説明

質量分析によってジヒドロキシビタミンD代謝物を検出するための方法

質量分析を用いてサンプル中のジヒドロキシビタミンD代謝物の存在または量を検出する方法が提供される。この方法は一般には、サンプル中のジヒドロキシビタミンD代謝物をイオン化する工程と、このイオンの量を検出してこのサンプル中のビタミンD代謝物の存在または量を決定する工程とを含む。特定の好ましい実施形態では、この方法は、質量分析前にジヒドロキシビタミンD代謝物を免疫精製する工程を含む。また、単一のアッセイで2つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物の存在または量を検出する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジヒドロキシビタミンD代謝物の検出に関する。特定の局面では、本発明は、ビタミンD代謝物を質量分析によって検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンDはカルシウム(Ca2+)恒常性の正の調節において重要な生理学的役割を有する必須の栄養である。ビタミンDは、日光に対する暴露によって皮膚で新規に生成されることができ、または食餌から吸収することができる。ビタミンDには以下の2つの形態がある;ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)およびビタミンD3(コレカルシフェロール)。ビタミンD3は動物によって新規に合成される形態である。これは、アメリカで製造されるミルク製品およびある種の食品に添加される一般的なサプリメントでもある。食餌および内因性に合成されたビタミンD3の両方とも代謝活性化を受けて生理活性の代謝物を生じるはずである。ヒトではビタミンD3活性化の最初の工程は主として肝臓で生じ、水酸化されて中間の代謝物25−ヒドロキシビタミンD3(25−ヒドロキシコレカルシフェロール;カルシフェジオール;25OHD3)が形成される。カルシフェジオールは循環中のビタミンD3の主な形態である。次いで、循環する25OHD3は腎臓によって1,25−ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール;1,25(OH)23)に変換され、これは一般には、最高の生物学的活性を有するビタミンD3の代謝物であると考えられる。
【0003】
ビタミンD2は、真菌および植物の供給源由来である。いくつかの店頭販売の食餌性サプリメントは、コレカルシフェロール(ビタミンD3)ではなくエルゴカルシフェロール(ビタミンD2)を含む。ドリスドールは米国で利用可能なビタミンDの唯一の高力価の処方箋書式であり、エルゴカルシフェロールで処方される。ビタミンD2はヒトではビタミンD3と同様の経路の代謝活性化を受け、代謝物25−ヒドロキシビタミンD2(25OHD2)および1,25−ジヒドロキシビタミンD3(1,25(OH)22)を形成する。ビタミンD2およびビタミンD3はヒトでは生物学的に等価であると長らくみなされてきたが、近年の報告では、ビタミンDのこれらの2つの形態の生理活性およびバイオアベイラビリティにおいて相違がある場合があることが示唆されている(非特許文献1)。
【0004】
ビタミンD、不活性なビタミンD前駆体の測定は、臨床的な状況ではまれであって、診断的な価値は少ない。むしろ、25−ヒドロキシビタミンD3および25−ヒドロキシビタミンD2(総25−ヒドロキシビタミンD;“25OHD”)の血清レベルがビタミンDの栄養状態およびある種のビタミンD類似体の有効性の有用な指標である。従って、25OHDの測定はカルシウム代謝の障害の診断および管理で共通して用いられる。これに関して、低レベルの25OHDは、低カルシウム血症、低リン酸血症、二次性副甲状腺機能更新症、アルカリホスファターゼ上昇、成体の骨軟化症および小児のくる病などの疾患に関連するビタミンD欠損の指標である。ビタミンD中毒が疑われる患者では、25OHDのレベルの上昇によって、この障害を、高カルシウム血症を生じる他の障害から識別する。
【0005】
1,25(OH)2Dの測定はまた臨床的な状況で用いられる。例えば、特定の疾患状態、例えば、腎不全は、循環する1,25(OH)2Dのレベル低下によって診断することができ、そして1,25(OH)2Dのレベル上昇は、過剰な副甲状腺ホルモンの指標であることができ、またはサルコイドーシスまたは特定のタイプのリンパ腫などの特定の疾患の指標でもあり得る。
【0006】
ビタミンD代謝物の検出は、25−ヒドロキシビタミンD3および25−ヒドロキシビタミンD2に同時に特異的な抗体を用いるラジオイムノアッセイによって行われている。現在の免疫学ベースのアッセイは25−ヒドロキシビタミンD3および25−ヒドロキシビタミンD2を別々に分離しないので、ビタミンD栄養の欠損の原因は、他の試験を行うことなしには決定できない。近年では、質量分析を用いて特定のビタミンD代謝物を検出するための方法を開示している報告が公開されている。例えば、非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;および非特許文献5は、液体クロマトグラフィーおよび質量分析を用いて種々のビタミンD代謝物を検出するための方法を開示する。これらの方法には、質量分析による検出の前に代謝物を誘導体化することが必要である。誘導体化されない1,25(OH)23を液体クロマトグラフィー/質量分析によって検出する方法は、非特許文献6に開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】アーマスら(Armas et.al.,)(2004)ジャーナル・オブ・クリニカル・エンドクリノロジー・アンド・メタボリズム(Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism)89:5387〜5391
【非特許文献2】ヤン・ビーら(Yeung B,et al.,)ジャーナル・オブ・クロマトグラフィー(Journal of Chromatography).1993,645(1):115〜23
【非特許文献3】東達也ら(Higashi T,et al.,)ステロイズ(Steroids.)2000,65(5):281〜94
【非特許文献4】東達也ら(Higashi T,et al.,)バイオロジカル・アンド・ファーマシューティカル・ブリティン(Biological Pharmaceutical Bulletin.)2001,24(7):738〜43
【非特許文献5】東達也ら(Higashi T,et al.,)ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・アンド・バイオメディカル・アナリシス(Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis)2002,29(5):947〜55
【非特許文献6】キスマイヤーおよびソン(Kissmeyer and Sonne),ジャーナル・オブ・クロマトグラフィー・エー(Journal of Chromatography A.)2001,935(1−2):93〜103
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、タンデム型質量分析等の質量分析によって、サンプル中のジヒドロキシビタミンD代謝物の存在または量を検出するための方法を提供する。
【0009】
一局面では、1つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物の存在または量をタンデム型質量分析によって決定するための方法が提供され、この方法は以下を包含する:(a)サンプルから1つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物を免疫精製する工程と;(b)この免疫精製されたジヒドロキシビタミンD代謝物(単数または複数)をHPLCによってさらに精製する工程と;(c)工程(b)から得られたビタミンD代謝物の量をタンデム型質量分析によって決定する工程であって:(i)このジヒドロキシビタミンD代謝物(単数または複数)の前駆イオンを生成すること;(ii)この前駆イオンの1つ以上の断片イオンを生成すること;および(iii)(c)もしくは(d)または両方で生成された1つ以上のこのイオンの存在または量を検出して、この検出されたイオンの量をこのサンプル中のこのジヒドロキシビタミンD代謝物(単数または複数)の存在または量に対して関連付けることによる工程。特定の好ましい実施形態では、ジヒドロキシビタミンD代謝物は、固体支持体に結合された抗ジヒドロキシビタミンD抗体を用いてサンプルから免疫精製され;好ましくはこのジヒドロキシビタミンD代謝物は免疫粒子を用いて免疫精製され;好ましくはこの免疫粒子はそれらの表面上に抗ジヒドロキシビタミンD抗体を有する。特定の実施形態では、このジヒドロキシビタミンD代謝物(単数または複数)は1α,25(OH)22を含み;特定の実施形態では、このジヒドロキシビタミンD代謝物(単数または複数)は1α,25(OH)23を含み;ある特に好ましい実施形態では、1α,25(OH)22および1α,25(OH)23の存在または量を単一のアッセイで検出するための方法が提供される。
【0010】
上記の局面の特定の好ましい実施形態では、ジヒドロキシビタミンD代謝物(単数または複数)は質量分析の前に誘導体化され;いくつかの特に好ましい実施形態では、ジヒドロキシビタミンD代謝物(単数または複数)はクックソン型(Cookson−type)試薬(例えば、4置換の1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン;TAD)で誘導体化され;特定の特に好ましい実施形態では、ジヒドロキシビタミンD代謝物(単数または複数)は4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)で誘導体化され;かつさらに他の特に好ましい実施形態では、ジヒドロキシビタミンD代謝物(単数または複数)は4’−カルボキシフェニル−TADで誘導体化される。特定の好ましい実施形態では、ジヒドロキシビタミンD代謝物(単数または複数)は1α,25(OH)22を含み;この1α,25(OH)22は質量分析の前に4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)で誘導体化される;そしてさらに好ましくは、1α,25(OH)22の前駆イオンは、586.37±0.5の質量/電荷比を有する。特定の好ましい実施形態では、ジヒドロキシビタミンD代謝物(単数または複数)は1α,25(OH)23を含み;この1α,25(OH)23は質量分析の前に4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)で誘導体化され;そしてさらに好ましくは1α,25(OH)23の前駆イオンは、574.37±0.5の質量/電荷比を有する。特定の好ましい実施形態では、このジヒドロキシビタミンD代謝物(単数または複数)は質量分析の前に4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)で誘導体化され、この断片イオンは、314.12±0.5の質量/電荷比を有している少なくとも1つのイオンを含む。
【0011】
いくつかの好ましい実施形態では、ジヒドロキシビタミンD代謝物(単数または複数)は質量分析の前には誘導体化されない。特定の特に好ましい実施形態では、ジヒドロキシビタミンD代謝物(単数または複数)は1α,25(OH)22を含み、この1α,25(OH)22は質量分析の前には誘導体化されず、さらに好ましくはこの非誘導体化1α,25(OH)22の前駆イオンは、411.35±0.5の質量/電荷比を有する。特定の特に好ましい実施形態では、このジヒドロキシビタミンD代謝物(単数または複数)は1α,25(OH)23を含み、この1α,25(OH)23は質量分析前には誘導体化されず、さらに好ましくは非誘導体化1α,25(OH)23の前駆イオンは399.35±0.5の質量/電荷比を有する。特定の特に好ましい実施形態では、ジヒドロキシビタミンD代謝物(単数または複数)は誘導体化されず、この断片イオンは151.12±0.5および135.12±0.5の質量/電荷比を有しているイオンからなる群より選択される1つ以上のイオンを含む。
【0012】
特に好ましい実施形態では、単一のアッセイでタンデム型質量分析によってヒトの身体サンプル中の1α,25(OH)22および1α,25(OH)23の量を決定するための方法が提供され、この方法は以下を含む:(a)サンプルから1α,25(OH)22および1α,25(OH)23を免疫精製する工程と;(b)1α,25(OH)22および1α,25(OH)23を4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)で誘導体化する工程と;(c)工程(b)から誘導体化された1α,25(OH)22および1α,25(OH)23をHPLCによって精製する工程と;(d)工程(c)から得られた1α,25(OH)22および1α,25(OH)23の量をタンデム型質量分析によって決定する工程であって:(i)586.37±0.5の質量/電荷比を有している誘導体化された1α,25(OH)22の前駆イオン、および574.37±0.5の質量/電荷比を有している誘導体化された1α,25(OH)23の前駆イオンを生成すること;(ii)工程(i)由来の前駆イオンの1つ以上の断片イオンを生成することであって、ここで断片イオンの少なくとも1つが314.12±0.5の質量/電荷比を有すること;ならびに(iii)工程(i)もしくは(ii)または両方で生成された1つ以上のイオンの存在または量を検出すること、およびこの検出されたイオンをサンプル中の1α,25(OH)22および1α,25(OH)23の存在または量に対して関連付けることによる工程。
【0013】
本明細書において用いる場合、「ジヒドロキシビタミンD代謝物」という用語は、ビタミンDまたは合成のビタミンD類似体の生合成経路または代謝経路によって形成される、動物の循環中で見出され得る任意のジヒドロキシビタミンD代謝物を指す。好ましくはこのジヒドロキシビタミンD代謝物は、1位置および25位置でヒドロキシル化される。特に好ましい実施形態では、ビタミンD代謝物は1α,25−ジヒドロキシビタミンD3(1α,25(OH)23)または1α,25−ジヒドロキシビタミンD2(1α,25(OH)22)である。特定の好ましい実施形態では、このジヒドロキシビタミンD代謝物は哺乳動物、さらに好ましくはヒトの体液中に自然に存在する。特定の特に好ましい実施形態では、本明細書に記載されるような方法は、1α,25−ジヒドロキシビタミンD3(1α,25(OH)23)および/または1α,25−ジヒドロキシビタミンD2(1α,25(OH)22)を検出し、24,25−ジヒドロキシビタミンD;25,26−ジヒドロキシビタミンD;および1α,3α−ジヒドロキシビタミンDからなる群より選択される1つ以上のジヒドロキシビタミン−D代謝物は検出しない。
【0014】
本明細書において用いる場合、「精製」または「精製する」という用語は、サンプルの1つ以上の他の成分に対して目的の1つ以上の分析物の量を富化する手順を指す。本明細書において用いる場合、精製とは全ての他の分析物からの単離を要するわけではない。好ましい実施形態では、精製工程または手順を用いて、1つ以上の干渉性物質、例えば、質量分析による分析物イオンの検出を妨げ得る方法または物質中で用いられる装置の操作を妨げるであろう1つ以上の物質を除去してもよい。
【0015】
本明細書において用いる場合、「免疫精製」または「免疫精製する」という用語は、目的の1つ以上の分析物を富化するために、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体などの抗体を利用する精製手順を指す。免疫精製は、当該分野で周知である任意の免疫精製方法を用いて行ってもよい。しばしば免疫精製手順は、固体支持体、例えば、カラム、ウェル、チューブ、ゲル、カプセル、粒子などに対して結合するか、コンジュゲートするか、そうでなければ付着した抗体を利用する。本明細書において用いる場合、免疫精製は限定するものではないが、当該分野で免疫沈降と呼ばれる場合が多い手順、および当該分野でアフィニティークロマトグラフィーと呼ばれる場合が多い手順を包含する。
【0016】
本明細書において用いる場合、「免疫粒子」という用語は、カプセル、ビーズ、ゲル粒子などであって、その表面(その粒子の上および/または中のいずれか)に対して結合するか、コンジュゲートするか、そうでなければ付着している抗体を有するものを指す。特定の好ましい実施形態では、免疫粒子は、セファロースまたはアガロースビーズである。別の好ましい実施形態では、免疫粒子はガラス、プラスチックもしくはシリカビーズ、またはシリカゲルである。
【0017】
本明細書において用いる場合、「抗ジヒドロキシビタミンD抗体」という用語は、1つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物について親和性を有する任意のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を指す。特定の好ましい実施形態では、抗ジヒドロキシビタミンD抗体は1α,25(OH)23および1α,25(OH)22に結合する。いくつかの好ましい実施形態では、抗ジヒドロキシビタミンD抗体は1α,25(OH)23および1α,25(OH)22と等しいかまたは同様の親和性で結合する。他の好ましい実施形態では、抗ジヒドロキシビタミンD抗体は、1α,25(OH)23と1α,25(OH)22よりも有意に高い親和性で結合し;別の好ましい実施形態では、この抗ジヒドロキシビタミンD抗体は1α,25(OH)22と1α,25(OH)23よりも有意に高い親和性で結合する。種々の実施形態では、ジヒドロキシビタミンD代謝物以外の化学種に対する抗ジヒドロキシビタミンD抗体の特異性は、変化し得;例えば、特定の好ましい実施形態では、この抗ジヒドロキシビタミンD抗体は、ジヒドロキシビタミンD代謝物に対して特異的であり従って、ジヒドロキシビタミンD代謝物以外の化学種(例えば、他のビタミンD代謝物、例えば、ビタミンDまたは25−ヒドロキシビタミンD)には親和性をほとんど有さないかまたは全く有さないが、他の好ましい実施形態では、この抗ジヒドロキシビタミンD抗体は非特異的であり、従ってジヒドロキシビタミンD代謝物以外の特定の化学種に結合する(例えば、非特異的な抗ジヒドロキシビタミンD抗体は、他のビタミンD代謝物、例えば、ビタミンDまたは25−ヒドロキシビタミンDに結合し得る)。
【0018】
本明細書に開示される方法のいくつかの好ましい実施形態では、ジヒドロキシビタミンD代謝物(単数または複数)は、質量分析前に誘導体化されない。他の好ましい実施形態では、このビタミンD代謝物は、質量分析前に誘導体化される。
【0019】
本明細書において用いる場合、「生体サンプル」とは、生物学的な供給源由来の任意のサンプルを指す。本明細書において用いる場合、「体液」は、個体の体液から単離され得る任意の液体を意味する。例えば、「体液」は、血液、血漿、血清、胆汁、唾液、尿、涙、汗などを包含し得る。
【0020】
本明細書において用いる場合、「誘導体化」とは、2つの分子を反応させて新規な分子を形成することを意味する。誘導体化剤としては、クックソン型(Cookson−type)試薬(例えば、4置換の1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン;TAD);イソチオシアナート基、ジニトロ−フルオロフェニル基、ニトロフェノキシカルボニル基、および/またはフタルアルデヒド基を挙げることができる。特定の好ましい実施形態では、誘導体化は、例えば、Vreeken,et.,al.,Biol.Mass Spec.22:621〜632;非特許文献2;非特許文献4;または非特許文献5に開示される方法などの方法を用いて行う。好ましい実施形態では、この誘導体化剤はクックソン型試薬である。特に好ましい誘導体化剤としては、4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD);4’−カルボキシフェニル−TAD;4−[4−(6−メトキシ−2−ベンゾオキサゾリル)フェニル]−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(MBOTAD);4−[2−(6,7−ジメトキシ−4−メチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロキノキサリル)エチル]−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(DMEQTAD);4−ニトロフェニル−TAD;4−ペンタフルオロフェニル−TAD;4−フェロセニルエチル−TAD;4−四級アミン−TAD;などが挙げられる。特定の好ましい実施形態では、誘導体化はクロマトグラフィーの前に行われる;しかし他の好ましい実施形態では、誘導体化はクロマトグラフィーの後に、例えば、Vreeken,et.,al.,Biol.Mass Spec.22:621〜632に記載の方法と類似の方法を用いて行われる。
【0021】
本明細書において用いる場合、「クロマトグラフィー」とは、液体または気体によって担持される化学的な混合物が、静止的な液体または固相の周囲または上に流れるにつれて、化学物質の示差的な分布の結果として成分に分けられるプロセスを指す。
【0022】
本明細書において用いる場合、「液体クロマトグラフィー」(LC)とは、微細に分けられた物質のカラムを通じて、またはキャピラリーの通路を通じて液体が均一に浸透するような液体溶液の1つ以上の成分の選択的な遅延のプロセスを意味する。この遅延の結果、静止期(単数または複数)に対してこの液体が動くので、1つ以上の静止期とバルクの液体(すなわち、移動相)との間の混合物の成分の分布が生じる。「液体クロマトグラフィー」は、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)を包含する。
【0023】
本明細書において用いる場合、「HPLC」または「高速液体クロマトグラフィー」とは、液体クロマトグラフィーであって、静止相、代表的には濃密に充填されたカラムを通じて圧力下で移動相を強制することによって分離の程度が増大される液体クロマトグラフィーを指す。
【0024】
本明細書において用いる場合、「ガスクロマトグラフィー」という用語は、クロマトグラフィーであって、サンプル混合物が気化されて、液体または粒子状固体からなる静止相を含むカラムを通じて移動する搬送ガス(窒素またはヘリウム)の流れに注入され、その静止期の化合物の親和性に従ってその成分化合物に分けられるクロマトグラフィーを指す。
【0025】
本明細書において用いる場合、「質量分析」(MS)とは、その質量によって化合物を特定するための分析技術を指す。MS技術は一般には(1)化合物をイオン化して荷電された化合物を形成する工程;および(2)荷電された化合物の分子量を検出して質量対電荷比(m/z)を算出する工程を含む。この化合物は、任意の適切な手段によってイオン化および検出され得る。「質量分析計」は一般には、イオン化装置およびイオン検出器を備える。例えば、「Mass Spectrometry From Surfaces」と題された米国特許第6,204,500号、「Methods and Apparatus for Tandem Mass Spectrometry」と題された同第6,107,623号、「DNA Diagnostics Based On Mass Spectrometry」と題された同第6,268,144号、「Surface−Enhanced Photolabile Attachment And Release For Desorption And Detection Of Analytes」と題された同第6,124,137号、Wright et al.,Prostate Cancer and Prostatic Diseases 2:264〜76(1999);ならびにMerchantおよびWeinberger,Electrophoresis 21:1164〜67(2000)を参照のこと。
【0026】
本明細書において用いる場合、「電子イオン化」という用語は、気相または蒸気相中の目的の分析物が電子の流れと相互作用する方法を指す。分析物での電子の衝撃は分析物イオンを生じ、これが次に質量分析技術に供され得る。
【0027】
本明細書において用いる場合、「化学的イオン化」という用語は、試薬ガス(例えば、アンモニア)が電子衝撃に供され、分析物イオンが試薬ガスイオンおよび分析物分子の相互作用によって形成される方法を指す。
【0028】
本明細書において用いる場合、「高速電子衝撃」という用語は、高エネルギー原子のビーム(しばしばXeまたはAr)が不揮発性サンプルに衝突し、サンプル中に含まれる分子を脱着およびイオン化する方法を指す。試験サンプルを、グリセロール、チオグリセロール、m−ニトロベンジルアルコール、18−クラウン−6クラウンエーテル、2−ニトロフェニルオクチルエーテル、スルホラン、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミンなどの粘性の液体マトリックスに溶解する。
【0029】
本明細書において用いる場合、「電界脱離」という用語は、不揮発性の試験サンプルをイオン化表面に置き、強電界を用いて分析物イオンを生成する方法を指す。
【0030】
本明細書において用いる場合、「イオン化」という用語は、1つ以上の電子単位に等しい正味の電荷を有している分析物イオンを生成するプロセスを指す。負のイオンとは、1つ以上の電子単位の正味の負の電荷を有しているイオンであるが、正のイオンとは、1つ以上の電子単位の正味の正の電荷を有しているイオンである。
【0031】
「負のイオンモードで操作する」という用語は、負のイオンが検出される質量分析法を指す。同様に「正のイオンモードで操作する」とは、正のイオンが検出される質量分析法を指す。
【0032】
本明細書において用いる場合、「脱離」という用語は、表面からの分析物の除去、および/または気相への分析物の進入を指す。
【0033】
第二の局面では、サンプル中の1α,25(OH)22の存在または量を決定するための方法が提供され、この方法は(a)サンプル中の1α,25(OH)22を4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)で誘導体化する工程;(b)この誘導体化された1α,25(OH)22をHPLCによって精製する工程;(c)586.37±0.5の質量/電荷比を有している誘導体化された1α,25(OH)22の前駆イオンを生成する工程;(d)前駆イオンの1つ以上の断片イオンを生成する工程であって、断片イオンの少なくとも1つが314.12±0.5の質量/電荷比を有しているイオンを含む工程;ならびに(e)工程(c)もしくは(d)またはその両方で生成された1つ以上のイオンの存在または量を検出し、この検出されたイオンをサンプル中の1α,25(OH)22の存在または量に対して関連付ける工程を含む。特定の好ましい実施形態では、サンプル中の1α,25(OH)22は工程(a)の前に免疫精製によって精製され;好ましくはこの免疫精製は、免疫粒子による免疫精製を含む;好ましくはこの免疫粒子は、この表面に対して結合した抗ジヒドロキシビタミンD代謝物を有する。この局面のいくつかの好ましい実施形態では、この方法はさらに、サンプル中の1α,25(OH)23の存在または量を検出する工程を含み;好ましくはこの1α,25(OH)23は質量分析の前に4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)で誘導体化され;さらに好ましくはこの1α,25(OH)23の前駆イオンが574.37±0.5の質量/電荷比を有する。
【0034】
第三の局面では、サンプル中の1α,25(OH)23の存在または量をタンデム型質量分析によって決定するための方法が提供され、この方法は(a)サンプル中の1α,25(OH)23を4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)で誘導体化する工程と;(b)誘導体化された1α,25(OH)23をHPLCによって精製する工程と;(c)574.37±0.5の質量/電荷比を有している誘導体化された1α,25(OH)23の前駆イオンを生成する工程と;(d)この前駆イオンの1つ以上の断片イオンを生成する工程であって、この断片イオンの少なくとも1つが314.12±0.5の質量/電荷比を有しているイオンを含む工程と;(e)工程(c)もしくは(d)またはその両方で生成されたこの1つ以上のイオンの存在または量を検出する工程、およびこの検出されたイオンをこのサンプル中のこの1α,25(OH)23の存在または量に対して関連付ける工程と;を含む。特定の好ましい実施形態では、このサンプル中の1α,25(OH)23は工程(a)の前に免疫精製によって精製され;好ましくはこの免疫精製は、免疫粒子での免疫精製を含み;好ましくはこの免疫粒子は、表面に結合した抗ジヒドロキシビタミンD代謝物抗体を有する。この局面のいくつかの好ましい実施形態では、この方法はさらに、サンプル中の1α,25(OH)22の存在または量を決定する工程を含み;好ましくはこの1α,25(OH)22は、質量分析の前に4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)で誘導体化され;さらに好ましくはこの1α,25(OH)22の前駆イオンは、586.37±0.5の質量/電荷比を有する。
【0035】
第四の局面では、サンプル中の1α,25(OH)22の存在または量をタンデム型質量分析によって決定するための方法が提供され、この方法は(a)1α,25(OH)22をHPLCによって精製する工程;(b)411.35±0.5の質量/電荷比を有している1α,25(OH)22の前駆イオンを生成する工程;(c)この前駆イオンの1つ以上の断片イオンを生成する工程であって、この1つ以上の断片イオンが151.12±0.5および135.12±0.5の質量/電荷比を有しているイオンからなる群より選択される1つ以上のイオンを含む、工程;ならびに(d)工程(b)もしくは(c)またはその両方で生成されたこの1つ以上のイオンの存在または量を検出する工程、およびこの検出されたイオンをこのサンプル中の1α,25(OH)22の存在または量に対して関連付ける工程を含む。この局面の好ましい実施形態では1α,25(OH)22は質量分析の前には誘導体化されていない。特定の好ましい実施形態では、サンプル中の1α,25(OH)22が工程(a)の前に免疫精製によって精製され;好ましくはこの免疫精製は、免疫粒子での免疫精製を含み;好ましくはこの免疫粒子は、表面に結合した抗ジヒドロキシビタミンD代謝物抗体を有する。この局面のいくつかの好ましい実施形態では、この方法はさらに、サンプル中の1α,25(OH)23の存在または量を決定する工程を含み;好ましくはこの1α,25(OH)23は質量分析の前に誘導体化されておらず;さらに好ましくはこの1α,25(OH)23の前駆イオンは399.35±0.5の質量/電荷比を有する。
【0036】
第五の局面では、サンプル中の1α,25(OH)23の存在または量をタンデム型質量分析によって決定するための方法が提供され、この方法は:(a)1α,25(OH)23をHPLCによって精製する工程;(b)399.35±0.5の質量/電荷比を有している1α,25(OH)23の前駆イオンを生成する工程;(c)この前駆イオンの1つ以上の断片イオンを生成する工程であって、この断片イオンが、151.12±0.5および135.12±0.5の質量/電荷比を有しているイオンからなる群より選択される1つ以上のイオンを含む工程;ならびに(d)工程(b)もしくは(c)またはその両方で生成された1つ以上のイオンの存在または量を検出する工程、およびこの検出されたイオンをこのサンプル中の1α,25(OH)23の存在または量に対して関連付ける工程を含む。この局面の好ましい実施形態では、この1α,25(OH)23は質量分析の前に誘導体化されない。特定の好ましい実施形態では、サンプル中の1α,25(OH)23は工程(a)の前に免疫精製によって精製され;好ましくはこの免疫精製は免疫粒子での免疫精製を含み;好ましくはこの免疫粒子は表面に結合した抗ジヒドロキシビタミンD代謝物抗体を有する。この局面のいくつかの好ましい実施形態では、この方法はさらに、サンプル中の1α,25(OH)22の存在または量を決定する工程を含み;好ましくはこの1α,25(OH)22は質量分析の前に誘導体化されておらず;さらに好ましくはこの1α,25(OH)22の前駆イオンは411.35±0.5の質量/電荷比を有する。
【0037】
「約、およそ、ほぼ(about)」という用語は、定量的な測定に関して本明細書において用いる場合、示される値プラスマイナス10%を指す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
試験サンプル中のジヒドロキシビタミンD代謝物を検出および定量する方法が開示される。本明細書に開示されるいくつかの好ましい方法は、液体クロマトグラフィー(LC)、最も好ましくはHPLCを利用して、選択された分析物を精製し、この精製と質量分析(MS)の固有の方法とを組み合わせて、これによって試験サンプル中のジヒドロキシビタミンD代謝物を検出および定量するための高速アッセイシステムを提供する。特定の特に好ましい実施形態では、ジヒドロキシビタミンD代謝物は質量分析前に免疫精製される。この好ましい実施形態は特に、大規模な臨床検査室への適用に十分適している。特異性が向上しており、他のジヒドロキシビタミンD代謝物アッセイで必要な時間とサンプルよりも少ない時間とサンプルとで達成される、ジヒドロキシビタミンD代謝物を検出および定量する方法が提供される。
【0039】
適切な試験サンプルは、目的の分析物を含むかもしれない任意の試験サンプルを含む。例えば、分析物の製造の間に得られるサンプルを分析して、製造プロセスの組成物および収率を決定してもよい。いくつかの好ましい実施形態では、サンプルは生物学的サンプル;すなわち、任意の生物学的供給源、例えば、動物、細胞培養物、有機培養物などから得られるサンプルである。特定の好ましい実施形態では、サンプルは哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ウマなどから得られる。特に好ましい哺乳動物は霊長類、最も好ましくはヒトである。特に好ましいサンプルとしては血液、血漿、血清、毛髪、筋肉、尿、唾液、涙液、脳脊髄液、または他の組織サンプルが挙げられる。このようなサンプルは、例えば、患者;すなわち、疾患または病態の診断、予防または処置のための臨床状況に自らいる生きている人から得てもよい。この試験サンプルは好ましくは、患者から得られる、例えば血清である。
【0040】
質量分析のためのサンプル調製
質量分析前にサンプル中の他の成分に対してジヒドロキシビタミンD代謝物を富化するか、またはサンプル中のジヒドロキシビタミンD代謝物の濃度を増大する方法が用いられ得る。このような方法としては例えば、濾過、遠心分離、薄層クロマトグラフィー(TLC)、電気泳動、例えば、キャピラリー電気泳動、アフィニティ分離、例えば、イムノアフィニティー分離、抽出方法、例えば、酢酸エチル抽出およびメタノール抽出、ならびにカオトロピック剤または上記の任意の組み合わせなどが挙げられる。
【0041】
サンプルを処理または精製して質量分析による分析に適切な調製物を得ることができる。このような精製は通常、クロマトグラフィー、例えば、液体クロマトグラフィーを含み、かつまたクロマトグラフィーの前に行われる追加の精製手順を含んでもよい。サンプルのタイプまたはクロマトグラフィーのタイプに依存して、この目的に種々の手順を用いることができる。例としては濾過、抽出、沈殿、遠心分離、脱脂、希釈、それらの組み合わせなどが挙げられる。タンパク質沈殿は、液体の生体サンプル、例えば、血清または血漿をクロマトグラフィーのために調製する1つの好ましい方法である。このようなタンパク質精製の方法は、当該分野で周知であり、例えば、Polson et al.,Journal of Chromatography B 785:263〜275(2003)は、本発明の方法での使用に適切なタンパク質沈殿方法を記載している。タンパク質沈殿を用いて、上清に可溶性のジヒドロキシビタミンD代謝物を残したままサンプルからほとんどのタンパク質を除去することができる。サンプルを遠心分離して、沈殿したタンパク質から液体上清を分離してもよい。次いで、得られた上清を液体クロマトグラフィーおよび引き続く質量分析的な分析に適用してもよい。本発明の一実施形態では、このタンパク質沈殿は、1容積の液体サンプル(例えば、血漿)を約4倍容積のメタノールに対して添加する工程を含む。特定の実施形態では、タンパク質沈殿の使用によって、HPLCおよび質量分析の前の高乱流液体クロマトグラフィー(「HTLC」)またはオンライン抽出の必要性がなくなる。このような実施形態によれば、この方法は、(1)目的のサンプルのタンパク質沈殿を行う工程;および(2)オンライン抽出または高乱流液体クロマトグラフィーを用いることなくHPLC−質量分析計上に上清を直接ロードする工程を含む。
【0042】
疫精製
特に好ましい実施形態では、この方法は、質量分析の前にジヒドロキシビタミンD代謝物を免疫精製する工程を含む。この免疫精製工程は、当該分野で周知の任意の免疫精製方法を用いて行うことができる。しばしばこの免疫精製手順は、固体支持体、例えば、カラム、ウェル、チューブ(試験管)、カプセル、粒子などに対して結合するか、コンジュゲートするか、固定するかそうでなければ付着した抗体を利用する。一般には、免疫精製方法は、目的の分析物を含むサンプルと抗体とをインキュベートして、その結果その分析物をこの抗体に結合させる工程、(2)1回以上の洗浄工程を行う工程、および(3)抗体からこの分析物を溶出する工程を含む。
【0043】
特定の実施形態では、免疫精製のインキュベーション工程を溶液中の抗体とともに行い、その抗体を引き続き洗浄工程の前に固体表面に結合させるか付着させる。特定の実施形態では、これは、抗ジヒドロキシビタミンD抗体である一次抗体、およびこの一次の抗ジヒドロキシビタミンD抗体に親和性を有する固体表面に結合された二次抗体を用いて行うことができる。別の実施形態では、この一次抗体はインキュベーション工程の前に固体表面に結合される。
【0044】
適切な固体支持体としては限定するものではないが、チューブ(試験管)、スライド、カラム、ビーズ、カプセル、粒子、ゲルなどが挙げられる。いくつかの好ましい実施形態では、この固体支持体は、マルチ−ウェルプレート、例えば、96ウェルプレート、384ウェルプレートなどである。特定の好ましい実施形態では、この固体支持体は、セファロースまたはアガロースビーズまたはゲルである。抗体(例えば、抗ジヒドロキシビタミンD抗体または二次抗体)が固体支持体に対して結合、付着、固定またはカップリングされ得る多数の方法、例えば、共有結合または非共有結合吸着、親和性結合、イオン結合などが当該分野では周知である。特定の好ましい実施形態では、抗体はCNBrを用いてカップシングされ、例えば、この抗体はCNBr活性化セファロースに対してカップリングされ得る。他の実施形態では、この抗体は、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、またはプロテインLなどの抗体結合タンパク質を通じて固体支持体に結合される。
【0045】
免疫精製方法の洗浄工程は一般には、固体支持体を洗浄して、その結果その固体支持体上に抗ジヒドロキシビタミンD抗体に結合したままジヒドロキシビタミンD代謝物を残す工程を含む。免疫精製の溶出工程は一般には、抗ジヒドロキシビタミンD抗体に対するジヒドロキシビタミンD代謝物の結合を破壊する溶液の添加を含む。例示的な溶出溶液としては、有機溶液(好ましくは、エタノール)、塩溶液および高または低pHの溶液が挙げられる。
【0046】
特定の好ましい実施形態では、免疫精製は、抗ジヒドロキシビタミンD抗体を有している免疫粒子を用いて行う。特定の好ましい実施形態では、ジヒドロキシビタミンD代謝物および免疫粒子を含有している可能性のある試験サンプルを、インキュベーション、および免疫粒子に結合された抗ジヒドロキシビタミンD抗体に対するジヒドロキシビタミンD代謝物の結合のために、試験管中で混合する;この試験管を遠心分離してペレット中に免疫粒子を残す;その上清を除去する;その免疫粒子を、ペレットに溶液を添加することおよび再遠心分離することによって1回以上洗浄し;そのジヒドロキシビタミンD代謝物を、免疫粒子に溶出溶液を添加することによって溶出し、その試験管を遠心分離して、ペレットに免疫粒子を残し;そしてジヒドロキシビタミンD代謝物を含む上清を収集する。関連の好ましい実施形態では、その免疫精製は、抗ジヒドロキシビタミンD抗体を有している免疫粒子を含むカラムまたはカートリッジを用いて行う。好ましくは、このようなカラムまたはカートリッジを遠心分離して、ある方式で配列して、溶液がその中に含まれる免疫粒子を保持しながら流れることを可能にする。特定の好ましい実施形態では、その溶液を、重力、遠心分離または圧力によってそのカラムまたはカートリッジを強制的に通過させる。カラムの使用によって、インキュベーション、洗浄および溶出工程を行う容易さが改善され得る。いくつかの好ましい実施形態では、この免疫精製は、アフィニティークロマトグラフィー;好ましくは自動的アフィニティークロマトグラフィー;好ましくはアフィニティー−HPLC;または好ましくはGE Healthcare(以前はAmersham biosciences)が市販しているAKTA FPLCクロマトグラフィック・システムなどの自動的なシステムを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって行う。
【0047】
特定の実施形態では、サンプル調製および免疫精製は、市販のキット由来の方法および試薬を用いて行うことができる。例えば、IDS Inc(Fountain Hills,AZ)は、ラジオイムノアッセイ(RIA)の前にジヒドロキシビタミンDを抽出および免疫抽出するための指示および試薬を備える1,25−ジヒドロキシビタミンD125Iラジオイムノアッセイキット(Catalogue Number AA−54F1)を供給する。その全体が出典明記によって本明細書に援用されるキットである、カタログ番号AA−54F1 IDS,Inc.の「Product Support」文書を参照のこと。詳細には、IDS ジヒドロキシビタミンD RIAキットは、硫酸デキストラン/塩化マグネシウム脱脂質工程および1,25ジヒドロキシビタミンDに特異的なモノクローナル抗体に結合される粒子の懸濁物を含むイムノカプセルデバイスを用いる免疫抽出工程を含む。従って、本明細書に記載される方法の特定の実施形態では、このサンプルを、IDSのキットまたは方法、試薬およびIDSキットに示されるものと類似のジヒドロキシビタミンD免疫精製デバイスを用いてビタミンD免疫精製に供する。抗体およびジヒドロキシ精製の免疫精製デバイスはまた、ALPO Diagnostics(Salem,NH)が市販している1,25−(OH)2−ビタミンD ImmunoTube ELISA Kit(カタログ番号30−2113)とともに提供される。このキットは抗1,25−(OH)2ビタミン−D検出抗体(カタログ番号K2113A1)、1,25−ジヒドロキシビタミンDの免疫精製のためのImmunoTube columns(カタログ番号K2113.SI)ならびに1,25−ジヒドロキシビタミンDを免疫精製するために用いられ得る緩衝液および他の試薬を備える。本明細書に記載される方法の特定の実施形態では、ALPO Diagnosticsキットの1つ以上の成分を用いて1,25−ジヒドロキシビタミンDを免疫精製する。
【0048】
液体クロマトグラフィー
一般には、クロマトグラフィーは質量分析前に行われ、好ましくはこのクロマトグラフィーは液体クロマトグラフィー、より好ましくは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である。いくつかの好ましい実施形態では、このクロマトグラフィーはガスクロマトグラフィーではない。好ましくは、本発明の方法は、サンプルまたは目的のジヒドロキシビタミンD代謝物を質量分析の前にガスクロマトグラフィーにかけることなく行う。
【0049】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む液体クロマトグラフィー(LC)は、比較的遅い層流技術に依拠する。伝統的なHPLC分析は、カラム充填に依拠し、ここではカラムを通じたサンプルの層流はサンプルからの目的の分析物の分離の基礎である。当業者は、このようなカラムでの分離が拡散性プロセスであることを理解する。HPLCは生物学的サンプル中の化合物の分離に首尾よく適用されている。しかし、質量分析(MS)での分離および引き続く分析の前には大量のサンプル調製が必要であり、そのせいでこの技術は労働集約的になっている。さらに、ほとんどのHPLCシステムは質量分析をその完全能力までは利用せず、それによって1つのHPLCシステムだけを単一のMS装置に接続することになり、その結果多数のアッセイを行うためには長時間が必要となる。
【0050】
質量分析前にサンプルを浄化するためのHPLCの使用に関連する種々の方法が記載されている。例えば、Taylor et al.,Therapeutic Drug Monitoring 22:608〜12(2000)(血液サンプルの手動的な沈殿、続いて手動的なC18固相抽出、C18分析カラム上のクロマトグラフィーのためのHPLCへの注入、およびMS/MS分析(manual precipitation of blood samples,followed by manual C18 solid phase extraction,injection into an HPLC for chromatography on a C18 analytical column,and MS/MS analysis));ならびにSalm et al.,Clin.Therapeutics 22 Supl.B:B71−B85(2000)(血液サンプルの手動的な沈殿、続いて手動的なC18固相抽出、C18分析カラム上のクロマトグラフィーのためのHPLCへの注入、およびMS/MS分析(manual precipitation of blood samples,followed by manual C18 solid phase extraction,injection into an HPLC forchromatography on a C18 analytical column,and MS/MS analysis))。
【0051】
当業者は、本発明における使用に適切であるHPLC装置およびカラムを選択できる。クロマトグラフィーカラムは代表的には、化学部分の分離(すなわち、断片化)を容易にする媒体(すなわち、充填材料)を含む。この培地は、わずかな粒子を含んでもよい。この粒子は、種々の化学的部分と相互作用してその化学的部分の分離を促進する結合された表面を含む。適切な結合された表面の1つは、アルキル結合した表面などの疎水性結合した表面である。アルキル結合した表面は、C−4、C−8、またはC−18結合したアルキル基、好ましくはC−18結合した基を含み得る。クロマトグラフィーカラムは、サンプルを受容するための入口ポート、および分画されたサンプルを含む溶出液を廃棄するための出口ポートを備える。一実施形態では、サンプル(または精製前のサンプル)を入口ポートでカラムに加え、溶媒または溶媒混合物で溶出し、出口ポートで排出する。異なる溶媒モードを、目的の分析物を溶出するために選択してもよい。例えば、液体クロマトグラフィーは、勾配モード、アイソクラチックモード、または多型(すなわち、混合)モードを用いて行ってもよい。クロマトグラフィーの間、物質の分離は、溶出液の選択(「移動相」としても公知)、勾配溶出および勾配条件の選択、温度などのような変数によって達成される。
【0052】
特定の実施形態では、分析物は、目的の分析物がカラム充填物質によって可逆性に保持されるが、1つ以上の他の物質が保持されない条件下でカラムにサンプルを加えることによって精製され得る。これらの実施形態では、目的の分析物がカラムによって保持される第一の移動相条件を使用してもよく、そして第二の移動相条件を引き続き使用して、一旦、保持されていない物質が洗い流されれば、カラムから保持された物質を除去してもよい。あるいは、分析物は、目的の分析物が1つ以上の他の物質に比べて種々の速度で溶出する移動相条件下でカラムにサンプルを加えることによって精製され得る。このような手順は、サンプルの1つ以上の他の成分に対して目的の1つ以上の分析物の量を富化し得る。
【0053】
近年では、高乱流液体クロマトグラフィー(「HTLC」)はまた、高速液体クロマトグラフィーとも呼ばれ、質量分析によって分析前にサンプル調製に加えられている。例えば、Zimmer et al.,J.Chromatogr.A 854:23〜35(1999)を参照のこと;また米国特許第5,968,367号;同第5,919,368号;同第5,795,469号;および同第5,772,874号も参照のこと。伝統的なHPLC分析は、カラム充填に依拠し、ここではカラムを通したサンプルの層流はサンプルからの目的の分析物の分離を基礎とする。当業者は、このようなカラムの分離が拡散性のプロセスであることを理解するであろう。対照的に、乱流、例えば、HTLCのカラムおよび方法によって提供される乱流は、質量移動の速度を増強することができ、提供される分離特徴を改善すると考えられる。いくつかの実施形態では、高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)は、単独でまたは1つ以上の精製方法と組みわせて、質量分析の前に目的のジヒドロキシビタミンD代謝物を精製してもよい。このような実施形態では、サンプルを、分析物を捕獲するHTLC抽出カートリッジを用いて抽出してもよく、次いでイオン化の前に第二のHTLCカラム上で、または分析的HPLCカラム上に溶出およびクロマトグラフィーしてもよい。これらのクロマトグラフィー手順を含む工程は、自動的な形式で連結することが可能で、分析物の精製の間の操作者の関与のための要件を最小化することができる。この方法の特定の実施形態では、サンプルをHTLCカラム上のローディングの前に上記の様なタンパク質沈殿に供し;別の実施形態では、サンプルをタンパク質沈殿の供することなくHTLC上に直接ロードしてもよい。
【0054】
近年では、ビタミンD3代謝物のA環のヒドロキシル基のエピマー化はビタミンD3代謝物および生体内活性化の重要な局面であること、ならびに細胞型に依存して、ビタミンD3代謝物の3−Cエピマー(例えば、3−エピ−25(OH)D3;3−エピ−24,25(OH)23;および3−エピ−1,25(OH)23)は主要な代謝産物である場合が多いことが研究によって示されている。Kamao et al.,J.Biol.Chem.,279:15897〜15907(2004)を参照のこと。Kamaoらはさらに、キラルHPLCを用いて3−Cエピマーを含む、種々のビタミンD代謝物を分離する方法を提供する。従って、本発明はまた、(1)キラルクロマトグラフィー、好ましくはキラルHPLCによって1つ以上の特異的ビタミンD代謝物を分離すること;および(2)本明細書に記載されるような質量分析方法を用いて1つ以上のビタミンD代謝物の存在および/または量を検出することによって、サンプル中の1つ以上のビタミンD代謝物、好ましくはビタミンD3代謝物の特異的なエピマーの有無および/または量を検出する方法を提供する。Kamaoらが記載したキラルクロマトグラフィー手順は、本発明の方法に適切であるが、当業者は、やはり適切である多数の他のキラルクロマトグラフィー方法があることを理解する。好ましい実施形態では、この方法は、もしサンプル中にあれば、キラルクロマトグラフィーを用いて、25(OH)D3を3−エピ−25(OH)D3から分離する工程;および質量分析を用いてサンプル中の25(OH)D3および3−エピ−25(OH)D3の存在および/または量を検出する工程を含む。関連の実施形態では、この方法は、もしサンプル中にあれば、キラルクロマトグラフィーを用いて、1α,25(OH)23を3−エピ−1α,25(OH)23から分離する工程;および質量分析を用いてサンプル中の1α,25(OH)23および3−エピ−1α,25(OH)23の存在および/または量を検出する工程を含む。本発明の特定の実施形態では、キラルクロマトグラフィーを上記のHTLC方法と組み合わせて用いる。
【0055】
質量分析による検出および定量
サンプル中の1つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物の存在または量を検出するための方法が開示される。特定の局面では、この方法は、ジヒドロキシビタミンD代謝物(単数または複数)をイオン化する工程、このイオン(単数または複数)を質量分析によって検出する工程、およびこのイオン(単数または複数)の存在または量をサンプル中のジヒドロキシビタミンD代謝物(単数または複数)の存在または量に対して関連付ける工程を含む。この方法は、(a)サンプル中に存在する場合、ジヒドロキシビタミンD代謝物を精製する工程、(b)この精製されたジヒドロキシビタミンD代謝物をイオン化する工程、および(c)このイオンの存在または量を検出する工程であって、このイオンの存在または量をサンプル中のジヒドロキシビタミンD代謝物の存在または量に関連付ける工程を含み得る。好ましい実施形態では、このイオン化工程(b)は、(i)サンプル中に存在する場合、ジヒドロキシビタミンD代謝物をイオン化して、イオンを生成する工程;(ii)このジヒドロキシビタミンD代謝物イオンを質量分析によって単離して前駆イオンを得る工程、および(iii)単離された前駆イオンと不活性な衝突ガスとの間の衝突を果たして、質量分析計で検出可能な少なくとも1つの断片イオンを生成する工程を含み得る。特定の好ましい実施形態では、この前駆イオンはジヒドロキシビタミンD代謝物のプロトン化および脱水されたイオンである。
【0056】
さらに提供されるのは、試験サンプル中のジヒドロキシビタミンD代謝物の存在または量をタンデム型質量分析によって決定するための方法である。この方法は、(a)ジヒドロキシビタミンD代謝物のプロトン化および脱水された前駆イオンを生成する工程;(b)この前駆イオンの1つ以上の断片イオンを生成する工程;ならびに(c)工程(a)もしくは(b)またはその両方で生成した1つ以上のイオンの存在または量を検出して、この検出されたイオンをサンプル中のジヒドロキシビタミンD代謝物の存在または量に関連付ける工程を含み得る。
【0057】
本発明の特定の好ましい実施形態では、少なくとも1つの断片イオンが検出され、ここではこの前駆イオンおよび/または少なくとも1つの断片イオンの存在または量を、サンプル中のジヒドロキシビタミンD代謝物の存在または量に関連付ける。好ましくは、少なくとも1つの断片イオンが目的のジヒドロキシビタミンD代謝物について特異的である。いくつかの実施形態では、本発明の方法を用いて、単独のアッセイで2つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物を検出および定量してもよい。
【0058】
質量分析は、質量分析計を用いて行い、質量分析計には、断片化されたサンプルをイオン化し、さらなる分析のために荷電された分子を生成するためのイオン源を備える。例えば、サンプルのイオン化は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、大気圧化学イオン化(APCI)、光イオン化、電子イオン化、高速原子衝撃(FAB)/液体二次イオン化(LSIMS)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、フィールド・イオン化、フィールド・デソープション、熱スプレー/プラズマスプレーイオン化、および粒子ビームイオン化によって行ってもよい。当業者は、イオン化方法の選択は、測定されるべき分析物、サンプルのタイプ、検出器のタイプ、正対負のモードの選択などに基づいて決定できることを理解する。
【0059】
サンプルがイオン化された後、そのように生成された正に荷電されるかまたは負に荷電されたイオンを分析して、質量対電荷比(すなわち、m/z)を決定することができる。質量対電荷比を決定するための適切な分析装置としては、四重極アナライザー、イオントラップアナライザー、および飛行時間アナライザーが挙げられる。このイオンはいくつかの検出モードを用いて検出され得る。例えば、選択されたイオンを検出してもよく(すなわち、選択性イオンモニタリングモード(selective ion monitoring mode)(SIM)を用いる)、あるいはイオンは、走査モード、例えば、多重反応モニタリング(multiple reaction monitoring)(MRM)または選択反応モニタリング(selected reaction monitoring)(SRM)を用いて検出してもよい。好ましくは、質量対電荷比は、四重極アナライザーを用いて決定される。例えば、「四重極(quadrupole)」または「四重極イオントラップ(quadrupole ion trap)」装置では、振動高周波電界中のイオンは電極間で印加されるDC電位、RFシグナルの振幅およびm/zに対して比例する力を受ける。この電圧および振幅は、特定のm/zを有するイオンのみが四重極の長さを移動するが、他の全てのイオンが偏向されるように選択され得る。従って、四重極装置は、「質量フィルター」として、および「質量検出器」として両方で、この装置に注入されたイオンのために作用し得る。
【0060】
当業者は、「タンデム型質量分析」または「MS/MS」を使用することによってMS技術の分解能を増強し得る。この技術では、目的の分子から生成された前駆イオン(親イオンとも呼ばれる)をMS装置中で濾過してもよく、この前駆イオンが引き続き、断片化されて1つ以上の断片イオン(娘イオンまたは生成物イオンとも呼ばれる)を生じ、次にこれが第二のMS手順で分析される。前駆イオンの注意深い選択によって、特定の分析物によって生成されるイオンのみが断片化チャンバに渡され、ここで不活性ガスの原子と衝突して娘イオンを生じる。前駆イオンおよび断片イオンの両方が所定のセットのイオン化/断片化条件下で再現性の方式で産生されるので、MS/MS技術は、極めて強力な分析ツールをもたらすことができる。例えば、濾過/断片化の組み合わせを用いることによって妨害物質を排除することが可能で、特に、生体サンプルなどの複雑なサンプルでは有用であり得る。
【0061】
さらに、飛行時間アナライザー(「MALDI−TOF」)と連結されたマトリックス支援レーザー脱離イオン化などの技術での近年の進歩によって、極めて短いイオンパルスでフェントモルレベルで分析物を分析することが可能になる。飛行時間アナライザーとタンデムMSとを組み合わせる質量分析器も当業者には周知である。さらに、複数の質量分析工程を「MS/MS」として公知の方法で組み合せてもよい。MS/MS/TOF、MALDI/MS/MS/TOF、またはSELDI/MS/MS/TOF質量分析などの種々の他の組み合わせを使用してもよい。
【0062】
質量分析計は代表的には、使用者にイオンスキャンを提供する;すなわち、所定の範囲を超える特定のm/zを有する各々のイオンの相対量(例えば、100〜1000amu)。分析アッセイの結果、すなわち、質量スペクトルは、当該分野で公知の多数の方法によって、もとのサンプル中の分析物の量に対して関連付けられ得る。例えば、サンプルおよび分析パラメーターが注意深く制御されていることを考慮すれば、所定のイオンの相対量を、元の分子の相対量から絶対量に変換する表と比較することができる。あるいは、分子標準はサンプルとともに流されてもよく、標準的な曲線をそれらの標準から生成したイオンに基づいて構築してもよい。このような標準曲線を用いて、所定のイオンの相対量を、もとの分子の絶対量に変換してもよい。特定の好ましい実施形態では、内部標準を用いて、ジヒドロキシビタミンD代謝物の量を計算するための標準曲線を作製する。このような標準曲線を作製および用いる方法は、当該分野で周知であり、かつ当業者は適切な内部標準を選択できる。例えば、ジヒドロキシビタミンD代謝物の同位体を内部標準として用いてもよく、好ましい実施形態では、このジヒドロキシビタミンD代謝物は、重水素化されたジヒドロキシビタミンD代謝物、例えば、1α,25(OH)22−[26,26,26,27,27,27]−2Hもしくは1α,25(OH)23−[6,19,19’]−2Hまたはその両方である。もとの分子の存在または量に対してイオンの存在または量を関連付けるための多数の他の方法が当業者に周知である。
【0063】
本発明の方法の1つ以上の工程を、自動的な機械を用いて行ってもよい。特定の実施形態では、1つ以上の精製工程をオンラインで行い、さらに好ましくは全ての精製および質量分析工程を、オンライン方式で行ってもよい。
【0064】
特定の実施形態、例えば、前駆イオンがさらなる断片化のために単離されるMS/MSでは、衝突活性化解離を、さらなる検出のための断片イオンを生成するために用いる場合が多い。CADでは、前駆イオンは、不活性ガスとの衝突、および引く続く「単分子分解」と呼ばれるプロセスによる断片を通じてエネルギーを得る。十分なエネルギーは前駆イオン中に沈着され、その結果イオン内の特定の結合が振動エネルギーの増大によって破壊され得る。
【0065】
特に好ましい実施形態では、ジヒドロキシビタミンD代謝物は、以下の様なLC−MS/MSを用いて検出および/または定量される。そのサンプルを液体クロマトグラフィー、好ましくはHPLCに供し、このクロマトグラフィーのカラムからの液体溶媒の流れは、LC−MS/MSアナライザーの加熱されたネブライザーの界面に入り、その溶媒/分析物の混合物がその界面の加熱配管中で蒸気に変換される。噴霧溶媒に含まれたその分析物(すなわち、ジヒドロキシビタミンD代謝物)をその界面のコロナ放電針でイオン化し、これによって噴霧された溶媒/分析物混合物に大きい電圧を印加する。このイオン、すなわち、前駆イオンは、装置の開口部を通過して、第一の四重極に入る。四重極1および3(Q1およびQ3)は質量フィルターであって、それによって、その質量対電荷比(m/z)に基づいてイオン(すなわち、「前駆」イオンおよび「断片」イオン)を選択することが可能になる。四重極2(Q2)は衝突セルであり、ここでイオンが断片化される。質量分析計の第一の四重極(Q1)は、分析されるべき特定のジヒドロキシビタミンD代謝物の質量対電荷比を有する分子を選択する。特定のジヒドロキシビタミンD代謝物の前駆イオンの正確なm/z比を有する前駆イオンは衝突チャンバ(Q2)に通ることが可能であるが、任意の他のm/zを有する望ましくないイオンは四重極の横で衝突して排除される。Q2に入る前駆イオンは中性のアルゴンガス分子および断片と衝突する。この過程は衝突活性化解離(CAD)と呼ばれる。生成された断片イオンは、四重極3(Q3)に通過し、ここでこの望ましいジヒドロキシビタミンD代謝物の断片イオンが選択されるが、他のイオンは排除される。
【0066】
本発明の方法は、正または負のイオンモードのいずれかで行われるMS/MSを必要とする場合がある。当該分野で周知の標準的な方法を用いて、当業者は、四重極3(Q3)での選択のために用いられ得るジヒドロキシビタミンD代謝物の特定の前駆イオンの1つ以上の断片イオンを特定することができる。
【0067】
目的のジヒドロキシビタミンD代謝物の前駆イオンがアルコールまたはアミン基を含む場合、前駆イオンの脱水または脱アミノを丁重に呈する断片イオンが共通して形成される。アルコール基を含む前駆イオンの場合、脱水によって形成されるこのような断片イオンは、前駆イオンからの1つ以上の水分子の損失によって生じる(すなわち、前駆イオンと断片イオンとの間のm/zにおける相違は1つの水分子の損失について約18、または2つの水分子の損失について約36などである)。アミン基を含む前駆イオンの場合、脱アミノによって形成されるこのような断片イオンは、1つ以上のアンモニア分子の損失によって生じる(すなわち、前駆イオンと断片イオンとの間のm/zにおける相違は、1つのアンモニア分子の損失について約17、または2つのアンモニア分子の損失について約34などである)。同様に、1つ以上のアルコールおよびアミン基を含む前駆イオンは共通して、1つ以上の水分子および/または1つ以上のアンモニア分子の損失を呈する断片イオンを形成する(例えば、前駆イオンと断片イオンとの間のm/zの相違が1つの水分子の損失および1つのアンモニア分子の損失について約35である場合)。一般には、前駆イオンの脱水または脱アミノを呈する断片イオンは、特定の分析物について特定の断片イオンではない。
【0068】
イオンは検出器と衝突するので、それらは、デジタルシグナルに変換される電子のパルスを生じる。得られたデータを、コンピューターに中継して、これがイオン収集対時間のカウントをプロットする。得られた質量クロマトグラムは、伝統的なHPLC方法で作製したクロマトグラムと類似である。特定のイオンに相当するピーク下面積、またはこのようなピークの振幅を測定して、面積または振幅を目的の分析物(ビタミンD代謝物)の量と相関させる。特定の実施形態では、断片イオン(単数または複数)および/または前駆イオンの曲線下面積、またはピークの振幅を測定してジヒドロキシビタミンD代謝物の量を決定する。上記のとおり、所定のイオンの相対量を、内部分子標準、例えば、6D−25OHD3の1つ以上のイオンのピークに基づいた較正標準曲線を用いて、元の分析物、すなわち、ジヒドロキシビタミンD代謝物の絶対量に変換してもよい。
【0069】
本発明の特定の局面では、種々のイオンの量を、曲線下面積、またはピークの振幅を測定することによって決定し、そしてイオンの量の比を計算およびモニターする(すなわち、「娘イオン比モニタリング」)。本発明の特定の実施形態では、ジヒドロキシビタミンD代謝物の前駆イオンの量と1つ以上の断片イオンの量の比(単数または複数)を計算して、同様に測定したジヒドロキシビタミンD代謝物の分子標準の比(単数または複数)に対して比較してもよい。ジヒドロキシビタミンD代謝物の2つ以上の断片イオンがモニターされる実施形態では、種々の断片イオンについての比(単数または複数)を、前駆イオンに比べた断片イオン(単数または複数)の比の代わりに、またはそれに加えて決定してもよい。このような比がモニターされる実施形態では、分子標準に比較してサンプル中のイオン比に実質的な相違がある場合、サンプル中の分子は結果を妨げている可能性が高い。逆に、サンプルおよび分子標準におけるイオン比が同様であるならば、妨害がないという信頼が増大している。従って、サンプル中のこのような比をモニタリングすること、およびこの比を確証的な分子標準の比と比較することを用いて、この方法の正確性を増大してもよい。
【0070】
本発明の特に好ましい実施形態では、サンプル中の2つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物の有無または量を、上記のMS/MS方法を用いて単一アッセイで検出する。
【0071】
以下の実施例は、本発明の例示を助ける。これらの実施例は決して本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0072】
実施例1:LC−MS/MSによる1α,25−ジヒドロキシビタミンD3および1α,25−ジヒドロキシビタミンD2の決定
50μlの内部標準混合物(1α,25(OH)2D3−[6,19,19]−2Hを50pg/50マイクロリットルで用い、かつ1α,25(OH)2D2−[26,26,26,27,27,27]−2Hを200pg/50マイクロリットルで用いてスパイクした剥離血清)を試験管に添加し、次いで500μlの較正溶液、品質管理試験溶液、または血清標準、続いて内部標準混合物を添加した。その溶液を、50μlのMgCl2/硫酸デキストラン溶液を添加して、徹底的に混合することによって脱脂した。その試験管を次に、20分間遠心分離して、500μlの上清を、ALPCO Diagnostics(カタログ番号K2113.SI)の抗ジヒドロキシビタミンD免疫カプセルを含むImmunoTubeカートリッジに移した。そのカートリッジをシェーカー上で室温で2時間インキュベートした。次いでそのビーズを750μlの脱イオン水で3回洗浄した。そのビーズを、カートリッジを遠心分離することによって洗浄の間に排出させた。ビーズに結合したジヒドロキシビタミンDを、250μlのエタノールを用いて直接ガラスのHPLCインサート中に溶出し、次いで窒素下で完全に乾燥させた。次いでサンプルを、50μlの50マイクロリットルの4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)溶液(アセトニトリル中0.8mg/mL)を添加することによって誘導体化した。その誘導体化反応を、50μlの脱イオン水を添加することによって停止した。
【0073】
次いでこのHPLCインサートを、LC−MS/MSアナライザーへローディングするためにHPLCオートサンプラーに移した。LC−MS/MSは、検出器として大気圧化学イオン化(APCI)源を備えるThermo Finnigan LC−MS/MSアナライザー(Thermo Finnigan Quantum TSQ(S/N:TQU00655))を用いて行った。オートサンプラーを用いて、HPLCカラム上に90μLの抽出されたサンプル上清を注入した。液体クロマトグラフィーは、Synergi(商標)Max−RP C−12 Phenomenex カラム泳動で0.8mL/分で行った。2つの移動相溶液をHPLCに用いた:移動相Aは、HPLC等級の水中の0.1%ギ酸であり、移動相Bは100%のアセトニトリルであった。総泳動時間は1:31〜2:31(60秒)の衝突ウインドウで5.00分であった。開始条件(20秒)は50%の移動相Aおよび50%の移動相Bであった;この勾配(160秒)は50%の移動相Aおよび50%の移動相Bから2%の移動相Aおよび98%の移動相Bであった;洗浄工程(60秒)は2%の移動相Aおよび98%の移動相Bであった;そして再調節工程は50%の移動相Aおよび50%の移動相Bであった。
【0074】
HPLCカラムを出ていく液体溶媒の流れは、Thermo FinniganLC−MS/MSアナライザーの加熱されたネブライザーの界面に入り、ジヒドロキシビタミンD代謝物はAPCIを用いて正のモードで測定された。その溶媒/分析物混合物を最初に、この界面の加熱配管中で蒸気に変換した。その噴霧された溶媒中に含まれる分析物を、その界面のコロナ放電針によってイオン化し(正の電荷を加えた)、これによって噴霧された溶媒/分析物の混合物に大きい電圧を印加する。イオンはこの装置の開口部を通過して、第一の四重極に入る。四重極1および3(Q1およびQ3)は質量フィルターであって、その質量対電荷比(m/z)に基づいたイオンの選択を可能にする。四重極2(Q2)は衝突セルであって、ここでイオンが断片化される。
【0075】
質量分析計の第一の四重極(Q1)は、1α,25(OH)22、1α,25(OH)236D−1α,25(OH)22(内部標準)および−1α,25(OH)23(内部標準)の質量対電荷比を有する分子を選択した。これらのm/z比を有するイオン(下の表を参照のこと)によって、衝突チャンバへ(Q2)の通過が可能になったが、任意の他のm/zを有する望ましくないイオンは、四重極の横で衝突して、排除される。Q2に入るイオンは天然のアルゴンガス分子および断片と衝突する。生成された断片イオンは、四重極3(Q3)に通過して、ここで1α,25(OH)22、1α,25(OH)236D−1α,25(OH)22(内部標準)および−1α,25(OH)23(内部標準)の断片イオンが選択され(下の表を参照のこと)、他のイオンが排除される。以下の質量移行をバリデーションの間の検出および定量のために用いた:
【0076】
【表1】

【0077】
イオンは検出器と衝突するので、それらは、デジタルジグナルに変換される電子のパルスを生じる。得られたデータをコンピューターに中継して、これがイオン収集対時間のカウントをプロットする。得られた質量クロマトグラムは、伝統的なHPLC方法で作製したクロマトグラムと同様である。
【0078】
分析物および内部標準(1α,25(OH)2D3−[6,19,19’]−2Hおよび1α,25(OH)22−[26,26,26,27,27,27]−2H)ピークの面積比を用いて、較正曲線を構築し、次にこれを用いて分析物濃度を計算した。較正曲線を用いて、1α,25(OH)22および1α,25(OH)23の濃度を患者のサンプル中で定量した。
【0079】
実施例2:アッセイ内およびアッセイ間の正確性
1α,25(OH)22および1α,25(OH)23のストック溶液をプールした血清に添加して、低プール(Low Pool)(10〜15ng/mLの各々の代謝物)、中−低プール(Medium−Low Pool)(25〜35ng/mLの各々の代謝物)、中−高プール(Medium−High Pool)(55〜65ng/mLの各々の代謝物)および高プール(High Pool)(115〜130ng/mL)を作製した。各々の低(Low)、中−低(Medium−Low)、中−高(Medium−High)および高(High)のプール由来の4つのアリコートを、実施例1に記載されるLC−MS/MSプロトコールを用いて単一アッセイで分析した。以下の正確な値を決定した:
【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【0082】
本明細書において言及または引用される、論文、特許および特許出願、ならびに全ての他の文書および電気的に利用可能な情報の内容は、あたかも各々の個々の刊行物が参照によって援用されると詳細にかつ個々に示されるのと同じ程度までその全体が出典明記によって本明細書に援用される。出願人は、任意のこのような論文、特許、特許出願または他の物理的および電子的な文書由来の任意のかつ全ての物質および情報を本出願に物理的に組み込む権利を留保する。
【0083】
本明細書に例示的に記載される本発明は、本明細書に詳細に開示されていないなんらの要素(単数または複数)、制限(単数または複数)もなしに適切に実施され得る。従って、例えば、「含む(comprising)」、「含んでいる、包含している、挙げられる(including)」、「含有する、含んでいる(containing)」などの用語は、広範にかつ限定なしに読みとられるべきである。さらに、本明細書に使用される用語および表現は説明の用語として用いられており、限定ではなく、このような用語および表現の使用において、示されかつ記載される特徴の任意の等価物またはその一部を排除するという意図はないが、種々の改変が特許請求される本発明の範囲内で可能であるということが認識される。従って、本発明は、本明細書に具体化される本発明の好ましい実施形態および任意の特徴、修飾および変動によって詳細に記載されているが、本明細書の開示は当業者によって頼られる場合があり、このような改変および変動は、本発明の範囲内であるとみなされることが理解されるべきである。
【0084】
本発明は、本明細書に広範にかつ一般的に記載されている。一般的な開示内におさまっている下位の種および亜属の分類の各々も、本発明の一部を形成する。これは、本発明の一般的記述を包含しており、ただし、条件付きであるかまたは消極的な限定があり、除外される物質が本明細書に特に引用されるか否かにかかわらず、その属からなんらかの対象を取り除く。
【0085】
他の実施形態が以下の特許請求の範囲内である。さらに、本発明の特徴または局面は、マーカッシュグループに関して記載されており、当業者は本発明がマーカッシュグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関して本明細書に記載されていることを認識する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンデム型質量分析によってサンプル中の1つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物の量を決定するための方法であって:
(a)前記サンプルからジヒドロキシビタミンD代謝物を免疫精製する工程と;
(b)工程(a)由来の免疫精製したジヒドロキシビタミンD代謝物をHPLCによってさらに精製する工程と;
(c)工程(b)から得られたビタミンD代謝物の量をタンデム型質量分析によって決定する工程であって:
(i)前記1つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物の前駆イオンを生成する工程;
(ii)前記前駆イオンの1つ以上の断片イオンを生成する工程;および
(iii)工程(i)もしくは(ii)または両方で生成された1つ以上の前記イオンの量を検出して、検出されたイオンの前記量を前記サンプル中の前記1つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物の量に対して関連付ける工程、を含む工程と、
を含む上記方法。
【請求項2】
前記免疫精製工程が免疫粒子を利用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記免疫粒子が抗ジヒドロキシビタミンD抗体を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物が誘導体化に供されない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物が質量分析の前に誘導体化される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物が質量分析の前に4−置換の1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(TAD)で誘導体化される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物が質量分析の前に4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)で誘導体化される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物が、質量分析前に4’−カルボキシフェニル−TADで誘導体化される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物が1α,25(OH)22を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物が1α,25(OH)23を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物が1α,25(OH)22および1α,25(OH)23を含み、前記代謝物の前記量が単一のアッセイで決定される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物が1α,25(OH)22を含み;前記1α,25(OH)22が質量分析の前に4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)で誘導体化され;前記1α,25(OH)22の前記前駆イオンが586.37±0.5の質量/電荷比を有する、請求項1〜3、5、6、および9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上の断片イオンが314.12±0.5の質量/電荷比を有しているイオンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物が1α,25(OH)23を含み;前記1α,25(OH)23が質量分析の前に4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)で誘導体化され;前記1α,25(OH)23の前記前駆イオンが574.37±0.5の質量/電荷比を有する、請求項1〜3、5、6および9〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記1つ以上の断片イオンが、314.12±0.5の質量/電荷比を有しているイオンを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物が1α,25(OH)22を含み;前記1α,25(OH)22が質量分析の前に誘導体化されておらず;前記1α,25(OH)22の前記前駆イオンが411.35±0.5の質量/電荷比を有する、請求項1〜4、および9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上の断片イオンが、151.12±0.5および135.12±0.5の質量/電荷比を有しているイオンからなる群より選択される1つ以上のイオンを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物が1α,25(OH)23を含み;前記1α,25(OH)23が誘導体化されておらず;前記1α,25(OH)23の前記前駆イオンが399.35±0.5の質量/電荷比を有する、請求項1〜4、9〜11、16および17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ以上の断片イオンが、151.12±0.5および135.12±0.5の質量/電荷比を有しているイオンからなる群より選択される1つ以上のイオンを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
タンデム型質量分析によってサンプル中の1α,25(OH)22の量を決定するための方法であって:
(a)前記サンプル中で4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)を用いて前記1α,25(OH)22を誘導体化する工程;
(b)工程(a)由来の前記誘導体化された1α,25(OH)22をHPLCによって精製する工程;
(c)工程(b)から得られた586.37±0.5の質量/電荷比を有する前記誘導体化された1α,25(OH)22の前駆イオンを生成する工程;
(d)前記1つ以上の断片イオンのうちの少なくとも1つが314.12±0.5の質量/電荷比を有しているイオンを含む、前記前駆イオンの1つ以上の断片イオンを生成する工程;および
(e)工程(c)もしくは(d)またはその両方で生成される前記1つ以上のイオンの量を検出する工程、および前記検出されたイオンを前記サンプル中の前記1α,25(OH)22の量に対して関連付ける工程、を含む上記方法。
【請求項21】
前記サンプル中の前記1α,25(OH)22が工程(a)の前に免疫精製によって精製される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記免疫精製が免疫粒子を利用する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が前記サンプル中の1α,25(OH)23の量を決定する工程をさらに含む、請求項20〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記1α,25(OH)23が質量分析の前に4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)で誘導体化され;前記1α,25(OH)23の前記前駆イオンが574.37±0.5の質量/電荷比を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
サンプル中の1α,25(OH)23の量をタンデム型質量分析によって決定するための方法であって:
(a)前記サンプル中の前記1α,25(OH)23を4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)で誘導体化する工程と;
(b)工程(a)の誘導体化された1α,25(OH)23をHPLCによって精製する工程と;
(c)574.37±0.5の質量/電荷比を有している誘導体化された1α,25(OH)23の前駆イオンを生成する工程と;
(d)前記前駆イオンの1つ以上の断片イオンを生成する工程であって、前記1つ以上の断片イオンの少なくとも1つが314.12±0.5の質量/電荷比を有しているイオンを含む工程と;
(e)工程(c)もしくは(d)またはその両方で生成された前記イオンの1つ以上の量を検出する工程、および前記検出されたイオンを前記サンプル中の前記1α,25(OH)23の量に対して関連付ける工程と;
を含む上記方法。
【請求項26】
前記サンプル中の1α,25(OH)23が工程(a)の前に免疫精製によって精製される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記免疫精製が免疫粒子を利用する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記方法がさらに、前記サンプル中の1α,25(OH)22の量を決定する工程を含む、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記1α,25(OH)22が質量分析の前に4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)で誘導体化され;前記1α,25(OH)22の前記前駆イオンが586.37±0.5の質量/電荷比を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
サンプル中の1α,25(OH)22の量をタンデム型質量分析によって決定するための方法であって:
(a)1α,25(OH)22をHPLCによって精製する工程;
(b)工程(a)から得た411.35±0.5の質量/電荷比を有する1α,25(OH)22の前駆イオンを生成する工程;
(c)前記前駆イオンの1つ以上の断片イオンを生成する工程であって、前記1つ以上の断片イオンが151.12±0.5および135.12±0.5の質量/電荷比を有しているイオンからなる群より選択される1つ以上のイオンを含む、工程;および
(d)工程(b)もしくは(c)またはその両方で生成された前記イオンの1つ以上の量を検出する工程、および前記検出されたイオンを前記サンプル中の前記1α,25(OH)22の量に対して関連付ける工程であって、前記1α,25(OH)22が誘導体化されていない工程;
を含む上記方法。
【請求項31】
前記サンプル中の前記1α,25(OH)22が工程(a)の前に免疫精製によって精製される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記免疫精製が免疫粒子を利用する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記サンプル中の1α,25(OH)23の量を決定する工程をさらに含む、請求項30〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記1α,25(OH)23が質量分析の前に誘導体化されておらず;前記1α,25(OH)23の前記前駆イオンが399.35±0.5の質量/電荷比を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
サンプル中の1α,25(OH)23の量をタンデム型質量分析によって決定するための方法であって:
(a)前記1α,25(OH)23をHPLCによって精製する工程;
(b)工程(a)から得られた399.35±0.5の質量/電荷比を有する1α,25(OH)23の前駆イオンを生成する工程;
(c)前記前駆イオンの1つ以上の断片イオンを生成する工程であって、前記1つ以上の断片イオンが、151.12±0.5および135.12±0.5の質量/電荷比を有しているイオンからなる群より選択される1つ以上のイオンを含む工程;ならびに
(d)工程(b)もしくは(c)またはその両方で生成された前記1つ以上のイオンの量を検出する工程、および前記検出されたイオンを前記サンプル中の前記1α,25(OH)23の量に対して関連付ける工程であって、前記1α,25(OH)23が質量分析の前に誘導体化されていない工程;
を含む上記方法。
【請求項36】
前記サンプル中の1α,25(OH)23が工程(a)の前に免疫精製によって精製される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記免疫精製が免疫粒子を利用する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記サンプル中の1α,25(OH)22の量を決定する工程をさらに含む、請求項35〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記1α,25(OH)22が質量分析の前に誘導体化されておらず;前記1α,25(OH)22の前記前駆イオンが411.35±0.5の質量/電荷比を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
サンプル中の1つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物の量をタンデム型質量分析によって決定するための方法であって:
(a)前記サンプルから前記ジヒドロキシビタミンD代謝物を免疫精製する工程と;
(b)工程(a)から得られたビタミンD代謝物の量をタンデム型質量分析によって決定する工程であって
(i)前記1つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物の前駆イオンを生成する工程;
(ii)前記前駆イオンの1つ以上の断片イオンを生成する工程;および
(iii)工程(i)もしくは(ii)または両方で生成された1つ以上の前記イオンの量を検出して、検出されたイオンの前記量を前記サンプル中の前記1つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物の量に対して関連付ける工程を含む工程と、
を含む上記方法。
【請求項41】
工程(a)由来の免疫精製されたジヒドロキシビタミンD代謝物を質量分析の前に液体クロマトグラフィーによってさらに精製する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記1つ以上のジヒドロキシビタミンD代謝物が質量分析の前に4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)で誘導体化される、請求項40〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記サンプルが前記免疫精製の前にタンパク質沈殿に供される、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
6D−25OHD3が内部標準として用いられる、請求項40〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
C18固相抽出物をさらに含む、請求項40〜44のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2011−505014(P2011−505014A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536134(P2010−536134)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/084709
【国際公開番号】WO2009/070594
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(505063050)クエスト ダイアグノスティックス インヴェストメンツ インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】