説明

質量分析を使用する発現の定量化

種々の局面において、本教示は、タンパク質発現の絶対定量のためのシステム、方法、アッセイ、およびキットを提供する。種々の局面において、本教示は、1つまたはそれ以上の目的のサンプル中の1つまたはそれ以上の目的のタンパク質の濃度を求める方法を提供する。種々の局面において、本教示は、特徴的タンパク質フラグメントの標準試料および親−娘イオントランジションモニタリング(PDITM)を使用して、タンパク質の1つまたはそれ以上のアイソフォームの絶対濃度を求める方法を提供する。種々の実施形態において、1つのサンプル中の生体分子の複数のアイソフォームの絶対濃度、生物学的プロセスや複数のサンプルを組み合わせたものにおける複数のタンパク質の絶対濃度、またはそれらを組み合わせたものを、本教示を使用した複合的な方法で求めることができる。化学物質に対する生物学的システムの応答を評価する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年5月19日に出願された同時係属の米国仮特許出願第60/572826(発明の名称「Expression Quantification Using Mass Spectrometry」)の利益および優先権を主張し、その開示内容は、参照することによりすべて本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
タンパク質の発現を理解することは、生物学的システムを理解することにとって重要である。使い捨てのメッセンジャーとして働くにすぎないmRNAとは異なり、タンパク質は、制御された生物学的機能のほぼすべてを実行しており、結果として、正常な細胞活動、疾患過程、および薬物応答等の機能に不可欠である。しかしながら、タンパク質の発現は、確実に予想できるものではない。第一に、mRNAの転写レベルとタンパク質レベルとは必ずしも強い相関関係にあるとは限らないため、タンパク質の発現は、mRNAの発現地図からは予想できない。第二に、タンパク質は、生物学的システムにおいて、遺伝情報からは予想できない方法で、環境要因により動的に修飾される。
【0003】
さらに、タンパク質の機能は、その存在量(abundance)と修飾の程度により調節され得る。タンパク質の発現(又は濃度)およびタンパク質の修飾の程度の変化は、細胞内基質分解過程や生合成経路等の活性、細胞周期、または生物体全体における単一細胞の機能に大きな影響を与え得る。結果として、タンパク質濃度の変化は、例えば、分子レベルでの生物学的状態、可能性のある薬剤標的、薬剤の毒性、薬剤が危険な代謝産物を生成する可能性等に関する情報を提供したり、ある病態に対するバイオマーカーや特殊な薬物療法に対する肯定応答の見込みを予想するマーカーとしての役割を果たしたりすることができる可能性がある。
【0004】
一般に、タンパク質発現を定量化するための手法は、相対定量と絶対定量との2つの種類に分類される。概して、絶対定量は相対定量と比べてより多くの情報を提供するが、従来から実施することがより難しかった。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の開示)
本教示は、タンパク質発現の絶対定量のためのシステム、方法、アッセイ、およびキットを提供する。種々の局面において、特徴的タンパク質フラグメントの標準試料および親−娘イオントランジションモニタリング(PDITM)を使用して、タンパク質の1つまたはそれ以上のアイソフォームの絶対濃度を求める方法を提供する。種々の実施形態において、前記タンパク質アイソフォームは、1つまたはそれ以上のイソ酵素、1つまたはそれ以上の異性体、またはそれらの組み合わせからなる。種々の実施形態において、1つのサンプル中の生体分子の複数のアイソフォームの絶対濃度、生物学的プロセス(例えば、バイオマーカー群や生物学的経路等を対象とするため)や複数のサンプルを組み合わせたものにおける複数のタンパク質の絶対濃度、またはそれらを組み合わせたものを、例えば、そのサンプル(または混合サンプル)をクロマトグラフィカラムに1回かけた後PDITMを行うといった複合的な方法により求めることができる。
【0006】
「親−娘イオントランジションモニタリング(parent−daughter ion transition monitoring)」または「PDITM」という用語は、例えば、第1の質量分離器(しばしば、質量分析の第1局面と呼ばれる)の通過質量電荷比(m/z)範囲(transmitted mass−to−charge range)を選択し、分子イオン(しばしば、「親イオン」または「プレカーサイオン」と呼ばれる)をイオンフラグメンター(例えば、コリジョンセル、光解離領域等)に送ってフラグメントイオン(しばしば、「娘イオン」と呼ばれる)を生成し、第2の質量分離器(しばしば、質量分析の第2局面と呼ばれる)の通過m/z範囲を選択し、1つまたはそれ以上の娘イオンをその娘イオンの信号を測定する検出器へ送る質量分析法を使用した測定のことを言う。モニターされた親イオンと娘イオンの質量の組み合わせを、モニターされた「親−娘イオントランジション(parent−daughter ion transition)」と呼ぶことがある。モニターされた任意の親イオン−娘イオンの組み合わせに対する検出器における娘イオン信号を、「親−娘イオントランジション信号(parent−daughter ion transition signal)」と呼ぶことがある。本教示において、親イオンが特徴的ペプチド(signature peptide)であって、識別用娘イオン(diagnostic daughter ion)のイオン信号が測定された場合、モニターされた任意の特徴的ペプチドイオン−識別用娘イオンの組み合わせに対する検出器における当該識別用娘イオンの信号を、「特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジション信号(signature peptide−diagnostic daughter ion transition signal)」と呼ぶことがある。
【0007】
例えば、親−娘イオントランジションモニタリングのひとつの実施形態は、多重反応モニタリング(multiple reaction monitoring)(MRM)(選択反応モニタリング(selective reaction monitoring)とも言う)である。MRMの種々の実施形態において、任意の親−娘イオントランジションのモニタリングは、目的の親イオンが通過するように目的の親イオンのm/zに置かれた第1の四重極を第1の質量分離器として使用することと、目的の娘イオンが通過するように目的の娘イオンのm/zに置かれた第2の四重極を第2の質量分離器として使用することと、からなる。種々の実施形態において、PDITMは、例えば、第1の質量分離器を目的の親イオンのm/zに置いて親イオンを通過させ、第2の質量分離器を目的の娘イオンのm/z値を含むm/z範囲にわたって走査し、例えば、スペクトルからイオン強度プロフィールを抽出することにより行うことができる。
【0008】
例えば、タンデム質量分析(MS/MS)装置、または、より一般的には、多次元質量分析(MS)装置を使用することにより、PDITM、例えば、MRMを行うことができる。
【0009】
種々の実施形態において、目的の1つまたはそれ以上のタンパク質は、例えば、識別用娘イオン信号の標準化(normalization)、第1のサンプル中のタンパク質の濃度の第2のサンプル中の濃度に対する標準化(例えば、濃度比を標準化する)、データ信頼性の評価、複数のサンプル間の開始サンプル量の評価、またはそれらの組み合わせのために使用することができる。ここで、このようなタンパク質を標準化タンパク質(normalization proteins)と言う。したがって、種々の実施形態において、「標準化タンパク質(normalization protein)」という用語は、2つまたはそれ以上のサンプルのうちの2つまたはそれ以上のサンプル中で実質的に同じ濃度を有することが予想されるタンパク質、サンプルの化学物質による処理によって実質的に影響を受けない濃度を有することが予想されるタンパク質、またはその両方を意味する。例えば、種々の実施形態において、目的のタンパク質は、複数のサンプル間で実質的に同じ濃度を有することが知られているタンパク質とすることができる。種々の実施形態において、標準化タンパク質の特徴的ペプチドの信号レベルの変化を使用して、1つまたはそれ以上の目的のタンパク質の特徴的ペプチドの信号レベルを標準化することができる。種々の実施形態において、2つのサンプル間の標準化タンパク質の特徴的ペプチドの信号レベルの違いを使用して、データ信頼性を評価することができる。例えば、標準化タンパク質に関連する特徴的ペプチド信号が複数のサンプル間でかなりの量異なる場合、これらのサンプルのうちの1つまたは両方のサンプルに関連するデータは信頼できないものとして排除する。種々の実施形態において、標準化タンパク質の絶対濃度を求める必要はない。なぜなら、例えば、1つのサンプル中の標準化タンパク質に関連する特徴的ペプチド信号ともう1つのサンプル中のそれとの比を使用することにより、1つまたはそれ以上の目的のタンパク質の複数の特徴的ペプチドの信号レベルの標準化、1つのサンプル中の目的のタンパク質の濃度のもう1つのサンプル中のそれに対する標準化、複数のサンプル間の開始サンプル量の評価、データの信頼性の評価、またはそれらの組み合わせを行うことができるからである。
【0010】
種々の実施形態において、1つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上の目的のタンパク質の濃度を求める方法であって、
(a)1つまたはそれ以上の目的のタンパク質のそれぞれに対して、対応する目的のタンパク質に対する特徴的ペプチドからなる標準試料を用意する工程と、
(b)各標準試料の少なくとも1つの特徴的ペプチドに対して、1つまたはそれ以上の特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジションを選択する工程と、
(c)各選択された特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジションに対する濃度曲線を作成する工程と、
(d)前記1つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上の目的のタンパク質を化学成分(chemical moiety)で標識化する工程と、
(e)前記1つまたはそれ以上の各標識化サンプルの少なくとも一部をクロマトグラフィカラムにかける工程と、
(f)前記クロマトグラフィカラムからの溶離液の少なくとも一部を質量分析システムに導く工程と、
(g)前記選択された特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジションのうちの1つまたはそれ以上の特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジションの特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジション信号を測定する工程と、
(h)前記標識化サンプルのうちの1つまたはそれ以上の標識化サンプル中の目的のタンパク質の絶対濃度を、当該目的のタンパク質に対応する測定された特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジション信号とその特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジションに対する濃度曲線とを少なくとも比較することにより求める工程と、からなる方法を提供する。種々の実施形態において、前記方法は、前記2つまたはそれ以上のサンプルのうちの1つまたはそれ以上のサンプル中の2つまたはそれ以上のタンパク質の絶対濃度を少なくとも比較することにより、化学物質に対する生物学的システムの応答を評価する工程、または生物学的システムの病態を評価する工程、またはそれら両方の工程を含む。種々の実施形態において、前記評価工程は、第1のサンプル中の目的のタンパク質の濃度を第2のサンプル中の当該目的のタンパク質の濃度に対して比較することにより、目的のタンパク質の2つのサンプル間の濃度比を求めることと、前記第1のサンプル中の標準化タンパク質の濃度を前記第2のサンプル中の当該標準化タンパク質の濃度に対して比較することにより、標準化タンパク質の2つのサンプル間の濃度比を求めることと、前記標準化タンパク質の濃度比を使用して、前記目的のタンパク質の濃度比を標準化することと、からなる。
【0011】
種々の実施形態において、1つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上の目的のタンパク質の濃度を求める方法であって、
(a)1つまたはそれ以上の目的のタンパク質のそれぞれに対して、対応する目的のタンパク質に対する特徴的ペプチドからなる標準試料を用意する工程と、
(b)各特徴的ペプチドに対して1つまたはそれ以上の特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジションを選択する工程と、
(c)前記1つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上の目的のタンパク質を化学成分によって標識化して1つまたはそれ以上の標識化サンプルを作成する工程と、
(d)1つまたはそれ以上の標準試料を化学成分によって標識化する工程と、
(e)前記1つまたはそれ以上の標識化標準試料の少なくとも一部と、当該1つまたはそれ以上の標識化標準試料とは異なる化学成分で標識化された1つまたはそれ以上の標識化サンプルの少なくとも一部とを混合して混合サンプルを作成する工程と、
(e)前記1つまたはそれ以上の各混合サンプルの少なくとも一部をクロマトグラフィカラムにかける工程と、
(f)前記クロマトグラフィカラムからの溶離液の少なくとも一部を質量分析システムに導く工程と、
(g)前記選択された特徴的ぺプチド−識別用娘イオントランジションのうちの1つまたはそれ以上の特徴的ぺプチド−識別用娘イオントランジションの特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジション信号を測定する工程と、
(h)前記標識化サンプルのうちの1つまたはそれ以上の標識化サンプル中の目的のタンパク質の絶対濃度を、当該目的のタンパク質に対する測定された特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジション信号と標識化標準試料に対する測定された特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジション信号とを少なくとも比較することにより求める工程と、からなることを特徴とする方法を提供する。種々の実施形態において、前記方法は、前記2つまたはそれ以上のサンプルのうちの1つまたはそれ以上のサンプル中の2つまたはそれ以上のタンパク質の絶対濃度を少なくとも比較することにより、化学物質に対する生物学的システムの応答を評価する工程、または生物学的システムの病態を評価する工程、またはそれら両方の工程を含む。種々の実施形態において、前記評価工程は、第1のサンプル中の目的のタンパク質の濃度を第2のサンプル中の当該目的のタンパク質の濃度に対して比較することにより、目的のタンパク質の2つのサンプル間の濃度比を求めることと、前記第1のサンプル中の標準化タンパク質の濃度を前記第2のサンプル中の当該標準化タンパク質の濃度に対して比較することにより、標準化タンパク質の2つのサンプル間の濃度比を求めることと、前記標準化タンパク質の濃度比を使用して、前記目的のタンパク質の濃度比を標準化することと、からなる。
【0012】
種々の実施形態において、1つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上の目的のタンパク質の濃度を求める方法であって、
(a)1つまたはそれ以上の目的のタンパク質のそれぞれに対して、対応する目的のタンパク質に対する特徴的ペプチドからなる標準試料を用意する工程と、
(b)各標準試料の少なくとも1つの特徴的ペプチドに対して、1つまたはそれ以上の特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジションを選択する工程と、
(c)各選択された特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジションに対して濃度曲線を作成する工程と、
(d)前記1つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上の目的のタンパク質を化学成分によって標識化する工程と、
(e)1つまたはそれ以上の標準試料を化学成分によって標識化する工程と、
(f)前記1つまたはそれ以上の標識化標準試料の少なくとも一部と、当該1つまたはそれ以上の標識化標準試料とは異なる化学成分で標識化された1つまたはそれ以上の標識化サンプルの少なくとも一部とを混合して混合サンプルを作成する工程と、
(g)前記1つまたはそれ以上の各混合サンプルの少なくとも一部をクロマトグラフィカラムにかける工程と、
(h)前記クロマトグラフィカラムからの溶離液の少なくとも一部を質量分析システムに導く工程と、
(i)前記選択された特徴的ぺプチド−識別用娘イオントランジションのうちの1つまたはそれ以上の特徴的ぺプチド−識別用娘イオントランジションの特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジション信号を測定する工程と、
(j)前記標識化サンプルのうちの1つまたはそれ以上の標識化サンプル中の目的のタンパク質の絶対濃度を、当該目的のタンパク質に対応する測定された特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジション信号と、その特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジションに対する濃度曲線および標識化標準試料に対する測定された特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジション信号のうちの1つまたはそれ以上とを少なくとも比較することにより求める工程と、からなる方法を提供する。種々の実施形態において、前記方法は、前記2つまたはそれ以上のサンプルのうちの1つまたはそれ以上のサンプル中の2つまたはそれ以上のタンパク質の絶対濃度を少なくとも比較することにより、化学物質に対する生物学的システムの応答を評価する工程、または生物学的システムの病態を評価する工程、またはそれら両方の工程を含む。種々の実施形態において、前記評価工程は、第1のサンプル中の目的のタンパク質の濃度を第2のサンプル中の当該目的のタンパク質の濃度に対して比較することにより、目的のタンパク質の2つのサンプル間の濃度比を求めることと、前記第1のサンプル中の標準化タンパク質の濃度を前記第2のサンプル中の当該標準化タンパク質の濃度に対して比較することにより、標準化タンパク質の2つのサンプル間の濃度比を求めることと、前記標準化タンパク質の濃度比を使用して、前記目的のタンパク質の濃度比を標準化することと、からなる。
【0013】
種々の実施形態において、2つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上のタンパク質の濃度を求める方法であって、
(a)1つまたはそれ以上の目的のタンパク質のそれぞれに対して、対応する目的のタンパク質に対する特徴的ペプチドからなる標準試料を用意する工程と、
(b)各標準試料の少なくとも1つの特徴的ペプチドに対して、1つまたはそれ以上の特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジションを選択する工程と、
(c)各選択された識別用娘イオンに対して濃度曲線を作成する工程と、
(d)前記2つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上の目的のタンパク質を、各サンプルに対して異なる化学成分によって標識化することにより、それら2つまたはそれ以上のサンプルを差次的に標識化する工程と、
(e)それらの差次的に標識化されたサンプルの少なくとも一部を混合することにより混合サンプルを作成する工程と、
(f)前記混合サンプルの少なくとも一部をクロマトグラフィカラムにかける工程と、
(g)前記クロマトグラフィカラムからの溶離液の少なくとも一部を質量分析システムに導く工程と、
(h)前記選択された特徴的ぺプチド−識別用娘イオントランジションのうちの1つまたはそれ以上の特徴的ぺプチド−識別用娘イオントランジションの特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジション信号を測定する工程と、
(i)前記差次的に標識化されたサンプルのうちの1つまたはそれ以上のサンプル中の目的のタンパク質の絶対濃度を、当該目的のタンパク質に対する測定された特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジション信号とその特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジションに対する濃度曲線とを少なくとも比較することにより求める工程と、からなる方法を提供する。種々の実施形態において、前記方法は、前記2つまたはそれ以上のサンプルのうちの1つまたはそれ以上のサンプル中の2つまたはそれ以上のタンパク質の絶対濃度を少なくとも比較することにより、化学物質に対する生物学的システムの応答を評価する工程、または生物学的システムの病態を評価する工程、またはそれら両方の工程を含む。種々の実施形態において、前記評価工程は、第1のサンプル中の目的のタンパク質の濃度を第2のサンプル中の当該目的のタンパク質の濃度に対して比較することにより、目的のタンパク質の2つのサンプル間の濃度比を求めることと、前記第1のサンプル中の標準化タンパク質の濃度を前記第2のサンプル中の当該標準化タンパク質の濃度に対して比較することにより、標準化タンパク質の2つのサンプル間の濃度比を求めることと、前記標準化タンパク質の濃度比を使用して、前記目的のタンパク質の濃度比を標準化することと、からなる。
【0014】
種々の実施形態において、2つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上の目的のタンパク質の濃度を求める方法であって、
(a)1つまたはそれ以上の目的のタンパク質のそれぞれに対して、対応する目的のタンパク質に対する特徴的ペプチドからなる標準試料を用意する工程と、
(b)各標準試料の少なくとも1つの特徴的ペプチドに対して、1つまたはそれ以上の特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジションを選択する工程と、
(c)前記2つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上の目的のタンパク質を、各サンプルに対して異なる化学成分によって標識化することにより、それら2つまたはそれ以上のサンプルを差次的に標識化する工程と、
(d)1つまたはそれ以上の標準試料を化学成分によって標識化する工程と、
(e)前記1つまたはそれ以上の標識化標準試料の少なくとも一部と、当該1つまたはそれ以上の標識化標準試料とは異なる化学成分で標識化された2つまたはそれ以上の差次的に標識化されたサンプルの少なくとも一部とを混合することにより混合サンプルを作成する工程と、
(f)前記混合サンプルの少なくとも一部をクロマトグラフィカラムにかける工程と、
(g)前記クロマトグラフィカラムからの溶離液の少なくとも一部を質量分析システムに導く工程と、
(h)前記選択された特徴的ぺプチド−識別用娘イオントランジションのうちの1つまたはそれ以上の特徴的ぺプチド−識別用娘イオントランジションの特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジション信号を測定する工程と、
(i)前記差次的に標識化されたサンプルのうちの1つまたはそれ以上のサンプル中の目的のタンパク質の絶対濃度を、当該目的のタンパク質に対する測定された特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジション信号と標識化標準試料に対する測定された特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジション信号とを少なくとも比較することにより求める工程と、からなる方法を提供する。種々の実施形態において、前記方法は、前記2つまたはそれ以上のサンプルのうちの1つまたはそれ以上のサンプル中の2つまたはそれ以上のタンパク質の絶対濃度を少なくとも比較することにより、化学物質に対する生物学的システムの応答を評価する工程、または生物学的システムの病態を評価する工程、またはそれら両方の工程を含む。種々の実施形態において、前記評価工程は、第1のサンプル中の目的のタンパク質の濃度を第2のサンプル中の当該目的のタンパク質の濃度に対して比較することにより、目的のタンパク質の2つのサンプル間の濃度比を求めることと、前記第1のサンプル中の標準化タンパク質の濃度を前記第2のサンプル中の当該標準化タンパク質の濃度に対して比較することにより、標準化タンパク質の2つのサンプル間の濃度比を求めることと、前記標準化タンパク質の濃度比を使用して、前記目的のタンパク質の濃度比を標準化することと、からなる。
【0015】
種々の実施形態において、2つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上の目的のタンパク質の濃度を求める方法であって、
(a)1つまたはそれ以上の目的のタンパク質のそれぞれに対して、対応する目的のタンパク質に対する特徴的ペプチドからなる標準試料を用意する工程と、
(b)各標準試料の少なくとも1つの特徴的ペプチドに対して、1つまたはそれ以上の特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジションを選択する工程と、
(c)各選択された識別用娘イオンに対して濃度曲線を作成する工程と、
(d)前記2つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上の目的のタンパク質を、各サンプルに対して異なる化学成分によって標識化することにより、それら2つまたはそれ以上のサンプルを差次的に標識化する工程と、
(e)1つまたはそれ以上の標準試料を化学成分によって標識化する工程と、
(f)前記1つまたはそれ以上の標識化標準試料の少なくとも一部と、当該1つまたはそれ以上の標識化標準試料とは異なる化学成分で標識化された2つまたはそれ以上の差次的に標識化されたサンプルの少なくとも一部とを混合することにより混合サンプルを作成する工程と、
(g)前記混合サンプルの少なくとも一部をクロマトグラフィカラムにかける工程と、
(h)前記クロマトグラフィカラムからの溶離液の少なくとも一部を質量分析システムに導く工程と、
(i)前記選択された特徴的ぺプチド−識別用娘イオントランジションのうちの1つまたはそれ以上の特徴的ぺプチド−識別用娘イオントランジションの特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジション信号を測定する工程と、
(j)前記標識化サンプルのうちの1つまたはそれ以上のサンプル中の目的のタンパク質の絶対濃度を、当該目的のタンパク質に対応する測定された特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジション信号と、その特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジションに対する濃度曲線および標識化標準試料に対する測定された特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジション信号のうちの1つまたはそれ以上とを少なくとも比較することにより求める工程と、からなる方法を提供する。種々の実施形態において、前記方法は、前記2つまたはそれ以上のサンプルのうちの1つまたはそれ以上のサンプル中の2つまたはそれ以上のタンパク質の絶対濃度を少なくとも比較することにより、化学物質に対する生物学的システムの応答を評価する工程、または生物学的システムの病態を評価する工程、またはそれら両方の工程を含む。種々の実施形態において、前記評価工程は、第1のサンプル中の目的のタンパク質の濃度を第2のサンプル中の当該目的のタンパク質の濃度に対して比較することにより、目的のタンパク質の2つのサンプル間の濃度比を求めることと、前記第1のサンプル中の標準化タンパク質の濃度を前記第2のサンプル中の当該標準化タンパク質の濃度に対して比較することにより、標準化タンパク質の2つのサンプル間の濃度比を求めることと、前記標準化タンパク質の濃度比を使用して、前記目的のタンパク質の濃度比を標準化することと、からなる。
【0016】
対応する目的のタンパク質に対する特徴的ペプチドからなる前記標準試料(ここでは「特徴的ペプチド標準試料(signature peptide standard sample)」とも言う)は、種々の実施形態において、各特徴的ペプチドに対する濃度曲線を作成するために使用され、種々の実施形態において、未知のサンプルを測定する際の内部標準として機能し得る。種々の実施形態において、これら標準ペプチドは、未知のサンプルを測定する際に、濃度標準化標準として機能し得る。種々の実施形態において、標準試料は、標準化タンパク質に対する特徴的ペプチドからなる。
【0017】
種々の実施形態において、前記目的のタンパク質は、シトクロムP450アイソフォームからなり、それらの例としては、これらに限定されないが、Cyp1a1、Cyp1a2、Cyp1b1、Cyp2a4、Cyp2a12、Cyp2b6、Cyp2b10、Cyp2c8、Cyp2c9、Cyp2c19、Cyp2c29/Cyp2c37、Cyp2c39、Cyp2c40、Cyp2d6、Cyp2d9、Cyp2d22/Cyp2d26、Cyp2e1、Cyp2f2、Cyp2j5、Cyp3a4、Cyp3a11、Cyp4a10/Cyp4a14、およびこれらの組み合わせのうちの1つまたはそれ以上が挙げられる。種々の実施形態において、前記特徴的ペプチドは、CIGETIGR(配列番号1)、CIGEIPAK(配列番号2)、CIGEELSK(配列番号3)、YCFGEGLAR(配列番号4)、FCLGESLAK(配列番号5)、ICLGESIAR(配列番号6)、ICAGEGLAR(配列番号7)、VCAGEGLAR(配列番号8)、ICVGESLAR(配列番号9)、SCLGEALAR(配列番号10)、SCLGEPLAR(配列番号11)、VCVGEGLAR(配列番号12)、LCLGEPLAR(配列番号13)、ACLGEQLAK(配列番号14)、NCLGMR(配列番号15)、NCIGK(配列番号16)、YIDLLPTSLPHAVTCDIK(配列番号17)、ICVGEGLAR(配列番号18)、ACLGEPLAR(配列番号19)、CIGEVLAK(配列番号20)、GFCMFDMECHK(配列番号21)、ICLGEGIAR(配列番号22)、LCQNEGCK(配列番号23)、GCPSLSELWR(配列番号24)、EECALEIIK(配列番号25)、GCPSLAEHWK(配列番号26)、およびVFANPEDCAFGK(配列番号27)のうちの1つまたはそれ以上からなる。
【0018】
種々の実施形態において、本教示は、抗体を含む治療上の候補化合物の同定および細胞免疫療法を促進する。種々の実施形態において、本教示は、薬物代謝酵素(例えば、シトクロムP450、ウリジン5’−トリフォスフェートグルクルノシルトランスフェラーゼ等)の研究を促進する。例えば、モノオキシゲナーゼのシトクロムP450タンパク質ファミリーは、肝臓における薬物消失の調整および毒性のある薬物代謝産物の形成の役割を担っている。P450アイソフォームには、約25の異なるアイソフォームを有する4つの主なファミリーが存在し、それぞれ、異なる薬物または薬品によって誘導される異なる基質特異性を有する。この酵素的挙動により、この種のタンパク質は薬物開発において重要となる。例えば、様々なP450タンパク質の発現の変化により、様々な薬剤の毒性や危険な薬物代謝産物形成の可能性に関する情報を得ることができる。多数のP450アイソフォームのスクリーニングのシステム、方法、またはアッセイは、特にそれが個々のアイソフォームに対する発現の変化に関する定量的データをもたらす場合には、薬物開発において価値があるであろう。
【0019】
種々の局面において、化学物質に対する生物学的システムの応答を評価する方法であって、
(a) 化学物質に曝露されていない生物学的サンプル中の2つまたはそれ以上のタンパク質の絶対濃度を求める工程と、
(b) 前記化学物質に曝露された生物学的サンプル中の2つまたはそれ以上のタンパク質の絶対濃度を求める工程と、
(c) 工程(a)で求めた絶対濃度のうちの1つまたはそれ以上の絶対濃度と工程(b)で求めた絶対濃度のうちの1つまたはそれ以上の絶対濃度とを少なくとも比較することにより、前記化学物質に対する生物学的システムの応答を評価する工程と、からなる方法を提供する。種々の実施形態において、生物学的システム(例えば、生体内(in vivo)、生体外(in vitro)、コンピュータ内(in silico)、またはそれらの組み合わせ)の例としては、これらに限定されないが、生物体全体(例えば、哺乳動物、バクテリア、ウイルス等)、生物体全体の1つまたはそれ以上のサブユニット(例えば、器官、組織、細胞等)、生物学的または生化学的プロセス、病態、細胞系、それらのモデル、およびそれらの組み合わせが挙げられる。種々の実施形態において、前記化学物質は、1つまたはそれ以上の医薬品、医薬組成物、またはそれらの組み合わせからなる。
【0020】
種々の実施形態において、前記の化学物質に対する生物学的システムに対する応答を評価する方法において絶対濃度を求めることは、1つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上の目的のタンパク質の濃度を求める本明細書に記載の方法のうちの1つまたはそれ以上の方法、または2つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上の目的のタンパク質の濃度を求める本明細書に記載の方法のうちの1つまたはそれ以上の方法、またはそれらの組み合わせからなる。
【0021】
種々の局面において、1つまたはそれ以上のサンプル中の2つまたはそれ以上の目的のタンパク質の発現レベルを求めることを目的としたアッセイを提供する。当該アッセイは、例えば、エンドポイントアッセイ(endpoint assay)、カイネティックアッセイ(kinetic assay)、またはそれらの組み合わせとすることができる。当該アッセイは、例えば、疾患または病状の診断、疾患または病状の予想、またはその両方を行うことができる。種々の実施形態において、本教示の方法を使用して1つまたはそれ以上のサンプル中の2つまたはそれ以上のタンパク質の発現レベルを求めるアッセイであって、1つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上の目的のタンパク質の濃度を求める本明細書に記載の方法のうちの1つまたはそれ以上の方法、または2つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上の目的のタンパク質の濃度を求める本明細書に記載の方法のうちの1つまたはそれ以上の方法、またはそれらの組み合わせからなるアッセイを提供する。
【0022】
種々の局面において、本教示の方法、アッセイ、またはそれら両方を行うためのキットを提供する。種々の実施形態において、キットは、2つまたはそれ以上の特徴的ペプチド標準試料からなり、当該2つまたはそれ以上の特徴的ペプチド標準試料のうちの2つまたはそれ以上の特徴的ペプチド標準試料の特徴的ペプチドは、異なるタンパク質の特徴的ペプチドである。種々の実施形態において、キットは、5つまたはそれ以上の特徴的ペプチド標準試料からなり、当該5つまたはそれ以上の特徴的ペプチド標準試料のうちの10またはそれ以上の特徴的ペプチド標準試料の特徴的ペプチドは、異なるシトクロムP450アイソフォームの特徴的ペプチドである。種々の実施形態において、キットは、10またはそれ以上の特徴的ペプチド標準試料からなり、当該10またはそれ以上の特徴的ペプチド標準試料のうちの10またはそれ以上の特徴的ペプチド標準試料の特徴的ペプチドは、異なるシトクロムP450アイソフォームの特徴的ペプチドである。
【0023】
種々の実施形態において、キットは、1つまたはそれ以上の標準化タンパク質に対する1つまたはそれ以上の特徴的ペプチド標準試料からなる。例えば、種々の実施形態において、キットは、標準化タンパク質に対する1つまたはそれ以上の標識化された特徴的ペプチド標準試料からなり、その特徴的ペプチドは、LCQNEGCK(配列番号23)、EECALEIIK(配列番号25)、GCPSLAEHWK(配列番号26)、およびVFANPEDCAFGK(配列番号27)のうちのひとつまたはそれ以上からなる。
【0024】
種々の実施形態において、キットは、標準化タンパク質(コルチコステロイド 11−ベータデヒドロゲナーゼ イソ酵素1、トリグリセリド転移タンパク質、およびミクロソームグルタチオンS−トランスフェラーゼ)のうちの1つまたはそれ以上の標準化タンパク質の特徴的ペプチドに対する特徴的ペプチド標準試料からなる。
【0025】
種々の実施形態において、本教示の方法、アッセイ、またはそれら両方をマウス由来の1つまたはそれ以上のサンプルに対して行うキットは、標準化タンパク質(コルチコステロイド 11−ベータデヒドロゲナーゼ イソ酵素1、トリグリセリド転移タンパク質、およびミクロソームグルタチオンS−トランスフェラーゼ)のうちの1つまたはそれ以上の標準化タンパク質の特徴的ペプチドに対する特徴的ペプチド標準試料からなる。
【0026】
種々の実施形態において、サンプルはミクロソーム細胞由来である。ミクロソーム細胞由来のサンプルに対する好適な標準化タンパク質の例としては、これらに限定されないが、コルチコステロイド 11−ベータデヒドロゲナーゼ イソ酵素1、トリグリセリド転移タンパク質、およびミクロソームグルタチオンS−トランスフェラーゼが挙げられ、種々の実施形態において、その特徴的ペプチドは、それぞれ、LCQNEGCK(配列番号23)、EECALEIIK(配列番号25)、GCPSLAEHWK(配列番号26)、VFANPEDCAFGK(配列番号27)(例えば、マウス用)、またはLCQNEGCK(配列番号23)、GCPSLSELWR(配列番号24)、EECALEIIK(配列番号25)(例えば、ヒト用)、LCQNEGCK(配列番号23)、EECALEIIK(配列番号25)(例えば、マウスおよびヒト用)である。
【0027】
種々の実施形態において、キットは、シトクロムP450アイソフォーム:Cyp2a4、Cyp2a12、Cyp2b10、Cyp2c29/Cyp2c37、およびCyp2c40の特徴的ペプチドに対する特徴的ペプチド標準試料からなる。種々の実施形態において、キットは、標識化された複数の特徴的ペプチド試料からなり、その特徴的ペプチドは、YCFGEGLAR(配列番号4)、FCLGESLAK(配列番号5)、ICLGESIAR(配列番号6)、ICAGEGLAR(配列番号7)、およびICVGESLAR(配列番号9)からなる。種々の実施形態において、キットは、シトクロムP450アイソフォーム(Cyp1a1、Cyp1a2、Cyp1b1、Cyp2a4、Cyp2a12、Cyp2b6、Cyp2b10、Cyp2c8、Cyp2c9、Cyp2c19、Cyp2c29/Cyp2c37、Cyp2c39、Cyp2c40、Cyp2d6、Cyp2d9、Cyp2d22/Cyp2d26、Cyp2e1、Cyp2f2、Cyp2j5、Cyp3a4、Cyp3a11、Cyp4a10/Cyp4a14、およびこれらの組み合わせ)のうちの1つまたはそれ以上のシトクロムP450アイソフォームの特徴的ペプチドに対する特徴的ペプチド標準試料からなる。種々の実施形態において、前記特徴的ペプチドは、CIGETIGR(配列番号1)、CIGEIPAK(配列番号2)、CIGEELSK(配列番号3)、YCFGEGLAR(配列番号4)、FCLGESLAK(配列番号5)、ICLGESIAR(配列番号6)、ICAGEGLAR(配列番号7)、VCAGEGLAR(配列番号8)、ICVGESLAR(配列番号9)、SCLGEALAR(配列番号10)、SCLGEPLAR(配列番号11)、VCVGEGLAR(配列番号12)、LCLGEPLAR(配列番号13)、ACLGEQLAK(配列番号14)、NCLGMR(配列番号15)、NCIGK(配列番号16)、YIDLLPTSLPHAVTCDIK(配列番号17)、ICVGEGLAR(配列番号18)、ACLGEPLAR(配列番号19)、CIGEVLAK(配列番号20)、GFCMFDMECHK(配列番号21)、ICLGEGIAR(配列番号22)、LCQNEGCK(配列番号23)、GCPSLSELWR(配列番号24)、EECALEIIK(配列番号25)、GCPSLAEHWK(配列番号26)、VFANPEDCAFGK(配列番号27)、およびそれらの組み合わせのうちの1つまたはそれ以上からなる。
【0028】
本教示の前述およびその他の局面、実施形態、および特徴は、添付の図面とともに下記の説明からより十分理解され得る。その種々の図面を通して、図面中の同じ参照番号は、概して同じ特徴および構造要素を指す。それらの図面は、必ずしも原寸に比例しているとは限らず、むしろ本教示の原理を示すことに重点を置く。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1Aおよび図1Bを参照すると、種々の実施形態において、サンプル中のタンパク質の絶対濃度を求める方法は、1つまたはそれ以上のサンプル中の各目的のタンパク質に対して、特徴的ペプチド標準試料を用意する(ステップ110)。例えば、各目的のタンパク質アイソフォームに対して、その個々のアイソフォームに実質的に特有のペプチドを、当該アイソフォームに対する特徴的ペプチドとして選択する。種々の実施形態において、任意の1つのアイソフォームに対して複数の特徴的ペプチドを選択することができ、そのアイソフォームに対して選択された特徴的ペプチドそれぞれに対して、特徴的ペプチド標準試料を調製することができる(例えば、1つのタンパク質に対して複数の特徴的ペプチドを使用することにより、そのタンパク質に対する種々の特徴的ペプチド標準試料を使用して求めた濃度の相互検証が可能となる)。前記特徴的ペプチド標準試料は、例えば、実験条件によって変化しないことが知られているおよび/または予想されるタンパク質から得ることができ、非標識化または化学成分により標識化され得る。
【0030】
各目的のアイソフォームに対する特徴的ペプチドの試料は、合成により調製することができるとともに、例えば、同位体コードアフィニティタグ(例えば、ICAT(商標)試薬)や同重核(同質量)タグ(例えば、iTRAQ(登録商標)試薬)等の化学成分で標識化することが可能である。各標識化された特徴的ペプチド試料中の特徴的ペプチドの濃度は、例えば、当該試料の一部に対するアミノ酸分析(AAA)により求めることができる。種々の実施形態において、前記特徴的ペプチド標準試料は、当該標識化された特徴的ペプチド試料中の特徴的ペプチドの濃度を求める前に、(例えば、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、逆相(RP)−HPLC、交換分別等、およびそれらの組み合わせにより、例えば、妨害試料、干渉人工産物等を、例えば、除去するために)浄化される。種々の実施形態において、前記特徴的ペプチド標準試料は、分析される前記サンプルのうちの1つまたはそれ以上のサンプルに適用されるものと実質的に同じ化学成分で標識化される。種々の実施形態において、前記特徴的ペプチド標準試料は、前記サンプルのうちの1つまたはそれ以上のサンプルに適用されるものと異なる化学成分で標識化される(例えば、特徴的ペプチド標準試料が内部標準として使用される場合等)。例えば、種々の実施形態において、標準試料は、標準化タンパク質に対する特徴的ペプチドからなる。
【0031】
特徴的ペプチド標準試料の少なくとも一部をPDITMスキャン(例えばMRMスキャン)に供することにより、その特徴的ペプチドに対して1つまたはそれ以上の識別用娘イオンを選択し(ステップ120)、当該標準試料の特徴的ペプチドに対する特徴的ペプチド−娘イオントランジションを選択することができる。なお、異なる複数の特徴的ペプチドに対して同じ識別用娘イオン(例えば、同じ質量や同じ構造等を有する)を選択してもよいことを理解されたい。種々の実施形態において、前記特徴的ペプチド標準試料は、識別用娘イオンの選択に使用される前に、(例えば、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、逆相(RP)−HPLC、交換分別等、およびそれらの組み合わせにより、例えば、妨害試料、干渉人工産物等を、例えば、除去するために)浄化される。特徴的ペプチドに対する識別用娘イオンは、例えば、それらの検出レベル(LOD)、定量限界(LOQ)、信号対雑音(S/N)比、他の特徴的ペプチドの他の娘イオンとの質量相似性、および濃度の特定のダイナミックレンジにわたる定量の線形性のうちの1つまたはそれ以上のものに基づいて選択することができる。種々の実施形態において、目的の濃度のダイナミックレンジは、例えば、使用する質量分析システムによるが、約3ないし約4桁である。種々の実施形態において、前記LOQは、当該LOQを約3ないし約4桁上回るダイナミックレンジで、1マイクログラム(μg)のサンプルあたり、約アトモルレベル(10−18モル)ないし約フェムトモルレベル(10−15モル)の範囲である。
【0032】
識別用娘イオンを選択するために使用した同じ特徴的ペプチド標準試料部分、または特徴的ペプチド標準試料の他の部分を使用して、質量分析システムのための親−娘イオントランジションモニタリング条件を求めることができる。例えば、質量分析システムが、液体クロマトグラフィ(LC)部分を含む場合、前記特徴的ペプチド標準試料を使用してクロマトグラフィの保持時間を求めることができる。種々の実施形態において、前記特徴的ペプチド標準試料を使用して、試料中の特徴的ペプチドの様々な条件下でのイオン源におけるそのイオン化効率とイオンフラグメンターにおけるそのフラグメンテーション効率とを求めることができる。
【0033】
再び図1Aおよび図1Bを参照すると、種々の実施形態において、特徴的ペプチド標準試料の識別用娘イオンを選択するために使用した同じ部分または他の部分をPDITMに供し、対応する識別用娘イオンに対するイオン信号に基づいて、前記選択された特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジションに対する1つまたはそれ以上の濃度曲線を作成する(ステップ130)。前記識別用娘イオンに対するイオン信号は、例えば、識別用娘イオンピークの強度(平均、中央、最大等)、識別用娘イオンピークの面積、またはそれらの組み合わせに基づかせることができる。種々の実施形態において、濃度曲線の作成には、例えば、濃度測定をし易くしたり、注入体積の違いを明らかにしたりするために、前記特徴的ペプチド標準試料の少なくとも一部に含まれる1つまたはそれ以上の内部標準を使用することができる。
【0034】
種々の実施形態において、濃度曲線は、PDITMを使用して、対応する特徴的ペプチド標準試料に関連する識別用娘イオンのイオン信号を測定し、濃度ゼロが識別用娘イオン信号ゼロに相当するように、測定した濃度の線形外挿により濃度曲線を作成することにより作成できる。種々の実施形態において、濃度曲線は、PDITMを使用して、2つまたはそれ以上の既知濃度において、対応する特徴的ペプチド標準試料に関連する識別用娘イオンのイオン信号を測定し、関数をその測定した識別用娘イオン信号にフィットさせることにより濃度曲線を作成することにより作成できる。好適なフィッティング関数は、例えば、検出器の応答(例えば、検出器の飽和、非線形性など)に左右されうる。種々の実施形態において、前記フィッティング関数は線形関数である。
【0035】
種々の実施形態において、サンプル調製および特徴的ペプチド標準試料調製は、化学成分(例えば、タグ)でタンパク質、ペプチド、またはその両者を標識化する。本教示においては、種々の化学成分および標識手法を用いることができる。例えば、PCT特許出願公開WO00/11208(その開示内容は参照によりすべて本明細書に組み込まれる)に記載されている、差次的に同位体的に標識化されたタンパク質反応性試薬を使用して、1つまたはそれ以上の特徴的ペプチドを化学成分で標識化することができる。種々の実施形態において、例えば、ICAT(商標)試薬法等の同位体的にコードされた親和性試薬によるタンパク質の標識化を使用することができる。種々の実施形態において、同重核(isobaric)試薬(例えば、iTRAQ(登録商標)試薬法のような、同じ質量の標識を提供するが、例えば、衝突誘起解離(CID)による標識化親イオンフラグメンテーションに続いて異なる信号を発生する試薬)を使用することができる。種々の実施形態において、MSにおいてはクロマトグラフ的に同一で区別できないが、CIDに続いて強い低質量のMS/MSシグニチャイオン(signature ions)を生成するアミン誘導体ペプチドを生じる同重核(同質量)試薬のセットを使用することができる。種々の実施形態において、1つまたはそれ以上の同重核試薬で、1つまたはそれ以上のサンプルの1つまたはそれ以上のタンパク質、ペプチド、またはその両方を標識化する前、後、または前と後の両方に、それらに対してアフィニティ分離を行うことができる。
【0036】
種々の実施形態において、前記同位体コード親和性標識化タンパク質反応性試薬は、3つの部分を有している:同位体的に標識化されたリンカーを含む切断可能リンカー基(L)を介してタンパク質反応性基(PRG)に共有結合された親和性標識(A)。前記リンカーは、前記タンパク質反応性基(PRG)に直接結合することができる。前記親和性標識化タンパク質反応性試薬は以下の式を有し得る:
A−L−PRG
前記リンカーは、例えば、当該リンカー中の1つまたはそれ以上の原子をその安定同位体で置換することにより、差次的に同位体的に標識化することができる。例えば、水素は重水素(H)と置換可能、および/または、12Cは13Cと置換可能である。13Cの利用は、逆相クロマトグラフィにおいて、重同位体と軽同位体の共溶出を促進する。
【0037】
前記親和性標識(A)は、サンプル中の反応タンパク質(PRGで標識化されている)と未反応タンパク質(PRGで標識化されていない)とを分離する手段として機能し得る。種々の実施形態において、前記親和性標識はビオチンからなる。前記試薬のPRG部分がタンパク質と反応した後、アフィニティクロマトグラフィを使用してサンプルの標識化および非標識化成分を分離することができる。アフィニティクロマトグラフィは、標識化および非標識化タンパク質、当該タンパク質の標識化および非標識化消化産物(すなわち、ペプチド)、またはその両方を分離するために使用することができる。その後、前記切断可能リンカー(L)の切断を、例えば、化学的に、酵素的に、熱的に、または光化学的に行うことにより、単離された物質が質量分析のために放出されうる。種々の実施形態において、前記リンカーは酸により切断可能であってもよい。
【0038】
種々の実施形態において、前記PRGは、下記式で示すように、固体担体(S)に組み込み可能である:
S−L−PRG
前記固体担体は、例えば、切断可能リンカーおよびタンパク質反応性基が付着するポリスチレンまたはガラスで構成することができる。前記固体担体は、ペプチド分離およびサンプル濃縮の手段として(例えば、カラム状のクロマトグラフィ媒体として)使用することができる。非標識化消化産物は、例えば、前記修飾固体担体に前記PRGを介して結合し、標識化され、その後その固体担体から種々の手段(例えば、化学的または酵素的)により放出されうる。
【0039】
質量分析に先立って、結合タンパク質を消化することにより、質量分析法により分析可能な結合ペプチドを含むペプチドを形成することができる。タンパク質消化工程は、前記切断可能リンカーの切断に先立ってまたは後に続いて行うことができる。いくつかの実施形態においては、例えば、タンパク質が比較的小さい場合は、消化工程(例えば、酵素的切断)は必要ない場合がある。種々の実施形態において、酸切断可能なリンカーの挿入により、より小さくより安定な標識を得られる。より小さくより安定したリンカーは、例えば、CIDにおいてイオンフラグメンテーションをより向上させることができる。
【0040】
PRG基の例としては、これらに限定されないが、(a)タンパク質官能基と選択的に反応し、特定の部位でタンパク質をタグ化する共有結合または非共有結合を形成する基、および(b)例えば、酵素に対する基質であって、タンパク質の作用により形質転換されるものが挙げられる。種々の実施形態において、PRGは、スルフヒドリル基に対する特異性のような、特定のタンパク質基に対する特異的反応性を有する基とすることができる。そのようなPRGは、例えば、複合混合物中でタンパク質を選択的にタグ化するのに一般的に有用である。例えば、スルフヒドリルに特異的な試薬は、システインを含むタンパク質をタグ化する。
【0041】
種々の実施形態において、ペプチドにおいて典型的に検出される特定の基(例えば、スルフヒドリル基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ラクトン基)と選択的に反応するPRG基を、タンパク質を含む混合物に導入することができる。種々の実施形態において、前記PRGとの反応の後、前記複合混合物中のタンパク質は、例えば、酵素的に、多くのペプチドに切断される。
【0042】
図1Aおよび図1Bを再度参照すると、1つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上のタンパク質の絶対濃度の測定は、当該サンプルのうちの1つまたはそれ以上のサンプル中の当該タンパク質のうちの1つまたはそれ以上のタンパク質の化学成分による標識化(ステップ140)を進める。種々の実施形態において、この標識化工程は、2つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上のタンパク質の差次的な標識化を含み、異なるサンプル中のタンパク質を標識化するために、異なる化学成分が使用される。様々な化学成分を使用して標識化、差次的標識化、またはその両方を行うことができ、その例としては、これに限定されないが、上記および本明細書中の他の場所に記載されたものが挙げられる。例えば、同位体的に異なる標識、異なる同重核試薬、またはそれらの組み合わせを使用して、差次的にサンプルを標識化することができる。様々なサンプルを使用することができるが、その例としては、これに限定されないが、生物学的流体、および細胞または組織の溶解物が挙げられる。これらのサンプルは、異なる供給源または条件のものであってよく、例えば、コントロール対実験、異なる時点の複数のサンプル(例えば、配列を形成するため)、病態対正常、実験対病態等である。
【0043】
種々の実施形態において、差次的標識化は多重化のために使用され、1回の実験操作で、例えば、種々のサンプル(例えば、コントロール、処理済)からの多数の異なるアイソフォームの比較、多数の突然変異株の野生型との比較、多数の投与量レベルのベースラインに対する時間経過シナリオにおける評価、分離された種々の癌組織の正常組織に対する評価、または1回の実験操作におけるそれらの組み合わせを行うことができる。種々の実施形態において、ペプチドのサブクラスに対する差次的標識化(例えば、リン酸化)を使用して翻訳後修飾(PTM)を明らかにすることができる。
【0044】
種々の実施形態において、標識化された複数のサンプル、標識化された複数の特徴的ペプチド標準試料、またはその両方の少なくとも一部を混合し(ステップ150)、その混合サンプルの少なくとも一部をクロマトグラフィカラム(例えば、LCカラム、ガスクロマトグラフィ(GC)カラム、またはその組み合わせ)にかける(ステップ160)。種々の実施形態において、標識化された複数のサンプル、標識化された複数の特徴的ペプチド標準試料、またはその両方を、下記の1つまたはそれ以上の事項に従って混合し(ステップ150)混合サンプルを作成する:
(i) 標識化された1つのサンプル(例えば、コントロールサンプル、実験サンプル)を、1つまたはそれ以上の特徴的ペプチド標準試料(当該標準試料の特徴的ペプチドは、1つまたはそれ以上の目的のタンパク質の特徴的ペプチドに対応している)と混合する;
(ii) 標識化された1つのサンプル(例えば、コントロールサンプル、実験サンプル)を、1つまたはそれ以上の標識化された特徴的ペプチド標準試料(当該標準試料の特徴的ペプチドは、1つまたはそれ以上の目的のタンパク質の特徴的ペプチドと対応しており、当該標識化された特徴的ペプチド試料は、前記標識化サンプルに対して差次的に標識化されている)と混合する;
(iii)2つまたはそれ以上の差次的に標識化されたサンプル(例えば、コントロールと実験サンプル;実験サンプル#1と実験サンプル#2;複数のコントロールと複数の実験サンプル等)を混合する;
(iv) 2つまたはそれ以上の差次的に標識化されたサンプルを、1つまたはそれ以上の特徴的ペプチド標準試料を混合する;
(v) 2つまたはそれ以上の差次的に標識化されたサンプルを、1つまたはそれ以上の標識化された特徴的ペプチド標準試料(当該標識化された特徴的ペプチド標準試料は、前記の差次的に標識化されたサンプルに対して、差次的に標識化されている)と混合する;および/または
(vi) それらの組み合わせ。
【0045】
例えば、特徴的ペプチド標準試料の添加は、対応する特徴的ペプチドに対する内部標準の機能を果たしうる。種々の実施形態において、特徴的ペプチド標準試料は、標準化タンパク質に対する特徴的ペプチドからなる。サンプルと混合された特徴的ペプチド標準試料は、「特徴的ペプチド内部標準試料(signature peptide internal standard sample)」と言うことがある。したがって、種々の実施形態において、サンプル中の目的の各タンパク質に対する特徴的ペプチド標準試料は、クロマトグラフィカラムに注入される前に、当該サンプルと混合される。種々の実施形態において、異なるサンプルは、ほぼ同じ量混合される。
【0046】
タンパク質消化工程(ステップ165)は、前記混合工程(ステップ150)の前、後、または前と後の両方に、行うことができる。種々の実施形態において、サンプル、前記混合したサンプル、またはその両方のタンパク質は、酵素的に消化され(タンパク分解され)、ペプチドが生成される(ステップ165)。いくつかの実施形態においては、消化工程(例えば、酵素的切断)は、例えば、タンパク質が比較的小さい場合は、必要でない場合がある。
【0047】
次に、前記クロマトグラフィカラムからの溶離液の少なくとも一部は、質量分析システムに導かれ、1つまたはそれ以上の選択された特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジションの特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジション信号がPDITM(例えば、MRM)により測定される(ステップ170)。当該質量分析システムは、第1の質量分離器、イオンフラグメンター、および第2の質量分離器からなる。PDITMスキャンの通過親イオンのm/z範囲(前記第1の質量分離器によって選択される)は、前記特徴的ペプチドのうちの1つまたはそれ以上の特徴的ペプチドのm/z値を含むように選択され、PDITMスキャンの通過娘イオンのm/z範囲(前記第2の質量分離器によって選択される)は、通過した特徴的ペプチドに対応する前記選択された識別用娘イオンのうちの1つまたはそれ以上の選択された識別用娘イオンのm/z値を含むように選択される。
【0048】
次に、サンプル中の目的のタンパク質の絶対濃度を求める(ステップ180)。種々の実施形態において、目的のタンパク質の絶対濃度は、対応する特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジションの測定されたイオン信号(特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジション信号)と次の(i)〜(iv)のうちの1つまたはそれ以上とを比較することにより求められる:
(i) その特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジションに対する濃度曲線;
(ii) 特徴的ペプチド内部標準試料に対する特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジション信号;
(iii) その特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジションに対する濃度曲線と特徴的ペプチド内部標準試料に対する特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジション信号;および/または
(iv) それらの組み合わせ。
【0049】
種々の実施形態において、1つまたはそれ以上の目的のタンパク質は、例えば、識別用娘イオン信号の標準化、第1のサンプル中のタンパク質の濃度の第2のサンプル中の濃度に対する標準化(例えば、濃度比を標準化する)、データ信頼性の評価、複数のサンプル間の開始サンプル量の評価、またはそれらを組み合わせたもののために用いることができる。したがって、種々の実施形態において、1つまたはそれ以上の目的のタンパク質は、例えば、2つまたはそれ以上のサンプルのうちの2つまたはそれ以上のサンプルにおいて、実質的に同じ濃度を有することが予想される、または、化学物質を用いたサンプルの処理によって実質的に影響を受けない濃度を有することが予想される、または、その両方である標準化タンパク質である。例えば、種々の実施形態において、目的のタンパク質は、複数のサンプル間で実質的に同じ濃度を有することが知られているタンパク質とすることができる。
【0050】
種々の実施形態において、標準化タンパク質の特徴的ペプチドの信号レベルの変化を使用して、1つまたはそれ以上の目的のタンパク質の特徴的ペプチドの信号レベルを標準化することができる。種々の実施形態において、2つのサンプル間の標準化タンパク質の特徴的ペプチドの相対信号レベルを使用して、2つのサンプル間の目的のタンパク質の相対濃度を標準化する。例えば、種々の実施形態において、前記方法は、前記2つまたはそれ以上のサンプルのうちの1つまたはそれ以上のサンプル中の2つまたはそれ以上のタンパク質の絶対濃度を少なくとも比較することにより、化学物質に対する生物学的システムの応答を評価する工程、または生物学的システムの病態を評価する工程、またはそれら両方の工程を含む。種々の実施形態において、前記評価工程は、第1のサンプル中の目的のタンパク質の濃度を第2のサンプル中の当該目的のタンパク質の濃度に対して比較することにより、目的のタンパク質の2つのサンプル間の濃度比を求めることと、前記第1のサンプル中の標準化タンパク質の濃度を前記第2のサンプル中の当該標準化タンパク質の濃度に対して比較することにより、標準化タンパク質の2つのサンプル間の濃度比を求めることと、前記標準化タンパク質の濃度比を使用して前記目的のタンパク質の濃度比を標準化することと、からなる。例えば、種々の実施形態において、2つのサンプル間(例えば、コントロール対実験、異なる時点からの複数のサンプル(例えば、配列を作成するため)、病態対正常、実験対病態等)の標準化特徴的ペプチド信号の比が1:1と異なる場合、そのような変化は、例えば、2つのサンプル間の開始時の量の違い、サンプル処理エラー、またはその他の系統誤差または偶然誤差を示唆している。種々の実施形態において、2つのサンプル間の標準化特徴的ペプチド信号の比を使用して、これら2つのサンプルの目的のタンパク質の濃度比を標準化する。種々の実施形態において、標準化タンパク質に対する比率は中央比(median ratio)として使用され、1つまたはそれ以上の目的のタンパク質の濃度比はこの中央値(median)に修正される。
【0051】
種々の実施形態において、2つのサンプル間の標準化タンパク質の特徴的ペプチド信号レベルの違いを使用することにより、データ信頼性を評価することができる。例えば、標準化タンパク質に関連する特徴的ペプチド信号が、サンプル間で著しい量異なる場合は、これらのサンプルのうちの1つまたは両方のサンプルに関連するデータは信頼できないものとして除外される。種々の実施形態において、約1を超える標準偏差分の変動は有意とみなされる。種々の実施形態において、約2を超える標準偏差分の変動は有意とみなされる。種々の実施形態において、2つサンプル間の標準化特徴的ペプチド信号の比が、1:1から大きく外れる場合、それらのサンプルのうちの1つまたは両方のサンプルに関連するデータは信頼できないものとみなされる。種々の実施形態において、1つのサンプル中の標準化タンパク質の識別用娘イオン信号の変動が、もう1つのサンプル中の当該識別用娘イオン信号と比較して約±10%を超える場合、このような変動は有意とみなされる。種々の実施形態において、1つのサンプル中の標準化タンパク質の識別用娘イオン信号の変動が、もう1つのサンプル中の当該識別用娘イオン信号と比較して約±20%を超える場合、このような変動は有意とみなされる。種々の実施形態において、1つのサンプル中の標準化タンパク質の識別用娘イオン信号の変動が、もう1つのサンプル中の当該識別用娘イオン信号と比較して約±50%を超える場合、このような変動は有意とみなされる。
【0052】
本教示において、一般的に、標準化タンパク質の絶対濃度は求める必要はない。なぜなら、例えば、1つのサンプル中の標準化タンパク質に関連する特徴的ペプチド信号ともう1つのサンプル中のそれとの比を使用することにより、1つまたはそれ以上の目的のタンパク質の特徴的ペプチドの信号レベルの標準化、識別用娘イオン信号の標準化、第1のサンプル中のタンパク質の濃度の第2のサンプル中の濃度に対する標準化(例えば、濃度比の標準化する)、データ信頼性の評価、複数のサンプル間の開始サンプル量の評価、またはそれらの組み合わせを行うことができるからである。
【0053】
種々の実施形態において、絶対濃度を測定することにより、野生型またはコントロールサンプルまたはサンプル集団中の目的のタンパク質の基本的発現レベルを知ることができる。種々の実施形態において、絶対濃度の測定は、細胞、組織、または生物学的流体において差次的発現を示すタンパク質の選別や同定に適用することができる。種々の実施形態において、絶対濃度を測定することにより、化学物質に対する生物学的システムの応答を評価することができる(ステップ192)。例えば、絶対濃度を使用することにより、患者やモデル(例えば、動物、疾患、細胞、生化学的モデル等)の、医薬品や医薬組成物による治療、生物(例えば、ウイルス、細菌)や環境汚染物(例えば、毒素、汚染物質)への曝露等に対する応答を明らかにすることができる。
【0054】
本教示においては、様々な質量分析システムを使用してPDITMを行うことができる。好適な質量分析システムは、2つの質量分離器と、その2つの質量分離器の間のイオン飛行経路に設けられたイオンフラグメンターとを備えている。好適な質量分離器の例としては、これに限定されないが、四重極型、高周波多重極型、イオントラップ型、飛行時間型(TOF)、時限式イオン選別器(timed ion selector)を併用したTOFなどが挙げられる。好適なイオンフラグメンターの例としては、これに限定されないが、衝突誘起解離(CID、衝突支援解離(CAD)とも言う)、光誘起解離(PID)、表面誘起解離(SID)、ポストソース分解、またはこれらを組み合わせた原理に従って動作するものが挙げられる。
【0055】
前記質量分析器用の好適な質量分析システムの例としては、これに限定されないが、三連四重極や四重極−線形イオントラップを含むシステム、四重極TOFシステム、TOF−TOFシステム等が挙げられる。
【0056】
前記質量分析システム用の好適なイオン源の例としては、これに限定されないが、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、マトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)、大気圧化学イオン化(APCI)、大気圧光イオン化(APPI)等が挙げられる。例えば、ESIイオン源は、LCカラムから生じたイオン化サンプルを質量分離装置へ導入する手段として機能し得る。ESIのいくつかの好ましい特徴のうちのひとつは、クロマトグラフィカラムからのフラクションが、そのカラムからESIイオン源へ直接進むことができることである。
【0057】
種々の実施形態において、前記質量分析システムは、親イオンを選択しそのフラグメント娘イオンを検出するための三連四重極質量分析器からなる。種々の実施形態において、第1の四重極は、親イオンを選択する。第2の四重極は、十分に高い圧力と電圧に維持され、そのため多重低エネルギー衝突が起こり、一部の親イオンがフラグメント化する。第3の四重極は、選択された娘イオンを検出器に送るために選択される。種々の実施形態において、三連四重極質量分析器は、イオン源と三連四重極の間に設けられたイオントラップを有することができる。このイオントラップは、イオン(例えば、すべてのイオン、特定のm/z範囲のイオン等)を収集するように設定可能であり、充填時間(fill time)の後、エンド電極にパルスを印加することにより、それらの選択されたイオンが当該イオントラップから排出されて第1の四重極へ送られる。好適な充填時間は、例えば、イオン数、イオントラップ内の電荷密度、異なる特徴的ペプチドの溶出間隔、デューティサイクル、励起状態種または多価イオンの崩壊定数、またはそれらの組み合わせに基づいて決定することができる。
【0058】
種々の実施形態において、三連四重極質量分析器の1つまたはそれ以上の四重極は、リニアイオントラップに設定可能である(例えば、複数のエンド電極を追加することにより、四重極内に実質的に細長い筒形のトラップ容積を設ける)。種々の実施形態において、第1の四重極は、親イオンを選択する。第2の四重極は、十分に高い衝突ガス圧力と電圧に維持され、そのため多重低エネルギー衝突が起こり、親イオンの一部がフラグメント化する。第3の四重極は、フラグメントイオンをトラップするために選択され、充填時間の後、エンド電極にパルスを印加することにより、それらの選択された娘イオンが当該イオントラップから排出されて検出器へ送られる。好適な充填時間は、例えば、フラグメントイオン数、イオントラップ内の電荷密度、異なる特徴的ペプチドの溶出間隔、デューティサイクル、励起状態種または多価イオンの崩壊定数、またはそれらの組み合わせに基づいて決定することができる
種々の実施形態において、前記質量分析システムは、親イオンを選択しそのフラグメント娘イオンを検出するための2つの四重極質量分離器とTOF質量分析器とからなる。種々の実施形態において、第1の四重極は、親イオンを選択する。第2の四重極は、十分に高い圧力と電圧に維持され、それにより多重低エネルギー衝突が起こり、イオンの一部がフラグメント化する。TOF質量分析器は、例えば、目的の娘イオンを包含する質量範囲にわたるイオンおよび作成された抽出イオンクロマトグラムのモニタリング、選択された娘イオンのタイムウィンドウ(time window)の外側に現れるイオンの検出器からの偏向、選択された娘イオンの到達タイムウィンドウに対する検出器への時間ゲート、またはそれらの組み合わせにより、検出のための娘イオンを選択する。
【0059】
種々の実施形態において、前記質量分析システムは、2つのTOF質量分析器とイオンフラグメンター(例えば、CID、SID等)とからなる。種々の実施形態において、第1のTOFは、イオンフラグメンターへ導入する親イオンを(例えば、選択された親イオンのタイムウィンドウの外側に現れるイオンをフラグメンターからそらすことにより)選択し、第2のTOF質量分析器は、例えば、目的の娘イオンを包含する質量範囲にわたるイオンおよび作成された抽出イオンクロマトグラムのモニタリング、選択された娘イオンのタイムウィンドウの外側に現れるイオンの検出器からの偏向、選択された娘イオンの到達タイムウィンドウに対する検出器への時間ゲート、またはそれらの組み合わせにより、検出のための娘イオンを選択する。当該TOF分析器は、リニア型または反射型分析器とすることができる。
【0060】
種々の実施形態において、前記質量分析システムは、飛行時間質量分析器とイオン反射器とからなる。このイオン反射器は、TOFのフィールドフリードリフト領域の末端に配置され、イオンの飛行経路を修正することにより、初期運動エネルギー分散の影響を補償するために用いられる。種々の実施形態において、イオン反射器は、加速電圧よりも若干大きい程度まで高まるポテンシャルによりバイアスが掛かった一連のリングからなる。作動中は、イオンが反射器に侵入すると、電界方向におけるこれらのイオンの速度は、ゼロになるまで減速される。速度がゼロのポイントにおいて、当該イオンは、方向を逆転させて反射器を通り再び加速される。当該イオンは、それらの侵入エネルギーと同等のエネルギーの状態で反射器を出るが、それらの速度は方向が逆である。より大きいエネルギーを持つイオンはより深く反射器に侵入するため、反射器により長い時間留まる。反射器で使用されるポテンシャルは、イオンの飛行経路を修正するように選択され、その結果、同等の質量と電荷のイオンがほぼ同じ時間に検出器に到達する。
【0061】
種々の実施形態において、前記質量分析システムは、目的の親イオンを選択するための時限式イオン選別器を有する第1のフィールドフリードリフト領域と、娘イオンを生成するためのフラグメンテーション室(イオンフラグメンター)と、選択された娘イオンを通過させ検出するための質量分離器とからなるタンデム型MS−MS装置からなる。種々の実施形態において、前記時限式イオン選別器は、パルスイオン偏向器からなる。種々の実施形態において、前記イオン偏向器は、パルスイオン偏向器として使用することができる。前記質量分離器は、イオン反射器を有することができる。種々の実施形態において、前記フラグメンテーション室は、イオンをフラグメント化させるとともに引き出しを遅らせるように設計された衝突セル(collision cell)である。種々の実施形態において、前記フラグメンテーション室は、飛行時間型質量分析によるフラグメントイオンの分析のための遅延引き出しイオン源を兼ねることができる。
【0062】
種々の実施形態において、前記質量分析システムは、パルスイオン源により生成された多数のイオンの経路に沿って配置された第1、第2、および第3のTOF質量分離器を有するタンデム型TOF−MSからなる。第1の質量分離器は、パルスイオン源により生成された多数のイオンを収容するために配置されている。第1の質量分離器は、パルスイオン源により生成された多数のイオンを加速し、その多数のイオンをそれらの質量対電荷比に応じて分離し、その多数のイオンから第1グループのイオンをそれらの質量対電荷比に基づいて選択する。また、第1の質量分離器は、その第1グループのイオンの少なくとも一部をフラグメント化する。第2の質量分離器は、前記第1の質量分離器によって生成された前記第1グループのイオンおよびそのフラグメントを収容するために配置されている。第2の質量分離器は、前記第1グループのイオンおよびそのフラグメントを加速し、当該第1グループのイオンおよびそのフラグメントをそれらの質量対電荷比に応じて分離し、当該第1グループのイオンおよびそのフラグメントから第2グループのイオンをそれらの質量対電荷比に基づいて選択する。また、第2の質量分離器は、その第2グループのイオンの少なくとも一部をフラグメント化する。第1および/または第2の質量分離器は、イオンガイド(ion guide)、イオン収束装置(ion−focusing element)、および/または、イオンステアリング装置(ion−steering element)を有していてもよい。種々の実施形態において、第2のTOF質量分離器は、前記第1グループのイオンおよびそのフラグメントを減速させる。種々の実施形態において、第2のTOF質量分離器は、フィールドフリー領域と、実質的に第2の所定範囲内の質量対電荷比を有するイオンを選択するイオン選別器とを含む。種々の実施形態において、第1および第2のTOF質量分離器のうち少なくとも1つは、フラグメント化されたイオンを選択する時限式イオン選別器を含む。種々の実施形態において、第1および第2の質量分離器のうち少なくとも1つは、イオンフラグメンターを含む。第3の質量分離器は、前記第2の質量分離器によって生成された前記第2グループのイオンおよびそのフラグメントを収容するために配置されている。第3の質量分離器は、第2グループのイオンおよびそのフラグメントを加速し、当該第2グループのイオンおよびそのフラグメントを、それらの質量対電荷比に応じて分離する。種々の実施形態において、第3の質量分離器は、パルス加速によって、第2グループのイオンおよびそのフラグメントを加速する。種々の実施形態において、前記第2グループのイオンおよびそのフラグメントを収容するために、イオン検出器が配置される。種々の実施形態において、前記第1または第2グループのイオンおよびそのフラグメントのうちの少なくとも1つが前記イオン検出器に到達する前にそのエネルギーを修正するために、フィールドフリー領域にイオン反射器が配置される。
【0063】
種々の実施形態において、前記質量分析システムは、多数の飛行経路、時間的に同時に行うことが可能な多数の操作モード、またはその両方を有するTOF質量分析器からなる。このTOF質量分析器は、当該質量分析器に入るサンプルイオンのパケットから選択されたイオンを、第1、第2、または第3イオン経路のいずれかに沿って導く経路選択イオン偏向器(path selecting ion deflector)を含む。いくつかの実施形態においては、さらに多くのイオン経路を用いてもよい。種々の実施形態において、第2のイオン偏向器を経路選択イオン偏向器として使用することができる。時間依存性の電圧が経路選択イオン偏向器にかけられると、使用可能なイオン経路からイオン経路が選択され、所定の質量対電荷比範囲内の質量対電荷比を有するイオンはその選択されたイオン経路に沿って伝播する。
【0064】
例えば、種々の実施形態の多数の飛行経路を有するTOF質量分析器の操作において、第1の所定の質量対電荷比範囲に対応する第1の所定時間の間、前記経路選択イオン偏向器に第1の所定電圧をかけると、第1の質量対電荷比範囲内のイオンが第1のイオン経路に沿って伝播する。種々の実施形態において、この第1の所定電圧はゼロであり、そのためイオンは初期の経路に沿って伝播し続ける。第2の所定の質量対電荷比範囲に対応する第2の所定時間の間、前記経路選択イオン偏向器に第2の所定電圧をかけると、第2の質量対電荷比範囲内のイオンが第2のイオン経路に沿って伝播する。第3、第4等を含む更なる時間範囲および電圧を用いることにより、特別な測定に必要なだけのイオン経路を提供することができる。前記第1の所定電圧の振幅および極性は、イオンが第1のイオン経路に偏向するように選択され、前記第2の所定電圧の振幅および極性は、イオンが第2のイオン経路に偏向するように選択される。前記第1の時間間隔は、第1の所定の質量対電荷比範囲内のイオンが、経路選択イオン偏向器を経て伝播する時間に対応するように選択され、前記第2の時間間隔は、第2の所定の質量対電荷比範囲内のイオンが、経路選択イオン偏向器を経て伝播する時間に対応するように選択される。第1のTOF質量分離器は、第1のイオン経路に沿って伝播する第1の質量対電荷比範囲内のイオンパケットを収容するために配置される。この第1のTOF質量分離器は、第1の質量対電荷比範囲内のイオンを、それらの質量に応じて分離する。第1の検出器は、第1のイオン経路に沿って伝播している第1グループのイオンを収容するために配置される。第2のTOF質量分離器は、第2のイオン経路に沿って伝播するイオンパケットの一部を収容するために配置される。この第2のTOF質量分離器は、第2の質量対電荷比範囲内のイオンを、それらの質量に応じて分離する。第2の検出器は、第2のイオン経路に沿って伝播している第2グループのイオンを収容するために配置される。いくつかの実施形態においては、第3、第4等を含む更なる質量分離器および検出器を配置して、対応する経路に沿って導かれたイオンを収容してもよい。ある実施形態においては、第3のイオン経路を用いて、第3の所定の質量範囲内のイオンを切り捨てる。前記第1および第2の質量分離器は、どのようなタイプのものであってもよい。例えば、第1および第2の質量分離器のうちの少なくとも1つは、フィールドフリードリフト領域、イオン加速器、イオンフラグメンター、または時限式イオン選別器を有することができる。第1および第2の質量分析器は、多重質量分離器を有することもできる。種々の実施形態において、イオン反射器を第1グループのイオンを収容するために備えて配置することにより、第1グループのイオンに対するTOF質量分析器の分解能が向上する。種々の実施形態において、イオン反射器を第2グループのイオンを収容するために備えて配置することにより、第2グループのイオンに対するTOF質量分析器の分解能が向上する。
【0065】
下記の実施例は、2つの異なるサンプル中のシトクロムP450の多数のアイソフォームの絶対濃度を、複合的な方法で求める実験について説明する。本実施例の教示は、包括的なものではなく、これらの実験または本教示の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0066】
(実施例1) P450アイソフォーム
本実施例では、一連の16個のP450アイソフォームの絶対定量を示す。本実施例は、例えば、多数のP450アイソフォームに対して1回の実験操作で行うことができるアッセイ提供する。個々のP450アイソフォームに特異的なペプチドを合成し、安定同位体タグ(軽い切断可能ICAT試薬)で標識化し、HPLCにより精製することにより標識化された特徴的ペプチド標準試料を用意した。これらのペプチド標準試料を使用して、定量的な多重反応モニタリング(MRM)スキャンにより濃度曲線を作成した。次に、マウスの肝臓ミクロソームサンプル、すわなち、コントロール(CT)サンプルとフェノバルビタール誘導(IND)サンプルとを重い切断可能ICAT試薬で標識化した。フェノバルビタール(PB)は、しばしば工業用溶剤や殺虫剤等のために代表的な化学薬品として使用され、サブファミリー2a、2b、2c、および3aのいくつかのP450遺伝子を誘導することが知られている。コントロールサンプルおよび誘導サンプルは、別々にクロマトグラフィカラムにかけた。コントロールサンプルおよび誘導サンプルをカラムにかける前に、それらを、各特徴的ペプチドに対する特徴的ペプチド内部標準試料(軽い切断可能なICAT試薬で標識化さている)と混合した。混合サンプル中の軽いペプチド(内部標準)と重いペプチド(サンプル)のクロマトグラフ面積を濃度曲線と比較することにより、コントロールサンプル中で調べられた各P450のレベルおよびフェノバルビタールによって処理したときの発現の変化に関する定量的情報が提供された。16個の異なるP450タンパク質を表す16個の異なる標識化合成ペプチドが、本実験でモニターされた。表1の第1列目に、本実験で検討したこの16個のP450タンパク質を列挙する。
【0067】
【表1】


本実施例で使用した物質および方法は概ね以下の通りである。
【0068】
(標識化された合成ペプチド標準の選択、調製、および定量)
本実験で使用したP450タンパク質ファミリーのすべてのメンバーのタンパク質配列を調べた。システイン残基を含む複数のトリプシンペプチド配列が見つかり、それにより一意的に各タンパク質のアイソフォームを同定した。これらの配列の合成ペプチドを作成し、C0切断可能ICAT(商標)試薬で標識化した。ペプチドは、Fmoc Chemistry(アプライドバイオシステムズ 433A ペプチドシンセサイザー、 アプライドバイオシステムズ社、 フォスターシティー、 カリフォルニア)を用いて合成し、切断可能ICAT(商標)試薬を用いて誘導体化し、HPLCにより精製し、それらの濃度をアミノ酸分析(アプライドバイオシステムズ 421A デリバタイザー(Derivatizer))により定量した。本実験の16個のP450アイソフォームを、表1の第1列目に列挙する。表1の第2列目には、本実験において、対応するP450アイソフォームに対して選択された特徴的ペプチドを列挙する。
【0069】
(質量分析システム)
液体クロマトグラフィ(LC)質量分析(MS)システムを使用して、前記標準試料、およびコントロールおよびフェノバルビタール誘導の両方の複数のマウスからの未知のサンプルを分析した。サンプルは、Genesis C18AQカラム(75μm×10cm、Vydac)を使用した逆相HPLCにより、10分グラジエント(0.1%ギ酸中で15〜45%アセトニトリル)で分離した。MRM分析は、4000QTRAP(商標)システム(アプライドバイオシステムズ社、フォスターシティー、カリフォルニア)(Q1−3ダルトン(Da)マスウィンドウ(mass window)、Q3−1Daマスウィンドウ)のNanoSpray(登録商標)イオン源を備えた質量分析システムを用いて行った。当該質量分析システムの簡略化した概略図を図2に示す。
【0070】
図2を参照すると、MRMスキャンは、例えば、第1の質量分離器201(使用した装置において、第1の質量分離器は四重極である)を設置して、目的の特徴的ペプチド(すなわち、親イオン202、例えば、特徴的ペプチドの質量をほぼ中心とした約3質量単位の幅のマスウィンドウ内のイオンを通過させるように第1の質量分離器を設置することにより)を通過させることにより行うことができる。種々の実施形態において、衝突エネルギーは、イオンフラグメンターにおいて、このペプチドの選択された識別用荷電フラグメント(選択された識別用娘イオン)を生成しやすいように選択することができ(ここで、このイオンフラグメンターは、例えば、イオンフラグメント204の収集およびフラグメントイオンの送達が容易になるように、CIDを行うための衝突ガスと四重極203とを備える);第2の質量分離器205(使用した装置において、第2の質量分離器はリニアイオントラップとして設定可能な四重極である)を設置することにより、目的の識別用娘イオン(または複数のイオン)206を(例えば、識別用娘イオンの質量をほぼ中心とした約1質量単位の幅のマスウィンドウ内のイオンを通過させるように第2の質量分離器を設置することにより)検出器208へ送り、この送られた識別用娘イオン(または複数のイオン)のイオン信号を生成する。これらの実験においては、第2の質量分離器は、四重極モードで操作した。
【0071】
各特徴的ペプチドに対するMRMのパラメータは、その特徴的ペプチドに関連する選択された識別用娘イオン(または複数のイオン)に対する信号を最適化しやすいように選択した。本実験において、前記質量分析器に対して用いられたドウェル時間(25〜100ミリ秒)とMRMトランジションを急速に変化させる能力とにより、1回のLC−MS操作で混合物中の複数の成分をモニターすることができた。これらの実験においては、ドウェル時間を約25ミリ秒ないし100ミリ秒としたが、実験条件に応じて約10ミリ秒ないし約200ミリ秒とすることができる。例えば、1回のLC/MS操作で50ないし100の異なる成分をモニターすることができる。各特徴的ペプチドに対するMRM設定、すなわち親イオンのm/zおよび娘イオンのm/z(これらの設定は1価のイオンの通過は想定しない)を表1の第3列目に列挙し、各特徴的ペプチドに対するおおよそのカラム保持時間(分)を表1の第4列目に列挙する。
【0072】
(濃度曲線の作成)
本実施例において、1回の操作で一連の16個の合成ペプチドを定量し、それらの濃度曲線を作成するために、軽いICAT(商標)試薬で標識化された形態のそれらのペプチドを使用したMRMアッセイを開発した。ドウェル時間が45ミリ秒で40の異なるトランジションを観測すると、サイクル時間はわずか2秒であった。15〜35%アセトニトリルの10分グラジエントによりP450ペプチドを時間により分離した。得られた各特徴的ペプチドのオンカラム3.2 fmolのMRMクロマトグラムを図3に示す。図3のy軸は、図3に示したP450タンパク質の特徴的ペプチドに対応する識別用娘イオンの質量分析システムの検出器信号(秒あたりのカウント(cps))に相当する。図3のx軸は、当該システムのLC部分における、特徴的ペプチドの保持時間(分)に相当する。図3のクロマトグラムには、それらに対応するP450アイソフォームに従って標識化されている。なお、MRM応答は、異なる特徴的ペプチド配列に対して変化する。
【0073】
特徴的ペプチド標準試料は、各ペプチドに対する濃度曲線を作成するために使用した。未知のサンプルを測定する際は、特徴的ペプチド標準試料は内部標準の役割を果たす。
【0074】
濃度曲線は、軽いICAT(商標)試薬により標識化された各合成ペプチドに対して測定した。当該濃度曲線は、重いICAT(商標)試薬により標識化されたミクロソームタンパク質の存在下で作成し、バックグラウンドとイオン抑制を制御した。図4に、本実験で作成された濃度曲線の例を、特徴的ペプチド濃度(フェトモル オンカラム)(x軸)の関数としての識別用娘イオン信号の面積(y軸)のグラフとして示す。図4は、本実験において、種々のP450アイソフォームに対して選択された種々の特徴的ペプチドの識別用娘イオンに対する濃度曲線400を示しており、そこに記入された記号404は、実測値を示している。種々のアイソフォームに対する濃度曲線の例として、Cyp2d9 406、Cyplal 408、Cyp2b10 410、Cyp2j5 412、Cyp2d22/Cyp2d26 414、Cyp3all 416、Cyp1b1 418、Cyp2f2 420、Cyp2a12 422、Cyp2c29/Cyp2c37 424、Cyp4a10/Cyp4a14 426、Cyp2c39 428、Cypla2 430、Cyp2a4 432、およびCyp2d9 432を示す。
【0075】
(マウスの肝臓ミクロソームの標識化)
マウスの肝臓ミクロソームのタンパク質を抽出し、そのタンパク質抽出物を重い切断可能ICAT(商標)試薬で標識化し、サンプルをアプライドバイオシステムズのICAT(商標)試薬キットの標準プロトコル(例えば、アプライドバイオシステムズ Part No. 4333373 Rev. A)に従って処理した。
【0076】
(発現の定量)
コントロール(CT)サンプルと誘導(IND)サンプルとの両方に対する本実験のP450アイソフォームの絶対発現は、例えば、コントロールサンプルのMRMピーク面積と、対応する特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジションに対する濃度曲線とを比較することにより求めることができる。
【0077】
表2は、本実験で調べられた16個のP450アイソフォームに対して得られた濃度比を示す。表2において、第1列目はP450アイソフォーム、第2列目はそのアイソフォームに対して選択された特徴的ペプチド、第3列目は本実験におけるコントロールサンプルを1マイクログラム(μg)のミクロソームタンパク質あたりのフェムトモル数で示したP450アイソフォームの絶対量、第4列目は誘導(IND)サンプルのコントロール(CT)サンプルに対する発現の比、第5列目はCTに対してINDサンプル中のタンパク質が上昇したかどうかの定性的表示、第6列および7列目は、それぞれ、第4列目の対応する入力の95%信頼区間の上限と下限とを示す。種々の実施形態において、変化しないことが知られているサンプル中の1つまたはそれ以上のタンパク質(例えば、肝臓ミクロソームを使用したこれらの実験においては、肝臓タンパク質)が選択され、使用されたそれらのタンパク質のうちの1つまたはそれ以上のタンパク質の特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジションは、コントロールサンプルと実験サンプルとの間の標準化ファクターを提供する。
【0078】
コントロールのマウス肝臓ミクロソーム中の各タンパク質発現の基礎レベルを測定し、それらモニターされたタンパク質は、約1.38ないし約55.84 fmol/μgミクロソームタンパク質の基礎発現を示した。フェノバルビタールで処理された複数のマウスからのミクロソームタンパク質も検討し、各タンパク質発現のその薬剤に対する変化を求めた。4つの別々の実験の比を平均化し、95%信頼区間を算出した。狭い95%CIの値によって示されるように、複数の実験にわたってよい再現性が得られた。P450タンパク質、すなわち、Cyp2b10は、薬剤処理により発現が増加し、コントロールの約6倍となった。Cyp2c29/Cyp2c37およびCyp3allもまた少量(約3倍)の発現増加を示した。それに対し、Cyp2d9は若干の発現低減を示した。
【0079】
【表2】

(実施例2) P450アイソフォーム
本実施例においては、一連の16個のP450アイソフォームの絶対定量を示し、コントロールサンプルと誘導サンプルとを混合し(特徴的ペプチド内部標準試料は添加しない)、クロマトグラフィカラムにかけた。また、本実施例は、例えば、1回の実験操作で実施可能な多数のP450アイソフォームに対するアッセイも提供する。本実施例は、標識化する前の実施例1と同じコントロールサンプルおよび誘導サンプルの一部を使用した。実施例2で使用した標識化された特徴的ペプチド試料は、実施例1で使用したものと同じであった。
【0080】
実施例2では、マウスの肝臓ミクロソームサンプル、すなわちコントロール(CT)サンプルおよびフェノバルビタール誘導(IND)サンプルは、それぞれ、軽い切断可能ICAT試薬および重い切断可能ICAT試薬で標識化した。サンプル中の軽いペプチドおよび重いペプチドのクロマトグラムの面積を濃度曲線に対して比較することにより、コントロールサンプル中で調べられた各P450のレベルおよびフェノバルビタールによって処理したときの発現の変化に関する定量的情報が提供された。本実験では、16個の異なるP450タンパク質を表す16個の異なる標識化された合成ペプチドがモニターされた。実施例2で検討したこれら16個のP450タンパク質を表1の第1列目に列挙する。表1の第2列目には、本実験において、対応するP450アイソフォームに対して選択された特徴的ペプチドを列挙する。
【0081】
本実施例で使用した物質および方法は、実施例1で使用したものと、以下のものを除いて実質的に同じであった。
【0082】
(質量分析システム)
液体クロマトグラフィ(LC)質量分析(MS)システムを使用して、前記標準試料、およびコントロールおよびフェノバルビタール誘導の両方の複数のマウスからの未知のサンプルを分析した。コントロールサンプルおよび誘導サンプルを混合、消化し、混合サンプルとしてクロマトグラフィカラムにかけた。この混合サンプルには、特徴的ペプチド内部標準試料は添加しなかった。サンプルは、Genesis C18AQカラム(75μm×10cm、Vydac)を使用した逆相HPLCにより、10分グラジエント(0.1%ギ酸中で15〜45%アセトニトリル)で分離した。実施例1で記載したように、MRM分析を行った。
【0083】
(濃度曲線の作成)
実施例1で説明した濃度曲線と同じものを実施例2においても使用した。
【0084】
(マウスの肝臓ミクロソームの標識化)
マウスの肝臓ミクロソームからのタンパク質を抽出し、そのタンパク質抽出物を切断可能ICAT(商標)試薬(INDには重いICAT(商標)試薬を、CTには軽いICAT(商標)試薬を使用した)で標識化した。サンプルは、アプライドバイオシステムのICAT(商標)試薬キットの標準プロトコル(例えば、アプライドバイオシステム Part No. 4333373 Rev. A)に従って処理した。
【0085】
(発現の定量)
CTサンプルとINDサンプルとの両方に対する本実験のP450アイソフォームの絶対発現は、例えば、コントロールサンプルのMRMピーク面積と対応する特徴的ペプチド−識別用娘イオントランジションに対する濃度曲線とを比較することにより求めることができる。例えば、図5は、コントロールサンプル502およびフェノバルビタール誘導サンプル504の両方からの信号を有する、実施例2のICLGESIARペプチド(P450のCyp2b10アイソフォームに対して選択された特徴的ペプチド)の識別用娘イオンのMRMクロマトグラム500を示す。CTおよびINDサンプル中のICLGESIARペプチド、したがってCTおよびINDサンプル中の対応する特異的なP450アイソフォームの濃度は、例えば、コントロールサンプルの信号502のMRMピーク面積を、合成ペプチドから作成した対応する濃度曲線(例えば、図4)に対して比較することにより求めることができる。例えば、本実験のコントロールの肝臓ミクロソーム中では、Cyp2b10は、約2.4 fmol/μgミクロソームタンパク質にて発現した。また、誘導サンプル信号504およびコントロールサンプル信号502からのICLGESIARペプチドに対する濃度曲線から算出された濃度の比較、またはそれぞれのMRMピーク面積の比較により、P450Cyp2b10アイソフォームの発現は、フェノバルビタール処理により約7倍上昇することが示される。
【0086】
種々の実施形態において、同じサブファミリー内の高度に相同なタンパク質の発現の変化を確認することができる。例えば、Cyp2Cサブファミリーからの4つのアイソフォーム(Cyp2c40、Cyp2c29、Cyp2c37、およびCyp2c39)は、約80%の配列相同性を有している。種々の実施形態において、例えば、MRM法の特定性を使用して個々の定量情報を得ることができる。図6を参照すると、コントロールサンプルおよびフェノバルビタール誘導サンプルのMRMマイクログラム600が示されており、それらのアイソフォームのうちの2つ(Cyp2c40 602 およびCyp2c39 604)は、実質的にはフェノバルビタール誘導性ではなかった。しかしながら、Cyp2c29/Cyp2c37 70アイソフォームは、MRMピーク面積によれば、誘導サンプル606は、コントロールサンプル608に対し、約3倍の発現増加を示した。
【0087】
種々の実施形態において、例えば、タンパク質出発物質またはサンプル調製品の量の実験上の小さい変動を明らかにするために、標準化タンパク質として機能する1つまたはそれ以上のタンパク質を選択することができる。標準化ファクターとして役割を果たすように選択されたタンパク質は、誘導方法(例えば、薬剤誘導)にかかわらず不変であるべきであり、それらのタンパク質のペプチドフラグメントは、実験において内部標準としての役割を果たすために、通常のサンプル調整のあとに観測されるべきである。
【0088】
表3は、実施例2において、P450イソ酵素の定量に使用した標準化タンパク質と特徴的ペプチドを示す。種々の実施形態において、標準化タンパク質は、ミクロソームタンパク質である。種々の実施形態において、標準化タンパク質の特徴的ペプチドは、単離されたトリプシンフラグメントである。種々の実施形態において、特徴的ペプチドは、約4ないし約30アミノ酸残基長、または約6ないし約15アミノ酸残基長、または約16ないし約30アミノ酸残基長、または約8ないし約16アミノ酸残基長、または約10ないし約15アミノ酸残基長である。
【0089】
【表3】

図7は、P450タンパク質のサブファミリーのうちの4つのサブファミリー:Cyplal 702、Cypla2 704、Cyp2el 706、およびCyp3a4 708のウェスタンブロット分析の結果700を示す。P450タンパク質のサブファミリーのうちの4つのサブファミリーに対する市販の抗体を入手し使用することにより、コントロールサンプル710およびフェノバルビタール誘導サンプル712の両方のサンプル中の発現したタンパク質レベルを分析した。Cyplalタンパク質は、どちらのサンプルにおいてもほとんど観測されなかった。Cypla2、Cyp2el、およびCyp3a4タンパク質は、両方のサンプルにおいて、同等の発現レベルで観測された。
【0090】
本教示を具体的な実施形態を参照して詳細に説明してきたが、本教示の趣旨および範囲を逸脱することなく、形態および詳細について種々の変更が可能であることを理解されたい。例えば、開示した種々の標識化手法、PDITM手法、濃度曲線、および質量分析システムのいずれかを組み合わせることにより、1つのサンプルまたは複数のサンプル中の1つのタンパク質または複数のタンパク質の絶対濃度を求める方法を提供することができる。したがって、本教示の趣旨および範囲に入るすべての実施形態およびそれに同等のものを主張する。本教示の方法、システム、およびアッセイの説明および図は、その趣旨の記述がない限り、説明した構成要素の順序に限定されるように解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】サンプル中のタンパク質の絶対濃度を求める方法の種々の実施形態の概略図である。
【図2】実施例1および2で使用された質量分析システムの簡略化した概略図である。
【図3】実施例1および2の各標識化された合成特徴的ペプチドのオンカラムで3.2 fmolのMRMクロマトグラムである。
【図4】実施例1および2のICLGESIARペプチド(P450のCyp2b10アイソフォームに対して選択された特徴的ペプチド)の識別用娘イオンに対して作成された濃度曲線である。
【図5】実施例1のコントロールおよびフェノバルビタール誘導サンプルの両方のICLGESIARペプチド(P450のCyp2b10アイソフォームに対して選択された特徴的ペプチド)の識別用娘イオンに対するMRMクロマトグラムである。
【図6】同じサブファミリー内のP450タンパク質の定量のためのMRMスキャンデータを示す。
【図7】P450タンパク質のサブファミリーのうちの4つのサブファミリー:Cyp1a1、Cyp1a2、Cyp2e1、およびCyp3a4のウェスタンブロット分析の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上の目的のタンパク質の濃度を求める方法であって、
1つまたはそれ以上の目的のタンパク質のそれぞれに対して、対応する目的のタンパク質に対する特徴的ペプチドを含む標準試料を用意する工程と、
各特徴的ペプチドに対して識別用娘イオンを選択する工程と、
各選択された識別用娘イオンに対して濃度曲線を作成する工程と、
該2つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上の目的のタンパク質を、各サンプルに対して異なる標識によって標識化することにより、その2つまたはそれ以上のサンプルが差次的に標識化される工程と、
該差次的に標識化された複数のサンプルの少なくとも一部を混合して混合サンプルを作成する工程と、
該混合サンプルの少なくとも一部をクロマトグラフィカラムにかける工程と、
該クロマトグラフィカラムからの溶離液の少なくとも一部を多重反応モニタリングに供する工程であって、各多重反応モニタリングスキャンの通過親イオンのm/z範囲は、該特徴的ペプチドのうちの1つまたはそれ以上の特徴的ペプチドのm/z値を含み、各多重反応モニタリングスキャンの通過娘イオンのm/z範囲は、通過した特徴的ペプチドに対応する該選択された識別用娘イオンのうちの1つまたはそれ以上の識別用娘イオンのm/z値を含む工程と、
該多重反応モニタリングを使用して、該選択された識別用娘イオンのうちの1つまたはそれ以上の選択された識別用娘イオンのイオン信号を測定する工程と、
該2つまたはそれ以上のサンプルのうちの1つまたはそれ以上のサンプル中の目的のタンパク質の絶対濃度を、当該目的のタンパク質に対応する選択された識別用娘イオンの測定されたイオン信号とその選択された識別用娘イオンに対する濃度曲線とを少なくとも比較することにより求める工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記1つまたはそれ以上の目的のタンパク質は、シトクロムP450アイソフォームを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたはそれ以上の目的のタンパク質は、Cyp1a1、Cyp1a2、Cyp1b1、Cyp2a4、Cyp2a12、Cyp2b6、Cyp2b10、Cyp2c8、Cyp2c9、Cyp2c19、Cyp2c29/Cyp2c37、Cyp2c39、Cyp2c40、Cyp2d6、Cyp2d9、Cyp2d22/Cyp2d26、Cyp2e1、Cyp2f2、Cyp2j5、Cyp3a4、Cyp3a11、Cyp4a10/Cyp4a14、およびそれらの組み合わせのうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つまたはそれ以上の目的のタンパク質は、Cyp2a4、Cyp2a12、Cyp2b10、Cyp2c29/Cyp2c37、Cyp2c40、およびそれらの組み合わせを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記1つまたはそれ以上の目的のタンパク質は、Cyp2a4、Cyp2a12、Cyp2b10、Cyp2c29/Cyp2c37、Cyp2c40、Cyp2d9、およびこれらの組み合わせを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
1つまたはそれ以上の目的のタンパク質およびそれらの対応する特徴的ペプチドは、表1に記載されたタンパク質および特徴的ペプチドから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記特徴的ペプチドは、CIGETIGR(配列番号1)、CIGEIPAK(配列番号2)、CIGEELSK(配列番号3)、YCFGEGLAR(配列番号4)、FCLGESLAK(配列番号5)、ICLGESIAR(配列番号6)、ICAGEGLAR(配列番号7)、VCAGEGLAR(配列番号8)、ICVGESLAR(配列番号9)、SCLGEALAR(配列番号10)、SCLGEPLAR(配列番号11)、VCVGEGLAR(配列番号12)、LCLGEPLAR(配列番号13)、ACLGEQLAK(配列番号14)、NCLGMR(配列番号15)、NCIGK(配列番号16)、YIDLLPTSLPHAVTCDIK(配列番号17)、ICVGEGLAR(配列番号18)、ACLGEPLAR(配列番号19)、CIGEVLAK(配列番号20)、GFCMFDMECHK(配列番号21)、ICLGEGIAR(配列番号22)、LCQNEGCK(配列番号23)、GCPSLSELWR(配列番号24)、EECALEIIK(配列番号25)、GCPSLAEHWK(配列番号26)、およびVFANPEDCAFGK(配列番号27)のうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記各特徴的ペプチドに対して識別用娘イオンを選択する工程は、検出レベル(LOD)、定量限界(LOQ)、濃度の特定のダイナミックレンジにわたる定量の線形性、およびそれらの組み合わせのうちの1つまたはそれ以上に基づいて、識別用娘イオンを選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記濃度曲線を作成する工程は、
質量分析システムを使用して、特徴的ペプチドの既知濃度に関連する識別用娘イオンのイオン信号を測定することと、
濃度ゼロが識別用娘イオン信号ゼロに対応するように、測定した濃度の線形外挿により濃度曲線を作成することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記濃度曲線を作成する工程は、
質量分析システムを使用して、特徴的ペプチドの2つまたはそれ以上の既知濃度に関連する識別用娘イオンのイオン信号を測定することと、
特徴的ペプチドの2つまたはそれ以上の既知濃度において、測定した識別用娘イオン信号に関数をフィットさせることにより濃度曲線を作成することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記関数は、線形関数である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記異なるサンプル中の目的のタンパク質を標識化する工程は、同位体的にコードされたアフィニティタグにより目的のタンパク質を標識化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記異なるサンプル中の目的のタンパク質を標識化する工程は、同重核のタグにより目的のタンパク質を標識化することを含む、請求項1に記載する方法。
【請求項14】
前記2つまたはそれ以上のサンプルのうちの1つまたはそれ以上のサンプル中の2つまたはそれ以上のタンパク質の絶対濃度を少なくとも比較することにより、化学物質に対する生物学的システムの応答を評価する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記化学物質は、医薬品、医薬組成物、代謝産物、毒素、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記2つまたはそれ以上のサンプルのうちの1つまたはそれ以上のサンプル中の2つまたはそれ以上のタンパク質の絶対濃度を少なくとも比較することにより、生物学的システムの病態を評価する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記生物学的システムは、生物体全体、生物体全体のサブユニット、生物学的プロセス、生化学的プロセス、病態、細胞系、またはそれらのモデル、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項14または16に記載の方法。
【請求項18】
前記目的のタンパク質のうちの1つまたはそれ以上の目的のタンパク質は標準化タンパク質であって、前記評価工程は、
第1のサンプル中の目的のタンパク質の濃度を第2のサンプル中の当該目的のタンパク質の濃度に対して比較することにより、目的のタンパク質の2つのサンプル間の濃度比を求めることと、
前記第1のサンプル中の標準化タンパク質の濃度を前記第2のサンプル中の当該標準化タンパク質の濃度に対して比較することにより、標準化タンパク質の2つのサンプル間の濃度比を求めることと、
前記標準化タンパク質の濃度比を使用して、前記目的のタンパク質の濃度比を標準化することと、を含む、請求項14または16に記載の方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法を行うために用いられるキットであって、2つまたはそれ以上の標識化された特徴的ペプチド試料を含み、当該2つまたはそれ以上の標識化された特徴的ペプチド試料のうちの2つまたはそれ以上の標識化された特徴的ペプチド試料の特徴的ペプチドは異なるタンパク質の特徴的ペプチドである、キット。
【請求項20】
10またはそれ以上の標識化された特徴的ペプチド試料を含み、当該10またはそれ以上の標識化された特徴的ペプチド試料のうちの10またはそれ以上の標識化された特徴的ペプチド試料の特徴的ペプチドは、異なるシトクロムP450アイソフォームの特徴的ペプチドである、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
シトクロムP450アイソフォーム:Cyp2a4、Cyp2a12、Cyp2b10、Cyp2c29/Cyp2c37、およびCyp2c40の特徴的ペプチドに対する標識化された特徴的ペプチド試料を含む、請求項19に記載のキット。
【請求項22】
前記特徴的ペプチドは、YCFGEGLAR(配列番号4)、FCLGESLAK(配列番号5)、ICLGESIAR(配列番号6)、ICAGEGLAR(配列番号7)、およびICVGESLAR(配列番号9)を含む、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
シトクロムP450アイソフォーム:Cyp1a1、Cyp1a2、Cyp1b1、Cyp2a4、Cyp2a12、Cyp2b6、Cyp2b10、Cyp2c8、Cyp2c9、Cyp2c19、Cyp2c29/Cyp2c37、Cyp2c39、Cyp2c40、Cyp2d6、Cyp2d9、Cyp2d22/Cyp2d26、Cyp2e1、Cyp2f2、Cyp2j5、Cyp3a4、Cyp3a11、Cyp4a10/Cyp4a14、およびこれらの組み合わせの特徴的ペプチドに対する標識化された特徴的ペプチド試料を含む、請求項19に記載のキット。
【請求項24】
前記特徴的ペプチドは、CIGETIGR(配列番号1)、CIGEIPAK(配列番号2)、CIGEELSK(配列番号3)、YCFGEGLAR(配列番号4)、FCLGESLAK(配列番号5)、ICLGESIAR(配列番号6)、ICAGEGLAR(配列番号7)、VCAGEGLAR(配列番号8)、ICVGESLAR(配列番号9)、SCLGEALAR(配列番号10)、SCLGEPLAR(配列番号11)、VCVGEGLAR(配列番号12)、LCLGEPLAR(配列番号13)、ACLGEQLAK(配列番号14)、NCLGMR(配列番号15)、NCIGK(配列番号16)、YIDLLPTSLPHAVTCDIK(配列番号17)、ICVGEGLAR(配列番号18)、ACLGEPLAR(配列番号19)、CIGEVLAK(配列番号20)、GFCMFDMECHK(配列番号21)、ICLGEGIAR(配列番号22)、LCQNEGCK(配列番号23)、GCPSLSELWR(配列番号24)、EECALEIIK(配列番号25)、GCPSLAEHWK(配列番号26)、およびVFANPEDCAFGK(配列番号27)のうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項19に記載のキット。
【請求項25】
前記特徴的ペプチドは、ICAGEGLAR(配列番号7)、VCAGEGLAR(配列番号8)、YIDLLPTSLPHAVTCDIK(配列番号17)、ICVGEGLAR(配列番号18)、ACLGEPLAR(配列番号19)、CIGEVLAK(配列番号20)、GFCMFDMECHK(配列番号21)、およびICLGEGIAR(配列番号22)のうちの1つまたはそれ以上を含む、ヒト由来の2つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上のヒトタンパク質の濃度を求めるための請求項19に記載のキット。
【請求項26】
1つまたはそれ以上の標準化タンパク質に対する標識化された特徴的ペプチド試料を含み、前記標識化された特徴的ペプチド試料の特徴的ペプチドは、LCQNEGCK(配列番号23)、GCPSLSELWR(配列番号24)、およびEECALEIIK(配列番号25)のうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
前記特徴的ペプチドは、CIGETIGR(配列番号1)、CIGEIPAK(配列番号2)、CIGEELSK(配列番号3)、YCFGEGLAR(配列番号4)、FCLGESLAK(配列番号5)、ICLGESIAR(配列番号6)、ICAGEGLAR(配列番号7)、VCAGEGLAR(配列番号8)、ICVGESLAR(配列番号9)、SCLGEALAR(配列番号10)、SCLGEPLAR(配列番号11)、VCVGEGLAR(配列番号12)、LCLGEPLAR(配列番号13)、ACLGEQLAK(配列番号14)、NCLGMR(配列番号15)、およびNCIGK(配列番号 16)のうちの1つまたはそれ以上を含む、、マウス由来の2つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上のマウスタンパク質の濃度を求めるための請求項19に記載のキット。
【請求項28】
1つまたはそれ以上の標準化タンパク質に対する標識化ペプチド試料を含み、前記標識化された特徴的ペプチド試料の特徴的ペプチドは、LCQNEGCK(配列番号23)、EECALEIIK(配列番号25)、GCPSLAEHWK(配列番号26)、およびVFANPEDCAFGK(配列番号27)のうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
化学物質に対する生物学的システムの応答を評価するアッセイであって、1つまたはそれ以上のサンプル中の2つまたはそれ以上のタンパク質の絶対濃度を比較することを含み、当該絶対濃度は請求項1〜17のうちの1つまたはそれ以上の方法に従って求められる、アッセイ。
【請求項30】
生物学的システムの病態を評価するアッセイであって、1つまたはそれ以上のサンプル中の2つまたはそれ以上のタンパク質の絶対濃度を比較することを含み、当該絶対濃度は、請求項1〜18のうちの1つまたはそれ以上の方法に従って求められる、アッセイ。
【請求項31】
請求項29または30のアッセイを行うためのキットであって、2つまたはそれ以上の標識化された特徴的ペプチド試料を含み、当該2つまたはそれ以上の標識化された特徴的ペプチド試料のうちの2つまたはそれ以上の標識化された特徴的ペプチド試料の特徴的ペプチドは、異なるシトクロムP450アイソフォームの特徴的ペプチドである、キット。
【請求項32】
化学物質に対する生物学的システムの応答を評価する方法であって、
(a) 化学物質に曝露されていない生物学的サンプル中の2つまたはそれ以上のタンパク質の絶対濃度を求める工程と、
(b) 前記化学物質に曝露された生物学的サンプル中の2つまたはそれ以上のタンパク質の絶対濃度を求める工程と、
(c) 工程(a)で求めた絶対濃度のうちの1つまたはそれ以上の絶対濃度と工程(b)で求めた絶対濃度のうちの1つまたはそれ以上の絶対濃度とを少なくとも比較することにより、前記化学物質に対する生物学的システムの応答を評価する工程と、を含む、方法。
【請求項33】
前記絶対濃度のうちの1つまたはそれ以上の絶対濃度の測定は、
2つまたはそれ以上の目的のタンパク質のそれぞれに対して、対応する目的のタンパク質に対する特徴的ペプチドを含む標準試料を用意する工程と、
各特徴的ペプチドに対して識別用娘イオンを選択する工程と、
各選択された識別用娘イオンに対して濃度曲線を作成する工程と、
前記生物学的サンプル中の2つまたはそれ以上の目的のタンパク質を、各サンプルに対して異なる標識によって標識化することにより、その2つまたはそれ以上の生物学的サンプルが差次的に標識化される工程と、
前記差次的に標識化された複数の生物学的サンプルの少なくとも一部を混合して混合サンプルを作成する工程と、
前記混合サンプルの少なくとも一部をクロマトグラフィカラムにかける工程と、
前記クロマトグラフィカラムからの溶離液の少なくとも一部を多重反応モニタリングに供する工程であって、多重反応モニタリングスキャンの通過親イオンのm/z範囲は、前記特徴的ペプチドのうちの1つまたはそれ以上の特徴的ペプチドのm/z値を含み、多重反応モニタリングスキャンの通過娘イオンのm/z範囲は、通過した特徴的ペプチドに対応する前記選択された識別用娘イオンのうちの1つまたはそれ以上の識別用娘イオンのm/z値を含む工程と、
前記多重反応モニタリングを使用して、前記選択された識別用娘イオンの1つまたはそれ以上の識別用娘イオンのイオン信号を測定する工程と、
生物学的サンプル中の目的のタンパク質の絶対濃度を、当該目的のタンパク質に対応する選択された識別用娘イオンの測定されたイオン信号とその選択された識別用娘イオンに対する濃度曲線とを少なくとも比較することにより求める工程と、を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記生物学的システムは、生物体全体、生物体全体のサブユニット、生物学的プロセス、生化学的プロセス、病態、細胞系、またはそれらのモデル、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記化学物質は、医薬品、医薬組成物、代謝産物、毒素、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記目的のタンパク質のうちの1つまたはそれ以上の目的のタンパク質は標準化タンパク質であり、前記評価工程は、
化学物質に曝露されていない生物学的サンプル中の目的のタンパク質の濃度を、前記化学物質に曝露された生物学的サンプル中の当該目的のタンパク質の濃度に対して比較することにより、目的のタンパク質の2つのサンプル間の濃度比を求めることと、
化学物質に曝露されていない前記生物学的サンプル中の標準化タンパク質の濃度を、前記化学物質に曝露された前記生物学的サンプル中の当該標準化タンパク質の濃度に対して比較することにより、前記標準化タンパク質の2つのサンプル間の濃度比を求めることと、
前記標準化タンパク質の濃度比を使用して、前記目的のタンパク質の濃度比を標準化することと、を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
請求項32〜36のうちの1つまたはそれ以上の方法を行うためのキットであって、2つまたはそれ以上の標識化された特徴的ペプチド試料を含み、当該2つまたはそれ以上の標識化された特徴的ペプチド試料のうちの2つまたはそれ以上の標識化された特徴的ペプチド試料の特徴的ペプチドは、異なるシトクロムP450アイソフォームの特徴的ペプチドである、キット。
【請求項38】
10またはそれ以上の標識化された特徴的ペプチド試料を含み、当該10またはそれ以上の標識化された特徴的ペプチド試料のうちの10またはそれ以上の標識化された特徴的ペプチド試料の特徴的ペプチドは、異なるシトクロムP450アイソフォームの特徴的ペプチドである、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
シトクロムP450アイソフォーム:Cyp2a4、Cyp2a12、Cyp2b10、Cyp2c29/Cyp2c37、およびCyp2c40の特徴的ペプチドに対する標識化された特徴的ペプチド試料を含む、請求項37に記載のキット。
【請求項40】
前記特徴的ペプチドは、YCFGEGLAR(配列番号4)、FCLGESLAK(配列番号5)、ICLGESIAR(配列番号6)、ICAGEGLAR(配列番号7)、およびICVGESLAR(配列番号9)を含む、請求項39に記載のキット。
【請求項41】
シトクロムP450アイソフォーム:Cyp1a1、Cyp1a2、Cyp1b1、Cyp2a4、Cyp2a12、Cyp2b6、Cyp2b10、Cyp2c8、Cyp2c9、Cyp2c19、Cyp2c29/Cyp2c37、Cyp2c39、Cyp2c40、Cyp2d6、Cyp2d9、Cyp2d22/Cyp2d26、Cyp2e1、Cyp2f2、Cyp2j5、Cyp3a4、Cyp3a11、Cyp4a10/Cyp4a14、およびこれらの組み合わせの特徴的ペプチドに対する標識化された特徴的ペプチド試料を含む、請求項37に記載のキット。
【請求項42】
前記特徴的ペプチドは、CIGETIGR(配列番号1)、CIGEIPAK(配列番号2)、CIGEELSK(配列番号3)、YCFGEGLAR(配列番号4)、FCLGESLAK(配列番号5)、ICLGESIAR(配列番号6)、ICAGEGLAR(配列番号7)、VCAGEGLAR(配列番号8)、ICVGESLAR(配列番号9)、SCLGEALAR(配列番号10)、SCLGEPLAR(配列番号11)、VCVGEGLAR(配列番号12)、LCLGEPLAR(配列番号13)、ACLGEQLAK(配列番号14)、NCLGMR(配列番号15)、NCIGK(配列番号16)、YIDLLPTSLPHAVTCDIK(配列番号17)、ICVGEGLAR(配列番号18)、ACLGEPLAR(配列番号19)、CIGEVLAK(配列番号20)、GFCMFDMECHK(配列番号21)、ICLGEGIAR(配列番号22)、LCQNEGCK(配列番号23)、GCPSLSELWR(配列番号24)、EECALEIIK(配列番号25)、GCPSLAEHWK(配列番号26)、およびVFANPEDCAFGK(配列番号27)のうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項37に記載のキット。
【請求項43】
前記特徴的ペプチドは、ICAGEGLAR(配列番号7)、VCAGEGLAR(配列番号8)、YIDLLPTSLPHAVTCDIK(配列番号17)、ICVGEGLAR(配列番号18)、ACLGEPLAR(配列番号19)、CIGEVLAK(配列番号20)、GFCMFDMECHK(配列番号21)、およびICLGEGIAR(配列番号22)のうちの1つまたはそれ以上を含む、ヒト由来の2つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上のヒトタンパク質の濃度を求めるための請求項37に記載のキット。
【請求項44】
1つまたはそれ以上の標準化タンパク質に対する標識化された特徴的ペプチド試料を含み、当該標識化された特徴的ペプチド試料の特徴的ペプチドは、LCQNEGCK(配列番号23)、GCPSLSELWR(配列番号24)、EECALEIIK(配列番号25)のうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項43に記載のキット。
【請求項45】
前記特徴的ペプチドは、CIGETIGR(配列番号1)、CIGEIPAK(配列番号2)、CIGEELSK(配列番号3)、YCFGEGLAR(配列番号4)、FCLGESLAK(配列番号5)、ICLGESIAR(配列番号6)、ICAGEGLAR(配列番号7)、VCAGEGLAR(配列番号8)、ICVGESLAR(配列番号9)、SCLGEALAR(配列番号10)、SCLGEPLAR(配列番号11)、VCVGEGLAR(配列番号12)、LCLGEPLAR(配列番号13)、ACLGEQLAK(配列番号14)、NCLGMR(配列番号15)、およびNCIGK(配列番号16)のうちの1つまたはそれ以上を含む、マウス由来の2つまたはそれ以上のサンプル中の1つまたはそれ以上のマウスタンパク質の濃度を求めるための請求項37に記載のキット。
【請求項46】
1つまたはそれ以上の標準化タンパク質に対する標識化ペプチド試料を含み、当該標識化された特徴的ペプチド試料の特徴的ペプチドは、LCQNEGCK(配列番号23)、EECALEIIK(配列番号25)、GCPSLAEHWK(配列番号26)、およびVFANPEDCAFGK(配列番号27)のうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項45に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−538262(P2007−538262A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527484(P2007−527484)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/017799
【国際公開番号】WO2005/114700
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(503229742)アプレラ コーポレイション (8)
【Fターム(参考)】