質量分光分析に用いる基板アダプタ
本明細書では、1つ以上のサンプルを有する基板を、光エネルギー源でサンプルをイオン化する位置に保持する装置が開示される。装置は、収容表面、背面、および外形輪郭を画定する縁部を有する収容板を備える。1つ以上の収容リップが、収容表面から突き出る。収容表面は、サンプルのイオン化のために基板を位置合わせするために、収容リップにより収容される少なくとも1つの縁部を有する基板の背面を収容する。装置はさらに、基板を保持して位置合わせするための前面フィンガと背面フィンガとを備える、少なくとも1つの基板クリップを有する。前面フィンガは、基板の前縁部を係合して、基板を所定の位置に保持するように、収容板および基板の厚みを横切って延在する。背面フィンガは、収容板の背面を係合する。収容板は、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析計内の空間と協働して、サンプルをイオン化する位置に保持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年1月13日に出願された米国特許仮出願第60/536,043号の優先権を主張する。これら出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の分野は、質量分析に関し、さらに詳細には、本発明は、分析物の脱離およびイオン化の間に質量分析用の基板を保持する手段を提供することに関する。
【背景技術】
【0003】
サンプル分子の質量ならびにサンプル分子の断片質量を測定することにより、そのサンプルを特定するために、質量分析法が用いられる。最も簡単な質量分析計は、ガス状の電気的に中性のサンプルを、真空中(通常10−6トール以下の圧力)に導入する。Silversteinらの、「有機化合物の分光分析による識別(Spectrometric Identification of Organic Compounds)」、p.7(John Wiley & Sons,Inc.1963)。次に、サンプルは電子ビームを通過する。
【0004】
電子ビームからの高速運動電子が、分析されるサンプルの電子に衝突し、サンプルから1つ以上の電子を放出させる。被検サンプルの分子が電子を失った後、そのサンプルは正味の正電荷を有し、すなわち「イオン化」される。
【0005】
質量分析法は、イオンの電荷に対する分子の質量の比を測定する。質量は、通常、ダルトンと称される原子質量単位で表わされる。電荷またはイオン化は、通常、電気素量の倍数で表わされる。2つの比は、m/z比の値(質量/電荷の比または質量/イオン化の比)として表わされる。イオンは一般に単一電荷を有するため、m/z比は、一般に、イオン質量、またはそれの分子量(略してMW)である。多くの場合、項m/z、ダルトン単位のサンプル質量(または分子量、略してMW)は、互換可能に使用される。
【0006】
容易にガス化されない分子は、質量分析法で分析することがより困難である。したがって、質量分析法における多くの最新の発展は、液体または固体サンプルの処理に関する問題に取り組んでいる。分子が基板の「上」にあるとき、サンプルはその基板に吸着される。脱離とは、基板上に吸着された分子が、その基板から取り除かれるプロセスである。表面から分子を取り除くことは、その表面から分子を「脱離」することである。脱離されると、分子は「蒸発され」、ガス状態になる。基本的な質量分析を実施する際に、ガス状サンプルを用いて開始する代わりに、基板上に吸着されたサンプルを用いて脱離質量分析を開始して、そのサンプルを脱離し、それにより、ガス状サンプルを質量分析計に提供する。
【0007】
生物サンプルの分析に使用される脱離質量分析法は、マトリックス支援レーザ脱離/イオン化質量分析法(MALDI−MS)である。従来のMALDIにおいては、サンプルは、一般に、固体の紫外線を吸収する結晶有機酸マトリックスに溶解される。液体マトリックス/サンプルは、不活性ベースプレート上に特定のパターンで堆積され、乾燥されてターゲットスポットにできる。パルス状のレーザ放射は、いくつかのサンプル分子をイオン化すると同時に、気化されたマトリックスを有するサンプルを保持するスポットを蒸発させる。システムの処理量を最大にするために、多くのMALDI機器は、スポットを順番にイオン化するように予め構成される。
【0008】
MALDI−MSは、チャーリング、分裂、または化学分解なしに、非揮発性サンプル(例えば、生物サンプル)の固体相からガス相への直接的な脱離およびイオン化を可能にする。MALDI−MSを用いて、例えばポリペプチド、ポリヌクレオチド、プロテイン、DNA断片、生物ポリマ、および他の高分子などの物質を分析する。プロトン移動イオン化の開発は、生物分子質量分析法を可能にしてきた。
【0009】
MALDIは、厳密には、低分子の分析に限定される。MALDIマトリックスは、低質量領域と呼ばれる、約700のm/z未満の測定値(使用されるマトリックスに応じて若干変化する)に干渉する。高分子であっても、MALDIは重大な制限を有する。マトリックスおよびマトリックス断片は、サンプルイオンを有する付加物を生成でき、これは、測定された信号をある範囲の分子量を有するようにすることがある。このような分析からのスペクトルは、大幅に短縮されたピーク高を有する可能性がある。
【0010】
MALDI質量分析計を用いて従来から実施されていたように、サンプルをマトリックスと混合し、その後ベースプレートに吸着させるのと異なり、サンプルを保持する基板を利用して、サンプルを脱離する新しい方法が開発されてきた。サンプルの分析を実行するために、多孔質シリコン基板が、レーザ装備の質量分析計と共に使用される。本明細書において、用語の「DIOS」は、米国特許第5,882,496号に記載された構造のシリコン上の脱離イオン化を指す。この特許の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。DIOS基板(チップと称される)は、一般に、約3センチメートルから5センチメートルの寸法、および0.5ミリメートルの厚みを有する。一般に1つ以上の化合物が溶解している水溶液の形態であるサンプルは、基板の多孔質シリコン表面上に収容される。レーザイオン化により生成されるイオンの質量および電荷情報の測定に使用されるとき、基板は、質量分析計の入口に近接して配置される。レーザは、放電またはパルス化され、サンプルの一部分をイオン化および蒸発させるが、基板を残す。蒸気、イオン、およびガスは、分析のために質量分析計の入口に引き込まれる。
【0011】
DIOS法は、生物分子および他の分析に利用する直接レーザ脱離/イオン化技術を有する有益な効果を提供する。DIOS法は、大幅に簡略化されたサンプル調製に関する現在の方法の未達成の要求に対処する。サンプル調製は、マトリックスまたは基板に対する分析物の共有結合の必要性がないため、簡略化される。さらに、基板は、特定サンプルの要求に合わせる必要がなく、DIOS法は、塩および緩衝剤に対する耐性を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
既存のMALDI分析計においてDIOSチップを利用するために、薬剤を導入することなく、その機器内に基板を固定する方法を開発する必要がある。好ましくは、チップを繰返して位置決めすることにより、機器を、チップ間で再調整する必要をなくする。さらに、基板上のサンプルの分析が完了したとき、使用済の基板を除去および配置する容易な方法が、有益である。本発明はこれらの要求に対応する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、機器で使用するための1つ以上の基板を保持する装置に関する。詳細には、各基板は、マトリックス支援レーザ脱離/イオン化質量分析計に結合された光エネルギー源によりイオン化されるように、あるパターンの位置に配置される1つ以上のサンプルを有することができる。各基板は、1つ以上のサンプルを収容するために作用面を提供する前面と、背面と、少なくとも1つの縁部、および厚みを有する。
【0014】
装置は、収容板と少なくとも1つの基板クリップとから構成される。収容板は、背面、厚み、外形輪郭を画定する少なくとも1つの縁部、および少なくとも1つの収容表面を有する。各収容表面は、基板の背面を収容するためのものである。各収容表面は、基板の少なくとも1つの縁部を収容するために、収容表面から突き出る1つ以上の収容リップを有する。
【0015】
各基板クリップは、少なくとも1つの前面フィンガおよび少なくとも1つの背面フィンガを有する。前面フィンガは、幅、および利用されるときに、収容板上に置かれた基板の厚みを超えて延在するのに十分なだけの長さを有する。背面フィンガは、収容板の背面上に1つの位置を取るように前面フィンガから延在する。
【0016】
使用されるとき、収容板は、1つ以上の基板を収容する。各基板は、1つ以上の収容リップに当接するいくつかの縁部を有する複数の収容表面の1つの上にあり、基板を光エネルギー源によってサンプルの1つをイオン化する位置に方向付ける。各基板は、少なくとも1つの基板クリップにより、基板の前面縁部に係合される。基板クリップは、さらに、収容板の背面を係合して、基板を所定の位置に保持する。
【0017】
一実施形態において、各収容表面は、収容板の縁部の一部で形成される少なくとも1つの縁部を有する。好ましい実施形態において、装置が、1つの基板を収容するための1つの収容表面を有する。収容板は導電性であり、さらに、金属であってもよい。一実施形態において、基板は半導体である。半導体は、シリコンまたはゲルマニウムであってもよい。導電性の収容板および半導体基板を用いる場合、基板と収容板との間が電気接続される。
【0018】
一実施形態において、装置は、マトリックス支援レーザ脱離/イオン化質量分析計で使用する、1つ以上の金属板の空間内で協働するように構成および配置される。好ましくは、基板は、シリコン上の脱離/イオン化(DIOS)チップである。シリコン上の脱離/イオン化チップは、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析計のターゲットに一致するパターンに配置された、多孔質半導体領域を有する。
【0019】
一実施形態において、収容板は、外形輪郭に少なくとも1つのインデントを有する。このインデントは、基板クリップがインデントを横切る外形輪郭の投影に留まる一方、前面フィンガが基板の前面に接触できる領域を提供する。基板クリップは、前面フィンガと収容リップとの間の基板に圧縮力を加えることにより、基板を保持する。このようにすると、少なくとも1つの収容リップが、基板接触表面を有する。基板接触表面は、平坦であり、収容表面に対してある角度を形成する。この角度は、90°以内であり、好ましくは、75°から85°である。収容リップは、収容表面の上方に、基板の厚みの約2倍の距離で延在する。
【0020】
一実施形態において、収容板は、背面に少なくとも1つのくぼみを有する。各くぼみは、幅、ベース表面、および少なくとも1つの側壁を有する。くぼみは、基板クリップの背面フィンガを収容するためのものである。側壁は、側壁平面を画定し、ベース表面は、ベース平面を形成する。ベース平面と側壁平面との交差部は、ある角度を画定する。好ましくは、この角度は、40°から50°である。一実施形態において、くぼみは、収容板の縁部と交差する。好ましくは、くぼみは、背面フィンガとスライド可能に係合する。
【0021】
好ましくは、収容板は、外形輪郭部に、くぼみに中心合わせされた少なくとも1つのインデントを有する。インデントは、基板クリップがインデントを横切る外形輪郭の投影内に留まる一方、前面フィンガが基板の前面に接触できる領域を提供する。くぼみに中心合わせされたインデントは、くぼみの幅以上の幅を有する。この実施形態は、収容板への基板クリップの挿入を容易にする。
【0022】
基板クリップは、弾性材料で形成される。一実施形態において、基板クリップは、金属材料で形成され、基板クリップと基板との間を電気接続できる。一実施形態において、基板クリップの背面フィンガが、第1の面、第2の面、少なくとも1つの縁部、幅、および基板クリップをくぼみ内に保持する張力手段とを有する、平面部材を備える。背面フィンガが、くぼみに収容されて、第1の面がくぼみのベース表面に接すると、第2の面が、収容板の背面の下に引き込まれる。一実施形態において、背面フィンガは、少なくとも1つの側壁に係合するための少なくとも1つのばね要素を有する。ばね要素は、背面フィンガの縁部から突き出る。一実施形態において、背面フィンガは、側壁に係合するための2つのばね要素を有する。
【0023】
本装置の一実施形態において、前面フィンガが、第1の面、第2の面、および先端を有する平面ブレードを備える。第1の面は、背面フィンガとある角度を形成する。角度は、75°から85°が好ましい。この角度にすると、クリップが基板の前縁部に係合すると、前面フィンガの第1の面が、基板を収容表面に押し付ける。さらに、前面フィンガが、基板の前面にさらに強く係合するために、先端で大きな厚みを有することができる。
【0024】
一実施形態において、収容板は、4つの縁部を備える矩形形状を有する。第1の縁部は、第3の縁部とは反対側にあり、第2の縁部は、第4の縁部とは反対側にあるる。第2および第4の縁部は、第1および第3の縁部に対して直角である。この実施形態は、収容表面の第1の縁部に沿って配置された少なくとも1つの第1の収容リップと、収容表面の第2の縁部に沿って配置された少なくとも1つの第2の収容リップとを備えて配置された、1つ以上の収容リップを有する。第1の収容リップは、基板接触表面を有する。基板接触表面は、平坦であり、収容表面に対して90°以内の角度を形成する。好ましくは、角度は、75°°から85°である。一実施形態において、収容板が、第3の縁部または第4の縁部のいずれかに少なくとも1つのインデントを有し、これにより、基板クリップがインデントを横切る縁部の投影内に留まる一方、前面フィンガが基板の前面に接触できる領域を提供する。
【0025】
本装置は、1つ以上のサンプルを有する少なくとも1つの基板を、光エネルギー源でサンプルをイオン化する位置のパターンに保持する方法において使用される。基板は、1つ以上のサンプルを収容する前面、背面、および厚みを有する。背面は、背面に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の背面縁部を有する。前面は、前面に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の前面縁部を有する。
【0026】
本方法は、収容板と少なくとも1つの基板クリップとを有する装置を設けることを含む。収容板は、背面、厚み、外形輪郭を画定する少なくとも1つの縁部、および少なくとも1つの収容表面を有する。収容表面は、基板の背面を収容するためのものである。収容表面は、基板の少なくとも1つの縁部を収容するために、収容表面から突き出る1つ以上の収容リップを有する。各基板クリップは、少なくとも1つの前面フィンガおよび少なくとも1つの背面フィンガを有する。前面フィンガは、幅、および利用されるときに、収容板上に置かれた基板の厚みを超えて延在するのに十分なだけの長さを有する。背面フィンガは、収容板の背面上に1つの位置を取るために前面フィンガから延在する。
【0027】
次に、本方法は、収容表面上に基板を配置することを含む。基板は、少なくとも1つの前面縁部が1つ以上の収容リップに当接するように配置される。これにより、基板を光エネルギー源によってサンプルをイオン化する位置に方向付ける。次に、基板の前面の縁部が、少なくとも1つの基板クリップにより係合され、基板が所定の位置に保持される。最後に、基板を有する装置は、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析計において使用するために、1つ以上の金属板の空間内に配置される。
【0028】
好ましくは、収容板の背面が、基板クリップの背面フィンガを収容するための少なくとも1つのくぼみを有する。次に、本方法はさらに、少なくとも1つのくぼみ内に背面フィンガとスライド可能に係合することを含む。
【0029】
本発明の他のシステム、方法、特徴、および利点は、当業者には、以下の図面および詳細な記述を検討することにより明らかになるであろう。全てのこのような追加のシステム、方法、特徴、および利点は、本明細書の記述に含まれ、本発明の範囲内にあり、特許請求の範囲により保護されるものとする。
【0030】
本発明の多くの態様は、以下の図面を参照することにより、よりよく理解できる。図面中の構成要素は、必ずしも縮尺通りでなく、本発明の原理を明瞭に示すことに重点が置かれている。さらに、図面では、同一の参照符号は、複数の図面を通して類似の部品を指す。本発明の上記および他の形態は、添付図面に示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明は、機器で使用するための1つ以上の基板を保持する装置に関する。好ましい機器は、マトリックス支援レーザ脱離/イオン化(MALDI)質量分析計である。この装置は、脱離およびイオン化されるサンプルが、MALDI質量分析計で使用される前にマトリックスと混合されて、ベースプレート上に置かれるのと異なり、基板上に直接置かれる場合に使用される。各基板は、サンプルを保持するための1つ以上の位置を有することができる。これらの位置は、MALDI機器が、光エネルギー源によって一連のサンプルをイオン化するのに使用するパターンに配置される。この機構を使用して、所定の一連のターゲット位置を順次測定するMALDI機器において、基板を使用できる。この装置を使用するとき、基板は接着剤を用いることなく、保持および整列され、これにより、調製を簡略化し、質量分析計の真空を維持する。
【0032】
図1Aおよび図1Bは基板を示す。各基板10は、1つ以上のサンプル22を収容する前面12と、背面14と、厚み16とを有する。背面14は、背面14に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の背面縁部18を有する。前面12は、前面12に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の前面縁部20を有する。好ましくは、サンプル22は、前面12上に、分析計で使用されるパターンに一致するパターンで配置される。図1は、1インチから4インチ(2.54cmから10.16cm)の直径を有する円形基板を示す。矩形基板の寸法は、長さが2インチから5.25インチ(5.08cmから13.34cm)、幅が1インチから3.5インチ(2.54cmから8.89cm)である。図1Bは、寸法が約2インチ×1.45インチ(5.08cm×3.68cm)の好ましい矩形基板を示す。基板は、一般に、400μmから700μmの厚みである。
【0033】
図2Aおよび図2Bに示される装置5は、収容板30と少なくとも1つの基板クリップ40とから構成される。収容板30は、背面32、厚み34、外形輪郭を画定する少なくとも1つの縁部36、および少なくとも1つの収容表面38を備える。各収容表面38は、基板10の背面14を収容するためのものである。各収容表面38は、基板10の少なくとも1つの縁部18、20を収容するために、収容表面38から突き出る1つ以上の収容リップ42を有する。
【0034】
各基板クリップ40は、少なくとも1つの前面フィンガ44と少なくとも1つの背面フィンガ46とを有する。前面フィンガ44は、幅、および利用されるときに、収容板38上に置かれた基板10の厚みを超えて延在するのに十分なだけの長さを有する。背面フィンガ46は、収容板30の背面32上に1つの位置を取るように前面フィンガ44から延在する。
【0035】
使用されるとき、収容板30は、1つ以上の基板10を収容する。各基板10は、1つ以上の収容リップ42に当接するいくつかの縁部18、20を有する複数の収容表面38の1つの上にあり、基板10を、光エネルギー源によってサンプルの1つをイオン化する位置に位置合わせする。各基板10は、少なくとも1つの基板クリップ40により、基板10の前面縁部20で係合される。基板クリップ40はさらに、収容板30の背面32を係合して、基板10を所定の位置に保持する。基板クリップ40を取り付けて、収容板の外形輪郭内に保持することを可能にするように、少なくとも1つのインデント50が縁部36に切り込まれてよい。当業者には容易に認識できることであるが、外形輪郭は、直線縁部または曲線の円弧で形成される縁部に切り込まれたインデント50を含むいくつかの形状を取ることができる。
【0036】
図示されるとおり、各収容表面38は、収容板30の縁部36の一部で形成される少なくとも1つの縁部48を有する。好ましい実施形態においては、装置10が、1つの基板10を収容するための1つの収容表面38を有する。収容板30は、導電性であってもよく、さらに、金属であってもよい。金属製収容板30を磁性にして、従来のベースプレートの特性にさらに一致させることができる。好ましくは、基板10は半導体である。半導体は、シリコンまたはゲルマニウムであってもよい。導電性の収容板30および半導体基板10を用いる場合、基板10と収容板30との間を電気接続できる。
【0037】
図示されるとおり、装置5は、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析計で使用する1つ以上の金属板の空間内で協働するように、構成および配置される。この実施形態においては、収容板30に対して基板10を保持する基板クリップ40を有する装置5が、一般にベースプレートにより利用される空間にはめ込まれる。装置5および基板10は、装置5が空間内に置かれたとき、基板10の前面12が平面となり、レーザが各ターゲット22上に集光できるように配置される。収容リップ42が、基板10の縁部を基板クリップ40により係合される収容板30の縁部36に近接して置くように配置される限り、装置5は、基板10が収容表面38より大幅に小さい場合に使用できる。一実施形態においては、基板10は、シリコン上の脱離/イオン化(DIOS)チップである。シリコン上の脱離/イオン化チップは、米国特許第6,004,450号(全内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるプロセスで生成され、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析計のターゲットのパターンに配置された、多孔質半導体領域を有する。DIOSチップを保持する装置が、MALDI機器のベースプレートの代わりに取り付けされると、DIOSチップのターゲットは、0.5mmから0.1mm以内に位置合わせされる。これは、レーザがターゲット上に保持されるサンプルを蒸発させるのに十分な精度である。
【0038】
図3Aから図3Dに図示されるとおり、収容板は、基本的に矩形の収容板130を形成する矩形の外形輪郭を有することができる。収容板は、当該収容板が保持する基板よりわずかに大きい。2インチ×1.45インチ(5.1cm×3.7cm)の寸法を有する矩形基板については、収容板は、約2.165インチ×1.614インチ(5.5cm×4.1cm)となる。図示された収容板は、厚みが約0.06±0.005インチ(約0.15±0.013cm)であり、収容表面は、収容表面の上に約0.02±0.005インチ(0.051±0.013cm)延在する。収容板130は、外形輪郭に1つのインデント150を有する。このインデント150は、基板の下に延在するのに十分な深さであり、基板クリップ40がインデント150を横切る外形輪郭の投影内に留まる一方、前面フィンガ44が基板10の前面12に接触できる領域を提供する。基板クリップ40は、前面フィンガ44と1つ以上の収容リップ142との間の基板に圧縮力を加えることにより、基板を保持する(図示せず)。これを達成するために、少なくとも1つの収容リップ142’が、基板接触表面152を有する。基板接触表面152は、平坦であり、収容表面138に対してある角度154を形成する。この角度154は、90°以内であり、好ましくは、75°から85°である。この角度154により、基板が基板接触表面152と圧縮接触しているとき、傾斜した接触表面152により基板が収容表面138に保持されるのに十分なオーバハングを提供する。収容リップ142は、収容表面138の上方に、基板の厚みの約2倍の距離で延在する。
【0039】
図示されるとおり、収容板130は、背面132に1つのくぼみ160を有する。くぼみ160は、幅162、ベース表面164、および少なくとも1つの側壁166を有する。くぼみ160は、基板クリップ40の背面フィンガ46を収容するためのものである。幅は、背面フィンガ46を収容し、張力機構を圧縮するのに十分である。側壁166は、側壁平面を画定する。ベース表面は、収容板130の本体に、収容板の厚みの約半分まで切り込まれる。図では、くぼみの深さは、0.030±0.005インチ(0.076±0.013cm)である。くぼんだベース表面164は、ベース平面を画定する。ベース平面と側壁平面との交差部は、ある角度168を画定する。この角度168は、40°から50°である。くぼみ160は、収容板130の縁部136と交差し、背面フィンガ46とスライド可能に係合する。
【0040】
収容板130は、外形輪郭部に、くぼみ160に中心合わせされた1つのインデント150を有する。インデント150は、基板クリップ40がインデント150を横切る外形輪郭の投影内に留まる一方、前面フィンガ44が基板10の前面12に接触できる領域を提供する。くぼみ160に中心合わせされたインデント150は、くぼみの幅162それ以上の幅170を有する。この構成は、収容板130への基板クリップ40の挿入を容易にする。上記の寸法が、ある機器に適用できることは、当業者には認識されるであろう。しかし、収容表面、インデント、およびくぼみのこの構成は、別のサイズおよび直線縁部または曲線の円弧で形成される外形輪郭にも適用できる。
【0041】
基板クリップ40は、弾性材料で形成される。一実施形態においては、基板クリップ40は、金属材料で形成され、基板クリップ40と基板10との間を電気接続される。図4Aおよび図4Bに示されるとおり、基板クリップ40の背面フィンガ46が、第1の面82、第2の面84、少なくとも1つの縁部86、幅88、および基板クリップ40をくぼみ160内に保持する張力手段90とを有する、平面部材80を備える。基板クリップ40は、くぼみ162の厚みの約1/3から1/2の厚みを有する。図示されるとおり、フィンガ40の厚みは0.01±0.003インチ(0.025±0.008cm)である。背面フィンガ46がくぼみ160に収容されて、第1の面82が、くぼみ160のベース表面164に接触するように配置されると、第2の面84が、収容板130の背面132の下に引き込まれる。したがって、装置105を取り付けるとき、基板クリップ40は、背面132の係合を妨害しない。一実施形態においては、背面フィンガ46は、少なくとも1つの側壁166に係合するための少なくとも1つのばね要素90’を有する。ばね要素90’は、背面フィンガ46の縁部80から突き出る。好ましい実施形態においては、背面フィンガ46は、側壁166に係合するための2つのばね要素90、90’を有する。
【0042】
前面フィンガ44は、第1の面94、第2の面96、および先端98を有する平面ブレード92を備える。第1の面94は、背面フィンガ46とある角度99を形成する。角度99は、75°から85°が好ましい。この角度にすると、クリップ40が基板10の前縁部14に係合すると、前面フィンガ44の第1の面84が、基板10を収容表面138に押し付ける。さらに、前面フィンガ44が、基板10の前面12にさらに強く係合するために、先端99でより大きな厚み(図示せず)であり得る。
【0043】
次に図5を参照すると、収容板230は、4つの縁部を備える矩形形状を有し、矩形の基板210を収容するように構成される。第1の縁部231は、第3の縁部233とは反対側にあり、第2の縁部235は、第4の縁部237とは反対側にある。第2および第4の縁部235、237は、第1および第3の縁部231、233に対して直角である。この実施形態は、収容表面238の第1の縁部231に沿って配置された少なくとも1つの第1の収容リップ242と、収容表面238の第2の縁部235に沿って配置された少なくとも1つの第2の収容リップ242’とを備えて配置された、1つ以上の収容リップ242、242’を有する。第1の収容リップ242は、基板接触表面252を有する。基板接触表面252は、平坦であり、収容表面238に対して90°以内の角度を形成する。一実施形態においては、角度は、75°から85°である。このように、第1の収容リップ242は、基板210を押し付けるオーバハングを備えることにより、基板接触表面252との接触が切り離されるのを防止する。収容板230は、第3の縁部233または第4の縁部237のいずれかに、少なくとも1つのインデント250を有する。インデント250は、基板クリップ240がインデント250を横切る縁部の投影内に留まる一方、前面フィンガ244が基板210の前面212に接触できる領域を提供する。図5に示されるとおり、基板210は、収容表面238により支持される。基板210の1つの縁部が、基板接触表面252に接触しており、したがって、第1の収容リップ242上のオーバハングの下にある。基板を位置合わせするために、第2の縁部が、第2の収容リップ242’に整列される。基板210は、インデント250にまたがっている。図では、基板クリップ240がくぼみ(図示せず)に挿入され、基板210の外側縁部213に接触していることを示す。基板クリップは、基板210を押し付けて基板接触表面252に接触させ、かつ基板210を押し付けて収容表面238に接触させる。
【0044】
装置205は、作用表面上に1つ以上のサンプル(図示せず)を有する基板210を、光エネルギー源でサンプルをイオン化するのを容易にする位置のパターンに保持する方法において使用される。サンプルは、基板210の前面212上に置かれる。基板は、背面および厚みを有する。背面は、背面に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の背面縁部を有する。前面212は、前面212に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の前面縁部を有する。
【0045】
本方法は、収容板230と少なくとも1つの基板クリップ240とを有する装置205を提供することを含む。収容板230は、背面、厚み、外形輪郭を画定する少なくとも1つの縁部、および少なくとも1つの収容表面238を有する。収容表面238は、基板210の背面を収容するためのものである。収容表面238は、基板210の少なくとも1つの縁部を収容するために、収容表面238から突き出る1つ以上の収容リップ242を有する。各基板クリップ240は、少なくとも1つの前面フィンガおよび少なくとも1つの背面フィンガを有する。前面フィンガは、幅、および利用されるときに、収容板230上に置かれた基板210の厚みをまさに超えて延在するのに十分なだけの長さを有する。背面フィンガは、収容板230の背面上に1つの位置を取るように前面フィンガから延在する。
【0046】
次に、本方法は、収容表面238上に基板210を配置することを含む。基板210は、少なくとも1つの前面縁部が、1つ以上の収容リップ242に当接するように配置される。これにより、基板210を、光エネルギー源によってサンプルをイオン化する位置に方向付ける。次に、基板210の前面212の縁部213を、少なくとも1つの基板クリップ240により係合して、基板210を、少なくとも1つの収容リップ242に接触させ、および収容表面238に接触させて保持する。最後に、基板210を有する装置205が、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析計において使用するために、1つ以上の金属板の空間内に配置される。
【0047】
好ましい方法においては、収容板230の背面は、基板クリップ240の背面フィンガを収容するための少なくとも1つのくぼみを有する。次に、本方法はさらに、背面フィンガを少なくとも1つのくぼみ内にスライド可能に係合することを含む。
【0048】
図では収容板を表わすのに矩形形状を用いてきたが、別の形状も利用できることは明らかである。図では、背面および収容表面に対して平坦な表面を有する収容板を示す。収容板の背面が、周囲空間の表面に一致する別の外形輪郭を有してもよい。同様に、収容表面は、基板の背面を補足する外形輪郭を有してもよい。周囲空間、収容板表面、および基板の背面の外形輪郭の組み合わせが、結果的に、基板の前面を平坦にし、レーザ源に向けさせる。
【0049】
(例)
当業者であれば、通常の実験だけで、本明細書に記載される、特定の手順、実施形態、特許請求の範囲、および例に対する多くの均等物を認識し、または確認できるであろう。このような均等物も、本発明の範囲内にあり、本発明の特許請求の範囲に包含されるものとする。本出願全体を通して引用されたすべての参照資料、交付済の特許、および公表特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の装置の利点は、以下の例により説明される。
【0050】
図5に示される構造に広く適合する基板ホルダーは、DIOSチップに対して作製された。サンプルは、チップの多孔質箇所上に置かれ、乾燥を可能にされた。チップは、収容表面上にすべり込まされ、2つの収容リップに接触させて配置された。前面フィンガが基板の縁部に接触するまで、基板クリップを、くぼみに挿入された背面フィンガに取り付けた。これにより、このアセンブリが、収容板の縁部によって保持されることができるようになった。アセンブリをほぼ水平に維持すると、チップは移動しなかった。アセンブリは、収容リップを用いて収容板の縁部、または基板クリップを用いて収容板の縁部のいずれかによって、チップを移動せずに下方に方向付けられることができた。アセンブリを、チップに接触する収容リップも基板クリップも持たない収容板の縁部を用いて保持した場合、チップは、十分な力を加えると、収容表面から移動させられることができる。アセンブリは、2秒以内にMALDI機器に挿入する準備がなされた。特殊な機器または特殊な処理手順を使用する必要はなかった。装置を適切な清浄状態中で組み立てると、チップを固定した後に、追加の清浄化工程は必要としなかった。
【0051】
1つのDIOSチップ上で全試験を実施後、基板ホルダーは、再使用のために直ちに準備された。基板クリップを引っ込めることにより、基板を清浄な収容表面から解放する。次に、取り付けられる新しいDIOSチップを配置できる。本発明の装置により、MALDI質量分析計のターゲット空洞内への基板の一貫した配置を提供する。基板間で質量分析計を再調整するする必要がなくなる。当業者であれば、上述の実施形態に基づき、本発明の別の特徴および利点を認識するであろう。したがって、本発明は、特許請求の範囲に示すものを除いて、個々に図示し、説明してきた内容に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1A】円形基板の斜視図である。
【図1B】矩形基板の斜視図である。
【図2A】収容板の一実施形態の平面図である。
【図2B】図2Aの収容板の側面図である。
【図3A】収容板の一実施形態の平面図である。
【図3B】図3Aの実施形態の、線b−bに沿った側面図である。
【図3C】図3Aの収容板の、線c−cに沿った側面図である。
【図3D】図3Cの詳細図である。
【図4A】基板クリップの実施形態の平面図である。
【図4B】図4Bの基板クリップの側面図である。
【図5】基板を保持する装置の実施形態の平面図である。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年1月13日に出願された米国特許仮出願第60/536,043号の優先権を主張する。これら出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の分野は、質量分析に関し、さらに詳細には、本発明は、分析物の脱離およびイオン化の間に質量分析用の基板を保持する手段を提供することに関する。
【背景技術】
【0003】
サンプル分子の質量ならびにサンプル分子の断片質量を測定することにより、そのサンプルを特定するために、質量分析法が用いられる。最も簡単な質量分析計は、ガス状の電気的に中性のサンプルを、真空中(通常10−6トール以下の圧力)に導入する。Silversteinらの、「有機化合物の分光分析による識別(Spectrometric Identification of Organic Compounds)」、p.7(John Wiley & Sons,Inc.1963)。次に、サンプルは電子ビームを通過する。
【0004】
電子ビームからの高速運動電子が、分析されるサンプルの電子に衝突し、サンプルから1つ以上の電子を放出させる。被検サンプルの分子が電子を失った後、そのサンプルは正味の正電荷を有し、すなわち「イオン化」される。
【0005】
質量分析法は、イオンの電荷に対する分子の質量の比を測定する。質量は、通常、ダルトンと称される原子質量単位で表わされる。電荷またはイオン化は、通常、電気素量の倍数で表わされる。2つの比は、m/z比の値(質量/電荷の比または質量/イオン化の比)として表わされる。イオンは一般に単一電荷を有するため、m/z比は、一般に、イオン質量、またはそれの分子量(略してMW)である。多くの場合、項m/z、ダルトン単位のサンプル質量(または分子量、略してMW)は、互換可能に使用される。
【0006】
容易にガス化されない分子は、質量分析法で分析することがより困難である。したがって、質量分析法における多くの最新の発展は、液体または固体サンプルの処理に関する問題に取り組んでいる。分子が基板の「上」にあるとき、サンプルはその基板に吸着される。脱離とは、基板上に吸着された分子が、その基板から取り除かれるプロセスである。表面から分子を取り除くことは、その表面から分子を「脱離」することである。脱離されると、分子は「蒸発され」、ガス状態になる。基本的な質量分析を実施する際に、ガス状サンプルを用いて開始する代わりに、基板上に吸着されたサンプルを用いて脱離質量分析を開始して、そのサンプルを脱離し、それにより、ガス状サンプルを質量分析計に提供する。
【0007】
生物サンプルの分析に使用される脱離質量分析法は、マトリックス支援レーザ脱離/イオン化質量分析法(MALDI−MS)である。従来のMALDIにおいては、サンプルは、一般に、固体の紫外線を吸収する結晶有機酸マトリックスに溶解される。液体マトリックス/サンプルは、不活性ベースプレート上に特定のパターンで堆積され、乾燥されてターゲットスポットにできる。パルス状のレーザ放射は、いくつかのサンプル分子をイオン化すると同時に、気化されたマトリックスを有するサンプルを保持するスポットを蒸発させる。システムの処理量を最大にするために、多くのMALDI機器は、スポットを順番にイオン化するように予め構成される。
【0008】
MALDI−MSは、チャーリング、分裂、または化学分解なしに、非揮発性サンプル(例えば、生物サンプル)の固体相からガス相への直接的な脱離およびイオン化を可能にする。MALDI−MSを用いて、例えばポリペプチド、ポリヌクレオチド、プロテイン、DNA断片、生物ポリマ、および他の高分子などの物質を分析する。プロトン移動イオン化の開発は、生物分子質量分析法を可能にしてきた。
【0009】
MALDIは、厳密には、低分子の分析に限定される。MALDIマトリックスは、低質量領域と呼ばれる、約700のm/z未満の測定値(使用されるマトリックスに応じて若干変化する)に干渉する。高分子であっても、MALDIは重大な制限を有する。マトリックスおよびマトリックス断片は、サンプルイオンを有する付加物を生成でき、これは、測定された信号をある範囲の分子量を有するようにすることがある。このような分析からのスペクトルは、大幅に短縮されたピーク高を有する可能性がある。
【0010】
MALDI質量分析計を用いて従来から実施されていたように、サンプルをマトリックスと混合し、その後ベースプレートに吸着させるのと異なり、サンプルを保持する基板を利用して、サンプルを脱離する新しい方法が開発されてきた。サンプルの分析を実行するために、多孔質シリコン基板が、レーザ装備の質量分析計と共に使用される。本明細書において、用語の「DIOS」は、米国特許第5,882,496号に記載された構造のシリコン上の脱離イオン化を指す。この特許の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。DIOS基板(チップと称される)は、一般に、約3センチメートルから5センチメートルの寸法、および0.5ミリメートルの厚みを有する。一般に1つ以上の化合物が溶解している水溶液の形態であるサンプルは、基板の多孔質シリコン表面上に収容される。レーザイオン化により生成されるイオンの質量および電荷情報の測定に使用されるとき、基板は、質量分析計の入口に近接して配置される。レーザは、放電またはパルス化され、サンプルの一部分をイオン化および蒸発させるが、基板を残す。蒸気、イオン、およびガスは、分析のために質量分析計の入口に引き込まれる。
【0011】
DIOS法は、生物分子および他の分析に利用する直接レーザ脱離/イオン化技術を有する有益な効果を提供する。DIOS法は、大幅に簡略化されたサンプル調製に関する現在の方法の未達成の要求に対処する。サンプル調製は、マトリックスまたは基板に対する分析物の共有結合の必要性がないため、簡略化される。さらに、基板は、特定サンプルの要求に合わせる必要がなく、DIOS法は、塩および緩衝剤に対する耐性を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
既存のMALDI分析計においてDIOSチップを利用するために、薬剤を導入することなく、その機器内に基板を固定する方法を開発する必要がある。好ましくは、チップを繰返して位置決めすることにより、機器を、チップ間で再調整する必要をなくする。さらに、基板上のサンプルの分析が完了したとき、使用済の基板を除去および配置する容易な方法が、有益である。本発明はこれらの要求に対応する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、機器で使用するための1つ以上の基板を保持する装置に関する。詳細には、各基板は、マトリックス支援レーザ脱離/イオン化質量分析計に結合された光エネルギー源によりイオン化されるように、あるパターンの位置に配置される1つ以上のサンプルを有することができる。各基板は、1つ以上のサンプルを収容するために作用面を提供する前面と、背面と、少なくとも1つの縁部、および厚みを有する。
【0014】
装置は、収容板と少なくとも1つの基板クリップとから構成される。収容板は、背面、厚み、外形輪郭を画定する少なくとも1つの縁部、および少なくとも1つの収容表面を有する。各収容表面は、基板の背面を収容するためのものである。各収容表面は、基板の少なくとも1つの縁部を収容するために、収容表面から突き出る1つ以上の収容リップを有する。
【0015】
各基板クリップは、少なくとも1つの前面フィンガおよび少なくとも1つの背面フィンガを有する。前面フィンガは、幅、および利用されるときに、収容板上に置かれた基板の厚みを超えて延在するのに十分なだけの長さを有する。背面フィンガは、収容板の背面上に1つの位置を取るように前面フィンガから延在する。
【0016】
使用されるとき、収容板は、1つ以上の基板を収容する。各基板は、1つ以上の収容リップに当接するいくつかの縁部を有する複数の収容表面の1つの上にあり、基板を光エネルギー源によってサンプルの1つをイオン化する位置に方向付ける。各基板は、少なくとも1つの基板クリップにより、基板の前面縁部に係合される。基板クリップは、さらに、収容板の背面を係合して、基板を所定の位置に保持する。
【0017】
一実施形態において、各収容表面は、収容板の縁部の一部で形成される少なくとも1つの縁部を有する。好ましい実施形態において、装置が、1つの基板を収容するための1つの収容表面を有する。収容板は導電性であり、さらに、金属であってもよい。一実施形態において、基板は半導体である。半導体は、シリコンまたはゲルマニウムであってもよい。導電性の収容板および半導体基板を用いる場合、基板と収容板との間が電気接続される。
【0018】
一実施形態において、装置は、マトリックス支援レーザ脱離/イオン化質量分析計で使用する、1つ以上の金属板の空間内で協働するように構成および配置される。好ましくは、基板は、シリコン上の脱離/イオン化(DIOS)チップである。シリコン上の脱離/イオン化チップは、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析計のターゲットに一致するパターンに配置された、多孔質半導体領域を有する。
【0019】
一実施形態において、収容板は、外形輪郭に少なくとも1つのインデントを有する。このインデントは、基板クリップがインデントを横切る外形輪郭の投影に留まる一方、前面フィンガが基板の前面に接触できる領域を提供する。基板クリップは、前面フィンガと収容リップとの間の基板に圧縮力を加えることにより、基板を保持する。このようにすると、少なくとも1つの収容リップが、基板接触表面を有する。基板接触表面は、平坦であり、収容表面に対してある角度を形成する。この角度は、90°以内であり、好ましくは、75°から85°である。収容リップは、収容表面の上方に、基板の厚みの約2倍の距離で延在する。
【0020】
一実施形態において、収容板は、背面に少なくとも1つのくぼみを有する。各くぼみは、幅、ベース表面、および少なくとも1つの側壁を有する。くぼみは、基板クリップの背面フィンガを収容するためのものである。側壁は、側壁平面を画定し、ベース表面は、ベース平面を形成する。ベース平面と側壁平面との交差部は、ある角度を画定する。好ましくは、この角度は、40°から50°である。一実施形態において、くぼみは、収容板の縁部と交差する。好ましくは、くぼみは、背面フィンガとスライド可能に係合する。
【0021】
好ましくは、収容板は、外形輪郭部に、くぼみに中心合わせされた少なくとも1つのインデントを有する。インデントは、基板クリップがインデントを横切る外形輪郭の投影内に留まる一方、前面フィンガが基板の前面に接触できる領域を提供する。くぼみに中心合わせされたインデントは、くぼみの幅以上の幅を有する。この実施形態は、収容板への基板クリップの挿入を容易にする。
【0022】
基板クリップは、弾性材料で形成される。一実施形態において、基板クリップは、金属材料で形成され、基板クリップと基板との間を電気接続できる。一実施形態において、基板クリップの背面フィンガが、第1の面、第2の面、少なくとも1つの縁部、幅、および基板クリップをくぼみ内に保持する張力手段とを有する、平面部材を備える。背面フィンガが、くぼみに収容されて、第1の面がくぼみのベース表面に接すると、第2の面が、収容板の背面の下に引き込まれる。一実施形態において、背面フィンガは、少なくとも1つの側壁に係合するための少なくとも1つのばね要素を有する。ばね要素は、背面フィンガの縁部から突き出る。一実施形態において、背面フィンガは、側壁に係合するための2つのばね要素を有する。
【0023】
本装置の一実施形態において、前面フィンガが、第1の面、第2の面、および先端を有する平面ブレードを備える。第1の面は、背面フィンガとある角度を形成する。角度は、75°から85°が好ましい。この角度にすると、クリップが基板の前縁部に係合すると、前面フィンガの第1の面が、基板を収容表面に押し付ける。さらに、前面フィンガが、基板の前面にさらに強く係合するために、先端で大きな厚みを有することができる。
【0024】
一実施形態において、収容板は、4つの縁部を備える矩形形状を有する。第1の縁部は、第3の縁部とは反対側にあり、第2の縁部は、第4の縁部とは反対側にあるる。第2および第4の縁部は、第1および第3の縁部に対して直角である。この実施形態は、収容表面の第1の縁部に沿って配置された少なくとも1つの第1の収容リップと、収容表面の第2の縁部に沿って配置された少なくとも1つの第2の収容リップとを備えて配置された、1つ以上の収容リップを有する。第1の収容リップは、基板接触表面を有する。基板接触表面は、平坦であり、収容表面に対して90°以内の角度を形成する。好ましくは、角度は、75°°から85°である。一実施形態において、収容板が、第3の縁部または第4の縁部のいずれかに少なくとも1つのインデントを有し、これにより、基板クリップがインデントを横切る縁部の投影内に留まる一方、前面フィンガが基板の前面に接触できる領域を提供する。
【0025】
本装置は、1つ以上のサンプルを有する少なくとも1つの基板を、光エネルギー源でサンプルをイオン化する位置のパターンに保持する方法において使用される。基板は、1つ以上のサンプルを収容する前面、背面、および厚みを有する。背面は、背面に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の背面縁部を有する。前面は、前面に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の前面縁部を有する。
【0026】
本方法は、収容板と少なくとも1つの基板クリップとを有する装置を設けることを含む。収容板は、背面、厚み、外形輪郭を画定する少なくとも1つの縁部、および少なくとも1つの収容表面を有する。収容表面は、基板の背面を収容するためのものである。収容表面は、基板の少なくとも1つの縁部を収容するために、収容表面から突き出る1つ以上の収容リップを有する。各基板クリップは、少なくとも1つの前面フィンガおよび少なくとも1つの背面フィンガを有する。前面フィンガは、幅、および利用されるときに、収容板上に置かれた基板の厚みを超えて延在するのに十分なだけの長さを有する。背面フィンガは、収容板の背面上に1つの位置を取るために前面フィンガから延在する。
【0027】
次に、本方法は、収容表面上に基板を配置することを含む。基板は、少なくとも1つの前面縁部が1つ以上の収容リップに当接するように配置される。これにより、基板を光エネルギー源によってサンプルをイオン化する位置に方向付ける。次に、基板の前面の縁部が、少なくとも1つの基板クリップにより係合され、基板が所定の位置に保持される。最後に、基板を有する装置は、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析計において使用するために、1つ以上の金属板の空間内に配置される。
【0028】
好ましくは、収容板の背面が、基板クリップの背面フィンガを収容するための少なくとも1つのくぼみを有する。次に、本方法はさらに、少なくとも1つのくぼみ内に背面フィンガとスライド可能に係合することを含む。
【0029】
本発明の他のシステム、方法、特徴、および利点は、当業者には、以下の図面および詳細な記述を検討することにより明らかになるであろう。全てのこのような追加のシステム、方法、特徴、および利点は、本明細書の記述に含まれ、本発明の範囲内にあり、特許請求の範囲により保護されるものとする。
【0030】
本発明の多くの態様は、以下の図面を参照することにより、よりよく理解できる。図面中の構成要素は、必ずしも縮尺通りでなく、本発明の原理を明瞭に示すことに重点が置かれている。さらに、図面では、同一の参照符号は、複数の図面を通して類似の部品を指す。本発明の上記および他の形態は、添付図面に示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明は、機器で使用するための1つ以上の基板を保持する装置に関する。好ましい機器は、マトリックス支援レーザ脱離/イオン化(MALDI)質量分析計である。この装置は、脱離およびイオン化されるサンプルが、MALDI質量分析計で使用される前にマトリックスと混合されて、ベースプレート上に置かれるのと異なり、基板上に直接置かれる場合に使用される。各基板は、サンプルを保持するための1つ以上の位置を有することができる。これらの位置は、MALDI機器が、光エネルギー源によって一連のサンプルをイオン化するのに使用するパターンに配置される。この機構を使用して、所定の一連のターゲット位置を順次測定するMALDI機器において、基板を使用できる。この装置を使用するとき、基板は接着剤を用いることなく、保持および整列され、これにより、調製を簡略化し、質量分析計の真空を維持する。
【0032】
図1Aおよび図1Bは基板を示す。各基板10は、1つ以上のサンプル22を収容する前面12と、背面14と、厚み16とを有する。背面14は、背面14に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の背面縁部18を有する。前面12は、前面12に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の前面縁部20を有する。好ましくは、サンプル22は、前面12上に、分析計で使用されるパターンに一致するパターンで配置される。図1は、1インチから4インチ(2.54cmから10.16cm)の直径を有する円形基板を示す。矩形基板の寸法は、長さが2インチから5.25インチ(5.08cmから13.34cm)、幅が1インチから3.5インチ(2.54cmから8.89cm)である。図1Bは、寸法が約2インチ×1.45インチ(5.08cm×3.68cm)の好ましい矩形基板を示す。基板は、一般に、400μmから700μmの厚みである。
【0033】
図2Aおよび図2Bに示される装置5は、収容板30と少なくとも1つの基板クリップ40とから構成される。収容板30は、背面32、厚み34、外形輪郭を画定する少なくとも1つの縁部36、および少なくとも1つの収容表面38を備える。各収容表面38は、基板10の背面14を収容するためのものである。各収容表面38は、基板10の少なくとも1つの縁部18、20を収容するために、収容表面38から突き出る1つ以上の収容リップ42を有する。
【0034】
各基板クリップ40は、少なくとも1つの前面フィンガ44と少なくとも1つの背面フィンガ46とを有する。前面フィンガ44は、幅、および利用されるときに、収容板38上に置かれた基板10の厚みを超えて延在するのに十分なだけの長さを有する。背面フィンガ46は、収容板30の背面32上に1つの位置を取るように前面フィンガ44から延在する。
【0035】
使用されるとき、収容板30は、1つ以上の基板10を収容する。各基板10は、1つ以上の収容リップ42に当接するいくつかの縁部18、20を有する複数の収容表面38の1つの上にあり、基板10を、光エネルギー源によってサンプルの1つをイオン化する位置に位置合わせする。各基板10は、少なくとも1つの基板クリップ40により、基板10の前面縁部20で係合される。基板クリップ40はさらに、収容板30の背面32を係合して、基板10を所定の位置に保持する。基板クリップ40を取り付けて、収容板の外形輪郭内に保持することを可能にするように、少なくとも1つのインデント50が縁部36に切り込まれてよい。当業者には容易に認識できることであるが、外形輪郭は、直線縁部または曲線の円弧で形成される縁部に切り込まれたインデント50を含むいくつかの形状を取ることができる。
【0036】
図示されるとおり、各収容表面38は、収容板30の縁部36の一部で形成される少なくとも1つの縁部48を有する。好ましい実施形態においては、装置10が、1つの基板10を収容するための1つの収容表面38を有する。収容板30は、導電性であってもよく、さらに、金属であってもよい。金属製収容板30を磁性にして、従来のベースプレートの特性にさらに一致させることができる。好ましくは、基板10は半導体である。半導体は、シリコンまたはゲルマニウムであってもよい。導電性の収容板30および半導体基板10を用いる場合、基板10と収容板30との間を電気接続できる。
【0037】
図示されるとおり、装置5は、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析計で使用する1つ以上の金属板の空間内で協働するように、構成および配置される。この実施形態においては、収容板30に対して基板10を保持する基板クリップ40を有する装置5が、一般にベースプレートにより利用される空間にはめ込まれる。装置5および基板10は、装置5が空間内に置かれたとき、基板10の前面12が平面となり、レーザが各ターゲット22上に集光できるように配置される。収容リップ42が、基板10の縁部を基板クリップ40により係合される収容板30の縁部36に近接して置くように配置される限り、装置5は、基板10が収容表面38より大幅に小さい場合に使用できる。一実施形態においては、基板10は、シリコン上の脱離/イオン化(DIOS)チップである。シリコン上の脱離/イオン化チップは、米国特許第6,004,450号(全内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるプロセスで生成され、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析計のターゲットのパターンに配置された、多孔質半導体領域を有する。DIOSチップを保持する装置が、MALDI機器のベースプレートの代わりに取り付けされると、DIOSチップのターゲットは、0.5mmから0.1mm以内に位置合わせされる。これは、レーザがターゲット上に保持されるサンプルを蒸発させるのに十分な精度である。
【0038】
図3Aから図3Dに図示されるとおり、収容板は、基本的に矩形の収容板130を形成する矩形の外形輪郭を有することができる。収容板は、当該収容板が保持する基板よりわずかに大きい。2インチ×1.45インチ(5.1cm×3.7cm)の寸法を有する矩形基板については、収容板は、約2.165インチ×1.614インチ(5.5cm×4.1cm)となる。図示された収容板は、厚みが約0.06±0.005インチ(約0.15±0.013cm)であり、収容表面は、収容表面の上に約0.02±0.005インチ(0.051±0.013cm)延在する。収容板130は、外形輪郭に1つのインデント150を有する。このインデント150は、基板の下に延在するのに十分な深さであり、基板クリップ40がインデント150を横切る外形輪郭の投影内に留まる一方、前面フィンガ44が基板10の前面12に接触できる領域を提供する。基板クリップ40は、前面フィンガ44と1つ以上の収容リップ142との間の基板に圧縮力を加えることにより、基板を保持する(図示せず)。これを達成するために、少なくとも1つの収容リップ142’が、基板接触表面152を有する。基板接触表面152は、平坦であり、収容表面138に対してある角度154を形成する。この角度154は、90°以内であり、好ましくは、75°から85°である。この角度154により、基板が基板接触表面152と圧縮接触しているとき、傾斜した接触表面152により基板が収容表面138に保持されるのに十分なオーバハングを提供する。収容リップ142は、収容表面138の上方に、基板の厚みの約2倍の距離で延在する。
【0039】
図示されるとおり、収容板130は、背面132に1つのくぼみ160を有する。くぼみ160は、幅162、ベース表面164、および少なくとも1つの側壁166を有する。くぼみ160は、基板クリップ40の背面フィンガ46を収容するためのものである。幅は、背面フィンガ46を収容し、張力機構を圧縮するのに十分である。側壁166は、側壁平面を画定する。ベース表面は、収容板130の本体に、収容板の厚みの約半分まで切り込まれる。図では、くぼみの深さは、0.030±0.005インチ(0.076±0.013cm)である。くぼんだベース表面164は、ベース平面を画定する。ベース平面と側壁平面との交差部は、ある角度168を画定する。この角度168は、40°から50°である。くぼみ160は、収容板130の縁部136と交差し、背面フィンガ46とスライド可能に係合する。
【0040】
収容板130は、外形輪郭部に、くぼみ160に中心合わせされた1つのインデント150を有する。インデント150は、基板クリップ40がインデント150を横切る外形輪郭の投影内に留まる一方、前面フィンガ44が基板10の前面12に接触できる領域を提供する。くぼみ160に中心合わせされたインデント150は、くぼみの幅162それ以上の幅170を有する。この構成は、収容板130への基板クリップ40の挿入を容易にする。上記の寸法が、ある機器に適用できることは、当業者には認識されるであろう。しかし、収容表面、インデント、およびくぼみのこの構成は、別のサイズおよび直線縁部または曲線の円弧で形成される外形輪郭にも適用できる。
【0041】
基板クリップ40は、弾性材料で形成される。一実施形態においては、基板クリップ40は、金属材料で形成され、基板クリップ40と基板10との間を電気接続される。図4Aおよび図4Bに示されるとおり、基板クリップ40の背面フィンガ46が、第1の面82、第2の面84、少なくとも1つの縁部86、幅88、および基板クリップ40をくぼみ160内に保持する張力手段90とを有する、平面部材80を備える。基板クリップ40は、くぼみ162の厚みの約1/3から1/2の厚みを有する。図示されるとおり、フィンガ40の厚みは0.01±0.003インチ(0.025±0.008cm)である。背面フィンガ46がくぼみ160に収容されて、第1の面82が、くぼみ160のベース表面164に接触するように配置されると、第2の面84が、収容板130の背面132の下に引き込まれる。したがって、装置105を取り付けるとき、基板クリップ40は、背面132の係合を妨害しない。一実施形態においては、背面フィンガ46は、少なくとも1つの側壁166に係合するための少なくとも1つのばね要素90’を有する。ばね要素90’は、背面フィンガ46の縁部80から突き出る。好ましい実施形態においては、背面フィンガ46は、側壁166に係合するための2つのばね要素90、90’を有する。
【0042】
前面フィンガ44は、第1の面94、第2の面96、および先端98を有する平面ブレード92を備える。第1の面94は、背面フィンガ46とある角度99を形成する。角度99は、75°から85°が好ましい。この角度にすると、クリップ40が基板10の前縁部14に係合すると、前面フィンガ44の第1の面84が、基板10を収容表面138に押し付ける。さらに、前面フィンガ44が、基板10の前面12にさらに強く係合するために、先端99でより大きな厚み(図示せず)であり得る。
【0043】
次に図5を参照すると、収容板230は、4つの縁部を備える矩形形状を有し、矩形の基板210を収容するように構成される。第1の縁部231は、第3の縁部233とは反対側にあり、第2の縁部235は、第4の縁部237とは反対側にある。第2および第4の縁部235、237は、第1および第3の縁部231、233に対して直角である。この実施形態は、収容表面238の第1の縁部231に沿って配置された少なくとも1つの第1の収容リップ242と、収容表面238の第2の縁部235に沿って配置された少なくとも1つの第2の収容リップ242’とを備えて配置された、1つ以上の収容リップ242、242’を有する。第1の収容リップ242は、基板接触表面252を有する。基板接触表面252は、平坦であり、収容表面238に対して90°以内の角度を形成する。一実施形態においては、角度は、75°から85°である。このように、第1の収容リップ242は、基板210を押し付けるオーバハングを備えることにより、基板接触表面252との接触が切り離されるのを防止する。収容板230は、第3の縁部233または第4の縁部237のいずれかに、少なくとも1つのインデント250を有する。インデント250は、基板クリップ240がインデント250を横切る縁部の投影内に留まる一方、前面フィンガ244が基板210の前面212に接触できる領域を提供する。図5に示されるとおり、基板210は、収容表面238により支持される。基板210の1つの縁部が、基板接触表面252に接触しており、したがって、第1の収容リップ242上のオーバハングの下にある。基板を位置合わせするために、第2の縁部が、第2の収容リップ242’に整列される。基板210は、インデント250にまたがっている。図では、基板クリップ240がくぼみ(図示せず)に挿入され、基板210の外側縁部213に接触していることを示す。基板クリップは、基板210を押し付けて基板接触表面252に接触させ、かつ基板210を押し付けて収容表面238に接触させる。
【0044】
装置205は、作用表面上に1つ以上のサンプル(図示せず)を有する基板210を、光エネルギー源でサンプルをイオン化するのを容易にする位置のパターンに保持する方法において使用される。サンプルは、基板210の前面212上に置かれる。基板は、背面および厚みを有する。背面は、背面に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の背面縁部を有する。前面212は、前面212に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の前面縁部を有する。
【0045】
本方法は、収容板230と少なくとも1つの基板クリップ240とを有する装置205を提供することを含む。収容板230は、背面、厚み、外形輪郭を画定する少なくとも1つの縁部、および少なくとも1つの収容表面238を有する。収容表面238は、基板210の背面を収容するためのものである。収容表面238は、基板210の少なくとも1つの縁部を収容するために、収容表面238から突き出る1つ以上の収容リップ242を有する。各基板クリップ240は、少なくとも1つの前面フィンガおよび少なくとも1つの背面フィンガを有する。前面フィンガは、幅、および利用されるときに、収容板230上に置かれた基板210の厚みをまさに超えて延在するのに十分なだけの長さを有する。背面フィンガは、収容板230の背面上に1つの位置を取るように前面フィンガから延在する。
【0046】
次に、本方法は、収容表面238上に基板210を配置することを含む。基板210は、少なくとも1つの前面縁部が、1つ以上の収容リップ242に当接するように配置される。これにより、基板210を、光エネルギー源によってサンプルをイオン化する位置に方向付ける。次に、基板210の前面212の縁部213を、少なくとも1つの基板クリップ240により係合して、基板210を、少なくとも1つの収容リップ242に接触させ、および収容表面238に接触させて保持する。最後に、基板210を有する装置205が、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析計において使用するために、1つ以上の金属板の空間内に配置される。
【0047】
好ましい方法においては、収容板230の背面は、基板クリップ240の背面フィンガを収容するための少なくとも1つのくぼみを有する。次に、本方法はさらに、背面フィンガを少なくとも1つのくぼみ内にスライド可能に係合することを含む。
【0048】
図では収容板を表わすのに矩形形状を用いてきたが、別の形状も利用できることは明らかである。図では、背面および収容表面に対して平坦な表面を有する収容板を示す。収容板の背面が、周囲空間の表面に一致する別の外形輪郭を有してもよい。同様に、収容表面は、基板の背面を補足する外形輪郭を有してもよい。周囲空間、収容板表面、および基板の背面の外形輪郭の組み合わせが、結果的に、基板の前面を平坦にし、レーザ源に向けさせる。
【0049】
(例)
当業者であれば、通常の実験だけで、本明細書に記載される、特定の手順、実施形態、特許請求の範囲、および例に対する多くの均等物を認識し、または確認できるであろう。このような均等物も、本発明の範囲内にあり、本発明の特許請求の範囲に包含されるものとする。本出願全体を通して引用されたすべての参照資料、交付済の特許、および公表特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の装置の利点は、以下の例により説明される。
【0050】
図5に示される構造に広く適合する基板ホルダーは、DIOSチップに対して作製された。サンプルは、チップの多孔質箇所上に置かれ、乾燥を可能にされた。チップは、収容表面上にすべり込まされ、2つの収容リップに接触させて配置された。前面フィンガが基板の縁部に接触するまで、基板クリップを、くぼみに挿入された背面フィンガに取り付けた。これにより、このアセンブリが、収容板の縁部によって保持されることができるようになった。アセンブリをほぼ水平に維持すると、チップは移動しなかった。アセンブリは、収容リップを用いて収容板の縁部、または基板クリップを用いて収容板の縁部のいずれかによって、チップを移動せずに下方に方向付けられることができた。アセンブリを、チップに接触する収容リップも基板クリップも持たない収容板の縁部を用いて保持した場合、チップは、十分な力を加えると、収容表面から移動させられることができる。アセンブリは、2秒以内にMALDI機器に挿入する準備がなされた。特殊な機器または特殊な処理手順を使用する必要はなかった。装置を適切な清浄状態中で組み立てると、チップを固定した後に、追加の清浄化工程は必要としなかった。
【0051】
1つのDIOSチップ上で全試験を実施後、基板ホルダーは、再使用のために直ちに準備された。基板クリップを引っ込めることにより、基板を清浄な収容表面から解放する。次に、取り付けられる新しいDIOSチップを配置できる。本発明の装置により、MALDI質量分析計のターゲット空洞内への基板の一貫した配置を提供する。基板間で質量分析計を再調整するする必要がなくなる。当業者であれば、上述の実施形態に基づき、本発明の別の特徴および利点を認識するであろう。したがって、本発明は、特許請求の範囲に示すものを除いて、個々に図示し、説明してきた内容に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1A】円形基板の斜視図である。
【図1B】矩形基板の斜視図である。
【図2A】収容板の一実施形態の平面図である。
【図2B】図2Aの収容板の側面図である。
【図3A】収容板の一実施形態の平面図である。
【図3B】図3Aの実施形態の、線b−bに沿った側面図である。
【図3C】図3Aの収容板の、線c−cに沿った側面図である。
【図3D】図3Cの詳細図である。
【図4A】基板クリップの実施形態の平面図である。
【図4B】図4Bの基板クリップの側面図である。
【図5】基板を保持する装置の実施形態の平面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の基板を保持する装置であって、前記各基板が、光エネルギー源でサンプルをイオン化する位置に1つ以上のサンプルを有し、前記各基板が、1つ以上のサンプルを収容する前面と背面とを有し、前記背面が、前記背面に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の背面縁部を有し、前記前面が、前記前面に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の前面縁部を有し、前記各基板が、厚みを有し、前記装置が、
収容板を備え、前記受容板が、背面、厚み、外形輪郭を画定する少なくとも1つの縁部、および少なくとも1つの収容表面とを有し、前記各収容表面が、基板の前記背面を収容し、前記各収容表面が、前記基板の少なくとも1つの縁部を収容するために、前記各収容表面から突き出る1つ以上の収容リップを有し、前記装置がさらに、
少なくとも1つの基板クリップを備え、各前記基板クリップが、少なくとも1つの前面フィンガと少なくとも1つの背面フィンガとを有し、前記前面フィンガが、幅、および前記基板および前記収容板の前記厚みを超えて延在する長さを有し、前記背面フィンガが、前記収容板の前記背面上に1つの位置を取るように前面フィンガから延在し、
前記収容板が、前記1つ以上の基板を収容し、前記各基板が、前記複数の収容表面の1つ上にあり、前記光エネルギー源によってサンプルをイオン化する位置に前記基板を位置合わせするために前記1つ以上の収容リップに当接し、前記各基板が、少なくとも1つの基板クリップにより、前記基板の前記前面縁部で係合され、前記少なくとも1つの基板クリップが、さらに前記基板を前記位置に保持するために前記収容板の前記背面を係合する、装置。
【請求項2】
前記各収容表面が、前記収容板の前記少なくとも1つの縁部の一部で形成される少なくとも1つの縁部を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置が、1つの前記基板を収容するために1つの前記収容表面を有する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記収容板が導電性である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記収容板が金属である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記基板が半導体である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記基板がシリコンまたはゲルマニウムである、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記基板と前記収容板との間が電気接続されている、請求項4に記載の装置。
【請求項9】
前記収容板が、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析計で使用する1つ以上の金属板の空間内で協働するように構成および配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記基板が、シリコン上の脱離/イオン化チップである、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記シリコン上の脱離/イオン化チップが、前記マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析計のターゲットのパターンに配置された多孔質半導体領域を有する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記収容板が、前記外形輪郭に少なくとも1つのインデントを有し、該インデントが、前記基板クリップが前記インデントを横切る前記外形輪郭の投影内に留まる一方、前記前面フィンガが前記基板の前記前面に接触できる領域を提供する、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記基板クリップが、前面フィンガと前記1つ以上の収容リップとの間の前記基板に圧縮力を加えることにより前記基板を保持している、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
少なくとも1つの収容リップが、基板接触表面を有し、前記基板接触表面が、平坦であり、前記基板接触表面が、前記収容表面に対してある角度を形成している、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記角度は90°以下である、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記角度は75°から85°である、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記収容リップが、前記収容表面の上方に、前記基板の前記厚みの約2倍の距離で延在する、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記収容板が、前記背面に少なくとも1つのくぼみを有し、前記少なくとも1つのくぼみが、幅、ベース表面、および少なくとも1つの側壁を有し、前記少なくとも1つのくぼみが、前記少なくとも1つの基板クリップの前記背面フィンガを収容するためのものである、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つの側壁が、側壁平面を画定し、前記ベース表面が、ベース平面を画定し、ベース平面および側壁平面が、ある角度を画定している、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記角度が40°から50°である、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記少なくとも1つのくぼみが、前記背面フィンガとスライド可能に係合している、請求項18に記載の装置。
【請求項22】
前記少なくとも1つのくぼみが、前記収容板の前記少なくとも1つの縁部と交差している、請求項18に記載の装置。
【請求項23】
前記収容板が、前記外形輪郭に少なくとも1つのインデントを有し、該インデントが、前記基板クリップが前記インデントを横切る前記外形輪郭の投影内に留まる一方、前記前面フィンガが前記基板の前記前面に接触できる領域を提供し、前記インデントが、前記くぼみに中心合わせされ、前記くぼみの前記幅以上の幅を有する、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記基板クリップが、弾性材料で形成されている、請求項13に記載の装置。
【請求項25】
前記基板クリップが、金属材料で形成され、前記基板クリップと前記基板との間が電気接続されている、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記基板クリップの前記背面フィンガが、第1の面、第2の面、少なくとも1つの縁部、幅、および前記基板クリップを前記くぼみ内に保持する張力手段を有する、平面部材を備えている、請求項18に記載の装置。
【請求項27】
前記背面フィンガが、前記くぼみに収容されて、前記第1の面が、前記くぼみの前記ベース表面に接して配置されると、前記第2の面が、前記収容板の前記背面の下に引き込まれる、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
背面フィンガが、前記少なくとも1つの側壁に係合するための少なくとも1つのばね要素を有する、請求項26に記載の装置。
【請求項29】
前記ばね要素が、前記背面フィンガの前記縁部から突き出ている、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記背面フィンガが、前記側壁に係合するための2つのばね要素を有する、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記前面フィンガが、第1の面、第2の面、および先端を有する平面ブレードを備え、前記第1の面が、背面フィンガとある角度を形成している、請求項24に記載の装置。
【請求項32】
前記角度が75°から85°である、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記クリップが前記基板の前記前縁部に係合すると、前記前面フィンガの前記第1の面が、前記基板を前記収容表面に押し付ける、請求項31に記載の装置。
【請求項34】
前記前面フィンガが、前記基板の前記前面に係合するために、前記先端で厚くされる、請求項31に記載の装置。
【請求項35】
前記収容板が、4つの縁部を備える矩形形状を有し、第1の縁部が、第3の縁部とは反対側にあり、第2の縁部が、第4の縁部とは反対側にあり、前記第2および第4の縁部が、前記第1および第3の縁部に対して直角である、請求項9に記載の装置。
【請求項36】
前記1つ以上の収容リップが、
前記収容表面の前記第1の縁部に沿って配置された少なくとも1つの第1の収容リップと、
前記収容表面の前記第2の縁部に沿って配置された少なくとも1つの第2の収容リップとを備える、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記第1の収容リップが、基板接触表面を有し、前記基板接触表面が、平坦であり、前記基板接触表面が、前記収容表面に対してある角度を形成している、請求項36に記載の装置。
【請求項38】
前記角度が90°以下である、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記角度が75°から85°である、請求項33に記載の装置。
【請求項40】
前記収容板が、前記第3の縁部および前記第4の縁部から選択される縁部に少なくとも1つのインデントを有し、該インデントが、前記基板クリップが前記インデントを横切る前記縁部の投影内に留まる一方、前記前面フィンガが前記基板の前記前面に接触できる領域を提供する、請求項35に記載の装置。
【請求項41】
1つ以上のサンプルを有する基板を、前記サンプルを光エネルギー源でイオン化する位置に保持する方法であって、前記基板が、1つ以上のサンプルを収容する前面と背面とを有し、前記背面が、前記背面に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の背面縁部を有し、前記前面が、前記前面に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の前面縁部を有し、前記基板が、厚みを有し、前記方法が、
収容板を提供することを含み、前記収容板が、背面、厚み、外形輪郭を画定する少なくとも1つの縁部、および少なくとも1つの収容表面とを有し、前記各収容表面が、基板の前記背面を収容するためのものであり、前記各収容表面が、前記各収容表面から突き出る、前記基板の少なくとも1つの縁部を収容するために、前記収容表面から突き出る1つ以上の収容リップを有し、前記方法がさらに、
少なくとも1つの基板クリップを提供することを含み、各基板クリップが、少なくとも1つの前面フィンガと少なくとも1つの背面フィンガとを有し、前記前面フィンガが、幅、および前記基板および前記収容板の厚みを超えて延在する長さを有し、前記背面フィンガが、前記収容板の前記背面上に1つの位置を取るように前面フィンガから延在し、前記方法がさらに、
前記基板を前記収容表面の1つの上に配置することを含み、少なくとも1つの前面縁部が、光エネルギー源によってサンプルをイオン化する位置に前記基板を位置合わせするために、1つ以上の収容リップに当接し、
前記少なくとも1つの基板クリップにより、前記基板を前記位置に保持するために前記基板の前記前面の縁部と前記収容板の前記背面とを係合することを含む、方法。
【請求項42】
前記収容板が、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析計で使用する1つ以上の金属板の空間内で協働するように構成および配置され、前記方法がさらに、前記マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析計で使用する1つ以上の金属板の空間内に、前記装置を配置することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記収容板が導電性である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記基板が半導体である、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記収容板が、前記外形輪郭に少なくとも1つのインデントを有し、該インデントが、前記基板クリップが前記インデントを横切る前記外形輪郭の投影内に留まる一方、前記前面フィンガが前記基板の前記前面に接触できる領域を提供する、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記収容板の前記背面が、前記基板クリップの前記背面フィンガを収容するための少なくとも1つのくぼみを有し、前記方法がさらに、前記少なくとも1つのくぼみで前記背面フィンガがスライド可能に係合することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記基板クリップが、金属材料で形成され、前記基板クリップと前記基板との間が電気接続される、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
前記基板クリップの前記背面フィンガが、第1の面、第2の面、少なくとも1つの縁部、幅、および前記基板クリップを前記くぼみ内に保持する張力手段を有する、平面部材を備える、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記背面フィンガを前記くぼみに収容して、前記第1の面が、前記くぼみの前記ベース表面に接触するように配置することをさらに含み、これにより、前記第2の面が、前記収容板の前記背面の下に引き込まれる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
1つ以上の基板を保持する方法であって、前記各基板が、光エネルギー源でサンプルをイオン化する位置に1つ以上のサンプルを有し、前記各基板が、1つ以上のサンプルを収容する前面と背面とを有し、前記背面が、前記背面に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の背面縁部を有し、前記前面が、前記前面に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の前面縁部を有し、前記基板が、厚みを有し、前記方法が、
収容板を提供することを含み、前記収容板が、背面、厚み、外形輪郭を画定する少なくとも1つの縁部、および少なくとも1つの収容表面とを有し、前記各収容表面が、基板の前記背面を収容するためのものであり、前記各収容表面が、前記基板の少なくとも1つの縁部を収容するために前記各収容表面から突き出る1つ以上の収容リップを有し、前記方法がさらに、
少なくとも1つの基板クリップを提供することを含み、各基板クリップが、少なくとも1つの前面フィンガと少なくとも1つの背面フィンガとを有し、前記前面フィンガが、幅、および前記基板および前記収容板の厚みを超えて延在する長さを有し、前記背面フィンガが、前記収容板の前記背面上に1つの位置を取るように前記前面フィンガから延在し、前記方法がさらに、
前記各基板を前記収容表面の1つの上に配置することを含み、少なくとも1つの前面縁部が、光エネルギー源によってサンプルをイオン化する位置に前記基板を位置合わせするために、1つ以上の収容リップに当接することを含み、前記方法がさらに、
前記少なくとも1つの基板クリップにより、前記基板を前記位置に保持するために前記各基板の前記前面の縁部と前記収容板の前記背面とを係合することを含む、方法。
【請求項1】
1つ以上の基板を保持する装置であって、前記各基板が、光エネルギー源でサンプルをイオン化する位置に1つ以上のサンプルを有し、前記各基板が、1つ以上のサンプルを収容する前面と背面とを有し、前記背面が、前記背面に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の背面縁部を有し、前記前面が、前記前面に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の前面縁部を有し、前記各基板が、厚みを有し、前記装置が、
収容板を備え、前記受容板が、背面、厚み、外形輪郭を画定する少なくとも1つの縁部、および少なくとも1つの収容表面とを有し、前記各収容表面が、基板の前記背面を収容し、前記各収容表面が、前記基板の少なくとも1つの縁部を収容するために、前記各収容表面から突き出る1つ以上の収容リップを有し、前記装置がさらに、
少なくとも1つの基板クリップを備え、各前記基板クリップが、少なくとも1つの前面フィンガと少なくとも1つの背面フィンガとを有し、前記前面フィンガが、幅、および前記基板および前記収容板の前記厚みを超えて延在する長さを有し、前記背面フィンガが、前記収容板の前記背面上に1つの位置を取るように前面フィンガから延在し、
前記収容板が、前記1つ以上の基板を収容し、前記各基板が、前記複数の収容表面の1つ上にあり、前記光エネルギー源によってサンプルをイオン化する位置に前記基板を位置合わせするために前記1つ以上の収容リップに当接し、前記各基板が、少なくとも1つの基板クリップにより、前記基板の前記前面縁部で係合され、前記少なくとも1つの基板クリップが、さらに前記基板を前記位置に保持するために前記収容板の前記背面を係合する、装置。
【請求項2】
前記各収容表面が、前記収容板の前記少なくとも1つの縁部の一部で形成される少なくとも1つの縁部を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置が、1つの前記基板を収容するために1つの前記収容表面を有する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記収容板が導電性である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記収容板が金属である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記基板が半導体である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記基板がシリコンまたはゲルマニウムである、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記基板と前記収容板との間が電気接続されている、請求項4に記載の装置。
【請求項9】
前記収容板が、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析計で使用する1つ以上の金属板の空間内で協働するように構成および配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記基板が、シリコン上の脱離/イオン化チップである、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記シリコン上の脱離/イオン化チップが、前記マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析計のターゲットのパターンに配置された多孔質半導体領域を有する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記収容板が、前記外形輪郭に少なくとも1つのインデントを有し、該インデントが、前記基板クリップが前記インデントを横切る前記外形輪郭の投影内に留まる一方、前記前面フィンガが前記基板の前記前面に接触できる領域を提供する、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記基板クリップが、前面フィンガと前記1つ以上の収容リップとの間の前記基板に圧縮力を加えることにより前記基板を保持している、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
少なくとも1つの収容リップが、基板接触表面を有し、前記基板接触表面が、平坦であり、前記基板接触表面が、前記収容表面に対してある角度を形成している、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記角度は90°以下である、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記角度は75°から85°である、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記収容リップが、前記収容表面の上方に、前記基板の前記厚みの約2倍の距離で延在する、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記収容板が、前記背面に少なくとも1つのくぼみを有し、前記少なくとも1つのくぼみが、幅、ベース表面、および少なくとも1つの側壁を有し、前記少なくとも1つのくぼみが、前記少なくとも1つの基板クリップの前記背面フィンガを収容するためのものである、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つの側壁が、側壁平面を画定し、前記ベース表面が、ベース平面を画定し、ベース平面および側壁平面が、ある角度を画定している、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記角度が40°から50°である、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記少なくとも1つのくぼみが、前記背面フィンガとスライド可能に係合している、請求項18に記載の装置。
【請求項22】
前記少なくとも1つのくぼみが、前記収容板の前記少なくとも1つの縁部と交差している、請求項18に記載の装置。
【請求項23】
前記収容板が、前記外形輪郭に少なくとも1つのインデントを有し、該インデントが、前記基板クリップが前記インデントを横切る前記外形輪郭の投影内に留まる一方、前記前面フィンガが前記基板の前記前面に接触できる領域を提供し、前記インデントが、前記くぼみに中心合わせされ、前記くぼみの前記幅以上の幅を有する、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記基板クリップが、弾性材料で形成されている、請求項13に記載の装置。
【請求項25】
前記基板クリップが、金属材料で形成され、前記基板クリップと前記基板との間が電気接続されている、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記基板クリップの前記背面フィンガが、第1の面、第2の面、少なくとも1つの縁部、幅、および前記基板クリップを前記くぼみ内に保持する張力手段を有する、平面部材を備えている、請求項18に記載の装置。
【請求項27】
前記背面フィンガが、前記くぼみに収容されて、前記第1の面が、前記くぼみの前記ベース表面に接して配置されると、前記第2の面が、前記収容板の前記背面の下に引き込まれる、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
背面フィンガが、前記少なくとも1つの側壁に係合するための少なくとも1つのばね要素を有する、請求項26に記載の装置。
【請求項29】
前記ばね要素が、前記背面フィンガの前記縁部から突き出ている、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記背面フィンガが、前記側壁に係合するための2つのばね要素を有する、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記前面フィンガが、第1の面、第2の面、および先端を有する平面ブレードを備え、前記第1の面が、背面フィンガとある角度を形成している、請求項24に記載の装置。
【請求項32】
前記角度が75°から85°である、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記クリップが前記基板の前記前縁部に係合すると、前記前面フィンガの前記第1の面が、前記基板を前記収容表面に押し付ける、請求項31に記載の装置。
【請求項34】
前記前面フィンガが、前記基板の前記前面に係合するために、前記先端で厚くされる、請求項31に記載の装置。
【請求項35】
前記収容板が、4つの縁部を備える矩形形状を有し、第1の縁部が、第3の縁部とは反対側にあり、第2の縁部が、第4の縁部とは反対側にあり、前記第2および第4の縁部が、前記第1および第3の縁部に対して直角である、請求項9に記載の装置。
【請求項36】
前記1つ以上の収容リップが、
前記収容表面の前記第1の縁部に沿って配置された少なくとも1つの第1の収容リップと、
前記収容表面の前記第2の縁部に沿って配置された少なくとも1つの第2の収容リップとを備える、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記第1の収容リップが、基板接触表面を有し、前記基板接触表面が、平坦であり、前記基板接触表面が、前記収容表面に対してある角度を形成している、請求項36に記載の装置。
【請求項38】
前記角度が90°以下である、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記角度が75°から85°である、請求項33に記載の装置。
【請求項40】
前記収容板が、前記第3の縁部および前記第4の縁部から選択される縁部に少なくとも1つのインデントを有し、該インデントが、前記基板クリップが前記インデントを横切る前記縁部の投影内に留まる一方、前記前面フィンガが前記基板の前記前面に接触できる領域を提供する、請求項35に記載の装置。
【請求項41】
1つ以上のサンプルを有する基板を、前記サンプルを光エネルギー源でイオン化する位置に保持する方法であって、前記基板が、1つ以上のサンプルを収容する前面と背面とを有し、前記背面が、前記背面に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の背面縁部を有し、前記前面が、前記前面に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の前面縁部を有し、前記基板が、厚みを有し、前記方法が、
収容板を提供することを含み、前記収容板が、背面、厚み、外形輪郭を画定する少なくとも1つの縁部、および少なくとも1つの収容表面とを有し、前記各収容表面が、基板の前記背面を収容するためのものであり、前記各収容表面が、前記各収容表面から突き出る、前記基板の少なくとも1つの縁部を収容するために、前記収容表面から突き出る1つ以上の収容リップを有し、前記方法がさらに、
少なくとも1つの基板クリップを提供することを含み、各基板クリップが、少なくとも1つの前面フィンガと少なくとも1つの背面フィンガとを有し、前記前面フィンガが、幅、および前記基板および前記収容板の厚みを超えて延在する長さを有し、前記背面フィンガが、前記収容板の前記背面上に1つの位置を取るように前面フィンガから延在し、前記方法がさらに、
前記基板を前記収容表面の1つの上に配置することを含み、少なくとも1つの前面縁部が、光エネルギー源によってサンプルをイオン化する位置に前記基板を位置合わせするために、1つ以上の収容リップに当接し、
前記少なくとも1つの基板クリップにより、前記基板を前記位置に保持するために前記基板の前記前面の縁部と前記収容板の前記背面とを係合することを含む、方法。
【請求項42】
前記収容板が、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析計で使用する1つ以上の金属板の空間内で協働するように構成および配置され、前記方法がさらに、前記マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析計で使用する1つ以上の金属板の空間内に、前記装置を配置することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記収容板が導電性である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記基板が半導体である、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記収容板が、前記外形輪郭に少なくとも1つのインデントを有し、該インデントが、前記基板クリップが前記インデントを横切る前記外形輪郭の投影内に留まる一方、前記前面フィンガが前記基板の前記前面に接触できる領域を提供する、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記収容板の前記背面が、前記基板クリップの前記背面フィンガを収容するための少なくとも1つのくぼみを有し、前記方法がさらに、前記少なくとも1つのくぼみで前記背面フィンガがスライド可能に係合することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記基板クリップが、金属材料で形成され、前記基板クリップと前記基板との間が電気接続される、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
前記基板クリップの前記背面フィンガが、第1の面、第2の面、少なくとも1つの縁部、幅、および前記基板クリップを前記くぼみ内に保持する張力手段を有する、平面部材を備える、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記背面フィンガを前記くぼみに収容して、前記第1の面が、前記くぼみの前記ベース表面に接触するように配置することをさらに含み、これにより、前記第2の面が、前記収容板の前記背面の下に引き込まれる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
1つ以上の基板を保持する方法であって、前記各基板が、光エネルギー源でサンプルをイオン化する位置に1つ以上のサンプルを有し、前記各基板が、1つ以上のサンプルを収容する前面と背面とを有し、前記背面が、前記背面に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の背面縁部を有し、前記前面が、前記前面に沿って長さおよび幅を画定する1つ以上の前面縁部を有し、前記基板が、厚みを有し、前記方法が、
収容板を提供することを含み、前記収容板が、背面、厚み、外形輪郭を画定する少なくとも1つの縁部、および少なくとも1つの収容表面とを有し、前記各収容表面が、基板の前記背面を収容するためのものであり、前記各収容表面が、前記基板の少なくとも1つの縁部を収容するために前記各収容表面から突き出る1つ以上の収容リップを有し、前記方法がさらに、
少なくとも1つの基板クリップを提供することを含み、各基板クリップが、少なくとも1つの前面フィンガと少なくとも1つの背面フィンガとを有し、前記前面フィンガが、幅、および前記基板および前記収容板の厚みを超えて延在する長さを有し、前記背面フィンガが、前記収容板の前記背面上に1つの位置を取るように前記前面フィンガから延在し、前記方法がさらに、
前記各基板を前記収容表面の1つの上に配置することを含み、少なくとも1つの前面縁部が、光エネルギー源によってサンプルをイオン化する位置に前記基板を位置合わせするために、1つ以上の収容リップに当接することを含み、前記方法がさらに、
前記少なくとも1つの基板クリップにより、前記基板を前記位置に保持するために前記各基板の前記前面の縁部と前記収容板の前記背面とを係合することを含む、方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【公表番号】特表2007−518105(P2007−518105A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549431(P2006−549431)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/000492
【国際公開番号】WO2005/070089
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(504438255)ウオーターズ・インベストメンツ・リミテツド (80)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/000492
【国際公開番号】WO2005/070089
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(504438255)ウオーターズ・インベストメンツ・リミテツド (80)
【Fターム(参考)】
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