説明

質量分析によってエストラジオールを検出するための方法

質量分析を用いてサンプル中のエストラジオールの量を決定する方法が提供される。この方法は一般には、サンプル中のエストラジオールをイオン化する工程と、このイオンの量を検出および定量してこのサンプル中のエストラジオールの量を決定する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エストラジオールの検出に関する。特定の局面では、本発明は、エストラジオールを質量分析によって検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景の以下の説明は、本発明を理解するのにおける単なる補助として提供され、本発明の先行技術を記載または構成すると認めるものではない。
【0003】
エストラジオール[17β−エストラジオールまたはエストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17−ジオール,(17−β)]またはE2は、272.38ダルトンの分子量を有するC18ステロイドホルモンである。これは「女性(雌性)」ホルモン(または男性(雄性)に存在する)として表される性ホルモンであって、エストロン(E1)およびエストリオール(E3)を含む内因性ステロイドの群のうち最も強力なエストロゲンである。女性では、主に卵巣がエストラジオールを産生し、これには副腎による二次産物および脂肪組織でのステロイド前駆体のエストロゲンへの変換を伴う。エストラジオールは、乳房および生殖上皮の増殖、ならびに二次的な性的特徴の発達を担う。正常なレベルのエストラジオールは、適切な排卵、受胎および妊娠をもたらし、加えて、女性での健常な骨構造の促進、およびコレステロールレベルの調節をもたらす。男性では、精巣および副腎が、エストラジオールの主な供給源である。エストラジオールはホルモンバランスおよび他の腺の機能に必要である。
【0004】
質量分析を用いて特定のエストラジオールイオンを検出するための方法は記載されている。例えば、非特許文献1;非特許文献2;および非特許文献3は、液体クロマトグラフィーおよび質量分析を用いて種々のエストラジオールイオンを検出するための方法を開示する。これらの方法は、質量分析による検出の前にエストラジオールを誘導体化する。液体クロマトグラフィー/質量分析によって、誘導体化されていないエストラジオールを検出するための方法は、非特許文献4;非特許文献5;および非特許文献6に開示される。ガスクロマトグラフィー/質量分析によってエストラジオールを検出するための方法は、非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;および非特許文献12に開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ネルソン・アール(Nelson R)ら、クリニカル・ケミストリー(Clinical Chemistry)2004,50(2):373〜84
【非特許文献2】メロン・ナスバーム・エス(Mellon−Nussbaum S)ら、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The Journal of Biological Chemistry)1982,257(10):5678〜5684
【非特許文献3】スー・エックス(Xu X)ら、ネイチャー・プロトコールズ(Nature Protocols)2007,2(6):1350〜1355
【非特許文献4】クオ・ティー(Guo T)ら、アーカイブス・オブ・パソロジー・アンド・ラボラトリー・メディシン(Archives of Pathology & Laboratory Medicine)2004,128:469〜475
【非特許文献5】サン・ワイ(Sun Y)ら、ザ・ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ソサイエティー・フォー・マス・スペクトロメトリー(The Journal of the American Society for Mass Spectrometry)2005,16(2):271〜279
【非特許文献6】ディアス・クルス・エス(Diaz−Cruz S)ら、ジャーナル・オブ・マス・スペクトロメトリー(Journal of Mass Spectrometry)2003,38:917〜923
【非特許文献7】ナハティガル・エル(Nachtigall L)ら、メノポーズ:ザ・ジャーナル・オブ・ザ・ノース・アメリカン・メノポーズ・ソサイエティ(Menopause: The Journal of the North American Menopause Society)2000,7(4):243〜250;
【非特許文献8】サンテン・アール(Santen R)ら、ステロイズ(Steroids)2007,72:666〜671;
【非特許文献9】ドルガン・ジェイ(Dorgan J)ら、ステロイズ(Steroids)2002,67:151〜158;
【非特許文献10】ビアンコット・ジー(Biancotto G)ら、ジャーナル・オブ・マス・スペクトロメトリー(Journal of Mass Spectrometry)2002,37(12):1266〜1271;
【非特許文献11】フェデニウク・アールダブリュ(Fedeniuk RW)ら、ジャーナル・オブ・クロマトグラフフィー・ビー・アナリティカル・テクノロジーズ・イン・ザ・バイオメディカル・アンド・ライフ・サイエンシーズ(Journal of Chromatography B Analytical technologies in the biomedical and life sciences)2004,802(2):307〜315;
【非特許文献12】ビドール・エス(Biddle S)ら、アナライティカル・ケミカ・アクタ(Analytica Chimica Acta)2007,586(1−2);115〜121
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タンデム型質量分析等の質量分析によってサンプル中のエストラジオールの量を検出するための方法を提供する。
【0007】
一局面では、試験サンプル中のエストラジオールの量を決定するための方法が提供される。この方法は以下を含むことができる:(a)試験サンプル中のエストラジオールを液体クロマトグラフィーによって精製する工程と;(b)この試験サンプル中のエストラジオールをイオン化する工程と;(c)このエストラジオールイオン(単数または複数)の量を質量分析によって検出する工程、およびこの検出されたエストラジオールイオン(単数または複数)の量をこの試験サンプル中のエストラジオールの量に対して関連付ける工程。この局面の特定の好ましい実施形態では、この方法の定量の限界は、80pg/mL以下であり;かつ好ましくは、エストラジオールは、質量分析前には誘導体化されない。いくつかの好ましい実施形態では、この方法は、エストラジオールの1つ以上の前駆イオンを生成する工程を含み、ここではこの前駆イオンの少なくとも1つが271.14±0.5または255.07±0.5の質量/電荷比を有する。関連の好ましい実施形態では、この方法は、エストラジオール前駆イオンの1つ以上の断片イオンを生成する工程を含み、ここではこの断片イオンの少なくとも1つが183.10±0.5、159.20±0.5、145.10±0.5、または133.20±0.5の質量/電荷比を有し;好ましくは1つ以上の断片イオンは、183.10±0.5および133.20±0.5の質量/電荷比を有するイオンからなる群より選択される。この局面の特定の好ましい実施形態では、この試験サンプルは体液である。いくつかの好ましい実施形態では、この方法は、試験サンプル中に存在し得るタンパク質由来の遊離のエストラジオールに対して十分な量の試薬をこの試験サンプルに添加する工程を含み得る。関連の好ましい実施形態では、この方法は、試験サンプルを酸性化する工程;好ましくはイオン化の前に酸性化する工程;さらに好ましくは、精製の前に酸性化する工程;好ましくはギ酸を用いて酸性化する工程を含み得る。異なる好ましい実施形態では、この方法は、試験サンプル中に存在し得るタンパク質由来の遊離のエストラジオールに対して十分な量の塩をこの試験サンプルに添加する工程と;好ましくはイオン化の前に添加する工程;さらに好ましくは精製の前に添加する工程;好ましくは硫酸アンモニウムを添加する工程を含み得る。特に好ましい実施形態では、100mMの硫酸アンモニウムを試験サンプルに対して、この試験サンプル中での硫酸アンモニウムの最終濃度が約57mMに添加する。
【0008】
本明細書において用いる場合、別段言及しない限り、単数形「1つの、この(不定冠詞:a、an)」および「この、その(定冠詞:the)」は複数の言及を包含する。従って、例えば、「タンパク質」という言及は、複数のタンパク質分子を包含する。
【0009】
本明細書において用いる場合、「精製」または「精製すること」という用語は、目的の分析物(単数または複数)以外のサンプル由来の全ての物質を除去することを言うのではない。そうではなく、精製とは、目的の分析物の検出を妨害し得るサンプル中の他の成分に対して目的の1つ以上の分析物の量を富化する手順を指す。サンプルは本明細書では、1つ以上の妨害物質、例えば、選択されたエストラジオールの親イオンまたは娘イオンを質量分析によって検出することを妨げるであろう1つ以上の物質の除去を可能にする種々の手段によって精製される。
【0010】
本明細書において用いる場合、「試験サンプル」という用語は、エストラジオールを含み得る任意のサンプルを指す。本明細書において用いる場合、「体液」という用語は、個体の体液から単離され得る任意の液体を意味する。例えば、「体液」は、血液、血漿、血清、胆汁、唾液、尿、涙、汗などを包含し得る。
【0011】
本明細書において用いる場合、「誘導体化」という用語は、2つの分子を反応させて新規な分子を形成することを意味する。誘導体化剤としては、イソチオシアナート基、ジニトロ−フルオロフェニル基、ニトロフェノキシカルボニル基、および/またはフタルアルデヒド基などを挙げることができる。
【0012】
本明細書において用いる場合、「クロマトグラフィー」という用語は、液体または気体によって担持される化学的な混合物が、静止的な液相または固相の周囲または上を流れるにつれて、その化学物質の示差的な分布の結果として成分に分けられるプロセスを指す。
【0013】
本明細書において用いる場合、「液体クロマトグラフィー」または「LC」という用語は、微細に分けられた物質のカラムを通じて、またはキャピラリーの通路を通じて液体が均一に浸透するような液体溶液の1つ以上の成分の選択的な遅延のプロセスを意味する。この遅延の結果、固定相(単数または複数)に対してこの液体が動くにつれて、1つ以上の固定相とバルクの液体(すなわち、移動相)との間で混合物の成分の分布が生じる。「液体クロマトグラフィー」の例としては、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)が挙げられる。
【0014】
本明細書において用いる場合、「高速液体クロマトグラフィー」または「HPLC」という用語は、液体クロマトグラフィーであって、分離の程度が固定相、典型的には濃密に充填されたカラムを通じて圧力下で移動相を強制することによって増大される液体クロマトグラフィーを指す。
【0015】
本明細書において用いる場合、「高乱流液体クロマトグラフィー」または「HTLC」という用語は、分離を行うための基礎としてカラム充填を通じてアッセイされている物質の乱流を利用するクロマトグラフィーの形態を指す。HTLCは質量分析による分析の前に2つの不特定の薬物を含むサンプルの調製に適用されている。例えば、Zimmer et al.,J.Chromatogr.A 854:23〜35(1999)を参照のこと;また、さらにHTLCを説明している、米国特許第5,968,367号、同第5,919,368号、同第5,795,469号、および同第5,772,874号も参照のこと。当業者は、「乱流」を理解する。液体がゆっくりかつスムーズに流れる場合、その流れは「層流」と呼ばれる。例えば、HPLCカラムを通じて移動する低い流速の流れは層流である。層流では、液体の粒子の動きは、粒子が一般には直線で動くにつれて古くなっている。速い流速では、水の慣性は、液体の摩擦力および乱流の結果を上回る。不規則な境界と接触していない液体は、摩擦によって遅くなるかまたは不均一な表面によって偏向される境界を「追い越す(outruns)」。液体が乱れて流される場合、その液体は渦巻き(eddics)および渦(whirls)(または渦形(vortices))で流れ、ここではその流れが層流である場合よりも「のろのろ進む(drag)」。液体の流れが層流または乱流であるときを決定するのに役立つ多くの参考文献が利用可能である(例えば、Turbulent Flow Analysis:Measurement and Prediction,P.S. Bernard & J.M. Wallace,John Wiley & Sons,Inc.,(2000);An Introduction to Turbulent Flow,Jean Mathieu & Julian Scott,Cambridge University Press(2001))。
【0016】
本明細書において用いる場合、「ガスクロマトグラフィー」または「GC」という用語は、クロマトグラフィーであって、サンプル混合物が気化されて、液体または粒子状固体からなる固定相を含むカラムを通じて移動する搬送ガス(窒素またはヘリウムとして)の流れに注入され、その固定相の化合物の親和性に従ってその成分の化合物に分けられるクロマトグラフィーを指す。
【0017】
本明細書において用いる場合、「大粒子カラム(large particle column)」または「抽出カラム(extraction column)」という用語は、約35μmより大きい平均粒子直径を含むクロマトグラフィーカラムを指す。この文脈において用いる場合、「約」という用語は±10%を意味する。好ましい実施形態では、このカラムは、約60μmの直径の粒子を含む。
【0018】
本明細書において用いる場合、「分析カラム(analytical column)」という用語は、分析物の存在または量の決定を可能にするのに十分な、そのカラムから溶出するサンプル中の物質の分離を果たすために十分なクロマトグラフィープレートを有しているクロマトグラフィーカラムを指す。このようなカラムは「抽出カラム」と区別される場合が多く、これは、さらなる分析のために精製されたサンプルを得るために、保持されていない物質から保持された物質を分離または抽出するという一般的な目的を有する。この文脈で用いる場合、「約」という用語は±10%を意味する。好ましい実施形態では、この分析的カラムは、約4μmの直径の粒子を含む。
【0019】
本明細書において用いる場合、「オンライン」または「インライン」という用語は、例えば、「オンラインの自動的方式(on−line automated fashion)」または「オンライン抽出(on−line extraction)」で用いる場合、操作者の介入が必要なしで行われる手順を指す。対照的に、「オフライン」という用語は、本明細書において用いる場合、操作者の手動による介入を要する手順を指す。従って、サンプルを沈殿させ、次に上清を手動でオートサンプラーにロードする場合、その沈殿およびローディングの工程は、その後の工程からオフラインである。この方法の種々の実施形態では、1つ以上の工程をオンラインの自動的な方式で行ってもよい。
【0020】
本明細書において用いる場合、「質量分析」または「MS」という用語は、その質量によって化合物を特定するための分析技術を指す。MSとは、イオンの質量対電荷比、すなわち「m/z」に基づいてイオンをフィルタリング、検出および測定する方法を指す。MS技術は一般には(1)化合物をイオン化して荷電された化合物を形成する工程;および(2)荷電された化合物の分子量を検出して質量対電荷比(m/z)を算出する工程を含む。この化合物は、任意の適切な手段によってイオン化および検出され得る。「質量分析計」は一般には、イオン化装置およびイオン検出器を備える。一般には、目的の1つ以上の分子をイオン化し、そのイオンを引き続き、質量分析法の装置に導入し、ここで、磁場および電場の組み合わせに起因して、イオンは質量(「m」)および荷電(「z」)に依存する空間中の経路をたどる。例えば、「Mass Spectrometry From Surfaces」と題された米国特許第6,204,500号、「Methods and Apparatus for Tandem Mass Spectrometry」と題された同第6,107,623号、「DNA Diagnostics Based On Mass Spectrometry」と題された同第6,268,144号、「Surface−Enhanced Photolabile Attachment And Release For Desorption And Detection Of Analytes」と題された同第6,124,137号、Wright et al.,Prostate Cancer and Prostatic Diseases 2:264〜76(1999);ならびにMerchantおよびWeinberger,Electrophoresis 21:1164〜67(2000)を参照のこと。
【0021】
本明細書において用いる場合、「負のイオンモードで作動する」という用語は、負のイオンが生成され検出される質量分析法を指す。本明細書において用いる場合、「正のイオンモードで作動する」という用語は、正のイオンが生成され検出される質量分析法を指す。
【0022】
本明細書において用いる場合、「イオン化」または「イオン化する、イオン化工程(ionizing)」という用語は1つ以上の電子単位に等しい正味の電荷を有している分析物イオンを生成するプロセスを指す。負のイオンとは、1つ以上の電子単位の正味の負の電荷を有しているイオンであるが、正のイオンとは、1つ以上の電子単位の正味の正の電荷を有しているイオンである。
【0023】
本明細書において用いる場合、「電子イオン化」または「EI」という用語は、気相または蒸気相中の目的の分析物が電子の流れと相互作用する方法を指す。分析物との電子の衝突は分析物イオンを生じ、これが次に質量分析技術に供され得る。
【0024】
本明細書において用いる場合、「化学的イオン化」または「CI」という用語は、試薬ガス(例えば、アンモニア)が電子衝突に供され、分析物イオンが試薬ガスイオンおよび分析物分子の相互作用によって形成される方法を指す。
【0025】
本明細書において用いる場合、「高速原子衝撃」または「FAB」という用語は、高エネルギー原子のビーム(しばしばXeまたはAr)が不揮発性サンプルに衝突し、サンプル中に含まれる分子を脱着およびイオン化する方法を指す。試験サンプルを、グリセロール、チオグリセロール、m−ニトロベンジルアルコール、18−クラウン−6クラウンエーテル、2−ニトロフェニルオクチルエーテル、スルホラン、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミンなどの粘性の液体マトリックスに溶解する。化合物またはサンプルについて適切なマトリックスの選択は経験的なプロセスである。
【0026】
本明細書において用いる場合、「マトリックス支援レーザー脱離イオン化」または「MALDI」という用語は、不揮発性のサンプルがレーザー照射に曝され、レーザー照射がサンプル中の分析物を、光イオン化、プロトン化、脱プロトンおよびクラスター崩壊を含む種々のイオン化経路によって脱着およびイオン化する方法を指す。MALDIについては、サンプルをエネルギー吸着マトリックスと混合して、これによって分析物分子の脱着を容易にする。
【0027】
本明細書において用いる場合、「表面増強レーザー脱離イオン化」または「SELDI」という用語は、不揮発性サンプルがレーザー照射に曝され、レーザー照射がサンプル中の分析物を、光イオン化、プロトン化、脱プロトンおよびクラスター崩壊を含む種々のイオン化経路によって脱着およびイオン化するという別の方法を指す。SELDIについては、サンプルは典型的には目的の1つ以上の分析物を優先的に保持する表面に結合される。MALDIにおいては、このプロセスはエネルギー吸着物質を使用してイオン化を容易にしてもよい。
【0028】
本明細書において用いる場合、「エレクトロスプレーイオン化」または「ESI」という用語は、溶液が短い長さの毛細管にそって通され、その終わりに高い正または負の電圧が印加される方法を指す。この管の終わりに達する溶液は、溶媒蒸気中の溶液の極めて小さい液滴のジェットまたはスプレー中に気化(噴霧)される。この液滴のミストは蒸発室(エバポレーション・チャンバ)を通って流れ、この蒸発室は、縮合を妨げかつ溶媒を蒸発させるためにわずかに加熱される。この液滴は小さくなるので、電気的表面電荷密度は、同様の電荷の間の自然な反発がイオンおよび放出されるべき中性の分子を生じる時点まで増大する。
【0029】
本明細書において用いる場合、「大気圧化学イオン化」または「APCI」という用語は、ESIと同様の質量分析方法を指す;しかし、APCIは、大気圧でプラズマ内に生じるイオン−分子反応によって、イオンを生じる。このプラズマはスプレーの毛細管と対極との間の電荷によって維持される。次いで、イオンは典型的には、1セットの示差的にポンピングされたスキマー・ステージの使用によって質量分析器の中に抽出される。乾燥および予備加熱されたN2ガスの逆流を用いて、溶媒の除去を改善してもよい。APCI中の気相イオン化は、極性の低い種を分析するためにはESIよりも有効であり得る。
【0030】
本明細書において用いる場合、「大気圧光イオン化」または「APPI」という用語は、質量分析の形態であって、分子Mの光イオン化の機構が、光吸収および電子入射であって分子イオンM+を形成する形態を指す。光エネルギーは典型的にはイオン化電位のすぐ上なので、分子イオンは解離を受けにくい。多くの場合、クロマトグラフィーの必要なしにサンプルを分析することが可能であり、従って時間および費用がかなり節約される。水蒸気またはプロトン性溶媒の存在下では、分子イオンは、Hを抽出してMH+を形成し得る。これは、Mが高いプロトン親和力を有する場合に生じる傾向である。これは、定量の精度には影響しない。なぜならM+およびMH+の合計は、一定であるからである。プロトン性溶媒における薬物化合物は、通常MH+として観察されるが、非極性化合物、例えば、ナフタレンまたはテストステロンは通常は、M+を形成する。Robb,D.B.,Covey,T.R.およびBruins,A.P.(2000):例えば、Robb et al.,Atmospheric pressure photoionization:An ionization method for liquid chromatography−mass spectrometry.Anal.Chem.72(15):3653〜3659を参照のこと。
【0031】
本明細書において用いる場合、「誘導性結合プラズマ(inductively coupled plasma)」または「ICP」という用語は、サンプルが、ほとんどの元素が微粒化およびイオン化されるような十分に高い温度で部分的にイオン化されたガスと相互作用する方法を指す。
【0032】
本明細書において用いる場合、「電界脱離」という用語は、不揮発性の試験サンプルをイオン化表面に置き、強電界を用いて分析物イオンを生成する方法を指す。
【0033】
本明細書において用いる場合、「脱離」という用語は、表面からの分析物の除去、および/または気相への分析物の進入を指す。
【0034】
本明細書において用いる場合、「数量化の限界」、「定量化の限界」または「LOQ」という用語は、測定が定量的に意味をなすポイントを指す。このLOQでの分析物の反応は、識別可能、別個、かつ再現性であって、20%の正確性および80%〜120%の精度を有する。
【0035】
本明細書において用いる場合、「検出限界」または「LOD」という用語は、測定された値の方がその値に伴う不確実性よりも大きいポイントである。LODは、ゼロ濃度から2標準偏差(SD)として適宜規定される。
【0036】
本明細書において用いる場合、体液サンプル中のエストラジオールの「量」とは一般には、体液の容積中で検出可能なエストラジオールの量を反映している絶対値を指す。しかし、ある量はまた、別のエストラジオール量に比較した相対量を意図する。例えば、体液中のエストラジオールの量は、正常に存在するエストラジオールのコントロールまたは正常なレベルよりも大きい量であってもよい。
【0037】
第二の局面では、体液サンプル中のエストラジオールの量をタンデム質量分析によって決定するための方法が提供され、この方法は以下を含む:(a)体液サンプル中のエストラジオールを液体クロマトグラフィーによって精製する工程と;(b)255.07±0.5の質量/電荷比を有しているエストラジオールの前駆イオンを生成する工程と;(c)前駆イオンの1つ以上の断片イオンを生成する工程であって、その断片イオンの少なくとも1つが133.20±0.5の質量/電荷比を有する工程と;(d)工程(b)もしくは(c)またはその両方で生成された1つ以上のイオンの量を検出し、この検出されたイオンを体液サンプル中のエストラジオールの量に対して関連付ける工程。このような好ましい実施形態では、この方法の定量限界は、80pg/mL以下である。他の好ましい実施形態では、エストラジオールは、質量分析の前に誘導体化されない。特定の好ましい実施形態では、この方法は、エストラジオール前駆イオンの1つ以上の断片イオンを生成する工程をさらに含んでいてもよく、ここでこの断片イオンの少なくとも1つが159.20±0.5の質量/電荷比を有する。いくつかの好ましい実施形態では、この方法は、体液サンプル中に存在し得るタンパク質由来の遊離エストラジオールに対して十分な量で体液サンプルに対して試薬を添加する工程を含み得る。関連の好ましい実施形態では、この方法は、体液サンプルを酸性化する工程;好ましくはイオン化の前に酸性化する工程;さらに好ましくは精製の前に酸性化する工程;好ましくはギ酸を用いて酸性化する工程を含み得る。
【0038】
第三の局面では、体液サンプル中のエストラジオールの量をタンデム型質量分析によって決定するための方法が提供され、この方法は以下を含む:(a)体液サンプル中のエストラジオールを液体クロマトグラフィーによって精製する工程と;(b)271.14±0.5の質量/電荷比を有しているエストラジオールの前駆イオンを生成する工程と;(c)前駆イオンの1つ以上の断片イオンを生成する工程であって、その断片イオンの少なくとも1つが183.10±0.5の質量/電荷比を有する工程と;(d)工程(b)もしくは(c)またはその両方で生成された1つ以上のイオンの量を検出し、この検出されたイオンを体液サンプル中のエストラジオールの量に対して関連付ける工程。このような好ましい実施形態では、この方法の定量限界は、80pg/mL以下である。他の好ましい実施形態では、エストラジオールは、質量分析の前に誘導体化されない。特定の好ましい実施形態では、この方法は、エストラジオール前駆イオンの1つ以上の断片イオンを生成する工程をさらに含んでいてもよく、ここでこの断片イオンの少なくとも1つが145.10±0.5の質量/電荷比を有する。いくつかの好ましい実施形態では、この方法は、体液サンプル中に存在し得るタンパク質由来の遊離エストラジオールに対して十分な量でこの体液サンプルに対して試薬を添加する工程を含み得る。関連の好ましい実施形態では、この方法は、体液サンプルに対して塩試薬を添加する工程;好ましくはイオン化の前に添加する工程;さらに好ましくは精製の前に添加する工程;好ましくは硫酸アンモニウムを添加する工程を含み得る。特に好ましい実施形態では、100mMの硫酸アンモニウムを体液サンプルに対して、その体液サンプル中で約57mMの硫酸アンモニウムという最終濃度に添加する。
【0039】
第四の局面では、試験サンプル中のエストラジオールの量を決定するための方法が提供され、この方法は以下を含む:(a)試験サンプル中に存在し得るタンパク質由来の遊離のエストラジオールに対して十分な量で試薬を用いて試験サンプルを酸性化する工程と;(b)この試験サンプル中のエストラジオールを液体クロマトグラフィーによって精製する工程と;(c)この試験サンプル中のエストラジオールをイオン化して、タンデム型質量分析によって検出可能な1つ以上のイオンを生成する工程と;(d)このエストラジオールイオン(単数または複数)の量をタンデム型質量分析によって正のイオンモードで検出して、この検出されたエストラジオールイオン(単数または複数)の量を試験サンプル中のエストラジオールの量に対して関連付ける工程。特定の好ましい実施形態では、この試験サンプルは体液である。いくつかの好ましい実施形態では、この方法の定量限界は80pg/mL以下である。他の好ましい実施形態では、エストラジオールは、質量分析前に誘導体化されない。いくつかの好ましい実施形態では、この方法は、エストラジオールの1つ以上の前駆イオンを生成する工程を含み、ここで前駆イオンの少なくとも1つは、255.07±0.5の質量/電荷比を有する。関連の好ましい実施形態では、この方法は、エストラジオール前駆イオンの1つ以上の断片イオンを生成する工程を含みてもよく、ここではこの断片イオンの少なくとも1つが159.20±0.5または133.20±0.5の質量/電荷比を有する。いくつかの好ましい実施形態では、この方法は、イオン化の前に試験サンプルを酸性化する工程;より好ましくは精製の前に酸性化する工程;好ましくはギ酸を用いて酸性化する工程を含んでいてもよい。
【0040】
第五の局面では、試験サンプル中のエストラジオールの量を決定するための方法が提供され、この方法は以下を含む:(a)試験サンプル中に存在し得るタンパク質由来の遊離エストラジオールに対して十分な量でこの試験サンプルに試薬を添加する工程と;(b)この試験サンプル中のエストラジオールを液体クロマトグラフィーによって精製する工程と;(c)この試験サンプル中の精製されたエストラジオールをイオン化して、タンデム型質量分析によって検出可能な1つ以上のイオンを生成する工程と;(d)このエストラジオールイオン(単数または複数)の量をタンデム型質量分析によって負のイオンモードで検出して、この検出されたエストラジオールイオン(単数または複数)の量をこの試験サンプル中のエストラジオールの量に対して関連付ける工程。特定の好ましい実施形態では、この試験サンプルは体液である。いくつかの好ましい実施形態では、この方法の定量限界は80pg/mL以下である。他の好ましい実施形態では、エストラジオールは、質量分析前に誘導体化されない。いくつかの好ましい実施形態では、この方法は、エストラジオールの1つ以上の前駆イオンを生成する工程を含み、ここで前駆イオンの少なくとも1つは、271.14±0.5の質量/電荷比を有する。関連の好ましい実施形態では、この方法は、エストラジオール前駆イオンの1つ以上の断片イオンを生成する工程を含みてもよく、ここではこの断片イオンの少なくとも1つが183.10±0.5または145.10±0.5の質量/電荷比を有する。他の好ましい実施形態では、この方法は、試験サンプルに対して塩試薬を添加する工程;好ましくはイオン化の前に添加する工程;さらに好ましくは精製の前に添加する工程;好ましくは硫酸アンモニウムを添加する工程を含んでいてもよい。特に好ましい実施形態では、100mMの硫酸アンモニウムを試験サンプルに対して、この試験サンプル中で約57mMの硫酸アンモニウムという最終濃度に添加する。
【0041】
いくつかの好ましい実施形態では、エストラジオールは、質量分析の前に誘導体化されてもよいが、特定の好ましい実施形態では;サンプルの調製は、誘導体化の使用を排除する。
【0042】
上記の局面の特定の好ましい実施形態では、液体クロマトグラフィーは、HTLCおよびHPLCを用いて行われ、好ましくはHTLCはHPLCと組み合わせて用いられるが、他の方法が用いられてもよく、これには、例えば、タンパク質沈殿およびHPLCと組み合わせた精製が挙げられる。
【0043】
好ましい実施形態は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を、単独で、または1つ以上の精製方法、例えば、HTLCまたはタンパク質沈殿と組み合わせて利用して、サンプル中のエストラジオールを精製する。
【0044】
本明細書に開示される方法の特定の好ましい実施形態では、質量分析は負のイオンモードで行われる。あるいは、質量分析は正のイオンモードで行われる。特定の好ましい実施形態では、エストラジオールは、正および負の両方のイオンモードを用いて測定される。特定の好ましい実施形態では、エストラジオールはAPCIまたはESIを正または負のいずれかのモードで用いて測定される。
【0045】
上記の局面の好ましい実施形態では、体液サンプル中に存在するグルクロン酸化エストラジオールおよび非グルクロン酸化エストラジオールの両方が検出および測定される。
【0046】
好ましい実施形態では、質量分析計で検出可能なエストラジオールは、271.14±0.5、255.07±0.5、183.10±0.5、159.20±0.5、145.10±0.5、および133.20±0.5の質量/電荷比(m/z)を有するイオンからなる群より選択され;この後者4つは、前駆イオンの断片イオンである。特定の好ましい実施形態では、この前駆イオンは、271.14±0.5または255.07±0.5の質量/電荷比を有し、この断片イオンは183.10±0.5または133.20±0.5の質量/電荷比を有する。
【0047】
好ましい実施形態では、別々に検出可能な内部エストラジオール標準がサンプル中に提供され、この量もサンプル中で決定される。これらの実施形態では、サンプルに存在する内因性のエストラジオールおよび内部標準の全てまたは両方の一部をイオン化して、質量分析で検出可能な複数のイオンを生成し、各々から生成される1つ以上のイオンが質量分析によって検出される。
【0048】
好ましい内部エストラジオール標準は、2,4,16,16,17−d5エストラジオールである。好ましい実施形態では、質量分析計で検出可能な内部エストラジオール標準イオンは、276.15±0.5、260.10±0.5、187.10±0.5、161.10±0.5、147.10±0.5、および135.10±0.5の質量/電荷比を有するイオンからなる群より選択される。特に好ましい実施形態では、内部エストラジオール標準の前駆イオンは、276.15±0.5および260.10±0.5の質量/電荷比を有しているイオンからなる群より選択され;かつ1つ以上の断片イオンは、187.10±0.5、161.10±0.5、147.10±0.5、および135.10±0.5の質量/電荷比を有しているイオンからなる群より選択される。
【0049】
好ましい実施形態では、このエストラジオールイオンの存在または量を、2,4,16,16,17−d5エストラジオールなどの参照に対して比較することによって試験サンプル中のエストラジオールの存在または量に関連付ける。
【0050】
一実施形態では、この方法は、液体クロマトグラフィーと質量分析との組み合わせに関する。好ましい実施形態では、この液体クロマトグラフィーはHPLCである。好ましい実施形態は、HPLCを単独で、または例えば、HTLCもしくはタンパク質精製などの1つ以上の精製方法と組み合わせて利用して、サンプル中のエストラジオールを精製する。別の好ましい実施形態では、この質量分析はタンデム型質量分析(MS/MS)である。
【0051】
本明細書に開示される局面の特定の好ましい実施形態では、エストラジオールの定量の限界(LOQ)は、80pg/mL以下;好ましくは75pg/mL以下;好ましくは50pg/mL以下;好ましくは25pg/mL以下;好ましくは10pg/mL以下;好ましくは5pg/mL以下;好ましくは4.5pg/mL以下;好ましくは4pg/mL以下;好ましくは3.5pg/mL以下;好ましくは3pg/mL以下;好ましくは2.5pg/mL以下;好ましくは2pg/mLである。
【0052】
「約、およそ、ほぼ(about)」という用語は、イオンの質量の測定を含んでいない定量的な測定に関して本明細書で用いられる場合、示される値プラスマイナス10%を指す。質量分析装置は、所定の分析物の量を決定するのにわずかに変化し得る。「約」という用語は、イオンの量またはイオンの質量/電荷比の文脈では+/−0.5の原子量単位を指す。
【0053】
上記の本発明の要約は、限定されるものではなく、本発明の他の特徴および利点は本発明の以下の詳細な説明から、および特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】LC−MS/MSアッセイを用いる連続希釈したストックサンプル中のエストラジオールの定量の直線性を示す。詳細は実施例6に記載される。
【発明を実施するための形態】
【0055】
試験サンプル中のエストラジオールを検出および定量する方法が開示される。この方法は、液体クロマトグラフィー(LC)、最も好ましくはHTLCを、HPLCと組み合わせて利用して、選択された分析物の最初の精製を行い、そしてこの精製と質量分析(MS)の固有の方法とを組み合わせて、これによって試験サンプル中のエストラジオールを検出および定量するための高速アッセイシステムを提供する。好ましい実施形態は特に、大規模の臨床実験室への適用によく適している。特異性が向上しており、かつ他のエストラジオールアッセイで必要とされるよりも少ない時間と少ないサンプル調製とで達成される、エストラジオールの方法が提供される。
【0056】
好ましい実施形態では、試験サンプル中のエストラジオールの検出限界(LOD)は、80pg/mL以下;好ましくは75pg/mL以下;好ましくは50pg/mL以下;好ましくは25pg/mL以下;好ましくは10pg/mL以下;好ましくは5pg/mL以下;好ましくは4.5pg/mL以下;好ましくは4pg/mL以下;好ましくは3.5pg/mL以下;好ましくは3pg/mL以下;好ましくは2.5pg/mL以下;好ましくは2pg/mLである。
【0057】
適切な試験サンプルとしては、目的の分析物を含み得る任意の試験サンプルが挙げられる。例えば、合成エストラジオールの製造の間に得られるサンプルを分析して、製造プロセスの組成物および収率を決定してもよい。いくつかの好ましい実施形態では、サンプルは生物学的サンプル;すなわち、任意の生物学的供給源、例えば、動物、細胞培養物、器官培養物などから得られるサンプルである。特定の好ましい実施形態では、サンプルは哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ウマなどから得られる。特に好ましい哺乳動物は霊長類、最も好ましくは男性または女性のヒトである。特に好ましいサンプルとしては血液、血漿、血清、毛髪、筋肉、尿、唾液、涙液、脳脊髄液、または他の組織サンプルが挙げられる。このようなサンプルは、例えば、患者;すなわち、疾患または病態の診断、予防または処置のための臨床状況に自らある生きている人、男性または女性から得てもよい。この試験サンプルは好ましくは、患者から得られる、例えば血清である。
【0058】
質量分析のためのサンプル調製
女性では、約1.3%のエストラジオールが遊離型で循環され、ここでその残りは性ホルモン結合グロブリン(SHBG)およびアルブミンに結合されている。エストラジオールは、SHBGに対して、高い親和性(約40%)で、またはアルブミンに対して低い親和性で結合する。
【0059】
サンプル中の他の成分(例えば、タンパク質)に対してエストラジオールを富化するために用いられ得る方法としては、例えば、濾過、遠心分離、薄層クロマトグラフィー(TLC)、電気泳動、例えば、キャピラリー電気泳動、アフィニティ分離、例えば、イムノアフィニティー分離、抽出方法、例えば、酢酸エチル抽出およびメタノール抽出、ならびにカオトロピック剤の使用または上記の任意の組み合わせなどが挙げられる。
【0060】
種々の方法を用いて、サンプル中のエストラジオールの総量(例えば、遊離のエストラジオールおよびタンパク質に結合したエストラジオール)に対して分析が関連し得るように、クロマトグラフィーおよびまたはMSのサンプル分析の前にエストラジオールとタンパク質との間の相互作用を破壊してもよい。タンパク質沈殿は、試験サンプル、特に生物学的試験サンプル、例えば、血清または血漿を調製する1つの好ましい方法である。このようなタンパク質精製の方法は、当該分野で周知であり、例えば、Polson et al.,Journal of Chromatography B 785:263〜275(2003)は、この方法での使用に適切なタンパク質沈殿技術を記載している。タンパク質沈殿を用いて、上清にエストラジオールを残したままサンプルからほとんどのタンパク質を除去することができる。サンプルを遠心分離して、沈殿したタンパク質から液体上清を分離してもよい。次いで、得られた上清を液体クロマトグラフィーおよび引き続く質量分析的な分析にあてはめてもよい。特定の実施形態では、このタンパク質沈殿、例えば、アセトニトリルタンパク質沈殿などの使用によって、HPLCおよび質量分析の前の高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)または他のオンライン抽出の必要性が省略される。このような実施形態によれば、この方法は、(1)目的のサンプルのタンパク質沈殿を行う工程;および(2)オンライン抽出または高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)を用いることなくHPLC−質量分析計に上清を直接ロードする工程を含む。
【0061】
他の好ましい実施形態では、エストラジオールは、タンパク質の沈殿をする必要なしにタンパク質から遊離され得る。例えば、ギ酸または40%エタノールが含有される水をサンプルに添加して、タンパク質とエストラジオールとの間の相互作用を破壊してもよい。あるいは、硫酸アンモニウムをサンプルに添加して、担体タンパク質を沈殿させることなく担体タンパク質とエストラジオールとの間のイオン性相互作用を破壊してもよい。
【0062】
いくつかの好ましい実施形態では、HTLCを、単独で、または1つ以上の精製方法と組み合わせて用いて、質量分析の前にエストラジオールを精製してもよい。このような実施形態では、サンプルは、分析物を捕獲するHTLC抽出カートリッジを用いて抽出してもよく、次いでイオン化の前に第二のHTLCカラム上で、または分析的HPLCカラム上に溶出およびクロマトグラフィーされてもよい。これらのクロマトグラフィー手順を含む工程は、自動的な形式で連結することが可能であるので、分析物の精製の間の操作者の関与についての要件を最小限にすることができる。この特徴によって、時間および費用の節約をもたらし、かつ操作者の過ちの機会を排除することができる。
【0063】
HTLCカラムおよび方法によって提供されるような乱流は、質量移行の速度を向上させ、分離特徴を改善することができると考えられる。HTLCカラムは、剛体粒子を含む充填カラムを通じた高いクロマトグラフィー流速の手段によって成分を分ける。高い流速(例えば、3〜5mL/分)を使用することによって、乱流がカラムで起こり、これが目的の固定相と分析物(単数または複数)との間のほぼ完全な相互作用を生じる。HTLCカラムを用いる利点は、生体液マトリックスと関連して構築された高分子が、高い分子量種は乱流条件下では保持されないために避けられるということである。1つの手順で複数の分離を組み合わせるHTLC方法によって、長時間のサンプル調製の必要性が少なくなり、有意に早い速度で操作される。このような方法はまた、層流(HPLC)クロマトグラフィーよりも優れた分離能力を達成する。HTLCによって、生物学的サンプル(血漿、尿など)の直接注入が可能になる。変性したタンパク質および他の生体の砕片が分離カラムを急速に詰まらせるため、直接注入は、クロマトグラフィーの伝統的な形態では達成が困難である。HTLCはまた、1mL未満、好ましくは0.5mL未満、好ましくは0.2mL未満、好ましくは0.1mLというごく少量のサンプルでも可能である。
【0064】
質量分析による分析の前にサンプル調製にかけるHTLCの例はいずれかに記載されている。例えば、Zimmer et al.,J.Chromatogr.A 854:23〜35(1999)を参照のこと;また米国特許第5,968,367号;同第5,919,368号;同第5,795,469号;および同第5,772,874号も参照のこと。この方法の特定の実施形態では、サンプルをHTLCカラムにロードする前に上記のようなタンパク質沈殿に供する;別の好ましい実施形態では、このサンプルを、タンパク質沈殿にかけることなく、HTLCに直接ロードしてもよい。好ましくは、HTLCは、HPLCと組み合わせて用いて、サンプルをタンパク質沈殿にかけることなく、エストラジオールを抽出および精製する。関連の好ましい実施形態では、この精製工程は、(i)このサンプルをHTLC抽出カラムに加える工程、(ii)エストラジオールがカラムに保持される条件下でHTLC抽出カラムを洗浄する工程、(iii)HTLC抽出カラムから保持されたエストラジオールを溶出する工程、(iv)この保持された物質を分析カラムに加える工程、および(v)分析カラムから精製されたエストラジオールを溶出する工程を含む。HTLC抽出カラムは好ましくは、大粒子のカラムである。種々の実施形態では、この方法の1つ以上の工程は、オンラインで、自動的な方式で行ってもよい。例えば、一実施形態では、工程(i)〜(v)をオンラインで自動方式で行う。別法では、イオン化および検出の工程はオンラインで工程(i)−(v)に従って行う。
【0065】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の液体クロマトグラフィー(LC)は、比較的遅い、層流の技術に依拠する。伝統的なHPLC分析は、カラム充填に依拠し、ここではカラムを通じたサンプルの層流がサンプルからの目的の分析物の分離の基礎である。当業者は、このようなカラムでの分離が拡散性プロセスであることを理解するであろう。HPLCは生物学的サンプル中の化合物の分離に首尾よく適用されているが、質量分析(MS)での分離および引き続く分析の前には大量のサンプル調製が必要であり、そのせいでこの技術は労働集約的になっている。さらに、ほとんどのHPLCシステムは質量分析計をその最大能力までは利用せず、それによって1つのHPLCシステムだけを単一のMS装置に接続することになり、その結果多数のアッセイを行うためには長時間が必要となる。
【0066】
質量分析前にサンプルを浄化するためのHPLCの使用に関して種々の方法が記載されている。例えば、Taylor et al.,Therapeutic Drug Monitoring 22:608〜12(2000);およびSalm et al.,Clin.Therapeutics 22 Supl.B:B71−B85(2000)を参照のこと。
【0067】
当業者は、エストラジオールでの使用に適切であるHPLC装置およびカラムを選択できる。クロマトグラフィーカラムは典型的には、化学部分の分離(すなわち、断片化)を容易にする媒体(すなわち、充填材料)を含む。この媒体は、微細な粒子を含む場合がある。この粒子は、種々の化学的部分と相互作用してその化学的部分の分離を促進する結合された表面を備える。適切な結合された表面の1つは、アルキル結合した表面などの疎水性結合した表面である。アルキル結合した表面は、C−4、C−8、C−12またはC−18結合したアルキル基、好ましくはC−18結合した基を含み得る。クロマトグラフィーカラムは、サンプルを受容するための入口ポート、および分画されたサンプルを含む溶出液を廃棄するための出口ポートを備える。一実施形態では、サンプル(または精製前のサンプル)を入口ポートでカラムに加え、溶媒または溶媒混合物で溶出し、出口ポートで排出する。異なる溶媒モードを目的の分析物を溶出するために選択してもよい。例えば、液体クロマトグラフィーは、勾配モード、アイソクラチックモード、または多型(すなわち、混合)モードを用いて行ってもよい。クロマトグラフィーの間、物質の分離は、溶出液(「移動相」としても公知)の選択、溶出モード、勾配条件、温度などのような変数によって達成される。
【0068】
特定の実施形態では、分析物は、目的の分析物がカラム充填物質によって可逆性に保持されるが、1つ以上の他の物質が保持されない条件下でカラムにサンプルを加えることによって精製され得る。これらの実施形態では、目的の分析物がカラムによって保持される第一の移動相条件を使用してもよく、そして第二の移動相条件を引き続き使用して、一旦、保持されていない物質が洗い流されれば、カラムから保持された物質を除去してもよい。あるいは、分析物は、目的の分析物が1つ以上の他の物質に比べて種々の速度で溶出する移動相条件下でカラムにサンプルを加えることによって精製され得る。このような手順によって、サンプルの1つ以上の他の成分に対して目的の1つ以上の分析物の量が富化され得る。
【0069】
1つの好ましい実施形態では、HTLCの後に、疎水性カラムクロマトグラフィーシステムでのHPLCを続けてもよい。特定の好ましい実施形態では、Cohesive TechnologiesのTurboFlow Cyclone P(登録商標)というポリマーベースのカラム(60μmの粒子サイズ、50×1.0mmのカラム寸法、100Åの細孔サイズ)を用いる。関連の好ましい実施形態では、親水性のエンドキャップを備える、Phenomenex IncのSynergi Polar−RP(登録商標)エーテル連結フェニル、分析カラム(4μmの粒子サイズ、150×2.0mmのカラム寸法、80Åの細孔サイズ)を用いる。特定の好ましい実施形態では、HTLCおよびHPLCは、移動相としてHPLC等級の超純水および100%mpメタノールを用いて行う。
【0070】
バルブおよびコネクター配管を注意深く選択することによって、なんら手動の工程を要することなく物質をあるところから次に通過させるように、2つ以上のクロマトグラフィーカラムを必要に応じて連結することができる。好ましい実施形態では、バルブおよび配管の選択を事前プログラムされたコンピューターによって制御して必要な工程を行う。最も好ましくは、クロマトグラフィーシステムもこのようなオンラインの方式で検出システム、例えばMSシステムに接続する。従って、操作者は、オートサンプラーにサンプルのトレイを置いてもよく、残りの操作はコンピューター制御下で行い、選択された全てのサンプルの精製および分析を行う。
【0071】
特定の好ましい実施形態では、試験サンプル中に存在するエストラジオールをイオン化の前に精製してもよい。特に好ましい実施形態では、クロマトグラフィーはガスクロマトグラフィーではない。好ましくは、この方法は、質量分析の前にガスクロマトグラフィーにエストラジオールをかけることなく行う。
【0072】
質量分析による検出および定量
種々の実施形態では、試験サンプル中に存在するエストラジオールを、当業者に公知の任意の方法によってイオン化することができる。質量分析は、質量分析計を用いて行い、質量分析計には、さらなる分析のために断片化されたサンプルをイオン化し、荷電された分子を生成するためのイオン源を備える。例えば、サンプルのイオン化は、電子イオン化、化学的イオン化、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、光子イオン化、大気圧化学イオン化(APCI)、光イオン化、大気圧光イオン化(APPI)、高速原子衝撃(FAB)、液体二次イオン化(LSI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、フィールド・イオン化、フィールド・デソープション、熱スプレー/プラズマスプレーイオン化、表面増強レーザー脱離イオン化(SELDI)、誘導結合プラズマ(ICP)および粒子ビームイオン化によって行ってもよい。当業者は、イオン化方法の選択は、測定されるべき分析物、サンプルの種類、検出器の種類、正対負のモードの選択などに基づいて決定できることを理解するであろう。
【0073】
好ましい実施形態では、エストラジオールはエレクトロスプレーイオン化(ESI)によって正または負のモードでイオン化される。関連の好ましい実施形態では、エストラジオールイオンは、ガス状態であり、不活性な衝突ガスはアルゴンまたは窒素である。別の好ましい実施形態では、エストラジオールを大気圧化学イオン化(APCI)によって正または負のモードでイオン化する。
【0074】
サンプルをイオン化した後、それによって生成された正に荷電されたイオンまたは負に荷電されたイオンを分析して質量対電荷比を決定することができる。質量対電荷比を決定するための適切な分析装置としては、四重極アナライザー(analyzer)、イオントラップアナライザー、および飛行時間アナライザーが挙げられる。このイオンはいくつかの検出モードを用いて検出され得る。例えば、選択されたイオンを検出してもよく(すなわち、選択性イオンモニタリングモード(selective ion monitoring mode)(SIM)を用いる)、あるいはイオンは、走査モード、例えば、多重反応モニタリング(multiple reaction monitoring)(MRM)または選択反応モニタリング(selected reaction monitoring)(SRM)を用いて検出してもよい。好ましくは、質量対電荷比は、四重極アナライザーを用いて決定される。例えば、「四重極(quadrupole)」または「四重極イオントラップ(quadrupole ion trap)」装置では、振動高周波電界中のイオンは電極間で印加されるDC電位、RFシグナルの振幅および質量/電荷比に対して比例する力を受ける。この電圧および振幅は、特定の質量/電荷比を有しているイオンのみが四重極の長さを移動するが、他の全てのイオンが偏向されるように選択され得る。従って、四重極装置は、「質量フィルター」として、および「質量検出器」として両方で、この装置に注入されたイオンのために作用し得る。
【0075】
当業者は、「タンデム型質量分析」または「MS/MS」を使用することによってMS技術の分解能を増強し得る。この技術では、目的の分子から生成された前駆イオン(親イオンとも呼ばれる)がMS装置中で濾過されてもよく、この前駆イオンが引き続き、断片化されて1つ以上の断片イオン(娘イオンまたは生成物イオンとも呼ばれる)を生じ、次にこれが第二のMS手順で分析される。前駆イオンの注意深い選択によって、特定の分析物によって生成されるイオンのみが断片化チャンバに渡され、ここで不活性ガスの原子と衝突して娘イオンを生じる。前駆イオンおよび断片イオンの両方が所定のセットのイオン化/断片化条件下で再現性の方式で産生されるので、MS/MS技術は、極めて強力な分析ツールをもたらすことができる。例えば、濾過/断片化の組み合わせを用いることによって妨害物質を排除することが可能で、特に、生体サンプルなどの複雑なサンプルでは有用であり得る。
【0076】
質量分析計は典型的には、使用者にイオンスキャン(すなわち、所定の範囲にわたって特定の質量/電荷を有する各々のイオンの相対量(例えば、100〜1000amu))をもたらす。分析アッセイの結果、すなわち、質量スペクトルは、当該分野で公知の多数の方法によって元のサンプル中の分析物の量に対して関連付けられ得る。例えば、サンプリングおよび分析パラメーターが注意深く制御されていることを考慮すれば、所定のイオンの相対量を、元の分子の相対量から絶対量に変換する表と比較することができる。あるいは、分子標準はサンプルとともに流されてもよく、標準的な曲線をそれらの標準から生成したイオンに基づいて作製してもよい。このような標準曲線を用いて、所定のイオンの相対量を、もとの分子の絶対量に変換してもよい。特定の好ましい実施形態では、内部標準を用いて、エストラジオールの量を計算するための標準曲線を作製する。このような標準曲線を作製および用いる方法は、当該分野で周知であり、かつ当業者は適切な内部標準を選択できる。例えば、エストラジオールの同位体を内部標準として用いてもよく、特定の好ましい実施形態では、この標準はd5−エストラジオールである。イオンの量をもとの分子の量に対して関連付けるための多数の他の方法が当業者に周知である。
【0077】
この方法の1つ以上の工程を、自動的な機械を用いて行ってもよい。特定の実施形態では、1つ以上の精製工程をオンラインで行い、さらに好ましくは全ての精製および質量分析工程を、オンライン方式で行ってもよい。
【0078】
特定の実施形態では、例えば、MS/MSでは前駆イオンがさらなる断片化のために単離され、衝突活性化解離をさらなる検出のための断片イオンを生成するために用いる場合が多い。CADでは、前駆イオンは、不活性ガスとの衝突、および引く続く「単分子分解」と呼ばれるプロセスによる断片を通じてエネルギーを得る。十分なエネルギーが前駆イオン中に沈着されなければならず、その結果イオン内の特定の結合が振動エネルギーの増大によって破壊され得る。
【0079】
特に好ましい実施形態では、エストラジオールは、以下の様にMS/MSを用いて検出および/または定量される。そのサンプルを液体クロマトグラフィー、好ましくはHTLCに続いてHPLCに供し、このクロマトグラフィーのカラムからの液体溶媒の流れは、MS/MSアナライザーの加熱されたネブライザーの界面に入り、その溶媒/分析物の混合物がその界面の加熱配管中で蒸気に変換される。噴霧溶媒に含まれたその分析物(例えば、エストラジオール)をその界面のコロナ放電針でイオン化し、これによって噴霧された溶媒/分析物混合物に大きい電圧を印加する。このイオン、例えば、前駆イオンは、装置の開口部を通過して、第一の四重極に入る。四重極1および3(Q1およびQ3)は質量フィルターであって、それによって、その質量対電荷比(m/z)に基づいてイオン(すなわち、「前駆」イオンおよび「断片」イオン)を選択することが可能になる。四重極2(Q2)は衝突セルであり、ここでイオンが断片化される。質量分析計の第一の四重極(Q1)は、エストラジオールの質量対電荷比を有する分子を選択する。エストラジオールの正確な質量/電荷比を有する前駆イオンは衝突チャンバ(Q2)に通ることが可能であるが、いかなる他の質量/電荷比を有する望ましくないイオンも四重極の横で衝突して排除される。Q2に入る前駆イオンは中性のアルゴンガス分子および断片と衝突する。この過程は衝突活性化解離(CAD)と呼ばれる。生成された断片イオンは、四重極3(Q3)に通過し、ここでエストラジオールの断片イオンが選択されるが、他のイオンは排除される。
【0080】
この方法は、正または負のイオンモードのいずれかで行われるMS/MSを必要とする場合がある。当該分野で周知の標準的な方法を用いて、当業者は、四重極3(Q3)での選択のために用いられ得るエストラジオールの特定の前駆イオンの1つ以上の断片イオンを特定することができる。
【0081】
エストラジオールの前駆イオンがアルコールまたはアミン基を含む場合、前駆イオンの脱水または脱アミノをそれぞれ呈する断片イオンが共通して形成される。アルコール基を含む前駆イオンの場合、脱水によって形成されるこのような断片イオンは、前駆イオンからの1つ以上の水分子の損失によって生じる(すなわち、前駆イオンと断片イオンとの間の質量対電荷比における相違は1つの水分子の損失について約18、または2つの水分子の損失について約36などである)。アミン基を含む前駆イオンの場合、脱アミノによって形成されるこのような断片イオンは、1つ以上のアンモニア分子の損失によって生じる(すなわち、前駆イオンと断片イオンとの間の質量対電荷比における相違は、1つのアンモニア分子の損失について約17、または2つのアンモニア分子の損失について約34などである場合)。同様に、1つ以上のアルコールおよびアミン基を含む前駆イオンは共通して、1つ以上の水分子および/または1つ以上のアンモニア分子の損失を呈する断片イオンを形成する(すなわち、前駆イオンと断片イオンとの間の質量対電荷比の相違が1つの水分子の損失および1つのアンモニア分子の損失について約35である場合)。一般には、前駆イオンの脱水または脱アミノを呈する断片イオンは、特定の分析物について特定の断片イオンではない。従って、本発明の好ましい実施形態では、MS/MSは、前駆イオンからの1つ以上の水分子の損失および/または1つ以上のアンモニア分子の損失のみを呈するのでない、エストラジオールの少なくとも1つの断片イオンが検出されるように行われる。
【0082】
イオンは検出器と衝突するので、イオンは、デジタルシグナルに変換される電子のパルスを生じる。得られたデータを、コンピューターに中継して、これがイオン収集対時間のカウントをプロットする。得られた質量クロマトグラムは、伝統的なHPLC方法で作製したクロマトグラムと同様である。特定のイオンに相当するピーク下面積、またはこのようなピークの振幅を測定して、面積または振幅を目的の分析物(エストラジオール)の量と相関させる。特定の実施形態では、断片イオン(単数または複数)および/または前駆イオンの曲線下面積、またはピークの振幅を測定してエストラジオールの量を決定する。上記のとおり、所定のイオンの相対量を、内部分子標準、例えば、d5−エストラジオールの1つ以上のイオンのピークに基づいた較正標準曲線を用いて、元の分析物、例えば、エストラジオールの絶対量に変換してもよい。
【0083】
以下の実施例は、本発明の例示に役立つ。これらの実施例は、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0084】
サンプルおよび試薬の調製
血液は、添加物なしでVacutainer中に収集して、室温、18〜25℃で30分間凝固させた。全体的な溶血および/または脂肪血症を呈したサンプルは除外した。
【0085】
メタノール中の1mg/mLのエストラジオールのストック標準を調製して、メタノール中でさらに希釈して、1,000,000pg/mLのエストラジオール中間ストック標準を調製し、これを用いて10,000pg/mLの2つのエストラジオール作業標準を調製し、A標準についてはメタノールで、B標準については剥離血清で希釈した。
【0086】
重水素化メタノール(メチル−d1アルコール;Fisherのカタログ番号AC29913−1000または等価物)を用いて、1mg/mLのd5−エストラジオールストック標準(2,4,16,16,17−d5エストラジオール)を調製し、これを用いて1,000,000pg/mLの中間体ストック標準を重水素化メタノールで調製した。このd5−エストラジオール中間体ストック標準を用いて、DI水中で5000pg/mLの作業用d5−エストラジオール内部標準を調製した。1mLのd5−エストラジオール中間ストック標準を、200mLのメスフラスコでDI水を用いてその容積に希釈した。
【0087】
20%のギ酸溶液は、250mLのメスフラスコに50mLのギ酸(約98%純粋Aldrichのカタログ番号06440または等価物)を添加することによって調製し、これを超純粋HPLC等級の水で容積希釈した。DI水の100mMの硫酸アンモニウム溶液は、1000mLのメスフラスコに硫酸アンモニウム粉末(CAS# 7783−20−2 Fisherのカタログ番号A702−500)を13.2グラム添加することによって調製し、これをDI水で容積希釈した。
【0088】
各々の試行において用いる全てのキャリブレータ/標準物質を、剥離血清中の10,000pg/mLのエストラジオール標準の凍結アリコートの連続希釈から新鮮に毎週調製した。その標準は、最高濃度から最低まで調製し、ここでは各々の標準について10mLの最終の総容積であった。
【実施例2】
【0089】
液体クロマトグラフィーを用いる血清からのエストラジオールの抽出
液体クロマトグラフィー(LC)サンプルは、200μLの標準、コントロール、または患者サンプルを96−ウェルのプレートにピペッティングすることによって準備した。正のイオンモードでの試行の場合、300μLの20%ギ酸を、各々のウェルに約11%(V/V)の最終濃度で送達した。負のイオンモードで試行する場合、300μLの100mMの硫酸アンモニウム溶液を各々のウェルに対して、約57mMの硫酸アンモニウムの最終濃度で添加した。さらに、25μLの5000pg/mLのd5−エストラジオール標準を各々のウェルに添加した。このサンプルをLCの前に30〜45分間室温でインキュベートした。
【0090】
液体クロマトグラフィーは、Aria OS V 1.5またはそれより新しいソフトウェアを用いてCohesive Technologies Aria TX−4 HTLCシステムで行った。オートサンプラー洗浄溶液は、30%アセトニトリル、30%メタノール、30%イソプロパノール、および10%アセトン(v/v)を用いて調製した。
【0091】
HTLCシステムは、大きい粒子を充填されたTurboFlowカラム(Cohesive Technologiesの50×1.0mm、60μmのCyclone Pカラム)中に75μLの上記で調製したサンプルを自動的に注入した。サンプルを高速でロードして(5mL/分、ローディング試薬100%DI)、抽出カラムの内側に乱流を形成した。この乱流によって、カラム中の大きい粒子に対するエストラジオールの最適化結合、および残りのタンパク質および砕片の廃棄物への通過を確実にした。
【0092】
ローディング後、流れの方向を逆転して、ループ中で200μLの100%メタノールを用いて、サンプルを分析カラム(Phenomenex analytical column,Synergi Polar−RP(登録商標)150×2.0mm、4μmカラム)に溶出させた。二成分のHPLC勾配を分析カラムに加えて、サンプルに含まれる他の分析物からエストラジオールを分離した。移動相Aは超純水(HPLC等級)であって、移動相Bは100%メタノールであった。HPLC勾配は、40%の有機勾配で開始し、これは約5.33分で100%まで傾斜した。分析物は、77%メタノール勾配でHPLCカラムを溶出した。次に、分離されたサンプルをエストラジオールの定量のためにMS/MSに供した。
【0093】
他の分子との干渉を決定するために、ブランクの血清を、16−βエストラジオールおよび17−αエストラジオール、ならびに以下のステロイド:エストロン、エストリオール、テストステロン、17−αヒドロキシプロゲステロン、プロゲステロン、アンドロステンジオン、17−βエストラジオールグルクロニド、17−β硫酸エストラジオール、およびジヒドロキシテストステロンなどの同じ重量の1000pg/mLの各々のステロイドでスパイクした。そのサンプルをLCに供した。17−αエストラジオール以外にエストラジオールと同時溶出されたステロイドはなく、17−αエストラジオールは部分的に17−βエストラジオールを妨害したが、操作者がその存在を容易に決定できるほど十分に異なる保持時間であった。
【実施例3】
【0094】
MS/MSによるエストラジオールの検出および定量
MS/MSは、Finnigan TSQ Quantum Ultra MS/MSシステム(Thermo Electron Corporation)を用いて行った。全てがThermo Electronからの以下のソフトウェアプログラムを、本明細書に記載の実施例に用いた:Tune Master V1.2または、それより新しいもの、Xcalibur V2.0 SR1、またはそれより新しいもの、TSQ Quantum 1.4またはそれより新しいもの、LCQuan V2.0またはそれより新しいもの、およびXReport 1.0またはそれより新しいもの。分析HPLCカラムを出ていく液体の溶媒/分析物は、Thermo Finnigan MS/MSアナライザーの加熱されたネブライザー界面に流れた。その溶媒/分析物混合物を、界面の加熱配管中で蒸気に変換した。噴霧された溶媒中の分析物を、界面のコロナ放電針によってイオン化し、これによって噴霧された溶媒/分析物混合物に電圧を印加する。
【0095】
イオンは、第一の四重極(Q1)を通過し、これにより271.14±0.5m/zまたは255.07±0.5m/zのいずれかの質量対電荷比を有するイオンを選択した。四重極2(Q2)に入るイオンは、アルゴンガスと衝突して、イオン断片を生じ、これがさらなる選択のために四重極3(Q3)へ通過した。同時に、同位体希釈質量分析を用いる同じプロセスを、内部標準である5−重水素化エストラジオール分子で行った。以下の質量移行を、正の極性でのバリデーションの間の検出および定量のために用いた。
【0096】
【表1】

【0097】
以下の質量移行は、負の極性でのバリデーションの間の検出および定量のために用いた。
【0098】
【表2】

【実施例4】
【0099】
アッセイ内およびアッセイ間の正確性および精度
3つの品質管理(QC)プールをチャコール剥離血清から調製して、10、200および800pg/mLの濃度までエストラジオールでスパイクした。
【0100】
3つのQCプールの各々由来の10個のアリコートを、単独のアッセイで分析して、アッセイ内のサンプルの再現性(CV)を決定した。以下の値を決定した:
【0101】
【表3】

【0102】
各々の3つのQCプール由来の10個のアリコートを5日にわたってアッセイして、アッセイの間の再現性(RSD%)を決定した。以下の値を決定した:
【0103】
【表4】

【実施例5】
【0104】
分析の感度:検出限界(LOD)および定量限界(LOQ)
エストラジオールのゼロ標準を、10個の複製で行って、測定された値の方がそれにともなう不確実度よりも大きいポイントである、アッセイの検出限界を決めた。LODは、ゼロ濃度からの2標準偏差(SD)として適宜決定した。ゼロ標準についての得られたピーク面積比を統計学的に分析し、ここでは0.021の平均値および0.006のSDであった。エストラジオールのアッセイのLODは2.0pg/mLであった。
【0105】
20%の正確性および80%〜120%の精度を有する定量の限界を決定するため、予想のLOQに近い濃度の5つの異なるサンプルをアッセイして、各々について再現性を決定した。エストラジオールアッセイのLOQは2.0pg/mLで規定した。
【実施例6】
【0106】
アッセイ報告可能な範囲および直線性
アッセイ中のエストラジオール検出の直線性を確立するため、ゼロ標準に割り当てた1つのブランク、および11個のスパイクした血清標準を調製して、5つの別の日に分析した。5つの連続試行からの二次回帰で0.995以上という相関係数が得られ、ここでは±20%の精度で2〜2000pg/mLという定量可能な線形範囲が明らかになった。
【実施例7】
【0107】
マトリックス特異性
マトリックス特異性は、水、剥離血清およびプールした血清を用いて評価して、患者サンプルが線形の方式で希釈できるか否かを決定した。このサンプルは、較正実施後に二連で行った。正確性は以下のとおりであった:
【0108】
【表5】

【実施例8】
【0109】
回収
スパイクされたサンプルからエストラジオールを回収する能力を決定するために、濃度が既知の2例の患者サンプルを、3レベル(低、中、高)のエストラジオールでスパイクした。回収はスパイクされた量を予想濃度で割ることによって算出した。平均回収はそれぞれ低、中および高レベルで92%、108%および98%であった。
【0110】
本明細書において言及または引用される、論文、特許および特許出願、ならびに全ての他の文書および電気的に利用可能な情報の内容は、あたかも各々の個々の刊行物が参照によって援用されると詳細にかつ個々に示されるのと同じ程度までその全体が出典明記によって本明細書に援用される。出願人は、任意のこのような論文、特許、特許出願または他の物理的および電子的な文書由来の任意のかつ全ての物質および情報を本出願に物理的に組み込む権利を留保する。
【0111】
本明細書に例示的に記載される方法は、本明細書に詳細に開示されないいずれの要素(単数または複数)、制限(単数または複数)もなしに適切に実施され得る。従って、例えば、「含む(comprising)」、「含んでいる、包含している、挙げられる(including)」、「含有する、含んでいる(containing)」などの用語は、広範にかつ限定なしに読みとられるべきである。さらに、本明細書に使用される用語および表現は説明の用語として用いられており、限定ではなく、このような用語および表現の使用において、示されかつ記載される特徴の任意の等価物またはその一部を排除するという意図はない。種々の改変が特許請求される本発明の範囲内で可能であるということが認識される。従って、本発明は、本明細書に具体化される本発明の好ましい実施形態および任意の特徴、修飾および変動によって詳細に記載されているが、本明細書の開示は当業者によって頼られる場合があり、このような改変および変動は、本発明の範囲内であるとみなされることが理解されるべきである。
【0112】
本発明は、本明細書に広範にかつ一般的に記載されている。一般的な開示内におさまっている下位の種および亜属の分類の各々も、本発明の一部を形成する。これは、本発明の方法の一般的記述を包含しており、ただし、条件付きであるかまたは消極的な限定があり、除外される物質が本明細書に特に引用されるか否かにかかわらず、その属からなんらかの対象を取り除く。
【0113】
他の実施形態が以下の特許請求の範囲内である。さらに、本発明の特徴または局面は、マーカッシュグループに関して記載されており、当業者は本発明がマーカッシュグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関して本明細書に記載されていることを認識する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験サンプル中のエストラジオールの量を決定するための方法であって:
(a)前記試験サンプルを前記試験サンプル中に存在し得るタンパク質由来の遊離のエストラジオールに対して十分な量の試薬を用いて酸性にする工程と;
(b)前記試験サンプルからエストラジオールを液体クロマトグラフィーによって精製する工程と;
(c)前記試験サンプルから精製された前記エストラジオールをイオン化して、タンデム型質量分析によって検出可能な1つ以上のイオンを生成する工程と:
(d)前記エストラジオールイオン(単数または複数)の量をタンデム型質量分析によって正のイオンモードで検出し、ここで前記エストラジオールイオン(単数または複数)の量が前記試験サンプル中のエストラジオールの量に対して関連付けられる工程と、
を含む上記方法。
【請求項2】
前記前記液体クロマトグラフィーが高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記精製工程がさらに、高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)、続いて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エストラジオールイオンが、271.14±0.5、255.07±0.5、183.10±0.5、159.20±0.5、145.10±0.5および133.20±0.5の質量/電荷比を有するイオンからなる群より選択される1つ以上のイオンを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記イオン化が、271.14±0.5および255.07±0.5の質量/電荷比を有するイオンからなる群より選択される前駆イオンを生成する工程と、183.10±0.5、159.20±0.5、145.10±0.5、および133.20±0.5の質量/電荷比を有するイオンからなる群より選択される1つ以上の断片イオンを生成する工程とを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記イオン化が、271.14±0.5の質量/電荷比を有する前駆イオンを生成する工程と、183.10±0.5および145.10±0.5の質量/電荷比を有するイオンからなる群より選択される1つ以上の断片イオンを生成する工程とを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記イオン化が、271.14±0.5の質量/電荷比を有する前駆イオンを生成する工程と、183.10±0.5および145.10±0.5の質量/電荷比を有する断片イオンを生成する工程とを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記イオン化が、255.07±0.5の質量/電荷比を有する前駆イオンを生成する工程と、159.20±0.5および133.20±0.5の質量/電荷比を有するイオンからなる群より選択される1つ以上の断片イオンを生成する工程とを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記イオン化が、255.07±0.5の質量/電荷比を有する前駆イオンを生成する工程と、159.20±0.5および133.20±0.5の質量/電荷比を有する断片イオンを生成する工程とを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記試薬がギ酸である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記試験サンプル中に存在するグルクロン酸化エストラジオールおよび非グルクロン酸化エストラジオールの両方が前記方法によって検出および測定される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記試験サンプルが体液である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、80pg/mL以下の定量限界を有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記エストラジオールが質量分析の前に誘導体化されない、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
体液サンプル中のエストラジオールの前記量をタンデム型質量分析によって決定するための方法であって:
(a)前記体液サンプルから液体クロマトグラフィーによってエストラジオールを精製する工程と;
(b)271.14±0.5の質量/電荷比を有している前記エストラジオールの前駆イオンを生成する工程と;
(c)前記前駆イオンの1つ以上の断片イオンを生成する工程であって、前記1つ以上の断片イオンの少なくとも1つが、183.10±0.5の質量/電荷比を有するイオンフラグメントを含む工程と;
(d)工程(b)もしくは(c)またはその両方で生成される1つ以上の前記イオンの量を検出する工程、および前記検出されたイオンを前記体液サンプル中の前記エストラジオールの量に対して関連付ける工程、を含む上記方法。
【請求項16】
前記方法が80pg/mL以下の定量限界を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記エストラジオールが質量分析前に誘導体化されない、請求項15〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記液体クロマトグラフィーが高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記精製工程がさらに、高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)続いて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記前駆イオンが271.14±0.5の質量/電荷比を有し、前記1つ以上の断片イオンが、145.10±0.5の質量/電荷比を有する断片イオンを含む、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記イオン化工程の前に前記体液サンプルに存在し得るタンパク質由来の遊離のエストラジオールに対して十分な量である試薬が前記体液サンプルに添加される、請求項15〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記試薬が塩である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記塩が硫酸アンモニウムである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記試薬が、前記体液サンプルを酸性にするのに十分な量で添加される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記試薬がギ酸である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記体液サンプル中に存在するグルクロン酸化エストラジオールおよび非グルクロン酸化エストラジオールの両方が前記方法によって検出および測定される、請求項15〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
試験サンプル中のエストラジオールの量を決定するための方法であって:
(a)前記試験サンプル中に存在し得るタンパク質由来の遊離のエストラジオールに対して十分な量で前記試験サンプルに対して試薬を添加する工程と;
(b)前記試験サンプルから液体クロマトグラフィーによってエストラジオールを精製する工程と;
(c)前記試験サンプルから精製されたエストラジオールをイオン化して、タンデム型質量分析によって検出可能な1つ以上のイオンを生成する工程と;
(d)前記エストラジオールイオン(単数または複数)の量をタンデム型質量分析によって負のイオンモードで検出し、ここで前記エストラジオールイオン(単数または複数)の量が前記試験サンプル中のエストラジオールの量に対して関連付けられる工程と、
を含む上記方法。
【請求項28】
前記方法が80pg/mL以下の定量限界を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記エストラジオールが質量分析前に誘導体化されない、請求項27〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記液体クロマトグラフィーが高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である、請求項27〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記精製工程がさらに、高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)続いて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む、請求項27〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記試薬が塩である、請求項27〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記塩が硫酸アンモニウムである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記エストラジオールイオンが、271.14±0.5、183.10±0.5、および145.10±0.5の質量/電荷比を有するイオンからなる群より選択される1つ以上のイオンを含む、請求項27〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記イオン化工程が、271.14±0.5の質量/電荷比を有する前駆イオンを生成する工程、ならびに183.10±0.5、および145.10±0.5の質量/電荷比を有するイオンからなる群より選択される1つ以上の断片イオンを生成する工程を含む、請求項27〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記試験サンプル中に存在するグルクロン酸化エストラジオールおよび非グルクロン酸化エストラジオールの両方が前記方法によって検出および測定される、請求項27〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記試験サンプルが体液である、請求項27〜36のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2011−505013(P2011−505013A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536104(P2010−536104)
【出願日】平成20年11月24日(2008.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/084561
【国際公開番号】WO2009/070539
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(505063050)クエスト ダイアグノスティックス インヴェストメンツ インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】