説明

質量分析によるジヒドロテストステロンの検出法

質量分析を用いて試料中のジヒドロテストステロン(DHT)の量を決定する方法が提供されている。その方法は、一般に、試料中のDHTをイオン化し、イオン量を決定することにより、試料中のDHT量を決定することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する特許出願との交互参照
本出願は、2008年11月17日に出願された米国出願第12/272663号に基づく優先権を主張し、2008年10月6日に出願された米国仮出願第61/103202号に基づく利益を主張しており、その各々の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ジヒドロテストステロン(DHT)の検出に関する。特定の態様では、本発明は、質量分析によりジヒドロテストステロン(DHT)を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景に関する以下の説明は、本発明を理解する上での単なる一助として提供されており、本発明に対する先行技術を説明または構成すると認めるものではない。
【0004】
ジヒドロテストステロン(DHT)[(17β−ヒドロキシ−5a−アンドロスタン−3−オン)]は、分子量290.4ダルトンのステロイドホルモンである。DHTは、末梢組織によりテストステロンから合成される効力あるアンドロゲンである。過剰のDHT分泌は、テストステロンへの転換を介して座瘡、多毛および男性化を生じる恐れがある。DHTは、前立腺肥大の病因であり、血中測定を用いて、テストステロンのDHT転換阻害剤に対する服薬順守および応答を評価することができる。
【0005】
試料中のDHTを測定する質量分析法は、これまでに報告されている。例えば、Chang, Y., et al., Analyst 2003, 128:363-8; Caruso, D., et al., Neurochem Int 2008, 52:560-8; Wang, C., et al., Steroids 2008, XXX: XXX-XXX (doi: 10.1016/j.steroids.2008.05.004); Zhao, M., et al., Steroids 2004, 69: 721-6; Janzen, N., et al., J Chroma B 2008, 861: 117-22; Licca-Perez, H., et al., Steroids 2008, 73: 601-10; Kashiwagi, B., et al., J Andrology 2005, 26: 586-91; Kashiwagi, B., et al., Urology 2005, 66: 218-23; Umera, M., et al., Cancer Sci 2007, 99: 81-86 およびMohler他、米国特許出願第11/973127号(2007年10月8日出願)を参照されたい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タンデム質量分析を含めた質量分析により、試料中のジヒドロテストステロン(DHT)の量を検出する方法を提供する。好ましくは、本発明の方法は、質量分析の前に試料中のDHTを誘導体化することを含まない。
【0007】
一態様では、体液試料中の非誘導体化ジヒドロテストステロン(DHT)の量を決定する方法が提供される。この態様の方法は、(a)体液試料中のDHTを固相抽出により精製するステップ、(b)体液試料からDHTをイオン化し、質量分析で検出可能な1種または複数のDHTイオンを生成するステップであって、生成イオンが、質量電荷比291.10±0.50のDHT前駆イオンと、255.20±0.50および79.20±0.50からなる群より選択される1種または複数のDHTフラグメントイオンとからなる群から選択されるステップ、ならびに(c)1種または複数のDHTイオンの量を質量分析により決定するステップを含む。1種または複数のDHTイオンの量を測定した後、DHTイオン(複数可)の量を用いて、試験試料中の非誘導体化DHTの量を計算する。幾つかの実施形態では、該質量分析はタンデム質量分析である。幾つかの実施形態では、固相抽出および質量分光分析が、オンライン方式で行われる。幾つかの実施形態では、固相抽出が、高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)として行われる。幾つかの実施形態では、該方法は、質量分析の前に、好ましくはオンライン処理による高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、体液試料中のDHTを精製するステップを更に含む。幾つかの実施形態では、体液試料が血漿または血清である。幾つかの実施形態では、該方法は、5ng/dL以上200ng/dL以下の範囲内に定量限界を有する。幾つかの実施形態では、質量分析で検出した1種または複数のDHTイオン(複数可)の量を用いて、内部標準、好ましくは16,16,17−dジヒドロテストステロンとの比較により、試験試料中の非誘導体化DHTの量を計算する。上記列挙した実施形態の特徴は、本発明の方法で使用するために、制限なしに組み合わせてもよい。
【0008】
第2の態様では、試験試料中の非誘導体化ジヒドロテストステロン(DHT)の量を質量分析により決定する方法が提供される。この態様の方法は、(a)試験試料中のDHTを高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)を用いて精製するステップ、(b)試験試料からDHTをイオン化し、質量分析で検出可能な1種または複数のDHTイオンを生成するステップ、および(c)1種または複数のDHTイオンの量を質量分析により検出するステップを含む。こうした方法では、測定したDHTイオン(複数可)の量を用いて、試験試料中のDHT量を計算する。幾つかの実施形態では、該質量分析はタンデム質量分析である。幾つかの実施形態では、試験試料中のDHTの精製は、好ましくはオンライン処理用に構成された、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた精製を含む。幾つかの実施形態では、試験試料が、体液試料、好ましくは血漿または血清である。幾つかの実施形態では、質量分析で検出可能なDHTイオンは、質量/電荷比291.10±0.50、255.20±0.50および79.20±0.50のイオンからなる群から選択される1種または複数のイオンを含む。幾つかの実施形態では、DHTをイオン化するステップは、質量/電荷比291.10±0.50の前駆イオンの生成と、質量/電荷比255.20±0.50および79.20±0.50のイオンからなる群より選択される1種または複数のフラグメントイオンの生成とを含む。幾つかの実施形態では、該方法は、5.0ng/dL以上200ng/dL以下の範囲内に定量限界を有する。幾つかの実施形態では、質量分析で検出した1種または複数のDHTイオン(複数可)の量を用いて、内部標準、好ましくは16,16,17−dジヒドロテストステロンとの比較により、試験試料中の非誘導体化DHTの量を決定する。上記列挙した実施形態の特徴は、本発明の方法で使用するために、制限なしに組み合わせてもよい。
【0009】
第3の態様では、体液試料中の非誘導体化ジヒドロテストステロン(DHT)の量をタンデム質量分析により決定する方法が提供される。この態様の方法は、(a)体液試料からDHTを高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)により精製するステップ、(b)質量/電荷比291.10±0.50の前記DHTの前駆イオンを生成するステップ、(c)前駆イオンの1種または複数のフラグメントイオンを生成するステップであって、前記1種または複数のフラグメントイオンの少なくとも1種が、質量/電荷比255.20±0.50および79.20±0.50のフラグメントイオンの群から選択されるフラグメントイオンを含むステップ、ならびに(d)ステップ(b)もしくは(c)または両ステップで生成した前記イオンの1種または複数の量を検出するステップを含む。検出したイオンの量を用いて、体液試料中の非誘導体化DHTの量を計算する。幾つかの実施形態では、試験試料からのDHTの精製は、好ましくはオンライン処理用に構成された、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を更に含む。幾つかの実施形態では、体液試料が血漿または血清である。幾つかの実施形態では、該方法は、5.0ng/dL以上200ng/dL以下の範囲内に定量限界を有する。幾つかの実施形態では、質量分析で検出した1種または複数のDHTイオン(複数可)の量を用いて、内部標準、好ましくは16,16,17−dジヒドロテストステロンとの比較により、試験試料中の非誘導体化DHTの量を計算する。上記列挙した実施形態の特徴は、本発明の方法で使用するために、制限なしに組み合わせてもよい。
【0010】
本発明の方法は、液体クロマトグラフィーと質量分析との組合せを含む。好ましい実施形態では、液体クロマトグラフィーはHPLCである。好ましい一実施形態は、HPLCを単独で、または試料中のDHTを精製するために、例えばHTLCおよび/またはタンパク質の沈殿とろ過などの1種または複数の精製法と組み合わせて利用する。好ましい別の実施形態では、質量分析はタンデム質量分析(MS/MS)てある。
【0011】
本明細書に開示される方法のある種の好ましい実施形態では、質量分析が正イオンモードで行われる。代替として、質量分析が負イオンモードで行われる。本発明の実施形態では、例えば大気圧化学イオン化(APCI)またはエレクトロスプレーイオン化(ESI)を含め、各種のイオン化源を使用し得る。ある種の好ましい実施形態では、DHTが、正イオンモードのAPCIを用いて測定される。
【0012】
好ましい実施形態では、質量分析計で検出可能なDHTイオンは、質量/電荷比(m/z)291.10±0.50、255.20±0.50および79.20±0.50の正イオンからなる群から選択される。特定の好ましい実施形態では、DHT前駆イオンは、m/z291.10±0.50を有し、1種または複数のフラグメントイオンは、m/z255.20±0.50および79.20±0.50のイオンからなる群から選択される。
【0013】
好ましい実施形態では、別個に検出可能な内部標準を試料中に加え、試料中のその量も測定する。これらの実施形態では、試料中に存在する内因性DHT、内部標準双方の全部または一部をイオン化して、質量分析計で検出可能な複数のイオンを生成し、各々から生成した1種または複数のイオンを質量分析により検出する。
【0014】
好ましい内部標準は、16,16,17−dジヒドロテストステロン(16,16,17−dDHT)である。好ましい実施形態では、質量分析計で検出可能な内部標準イオンは、m/z294.10±0.50および258.20±0.50の正イオンからなる群から選択される。特定の好ましい実施形態では、内部標準前駆イオンは、m/z294.10±0.50を有し、内部標準フラグメントイオンは、m/z258.20±0.50を有する。
【0015】
好ましい実施形態では、DHTイオンの存在または量は、16,16,17−dジヒドロテストステロンなどの基準物質との比較により、試験試料中のDHTの存在または量と関連づけられる。
【0016】
ある種の好ましい実施形態では、DHTの定量限界(LOQ)は、5.0ng/dL以上200ng/dL以下の範囲内、好ましくは5.0ng/dL以上100ng/dL以下の範囲内、好ましくは5.0ng/dL以上50ng/dL以下の範囲内、好ましくは5.0ng/dL以上25ng/dL以下の範囲内、好ましくは5.0ng/dL以上15ng/dL以下の範囲内、好ましくは5.0ng/dL以上10ng/dL以下の範囲内、好ましくは約5.0ng/dLである。
【0017】
本明細書で使用する場合、別途明記しない限り、単数形「a」、「an」および「the」は、複数への言及を包含する。したがって、例えば「あるタンパク質」への言及は、複数のタンパク質分子を包含する。
【0018】
本明細書で使用する場合、「誘導体化」とは、2つの分子を反応させて、新たな分子を形成することを意味する。DHT分子などのあるアンドロゲン分子の誘導体化は、当技術分野でよく知られる多数の誘導体化試薬を用いて実施し得る。例えば、Kashiwagi, B., et al., J Andrology 2005, 26: 586-91、およびDHTのフルオロ−1−メチルピリジニウム−p−トルエンスルホネートによる抽出前の誘導体化を報告しているKashiwagi, B., et al., Urology 2005, 66: 218-23を参照されたい。本明細書で使用する場合、「非誘導体化」とは、誘導体化されていないことを意味する。したがって、誘導体化について示されていないジヒドロテストステロン(DHT)は、非誘導体化DHTである。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「精製」または「精製する」とは、対象とする被検物質(複数可)以外の物質を全て試料から除くことを指す訳ではない。そうではなく、精製とは、対象とする被検物質の検出を妨害する恐れのある試料中の他の成分に対して、対象とする1種または複数の被検物質の量を濃縮する手順を指す。各種の手段による試料の精製により、1種または複数の妨害性物質、例えば、質量分析による選択されたDHTの親または娘イオンの検出を妨害するかもしれない1種または複数の物質を相対的に低減させることが可能となる。相対的低減は、この用語を使用する場合、精製すべき材料中に対象とする被検物質と共に存在する任意の物質を、精製によって完全に除去することを要求していない。
【0020】
本明細書で使用する場合、用語「試験試料」とは、DHTを含有し得る任意の試料を指す。本明細書で使用する場合、用語「体液」とは、個人の体から単離できる任意の液体を意味する。例えば、「体液」は、血液、血漿、血清、胆汁、唾液、尿、涙、汗などを包含し得る。
【0021】
本明細書で使用する場合、用語「クロマトグラフィー」とは、液体または固体の固定相の周りまたはその上を流れる際、各化学的構成要素が差別的に分布する結果、液体または気体に運ばれた化学的混合物をその各成分に分離する方法を指す。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「液体クロマトグラフィー」または「LC」とは、流動性溶液が、微細物質のカラムまたはキャピラリー通路の中を均一に浸透する際、その液体の1種または複数の成分を選択的に遅延させる方法を意味する。その遅延は、この液体が固定相(複数可)に対して移動する際に起こる、1つまたは複数の固定相およびバルク液体(即ち移動相)間の混合物成分の分布から生じる。「液体クロマトグラフィー」の例には、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)が含まれる。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「高速液体クロマトグラフィー」または「HPLC」とは、固定相、通常は高密度充填カラムの中を圧力下に移動相を強制的に通すことにより、分離度を高める液体クロマトグラフィーを指す。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「高乱流液体クロマトグラフィー」または「HTLC」とは、分離を行う基礎として、アッセイ対象物質がカラム充填剤を通る際の乱流を利用する1種のクロマトグラフィーを指す。HTLCは、質量分析の前に、不特定の薬物2種を含有する試料を調製する際に適用されてきた。例えば、Zimmer et al., J Chromatogr A 854: 23-35 (1999)を参照されたい。HTLCが更に説明されている米国特許第5968367号、第5919368号、第5795469号および第5772874号も参照されたい。当業者は、「乱流」を理解している。液体が徐々に滑らかに流れるとき、その流れは「層流」と呼ばれる。例えば、低流速でHPLCカラムの中を移動する液体は、層流である。層流では、液体粒子の運動は規則的であり、一般に粒子は、直線となって移動する。速度が増すと、水の慣性が液体摩擦力に打ち勝ち、乱流が生じる。不規則な境界に接していない液体は、摩擦で減速した、または凹凸表面により逸れた液体より「速く流れる」。液体が乱流となって流れているとき、渦および渦流(または渦巻)となって流れ、層流のときより「抵抗」が大きい。液流が、何時層流または乱流であるかを決定する際の補助に、多くの参考文献が利用できる(例えば、Turbulent Flow Analysis: Measurement and Prediction, P. S. Bernard & J. M. Wallace, John Wiley & Sons, Inc., (2000; An Introduction to Turbulent Flow, Jean Mathieu & Julian Scott, Cambridge University Press (2001))。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「ガスクロマトグラフィー」または「GC」とは、試料混合物を蒸気化し、液体または粒子状固体からなる固定相を含んだカラムの中を移動するキャリアーガス(窒素またはヘリウムとして)の流れの中に注入し、固定相に対する各成分化合物の親和性に従って、その各化合物に分離するクロマトグラフィーを指す。
【0026】
本明細書で使用する場合、用語「大型粒子カラム」または「抽出カラム」とは、約50μmを超える平均粒子径を含んだクロマトグラフィーカラムを指す。これに関連して使用する場合、用語「約」とは±10%を意味する。
【0027】
本明細書で使用する場合、用語「分析用カラム」とは、被検物質の有無または量の決定を可能とするのに十分である、カラムから溶離する試料の物質間の分離が、行われるのに十分なクロマトグラフィー段数を有するクロマトグラフィーカラムを指す。このようなカラムは、保持された物質を保持されていない物質から分離または抽出して、更なる分析用に精製試料を得るという一般目的を有する「抽出カラム」とは、しばしば区別されている。これに関して使用する場合、用語「約」とは±10%を意味する。好ましい実施形態では、分析用カラムは直径が約4μmの粒子を含む。
【0028】
本明細書で使用する場合、用語「オンライン」または「インライン」とは、例えば「オンライン自動化方式」または「オンライン抽出」において使用する場合、操作者の介入を必要とせずに行われる手順を指す。対照的に、本明細書で使用する場合の用語「オフライン」とは、操作者の手操作の介入を必要とする手順を指す。したがって、試料が沈殿してしまった後、上清をオートサンプラー中に手操作で添加した場合、沈殿および添加のステップは、その後のステップからオフラインである。本法の各種実施形態では、1つまたは複数のステップは、オンライン自動化方式で行い得る。
【0029】
本明細書で使用する場合、用語「質量分析」または「MS」とは、質量により化合物を同定する分析法を指す。MSとは、質量電荷比または「m/z」に基づいてイオンを選別し、検出し、測定する方法を指す。MS技術には、一般に、(1)化合物をイオン化して、荷電化合物を形成するステップ、および(2)荷電化合物の分子量を検出し、質量電荷比を計算するステップが含まれる。該化合物は、適切な任意の手段によりイオン化し、検出し得る。「質量分析計」は、一般に、イオナイザーおよびイオン検出器を備えている。一般に、対象とする1種または複数の分子はイオン化され、続いてそのイオンは、質量分析装置の中に導入され、そこで磁界および電界が相俟って、イオンは、質量(「m」)および電荷(「z」)に依存した空間経路を辿る。例えば、「表面からの質量分析(Mass Spectrometry From Surfaces)」と題する米国特許第6204500号、「タンデム質量分析用の方法および装置(Methods and Apparatus for Tandem Mass Spectrometry)」と題する同第6107623号、「質量分析に基づくDNA診断(DNA Diagnostics Based On Mass Spectrometry)」と題する同第6268144号、「被検物質を脱離および検出するための表面強化した光不安定な結合および放出(Surface-Enhanced Photolabile Attachment And Release For Desorption And Detection Of Analytes)」と題する同第6124137号、Wright et al., Prostate Cancer and Prostatic Diseases 1999, 2: 264-76およびMerchant and Weinberger, Electrophoresis 2000, 21: 1164-67を参照されたい。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「負イオンモードで操作する」とは、負イオンを生成し、検出する質量分析法を指す。本明細書で使用する場合の用語「正イオンモードで操作する」とは、正イオンを生成し、検出する質量分析法を指す。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「イオン化」または「イオン化する」とは、1つまたは複数の電子単位に等しい正味電荷を有する、被検物質イオンを生成するプロセスを指す。負イオンは、1つまたは複数の電子単位の正味負電荷を有するものであるが、正イオンは、1つまたは複数の電子単位の正味正電荷を有するものである。
【0032】
本明細書で使用する場合、用語「電子イオン化」または「EI」とは、ガス相または気相の対象被検物質を、電子流と相互作用させる方法を指す。電子の被検物質との衝突で、被検物質イオンが生成し、次いでそれを質量分析法に掛け得る。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「化学イオン化」または「CI」とは、試薬ガス(例えばアンモニア)に電子衝撃を加え、試薬ガスイオンと被検物質分子との相互作用により、被検物質イオンを形成する方法を指す。
【0034】
本明細書で使用する場合、用語「高速原子衝撃」または「FAB」とは、高エネルギー原子(しばしばXeまたはAr)のビームを不揮発性試料に衝突させ、試料中に含まれる分子を脱離させ、イオン化する方法を指す。試験試料は、グリセロール、チオグリセロール、m−ニトロベンジルアルコール、18−クラウン−6クラウンエーテル、2−ニトロフェニルオクチルエーテル、スルホラン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンなどの粘性液体マトリックス中に溶解している。化合物または試料に適したマトリックスの選定は、経験によって行う。
【0035】
本明細書で使用する場合、用語「マトリックス支援レーザー脱離イオン化」または「MALDI」とは、不揮発性試料をレーザー照射に曝すことにより、試料中の被検物質を、光イオン化、プロトン化、脱プロトン化およびクラスター分解を含む各種イオン化経路によって、脱離させ、イオン化する方法を指す。MALDIの場合、試料は、被検物質分子の脱離を促進するエネルギー吸収性マトリックスと混合する。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「セルディ法(surface enhanced laser desorption ionization)」または「SELDI」とは、不揮発性試料をレーザー照射に曝すことにより、試料中の被検物質を、光イオン化、プロトン化、脱プロトン化およびクラスター分解を含む各種イオン化経路によって、脱離させ、イオン化する別の方法を指す。SELDIの場合、試料は、1種または複数の対象被検物質を選択的に保持する表面に、通常結合している。MALDIと同様に、このプロセスでも、エネルギー吸収性材料を用いてイオン化を促進し得る。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「エレクトロスプレーイオン化」または「ESI」とは、溶液を長さの短いキャピラリー管に沿って通過させ、管の末端に正または負の高い電位を印加する方法を指す。管の末端に到達する溶液は、溶媒蒸気中の微小液滴溶液のジェットまたはスプレーとなって蒸発する(霧化する)。この液滴ミストは、凝縮を防止し、溶媒を蒸発させるために少し加熱された蒸発室の中を流れる。液滴が小さくなるにつれ、表面電荷密度は増加し、遂には、類似の電荷同士間の自然反発のために、イオンならびに中性分子も放出される。
【0038】
本明細書で使用する場合、用語「大気圧化学イオン化」または「APCI」とは、ESIに類似の質量分析法を指すが、APCIでは、大気圧のプラズマ内で起こるイオン−分子間反応によりイオンを生成する。プラズマは、スプレーキャピラリーおよび対電極間の放電により維持される。次いで、イオンは、通常、差動排気された1組のスキマーステージの使用により、質量分析器の中へ抜き取られる。乾燥した予備加熱Nガスの逆流を用いて、溶媒の除去を改善してもよい。APCIにおける気相イオン化は、極性のより低い種の分析にとって、ESIより有効になり得る。
【0039】
本明細書で使用する場合の用語「大気圧光イオン化」または「APPI」とは、分子Mの光イオン化機構が、光吸収および電子放射による分子イオンM+の形成である質量分析の形態を指す。光子エネルギーは、通常イオン化ポテンシャルより僅かに高いので、分子イオンの解離が、よりし難くなる。多くの場合、クロマトグラフィーの必要性なしに試料の分析が可能になり得るので、相当程度に時間および経費が節約される。水蒸気またはプロトン性溶媒の存在下で、分子イオンは、Hを引き抜いてMH+を形成することができる。これは、Mが高いプロトン親和性を有する場合に、起こる傾向がある。M+およびMH+の和が一定であるので、これが定量正確度に影響することはない。プロトン性溶媒中の薬物化合物は、普通MH+として観察されるが、ナフタレンまたはテストステロンなどの非極性化合物は、普通M+を形成する。例えば、Robb et al., Anal. Chem. 2000, 72(15): 3653-3659を参照されたい。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「誘導結合プラズマ」または「ICP」とは、大部分の元素が原子化され、イオン化されるほどに十分高い温度で、試料が、部分イオン化ガスと相互作用する方法を指す。
【0041】
本明細書で使用する場合、用語「電界脱離」とは、不揮発性の試験試料をイオン化表面上に配置し、強力な電界を用いて、被検物質イオンを生成する方法を指す。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「脱離」とは、表面からの被検物質の除去および/または気相中への被検物質の進入を指す。レーザー脱離・熱脱離は、被検物質を含有する試料を、レーザーパルスにより気相中へ熱脱離させる技法である。レーザーは、金属基材の特製96ウェルプレートの背面に衝突する。レーザーパルスは基材を加熱し、その熱で、試料は気相中に移動する。次いで、気相試料は質量分析計の中へ抜き取られる。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「選択的イオンモニタリング」とは、比較的狭い質量範囲内、通常は約1質量単位のイオンだけを検出する、質量分析装置の検出方式である。
【0044】
本明細書で使用する場合、用語「多重反応方式」とは、時々「選択反応モニタリング」としても知られているが、前駆イオンおよび1つまたは複数のフラグメントイオンを選択的に検出する、質量分析装置の検出方式である。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「定量化限界」、「定量限界」または「LOQ」とは、測定値が定量的に意味をもつようになる点を指す。このLOQにおける被検物質の応答は、識別可能であり、個別的であり、再現性があり、相対標準偏差(RSD%)は20%であり、正確度は80%〜120%である。
【0046】
本明細書で使用する場合、用語「検出限界」または「LOD」とは、測定値が、それに伴う不確実性より大きい点である。LODは、ある値が、その測定に伴う不確実性を超えている点であり、ゼロ濃度における平均値のRSDの2倍と定義される。
【0047】
本明細書で使用する場合、体液試料中のDHTの「量」とは、ある容量の体液中で検出可能なDHTの質量を反映した絶対値を一般に指す。しかし、この量はまた、別のDHT量と比較した際の相対量も想定している。例えば、体液中のDHTのある量は、通常存在する対照または正常レベルのDHTより大きい量であってもよい。
【0048】
イオンの質量測定以外の定量的測定値に関して、本明細書で使用する場合の用語「約」とは、表示値プラスまたはマイナス10%を指す。質量分析装置は、所与の被検物質の質量を決定する際、わずかに変動しうる。イオンの質量またはイオンの質量/電荷比に関する場合、用語「約」とは、±0.50原子質量単位を指す。
【0049】
上記した本発明の概要は限定的なものではなく、本発明の他の特徴および利点は、本発明の以下の詳細な説明、および特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、DHTアッセイの定量限界を決定するために使用した、ブランクおよび標準品5点に関するアッセイの変動係数のプロットを示す図である。詳細は、実施例5に説明される。
【図2】図2は、LC−MS/MSアッセイを用いた、連続希釈ストック試料におけるDHTの定量の線形性を示す図である。詳細は、実施例6に記載される。
【図3】図3は、本発明の例示的HPLC−MS法によるDHT決定値と、参考のラジオイムノアッセイ(RIA)法によるDHT決定値との相関を示す図である。図3Aに示した相関は、線形回帰により決定した。図3Bに示した相関は、デミング分析により決定した。詳細は、実施例10に記載される。
【発明を実施するための形態】
【0051】
試料中のDHT量を測定する本発明の方法について説明する。より具体的には、試料中のDHTを検出し定量するための質量分析法について説明する。本方法は、高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)を利用して、選択された被検物質の精製を行い、この精製を質量分析(MS)法と組み合わせることにより、試料中のDHTを検出し、定量することができるハイスループットアッセイシステムを提供する。好ましい実施形態は、自動化DHTアッセイ用の大型臨床検査室における応用に特に良く適合している。
【0052】
本発明の方法に使用する適切な試験試料には、対象とする被検物質を含有しているかもしれない任意の試験試料が含まれる。幾つかの好ましい実施形態では、試料は、生物試料、即ち動物、細胞培養物、器官培養物などの任意の生物源から得られる試料である。ある種の好ましい実施形態では、試料は、イヌ、ネコ、ウマなどの哺乳動物から得られる。特に好ましい哺乳動物は、霊長類、最も好ましくは人間の男性または女性である。特に好ましい試料には、血液、血漿、血清、唾液、脳脊髄液または組織試料などの体液が含まれる。このような試料は、例えば患者、即ち疾患または異常の診断、予後診断または治療のために臨床環境に現れる男性または女性の生存者から取得し得る。試験試料は、好ましくは患者、例えば血清または血漿から得られる。約0.5mLの試料容量が好ましいが、約0.1mLの試料も分析することができる。
【0053】
本発明は、DHT定量アッセイ用のキットを想定している。本発明のDHT定量アッセイ用のキットは、少なくとも1回のアッセイに十分な量の内部標準を含んだキットを含むことができる。通常、このキットには、DHT量を決定する測定アッセイに使用する包装試薬を用いるために、有形形態となって記録された(例えば、紙または電子媒体上に収められた)使用説明書も含まれる。
【0054】
本発明の実施形態に使用する較正およびQCのプールは、「抜取り」血漿または血清(DHTが抜き取られた)、例えば、活性炭抜取りおよび脱脂質を二重に施した血清を用いて調製することができる。ヒトまたは非ヒトからの抜取り血漿または血清の供給源は全て、測定可能量のDHTを含有していないことを確かめるために、チェックすべきである。
【0055】
質量分析のための試料調製
試験試料は、室温未満で貯蔵し得る。室温未満で貯蔵した試験試料(対照を含む)は、先ず室温まで戻し、機械的な渦流で混合される。内部標準は、この時点で試験試料に添加し得る。
【0056】
試料は、次いで液液または固相抽出により質量分析用に調製し得る。各種の方法、例えば液体クロマトグラフィー、ろ過、遠心分離、薄層クロマトグラフィー(TLC)、キャピラリー電気泳動を含む電気泳動、イムノアフィニティー分離を含むアフィニティー分離、酢酸エチルもしくはメタノール抽出を含む抽出法、およびカオトロピック剤の使用、または上記方法などの組合せを含めた方法を使用して、質量分析の前に、試料中の他の成分(例えば、タンパク質)に対してDHTを濃縮し得る。
【0057】
タンパク質沈殿は、試験試料、特に、血清または血漿などの生物試験試料を調製する一方法である。このようなタンパク質精製法は、当技術分野でよく知られており、例えば、Polson et al., Journal of Chromatography B 2003, 785: 263-275は、本発明の方法における使用に適したタンパク質沈殿法を記載している。タンパク質沈殿を使用して、試料からタンパク質の大部分を除き、上清中にDHTを残し得る。試料は、沈殿タンパク質から上清液を分離するために、遠心分離してもよく、あるいは、試料は、沈殿タンパク質を除くために、ろ過してもよい。次いで、生成した上清またはろ液は、直接質量分光分析に、あるいは、液体クロマトグラフィーの後、質量分光分析に適用することができる。ある種の実施形態では、例えばギ酸法タンパク質沈殿などのタンパク質沈殿の使用により、質量分析またはHPLCと質量分析の前に、HTLCまたは他のオンライン抽出をする必要性が回避され得る。
【0058】
したがって幾つかの実施形態では、タンパク質沈殿の単独または1種もしくは複数の精製法との組合せが、質量分析前のDHTの精製に使用し得る。こうした実施形態では、該方法は、(1)対象試料のタンパク質沈殿を行うステップ、および(2)オンライン抽出またはHTLCを使用せずに、LC−質量分析計上に直接上清を添加するステップを含み得る。代替として、該方法は、(1)対象試料のタンパク質沈殿を行うステップ、および(2)質量分析の前に更に精製するために、オンライン抽出を用いてHTLC上に上清を添加するステップを含み得る。
【0059】
質量分析前に使用し得る試料精製の一手段は、液体クロマトグラフィー(LC)である。HPLCを含めたある種の液体クロマトグラフィー法は、比較的緩慢な層流技術に依拠している。従来のHPLC分析は、カラムを通る試料の層流が、試料から対象被検物質を分離する基礎になるカラム充填に依拠している。当業者であれば、このようなカラムにおける分離は拡散過程であり、それには、DHTとの使用に適したHPLCの装置およびカラムを選択し得ることが理解されよう。クロマトグラフィー用カラムは、通常、化学成分の分離(即ち分別)を促進するために、媒体(即ち充填材料)を含んでいる。媒体は、微小な粒子を含み得る。粒子は、化学成分の分離を促進するために、多様な化学成分と相互作用する結合表面を含んでいる。適切な一結合表面は、アルキル結合またはシアノ結合表面などの疎水性結合表面である。アルキル結合表面は、C−4、C−8、C−12またはC−18結合アルキル基を含み得る。好ましい実施形態では、該カラムはシアノカラムである。クロマトグラフィー用カラムは、固相抽出またはHTLCカラムから直接または間接に試料を受入れる入口ポート、および分別試料を含んだ排出液を放出する出口ポートを備えている。
【0060】
一実施形態では、試料は、LCカラムの入口ポートに適用し、溶媒または溶媒混合物で溶離し、出口ポートで放出し得る。対象被検物質(複数可)を溶離するために、様々な溶媒モードを選択し得る。例えば、液体クロマトグラフィーは、勾配モード、定組成モードまたは多種(即ち混合)モードを用いて行い得る。クロマトグラフィーの間に、物質の分離は、溶離液(「移動相」の名でも知られている)の選定、溶離モード、勾配条件、温度などの変量により起こる。
【0061】
ある種の実施形態では、ある被検物質は、その対象被検物質がカラム充填材により可逆的に保持される一方、他の1種または複数の物質は保持されない条件の下で、カラムに試料を適用することにより精製し得る。こうした実施形態では、対象被検物質がカラムに保持される第1の移動相条件を採用し、続いて、非保持物質を洗い出した後、第2の移動相条件を採用して、カラムから保持物質を除くことができる。代替として、ある被検物質は、その対象被検物質が、他の1種または複数の物質と比較して差速度で溶離する移動相条件の下で、カラムに試料を適用することによっても精製し得る。このような手順により、他の1種または複数の試料成分に比して、1種または複数の対象被検物質の量を濃縮し得る。
【0062】
好ましい一実施形態では、HPLCは、疎水性カラムクロマトグラフィーシステムで行われる。ある種の好ましい実施形態では、シアノ分析カラム(例えば、Thermo Scientific,Inc.のBetaBasic Cyano分析カラム(粒径5μm、50×2.1mm)または同等品)が使用される。ある種の好ましい実施形態では、移動相としてHPLC用の0.1%ギ酸水溶液および100%メタノールを用いて、HTLCおよび/またはHPLCが行われる。
【0063】
バルブおよびコネクター配管系を注意深く選定することにより、必要であれば2本以上のカラムを接続することによって、物質が、何ら手操作ステップを必要とせずにカラム間を通過するようにしてもよい。好ましい実施形態では、バルブおよび配管系の選定は、必要なステップを行うように予めプログラムされたコンピュータにより制御される。最も好ましくは、クロマトグラフィーシステムは、検出システム、例えばMSシステムにもこのようなオンライン方式で接続される。したがって、操作者は、オートサンプラー中に試料トレーを配置でき、残りの操作は、コンピュータ制御の下で行って、選択された全試料の精製および分析が実現される。
【0064】
幾つかの実施形態では、HTLCを使用して、質量分析の前にDHTを精製してもよい。このような実施形態では、試料は、被検物質を捕捉するHTLC抽出カートリッジを使用して抽出し、その後溶離し、第2のHTLCカラムまたは分析用HPLCカラム上でクロマトグラフィーを行った後、イオン化してもよい。例えば、HTLC抽出カートリッジによる試料抽出は、大粒径(50μm)充填カラムを用いて実現し得る。このカラムから溶出した試料は、次いで、質量分析の前に更に精製するために、シアノ分析カラムなどのHPLC分析カラムに移し得る。クロマトグラフィーのこうした操作に関わるステップは、自動化方式で連結し得るので、被検物質の精製中に操作者が関わる必要性を最小限に抑えることができる。この特徴により、時間およびコストが節約される結果となり、誤操作の機会を排除し得る。
【0065】
質量分析による検出および定量
各種の実施形態では、試験試料中に存在するDHTは、当業者に公知の任意の方法によりイオン化し得る。質量分析は、質量分析計を用いて行われ、その中には分別試料をイオン化し、更なる分析のために荷電分子を製造するためのイオン源が含まれる。例えば、試料のイオン化は、電子イオン化、化学イオン化、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、光子イオン化、大気圧化学イオン化(APCI)、光イオン化、大気圧光イオン化(APPI)、高速原子衝撃(FAB)、液体二次イオン化(LSI)、マトリックス支援レーザー脱着イオン化(MALDI)、電界イオン化、電界脱着、サーモスプレー/プラズマスプレーイオン化、セルディ法(SELDI)、誘導結合プラズマ(ICP)および粒子ビームイオン化によって行い得る。当業者であれば、イオン化法の選定は、測定すべき被検物質、試料の種類、検出器の種類、正対負モードの選定などに基づいて決定し得ることを理解されよう。
【0066】
DHTは、正または負のモードでイオン化し得る。好ましい実施形態では、DHTは、正モードでAPCIによりイオン化される。関連する好ましい実施形態では、DHTイオンはガス状態にあり、不活性衝突ガスは、アルゴンまたは窒素、好ましくはアルゴンである。
【0067】
質量分析技法では、一般に、試料をイオン化した後、その結果創出された正荷電または負荷電イオンを分析することにより、質量電荷比を決定し得る。質量電荷比を決定する適切な分析計には、四重極分析計、イオントラップ分析計および飛行時間分析計が挙げられる。イオンは、幾つかの検出モードを用いて検出し得る。例えば、選択イオンは、即ち選択的イオンモニタリングモード(SIM)を用いて検出し得る、あるいはイオンは、スキャンモード、例えば多重反応モニタリング(MRM)または選択反応モニタリング(SRM)を用いて検出し得る。好ましくは、質量電荷比は、四重極分析計を用いて決定される。例えば、「四重極」または「四重極イオントラップ」装置では、高周波振動電界中のイオンは、電極間に印加されたDC電位、RFシグナルの振幅、および質量/電荷比に比例した力を受ける。電圧および振幅は、特定の質量/電荷比を有するイオンだけが、四重極の長さを通行するが、他の全てのイオンは偏向するように、選択し得る。したがって、四重極装置は、装置中に入射されたイオンにとって、「質量フィルター」としても「質量検出器」としても作用し得る。
【0068】
MS技法の分解能は、「タンデム質量分析」即ち「MS/MS」を採用することにより、増強し得る。この技法では、対象分子から生成した前駆イオン(親イオンとも呼ばれる)を、MS装置中で選別することができ、その前駆イオンは、続いてフラグメント化されて、1種または複数のフラグメントイオン(娘イオンまたはプロダクトイオンとも呼ばれる)を産生し、次いでそれを第2のMS手順で分析する。前駆イオンの注意深い選択により、ある種の被検物質が生成するイオンだけが、フラグメンテーション室へと通過し、そこで不活性ガスの原子と衝突して、フラグメントイオンを生成する。前駆およびフラグメントの両イオンは、所与の1組のイオン化/フラグメンテーション条件下で、再現性良く生成するので、MS/MS技法は、極めて強力な分析ツールを提供し得る。例えば、選別/フラグメンテーションの組合せは、妨害物質の除去に使用でき、生物試料などの複雑な試料において特に有用になり得る。
【0069】
質量分析計は、通常、ユーザーにイオンスキャン、即ち所与の範囲(例えば、100〜1000amu)にわたる質量/電荷が特定の各イオンの相対存在量を与える。被検物質アッセイの結果、即ちマススペクトルは、当技術分野で公知の多くの方法によって、元の試料中の被検物質量と関連付けることができる。例えば、サンプリングおよび分析パラメーターが注意深く制御されていることを前提とすれば、所与のイオンの相対存在量は、その相対存在量を元の分子の絶対量に換算する表と比較し得る。あるいは、分子標準品を試料と共に操作し、そのような標準品から生成したイオンに基づいて、標準曲線を構築してもよい。このような標準曲線を用いて、所与のイオンの相対存在量は、元の分子の絶対量に換算し得る。ある種の好ましい実施形態では、内部標準を使用してDHT量を計算するための標準曲線を生成する。このような標準曲線を生成し、使用する方法は、当技術分野でよく知られており、当業者は、適当な内部標準を選択することができる。例えば、同位体標識したステロイドを内部標準として使用してもよく、ある種の好ましい実施形態では、その標準は、16,16,17−dジヒドロテストステロン(16,16,17−dDHT)である。イオン量を元の分子の量に関連付ける他の多くの方法は、当業者によく知られている。
【0070】
該方法の1つまたは複数のステップは、自動機械を用いて行い得る。ある種の実施形態では、1つまたは複数の精製ステップを、オンラインで行い、より好ましくは、精製および質量分析の全ステップをオンライン方式で行い得る。
【0071】
更なるフラグメンテーションのために前駆イオンを単離する、MS/MSなどのある種の実施形態では、衝突活性化解離が、更なる検出用のフラグメントイオンを生成するために、しばしば使用される。CADでは、前駆イオンは、不活性ガスとの衝突によりエネルギーを獲得し、続いて「単分子分解」と称する過程によりフラグメントになる。前駆イオン内の特定の結合を、振動エネルギーの増加により破壊できるように、十分なエネルギーをその前駆イオン中に沈積しなければならない。
【0072】
特定の好ましい実施形態では、DHTは、MS/MSを用いて以下のように検出および/または定量される。試料は、液体クロマトグラフィー、好ましくはHTLCに掛けられる。クロマトグラフィー用カラムからの液体溶媒は、MS/MS分析計の加熱されたネブライザーインターフェイスに入り、溶媒/被検物質混合物は、そのインターフェイスの加熱管において蒸気に変換される。霧化した溶媒中に含有される被検物質(例えばDHT)は、霧化した溶媒/被検物質混合物に大きな電圧を印加する、インターフェイスのコロナ放電針によりイオン化される。そのイオン、例えば前駆イオンは、装置のオリフィスを通過して第1の四重極に入る。四重極1および3(Q1およびQ3)は、質量フィルターであり、質量電荷比(m/z)に基づいてイオンの選択(即ち、Q1およびQ3においてそれぞれ「前駆」および「フラグメント」イオンの選択)を可能にする。四重極2(Q2)は、衝突セルであり、そこでイオンがフラグメント化される。質量分析計の第1の四重極(Q1)は、DHTの質量電荷比を有する分子を選択する。正しい質量/電荷比を有する前駆イオンは、衝突室(Q2)中に通過するのを許容されるが、他の任意の質量/電荷比を有する不要イオンは、その四重極の側面と衝突し、除去される。Q2に入ってくる前駆イオンは、中性のアルゴンガス分子と衝突し、フラグメントになる。この過程は、衝突活性化解離(CAD)と呼ばれる。生成したフラグメントイオンは、四重極3(Q3)の中へ通過し、そこでDHTのフラグメントイオンは選択されるが、他のイオンは除去される。
【0073】
該方法は、正イオンまたは負イオンいずれかのモード、好ましくは正イオンモードで行われるMS/MSを伴い得る。当業者は、当技術分野でよく知られる標準法を用いて、四重極3(Q3)での選択に使用し得る、特定のDHT前駆イオンの1種または複数のフラグメントイオンを同定することができる。
【0074】
イオンが検出器と衝突する際、電子のパルスが生成し、デジタル信号に変換される。取得データは、コンピュータにリレーされ、収集イオン数対時間がプロットされる。生成したマスクロマトグラムは、従来のHPLC法で生成したクロマトグラムに類似している。特定のイオンに対応するピーク下の面積、またはこのようなピークの振幅が測定され、その面積または振幅は、対象被検物質の量と相関付けされる。ある種の実施形態では、フラグメントイオン(複数可)および/または前駆イオンの曲線下面積またはピークの振幅を測定して、DHT量を決定する。上述したように、所与のイオンの相対存在量は、16,16,17−dジヒドロテストステロンなどの内部分子標準の1つまたは複数のイオンピークに基づく較正標準曲線を用いて、元の被検物質、例えばDHTの絶対量に換算し得る。
【0075】
以下の実施例は、本発明の例示に役立つ。これらの実施例は、本方法の範囲を制限することを意図するものではない。
【実施例1】
【0076】
血清試料および試薬の調製
血漿試料は、添加剤を用いずにVacutainerチューブ中に血液を集めることにより調製し、室温で約30分間凝固させた。次いで、試料を遠心分離し、血清を細胞から分離した。肉眼で溶血を示した試料は、除外した。
【0077】
3種のストック溶液をDHT(Sigma Chemical Company,Cat.No.A7755または同等品)で調製した。メタノール中1mg/mLのDHTストック標準溶液を、容量フラスコ中で調製した。次いで、DHTストック標準溶液の一部を1:100で希釈して、メタノール中1,000,000ng/dLのDHT中間ストック標準溶液を調製した。中間ストック標準溶液の一部を用いて、メタノール中2,000ng/dLの第2中間ストック標準溶液を調製した。第2中間ストック標準溶液を用いて、抜取り血清中200ng/dLのDHT使用標準液を調製した。
【0078】
16,16,17−dジヒドロテストステロン(CDN,Cat.No.D−5079または同等品)を用いて、重水素化メタノール中1.0mg/mLの16,16,17−dジヒドロテストステロンの内部標準ストック溶液を調製し、これを用いて、重水素化メタノール中1,000,000ng/dLの16,16,17−dジヒドロテストステロンの中間内部標準ストック溶液を調製した。この中間ストック溶液を1.0mL用いて、水中1000ng/dLの16,16,17−dジヒドロテストステロンの第2中間内部標準ストック溶液を調製した。500ng/dLの16,16,17−dジヒドロテストステロンの内部標準使用溶液は、200mLの容量フラスコ中で、第2中間内部標準ストック溶液20mLを脱イオン水で定容量まで希釈することにより、調製した。
【実施例2】
【0079】
液体クロマトグラフィーを用いた試料からのDHTの抽出
室温の標準、対照および患者試料を、機械的渦流で最初に混合することにより、液体クロマトグラフィー(LC)用に調製した。
【0080】
次いで、渦流撹拌した標準、対照および患者試料各々の300μLを96ウェルプレートのウェルに移した。次いで、20%ギ酸300μLおよび500ng/mLの16,16,17−dジヒドロテストステロン内部標準の使用溶液100μLを、各々に添加した。次いで、プレートを渦流撹拌し、室温で30分間インキュベートした後、オートサンプラーの引出し中に載せた。
【0081】
試料注入は、Aria OS V1.5またはそれより新しいソフトウェアを用いたCohesive Technologies Aria TLX−1 HTLCで行った。オートサンプラーの洗浄液は、60%アセトニトリル、30%イソプロパノールおよび10%アセトン(v/v)を用いて調製した。
【0082】
このHTLCシステムは、上記調製試料100μLを、大型粒子を充填したTurboFlowカラム(Cohesive Technologies製の50×1.0mm、50μm C−18カラム)中に自動注入した。試料に、高流速の負荷を掛けて(5.0mL/分、負荷試薬0.1%ギ酸)、抽出カラム内に乱流を起こした。この乱流によって、カラム中の大型粒子へのDHTの最適結合、ならびに残存タンパク質および屑の廃液への通過が確実となった。
【0083】
負荷を掛けた後、流れ方向を逆転させ、試料を分析カラム(Thermo Scientific、BetaBasic Cyanoカラム、粒径5μm、50×2.1mm)へ溶離させた。二元HPLC勾配を分析カラムに適用して、DHTを試料中に含有される他の被検物質から分離した。移動相Aは0.1%ギ酸であり、移動相Bは100%メタノールであった。HPLC勾配は、3%有機勾配から始まり、およそ4.75分で50%に上昇した。次いで、分離した試料をMS/MSに掛けて、DHTを定量した。
【0084】
類似の被検物質に対するDHTの特異性を、以下の化合物(各々、抜取り血清中1000ng/mLの濃度で)について決定した。即ち、テストステロン、エストリオール、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、エストロン、プレグネノロン、エストラジオール、アンドロステンジオン、17−OHプレグネノロン、コルチコステロンおよびアルドステロンであった。これらの化合物のいずれに対しても、有意な妨害は認められなかった。
【実施例3】
【0085】
MS/MSによるDHTの検出および定量
MS/MSは、Finnigan TSQ Quantum Ultra MS/MSシステム(Thermo Electron Corporation)を用いて行った。全てThermoElectron製の以下のソフトウェアプログラムを、本明細書に記載の実施例で使用した。即ちQuantum Tune Master V1.2以上、Xcalibur V 1.4SR1以上、TSQ Quantum 1.4以上、およびLCQuan V 2.0 with SP1以上であった。分析カラムを出ていく液体溶媒/被検物質は、Thermo Finnigan MS/MS分析計の加熱ネブライザーインターフェイスまで流れた。溶媒/被検物質の混合物は、そのインターフェイスの加熱管にて蒸気に変換された。霧化溶媒中の被検物質は、APCIによりイオン化された。
【0086】
イオンは、第1の四重極(Q1)まで通過し、そこで質量電荷比291.10±0.50m/zのイオンが選択された。第2の四重極(Q2)に入るイオンは、アルゴンガスと衝突して、イオンフラグメントを生成し、それらが第3の四重極(Q3)まで通過して、更に選択された。同時に、同位体希釈質量分析を用いる同じプロセスを、内部標準の16,16,17−dジヒドロテストステロンで実施した。以下の質量遷移を用いて、正極性に関する検証中に検出および定量を行った。
【0087】
【表1】

【実施例4】
【0088】
アッセイ内およびアッセイ間の精密度および正確度
アッセイの報告可能な推定範囲を包含するように、濃度25、75および150ng/dLにDHTを混合した活性炭抜取りヒト血清(Golden West Biologicals,Temecula,CA)から、3種の品質管理(QC)プールを調製した。
【0089】
3種のQCプール各々からの一定分量10点を、単一アッセイで分析して、アッセイ内の試料の変動係数(CV(%))を決定した。以下の値が決定された。
【0090】
【表2】

【0091】
3種のQCプール各々からの一定分量10点を、10日間にわたって分析して、アッセイ間の変動係数(CV(%))を決定した。以下の値が決定された。
【0092】
【表3】

【実施例5】
【0093】
分析感度:検出限界(LOD)および定量限界(LOQ)
LOQは、測定値が定量的に意味を持つようになる点である。このLOQにおける被検物質の応答は、精密度20%および正確度80%〜120%で、識別可能で、個別的であり、再現性がある。LOQは、1.25、2.5、5.0、10.0および20.0ng/dLのDHT濃度を混合した被検物質抜取り血清標品(各レベルにおいて同一標品5点)をアッセイした後、CVを決定することにより、決定した。その結果をプロットし(図1に示す)、曲線からLOQは、5.0ng/dLであると決定した。
【0094】
LODは、ある値が、その測定に伴う不確実性を超えている点であり、ゼロ濃度からの標準偏差の2倍と定義される。DHTアッセイのLODを決定するために、活性炭抜取り血清のブランク試料を、同一試料10点で操作した。これらアッセイの結果は、平均値1.0ng/dLおよび標準偏差0.5ng/dLで統計的に分析した。したがって、DHTのLODは2.0ng/dLであった。
【実施例6】
【0095】
報告可能なアッセイ範囲および線形性
アッセイにおけるDHT検出の線形性を確立するために、ゼロ標準と割り当てたブランク1点、および10〜200ng/dLの範囲の濃度で混合した血清標準5点をアッセイした。試験した濃度範囲(0〜200ng/dL)の相関値は、0.995超であった。200ng/dLまでの標準曲線の線形性を示すグラフを図2に示す。
【実施例7】
【0096】
マトリックス特異性
マトリックス特異性は、患者の血清試料を、以下のマトリックス:被検物質抜取り血清(活性炭抜取り血清、Cat.No.SP1070、Golden West Biologicals,Inc.)、正常ヒト脱線維素血清(Cat.No.1101−00、Biocell Labs,Carson,CA90746、または同等品)、および脱イオン(DI)水で2倍および4倍に希釈することにより、評価した。2つの血清試料には、DHTの次の濃度:92.4ng/dL、64.1ng/dLを混合した。次いで、混合した血清を上記のマトリックスで2×および4×に希釈し、分析した。この試験は、全3種のマトリックスが、線形範囲を超える被検物質の値の試料を希釈するために使用できることを示した。この試験の結果を表4に示す。
【0097】
【表4】

【実施例8】
【0098】
回収試験
品質管理(QC)試料を回収試験のために用いた。低量、中量および高量のQC試料は、それぞれ濃度112.5、137.5および175ng/dLにDHTを混合した。
【0099】
混合したDHT試料の回収試験を行った(各濃度で5回のアッセイ)。絶対回収率は、プール試料中に検出したDHT濃度を試料中の予想DHT濃度で割ることにより、計算した。平均回収率は、それぞれ89.01%、90.15%および94.93%であった。全ての回収率は、許容された、即ち、80%〜120%の範囲内にあった。
【実施例9】
【0100】
標品試験
標品は、添加剤(血清用)のない試料採取管、血清分離管(SST)、EDTA管またはヘパリンナトリウム管に由来していた(試料36点、18点が男性から、18点が女性から)。男性4点および女性1点のEDTA試料、ならびに女性1点のヘパリン試料は、肉眼で溶血または脂肪血のいずれかであったため、分析に不適切として除外した。残りの試料は、様々な試料タイプに対する本方法の適用性を調べるために試験した。データ解析の結果、様々な試料タイプで検出されるDHTレベル間に殆ど差がないことが判明した(表5および6を参照)。
【0101】
【表5】

【0102】
【表6】

【実施例10】
【0103】
HTLC−MS試験およびRIA試験の比較
参考のラジオイムノアッセイ(RIA)法と共に本方法でアッセイした、報告可能範囲を包含する患者試料を用いて比較試験を行った。相関は、線形回帰(図3Aに示す)およびデミング分析(図3Bに示す)により決定した。線形回帰分析の相関係数は、0.88であった。
【0104】
本明細書で言及または引用した論文、特許および特許出願、ならびに他の全ての文書および電子的に利用可能な情報は、個々の各刊行物が、参照により組み込まれていることが具体的に個別に示されている場合と同程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。出願者らは、このような任意の論文、特許、特許出願、または他の物理的および電子的文書から、あらゆる資料および情報を本出願の中に物理的に組み込む権利を留保する。
【0105】
本明細書に例示的に記載した方法は、本明細書に具体的に開示していない任意の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の制限のない状態で、適切に実施し得る。したがって、例えば「含む(comprising、including、containingなど)」という用語は、拡張的に無制限に読み取られる。その上、本明細書で用いた用語および表現は、制限用語ではなく記述用語として用いており、このような用語および表現の使用において、示し、記述した特徴と同等のものまたはその部分を除外する意図はない。主張した本発明の範囲内で多様な改変をなし得ることは、認識している。したがって、本発明を好ましい実施形態および任意選択の特徴により具体的に開示してきたが、その中で具体化され、本明細書で開示した本発明の改変および変更は、当業者が採用し得るものであり、このような改変および変更は、本発明の範囲内にあると見なされることを理解されたい。
【0106】
本発明を、広範に、属レベルで本明細書で説明してきた。属レベルの開示内に入るより狭い種および亜属のグループの各々も、本方法の一部をなす。これには、その属から任意の主題を削除する条件または否定的制限を付けた本方法の属レベルの記述も、削除される事項が本明細書に具体的に記載されているか否かに関わらず、含まれる。
【0107】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に入る。それに加え、本方法の特徴または態様がマーカッシュ群によって記載されている場合、本発明が、当該マーカッシュ群の任意個別の構成事項または構成事項亜群によってもその結果記載されることは、当業者であれば認識するであろう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液試料中の非誘導体化ジヒドロテストステロン(DHT)の量を決定する方法であって、
a.体液試料から固相抽出(SPE)により精製された非誘導体化DHTを、質量分析で検出可能な1種または複数のイオンを生成するのに適切な条件下で、イオン化し、ここで、前記イオンは、質量/電荷比291.10±0.50、255.20±0.50および79.20±0.50のイオンからなる群より選択される1種または複数のイオンを含み、そして
b.1種または複数のイオンの量を質量分析により決定し、決定された量を用いて、体液試料中の非誘導体化DHTの量を計算する、
の各工程を含む方法。
【請求項2】
前記質量分析がタンデム質量分析である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イオン化が、質量/電荷比291.10±0.50の前駆イオンを生成し、質量/電荷比255.20±0.50および79.20±0.50のイオンからなる群より選択される1種または複数のフラグメントイオンを生成することを含む、請求項1から2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記のSPEおよび質量分析が、オンライン方式で行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記SPEが、高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)として行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記精製が、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による精製を更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記SPEおよび前記HPLCが、試料のオンライン処理用に接続されている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記体液試料が血漿または血清である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
5.0ng/dL以上200ng/dL以下の範囲内に定量限界を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
質量分析で決定される1種または複数のイオンの量が、内部標準との比較により、試験試料中の非誘導体化DHTの有無または量と関連付けられる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
内部標準が、16,16,17−dジヒドロテストステロンを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
試験試料中の非誘導体化ジヒドロテストステロン(DHT)の量を質量分析により決定する方法であって、
a.試験試料から高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)により精製された非誘導体化DHTを、質量分析で検出可能な1種または複数のイオンを生成するのに適切な条件下で、イオン化し、そして
b.1種または複数のイオンの量を質量分析により決定し、決定された量を用いて、試験試料中の非誘導体化DHTの量を計算する、
の各工程を含む方法。
【請求項13】
前記質量分析がタンデム質量分析である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記精製が、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による精製を更に含む、請求項12または13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記HTLCおよび前記HPLCが、オンライン処理用に構成されている、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記試験試料が体液試料である、請求項12から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記試験試料が血漿または血清である、請求項12から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
質量分析で検出可能な1種または複数のイオンが、質量/電荷比291.10±0.50、255.20±0.50および79.20±0.50のイオンからなる群より選択される1種または複数のイオンを含む、請求項12から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記イオン化が、質量/電荷比291.10±0.50の前駆イオン、ならびに質量/電荷比255.20±0.50および79.20±0.50のイオンからなる群より選択される、1種または複数のフラグメントイオンを生成することを含む、請求項12から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
5.0ng/dL以上200ng/dL以下の範囲内に定量限界を有する、請求項12から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
質量分析で検出される1種または複数のイオンの量が、内部標準との比較により、試験試料中の非誘導体化DHTの有無または量と関連付けられる、請求項12から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
内部標準が、16,16,17−dジヒドロテストステロンを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
体液試料中の非誘導体化ジヒドロテストステロン(DHT)の量をタンデム質量分析により決定する方法であって、
a.体液試料から高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)により精製された非誘導体化DHTの、質量/電荷比291.10±0.50を有する前駆イオンを生成し、
b.前駆前駆イオンの1種または複数のフラグメントイオンを生成し、ここで、前記1種または複数のフラグメントイオンの少なくとも1種は、質量/電荷比255.20±0.50および79.20±0.50のイオンの群から選択されるフラグメントイオンを含み、そして
c.ステップ(b)もしくは(c)またはその両方で生成した前記イオンの1種または複数の量を決定し、決定された量を用いて、前記体液試料中の非誘導体化DHTの量を計算する、
の各工程を含む方法。
【請求項24】
前記精製が、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による精製を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記HTLCおよび前記HPLCが、オンライン処理用に構成されている、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記体液試料が血漿または血清である、請求項23から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
5.0ng/dL以上200ng/dL以下の範囲内に定量限界を有する、請求項23から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
質量分析により決定される1種または複数のイオンの量が、内部標準との比較により、試験試料中の非誘導体化DHTの有無または量と関連付けられる、請求項23から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
内部標準が、16,16,17−dジヒドロテストステロンを含む、請求項28に記載の方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−504766(P2012−504766A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530199(P2011−530199)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/059090
【国際公開番号】WO2010/042370
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(505063050)クエスト ダイアグノスティックス インヴェストメンツ インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】