説明

賦型シート、樹脂化粧板及びその製造方法

【課題】意匠と手触り感に優れた高級感のある緻密な賦型をすることができ、離型性に優れ、かつ耐熱性に優れた賦型シート、および、該賦型シートを用いて得られる樹脂化粧板、及び該賦型シートを用いる樹脂化粧板の製造方法の提供。
【解決手段】JIS C2318に準拠して測定された加熱収縮率(150℃×30分)が2%以下の耐熱性基材21と、融点が90〜230℃の範囲内にある樹脂からなる基材22との複合基材2の樹脂基材上に少なくとも、部分的に又は全面にわたって設けられたインキ層3と、該インキ層が形成された領域及び該インキ層が形成されていない領域とを含む全面にわたって被覆する表面賦型層5を有する賦型シートであって、該表面賦型層が硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、かつ該表面賦型層中には、該インキ層の直上部及びその近傍の上部に位置する表面賦型層の表面が凸形状を有し、さらに凹陥模様を有してなる賦型シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は賦型シート、該賦型シートを用いて得られる樹脂化粧板、及び該賦型シートを用いた樹脂化粧板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家具、机の天板、各種カウンターやドアーなどの住宅機器および内装材として用いられる建材としては、一般に合成樹脂系材料を賦型した化粧板、例えばメラミン樹脂化粧板などが幅広く用いられている。
従来、表面に凹凸形状を有する熱硬化性樹脂化粧板には、エンボス金型や樹脂凹凸シートにより凹凸形状を形成したものと、賦型シートにより凹凸形状を形成したものがある。しかし、凹凸形状を形成したエンボス金型を使用した場合は、金型をブラスト、エッチング等の表面処理する必要があるため凹凸形状および模様の緻密さに限界が生じてしまう。さらに熱硬化性樹脂化粧板製造時に、高価な型板及び予備の型板が必要となり、化粧板作製の手間と費用の負担が増えるため、製造コストも大幅に増加し製品が高価なものとなる。また、樹脂凹凸シートの場合は、熱硬化性樹脂化粧板が樹脂の硬化後、剥離しにくくなるために型板との間に、アルミニウム箔、ポリプロピレンフィルム等を挟む必要があり、微細な凹凸模様をシャープに形成することは非常に難しい。
【0003】
ところで、近年の消費者の高級品指向により、家具や机、あるいは内装材などに対しても高級感が求められるようになり、これらに用いられる化粧板においても、高級感を与える外観を有するものが望まれている。そのため、質感の付与も重要となってきており、繊細な凹凸形状を化粧板に付与する方法が種々提案されている。
例えば、基材シートの表面に電離放射線硬化性樹脂で凹凸形状を設けた賦型シートであって、賦型シートを剥離するときに凹凸形状が割れたりしないような架橋密度を有することにより所望される模様形状を忠実に再現し、かつ繰返し使用できる賦型シートが提案されている(特許文献1、特許請求の範囲参照)。しかし、賦型シートを作製する際にロール凹版から剥離する工程を介するため、凹部が細い場合には凹凸形状の表現に限界がある。
また、この方法では凹部が細い場合には、凹凸がきれいに出ないという問題がある一方、ある程度の太さの凹部がある場合には、基材表面に凹凸模様は得られるものの、隆起部の高さ以上の凸部が生じ、例えば木目模様の場合にはリアル感がなく、外観及び手触り感がよくないという問題もある。
【0004】
さらに、基材シートの表面に無機系フィラーとバインダー樹脂からなる樹脂組成物を用いて凹凸層を形成するもので、撥液性樹脂で形成された絵柄模様上に塗布された微細な凹凸層形成用の樹脂組成物だけがはじかれて凹凸層が形成される賦型シートが提案されている(特許文献2、特許請求の範囲参照)。しかし、凹凸層形成用の樹脂組成物をはじくことにより凹凸層を形成するため、凹凸形状による柄の安定性に欠けていることや、凹凸層の硬化のために一定期間のエージングを要するため、賦型シートの製作に非常に時間がかかってしまうので消費者の多様化するニーズに迅速に対応ができないという問題がある。
【0005】
一方、賦型シートを用いた樹脂化粧板を作製する場合、生産性の観点から、賦型シートをロール・トゥ・ロールでハンドリングすることが好ましい。しかし、樹脂化粧板の製造において賦型シートの加熱工程を要するような場合、上記したような賦型シートをロール・トゥ・ロールでハンドリングすると、耐熱性が不足することに起因して、該加熱工程の後で賦型シートが収縮してしまい安定した賦型が行えない、あるいは破断してしまい連続に安定した生産が行えない、といった問題もある。
【0006】
【特許文献1】特開平7−164519号公報
【特許文献2】特開平5−92484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況下で、繊細かつ大胆な凹凸形状を有し、意匠と手触り感に優れた高級感のある緻密な賦型をすることができ、離型性に優れ、かつ耐熱性に優れた賦型シート、該賦型シートを用いて得られる樹脂化粧板、及び該賦型シートを用いた樹脂化粧板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、基材上にインキ層と表面賦型層とを有し、さらに凹陥模様を施して表面賦型層に凹凸形状を持たせた賦型シートが、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)JIS C2318に準拠して測定された加熱収縮率(150℃×30分)が2%以下の耐熱性基材と、融点が90〜230℃の範囲内にある樹脂からなる基材との複合基材の樹脂基材上に少なくとも、部分的に又は全面にわたって設けられたインキ層と、該インキ層上に存在してこれと接触すると共に、該インキ層が形成された領域及び該インキ層が形成されていない領域とを含む全面にわたって被覆する表面賦型層を有する賦型シートであって、該表面賦型層が硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、かつ該表面賦型層中には、該インキ層の直上部及びその近傍の上部に位置する表面賦型層の表面が凸形状を有し、さらに凹陥模様を有してなる賦型シート、
(2)基板の上面に、接着剤層、化粧シート層を順に積層し、該化粧シート層上に樹脂組成物を塗布し、次いで賦型シートを当接して一体的に硬化させた後に、該賦型シートを剥離して樹脂層を形成した樹脂化粧板であって、該賦型シートが上記(1)に記載されるものである樹脂化粧板、及び
(3)基板の上面に、接着剤層、化粧シート層を順に積層し、該化粧シート層上に樹脂組成物を塗布し、次いで上記(1)に記載の賦型シートを当接して一体的に硬化させた後に、該賦型シートを剥離して樹脂層を形成することを特徴とする樹脂化粧板の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、繊細かつ大胆な凹凸形状を有し、意匠と手触り感に優れた高級感のある緻密な賦型をすることができ、離型性に優れ、かつ耐熱性に優れた賦型シート、該賦型シートを用いて得られる樹脂化粧板、及び該賦型シートを用いた樹脂化粧板の製造方法を得ることができる。特に木目模様のような繊細な模様に用いた場合には、導管部分の凹凸感をリアルに表現でき、賦型した化粧材は、実際の木材を用いた材料と同様の質感を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の賦型シートは、JIS C2318に準拠して測定された加熱収縮率(150℃×30分)が2%以下の耐熱性基材と、融点が90〜230℃の範囲内にある樹脂からなる基材との複合基材の樹脂基材上に少なくとも、部分的に又は全面にわたって設けられたインキ層と、該インキ層上に存在してこれと接触すると共に、該インキ層が形成された領域及び該インキ層が形成されていない領域とを含む全面にわたって被覆する表面賦型層を有する賦型シートであって、該表面賦型層が硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、かつ該表面賦型層中には、該インキ層の直上部及びその近傍の上部に位置する表面賦型層の表面が凸形状を有し、さらに凹陥模様を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の賦型シートの構造について、図1〜7を用いて説明する。図1〜7は本発明の賦型シート1の断面を示す模式図である。図1に示す例は、耐熱性基材21と樹脂基材22との複合基材2の樹脂基材22上に全面を被覆する一様均一な浸透防止層6、インキ層3、硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面賦型層5がこの順に積層されたものであり、表面賦型層5の表面には微細凹凸面13を有するものである。インキ層3は部分的に存在し、その直上部及びその近傍における表面賦型層に相互作用領域4が形成される。相互作用領域4は図中で点の集合により表現されている。
表面賦型層5の最表面における、相互作用領域4の上部は、インキ層3の形成に伴って隆起した隆起形状7を有している。さらに、エンボス加工により凹陥模様14を施すことによる相乗効果により、全体として凹凸形状を有し、さらに微細かつ大胆な凹凸形状を有する賦型シートが形成される。さらに図3に示されるようにインキ層3の厚みを変えることにより、該厚みに応じた隆起形状7を表面賦型層5の表面に発現させることで、より豊かな凹凸形状を付与することができる。
【0013】
表面賦型層5中に形成される相互作用領域4の広がりの程度については、本発明の効果を奏する範囲内であれば特に限定されず、図1又は2に示されるようにインキ層3の表面から表面賦型層5の厚み方向の途中で留まっていてもよく、また表面賦型層5の最表面に達するものであってもよい。
また、図4に示されるように、表面賦型層5に微粒子又は焼成カオリン粒子8を加えることにより発現する微細隆起形状12は、表面賦型層5の表面の全体にわたって発現する隆起形状7及び微細凹凸面13に、部分的に微細な隆起形状を与えるものである。
この表面賦型層5中の相互作用領域4による微細凹凸面13の効果、表面賦型層5の表面における微粒子の頭出しによる微細隆起形状12の効果、インキ層3及びその厚みに応じて形成される隆起形状7の効果、及びエンボス加工により施される凹陥模様14により、繊細かつ大胆な凹凸形状を有し、意匠と手触り感に優れる高級感のある緻密な賦型が可能となる賦型シートを得ることができる。
【0014】
インキ層3が全面にわたって設けられる場合には、図5に示されるように、表面賦型層5の最表面に微細凹凸面13による微細な凹凸面及び凹陥模様14が存在するため、これを賦型シートとして使用した場合には、賦型される化粧板の表面にマットでありながら手触り感に優れる樹脂化粧板を得ることができる。この場合においても、図7に示されるようにインキ層3の厚みを変えることによりインキ厚みに応じて隆起形状7が得られること、図6及び7に示されるように表面賦型層5に微粒子又は焼成カオリン粒子8を加えることで微細隆起形状12が得られることは、前述のインキ層3が部分的に設けられる場合と同様である。また、表面賦型層5中に形成される相互作用領域4の広がりの程度についても、上記と同様であり、本発明の効果を奏する範囲内であれば特に限定されず、インキ層3の表面から表面賦型層5の厚み方向の途中で留まっていてもよく、また表面賦型層5の最表面に達するものであってもよい。
【0015】
次に、本発明の賦型シートを構成する各層について詳細に説明する。
[複合基材2]
本発明で用いられる複合基材2は、JIS C2318に準拠して測定された加熱収縮率(150℃×30分)が2%以下の耐熱性基材21と、融点が90〜230℃の範囲内にある樹脂からなる基材22(以下、樹脂基材ということがある。)との複合体である。
【0016】
(耐熱性基材21)
本明細書において、耐熱性基材は、JIS C2318に準拠して測定された加熱収縮率(150℃×30分)が2%以下のものをいう。このような耐熱性基材としては、各種の紙類のほか、優れた耐熱性を有する樹脂、例えばポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などからなる基材が好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数を組み合わせて耐熱性基材として用いてもよい。
基材として用いられる各種の紙類としては、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙などが使用できる。これらの紙基材は、紙基材の繊維間ないしは他層と紙基材との層間強度を強化したり、ケバ立ち防止のため、これら紙基材に、さらに、アクリル樹脂、スチレンブタジエンゴム、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を添加(抄造後樹脂含浸、又は抄造時に内填)させたものでもよい。例えば、紙間強化紙、樹脂含浸紙などである。
これらの他、リンター紙、板紙、石膏ボード用原紙、又は紙の表面に塩化ビニル樹脂層を設けたビニル壁紙原反等、建材分野で使われることの多い各種紙が挙げられる。さらには、事務分野や通常の印刷、包装などに用いられるコート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、又は和紙などを用いることもできる。また、これらの紙とは区別されるが、紙に似た外観と性状を持つ各種繊維の織布や不織布も基材として使用することができる。各種繊維としてはガラス繊維、石綿繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、若しくは炭素繊維等の無機質繊維、又はポリエステル繊維、アクリル繊維、若しくはビニロン繊維などの合成樹脂繊維が挙げられる。
【0017】
耐熱性基材の加熱収縮率は、寸法安定性の観点から、0.5%以下であることを要し、0.3%以下が好ましく、0.2%以下がより好ましい。また、加熱収縮率が上記範囲内にあれば、凹陥模様の形成時に熱を十分にかけることができるので、意匠と手触り感に優れた高級感のある緻密な賦型シートを得ることができる。
また、耐熱性基材の厚さについては、特に制限はないが、生産性などの観点から、耐熱性基材が紙基材の場合には、秤量は、通常20〜250g/m2程度、好ましくは30〜150g/m2の範囲であり、より好ましくは30〜100g/m2の範囲であり、耐熱性基材が樹脂からなる基材の場合には、20〜150μmが好ましく、30〜100μmがより好ましい。
【0018】
(樹脂基材22)
本発明で用いられる樹脂基材は、融点が90〜230℃の範囲内にある樹脂、好ましくは融点が120〜175℃の範囲内にある樹脂、より好ましくは145〜175℃の範囲内にある樹脂からなる基材である。融点が上記範囲内にあると、良好な凹陥模様を形成することができるので好ましい。
このような樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂(線状低密度ポリエチレン樹脂を含む)、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、エチレンαオレフィン共重合体、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリブテン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマーあるいは、これらの混合物等のポリオレフィン樹脂や、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂などが好ましく挙げられる。なかでも、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
【0019】
樹脂基材は、その上下に設けられる層との密着性を向上させるために、所望により、片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
また、樹脂基材は、基材と各層との層間密着性の強化等を目的として、プライマー層を形成する等の処理を施してもよい。
【0020】
樹脂基材の厚さについては特に制限はないが、1〜100μmの範囲が好ましく、より好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは10〜30μmの範囲である。樹脂基材の厚さが上記範囲内にあれば、良好な生産性を確保するとともに、賦型シートに良好な凹陥模様を施すことができるので好ましい。
【0021】
[浸透防止層6]
浸透防止層6は、所望により設けられる層であって、後述するインキ層3を構成するインキ及び表面賦型層5を構成する硬化性樹脂が、複合基材2中に浸透することを抑制する機能を持つものである。従って、浸透防止層6は複合基材2とインキ層3の間に位置すればよい。通常は、表面賦型層5を構成する硬化性樹脂と密着性がある硬化性樹脂が架橋硬化した一様均一な層を、図1に示されるように複合基材2とインキ層3の間に設ける。このことにより、複合基材2とインキ層3及び表面賦型層5との接着性を高める機能をも併せて果たすものである。
【0022】
[インキ層3]
本発明の賦型シートにおけるインキ層3は、図1に示されるように必要に応じて設けられた浸透防止層6等の上に積層されるもので、表面賦型層5の表面に隆起形状7及び微細凹凸面13を生じさせる層である。
表面賦型層5の表面において微細凹凸面13が発生する機構については、十分解明されるには至っていないが、各種実験と観察、測定の結果から、インキ層3の表面に表面賦型層5を形成するための硬化性樹脂組成物の未硬化物を塗工した際に、各材料の組合せ、塗工条件の適当な選択によって、インキ層3の樹脂成分と表面賦型層が、一部溶出、分散、混合等の相互作用を発現することによるものと推測される。この際、インキ層3のインキと硬化性樹脂組成物の未硬化物におけるそれぞれの樹脂成分は、短時間には完全相溶状態にならずに懸濁状態となって、インキ層3の直上部及びその近傍に存在し、該懸濁状態となった部分が相互作用領域をなして、微細凹凸面13を発現させるものと考えられる。この懸濁状態を有したまま、表面賦型層を架橋硬化させることにより、かかる状態が固定されると、表面賦型層中に相互作用領域4が部分的に形成され、微細凹凸面13をなすものと推測される。
【0023】
インキ層3を形成するインキは表面賦型層5を形成する硬化性樹脂組成物との間で溶出、分散、混合等の相互作用を発現しうる性質を有するものであり、該硬化性樹脂組成物(未硬化物)との関連で適宜選定されるものである。具体的には、バインダー樹脂として非架橋性樹脂を有するインキであることが好ましく、例えば熱可塑性(非架橋型)ウレタン樹脂などが好適である。ここで、表面賦型層5を形成する硬化性樹脂組成物との相互作用をより強いものとし、さらなる模様の凹凸感を得るとの観点から、ウレタン樹脂の含有量は50質量%以上であることがさらに好ましい。
【0024】
上記ウレタン樹脂としては、非架橋型のもの、すなわち、3次元架橋して網目状の立体的分子構造を持ったものではなく、線状の分子構造を持った熱可塑性樹脂となったものを選択することが好ましい。このような非架橋型のウレタン樹脂としては、ポリオール成分として、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等のポリオールとイソシアネート成分として、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート等の脂肪族ないしは脂環式イソシアネート等のイソシアネートとを反応させてなるウレタン樹脂が挙げられる。通常ポリオール1分子中の水酸基数及びイソシアネート1分子中のイソシアネート基はそれぞれ平均2である。またウレタン樹脂の平均分子量は10,000〜50,000程度であり、ガラス転移温度(Tg)は−70〜−40℃程度のものが相互作用領域発現のために好ましい。
【0025】
また、必要に応じて、相互作用領域の発現の程度、すなわち微細凹凸面13の程度を調整するため、飽和又は不飽和のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、又は塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などを混合することができる。これらのうち、ポリエステル樹脂が好ましく、特に不飽和ポリエステル樹脂が好ましい。不飽和ポリエステル樹脂の添加量は、インキのバインダー全量に対して、10〜50質量%の範囲であることが好ましい。この範囲内であると相互作用領域発現の十分な増強効果が得られる。不飽和ポリエステル樹脂としては、不飽和ジカルボン酸とグリコールとの反応物であれば特に限定されず、不飽和ジカルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられ、グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等が挙げられる。
【0026】
インキ層3を形成するためのインキ組成物中に体質顔料を含有することが好ましい。体質顔料を含有することによって、インキ組成物にチキソ性を付与することができ、版を用いてインキ層3を印刷する際に、インキ組成物の形状が維持される。このことにより、凸部から凹部に移行する端部における凹凸形状の鮮映性(シャープネス)を強調することができ、メリハリのある意匠表現が可能となる。
本発明で用いる体質顔料としては特に限定されず、例えばシリカ、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等から適宜選択される。これらのうち吸油度、粒径、細孔容積等の材料設計の自由度が高く、意匠性、白さ、インキとしての塗工安定性に優れた材料であるシリカが好ましく、特に微粉末のシリカが好ましい。シリカの粒径としては、0.1〜5μmの範囲が好ましい。0.1μm以上であるとインキに添加した際にインキのチキソ性が極端に高くならず、またインキの粘性が上がりすぎず印刷のコントロールがしやすい。いいかえると、隆起形状のコントロールがしやすくなる。また、木目模様の作製において、導管模様部分を表現しようとした場合、導管模様部分のインキの塗布厚みが通常5μm以下であり、シリカの粒径が塗布厚みよりも小さければ粒子の頭だしが比較的押えられ目立たないことから、相互作用領域発現の状態が自然となることで、隆起形状の違和感は生じにくく、自然な仕上がりとなる。
これらの体質顔料のインキ組成物における含有量は、5〜15質量%の範囲であることが好ましい。5質量%以上であるとインキ組成物に十分なチキソ性を付与することができ、15質量%以下であると隆起形状7、及び微細凹凸面13の発現を付与する効果の低下が全く見られず好ましい。
【0027】
インキ層3を形成するインキの塗布量については、1〜50g/m2の範囲であることが好ましい。1g/m2以上であると、前述したインキと樹脂組成物との相互作用が起こり、相互作用領域が十分得られるため、賦型シート表面に十分な凹凸形状が得られる。一方50g/m2以下であると、インキの印刷に際して機械的制約がなく、また経済的にも有利である。以上の観点から、インキの塗布量はさらに1〜30g/m2、特に1〜10g/m2の範囲であることが好ましく、最も好ましくは1〜7g/m2の範囲である。
【0028】
また、インキ組成物の塗布量を変化させることにより、インキ層3を構成するインキの厚みを均一でないものとすることができ、これによって発現する隆起部分の高低差の程度が、段階的あるいは連続的に変化し、結果として賦型シートの模様を段階的に隆起形状が変化する階調模様、又は連続的に隆起の起伏が変化する連続模様とすることができる。
これは、インキ層3の塗布量が相対的に、より多くなるにしたがって、インキ層3と表面賦型層5との間の相互作用が相対的に増加して、懸濁状態の程度がより高く、隆起形状の起伏がより大きくなるためと考えられる。
【0029】
図3及び7を用いて以下詳細に説明する。図3及び7においては、インキ層3を構成するインキ3−a、3−b、及び3−cの厚みを異なるようにしている。すなわち、膜厚は相対的に3−a、3−b、3−cの順に段階的に薄くなる。こうすることによって、相互作用領域4−a、4−b、及び4−cを、段階的に変化させることができ、得られる隆起形状は、7−c、7−b、7−aの順に段階的により隆起する。これは、インキ層3を構成するインキの厚みが均一ではなく、3−a、3−b、3−cの順に、該インキの厚みが減少するように塗布されているため、インキの厚みの大きい部分はより隆起形状の起伏が著しくなり、3−a、3−b、3−cの順に階調的に凸形状の起伏が小さくなるように変化すると考えられる。こうしたインキの厚みを、さらに細かく変化させることによって、凹凸形状を連続的に変化させることもできる。
こうした構造を有する賦型シートにより一層多彩で繊細な質感を付与することが可能となる。インキ層3を構成するインキの厚みを変化させる方法は、通常、インキの塗工量を変化させることで容易に行うことができ、インキの塗工量を連続的に変化させることによって、上記段階的な変化を連続的に無段階で変化させることもできる。
【0030】
次に、図8に示す例では、複合基材2上にインキ層3が、基材表面と平行な面内において、連続的に厚みが変化するように(中央部が厚く、側部に向かうほど薄くなるように)積層され、その上に硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面賦型層5が積層されたものである。図3で示したのと同様に、インキ層の直上部及びその近傍における表面賦型層は相互作用領域を形成する。図8の例においては、インキ層の膜厚が、3−c、3−b、3−aの順に厚くなるのに対応して、相互作用領域4−c、4−b、4−aの順に隆起形状の起伏が連続的に増加する。その結果、表面賦型層5はこの順番に、隆起形状の起伏が連続的に増加する。
【0031】
[表面賦型層5]
(硬化性樹脂組成物)
表面賦型層5は前述のように硬化性樹脂組成物が架橋硬化したもので構成される。ここで、硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂、必要に応じて添加される成分、及び各種添加剤等からなるものであり、例えば、硬化性樹脂が後述する電離放射線硬化性樹脂である場合は、電離放射線硬化性樹脂組成物という。
印刷によって表面賦型層を形成するには、硬化性樹脂組成物には印刷適性が必要である。また、印刷でパターンを形成するには、グラビア版から、賦型シートに転移したとき、転移パターンがだれないように設定する必要がある。このような理由から、常温での粘度の高い樹脂を主に使用する必要がある。具体的には、重合性オリゴマーやプレポリマーを主な樹脂とし、これに体質顔料を添加し、硬化性樹脂組成物のチキソ性を向上させることが好ましい。体質顔料としては、前述したインキ層3に用いられるものを好ましく用いることができる。さらに、溶剤希釈を行い、印刷可能な粘度まで下げて、印刷でパターンを形成後、加熱での溶剤乾燥を行い、加熱、電離放射線照射などの方法にて架橋硬化する。また、耐熱性、架橋密度を上げるため、多官能の重合性モノマーを添加しても良い。
【0032】
硬化性樹脂組成物中の硬化性樹脂としては特に制限はなく、例えば、メラミン系、ユリア系、エポキシ系、ケトン系、ジアリルフタレート系、不飽和ポリエステル系、及びフェノール系等の熱硬化性樹脂、あるいは電離放射線硬化性樹脂を挙げることができる。なかでも、賦型シートの表面強度を向上させる観点から電離放射線硬化性樹脂が好ましい。
ここで、電離放射線硬化性樹脂とは、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線または電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂をいう。具体的には、従来電離放射線硬化性の樹脂として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
代表的には、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート単量体が好適であり、(メタ)アクリレート単量体を含むことによって、前述のインキ層を構成するインキ組成物との相互作用が生じ、隆起形状の起伏の差を好適に形成するものである。該インキ組成物との相互作用をより強いものとし、さらなる隆起形状の起伏の差、及び微細凹凸面を得るとの観点から、(メタ)アクリレート単量体の含有量は50質量%以上であることがさらに好ましい。
【0033】
(メタ)アクリレート単量体としては、多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系のオリゴマーなどが挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0036】
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー等がある。
【0037】
本発明においては、前述のようにインキ層3を構成するインキ組成物と表面賦型層5を構成する電離放射線硬化性樹脂組成物との相互作用が重要であり、この観点から適当なインキ組成物と電離放射線硬化性樹脂組成物とが選定されるが、電離放射線硬化性樹脂組成物中の硬化性樹脂としては、多官能性(メタ)アクリレートモノマーを含有することが好ましい。
【0038】
電離放射線硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を硬化性樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する重合性モノマーや重合性オリゴマーに対しては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタールなどが挙げられる。
【0039】
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
【0040】
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂として電子線硬化性樹脂を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、また光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
【0041】
(微粒子)
また、本発明に用いられる硬化性樹脂組成物には、さらに微粒子が配合されることが好ましい。この微粒子としては、平均粒径が、前記インキ層3の直上部に位置する表面賦型層5の最大厚さのプラス側近傍値であるものが用いられる。微粒子が配合された本発明の賦型シートについて、図4を用いて詳細に説明する。図4は、硬化性樹脂組成物に微粒子を配合した賦型シートの断面を示す模式図である。
【0042】
表面賦型層に配合された微粒子8(8−a,8−b)は、その平均粒径dAが、インキ層3の直上部に位置する表面賦型層5の最大厚さtMのプラス側近傍値、すなわちdAがtMよりも若干大きく、インキ層3の直上部に位置する表面賦型層5の表面から、該微粒子8−aの頭出しが起こる。この頭出しが起こった部分は微細隆起形状12を形成するために、微細な凹凸感を形成することができる。これと同時に、表面賦型層5の内部では、インキ層3におけるインキと、表面賦型層5を構成する硬化性樹脂組成物との相互作用によって、インキ層3の直上部及びその近傍部に隆起形状を発現させる相互作用領域4が形成される。
一方、インキ層3の直上部ではない部分に位置する微粒子8−bは、頭出しをすることがなく、凸形状の発現には寄与しないが、このように表面賦型層内における微粒子の位置による凸形状の発現に対する効果は様々である。
【0043】
従って、この表面賦型層5中の相互作用領域4による微細凹凸面13と、該表面賦型層5の表面における微粒子の頭出しによる微細隆起形状12の効果、前記したインキ層3及びその厚みに応じて形成される隆起形状7の効果、及びエンボス加工により施される凹陥模様14により、表面賦型層の表面に発現する凹凸形状は、繊細かつ大胆であり、意匠と手触り感に優れる高級感のある緻密なものとなる。
なお、インキ層3の直上部に位置する表面賦型層5の最大厚さtMとは、上記インキ層3の形成に伴う凸形状が形成されない場合には、表面賦型層5の厚さであり、該凸形状が形成される場合には、その部分を含んだ厚さである。
【0044】
前記微粒子は、粒度分布が単分散に近いほど、その使用量の設定が容易であると共に、少ない使用量で前記効果が良好に発揮されるので好ましい。
本発明においては、当該微粒子の粒度分布の変動係数CV値[(粒径の標準偏差/平均粒径)×100]は、30%以下であることが好ましい。前記CV値が30%以下であれば、当該微粒子は、実用的な粒度分布を有し、かつ適度の使用量で前記効果を十分に発揮することができる。このCV値は、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下である。
【0045】
さらに、当該微粒子の平均粒径をdA、インキ層の直上部に位置する表面賦型層の最大厚さをtM、インキ層が存在しない領域の表面賦型層の厚さをtGとした場合、式(I)
1.05×tM≦dA≦tG ・・・(I)
の関係を満たすことが好ましい。当該微粒子の平均粒径dAが、1.05×tM以上であれば、インキ層に当該微粒子の沈み込みが生じたとしても、該インキ層の直上部に位置する表面賦型層の表面に当該微粒子の頭出しが生じ、前記効果が十分に発揮される。また、該dAがtG以下であれば、インキ層が存在しない領域における表面賦型層において、当該微粒子の頭出しが抑制される。
当該微粒子の形状については特に制限はなく、球状、楕円体状、多面体状などの微粒子を用いることができるが、球状微粒子が好ましい。なお、本発明においては、球状以外の形状の微粒子の粒径は、外接球の直径で示される値とする。
【0046】
硬化性樹脂組成物中の当該微粒子の含有量は、当該微粒子の平均粒径や粒度分布の変動係数CV値などにもよるが、通常2〜20質量%の範囲で選定される。この含有量が2質量%以上であれば、当該微粒子を含有させた効果が発揮され、また20質量%以下であれば、賦型シート表面に形成された凹凸形状の凹凸感は良好である。当該微粒子の好ましい含有量は4〜16質量%であり、さらに好ましくは4〜13質量%である。
【0047】
当該微粒子は、無機微粒子及び有機微粒子のいずれであってもよい。当該微粒子の例としては、無機粒子として、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、カオリナイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラスなどの粒子を挙げることができ、有機微粒子として、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン−メラミン−ホルムアルデヒド縮合物などの粒子を挙げることができる。
これらの微粒子は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、本発明の効果の点から、シリカ粒子が好適である。また、該微粒子は、同様の効果を有する上記焼成カオリン粒子とあわせて用いてもよい。
【0048】
(焼成カオリン粒子)
本発明に用いられる硬化性樹脂組成物には、焼成カオリン粒子を含有することが好ましい。表面賦型層中に焼成カオリン粒子を含有させることで、賦型シート表面の凹凸形状が微細隆起形状12の形成により繊細となるほか、耐マーリング(marring)性が向上する。ここでマーリングとは、シート表面が擦られた場合に、小さい擦り傷が発生することをいい、耐マーリング性が優れているとは、擦り傷ができにくいことをいう。賦型シートにこのような性能を付与することで、表面賦型層を強化し、より長期間の使用に耐えうる賦型シートを得ることができ、樹脂化粧板の製造コストを下げることが可能となる。
【0049】
賦型シート表面に、より繊細な凹凸形状及び耐マーリング性を付与するために使用する焼成カオリン粒子は、一般的な(含水)カオリン粒子を焼成して得られるカオリン粒子であるが、充填剤として焼成カオリン粒子を添加することで、シリカ粒子や焼成前の含水カオリン粒子では実現できなかった耐マーリング性の改善が実現する。なお、焼成カオリン粒子の粒径は、用途、要求物性等に応じて適宜選択すればよいが、例えば平均粒径で0.5〜2μm程度のものを使用する。また、焼成カオリン粒子の添加量も、用途、要求物性等に応じて適宜選択すれば良いが、例えば、硬化性樹脂組成物100質量部に対して5〜50質量部程度である。
なお、焼成カオリン粒子は含水カオリン粒子よりも塗料安定性にも優れている。
【0050】
焼成カオリン粒子としては、さらにその表面を処理したものを用いても良い。この表面処理された焼成カオリン粒子を用いることで、耐マーリング性向上効果をさらに増すことができる。表面処理としては、シランカップリング剤による表面処理がある。該シランカップリング剤としては、アルコキシ基、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、クロル基等を有する公知のシランカップリング剤が挙げられる。例えば、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ―アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ―アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ―アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ―アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ―アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ―アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メルカプトプロピルトリメトキシシランなどである。
【0051】
(反応性シリコーン)
本発明に用いられる硬化性樹脂組成物には、さらに反応性シリコーンが含有されることが好ましい。表面賦型層5に反応性シリコーンが含有されることで、離型性が向上し、反復継続的使用に対する耐性が向上するからである。また、被賦型体にパール顔料等の添加剤又は充填剤が含まれている場合には、化粧板の製造過程において、被賦型体に含まれる添加剤又は充填剤の脱理を抑制する効果がある。
【0052】
ここで反応性シリコーンとは、側鎖、末端に有機基を導入した変性シリコーンオイルのうち、導入する有機基の性質によって反応性を有するものをいう。反応性シリコーンは、具体的には、変性シリコーンオイル側鎖型、変性シリコーンオイル両末端型、変性シリコーンオイル片末端型、変性シリコーンオイル側鎖両末端型等において、導入する有機基がアミノ変性、エポキシ変性、メルカプト変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、フェノール変性、メタクリル変性、異種官能基変性等であるものが挙げられる。
上記反応性シリコーンは、表面賦型層の硬化時に硬化性樹脂と反応し結合して一体化する。したがって、本発明の化粧板を熱圧成型によって成型する際に、化粧板の表面にブリードアウトしない(滲み出ない)ので、本発明の賦型シートと化粧板との密着性を著しく向上させて、微細な凹凸形状を有する繊細な意匠を化粧材に賦型することが可能となる。
【0053】
上記反応性シリコーンの使用量は、硬化性樹脂100質量部あたり約0.1〜50質量部の範囲、好ましくは約0.5〜10質量部の範囲である。反応性シリコーンの使用量が0.1質量部以上の場合、化粧板と賦型シートの表面との剥離が十分となり、賦型シートの表面の凹凸形状が維持され、より長期間の使用に耐えうる。一方、反応性シリコーンの使用量が50質量部以下であれば、硬化性樹脂組成物を基材に塗工する際にはじきが発生しないので塗膜面の面が荒れず、塗料安定性が向上する。
【0054】
(各種添加剤)
また、本発明で用いられる硬化性樹脂組成物には、得られる硬化樹脂層の所望物性に応じて、各種添加剤が配合される。添加剤としては、例えば耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チキソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤などが挙げられる。
【0055】
ここで、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。賦型シートの長期使用を図るために添加するものである。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
【0056】
耐摩耗性向上剤としては、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の30〜200%程度とする。これらのなかでも球状のα−アルミナは、硬度が高く、耐摩耗性の向上に対する効果が大きいこと、また、球状の粒子を比較的得やすい点で特に好ましいものである。
【0057】
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
【0058】
(表面賦型層5の形成)
本発明においては、前記の硬化成分である重合性モノマーや重合性オリゴマー等の硬化性樹脂、必要に応じて添加される成分、及び各種添加剤を、それぞれ所定の割合で均質に混合して、硬化性樹脂組成物を調製する。この硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗工方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はない。
本発明においては、このようにして調製された硬化性樹脂組成物を、基材の表面に、硬化後の厚さが1〜20μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。硬化後の厚さが1μm以上であると所望の機能を有する硬化樹脂層(表面賦型層)が得られる。硬化後の表面賦型層の厚さは、好ましくは2〜20μm程度である。
【0059】
本発明においては、このようにして形成された未硬化樹脂層に、熱、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させて、表面賦型層を得る。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと未硬化樹脂層の厚みとが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
【0060】
照射線量は、表面賦型層における硬化性樹脂の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
【0061】
このようにして、形成された表面賦型層には、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することもできる。
【0062】
[凹陥模様14]
凹陥模様14は、賦型シートにエンボス加工等により設けられるもので、表面賦型層5の表面により深い凹形状を与えることで、賦型シートにより意匠と手触り感に優れた高級感を付与するものである。
この凹陥模様14は、製造過程にある発明の賦型シートがいずれかの手段によってエンボス可能な温度となっているときに、表面賦型層5の上面、すなわち最外層側からエンボス版で加熱加圧することにより形成することができる。図1〜9に示されるように、エンボス版で加熱加圧することにより形成される凹凸は、その最深部分は、好ましくは複合基材2の上面に達するものであり、耐熱性基材21に達していてもよい。また、凹陥模様14を形成する場所には特に制限はない。
【0063】
上記のエンボス可能な温度は、通常80〜250℃程度の範囲内で適宜選択されるものであり、良好な凹形状を与え、賦型シートにより意匠と手触り感に優れた高級感を付与するためには、100〜250℃が好ましく、150〜250℃がより好ましく、180〜240℃がさらに好ましい。
凹陥模様14による凹凸の深さは、賦型シートの厚みにもよるが、通常20〜200μmであり、20〜80μmが好ましく、30〜60μmがより好ましい。凹陥模様14の形成には、周知の枚葉、もしくは輪転式のエンボス機が用いられ、凹陥模様14の形状としては、木目版導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。また、上記のインキ層3で施した柄と同調させることで、本発明の効果はより一層顕著となるが、同調させなくても十分な効果を得ることができる。
【0064】
[樹脂化粧板]
(樹脂化粧板−1)
本発明の樹脂化粧板は、本発明の賦型シートを用いて作製されるものであれば、特に制限はないが、その好ましい一態様としては、図10に示される、基板の上面に、接着剤層、化粧シート層を順に積層し、該化粧シート層上に樹脂組成物を塗布し、次いで本発明の賦型シートを当接して一体的に硬化させた後に、該賦型シートを剥離して樹脂層を形成して得られる樹脂化粧板−1が挙げられる。
【0065】
《基板10》
樹脂化粧板の基板10は、特に限定されず、プラスチックフィルム、プラスチックシート金属板、木材などの木質系の板、窯業系素材等を用途に応じて適宜選択することができる。これらの基板、特にプラスチックシートを基板として用いる場合には、化粧材との密着性を向上させるために、所望により、片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理を施すことができる。上記酸化法及び凹凸化法は、本発明の賦型シートの基材において前述したものと同様である。
【0066】
プラスチックフィルム、プラスチックシートは、本発明の賦型シートの基材において前述したものと同様である。
金属板としては、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス鋼、又は銅等からなるものを用いることができ、またこれらの金属をめっき等によって施したものを使用することもできる。
木質系の板としては、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピー等各種素材の突板、木材単板、木材合板、パーチクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木質材等が挙げられる。これらは単独で、または積層して用いることもできる。なお、木質系の板には、木質板に限らず、紙粉入りのプラスチック板や、補強され強度を有する紙類も包含される。
窯業系素材としては、石膏板、珪酸カルシウム板、木片セメント板などの窯業系建材、陶磁器、ガラス、琺瑯、焼成タイル、火山灰を主原料とした板等が例示される。
これらの他、繊維強化プラスチック(FRP)の板、ペーパーハニカムの両面に鉄板を貼ったもの、2枚のアルミニウム板でポリエチレン樹脂を挟んだもの等、各種の素材の複合体も基板として使用できる。
【0067】
《接着剤層9》
接着層9は、基板10と化粧シート層17とを接着するために設けられる層である。
接着剤層9に用いられる接着剤はスプレー、スプレッダー、バーコーター等の塗布装置を用いて塗布する。この接着剤は、尿素系、酢酸ビニル樹脂系、ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系、イソシアネート系等の接着剤を用いることができ、単独であるいは任意混合した混合型接着剤として用いられる。接着剤には、必要に応じてタルク、炭酸カルシウム、クレー、チタン白等の無機質粉末、小麦粉、木粉、プラスチック粉、着色剤、防虫剤、防カビ剤等を添加混合して用いることができる。一般に、接着剤は固形分を35〜80質量%とし、塗布量50〜300g/m2の範囲で基板表面に塗布される。
【0068】
化粧シート層17の基板10上への貼着は、通常、化粧シート層17の裏面に接着剤層9を形成し、基板10を貼着するか基板10の上に接着剤を塗布し、化粧シート層17を貼着する等の方法による。貼着には、コールドプレス、ホットプレス、ロールプレス、ラミネーター、ラッピング、縁貼り機、真空プレス等の貼着装置を用いることができる。
【0069】
《化粧シート層17》
化粧シート層17は、本発明の樹脂化粧板に装飾性を与えるものであり、シート層17−a上に必要に応じて設けられるベタ印刷層17−bと絵柄層17−cとが順に設けられたものである。
シート層17−aとしては、通常化粧シートの基材として用いられるものであれば、特に限定されず、各種の紙類、プラスチックフィルム、プラスチックシート等を用途に応じて適宜選択することができる。これらの材料はそれぞれ単独で使用してもよいが、紙同士の複合体や紙とプラスチックフィルムの複合体等、任意の組み合わせによる積層体であってもよい。
これらの基材、特にプラスチックフィルムやプラスチックシートを基材として用いる場合には、その上に設けられる層との密着性を向上させるために、所望により、片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理を施すことができる。上記酸化法及び凹凸化法は、本発明の賦型シートの基材において前述したものと同様である。また該基材はプライマー層を形成する等の処理を施してもよいし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていてもよい。
【0070】
シート層17−aとして用いられる各種の紙類、プラスチックフィルム、プラスチックシートは、本発明の賦型シートの基材において前述したものと同様である。
シート層17−aの厚さについては特に制限はないが、プラスチックを素材とするシートを用いる場合には、厚さは、通常20〜150μm程度、好ましくは30〜100μmの範囲であり、紙基材を用いる場合には、坪量は、通常20〜250g/m2程度、好ましくは30〜150g/m2の範囲であり、より好ましくは30〜100g/m2の範囲である。
【0071】
シート層17−a上に設けられるベタ印刷層17−bは、本発明の樹脂化粧板の意匠性を高めるために所望により設けられる、隠蔽層とも称されるものである。ベタ印刷層17−bは、シート層17−a上の表面の色を整えることで、シート層17−a自身が着色していたり、色ムラがあるときに形成して、シート層17−aの表面に意図した色彩を与えるものである。通常不透明色で形成することが多いが、着色透明色で形成し、下地が持っている模様を活かす場合もある。シート層17−aが白色であることを活かす場合や、シート層17−a自身が適切に着色されている場合にはベタ印刷層17−bの形成を行う必要はない。
【0072】
ベタ印刷層17−bの形成に用いられるインキとしては、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などの中から任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられる。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
【0073】
絵柄層17−cは、シート層17−aに装飾性を与えるものであり、シート層17−a上に、又はベタ印刷層17−b上に、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、および黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
絵柄層17−cに用いる絵柄インキとしては、ベタ印刷層17−bに用いるインキと同様のものを用いることができる。
【0074】
《樹脂層18》
樹脂層18は、化粧シート層17の上に樹脂組成物を塗布し、次いで賦型シートを当接して一体的に硬化させた後に、該賦型シートを剥離して形成される層であり、樹脂層18の厚さは、100〜500g/m2が好ましく、100〜350g/m2がより好ましく、150〜250g/m2がさらに好ましい。
樹脂組成物は、樹脂、ならびに必要に応じて添加される重合開始剤、重合促進剤、重合禁止剤及びその他の添加物からなる組成物である。
【0075】
本発明に用いられる樹脂組成物中の樹脂としては、常温又は加熱することにより硬化するものであれば、特に制限はなく、例えば、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂(DAP)、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、ケトン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、炭化水素樹脂(芳香族系及び脂肪族系)、ゴム系樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。なかでも、不飽和ポリエステル樹脂が好ましい。
【0076】
重合開始剤、重合促進剤、及び重合禁止剤は、樹脂組成物の硬化速度を調整するために添加されるものである。
重合開始剤としては、例えばメチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルのようなラジカル開始剤から適宜に選択して用いられる。重合開始剤の樹脂組成物中の添加量は0.5〜3質量%が好ましく、0.5〜2.0質量%がより好ましい。
【0077】
重合促進剤としては、例えばナフテン酸コバルト等のコバルト化合物、バナジウム化合物、マンガン化合物等の金属化合物、ジメチルニトリル等のアミン系化合物等が樹脂組成物に対して好ましくは0.1〜2.0質量%、より好ましくは0.3〜1.0質量%の割合で用いられる。重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、トリハイドロキノン、ベンゾキノン、トリハイドロベンゼン等を用いることができる。その他の添加物としては、例えば塗工粘度の調整及び樹脂を架橋させるために、スチレンモノマー等のビニル基を有する化合物を好ましく挙げることができ、その樹脂組成物中の添加量は10〜40質量%が好ましく、15〜30質量%がより好ましい。
これらの硬化速度調整剤、及びその他の添加物は、単独で用いることもできるし、併用することもできる。
【0078】
(樹脂化粧板−2)
本発明の樹脂化粧板の好ましい一態様としては、図12に示される、本発明の賦型シートを加熱圧板間に圧締して成型される成型品と圧板との間に挿入して成型した後に、該賦型シートを剥離して得られる樹脂化粧シートが、接着剤層を介して基板に貼着してなる樹脂化粧板−2も挙げられる。
【0079】
樹脂化粧シート15としては、表面が硬く、耐熱性や耐汚染性にも優れ、かつ意匠性の面でも豊富な色柄が選択出来ることから、メラミン樹脂化粧シート、ジアリルフタレート(DAP)樹脂化粧シート、ポリカーボネート樹脂化粧シート、ポリエステル化粧シートが挙げられ、特にメラミン樹脂化粧シート、ジアリルフタレート(DAP)樹脂化粧シートが好適である。また、被着体となる基板10、接着剤層9に用いる接着剤については、前述のとおりである。
【0080】
(樹脂化粧板−1の製造方法)
本発明の樹脂化粧板は、好ましくは、図10に示される、基板10の上面に、接着剤層9、化粧シート層17を順に積層し、該化粧シート層上に樹脂組成物を塗布し、次いで本発明の賦型シートを当接して一体的に硬化させた後に、該賦型シートを剥離して樹脂層18を形成することで得られるものである。賦型シート1の剥離は、図11に示されるように行われ、一定の形状が賦型された樹脂化粧板11が得られる。
【0081】
(樹脂化粧板−2の製造方法)
また、本発明の樹脂化粧板は、好ましくは、図12に示される、加熱圧板間に圧締して成型される成型品と圧板との間に賦型シートを挿入して成型し、該熱圧成型後、該賦型シートを被賦型体から剥離して得られる一定の形状が賦型された樹脂化粧シート15を、接着剤層9を介して基板10に貼着することで得られるものである。賦型シート1の剥離は、図11に示されるように行われ、一定の形状が賦型された樹脂化粧板11が得られる。
【0082】
この際、上記の圧板の表面にはエンボス加工が施されているものを好適に用いることができる。このような圧板を用いることで、本発明の樹脂化粧板にさらに手触り感が増した高級感を付与することができる。この圧板によるエンボスの凹凸の深さは、通常20〜80μmであり、30〜60μmが好ましく、形状としては、木目版導管溝、板表面凹凸、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。また、上記のインキ層3で施した柄と同調させることで、本発明の効果はより一層顕著となるが、同調させなくても十分な効果を得ることができる。
【0083】
上記の樹脂化粧シート15を製造するには、公知の一般的になされる方法であれば、特に限定されないが、なかでも好ましいメラミン樹脂化粧シート及びジアリルフタレート(DAP)樹脂化粧シートは、一般に以下に挙げる製造方法により得られる。
【0084】
メラミン樹脂化粧シートは、フェノール樹脂含浸コア紙4枚程度の上にメラミン樹脂含浸シート、さらにその上にメラミン樹脂を含浸したオーバーレイ紙を積層し、2枚の鏡面金属板の間に挟み、表面に前記賦型シートを挿入して、例えば、0.98MPa、160℃で20分間加熱圧締を行い、室温まで放冷した後、前記賦型シートを剥離することにより得られる。
また、ジアリルフタレート(DAP)樹脂化粧シートは、ジアリルフタレート樹脂含浸紙を板状基材の上に順次積み重ねて、メラミン樹脂化粧シートの製造方法と同様に、鏡面金属板の間で、前記賦型シートを使用して、140〜150℃、0.98MPa、10分程度加熱圧締を行い、室温まで放冷した後、前記賦型シートを剥離することにより得られる。いずれも、繊細かつ大胆な凹凸形状を有する化粧板となる。
【0085】
このようにして得られた樹脂化粧シート15は、各種基板に貼着して樹脂化粧板として使用することができる。具体的には、樹脂化粧板11は、図12に示されるように、基板10に接着剤層9を介して化粧板11を貼着して得られるものである。被着体となる基板10、接着剤層9に用いる接着剤及び接着方法については、前述のとおりである。
【0086】
[樹脂化粧板]
本発明の方法により製造される樹脂化粧板は、本発明の賦型シートにおけるインキ層及びその厚みに応じて形成される隆起形状の効果、微細凹凸面による効果、微粒子の頭出しによる効果(微細隆起形状)、エンボス加工により施される凹陥模様による効果、及び樹脂化粧板の作製に用いる加熱圧板へのエンボス加工による効果等により、繊細かつ大胆であり、意匠と手触り感に優れる高級感のある緻密なものとなる。このような効果を奏する観点から、エンボス加工により施された個所における樹脂化粧板の表面粗さは20〜200μmが好ましく、20〜80μmがより好ましく、30〜60μmがより好ましい。また、隆起形状及び微細凹凸面に該当する個所における樹脂化粧板の表面粗さは0.1〜10μmが好ましく、1〜8μmがより好ましい。
【0087】
本発明の樹脂化粧板は、任意切断して、表面や木口部にルーター、カッター等の切削加工機を用いて溝加工、面取加工等の任意加飾を施すことができる。そして種々の用途、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装または外装材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具の表面化粧板、キッチン、家具又は弱電、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装、外装等に用いることができる。
【実施例】
【0088】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
各実施例で得られた賦型シートおよび化粧板について、以下の方法で評価した。
(1)表面粗さの測定
化粧板を縦400mmx横400mmのサイズとし、3次元非接触表面形状計測システム((株)菱化システム製 Micromap)を用いて、表面粗さ(算術平均表面粗さ)を測定した。
(2)剥離性
引張圧縮試験機(オリエンテック(株)製 RTC−1250A)を用いて、賦型シートの剥離強度を測定した。評価対象サンプルは幅25mmx長50mmとし、剥離スピード300mm/min、剥離方向180°(垂直方向)、ロードセル荷重10N、測定環境温度23℃(室温)にて試験を行った。
(3)連続成型適性
同一の賦型シートにて10回成型を行い、各成型毎の剥離強度を測定し、賦型シートを繰返し使用した際の剥離安定性を測定した。
(4)エンボス意匠の評価
実施例及び比較例で得られた賦型シートのエンボス意匠について、目視にて評価した。
(5)エンボス賦型率
実施例及び比較例で得られた化粧板について、上記表面粗さ計を用いて、エンボス賦型率を測定し、下記の基準で評価した。
○ :エンボス賦型率60%以上100%以下
△ :エンボス賦型率40%以上60%未満
× :エンボス賦型率0%以上40%未満
(6)エンボス堅牢度
実施例及び比較例で得られた化粧板を120℃のオイルバスに1分間浸漬した。浸漬後のエンボスのしぼ戻り及び艶を目視し、下記の基準で評価した。
◎ :しぼ戻りがなく、艶の変化もない
○ :しぼ戻りが若干あり、艶の変化も若干あるが、実用上問題ない
△ :しぼ戻り及び艶の変化があるが、実用上問題ない
× :しぼ戻り及び艶の変化が著しい
(7)エンボス加工性(耐熱性)
実施例及び比較例において、賦型シートを200℃まで加熱してエンボス加工を施した際の賦型シートの状態を、下記の基準で評価した。
◎ :賦型シートは全く伸びることなく、十分なエンボス加工を施すことができた。
○ :賦型シートは多少伸びたが、実用上問題なく、十分なエンボス加工を施すことができた。
× :賦型シートは破断して、使用することができなかった。
【0089】
実施例1:賦型シートの作製
高密度ポリエチレンラミネート紙(恵和(株)製「エリオリウム転写紙 50g」,原紙秤量:50g/m2,高密度ポリエチレンフィルム厚:15μm)の高密度ポリエチレンフィルム面にコロナ処理を施した後、該処理面上全面にプライマーインキ((株)昭和インク工業所製アクリル系インキ「EBF同調プライマー」)をグラビア印刷して浸透防止層(プライマー層)を形成した。
次に、柄版によりインキ(ザ・インクテック(株)製ウレタン系導管インキ「導管MINI(B)」)を木目模様の導管部分に印刷して、インキ層を形成した。さらにこれらインキ層の上に電子線硬化性樹脂(大日精化工業(株)製「REB−GE」)に焼成カオリン粒子5質量%、反応性シリコーンメタクリレート2質量%を添加した電子線硬化性樹脂組成物を塗工量4g/m2でグラビアオフセットコータ法により塗工した。塗工後、加速電圧175kV、照射線量30kGy(3Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて表面賦型層とした。このようにして得られた賦型シートを、予熱機で230℃まで加熱して、直ちに表面賦型層側から、エンボスロールを用いたエンボス加工(58.8N/m2加圧)を行い、上記で形成したインキ層と同調した凹陥模様を施した。当該賦型シートは、高級感があり繊細な木目表現を有したフィルムであった。
【0090】
実施例2:樹脂化粧板の作製
フェノール樹脂含浸コア紙4枚程度の上に、メラミン樹脂含浸シート、さらにその上に35g/m2程度のオーバーレイ紙にメラミン樹脂を含浸したものを積層し、2枚の鏡面金属板の間に挟み(その内、樹脂化粧板の表面側に当接する金属板は、エンボス加工が施されている)、表面に凹凸形状を形成した実施例1で製造された賦型シートを挿入して、0.98MPa、160℃で20分間、加熱圧締を行った。室温まで放冷した後、賦型シートを剥離することにより、賦型シートの微細凹凸面及び隆起形状による凹凸形状により賦型された個所の表面粗さが2〜4μmであり、エンボス加工を施した個所の表面粗さが10〜12μmである、繊細かつ大胆な凹凸形状を有し、意匠と手触り感に優れた高級感のあるメラミン樹脂化粧シートを得た。また、得られたメラミン樹脂化粧シートは、導管部分の凹凸感がリアルに表現され、実際の木材を用いた材料と同様の質感を有するものだった。
また、実施例1により得た賦型シートは、耐久性に富み、成型を10回繰り返しても、表面形状及び賦型後の剥離性(剥離しやすさ)は全く変化が見られなかった。
【0091】
実施例3
基材として、米秤量30g/m2の建材用紙間強化紙を用い、その片面にアクリル樹脂と硝化綿をバインダーとし、チタン白、弁柄、黄鉛を着色剤とするインキを用いて、塗工量5g/m2のベタ印刷層をグラビア印刷にて施した。その上に硝化綿をバインダーとし、弁柄を主成分とする着色剤を含有するインキを用いて、木目模様の絵柄層をグラビア印刷にて形成して、化粧シート層を得た。次いで、基板のMFDに尿素−酢酸ビニル系接着剤をロールコートした後、得られた化粧シート層を貼り合わせた。
その後、化粧シート層の上面全面に、不飽和ポリエステルと過酸化物とを混合して得られたポリエステル樹脂組成物を200g/m2の塗布量で塗布し、その上に実施例1で得られた賦型シートを見当合せマークで位置合わせをしながら被覆し当接させて、ゴムロールを用いて、0.98MPa/930m/mで5回、圧延、脱泡し、その位置がずれないようにして、40℃で2時間加熱してポリエステル樹脂を室温で硬化させた。硬化させた後、1時間養生して室温まで放冷後、賦型シートを剥離することにより、実施例2と同様に導管部分の凹凸感がリアルに表現され、実際の木材を用いた材料と同様の質感を有するポリエステル化粧板を得た。評価の結果を第1表に示す。
また、実施例1により得た賦型シートは、耐久性に富み、成型を10回繰り返しても、表面形状及び賦型後の剥離性(剥離しやすさ)は全く変化が見られなかった。
【0092】
比較例1
基材シートとしてポリプロピレン樹脂系着色フィルム(三菱樹脂(株)製「PB023(厚さ:60μm)」)を準備し、インキ層を設ける面に、コロナ処理を施した後、該処理面上全面にプライマーインキ((株)昭和インク工業所製アクリル系インキ「EBF同調プライマー」)をグラビア印刷して浸透防止層(プライマー層)を形成した。
次に、柄版によりインキ(ザ・インクテック(株)製ウレタン系導管インキ「導管MINI(B)」)を木目模様の導管部分に印刷して、インキ層を形成した。さらにこれらインキ層の上に電子線硬化性樹脂(大日精化工業(株)製「REB−CON」)に焼成カオリン粒子5質量%、反応性シリコーンメタクリレート2質量%を添加した電子線硬化性樹脂組成物を塗工量4g/m2でグラビアオフセットコータ法により塗工した。塗工後、加速電圧175kV、照射線量30kGy(3Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて表面賦型層とした。このようにして得られた賦型シートを、エンボス加工を施すために、予熱機で230℃まで加熱したところ、賦型シートは破断してしまった。そこで、予熱機で賦型シートが破断しない150℃まで加熱して、直ちに表面賦型層側から、エンボスロールを用いたエンボス加工(58.8N/m2加圧)を行い、上記で形成したインキ層と同調した凹陥模様を施した。当該賦型シートは、賦型シートを十分に加熱ができなかったため、エンボスによる凹陥模様が不十分であり、意匠の甘い木目表現を有したフィルムとなってしまった。
これにより得られた賦型シートを用いて、実施例2と同様な操作を行い、メラミン樹脂化粧板を作製した。
比較例1による化粧板は、繊細な凹凸形状を表現することはできなかった。評価の結果を第1表に示す。なお耐久性、剥離性は、実施例2と同等であった。
【0093】
比較例2
既に易接着処理されたPETフィルム(ユニチカ(株)製「PTM38(38μm)」)の易接着面に、プライマーインキ((株)昭和インク工業所製アクリル系インキ「EBF同調プライマー」)をグラビア印刷して浸透防止層(プライマー層)を形成した。
次に、柄版によりインキ(ザ・インクテック(株)製ウレタン系導管インキ「導管MINI(B)」)を木目模様の導管部分に印刷して、インキ層を形成した。さらにこれらインキ層の上に電子線硬化性樹脂(大日精化工業(株)製「REB−CON」)に焼成カオリン粒子5質量%、反応性シリコーンメタクリレート2質量%を添加した電子線硬化性樹脂組成物を塗工量4g/m2でグラビアオフセットコータ法により塗工した。塗工後、加速電圧175kV、照射線量30kGy(3Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて表面賦型層とした。このようにして得られた賦型シートを、エンボス加工を施すために、予熱機で230℃まで加熱したところ、賦型シートが伸びてしまい、表面賦型層に割れが生じてしまい、賦型シートとして使用することができなかった。そこで、予熱機で賦型シートが伸びない200℃まで加熱して、直ちに表面賦型層側から、エンボスロールを用いたエンボス加工(58.8N/m2加圧)を行い、上記で形成したインキ層と同調した凹陥模様を施した。当該賦型シートは、賦型シートを十分に加熱ができなかったため、エンボスによる凹陥模様が不十分であり、意匠の甘い木目表現を有したフィルムとなってしまった。
これにより得られた賦型シートを用いて、実施例2と同様な操作を行い、メラミン樹脂化粧板を作製した。
比較例2による化粧板は、繊細な凹凸形状を表現することはできなかった。評価の結果を第1表に示す。なお耐久性、剥離性は、実施例2と同等であった。

【0094】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明によれば、繊細かつ大胆な凹凸形状を有し、意匠と手触り感に優れた高級感のある緻密な賦型をすることができ、離型性に優れ、かつ耐熱性に優れた賦型シート、該賦型シートを用いて得られる樹脂化粧板、及び該賦型シートを用いた樹脂化粧板の製造方法を得ることができる。特に木目模様のような繊細な模様に用いた場合には、導管部分の凹凸感をリアルに表現でき、賦型した化粧材は、実際の木材を用いた材料と同様の質感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の賦型シートの断面を示す模式図である。
【図2】本発明の賦型シートの断面を示す模式図である。
【図3】本発明の賦型シートの断面を示す模式図である。
【図4】本発明の賦型シートの断面を示す模式図である。
【図5】本発明の賦型シートの断面を示す模式図である。
【図6】本発明の賦型シートの断面を示す模式図である。
【図7】本発明の賦型シートの断面を示す模式図である。
【図8】本発明の賦型シートの断面を示す模式図である。
【図9】本発明の賦型シートの断面を示す模式図である。
【図10】本発明の樹脂化粧板の断面を示す模式図である。
【図11】本発明の賦型シートの剥離過程を示す模式図である。
【図12】本発明の樹脂化粧板の断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0097】
1.賦型シート
2.複合基材
21.耐熱性基材
22.樹脂基材
3.インキ層
3−a.インキ
3−b.インキ
3−c.インキ
4.相互作用領域
4−a.相互作用領域
4−b.相互作用領域
4−c.相互作用領域
5.表面賦型層
6.浸透防止層
7.隆起形状
7−a.隆起形状
7−b.隆起形状
7−c.隆起形状
8.微粒子または焼成カオリン粒子
8−a.微粒子または焼成カオリン粒子
8−b.微粒子または焼成カオリン粒子
9.接着剤層
10.基板
11.樹脂化粧板
12.微細隆起形状
13.微細凹凸面
14.凹陥模様
15.樹脂化粧シート
17.化粧シート層
17−a.シート層
17−b.ベタ印刷層
17−c.絵柄層
18.樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS C2318に準拠して測定された加熱収縮率(150℃×30分)が2%以下の耐熱性基材と、融点が90〜230℃の範囲内にある樹脂からなる基材との複合基材の樹脂基材上に少なくとも、部分的に又は全面にわたって設けられたインキ層と、該インキ層上に存在してこれと接触すると共に、該インキ層が形成された領域及び該インキ層が形成されていない領域とを含む全面にわたって被覆する表面賦型層を有する賦型シートであって、該表面賦型層が硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、かつ該表面賦型層中には、該インキ層の直上部及びその近傍の上部に位置する表面賦型層の表面が凸形状を有し、さらに凹陥模様を有してなる賦型シート。
【請求項2】
耐熱性基材が紙基材、ポリカーボネートからなる基材及びポリエチレンテレフタレートからなる基材から選ばれる一つ又は二つ以上を組み合わせてなるものであり、かつ樹脂基材がポリオレフィン樹脂からなるものである請求項1に記載の賦型シート。
【請求項3】
耐熱性基材が坪量20〜250g/m2の紙基材であり、かつ樹脂基材の厚さが1〜100μmである請求項2に記載の賦型シート。
【請求項4】
表面賦型層中に、微粒子を含み、かつ該微粒子の平均粒径が、前記インキ層の直上部に位置する表面賦型層の最大厚さのプラス側近傍値である請求項1〜3のいずれかに記載の賦型シート。
【請求項5】
硬化性樹脂組成物が、電離放射線硬化性樹脂組成物である請求項1〜4のいずれかに記載の賦型シート。
【請求項6】
電離放射線硬化性樹脂組成物が電子線硬化性樹脂組成物である請求項5に記載の賦型シート。
【請求項7】
インキ層を構成するインキがバインダーとして非架橋ウレタン樹脂を含むものであり、かつ電離放射線硬化性樹脂組成物が(メタ)アクリレート単量体を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の賦型シート。
【請求項8】
インキ層を構成するインキがバインダーとして非架橋ウレタン樹脂と不飽和ポリエステル樹脂とを含む請求項7に記載の賦型シート。
【請求項9】
基板の上面に、接着剤層、化粧シート層を順に積層し、該化粧シート層上に樹脂組成物を塗布し、次いで賦型シートを当接して一体的に硬化させた後に、該賦型シートを剥離して樹脂層を形成した樹脂化粧板であって、該賦型シートが請求項1〜8のいずれかに記載されるものである樹脂化粧板。
【請求項10】
樹脂組成物中の樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂である請求項9に記載の樹脂化粧板。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の賦型シートを加熱圧板間に圧締して成型される成型品と圧板との間に挿入して成型した後に、該賦型シートを剥離して得られる樹脂化粧シートが、接着剤層を介して基板に貼着してなる樹脂化粧板。
【請求項12】
樹脂化粧シートが、メラミン樹脂化粧板である請求項11に記載の樹脂化粧板。
【請求項13】
樹脂化粧シートが、ジアリルフタレート(DAP)樹脂化粧板である請求項11に記載の樹脂化粧板。
【請求項14】
基板の上面に、接着剤層、化粧シート層を順に積層し、該化粧シート層上に樹脂組成物を塗布し、次いで請求項1〜8のいずれかに記載の賦型シートを当接して一体的に硬化させた後に、該賦型シートを剥離して樹脂層を形成することを特徴とする樹脂化粧板の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれかに記載の賦型シートを、加熱圧板間に圧締して成型される成型品と圧板との間に挿入して成型した後に、該賦型シートを剥離して得られる樹脂化粧シートを、接着剤層を介して基板に貼着することを特徴とする樹脂化粧板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−64445(P2010−64445A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235363(P2008−235363)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】