質量分析のための大気圧荷電粒子選別器
質量分析を行うための装置および方法は、イオンインターフェースを用いて、エレクトロスプレー源またはMALDI源などの大気圧イオン源からのイオンの流れが質量分析器を含む真空チャンバーに入る前に、該イオンの流れから望ましくない粒子を除去する機能を提供する。イオンインターフェースは、エントランスセルおよび粒子選別セルを含む。該エントランスセルは、イオン源がエレクトロスプレー源である場合に、荷電液滴を脱溶媒和するために加熱され得るボアを有する。該粒子選別セルは、エントランスセルのボアの下流で、かつ真空チャンバーに通じるアパーチャーの前に配置されたボアを有する。粒子選別セルは、イオンの流れからの望ましくない荷電粒子の分離を可能にする気体力学的および電界条件を作り出す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願のクロスリファレンス
本出願は、2003年2月14日に提出された米国仮出願60/447,655に対して優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は質量分析に関し、より詳細には、大気圧イオン源と質量分析器の低圧領域との間のインターフェースに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
質量分析器における分析のためのサンプルまたは検体は、しばしば大気環境においてイオン化され、次いで、かかるイオンは、質量分析器を含む真空チャンバーへ導入される。大気圧イオン源はサンプルを取り扱う上で利点を提供するが、イオン源から真空チャンバーへのイオンの導入には、イオン源と真空チャンバーとの間に配置された適切なインターフェースが必要とされることが多い。例えば、イオン化技術の1つのコモンファミリーとしては、エレクトロスプレー(これは低流量を提供する)およびナノスプレーなどのその派生物が挙げられる。そのような技術の全てにおいて、溶媒中に所望の検体を含有する液体サンプルは、エレクトロスプレーキャピラリーの先端で、荷電および中性液滴のスプレーを形成する。いったんスプレーが生成されると、溶媒は蒸発し始め、そして液滴から除去される。これは脱溶媒和と一般的に言われるプロセスである。したがって、イオンを発生させることにおいて重要な工程は、適切な脱溶媒和を確保することである。通常、エレクトロスプレー源は、大気圧チャンバーにおいて何らかの脱溶媒和手段と併用され、ここで、脱溶媒和は、液滴への熱移動(放射、対流)または/および乾燥気体の逆流によって促進されうる。一般的に、スプレーは液滴サイズの分布からなり、そのため、脱溶媒和の程度はそれぞれの液滴サイズで異なる。その結果、脱溶媒和後、脱溶媒和された粒子のサイズ分布があり、ここで大きくて重い荷電粒子が存在し、この荷電粒子はアパーチャーまたはコンダクタンスリミットを汚染し得、それによって、質量分析領域の長期の安定な操作が妨げられ、および/またはイオン検出器にさらなるノイズが導入される。この付加的なノイズ源は、信号対ノイズ比を低下させ、したがって質量分析器の感度を低下させる。
【0004】
イオン、および付随する溶媒分子(中性物質)と荷電粒子は、大気圧領域から質量分析器の低圧チャンバーへ移される。一般的に、質量分析器は、10-4トール(Torr)未満で動作し、段階的な減圧を提供するためにスキマーまたはアパーチャーのステージを必要とする。中性物質が質量分析器に入るのを妨げつつイオンを入れるための様々な方法が周知である。本発明の譲受人に譲受された米国特許第4,023,398号(その内容は本明細書に含まれる)において、図9に表されたように、質量分析器32はインターフェース領域15によって大気にふれている。エントランスアパーチャー4を有するパーティション3が具備され、大気圧を質量分析器32の第一真空すなわち低圧領域10から分離している。またカーテン気体7が供給され、周囲の気体および中性物質14が真空領域10および11に入るのを妨げている。エントランスアパーチャー4の直径は、大気領域からの気体流動を制限して、質量分析器領域32において第一および第二真空ポンプ12および13のポンピング容量のバランスを保つように選ばれる。オリフィス6を有するカーテンプレート5が、エントランスアパーチャー4とスプレー2との間に配置される。カーテンプレート5の目的は、スプレー2とは逆方向にカーテン気体7の流動を適用することである。カーテン気体7は2つの機能を有する:中性物質14がアパーチャー4へ入るのをそらすこと、および荷電液滴を脱溶媒和してイオンを放出すること。この方法においては、荷電粒子および完全に脱溶媒和されずに残留荷電液滴として残る重い荷電液滴は、カーテン気体流動を通過し得、エントランスアパーチャー4へ向かって下流へ移動し続け得る。
【0005】
米国特許第4,977,320号および同第5,298,744号は、伝導性および非伝導性物質でできた、加熱されたチューブを用いてイオン/気体担体/溶媒流動を低圧チャンバーへ送達する方法を教示している。かかる構成において、加熱されたチューブは2つの異なる別個の機能を提供する:まず、気体流動に対する著しい抵抗のために、チューブ構成、すなわちその長さよび内径は、ポンピングシステムに対する気体の負荷を調節する。第2に、チューブは加熱されて、脱溶媒和および中性物質からのイオンの分離を生じ得る。第一の機能に関して、チューブの長さを一定に保ちつつ、この抵抗が提供され、イオン/気体担体/溶媒流動を吸入するために、チューブおよび可能な限り最も幅広い開口における層流の気体流動を確保し得る。一般的に、チューブのより幅広いボアは、気体流動の増加、それゆえポンピングシステムに対するより多くの負荷を提供する。これに対し、チューブの長さを減少させることは、気体流動に対するより少ない抵抗を提供し、それによってもまた、気体流動およびポンピングシステムに対する負荷を増加させる。これら2つの幾何パラメーター、ボアと長さとは、明らかに関連しており、所望の流量および流動抵抗を提供するように調整されうる。第二の機能は、インターフェースチューブの周りにヒーターを取り付けることによって提供される。チューブに提供される熱は、イオン流動の脱溶媒和を促進し、またチューブの表面の汚染を減らすのを助け、それによって、メモリー効果が減少する。このタイプのインターフェースは、チューブの長さやチューブのボアの多様性を制限する、厳密に層流の条件下で最も良好に機能することができる。さらに、温度および滞留時間によって決まる(チューブを通る気体速度に対して反比例する)脱溶媒和は、ポンピング要件と関連している。概して、全ての所望のパラメーターを最適化するのは不可能であり、特に、全体の質量流量を最小限にしてポンピング要件を減らすことが望ましい。他方で、イオンを質量分析器へ最も効率よく移すのを確実にするため、高い質量流量を有する大きな直径のチューブが望ましい。加えて、イオンの脱溶媒和は、滞留時間の変化のせいで、チューブの直径によっても影響を受ける。
【0006】
米国特許第5,304,798号は、チャンバーが成形通路を有し、脱溶媒和機能およびキャピラリー制限機能の両方を提供する方法を教示することにより、これらの要件の両方を満たすよう試みている。大気圧に隣接した通路の開口は幅広くて長いボアを有する一方で、真空チャンバー内で終わる通路の反対側の端部はより小さくてより短いボアを有する。エレクトロスプレー源は幅広いボアの開口の前に配置され、スプレーが直接通路に入ることを可能にする。脱溶媒和は幅広いボア領域内で行われる一方で、小さい方のボアは質量流量の制限を提供する。全スプレーは脱溶媒和チューブへ入り、中性または荷電粒子または完全に脱溶媒和されなかった液滴は小さいボアへ入る。これらの粒子または液滴は小さなボアにおいて蓄積し得、それによって閉塞が起こり得、またはそれらは小さいボアを通過して真空チャンバーへ入り、広範囲の汚染を導き得る。
【0007】
米国特許第Re.35,413号は、脱溶媒和チューブの出口がスキマーに対して軸外に位置決めされている、脱溶媒和チューブおよびスキマー装置を記載している。スキマーのオリフィスからチューブの軸をオフセットすることは、オリフィスを通してイオンを流動させる一方で、脱溶媒和されなかった液滴および粒子がスキマーに衝突するよう意図されている。この方法は、脱溶媒和されなかった液滴または荷電粒子が脱溶媒和チューブの軸に沿って移動するのを制限されているのではなく、ボア中の分布に従っているのだということを考慮に入れていない。つまり、この装置は、中心軸に沿って移動する脱溶媒和されなかった液滴および粒子がオリフィスに入るのを防ぐだけである。脱溶媒和チューブのオフセットは、オフセット位置に整列した液滴および荷電粒子がスキマーに入るのを防がず、また蓄積物がオリフィスの周りに増加するのを防がない。さらに、オフセットの関数としてスキマーを通るイオン流が減少することが予測される。
【0008】
米国特許第5,756,994号においては、加熱されたエントランスチャンバーが具備されており、これは別個にポンプ操作される。エントランスアパーチャーを通ってこのチャンバーに入るイオンは、次いで出口アパーチャーを介してサンプリングされる。該出口アパーチャーは、チャンバーの側面に、エントランスオリフィスからの直線軌道を表すあらゆる線から外れて、配置される。この外れたアライメントの目的は、中性の液滴または粒子が出口アパーチャーに入るのを防ぐことである。この加熱されたエントランスチャンバーにおける圧力は、約100トールに保たれる。わかっている範囲において、エントランスチャンバーには独立したポンピング装置があり、チャンバーの形状は層流の維持に貢献せず、エントランスアパーチャーはチャンバー自体の主要部分の断面よりもはるかに小さい。出口アパーチャーを介する円柱状の流動の一点のみからのサンプリングの明らかな非効率性に加え、このチャンバーの壁に対してイオン流が著しく失われることが予想される。
【0009】
大気圧イオン源のもう1つの一般的なタイプは、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)技術を用いる。かかる源において、レーザーからのフォトンパルスがターゲットに衝突し、質量分析器で測定されるべきイオンを脱着させる。ターゲット物質は低濃度の検体分子でできており、これは通常適度のフォトン吸収/分子しか示さず、小さくて高吸収性の種からなる固体または液体マトリックスに組み込まれる。レーザーパルスにおけるエネルギーの突然の流入は、マトリックス分子によって吸収され、それらを蒸発させ、マトリックス分子およびイオンの小さな超音速ジェット(この中に検体分子が混入される)を生成させる。この放出プロセスの間、マトリックスによって吸収されたエネルギーのいくらかは検体分子に移動し、それによって検体分子をイオン化する。各々のレーザーパルスによって発生したイオンの噴出流は、検体イオンだけでなく、マトリックス物質を含有する荷電粒子もまた含有する。かかる荷電粒子は、イオンの流れから除かれない限り、質量分析器の性能に影響を与える可能性がある。
【発明の開示】
【0010】
発明の要旨
これらのことを考慮して、本発明は、イオン質量分析器によって調査されるべきイオンを調製するためのシステムを提供する。当該システムは、エレクトロスプレーイオン源またはMALDI源などの大気圧イオン源、真空チャンバーに含まれる質量分析器、およびイオンをイオン源から真空チャンバーへ導入するためのインターフェースを有する。インターフェースは、エントランスセルおよび粒子選別セルを含む。
【0011】
大気圧イオン源がエレクトロスプレーイオン源である実施態様において、エントランスセルは脱溶媒和セルとして機能しうる。エレクトロスプレーイオン源は大気中で動作し、調査されるべきイオンを含有する荷電液滴のスプレーを提供する。スプレーは、スプレー中の液滴を乾燥するために脱溶媒和セルの加熱されたボアへと方向付けられ、イオンの流れを発生させる。かかるイオンの流れは望ましくない粒子を含有している。粒子を選別する(すなわち除去する)ための粒子選別セルは、脱溶媒和セルの下流で、かつ大気圧を真空チャンバー中の真空から分離するパーティションのアパーチャーの前に、配置されている。粒子選別セルは、イオンの流れを受け取るためのボア(このボアは、脱溶媒和セルのボアよりも大きい)を有し、またセントラルゾーンおよびこのセントラルゾーンを取り囲む選別ゾーンを有する。イオンの流れが粒子選別セルのボアに流れ込むと、渦が選別ゾーン中に形成される。粒子選別セルは、そのボア内に粒子選別電界を発生させるためにそこに適用される電圧を有する。粒子選別セル内の電界および渦の形成は一緒になって、イオンの流れから粒子を除去する効果を提供し、それによって、これら粒子はパーティションのアパーチャーに入らない。
【0012】
本発明はまた、大気中で動作するイオン源を真空チャンバー内のイオン質量分析器とインターフェースする方法を提供する。例えば、イオン源はエレクトロスプレー源またはMALDI源であってもよい。エントランスセルおよび荷電粒子選別セルを含むインターフェースは、大気イオン源と真空チャンバーとの間に配置される。イオン源がエレクトロスプレー源である場合、エントランスセルは脱溶媒和セルとして用いられる。イオン源によって発生させた荷電イオン液滴のスプレーは、スプレー中の液滴を乾燥するために脱溶媒和セルの加熱されたボアへと方向付けられ、イオンの流れを発生させる。かかるイオンの流れは望ましくない粒子を含有している。次いでイオンの流れは、選別セルを通るよう方向付けられる。この選別セルは、脱溶媒和セルの下流で、かつイオン質量分析器を含む真空チャンバーから大気を分離するパーティションのアパーチャーの上流に、配置される。選別セルは、脱溶媒和セルのボアよりも大きいボアを有し、またセントラルゾーンおよびこのセントラルゾーンを取り囲む選別ゾーンを有する。イオンの流れは、脱溶媒和セルから選別セルへ流れ込む間、選別セルの選別ゾーンにおいて渦を発生させる。電圧が選別セルに適用され、選別セルのボア内に選別電界を発生させる。選別セル内の電界および渦の発生は一緒になって、イオンの流れから望ましくない荷電粒子を除去する効果を提供し、それによって、これら粒子はパーティションのアパーチャーに入らない。
【0013】
添付の請求の範囲は、本発明の特徴を詳細に定義するが、本発明は、その目的と利点と共に、添付の図面と併せて以下の詳細な記載から最もよく理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ここで、図面を参照すると、図1は、本発明の1実施態様による図であり、概して16によって示される大気圧インターフェースを示す。インターフェース16はイオン源1と質量分析器32との間に位置決めされており、インターフェース16は、以下に記載するように、少なくとも1つのインターフェースセルからなる。イオン源1からのイオンは、それぞれアパーチャー4および9を介して、真空チャンバー10および11からなる質量分析器32へ入る。真空チャンバー10および11の各々における圧力は、それぞれ真空ポンプ12および13によって段階的に減圧される。真空ステージ間のパーティション8に取り付けられたアパーチャー9は、1つのポンピングステージから次のポンピングステージへの中性気体のコンダクタンスを制限し、その一方で、パーティション3に取り付けられたアパーチャー4は、大気から真空チャンバー10への気体の流動を制限する。アパーチャー4とイオン源1との間の圧力は、一般的に大気圧と同じかそれに近いものである。
【0015】
イオン源1は、分析すべきサンプルのタイプに応じて、多くの公知のタイプのイオン源の中の1つまたは複数であり得る。例えば、イオン源は、エレクトロスプレーまたはイオンスプレー装置、コロナ放電ニードル、プラズマイオン源、電子衝撃または化学イオン化源、光イオン化源、MALDI源、あるいはそれらの任意の複数の組み合わせでありうる。その他の所望のタイプのイオン源を用いてもよく、またイオン源は、大気圧、大気圧よりも上、大気圧付近、あるいは真空で動作させてもよい。一般的に、イオン源における圧力は、質量分析器32の下流の圧力よりも大きい。イオン源1は、スプレー(エレクトロスプレー源の場合)または噴出流(MALDIイオン源の場合)、あるいは複数のスプレーまたは噴出流を生成する。エレクトロスプレーイオン源からのスプレーは、初めは主に荷電液滴を含み、その後にイオンおよび粒子の進行的な形成が続く。MALDIイオン源が用いられる場合、MALDIイオン源からの噴出流は、一般的にイオンおよび粒子の混合物を含み、ここで粒子は、水和されたまたは単に荷電されたもしくは中性の粒子(MALDIレーザーからの加熱の程度による)であり得る。イオン源のタイプに関わらず、脱溶媒和されなかった液滴または粒子のいずれかが存在すると、イオンの流れの質が低下し得、また質量分析器32のアパーチャー4を介したイオンの伝達が妨害され得る。以下に記載するように、本発明のイオンインターフェースは、イオンが質量分析器を含む真空チャンバーに入る前に、イオンの流れからの望ましくない粒子の除去を可能にする。
【0016】
記載を簡潔にするため、以下の記載は、イオン源がエレクトロスプレー源である実施態様を詳述する。しかしながら、本発明のイオンインターフェースは、MALDI源によって発生されるイオンの噴出流から望ましくない荷電粒子を除去することにおいても効果的であることは理解されるべきである。さらに図1を参照すると、エレクトロスプレー源からのスプレー2は、カーテン流動領域17に向かって方向付けられた、イオン、液滴および粒子の混合物を含む。カーテン流動領域17は、エントランスセル27に対するインレット24の前にある領域によって規定される。カーテンプレート5は、軸20によって規定されるライン上に中心があるように位置決めされた開口6を有する。また、気体源61によって供給されるカーテン気体7は、オリフィス6とエントランスセル27のインレット24との間のカーテン流動領域17において流動する。用いられるイオン源のタイプに応じて、気体源61は、まったく流動しない場合を含む流量の範囲を供給するように調節されうる。
【0017】
カーテンプレート5は、図1のような円錐表面、または図2に示すような平面、環状の形態、あるいはカーテン気体7をカーテン流動領域17へ方向付けるための任意の他の適切な形状を取り得る。図1および2において、同じ番号は同じ構成要素を表すが、明瞭性のため、いくつかの参照番号を省略した。カーテン気体7のいくらかは、インレット24に流れ込む傾向およびオリフィス6を介してスプレー2とは逆方向に流れ出す傾向がある。スプレー2がカーテン気体7と接触すると、乱流混合が起こり、それによって、液滴は脱溶媒和してイオンを放出する。カーテンプレート5およびカーテン気体7は、高温(通常、30〜500℃)に加熱されて脱溶媒和プロセスを促進し得る。イオンが質量分析器32に向かう方向へ移動し続けるにつれて、中性粒子および残存する中性液滴14は、カーテン気体7または一般的なバックグラウンド気体と衝突し、インレット24に入るのを妨げられる。よって、中性粒子および残存する中性液滴は、噴出流の残部から選別される。
【0018】
イオン、荷電粒子、残存する荷電液滴、およびカーテン気体7の一部は、エントランスセル27へ流れ込む。該エントランスセルは、加熱されたチャンバー26内に配置されており、ボア58を有する。エレクトロスプレー源が用いられる場合、エントランスセルが加熱され、エレクトロスプレー源からの荷電液滴を脱溶媒和するのを助ける。このため、エントランスセル27は、この後の記載において脱溶媒和セルとも言及される。第二の脱溶媒和が起こり、加熱されたチャンバー26の結果は、熱を残存する荷電液滴に対流伝達する。イオンは脱溶媒和された液滴から放出されるが、荷電粒子を形成するこれらの荷電液滴は、脱溶媒和セル27を通って流動することができる。続いて、加熱されたチャンバー出口25から出てくるイオンおよび荷電粒子は、第二粒子選別セル30へと移動する。該第二粒子選別セルは、加熱されたチャンバー出口25とパーティション3との間に配置されており、スペーサー29によって放射方向において限定されている。スペーサー29の内径は、加熱されたチャンバー26の内部ボア58よりも大きく、該内部ボアはパーティション3のアパーチャー4よりも大きい。通常、アパーチャー4は、0.10〜1.0mmの間の直径を有し、その壁の厚みは0.5〜1.0mmの間である。スペーサー29は、2〜20mmの間の直径を有し、加熱されたチャンバー26のボア58は、0.75〜3mmの間の直径を有する。カーテンプレート5、加熱されたチャンバー26、スペーサー29およびパーティション3は、適切に知られた方法によってお互いから電気的に隔離されており、それぞれ、それらに接続された電圧源40、41、42および43の1つの極(所望するイオンの極性に応じて)を有する。従来のように、電圧源40、41、42および43は、直流、交流、RF電圧、グラウンド接続またはそれらの任意の組み合わせで構成される。スペーサー29は、セラミックのような非伝導性材料から作製され得、ここには電位は適用されない。前述したように、パーティション3とイオン源1との間の圧力は実質的に大気圧であり、そのため、加熱されたチャンバー26からスペーサー29までの間の合わせ面、およびスペーサー29からパーティション3までの間の合わせ面は、真空気密シールを必要としない。しかしながら、イオン源1からアパーチャー4への方向の正味の流動(スプレー2とカーテン気体7の一部とからなる)が所望されるため、実質的にリークフリーシールが好ましい。イオン源1とアパーチャー4との間の任意の点における正味の流動は、以下に記載する気体流線18が層流のままである場合、付加的な気体源によって補われてもよい。
【0019】
操作において、粒子選別セル30中に存在する電界および気体流動力学は、荷電粒子選別効果を作り出し、この効果は、アパーチャー4に入る望ましくない荷電粒子の量を減らす。このプロセスをよりよく理解するために、気体流動力学および電界効果の解説をそれぞれ以下に示す。
【0020】
まず、気体流動力学を図解するため、図3について述べる。図3は、中心軸20に沿った断面図を示し、脱溶媒和セル27の一部を含む粒子選別セル30の2次元計算流体力学(CFD)モデリングからの気体流動の流線を示す。縦軸34は中心軸20からの距離(mm)の尺度であり、一方、横軸35のグラデーションは、加熱されたチャンバー26のインレット24から測定されている。アパーチャー4の直径は約0.25mmであり、チャンバー10における真空圧は1〜5ミリバール(mbarr)の間である。中心軸20と平行な流線18は、中心軸20の付近で23m/s間の気体流動速度を有すること、および、加熱されたチャンバー26の表面52付近で約5m/s以下まで放射方向に広がることを特徴とする。アパーチャー4の制限によって、アパーチャー4を通って流動する気体は加速し、計算はその瞬間的な速度が29m/sを超えることを示す。荷電粒子選別(CPD)ゾーン37は、スペーサー表面38の間、および加熱されたチャンバー出口表面36からアパーチャーパーティション表面39までの間で境界を定められた環状ゾーンによって規定される。この環状選別ゾーン37は、セントラルゾーン59(図1参照)を取り囲み、イオンの流れの大部分がこのセントラルゾーンを通過する。従来は、他の人によって実施されてきたように、質量分析器のインレットアパーチャーに直接的に隣接して位置決めされたキャピラリーチューブの出口か、あるいはインレットアパーチャーと完全に置き換わったキャピラリーチューブのいずれかを有する、液滴の脱溶媒和のための加熱されたキャピラリーチューブが存在する。
【0021】
これに対し、CPDゾーン37は、加熱されたチャンバー出口25とアパーチャー4との間に放射方向の摂動すなわち縦方向の不連続性を作り出す働きをし、循環する流線19が形成される。循環する流線19は通常、低流動速度(約2m/s)を有する渦とよばれ、一方で、CPDゾーン37に隣接する流線18は、より大きな気体流動速度でアパーチャー4に向かって31に集まる傾向がある。一般的に、加熱されたチャンバー26および粒子選別セル30の中央を通って流動する気体は層流であり、すべての気体流動は、質量分析器32からの真空引きによって作り出される。イオンおよび荷電粒子は流線18中に分布されており、大きくて重い荷電粒子は、アパーチャー4の視線方向を超えて放射方向に伸びる領域において流線18と共に移動し、流線が31に集まるにつれて流線18から抜け出し、アパーチャー4付近のパーティション3と衝突する。CPDゾーン37に最も近い荷電粒子は、集束する流線から抜け出し、そしてCPDゾーン37の循環する流線19に入る傾向があるが、中心軸20に沿ってアパーチャーの直接視線方向に動く荷電粒子は、アパーチャー4に入る。後に詳述するように、これら視線方向の荷電粒子は、アパーチャー4に入るのを妨げられうる。他方では、この領域をアパーチャー4の視線方向を超えて放射方向に動く小さな荷電粒子は、気体流動によって容易に影響を受け、アパーチャー4を介して31に集まり、質量分析器32に入る。
【0022】
しかしながら、適切な電界を用いて、多くの驚くべき効果が起こる。かかる効果としては:a)荷電粒子がアパーチャー4から離れるように向きをそらされること;b)通常アパーチャー4の近傍に衝突する重い荷電粒子が、循環する流線19の方向へ引き寄せられること;およびc)イオンがアパーチャー4を通って動き続けること、が挙げられる。よって、電界は、質量分析器へのイオンの伝達を維持しつつ、アパーチャー4の付近に集められる堆積物の量を減らす効果を有する。
【0023】
電界効果を図解するため、図4について述べる。図4は、図3に記載した領域についての電界モデリングを示す。このモデルにおいて、加熱されたチャンバー26に対する電位は+500ボルトにセットされ、パーティション3に対する電位は+40ボルトにセットされ、スペーサー29は同じく+40ボルトにセットされた伝導性材料インセット(図示せず)を有する。前述したように、スペーサー29は、全体がセラミックのような電気絶縁性材料から適切に構築され得、そこには電圧は適用されない。電圧分布によって作り出される電界は、異なる線によって表されている。例えば、線45、46および47は、等しい電位線(等電位)であり、それぞれ約400、300および150ボルトを表している。等電位は、電界が中心軸20から離れるように矢印48で示される方向に向かってそれることを示している。加熱されたチャンバー出口25からアパーチャー4に向かう方向に動く荷電粒子は、矢印48の方向へそらされる傾向がある。図5はパーティション3上ではっきりと認められる粒子選別の描写である。チトクロムc消化物のサンプルをこの解析に用いた。アパーチャー4の周りに配置されたパーティション3上に、堆積物の3つの明確な領域がある。第一領域49は、チトクロムc消化物からのヘム群の堆積物からなる。この堆積物(プライマリ堆積物とよばれる)は、加熱されたチャンバー26とパーティション3との間の電位差が増加するにつれて、広範囲にわたって分散され得る。例えば、加熱されたチャンバー26がパーティション3と同じ電位で動作される場合、この堆積物の直径は、通常、約680μmであり、電位差が400Vまで増加すると、この堆積物の直径は、通常、約790μmである。電界を用いた堆積物の分散の増加は、タンパク質イオンの計数率に対して影響を有しない。これは、イオンが摂動を受けず、アパーチャー4に向かう層流の気体流動と共に掃引されることを示している。
【0024】
目的の第二領域50は、プライマリ堆積物を取り囲む明瞭な領域に対応する。この領域は、気体流動の流線および電界の両方がパーティション3に関して発散しており、荷電粒子をこの領域から離れるように方向付けるために、生じる。最終領域51は、第二領域50の縁部からスペーサー表面38の方へ堆積された軽い単分散層の物質を含有する。CPDゾーン37における循環する流線19の渦巻く気体流動内に粒子が捕捉されるようになる結果として、この軽いダスティングが起こる。この気体流動の特性によって、この領域内の粒子は、パーティション3にぶつかりそこに不均一な様式で堆積するまで渦巻く。
【0025】
別の実施態様の局面に従って、図6はブロッキング部材57を示す。該ブロッキング部材は、中心軸20上の、加熱されたチャンバー出口25とスペーサー29の出口55との間に配置され、軸20に沿って動く粒子について直接視線方向を排除することによって荷電粒子選別を提供する。ブロッキング部材57の直径は、加熱されたチャンバー26の内径よりも小さく、アパーチャー4の直径よりも大きい。例えば、300μmのブロッキング部材57は、2mmの加熱されたチャンバー26のボアに適している。一般的に、ブロッキング部材57は、アパーチャー4の直径よりも大きいが、加熱されたチャンバー26およびスペーサー29を通過する気体流動の条件に応じてサイズを変えることができる。より詳細には、アパーチャー4に対する、ブロッキング部材57の直径および位置決めは、ブロッキング部材57の上流の流動の流線18および下流の流動の流線62が層流のままである(図7参照、ここで同じ番号は図3における同じ構成要素を表す)ように選択される。加えて、ブロッキング部材57の下流の流線62は、流線62がアパーチャー4にさらに集まるのに十分に中心軸20に向かって戻って集まるべきである。ブロッキング部材57の下流に位置する再循環する流線53を最小限にするのが好ましい。したがって、ブロッキング部材を位置決めして上記の条件を提供すれば、より大きな粒子は気体流動によってブロッキング部材57の周りに運ばれない。その結果として、より大きな粒子はブロッキング部材57の表面に衝突してその上に堆積するが、イオンはアパーチャー4の周囲を流動してアパーチャー4に入る。ブロッキング部材57は電気絶縁体であってもよく、あるいは電圧源60(ブロッキング部材に接続されて静電界を提供する)の1つの極(所望するイオンの極性に応じて)を有する電気伝導性エレメントであってもよい。静電界は、さらに、大きな荷電粒子をアパーチャー4からそらせるのを補助しうる。
【0026】
さらに、軸20に沿ったブロッキング部材57の位置が、加熱されたチャンバー出口25とスペーサー29のアウトレット55との間の位置に限られないことは理解され得る。ブロッキング部材57を加熱されたチャンバー26のボア58内に位置決めすることによって、同様の結果が達成され得る。
【0027】
上記から、スペーサー29内にある電界の寄与と気体流動の寄与との組み合わせによって、粒子選別が達成される。ブロッキング部材57は、軸20上をアパーチャー4の直接視線方向に動く荷電粒子を除去し、一方で、電界は、アパーチャー4の周囲に衝突するはずの荷電粒子をCPDゾーン37へ流れ込ませる。この効果は、加熱されたチャンバー出口25とパーティション3との間の電界の発散性質を増強することによって、より顕著になり得る。スペーサー29のボアを変えることも可能であり、あるいは、スペーサー29の形状を変えることによって、より大きな領域の循環流線19を提供することも可能である。例えば、図8Aに示したように(容易性および簡潔性のため、図4の装置と同じパーツには同じ参照番号を付している)、スペーサー29は、インレット54の直径よりも大きいアウトレット55の直径を有しており、ここで、インレット54とアウトレット55との間の移行部は、直線的に拡大するするボアである。さらに、図8Bおよび8C(同じく、同じ参照番号は図4と同じパーツを示す)に示すように、インレット54からアウトレット55への移行部は、荷電粒子分散を促進する非線形プロファイルの形状であり得る。
【0028】
図1に示された好ましい実施態様では、スペーサー29は非伝導性材料でできており、加熱されたチャンバー26をパーティション3から電気的に隔離する。スペーサー29が、電気伝導性であるかまたは部分的に伝導性であり、電圧源42に接続されており、また、加熱されたチャンバー26から、およびパーティション3から電気的に隔離されている場合、CPDゾーン37において電界が作り出されて、放射方向の移動性フィールド(mobility field)を提供し得る。移動性フィールドは、荷電粒子を、アパーチャー4から離れるように、図1において矢印56で示される放射方向にそらせることができる。例えば、スペーサー表面38に適切な電位を適用して負の電位場をCPDゾーン37に作り出すことによって、正に荷電した粒子は、スペーサー表面38に向かってアパーチャー4から離れるように引き寄せられる。負の電位の度合いは、気体流動の流れから高移動性荷電イオンを抽出するのを妨げるように最適化されるべきである。同様に、負に荷電した粒子をアパーチャー3からそらすために、正の電位場が作り出され得る。
【0029】
さらに、加熱されたチャンバー26、スペーサー29およびパーティション3に適切な電位を適用することによって、逆移動性(inverse mobility)チャンバーが作り出され、それによって、荷電粒子の移動性は加熱されたチャンバー出口表面36に向かって方向付けられ得る。例えば、イオン源1は+2000ボルトの電位を有し、カーテンプレート5および加熱されたチャンバー26の両方は0ボルトを有し、スペーサー29は非伝導性であり、パーティション3には+30ボルトの電位が供給される。この電位の組み合わせにより軸反発(axially repellant)電界が発生し、それによって、イオンの計数率に影響を与えることなく、大きな荷電粒子がアパーチャー3に衝突するのを防ぐ。電位の組み合わせの選択は、ボア58およびボア59の直径に依存し、またある程度はアパーチャー4に依存する。電位の適切な組み合わせによって、イオンおよび粒子の両方がアパーチャー4から離れるようにそらされ、質量分析器に対して方向付けられたイオンの流れをさえぎる便利な方法を提供し得ると考えられる。同様に、イオン源1およびパーティション3上の極性を反転させることによって、負に荷電した粒子がアパーチャー3からはじかれる。これは、アパーチャーを通る汚染物を減らし、それにより質量分析器への気体コンダクタンスリミットを維持することによって、ローブスト性を実質的に改善するので、先行技術に対して著しい利点である。
【0030】
本発明の好ましい実施態様を記載してきたが、変更は本発明の精神において為しえ、またかかる全ての変更が請求の範囲内に含まれるよう意図されたものであるということは、理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明による荷電粒子選別器の概略図である。
【図2】図2は、本発明によるもう1つの荷電粒子選別器の概略図である。
【図3】図3は、本発明による荷電粒子選別器の気体流動の流線の線図である。
【図4】図4は、本発明による荷電粒子選別器の電界の線図である。
【図5】図5は、図1の荷電粒子選別器からの結果を表す。
【図6】図6は、本発明によるさらに別の荷電粒子選別器の概略図である。
【図7】図7は、本発明による荷電粒子選別器の気体流動の流線のもう1つの線図である。
【図8A】図8Aは、本発明による荷電粒子選別器の領域を規定するスペーサーの概略図である。
【図8B】図8Bは、本発明による荷電粒子選別器の領域を規定するスペーサーの概略図である。
【図8C】図8Cは、本発明による荷電粒子選別器の領域を規定するスペーサーの概略図である。
【図9】図9は、従来の先行技術による大気圧インターフェースの概略図である。
【技術分野】
【0001】
関連特許出願のクロスリファレンス
本出願は、2003年2月14日に提出された米国仮出願60/447,655に対して優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は質量分析に関し、より詳細には、大気圧イオン源と質量分析器の低圧領域との間のインターフェースに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
質量分析器における分析のためのサンプルまたは検体は、しばしば大気環境においてイオン化され、次いで、かかるイオンは、質量分析器を含む真空チャンバーへ導入される。大気圧イオン源はサンプルを取り扱う上で利点を提供するが、イオン源から真空チャンバーへのイオンの導入には、イオン源と真空チャンバーとの間に配置された適切なインターフェースが必要とされることが多い。例えば、イオン化技術の1つのコモンファミリーとしては、エレクトロスプレー(これは低流量を提供する)およびナノスプレーなどのその派生物が挙げられる。そのような技術の全てにおいて、溶媒中に所望の検体を含有する液体サンプルは、エレクトロスプレーキャピラリーの先端で、荷電および中性液滴のスプレーを形成する。いったんスプレーが生成されると、溶媒は蒸発し始め、そして液滴から除去される。これは脱溶媒和と一般的に言われるプロセスである。したがって、イオンを発生させることにおいて重要な工程は、適切な脱溶媒和を確保することである。通常、エレクトロスプレー源は、大気圧チャンバーにおいて何らかの脱溶媒和手段と併用され、ここで、脱溶媒和は、液滴への熱移動(放射、対流)または/および乾燥気体の逆流によって促進されうる。一般的に、スプレーは液滴サイズの分布からなり、そのため、脱溶媒和の程度はそれぞれの液滴サイズで異なる。その結果、脱溶媒和後、脱溶媒和された粒子のサイズ分布があり、ここで大きくて重い荷電粒子が存在し、この荷電粒子はアパーチャーまたはコンダクタンスリミットを汚染し得、それによって、質量分析領域の長期の安定な操作が妨げられ、および/またはイオン検出器にさらなるノイズが導入される。この付加的なノイズ源は、信号対ノイズ比を低下させ、したがって質量分析器の感度を低下させる。
【0004】
イオン、および付随する溶媒分子(中性物質)と荷電粒子は、大気圧領域から質量分析器の低圧チャンバーへ移される。一般的に、質量分析器は、10-4トール(Torr)未満で動作し、段階的な減圧を提供するためにスキマーまたはアパーチャーのステージを必要とする。中性物質が質量分析器に入るのを妨げつつイオンを入れるための様々な方法が周知である。本発明の譲受人に譲受された米国特許第4,023,398号(その内容は本明細書に含まれる)において、図9に表されたように、質量分析器32はインターフェース領域15によって大気にふれている。エントランスアパーチャー4を有するパーティション3が具備され、大気圧を質量分析器32の第一真空すなわち低圧領域10から分離している。またカーテン気体7が供給され、周囲の気体および中性物質14が真空領域10および11に入るのを妨げている。エントランスアパーチャー4の直径は、大気領域からの気体流動を制限して、質量分析器領域32において第一および第二真空ポンプ12および13のポンピング容量のバランスを保つように選ばれる。オリフィス6を有するカーテンプレート5が、エントランスアパーチャー4とスプレー2との間に配置される。カーテンプレート5の目的は、スプレー2とは逆方向にカーテン気体7の流動を適用することである。カーテン気体7は2つの機能を有する:中性物質14がアパーチャー4へ入るのをそらすこと、および荷電液滴を脱溶媒和してイオンを放出すること。この方法においては、荷電粒子および完全に脱溶媒和されずに残留荷電液滴として残る重い荷電液滴は、カーテン気体流動を通過し得、エントランスアパーチャー4へ向かって下流へ移動し続け得る。
【0005】
米国特許第4,977,320号および同第5,298,744号は、伝導性および非伝導性物質でできた、加熱されたチューブを用いてイオン/気体担体/溶媒流動を低圧チャンバーへ送達する方法を教示している。かかる構成において、加熱されたチューブは2つの異なる別個の機能を提供する:まず、気体流動に対する著しい抵抗のために、チューブ構成、すなわちその長さよび内径は、ポンピングシステムに対する気体の負荷を調節する。第2に、チューブは加熱されて、脱溶媒和および中性物質からのイオンの分離を生じ得る。第一の機能に関して、チューブの長さを一定に保ちつつ、この抵抗が提供され、イオン/気体担体/溶媒流動を吸入するために、チューブおよび可能な限り最も幅広い開口における層流の気体流動を確保し得る。一般的に、チューブのより幅広いボアは、気体流動の増加、それゆえポンピングシステムに対するより多くの負荷を提供する。これに対し、チューブの長さを減少させることは、気体流動に対するより少ない抵抗を提供し、それによってもまた、気体流動およびポンピングシステムに対する負荷を増加させる。これら2つの幾何パラメーター、ボアと長さとは、明らかに関連しており、所望の流量および流動抵抗を提供するように調整されうる。第二の機能は、インターフェースチューブの周りにヒーターを取り付けることによって提供される。チューブに提供される熱は、イオン流動の脱溶媒和を促進し、またチューブの表面の汚染を減らすのを助け、それによって、メモリー効果が減少する。このタイプのインターフェースは、チューブの長さやチューブのボアの多様性を制限する、厳密に層流の条件下で最も良好に機能することができる。さらに、温度および滞留時間によって決まる(チューブを通る気体速度に対して反比例する)脱溶媒和は、ポンピング要件と関連している。概して、全ての所望のパラメーターを最適化するのは不可能であり、特に、全体の質量流量を最小限にしてポンピング要件を減らすことが望ましい。他方で、イオンを質量分析器へ最も効率よく移すのを確実にするため、高い質量流量を有する大きな直径のチューブが望ましい。加えて、イオンの脱溶媒和は、滞留時間の変化のせいで、チューブの直径によっても影響を受ける。
【0006】
米国特許第5,304,798号は、チャンバーが成形通路を有し、脱溶媒和機能およびキャピラリー制限機能の両方を提供する方法を教示することにより、これらの要件の両方を満たすよう試みている。大気圧に隣接した通路の開口は幅広くて長いボアを有する一方で、真空チャンバー内で終わる通路の反対側の端部はより小さくてより短いボアを有する。エレクトロスプレー源は幅広いボアの開口の前に配置され、スプレーが直接通路に入ることを可能にする。脱溶媒和は幅広いボア領域内で行われる一方で、小さい方のボアは質量流量の制限を提供する。全スプレーは脱溶媒和チューブへ入り、中性または荷電粒子または完全に脱溶媒和されなかった液滴は小さいボアへ入る。これらの粒子または液滴は小さなボアにおいて蓄積し得、それによって閉塞が起こり得、またはそれらは小さいボアを通過して真空チャンバーへ入り、広範囲の汚染を導き得る。
【0007】
米国特許第Re.35,413号は、脱溶媒和チューブの出口がスキマーに対して軸外に位置決めされている、脱溶媒和チューブおよびスキマー装置を記載している。スキマーのオリフィスからチューブの軸をオフセットすることは、オリフィスを通してイオンを流動させる一方で、脱溶媒和されなかった液滴および粒子がスキマーに衝突するよう意図されている。この方法は、脱溶媒和されなかった液滴または荷電粒子が脱溶媒和チューブの軸に沿って移動するのを制限されているのではなく、ボア中の分布に従っているのだということを考慮に入れていない。つまり、この装置は、中心軸に沿って移動する脱溶媒和されなかった液滴および粒子がオリフィスに入るのを防ぐだけである。脱溶媒和チューブのオフセットは、オフセット位置に整列した液滴および荷電粒子がスキマーに入るのを防がず、また蓄積物がオリフィスの周りに増加するのを防がない。さらに、オフセットの関数としてスキマーを通るイオン流が減少することが予測される。
【0008】
米国特許第5,756,994号においては、加熱されたエントランスチャンバーが具備されており、これは別個にポンプ操作される。エントランスアパーチャーを通ってこのチャンバーに入るイオンは、次いで出口アパーチャーを介してサンプリングされる。該出口アパーチャーは、チャンバーの側面に、エントランスオリフィスからの直線軌道を表すあらゆる線から外れて、配置される。この外れたアライメントの目的は、中性の液滴または粒子が出口アパーチャーに入るのを防ぐことである。この加熱されたエントランスチャンバーにおける圧力は、約100トールに保たれる。わかっている範囲において、エントランスチャンバーには独立したポンピング装置があり、チャンバーの形状は層流の維持に貢献せず、エントランスアパーチャーはチャンバー自体の主要部分の断面よりもはるかに小さい。出口アパーチャーを介する円柱状の流動の一点のみからのサンプリングの明らかな非効率性に加え、このチャンバーの壁に対してイオン流が著しく失われることが予想される。
【0009】
大気圧イオン源のもう1つの一般的なタイプは、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)技術を用いる。かかる源において、レーザーからのフォトンパルスがターゲットに衝突し、質量分析器で測定されるべきイオンを脱着させる。ターゲット物質は低濃度の検体分子でできており、これは通常適度のフォトン吸収/分子しか示さず、小さくて高吸収性の種からなる固体または液体マトリックスに組み込まれる。レーザーパルスにおけるエネルギーの突然の流入は、マトリックス分子によって吸収され、それらを蒸発させ、マトリックス分子およびイオンの小さな超音速ジェット(この中に検体分子が混入される)を生成させる。この放出プロセスの間、マトリックスによって吸収されたエネルギーのいくらかは検体分子に移動し、それによって検体分子をイオン化する。各々のレーザーパルスによって発生したイオンの噴出流は、検体イオンだけでなく、マトリックス物質を含有する荷電粒子もまた含有する。かかる荷電粒子は、イオンの流れから除かれない限り、質量分析器の性能に影響を与える可能性がある。
【発明の開示】
【0010】
発明の要旨
これらのことを考慮して、本発明は、イオン質量分析器によって調査されるべきイオンを調製するためのシステムを提供する。当該システムは、エレクトロスプレーイオン源またはMALDI源などの大気圧イオン源、真空チャンバーに含まれる質量分析器、およびイオンをイオン源から真空チャンバーへ導入するためのインターフェースを有する。インターフェースは、エントランスセルおよび粒子選別セルを含む。
【0011】
大気圧イオン源がエレクトロスプレーイオン源である実施態様において、エントランスセルは脱溶媒和セルとして機能しうる。エレクトロスプレーイオン源は大気中で動作し、調査されるべきイオンを含有する荷電液滴のスプレーを提供する。スプレーは、スプレー中の液滴を乾燥するために脱溶媒和セルの加熱されたボアへと方向付けられ、イオンの流れを発生させる。かかるイオンの流れは望ましくない粒子を含有している。粒子を選別する(すなわち除去する)ための粒子選別セルは、脱溶媒和セルの下流で、かつ大気圧を真空チャンバー中の真空から分離するパーティションのアパーチャーの前に、配置されている。粒子選別セルは、イオンの流れを受け取るためのボア(このボアは、脱溶媒和セルのボアよりも大きい)を有し、またセントラルゾーンおよびこのセントラルゾーンを取り囲む選別ゾーンを有する。イオンの流れが粒子選別セルのボアに流れ込むと、渦が選別ゾーン中に形成される。粒子選別セルは、そのボア内に粒子選別電界を発生させるためにそこに適用される電圧を有する。粒子選別セル内の電界および渦の形成は一緒になって、イオンの流れから粒子を除去する効果を提供し、それによって、これら粒子はパーティションのアパーチャーに入らない。
【0012】
本発明はまた、大気中で動作するイオン源を真空チャンバー内のイオン質量分析器とインターフェースする方法を提供する。例えば、イオン源はエレクトロスプレー源またはMALDI源であってもよい。エントランスセルおよび荷電粒子選別セルを含むインターフェースは、大気イオン源と真空チャンバーとの間に配置される。イオン源がエレクトロスプレー源である場合、エントランスセルは脱溶媒和セルとして用いられる。イオン源によって発生させた荷電イオン液滴のスプレーは、スプレー中の液滴を乾燥するために脱溶媒和セルの加熱されたボアへと方向付けられ、イオンの流れを発生させる。かかるイオンの流れは望ましくない粒子を含有している。次いでイオンの流れは、選別セルを通るよう方向付けられる。この選別セルは、脱溶媒和セルの下流で、かつイオン質量分析器を含む真空チャンバーから大気を分離するパーティションのアパーチャーの上流に、配置される。選別セルは、脱溶媒和セルのボアよりも大きいボアを有し、またセントラルゾーンおよびこのセントラルゾーンを取り囲む選別ゾーンを有する。イオンの流れは、脱溶媒和セルから選別セルへ流れ込む間、選別セルの選別ゾーンにおいて渦を発生させる。電圧が選別セルに適用され、選別セルのボア内に選別電界を発生させる。選別セル内の電界および渦の発生は一緒になって、イオンの流れから望ましくない荷電粒子を除去する効果を提供し、それによって、これら粒子はパーティションのアパーチャーに入らない。
【0013】
添付の請求の範囲は、本発明の特徴を詳細に定義するが、本発明は、その目的と利点と共に、添付の図面と併せて以下の詳細な記載から最もよく理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ここで、図面を参照すると、図1は、本発明の1実施態様による図であり、概して16によって示される大気圧インターフェースを示す。インターフェース16はイオン源1と質量分析器32との間に位置決めされており、インターフェース16は、以下に記載するように、少なくとも1つのインターフェースセルからなる。イオン源1からのイオンは、それぞれアパーチャー4および9を介して、真空チャンバー10および11からなる質量分析器32へ入る。真空チャンバー10および11の各々における圧力は、それぞれ真空ポンプ12および13によって段階的に減圧される。真空ステージ間のパーティション8に取り付けられたアパーチャー9は、1つのポンピングステージから次のポンピングステージへの中性気体のコンダクタンスを制限し、その一方で、パーティション3に取り付けられたアパーチャー4は、大気から真空チャンバー10への気体の流動を制限する。アパーチャー4とイオン源1との間の圧力は、一般的に大気圧と同じかそれに近いものである。
【0015】
イオン源1は、分析すべきサンプルのタイプに応じて、多くの公知のタイプのイオン源の中の1つまたは複数であり得る。例えば、イオン源は、エレクトロスプレーまたはイオンスプレー装置、コロナ放電ニードル、プラズマイオン源、電子衝撃または化学イオン化源、光イオン化源、MALDI源、あるいはそれらの任意の複数の組み合わせでありうる。その他の所望のタイプのイオン源を用いてもよく、またイオン源は、大気圧、大気圧よりも上、大気圧付近、あるいは真空で動作させてもよい。一般的に、イオン源における圧力は、質量分析器32の下流の圧力よりも大きい。イオン源1は、スプレー(エレクトロスプレー源の場合)または噴出流(MALDIイオン源の場合)、あるいは複数のスプレーまたは噴出流を生成する。エレクトロスプレーイオン源からのスプレーは、初めは主に荷電液滴を含み、その後にイオンおよび粒子の進行的な形成が続く。MALDIイオン源が用いられる場合、MALDIイオン源からの噴出流は、一般的にイオンおよび粒子の混合物を含み、ここで粒子は、水和されたまたは単に荷電されたもしくは中性の粒子(MALDIレーザーからの加熱の程度による)であり得る。イオン源のタイプに関わらず、脱溶媒和されなかった液滴または粒子のいずれかが存在すると、イオンの流れの質が低下し得、また質量分析器32のアパーチャー4を介したイオンの伝達が妨害され得る。以下に記載するように、本発明のイオンインターフェースは、イオンが質量分析器を含む真空チャンバーに入る前に、イオンの流れからの望ましくない粒子の除去を可能にする。
【0016】
記載を簡潔にするため、以下の記載は、イオン源がエレクトロスプレー源である実施態様を詳述する。しかしながら、本発明のイオンインターフェースは、MALDI源によって発生されるイオンの噴出流から望ましくない荷電粒子を除去することにおいても効果的であることは理解されるべきである。さらに図1を参照すると、エレクトロスプレー源からのスプレー2は、カーテン流動領域17に向かって方向付けられた、イオン、液滴および粒子の混合物を含む。カーテン流動領域17は、エントランスセル27に対するインレット24の前にある領域によって規定される。カーテンプレート5は、軸20によって規定されるライン上に中心があるように位置決めされた開口6を有する。また、気体源61によって供給されるカーテン気体7は、オリフィス6とエントランスセル27のインレット24との間のカーテン流動領域17において流動する。用いられるイオン源のタイプに応じて、気体源61は、まったく流動しない場合を含む流量の範囲を供給するように調節されうる。
【0017】
カーテンプレート5は、図1のような円錐表面、または図2に示すような平面、環状の形態、あるいはカーテン気体7をカーテン流動領域17へ方向付けるための任意の他の適切な形状を取り得る。図1および2において、同じ番号は同じ構成要素を表すが、明瞭性のため、いくつかの参照番号を省略した。カーテン気体7のいくらかは、インレット24に流れ込む傾向およびオリフィス6を介してスプレー2とは逆方向に流れ出す傾向がある。スプレー2がカーテン気体7と接触すると、乱流混合が起こり、それによって、液滴は脱溶媒和してイオンを放出する。カーテンプレート5およびカーテン気体7は、高温(通常、30〜500℃)に加熱されて脱溶媒和プロセスを促進し得る。イオンが質量分析器32に向かう方向へ移動し続けるにつれて、中性粒子および残存する中性液滴14は、カーテン気体7または一般的なバックグラウンド気体と衝突し、インレット24に入るのを妨げられる。よって、中性粒子および残存する中性液滴は、噴出流の残部から選別される。
【0018】
イオン、荷電粒子、残存する荷電液滴、およびカーテン気体7の一部は、エントランスセル27へ流れ込む。該エントランスセルは、加熱されたチャンバー26内に配置されており、ボア58を有する。エレクトロスプレー源が用いられる場合、エントランスセルが加熱され、エレクトロスプレー源からの荷電液滴を脱溶媒和するのを助ける。このため、エントランスセル27は、この後の記載において脱溶媒和セルとも言及される。第二の脱溶媒和が起こり、加熱されたチャンバー26の結果は、熱を残存する荷電液滴に対流伝達する。イオンは脱溶媒和された液滴から放出されるが、荷電粒子を形成するこれらの荷電液滴は、脱溶媒和セル27を通って流動することができる。続いて、加熱されたチャンバー出口25から出てくるイオンおよび荷電粒子は、第二粒子選別セル30へと移動する。該第二粒子選別セルは、加熱されたチャンバー出口25とパーティション3との間に配置されており、スペーサー29によって放射方向において限定されている。スペーサー29の内径は、加熱されたチャンバー26の内部ボア58よりも大きく、該内部ボアはパーティション3のアパーチャー4よりも大きい。通常、アパーチャー4は、0.10〜1.0mmの間の直径を有し、その壁の厚みは0.5〜1.0mmの間である。スペーサー29は、2〜20mmの間の直径を有し、加熱されたチャンバー26のボア58は、0.75〜3mmの間の直径を有する。カーテンプレート5、加熱されたチャンバー26、スペーサー29およびパーティション3は、適切に知られた方法によってお互いから電気的に隔離されており、それぞれ、それらに接続された電圧源40、41、42および43の1つの極(所望するイオンの極性に応じて)を有する。従来のように、電圧源40、41、42および43は、直流、交流、RF電圧、グラウンド接続またはそれらの任意の組み合わせで構成される。スペーサー29は、セラミックのような非伝導性材料から作製され得、ここには電位は適用されない。前述したように、パーティション3とイオン源1との間の圧力は実質的に大気圧であり、そのため、加熱されたチャンバー26からスペーサー29までの間の合わせ面、およびスペーサー29からパーティション3までの間の合わせ面は、真空気密シールを必要としない。しかしながら、イオン源1からアパーチャー4への方向の正味の流動(スプレー2とカーテン気体7の一部とからなる)が所望されるため、実質的にリークフリーシールが好ましい。イオン源1とアパーチャー4との間の任意の点における正味の流動は、以下に記載する気体流線18が層流のままである場合、付加的な気体源によって補われてもよい。
【0019】
操作において、粒子選別セル30中に存在する電界および気体流動力学は、荷電粒子選別効果を作り出し、この効果は、アパーチャー4に入る望ましくない荷電粒子の量を減らす。このプロセスをよりよく理解するために、気体流動力学および電界効果の解説をそれぞれ以下に示す。
【0020】
まず、気体流動力学を図解するため、図3について述べる。図3は、中心軸20に沿った断面図を示し、脱溶媒和セル27の一部を含む粒子選別セル30の2次元計算流体力学(CFD)モデリングからの気体流動の流線を示す。縦軸34は中心軸20からの距離(mm)の尺度であり、一方、横軸35のグラデーションは、加熱されたチャンバー26のインレット24から測定されている。アパーチャー4の直径は約0.25mmであり、チャンバー10における真空圧は1〜5ミリバール(mbarr)の間である。中心軸20と平行な流線18は、中心軸20の付近で23m/s間の気体流動速度を有すること、および、加熱されたチャンバー26の表面52付近で約5m/s以下まで放射方向に広がることを特徴とする。アパーチャー4の制限によって、アパーチャー4を通って流動する気体は加速し、計算はその瞬間的な速度が29m/sを超えることを示す。荷電粒子選別(CPD)ゾーン37は、スペーサー表面38の間、および加熱されたチャンバー出口表面36からアパーチャーパーティション表面39までの間で境界を定められた環状ゾーンによって規定される。この環状選別ゾーン37は、セントラルゾーン59(図1参照)を取り囲み、イオンの流れの大部分がこのセントラルゾーンを通過する。従来は、他の人によって実施されてきたように、質量分析器のインレットアパーチャーに直接的に隣接して位置決めされたキャピラリーチューブの出口か、あるいはインレットアパーチャーと完全に置き換わったキャピラリーチューブのいずれかを有する、液滴の脱溶媒和のための加熱されたキャピラリーチューブが存在する。
【0021】
これに対し、CPDゾーン37は、加熱されたチャンバー出口25とアパーチャー4との間に放射方向の摂動すなわち縦方向の不連続性を作り出す働きをし、循環する流線19が形成される。循環する流線19は通常、低流動速度(約2m/s)を有する渦とよばれ、一方で、CPDゾーン37に隣接する流線18は、より大きな気体流動速度でアパーチャー4に向かって31に集まる傾向がある。一般的に、加熱されたチャンバー26および粒子選別セル30の中央を通って流動する気体は層流であり、すべての気体流動は、質量分析器32からの真空引きによって作り出される。イオンおよび荷電粒子は流線18中に分布されており、大きくて重い荷電粒子は、アパーチャー4の視線方向を超えて放射方向に伸びる領域において流線18と共に移動し、流線が31に集まるにつれて流線18から抜け出し、アパーチャー4付近のパーティション3と衝突する。CPDゾーン37に最も近い荷電粒子は、集束する流線から抜け出し、そしてCPDゾーン37の循環する流線19に入る傾向があるが、中心軸20に沿ってアパーチャーの直接視線方向に動く荷電粒子は、アパーチャー4に入る。後に詳述するように、これら視線方向の荷電粒子は、アパーチャー4に入るのを妨げられうる。他方では、この領域をアパーチャー4の視線方向を超えて放射方向に動く小さな荷電粒子は、気体流動によって容易に影響を受け、アパーチャー4を介して31に集まり、質量分析器32に入る。
【0022】
しかしながら、適切な電界を用いて、多くの驚くべき効果が起こる。かかる効果としては:a)荷電粒子がアパーチャー4から離れるように向きをそらされること;b)通常アパーチャー4の近傍に衝突する重い荷電粒子が、循環する流線19の方向へ引き寄せられること;およびc)イオンがアパーチャー4を通って動き続けること、が挙げられる。よって、電界は、質量分析器へのイオンの伝達を維持しつつ、アパーチャー4の付近に集められる堆積物の量を減らす効果を有する。
【0023】
電界効果を図解するため、図4について述べる。図4は、図3に記載した領域についての電界モデリングを示す。このモデルにおいて、加熱されたチャンバー26に対する電位は+500ボルトにセットされ、パーティション3に対する電位は+40ボルトにセットされ、スペーサー29は同じく+40ボルトにセットされた伝導性材料インセット(図示せず)を有する。前述したように、スペーサー29は、全体がセラミックのような電気絶縁性材料から適切に構築され得、そこには電圧は適用されない。電圧分布によって作り出される電界は、異なる線によって表されている。例えば、線45、46および47は、等しい電位線(等電位)であり、それぞれ約400、300および150ボルトを表している。等電位は、電界が中心軸20から離れるように矢印48で示される方向に向かってそれることを示している。加熱されたチャンバー出口25からアパーチャー4に向かう方向に動く荷電粒子は、矢印48の方向へそらされる傾向がある。図5はパーティション3上ではっきりと認められる粒子選別の描写である。チトクロムc消化物のサンプルをこの解析に用いた。アパーチャー4の周りに配置されたパーティション3上に、堆積物の3つの明確な領域がある。第一領域49は、チトクロムc消化物からのヘム群の堆積物からなる。この堆積物(プライマリ堆積物とよばれる)は、加熱されたチャンバー26とパーティション3との間の電位差が増加するにつれて、広範囲にわたって分散され得る。例えば、加熱されたチャンバー26がパーティション3と同じ電位で動作される場合、この堆積物の直径は、通常、約680μmであり、電位差が400Vまで増加すると、この堆積物の直径は、通常、約790μmである。電界を用いた堆積物の分散の増加は、タンパク質イオンの計数率に対して影響を有しない。これは、イオンが摂動を受けず、アパーチャー4に向かう層流の気体流動と共に掃引されることを示している。
【0024】
目的の第二領域50は、プライマリ堆積物を取り囲む明瞭な領域に対応する。この領域は、気体流動の流線および電界の両方がパーティション3に関して発散しており、荷電粒子をこの領域から離れるように方向付けるために、生じる。最終領域51は、第二領域50の縁部からスペーサー表面38の方へ堆積された軽い単分散層の物質を含有する。CPDゾーン37における循環する流線19の渦巻く気体流動内に粒子が捕捉されるようになる結果として、この軽いダスティングが起こる。この気体流動の特性によって、この領域内の粒子は、パーティション3にぶつかりそこに不均一な様式で堆積するまで渦巻く。
【0025】
別の実施態様の局面に従って、図6はブロッキング部材57を示す。該ブロッキング部材は、中心軸20上の、加熱されたチャンバー出口25とスペーサー29の出口55との間に配置され、軸20に沿って動く粒子について直接視線方向を排除することによって荷電粒子選別を提供する。ブロッキング部材57の直径は、加熱されたチャンバー26の内径よりも小さく、アパーチャー4の直径よりも大きい。例えば、300μmのブロッキング部材57は、2mmの加熱されたチャンバー26のボアに適している。一般的に、ブロッキング部材57は、アパーチャー4の直径よりも大きいが、加熱されたチャンバー26およびスペーサー29を通過する気体流動の条件に応じてサイズを変えることができる。より詳細には、アパーチャー4に対する、ブロッキング部材57の直径および位置決めは、ブロッキング部材57の上流の流動の流線18および下流の流動の流線62が層流のままである(図7参照、ここで同じ番号は図3における同じ構成要素を表す)ように選択される。加えて、ブロッキング部材57の下流の流線62は、流線62がアパーチャー4にさらに集まるのに十分に中心軸20に向かって戻って集まるべきである。ブロッキング部材57の下流に位置する再循環する流線53を最小限にするのが好ましい。したがって、ブロッキング部材を位置決めして上記の条件を提供すれば、より大きな粒子は気体流動によってブロッキング部材57の周りに運ばれない。その結果として、より大きな粒子はブロッキング部材57の表面に衝突してその上に堆積するが、イオンはアパーチャー4の周囲を流動してアパーチャー4に入る。ブロッキング部材57は電気絶縁体であってもよく、あるいは電圧源60(ブロッキング部材に接続されて静電界を提供する)の1つの極(所望するイオンの極性に応じて)を有する電気伝導性エレメントであってもよい。静電界は、さらに、大きな荷電粒子をアパーチャー4からそらせるのを補助しうる。
【0026】
さらに、軸20に沿ったブロッキング部材57の位置が、加熱されたチャンバー出口25とスペーサー29のアウトレット55との間の位置に限られないことは理解され得る。ブロッキング部材57を加熱されたチャンバー26のボア58内に位置決めすることによって、同様の結果が達成され得る。
【0027】
上記から、スペーサー29内にある電界の寄与と気体流動の寄与との組み合わせによって、粒子選別が達成される。ブロッキング部材57は、軸20上をアパーチャー4の直接視線方向に動く荷電粒子を除去し、一方で、電界は、アパーチャー4の周囲に衝突するはずの荷電粒子をCPDゾーン37へ流れ込ませる。この効果は、加熱されたチャンバー出口25とパーティション3との間の電界の発散性質を増強することによって、より顕著になり得る。スペーサー29のボアを変えることも可能であり、あるいは、スペーサー29の形状を変えることによって、より大きな領域の循環流線19を提供することも可能である。例えば、図8Aに示したように(容易性および簡潔性のため、図4の装置と同じパーツには同じ参照番号を付している)、スペーサー29は、インレット54の直径よりも大きいアウトレット55の直径を有しており、ここで、インレット54とアウトレット55との間の移行部は、直線的に拡大するするボアである。さらに、図8Bおよび8C(同じく、同じ参照番号は図4と同じパーツを示す)に示すように、インレット54からアウトレット55への移行部は、荷電粒子分散を促進する非線形プロファイルの形状であり得る。
【0028】
図1に示された好ましい実施態様では、スペーサー29は非伝導性材料でできており、加熱されたチャンバー26をパーティション3から電気的に隔離する。スペーサー29が、電気伝導性であるかまたは部分的に伝導性であり、電圧源42に接続されており、また、加熱されたチャンバー26から、およびパーティション3から電気的に隔離されている場合、CPDゾーン37において電界が作り出されて、放射方向の移動性フィールド(mobility field)を提供し得る。移動性フィールドは、荷電粒子を、アパーチャー4から離れるように、図1において矢印56で示される放射方向にそらせることができる。例えば、スペーサー表面38に適切な電位を適用して負の電位場をCPDゾーン37に作り出すことによって、正に荷電した粒子は、スペーサー表面38に向かってアパーチャー4から離れるように引き寄せられる。負の電位の度合いは、気体流動の流れから高移動性荷電イオンを抽出するのを妨げるように最適化されるべきである。同様に、負に荷電した粒子をアパーチャー3からそらすために、正の電位場が作り出され得る。
【0029】
さらに、加熱されたチャンバー26、スペーサー29およびパーティション3に適切な電位を適用することによって、逆移動性(inverse mobility)チャンバーが作り出され、それによって、荷電粒子の移動性は加熱されたチャンバー出口表面36に向かって方向付けられ得る。例えば、イオン源1は+2000ボルトの電位を有し、カーテンプレート5および加熱されたチャンバー26の両方は0ボルトを有し、スペーサー29は非伝導性であり、パーティション3には+30ボルトの電位が供給される。この電位の組み合わせにより軸反発(axially repellant)電界が発生し、それによって、イオンの計数率に影響を与えることなく、大きな荷電粒子がアパーチャー3に衝突するのを防ぐ。電位の組み合わせの選択は、ボア58およびボア59の直径に依存し、またある程度はアパーチャー4に依存する。電位の適切な組み合わせによって、イオンおよび粒子の両方がアパーチャー4から離れるようにそらされ、質量分析器に対して方向付けられたイオンの流れをさえぎる便利な方法を提供し得ると考えられる。同様に、イオン源1およびパーティション3上の極性を反転させることによって、負に荷電した粒子がアパーチャー3からはじかれる。これは、アパーチャーを通る汚染物を減らし、それにより質量分析器への気体コンダクタンスリミットを維持することによって、ローブスト性を実質的に改善するので、先行技術に対して著しい利点である。
【0030】
本発明の好ましい実施態様を記載してきたが、変更は本発明の精神において為しえ、またかかる全ての変更が請求の範囲内に含まれるよう意図されたものであるということは、理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明による荷電粒子選別器の概略図である。
【図2】図2は、本発明によるもう1つの荷電粒子選別器の概略図である。
【図3】図3は、本発明による荷電粒子選別器の気体流動の流線の線図である。
【図4】図4は、本発明による荷電粒子選別器の電界の線図である。
【図5】図5は、図1の荷電粒子選別器からの結果を表す。
【図6】図6は、本発明によるさらに別の荷電粒子選別器の概略図である。
【図7】図7は、本発明による荷電粒子選別器の気体流動の流線のもう1つの線図である。
【図8A】図8Aは、本発明による荷電粒子選別器の領域を規定するスペーサーの概略図である。
【図8B】図8Bは、本発明による荷電粒子選別器の領域を規定するスペーサーの概略図である。
【図8C】図8Cは、本発明による荷電粒子選別器の領域を規定するスペーサーの概略図である。
【図9】図9は、従来の先行技術による大気圧インターフェースの概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン質量分析のためのシステムであって、
大気圧中に配置されたイオン源と、
質量分析器と、
該質量分析器を含む真空チャンバーと、
該イオン源によって発生させたイオンを該質量分析器による分析のために該真空チャンバーへ導入するための、該イオン源と該真空チャンバーとの間に配置されたイオンインターフェースと、
を有し、
該イオンインターフェースが、エントランスセルおよび粒子選別セルを有し、
該エントランスセルが、該イオン源のアウトプットを受け取って検体イオンおよび望ましくない粒子を含有するイオンの流れを形成するよう配置されたボアを有し、
該粒子選別セルが、該エントランスセルのボアの下流で、かつ大気圧を該真空チャンバーから分離するパーティション中のアパーチャーの上流に配置されたボアを有し、
該粒子選別セルのボアが、セントラルゾーンと該セントラルゾーンを取り囲む選別ゾーンとを有し、かつ、脱溶媒和セルのボアより大きいサイズであり、該イオンの流れが該エントランスセルのボアから該粒子選別セルのボアへ流れ込む場合に、該選別ゾーンにおいて渦の形成を引き起こし、
該粒子選別セルが、そのボア内に選別電界を発生させるためにそこへ適用される電圧を有し、それによって、該粒子選別セル内の選別電界および渦の形成が一緒になって、該イオンの流れから望ましくない粒子の部分を、該パーティションのアパーチャーを通って該真空チャンバーに入る前に除去する効果を提供する、
前記システム。
【請求項2】
イオンインターフェースがエントランスセルを加熱するためのヒーターを含む、請求項1記載のイオン質量分析のためのシステム。
【請求項3】
イオンインターフェースが、イオン源のアウトプットとは逆方向にカーテン気体流動を提供するために、該イオン源の下流に配置されたカーテンプレートをさらに含む、請求項1記載のイオン質量分析のためのシステム。
【請求項4】
イオン源が荷電液滴のスプレーを発生させるエレクトロスプレー源であり、イオンインターフェースが、該荷電液滴がエントランスセルのボアを通過する際に、該スプレーを乾燥させるために、該エントランスセルを加熱するためのヒーターを含む、請求項1記載のイオン質量分析のためのシステム。
【請求項5】
スプレーとは逆方向にカーテン気体流動を提供するために、エレクトロスプレー源とエントランスセルとの間に配置されたカーテンプレートをさらに含む、請求項4記載のイオン質量分析のためのシステム。
【請求項6】
イオン源が、イオン噴出流を発生させるマトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)源である、請求項1記載のイオン質量分析のためのシステム。
【請求項7】
噴出流とは逆方向にカーテン気体流動を提供するために、MALDI源とエントランスセルとの間に配置されたカーテンプレートをさらに含む、請求項6記載のイオン質量分析のためのシステム。
【請求項8】
エントランスセルのボアが0.75〜3mmの間の直径を有し、粒子選別チャンバーのボアが2〜20mmの間の直径を有する、請求項1記載のイオン質量分析のためのシステム。
【請求項9】
イオンインターフェースが、粒子選別セルのボア内に配置されたブロッキング部材をさらに含む、請求項1記載のイオン質量分析のためのシステム。
【請求項10】
ブロッキング部材が粒子選別セルのボアの軸上に配置されている、請求項9記載のイオン質量分析のためのシステム。
【請求項11】
大気圧中で動作するイオン源を真空チャンバーに含まれる質量分析器とインターフェースさせる方法であって、
該イオン源のアウトプットをエントランスセルのボアへと方向付けてイオンの流れを発生させることを含み、該イオンの流れが検体イオンおよび望ましくない粒子を含有しており、
該イオンの流れを、脱溶媒和セルの下流で、かつ大気圧を該真空チャンバーから分離するパーティションのアパーチャーの上流に配置された選別セルのボアに通すことを含み、該選別セルのボアがセントラルゾーンと該セントラルゾーンを取り囲む選別ゾーンとを有し、かつ、該脱溶媒和セルのボアより大きいサイズであり、該イオンの流れが該脱溶媒和セルから該粒子選別セルへ流れ込む場合に、該選別ゾーンにおいて渦の形成を引き起こし、
電圧を該選別セルに適用して該選別セルのボア内に選別電界を発生させることを含み、それによって、該粒子選別セル内の選別電界および渦の発生が一緒になって、該イオンの流れから望ましくない粒子の部分を、該パーティションのアパーチャーを通って該真空チャンバーに入る前に除去する効果を提供する、
前記方法。
【請求項12】
イオン源が荷電液滴のスプレーを発生させるためのエレクトロスプレー源であり、当該方法が、該荷電液滴がエントランスセルのボアを通過する際に、該スプレーを乾燥させるために、該エントランスセルを加熱する工程をさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
スプレーとは逆方向に気体流動を提供して、該スプレーの脱溶媒和を補助する工程をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
イオン源がマトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)源である、請求項11記載の方法。
【請求項15】
大気圧中に配置されたイオン源と真空チャンバーに含まれる質量分析器とをインターフェースさせるためのイオンインターフェースであって、
該イオン源のアウトプットを受け取って検体イオンおよび望ましくない粒子を含有するイオンの流れを形成するよう配置されたエントランスセルと、
該エントランスセルのボアの下流で、かつ大気圧を該真空チャンバーから分離するパーティション中のアパーチャーの上流に配置されたボアを有する粒子選別セルと、
を有し、
該粒子選別セルのボアが、セントラルゾーンと該セントラルゾーンを取り囲む選別ゾーンとを有し、かつ、脱溶媒和セルのボアより大きいサイズであり、該イオンの流れが該エントランスセルのボアから該粒子選別セルのボアへ流れ込む場合に、該選別ゾーンにおいて渦の形成を引き起こし、
該粒子選別セルが、そのボア内に選別電界を発生させるためにそこへ適用される電圧を有し、それによって、該粒子選別セル内の選別電界および渦の形成が一緒になって、該イオンの流れから望ましくない粒子の部分を、該パーティションのアパーチャーを通って該真空チャンバーに入る前に除去する効果を提供する、
前記イオンインターフェース。
【請求項16】
エントランスセルを加熱するためのヒーターをさらに含む、請求項15記載のイオンインターフェース。
【請求項17】
イオン源のアウトプットとは逆方向にカーテン気体流動を提供するために、該イオン源の下流に配置されたカーテンプレートをさらに含む、請求項15記載のイオンインターフェース。
【請求項18】
イオン源が荷電液滴のスプレーを発生させるエレクトロスプレー源であり、当該イオンインターフェースが、該荷電液滴がエントランスセルのボアを通過する際に、該スプレーを乾燥させるために、該エントランスセルを加熱するためのヒーターを含む、請求項15記載のイオンインターフェース。
【請求項19】
スプレーとは逆方向にカーテン気体流動を提供するために、エレクトロスプレー源とエントランスセルとの間に配置されたカーテンプレートをさらに含む、請求項18記載のイオンインターフェース。
【請求項20】
イオン源がマトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)源である、請求項15記載のイオンインターフェース。
【請求項21】
エントランスセルのボアが0.75〜3mmの間の直径を有し、粒子選別チャンバーのボアが2〜20mmの間の直径を有する、請求項15記載のイオンインターフェース。
【請求項22】
当該イオンインターフェースが、粒子選別セルのボア内に配置されたブロッキング部材をさらに含む、請求項15記載のイオンインターフェース。
【請求項23】
ブロッキング部材が粒子選別セルのボアの軸上に配置されている、請求項22記載のイオンインターフェース。
【請求項1】
イオン質量分析のためのシステムであって、
大気圧中に配置されたイオン源と、
質量分析器と、
該質量分析器を含む真空チャンバーと、
該イオン源によって発生させたイオンを該質量分析器による分析のために該真空チャンバーへ導入するための、該イオン源と該真空チャンバーとの間に配置されたイオンインターフェースと、
を有し、
該イオンインターフェースが、エントランスセルおよび粒子選別セルを有し、
該エントランスセルが、該イオン源のアウトプットを受け取って検体イオンおよび望ましくない粒子を含有するイオンの流れを形成するよう配置されたボアを有し、
該粒子選別セルが、該エントランスセルのボアの下流で、かつ大気圧を該真空チャンバーから分離するパーティション中のアパーチャーの上流に配置されたボアを有し、
該粒子選別セルのボアが、セントラルゾーンと該セントラルゾーンを取り囲む選別ゾーンとを有し、かつ、脱溶媒和セルのボアより大きいサイズであり、該イオンの流れが該エントランスセルのボアから該粒子選別セルのボアへ流れ込む場合に、該選別ゾーンにおいて渦の形成を引き起こし、
該粒子選別セルが、そのボア内に選別電界を発生させるためにそこへ適用される電圧を有し、それによって、該粒子選別セル内の選別電界および渦の形成が一緒になって、該イオンの流れから望ましくない粒子の部分を、該パーティションのアパーチャーを通って該真空チャンバーに入る前に除去する効果を提供する、
前記システム。
【請求項2】
イオンインターフェースがエントランスセルを加熱するためのヒーターを含む、請求項1記載のイオン質量分析のためのシステム。
【請求項3】
イオンインターフェースが、イオン源のアウトプットとは逆方向にカーテン気体流動を提供するために、該イオン源の下流に配置されたカーテンプレートをさらに含む、請求項1記載のイオン質量分析のためのシステム。
【請求項4】
イオン源が荷電液滴のスプレーを発生させるエレクトロスプレー源であり、イオンインターフェースが、該荷電液滴がエントランスセルのボアを通過する際に、該スプレーを乾燥させるために、該エントランスセルを加熱するためのヒーターを含む、請求項1記載のイオン質量分析のためのシステム。
【請求項5】
スプレーとは逆方向にカーテン気体流動を提供するために、エレクトロスプレー源とエントランスセルとの間に配置されたカーテンプレートをさらに含む、請求項4記載のイオン質量分析のためのシステム。
【請求項6】
イオン源が、イオン噴出流を発生させるマトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)源である、請求項1記載のイオン質量分析のためのシステム。
【請求項7】
噴出流とは逆方向にカーテン気体流動を提供するために、MALDI源とエントランスセルとの間に配置されたカーテンプレートをさらに含む、請求項6記載のイオン質量分析のためのシステム。
【請求項8】
エントランスセルのボアが0.75〜3mmの間の直径を有し、粒子選別チャンバーのボアが2〜20mmの間の直径を有する、請求項1記載のイオン質量分析のためのシステム。
【請求項9】
イオンインターフェースが、粒子選別セルのボア内に配置されたブロッキング部材をさらに含む、請求項1記載のイオン質量分析のためのシステム。
【請求項10】
ブロッキング部材が粒子選別セルのボアの軸上に配置されている、請求項9記載のイオン質量分析のためのシステム。
【請求項11】
大気圧中で動作するイオン源を真空チャンバーに含まれる質量分析器とインターフェースさせる方法であって、
該イオン源のアウトプットをエントランスセルのボアへと方向付けてイオンの流れを発生させることを含み、該イオンの流れが検体イオンおよび望ましくない粒子を含有しており、
該イオンの流れを、脱溶媒和セルの下流で、かつ大気圧を該真空チャンバーから分離するパーティションのアパーチャーの上流に配置された選別セルのボアに通すことを含み、該選別セルのボアがセントラルゾーンと該セントラルゾーンを取り囲む選別ゾーンとを有し、かつ、該脱溶媒和セルのボアより大きいサイズであり、該イオンの流れが該脱溶媒和セルから該粒子選別セルへ流れ込む場合に、該選別ゾーンにおいて渦の形成を引き起こし、
電圧を該選別セルに適用して該選別セルのボア内に選別電界を発生させることを含み、それによって、該粒子選別セル内の選別電界および渦の発生が一緒になって、該イオンの流れから望ましくない粒子の部分を、該パーティションのアパーチャーを通って該真空チャンバーに入る前に除去する効果を提供する、
前記方法。
【請求項12】
イオン源が荷電液滴のスプレーを発生させるためのエレクトロスプレー源であり、当該方法が、該荷電液滴がエントランスセルのボアを通過する際に、該スプレーを乾燥させるために、該エントランスセルを加熱する工程をさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
スプレーとは逆方向に気体流動を提供して、該スプレーの脱溶媒和を補助する工程をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
イオン源がマトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)源である、請求項11記載の方法。
【請求項15】
大気圧中に配置されたイオン源と真空チャンバーに含まれる質量分析器とをインターフェースさせるためのイオンインターフェースであって、
該イオン源のアウトプットを受け取って検体イオンおよび望ましくない粒子を含有するイオンの流れを形成するよう配置されたエントランスセルと、
該エントランスセルのボアの下流で、かつ大気圧を該真空チャンバーから分離するパーティション中のアパーチャーの上流に配置されたボアを有する粒子選別セルと、
を有し、
該粒子選別セルのボアが、セントラルゾーンと該セントラルゾーンを取り囲む選別ゾーンとを有し、かつ、脱溶媒和セルのボアより大きいサイズであり、該イオンの流れが該エントランスセルのボアから該粒子選別セルのボアへ流れ込む場合に、該選別ゾーンにおいて渦の形成を引き起こし、
該粒子選別セルが、そのボア内に選別電界を発生させるためにそこへ適用される電圧を有し、それによって、該粒子選別セル内の選別電界および渦の形成が一緒になって、該イオンの流れから望ましくない粒子の部分を、該パーティションのアパーチャーを通って該真空チャンバーに入る前に除去する効果を提供する、
前記イオンインターフェース。
【請求項16】
エントランスセルを加熱するためのヒーターをさらに含む、請求項15記載のイオンインターフェース。
【請求項17】
イオン源のアウトプットとは逆方向にカーテン気体流動を提供するために、該イオン源の下流に配置されたカーテンプレートをさらに含む、請求項15記載のイオンインターフェース。
【請求項18】
イオン源が荷電液滴のスプレーを発生させるエレクトロスプレー源であり、当該イオンインターフェースが、該荷電液滴がエントランスセルのボアを通過する際に、該スプレーを乾燥させるために、該エントランスセルを加熱するためのヒーターを含む、請求項15記載のイオンインターフェース。
【請求項19】
スプレーとは逆方向にカーテン気体流動を提供するために、エレクトロスプレー源とエントランスセルとの間に配置されたカーテンプレートをさらに含む、請求項18記載のイオンインターフェース。
【請求項20】
イオン源がマトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)源である、請求項15記載のイオンインターフェース。
【請求項21】
エントランスセルのボアが0.75〜3mmの間の直径を有し、粒子選別チャンバーのボアが2〜20mmの間の直径を有する、請求項15記載のイオンインターフェース。
【請求項22】
当該イオンインターフェースが、粒子選別セルのボア内に配置されたブロッキング部材をさらに含む、請求項15記載のイオンインターフェース。
【請求項23】
ブロッキング部材が粒子選別セルのボアの軸上に配置されている、請求項22記載のイオンインターフェース。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【公表番号】特表2007−500927(P2007−500927A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526467(P2006−526467)
【出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/004247
【国際公開番号】WO2005/001879
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(504361816)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/004247
【国際公開番号】WO2005/001879
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(504361816)
【Fターム(参考)】
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