質量アンバランスおよび高速ユニフォーミティを予測し、制御する方法
【課題】タイヤの質量の不均一分布および高速ユニフォーミティの両方を特徴付ける改良方法を提供する。
【解決手段】タイヤの高速ユニフォーミティを特徴付ける方法は、複数の層によって特徴付けられる製造されたタイヤを用意する段階と、製造されたタイヤを所定の第1の回転速度で回転させて少なくとも1つの第1のフォース測定値及び少なくとも1つの第1のラジアルランアウトを得る段階と、製造されたタイヤを所定の第2の回転速度で回転させて少なくとも1つの第2のラジアルランアウト測定値を得る段階とを含み、所定の第2の回転速度は高速に対応し、第1及び第2の回転速度は互いに異なり、さらに、少なくとも1つの第1フォース測定値、少なくとも1つの第1のラジアルランアウト測定値、及び少なく1つの第2のラジアルランアウト測定値ともから、全タイヤ高速ユニフォーミティに及ぼす製造されたタイヤにおける層のオーバラップまたは各層の変位の影響を求める段階を含む。
【解決手段】タイヤの高速ユニフォーミティを特徴付ける方法は、複数の層によって特徴付けられる製造されたタイヤを用意する段階と、製造されたタイヤを所定の第1の回転速度で回転させて少なくとも1つの第1のフォース測定値及び少なくとも1つの第1のラジアルランアウトを得る段階と、製造されたタイヤを所定の第2の回転速度で回転させて少なくとも1つの第2のラジアルランアウト測定値を得る段階とを含み、所定の第2の回転速度は高速に対応し、第1及び第2の回転速度は互いに異なり、さらに、少なくとも1つの第1フォース測定値、少なくとも1つの第1のラジアルランアウト測定値、及び少なく1つの第2のラジアルランアウト測定値ともから、全タイヤ高速ユニフォーミティに及ぼす製造されたタイヤにおける層のオーバラップまたは各層の変位の影響を求める段階を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤの性能パラメータ、例えば質量の不均一分布を含む質量アンバランスと高速ユニフォーミティとを特徴付ける方法(キャラクタリゼージョン方法)に関するものである。
これらおよびその他のタイヤ性能パラメータの特徴付け(キャラクタリゼージョン)および予測は、製造されたタイヤ製品の仕分け(ソート)および/または製造プロセスの制御に利用できる。
【背景技術】
【0002】
自動車の振動の多くは高速走行道路での速度が25mph以上になった時にドライバーが感じるようになる。相対的に高速度での自動車振動の一つの原因は各タイヤスピンドル位置でのフォースバリエーション(力の変動)対応し、これを一般にタイヤの高速ユニフォーミティという。
【0003】
この高速ユニフォーミティ(HSU)に対する関心が自動車産業では高くなっており、タイヤメーカにはこの高速ユニフォーミティ(HSU)をコントロールすることが求められている。しかし、タイヤのHSUは測定が難しく、測定にはコストがかかるためHSUを工業的に制御することは極めて難しかった。
【0004】
このフォースバリエーションとその結果生じる望ましくない振動のレベルを予測し、制御するために種々のタイヤパラメータが定められ、測定されてきた。タイヤの高速ユニフォーミティを予測または求めるためには各種のタイヤパラメータの測定値を多重に組み合わせるのが望ましい。
【0005】
特許文献1にはタイヤのHSU予測方法の一つが記載されている。
この特許では低速でのラジアルランアウト(radial run out)(RRO)、瞬間ローリング半径(instantaneous rolling radius)(IRR)およびラジアルフォースバリエイション(RFV)のパラメータを多重に用いたものを基本にしてHSUを予測している。
【0006】
特許文献2には高速ユニフォーミティーの他の測定方法が記載されている:
この特許では低速ユニフォーミティーの測定値で高速での高次成分を予測している。なお、低速度ユニフォーミティーの測定機械は確立しており、全てのタイヤ生産ラインに配置されている。上記特許文献の内容は全て本願明細書の一部を成す。上記のようなHSUパラメータの予測方法の現状とHSUレベルを制御したいというマーケットニーズとから、HSUを特徴付ける方法を改良することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5396438号明細書
【特許文献2】米国特許第6065331号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
タイヤのHSUに対しては多くのファクターが寄与しているので、タイヤユニフォーミティーを効果的に制御する上での最大の課題はタイヤのフォースバリエイションと車両振動の対応レベルを制御するのに必要な寄与ファクターを正しく同定・識別することができるか否かにある。
【0009】
本発明者は、質量の不均一分布が大きなラジアルランアウトを生じさせ、それが高速でのユニフォーミティに直接影響するということを見出した。タイヤHSUパラメータを予測する上記の試みはいずれも高速ユニフォーミティを予測および制御する際のファクターとして質量の不均一分布を計算に入れていない。従って、上記の方法に従って質量の不均一分布を多重ハーモニックレベルで同定する方法を提供することが望まれている。
タイヤ高速ユニフォーミティーを特徴付ける方法とそれをタイヤ製造に生かす方法はいくつか開発されてきたが、以下に説明する本発明のように所望の特徴の全てを含む方法は知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来法の問題点を解決するために、本発明ではタイヤの質量の不均一分布および高速ユニフォーミティの両方を特徴付ける改良方法を提供する。質量の不均一分布は本明細書で説明するように高速ラジアルランアウト測定値から同定され、その後、数学的に解析される。質量の不均一分布特性はタイヤの仕分けおよびタイヤ製造プロセスの改良で使用でき、例えばタイヤの各層のオーバラップまたは変動のパラメータを制御・最適化するのに使用できる。タイヤの高速ラジアルランアウトの測定値および解析値を低速フォース測定値と組み合わせてタイヤ高速ユニフォーミティを求め、それを特徴付けることもできる。このタイヤ高速ユニフォーミティ特性はタイヤ仕分けと対応するタイヤ製造プロセスの改良にも使用できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のタイヤパラメータを特徴付ける方法とそれを用いたタイヤ製造方法には多くの利点がある。一つの典型的な利点はタイヤユニフォーミティー、特に重要なタイヤパラメータであることが最近になって認識されてきた高速ユニフォーミティー(HSU)を効果的かつ有効に予測できる点にある。本発明ではタイヤの高速ユニフォーミティーを高速ラジアルランアウト測定値と低速フォース測定値とに基づいて予測し、制御する。この高速ラジアルランアウト測定値はタイヤの質量アンバランスを予測し、制御するのにも使用ができる。
【0012】
高速ユニフォーミティを予測する公知の方法では、高速ラジアルランアウト(例えば質量アンバランス)の全ての同定された作用を考慮せずに、低速ユニフォーミティ測定機械で測定した多重の低速パラメータだけを考慮している。本発明では質量アンバランスとタイヤ高速ユニフォーミティとを相関させる点で有利である。
【0013】
公知の技術では第1ハーモニックを超える質量アンバランスが測定できない。本発明の別の利点は本発明では多重ハーモニックに対してタイヤの質量アンバランスを測定するのに有効な段階および方法が提供できる点にある。いかなる質量アンバランスも高速で有意な量のラジアルランアウトと関連するタイヤスピンドルフォースバリエーションとを発生させるので質量の不均一分布と点質量を含む質量アンバランスを有効に示す指標は重要である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の解析法で使用する典型的なタイヤのリングモデルの概念的線図。
【図2】本発明のタイヤ特徴付けに関する所定の点質量を有するタイヤで生じるラジアルランアウトを回転速度に対して示したグラフ。
【図3】本発明のタイヤ特徴付けに関する所定の点質量に対する種々の回転速度での二次元タイヤ形状を示すグラフ。
【図4】本発明のタイヤ特徴付けに関する多重な所定の点質量に対する種々の回転速度での二次元タイヤ形状を示すグラフ。
【図5】本発明のタイヤ特徴付けに関する頂部質量に1パーセントの不均一分布を生じさせるラジアルランアウトを回転速度に対して示したグラフ。
【図6】本発明のタイヤ特徴付けに関するラジアルスティフネスに1パーセントの不均一分布を生じさせるラジアルランアウトを回転速度に対して示したグラフ。
【図7A】本発明のタイヤ特徴付けに関するラジアルランアウトパラメータから得られる二次元タイヤ形状を示すグラフ。
【図7B】本発明のタイヤ特徴付けに関するラジアルランアウトパラメータから得られる二次元タイヤ形状を示すグラフ。
【図7C】本発明のタイヤ特徴付けに関するラジアルランアウトパラメータから得られる二次元タイヤ形状を示すグラフ。
【図7D】本発明のタイヤ特徴付けに関するラジアルランアウトパラメータから得られる二次元タイヤ形状を示すグラフ。
【図8】本発明のタイヤ質量アンバランスの特徴付けによる実施例のプロセス段階を示すブロック線図。
【図9】本発明のタイヤ高速ユニフォーミティの特徴付けによる実施例のプロセス段階を示すブロック線図。
【図10】本発明のタイヤ質量アンバランス特徴付け法を利用してタイヤを製造および仕分けする方法を示すブロック線図。
【図11】本発明のタイヤ高速ユニフォーミティ特性付けに対応してタイヤを製造および仕分けする方法を示すブロック線図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一つの実施例では、タイヤの質量アンバランスを特徴付ける方法は複数の段階を含み、その第1段階では所定のタイヤに対して複数のタイヤパラメータを確定する。これらのタイヤパラメータは測定するか、事前にプログラムすることができる。こうしたパラメータにはテストするタイヤの質量、半径、タイヤ圧、幅、ラジアルスティフネスおよび/または伸びスティフネスや、試験するタイヤを取り付ける取付け具(例えば、ホイールリム類似具)の質量および/または慣性モーメントを含むことができる。
【0016】
タイヤを適当な測定機械に取り付け、約600+回転/分の比較的高速度で回転させることでラジアルランアウトの測定値を得ることができる。ラジアルスティフネスバリエーションがタイヤラジアルランアウト(RRO)に及ぼす作用が無視できる場合は約180回転/分以下の低速度と第1の高速回転速度とでRRO測定値が得られる。ラジアルスティフネスバリエーションがタイヤRROに与える作用が認識できる場合は約180回転/分よりも小さい低速度と1つまたは2つの高速回転速度でRRO測定値を得る。得られたRRO測定値を多重ハーモニックに分解し、この多重ハーモニックから質量の不均一分布係数を計算する。質量の不均一分布係数を用いてテストタイヤに存在する質量アンバランス(例えば質量不均一分布および点質量)の大きさと位置が決まる。
【0017】
上記実施例で求めた質量アンバランスは種々の形で利用できる。例えば、被テストタイヤを所定の限界値を有する複数のカテゴリの1つに等級付けし、評価することができる。被テストタイヤを顧客へ送るのが許容されるグループと、質量アンバランスが許容限界内になく、修正(例えば研磨または質量の付加)が必要な別のグループへ仕分けることができる。
【0018】
本発明の追加の実施例は、上記タイヤ質量アンバランスの特徴付け段階を含むタイヤの製造方法に関するものである。この実施例では得られた質量アンバランスを車両感受性テストが得られた所定の質量アンバランス限界値と比較することができる。この比較の結果と関連する解析値とをフィードバックしてそれ以降のタイヤの製造条件を質量アンバランスの解析結果に応じて制御することができる。
【0019】
本発明のさらに別の実施例で提供されるタイヤの高速ユニフォーミティを特徴付ける方法は、複数の層によって特徴付けられる製造済みのタイヤを用意する段階と、製造されたタイヤを所定の第1の回転速度で回転させて少なくとも1つの第1フォース測定値を得る段階と、製造されたタイヤを所定の第2の回転速度で回転させて少なくとも1つのラジアルランアウト測定値を得る段階と、上記の少なくとも1つの第1フォース測定値と上記の少なくとも1つのラジアルランアウト測定値とから製造されたタイヤにおける層のオーバラップまたは変動の作用を求める段階とを含む。他の実施例では第1の回転速度は約180回転/分よりも小さい速度であり、第2の所定の回転速度は約600回転/分以上の速度である。
【0020】
上記実施例で求めた高速ユニフォーミティ特性はそれ以降のタイヤ製造で種々の形で利用できる。例えば、被テストタイヤを所定限界値を有する複数のカテゴリの1つに等級付け、評価することができる。被テストタイヤを顧客へ送るのが許容されるグループと、タイヤ高速ユニフォーミティが許容レベルになく、修正(例えば研磨または質量付加)が必要な別のグループに仕分けることができる。
【0021】
本発明のさらに追加の実施例はタイヤの製造方法に関するもので、その一例は上記の観点およびタイヤ高速ユニフォーミティを特徴付ける段階を含むものである。すなわち、高速ユニフォーミティ特性を車両感受性テスト、その他の方法で得た所定の高速ユニフォーミティ限界値と比較し、その比較結果と関連する解析値とをフィードバックしてそれ以降のタイヤ製造条件を高速ユニフォーミティに応じて制御する。一般に、製造されたタイヤの各層はわずかにオーバラップしているので、高速ユニフォーミティ解析結果を用いて許容範囲の設定および/または調整を行い、各層のオーバラップ位置または変動を最適化することができる。
【0022】
本発明のさらに別の実施例で提供されるタイヤの製造方法は、タイヤ特徴付け法と組み合わされた複素伝達関数を確定する段階と、タイヤのセットを製造する段階と、製造された各タイヤを第1の回転速度で回転させて少なくとも1つの第1フォース測定値を得る段階と、製造された各タイヤを少なくとも第2および第3の回転速度で回転させて少なくとも第2および第3の回転速度でのラジアルランアウト測定値を求め、得られた測定値から各タイヤの質量アンバランスを計算する段階と、少なくとも1つの第1フォース測定値、複素伝達関数および計算で求めた質量アンバランスに基づいて製造した各タイヤの高速ユニフォーミティ特性を計算する段階とを含む。こうして計算した高速ユニフォーミティ特性に応じてそれ以降のタイヤの製造条件を制御することができる。さらに別の製造段階(タイヤの研磨または質量付加)を行って製造された各タイヤの高速ユニフォーミティ特性を改良することもできる。
【0023】
上記実施例の複素伝達関数(complex transfer functions)を確定する段階は特に下記段階、すなわちサンプルタイヤのセットを製造する段階と、各サンプルタイヤを第1および第2の回転速度で回転させてそれぞれのフォース測定値を得る段階と、各サンプルタイヤを第1および第2の回転速度および少なくとも1つの追加の回転速度のいずれか1つの速度で回転させてそれぞれのラジアルランアウト測定値を得る段階と、フォース測定値とラジアルランアウト測定値から複素伝達関数を求める段階によって特徴付けることができる。複素伝達関数は第2フォース測定値と第1フォース測定値との関係、さらには2つのラジアル測定値を特徴付ける。他の実施例では第1および第2の回転速度の一方を約180回転/分よりも小さくし且つ残りの全ての回転速度を約600回転/分以上にすることができる。全てのフォース測定値を多重ハーモニックに分解してから複素伝達関数を求めることができる。
【0024】
本発明の上記以外の目的および利点は以上の説明および以下の記載から当業者には明らかであろう。また、以下に示し、説明し、参照する事項やその本発明の各実施例で実際に使用される段階は本発明の精神および範囲から逸脱せずに変更、改良できるということも理解できよう。そうした改良には図示し、説明し、参照した事項の均等物の置換、各種部品、特性、段階等の機能上、操作上および位置の変更等が含まれる。
【0025】
さらに、図示した本発明の他の実施例および好ましい他の実施例には、上記の特徴、段階、要素または均等物が含まれるということも理解できよう(特徴、部品、段階、構造または図示していない事項または詳細に説明していない事項の組合わせを含む)。また、本願明細書に記載のない追加の実施例には本願明細書に記載の特徴、要素、上記で要約した段階および/またはその他の特徴、要素または段階の多様な組み合わせが含まれる。当業者は以下の実施例の説明から上記以外の特徴および観点をよりよく理解できよう。
【実施例】
【0026】
以下、当業者に対して本発明を完全かつ十分に開示した、ベストモートの開示である添付図面を参照する。
なお、本発明で同一または類似の特徴または要素を表すものは明細書および添付図面で同じ参照記号を使用した。
【0027】
既に述べたように、本発明はタイヤの質量の不均一分布および高速ユニフォーミティーの両方の特徴付けに関するものである。本明細書では質量の不均一分布は高速ラジアルランアウト測定値から同定し、この測定値を数学的に解析する。こうして得られた質量の不均一分布の結果はタイヤの仕分けおよび/または等級付けや、タイヤ製造プロセスの改良で使用できる。例えば、タイヤの各層のオーバラップパラメータの制御や最適化で使用できる。さらに、タイヤの高速ラジアルランアウトの測定値および解析値を低速フォース測定値と組み合わせて高速ユニフォーミティを求め、特徴付けすることもできる。この高速ユニフォーミティの特徴付け結果を用いてタイヤの仕分けプロセスおよび対応するタイヤ製造プロセスを改良することもできる。
【0028】
タイヤの高速ユニフォーミティレベルの予測法に関する上記方法(例えば特許文献1の米国特許第5396438号明細書)では、低速でのパラメータ、例えばラジアルランアウト(radial run out)(RRO)、瞬間ローリング半径(instantaneous rolling radius)(IRR)およびラジアルフォースバリエイション(RFV)のパラメータを多重に用いたものを基本にしてタイヤの高速ユニフォーミティを予測している。この高速RROは高速ユニフォーミティに大きく寄与するファクターである。しかし、低速で測定したパラメータのみをベースとする高速ユニフォーミティの予測では、高速RROに寄与する変数の少なくとも一つである質量アンバランス(mass unbalance)(例えば質量の不均一分布、mass uneven distribution)を考慮に入れることができない。従って、本発明の対象は、タイヤの高速ユニフォーミティレベルをより正確に特徴付けるために高速RRO測定値を得ることにある。さらに、この高速RRO測定値を分解することでタイヤの質量アンバランスを特徴付ける情報を得ることができ、この情報を利用してタイヤのラジアルランアウト特性(radial run out characterizing)を減らし、高速ユニフォーミティを改良することができる。
【0029】
以下、本発明を製造プロセスで応用する際のベースとなるタイヤのモデル化および数値解析法を[図1]〜[図7]を参照して説明する。より正確にはアルゴリズムフォーミュレーションと、タイヤ高速ラジアルランアウトに寄与する要素(タイヤ半径の初期不均一分布、タイヤ質量アンバランス、タイヤの垂直スティフネス分布バリエーション、タイヤの接線分布スティフネスバリエーション、タイヤの曲げスティフネス分布バリエーション等)の測定法について説明する。
[図1]〜[図7]に記載の基本要素は本発明の典型的な方法で使用され、[図8][図10]は質量不均一分布および/または点質量を含むタイヤ質量アンバランスの特徴付けで使用される特徴および段階の典型例を示し、[図9][図11]は高速ユニフォーミティ特性の特徴付けで使用する特徴および段階の典型例を示している。
【0030】
本発明の観点では、高速RRO(またはクラウン変形)の各種ファクターを求めることでタイヤ高速ユニフォーミティとそれに関連する他のパラメータをより正確に特徴付けることができる。
【0031】
[図1]を参照すると、タイヤ10は一般に円形弾性リングとしてモデル化されている。このタイヤ10は取付け装置12(例えばホイールリム、その他のタイプのリジッドなディスク)に結合されている。リムは回転軸線18の所でピン止めされている。タイヤ10はラジアル方向に分布したバネ14と接線方向のバネ16とを介してリム12に結合されている。
【0032】
タイヤの非ユニフォーミティに寄与する要素には質量アンバランスδm、ラジアルスティフネスバリエーションkw、接線スティフネスkr、および、曲げスティフネスEIが含まれる。圧力と回転が加わっていない初期の状態では、リング10は一般に半径Rの円形である。タイヤが高速Ωで回転すると、非ユニフォーミティの存在によってリングは非円形の形に変形する。
【0033】
回転中のタイヤの各パラメータを参照するために以下の用語を使用する:
w: ラジアル方向垂直変位すなわちラジアルランアウト
v: 接線方向変位(tangential displacement)
P0: タイヤ圧
A: タイヤリングの横断面積
ρ: タイヤリングの質量密度
b: タイヤリングの幅
θr: Ωに対するリムの相対回転角
Rr: リム半径
qw: 垂直方向の外部の力
qv: 接線方向の外部の力
θ: 0〜2πの周方向座標
【0034】
タイヤリングは円形で、リムはホイールの中心でピン止めされているとみなすと、運動方程式は下記で記載できる:
【数1】
【0035】
ここで、
【数2】
【0036】
式(1.1a、b、c、d)は質量m、ラジアルスティフネスkw、接線スティフネスkr、曲げスティフネスEIの不均一分布と、以下で詳細に説明するタイヤ半径(RRO)の不均一分布とに起因する非ユニフォーミティを調べるのに用いることができる。
【0037】
リング半径Riの初期不均一分布によって発生するラジアルランアウト
ここでは、圧力と回転が加わった後に非円形リングがその形をどのように変形するかについて考える。非円形リングの特徴付けは難しいため、タイヤ10は半径Rで、プレストレスがないと仮定する。外部の力qw0が加わると、リングの変形量w0は下記の必要条件を満足する:
【数3】
【0038】
ここで、Riは非円形リングの初期半径を表すθの関数であり、Rは下記で与えられる:
【数4】
【0039】
以下で説明するように、接線フォースはゼロ、すなわちqv0=0と仮定できる。
上記運動方程式を参照すると、w0は式(2.1)で与えられる初期ラジアルランアウトであり、未知数qw0およびv0は下記のように決定される:
【数5】
【0040】
ここで、anおよびbnは式(2.1)で与えられる初期ラジアルランアウトから計算できる:
【数6】
【0041】
ここで、Gnは下記で与えられる:
【数7】
【0042】
ここで、Hnは下記で与えられる:
【数8】
【0043】
なお、タイヤには圧力が加えられていないので、式(2.6)における全てのスティフネスは圧力を加える前のものである点に注意されたい。
タイヤリングが伸びない低次のハーモニック(lower harmonics)の場合、すなわち下記:
【数9】
【0044】
の場合は、式(2.5)および(2.6)は単純化できる。
なお、qw0およびw0は各ハーモニックに対して同位相でなければならないという点に注意されたい。これは各ハーモニックに対して円形タイヤリングを特定の非円形タイヤに変形するのに必要な力は位相のズレが全くない状態常に初期ラジアルランアウトw0に比例するということを意味する。
【0045】
従って、タイヤに同じ量の力を反対の方向に加えた同じ非円形タイヤリングの場合、最初に用意したタイヤは同じ円形タイヤである。
従って、タイヤリングの非円形部分は式(2.3a)で与えられる下記:
【数10】
【0046】
を用いて特徴付けることができる。vおよびwは圧力と回転によって生じる上記運動方程式の未知数である。
解は下記で求められる:
【数11】
【0047】
ここで、anおよびbnは式(2.4aおよびb)で与えられる初期ラジアルランアウトから計算できる。
pnは下記で与えられる:
【数12】
【0048】
Qnは下記で与えられる:
【数13】
【0049】
従って、初期が非円形のタイヤの場合、圧力と回転で生じるラジアルランアウトが均一膨張部分と変動部分とを含む。変動部分の各ハーモニックの振幅は位相のズレが全くない状態で初期ラジアルランアウトの振幅に比例する。Qnを介してタイヤ圧と回転が初期ラジアルランアウトの振幅を同調させるつまみの役目をする。タイヤ圧はラジアルランアウトを減らし、回転はラジアルランアウトを増加させる。
【0050】
伸びないタイヤリングの場合すなわち下記:
【数14】
【0051】
の場合は、均一膨張部分がゼロになる。タイヤが伸びない場合でも、タイヤはタイヤの初期ラジアルランアウトによって回転下に変形する。
【0052】
質量アンバランスによって発生するラジアルランアウト
ここでは、質量の不均一分布で生じる非ユニフォーミティについて考える。この場合は、リングにプレストレスがかかり、外部の力は質量アンバランスによって発生する遠心力である。さらに、EI、KwおよびKvは定数とみなされる。タイヤの均一な成長は解に影響がないので式から省いた。プレストレスがかかるリングが伸びないと仮定することによって解析は単純化され、下記になる:
【数15】
【0053】
自由スピンは定常状態にあるので、振動は存在せず、スピンドルに対するリムの回転変位θrはゼロとみなすことができる。
接線方向変位(v)の解は下記で得られる:
【数16】
【0054】
AnおよびBnの解は、n=1、2、3、...に対して下記で得られる:
【数17】
【0055】
(ここで、nは応答でのハーモニック数を表す)
式(3.3a)(3.3b)を式(3.2)に入れ、さらに式(3.1)に入れると、質量アンバランスを有するタイヤのラジアルランアウトの解が得られる。
【0056】
次に、質量が不均一に分布した例を考える。質量が不均一に分布した時に生じる力は下記で表すことができる:
【数18】
【0057】
この質量アンバランス分布に対するラジアルランアウトの解は下記で求められる:
【数19】
【0058】
ここで、enおよびfnは式(3.4b)で与えられる質量アンバランス分布から計算でき、Δnは下記で与えられる:
【数20】
【0059】
ラジアルスティフネスバリエーション(kw)によって生じるラジアルランアウト
質量、接線スティフネスおよび曲げスティフネスはリング上に均一に分布していると仮定する。また、リングにはプレストレスがなく、圧力と遠心力以外の外部の力は存在していない。vはθの周期関数で、定数ではない。kwを定数kw0とみなすと上記運動方程式は下記の解を有する:
【数21】
【0060】
式(4.1b)はタイヤ圧と回転で生じるラジアル変形量であり、タイヤ圧下および回転下での均一なタイヤの拡大を表す。一般にEAが極めて大きいのでw0は極めて小さい値になる。
ラジアルスティフネスは定数部分と変動部分とに分解できる:
【数22】
【0061】
ここで、δkwは下記で表すことができる:
【数23】
【0062】
従って、wは定数部分と変動部分とに分解される:
【数24】
【0063】
ここで、w0は式(4.1b)で与えられる。
さらに、下記のように仮定する:
【数25】
【0064】
多数の計算から上記運動方程式に対して下記の解が導かれる:
【数26】
【0065】
ここで、
【数27】
【0066】
これは式(2.8)と同じである。
ここで、
【数28】
【0067】
なお、伸びないタイヤリングの場合、w0がゼロになり、ラジアルランアウトはゼロになることに注意されたい。これは伸びないタイヤリングの場合、タイヤが圧力下および回転下にあるときにラジアルスティフネスバリエーションがラジアルランアウトを全く発生させないことを意味する。
実際のタイヤではベルトの伸びスティフネスEAがかなり高くなる。この場合にはラジアルスティフネスバリエーションによって生じるラジアルランアウトは質量不均一分布によって生じるラジアルランアウトよりもかなり小さくなる。
【0068】
接線スティフネス(kv)バリエーションによって生じるラジアルランアウト
質量、垂直スティフネスおよび曲げスティフネスはリング上に均一に分布されていると仮定する。また、リングにはプレストレスがなく、圧力と遠心力以外の外部の力は存在していない。
運動方程式の唯一の解がゼロであることが証明できる。これは不均一接線スティフネス分布が圧力と回転が加わった後にラジアルランアウトを全く発生させないことを意味する。
【0069】
曲げスティフネス(EI)バリエーションによって生じるラジアルランアウト
質量、垂直および接線スティフネスはリング上に均一に分布されていると仮定する。また、リングにはプレストレスがなく、圧力と遠心力以外の外部の力は存在していない。
この問題の唯一の解がゼロの解であることは証明できる。従って、タイヤ圧と回転が加わった後には曲げスティフネスバリエーションが円形タイヤにラジアルランアウトを生じさせない。
上記のラジアルランアウト解析に関する数値の例を以下に示す。[表1]は典型的なタイヤで得られるタイヤパラメータを示す。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例
不均一質量分布によって生じるラジアルランアウト
[図2]は最初の4つのハーモニックでの回転速度に対するピークピーク値(2χ振幅)の変化と、20gの点質量(point mass)を有するタイヤでの最初の20個のハーモニックを合計したピークピーク値(Allで表す)を示している。図から分かるように、回転速度がゼロのときにはラジアルランアウトは発生しない。速度が上がるにつれて、全てのハーモニックの振幅が著しく増大する。
【0072】
[図3]は、タイヤがスピンしていないときと、タイヤが30Hzでスピンしているときの、θ=π/2に位置した1つの20グラム点質量を有するタイヤの典型的な変形を視覚的に示している。図に示すように、ラジアルランアウトは点質量の位置でその最大値に達する。なお[図3]では変形を200倍増幅して示してある。
【0073】
[図4]は、タイヤが回転していないときと、タイヤが30Hzでスピンしているときの、180度離れた所(θ=π/2およびθ=3π/2)に位置した2つの20グラム点質量を有するタイヤの典型的な変形を視覚的に示している。図に示すように最大変位の位置は常に点質量と同じ位置を共有している。なお[図4]では変形を200倍増幅して示してある。
【0074】
第2の実施例として、タイヤ頂部質量密度に1%の不均一分布質量を有するタイヤで生じるラジアルランアウトが挙げられる。
[図5]は、不均一質量分布のこの典型的なケースにおける回転速度に対する最初の4つのハーモニックでのピークピーク値の変化を表している。[図5]に示すように、速度が上がるにつれて、全てのハーモニックの振幅が著しく増大する。
【0075】
実施例
不均一ラジアルスティフネス分布によって生じるラジアルランアウト
下記実施例は典型的な不均一なラジアルスティフネス分布によって生じるラジアルランアウトの例である。
[図6]はラジアルランアウトの最初の4つのハーモニックのピークピーク値とタイヤ回転速度との関係を表している。ラジアルスティフネス分布が1%不均一な分布を計算に用いた。毎分約180回転よりも小さい低速度ではタイヤ圧を加えた後のラジアルランアウトは極めて小さい。速度が上がるにつれて、ラジアルランアウトも増加する。30Hzでは、全てのハーモニックで約0.022mmに達する。[図5]と比較すると、高速度では、不均一に分布したラジアルスティフネスによって生じるラジアルランアウトは質量が不均一に分布したときに生じるラジアルランアウトよりもはるかに小さい。
【0076】
タイヤラジアルランアウトに関する上記の解析および実施例からいくつかの結論を出すことができる。タイヤの非ユニフォーミティの種類にかかわらず、タイヤに圧力と回転が加わるとタイヤは均一に拡大する。圧力および回転によってタイヤ半径が増加する。タイヤ頂部の伸びが少ないほどタイヤ半径の伸長は小さい。
【0077】
タイヤに圧力と回転が加わった時、初期ラジアルランアウトによってタイヤラジアルランアウトが発生する。圧力はラジアルランアウトを減らし、回転はラジアルランアウトを増加させる。しかし、圧力および回転によってラジアルランアウトの位相は変化しない。
【0078】
タイヤに圧力と回転が加わると、ラジアルスティフネスバリエーションによってタイヤラジアルランアウトが発生する。回転速度を上げることによってラジアルランアウトの振幅が増大する。ラジアルランアウトの位相はラジアルスティフネスバリエーションの位相と反対になる。タイヤ頂部が伸びない場合にはラジアルスティフネスバリエーションによって発生するラジアルランアウトはゼロになる。
【0079】
タイヤに回転が加わると、不均一質量分布によってタイヤラジアルランアウトが発生する。回転速度を上げることによってラジアルランアウトの振幅が著しく増大する。質量バリエーションによって発生するラジアルランアウトの位相は質量バリエーション自体の位相と同じである。
【0080】
質量アンバランスが点質量の場合には、最大変形は点質量と同じ位置に位置する。
接線スティフネスバリエーションおよび曲げスティフネスバリエーションはラジアルランアウトを発生させない。
タイヤリング伸びスティフネスのバリエーションもラジアルランアウトを発生させることがある。この作用は示していないが、必要に応じて、上記と同じように数学的に処理できる。
【0081】
上記の数学的解析が測定の基礎になり、本発明に従って開発された対応するアルゴリズム用途の基礎になる。
本発明の一つの典型的な用途は、高速RROの測定値から質量アンバランス(質量不均一分布と点質量を含む)の同定である。高速度では質量不均一分布によって大きなRROが発生する。タイヤを測定装置の平面上またはロードホイールに押付けたときに生じるRROは平面によって抑制され、その結果、ホイールの中心に力が生じる。従って、高速度でのスピンドルフォースバリエーションの発生には質量アンバランスも重要な寄与要素になる。少なくともこれらの理由から質量アンバランスの同定も有用な用途となる。
【0082】
[図8][図10]はタイヤの質量アンバランスを特徴付けるための典型的な方法を示している。
個々のタイヤ構造を製造するには各種の公知技術に関する多くの知識が必要であるということを先ず知る必要がある。そうしたタイヤ製造プロセスには例えばゴム化合物および/またはその他の材料を多層に積層してタイヤカーカスを作ることや、タイヤベルト部およびトレッド部を栗付けてタイヤ頂部ブロックを作ることや、グリーンタイヤを加硫すること等が挙げられる。こうしたプロセスは[図10]で30a、30b・・・・30nで示してある。タイヤ32はこれらの技術を組合せて作られる。また、一つのバッチで作った複数のタイヤが30a〜30nの各種方法を反復して作られるということも理解する必要がある。タイヤを製造した後に複数の測定を行って本発明の質量アンバランスを特徴付けなければならない。
【0083】
[図8]を参照する。タイヤの質量アンバランスを特徴付ける方法の典型的なプロセスの第1ステップ34は[表1]に示した各種タイヤパラメータを測定する段階である。このタイヤパラメータには例えばタイヤ半径、タイヤ幅、タイヤ頂部質量、タイヤ圧力、タイヤラジアルスティフネス、タイヤ接線スティフネス、タイヤ曲げスティフネスおよびタイヤ伸びスティフネス等が含まれる。これらのパラメータは当業者に周知のタイヤ特性測定装置36([図10]参照)で得られるか、本発明分野で確定している既知の変量を入力してコンピュータ解析で得ることができる。
【0084】
質量アンバランスの特徴付け方法の第2ステップ38は特定のタイヤを回転させてRRO測定値を得る段階である。タイヤを高速ラジアルランアウト測定装置37([図10]参照)の取付け具(タイヤリム、その他のリジッドディスクに類似のもの)に取付けて測定する。低速度用のRRO測定装置の例は下記の文献に記載されている。
[特許文献3]米国特許第5396438号明細書(Oblizajek)
[特許文献4]米国特許第5345867号明細書(Sube 達)
【0085】
これら特許の内容は本願明細書の一部を成す。このRRO測定装置では所望速度でタイヤを回転したときにタイヤ上の基準点を同定し、維持することができる。次に、高速回転速度、例えば一般的な道路速度に対応する第1の高速回転速度でタイヤを回転させる。本発明の目的のためには、種々の測定値が得られて解析される「高速度」を少なくとも約600回転/分(約10Hz)とする。この比較的高速の回転速度は約20〜30Hzまたはそれ以上にすることができる。
【0086】
上記の数学的解析から、高速RRO(ステップ38、39、42での測定値)は複数のハーモニック(harmonics、調和項)に分解できることは理解できよう:
【数29】
【0087】
ここで、nはハーモニック数を表す。
従って、ステップ40はステップ38で得られたRRO測定値を式(7.1)に基づいて多重ハーモニックに分解するステップである。実際のタイヤの変形は下記の4つのファクターから来る:
(1)均一な拡大(growth)w0、
(2)初期RRO、
【数30】
【0088】
(3)ラジアルスティフネスバリエーション、
【数31】
【0089】
(4)質量の不均一分布
【数32】
【0090】
上記の解に基づくと、測定したRROは上記の全ての寄与度を組み合わせた組合せでなければならない:
【数33】
【0091】
ここで、
【数34】
【0092】
および、
【数35】
【0093】
従って、各ハーモニックで、
【数36】
【0094】
ここで、an、bn、αn、βn、enおよびfnは未知のパラメータである。
以下ではパラメータenおよびfnを不均一分布係数といい、パラメータan、bnは初期RRO係数といい、αnおよびβnはラジアルスティフネスバリエーション係数という。
【0095】
約180回転/分よりも小さい低速度では以下のようになる:
【数37】
【0096】
従って、約180回転/分よりも小さい低速度でのRRO測定値はステップ39で得られ、ステップ40で多重ハーモニックに分解され、初期RRO係数を下記で求めることができる:
【数38】
【0097】
任意の速度で下記:
【数39】
【0098】
である場合(すなわち、ラジアルスティフネスバリエーションがRROに及ぼす作用が無視できる場合)は質量の不均一分布係数enおよびfnは式(7.7)から容易に求めることができる:
【数40】
【0099】
式(7.10)が真でなく、かつ、ラジアルスティフネスバリエーションがタイヤRROに及ぼす作用が認識可能な場合は、2つの高速度でRRO測定値を得なければならない。このような場合は、タイヤを第2の高速度で回転させ、ラジアルランアウト測定値を得るステップ42を行う。第1の高速回転速度の場合と同様に、第2の高速度も少なくとも約600回転/分であるのが好ましく、多くの場合、約1200〜1800回転/分(20〜30Hz)にすることができる。この場合、ステップ38および42で得られたRRO測定値を、ステップ40で式(7.1)によってそれぞれの多重ハーモニックに分解することができる。第1および第2の回転速度で求めた各ハーモニック毎に下記関係式が存在する:
【数41】
【0100】
ラジアルスティフネスバリエーション係数αnおよびβnと、質量の不均一分布係数enおよびfnはステップ44で上記の式から求めることができる:
【数42】
【0101】
このようにして、質量アンバランスの大きさと位置が得られる。本発明の解析法では質量アンバランスが実際の質量アンバランス分布に対応して決定される。しかし、点質量の決定もこの方法に従って決定できる。すなわち、点質量はモデル化するために不均一分布形式に変換できるので、同様な処理をすることができる。複数のハーモニックのピークが同じ位置を共有する場合、通常、点質量がタイヤ内に存在する。
【0102】
ステップ44での質量アンバランス(例えば質量不均一分布および/または点質量の存在)を決定したら、ステップ46でタイヤを評価する。典型的な評価法にはタイヤの質量アンバランス量の所定限界値をベースにして各タイヤを仕分ける(ソートする)操作が含まれる。この限界値はテストするタイヤのタイプおよび/またはタイヤが取り付けられる車両のタイプに依存する。タイヤの質量アンバランスが所定限界値以下である場合にはタイヤは仕分けされ、顧客へ送られる。タイヤが所定限界値を越える質量アンバランスを有する場合には仕分けし、タイヤを廃棄するか、修正のために製造プロセスへ戻す。これ以外の典型的な評価法には複数のカテゴリの一つへタイヤを等級付け(grading)することがある。この場合の各カテゴリは質量不均一分布の所定レベルと各タイヤのタイプおよび/または車両のタイプ、タイヤの用途をベースにして定義される。この特性および限界、等級付けカテゴリはタイヤ製造業者および/または顧客が求める極めて多様なパラメータに依存するので、ここではその詳細は記載しない。
【0103】
[図8]は典型的方法のより具体的な例を示す。なお、ステップ34で設定されたタイヤは[表1]に記載のタイヤパラメータを有する。式(7.10)が真である(すなわちラジアルスティフネスバリエーションがRROに及ぼす作用が無視できる)と仮定し、ステップ38で第1の典型的な高速回転速度30HzでタイヤRROを測定し、さらに、ステップ39において0Hzで測定する。この測定とその後のステップ40におけるハーモニック分解の結果を下記の[表2]に示す。なお、均一拡大部分は本発明の解析に影響がないので記載していない。
本発明の変形例では、均一拡大がタイヤ特徴付けに寄与するときには均一拡大を考慮に入れることができるということは理解できよう。
【0104】
【表2】
【0105】
[表2]には10個のRROハーモニックしか示していないが、これ以下またはこれ以上の数のハーモニックが得られることは理解できよう。[表2]の多重ハーモニックを式(7.6)、(7.9)および(7.11)に代入すると、下記の[表3]の質量の不均一分布係数が得られる。
【0106】
【表3】
【0107】
[表3]および式(7.4)から、質量アンバランスを求めることができる。ここではそれぞれπ/2および−π/2に位置した2つの20gの点質量が存在する。このようにして質量アンバランスが同定できる。
[図7A]〜[図7D]はこのような質量不均一分布の各同定段階を示している。[図7A]は0HzでのRRO測定値を二次元で示す図であり、[図7B]は30HzでのRRO測定値を二次元で示す図。[図7C]は初期RROが寄与するRROを示し、[図7D]はタイヤが30Hzで回転しているときに質量アンバランスが寄与するRROを示している。なお、[図7A]〜[図7D]に示すタイヤ変形は説明のために200倍に拡大して示してある。上記各図で点線は基準となる完全な円形のタイヤを示す。
【0108】
[図10]には本発明のタイヤ質量アンバランスの特徴付け方法をタイヤ評価および関連する製造プロセスとどのように組合わせるかについての追加の観点も示してある。既に述べたように多重するサブプロセス30a〜30nでタイヤ32が製造される。各種タイヤパラメータは各タイヤ32をタイヤ特性測定装置36にかけることによって得られる。必要な場合にはタイヤ特性測定装置36はそれぞれの所望のタイヤパラメータを得るための複数の測定装置にすることができる。次いで、高速RRO測定装置37で高速RRO測定値を得ることができる。[図8]の説明で述べたように、ラジアルスティフネスバリエーションの作用が無視できるときには、約180回転/分よりも小さい低速度および第1の高速度でRRO測定値が得られる。ラジアルスティフネスバリエーションの作用が認識できるときには、約180回転/分よりも小さい低速度と2つの高速度でRRO測定値が得られる。装置36、37で得られた測定値をコンピュータ48にリレーする。このコンピュータ48は任意タイプのプロセッサー、マイクロコントローラ、その他任意のデータ解析装置にすることができる。
【0109】
[図10]を参照すると、車両感受性テスト(VST)50が用いられ、それが上記コンピュータ48に接続されている。このVST50はタイヤの非ユニフォーミティー(例えば質量アンバランス)に起因する自動車振動に関する測定を行う。その詳細は下記文献に記載されている。
[非特許文献1]M.G Holcombe, R.G Altoman、「Method for Determining Tire and Wheel Uniformity Needs Using Ride Rating Simulations」、SAE 880579、1998
【0110】
一般に、質量アンバランスが高レベルになると自動車の振動量が高くなり、乗り心地が悪くなる。上記VST50は客観的または主観的にそのレベルを示すものである。客観的にするために車両のステアリングの位置、ドライバの座席の位置および/または車両の床の位置に測定装置を取り付けてその振動を測定する。主観的な査定の場合にはプロドライバが振動を厳しく評価する。そうすることによって自動車の振動とタイヤの非ユニフォーミティー(質量アンバランス等)との間の関係が確定でき、非ユニフォーミティー(質量アンバランス等)の限界値を決めることができ、タイヤの非ユニフォーミティーレベルがその限界値以下であれば優れた乗り心地が保証される。こうして求められた限界値をコンピュータ48に直接プログラムする。
【0111】
コンピュータ48が質量の不均一分布係数を計算し、質量アンバランスの大きさと位置を求める。その後、求めたパラメータをVST50で確定した限界値と比較することができる。その結果でタイヤを仕分け(ソート)または等級付けで評価する。仕分け評価では、質量アンバランス特徴がVST50によって確定された限界値以下である場合にタイヤを顧客へ送る。一方、得られた質量アンバランス特性がVST50によって確定した限界値を超える場合にはタイヤを廃棄するか、修正のため製造プロセスへ戻す。典型的な修正方法はタイヤの質量アンバランス位置の研磨またはタイヤの所定位置への質量の追加であるということはタイヤ製造分野の当業者には理解できよう。
【0112】
[図10]には示していないが、これ以外の典型的な評価方法、例えば複数のカテゴリの一つへタイヤを等級付け(grading)する方法も実施できるということは理解できよう。さらに、コンピュータ48で求めた質量アンバランスをフィードバック修正52で使用することもでき、タイヤ32の製造に関係する各種プロセス30a〜30nの所定プロセスへフィードバック52して修正することもできる。
【0113】
本発明のさらに別の典型的な実施例は、高速RRO測定値を含む測定値に基づく高速ユニフォーミティ(HSU)を予測し、制御する技術にある。既に述べたように、質量アンバランスは高速度でRROを生じさせるので、タイヤを平面上またはロードホイールに当接せたときに、望ましくないタイヤスピンドルフォースが発生する。従って、高速ユニフォーミティを予測し、制御するのには質量アンバランスの同定が重要である。
【0114】
[図9]と[図11]を参照すると、これらの図はタイヤの高速ユニフォーミティを特徴付けるための典型的な方法を示している。先ず最初に、タイヤ製造では互いに異なる複数の層を積層してタイヤカーカスとタイヤ頂部ブロックとが作られにということを理解する必要がある。各層1、2...n([図11]の60a、60b...60n)の組み合せによって各層にはオーバラップ部分または変動部分ができる(存在する)。製造されたタイヤ64には製造プヤセスによって導入された種々のバリエーション62a、62b...62nができる。従って、本発明のタイヤ高速ユニフォーミティを特徴付けるためには、タイヤ製造後に複数の測定値を確定しなければならない。
【0115】
[図9]を参照する。この図にはタイヤ製造プロセスの典型的なステップが示されている。この典型的な製造法の第1ステップ70はタイヤのサンプルセットを製造するステップである。次のステップ72ではタイヤのサンプルセットのタイヤ特性、例えばタイヤの半径、頂部の線形質量密度、圧力、幅、ラジアルスティフネス、接線スティフネス、曲げスティフネスおよび/または伸びスティフネス(これらに限定されるものではない)の測定値が得られる。これらの特性は当業者に周知の適切な測定装置で測定するか、所定量として与えることができる。ステップ72で測定されまたは与えられたタイヤ特性は[図9]の典型的な製造法と組み合わされる後半の計算ステップで使用される。この方法の次のステップは、ステップ70で製造したサンプルタイヤのセットの各タイヤを低速度で回転させ、タイヤのラジアルフォースバリエーションを測定するステップである。本発明の目的のためには比較的低速度を約180回転/分(3Hz)よりも小さい速度にする。ラジアルフォースバリエーションは低速度測定装置66([図11]参照)で得ることができる。これに対応する装置の例は上記特許文献1(米国特許第5,396,438号明細書、Oblizajek)に記載の試験装置114および/または装置132である。タイヤ製造および試験の分野で公知の他の低速度測定装置を使用することもできる。本発明の目的のために設計する場合には、低速度および高速度の全ての測定が単一測定機械でできるのが望ましい。装置66で得ることができるラジアルフォースバリエーション以外の低速度パラメータとしては有効ころがり半径バリエーション(effective rolling radius)測定値およびランアウト測定値が挙げられる。
【0116】
[図9]をさらに参照する。低速度測定値が得られた後、各サンプルタイヤを次のステップ76で高速回転させてフォースバリエーションを測定し、これらの測定値を多重ハーモニックに分解する。次に、タイヤラジアルランアウトをステップ78で多重な速度で測定し、質量アンバランスを本発明方法に従って計算することができる。その後のステップ80で低速フォースデータ、高速ラジアルランアウトデータおよび高速フォースバリエーションデータから複素伝達関数(complex transfer functions)を求めることができる。ステップ80で求めた伝達関数はサンプルタイヤセットの高速フォースバリエーション(HSU)を特徴付けるのに使用される。高速ユニフォーミティ決定統計法に関する追加の詳細は特許文献1(米国特許第5,396,438号明細書、Oblizajek)に記載されている。この特許の内容は本明細書の一部をなす。
【0117】
タイヤのサンプルセットを用いて得た測定値から高速ユニフォーミティ特性付けに用いる複素伝達関数を最終的に求めた後、ステップ82でタイヤのセット(製造セット)を製造する。これらのタイヤ(製造セット)を次のステップ84で低速度で回転させてフォース測定値を得る。次に、製造された各タイヤをステップ86で多重の速度で回転させてラジアルランアウトを測定し、質量アンバランスを計算する。ステップ88ではステップ84で得られた低速フォース測定値、ステップ86からの質量アンバランス計算値およびステップ80で求めた複素伝達関数に基づいて製造された各タイヤの高速ユニフォーミティ特性を求めることができる。
【0118】
製造された各タイヤの高速ユニフォーミティ特性をステップ88で求めた後にステップ90でタイヤを評価することができる。典型的な評価法は製造されたそれぞれのタイヤの高速ユニフォーミティのレベルの所定限界値に基づいて各タイヤを仕分け(ソート)および/または等級付けすることが含まれる。この限界値はテストするタイヤのタイプおよび/またはタイヤが取り付けられる車両のタイプに依存する。タイヤの高速ユニフォーミティ特性が許容可能な場合にはタイヤは仕分けされて顧客へ送られる。タイヤの高速ユニフォーミティ特性が許容不可の場合にはタイヤを廃棄するか、修正のために製造プロセスへ戻す。これ以外の典型的な評価方法には複数のカテゴリの一つへタイヤを等級付け(grading)することがある。この場合の各カテゴリは高速ユニフォーミティおよび作用の所定レベルをベースにして各タイヤのタイプおよび/または車両のタイプ、タイヤの用途ごとに定義される。この特定の限界値および等級付けカテゴリはタイヤ製造業者および/または顧客が求める極めて多様なパラメータに依存するので、ここではその詳細は記載しない。
【0119】
本発明によるタイヤの高速ユニフォーミティ特徴付けをタイヤ評価および関連する製造プロセスとどのように組合わせるか、という追加の観点が[図11]に示されている。既に述べたように、多重した層60a〜60nを配置することで、製造された各タイヤ64で各層のオーバラップまたは変動62a〜62nが生じる。低速フォースおよび/またはRRO測定値は低速度測定装置66で得ることができ、高速RRO測定値は高速RRO測定装置37で得ることができる。これらの装置37および66で得られた測定値をコンピュータ48’にリレーする。このコンピュータ48’は任意タイプのプロセッサー、マイクロコントローラ、その他任意のデータ解析装置にすることができる。
【0120】
[図11]を再度参照すると、車両感受性テスト(VST)50’が使用され、これがコンピュータ48’に接続されている。このVST50’は[図10]の説明で述べたものと同じVST測定50にすることができる。次に、コンピュータ48’がタイヤHSUを計算し、それをVST50’で確定した限界値と比較する。その結果に応じてタイヤを例えば仕分け(ソート)または等級付けで評価する。仕分け評価では、求めたRROおよびHSU特性がVST50’によって確定された限界値以下である場合にタイヤを顧客へ送り、また、求めたRROおよびHSU特性がVST50’によって確定された限界を超える場合にはタイヤを廃棄するか、修正のために製造プロセスへ戻す。典型的な修正方法は研磨法に従って所定位置でタイヤを研磨することであるということはタイヤ製造分野の当業者には理解できよう。
【0121】
[図11]には示していないが、これ以外の典型的な評価方法、例えば複数のカテゴリの一つへタイヤを等級付け(grading)する方法を行うことができるということは理解できよう。さらに、コンピュータ48’が求めた各層のオーバラップまたは変動がHSUに及ぼす作用をフィードバック修正74で使用することもできる。すなわち、各層のオーバラップまたは変動62a、62b...62n毎に最適位置を与えてタイヤ64の構造を改良することができる。これらの作用をタイヤ製造プロセスへフィードバックして新しい許容範囲を設定することもできる。
【0122】
以上、本発明の複数の異なる実施例を用いて本発明方法の種々の組み合わせを説明したが、上記の典型的な実施例に本発明が限定されるものではないという点に留意する必要がある。上記実施例に記載した一つまたは複数の段階や特徴の一部を他の実施例でも使用することができる。また、特定の特徴は同じまたは同様な作用を有する同様のデバイスまたは本明細書に記載のない自明な特徴に代えることもできる。同様に、タイヤ製造プロセス上の特定の段階を他の段階に代えてタイヤ特徴付け法および製造方法を別の実施例にすることもできる。
【0123】
以上、本発明を本発明の特定の実施例を用いて説明したが、上記の説明を基にして種々の変更、均等手段の置換を行うことができるということは当業者には容易に理解できよう。従って、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明は上記実施例を変更したもの、置換したものおよび/または当業者が容易に成し得るものを含むものである。
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤの性能パラメータ、例えば質量の不均一分布を含む質量アンバランスと高速ユニフォーミティとを特徴付ける方法(キャラクタリゼージョン方法)に関するものである。
これらおよびその他のタイヤ性能パラメータの特徴付け(キャラクタリゼージョン)および予測は、製造されたタイヤ製品の仕分け(ソート)および/または製造プロセスの制御に利用できる。
【背景技術】
【0002】
自動車の振動の多くは高速走行道路での速度が25mph以上になった時にドライバーが感じるようになる。相対的に高速度での自動車振動の一つの原因は各タイヤスピンドル位置でのフォースバリエーション(力の変動)対応し、これを一般にタイヤの高速ユニフォーミティという。
【0003】
この高速ユニフォーミティ(HSU)に対する関心が自動車産業では高くなっており、タイヤメーカにはこの高速ユニフォーミティ(HSU)をコントロールすることが求められている。しかし、タイヤのHSUは測定が難しく、測定にはコストがかかるためHSUを工業的に制御することは極めて難しかった。
【0004】
このフォースバリエーションとその結果生じる望ましくない振動のレベルを予測し、制御するために種々のタイヤパラメータが定められ、測定されてきた。タイヤの高速ユニフォーミティを予測または求めるためには各種のタイヤパラメータの測定値を多重に組み合わせるのが望ましい。
【0005】
特許文献1にはタイヤのHSU予測方法の一つが記載されている。
この特許では低速でのラジアルランアウト(radial run out)(RRO)、瞬間ローリング半径(instantaneous rolling radius)(IRR)およびラジアルフォースバリエイション(RFV)のパラメータを多重に用いたものを基本にしてHSUを予測している。
【0006】
特許文献2には高速ユニフォーミティーの他の測定方法が記載されている:
この特許では低速ユニフォーミティーの測定値で高速での高次成分を予測している。なお、低速度ユニフォーミティーの測定機械は確立しており、全てのタイヤ生産ラインに配置されている。上記特許文献の内容は全て本願明細書の一部を成す。上記のようなHSUパラメータの予測方法の現状とHSUレベルを制御したいというマーケットニーズとから、HSUを特徴付ける方法を改良することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5396438号明細書
【特許文献2】米国特許第6065331号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
タイヤのHSUに対しては多くのファクターが寄与しているので、タイヤユニフォーミティーを効果的に制御する上での最大の課題はタイヤのフォースバリエイションと車両振動の対応レベルを制御するのに必要な寄与ファクターを正しく同定・識別することができるか否かにある。
【0009】
本発明者は、質量の不均一分布が大きなラジアルランアウトを生じさせ、それが高速でのユニフォーミティに直接影響するということを見出した。タイヤHSUパラメータを予測する上記の試みはいずれも高速ユニフォーミティを予測および制御する際のファクターとして質量の不均一分布を計算に入れていない。従って、上記の方法に従って質量の不均一分布を多重ハーモニックレベルで同定する方法を提供することが望まれている。
タイヤ高速ユニフォーミティーを特徴付ける方法とそれをタイヤ製造に生かす方法はいくつか開発されてきたが、以下に説明する本発明のように所望の特徴の全てを含む方法は知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来法の問題点を解決するために、本発明ではタイヤの質量の不均一分布および高速ユニフォーミティの両方を特徴付ける改良方法を提供する。質量の不均一分布は本明細書で説明するように高速ラジアルランアウト測定値から同定され、その後、数学的に解析される。質量の不均一分布特性はタイヤの仕分けおよびタイヤ製造プロセスの改良で使用でき、例えばタイヤの各層のオーバラップまたは変動のパラメータを制御・最適化するのに使用できる。タイヤの高速ラジアルランアウトの測定値および解析値を低速フォース測定値と組み合わせてタイヤ高速ユニフォーミティを求め、それを特徴付けることもできる。このタイヤ高速ユニフォーミティ特性はタイヤ仕分けと対応するタイヤ製造プロセスの改良にも使用できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のタイヤパラメータを特徴付ける方法とそれを用いたタイヤ製造方法には多くの利点がある。一つの典型的な利点はタイヤユニフォーミティー、特に重要なタイヤパラメータであることが最近になって認識されてきた高速ユニフォーミティー(HSU)を効果的かつ有効に予測できる点にある。本発明ではタイヤの高速ユニフォーミティーを高速ラジアルランアウト測定値と低速フォース測定値とに基づいて予測し、制御する。この高速ラジアルランアウト測定値はタイヤの質量アンバランスを予測し、制御するのにも使用ができる。
【0012】
高速ユニフォーミティを予測する公知の方法では、高速ラジアルランアウト(例えば質量アンバランス)の全ての同定された作用を考慮せずに、低速ユニフォーミティ測定機械で測定した多重の低速パラメータだけを考慮している。本発明では質量アンバランスとタイヤ高速ユニフォーミティとを相関させる点で有利である。
【0013】
公知の技術では第1ハーモニックを超える質量アンバランスが測定できない。本発明の別の利点は本発明では多重ハーモニックに対してタイヤの質量アンバランスを測定するのに有効な段階および方法が提供できる点にある。いかなる質量アンバランスも高速で有意な量のラジアルランアウトと関連するタイヤスピンドルフォースバリエーションとを発生させるので質量の不均一分布と点質量を含む質量アンバランスを有効に示す指標は重要である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の解析法で使用する典型的なタイヤのリングモデルの概念的線図。
【図2】本発明のタイヤ特徴付けに関する所定の点質量を有するタイヤで生じるラジアルランアウトを回転速度に対して示したグラフ。
【図3】本発明のタイヤ特徴付けに関する所定の点質量に対する種々の回転速度での二次元タイヤ形状を示すグラフ。
【図4】本発明のタイヤ特徴付けに関する多重な所定の点質量に対する種々の回転速度での二次元タイヤ形状を示すグラフ。
【図5】本発明のタイヤ特徴付けに関する頂部質量に1パーセントの不均一分布を生じさせるラジアルランアウトを回転速度に対して示したグラフ。
【図6】本発明のタイヤ特徴付けに関するラジアルスティフネスに1パーセントの不均一分布を生じさせるラジアルランアウトを回転速度に対して示したグラフ。
【図7A】本発明のタイヤ特徴付けに関するラジアルランアウトパラメータから得られる二次元タイヤ形状を示すグラフ。
【図7B】本発明のタイヤ特徴付けに関するラジアルランアウトパラメータから得られる二次元タイヤ形状を示すグラフ。
【図7C】本発明のタイヤ特徴付けに関するラジアルランアウトパラメータから得られる二次元タイヤ形状を示すグラフ。
【図7D】本発明のタイヤ特徴付けに関するラジアルランアウトパラメータから得られる二次元タイヤ形状を示すグラフ。
【図8】本発明のタイヤ質量アンバランスの特徴付けによる実施例のプロセス段階を示すブロック線図。
【図9】本発明のタイヤ高速ユニフォーミティの特徴付けによる実施例のプロセス段階を示すブロック線図。
【図10】本発明のタイヤ質量アンバランス特徴付け法を利用してタイヤを製造および仕分けする方法を示すブロック線図。
【図11】本発明のタイヤ高速ユニフォーミティ特性付けに対応してタイヤを製造および仕分けする方法を示すブロック線図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一つの実施例では、タイヤの質量アンバランスを特徴付ける方法は複数の段階を含み、その第1段階では所定のタイヤに対して複数のタイヤパラメータを確定する。これらのタイヤパラメータは測定するか、事前にプログラムすることができる。こうしたパラメータにはテストするタイヤの質量、半径、タイヤ圧、幅、ラジアルスティフネスおよび/または伸びスティフネスや、試験するタイヤを取り付ける取付け具(例えば、ホイールリム類似具)の質量および/または慣性モーメントを含むことができる。
【0016】
タイヤを適当な測定機械に取り付け、約600+回転/分の比較的高速度で回転させることでラジアルランアウトの測定値を得ることができる。ラジアルスティフネスバリエーションがタイヤラジアルランアウト(RRO)に及ぼす作用が無視できる場合は約180回転/分以下の低速度と第1の高速回転速度とでRRO測定値が得られる。ラジアルスティフネスバリエーションがタイヤRROに与える作用が認識できる場合は約180回転/分よりも小さい低速度と1つまたは2つの高速回転速度でRRO測定値を得る。得られたRRO測定値を多重ハーモニックに分解し、この多重ハーモニックから質量の不均一分布係数を計算する。質量の不均一分布係数を用いてテストタイヤに存在する質量アンバランス(例えば質量不均一分布および点質量)の大きさと位置が決まる。
【0017】
上記実施例で求めた質量アンバランスは種々の形で利用できる。例えば、被テストタイヤを所定の限界値を有する複数のカテゴリの1つに等級付けし、評価することができる。被テストタイヤを顧客へ送るのが許容されるグループと、質量アンバランスが許容限界内になく、修正(例えば研磨または質量の付加)が必要な別のグループへ仕分けることができる。
【0018】
本発明の追加の実施例は、上記タイヤ質量アンバランスの特徴付け段階を含むタイヤの製造方法に関するものである。この実施例では得られた質量アンバランスを車両感受性テストが得られた所定の質量アンバランス限界値と比較することができる。この比較の結果と関連する解析値とをフィードバックしてそれ以降のタイヤの製造条件を質量アンバランスの解析結果に応じて制御することができる。
【0019】
本発明のさらに別の実施例で提供されるタイヤの高速ユニフォーミティを特徴付ける方法は、複数の層によって特徴付けられる製造済みのタイヤを用意する段階と、製造されたタイヤを所定の第1の回転速度で回転させて少なくとも1つの第1フォース測定値を得る段階と、製造されたタイヤを所定の第2の回転速度で回転させて少なくとも1つのラジアルランアウト測定値を得る段階と、上記の少なくとも1つの第1フォース測定値と上記の少なくとも1つのラジアルランアウト測定値とから製造されたタイヤにおける層のオーバラップまたは変動の作用を求める段階とを含む。他の実施例では第1の回転速度は約180回転/分よりも小さい速度であり、第2の所定の回転速度は約600回転/分以上の速度である。
【0020】
上記実施例で求めた高速ユニフォーミティ特性はそれ以降のタイヤ製造で種々の形で利用できる。例えば、被テストタイヤを所定限界値を有する複数のカテゴリの1つに等級付け、評価することができる。被テストタイヤを顧客へ送るのが許容されるグループと、タイヤ高速ユニフォーミティが許容レベルになく、修正(例えば研磨または質量付加)が必要な別のグループに仕分けることができる。
【0021】
本発明のさらに追加の実施例はタイヤの製造方法に関するもので、その一例は上記の観点およびタイヤ高速ユニフォーミティを特徴付ける段階を含むものである。すなわち、高速ユニフォーミティ特性を車両感受性テスト、その他の方法で得た所定の高速ユニフォーミティ限界値と比較し、その比較結果と関連する解析値とをフィードバックしてそれ以降のタイヤ製造条件を高速ユニフォーミティに応じて制御する。一般に、製造されたタイヤの各層はわずかにオーバラップしているので、高速ユニフォーミティ解析結果を用いて許容範囲の設定および/または調整を行い、各層のオーバラップ位置または変動を最適化することができる。
【0022】
本発明のさらに別の実施例で提供されるタイヤの製造方法は、タイヤ特徴付け法と組み合わされた複素伝達関数を確定する段階と、タイヤのセットを製造する段階と、製造された各タイヤを第1の回転速度で回転させて少なくとも1つの第1フォース測定値を得る段階と、製造された各タイヤを少なくとも第2および第3の回転速度で回転させて少なくとも第2および第3の回転速度でのラジアルランアウト測定値を求め、得られた測定値から各タイヤの質量アンバランスを計算する段階と、少なくとも1つの第1フォース測定値、複素伝達関数および計算で求めた質量アンバランスに基づいて製造した各タイヤの高速ユニフォーミティ特性を計算する段階とを含む。こうして計算した高速ユニフォーミティ特性に応じてそれ以降のタイヤの製造条件を制御することができる。さらに別の製造段階(タイヤの研磨または質量付加)を行って製造された各タイヤの高速ユニフォーミティ特性を改良することもできる。
【0023】
上記実施例の複素伝達関数(complex transfer functions)を確定する段階は特に下記段階、すなわちサンプルタイヤのセットを製造する段階と、各サンプルタイヤを第1および第2の回転速度で回転させてそれぞれのフォース測定値を得る段階と、各サンプルタイヤを第1および第2の回転速度および少なくとも1つの追加の回転速度のいずれか1つの速度で回転させてそれぞれのラジアルランアウト測定値を得る段階と、フォース測定値とラジアルランアウト測定値から複素伝達関数を求める段階によって特徴付けることができる。複素伝達関数は第2フォース測定値と第1フォース測定値との関係、さらには2つのラジアル測定値を特徴付ける。他の実施例では第1および第2の回転速度の一方を約180回転/分よりも小さくし且つ残りの全ての回転速度を約600回転/分以上にすることができる。全てのフォース測定値を多重ハーモニックに分解してから複素伝達関数を求めることができる。
【0024】
本発明の上記以外の目的および利点は以上の説明および以下の記載から当業者には明らかであろう。また、以下に示し、説明し、参照する事項やその本発明の各実施例で実際に使用される段階は本発明の精神および範囲から逸脱せずに変更、改良できるということも理解できよう。そうした改良には図示し、説明し、参照した事項の均等物の置換、各種部品、特性、段階等の機能上、操作上および位置の変更等が含まれる。
【0025】
さらに、図示した本発明の他の実施例および好ましい他の実施例には、上記の特徴、段階、要素または均等物が含まれるということも理解できよう(特徴、部品、段階、構造または図示していない事項または詳細に説明していない事項の組合わせを含む)。また、本願明細書に記載のない追加の実施例には本願明細書に記載の特徴、要素、上記で要約した段階および/またはその他の特徴、要素または段階の多様な組み合わせが含まれる。当業者は以下の実施例の説明から上記以外の特徴および観点をよりよく理解できよう。
【実施例】
【0026】
以下、当業者に対して本発明を完全かつ十分に開示した、ベストモートの開示である添付図面を参照する。
なお、本発明で同一または類似の特徴または要素を表すものは明細書および添付図面で同じ参照記号を使用した。
【0027】
既に述べたように、本発明はタイヤの質量の不均一分布および高速ユニフォーミティーの両方の特徴付けに関するものである。本明細書では質量の不均一分布は高速ラジアルランアウト測定値から同定し、この測定値を数学的に解析する。こうして得られた質量の不均一分布の結果はタイヤの仕分けおよび/または等級付けや、タイヤ製造プロセスの改良で使用できる。例えば、タイヤの各層のオーバラップパラメータの制御や最適化で使用できる。さらに、タイヤの高速ラジアルランアウトの測定値および解析値を低速フォース測定値と組み合わせて高速ユニフォーミティを求め、特徴付けすることもできる。この高速ユニフォーミティの特徴付け結果を用いてタイヤの仕分けプロセスおよび対応するタイヤ製造プロセスを改良することもできる。
【0028】
タイヤの高速ユニフォーミティレベルの予測法に関する上記方法(例えば特許文献1の米国特許第5396438号明細書)では、低速でのパラメータ、例えばラジアルランアウト(radial run out)(RRO)、瞬間ローリング半径(instantaneous rolling radius)(IRR)およびラジアルフォースバリエイション(RFV)のパラメータを多重に用いたものを基本にしてタイヤの高速ユニフォーミティを予測している。この高速RROは高速ユニフォーミティに大きく寄与するファクターである。しかし、低速で測定したパラメータのみをベースとする高速ユニフォーミティの予測では、高速RROに寄与する変数の少なくとも一つである質量アンバランス(mass unbalance)(例えば質量の不均一分布、mass uneven distribution)を考慮に入れることができない。従って、本発明の対象は、タイヤの高速ユニフォーミティレベルをより正確に特徴付けるために高速RRO測定値を得ることにある。さらに、この高速RRO測定値を分解することでタイヤの質量アンバランスを特徴付ける情報を得ることができ、この情報を利用してタイヤのラジアルランアウト特性(radial run out characterizing)を減らし、高速ユニフォーミティを改良することができる。
【0029】
以下、本発明を製造プロセスで応用する際のベースとなるタイヤのモデル化および数値解析法を[図1]〜[図7]を参照して説明する。より正確にはアルゴリズムフォーミュレーションと、タイヤ高速ラジアルランアウトに寄与する要素(タイヤ半径の初期不均一分布、タイヤ質量アンバランス、タイヤの垂直スティフネス分布バリエーション、タイヤの接線分布スティフネスバリエーション、タイヤの曲げスティフネス分布バリエーション等)の測定法について説明する。
[図1]〜[図7]に記載の基本要素は本発明の典型的な方法で使用され、[図8][図10]は質量不均一分布および/または点質量を含むタイヤ質量アンバランスの特徴付けで使用される特徴および段階の典型例を示し、[図9][図11]は高速ユニフォーミティ特性の特徴付けで使用する特徴および段階の典型例を示している。
【0030】
本発明の観点では、高速RRO(またはクラウン変形)の各種ファクターを求めることでタイヤ高速ユニフォーミティとそれに関連する他のパラメータをより正確に特徴付けることができる。
【0031】
[図1]を参照すると、タイヤ10は一般に円形弾性リングとしてモデル化されている。このタイヤ10は取付け装置12(例えばホイールリム、その他のタイプのリジッドなディスク)に結合されている。リムは回転軸線18の所でピン止めされている。タイヤ10はラジアル方向に分布したバネ14と接線方向のバネ16とを介してリム12に結合されている。
【0032】
タイヤの非ユニフォーミティに寄与する要素には質量アンバランスδm、ラジアルスティフネスバリエーションkw、接線スティフネスkr、および、曲げスティフネスEIが含まれる。圧力と回転が加わっていない初期の状態では、リング10は一般に半径Rの円形である。タイヤが高速Ωで回転すると、非ユニフォーミティの存在によってリングは非円形の形に変形する。
【0033】
回転中のタイヤの各パラメータを参照するために以下の用語を使用する:
w: ラジアル方向垂直変位すなわちラジアルランアウト
v: 接線方向変位(tangential displacement)
P0: タイヤ圧
A: タイヤリングの横断面積
ρ: タイヤリングの質量密度
b: タイヤリングの幅
θr: Ωに対するリムの相対回転角
Rr: リム半径
qw: 垂直方向の外部の力
qv: 接線方向の外部の力
θ: 0〜2πの周方向座標
【0034】
タイヤリングは円形で、リムはホイールの中心でピン止めされているとみなすと、運動方程式は下記で記載できる:
【数1】
【0035】
ここで、
【数2】
【0036】
式(1.1a、b、c、d)は質量m、ラジアルスティフネスkw、接線スティフネスkr、曲げスティフネスEIの不均一分布と、以下で詳細に説明するタイヤ半径(RRO)の不均一分布とに起因する非ユニフォーミティを調べるのに用いることができる。
【0037】
リング半径Riの初期不均一分布によって発生するラジアルランアウト
ここでは、圧力と回転が加わった後に非円形リングがその形をどのように変形するかについて考える。非円形リングの特徴付けは難しいため、タイヤ10は半径Rで、プレストレスがないと仮定する。外部の力qw0が加わると、リングの変形量w0は下記の必要条件を満足する:
【数3】
【0038】
ここで、Riは非円形リングの初期半径を表すθの関数であり、Rは下記で与えられる:
【数4】
【0039】
以下で説明するように、接線フォースはゼロ、すなわちqv0=0と仮定できる。
上記運動方程式を参照すると、w0は式(2.1)で与えられる初期ラジアルランアウトであり、未知数qw0およびv0は下記のように決定される:
【数5】
【0040】
ここで、anおよびbnは式(2.1)で与えられる初期ラジアルランアウトから計算できる:
【数6】
【0041】
ここで、Gnは下記で与えられる:
【数7】
【0042】
ここで、Hnは下記で与えられる:
【数8】
【0043】
なお、タイヤには圧力が加えられていないので、式(2.6)における全てのスティフネスは圧力を加える前のものである点に注意されたい。
タイヤリングが伸びない低次のハーモニック(lower harmonics)の場合、すなわち下記:
【数9】
【0044】
の場合は、式(2.5)および(2.6)は単純化できる。
なお、qw0およびw0は各ハーモニックに対して同位相でなければならないという点に注意されたい。これは各ハーモニックに対して円形タイヤリングを特定の非円形タイヤに変形するのに必要な力は位相のズレが全くない状態常に初期ラジアルランアウトw0に比例するということを意味する。
【0045】
従って、タイヤに同じ量の力を反対の方向に加えた同じ非円形タイヤリングの場合、最初に用意したタイヤは同じ円形タイヤである。
従って、タイヤリングの非円形部分は式(2.3a)で与えられる下記:
【数10】
【0046】
を用いて特徴付けることができる。vおよびwは圧力と回転によって生じる上記運動方程式の未知数である。
解は下記で求められる:
【数11】
【0047】
ここで、anおよびbnは式(2.4aおよびb)で与えられる初期ラジアルランアウトから計算できる。
pnは下記で与えられる:
【数12】
【0048】
Qnは下記で与えられる:
【数13】
【0049】
従って、初期が非円形のタイヤの場合、圧力と回転で生じるラジアルランアウトが均一膨張部分と変動部分とを含む。変動部分の各ハーモニックの振幅は位相のズレが全くない状態で初期ラジアルランアウトの振幅に比例する。Qnを介してタイヤ圧と回転が初期ラジアルランアウトの振幅を同調させるつまみの役目をする。タイヤ圧はラジアルランアウトを減らし、回転はラジアルランアウトを増加させる。
【0050】
伸びないタイヤリングの場合すなわち下記:
【数14】
【0051】
の場合は、均一膨張部分がゼロになる。タイヤが伸びない場合でも、タイヤはタイヤの初期ラジアルランアウトによって回転下に変形する。
【0052】
質量アンバランスによって発生するラジアルランアウト
ここでは、質量の不均一分布で生じる非ユニフォーミティについて考える。この場合は、リングにプレストレスがかかり、外部の力は質量アンバランスによって発生する遠心力である。さらに、EI、KwおよびKvは定数とみなされる。タイヤの均一な成長は解に影響がないので式から省いた。プレストレスがかかるリングが伸びないと仮定することによって解析は単純化され、下記になる:
【数15】
【0053】
自由スピンは定常状態にあるので、振動は存在せず、スピンドルに対するリムの回転変位θrはゼロとみなすことができる。
接線方向変位(v)の解は下記で得られる:
【数16】
【0054】
AnおよびBnの解は、n=1、2、3、...に対して下記で得られる:
【数17】
【0055】
(ここで、nは応答でのハーモニック数を表す)
式(3.3a)(3.3b)を式(3.2)に入れ、さらに式(3.1)に入れると、質量アンバランスを有するタイヤのラジアルランアウトの解が得られる。
【0056】
次に、質量が不均一に分布した例を考える。質量が不均一に分布した時に生じる力は下記で表すことができる:
【数18】
【0057】
この質量アンバランス分布に対するラジアルランアウトの解は下記で求められる:
【数19】
【0058】
ここで、enおよびfnは式(3.4b)で与えられる質量アンバランス分布から計算でき、Δnは下記で与えられる:
【数20】
【0059】
ラジアルスティフネスバリエーション(kw)によって生じるラジアルランアウト
質量、接線スティフネスおよび曲げスティフネスはリング上に均一に分布していると仮定する。また、リングにはプレストレスがなく、圧力と遠心力以外の外部の力は存在していない。vはθの周期関数で、定数ではない。kwを定数kw0とみなすと上記運動方程式は下記の解を有する:
【数21】
【0060】
式(4.1b)はタイヤ圧と回転で生じるラジアル変形量であり、タイヤ圧下および回転下での均一なタイヤの拡大を表す。一般にEAが極めて大きいのでw0は極めて小さい値になる。
ラジアルスティフネスは定数部分と変動部分とに分解できる:
【数22】
【0061】
ここで、δkwは下記で表すことができる:
【数23】
【0062】
従って、wは定数部分と変動部分とに分解される:
【数24】
【0063】
ここで、w0は式(4.1b)で与えられる。
さらに、下記のように仮定する:
【数25】
【0064】
多数の計算から上記運動方程式に対して下記の解が導かれる:
【数26】
【0065】
ここで、
【数27】
【0066】
これは式(2.8)と同じである。
ここで、
【数28】
【0067】
なお、伸びないタイヤリングの場合、w0がゼロになり、ラジアルランアウトはゼロになることに注意されたい。これは伸びないタイヤリングの場合、タイヤが圧力下および回転下にあるときにラジアルスティフネスバリエーションがラジアルランアウトを全く発生させないことを意味する。
実際のタイヤではベルトの伸びスティフネスEAがかなり高くなる。この場合にはラジアルスティフネスバリエーションによって生じるラジアルランアウトは質量不均一分布によって生じるラジアルランアウトよりもかなり小さくなる。
【0068】
接線スティフネス(kv)バリエーションによって生じるラジアルランアウト
質量、垂直スティフネスおよび曲げスティフネスはリング上に均一に分布されていると仮定する。また、リングにはプレストレスがなく、圧力と遠心力以外の外部の力は存在していない。
運動方程式の唯一の解がゼロであることが証明できる。これは不均一接線スティフネス分布が圧力と回転が加わった後にラジアルランアウトを全く発生させないことを意味する。
【0069】
曲げスティフネス(EI)バリエーションによって生じるラジアルランアウト
質量、垂直および接線スティフネスはリング上に均一に分布されていると仮定する。また、リングにはプレストレスがなく、圧力と遠心力以外の外部の力は存在していない。
この問題の唯一の解がゼロの解であることは証明できる。従って、タイヤ圧と回転が加わった後には曲げスティフネスバリエーションが円形タイヤにラジアルランアウトを生じさせない。
上記のラジアルランアウト解析に関する数値の例を以下に示す。[表1]は典型的なタイヤで得られるタイヤパラメータを示す。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例
不均一質量分布によって生じるラジアルランアウト
[図2]は最初の4つのハーモニックでの回転速度に対するピークピーク値(2χ振幅)の変化と、20gの点質量(point mass)を有するタイヤでの最初の20個のハーモニックを合計したピークピーク値(Allで表す)を示している。図から分かるように、回転速度がゼロのときにはラジアルランアウトは発生しない。速度が上がるにつれて、全てのハーモニックの振幅が著しく増大する。
【0072】
[図3]は、タイヤがスピンしていないときと、タイヤが30Hzでスピンしているときの、θ=π/2に位置した1つの20グラム点質量を有するタイヤの典型的な変形を視覚的に示している。図に示すように、ラジアルランアウトは点質量の位置でその最大値に達する。なお[図3]では変形を200倍増幅して示してある。
【0073】
[図4]は、タイヤが回転していないときと、タイヤが30Hzでスピンしているときの、180度離れた所(θ=π/2およびθ=3π/2)に位置した2つの20グラム点質量を有するタイヤの典型的な変形を視覚的に示している。図に示すように最大変位の位置は常に点質量と同じ位置を共有している。なお[図4]では変形を200倍増幅して示してある。
【0074】
第2の実施例として、タイヤ頂部質量密度に1%の不均一分布質量を有するタイヤで生じるラジアルランアウトが挙げられる。
[図5]は、不均一質量分布のこの典型的なケースにおける回転速度に対する最初の4つのハーモニックでのピークピーク値の変化を表している。[図5]に示すように、速度が上がるにつれて、全てのハーモニックの振幅が著しく増大する。
【0075】
実施例
不均一ラジアルスティフネス分布によって生じるラジアルランアウト
下記実施例は典型的な不均一なラジアルスティフネス分布によって生じるラジアルランアウトの例である。
[図6]はラジアルランアウトの最初の4つのハーモニックのピークピーク値とタイヤ回転速度との関係を表している。ラジアルスティフネス分布が1%不均一な分布を計算に用いた。毎分約180回転よりも小さい低速度ではタイヤ圧を加えた後のラジアルランアウトは極めて小さい。速度が上がるにつれて、ラジアルランアウトも増加する。30Hzでは、全てのハーモニックで約0.022mmに達する。[図5]と比較すると、高速度では、不均一に分布したラジアルスティフネスによって生じるラジアルランアウトは質量が不均一に分布したときに生じるラジアルランアウトよりもはるかに小さい。
【0076】
タイヤラジアルランアウトに関する上記の解析および実施例からいくつかの結論を出すことができる。タイヤの非ユニフォーミティの種類にかかわらず、タイヤに圧力と回転が加わるとタイヤは均一に拡大する。圧力および回転によってタイヤ半径が増加する。タイヤ頂部の伸びが少ないほどタイヤ半径の伸長は小さい。
【0077】
タイヤに圧力と回転が加わった時、初期ラジアルランアウトによってタイヤラジアルランアウトが発生する。圧力はラジアルランアウトを減らし、回転はラジアルランアウトを増加させる。しかし、圧力および回転によってラジアルランアウトの位相は変化しない。
【0078】
タイヤに圧力と回転が加わると、ラジアルスティフネスバリエーションによってタイヤラジアルランアウトが発生する。回転速度を上げることによってラジアルランアウトの振幅が増大する。ラジアルランアウトの位相はラジアルスティフネスバリエーションの位相と反対になる。タイヤ頂部が伸びない場合にはラジアルスティフネスバリエーションによって発生するラジアルランアウトはゼロになる。
【0079】
タイヤに回転が加わると、不均一質量分布によってタイヤラジアルランアウトが発生する。回転速度を上げることによってラジアルランアウトの振幅が著しく増大する。質量バリエーションによって発生するラジアルランアウトの位相は質量バリエーション自体の位相と同じである。
【0080】
質量アンバランスが点質量の場合には、最大変形は点質量と同じ位置に位置する。
接線スティフネスバリエーションおよび曲げスティフネスバリエーションはラジアルランアウトを発生させない。
タイヤリング伸びスティフネスのバリエーションもラジアルランアウトを発生させることがある。この作用は示していないが、必要に応じて、上記と同じように数学的に処理できる。
【0081】
上記の数学的解析が測定の基礎になり、本発明に従って開発された対応するアルゴリズム用途の基礎になる。
本発明の一つの典型的な用途は、高速RROの測定値から質量アンバランス(質量不均一分布と点質量を含む)の同定である。高速度では質量不均一分布によって大きなRROが発生する。タイヤを測定装置の平面上またはロードホイールに押付けたときに生じるRROは平面によって抑制され、その結果、ホイールの中心に力が生じる。従って、高速度でのスピンドルフォースバリエーションの発生には質量アンバランスも重要な寄与要素になる。少なくともこれらの理由から質量アンバランスの同定も有用な用途となる。
【0082】
[図8][図10]はタイヤの質量アンバランスを特徴付けるための典型的な方法を示している。
個々のタイヤ構造を製造するには各種の公知技術に関する多くの知識が必要であるということを先ず知る必要がある。そうしたタイヤ製造プロセスには例えばゴム化合物および/またはその他の材料を多層に積層してタイヤカーカスを作ることや、タイヤベルト部およびトレッド部を栗付けてタイヤ頂部ブロックを作ることや、グリーンタイヤを加硫すること等が挙げられる。こうしたプロセスは[図10]で30a、30b・・・・30nで示してある。タイヤ32はこれらの技術を組合せて作られる。また、一つのバッチで作った複数のタイヤが30a〜30nの各種方法を反復して作られるということも理解する必要がある。タイヤを製造した後に複数の測定を行って本発明の質量アンバランスを特徴付けなければならない。
【0083】
[図8]を参照する。タイヤの質量アンバランスを特徴付ける方法の典型的なプロセスの第1ステップ34は[表1]に示した各種タイヤパラメータを測定する段階である。このタイヤパラメータには例えばタイヤ半径、タイヤ幅、タイヤ頂部質量、タイヤ圧力、タイヤラジアルスティフネス、タイヤ接線スティフネス、タイヤ曲げスティフネスおよびタイヤ伸びスティフネス等が含まれる。これらのパラメータは当業者に周知のタイヤ特性測定装置36([図10]参照)で得られるか、本発明分野で確定している既知の変量を入力してコンピュータ解析で得ることができる。
【0084】
質量アンバランスの特徴付け方法の第2ステップ38は特定のタイヤを回転させてRRO測定値を得る段階である。タイヤを高速ラジアルランアウト測定装置37([図10]参照)の取付け具(タイヤリム、その他のリジッドディスクに類似のもの)に取付けて測定する。低速度用のRRO測定装置の例は下記の文献に記載されている。
[特許文献3]米国特許第5396438号明細書(Oblizajek)
[特許文献4]米国特許第5345867号明細書(Sube 達)
【0085】
これら特許の内容は本願明細書の一部を成す。このRRO測定装置では所望速度でタイヤを回転したときにタイヤ上の基準点を同定し、維持することができる。次に、高速回転速度、例えば一般的な道路速度に対応する第1の高速回転速度でタイヤを回転させる。本発明の目的のためには、種々の測定値が得られて解析される「高速度」を少なくとも約600回転/分(約10Hz)とする。この比較的高速の回転速度は約20〜30Hzまたはそれ以上にすることができる。
【0086】
上記の数学的解析から、高速RRO(ステップ38、39、42での測定値)は複数のハーモニック(harmonics、調和項)に分解できることは理解できよう:
【数29】
【0087】
ここで、nはハーモニック数を表す。
従って、ステップ40はステップ38で得られたRRO測定値を式(7.1)に基づいて多重ハーモニックに分解するステップである。実際のタイヤの変形は下記の4つのファクターから来る:
(1)均一な拡大(growth)w0、
(2)初期RRO、
【数30】
【0088】
(3)ラジアルスティフネスバリエーション、
【数31】
【0089】
(4)質量の不均一分布
【数32】
【0090】
上記の解に基づくと、測定したRROは上記の全ての寄与度を組み合わせた組合せでなければならない:
【数33】
【0091】
ここで、
【数34】
【0092】
および、
【数35】
【0093】
従って、各ハーモニックで、
【数36】
【0094】
ここで、an、bn、αn、βn、enおよびfnは未知のパラメータである。
以下ではパラメータenおよびfnを不均一分布係数といい、パラメータan、bnは初期RRO係数といい、αnおよびβnはラジアルスティフネスバリエーション係数という。
【0095】
約180回転/分よりも小さい低速度では以下のようになる:
【数37】
【0096】
従って、約180回転/分よりも小さい低速度でのRRO測定値はステップ39で得られ、ステップ40で多重ハーモニックに分解され、初期RRO係数を下記で求めることができる:
【数38】
【0097】
任意の速度で下記:
【数39】
【0098】
である場合(すなわち、ラジアルスティフネスバリエーションがRROに及ぼす作用が無視できる場合)は質量の不均一分布係数enおよびfnは式(7.7)から容易に求めることができる:
【数40】
【0099】
式(7.10)が真でなく、かつ、ラジアルスティフネスバリエーションがタイヤRROに及ぼす作用が認識可能な場合は、2つの高速度でRRO測定値を得なければならない。このような場合は、タイヤを第2の高速度で回転させ、ラジアルランアウト測定値を得るステップ42を行う。第1の高速回転速度の場合と同様に、第2の高速度も少なくとも約600回転/分であるのが好ましく、多くの場合、約1200〜1800回転/分(20〜30Hz)にすることができる。この場合、ステップ38および42で得られたRRO測定値を、ステップ40で式(7.1)によってそれぞれの多重ハーモニックに分解することができる。第1および第2の回転速度で求めた各ハーモニック毎に下記関係式が存在する:
【数41】
【0100】
ラジアルスティフネスバリエーション係数αnおよびβnと、質量の不均一分布係数enおよびfnはステップ44で上記の式から求めることができる:
【数42】
【0101】
このようにして、質量アンバランスの大きさと位置が得られる。本発明の解析法では質量アンバランスが実際の質量アンバランス分布に対応して決定される。しかし、点質量の決定もこの方法に従って決定できる。すなわち、点質量はモデル化するために不均一分布形式に変換できるので、同様な処理をすることができる。複数のハーモニックのピークが同じ位置を共有する場合、通常、点質量がタイヤ内に存在する。
【0102】
ステップ44での質量アンバランス(例えば質量不均一分布および/または点質量の存在)を決定したら、ステップ46でタイヤを評価する。典型的な評価法にはタイヤの質量アンバランス量の所定限界値をベースにして各タイヤを仕分ける(ソートする)操作が含まれる。この限界値はテストするタイヤのタイプおよび/またはタイヤが取り付けられる車両のタイプに依存する。タイヤの質量アンバランスが所定限界値以下である場合にはタイヤは仕分けされ、顧客へ送られる。タイヤが所定限界値を越える質量アンバランスを有する場合には仕分けし、タイヤを廃棄するか、修正のために製造プロセスへ戻す。これ以外の典型的な評価法には複数のカテゴリの一つへタイヤを等級付け(grading)することがある。この場合の各カテゴリは質量不均一分布の所定レベルと各タイヤのタイプおよび/または車両のタイプ、タイヤの用途をベースにして定義される。この特性および限界、等級付けカテゴリはタイヤ製造業者および/または顧客が求める極めて多様なパラメータに依存するので、ここではその詳細は記載しない。
【0103】
[図8]は典型的方法のより具体的な例を示す。なお、ステップ34で設定されたタイヤは[表1]に記載のタイヤパラメータを有する。式(7.10)が真である(すなわちラジアルスティフネスバリエーションがRROに及ぼす作用が無視できる)と仮定し、ステップ38で第1の典型的な高速回転速度30HzでタイヤRROを測定し、さらに、ステップ39において0Hzで測定する。この測定とその後のステップ40におけるハーモニック分解の結果を下記の[表2]に示す。なお、均一拡大部分は本発明の解析に影響がないので記載していない。
本発明の変形例では、均一拡大がタイヤ特徴付けに寄与するときには均一拡大を考慮に入れることができるということは理解できよう。
【0104】
【表2】
【0105】
[表2]には10個のRROハーモニックしか示していないが、これ以下またはこれ以上の数のハーモニックが得られることは理解できよう。[表2]の多重ハーモニックを式(7.6)、(7.9)および(7.11)に代入すると、下記の[表3]の質量の不均一分布係数が得られる。
【0106】
【表3】
【0107】
[表3]および式(7.4)から、質量アンバランスを求めることができる。ここではそれぞれπ/2および−π/2に位置した2つの20gの点質量が存在する。このようにして質量アンバランスが同定できる。
[図7A]〜[図7D]はこのような質量不均一分布の各同定段階を示している。[図7A]は0HzでのRRO測定値を二次元で示す図であり、[図7B]は30HzでのRRO測定値を二次元で示す図。[図7C]は初期RROが寄与するRROを示し、[図7D]はタイヤが30Hzで回転しているときに質量アンバランスが寄与するRROを示している。なお、[図7A]〜[図7D]に示すタイヤ変形は説明のために200倍に拡大して示してある。上記各図で点線は基準となる完全な円形のタイヤを示す。
【0108】
[図10]には本発明のタイヤ質量アンバランスの特徴付け方法をタイヤ評価および関連する製造プロセスとどのように組合わせるかについての追加の観点も示してある。既に述べたように多重するサブプロセス30a〜30nでタイヤ32が製造される。各種タイヤパラメータは各タイヤ32をタイヤ特性測定装置36にかけることによって得られる。必要な場合にはタイヤ特性測定装置36はそれぞれの所望のタイヤパラメータを得るための複数の測定装置にすることができる。次いで、高速RRO測定装置37で高速RRO測定値を得ることができる。[図8]の説明で述べたように、ラジアルスティフネスバリエーションの作用が無視できるときには、約180回転/分よりも小さい低速度および第1の高速度でRRO測定値が得られる。ラジアルスティフネスバリエーションの作用が認識できるときには、約180回転/分よりも小さい低速度と2つの高速度でRRO測定値が得られる。装置36、37で得られた測定値をコンピュータ48にリレーする。このコンピュータ48は任意タイプのプロセッサー、マイクロコントローラ、その他任意のデータ解析装置にすることができる。
【0109】
[図10]を参照すると、車両感受性テスト(VST)50が用いられ、それが上記コンピュータ48に接続されている。このVST50はタイヤの非ユニフォーミティー(例えば質量アンバランス)に起因する自動車振動に関する測定を行う。その詳細は下記文献に記載されている。
[非特許文献1]M.G Holcombe, R.G Altoman、「Method for Determining Tire and Wheel Uniformity Needs Using Ride Rating Simulations」、SAE 880579、1998
【0110】
一般に、質量アンバランスが高レベルになると自動車の振動量が高くなり、乗り心地が悪くなる。上記VST50は客観的または主観的にそのレベルを示すものである。客観的にするために車両のステアリングの位置、ドライバの座席の位置および/または車両の床の位置に測定装置を取り付けてその振動を測定する。主観的な査定の場合にはプロドライバが振動を厳しく評価する。そうすることによって自動車の振動とタイヤの非ユニフォーミティー(質量アンバランス等)との間の関係が確定でき、非ユニフォーミティー(質量アンバランス等)の限界値を決めることができ、タイヤの非ユニフォーミティーレベルがその限界値以下であれば優れた乗り心地が保証される。こうして求められた限界値をコンピュータ48に直接プログラムする。
【0111】
コンピュータ48が質量の不均一分布係数を計算し、質量アンバランスの大きさと位置を求める。その後、求めたパラメータをVST50で確定した限界値と比較することができる。その結果でタイヤを仕分け(ソート)または等級付けで評価する。仕分け評価では、質量アンバランス特徴がVST50によって確定された限界値以下である場合にタイヤを顧客へ送る。一方、得られた質量アンバランス特性がVST50によって確定した限界値を超える場合にはタイヤを廃棄するか、修正のため製造プロセスへ戻す。典型的な修正方法はタイヤの質量アンバランス位置の研磨またはタイヤの所定位置への質量の追加であるということはタイヤ製造分野の当業者には理解できよう。
【0112】
[図10]には示していないが、これ以外の典型的な評価方法、例えば複数のカテゴリの一つへタイヤを等級付け(grading)する方法も実施できるということは理解できよう。さらに、コンピュータ48で求めた質量アンバランスをフィードバック修正52で使用することもでき、タイヤ32の製造に関係する各種プロセス30a〜30nの所定プロセスへフィードバック52して修正することもできる。
【0113】
本発明のさらに別の典型的な実施例は、高速RRO測定値を含む測定値に基づく高速ユニフォーミティ(HSU)を予測し、制御する技術にある。既に述べたように、質量アンバランスは高速度でRROを生じさせるので、タイヤを平面上またはロードホイールに当接せたときに、望ましくないタイヤスピンドルフォースが発生する。従って、高速ユニフォーミティを予測し、制御するのには質量アンバランスの同定が重要である。
【0114】
[図9]と[図11]を参照すると、これらの図はタイヤの高速ユニフォーミティを特徴付けるための典型的な方法を示している。先ず最初に、タイヤ製造では互いに異なる複数の層を積層してタイヤカーカスとタイヤ頂部ブロックとが作られにということを理解する必要がある。各層1、2...n([図11]の60a、60b...60n)の組み合せによって各層にはオーバラップ部分または変動部分ができる(存在する)。製造されたタイヤ64には製造プヤセスによって導入された種々のバリエーション62a、62b...62nができる。従って、本発明のタイヤ高速ユニフォーミティを特徴付けるためには、タイヤ製造後に複数の測定値を確定しなければならない。
【0115】
[図9]を参照する。この図にはタイヤ製造プロセスの典型的なステップが示されている。この典型的な製造法の第1ステップ70はタイヤのサンプルセットを製造するステップである。次のステップ72ではタイヤのサンプルセットのタイヤ特性、例えばタイヤの半径、頂部の線形質量密度、圧力、幅、ラジアルスティフネス、接線スティフネス、曲げスティフネスおよび/または伸びスティフネス(これらに限定されるものではない)の測定値が得られる。これらの特性は当業者に周知の適切な測定装置で測定するか、所定量として与えることができる。ステップ72で測定されまたは与えられたタイヤ特性は[図9]の典型的な製造法と組み合わされる後半の計算ステップで使用される。この方法の次のステップは、ステップ70で製造したサンプルタイヤのセットの各タイヤを低速度で回転させ、タイヤのラジアルフォースバリエーションを測定するステップである。本発明の目的のためには比較的低速度を約180回転/分(3Hz)よりも小さい速度にする。ラジアルフォースバリエーションは低速度測定装置66([図11]参照)で得ることができる。これに対応する装置の例は上記特許文献1(米国特許第5,396,438号明細書、Oblizajek)に記載の試験装置114および/または装置132である。タイヤ製造および試験の分野で公知の他の低速度測定装置を使用することもできる。本発明の目的のために設計する場合には、低速度および高速度の全ての測定が単一測定機械でできるのが望ましい。装置66で得ることができるラジアルフォースバリエーション以外の低速度パラメータとしては有効ころがり半径バリエーション(effective rolling radius)測定値およびランアウト測定値が挙げられる。
【0116】
[図9]をさらに参照する。低速度測定値が得られた後、各サンプルタイヤを次のステップ76で高速回転させてフォースバリエーションを測定し、これらの測定値を多重ハーモニックに分解する。次に、タイヤラジアルランアウトをステップ78で多重な速度で測定し、質量アンバランスを本発明方法に従って計算することができる。その後のステップ80で低速フォースデータ、高速ラジアルランアウトデータおよび高速フォースバリエーションデータから複素伝達関数(complex transfer functions)を求めることができる。ステップ80で求めた伝達関数はサンプルタイヤセットの高速フォースバリエーション(HSU)を特徴付けるのに使用される。高速ユニフォーミティ決定統計法に関する追加の詳細は特許文献1(米国特許第5,396,438号明細書、Oblizajek)に記載されている。この特許の内容は本明細書の一部をなす。
【0117】
タイヤのサンプルセットを用いて得た測定値から高速ユニフォーミティ特性付けに用いる複素伝達関数を最終的に求めた後、ステップ82でタイヤのセット(製造セット)を製造する。これらのタイヤ(製造セット)を次のステップ84で低速度で回転させてフォース測定値を得る。次に、製造された各タイヤをステップ86で多重の速度で回転させてラジアルランアウトを測定し、質量アンバランスを計算する。ステップ88ではステップ84で得られた低速フォース測定値、ステップ86からの質量アンバランス計算値およびステップ80で求めた複素伝達関数に基づいて製造された各タイヤの高速ユニフォーミティ特性を求めることができる。
【0118】
製造された各タイヤの高速ユニフォーミティ特性をステップ88で求めた後にステップ90でタイヤを評価することができる。典型的な評価法は製造されたそれぞれのタイヤの高速ユニフォーミティのレベルの所定限界値に基づいて各タイヤを仕分け(ソート)および/または等級付けすることが含まれる。この限界値はテストするタイヤのタイプおよび/またはタイヤが取り付けられる車両のタイプに依存する。タイヤの高速ユニフォーミティ特性が許容可能な場合にはタイヤは仕分けされて顧客へ送られる。タイヤの高速ユニフォーミティ特性が許容不可の場合にはタイヤを廃棄するか、修正のために製造プロセスへ戻す。これ以外の典型的な評価方法には複数のカテゴリの一つへタイヤを等級付け(grading)することがある。この場合の各カテゴリは高速ユニフォーミティおよび作用の所定レベルをベースにして各タイヤのタイプおよび/または車両のタイプ、タイヤの用途ごとに定義される。この特定の限界値および等級付けカテゴリはタイヤ製造業者および/または顧客が求める極めて多様なパラメータに依存するので、ここではその詳細は記載しない。
【0119】
本発明によるタイヤの高速ユニフォーミティ特徴付けをタイヤ評価および関連する製造プロセスとどのように組合わせるか、という追加の観点が[図11]に示されている。既に述べたように、多重した層60a〜60nを配置することで、製造された各タイヤ64で各層のオーバラップまたは変動62a〜62nが生じる。低速フォースおよび/またはRRO測定値は低速度測定装置66で得ることができ、高速RRO測定値は高速RRO測定装置37で得ることができる。これらの装置37および66で得られた測定値をコンピュータ48’にリレーする。このコンピュータ48’は任意タイプのプロセッサー、マイクロコントローラ、その他任意のデータ解析装置にすることができる。
【0120】
[図11]を再度参照すると、車両感受性テスト(VST)50’が使用され、これがコンピュータ48’に接続されている。このVST50’は[図10]の説明で述べたものと同じVST測定50にすることができる。次に、コンピュータ48’がタイヤHSUを計算し、それをVST50’で確定した限界値と比較する。その結果に応じてタイヤを例えば仕分け(ソート)または等級付けで評価する。仕分け評価では、求めたRROおよびHSU特性がVST50’によって確定された限界値以下である場合にタイヤを顧客へ送り、また、求めたRROおよびHSU特性がVST50’によって確定された限界を超える場合にはタイヤを廃棄するか、修正のために製造プロセスへ戻す。典型的な修正方法は研磨法に従って所定位置でタイヤを研磨することであるということはタイヤ製造分野の当業者には理解できよう。
【0121】
[図11]には示していないが、これ以外の典型的な評価方法、例えば複数のカテゴリの一つへタイヤを等級付け(grading)する方法を行うことができるということは理解できよう。さらに、コンピュータ48’が求めた各層のオーバラップまたは変動がHSUに及ぼす作用をフィードバック修正74で使用することもできる。すなわち、各層のオーバラップまたは変動62a、62b...62n毎に最適位置を与えてタイヤ64の構造を改良することができる。これらの作用をタイヤ製造プロセスへフィードバックして新しい許容範囲を設定することもできる。
【0122】
以上、本発明の複数の異なる実施例を用いて本発明方法の種々の組み合わせを説明したが、上記の典型的な実施例に本発明が限定されるものではないという点に留意する必要がある。上記実施例に記載した一つまたは複数の段階や特徴の一部を他の実施例でも使用することができる。また、特定の特徴は同じまたは同様な作用を有する同様のデバイスまたは本明細書に記載のない自明な特徴に代えることもできる。同様に、タイヤ製造プロセス上の特定の段階を他の段階に代えてタイヤ特徴付け法および製造方法を別の実施例にすることもできる。
【0123】
以上、本発明を本発明の特定の実施例を用いて説明したが、上記の説明を基にして種々の変更、均等手段の置換を行うことができるということは当業者には容易に理解できよう。従って、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明は上記実施例を変更したもの、置換したものおよび/または当業者が容易に成し得るものを含むものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの高速ユニフォーミティを特徴付ける方法であって、該方法は、
複数の層によって特徴付けられる製造されたタイヤを用意する段階と、
前記製造されたタイヤを所定の第1の回転速度で回転させて少なくとも1つの第1のフォース測定値及び少なくとも1つの第1のラジアルランアウトを得る段階と、
前記製造されたタイヤを所定の第2の回転速度で回転させて少なくとも1つの第2のラジアルランアウト測定値を得る段階とを含み、
前記所定の第2の回転速度は高速に対応し、前記第1及び第2の回転速度は互いに異なり、
さらに、前記少なくとも1つの第1フォース測定値、少なくとも1つの第1のラジアルランアウト測定値、及び少なく1つの第2のラジアルランアウト測定値から、全タイヤ高速ユニフォーミティに及ぼす前記製造されたタイヤにおける層のオーバラップまたは各層の変位の影響を求める段階を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第2の回転速度が少なくとも600回転/分である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の回転速度が180回転/分よりも少ない請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの第1のフォース測定値が有効ころがり半径、ラジアルフォースおよびラジアルランアウトからなる群の中から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
さらに、所定の第3の回転速度で所与のタイヤを回転させて少なくとも1つの第2フォース測定値を得る段階を含み、前記所定の第3の回転速度は少なくとも600回転/分に対応し、かつ前記所定の第2の回転速度と異なり、
さらに、少なくとも1つの第2のフォース測定値を多重高調波に分解する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1および第2のフォース測定値と、前記少なくとも1つの第1のラジアルランアウト測定値と、前記少なくとも1つの第2のラジアルランアウト測定値とから、低速におけるフォースバリエーション及び質量アンバランスを、高速におけるフォースバリエーションに関連付ける複素伝達関数(complex transfer functions)を求める段階をさらに含み、層のオーバラップまたは各層の変位の影響を求める段階で上記の複素伝達関数を考慮に入れる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1のフォース測定値、前記少なくとも1つのラジアルランアウト測定値および前記複素伝達関数から前記タイヤの高速ユニフォーミティ特性を求める段階をさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
所定の高速ユニフォーミティ限界値によって確定される少なくとも2つのカテゴリの一方にタイヤを等級付けまたは仕分け(ソート)する段階をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項1】
タイヤの高速ユニフォーミティを特徴付ける方法であって、該方法は、
複数の層によって特徴付けられる製造されたタイヤを用意する段階と、
前記製造されたタイヤを所定の第1の回転速度で回転させて少なくとも1つの第1のフォース測定値及び少なくとも1つの第1のラジアルランアウトを得る段階と、
前記製造されたタイヤを所定の第2の回転速度で回転させて少なくとも1つの第2のラジアルランアウト測定値を得る段階とを含み、
前記所定の第2の回転速度は高速に対応し、前記第1及び第2の回転速度は互いに異なり、
さらに、前記少なくとも1つの第1フォース測定値、少なくとも1つの第1のラジアルランアウト測定値、及び少なく1つの第2のラジアルランアウト測定値から、全タイヤ高速ユニフォーミティに及ぼす前記製造されたタイヤにおける層のオーバラップまたは各層の変位の影響を求める段階を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第2の回転速度が少なくとも600回転/分である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の回転速度が180回転/分よりも少ない請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの第1のフォース測定値が有効ころがり半径、ラジアルフォースおよびラジアルランアウトからなる群の中から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
さらに、所定の第3の回転速度で所与のタイヤを回転させて少なくとも1つの第2フォース測定値を得る段階を含み、前記所定の第3の回転速度は少なくとも600回転/分に対応し、かつ前記所定の第2の回転速度と異なり、
さらに、少なくとも1つの第2のフォース測定値を多重高調波に分解する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1および第2のフォース測定値と、前記少なくとも1つの第1のラジアルランアウト測定値と、前記少なくとも1つの第2のラジアルランアウト測定値とから、低速におけるフォースバリエーション及び質量アンバランスを、高速におけるフォースバリエーションに関連付ける複素伝達関数(complex transfer functions)を求める段階をさらに含み、層のオーバラップまたは各層の変位の影響を求める段階で上記の複素伝達関数を考慮に入れる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1のフォース測定値、前記少なくとも1つのラジアルランアウト測定値および前記複素伝達関数から前記タイヤの高速ユニフォーミティ特性を求める段階をさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
所定の高速ユニフォーミティ限界値によって確定される少なくとも2つのカテゴリの一方にタイヤを等級付けまたは仕分け(ソート)する段階をさらに含む請求項1に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−233921(P2012−233921A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−185424(P2012−185424)
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【分割の表示】特願2006−535405(P2006−535405)の分割
【原出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【分割の表示】特願2006−535405(P2006−535405)の分割
【原出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】
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