説明

資料提示装置

【課題】資料提示装置におけるマスク機能やハイライト機能の利便性を向上させる技術を提供する。
【解決手段】資料提示装置100は、第1の画像を表す画像データを取得し、更に、第1の画像の少なくとも一部をマスクまたはハイライト表示するために該第1の画像上に重畳させる第2の画像の少なくとも配置位置が予め記録された重畳情報を取得する。そして、画像データに対応する重畳情報が取得された場合には、この画像データが表す第1の画像に対して、取得された重畳情報に基づき第2の画像を重畳させて出力する。資料提示装置100は、第2の画像を消去するための操作を受け付けると、第2の画像を消去して、第1の画像の出力を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を外部の表示装置に出力する資料提示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されたような資料提示装置において、従来、出力画像の一部をマスク(隠蔽)する機能やハイライト(強調)表示を行う機能を備えるものがある。このような機能を用いれば、例えば、学校の授業等におけるプレゼンテーションにおいて、答案用紙の正答部分を隠したり、注目させたい部分を強調させること等が可能になる。
【0003】
しかし従来の資料提示装置では、マスク機能やハイライト機能を利用する度に、本体の操作パネルやリモコンによってマスクやハイライトを行う位置を指定する必要があり、プレゼンテーションの進行が滞る虞があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−193391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような問題を踏まえ、本発明が解決しようとする課題は、資料提示装置におけるマスク機能やハイライト機能の利便性を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]資料提示装置であって、第1の画像を表す画像データを取得する画像データ取得部と、前記第1の画像の少なくとも一部をマスクまたはハイライト表示するために該第1の画像上に重畳させる第2の画像の少なくとも配置位置が予め記録された重畳情報を取得する重畳情報取得部と、前記取得された画像データに対応する重畳情報が取得された場合に、前記取得された画像データが表す第1の画像に対して、前記取得された重畳情報に基づき前記第2の画像を重畳させて出力する画像処理部と、前記第2の画像を消去するための操作を受け付ける操作受付部と、を備え、前記画像処理部は、前記操作受付部によって前記操作を受け付けた場合に、前記第2の画像を消去して、前記第1の画像の出力を行う、資料提示装置。
【0008】
このような構成の資料提示装置であれば、画像データに対応する重畳情報が取得された場合には、この画像データが表す第1の画像に対して、重畳情報に予め記録された配置位置に基づいて、マスクやハイライト表示を行うための第2の画像を重畳させることができる。そのため、マスク機能やハイライト機能を利用するたびにマスクやハイライトを行う位置を指定する必要がないので、資料提示装置におけるマスク機能やハイライト機能の利便性を向上させることができる。
【0009】
[適用例2]適用例1に記載の資料提示装置であって、前記画像処理部は、前記取得された重畳情報に、前記第2の画像の配置位置が2以上記録されている場合には、該配置位置のそれぞれに対して前記第2の画像を重畳させ、前記画像処理部は、前記操作受付部によって前記操作を受け付けるたびに、前記第2の画像を所定の順序で消去する、資料提示装置。
このような構成であれば、第1の画像上に第2の画像を複数配置することができ、更に、この第2の画像を所定の順序で順番に消去することができる。
【0010】
[適用例3]適用例2に記載の資料提示装置であって、前記重畳情報には、前記消去を行う順序に関する順序情報が含まれており、前記画像処理部は、前記順序情報に従って、前記第2の画像の消去を行う、資料提示装置。
このような構成であれば、予め設定しておいた順序によって、第2の画像を消去することができる。
【0011】
[適用例4]適用例2または適用例3のいずれか一項に記載の資料提示装置であって、
前記画像処理部は、前記第2の画像のすべてを消去した後に前記操作受付部によって前記操作を受け付けた場合に、前記第2の画像を再度すべて前記第1の画像に重畳させる、資料提示装置。
このような構成であれば、第2の画像の消去と再表示とを一の操作によって繰り返すことが可能になる。
【0012】
[適用例5]適用例1ないし適用例4のいずれか一項に記載の資料提示装置であって、前記重畳情報には、前記第2の画像の種別を表す種別情報が記録されており、前記画像処理部は、前記種別情報に応じた形態の第2の画像を前記画像に重畳する、資料提示装置。
このような構成であれば、重畳情報内の種別情報に応じて、例えば、マスクを行う際の第2の画像と、ハイライトを行う際の第2の画像の形態を切り換えることが可能になる。
【0013】
[適用例6]適用例1ないし適用例5のいずれか一項に記載の資料提示装置であって、前記重畳情報は、前記画像データを含む画像ファイル内に記録されている、資料提示装置。
このような構成であれば、画像データと重畳情報とが同一の画像ファイル内に記録されているため、画像データと重畳情報の対応付けを容易に行うことができる。
【0014】
[適用例7]適用例1ないし適用例5のいずれか一項に記載の資料提示装置であって、更に、前記重畳情報を前記画像データに対応付けて記憶する重畳情報記憶部を備え、前記重畳情報取得部は、前記重畳情報記憶部から前記重畳情報を取得する、資料提示装置。
このような構成であれば、画像データと重畳情報とが個別に管理されていても、画像データに対応する重畳情報を容易に取得することが可能になる。
【0015】
[適用例8]適用例1ないし適用例7のいずれか一項に記載の資料提示装置であって、前記操作受付部は、更に、前記第1の画像に対するズームまたはスクロールの指示を受け付け、前記画像処理部は、前記ズームまたはスクロールの指示に応じた拡大率または移動量で前記第1の画像をズームまたはスクロールさせ、かつ、前記第2の画像についても、前記拡大率または前記移動量で、ズームまたはスクロールさせる、資料提示装置。
このような構成であれば、第1の画像に対するズームやスクロールが、第2の画像に対しても同様に行われるので、マスクしたい部分が見えてしまったり、ハイライト表示したい部分がずれてしまったりすることを抑制することができる。
【0016】
なお、本発明は、上述した資料提示装置としての構成のほか、資料提示装置による画像の出力制御方法や、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを記録した記録媒体などとしても構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例としての資料提示装置の使用状態を示す説明図である。
【図2】重畳情報が記録された画像ファイルの例を示す説明図である。
【図3】資料提示装置の内部構成を示すブロック図である。
【図4】画像再生処理のフローチャートである。
【図5】マスク処理の詳細なフローチャートである。
【図6】ズーム/スクロール処理の概念を示す図である。
【図7】ハイライト処理の詳細なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。
A.資料提示装置の構成:
図1は、本発明の一実施例としての資料提示装置100の使用状態を示す説明図である。資料提示装置100は、机などに設置される本体110と、本体110に設けられ、ユーザからの操作を受け付ける操作パネル120と、本体110から上側に伸びた支柱115と、支柱115の先端に取り付けられたカメラヘッド140と、を備える。ユーザからの操作は、操作パネル120以外にもリモコン190によって受け付けることが可能である。
【0019】
カメラヘッド140にはCMOSイメージセンサが内蔵されており、机などに載置された資料STを撮影する。本体110の背面には、映像入力端子としてのアナログRGB入力端子150と、映像出力端子としてのアナログRGB出力端子152およびコンポジット出力端子154とが備えられている。また、本体110の背面には、コンピュータ(図示せず)との接続インタフェースとして用いられるUSB端子156が備えられている。アナログRGB出力端子152やコンポジット出力端子154には、液晶ディスプレイ200や、プロジェクタ、テレビ等の外部表示装置が接続される。
【0020】
本体110の側面には、メモリカードスロット158が備えられている。メモリカードスロット158には、例えば、EXIF形式の画像ファイルが記録されたメモリカード300が挿入される。「EXIF」とは、JEITA(社団法人電子情報技術産業協会)によって標準化された画像ファイルのフォーマットである。画像ファイルには、このEXIF規格に従って、例えば、画像の撮影日時や撮影機器のモデル名、解像度、シャッタースピードなどの情報がEXIF情報として画像データとともに記録されている。EXIF情報には、メーカノート領域という領域があり、このメーカノート領域には、各社が独自に定めた情報を記録することができる。
【0021】
資料提示装置100は、メモリカード300に記録された画像ファイルを読み出し、この画像ファイルが表す画像(以下、「入力画像」という)を液晶ディスプレイ200等に表示させることができる。このとき、画像ファイル中に(より詳しくは、画像ファイル中のEXIF情報内のメーカノート領域に)、マスクやハイライトに関する情報が記録されていれば、資料提示装置100は、入力画像の一部をマスク(隠蔽)したり、ハイライト(強調)させて出力する。以下では、画像ファイル中に記録されたマスクに関する情報を「マスク情報」といい、ハイライトに関する情報を「ハイライト情報」という。また、マスク情報とハイライト情報とを併せて「重畳情報」という。
【0022】
図2は、重畳情報が記録された画像ファイルの例を示す説明図である。図2(a)に示すように、画像ファイルには、EXIF情報が記録される領域と、画像データが記録される領域とが備えられている。画像データは、例えば、JPEG形式のデータである。本実施例では、EXIF情報内のメーカノート領域に、重畳情報が記録されている。
【0023】
図2(b)には、重畳情報としてマスク情報が記録されている例を示している。重畳情報には、複数のマスク情報を記録することができ、各マスク情報は、「順位」と「種別フラグ」と「範囲データ」と「濃度」とを含んでいる。「順位」は、そのマスクを消去する順序を示しており、「種別フラグ」は、その重畳情報が、マスク情報かハイライト情報の何れであるかを示している。本実施例では、重畳情報がマスク情報を示す場合には種別フラグは「0」に設定されており、ハイライト情報を示す場合には種別フラグは「1」に設定されている。「範囲データ」は、マスクを行う範囲とその配置位置を示しており、マスクを行う左上の座標P1と右下の座標P2とが記録されている。「濃度」は、そのマスクの色(本実施例では黒色)の濃さを示している。以下では、このマスク情報によって表される矩形状の画像のことを、「マスク画像」という。なお、マスク情報には、これらの情報以外にも、マスクの形状や色、模様を表す情報や、透過度を表す情報などが記録されていてもよい。
【0024】
図2(c)には、重畳情報としてハイライト情報が記録されている例を示している。ハイライト情報は、「順位」と「種別フラグ」と「範囲データ」と「透過度」とを含んでいる。「範囲データ」は、ハイライトを行う位置と範囲とを示しており、ハイライトを行う部分(以下、「ハイライト領域」という)の左上の座標P3と右下の座標P4、および、その周囲をマスクする領域(以下、「マスキング領域」という)の左上の座標P5と右下の座標P6とが記録されている。「透過度」としては、ハイライト領域の透過度A1と、マスキング領域の透過度A2とが記録される。以下では、このハイライト情報によって表される額縁状の画像のことを、「ハイライト画像」という。なお、ハイライト情報には、これらの情報以外にも、ハイライト領域やマスキング領域の形状や色、模様を表す情報などが記録されていてもよい。また、本実施例では、ハイライト情報は、重畳情報内に1つだけ記録されていることとする。そのため、「順位」の記録は省略することとしてもよい。また、本実施例では、ハイライト情報内にマスキング領域が記録されていることとしたが、マスキング領域は省略することとしてもよい。この場合、ハイライト領域以外の領域を、すべてマスキング領域として扱うこととする。
【0025】
図2に示した画像ファイルは、例えば、コンピュータにインストールされた専用のアプリケーションを用いて生成することができる。例えば、ユーザは、このアプリケーションを用いて、マスクやハイライトを設定する対象の画像を画面に表示させ、この画像上に、マウスやタブレット等によってマスクやハイライトの範囲、濃度等を設定する。そして、これらの設定が完了すれば、アプリケーションは、これらの設定内容をEXIF情報のメーカノート領域に書き込んだ画像ファイルを生成して、メモリカード300に記録する。こうすることにより、図2に示した画像ファイルを生成することができる。なお、資料提示装置100に上述したアプリケーションと同等の機能を組み込むことでも、図2に示した画像ファイルを生成することが可能である。なお、本実施例では、図2(b)に示したマスク情報と図2(c)に示したハイライト情報は、1つの画像ファイル内に混在せず、どちらか一方のみが記録されることとする。
【0026】
図3は、資料提示装置100の内部構成を示すブロック図である。図中、破線内に示した部分は、カメラヘッド140内の構成を示しており、他の部分は主として本体110内の構成を示している。
【0027】
カメラヘッド140は、資料STを撮像するためのレンズユニット141と、レンズユニット141によって集光された光を電気信号に変換するCMOSイメージセンサ142と、CMOSイメージセンサ142から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログフロントエンド143と、CMOSイメージセンサ142およびアナログフロントエンド143が動作するための基準パルスを出力するタイミングジェネレータ144と、を備えている。なお、CMOSイメージセンサ142に替えて、CCDイメージセンサを用いることも可能である。
【0028】
レンズユニット141は、複数のレンズから構成され、ズームレンズ148を備えている。カメラヘッド140内には、このズームレンズ148をテレ側およびワイド側に移動させて光学ズームを行うためのズームモータ145や、このズームモータ145を駆動するためのドライバIC146を備えている。ドライバIC146は、レンズ制御マイコン147に接続されており、このレンズ制御マイコン147からの指示に応じてズームモータ145に出力する信号の周波数や電圧を調整することによりズーム方向やズーム速度を制御する。
【0029】
アナログフロントエンド143から出力された画像信号は、画像処理プロセッサ130に入力される。画像処理プロセッサ130には、USB端子156とメモリカードスロット158とが接続されている。画像処理プロセッサ130は、アナログフロントエンド143から画像を入力することが可能であり、さらに、メモリカードスロット158に挿入されたメモリカード300や、USB端子156に接続されたコンピュータからも画像を入力することが可能である。
【0030】
画像処理プロセッサ130は、アナログフロントエンド143や、メモリカードスロット158に挿入されたメモリカード300、あるいはUSB端子156に接続されたコンピュータから画像を取得してRAM139内に一時的に記憶する。そして、このRAM139を作業領域として、取得した画像に対して種々の画像処理を施す。画像処理プロセッサ130が施す画像処理としては、例えば、ホワイトバランスの調整や、ガンマ補正、エッジ強調処理、などがある。
【0031】
画像処理プロセッサ130は、内部回路として、メモリカード300に記録された画像ファイルから重畳情報を取得する重畳情報取得回路132と、マスクを行うためのマスク回路134と、ハイライトを行うためのハイライト回路136と、電子ズームやスクロールを行うためのズームスクロール回路138と、を備えている。
【0032】
画像処理プロセッサ130によって画像処理の施された画像信号は、スケーリング回路160に出力される。スケーリング回路160は、画像処理プロセッサ130から出力される画像信号の解像度(例えば、1280×1024)を、サブマイコン166からの指令に応じて、アナログRGB出力に適した解像度(例えば、1024×768)に変換する。
【0033】
スケーリング回路320には、DAC162が接続されている。DAC162は、スケーリング(解像度変換)された画像信号にD/A変換を施し、アナログRGB信号を生成する。DAC162は、セレクタ回路164に接続され、このセレクタ回路164には、さらに、アナログRGB入力端子150が接続される。セレクタ回路164は、サブマイコン166からの指示に従い、画像信号の入力元を、DAC162もしくはアナログRGB入力端子150のいずれかに切り換える。セレクタ回路164から出力された画像信号は、アナログRGB出力端子152とダウンコンバータ168とに出力される。ダウンコンバータ168は、入力されたアナログRGB信号をコンポジット信号に変換し、この信号をコンポジット出力端子154に出力する。
【0034】
本体110は、更に、操作パネル120を備えている。操作パネル120には、例えば、メモリカード300に記録された画像ファイルを再生するための画像再生ボタン121や、次の画像を表示させるためのページ送りボタン122、マスクに関する操作を行うためのマスクボタン123、ハイライトに関する操作を行うためのハイライトボタン124、が備えられている。また、操作パネル120には、その他にも、セレクタ回路164が入力する画像信号の入力元を切り換えるためのセレクトボタン125や、ズームを行うためのズームボタン126、画像をスクロールさせるためのスクロールボタン127、が備えられている。ズームボタン126が操作されると、カメラヘッド140によって撮影された画像が出力されている場合には光学ズームが電子ズームに優先して行われ、メモリカード300に記録された画像の再生が行われている場合には電子ズームのみが行われる。また、スクロールボタン127は、電子ズームを行っている場合にのみ機能する。
【0035】
操作パネル120には、サブマイコン166が接続されている。サブマイコン166は、操作パネル120から種々の操作信号を受け付け、この操作信号を画像処理プロセッサ130やレンズ制御マイコン147等に出力する。更に、サブマイコン166には、リモコン受信部170も接続されており、操作パネル120から受信する操作信号と同種の信号を、リモコン受信部170を介してリモコン190から受信する。
【0036】
B.各種処理:
(B−1)画像再生処理:
図4は、資料提示装置100の画像処理プロセッサ130によって実行される画像再生処理のフローチャートである。この画像再生処理は、操作パネル120(あるいはリモコン190。以下同じ)の画像再生ボタン121が押された場合に実行される。操作パネル120の画像再生ボタン121が再度押されると、サブマイコン166から割り込みがかかり、画像処理プロセッサ130には、この画像再生処理を終了させる。
【0037】
この画像再生処理が実行されると、まず、画像処理プロセッサ130は、メモリカードスロット158に挿入されたメモリカード300から、画像ファイルを1つ読み込む(ステップS100)。画像ファイルがメモリカード300に複数記録されている場合には、画像処理プロセッサ130は、ファイル名順に画像ファイルの読み込みを行う。なお、ファイル名順以外にも、その他、例えば、画像ファイルの生成日時順やメモリカード300への記録順に読み込みを行うものとしてもよい。
【0038】
画像ファイルを1つ読み込むと、画像処理プロセッサ130は、重畳情報取得回路132によって、読み込んだ画像ファイルのEXIF情報内に重畳情報(図2参照)が記録されているかを判断する(ステップS102)。重畳情報が記録されていなければ、画像処理プロセッサ130は、読み込んだ画像ファイル中の画像データが表す画像(入力画像)をそのまま出力する(ステップS104)。画像処理プロセッサ130から入力画像が出力されると、スケーリング回路160やDAC162等を通じて、液晶ディスプレイ200等にその画像が表示される。
【0039】
ステップS104において入力画像の出力を行うと、画像処理プロセッサ130は、操作パネル120のページ送りボタン122が押されるまで待機する(ステップS106)。この間に、操作パネル120のズームボタン126やスクロールボタン127が押された場合には、画像処理プロセッサ130は、ズームスクロール回路138の働きによって、入力画像の電子ズームやスクロールを行う。
【0040】
ステップS102において、画像ファイルのEXIF情報内に重畳情報が記録されていると判断すると、画像処理プロセッサ130は、更に、重畳情報内の種別フラグを参照して、重畳情報の種別が、マスク情報であるかハイライト情報であるかを判断する(ステップS108)。重畳情報の種別がマスク情報であれば、画像処理プロセッサ130は、後述するマスク処理を実行し(ステップS110)、ハイライト情報であれば、後述するハイライト処理(ステップS112)を実行する。画像処理プロセッサ130は、以上で説明した画像再生処理を、画像再生ボタンが再度押されるまで、繰り返し実行する。
【0041】
(B−2)マスク処理:
図5は、上述した画像再生処理のステップS110で実行されるマスク処理の詳細なフローチャートである。このマスク処理が実行されると、まず、画像処理プロセッサ130は、マスク回路134によって、画像ファイル中のマスク情報によって表される全てのマスク画像を入力画像上に重畳させて出力する(ステップS200)。つまり、本実施例では、画像ファイル内にマスク情報が記録されていれば、ユーザからの特別な操作なしに、入力画像にマスク画像が重畳されて出力されることになる。
【0042】
続いて、画像処理プロセッサ130は、マスクボタン123が押されたかを判断する(ステップS202)。マスクボタン123が押されれば、現在、マスク画像を1つ以上表示しているかを判断する(ステップS204)。マスク画像が1つ以上表示されていれば、画像処理プロセッサ130は、マスク回路134によって、現在、入力画像に重畳させているマスク画像を1つ消去する(ステップS206)。このとき、マスク回路134は、マスク情報内に記録された順位に従って、消去するマスク画像を決定する。このように、本実施例では、マスク情報内に記録された順位に従って消去するマスク画像を決定するが、マスク情報が画像ファイル内に記録されている順番に従って消去してもよい。この場合、マスク情報内に予め順位を登録しておく必要はない。
【0043】
ステップS204において、現在、マスク画像を表示していないと判断すると、画像処理プロセッサ130は、マスク回路134に、全てのマスク画像を再表示させる(ステップS208)。つまり、本実施例では、マスクボタン123が押されるたびに、1つずつマスク画像が消去され、マスク画像がすべて消去された後に更にマスクボタン123が押されると、再び、全てのマスク画像が表示されることになる。
【0044】
ステップS202において、マスクボタン123が押されていないと判断された場合や、マスク画像の消去(ステップS206)、あるいは、全マスク画像の再表示(ステップS208)が行われた後には、画像処理プロセッサ130は、ズームボタン126やスクロールボタン127による操作がなされたかを判断する(ステップS210)。ズームボタン126やスクロールボタン127の操作がされれば、ズームスクロール回路138によって、ズーム/スクロール処理を行う(ステップS212)。ズームスクロール回路138は、このズーム/スクロール処理において、入力画像の電子ズームやスクロールを行うとともに、入力画像に重畳されているマスク画像についても、入力画像と同様に、電子ズームやスクロールを行う。ズームボタン126やスクロールボタン127の操作がなければ、画像処理プロセッサ130は、ステップS212の処理をスキップする。
【0045】
図6は、ズーム/スクロール処理の概念を示す図である。図6に示した領域AR1は、電子ズームおよびスクロール前に画面全体に表示されている入力画像全体の領域であり、領域AR2は、電子ズームおよびスクロール後に画面全体に拡大されて表示される入力画像内の一部の領域である。例えば、領域AR1に対する領域AR2の拡大率が「MAG」であり、領域AR2の中心が領域AR1の中心からスクロールして移動した距離が、X方向に「Xsc」、Y方向に「Ysc」、だとする。そうすると、上記ステップS212のズーム/スクロール処理では、図6に示すように、各マスク画像の左上の座標(X11,Y11)は、(X11*MAG−Xsc,Y11*MAG−Ysc)に変換され、右下の座標(X12,Y12)は、(X12*MAG−Xsc,Y12*MAG−Ysc)に変換される。各マスク画像は、こうして変換された座標に基づいて、電子ズームおよびスクロール後の入力画像(領域AR2)に重畳されて出力される。そのため、図6に示すように、電子ズーム前後およびスクロール前後において、入力画像上に配置されるマスク画像の相対的な位置および範囲は不変となり、マスク画像がこれまでマスクしてきた範囲からずれることがない。
【0046】
ズーム/スクロール処理が終了すると(あるいは、スキップされると)、最後に、画像処理プロセッサ130は、ページ送りボタン122が押されたかを判断する(ステップS214)。ページ送りボタン122が押されていなければ、画像処理プロセッサ130は、ステップS202に処理を戻す。一方、ページ送りボタン122が押されれば、当該マスク処理を終了する。このマスク処理が終了すれば、画像処理プロセッサ130は、図4に示した画像再生処理に処理を戻す。そのため、画像再生処理のステップS100によって、次の画像ファイルが読み込まれることになる。
【0047】
(B−3)ハイライト処理:
図7は、上述した画像再生処理のステップS112(図4)で実行されるハイライト処理の詳細なフローチャートである。このハイライト処理が実行されると、画像処理プロセッサ130は、まず、ハイライト回路136によって、画像ファイル中のハイライト情報によって表されるハイライト画像を入力画像上に重畳させて出力する(ステップS300)。つまり、本実施例では、画像ファイル内にハイライト情報が記録されていれば、ユーザからの特別な操作なしに、画像上の予め指定された部分がハイライト表示されることになる。
【0048】
続いて、画像処理プロセッサ130は、操作パネル120のハイライトボタン124が押されたかを判断する(ステップS302)。ハイライトボタン124が押されれば、画像処理プロセッサ130は、現在、ハイライト画像を表示しているかを判断する(ステップS304)。ハイライト画像を表示していれば、画像処理プロセッサ130は、ハイライト回路136によって、ハイライト画像を消去する(ステップS306)。
【0049】
ステップS304において、現在、ハイライト画像を表示していないと判断すると、画像処理プロセッサ130は、ハイライト回路136によって、ハイライト画像を再表示する(ステップS308)。つまり、本実施例では、ハイライトボタン124が押されるたびに、ハイライト画像の表示と非表示とが繰り返されることになる。
【0050】
ステップS302において、ハイライトボタンが押されていないと判断された場合や、ハイライト画像の消去(ステップS306)、あるいは、再表示(ステップS308)が行われた後には、画像処理プロセッサ130は、ズームボタン126やスクロールボタン127による操作がなされたかを判断する(ステップS310)。ズームボタン126やスクロールボタン127の操作がなされれば、ズームスクロール回路138によって、ズーム/スクロール処理を行う(ステップS312)。このズーム/スクロール処理は、上述したマスク処理におけるズーム/スクロール処理(図6参照)と同様である。ズームボタン126やスクロールボタン127の操作がなければ、画像処理プロセッサ130は、ステップS312の処理をスキップする。
【0051】
最後に、画像処理プロセッサ130は、ページ送りボタン122が押されたかを判断する(ステップS314)。ページ送りボタン122が押されていなければ、画像処理プロセッサ130は、ステップS302に処理を戻す。一方、ページ送りボタン122が押されれば、当該ハイライト処理を終了する。このハイライト処理が終了すれば、画像処理プロセッサ130は、図4に示した画像再生処理に処理を戻す。そのため、画像再生処理のステップS100によって、次の画像ファイルが読み込まれることになる。
【0052】
以上で説明した本実施例によれば、画像ファイル毎に、そのEXIF情報内に、予め、マスク画像やハイライト画像を配置する位置や範囲が設定されているので、プレゼンテーションの最中に、これらの設定を行う必要がない。この結果、プレゼンテーションをスムーズに進めることができる。更に、本実施例では、画像ファイル中にマスク情報が記録されていれば、自動的に、入力画像上にマスク画像が重畳されて表示される。そのため、マスクしようとする部分がマスク画像に先だって表示されることがない。この結果、学校の授業等において、答案用紙を表す画像の正答部分が先に表示されてしまうことなどを抑制することができる。
【0053】
更に、本実施例では、画像ファイル中のEXIF情報内にマスク情報やハイライト情報を記録することとしたため、画像データ自体の情報量を低下させることなく、マスク画像やハイライト画像を重畳させることが可能になる。そのため、マスク画像やハイライト画像を消去したとしても、その背後に隠れている画像を容易に再表示させることができる。また、画像ファイル中のEXIF情報内にマスク情報やハイライト情報を記録すれば、マスク情報やハイライト情報と画像データとを別々に管理する必要がないので、これらのデータの取り扱いが容易になる。
【0054】
更に、本実施例では、入力画像を電子ズームやスクロールさせた場合には、マスク画像やハイライト画像についても、入力画像と同様に、電子ズームやスクロールを行うこととした。そのため、入力画像の電子ズームやスクロールによって、マスクしたい部分が見えてしまったり、ハイライトしたい部分がずれてしまったりすることを抑制することができる。以上で説明したように、本実施例の資料提示装置100によれば、マスク機能やハイライト機能の利便性を大幅に向上させることが可能になる。
【0055】
C.変形例:
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明はこのような実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができる。例えば、以下のような変形が可能である。
【0056】
・変形例1:
上記実施例では、ハイライト情報が画像ファイルに記録されている場合には、自動的に、ハイライト画像が入力画像に重畳されることとした。しかし、例えば、画像ファイルにハイライト情報が記録されている場合には、初期状態では、入力画像をトーンを落とした状態で表示させ、ハイライトボタンが押されたときにはじめて、ハイライト画像が入力画像に重畳されることとしてもよい。こうすることで、ユーザが自分のタイミングでハイライト表示を行うことが可能になる。
【0057】
・変形例2:
上記実施例では、ハイライト画像は、ハイライト情報で指定された座標に固定されて表示される。しかし、ハイライト画像は、操作パネル120による操作によって、入力画像上を移動可能としてもよい。また、同様に、マスク画像を移動可能としてもよい。
【0058】
・変形例3:
上記実施例では、ハイライト画像は、入力画像上に1つだけ重畳されることとした。しかし、ハイライト画像は、マスク画像と同様に、複数、入力画像上に重畳させても構わない。ただし、複数のハイライト画像を重畳する際には、あるハイライト画像のハイライト領域と他のハイライト画像のマスキング領域とが重畳する場合に、ハイライト領域の透過度がマスキング領域の透過度よりも優先されることとする。こうすることで、あるハイライト画像のハイライト領域が、他のハイライト画像のマスキング領域によって覆われてしまうことを防止することができる。
【0059】
・変形例4:
上記実施例では、電子ズームやスクロールの操作に応じて、入力画像と共に、マスク画像やハイライト画像についても電子ズームやスクロールを行うこととした。これに加え、入力画像が回転された場合には、その回転角度に応じて、マスク画像やハイライト画像についても回転を行うこととしてもよい。
【0060】
・変形例5:
上記実施例では、マスク情報に記録された順位に従って、マスク画像の消去を行うこととした。これに対して、マスク画像の消去や再表示は、マスク画像毎に個別に行うこととしてもよい。例えば、ユーザが操作パネル120やリモコン190で、マスク画像の表示位置(表示されている位置と表示されるべき位置とを含む)に順番にフォーカスが当たるカーソルを移動させ、希望の位置でマスクボタンを押すことにより、その位置のマスク画像の表示と非表示とを切り換えるようにしてもよい。こうすることで、マスク機能の利便性を高めることが可能になる。
【0061】
・変形例6:
上記実施例では、ページ送りボタン122が押された場合に、次の画像ファイルが読み込まれることとしたが、ページ戻しボタンを用意し、このページ戻しボタンが押されれば、前の画像ファイルが読み込まれることとしてもよい。
【0062】
・変形例7:
上記実施例では、画像ファイルのEXIF情報内に重畳情報(マスク情報およびハイライト情報)が記録されることとした。しかし、重畳情報は、EXIF情報に限られず、画像ファイル内の他の領域に記録されていてもよい。また、重畳情報は、画像ファイルとは分離して記録されていることとしてもよい。例えば、メモリカード300内に、画像ファイルとは別個に、重畳情報データとして記録されていることとしてもよい。また、資料提示装置100内のメモリ内に記録されていることとしてもよい。このように、画像ファイルと重畳情報とを分離して管理する場合には、画像ファイルのファイル名と、各重畳情報を対応付けておく。こうすることで、取得した画像ファイルに対応する重畳情報を適切に取得することが可能になる。
【0063】
・変形例8:
上記実施例では、マスク画像やハイライト画像が重畳された画像は、液晶ディスプレイ200等の外部表示装置に表示されることとした。これに対して、例えば、USB端子156に接続されているコンピュータに画像を出力することとしてもよい。
【0064】
・変形例9:
上記実施例では、マスク画像とハイライト画像とはそれぞれ別々に画面上に表示されることとした。これに対して、例えば、画像ファイル内の重畳情報に、マスク情報とハイライト情報とが混在して記録されることを許容し、これらが画像ファイル内に混在している場合には、マスク画像とハイライト画像とを、同一画面上に表示することとしてもよい。こうすることにより、多様なプレゼンテーションを行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0065】
100…資料提示装置
110…本体
115…支柱
120…操作パネル
121…画像再生ボタン
122…ページ送りボタン
123…マスクボタン
124…ハイライトボタン
125…セレクトボタン
126…ズームボタン
127…スクロールボタン
130…画像処理プロセッサ
132…重畳情報取得回路
134…マスク回路
136…ハイライト回路
138…ズームスクロール回路
140…カメラヘッド
141…レンズユニット
143…アナログフロントエンド
144…タイミングジェネレータ
145…ズームモータ
146…ドライバIC
147…レンズ制御マイコン
148…ズームレンズ
150…アナログRGB入力端子
152…アナログRGB出力端子
154…コンポジット出力端子
156…USB端子
158…メモリカードスロット
160…スケーリング回路
164…セレクタ回路
166…サブマイコン
168…ダウンコンバータ
170…リモコン受信部
190…リモコン
200…液晶ディスプレイ
300…メモリカード
320…スケーリング回路
ST…資料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
資料提示装置であって、
第1の画像を表す画像データを取得する画像データ取得部と、
前記第1の画像の少なくとも一部をマスクまたはハイライト表示するために該第1の画像上に重畳させる第2の画像の少なくとも配置位置が予め記録された重畳情報を取得する重畳情報取得部と、
前記取得された画像データに対応する重畳情報が取得された場合に、前記取得された画像データが表す第1の画像に対して、前記取得された重畳情報に基づき前記第2の画像を重畳させて出力する画像処理部と、
前記第2の画像を消去するための操作を受け付ける操作受付部と、を備え、
前記画像処理部は、前記操作受付部によって前記操作を受け付けた場合に、前記第2の画像を消去して、前記第1の画像の出力を行う、
資料提示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の資料提示装置であって、
前記画像処理部は、前記取得された重畳情報に、前記第2の画像の配置位置が2以上記録されている場合には、該配置位置のそれぞれに対して前記第2の画像を重畳させ、
前記画像処理部は、前記操作受付部によって前記操作を受け付けるたびに、前記第2の画像を所定の順序で消去する、資料提示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の資料提示装置であって、
前記重畳情報には、前記消去を行う順序に関する順序情報が含まれており、
前記画像処理部は、前記順序情報に従って、前記第2の画像の消去を行う、資料提示装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の資料提示装置であって、
前記画像処理部は、前記第2の画像のすべてを消去した後に前記操作受付部によって前記操作を受け付けた場合に、前記第2の画像を再度すべて前記第1の画像に重畳させる、資料提示装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の資料提示装置であって、
前記重畳情報には、前記第2の画像の種別を表す種別情報が記録されており、
前記画像処理部は、前記種別情報に応じた形態の第2の画像を前記画像に重畳する、資料提示装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の資料提示装置であって、
前記重畳情報は、前記画像データを含む画像ファイル内に記録されている、資料提示装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の資料提示装置であって、
更に、前記重畳情報を前記画像データに対応付けて記憶する重畳情報記憶部を備え、
前記重畳情報取得部は、前記重畳情報記憶部から前記重畳情報を取得する、資料提示装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の資料提示装置であって、
前記操作受付部は、更に、前記第1の画像に対するズームまたはスクロールの指示を受け付け、
前記画像処理部は、前記ズームまたはスクロールの指示に応じた拡大率または移動量で前記第1の画像をズームまたはスクロールさせ、かつ、前記第2の画像についても、前記拡大率または前記移動量で、ズームまたはスクロールさせる、資料提示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−135474(P2011−135474A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294875(P2009−294875)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000000424)株式会社エルモ社 (104)
【Fターム(参考)】