説明

貼着式ブラジャー

【課題】カップ内部の蒸れを防止し、乳首当接部分の柔軟性と清潔さを確保し、バストを豊かに美しく見せる貼着式ブラジャーを提供する。
【解決手段】貼着式ブラジャー1は、一対の独立した左用カップ2A、右用カップ2Bからなり、それぞれのカップ2A,2Bは柔軟性を有すると共に内側全面に貼着材が配設されたカップ本体部3A,3Bと、カップ本体部3A,3Bよりも柔軟性が高く吸汗性を有する部材にてカップ本体部3A,3Bよりも正面視大きさが小さく形成されてカップ本体部3A,3Bの内面略中央部に着脱自在に配設されるバストトップ保護部材4A,4Bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、女性の乳房に貼着させて使用されるブラジャーに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラジャーには、女性の乳房の形状を整え、バストを豊かに美しく見せる機能が求められる。一方、近年は女性の服装の多様化等に伴い、ベルトや肩紐を有さず、女性の乳房に貼着させて着用するブラジャーが普及している。このようなものとして、従来、図6に示す、2個の左右を分離するカップ101で構成され、二つの分離するカップの上端側に一つの延長するカップ素材102を設け、その延長するカップ素材102は突出な形状を呈し、カップ101及び延長するカップ素材102の内面の局部又は全部の範囲に粘着層103を塗布してあり、使用するとき、上端側の延長するカップ素材102を引いて乳房の上側部分に粘着することにより、乳房をアップ及び集中可能である貼着式ブラジャー100が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3118710号(段落〔0006〕,〔図1〕,〔図2〕,〔図4〕)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の発明においては、カップ101の内面の粘着層が塗布されている部分は通気が遮断されてしまう。そのため、特許文献1においてカップ101の内面の全部の範囲に粘着層103を塗布した場合には、装着者の乳房のカップを貼着させた部分全体が汗で蒸れてしまい、装着者に不快感を与えるという問題がある。一方、特許文献1においてカップ101を紙等通気性のある部材で形成すると共にカップの内面の一部、例えば装着者の乳首が当接する部分のみに粘着層を塗布しないことで通気性を確保することも考えられるが、カップ101の剛性が低下してバストの形状を整えることが困難になりうるという問題がある。また、乳首周辺は特に肌のデリケートな部分であるため、乳首が当接する部分には柔軟性や清潔さが求められるが、特許文献1に記載の発明においては、カップ101の内面の乳首が当接する部分のみを柔軟に形成することが難しく、また繰り返し使用する場合に当該箇所を特に清潔に保つことは難しいという問題がある。
【0005】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、カップ内部の蒸れを防止すると共に乳首が当接する部分の柔軟性と清潔さを確保して良好な使い心地が得られ、かつ、バストを豊かに美しく見せる機能を有する貼着式ブラジャーを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、一対の独立したカップからなる貼着式ブラジャーであって、それぞれの前記カップは、柔軟性を有すると共に内側全面に貼着性を有するカップ本体部と、該カップ本体部よりも柔軟性が高く吸汗性を有する部材にて前記カップ本体部よりも正面視大きさが小さく形成され、該カップ本体部の内面略中央部に着脱自在に配設されるバストトップ保護部材とを有することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記カップ本体部には、前記バストトップ保護部材の配設位置に少なくとも一の通気穴が貫通形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記カップ本体部は装着者の乳房略全体に貼着可能な形状及び大きさに形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一つに記載の構成に加え、前記カップ本体部は、正面視の状態で外周部が略楕円形を呈し、該略楕円形の長軸が装着者の乳房の外側下方と内側上方とを結ぶ線に沿って配設されるように形成され、前記装着者の乳房の外側下方に貼着される部分の前記外周部は最も小さな円弧曲率に形成されると共に前記装着者の前記乳房の内側上方に貼着される部分の前記外周部は最も大きな円弧曲率に形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一つに記載の構成に加え、前記カップ本体部はシリコンを用いて形成され、前記バストトップ保護部材は発泡ポリウレタンと吸汗性を有するポリエステルとを用いて形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、それぞれのカップは内側全面が貼着性を有するカップ本体部と、カップ本体部よりも柔軟性が高く吸汗性を有する部材にてカップ本体部よりも正面視大きさが小さく形成され、該カップ本体部の内面略中央部に配設されるバストトップ保護部材とを有することにより、装着者の乳首に柔軟性の高いバストトップ保護部材を当接させて、乳首への貼着材の張り付きを防ぎ肌の保護を図ると共に、バストトップ保護部材よりも剛性の高いカップ本体部を装着者の乳房に貼着させてバストの形状を整えることができる。しかも、バストトップ保護部材は吸汗性を有することにより、カップの内部に発汗された汗をバストトップ保護部材で吸収できる。更に、バストトップ保護部材はカップ本体部に着脱自在に形成されていることにより、バストトップ保護部材はカップ本体部と別に洗浄できて、清潔さを維持させた状態で繰り返し使用できる。これにより、カップ内部の蒸れを防止すると共に乳首が当接する部分の柔軟性と清潔さを確保して良好な使い心地が得られ、かつ、バストを豊かに美しく見せることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、カップ本体部には、バストトップ保護部材の配設位置に少なくとも一の通気穴が貫通形成されていることにより、カップ本体部を装着者の乳房に貼着した状態でカップ本体部の内部の通気性を良好に保つことができる。これにより、皮膚がデリケートな乳首及び乳首周辺の蒸れを防止して良好な使い心地を得ることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、カップ本体部は装着者の乳房略全体に貼着可能な形状及び大きさに形成されていることにより、貼着材の貼着面積を十分に確保して使用時にカップ本体部が乳房からはがれ落ちる事態を防止すると共に、装着者の乳房全体をカップ本体部が包み込んで装着者に安定感と安心感とを与えることができ、かつ乳房略全体の形状をカップ本体部で整えることができる。これにより、一層良好な使い心地が得られ、かつバストを豊かに美しく見せることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、カップ本体部は正面視の状態で外周部が略楕円形を呈し、略楕円形の長軸が装着者の乳房の外側下方と内側上方とを結ぶ線に沿って配設されるように形成され、装着者の乳房の外側下方に貼着される部分の外周部は、略楕円形に仮想的に設けた長軸の一端側に位置し、かつ長軸の他端側に位置する外周部よりも円弧曲率が小さく形成されていることにより、カップ本体部の外周部が小さな円弧曲率に形成された部分を装着者の乳房の外側下方に貼着した状態で、カップ本体部を略楕円形の長軸方向に沿って内側上方に引き上げながら乳房に貼着させることで、両方の乳房を中央上方に寄せて上げて形状を整えると共に、乳房全体に下から支える安定感を与えることができる。これにより、一層良好な使い心地が得られ、かつバストを豊かに美しく見せることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、カップ本体部はシリコンを用いて形成されていることにより、弾力性と高い剛性を持たせることができる。また、バストトップ保護部材は発泡ポリウレタンと吸汗性を有するポリエステルとを用いて形成されていることにより、高い柔軟性と高い吸汗性とを持たせることができる。これにより、カップ内部の蒸れを防止すると共に乳首が当接する部分の柔軟性と清潔さを確保して良好な使い心地が得られ、かつ、バストを豊かに美しく見せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この実施の形態の貼着式ブラジャーの、カップ本体部とバストトップ保護部材とを分離させた状態の正面図である。
【図2】同上貼着式ブラジャーのカップ本体部の側面図、及び部分断面図である。
【図3】同上貼着式ブラジャーのバストトップ保護部材の側面図、及び部分断面図である。
【図4】同上貼着式ブラジャーの装着途中の状態を示すイメージ図である。
【図5】同上貼着式ブラジャーの装着が完了した状態を示すイメージ図である。
【図6】従来の貼着式ブラジャーの一部を切り欠いた状態を含む正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の一の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1に示す通り、この実施の形態の貼着式ブラジャー1は、一対の独立した「カップ」としての左用カップ2Aと右用カップ2Bとから成る。
【0019】
左用カップ2Aはカップ本体部3Aとバストトップ保護部材4Aとから成り、同様に、右用カップ2Bはカップ本体部3Bとバストトップ保護部材4Bとから成る。左用カップ2Aのカップ本体部3Aとバストトップ保護部材4Aと、右用カップ2Bのカップ本体部3Bとバストトップ保護部材4Bとは、それぞれ着脱自在に形成されている。
【0020】
図1に示す通り、左用カップ2Aのカップ本体部3Aと右用カップ2Bのカップ本体部3Bとは、正面視において左右対称に形成されている。図2の拡大断面図に示す通り、カップ本体部3A,3Bは、シリコン製の芯材5の周囲にポリウレタン製の弾性部材6が被覆されており、更に内側の弾性部材6の内側全面にはシリコン製の貼着材7が配設されている。芯材5は装着者の乳房の形状を整えて保持できる程度の高い剛性と伸縮性とを有し、弾性部材6は皮膚に接触した際に痛みや違和感を与えない程度の高い弾性と柔軟性とを有する。貼着材7はカップ本体部3A,3Bを乳房の皮膚に繰り返し貼着できる程度の粘着性を有する。そして、カップ本体部3A,3Bは、全体としてバストトップ保護部材4A,4Bよりも高い剛性と伸縮性とを有するように形成されている。
【0021】
この実施の形態においては、芯材5を厚さ1〜2mm程度に、弾性部材6の厚さを30μm程度に形成する。ただし、芯材5及び弾性部材6に上記の機能を奏させることのできる厚さであればどのような厚さに形成してもよい。
【0022】
なお、芯材5、弾性部材6、貼着材7は、上記機能を奏するものであればどのような材質であってもよい。例えば、芯材5、弾性部材6、貼着材7を全てシリコンによって形成することや、芯材5のみ、あるいは芯材5、弾性部材6、貼着材7のうち少なくとも何れか一つをポリオレフィンによって形成することや、芯材5をゲル状のウレタンやパラフィンによって形成すること等が考えられる。
【0023】
図1に示す通り、カップ本体部3A,3Bは、乳房略全体に貼着可能な形状である、正面視の状態で外周部が略楕円形を呈する形状に形成されている。図1に示す通り、カップ本体部3A,3Bの外周部を楕円形とした場合にそれぞれ仮想的に引くことができる長軸8及び短軸9で4分割したとき、第一象限10、第二象限11、第三象限12、第四象限13の外周部の形状が全て異なる形状となるように形成されている。そして、装着者の乳房の外側下方に貼着される部分である、長軸8の一端14側に位置する、第三象限12の一端14近傍の外周部の円弧曲率R1は、長軸8の他端15側に位置する、第一象限10の他端15近傍の外周部の円弧曲率R2よりも小さく形成されている。
【0024】
また、カップ本体部3A,3Bは装着者の乳房略全体に貼着可能な大きさに形成されている。この実施の形態においては、長軸8の長さが12〜15cm程度に、短軸9の長さが8〜10cm程度に形成されている。但し、上記目的を達成しうる大きさであればどのような大きさであってもよい。
【0025】
更に、カップ本体部3A,3Bの略中央部の、内面にバストトップ保護部材4A,4Bが配設される位置(後述)には、一の通気穴16が貫通形成されている。この実施の形態において、通気穴16の直径は約1mm程度に形成するが、カップ本体部3A,3Bを装着者の乳房に貼着させた際にカップ本体部3A,3Bの内部の通気を良好に保てる大きさであればどのような大きさに形成されていてもよい。また、通気穴16は一つに限らず、それぞれのカップ本体部3A,3Bにそれぞれ複数形成されていてもよい。更に、カップ本体部3A,3Bの内部の通気を良好に保てる位置であるならば、カップ本体部3A,3Bの、内面にバストトップ保護部材4A,4Bが配設されない位置に通気穴が形成されていてもよい。
【0026】
図1に示す通り、バストトップ保護部材4A,4Bは、カップ本体部3A,3Bよりも正面視の状態での大きさが小さく形成されている。また、図3の拡大断面図に示す通り、バストトップ保護部材4A,4Bは、発泡ポリエステル製の弾性材17の外側全体にポリエステル製の吸汗部材18を熱加工にて固着させて形成されている。弾性材17は、装着者の乳首に当接した箇所が弾性変形する程度に高い弾性を有する。吸汗部材18は高い吸汗性を有する丸編み天竺にて編まれている。そして、バストトップ保護部材4A,4Bは、全体としてカップ本体部3A,3Bよりも高い柔軟性と高い吸汗性とを有するように形成されている。後述する通り、バストトップ保護部材4A,4Bは、カップ本体部3A,3Bの内面略中央部に着脱自在に配設される。
【0027】
但し、弾性材17は上記機能を奏するものであればどのような材質であってもよい。具体的には、例えば不織布、中綿等によって弾性体17を形成することが考えられる。また、吸汗部材18は、上記機能を奏するものであればどのような織り方や編み方であってもよいし、どのような材質であってもよい。具体的には、例えば平織り、斜文織り、朱子織り等の織り方や、丸編みメリヤス、両面メリヤス編み、経編み等の編み方で吸汗部材18を形成してもよいし、不織布等の材質によって吸汗部材18を形成してもよい。
【0028】
図1に示す通り、バストトップ保護部材4A,4Bは、正面視において略楕円形に形成されており、また、装着者の乳首及び乳首周辺部分略全体に当接される形状及び大きさに形成されている。この実施の形態においては、バストトップ保護部材4A,4Bは、図1に示す、仮想長軸19の長さが約5〜7cm程度、仮想短軸20の長さが約4〜6cm程度の正面視略楕円形に形成されている。なお、装着者の乳首及び乳首周辺に当接し保護する機能を奏することができればどのような大きさに形成されていてもよい。また、正面視形状は略楕円形以外の形状、例えば星形、ハート形、三日月形などとし、美観を高めることもできる。
【0029】
また、図3に示す通り、バストトップ保護部材4A,4Bは、外側(即ち使用時にカップ本体部3A,3Bに当接する側、図3における上側)は略ドーム型に形成されており、内側(即ち使用時に装着者の乳首及び乳首周辺部が当接する側、図3における下側)は略平面形状になっている。これにより、装着者に良好なフィット感を与え、貼着式ブラジャー1の使用時に装着者が乳首や乳首周辺に違和感を覚える事態を防止できる。なお、バストトップ保護部材4A,4Bの内側の略中央部の、乳首が当接する部分を凹状に陥没形成させて、装着者の乳首のフィット感を良好にすることもできる。この凹状に陥没形成させた部分は、背面視において略星形や略六芒星形や略ハート形等となる形状に形成し、デザイン性を向上させることもできる。
【0030】
更に、図2及び図3に示す通り、バストトップ保護部材4A,4Bの外側は、側面視における円弧曲率R3が、カップ本体部3A,3Bの内側(即ち装着者の乳房及びバストトップ保護部材4A,4Bに当接する側)の側面視における円弧曲率R4よりも小さくなるように形成されている。このようにすることで、繰り返し使用した場合におけるカップ本体部3A,3Bとバストトップ保護部材4A,4Bとの良好なフィット感を維持することができる。即ち、カップ本体部3A,3Bは繰り返し使用することで素材が伸びてゆき、内側が次第に拡開してゆく(即ち、側面視における円弧曲率R4が次第に小さくなる)傾向にあるが、バストトップ保護部材4A,4Bの外側の側面視における円弧曲率R3が円弧曲率R4よりも小さい(図1参照)ので、カップ本体部3A,3Bの素材が多少伸びたとしても、使用時におけるカップ本体部3A,3Bの内側とバストトップ保護部材4A,4Bの外側とは引き続き良好な密着具合が維持されることになる。
【0031】
次に、この実施の形態の貼着式ブラジャー1の使用手順を説明する。
【0032】
まず、装着者は、左用カップ2A(右用カップ2Bでもよいが、ここでは便宜的に左用カップ2Aに基づいて説明する。)のカップ本体部3Aの内側略中央部に、バストトップ保護部材4Aの外側を対向させて配設する。
【0033】
次に、図4に示す通り、装着者は、カップ本体部3Aの第三象限12の一端14近傍の外周部周辺の貼着材7によって左側の乳房の外側下方に貼着させ、さらに乳首及び乳首周辺にバストトップ保護部材4Aを当接させ、カップ本体部3Aの内面略中央部にバストトップ保護部材4Aが当接するようにカップ本体部3Aを貼着させる。これにより、図4に示す通り、カップ本体部3Aの略楕円形の長軸8が装着者の乳房の外側下方と内側上方とを結ぶ線に沿って配設される。
【0034】
この状態で、カップ本体部3Aの他端15付近を把持して内側上方、即ち図4に示す矢印A方向に引き上げる。このとき、長軸8の一端14側である円弧曲率R1が小さい側が乳房の外側下方略全体に貼着された状態となるので、乳房略全体をカップ本体部3Aに包み込んだ状態で内側上方に引き上げられることが可能になる。しかも、カップ本体部3Aが引き上げられる方向がカップ本体部3Aの長軸8に沿う方向と略一致するので、装着者はカップ本体部3Aの端部を把持して引き上げる工程を容易に行うことができる。
【0035】
カップ本体部3Aが内側上方に引き上げられた状態で、カップ本体部3A略全体を貼着材7によって乳房に貼着させると、乳房全体が内側上方に引き上げられ、バストの高さ方向大きさが大きくなった状態で乳房の形状を固定できる。
【0036】
そして、右用カップ2Bも、左用カップ2Aの場合と同様の手順で装着者の右側の乳房に貼着させる。これにより、図4に示すように、両方のバストトップ部分の仮想点S、仮想点Tと鎖骨の中心を結んだ仮想点Uとがいびつな三角形を形成している場合であっても、仮想点S,Tが内側上方に引き上げられた結果、図5に示すように、仮想点S,T,Uが正三角形を形成する理想的なバスト形状(いわゆるゴールデントライアングル)を容易に形成することができる。即ち、見かけ上のバストアップを図りつつ、バストの形状を美しく整えることができる。
【0037】
この状態で貼着式ブラジャー1を使用する際、装着者の乳房のカップ本体部3A,3Bが貼着された部分に汗をかいたとしても、バストトップ保護部材4A,4Bが汗を吸収し、更に通気穴16によってカップ本体部3A,3Bの内部と外気との通気が行われるので、装着者は乳房に蒸れによる違和感を感ずることなく良好な使用状態を維持することができる。
【0038】
一方、使用が終わった後は、装着者は貼着式ブラジャー1を乳房から剥離させ、カップ本体部3A,3Bとバストトップ保護部材4A,4Bとは分離させてそれぞれ洗浄、乾燥させる。このとき、汚れ方や吸汗の度合いにより、カップ本体部3A,3Bとバストトップ保護部材4A,4Bとの洗浄の仕方を変えることができる。そして、乾燥が完了した後、貼着式ブラジャー1は再度使用することができる。
【0039】
以上、この実施の形態においては、左用カップ2A、右用カップ2Bは、内側全面に貼着性を有する貼着材7が塗布されたカップ本体部3A,3Bと、カップ本体部3A,3Bよりも正面視大きさが小さく形成され、カップ本体部3A,3Bの内面略中央部に配設されるバストトップ保護部材4A,4Bとを有することにより、装着者の乳首に柔軟性の高いバストトップ保護部材4A,4Bを当接させて、乳首への貼着材の張り付きを防ぎ肌の保護を図ると共に、バストトップ保護部材4A,4Bよりも剛性の高いカップ本体部3A,3Bを装着者の乳房に貼着させてバストの形状を整えることができる。しかも、バストトップ保護部材4A,4Bは吸汗性を有することにより、左用カップ2A、右用カップ2Bの内部に発汗された汗をバストトップ保護部材4A,4Bで吸収できる。更に、バストトップ保護部材4A,4Bはカップ本体部3A,3Bに着脱自在に形成されていることにより、バストトップ保護部材4A,4Bはカップ本体部3A,3Bと別に洗浄できて、清潔さを維持させた状態で繰り返し使用できる。これにより、左用カップ2A、右用カップ2Bの皮膚がデリケートな乳首及び乳首周辺の蒸れを防止を防止すると共に乳首が当接する部分の柔軟性と清潔さを確保して良好な使い心地が得られ、かつ、バストを豊かに美しく見せることができる。
【0040】
この実施の形態においては、カップ本体部3A,3Bには、バストトップ保護部材3A,3Bの配設位置に少なくとも一の通気穴16が貫通形成されていることにより、カップ本体部3A,3Bを装着者の乳房に貼着した状態でカップ本体部3A,3Bの内部の通気性を良好に保つことができる。これにより、左用カップ2A、右用カップ2Bの内部の蒸れを防止して良好な使い心地を得ることができる。
【0041】
この実施の形態においては、カップ本体部3A,3Bは装着者の乳房略全体に貼着可能な形状及び大きさに形成されていることにより、貼着材7の貼着面積を十分に確保して使用時にカップ本体部が乳房からはがれ落ちる事態を防止すると共に、装着者の乳房全体をカップ本体部3A,3Bが包み込んで装着者に安定感と安心感とを与えることができ、かつ乳房略全体の形状をカップ本体部3A,3Bで整えることができる。これにより、良好な使い心地が得られ、かつバストを一層豊かに美しく見せることができる。
【0042】
この実施の形態においては、カップ本体部3A,3Bは正面視の状態で外周部が略楕円形を呈し、略楕円形の長軸8が装着者の乳房の外側下方と内側上方とを結ぶ線に沿って配設されるように形成され、装着者の乳房の外側下方に貼着される部分の外周部は、略楕円形に仮想的に設けた長軸8の一端14側に位置し、かつ長軸の他端15側に位置する外周部よりも円弧曲率R1が小さく形成されていることにより、カップ本体部3A,3Bの外周部が最も小さな円弧曲率に形成された部分を装着者の乳房の外側下方に貼着した状態で、カップ本体部3A,3Bの外周部が最も大きな円弧曲率に形成された部分を内側上方に引き上げながら乳房に貼着させることで、両方の乳房を中央上方に寄せて上げて形状を整えると共に、乳房全体に下から支える安定感を与えることができる。これにより、良好な使い心地が得られ、かつバストを豊かに美しく見せることができる。
【0043】
この実施の形態においては、カップ本体部3A,3Bはシリコンを用いて形成されていることにより、弾力性と高い剛性を持たせることができる。また、バストトップ保護部材4A,4Bは発泡ポリウレタンと吸汗性を有するポリエステルとを用いて形成されていることにより、高い柔軟性と高い吸汗性とを持たせることができる。これにより、カップ内部の蒸れを確実に防止すると共に乳首が当接する部分の柔軟性と清潔さを確保して良好な使い心地が得られ、かつ、バストを豊かに美しく見せることができる。
【0044】
上記実施の形態は本発明の例示であり、本発明が上記実施の形態に限定されることを意味するものではないことは、いうまでもない。
【実施例】
【0045】
出願人は、本発明に係る貼着式ブラジャーと特許文献1に記載された態様の従来品の貼着式ブラジャーとを同一被験者(装着者)に装着させて、使用状態、及び使用時のバスト形状について実験を行った。なお、被験者のブラジャーサイズはB75又はC70であった。
【0046】
まず、本発明に係る貼着式ブラジャーを被験者に装着させた場合は、被験者は使用開始から600分を経ても乳房に蒸れを感じるとは訴えなかった。また、装着が完了した状態(即ち、図5に示す状態)において、鎖骨からバストトップまでの長さと双方のバストトップの長さとは、それぞれ16.0cmと16.0cmとであった。即ち、被験者の乳房全体が内側上方に大きく引き上げられて見かけ上のバストアップが十分に図られており、両方のバストトップ部分と鎖骨の中心とを結んだ部分(即ち図4、図5に示す仮想点S,T,U)が正三角形を形成する理想的なバスト形状が形成されていた。
【0047】
一方、従来品の装着時においては、被験者は使用開始から180分程度で乳房に蒸れを感じると訴えた。また、装着時の鎖骨からバストトップまでの長さと双方のバストトップの長さとは、それぞれ18.0cmと20.0cmとであった。即ち、被験者の乳房を内側上方に引き上げることはできず、従って見かけ上のバストアップを十分に図ることはできず、また両方のバストトップ部分と鎖骨の中心とを結んだ部分が理想的な形状を呈していなかった。
【符号の説明】
【0048】
1・・・貼着式ブラジャー
2A・・・左用カップ(カップ)
2B・・・右用カップ(カップ)
3A,3B・・・カップ本体部
4A,4B・・・バストトップ保護部材
7・・・貼着材
8・・・長軸
14・・・一端
15・・・他端
16・・・通気穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の独立したカップからなる貼着式ブラジャーであって、
それぞれの前記カップは、柔軟性を有すると共に内側全面に貼着性を有するカップ本体部と、該カップ本体部よりも柔軟性が高く吸汗性を有する部材にて前記カップ本体部よりも正面視大きさが小さく形成され、該カップ本体部の内面略中央部に着脱自在に配設されるバストトップ保護部材とを有することを特徴とする貼着式ブラジャー。
【請求項2】
前記カップ本体部には、前記バストトップ保護部材の配設位置に少なくとも一の通気穴が貫通形成されたことを特徴とする請求項1に記載の貼着式ブラジャー。
【請求項3】
前記カップ本体部は装着者の乳房略全体に貼着可能な形状及び大きさに形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の貼着式ブラジャー。
【請求項4】
前記カップ本体部は、正面視の状態で外周部が略楕円形を呈し、該略楕円形の長軸が装着者の乳房の外側下方と内側上方とを結ぶ線に沿って配設されるように形成され、前記装着者の乳房の外側下方に貼着される部分の前記外周部は最も小さな円弧曲率に形成されると共に前記装着者の前記乳房の内側上方に貼着される部分の前記外周部は最も大きな円弧曲率に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の貼着式ブラジャー。
【請求項5】
前記カップ本体部はシリコンを用いて形成され、前記バストトップ保護部材は発泡ポリウレタンと吸汗性を有するポリエステルとを用いて形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の貼着式ブラジャー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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