説明

質量分析を実施する方法および装置

本発明は、重水素化合物を有する流体を含むサンプルを保存して処理する装置および方法を特徴とする。本発明の装置は、第1のチャンバと第2のチャンバとを画定するハウジングを備える。第1のチャンバは、高温まで加熱され、サンプルを受け入れて高温でサンプルの分解プロセスを実施する。第2のチャンバは、低温まで冷却され、第1のチャンバから重水素化分解サンプルを受け入れて、アナライトを単離するための1つまたは複数の分離ステップを実施する。装置はさらに、サンプルを収容して、分解サンプルを作製するために第1のチャンバに移すための導管手段を備える。導管手段は、サンプルを分離して少なくとも1つのアナライトを作製するために分解サンプルを第1のチャンバから第2のチャンバに移す。アナライトは、その重水素化形態を保存するために低温で維持される

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年7月31日に出願された米国仮特許出願第61/230,424号明細書「Method and Apparatus for Performing Mass Spectrometry」の優先権を主張するものであり、この特許の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、1つまたは複数の重水素化合物を有する流体を含む1つまたは複数のサンプルを保存して処理する装置および方法を目的とする。特に、本発明の実施形態は、質量スペクトル分析のために重水素標識化タンパク質の保存を特徴とする。
【背景技術】
【0003】
本発明を、以下のように定義された複数の用語に関連して説明する。
【0004】
本明細書で使用する時、用語「サンプル」は、広義で、さらなる情報が必要な物質の組成物を指す。例えば、この用語は、存在の有無、濃度、または形状が関心対象である1つまたは複数の群の化合物を意味するために分析、臨床、医学、または診断の意味で使用されるが、これらに限定されない。当該化合物は、アナライトと呼ばれることが多いが、情報が必要な1つまたは複数の化合物で、生物学的に活性または不活性な化合物、毒素、生物指標化合物、代謝生成物、天然由来の化合物、合成化合物、投与される薬剤、プロドラッグ、または薬剤候補とすることができる。
【0005】
クロマトグラフィーは、サンプルをその成分に分離する技術である。クロマトグラフィーは、移動相に溶解しているサンプルを固定相に通すステップを含む。移動相は、液体または気体のいずれかとすることができる。液体クロマトグラフィー(LC)は、液体を移動相として使用する。LCは、固定相が詰め込まれたカラムで行われ得る。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)は、サンプル液を高圧でカラムに通すLC技術である。
【0006】
「検出器」は、サンプルの測定を行う装置または計器の種類である。質量分析計は、荷電分子または分子フラグメントを作製するためにサンプル内の化合物をイオン化して、荷電分子または分子フラグメントの質量対電荷比を決定するための検出器である。用語LCMSは、質量分析(MS)が加わったLCを指す。
【0007】
水素/重水素交換質量分析(HXMS)は、質量スペクトル分析の特殊な形態である。HXMSでは、水素は重水素と交換され、重水素は質量分析計によって検出できる一種の標識としての働きをする。例えば、重水素と交換できる水素官能基を有するタンパク質は質量分析計を使用して測定できるが、これに限定されない。重水素は、水素の安定同位体であり、1つの陽子と1つの中性子とを含む。HXMSは、タンパク質構造を研究するのに使用される。
【0008】
水素は、普通の形に戻る前に、限られた期間、重水素の形で存在する。HPLC溶媒の100%H2O環境で重水素が水素に戻る「クエンチ状態」または半減期は、非常に短く、30〜120分程度である。
【0009】
本明細書で使用する時、用語「オンライン」は、サンプルが導管および容器の略閉流路内で1つのプロセスから別のプロセスに送られる時の分析シーケンスのランタイムで実施されるプロセスを指す。本明細書では、導管、パイプ、管、容器、カラム、接続金具、弁、検出器のこのような略閉流路を指すのに、用語「導管手段」を使用する。
【0010】
水素/重水素交換反応は、非常に温度の影響を受けやすい。温度が高いほど、交換反応が速くなる。重水素で標識化されたアナライトは、徐々に非標識になる。したがって、全ての処理ステップの温度は、重水素化サンプルを検出器に導入する前に交換反応の速度を遅らせて重水素標識を保存するために、重水素化サンプルの凝固温度に保たれなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
タンパク質およびペプチドサンプルは、1つまたは複数のフラグメントを作製するために分解プロセスを受けることが多い。これらの分解プロセスは、一般に、凝固点より高い温度の分解カラムで実施される場合のみ効率が良い。分解カラムは、固定化酵素を含む入口と出口とを有する容器である。酵素は、容器内に保持されている固体支持体に共有結合することで固定化される。10℃より高い温度で維持されている分解カラム内でオンライン分解プロセスを実施すると同時に、サンプルの凝固点で重水素化されたサンプルを保存することが好ましい。
【0012】
本発明の実施形態は、分析のために重水素化形態のタンパク質およびタンパク質分解物を保存して処理する装置および方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態は、サンプルを処理するための装置を目的とする。本明細書で使用する時、用語「サンプル」は、1つまたは複数の重水素化タンパク質を有する流体を含む1つまたは複数のサンプルを指す。本発明の装置は、少なくとも第1のチャンバと第2のチャンバとを画定する1つまたは複数の壁を有するハウジングを備える。第1のチャンバは、高温まで加熱される。第1のチャンバは、サンプルを受け入れて、高温でサンプルの分解プロセスを実施する。第2のチャンバは、低温まで冷却される。第2のチャンバは、第1のチャンバからサンプルを受け入れて、低温でさらに処理するためにアナライトを単離するための1つまたは複数の分離ステップを実施する。本発明の装置は、さらに、1つまたは複数の重水素化分解生成物を有する分解サンプルを作製するために、サンプルを収容してサンプルを第1のチャンバに移すための導管手段を備える。導管手段は、重水素化分解生成物を分離して少なくとも1つのアナライトを作製するために、分解サンプルを第1のチャンバから第2のチャンバに移す。アナライトは、その重水素化形態を保存するために低温で維持される。
【0014】
用語「高温」および「低温」は、互いに関連して使用される。
【0015】
用語「ハウジング」は、広義で、1つの単一構造体を指す。例えば、この構造体は、エンクロージャを形成する少なくとも1つの壁を有するキャビネットまたはボックスを備えるが、これらに限定されない。構造体は、部品を取り付けるための1つまたは複数のプラットフォームまたは取付板を備える。クロマトグラフィー技術では、この構造体は、HPLC系もしくはUPLC系、または他の分析機器構造に配置されるサンプルマネージャとして知られている部品であるのが好ましい。好適なサンプルマネージャは、プレート、バイアル、シリンジ、および/または他のサンプリング装置からの1つまたは複数のサンプルの注入を管理して、連続的に流れる移動相にサンプルを導入し、移動相がサンプルをLCカラムに運ぶ。
【0016】
用語「チャンバ」は、ハウジングチャンバの内部を意味する。チャンバは、少なくとも第1のチャンバと第2のチャンバとを形成する1つまたは複数の内壁によって画定される。第1および第2のチャンバを形成する1つまたは複数の壁は、固体の剛性構造体または半固体の非剛性構造体を備えることができる。例えば、壁は、金属またはガラスまたは複合材の板、硬質プラスチック、軟質プラスチックまたは複合材のシート、ファブリック、繊維状断熱材などを含むが、これらに限定されない。第1のチャンバと第2のチャンバを形成する1つまたは複数の壁は、断熱性に優れているのが好ましい。
【0017】
本明細書で使用する時、用語「1つまたは複数の分離ステップ」は、例えば、1つまたは複数のカラム内でのアナライトもしくはアナライトフラグメントの捕捉またはローディングおよび分析カラムでのさらなる分析分離などのクロマトグラフ分離ステップを指すが、これらに限定されない。これらのプロセスは、一般に、不要な物質を廃棄し、1つまたは複数のアナライトを含む可能性のある必要なサンプルを質量分析計などの1つまたは複数の検出器へと分流させる。好適な導管手段は、分解カラム、捕捉カラム、クロマトグラフ分離カラム、注入弁や切り替え弁を含む1つまたは複数の弁を含むが、これらに限定されない。
【0018】
本発明の一態様では、導管手段はさらに、冷却チャンバに向かう近位端と外側の検出器に向かう遠位端とを有する冷却スリーブで覆われた配管部分を備える。
【0019】
分解サンプルの分離が完了すると、導管手段は、少なくとも1つのアナライトを冷却スリーブで覆われた配管部分を介して第2のチャンバから検出器に送り、1つまたは複数の重水素化分解生成物を含む可能性のあるアナライトを保存する。冷却スリーブは、乾燥ガス、好ましくは乾燥窒素で冷却されて、第2のチャンバ内部の凝縮を最小限に抑えるようにする。導管手段はさらに、管の遠位端を検出器と流体連通させるための連結アセンブリを備える。
【0020】
本発明の一態様では、検出器は質量分析計である。本発明の範囲内では、赤外線分光法(IR)、ラマン分光法、核磁気共鳴分析法(NMR)などの他の検出方法も使用可能であると考えられる。
【0021】
本発明の一態様では、第1のチャンバの好適な高温は、分解カラムの酵素が適切な活性を示す最も低い温度、通常は約10℃に選択される。一態様では、第2のチャンバの低温は、サンプルの凝固温度に設定される。第1のチャンバの温度は、共溶媒、圧力効果、および塩があるために、サンプルの凝固点より低くなる可能性がある。温度は、凝固温度の−5℃〜+5℃の範囲とすることができる。
【0022】
本発明の一態様では、本発明の第1のチャンバは、ペルチェ(Peltier)ユニットおよび電気抵抗加熱装置を含む1つまたは複数の加熱装置によって加熱されることを特徴とする。
【0023】
別の態様では、第2のチャンバは、ペルチェ(Peltier)ユニット、熱質量体、ヒートシンク、抵抗温度検出器、断熱セル、および液体冷却システムを含む1つまたは複数の冷却装置によって冷却される。
【0024】
本発明の装置の一態様は、第1および第2のチャンバの温度を検知するための検知手段を備える。検知手段は、温度変化に応答して1つまたは複数の温度信号を生成する。本明細書で使用する時、用語「検知手段」は、電子機械的温度検知装置、温度計、サーモスタットなどを指す。
【0025】
本発明の装置の別の態様はさらに、制御手段を備える。制御手段は、検知手段とさらに第1および第2のチャンバに内蔵されている加熱装置および/または冷却装置と信号通信して、温度信号に応答する。本明細書で使用する時、用語「制御手段」は、当該技術分野で知られているコンピュータ処理ユニット(CPU)、パーソナルコンピューティングデバイス、サーバ、メインフレームコンピュータなどの類のコンピュータ式制御装置を指す。本明細書で使用する時、用語「信号通信」は、電気信号などの有線通信、または電磁、無線、光、もしくは赤外線伝送装置に見られるような無線通信を指す。制御手段は、加熱装置および/または冷却装置に命令信号を出す。
【0026】
本発明のさらなる実施形態は、上述した装置の製造方法および装置の使用を目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に従って製造された装置の一実施形態の概略図である。
【図2】図1に示された装置を使用して0℃での重水素化シトクロムcのオンライン分解によって得られたペプチドのUPLC分離の基準ピーク強度(BPI)クロマトグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1を参照して本発明を説明するが、図1および図1の説明は、本発明の好適な実施形態を示すものとする。当業者は、この好適な実施形態は本開示の教示から逸脱せずに修正および変更が可能であることは理解するであろう。
【0029】
図1には、概略的に全体が附番18の本発明の特徴を具現化した装置が示されている。装置18は、ハウジング20、導管手段26、制御手段60、検知手段56の主な要素を有する。ハウジング20は、第1のチャンバ22と第2のチャンバ24とを有する。
【0030】
第1のチャンバ22は、1つまたは複数のサンプルを受け入れて、高温でサンプルの分解プロセスを実施するためのチャンバであり、第2のチャンバは、第1のチャンバからサンプルを受け入れて、低温でのさらなる処理のためにアナライトを単離するための1つまたは複数の分離ステップを実施するためのチャンバである。
【0031】
導管手段26は、1つまたは複数の重水素化合物を有するサンプルを収容して、1つまたは複数の重水素化分解生成物を含む分解サンプルを作製するためにサンプルを第1のチャンバ22に移し、重水素化分解生成物を分離して存在すれば少なくとも1つのアナライトを作製するために分解サンプルを第1のチャンバ22から第2のチャンバ24に移すための手段であり、重水素化分解生成物とアナライトとは共に低温で維持される。
【0032】
制御手段60は、第1のチャンバ22および第2のチャンバ24の温度を調節するための手段であり、検知手段56とさらに第1のチャンバ22および第2のチャンバ24に内蔵されている加熱装置および/または冷却装置と信号通信して、1つまたは複数の温度信号に応答して加熱装置および/または冷却装置に命令信号を出す。
【0033】
第1のチャンバ22は、ペルチェユニットおよび電気抵抗加熱装置を含む第1のチャンバ22に内蔵されている1つまたは複数の加熱装置46によって、好ましくは、10℃より高い高温まで加熱される。
【0034】
第2のチャンバ24は、ペルチェユニット、熱質量体、ヒートシンク、抵抗温度検出器、断熱セル、および液体冷却システムを含む、第2のチャンバ24に内蔵されている1つまたは複数の冷却装置48によって、好ましくは、サンプルの凝固温度の5℃以内の低温まで冷却される。
【0035】
第1のチャンバ22および第2のチャンバ24の温度は、例えば、検知手段56および制御手段60によって監視され調節されるが、これに限定されない。検知手段56は、第1のチャンバ22および第2のチャンバ24の温度を検知して、温度変化に応答して1つまたは複数の温度信号を生成する。制御手段60は、検知手段56とさらに第1のチャンバ22および第2のチャンバ24に内蔵されている加熱装置46および冷却装置48と信号通信する。制御手段60は、検知手段56から受信した温度信号に応答して、加熱装置46および/または冷却装置48に命令信号を出す。
【0036】
導管手段26は、分解カラム28と、捕捉カラム30と、クロマトグラフ分離カラム32と、ハウジング20の上部に露出した注入ポート36を有する注入弁38と、切り替え弁40と、第2のチャンバ24に向かう近位端と検出器66に向かう遠位端とを有する冷却スリーブ54で覆われた配管部分52とを備える。分解カラム28は、高温で維持される第1のチャンバ22内に収容される。捕捉カラム30、クロマトグラフ分離カラム32、注入弁38、および切り替え弁40は、低温で維持される第2のチャンバ24内に収容される。
【0037】
1つまたは複数の重水素化タンパク質を有する流体を含むサンプルは、ハウジング20の上部に露出した注入ポート36を介して注入され、注入弁38を介して連続的に流れる移動相に送られて、移動相がサンプルを第1のチャンバ22内の分解カラム28まで運ぶ。サンプルは、1つまたは複数の重水素化分解生成物を含む分解サンプルを作製するために、高温の分解カラム28内で分解される。分解サンプルは、導管手段26によって第1のチャンバ22から第2のチャンバ24に移されて、捕捉カラム30にローディングされる。サンプル内の不要な物質は、切り替え弁40を介して捕捉カラム30から廃棄に向けられ、1つまたは複数のアナライトを含む可能性のある必要なサンプルは、分解サンプル内の個々の化合物を分離するために切り替え弁40を介してクロマトグラフ分離カラム32へと向けられる。ローディングおよび分離のプロセスは、重水素化分解生成物を保存するために低温で実施される。
【0038】
分解サンプルの分離が完了すると、1つまたは複数の重水素化分解生成物を含む可能性のある少なくとも1つのアナライトが作製される。アナライトは、導管手段26を介して、第2のチャンバ24から検出器66への冷却スリーブ54で覆われた配管部分52に送られる。冷却スリーブ54は、乾燥ガス、好ましくは、乾燥窒素によって冷却されて、第2のチャンバ24内部の凝縮を最小限に抑えて、検出器66に接続された配管52における重水素の損失量を制限するようにする。検出器66は、質量分析計であるのが好ましい。
【0039】
さらに、図2に示された以下の実施例に関して、本発明の装置および方法を説明する。
【0040】
実施例
図2は、図1に示されている装置によって得られたシトクロムcのペプチドのUPLC分離のBPIクロマトグラムを示す図である。図2に示されているクロマトグラム上の1、2、3および4で表わされたクロマトグラフのピークは、シトクロムcの4つの異なる部分からなる4つの代表的なペプチド、(1)ペプチド1−10GDVEKGKKIF、(2)ペプチド37−46GRKTGQAPGF、(3)ペプチド67−82YLENPKKYIPGTKMIF、および(4)ペプチド95−104IAYLKKATNEを示している。ペプチドは、重水素化シトクロムcのオンライン分解の結果生じたもので、全てのペプチドは、0℃で3.5分の溶出時間内に含まれた。実験結果は、本発明の装置がHPLCシステムより十分にペプチドを分離することができると同時に、従来の氷浴で冷却したHPLCシステムを使用して得られるのと同じ重水素結合情報を提供することができることを示している。
【0041】
本発明は特定の実施形態に関して詳細に示され説明されているが、当業者は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の精神および範囲から逸脱せずに、形態および細部の種々の変更がなされてもよいことは理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の重水素化合物を有する流体を含む1つまたは複数のサンプルを処理するための装置であって、
a)少なくとも第1のチャンバと第2のチャンバとを画定する1つまたは複数の壁を有するハウジングであって、前記第1のチャンバが前記1つまたは複数のサンプルを受け入れて高温で前記サンプルの分解プロセスを実施するためチャンバであり、前記第2のチャンバが前記第1のチャンバから前記サンプルを受け入れて低温でさらに処理するためにアナライトを単離するための1つまたは複数の分離ステップを実施するためのチャンバであるハウジングと、
b)1つまたは複数の重水素化合物を有する前記サンプルを収容して、1つまたは複数の重水素化分解生成物を含む分解サンプルを作製するために前記サンプルを前記第1のチャンバに移し、前記1つまたは複数の重水素化分解生成物を分離して存在すれば少なくとも1つのアナライトを作製するために前記分解サンプルを前記第1のチャンバから前記第2のチャンバに移すための導管手段であって、前記重水素化分解生成物とアナライトとを保存するために共に前記低温で維持される導管手段とを備える、装置。
【請求項2】
前記導管手段が、前記導管手段を前記低温で維持して前記重水素化分解生成物とアナライトとを保存するための冷却スリーブで、前記重水素化分解生成物およびアナライトのうちの少なくとも一方を前記第2のチャンバから検出器に送る、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記検出器が質量分析計である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記導管手段が、前記冷却スリーブ内に配管部分を有し、前記配管が、前記重水素化分解生成物とアナライトとを前記検出器内に入れるために前記第2のチャンバに向かう近位端と前記検出器に向かう遠位端とを有する、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
導管手段の前記配管の前記遠位端を前記検出器と流体連通させるための連結アセンブリをさらに備える、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記導管手段が、少なくとも1つの分解カラムを備え、前記分解カラムが、前記第1のチャンバ内で導管手段と流体連通する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記導管手段が、前記ハウジングの上部に露出した注入ポートを有する注入弁を含む1つまたは複数の弁を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記高温が10℃より高い、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記低温が、前記サンプルの凝固温度の5°以内に選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記低温が、−5℃〜5℃の範囲内である、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記第2のチャンバが、ペルチェユニット、熱質量体、ヒートシンク、抵抗温度検出器、断熱セル、および液体冷却システムを含む1つまたは複数の冷却装置によって冷却される、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記第1のチャンバが、ペルチェユニットおよび電気抵抗加熱装置を含む1つまたは複数の加熱装置によって加熱される、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記冷却スリーブが、前記第2のチャンバ内部の凝縮を最小限に抑えて前記検出器に接続された前記配管における重水素の損失量を制限するために乾燥ガスで冷却される、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記導管手段が、前記導管手段を前記低温で維持して前記重水素化合物とアナライトとを保存するための冷却スリーブで、前記重水素化分解生成物およびアナライトのうちの少なくとも一方を前記第2のチャンバから検出器に送り、前記窒素雰囲気が前記導管手段を冷却するための前記スリーブ内で循環される、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記第2のチャンバが、少なくとも1つの分解生成物をクロマトグラフィーで分離するために、少なくとも1つの分離カラムを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記第2のチャンバが、分解サンプルから不要な物質を捕捉して除去するために、少なくとも1つの捕捉カラムを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記第1のチャンバおよび前記第2のチャンバのうちの少なくとも一方の温度を検知して、温度変化に応答して1つまたは複数の温度信号を生成するための検知手段をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記第1および第2のチャンバの温度を調節するための制御手段であって、前記検知手段とさらに前記第1および第2のチャンバに内蔵されている前記加熱装置および/または冷却装置と信号通信して、前記1つまたは複数の温度信号に応答して、前記加熱装置および/または冷却装置に命令信号を出す制御手段をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
1つまたは複数の重水素化合物を有する流体を含む1つまたは複数のサンプルを処理する方法であって、
a)ハウジングと導管手段とを有する装置を提供するステップであって、
1)前記ハウジングが、少なくとも第1のチャンバと第2のチャンバとを画定する1つまたは複数の壁を有するハウジングであって、前記第1のチャンバが前記1つまたは複数のサンプルを受け入れて高温で前記サンプルの分解プロセスを実施するためのチャンバであり、前記第2のチャンバが前記第1のチャンバから前記サンプルを受け入れて低温でさらに処理するためにアナライトを単離するための1つまたは複数の分離ステップを実施するためのチャンバであり、
2)前記導管手段が、1つまたは複数の重水素化合物を有する前記サンプルを収容して、1つまたは複数の重水素化分解生成物を有する分解サンプルを作製するために前記サンプルを前記第1のチャンバに移し、前記1つまたは複数の重水素化分解生成物を分離して少なくとも1つのアナライトを作製するために前記1つまたは複数の重水素化分解生成物を有する前記分解サンプルを前記第1のチャンバから前記第2のチャンバに移すための導管手段であり、前記1つまたは複数の重水素化分解生成物とアナライトとを保存するために前記重水素化分解生成物とアナライトとが前記低温で維持される、装置を提供するステップと、
b)1つまたは複数の重水素化合物を有するサンプルを受け入れて、1つまたは複数の重水素化分解生成物を有する分解サンプルを作製して、1つまたは複数の重水素化分解生成物を分離し、分析のための少なくとも1つのアナライトを作製するように前記装置を操作するステップとを含む、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2013−501218(P2013−501218A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522884(P2012−522884)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/042241
【国際公開番号】WO2011/014372
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(509131764)ウオーターズ・テクノロジーズ・コーポレイシヨン (46)
【Fターム(参考)】