説明

賃走料金メータ、設定変更用記録媒体、及び、設定変更方法

【課題】設定変更情報が変更を必要とするもの以外の賃走料金メータの改竄に流用され難くする運用を可能にした賃走料金メータ、設定変更用記録媒体、及び、設定変更方法を提供する。
【解決手段】賃走料金算出手段101−1が、予め定めた料金制に関する料金制情報を参照し車両の走行距離に応じた賃走料金を算出する。不揮発性記憶手段104b,104cがプログラム及び料金制情報の少なくとも一方を設定情報として電気的に書き替え可能に記憶する。設定変更手段101−2が、設定情報を変更するための設定変更情報と該設定変更情報を利用できることの可否を示す可否情報とを外部記憶手段MCから取得し、該取得した可否情報が設定変更情報を利用できることを示しているとき、取得した設定変更情報に基づいて不揮発性記憶手段に記憶されている設定情報を電気的に書き替え変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばタクシー車両や運転代行の際の伴走車両などの車両に搭載され、プログラムにより動作して車両の走行距離などに応じた賃走料金を算出する機能などを実現するプログラム実行手段を内蔵した賃走料金メータ、該賃走料金メータの機能を変更するために使用する設定変更用記録媒体、及び、設定変更方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種のメータとして、タクシー車両に搭載されたその走行距離などに応じた賃走料金を、認可を受けた料金制に基づいて算出して逐次表示するタクシーメータが存在する。車両の走行距離は、例えば車体側の距離センサがトランスミッションの一部から車軸回転に応じた回転を入力して発生する車軸回転に応じて周期が変化する距離信号を、タクシーメータが取り込み処理することにより算出される。また、料金制は、賃走料金の明瞭性を担保して利用者の利便や信頼性などを確保するためのものである。
【0003】
しかしながら、タクシーメータとしては、賃走料金の算出の元となる走行距離の計測が正確でなかったり、計測した走行距離が正確であっても、走行距離などに応じて賃走料金を算出するために適用する料金制が認可を受けた通りのものでなければ、タクシーメータの信頼性が損なわれる。
【0004】
そこで、従来、タクシー事業者は、新しく認可された料金制によって動作するタクシーメータを使用するためには、タクシーメータ本体が製造出荷された後に、タクシーメータ本体の単体での性能、表記などの検査(頭部検査)と、タクシーメータ本体をタクシー車両に搭載した状態での走行距離の誤差、表記などの検査(装置検査)との両方の検査に合格し、各検査に合格したことを証する各封印(頭部検査封印及び装置検査封印)がそれぞれ行われなければならなかった。これらの封印は走行距離の計測や料金制に対する改竄の不正を排除するのに有効なものである。
【0005】
このような背景で、従来は、料金制の改訂があった場合、既にタクシー車両に搭載されているタクシーメータをタクシー車両から取り外し、その内部のEEPROMのような電気的に書き換え可能な不揮発性メモリのように、バックアップ電源なしに記憶内容を保持することができる記憶手段に格納されている料金制に係わるデータやプログラムを変更することで、新しい料金制による料金演算処理を行えるようにして、再びタクシー車両に取り付けて再使用することが行われる。これは、変更作業がタクシーメータ本体の内部に係わるもので、タクシーメータ製造事業者か作業を行うことを前提としたためである。
【0006】
このタクシーメータ製造事業者による変更作業では、タクシーメータがタクシー車両の運行記録のために備えるメモリカードリーダ・ライター(R・W)を流用し、変更すべき料金制に係わるデータやプログラムを記憶したメモリカードをこのR・Wのカード挿入スロットに挿入して読み込ませて、既に記憶手段に格納されている料金制に係わるデータやプログラムの変更を行わせる。R・Wを備えないタクシーメータの場合には、データやプログラムを変更するための設定器を接続するコネクタを設けておき、コネクタを介して接続した設定器内のメモリに格納した変更のためのデータやプログラムを設定器側から送出して読み込ませ、既に記憶手段に格納されている料金制に係わるデータやプログラムの変更を行わせる。
【0007】
このため、料金制の改訂に伴って行われなければならないことは、料金制の改訂に伴うセッティング変更などであるにも拘わらず、その作業を行うためにタクシーメータをタクシー車両から取り外している関係で、変更作業を行った後にタクシーメータを元のタクシー車両に取り付ける際に、頭部検定と装置検定の両方を再度行わなければならない面倒な作業が伴う問題があった。
【0008】
そこで、従来、タクシーメータをタクシー車両から取り外さずに、タクシーメータ製造事業者に代わってタクシー事業者自身が料金制に係わるデータやプログラムの変更作業を行えるようにしても、料金制の改竄に対して十分に対応できるように構成したものが提案されている。
【0009】
この提案のタクシーメータでは、常時封印された遮蔽板によって操作不能にされている操作スイッチを設けておき、封印を解いて操作スイッチが操作されたときのみ、メモリカード又は設定器による変更作業が可能となるように構成されている。そして、操作料金制の改定時には、タクシー事業者がタクシーメータ製造事業者から改訂作業用のメモリカードや設定器の貸与を受け、遮蔽板の封印を解いて操作スイッチを操作した上で、貸与されたメモリカードや設定器を用いて変更作業を行い、その後は、装置検査に相当する検査を行った上で、遮蔽板が再度封印され、操作スイッチの操作が不能にされるので、料金制の改竄が防がれるようになっている(例えば特許文献1参照)。
【0010】
この提案のタクシーメータでは、料金制の改訂時にタクシーメータをタクシー車両から取り外さなくてもよいことで、タクシーメータがタクシー車両に搭載された状態でタクシー事業者によって変更作業が行え、タクシーメータ製造事業者はタクシー事業者に対して改訂作業用のメモリカードや設定器を貸与するだけでよく、また、遮蔽板の再封印のための検査とその結果による封印作業は行われるが、頭部検査及び装置検査とその結果によって行われる封印作業を必要なくしているので、料金制の改定に伴って行う作業が大幅に削減されるようになっている。
【特許文献1】特開2004−46563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、この提案のタクシーメータにおいては、料金制の改定に伴って行う作業が大幅に削減されているとは云え、依然として、料金制改訂時の変更作業後に検査と封印作業を必要としている。
【0012】
そこで、料金制に係わるデータやプログラムの変更に伴ってタクシーメータの機能を変更した後の検査とそれに伴う封印の作業を行わなくても、改竄に対して十分に対応できる運用を可能にするタクシーメータとして、メモリカードR・Wのカード挿入口に挿入されたメモリカードやコネクタに接続された設定器が改訂用として真正のものであるか否かを判定し、真正のものであるときにのみ変更処理を行う機能を持たせるとともに、タクシーメータを特定する機器番号や、タクシーメータが搭載されているタクシー車両を特定する車体番号を予め記憶しておき、変更処理の際にタクシーメータの料金表示部に表示させたり、設定器の表示部に表示させるために設定器に送信する機能をもたせることが考えらる。
【0013】
このようなタクシーメータでは、変更作業を行った際に、タクシーメータや設定器の表示部にタクシーメータを特定する特定情報としての機器番号とタクシーメータが搭載された車を特定する特定情報としての車体番号が表示されるようになるので、表示された機器番号と車体番号の記録をとり、この記録と、管理データとして予め保存している機器番号と車体番号との対応関係を示すデータベースとを照合することによって、料金制に係わるデータやプログラムなどの設定情報の変更が行われるべきタクシーメータ以外のものについて変更作業が行われたかどうかをチェックできるようになり、貸与したメモリカードや設定器が変更作業されるべきタクシーメータ以外のものに流用されたときには、記録とデータベースの不一致によって直ちに分かるので、料金制の改竄に流用されることを防止することができる。
【0014】
しかしながら、この設定変更方法では、作業者が単純に記録ミスを生じ易いだけでなく、基本的には、作業者による記録は記録にない変更作業を行っていないこと、すなわち、料金制変更の対象となっていないタクシーメータの改竄に流用されていないことを担保するものでないので、料金制の改竄に流用されることを防止するには十分なものとは云えなかった。
【0015】
なお、上述したことは、タクシーメータと同様の機能をもち、運転代行の際の伴走車両に搭載される料金メータを含む、プログラムにより動作して車両の走行距離などに応じた賃走料金を算出する機能などを実現するプログラム実行手段を内蔵した賃走料金メータにおいて発生する。
【0016】
よって本発明は、上述した現状に鑑み、設定情報を変更するために使用する設定変更情報が変更を必要とするもの以外の賃走料金メータの改竄に流用され難くする運用を可能にした賃走料金メータ、設定変更用記録媒体、及び、設定変更方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するためになされた請求項1に係る賃走料金メータは、図1(a)の基本構成図に示すように、車両に搭載され、プログラムにより動作して各種の処理を行うプログラム実行手段の一つとして、予め定めた料金制に関する料金制情報を参照し車両の走行距離に応じた賃走料金を算出する賃走料金算出手段101−1を内蔵した賃走料金メータにおいて、前記プログラム及び前記料金制情報の少なくとも一方を設定情報として電気的に書き替え可能に記憶する不揮発性記憶手段104b,104cと、該不揮発性記憶手段に記憶されている前記設定情報を変更するための設定変更情報と該設定変更情報を利用できることの可否を示す可否情報とを外部記憶手段から取得し、該取得した前記可否情報が前記設定変更情報を利用できることを示しているとき、前記情報取得手段により取得した前記定変更情報に基づいて前記不揮発性記憶手段に記憶されている前記設定情報を電気的に書き替え変更する設定変更手段101−2とを備えることを特徴とする。
【0018】
請求項1記載の発明によれば、車両に搭載される賃走料金メータがプログラムにより動作して各種の処理を行うプログラム実行手段の一つとして内蔵する賃走料金算出手段101−1が、予め定めた料金制に関する料金制情報を参照し車両の走行距離に応じた賃走料金を算出する。不揮発性記憶手段104b,104cがプログラム及び料金制情報の少なくとも一方を設定情報として電気的に書き替え可能に記憶する。設定変更手段101−2が、不揮発性記憶手段に記憶されている設定情報を変更するための設定変更情報と該設定変更情報を利用できることの可否を示す可否情報とを外部記憶手段から取得し、該取得した可否情報が設定変更情報を利用できることを示しているとき、情報取得手段により取得した設定変更情報に基づいて不揮発性記憶手段に記憶されている設定情報を電気的に書き替え変更する。従って、外部記憶手段から取得した可否情報が設定変更情報を利用できることを示している可否情報を外部記憶手段から取得した賃走料金メータ以外は、外部記憶手段から取得した設定変更情報に基づいて不揮発性記憶手段に記憶されている設定情報を電気的に書き替え変更することができない。
【0019】
上記課題を解決するためになされた請求項2に係る賃走料金メータは、請求項1記載の賃走料金メータにおいて、前記可否情報が、前記設定変更情報を利用できる回数を示す回数情報であり、前記設定変更手段101−2は、前記回数情報が0でないとき前記定変更情報を利用できると判定する可否判定手段101−21と、該可否判定手段による判定により前記設定変更情報に基づいてを前記設定情報を変更したとき、前記回数情報をデクリメントして利用できる回数を減じる変更を前記回数情報に対して行う回数情報変更手段101−22と、該変更した回数情報をそれ以前の回数情報と置換するため前記外部記憶手段に対する書込情報として出力する出力手段101−23とを有することを特徴とする。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、設定変更手段101−2が有する可否判定手段101−21は、設定変更情報を利用できる回数を示す可否情報である回数情報が0でないとき定変更情報を利用できると判定する。回数情報変更手段101−22が、可否判定手段による判定により設定変更情報に基づいてを設定情報を変更したとき、回数情報をデクリメントして利用できる回数を減じる変更を回数情報に対して行う。出力手段101−23が、変更した回数情報をそれ以前の回数情報と置換するため外部記憶手段に対する書込情報として出力する。従って、請求項1記載の発明の作用に加え、外部記憶手段に記憶しておく回数情報の初期値として、設定情報の変更を必要とする賃走料金メータの台数に相当する数値を記憶させておくことができ、変更を必要とする賃走料金メータの設定情報の変更作業が終了したら、回数情報が0になるので、外部記憶手段に記憶した設定変更情報を利用して設定情報を変更することができなくなる。
【0021】
上記課題を解決するためになされた請求項3に係る賃走料金メータは、請求項2記載の賃走料金メータにおいて、前記取得した回数情報に基づいて利用できる回数を表示部110に表示させる表示制御手段101−24をさらに備えることを特徴とする。
【0022】
請求項3記載の発明によれば、表示制御手段101−24が取得した回数情報に基づいて利用できる回数を表示部110に表示させるので、請求項2記載の発明の作用に加え、表示された回数によって外部記憶手段に記憶された設定変更情報によって設定情報を変更できる賃走料金メータの台数を知ることができる。
【0023】
上記課題を解決するためになされた請求項4に係る賃走料金メータは、請求項1記載の賃走料金メータにおいて、図1(b)に示すように、前記可否情報が、前記設定変更情報を前記設定情報の変更に利用できる賃走料金メータを特定する機器情報と当該賃走料金メータが搭載される車両を特定する車体情報とからなり、車体情報によって特定される車両に搭載された機器情報によって特定された賃走料金メータで前記設定変更情報を利用できることを示す情報であり、前記設定変更手段101−2は、当該賃走料金メータを特定する機器情報と当該賃走料金メータが搭載される車両を特定する車体情報とを有する特定情報を記憶する特定情報記憶手段104aと、該特定情報記憶手段に記憶されている特定情報に対応する情報が前記可否情報にあるとき前記設定変更情報を利用できると判定する可否判定手段101−25とを有し、該可否判定手段による判定により前記設定変更情報に基づいて前記設定情報を変更することを特徴とする。
【0024】
請求項4記載の発明によれば、可否情報が、設定変更情報を設定情報の変更に利用できる賃走料金メータを特定する機器情報と当該賃走料金メータが搭載される車両を特定する車体情報とからなり、車体情報によって特定される車両に搭載された機器情報によって特定された賃走料金メータで設定変更情報を利用できることを示す情報であり、設定変更手段101−2は、それがが有する特定情報記憶手段104aが当該賃走料金メータを特定する機器情報と当該賃走料金メータが搭載される車両を特定する車体情報とを有する特定情報を記憶し、可否判定手段101−25が該特定情報記憶手段に記憶されている特定情報に対応する情報が可否情報にあるとき設定変更情報を利用できると判定し、可否判定手段による判定により設定変更情報に基づいて設定情報を変更するので、請求項1記載発明の作用に加え、外部記憶手段に設定変更情報とともに記憶されている可否情報に対応する特定情報を特定情報記憶手段に記憶している賃走料金メータのみが設定変更情報による設定情報の変更ができるようになる。
【0025】
上記課題を解決するためになされた請求項5に係る賃走料金メータは、請求項2又は3記載の賃走料金メータにおいて、前記設定変更情報を記憶した読出エリアMC2と前記回数情報を書き替え自在に記憶した読出・書込エリアMC3とを有する可搬型の記録媒体MCからなる前記外部記憶手段が着脱自在に装着され、装着された前記記録媒体の前記読出エリアから前記設定変更情報を、前記読出・書込エリアから前記回数情報をそれぞれ読み出すとともに、前記出力手段が出力する前記変更した回数情報を前記読出・書込エリアに書き込んでそれ以前の回数情報を書き替える読出・書込手段160をさらに備えることを特徴とする。
【0026】
請求項5記載の発明によれば、設定変更情報を記憶した読出エリアMC2と回数情報を書き替え自在に記憶した読出・書込エリアMC3とを有する可搬型の記録媒体MCからなる外部記憶手段が着脱自在に装着される読出・書込手段160が、装着された記録媒体の読出エリアから設定変更情報を、読出・書込エリアから回数情報をそれぞれ読み出すとともに、出力手段が出力する変更した回数情報を読出・書込エリアに書き込んでそれ以前の回数情報を書き替えるので、請求項2又は3記載の発明の作用に加え、可搬型の記録媒体にタクシー車両の運行データを収集するために備える読出・書込手段を読出・書込手段160として流用することができる。
【0027】
上記課題を解決するためになされた請求項6に係る設定変更用記録媒体は、請求項2又は3に記載された賃走料金メータの機能を変更するために使用する設定変更用記録媒体MCであって、前記不揮発性記憶手段に記憶されている前記設定情報を変更するための前記設定変更情報を記憶した読出エリアと、前記回数情報を書き替え自在に記憶した読出・書込エリアとを有し、前記読出・書込エリアは、前記読出エリアに記憶された前記設定変更情報により前記設定情報記憶手段に記憶されている前記設定情報が変更されたとき、前記出力手段が出力する前記変更された回数情報が書き込まれそれ以前の回数情報と置き換えられることを特徴とする。
【0028】
請求項6記載の発明によれば、賃走料金メータの機能を変更するために使用する設定変更用記録媒体MCが、不揮発性記憶手段に記憶されている設定情報を変更するための設定変更情報を記憶した読出エリアと、回数情報を書き替え自在に記憶した読出・書込エリアとを有し、読出・書込エリアは、読出エリアに記憶された設定変更情報により設定情報記憶手段に記憶されている設定情報が変更されたとき、出力手段が出力する変更された回数情報が書き込まれそれ以前の回数情報と置き換えられるので、読出エリアMC2に記憶した設定変更情報によって設定情報が変更される毎に読出・書込エリアに記憶されている回数情報が変更されて減少する。
【0029】
上記課題を解決するためになされた請求項7に係る設定変更方法は、車両に搭載された賃走料金メータが各種の処理を行うプログラム実行手段の一つとして内蔵する賃走料金算出手段を動作させるプログラムと、前記賃走料金算出手段が車両の走行距離に応じた賃走料金を算出するに当たって参照する予め定めた料金制に関する料金制情報の少なくとも一方を設定情報として不揮発性記憶手段に電気的に書き替え変更可能に記憶させるとともに、当該賃走料金メータを特定する機器情報と当該賃走料金メータが搭載される車両を特定する車体情報とを有する特定情報を特定情報記憶手段に記憶させておき、前記設定情報を変更するとき、外部記憶手段から設定変更情報と該設定変更情報を利用できることの可否を示す可否情報とを取得し、該取得した前記可否情報が前記設定変更情報を利用できることを示しているとき、取得した設定変更情報に基づいて前記不揮発性記憶手段に記憶されている前記設定情報を変更することを特徴とする。
【0030】
請求項7記載の発明によれば、車両に搭載された賃走料金メータが各種の処理を行うプログラム実行手段の一つとして内蔵する賃走料金算出手段を動作させるプログラムと、賃走料金算出手段が車両の走行距離に応じた賃走料金を算出するに当たって参照する予め定めた料金制に関する料金制情報の少なくとも一方を設定情報として不揮発性記憶手段に電気的に書き替え変更可能に記憶させておく。設定情報を変更するとき、外部記憶手段から設定変更情報と該設定変更情報を利用できることの可否を示す可否情報とを取得し、該取得した可否情報が設定変更情報を利用できることを示しているとき、取得した設定変更情報に基づいて不揮発性記憶手段に記憶されている設定情報を変更する。従って、外部記憶手段から取得した可否情報が設定変更情報を利用できることを示している可否情報を外部記憶手段から取得した賃走料金メータ以外は、外部記憶手段から取得した設定変更情報に基づいて不揮発性記憶手段に記憶されている設定情報を電気的に書き替え変更することができない。
【発明の効果】
【0031】
請求項1記載の発明によれば、外部記憶手段から取得した可否情報が設定変更情報を利用できることを示している可否情報を外部記憶手段から取得した賃走料金メータ以外は、外部記憶手段から取得した設定変更情報に基づいて不揮発性記憶手段に記憶されている設定情報を電気的に書き替え変更することができないようになり、外部記憶手段から設定変更情報を利用できることを示す可否情報とともに設定変更情報を取得した場合のみ取得した設定変更情報による設定情報の変更ができ、それ以外のものの変更ができなくなっているので、設定情報を変更するために使用する設定変更情報が変更を必要とするもの以外の賃走料金メータの改竄に流用され難くする運用を可能にした賃走料金メータを提供することができる。
【0032】
請求項2記載の発明によれば、外部記憶手段に記憶しておく回数情報の初期値として、設定情報の変更を必要とする賃走料金メータの台数に相当する数値を記憶させておくことができ、変更を必要とする賃走料金メータの設定情報の変更作業が終了したら、回数情報が0になるので、外部記憶手段に記憶した設定変更情報を利用して設定情報を変更することができなくなるので、外部記憶手段に記憶した設定変更情報は回数情報の初期値として一緒に記憶させた数値以上の回数利用することができなくなっており、料金制に係わるプログラム及び料金制情報の改竄に対して十分に対応できる運用を可能にすることができる。
【0033】
請求項3記載の発明によれば、表示された数値によって外部記憶手段に記憶された設定変更情報によって設定情報を変更できる賃走料金メータの台数を知ることができるので、変更作業の進捗状況とその完了を把握できる。
【0034】
請求項4記載の発明によれば、外部記憶手段に設定変更情報とともに記憶されている可否情報に対応する特定情報を特定情報記憶手段に記憶している賃走料金メータのみが設定変更情報による設定情報の変更ができるようになるので、設定情報を変更する対象となる賃走料金メータの特定情報を把握しておくし、要否情報として設定変更情報とともに外部記憶手段に記憶しておくことで、変更対象となる賃走料金メータ以外に設定変更情報が流用されることを防ぐことができる。
【0035】
請求項5記載の発明によれば、可搬型の記録媒体にタクシー車両の運行データを収集するために備える読出・書込手段を読出・書込手段160として流用することができるので、設定変更用の記録媒体に対する読出及び書込を行う手段を別個に設ける必要がない。
【0036】
請求項6記載の発明によれば、読出エリアに記憶した設定変更情報によって設定情報が変更される毎に読出・書込エリアに記憶されている回数情報が変更されて減少するので、回数情報が0となった後は、これと一緒に外部記憶手段に記憶されている設定変更情報は設定情報を変更するための情報として他に流用できなくなる。
【0037】
請求項7記載の発明によれば、外部記憶手段から取得した可否情報が設定変更情報を利用できることを示している可否情報を外部記憶手段から取得した賃走料金メータ以外は、外部記憶手段から取得した設定変更情報に基づいて不揮発性記憶手段に記憶されている設定情報を電気的に書き替え変更することができないので、設定情報を変更するために使用する設定変更情報が変更を必要とするもの以外の賃走料金メータの改竄に流用され難くする運用を可能にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図2は、本発明による賃走料金メータの一実施の形態であるタクシーメータの概略構成を示すブロック図である。図2において、タクシーメータは、プログラムにより動作するマイクロコンピュータ(以下、MCOMと略記する。)100と、このMCOM100に接続された、表示部110、操作部120、信号入出力(I/O)部130及びデータ入出力(I/O)部140とから構成され、タクシー車両(図示せず)に搭載されて使用される。
【0039】
MCOM100としては、中央処理ユニット(CPU)101、読み出し専用のメモリであるROM102、読み出し書き込み自在のメモリであるRAM103、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリであるEEPROM104、年月日時分データを発生するカレンダ部105、これらとCPU101を相互接続するバスラインなどを内蔵するワンチップマイコンと称されるものが好ましく使用されている。
【0040】
表示部110としては、液晶表示パネルなどの表示パネルと、CPU101からの表示データに基づいて表示パネルを駆動するドライバとを有し、賃走料金の金額表示の他、各種の表示を行う。操作部120は、詳細には示さないが、タクシーメータに必須のタリフ操作ボタンなどの専用操作ボタンの他、設定によって任意の操作ボタンとして使用できるようになるオプションボタンを有し、操作ボタンの操作によって発生される操作信号をCPU101に入力する。
【0041】
信号入出力(I/O)部130は信号の入力及び出力を行うインターフェースであり、入力信号として、タクシー車両に設けられた走行センサ(図示せず)がタクシー車両の走行に応じて発生する、車速に応じて周期が変化する走行信号などが入力され、CPU101に取り込まれる。出力信号として、タリフ操作によってCPU101が設定したタリフ状態を、タクシー車両に設けられたタリフ表示器(図示せず)に表示させて外部に知らせるためのCPU101からのサイン信号などが出力される。
【0042】
データ入出力(I/O)部140はデジタルデータの入力及び出力を行うインターフェースである。このデータI/O部140には、CPU101が出力する印字データに基づいて表示部110に表示されている賃走料金に基づく領収金額や、カレンダ部105が発生する年月日時分データに基づく発行日などを印字して領収書を発行するプリンタ150の他、タクシー車両の運行状況を把握するための運行記録データを可搬型の記録媒体としてのメモリカードに収集するために、メモリカードに対するデータ読出とデータ書込を行うメモリカードリーダ・ライタ(R・W)160がコネクタ接続されている。プリンタ150及びメモリカードR・W160とCPU101との間は、例えばRS−23C方式の双方向通信線を介して接続され、特にメモリカードR・W160とCPU101との間では、書込データ及び読出データの授受が行われる。
【0043】
CPU101は、プログラムにより動作して各種の処理を行うプログラム実行手段として働き、典型的には、予め定めた料金制に関する料金制情報を参照し車両の走行距離に応じた賃走料金を算出する賃走料金算出手段として働く。CPU101がこの典型的な賃走料金算出手段として働くだけでも、料金制情報として、基本距離、基本距離までの基本料金、基本距離を超えた後のメータ上がり距離、メータ上がり距離毎の以後料金に関する情報が料金制情報として必要である。プログラムとしては、信号I/O部130入力にされている走行信号に基づいて走行距離が基本距離、以後距離走行したことを測定する機能や、参照した料金制情報と、測定した距離とに基づいて賃走料金を算出する機能を実現するためのものが必要である。
【0044】
しかも、例えば、賃走料金の算出を距離だけでなく、経過時間を加味して算出するように変更する場合には、料金制情報として基本距離走行後の以後距離に対応する経過時間を追加する変更を料金制情報に対して行い、プログラムについても、基本距離走行後の時間を計測する機能と、計測時間が以後距離走行前に経過時間に達したときに、以後距離走行前であっても以後料金の料金上がりを行わせる機能とを追加する変更を行う必要がある。
【0045】
上述とは逆に、賃走料金算出手段が当初、経過時間を加味して賃走料金を算出するようになっているものである場合に、経過時間の加味を行わないように変更する場合には、料金制情報から経過時間を削除し、プログラムからこれに対応する機能を削除する変更が必要である。
【0046】
上述したように料金制情報とプログラムの両方を変更する場合だけでなく、何れか一方のみを変更する場合がある。例えば、賃走料金算出手段の機能は変更せず、基本料金や以後料金を値上げする場合には、料金制情報のみを改訂すれば対応できる。これとは逆に、料金制情報に変更を加えず、深夜の割増料金を算出する機能を追加する場合には、賃走料金算出手段により算出した賃走料金に基づいて割増金額を算出しこれを元の賃走料金に加算して割り増し賃走料金を算出する機能を実現するためのプログラムを追加する変更を行う場合がこれに当たる。
【0047】
何れにしても、プログラム及び料金制情報などの予め設定された情報(以下、設定情報と呼ぶ。)に対する追加、削除、改訂などの変更ができるように、設定情報は電気的に書き替え可能に記憶する不揮発性記憶手段としてのEEPROM104に書き込まれ記憶されている。
【0048】
EEPROM104への料金制情報及びプログラムの記憶は、図3に示すように、記憶エリアを料金制記憶エリア104bとプログラム記憶エリア104cに分けて行われ、何れのエリアとも、料金制情報の追加やプログラムの追加に対応することができるように、当初、既記録領域104b1及び104c1の他に相当量の未記録領域104b2及び104c2がそれぞれ確保される。
【0049】
なお、EEPROM104はその一部104aが、図3に示すように、タクシーメータを特定する例えば機器番号からなる機器情報と、タクシーメータが搭載される車両を特定する例えば車体番号からなる車体情報とを有する特定情報を記憶する特定情報記憶手段としての特定情報記憶エリアに使用される。特定情報がEEPROM104に記憶される理由は、機器番号については事前に分かっているが、車体情報についてはタクシーメータがタクシー車両に搭載された時点で確定し、それ以前には知り得ないので、搭載した後に書込手段によって書き込まれる必要があるためである。機器情報と車体情報とを有する特定情報は、これによって特定のタクシー車両に搭載したタクシーメータを特定するために利用できる。
【0050】
なお、この特定情報のEEPROM104への書込は、例えば、コネクタ接続されているプリンタ150を切り離し、この代わりに操作部と表示部を有する設定器170を接続した上で、操作部のキー操作によって特定情報を入力することによって行うことができる。
【0051】
CPU101はまた、タクシーメータが通常の動作を行う通常モードから変更モードに切り替えられたときに、EEPROM104に記憶されている料金制情報とプログラムとからなる設定情報を変更するための設定変更情報と、設定変更情報を利用できることの可否を示す可否情報とを外部記憶手段から取得し、この取得した可否情報が設定変更情報を利用できることを示しているとき、取得した設定変更情報に基づいてEEPROM104に記憶されている設定情報を変更する設定変更手段として機能する。
【0052】
タクシーメータの通常モードから変更モードへの切替は、例えば、操作部の操作ボタンのうち通常の操作では一緒に操作されない例えば2つのボタンの同時操作によって行うようにすることで、誰でもが簡単にモード切替することができなくでき、また誤操作も防ぐことができる。
【0053】
本実施の形態では、CPU101は、変更モードに切り替えられたときに、タクシーメータが運行記録データをメモリカードに収集するために備えるメモリカードR・W160にメモリカードからデータを読み取らせて送出させる機能を持たせている。このことによって、外部記憶手段として可搬型の記録媒体であるメモリカードを利用し、設定変更情報とこの設定変更情報を利用できることの可否を示す可否情報とを記憶した設定変更用メモリカードMCを、変更モードに切り替え前にメモリカードR・W160に挿入しておくことにより、メモリカードR・W160が設定変更用メモリカードMCから情報を読み込むことによって、外部記憶手段である設定変更用メモリカードMCから設定変更情報と可否情報とが取得できる。
【0054】
CPU101は、取得した設定変更情報と可否情報とを、RAM103中の作業エリアに一時的に格納する。そして、この格納した可否情報が設定変更情報を利用できることを示しているとき、設定変更情報に基づいてEEPROM104に既に記憶されている設定情報を電気的に書き替え変更する設定変更手段として働く。設定変更情報には、上述したようにプログラム変更情報と料金制変更情報が含まれるが、取得した設定変更情報としては、両方あるいは何れか一方の場合がある。何れにしても、取得した設定変更情報の有無を判定し、予め定めた順番、例えば料金制情報、プログラムの順にEEPROM104中のエリア104b及び104cの料金制情報及びプログラムを書き替え変更する。
【0055】
設定変更手段として働くCPU101は、EEPROM104に設定情報として記憶されている料金制情報を変更するための料金制と設定変更情報を利用できることの可否を示す可否情報とを外部記憶手段から取得し、この取得した可否情報が設定変更情報を利用できることを示しているとき、料金制変更情報に基づいてEEPROM104に記憶されている料金制情報を変更し、EEPROM104に設定情報として記憶されているプログラムを変更するためのプログラム変更情報を取得し、この取得したプログラム変更情報に基づいてEEPROM104に記憶されているプログラムを変更する。
【0056】
設定変更手段として働くCPU101が外部記憶手段から設定変更情報とともに取得する可否情報としては、外部記憶手段に記憶されている設定変更情報を利用できる回数を示す回数情報が使用される。可否情報が回数情報である場合には、CPU101は、まず取得した回数情報の数値を表示部110に表示させる。表示部110に表示された数値によって、外部記憶手段に記憶された設定変更情報による設定情報の変更が可能であることとさらに変更作業を行うことができる賃走料金メータの台数を知ることができる。そして、設定変更手段として働くCPU101は、回数情報が0でないとき定変更情報を利用できると判定する可否判定手段として働き、可否判定手段による判定により設定変更情報に基づいて設定情報を変更したとき、回数情報をデクリメントして利用できる回数を減じる変更を回数情報に対して行う回数情報変更手段として働き、かつ、変更した回数情報をそれ以前の回数情報と置換するため外部記憶手段に対する書込情報として出力する出力手段として働く。
【0057】
上述したように、設定変更手段として働くCPU101が、可否判定手段、回数情報変更手段及び出力手段として働くことによって、外部記憶手段に記憶しておく回数情報の初期値として、設定情報の変更を必要とするタクシーメータの台数に相当する数値を記憶させておき、変更を必要とするタクシーメータの設定情報の変更作業が終了する毎に回数情報がデクリメントされて減じられ、設定情報の変更を必要とするタクシーメータの全ての変更が行われた時点で、回数情報が最終的に0になる。回数情報が最終的に0になった後は、外部記憶手段に記憶した設定変更情報は設定変更には利用することができなくなり、結果として、変更を必要とされたもの以外に流用して設定情報を改竄するために利用することを防ぐことができる。
【0058】
なお、料金制に関する料金制情報は情報量としてはそれほど大きくないので、既存の情報を全て書き替えることによって、料金制情報の改訂、削除及び追加の変更を行うことができるが、勿論、部分的な書き替えによっても可能である。プログラムに関しては、既存のプログラムとの関連で記述したプログラムを未記録エリアに書き込むことによって、既存のプログラムに対する機能の改訂、削除及び追加により変更を行うことができる。
【0059】
勿論、プログラムには、機能の改訂、削除及び追加によって影響を受けない部分もあるので、影響を受ける可能性のある部分とない部分に分けてプログラムを記憶しておき、プログラムの変更を行うときには、影響を受ける可能性のあるものとして記憶されているプログラムについては、既存のプログラムも含め全部を書き替えて改訂、削除及び追加の変更を行うことも可能である。この場合、情報の書き替え量が多くなり、時間がかかるようであれば、部分的な修正で変更を行う方がよいが、高速書き替え可能で書き替え時間がそれほど長くならない場合には、全部を書き替えて変更するようにした方が、無用のプログラムを残さず除去できるので、EEPROM104に予め用意しておく未記録領域を小さくするのには好ましい。
【0060】
その後、CPU101が出力する変更した回数情報は、データI/O部140を介してメモリカードR・W160に対して書込情報として送出され、メモリカードR・W160に装着されている設定変更用メモリカードMCに記憶される。
【0061】
なお、賃走料金メータの機能を変更するために使用する設定変更用記録媒体としての設定変更用メモリカードMCは、図4に示すように、メモリカードが設定変更用のものであることを示すカード識別情報を記憶した第1の読出エリアMC1と、EEPROM104に記憶されている設定情報(料金制情報、プログラム)を変更するための設定変更情報(料金制変更情報、プログラム変更情報)を読出データとして記憶した第2の読出エリアMC2と、可否情報としての回数情報である数値を読出・書込自在に記憶した読出・書込エリアMC3とを有する。読出・書込エリアMC3に記憶された数値は、読出エリアMC2に記憶された設定変更情報とともに読み取られて賃走料金メータに取得され、この取得された設定変更情報によりEEPROM104に記憶されている設定情報が変更されたとき、その都度、デクリメントされて変更された上で、データI/O部140を介してメモリカードR・W160に対して出力され、メモリカードR・W160によって設定変更用メモリカードMCの読出・書込エリアMC3に記憶される。
【0062】
上述した記録媒体である設定変更用メモリカードMCが挿抜自在に装着されたメモリカードR・W160は、装着された記録媒体の読出エリアMC2から設定変更情報を、読出・書込エリアMC3から回数情報をそれぞれ読み出すとともに、出力手段が出力する変更した回数情報を読出・書込エリアMC3に書き込んでそれ以前の回数情報を書き替える読出・書込手段として働いている。
【0063】
以上概略説明したタクシーメータの動作の詳細を、CPU101がプログラムに従って行う処理を示す図5のフローチャートを参照して以下説明する。
【0064】
CPU101は電源の投入によって動作を開始し、タクシーメータとしての通常モード動作を、ROM102やEEPROM104に記憶されたプログラムに従ってEEPROM104に記憶されている料金制情報を参照しながら行う。例えば、操作部120のタリフボタンの操作を監視し、賃走の開始を指示する実車タリフボタンが操作されたとき、予め定めた料金制に関する料金制情報を参照し車両の走行距離に応じた賃走料金を算出し、この算出した賃走料金に基づいて料金を表示部110に表示させたり、賃走料金データや年月日時分データに基づいて領収書をプリンタ150に印刷させるなどの処理を行う通常処理を行う(ステップS1)。
【0065】
通常処理を行っている過程で、操作部120の特定の2つの操作ボタンにより変更モード切替操作が行われると(ステップS2がYESのとき)、CPU101は動作モードを変更モードに切り替え、メモリカードR・W160に、メモリカードが装着されているかどうかを判定する(ステップS3)。CPU101は、メモリカードが装着されたことをが判定するとき(ステップS3がYESのときのとき)、装着されたメモリカードの第1の読出エリアMC1からカード識別情報を読み取らせて取得し、この取得したカード識別情報によりメモリカードが設定変更用のものであるかどうかを判定する(ステップS4)。判定の結果、設定変更用のものでないとき(ステップS4がNOのとき)には、表示部110に正しいカードの装着を促すメッセージを表示させ(ステップS5)、正しいカードの装着を待つ。
【0066】
設定変更用のカードが装着された場合(ステップS4がYESの場合)には、CPU101は、第2の読出エリアMC2の設定変更情報と読出・書込エリアMC3の回数情報を読み取らせて取得し(ステップS6)、取得した設定変更情報をRAM103の作業エリアに記憶する(ステップS7)。その後、CPU101は、取得した回数情報の数値に基づいて表示部110に表示を行わせる(ステップS8)。続いて、回数情報が0であるか否かよって、設定変更情報を利用することができる状態にあるか否かを判定し(ステップS9)、利用できない場合(NOのとき)には後述する処理(ステップS16)に進み、可能であるとき(YESのとき)には次のステップS10に進む。
【0067】
RAM103に記憶された設定変更情報に料金制変更情報がある場合(ステップS10がYESの場合)、この料金制変更情報に基づいてEEPROM104に記憶されている料金制情報を変更する(ステップS11)。そして、全ての料金制変更情報に基づく料金制情報の変更が終了し(ステップS10がNOのとき)、次に、設定変更情報にプログラム変更情報がある場合(ステップS12がYESの場合)には、このプログラム変更情報に基づいてEEPROM104に記憶されているプログラムを変更する(ステップS13)。そして、全てのプログラム変更情報に基づくプログラムの変更が終了したとき(ステップS12がNOのとき)には、回数情報をデクリメントして(ステップS14)変更した上で、設定変更用メモリカードMCに対する書込情報としてメモリカードR・W160に対して出力し(ステップS15)、設定変更用メモリカードMCの読出・書込エリアMC3に書き込ませ元の回数情報に置き換える。
【0068】
この際、設定情報の変更作業が終了したことを表示部110に表示させることで、作業の終了を作業者に知らせることができる。そして、作業者によって設定変更用メモリカードMCがメモリカードR・W160から抜き取られると(ステップS16がYESのとき)、タクシーメータの動作が変更モードから元の通常モードに切り替えられる。
【0069】
上述したように、設定変更用メモリカードMCに記憶した設定変更情報に基づいてEEPROM104に記憶されている設定情報が変更された時点で、回数情報の数値をデクリメントし変更した上で元の回数情報に代えて設定変更用メモリカードMCの読出・書込エリアMC3に書き込まれるようになる。
【0070】
従って、タクシーメータ製造字業者からタクシー運行業者に貸与する設定変更用メモリカードMCの読込・書込エリアMC3に記憶した回数情報の数値として、設定情報の変更を必要としているタクシーメータの台数に相当する数値を記憶させておくことによって、変更対象となるタクシーメータの変更作業が終了した時点で回数情報の数値が0になり、当該設定変更用メモリカードMCに記憶された設定変更情報を設定情報の変更に使用することができなくなるので、設定変更用メモリカードの設定変更情報を変更対象とするタクシーメータ以外のものの改竄に流用することを不能にすることができる。また、貸与する時点で予め記憶させられる回数情報の数値によって、当該メモリカードによって設定情報の変更が行われたタクシーメータの台数を捕捉することができ、貸与した設定変更用メモリカードの対価を、設定情報を変更したタクシーメータの台数に応じたものとする場合に、対価を算出するのに有効に利用できる。
【0071】
なお、上述した実施の形態では、外部記憶手段として、タクシーメータに取り付けた運行記録用のメモリカードR・W160を流用し、これに挿抜自在に装着される可搬型の記録媒体であるメモリカードを利用したものを説明したが、メモリカードR・W160を備えないタクシーメータの場合には、特定情報をEEPROM104に書き込むための上述した設定器170を使用することができる。
【0072】
この場合、設定器170内にメモリカード同様に不揮発性記憶手段として働くEEPROMと読出・書込エリアMC3とを設け、これらのエリアに設定変更用メモリカードと同様の回数情報の数値を書き込むようにする。そして、タクシーメータを変更モードに切り替えるに当たって、プリンタ150を切り離し、この代わりに設定器170を接続しておくことで、メモリカードR・W160に装着される設定変更用メモリカードMCを外部記憶手段として利用して行うと同様の変更作業を、設定器170内のEEPROMを外部記憶手段として利用して行うことができる。
【0073】
上述した構成のタクシーメータと設定変更用メモリカードMCとによって、タクシーメータの設定情報を変更する設定変更方法では、車両に搭載された賃走料金メータが各種の処理を行うプログラム実行手段の一つとして内蔵する賃走料金算出手段を動作させるプログラムと、賃走料金算出手段が車両の走行距離に応じた賃走料金を算出するに当たって参照する予め定めた料金制に関する料金制情報の少なくとも一方を設定情報としてEEPROMに電気的に書き替え変更可能に記憶させておく。設定情報を変更するとき、設定変更用メモリカードMCから設定変更情報と該設定変更情報を利用できることの可否を示す可否情報とを取得し、該取得した可否情報が設定変更情報を利用できることを示しているとき、取得した設定変更情報に基づいてEEPROMに記憶されている設定情報を変更する。従って、設定変更用メモリカードMCから取得した可否情報が設定変更情報を利用できることを示している可否情報を設定変更用メモリカードMCから取得したタクシーメータ以外は、設定変更用メモリカードMCから取得した設定変更情報に基づいてEEPROMに記憶されている設定情報を電気的に書き替え変更することができない。この方法で設定変更を行った場合、設定変更作業に使用した外部記憶手段である設定変更用メモリカードに、設定情報を変更するために使用する設定変更情報が変更を必要とするもの以外のタクシーメータの改竄に流用され難くする運用を可能にすることができる。すなわち、設定変更されるべきでないタクシーメータの設定変更、すなわち、タクシーメータの改竄を未然に防ぐことができる。
【0074】
上述した実施の形態では、設定変更情報を利用できることの可否を示す可否情報が、設定変更情報を利用できる回数を示す回数情報である場合について説明したが、可否情報としては、設定変更情報を設定情報の変更に利用できるタクシーメータを特定する機器情報と当該タクシーメータが搭載される車両を特定する車体情報とからなり、車体情報によって特定される車両に搭載された機器情報によって特定されたタクシーメータで設定変更情報を利用できることを示す情報を使用してもよい。
【0075】
この場合、変更対象となるタクシーメータとそれを搭載した車両の両方を特定する情報を設定用メモリカードの読出・書込エリアMC3に回数情報に代えて記憶しておき、この情報を取得したタクシーメータにおいて、取得した情報とEEPROM104の特定情報記憶エリア104aに記憶した特定情報とを対比し、当該タクシーメータが有する特定情報に対応するものが取得情報にある場合には、これを設定変更情報を利用できることを示す情報とし、取得した設定変更情報による設定情報の変更を行い、対応するものが取得情報にないときには、設定変更情報を利用することができないことを示しているとして、取得した設定変更情報による設定情報の変更を行わないようにしてもよい。この場合、CPU101は、タクシーメータを特定する機器情報と当該賃走料金メータが搭載される車両を特定する車体情報とを有する、特定情報記憶エリア104aに記憶した特定情報に対応する情報が可否情報にあるとき設定変更情報を利用できると判定する可否判定手段として働く。そして、可否判定手段による判定により設定変更情報に基づいて設定情報を変更する。従って、設定変更用メモリカードMCに設定変更情報とともに記憶されている可否情報に対応する特定情報を特定情報記憶エリア104aに記憶しているタクシーメータのみが設定変更情報による設定情報の変更ができるようになる。
【0076】
上述のように、取得した設定変更情報による設定情報の変更を行った場合、この変更に当たって可否情報として利用した情報を、再度読み込まないように使用済みであることを示す情報を、CPU101が出力して設定変更用メモリカードMCの読出・書込エリアMC3に記憶されている当該可否情報に対応して書き込むようにしてもよい。この様にした場合、使用済みの可否情報による設定変更情報の使用は2度とないので、誤って同じタクシーメータが誤って2度変更対象とされることがなくなる。また、このとき、変更作業を行った日時データをカレンダ部105が発生するデータを利用して読出・書込エリアMC3に記憶させるようにした場合、これを収集しておくことで、各タクシーメータの設定情報を変更日時を管理することが可能になる。
【0077】
ただし、特定情報を使用するこの方法は、特定情報のデータベースが構築されていて、設定変更の対象となるタクシーメータを変更に当たって指定できることを前提にして成立するものであり、このようなデータベースを準備しなくてもよいことでは、前者の実施の形態の用に可否情報として回数情報を使用する方法の方が有利である。
【0078】
また、上述した実施の形態では、賃走料金メータがタクシーメータである場合を説明したが、本発明は例えば運転代行の際の伴走車の走行距離に応じて料金が変わる場合の伴走車に搭載され賃走料金メータにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明かかる賃走料金メータの基本構成を示すブロック図であり、(a)は全体図、(b)は部分変更図である。
【図2】本発明に係る賃走料金メータの一実施形態であるタクシーメータの構成を示すブロック図である。
【図3】図2中のEEOROM内の記憶エリアに記憶された情報を説明するための説明図である。
【図4】図2中の設定変更用のメモリカード内に割り当てられた各エリアの構成を説明するための説明図である。
【図5】図2中のCPUがプログラムに従って行う処理をフローチャートである。
【符号の説明】
【0080】
101−1 賃走料金算出手段(CPU)
101−2 設定変更手段(CPU)
101−21 可否判定手段(CPU)
101−22 回数情報変更手段(CPU)
101−23 出力手段(CPU)
101−24 表示制御手段(CPU)
101−25 可否判定手段(CPU)
104 EEPROM
104a 特定情報記憶手段(特定情報記憶エリア)
104b 不揮発性記憶手段(料金制情報記憶手段)
104c 不揮発性記憶手段(プログラム記憶エリア)
110 表示部
160 読出・書込手段(メモリカードR・W)
MC 外部記憶手段(設定変更用メモリカード)
MC2 読出エリア(第2の読出エリア)
MC3 読出・書込エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、プログラムにより動作して各種の処理を行うプログラム実行手段の一つとして、予め定めた料金制に関する料金制情報を参照し車両の走行距離に応じた賃走料金を算出する賃走料金算出手段を内蔵した賃走料金メータにおいて、
前記プログラム及び前記料金制情報の少なくとも一方を設定情報として電気的に書き替え可能に記憶する不揮発性記憶手段と、
該不揮発性記憶手段に記憶されている前記設定情報を変更するための設定変更情報と該設定変更情報を利用できることの可否を示す可否情報とを外部記憶手段から取得し、該取得した前記可否情報が前記設定変更情報を利用できることを示しているとき、前記情報取得手段により取得した前記定変更情報に基づいて前記不揮発性記憶手段に記憶されている前記設定情報を電気的に書き替え変更する設定変更手段と
を備えることを特徴とする賃走料金メータ。
【請求項2】
前記可否情報が、前記設定変更情報を利用できる回数を示す回数情報であり、
前記設定変更手段は、前記回数情報が0でないとき前記定変更情報を利用できると判定する可否判定手段と、該可否判定手段による判定により前記設定変更情報に基づいて前記設定情報を変更したとき、前記回数情報をデクリメントして利用できる回数を減じる変更を前記回数情報に対して行う回数情報変更手段と、該変更した回数情報をそれ以前の回数情報と置換するため前記外部記憶手段に対する書込情報として出力する出力手段とを有する
ことを特徴とする請求項1記載の賃走料金メータ。
【請求項3】
前記取得した回数情報に基づいて利用できる回数を表示部に表示させる表示制御手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項2記載の賃走料金メータ。
【請求項4】
前記可否情報が、前記設定変更情報を前記設定情報の変更に利用できる賃走料金メータを特定する機器情報と当該賃走料金メータが搭載される車両を特定する車体情報とからなり、車体情報によって特定される車両に搭載された機器情報によって特定された賃走料金メータで前記設定変更情報を利用できることを示す情報であり、
前記設定変更手段は、当該賃走料金メータを特定する機器情報と当該賃走料金メータが搭載される車両を特定する車体情報とを有する特定情報を記憶する特定情報記憶手段と、該特定情報記憶手段に記憶されている特定情報に対応する情報が前記可否情報にあるとき前記設定変更情報を利用できると判定する可否判定手段とを有し、該可否判定手段による判定により前記設定変更情報に基づいて前記設定情報を変更する
ことを特徴とする請求項1記載の賃走料金メータ。
【請求項5】
前記設定変更情報を記憶した読出エリアと前記回数情報を書き替え自在に記憶した読出・書込エリアとを有する可搬型の記録媒体からなる前記外部記憶手段が着脱自在に装着され、装着された前記記録媒体の前記読出エリアから前記設定変更情報を、前記読出・書込エリアから前記回数情報をそれぞれ読み出すとともに、前記出力手段が出力する前記変更した回数情報を前記読出・書込エリアに書き込んでそれ以前の回数情報を書き替える読出・書込手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項2又は3記載の賃走料金メータ。
【請求項6】
請求項2又は3に記載された賃走料金メータの機能を変更するために使用する設定変更用記録媒体であって、
前記不揮発性記憶手段に記憶されている前記設定情報を変更するための前記設定変更情報を記憶した読出エリアと、
前記回数情報を書き替え自在に記憶した読出・書込エリアとを有し、
前記読出・書込エリアは、前記読出エリアに記憶された前記設定変更情報により前記設定情報記憶手段に記憶されている前記設定情報が変更されたとき、前記出力手段が出力する前記変更された回数情報が書き込まれそれ以前の回数情報と置き換えられる
ことを特徴とする設定変更用記録媒体。
【請求項7】
車両に搭載された賃走料金メータが各種の処理を行うプログラム実行手段の一つとして内蔵する賃走料金算出手段を動作させるプログラムと、前記賃走料金算出手段が車両の走行距離に応じた賃走料金を算出するに当たって参照する予め定めた料金制に関する料金制情報の少なくとも一方を設定情報として不揮発性記憶手段に電気的に書き替え変更可能に記憶させるとともに、当該賃走料金メータを特定する機器情報と当該賃走料金メータが搭載される車両を特定する車体情報とを有する特定情報を特定情報記憶手段に記憶させておき、
前記設定情報を変更するとき、外部記憶手段から設定変更情報と該設定変更情報を利用できることの可否を示す可否情報とを取得し、該取得した前記可否情報が前記設定変更情報を利用できることを示しているとき、取得した設定変更情報に基づいて前記不揮発性記憶手段に記憶されている前記設定情報を変更する
ことを特徴とする設定変更方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−249807(P2007−249807A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74926(P2006−74926)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)