説明

資材

【課題】再生使用可能な資材を提供する。
【解決手段】
米粉等と水とを混錬した生地を伸ばして形成されたでんぷん層52を、繊維集合体で構成される第1の層51と、第2の層53で挟んで形成された資材であって、でんぷん層52の含有する水分量が多い場合には、軟質のシート材となり、水分量が少ない場合には、硬い板状の資材となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、資材に係り、詳しくは、再生可能な資材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の資材は、紙材、木材、合成樹脂材、コンクリート材など多数の材料によって構成された多種類のものが存在する。これらの資材は、建築現場の建材、包装材など用途も多数に昇る。
【0003】
この様な資材が建物の解体などによって廃棄物とされた場合、処理施設における焼却や再生、予め定められた場所への投棄などにより処分される。
【0004】
このような資材は、環境負荷を軽減するためには、リサイクル可能な資材であることが好ましい。例えば、包装材として使用される段ボール紙などは、紙材であり、再生紙によって構成され、かつまた、使用済の段ボール紙は、再生処理により繰り返し使用が可能である。段ボール紙などの包装材は、一般にセルロースなどの繊維によって構成されており、それ自体では強度は高くなく、また水に濡れることによって、強度が急激に低下するといった特性を備えている。このような水による強度の悪化を防止するため、特許文献1のような合成樹脂のシートを被着させた包装材が提案されている。
【0005】
また、更に高い強度が必要とされる場合には、紙材で賄うことはできず、木材、合成樹脂などの材料が利用されるが、これらの材料は、紙材とは異なり、チップ化することで、他の資材の原料にされるなど、再生による再使用を効率よく行うことはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−315356号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記先行特許文献に記載の発明では、合成樹脂シートが被着されていることから、使用済の包装材を再生する際、合成樹脂シートを剥がす必要があり、作業工程が増え、再生コストが高価となるといった問題点があった。
【0008】
この発明は、水濡れによる強度の悪化を抑制するとともに、再生が容易な資材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上のような問題を解決する本発明は、以下のような構成を有する。
【0010】
(1)各々繊維集合体からなる第1の層と第2の層と、前記第1の層と前記第2の層の間に配置され水分を透過しない水分不透過層とを有し、前記水分不透過層は、でんぷんを主成分とする生地で構成されていることを特徴とする資材。
【0011】
(2)前記繊維集合体は、セルロースの集合体である上記(1)に記載の資材。
【0012】
(3)前記水分不透過層は、米粉、タピオカ澱粉を原料に含むものである上記(1)又は(2)に記載の資材。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、水分不透過層によって、水分の浸透が抑制されるので、包装材の強度の急激な悪化を抑制できるとともに、被包装物の水濡れ、または被包装物からの水漏れ等を抑制できる。また、水分不透過層は、でんぷんで構成されているので、包装材から水分不透過層を分離することなく、包装材をそのまま再生処理することができ、再生コストの増加を抑制できるといった利点がある。第1の層と水分不透過層とを複数重ねて構成することによって、資材自体の強度を向上させることができる。従来の木材や合成樹脂材によって構成される資材が使用される部位に代わって使用可能となり、より多くの資材について、再生使用が可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、繊維集合体はセルロースの集合体であるため、一層再生使用が容易となる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、でんぷん層は、米粉、タピオカ澱粉を原料とすることで、資材としての強度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態である包装材の拡大横断面図である。
【図2】本発明の実施形態である板材の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の好適実施形態について詳説する。図1は、本発明の第1の実施形態である包装材1の拡大横断面図である。包装材1はいわゆる段ボールシート材であって、ライナー紙21にコルゲート紙22を糊付けした第1の層20と、コルゲート紙22に貼り付けられたでんぷん層3と、でんぷん層3を挟んで、第1の層の反対側に貼り付けられたライナー紙からなる第2の層23とを備えている。ライナー紙、及びコルゲート紙は、セルロース(植物繊維)の繊維集合体であり、紙を再生して作られた再生紙であり、具体的には、例えばボール紙で構成されている。
【0018】
水分不透過層であるでんぷん層3は、でんぷん粉を水と食塩とを加えて練り上げた生地を薄く延ばして構成される。でんぷん粉は、小麦粉、米粉、タピオカ澱粉の内、2種以上を混合したものであり、特に米粉とタピオカ澱粉を混合するのが好ましい。特に、タピオカ澱粉は、4〜20重量%であるのが好ましいが、特にこの割合に限定されるものではない。
【0019】
このようなでんぷん層は、例えば、米粉にタピオカ澱粉を上記割合で混合したものを水で溶き、これを薄く延ばしたものを乾燥させて生成することができる。或いは、米粉からではなく、米を一晩以上水につけておき、それを水とともにひいて液状にしたものを、蒸気の上に張った布の上に薄く延ばしてシート状とし、火を通した後、取り出して、乾燥用の網台に載せて乾燥させて生成することもできる。
【0020】
以上のように構成された本発明の包装材1を折り曲げて、直方体形状とし、包装箱を構成することにより、包装材として機能する。通常、段ボール紙は、水に濡れることによって、強度が低下する。しかし、本発明の段ボール紙は、でんぷん層3によって、水分の浸透が抑制されるので、例えばライナー紙23が濡れた場合には、ライナー紙21にコルゲート紙22で構成された第1の層20まで水分が浸透しない。これにより、コルゲート紙22の強度低下が抑制できるので、包装材の強度の悪化を防止できる。従って、でんぷん層3を、ライナー紙21とコルゲート紙22の間にも設けることにより、両面からのコルゲート紙22への水分の浸透を抑制できるので、より確実に強度の維持が可能となる。
【0021】
このような包装材1は、容器としても利用可能である。即ち、でんぷん層3をカップ状に形成し、その外側に、コルゲート紙を巻きつけ、内側に同じカップ形状に形成された紙材を重ねることにより、水状の又は水分の多い食べ物の食器として利用できる。この場合、内側の紙材で構成された器は、入れられた食べ物の水分によって強度が低下するが、外側のコルゲート紙まで水分が浸透しないので、容器全体の強度は損なわれない。さらに、でんぷん層3によって容器の厚みも増し、箸やホークなどによって容器が傷つき、内容物が漏れるといったトラブルも防止できる。
【0022】
図2は、本発明の他の実施形態の板材を示す分解斜視図である。この実施形態は、用途に応じて、厚さ、硬さを変更可能な資材4となりうる。以下に構成を説明する。資材4は、シート状又は板状の資材であって、第1の層51、でんぷん層52、第2の層53を備える。第1の層51は、繊維集合体であり、例えば、繊維としてはセルロースが挙げられ、繊維集合体としては、紙、ボール紙のほか、クッキングペーパやキッチンペーパーその他の不織布、セロハンなどが挙げられる。でんぷん層52は、既述の通りの成分構成となっている。また、第2の層53は、第1の層51と同様の構成となっている。これらの層は、密着した状態で、1枚のシート材または板材を構成する。
【0023】
でんぷん層52は、でんぷん層52の含む水分によって固さがことなり、十分水分を含む場合には、容易に湾曲可能なシート材となり、水分量が少ない乾燥状態では、硬くなり、板材となる。
【0024】
でんぷん層のみでは、引き張り強度が低く、ちぎれ易いシート材となるが、繊維集合体が重ねられることにより、十分な強度を得ることができる。なお、でんぷん層を生成する際に、繊維を生地に混錬して、でんぷん層自体の強度を向上させた構成とすることもできる。さらに、でんぷん層の水分含有量を高くし、柔らかく変形可能な状態として、型に押し当て、これを乾燥させることにより、型の形状で硬化した資材4を得ることも可能である。
【0025】
このような資材4の構成は、でんぷん層を1層のみとすることなく、繊維集合体による層と、でんぷん層とを交互に重ねたシート材又は板材とすることも可能である。この際、重ねられた各でんぷん層の成分を異なるものする(混合するでんぷん粉の種類や割合を異ならしめる。或いは、混合する繊維の種類、量や長さを異ならしめる。等)ことにより、任意の強度・硬さ・厚さの資材を生成することが可能となる。
【0026】
以上のように構成された資材は、でんぷん層と繊維集合体によって、構成されるので、再利用により、効率のよい資源の循環を行うことができる。
【0027】
他の用途としては、骨折・靭帯損傷などの治療に おいて患部が動かないよう外から固定・保護し安静を保つ為に用いられるギブスの資材として用いることができる。用法としては、柔らかい状態の本発明のシート材を、幹部の外側から巻きつけ、乾燥させ硬化させることにより、ギブスとなる。材料がでんぷんとセルロースであり、人体に及ぼす影響が少ないことが利点である。また、柔らかい状態のシート材を巻きつけるので、幹部の形状に合わせてシート材が変形して身体に密着できる。このため、任意の形状に容易に形成させることができ、確実に患部を固定できるといった利点もある。
【符号の説明】
【0028】
1 包装材
20 第1の層
21 ライナー紙
22 コルゲ―ト紙
23 ライナー紙
3 でんぷん層
4 資材
51 第1の層
52 でんぷん層
53 第2の層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々繊維集合体からなる第1の層と第2の層と、前記第1の層と前記第2の層の間に配置され水分を透過しない水分不透過層とを有し、前記水分不透過層は、でんぷんを主成分とする生地で構成されていることを特徴とする包装材。
【請求項2】
前記繊維集合体は、セルロースの集合体である請求項1に記載の包装材。
【請求項3】
前記水分不透過層は、米粉、タピオカ澱粉を原料に含むものである請求項1又は2に記載の包装材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−219145(P2011−219145A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91985(P2010−91985)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(591068218)麓技研株式会社 (8)
【Fターム(参考)】