部が被着体に残ってしまう等の問題が残っていた。
【0009】
本発明は上記したような事情に鑑みてなされたものであり、十分な剥離強度を持ち、かつ短時間で容易に剥離できる貼付部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明にあっては、
基層と、
前記基層の少なくとも片側に設けられた粘着層と、
を備え、前記粘着層が被着体に粘着することにより該被着体に貼り付けられる貼付部材において、
前記粘着層のうち被着体に粘着する粘着面の一部に補強部材が設けられ、
貼付部材が被着体に接触する領域における前記粘着面と前記補強部材との占める割合が、要求される粘着強度に応じて調整されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、十分な剥離強度を持ち、かつ短時間で容易に剥離できる貼付部材を提
供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る貼付部材は、ゴム、発泡材、不織布等からなる基層の片側もしくは両側に粘着層を有し、板金、樹脂部材等に貼付けられ、緩衝材、制振材、吸音材などに好適に用いられるものである。
【0013】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例1に係る貼付部材20の概略断面図である。図2は、本発明の実施例1に係る貼付部材20の被着体側を示した図である。図3は、本発明の実施例1に係る貼付部材20の使用例を示したものである。
【0015】
貼付部材20は、図1に示すように、被着体としての板金4に接着され保持されるものである。そして、図3に示すように、板金4に接着した貼付部材20に対して板金10を載置させる(接触させる、板金4と板金10との間で貼付部材20を圧縮当接させる)ことにより、板金10が振動した場合に、振動する板金10に対して制振効果を発揮させて、板金10の振動を減衰させることができるものである。
【0016】
貼付部材20は、制振効果をもつウレタンフォームからなる基層1に感圧性接着剤である粘着層2を積層し、さらにポリエチレンテレフタートシート(以下、PETシートという)からなる補強部材3を有する。
【0017】
補強部材3は孔6を有しており、孔6から粘着層2が剥き出しになっている。貼付部材20は基層側から加圧することにより、補強部材3の孔6から覗く粘着層2と板金4との間に接着面(粘着面)5が形成され接着される。
【0018】
ここで想定する基層1の厚みは2〜10mmであり、補強部材3の厚みを例えば、20〜100μm程度とすれば、基層1および粘着層2の変形により十分な接着力を得られる。
【0019】
剥離強度は粘着層の接着(粘着)強度と接着(粘着)面積に支配される。接着面積は補強部材3の孔6の大きさ、数により任意に調整できるため、剥離強度の調整が容易である。剥離強度を保持しつつ、貼付部材20を取り除く際の基層1と粘着層2との剥離、および基層1、粘着層2の破れを防止するには、小型の接着面5を多数配置した方が好ましい。
【0020】
このとき、孔6は矩形に限らず、円、楕円、三角形等でもよい。また、せん断強度は、補強部材3の厚み、幅、材料により調整できるため、これらを調整することにより、貼付部材20の破れを防ぐせん断強度を有する補強部材3を得ることができる。
【0021】
本実施例によれば、補強部材3の孔6の面積および数を調整することで、剥離強度、せん断強度を任意に調整することができ、破れや貼付部材20内で剥離が発生することを防止することができる。また、貼付部材20の最下層(最外層、貼付部材20の接着面の一部)に補強部材3を設けることにより、粘着層2の糊残りが発生しにくく、貼付部材20
をすべて取り除くことができる。
【0022】
したがって、剥離強度を保ちつつ貼付部材を被着体に残すことなく、短時間で容易に剥離することができ、貼付部材のリサイクルを可能とする(リサイクル性を向上できる)。
【実施例2】
【0023】
図4,5は、本発明の実施例2に係る貼付部材の被着体側を示した図である。なお、実施例1と同様の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0024】
貼付部材20の端縁(粘着層2の端縁)が、角状に形成された角部を含む場合には、該角部がめくれてしまう(まくれてしまう)おそれがある。
【0025】
そこで、本実施例においては、実施例1と同様の構成に加えて、さらに、角部のめくれ返しを防止するため、粘着層2の角部2aは接着面5としている。
【0026】
さらに、本実施例においては、補強部材3の一部を粘着層2より外部に突出させることにより、把持部としてのつかみしろ7を設けている(貼付部材20が被着体に粘着した場合、つかみしろ7は、粘着層2と被着体との間に存在しない状態となる)。
【0027】
粘着層2の角部2aが接着面5で構成されることにより、貼付部材20を剥がす際、貼付部材20の角がつかみ難くなるが、つかみしろ7が設けられることにより、貼付部材20を取り除く際の作業性の低下を防止することができる。
【0028】
また、図5に示すように、補強部材3に孔を設けず、外形の一部を粘着層2より小さくし、その縁周に接着面5を設けてもよい。
【0029】
本実施例によれば、補強部材3の粘着層2下の面積を調整することで、剥離強度を任意に調整することができ、破れや貼付部材内での剥離が発生することなく、貼付部材20をすべて取り除くことができる。また、貼付部材20を取り除く際の作業性を低下させることなく端部のめくれ返しを防止できる。
【0030】
したがって、剥離強度を保ちつつ貼付部材を被着体に残すことなく、短時間で容易に剥離することができ、リサイクル性を向上できる。
【0031】
なお、つかみしろ7は、角部2aが接着面5であるかどうかにかかわらず設けられるとよい。
【実施例3】
【0032】
図6は、本発明の実施例3に係る貼付部材の使用例を示した図である。なお、実施例1,2と同様の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0033】
振動する板金11に対して制振効果をもつ貼付部材21を板金4との間で圧縮当接させ、振動を減衰させる。貼付部材21は両側の板金4,11に接着され使用される。
【0034】
貼付部材21は、制振効果をもつウレタンフォームからなる基層1の両側に感圧性接着剤である粘着層2a,2bを積層し、さらにその外層にPETシートからなる補強部材3a,3bを有する。
【0035】
補強部材3a,3bは孔6a,6bを有しており、そこから粘着層が剥き出しになっている。
【0036】
貼付部材21はその両側を挟む板金4,11間で加圧されることにより、補強部材3a,3bの孔6a,6bから覗く粘着層2a,2bと板金11,4との間に接着面5a,5bが形成され接着される。
【0037】
ここで想定する基層の厚みは2〜10mmであり、補強部材3a,3bの厚みを例えば、20〜100μm程度とすれば、基層1および粘着層2a,2bの変形により十分な接着力を得られる。
【0038】
剥離強度は粘着層の接着強度と接着面積に支配される。接着面積は補強部材3a,3bの孔6a,6bの大きさ、数により任意に調整できるため、剥離強度の調整が容易である。剥離強度を保持しつつ、貼付部材21を取り除く際の基層1と粘着層2a,2bとの剥離、および基層1、粘着層2a,2bの破れを防止するには、小型の接着面を多数配置した方が好ましい。
【0039】
このとき、孔6a,6bは矩形に限らず、円、楕円、三角形等でもよい。また、せん断強度は、補強部材3a,3bの厚み、幅、材料により調整できるため、貼付部材21の破れを防ぐせん断強度を得ることができる。
【0040】
貼付部材21を剥がすなどで被着体である板金11を取り外すとき、板金4側に貼付部材が残った方が作業性がよい場合がある。この場合、板金4側の補強部材3bの孔6bを大きくする、または数を増やすなどして剥離強度をより高く調整することができる。このとき、作業性向上のため板金4側の補強部材3bに、実施例2で説明したような、つかみしろを設けてもよい。
【0041】
本実施例によれば、貼付部材21が両側の板金4,11に接着され使用される場合において、2つの板金4,11を取り外すとき、上述した実施例1で説明した効果に加えて、所望の板金に貼付部材21を残すことができるので、作業性、利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施例1に係る貼付部材の概略断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る貼付部材の被着体側を示した図である。
【図3】本発明の実施例1に係る貼付部材の使用例を示した図である。
【図4】本発明の実施例2に係る貼付部材の被着体側を示した図である。
【図5】本発明の実施例2に係る貼付部材の被着体側を示した図である。
【図6】本発明の実施例3に係る貼付部材の使用例を示した図である。
【符号の説明】
【0043】
1 基層
2 粘着層
3 補強部材
4 板金
5 接着面
6 孔
7 つかみしろ
10 板金
20 貼付部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基層と、
前記基層の少なくとも片側に設けられた粘着層と、
を備え、前記粘着層が被着体に粘着することにより該被着体に貼り付けられる貼付部材において、
前記粘着層のうち被着体に粘着する粘着面の一部に補強部材が設けられ、
貼付部材が被着体に接触する領域における前記粘着面と前記補強部材との占める割合が、被着体に対して要求される粘着強度に応じて調整されていることを特徴とする貼付部材。
【請求項2】
前記補強部材には、少なくとも1つの孔が設けられ、
前記粘着面は、前記粘着層から前記孔を介して被着体に粘着することを特徴とする請求項1に記載の貼付部材。
【請求項3】
被着体に対して要求される粘着強度に応じて、前記補強部材の孔の面積及び孔の数が調整されていることを特徴とする請求項2に記載の貼付部材。
【請求項4】
前記補強部材は、前記粘着層より突出して設けられ、被着体に貼り付けられた状態で使用者により把持可能とされる把持部を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の貼付部材。
【請求項5】
被着体に貼り付けられた前記粘着層の端縁が、角状に形成された角部を含む場合、該角部は前記粘着面で構成されていることを特徴とする請求項4に記載の貼付部材。
【請求項6】
前記粘着層は、前記基層の両側に設けられ、
前記基層の一方側と他方側とでは、前記粘着面と前記補強部材との占める割合が異なることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の貼付部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−305861(P2006−305861A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131193(P2005−131193)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】