説明

質量分析サンプルの調製方法、リボ核酸のイオン化方法、リボ核酸の質量分析方法、及び細胞由来の低分子リボ核酸の質量分析方法

【課題】
サブピコモルオーダの濃度のRNAの質量分析を可能とする質量分析サンプルの調製方法を提供する。
【解決手段】
10乃至50mg/mlの濃度で3-ヒドロキシピコリン酸を含むマトリックス溶液をサンプルプレート上に供給し乾燥させるステップS106、マトリックス溶液が乾燥した部分にマトリックス溶液を更に供給し乾燥させるステップS107、マトリックス溶液が2回供給され乾燥した部分にリボ核酸を含むサンプル溶液を供給し乾燥させるステップS108、及びサンプル溶液が乾燥した部分にクエン酸アンモニウムを含む添加剤溶液を供給し乾燥させるステップS109を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は質量分析技術に関し、特に質量分析サンプルの調製方法、リボ核酸のイオン化方法、リボ核酸の質量分析方法、及び細胞由来の低分子リボ核酸の質量分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マトリックス支援レーザ脱離イオン化法(MALDI: Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization)は生体分子等の高分子のイオン化が可能であるため、注目を集めている(例えば、特許文献1参照。)。さらに近年はMALDIによってデオキシリボ核酸(DNA)をイオン化し、飛行時間型質量分析法(TOF-MS: Time of Flight Mass Spectrometry)によってDNAを検出し、高い精度で解析する試みがされている。一方、極微量のリボ核酸(RNA)をMALDI-TOF-MSで検出するのは困難であるとされ、1×10-12molのRNAを検出したとの報告があるのみである。近年、非コードRNA(ncRNA: non-coding RNA)の機能解明の必要性が高まっているが、ncRNAはサブピコモルからフェムトモルオーダでしか臓器等から回収できず、MALDI-TOF-MSによる解析は不可能であった。そのため、サブピコモルオーダ以下のRNAをMALDI-TOF-MSで検出するための技術の確立が望まれていた。
【特許文献1】特開2006-196190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、サブピコモルオーダの濃度のリボ核酸の質量分析を可能とする質量分析サンプルの調製方法、リボ核酸のイオン化方法、リボ核酸の質量分析方法、及び細胞由来の低分子リボ核酸の質量分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の特徴は、(イ)10乃至50mg/mlの濃度で3-ヒドロキシピコリン酸を含むマトリックス溶液をサンプルプレート上に供給し乾燥させるステップと、(ロ)マトリックス溶液が乾燥した部分にマトリックス溶液を更に供給し乾燥させるステップと、(ハ)マトリックス溶液が2回供給され乾燥した部分にリボ核酸を含むサンプル溶液を供給し乾燥させるステップと、(ニ)サンプル溶液が乾燥した部分にクエン酸アンモニウムを含む添加剤溶液を供給し乾燥させるステップとを含む質量分析サンプルの調製方法であることを要旨とする。
【0005】
本発明の第2の特徴は、(イ)10乃至50mg/mlの濃度で3-ヒドロキシピコリン酸を含むマトリックス溶液をサンプルプレート上に供給し乾燥させるステップと、(ロ)マトリックス溶液が乾燥した部分にリボ核酸を含むサンプル溶液を供給し、さらにクエン酸アンモニウムを含む添加剤溶液を供給して乾燥させるステップとを含む質量分析サンプルの調製方法であることを要旨とする。
【0006】
本発明の第3の特徴は、(イ)10乃至50mg/mlの濃度で3-ヒドロキシピコリン酸を含むマトリックス溶液をサンプルプレート上に供給し乾燥させるステップと、(ロ)マトリックス溶液が乾燥した部分にマトリックス溶液を更に供給し乾燥させるステップと、(ハ)マトリックス溶液が2回供給され乾燥した部分にリボ核酸を含むサンプル溶液を供給し乾燥させるステップと、(ニ)サンプル溶液が乾燥した部分にクエン酸アンモニウムを含む添加剤溶液を供給し乾燥させるステップと、(ホ)添加剤溶液が乾燥した部分にレーザを照射し、リボ核酸のプロトン脱離イオンを生成させるステップとを含むリボ核酸のイオン化方法であることを要旨とする。
【0007】
本発明の第4の特徴は、(イ)10乃至50mg/mlの濃度で3-ヒドロキシピコリン酸を含むマトリックス溶液をサンプルプレート上に供給し乾燥させるステップと、(ロ)マトリックス溶液が乾燥した部分にリボ核酸を含むサンプル溶液を供給し、さらにクエン酸アンモニウムを含む添加剤溶液を供給して乾燥させるステップと、(ハ)添加剤溶液が乾燥した部分にレーザを照射し、リボ核酸のプロトン脱離イオンを生成させるステップとを含むリボ核酸のイオン化方法であることを要旨とする。
【0008】
本発明の第5の特徴は、(イ)10乃至50mg/mlの濃度で3-ヒドロキシピコリン酸を含むマトリックス溶液をサンプルプレート上に供給し乾燥させるステップと、(ロ)マトリックス溶液が乾燥した部分にマトリックス溶液を更に供給し乾燥させるステップと、(ハ)マトリックス溶液が2回供給され乾燥した部分にリボ核酸を含むサンプル溶液を供給し乾燥させるステップと、(ニ)サンプル溶液が乾燥した部分にクエン酸アンモニウムを含む添加剤溶液を供給し乾燥させるステップと、(ホ)添加剤溶液が乾燥した部分にレーザを照射し、リボ核酸のプロトン脱離イオンを生成させるステップと、(ヘ)リボ核酸のプロトン脱離イオンの飛行時間を測定し、リボ核酸のプロトン脱離イオンの質量電荷比を測定するステップとを含むリボ核酸の質量分析方法であることを要旨とする。
【0009】
本発明の第6の特徴は、(イ)10乃至50mg/mlの濃度で3-ヒドロキシピコリン酸を含むマトリックス溶液をサンプルプレート上に供給し乾燥させるステップと、(ハ)マトリックス溶液が乾燥した部分にリボ核酸を含むサンプル溶液を供給し、さらにクエン酸アンモニウムを含む添加剤溶液を供給して乾燥させるステップと、(ニ)添加剤溶液が乾燥した部分にレーザを照射し、リボ核酸のプロトン脱離イオンを生成させるステップと、(ホ)リボ核酸のプロトン脱離イオンの飛行時間を測定し、リボ核酸のプロトン脱離イオンの質量電荷比を測定するステップとを含むリボ核酸の質量分析方法であることを要旨とする。
【0010】
本発明の第7の特徴は、(イ)細胞から低分子リボ核酸を抽出するステップと、(ロ)10乃至50mg/mlの濃度で3-ヒドロキシピコリン酸を含むマトリックス溶液をサンプルプレート上に供給し乾燥させるステップと、(ハ)マトリックス溶液が乾燥した部分にマトリックス溶液を更に供給し乾燥させるステップと、(ニ)マトリックス溶液が2回供給され乾燥した部分に低分子リボ核酸を含むサンプル溶液を供給し乾燥させるステップと、(ホ)サンプル溶液が乾燥した部分にクエン酸アンモニウムを含む添加剤溶液を供給し乾燥させるステップと、(ヘ)添加剤溶液が乾燥した部分にレーザを照射し、低分子リボ核酸のプロトン脱離イオンを生成させるステップと、(ト)低分子リボ核酸のプロトン脱離イオンの飛行時間を測定し、低分子リボ核酸のプロトン脱離イオンの質量電荷比を測定するステップとを含む細胞由来の低分子リボ核酸の質量分析方法であることを要旨とする。
【0011】
本発明の第8の特徴は、(イ)細胞から低分子リボ核酸を抽出するステップと、(ロ)10乃至50mg/mlの濃度で3-ヒドロキシピコリン酸を含むマトリックス溶液をサンプルプレート上に供給し乾燥させるステップと、(ハ)マトリックス溶液が乾燥した部分に低分子リボ核酸を含むサンプル溶液を供給し、さらにクエン酸アンモニウムを含む添加剤溶液を供給して乾燥させるステップと、(ニ)添加剤溶液が乾燥した部分にレーザを照射し、低分子リボ核酸のプロトン脱離イオンを生成させるステップと、(ホ)低分子リボ核酸のプロトン脱離イオンの飛行時間を測定し、低分子リボ核酸のプロトン脱離イオンの質量電荷比を測定するステップとを含む細胞由来の低分子リボ核酸の質量分析方法であることを要旨とする。
【0012】
本発明にかかるリボ核酸の塩基長としては、好ましくは5-50塩基、更に好ましくは10-40塩基である。リボ核酸としては、従来知られた方法で有機合成されたリボ核酸、あるいは細胞から抽出した天然由来のリボ核酸のいずれかを問わない。細胞としては、植物由来の細胞であってもよいし、動物由来の細胞であってもよい。これらの細胞からのリボ核酸の抽出方法は、AGPC(acid guanidinium thiocyanate-phenol-chloroform extraction)法など、当業者が適宜選択できる。天然由来のリボ核酸としては、rRNA、tRNA、mRNAが挙げられる。特にマイクロRNAをはじめとする、塩基長が15-35塩基程度の低分子リボ核酸を解析対象とすることで、後述するような機能性RNAの解析を可能とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、サブピコモルオーダの濃度のリボ核酸の質量分析を可能とする質量分析サンプルの調製方法、リボ核酸のイオン化方法、リボ核酸の質量分析方法、及び細胞由来の低分子リボ核酸の質量分析方法を提供可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
さて、ヒトゲノム解析の成果として特筆すべきことは、ヒトゲノムの98%にわたるタンパク質をコードしない非翻訳領域からの大量の転写産物が見つかったことである。非翻訳領域の2/3からncRNAが転写されていると見積もられている。ncRNAはタンパク質に翻訳されることなく存在し機能性RNAとして振舞うことが、最近の研究で明らかになりつつある。生命の複雑さとゲノムに存在する非翻訳領域の増加には相関が見られ、高度な生命現象の源はncRNAが担っている可能性が指摘されている。
【0016】
マイクロRNA (miRNA)は、ncRNAの中で最も解析が進んでいる機能性の低分子RNAである。miRNAは特定のmRNAの3'非翻訳領域に相補的に結合し、mRNAの翻訳抑制及びRNA干渉(RNAi: RNA interference)による分解を誘導し、発生のタイミングや分化の方向性を決定する重要な分子として注目されている。最近の研究で、ヒトにはmiRNAが1000個程度存在し、それぞれのmiRNAが複数の遺伝子の翻訳抑制に関わっていることが明らかとなった。ヒトのタンパク質遺伝子の30%がmiRNAによって制御されているとの見積もりもある。また、核内に存在するncRNAがDNAのメチル化やクロマチン修飾を誘導し、エピジェネティックな遺伝子発現の制御にも大きな役割を果たしていることが次第に明らかになりつつある。このように、ncRNAは遺伝子発現において翻訳制御のみならず、転写レベルでの制御にも積極的に関与していることが明らかとなり、<DNA→RNA→タンパク質>という古典的なセントラルドグマが大きく塗り替えられようとしている。大量に存在するncRNAの中には未知の機能性RNAが多く含まれていると考えられる。複雑な生命活動を分子レベルで理解するためには、新規に発見される機能性RNAの探索と解析が重要である。
【0017】
通常、微量なRNAの解析法としては、逆転写とポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を組み合わせたcDNAの解析が一般的である。しかしランダムプライミング及びリンカーライゲーションの効率のばらつきや、cDNAの合成量のバイアスが生じるため、PCRを用いる解析法は定量性に欠ける。さらにPCRを用いる解析法は、末端構造や塩基修飾など、機能性RNAが有する質的な情報を読み取ることができない。またクローニング及びシーケンスにも時間がかかる。一方、RNAを蛍光又はラジオアイソトープ等で標識し、ハイブリダイゼーションを基本原理とするマイクロアレイ技術によって解析する試みもなされている。しかし標識効率やハイブリダイゼーション効率にばらつきが生じるため、マイクロアレイ技術による解析結果も潜在的な誤差を含みうる。
【0018】
そこで発明者は、四重極イオントラップ型MALDI-TOF-MS装置によるRNAの解析を試みた。MALDI-TOF-MS装置は、図1に示すように、質量分析サンプルからイオンを生成させるイオン化部11、イオン化部11で生じたイオンを一時的に保持するイオントラップ部12、及びイオントラップ部12から放出されるイオンを飛行させ、イオンの飛行時間を検出する飛行時間分析部13を備える。
【0019】
イオン化部11はパルス状のレーザを発するレーザ光源112、及びレーザが照射される質量分析サンプルを保持するサンプルプレート111を備える。レーザが照射されると、質量分析サンプルに含まれる検体がイオン化され、イオン化部11内の空間に放出される。イオン化部11は、放出されたイオンを集束するイオンレンズ113をさらに備える。
【0020】
イオントラップ部12は、第1のエンドキャップ電極121、リング電極124、及び第2のエンドキャップ電極123を備える。ここで第1のエンドキャップ電極121、リング電極124、及び第2のエンドキャップ電極123で囲まれた空間をイオントラップ空間122とする。第1のエンドキャップ電極121及び第2のエンドキャップ電極123のそれぞれには、イオンレンズ113で集束されたイオンが通過可能な開口が設けられている。イオン化部11で生じたイオンは第1のエンドキャップ電極121に設けられた開口を通ってイオントラップ空間122に入射する。第1のエンドキャップ電極121、リング電極124、及び第2のエンドキャップ電極123はイオントラップ空間122に四重極電場を形成し、入射してきたイオンをイオントラップ空間122内に保持する。設定により、イオントラップ空間122内に保持された複数種類のイオンから単一の種類のイオンを選択することが可能である。またイオントラップ空間122内に保持されたイオンにアルゴン(Ar)ガス等を衝突させ、衝突誘起解離法(CID: Collision Induced Dissociation)によりイオンを開裂させることも可能である。ここで、開裂される前のイオンをプリカーサイオン、開裂したイオンをプロダクトイオンと呼ぶ。
【0021】
イオンが負イオンである場合、第1のエンドキャップ電極121に負の電圧を印加し、第2のエンドキャップ電極123に正の電圧を印加すると、イオンは第2のエンドキャップ電極123に向かって加速し、第2のエンドキャップ電極123に設けられた開口から飛行時間分析部13に入射する。飛行時間分析部13は、イオンを反射するためのリフレクタ電極125、及びイオンを検出する検出器131を備える。飛行時間分析部13の内部において、低質量電荷比のイオンは高速に飛行し、高質量電荷比のイオンは低速に飛行する。したがって、検出器131がイオンを検出したタイミングと検出強度に基づいて、イオンのマススペクトルを生成することが可能となる。イオン化部11、イオントラップ部12、及び飛行時間分析部13には制御部14が接続されている。制御部14は、イオンレンズ113、第1のエンドキャップ電極121、リング電極124、第2のエンドキャップ電極123、及びリフレクタ電極125等を制御する。
【0022】
ここで発明者は、極微量のRNAをMALDI-TOF-MS装置で高い感度で検出するには、10乃至50mg/mlの濃度で下記化学式(1)の3-ヒドロキシピコリン酸を含むマトリックス溶液をサンプルプレート上に供給し乾燥させ、マトリックス溶液が乾燥した部分にマトリックス溶液を更に供給し乾燥させ、マトリックス溶液が2回供給され乾燥した部分にRNAを含むサンプル溶液を供給し乾燥させ、サンプル溶液が乾燥した部分にクエン酸アンモニウムを含む添加剤溶液を供給し乾燥させることを含む質量分析サンプルの第1の調製方法が有効であることを見いだした。
【化1】

【0023】
実施の形態に係る質量分析サンプルの第1の調製方法で得られる質量分析サンプルをMALDI-TOF-MS装置で分析すれば、サブピコモルからフェムトモルオーダのRNAを検出することが可能となる。下記化学式(2)の2,4,6-トリヒドロキシアセトフェノンをマトリックスとして用い、マトリックス溶液、サンプル溶液、及び添加剤溶液を順次滴下し乾燥させることをしなかった従来のDNAの質量分析サンプルの調製方法と比較して、実施の形態に係る質量分析サンプルの第1の調製方法によれば、MALDI-TOF-MS装置を用いて16倍の感度でRNAのプロトン脱離イオン([M-H]-)を検出可能となる。
【化2】

【0024】
また従来、MALDI-TOF-MS法でRNAの2価のプロトン脱離イオン([M-2H]2-)を検出するのは困難であるとされていた。これに対し、実施の形態に係る質量分析サンプルの第1の調製方法によれば、MALDI-TOF-MS装置を用いてフェムトモルオーダのRNAから2価のプロトン脱離イオンを生成し、高い感度で検出することが可能となる。さらに実施の形態に係る質量分析サンプルの第1の調製方法においては、プロトン脱離イオン以外の塩付加イオン([M-2H+Na]-等)の生成を抑制する添加剤として、下記化学式(3)のクエン酸アンモニウムを含む添加剤溶液が添加される。したがって、RNAのプロトン脱離イオンを高い信号対雑音(SN: Signal to Noise)比で検出することが可能となる。
【化3】

【0025】
また発明者は、10乃至50mg/mlの濃度で3-ヒドロキシピコリン酸を含むマトリックス溶液をサンプルプレート上に供給し乾燥させ、マトリックス溶液が乾燥した部分にリボ核酸を含むサンプル溶液を供給し、さらにクエン酸アンモニウムを含む添加剤溶液を供給して乾燥させることを含む質量分析サンプルの第2の調製方法も、RNAをMALDI-TOF-MS装置で高い感度で検出するために有効であることを見いだした。質量分析サンプルの第2の調製方法を用いてMALDI-TOF-MS装置で検出可能なRNAの物質量の下限は、質量分析サンプルの第1の調製方法を用いた場合を上回る。しかし、従来の質量分析サンプルの調製方法を用いた場合よりも、質量分析サンプルの第2の調製方法を用いて8倍の感度でRNAのプロトン脱離イオンをMALDI-TOF-MS装置で検出可能となる。
【0026】
(第1の実施例)
図2に示すフローチャートを参照して、第1の実施例に係る質量分析サンプルの調製方法について説明する。
【0027】
(a) ステップS101で、質量分析グレードの3-ヒドロキシピコリン酸(フルカ社)、液体クロマトグラフィ質量分析グレードのアセトニトリル(和光純薬工業株式会社)、クエン酸アンモニウム(フルカ社)、及びトリフルオロ酢酸(ピアス社)を用意した。ステップS102でトリフルオロ酢酸を体積濃度が0.1%(v/v)となるよう超純水で希釈した。次にステップS103で25mgの3-ヒドロキシピコリン酸を、900μlのトリフルオロ酢酸溶液(体積濃度0.1%)と100μlのアセトニトリル(濃度100%)の混合液で溶解し、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が25mg/mlのマトリックス溶液を調製した。
【0028】
(b) ステップS104で10mgのクエン酸アンモニウムを1mlのトリフルオロ酢酸溶液(体積濃度0.1%)で溶解し、クエン酸アンモニウムの濃度が10mg/mlの添加剤溶液を調製した。ステップS105で配列がAUCAUCAUCAUCAUCAUCGの有機合成RNAを用意した。また電気抵抗率が18×106Ω・cm以上の超純水を用意した。次に有機合成RNAを超純水で溶解し、有機合成RNAの濃度がそれぞれ50×10-9mol/l、25×10-9mol/l、12.5×10-9mol/l、6.25×10-9mol/lの4種類のサンプル溶液を調製した。
【0029】
(c) ステップS106で図3に示すサンプルプレート111を用意した。サンプルプレート111には、株式会社島津製作所製のステンレスからなる386穴サンプルプレート等が使用可能である。次にサンプルプレート111上に0.5μlのマトリックス溶液を滴下し自然乾燥させて、図4に示すようにサンプルプレート111上に結晶状の第1マトリックス層21を形成させた。次にステップS107で第1マトリックス層21上に0.5μlのマトリックス溶液をさらに滴下した。滴下により第1のマトリックス層21は溶解した。その後、自然乾燥により、図5に示すようにサンプルプレート111上に結晶状の第2マトリックス層22が形成された。
【0030】
(d) ステップS108で第2マトリックス層22上に4種類のサンプル溶液のいずれかを0.5μl滴下した。滴下により、第2のマトリックス層22は溶解した。その後、自然乾燥により、図6に示すようにサンプルプレート111上にサンプル含有層23が形成された。次にステップS109でサンプル含有層23上に0.5μlの添加剤溶液を滴下した。滴下により、サンプル含有層23は溶解した。その後、自然乾燥により、図7に示すようにサンプルプレート111上にサンプル添加剤含有層24が形成され、第1の実施例に係る質量分析サンプルを得た。
【0031】
得られた質量分析サンプルを、株式会社島津製作所製の四重極イオントラップ型MALDI-TOF-MS装置で質量分析した。MALDI-TOF-MS装置の測定パラメータは、チューニングモードをネガティブに、スペクトルデータの取り込み周期を5Hzに設定した。またサンプル添加剤含有層24に照射するレーザの照射強度を調節するパラメータであるパワーを115〜120(無単位)に、スペクトルデータの積算数を200に、レーザのショット回数を2回に、測定レンジを高(High)に設定した。
【0032】
図8はサンプル溶液中の有機合成RNAの濃度が50×10-9mol/lであり、サンプルプレート111上における有機合成RNAの全物質量が25×10-15molである場合のマススペクトルを示す。図9はサンプル溶液中の有機合成RNAの濃度が25×10-9mol/lであり、サンプルプレート111上における有機合成RNAの全物質量が12.5×10-15molである場合のマススペクトルを示す。図10はサンプル溶液中の有機合成RNAの濃度が12.5×10-9mol/lであり、サンプルプレート111上における有機合成RNAの全物質量が6.25×10-15molである場合のマススペクトルを示す。図11はサンプル溶液中の有機合成RNAの濃度が6.25×10-9mol/lであり、サンプルプレート111上における有機合成RNAの全物質量が3.13×10-15molである場合のマススペクトルを示す。
【0033】
図8乃至図11に示すマススペクトルの質量電荷比(m/z)が5,925の位置に、有機合成RNAの1価のプロトン脱離イオンを示すピークが観察された。さらに図11に示すように、サンプルプレート111上における有機合成RNAの全物質量が3.13×10-15molであっても、有機合成RNAの1価のプロトン脱離イオンのピークはSN比5以上で観察可能であった。また図8乃至図10に示すように、マススペクトルの質量電荷比が2,962の位置に、有機合成RNAの2価のプロトン脱離イオンが観察された。図10に示すように、サンプルプレート111上における有機合成RNAの全物質量が6.25×10-15molであっても、有機合成RNAの2価のプロトン脱離イオンのピークはSN比5以上で観察可能であった。
【0034】
従来、MALDI-TOF-MS法で検出可能なRNAの物質量の下限は50×10-15mol程度であるとされていた。これに対し、第1の実施例に係る質量分析サンプルの調整法によれば、従来と比較して1/16の物質量のRNAを高い感度で検出可能であることが示された。また従来、MALDI-TOF-MS法では2価のプロトン脱離イオンを検出するのは困難であるとされていた。これに対し、第1の実施例に係る質量分析サンプルの調整法によれば、RNAの2価のプロトン脱離イオンも高い感度で検出可能であることが示された。2価のプロトン脱離イオンは、1価のプロトン脱離イオンと比較して質量電荷比が半分である。したがって2価のプロトン脱離イオンが検出可能となることにより、MALDI-TOF-MS法で高分子を検出することも可能となる。
【0035】
(第2の実施例)
超純水を溶媒とし、3-ヒドロキシピコリン酸を50mg/ml、25mg/ml及び10mg/mlのそれぞれの濃度で、アセトニトリルを50%(v/v)、25%(v/v)及び10%(v/v)のそれぞれの濃度で含む9種のマトリックス溶液を調整した。また超純水を溶媒とし、クエン酸アンモニウムの濃度が50mg/ml、25mg/ml及び10mg/mlの3種の添加剤溶液を調整した。なお9種のマトリックス溶液及び3種の添加剤溶液のそれぞれは、体積濃度0.1%(v/v)でトリフルオロ酢酸を含む。
【0036】
次に配列がAUCAUCAUCAUCAUCGの16塩基有機合成RNA、配列がAUCAUCAUCAUCAUCAUCGの19塩基有機合成RNA、及び配列がpUGGAGUGUGACAAUGGUGUUUGUの23塩基有機合成RNAを準備した。次に16塩基有機合成RNA、19塩基有機合成RNA、及び23塩基有機合成RNAをそれぞれ濃度が50×10-9mol/lとなるよう同一の超純水に溶解させ、サンプル溶液の原液を得た。さらにサンプル溶液の原液を希釈し、16塩基有機合成RNA、19塩基有機合成RNA、及び23塩基有機合成RNAのそれぞれ濃度が50×10-9mol/l、25×10-9mol/l、12.5×10-9mol/l及び6.25×10-9mol/lの4種類のサンプル溶液を得た。
【0037】
その後、9種類のマトリックス溶液、4種類のサンプル溶液、及び3種の添加剤溶液の組み合わせを用いて、第1の実施例に係る質量分析サンプルの調製方法と同様に第2の実施例に係る質量分析サンプルを調整した。なお一つの質量分析サンプルを調製する際に使用したサンプル溶液は0.5μlである。そして第1の実施例と同じ条件を用いて第2の実施例に係る質量分析サンプルを四重極イオントラップ型MALDI-TOF-MS装置で分析した。
【0038】
図12に示すように、マトリックス溶液におけるアセトニトリルの濃度が10%(v/v)である場合、マトリックス溶液における3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が25mg/ml及び50mg/ml、添加剤溶液におけるクエン酸アンモニウムの濃度が10mg/ml、25mg/ml及び50mg/mlの時に、サンプルプレート上のRNAの全物質量が6.25×10-15molであってもRNAの1価のプロトン脱離イオンを示すピークをSN比3以上で検出可能であった。
【0039】
図13はアセトニトリルの濃度が10%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が25mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が10mg/mlの時のマススペクトルである。図14はアセトニトリルの濃度が10%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が25mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が25mg/mlの時のマススペクトルである。図15はアセトニトリルの濃度が10%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が25mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が50mg/mlの時のマススペクトルである。
【0040】
図16はアセトニトリルの濃度が10%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が50mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が10mg/mlの時のマススペクトルである。図17はアセトニトリルの濃度が10%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が50mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が25mg/mlの時のマススペクトルである。図18はアセトニトリルの濃度が10%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が50mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が50mg/mlの時のマススペクトルである。図13乃至図18に示すマススペクトルのいずれにおいても、19塩基有機合成RNA及び16塩基有機合成RNAのそれぞれの1価のプロトン脱離イオンを示すピークが観察されている。
【0041】
また図12、図13、図16に示すように、マトリックス溶液におけるアセトニトリルの濃度が10%(v/v)、添加剤溶液におけるクエン酸アンモニウムの濃度が10mg/mlである場合、マトリックス溶液における3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が10mg/ml、25mg/ml及び50mg/mlの時に、サンプルプレート上のRNAの全物質量が6.25×10-15molであってもRNAの1価のプロトン脱離イオンを示すピークをSN比3以上で検出可能であった。
【0042】
図19はアセトニトリルの濃度が10%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が10mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が10mg/mlの時のマススペクトルである。図13、図16、図19に示すマススペクトルのいずれにおいても、19塩基有機合成RNA及び16塩基有機合成RNAのそれぞれの1価のプロトン脱離イオンを示すピークが観察されている。
【0043】
また図12、図13、図14、図15に示すように、マトリックス溶液における3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が25mg/ml、アセトニトリルの濃度が10%(v/v)である場合、添加剤溶液におけるクエン酸アンモニウムの濃度が10mg/ml、25mg/ml、50mg/mlの時に、サンプルプレート上のRNAの全物質量が6.25×10-15molであってもRNAの1価のプロトン脱離イオンを示すピークをSN比3以上で検出可能であった。
【0044】
またマトリックス溶液における3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が25mg/ml、添加剤溶液におけるクエン酸アンモニウムの濃度が10mg/mlである場合、マトリックス溶液におけるアセトニトリルの濃度が10%(v/v)及び25%(v/v)の時に、サンプルプレート上のRNAの全物質量が6.25×10-15molであってもRNAの1価のプロトン脱離イオンを示すピークをSN比3以上で検出可能であった。図20はアセトニトリルの濃度が25%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が25mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が10mg/mlの時のマススペクトルである。図13、図14、図15、図20に示すマススペクトルのいずれにおいても、19塩基有機合成RNA及び16塩基有機合成RNAのそれぞれの1価のプロトン脱離イオンを示すピークが観察されている。
【0045】
次に図12、図13、図14に示すように、マトリックス溶液における3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が25mg/ml、アセトニトリルの濃度が10%(v/v)である場合、添加剤溶液におけるクエン酸アンモニウムの濃度が10mg/ml及び25mg/mlの時に、サンプルプレート上のRNAの全物質量が3.13×10-15molであってもRNAの1価のプロトン脱離イオンをSN比3以上で検出可能であった。
【0046】
また図12、図13、図19に示すように、マトリックス溶液におけるアセトニトリルの濃度が10%(v/v)、添加剤溶液におけるクエン酸アンモニウムの濃度が10mg/mlである場合、マトリックス溶液における3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が10mg/ml及び25mg/mlの時に、サンプルプレート上のRNAの全物質量が3.13×10-15molであってもRNAの1価のプロトン脱離イオンを示すピークをSN比3以上で検出可能であった。
【0047】
また図12に示すように、マトリックス溶液における3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が10mg/ml、アセトニトリルの濃度が50%(v/v)である場合、添加剤溶液におけるクエン酸アンモニウムの濃度が10mg/mlの時に、サンプルプレート上のRNAの全物質量が3.13×10-15molであってもRNAの1価のプロトン脱離イオンを示すピークをSN比3以上で検出可能であった。図21はアセトニトリルの濃度が50%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が10mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が10mg/mlの時のマススペクトルである。
【0048】
次に図12、図13、図14に示すように、マトリックス溶液における3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が25mg/ml、アセトニトリルの濃度が10%(v/v)である場合、添加剤溶液におけるクエン酸アンモニウムの濃度が10mg/ml及び25mg/mlの時に、サンプルプレート上のRNAの全物質量が6.25×10-15molであってもRNAの2価のプロトン脱離イオンを示すピークをSN比3以上で検出可能であった。
【0049】
図12に示すように、他の条件では6.25fmol以下のRNAを検出することはできなかった。図22はアセトニトリルの濃度が10%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が10mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が25mg/mlの時のマススペクトルである。図23はアセトニトリルの濃度が10%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が10mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が50mg/mlの時のマススペクトルである。図24はアセトニトリルの濃度が25%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が10mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が50mg/mlの時のマススペクトルである。図25はアセトニトリルの濃度が25%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が50mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が50mg/mlの時のマススペクトルである。図26はアセトニトリルの濃度が50%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が10mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が25mg/mlの時のマススペクトルである。図27はアセトニトリルの濃度が50%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が10mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が50mg/mlの時のマススペクトルである。図22乃至図27に示すマススペクトルを与える条件では、25fmolのRNAも検出できなかった。
【0050】
図28はアセトニトリルの濃度が25%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が10mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が25mg/mlの時のマススペクトルである。図29はアセトニトリルの濃度が25%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が25mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が50mg/mlの時のマススペクトルである。図30はアセトニトリルの濃度が25%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が50mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が10mg/mlの時のマススペクトルである。図31はアセトニトリルの濃度が50%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が25mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が10mg/mlの時のマススペクトルである。図32はアセトニトリルの濃度が50%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が25mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が25mg/mlの時のマススペクトルである。図33はアセトニトリルの濃度が50%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が50mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が10mg/mlの時のマススペクトルである。図28乃至図33に示すマススペクトルを与える条件では、25fmolのRNAは検出できたが、12.5fmolのRNAを検出できなかった。
【0051】
図34はアセトニトリルの濃度が25%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が10mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が10mg/mlの時のマススペクトルである。図35はアセトニトリルの濃度が25%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が25mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が25mg/mlの時のマススペクトルである。図36はアセトニトリルの濃度が25%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が50mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が25mg/mlの時のマススペクトルである。図37はアセトニトリルの濃度が50%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が25mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が50mg/mlの時のマススペクトルである。図38はアセトニトリルの濃度が50%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が50mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が25mg/mlの時のマススペクトルである。図39はアセトニトリルの濃度が50%(v/v)、3-ヒドロキシピコリン酸の濃度が50mg/ml、クエン酸アンモニウムの濃度が50mg/mlの時のマススペクトルである。図34乃至図39に示すマススペクトルを与える条件では、12.5fmolのRNAは検出できたが、6.25fmolのRNAを検出できなかった。
【0052】
(第3の実施例)
第1の実施例と同じサンプル溶液及び添加剤溶液を準備した。次に第1の実施例と同じ有機合成された19塩基RNAを超純水で溶解し、19塩基RNAの濃度が1,000×10-9mol/l、500×10-9mol/l、100×10-9mol/l、50×10-9mol/l、25×10-9mol/l、12.5×10-9mol/l、及び6.25×10-9mol/lの7種類のサンプル溶液を調製した。その後、第1の実施例と同様にサンプルプレート上に第1マトリックス層、第2マトリックス層、サンプル層、及び添加剤層を形成し、第3の実施例に係る質量分析サンプルを得た。
【0053】
第1の実施例と同じ条件を用いて第3の実施例に係る質量分析サンプルを四重極イオントラップ型MALDI-TOF-MS装置で分析した。図40は、サンプルプレート上の19塩基RNAの全物質量が500×10-15molの時のマススペクトルである。図41は、サンプルプレート上の19塩基RNAの全物質量が250×10-15molの時のマススペクトルである。図42は、サンプルプレート上の19塩基RNAの全物質量が50×10-15molの時のマススペクトルである。図43は、サンプルプレート上の19塩基RNAの全物質量が25×10-15molの時のマススペクトルである。図44は、サンプルプレート上の19塩基RNAの全物質量が12.5×10-15molの時のマススペクトルである。図45は、サンプルプレート上の19塩基RNAの全物質量が6.25×10-15molの時のマススペクトルである。図46は、サンプルプレート上の19塩基RNAの全物質量が3.13×10-15molの時のマススペクトルである。
【0054】
図40乃至図46に示すように、19塩基RNAのイオンは全質量が500×10-15乃至3.13×10-15molのいずれの場合であっても検出可能であった。よって実施の形態に係る質量分析方法の再現性が検証された。
【0055】
(第1の比較例)
まずアセトニトリルを体積濃度が25%(v/v)となるよう超純水で希釈した。次に希釈されたアセトニトリルにクエン酸アンモニウムを濃度が50×10-3mol/lとなるように加え、さらに3-ヒドロキシピコリン酸を飽和するまで加えて、第1の比較例に係るマトリックス溶液を得た。次に第1の比較例に係るマトリックス溶液をサンプルプレート上に0.5μl滴下して乾燥させ、第1の比較例に係る結晶マトリックス層を形成させた。その後、第3の実施例と同様に調製された0.5μlのサンプル溶液をマトリックス層上に滴下し乾燥させて、第1の比較例に係る質量分析サンプルを得た。
【0056】
第1の実施例と同じ条件を用いて第1の比較例に係る質量分析サンプルを四重極イオントラップ型MALDI-TOF-MS装置で分析した。すると図47、図48、図49に示すように、サンプルプレート上の19塩基RNAの全物質量が500×10-15mol、250×10-15mol及び50×10-15molの場合、19塩基RNAのイオンは検出可能であった。しかし図50に示すように、サンプルプレート上の19塩基RNAの全物質量が25×10-15molの場合、19塩基RNAのイオンを示すピークはノイズに埋もれた。したがってマトリックスに3-ヒドロキシピコリン酸を用いても、第1の実施例に係る質量分析サンプルの調製方法に従わなければ、50×10-15mol未満の極微量のRNAを検出することは不可能であることが示された。
【0057】
(第2の比較例)
まず濃度が100%のアセトニトリルに2,4,6-トリヒドロキシアセトフェノン(フルカ社)を濃度が250×10-3mol/lとなるように加え、第2の比較例に係るマトリックス溶液を得た。次にクエン酸アンモニウムを濃度が300×10-3mol/lとなるよう超純水で溶解し、第2の比較例に係る添加剤溶液を得た。その後、マトリックス溶液と添加剤溶液とを1:1の割合で混合して第1の混合液を得た。さらに第1の混合液と第3の実施例と同じサンプル溶液とを1:1で混合し、第2の混合液を得た。その後、サンプルプレート上に第2の比較例に係るマトリックス溶液を0.5μl滴下して乾燥させ、第2の比較例に係る結晶マトリックス層を形成させた。さらに結晶マトリックス層上に1μlの第2の混合液を滴下し乾燥させて、第2の比較例に係る質量分析サンプルを得た。
【0058】
第1の実施例と同じ条件を用いて第2の比較例に係る質量分析サンプルを四重極イオントラップ型MALDI-TOF-MS装置で分析した。すると図51、図52、図53に示すように、サンプルプレート上の19塩基RNAの全物質量が500×10-15mol、250×10-15mol及び50×10-15molの場合、19塩基RNAのイオンは検出可能であった。しかし図54に示すように、サンプルプレート上の19塩基RNAの全物質量が25×10-15molの場合、19塩基RNAのイオンを示すピークはノイズに埋もれた。したがってマトリックスとして2,4,6-トリヒドロキシアセトフェノンを用いる従来の方法では、50×10-15mol未満の極微量のRNAを検出することは不可能であることが示された。
【0059】
(第4の実施例)
配列がAUCAUCAUCGの有機合成RNAを超純水で溶解し、有機合成RNAの濃度が1×10-6mol/lのサンプル溶液を調製した。また第1の実施例と同じマトリックス溶液とサンプル溶液を調製した。次に第1の実施例に係る質量分析サンプルの調製方法と同様に質量分析サンプルを調製した。なおサンプル溶液を0.5μl滴下したので、サンプルプレート上の有機合成RNAの全物質量は500×10-15molであった。その後、質量分析サンプルを、株式会社島津製作所製の四重極イオントラップ型MALDI-TOF-MS装置でMS/MS分析した。なおプリカーサイオンの開裂にはアルゴンガスを用いた。MALDI-TOF-MS装置の測定パラメータは、チューニングモードをネガティブに、スペクトルデータの取り込み周期を5Hzに設定した。またレーザの照射強度を調節するパラメータを115〜120(無単位)に、スペクトルデータの積算数を200に、レーザのショット回数を2回に、測定レンジを中(Middle)に設定した。またアルゴンガスとプリカーサイオンの衝突エネルギを調節するパラメータであるCIDコントロールを120に設定した。
【0060】
ここで、MSMS分析の結果を説明する前に、例として4塩基B1, B2, B3, B4を含むRNAのリン酸エステル結合の開裂の様式について、図55を参照して説明する。リン酸エステル結合の5'末端側のC-O結合が開裂した場合、5'末端側に「a(n)系列」の断片が生成し、3'末端側に「w(n)系列」の断片が生成する。なおnは断片に残る塩基の数を表す。例えばa(1)系列の断片は1個の塩基B1を含み、w(3)系列の断片は3個の塩基B2, B3, B4を含む。
【0061】
リン酸エステル結合の5'末端側のO-P結合が開裂した場合、5'末端側に「b(n)系列」の断片が生成し、3'末端側に「x(n)系列」の断片が生成する。リン酸エステル結合の3'末端側のP-O結合が開裂した場合、5'末端側に「c(n)系列」の断片が生成し、3'末端側に「y(n)系列」の断片が生成する。リン酸エステル結合の3'末端側のO-C結合が開裂した場合、5'末端側に「d(n)系列」の断片が生成し、3'末端側に「z(n)系列」の断片が生成する。
【0062】
第4の実施例に係るMSMS分析の結果を説明する。図56に示すマススペクトルの質量電荷比が3,103の位置に、分解されなかった有機合成RNAのプロトン脱離イオン(プリカーサイオン)を示すピークが観察された。またプリカーサイオンが分解されて生成した複数のプロダクトイオンを示すピークが、プリカーサイオンよりも低い質量電荷比の位置に観察された。ピークは、c(3)乃至c(9)系列のプロダクトイオン、及びy(3)乃至y(9)系列のプロダクトイオンを示していることが解析可能であった。よって、プリカーサイオンの塩基配列が未知であった場合でも、プロダクトイオンの質量分析の結果から、プリカーサイオンの塩基配列を決定可能であることが示された。
【0063】
(第5の実施例)
マウスの肝臓細胞から、ホモジナイザを用いたAGPC(acid guanidinium thiocyanate-phenol-chloroform extraction)法により、 rRNA、tRNA、及びmRNAを含む全RNA(total RNA)を抽出した。次に抽出した全RNAをフィルタ膜(ミリポア社、YM-100)でろ過し、低分子量のRNA画分を粗精製した。さらに低分子量のRNA画分をポリアクリルアミドの濃度が15%(w/v)のゲルに電気泳動させた。その後、20塩基のRNAが泳動される位置のゲルを切り出し、切り出されたゲルを溶出して、miRNAの粗精製画分を得た。次にmiRNAの粗精製画分をエタノールで沈殿させ、沈殿したmiRNAを超純水で溶解することにより、濃度2.4×10-6mol/lでmiRNAを含む第5の実施例に係るサンプル溶液を調製した。また第1の実施例と同じマトリックス溶液と添加剤溶液を調製した。
【0064】
その後、第1の実施例に係る質量分析サンプルの調製方法と同様に第5の実施例に係る質量分析サンプルを調整し、株式会社島津製作所製の四重極イオントラップ型MALDI-TOF-MS装置で質量分析した。MALDI-TOF-MS装置の測定パラメータは、チューニングモードをネガティブに、スペクトルデータの取り込み周期を5Hzに設定した。またレーザの照射強度を調節するパラメータを115〜120(無単位)に、スペクトルデータの積算数を1000に、レーザのショット回数を2回に、測定レンジを高(High)に設定した。
【0065】
結果として図57に示すように、miRNAに由来する複数のピークが検出された。また質量電荷比が7502.32のピークは配列5'p-UGGAGUGUGACAAUGGUGUUUGU-OH3'を有するmiR-122aと呼ばれるmiRNAのイオンを示し、質量電荷比が7196.88のピークは3'末端の1塩基が欠損したmiR-122aの変異体のイオンを示し、質量電荷比が6850.28のピークは3'末端の2塩基が欠損したmiR-122aの変異体のイオンを示すことが判明した。第5の実施例より、マウスの臓器から抽出したRNAのMALDI-TOF-MSによる質量分析が可能であることが示された。
【0066】
(第6の実施例)
図58に示すフローチャートを参照して、第6の実施例に係る質量分析サンプルの調製方法について説明する。
【0067】
(a) まずステップS201乃至S204を図2のステップS101乃至S104と同様に実施し、マトリックス溶液及び添加剤溶液を調製した。次に図58のステップS205で配列がAUCAUCAUCAUCAUCAUCGの有機合成RNAを超純水で溶解し、有機合成RNAの濃度がそれぞれ2000×10-9mol/l、1000×10-9mol/l、500×10-9mol/l、100×10-9mol/l、50×10-9mol/l、25×10-9mol/l、12.5×10-9mol/l、6.25×10-9mol/lの7種類のサンプル溶液を調製した。
【0068】
(b) ステップS206でサンプルプレート上に0.5μlのマトリックス溶液を滴下し自然乾燥させて、サンプルプレート上に結晶状のマトリックス層を形成させた。次にステップS207で、マトリックス層上に0.25μlのサンプル溶液を滴下し、直後に0.25μlの添加剤溶液もマトリックス層上に滴下した。滴下によりマトリックス層は溶解した。その後、溶解したマトリックス溶液、サンプル溶液、及び添加剤溶液の混合液を自然乾燥させ、サンプルプレート上にサンプル添加剤含有層を形成させ、第6の実施例に係る質量分析サンプルを得た。
【0069】
第1の実施例と同じ条件を用いて第6の実施例に係る質量分析サンプルを四重極イオントラップ型MALDI-TOF-MS装置で分析した。図59、図60、図61、図62、図63、及び図64に示すように、サンプルプレート上の有機合成RNAの全物質量が500×10-15mol、250×10-15mol、50×10-15mol、25×10-15mol、12.5×10-15mol、6.25×10-15molのいずれの時も、有機合成RNAのイオンは検出可能であった。しかし図65に示すように、サンプルプレート上の有機合成RNAの全物質量が3.13×10-15molの時は、有機合成RNAのイオンを示すピークはノイズに埋もれた。第6の実施例に係る質量分析サンプルの調整方法によって検出可能なRNAの物質量の下限は第1の実施例には及ばなかったものの、従来の質量分析サンプルの調整方法と比較して、なお高い感度でRNAを検出可能であることが示された。第6の実施例に係る質量分析サンプルの調整方法は必要なステップ数が少ないため、実験操作を簡易にすることが可能となった。
【0070】
(配列表の説明)
本明細書の配列表に記載された配列番号1乃至4は、以下の配列を示す。
【0071】
[配列番号 : 1] 第1、第2、及び第6の実施例で用いた有機合成19塩基RNAの塩基配列。
【0072】
[配列番号 : 2] 第2の実施例で用いた有機合成16塩基RNAの塩基配列。
【0073】
[配列番号 : 3] 第2の実施例で用いた有機合成23塩基RNAの塩基配列。
【0074】
[配列番号 : 4] 第4の実施例で用いた有機合成10塩基RNAの塩基配列。
【0075】
本明細書において塩基を略号で表示する場合、IUPAC-IUB Commision on Biochemical Nomenclatureによる略号、あるいは当該分野における慣用略号を用いる。以下に、略号の例を示す。
【0076】
a : アデニン、t : チミン、g : グアニン、c : シトシン、u:ウラシル。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態に係るMALDI-TOF-MS装置の模式図である。
【図2】本発明の実施の形態の第1の実施例に係る質量分析サンプルの調製方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態の第1の実施例に係る質量分析サンプルの第1の工程断面図である。
【図4】本発明の実施の形態の第1の実施例に係る質量分析サンプルの第2の工程断面図である。
【図5】本発明の実施の形態の第1の実施例に係る質量分析サンプルの第3の工程断面図である。
【図6】本発明の実施の形態の第1の実施例に係る質量分析サンプルの第4の工程断面図である。
【図7】本発明の実施の形態の第1の実施例に係る質量分析サンプルの第5の工程断面図である。
【図8】本発明の実施の形態の第1の実施例に係るマススペクトルを示す第1のグラフである。
【図9】本発明の実施の形態の第1の実施例に係るマススペクトルを示す第2のグラフである。
【図10】本発明の実施の形態の第1の実施例に係るマススペクトルを示す第3のグラフである。
【図11】本発明の実施の形態の第1の実施例に係るマススペクトルを示す第4のグラフである。
【図12】本発明の実施の形態の第2の実施例に係る質量分析の結果を示す表である。
【図13】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第1のグラフである。
【図14】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第2のグラフである。
【図15】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第3のグラフである。
【図16】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第4のグラフである。
【図17】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第5のグラフである。
【図18】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第6のグラフである。
【図19】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第7のグラフである。
【図20】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第8のグラフである。
【図21】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第10のグラフである。
【図22】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第11のグラフである。
【図23】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第12のグラフである。
【図24】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第13のグラフである。
【図25】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第14のグラフである。
【図26】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第15のグラフである。
【図27】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第16のグラフである。
【図28】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第17のグラフである。
【図29】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第18のグラフである。
【図30】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第19のグラフである。
【図31】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第20のグラフである。
【図32】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第21のグラフである。
【図33】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第22のグラフである。
【図34】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第23のグラフである。
【図35】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第9のグラフである。
【図36】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第24のグラフである。
【図37】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第25のグラフである。
【図38】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第26のグラフである。
【図39】本発明の実施の形態の第2の実施例に係るマススペクトルを示す第27のグラフである。
【図40】本発明の実施の形態の第3の実施例に係るマススペクトルを示す第1のグラフである。
【図41】本発明の実施の形態の第3の実施例に係るマススペクトルを示す第2のグラフである。
【図42】本発明の実施の形態の第3の実施例に係るマススペクトルを示す第3のグラフである。
【図43】本発明の実施の形態の第3の実施例に係るマススペクトルを示す第4のグラフである。
【図44】本発明の実施の形態の第3の実施例に係るマススペクトルを示す第5のグラフである。
【図45】本発明の実施の形態の第3の実施例に係るマススペクトルを示す第6のグラフである。
【図46】本発明の実施の形態の第3の実施例に係るマススペクトルを示す第7のグラフである。
【図47】本発明の実施の形態の第1の比較例に係るマススペクトルを示す第1のグラフである。
【図48】本発明の実施の形態の第1の比較例に係るマススペクトルを示す第2のグラフである。
【図49】本発明の実施の形態の第1の比較例に係るマススペクトルを示す第3のグラフである。
【図50】本発明の実施の形態の第1の比較例に係るマススペクトルを示す第4のグラフである。
【図51】本発明の実施の形態の第2の比較例に係るマススペクトルを示す第1のグラフである。
【図52】本発明の実施の形態の第2の比較例に係るマススペクトルを示す第2のグラフである。
【図53】本発明の実施の形態の第2の比較例に係るマススペクトルを示す第3のグラフである。
【図54】本発明の実施の形態の第2の比較例に係るマススペクトルを示す第4のグラフである。
【図55】本発明の実施の形態の第4の実施例に係るリン酸エステル結合の開裂の様式を説明する模式図である。
【図56】本発明の実施の形態の第4の実施例に係るマススペクトルを示すグラフである。
【図57】本発明の実施の形態の第5の実施例に係るマススペクトルを示すグラフである。
【図58】本発明の実施の形態の第6の実施例に係る質量分析サンプルの調製方法を示すフローチャートである。
【図59】本発明の実施の形態の第6の実施例に係るマススペクトルを示す第1のグラフである。
【図60】本発明の実施の形態の第6の実施例に係るマススペクトルを示す第2のグラフである。
【図61】本発明の実施の形態の第6の実施例に係るマススペクトルを示す第3のグラフである。
【図62】本発明の実施の形態の第6の実施例に係るマススペクトルを示す第4のグラフである。
【図63】本発明の実施の形態の第6の実施例に係るマススペクトルを示す第5のグラフである。
【図64】本発明の実施の形態の第6の実施例に係るマススペクトルを示す第6のグラフである。
【図65】本発明の実施の形態の第6の実施例に係るマススペクトルを示す第7のグラフである。
【符号の説明】
【0078】
10…有機合成
11…イオン化部
12…イオントラップ部
13…飛行時間分析部
14…制御部
21…第1マトリックス層
22…第2マトリックス層
23…サンプル含有層
23…有機合成
24…サンプル添加剤含有層
111…サンプルプレート
112…レーザ光源
113…イオンレンズ
121…第1のエンドキャップ電極
122…イオントラップ空間
123…第2のエンドキャップ電極
124…リング電極
125…リフレクタ電極
131…検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10乃至50mg/mlの濃度で3−ヒドロキシピコリン酸を含むマトリックス溶液をサンプルプレート上に供給し乾燥させるステップと、
前記マトリックス溶液が乾燥した部分に前記マトリックス溶液を更に供給し乾燥させるステップと、
前記マトリックス溶液が2回供給され乾燥した部分にリボ核酸を含むサンプル溶液を供給し乾燥させるステップと、
前記サンプル溶液が乾燥した部分にクエン酸アンモニウムを含む添加剤溶液を供給し乾燥させるステップ
とを含むことを特徴とする質量分析サンプルの調製方法。
【請求項2】
10乃至50mg/mlの濃度で3−ヒドロキシピコリン酸を含むマトリックス溶液をサンプルプレート上に供給し乾燥させるステップと、
前記マトリックス溶液が乾燥した部分にリボ核酸を含むサンプル溶液を供給し、さらにクエン酸アンモニウムを含む添加剤溶液を供給して乾燥させるステップ
とを含むことを特徴とする質量分析サンプルの調製方法。
【請求項3】
前記マトリックス溶液の溶媒が、水及びアセトニトリルを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の質量分析サンプルの調製方法。
【請求項4】
前記マトリックス溶液における前記アセトニトリルの体積濃度が10乃至50%であることを特徴とする請求項3に記載の質量分析サンプルの調製方法。
【請求項5】
前記添加剤溶液における前記クエン酸アンモニウムの濃度が10乃至50mg/mlであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の質量分析サンプルの調製方法。
【請求項6】
1回目の前記マトリックス溶液の供給量、2回目の前記マトリックス溶液の供給量、前記サンプル溶液の供給量、及び前記添加剤溶液の供給量が同じであることを特徴とする請求項1に記載の質量分析サンプルの調製方法。
【請求項7】
10乃至50mg/mlの濃度で3−ヒドロキシピコリン酸を含むマトリックス溶液をサンプルプレート上に供給し乾燥させるステップと、
前記マトリックス溶液が乾燥した部分に前記マトリックス溶液を更に供給し乾燥させるステップと、
前記マトリックス溶液が2回供給され乾燥した部分にリボ核酸を含むサンプル溶液を供給し乾燥させるステップと、
前記サンプル溶液が乾燥した部分にクエン酸アンモニウムを含む添加剤溶液を供給し乾燥させるステップと、
前記添加剤溶液が乾燥した部分にレーザを照射し、前記リボ核酸のプロトン脱離イオンを生成させるステップ
とを含むことを特徴とするリボ核酸のイオン化方法。
【請求項8】
10乃至50mg/mlの濃度で3−ヒドロキシピコリン酸を含むマトリックス溶液をサンプルプレート上に供給し乾燥させるステップと、
前記マトリックス溶液が乾燥した部分にリボ核酸を含むサンプル溶液を供給し、さらにクエン酸アンモニウムを含む添加剤溶液を供給して乾燥させるステップと、
前記添加剤溶液が乾燥した部分にレーザを照射し、前記リボ核酸のプロトン脱離イオンを生成させるステップ
とを含むことを特徴とするリボ核酸のイオン化方法。
【請求項9】
10乃至50mg/mlの濃度で3−ヒドロキシピコリン酸を含むマトリックス溶液をサンプルプレート上に供給し乾燥させるステップと、
前記マトリックス溶液が乾燥した部分に前記マトリックス溶液を更に供給し乾燥させるステップと、
前記マトリックス溶液が2回供給され乾燥した部分にリボ核酸を含むサンプル溶液を供給し乾燥させるステップと、
前記サンプル溶液が乾燥した部分にクエン酸アンモニウムを含む添加剤溶液を供給し乾燥させるステップと、
前記添加剤溶液が乾燥した部分にレーザを照射し、前記リボ核酸のプロトン脱離イオンを生成させるステップと、
前記リボ核酸のプロトン脱離イオンの飛行時間を測定し、前記リボ核酸のプロトン脱離イオンの質量電荷比を測定するステップ
とを含むことを特徴とするリボ核酸の質量分析方法。
【請求項10】
10乃至50mg/mlの濃度で3−ヒドロキシピコリン酸を含むマトリックス溶液をサンプルプレート上に供給し乾燥させるステップと、
前記マトリックス溶液が乾燥した部分にリボ核酸を含むサンプル溶液を供給し、さらにクエン酸アンモニウムを含む添加剤溶液を供給して乾燥させるステップと、
前記添加剤溶液が乾燥した部分にレーザを照射し、前記リボ核酸のプロトン脱離イオンを生成させるステップと、
前記リボ核酸のプロトン脱離イオンの飛行時間を測定し、前記リボ核酸のプロトン脱離イオンの質量電荷比を測定するステップ
とを含むことを特徴とするリボ核酸の質量分析方法。
【請求項11】
前記3−ヒドロキシピコリン酸の濃度が25乃至50mg/mlであることを特徴とする請求項9又は10のいずれか1項に記載のリボ核酸の質量分析方法。
【請求項12】
前記プロトン脱離イオンの価数が2であることを特徴とする請求項11に記載のリボ核酸の質量分析方法。
【請求項13】
細胞から低分子リボ核酸を抽出するステップと、
10乃至50mg/mlの濃度で3−ヒドロキシピコリン酸を含むマトリックス溶液をサンプルプレート上に供給し乾燥させるステップと、
前記マトリックス溶液が乾燥した部分に前記マトリックス溶液を更に供給し乾燥させるステップと、
前記マトリックス溶液が2回供給され乾燥した部分に前記低分子リボ核酸を含むサンプル溶液を供給し乾燥させるステップと、
前記サンプル溶液が乾燥した部分にクエン酸アンモニウムを含む添加剤溶液を供給し乾燥させるステップと、
前記添加剤溶液が乾燥した部分にレーザを照射し、前記低分子リボ核酸のプロトン脱離イオンを生成させるステップと、
前記低分子リボ核酸のプロトン脱離イオンの飛行時間を測定し、前記低分子リボ核酸のプロトン脱離イオンの質量電荷比を測定するステップ
とを含むことを特徴とする細胞由来の低分子リボ核酸の質量分析方法。
【請求項14】
細胞から低分子リボ核酸を抽出するステップと、
10乃至50mg/mlの濃度で3−ヒドロキシピコリン酸を含むマトリックス溶液をサンプルプレート上に供給し乾燥させるステップと、
前記マトリックス溶液が乾燥した部分に前記低分子リボ核酸を含むサンプル溶液を供給し、さらにクエン酸アンモニウムを含む添加剤溶液を供給して乾燥させるステップと、
前記添加剤溶液が乾燥した部分にレーザを照射し、前記低分子リボ核酸のプロトン脱離イオンを生成させるステップと、
前記低分子リボ核酸のプロトン脱離イオンの飛行時間を測定し、前記低分子リボ核酸のプロトン脱離イオンの質量電荷比を測定するステップ
とを含むことを特徴とする細胞由来の低分子リボ核酸の質量分析方法。
【請求項15】
前記低分子リボ核酸が非コードRNAであることを特徴とする請求項13又は14に記載の細胞由来の低分子リボ核酸の質量分析方法。
【請求項16】
前記非コードRNAがマイクロRNAであることを特徴とする請求項15に記載の細胞由来の低分子リボ核酸の質量分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【公開番号】特開2008−292422(P2008−292422A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140998(P2007−140998)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(経済産業省、平成18年度NEDO委託研究、「機能性RNAプロジェクト」、産業再生法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】