説明

質量分析データ処理方法及び該方法を用いた質量分析装置

【課題】質量分析データをランレングス符号化により圧縮して得られた圧縮データについて、元の圧縮データの配列を維持したまま、目的のm/zにおける強度値を迅速に取得できるようにする。
【解決手段】原スペクトルデータ配列上で強度値ゼロが2以上連続する部分の開始位置、又は原スペクトルデータ配列上で有意な強度値を示す連続的なデータの並びの開始位置と、それに対応する圧縮データ配列上の位置とを1組としてインデクスを作成し、これを圧縮データとは別の記憶領域に格納する。圧縮データ配列はインデクス作成に拘わらず維持されるので、インデクスを利用しないデータ処理装置でも復元が可能であるとともに、インデクスを利用すれば目的のm/zに対応した圧縮データを迅速に見つけ、強度値を求めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析により収集されたデータを処理するデータ処理方法、特に、試料上の2次元領域内における特定の質量電荷比の信号強度分布を示す質量分析イメージング画像を取得可能であるイメージング質量分析装置に好適なデータ処理方法と、その方法を用いた質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析イメージングは、生体組織切片などの試料の2次元領域内の複数の測定点に対してそれぞれ質量分析を行うことにより、特定の質量電荷比を有する物質の分布を調べる手法であり、創薬やバイオマーカ探索、各種疾病・疾患の原因究明などに利用できるものと期待されている。質量分析イメージングを実施するための質量分析装置は一般にイメージング質量分析装置と呼ばれている。また、通常、試料上の任意の2次元領域について顕微観察を行い、その顕微観察画像に基づいて分析対象領域を定めて該領域のイメージング質量分析を実行することから顕微質量分析装置とも呼ばれているが、本明細書ではイメージング質量分析装置と呼ぶこととする。例えば非特許文献1、2には、従来の一般的なイメージング質量分析装置の構成や分析例が開示されている。
【0003】
図9は、イメージング質量分析装置で分析を実行することにより得られるデータとそれに基づく表示処理の概要を示す図である。図示するように、イメージング質量分析装置では、試料100上の2次元領域101内の多数の測定点(微小領域)102それぞれにおいて質量分析データが取得される。非特許文献1、2に開示されたイメージング質量分析装置では、試料由来のイオンを質量電荷比に応じて分離するために飛行時間型質量分析器が利用されているが、そうした構成の場合には、各測定点においてイオン強度の時間的変化を示す飛行時間スペクトルデータが得られ、飛行時間を質量電荷比に換算することでマススペクトルが作成される。イメージング質量分析装置では、試料上の測定点102の間隔が空間分解能を左右し、精緻な画像を得るために空間分解能を上げようとするほど測定点102の数は多くなる。測定点102の数が多いと、測定対象である2次元領域101における飛行時間スペクトルデータの総量は膨大になる。
【0004】
例えば、20[ms]程度の時間範囲の飛行時間スペクトル信号を1[GHz]のサンプリング周波数でサンプリングし、各サンプルを16[bit]のビット長でデジタル信号に変換する場合を考える。この飛行時間スペクトルにおいて、1測定点当たりのサンプル数は約20000となり、1サンプルは2バイトのデータであるため、1測定点当たりのデータ量は約40[kB]となる。測定領域内の測定点が2次元的に250×250[pixel]の格子状に設定されているとすると、測定点数は62500であり、その測定領域に対する全データ量は約2.32[GB]と膨大なものとなる。空間分解能を上げるために測定点の間隔を狭めて測定点数を増やすと、或いは、測定対象の2次元領域を広げると、全データ量はさらに増加することになる。また、質量精度や質量分解能を改善するためには、飛行時間スペクトル信号に対するサンプリング周波数を上げる必要があるが、そうすると全データ量は尚一層増加する。即ち、高解像度で高質量分解能の質量分析イメージングデータほど大きなデータサイズを持つ。
【0005】
上述したような質量分析データから有意な情報を導き出すには、マススペクトル上の各ピークに対応する質量電荷比の空間分布を描画し、その有意性を分析者が解釈するか或いはコンピュータを用いた推定処理を行う必要がある。こうした作業を効率よく実行するためには、図9に示すように、各測定点102のマススペクトルから特定の質量電荷比(図9の例ではm/z=M1)に対応した強度値を抽出し、それらの強度値の2次元分布を高速で描画する必要がある。そのためには、マススペクトル又は飛行時間スペクトルを構成する質量分析データをコンピュータのメインメモリ(一般的にはRAM)に読み込む必要がある。
【0006】
ただし、一般的なパーソナルコンピュータで実質的に使用できるメインメモリの記憶容量には限界があり、上述したような高精細の質量分析データを全てメインメモリ上に読み込むことは困難である。全質量分析データをメインメモリに読み込むことができない場合には例えば、メインメモリに読み込むことができる程度にデータの一部を切り出し、この一部のデータを用いた画像作成処理を実行する。しかしながら、その場合には、広い空間範囲で且つ広い質量範囲のデータを一度に表示解析することは不可能である。また、広い空間範囲で且つ広い質量範囲のデータを一度に表示解析したい場合には、ハードディスク等の外部記憶装置の一部を仮想的なメインメモリとして使用することが考えられるが、その場合には処理速度が大幅に低下することが避けられない。さらにまた、一つの試料のデータだけでなく複数の試料のデータを比較することも解析の上では重要であるが、そのためにはさらに大容量のデータをメインメモリに格納して処理する必要があり、一般的なパーソナルコンピュータで処理することは実質的に不可能である。
【0007】
一般的に、コンピュータ上で大容量のデータを取り扱う場合に、データ圧縮を行ってデータサイズを縮小することがよく行われる。上述したような大容量の質量分析データについても、データ圧縮を行いデータサイズを小さくすることによってコンピュータのメインメモリ上で扱うことが可能となる。しかしながら、イメージング画像作成処理等のためにメインメモリに質量分析データを格納するべくデータ圧縮を採用した場合には、次のような問題がある。
【0008】
マススペクトルや飛行時間スペクトルを構成する質量分析データの圧縮方法としては、近接するデータ点との相関を利用した方法が採られることが多い。例えば特許文献1などに記載の技術を利用し、図9に示したマススペクトル毎に、質量電荷比軸上で近接する複数のデータ点の相関を利用して、ランレングス符号化やエントロピー符号化を用いたデータ圧縮を行うことが考えられる。これにより、マススペクトル毎、つまりは測定点102毎に質量分析データのデータサイズが小さくなるため、試料100上の2次元領域101に含まれる全ての測定点102に対する質量分析データをメインメモリに格納することが可能となる。
【0009】
分析者が或る特定の質量電荷比に対する質量分析イメージング画像を観察したい場合、コンピュータでは、各測定点のマススペクトルデータから指定された質量電荷比の信号強度情報を抽出し、その情報を画像作成処理に供する必要がある。メインメモリに格納されている質量分析データが非圧縮データであれば、単にその質量電荷比に対応するメモリアドレスから強度値を読み出してきてそれを画像化するだけでよい。しかしながら、上述したように質量分析データが符号化された圧縮データであると、指定された質量電荷比に対応するメモリアドレスがすぐには分からない。そのため、圧縮されているマススペクトルデータを一度伸張処理した上で、指定された質量電荷比に対応した強度値を読み出す必要がある。
【0010】
各測定点のマススペクトル毎に同様の処理を繰り返して指定された質量電荷比に対応した強度値を収集するには時間が掛かり、その結果、1枚の質量分析イメージング画像を表示するためにかなりの時間を要してしまう。上述したように、イメージング質量分析では、様々な質量電荷比の膨大な数の質量分析データの中から有意な空間分布を持つ質量電荷比を選び出す作業が重要であるが、質量分析イメージング画像の表示に時間が掛かると、この選び出しの作業のスループットは大きく下がることになる。
【0011】
周知のように、データ圧縮技術が最も広く且つ古くから利用されているのは画像処理の分野である。これは、もともと画像はデータ量が比較的多く、そのようなデータ量の多い画像を限られた速度の通信路を通して或いは限られた容量の媒体を介して送受する必要性が高かったことによる。例えば白黒の二値画像を扱うファクシミリでは上述したランレングス符号化が用いられている。こうした画像分野においても、圧縮前の原データ配列上の所望の位置が圧縮データ配列上でどの位置に対応するのかを高速に特定することが要求されており、例えば特許文献2には、ビットマップ画像データにランレングス符号を適用した場合に、圧縮前の原データの配列上の位置とランレングス圧縮データの配列上の位置との対応関係を示すインデクスを利用して位置特定の高速化を図ることが提案されている。具体的には、画像に対する圧縮データの配列上の一定間隔で、その位置が原データ上のどの位置であったかを示すインデクス情報を埋め込むようにしている。
【0012】
前述の質量分析データの圧縮に際しても、インデクス情報の利用による高速化手法を適用することは可能である。しかしながら、上述のように圧縮データ中に一定間隔でインデクス情報を埋め込む方法では、インデクス間でランレングス符号化等の圧縮処理を完結させる必要があるため、データ圧縮効率が低下することになる。また、インデクス情報がないことを前提とした処理のみを実行可能な装置では、インデクス情報が埋め込まれた圧縮データを適切に読み出すことができない。即ち、圧縮された質量分析データの処理に関し、装置の下位互換性が維持できなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開2009/069225号パンフレット
【特許文献2】特開2007−103982号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】小河、ほか5名、「顕微質量分析装置の開発」、島津評論、第62巻、第3・4号、2006年3月31日発行、p.125−135
【非特許文献2】原田、ほか8名、「顕微質量分析装置による生体組織分析」、島津評論、第64巻、第3・4号、2008年4月24日発行、p.139−145
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的の一つは、高解像(高空間分解能)及び高質量分解能の質量分析イメージング画像の情報をできるだけ損なわずにそのデータ量を圧縮してデータサイズを縮小するとともに、圧縮された状態で任意の質量電荷比や飛行時間に対応する強度情報を高速で読み出すことができる質量分析データ処理方法及び該方法を用いた質量分析装置を提供することにある。また、本発明の別の目的は、データ圧縮効率を犠牲にすることなく圧縮された質量分析データから所望の質量電荷比や飛行時間に対応する強度情報を高速に読み出すことが可能であるとともに、そうした高速読み出しに対応しない装置であっても問題なく必要な情報の読み出しが行える質量分析データ処理方法及び該方法を用いた質量分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために成された第1発明は、質量分析により収集された強度情報の1次元配列である原スペクトルデータを処理する質量分析データ処理方法であって、
a)原スペクトルデータに対し所定のアルゴリズムに従って圧縮処理を実行し、得られた1次元配列である圧縮データを第1記憶領域に格納する圧縮ステップと、
b)前記原スペクトルデータの1次元配列上の位置と、該位置における強度情報に対応した圧縮後情報が前記圧縮データの1次元配列上で存在する位置と、を関連付けるインデクス情報を作成し、該インデクス情報を前記第1記憶領域とは異なる第2記憶領域に格納するインデクス情報作成ステップと、
c)原スペクトルデータの1次元配列上の或る位置が指定されて該指定位置における強度情報の出力が指示されたとき、前記第2記憶領域に格納されている前記インデクス情報を参照して前記指定位置に対応する必要な圧縮情報の格納位置を認識して前記第1記憶領域から該当する圧縮後情報を読み出し、該圧縮後情報に対する伸張処理を実行して前記指定位置における強度情報を求める情報再現ステップと、
を有することを特徴としている。
【0017】
また、上記課題を解決するために成された第2発明は、試料上の複数の測定部位に対してそれぞれ質量分析を実行することにより収集された、強度情報の1次元配列である原スペクトルデータが前記測定部位の空間位置情報に関連付けられてなる質量分析イメージングデータを処理する質量分析データ処理方法であって、
a)各測定部位の原スペクトルデータに対し所定のアルゴリズムに従って圧縮処理を実行し、得られた1次元配列である圧縮データを第1記憶領域に格納する圧縮ステップと、
b)測定部位毎に、前記原スペクトルデータの1次元配列上の位置と、該位置における強度情報に対応した圧縮後情報が前記圧縮データの1次元配列上で存在する位置と、を関連付けるインデクス情報を作成し、該インデクス情報を前記第1記憶領域とは異なる第2記憶領域に格納するインデクス情報作成ステップと、
c)所望の質量分析イメージング画像の質量電荷比が指定されたとき、該質量電荷比に対応する原スペクトルデータの1次元配列上の位置を算出する位置取得ステップと、
d)全ての又は指定された範囲に含まれる測定部位毎に、前記第2記憶領域に格納されている前記インデクス情報を参照して前記位置取得ステップで算出された位置に対応する必要な圧縮情報の格納位置を認識して前記第1記憶領域から該当する圧縮後情報を読み出し、該圧縮後情報に対する伸張処理を実行して前記位置における強度情報を求める情報再現ステップと、
e)前記情報再現ステップにより取得された各測定部位の強度情報とそれら測定部位の空間位置情報とを用いて、所望の質量電荷比に対する強度情報の2次元分布を示す質量分析イメージング画像を作成する画像作成ステップと、
を有することを特徴としている。
【0018】
なお、第2発明に係る質量分析データ処理方法の一態様として、試料上の顕微光学画像を撮影する画像撮影手段を具備するイメージング質量分析装置で収集された質量分析イメージングデータを処理する方法であって、前記画像作成ステップでは、前記画像撮影手段により得られる試料の顕微光学画像上の対応位置に所望の質量電荷比に対する強度情報を表示することにより質量分析イメージング画像を作成するようにすることができる。
【0019】
また、第1又は第2発明に係る質量分析データ処理方法において、前記圧縮ステップは、原スペクトルデータの少なくとも一部を、ランレングス符号化若しくはエントロピー符号化又はそれらを組み合わせた符号化のいずれかにより可逆圧縮するものとすることができる。
【0020】
ここで、原スペクトルデータの1次元配列とは、質量電荷比毎の強度値を質量電荷比の順に並べたものが一般的であるが、質量分析装置の種類等によって、質量電荷比の代わりにそれに一義的に対応する別のパラメータ毎の強度値をそのパラメータの順に並べたものでもよい。例えば、質量分析装置が飛行時間型質量分析装置である場合には、原スペクトルデータの1次元配列とは、飛行時間毎の強度値をその飛行時間の順に並べたものとすることができる。
【0021】
第1及び第2発明に係る質量分析データ処理方法の具体的な一態様として、
前記圧縮ステップは、原スペクトルデータの1次元配列において一定の強度値以下を特定値に置き換えた後に、その配列順に従って前記特定値が2以上連続する部分をその連続する個数の値に置き換える一方、前記特定値以外の強度値の並びに対してはそれらの並びの個数をそれらの強度値の並びの先頭に挿入するという圧縮処理を行い、
前記インデクス情報作成ステップは、原スペクトルデータの1次元配列における前記特定値の連続開始位置及び該特定値以外の強度値の並びの開始位置についての位置情報と、圧縮データの1次元配列における前記特定値の連続開始位置及び前記特定値以外の強度値の並びの開始位置に対応する位置情報との、2つの数値を組にしたリストをインデクス情報として作成し、
前記情報再現ステップは、所定位置の強度値を取得する際に、所定位置が含まれる強度値の並びの開始位置を前記リストにおいて検索し、圧縮データの配列の該当位置から強度値を読み出す処理を実行するものとすることができる。
【0022】
上記態様による質量分析データ処理方法では、圧縮ステップにおいてまず原スペクトルデータの1次元配列において一定の強度値以下(有意でないとみなせる強度値)を例えばゼロに置き換え、その後に、データ配列順に従って強度値ゼロが2以上連続する部分をその連続する個数の値に置き換える一方、有意である強度値の並びに対してはそれらの並びの個数をそれらの強度値の並びの先頭に挿入する。そして、インデクス情報作成ステップは、原スペクトルデータの1次元配列上で強度値ゼロが2以上連続する部分の開始位置とそれらに対応する圧縮データの位置とを組とするとともに、原スペクトルデータの1次元配列上で有意な強度値を示す連続的なデータの並びの開始位置とそれらに対応する圧縮データの位置とを組としてインデクス情報を作成し、これを圧縮データとは別の記憶領域に格納する。
【0023】
したがって、原スペクトルデータと圧縮データとの位置対応情報はいずれのデータの1次元配列上においても一定間隔で作成されるのではなく、その間隔はデータの状況に依存する。換言すれば、上記位置対応情報の作成は圧縮処理対象のデータ単位(データ長)を何ら規定するものでなく、圧縮効率に影響を与えない。また、インデクス情報は圧縮データ自体には埋め込まれず圧縮データとは別の記憶領域に記憶されるため、インデクス情報を用いず圧縮データのみを利用した一般的な伸張処理により、元のスペクトルデータを復元することができる。
【0024】
圧縮データから必要な情報を読み出す際には、情報再現ステップは例えば次の手順をとる。原スペクトルデータの1次元配列上において、強度値を求めたい質量電荷比の値又は該質量電荷比値に対応した別のパラメータ値(例えば飛行時間値)の位置がPであるとする。情報再現ステップでは、インデクス情報が保持されている第2記憶領域にアクセスし、原スペクトルデータの位置情報のリストの中からPより小さい値のものから最大のものを選出する。インデクス情報において、その選出された位置値と組になっている圧縮データの位置をP’であるとする。次に、第1記憶領域に保持されている圧縮データにアクセスし、P’の位置の値を読み出す。例えばデータ値が2進数で表され、その最上位ビットの値(0又は1)を、そのデータが強度値ゼロの連続に対応したものであるか有意な強度値の連続に対応したものであるかの識別に使用している場合、読み出したデータ値の最上位ビットが0であれば、これはこの位置以降そのデータで示される個数だけゼロが連続していることを示す。したがって、これ以降の部分の原スペクトルを再構築するまでもなく、指定された位置の強度値はゼロであると判明する。またP’の位置のデータ値を読み出し、その最上位ビットが1であれば、これは、この位置以降、最上位ビットを除外した値の個数だけゼロでない有意な強度値が連続していることを示す。そのため、圧縮データのP’の位置から、P−P’だけ進んだ位置の値を読み出せば、指定された位置の強度値が判明する。
【0025】
指定された質量電荷比に対応する位置Pは、インデクス情報のリストに対する検索により、その中から最も値の近いものを探し出す必要がある。一般的には、インデクス情報の原スペクトルデータの位置リスト部分を先頭から順に探索し、P以上の値が見つかったならばその一つ手前の位置を該当位置として選出すればよい。ただし、原スペクトルデータの質量電荷比範囲が広い場合や質量分解能が高い場合には、1次元配列の要素数が膨大になり、上述したようなP以上の値の検索処理自体に多大な時間が掛かることがある。そこで、この探索処理に要する時間を短縮するために、即ち、指定された質量電荷比に対応する位置Pに最も近い、インデクス情報のリスト内の数値を単純な演算により求めるために、2次インデクスを補助的に利用するようにしてもよい。
【0026】
2次インデクスは、例えば、原スペクトルデータの1次元配列において所定のデータ位置間隔毎に、そのデータの位置よりも手前でその位置の値に最も近いデータがインデクス情報のリストにおいて存在する行の順番(原スペクトルデータの1次元配列上の位置情報と圧縮データの1次元配列上の位置情報との組の順番)が示されたテーブルとすることができる。
【0027】
この場合、第1及び第2発明に係る質量分析データ処理方法では、上記各ステップに加えて、原スペクトルデータの1次元配列上でのデータ位置間隔Dを任意に定め、前記インデクス情報に保持された原スペクトルデータの1次元配置上の位置の要素の先頭から、原スペクトルデータ位置の値Pと位置間隔Dをχ倍した値との大小関係を順次比較し、値PがD・χを初めて上回った際の、当該インデクス情報内の一つ手前の要素における原スペクトルデータの格納位置の値を、2次インデクスのX番目の要素に順次書き込むという処理を、D・χが原スペクトルデータの1次元配列の要素数を上回るまで行うことにより、2次インデクスを作成する2次インデクス作成ステップを含むようにすればよい。
【0028】
また、上記2次インデクスがインデクス情報とは別に保持されている場合、情報再現ステップは、所定位置Pの強度値を取得する際に、所定位置Xを位置間隔Dで除した商をMとして、2次インデクスのM番目の要素に格納されている、所定位置Xに最も近いインデクス情報内の位置から原スペクトルデータの格納位置の値Wを読み出し、その読み出された値Wが所定位置Xの値を上回るまで、インデクス情報から原スペクトルデータ格納位置の値を順方向に読み出してゆき、その読み出された値が所定位置Xより大きくなったならば、その時点でのインデクス情報の原スペクトルデータの格納位置の要素の一つ手前の位置の値を読み出し、その読み出された値を圧縮データの1次元配列上で所定位置が含まれる強度値の並びの開始位置とし、所定位置Xの強度値を読み出すようにすればよい。
【0029】
このように2次インデクスを用いることにより、原スペクトルデータの要素数が多く且つスペクトル自体も比較的複雑であるために、インデクス情報のリストの行数が多いような場合でも、迅速に目的とする位置対応情報を取得し、目的とする原データに対応した圧縮データを読み出して原データの強度値を求めることができる。それにより、例えば所望の質量分析データを取得したり所望の質量電荷比における質量イメージング画像を作成したりする際の処理の時間短縮化を図ることができる。
【0030】
また上記課題を解決するために成された第3発明は、第1発明に係るデータ処理方法を用いることにより、質量分析により収集された強度情報の1次元配列である原スペクトルデータを処理して記憶し、ユーザの指示に応じて記憶されたデータに基づいて原スペクトルデータを復元し該データ又は該データに基づく分析結果を出力する質量分析装置において、
a)原スペクトルデータに対し所定のアルゴリズムに従って圧縮処理を実行し、得られた1次元配列である圧縮データを第1記憶領域に格納する圧縮手段と、
b)前記原スペクトルデータの1次元配列上の位置と、該位置における強度情報に対応した圧縮後情報が前記圧縮データの1次元配列上で存在する位置と、を関連付けるインデクス情報を作成し、該インデクス情報を前記第1記憶領域とは異なる第2記憶領域に格納するインデクス情報作成手段と、
c)原スペクトルデータの1次元配列上の或る位置が指定されて該指定位置における強度情報の出力が指示されたとき、前記第2記憶領域に格納されている前記インデクス情報を参照して前記指定位置に対応する必要な圧縮情報の格納位置を認識して前記第1記憶領域から該当する圧縮後情報を読み出し、該圧縮後情報に対する伸張処理を実行して前記指定位置における強度情報を求める情報再現手段と、
を備えることを特徴としている。
【0031】
また、上記課題を解決するために成された第4発明は、第2発明に係るデータ処理方法を用いることにより、試料上の複数の測定部位に対してそれぞれ質量分析を実行することにより収集された、強度情報の1次元配列である原スペクトルデータが前記測定部位の空間位置情報に関連付けられてなる質量分析イメージングデータを処理して記憶し、ユーザの指示に応じて記憶されたデータに基づいて原スペクトルデータを復元し該データ又は該データに基づく分析結果を出力する質量分析装置において、
a)各測定部位の原スペクトルデータに対し所定のアルゴリズムに従って圧縮処理を実行し、得られた1次元配列である圧縮データを第1記憶領域に格納する圧縮手段と、
b)測定部位毎に、前記原スペクトルデータの1次元配列上の位置と、該位置における強度情報に対応した圧縮後情報が前記圧縮データの1次元配列上で存在する位置と、を関連付けるインデクス情報を作成し、該インデクス情報を前記第1記憶領域とは異なる第2記憶領域に格納するインデクス情報作成手段と、
c)所望の質量分析イメージング画像の質量電荷比が指定されたとき、該質量電荷比に対応する原スペクトルデータの1次元配列上の位置を算出する位置取得手段と、
d)全ての又は指定された範囲に含まれる測定部位毎に、前記第2記憶領域に格納されている前記インデクス情報を参照して前記位置取得手段で算出された位置に対応する必要な圧縮情報の格納位置を認識して前記第1記憶領域から該当する圧縮後情報を読み出し、該圧縮後情報に対する伸張処理を実行して前記位置における強度情報を求める情報再現手段と、
e)前記情報再現手段により取得された各測定部位の強度情報とそれら測定部位の空間位置情報とを用いて、所望の質量電荷比に対する強度情報の2次元分布を示す質量分析イメージング画像を作成する画像作成手段と、
を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0032】
第1及び第2発明に係る質量分析データ処理方法並びに第3及び第4発明に係る質量分析装置によれば、インデクス情報を作成するために圧縮処理対象のデータ長を制限する必要はないため、例えばランレングス符号化を用いる場合、原スペクトルデータの1次元配列内の同一値の連長の最後までランレングス符号化することができる。このため、効率の良いデータ圧縮が可能である。また、処理高速化のための原データの圧縮データとの対応関係を示すインデクス情報を保持しながら、圧縮データについては何らの変更を加えずに済む。そのため、インデクス情報の存在を全く想定していない、単なるデータ圧縮/伸張のみを行うデータ処理を用いても問題なくスペクトルデータの再現を行うことができる。即ち、第1乃至第4発明によれば、インデクス情報を利用した読み出しの高速化を図りつつも、スペクトルデータの処理の下位互換性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る質量分析データ処理方法を実施するための質量分析装置の一実施例の概略構成図。
【図2】本発明の一実施例である質量分析データ処理方法におけるデータ圧縮例を示す図。
【図3】本実施例の質量分析データ処理方法におけるインデクス作成例を示す図。
【図4】本実施例の質量分析データ処理方法におけるインデクス作成処理手順を示すフローチャート。
【図5】本実施例の質量分析データ処理方法におけるインデクスを利用した原データ復元処理手順を示すフローチャート。
【図6】本発明の他の実施例である質量分析データ処理方法における2次インデクス作成処理手順を示すフローチャート。
【図7】他の実施例である質量分析データ処理方法における2次インデクス作成例を示す図。
【図8】他の実施例の質量分析データ処理方法における2次インデクスを利用した原データ復元処理手順を示すフローチャート。
【図9】イメージング質量分析装置より得られるデータとそれに基づく表示処理の概要説明図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る質量分析データ処理方法及び該方法を用いた質量分析装置の一実施例を、添付図面を参照して説明する。
まず、本発明の一実施例である質量分析データ処理方法について、図2〜図5を参照して述べる。図2は本実施例の質量分析データ処理方法におけるデータ圧縮例を示す図、図3は本実施例の質量分析データ処理方法におけるインデクス作成例を示す図である。
【0035】
ここでは、図2上部に示すような横軸が質量電荷比m/z、縦軸が強度であるマススペクトルを構成するデータを圧縮処理する。或る質量電荷比に対する1つのスペクトルデータは2バイトのデータ(ここではHEX表示で記し、本明細書中ではHEX表示は括弧「」囲みで示す)であり、質量電荷比の小さい順にこのデータが並んだものが原スペクトルデータの1次元配列である。なお、飛行時間型質量分析装置の場合には、まず飛行時間スペクトルが得られ、飛行時間が質量電荷比に換算されるから、換算前の飛行時間スペクトルを構成するデータを対象としても同様である。
【0036】
[原スペクトルデータの圧縮処理]
質量分析により得られたマススペクトルデータを圧縮する際には、該圧縮に先立って、スペクトルデータの1次元配列に対し、強度値が設定されたノイズレベル未満であるか否かを判定し、ノイズレベル未満である小さな強度値はゼロに置き換える。一方、ノイズレベル以上の強度値はそのままにする。一般にマススペクトルや飛行時間スペクトルには、検出器のノイズなどに由来する微小で無意味な信号が多く含まれるが、上記処理により、無意味な信号を除去することができる。こうした処理を行うと、有意なピーク以外の部分では強度値ゼロが連続する状態となることが多い。
【0037】
次に、上記処理後の原スペクトルデータの1次元配列に対し、質量電荷比が小さなデータから順番(図2中の下向きの矢印の順)に強度値をチェックしてゆき、強度ゼロ(図2、図3中では「0000」)値が2個以上連続する場合には、その連続部分をその連続個数に置き換える。ただし、連続個数の最大は32767個であり、それ以上強度ゼロデータが連続する場合には、それまでの部分を「7FFF」に置き換え、その後の強度ゼロデータの連続個数を圧縮データ配列の次の行に格納する。
【0038】
一方、原スペクトルデータ配列上で強度がゼロでない、つまりは有意な強度を示すデータが1個以上連続する場合には、圧縮データ配列上において、その連続部分の先頭にその連続個数を格納するとともに、その後に強度値を順次格納していく。なお、この場合の連続個数も最大32767個までであり、それ以上は再度その位置から同様のアルゴリズムで連続個数を格納する。また、連続部分の先頭に付されるゼロでない強度値の連続個数を圧縮データ配列上に格納する際には、2バイトデータの最上位ビット(MSB)を”1”に設定する。つまり、連続個数を示す数値は2バイト(16ビット)データのうちのMSBを除く15ビットで表される。したがって、連続個数が32768(=215)個以上である場合には、連続個数を示す数値が「7FFF」より大きくなるので強度ゼロではないデータ値の連続であることがすぐに分かり、2進数ではMSBを除いた数値、またHEX表示では「7FFF」を減じた数値が実際のデータ値の連続個数となる。
【0039】
例えば図2の例では、まず原スペクトルデータ配列の先頭から強度ゼロでない有意なデータ値が5個連続するから、圧縮データ配列においては、まず連続部分の先頭に、MSBを”1”とし、それ以外のビットで5を表した「8005」を格納し、その後に原スペクトルデータ配列上の5個のデータ値をそのまま圧縮データ配列上に連ねる。したがって、原スペクトルデータ配列上の5個の連続データは圧縮データ配列上の6個の連続データに対応する。その後、原スペクトルデータ配列上では強度ゼロデータが4個連続するから、この連続部分は圧縮データ配列上では「0004」である1個のデータに置き換えられる。以上のような規則に従って、原スペクトルデータ配列は圧縮データ配列に変換される。上記説明から明らかなように、この圧縮アルゴリズムでは、原スペクトルデータ配列において強度ゼロデータの連続個数が多いほど圧縮効率は高くなる。
【0040】
[原スペクトルデータと圧縮データとを対応付けるインデクスの作成]
インデクスは、原スペクトルデータ配列上の位置と圧縮データ配列上の位置との対応関係を示すものである。具体的には、インデクスは、原スペクトルデータ配列上で強度ゼロが2個以上連続する部分の開始位置(例えば図3に示す原スペクトルデータ配列の6番目)とその連続部分に対応する圧縮データ配列上の位置(例えば図3に示す圧縮データ配列の7番目)とを一つの組とするとともに、原スペクトルデータ配列上で有意な強度を持つデータの並びの開始位置(例えば図3に示す原スペクトルデータ配列の10番目)とその並びに対応する圧縮データ配列上の位置(例えば図3に示す圧縮データ配列の8番目)とを一つの組とし、1組を1行として各組の位置対応情報をリスト化したものである。
【0041】
インデクス作成処理手順を図4のフローチャートに示す。また、図4の左方には、フローチャート中の特定の処理に対応した、圧縮データ配列上での読み出し位置の移動状況を例示している。図4において、変数iは原スペクトルデータ配列上の位置、変数jは圧縮データ配列上の位置、変数intensityは圧縮データ配列から読み込んだ或る1つのデータ値である。
【0042】
原スペクトルデータ配列及び圧縮データ配列が与えられてインデクス作成処理が開始されると、まずi=1、j=1として、インデクスの1行目にi=1、j=1を書き込む(ステップS1)。そして、圧縮データ配列上でj=1に格納されている、つまりは先頭行のデータ値を読み込んでintensityに設定する(ステップS2)。図3の例では、「8005」が読み出されてintensityに設定される。
【0043】
次に、変数intensityのMSBが0であるか否かを判定する(ステップS3)。上述した圧縮アルゴリズムの規定により、MSBが0であればそのデータは強度ゼロの連続個数を示し、MSBが1であればそのデータは有意なデータの連続個数を示す筈である。図3の例では、この時点でintensityに設定されている「8005」のMSBは0ではないからステップS3からS4へと進み、intensityのMSBを強制的に0に置き換える。その結果、intensityの値は「8005」から「0005」に修正される。次に、変数i、jをそれぞれ、i←i+intensity、j←j+intensity+1と置き換え、その置き換え後のi、jをインデクスの次の行に書き込む(ステップS5)。上記例では、i=1+5=6、j=1+5+1=7となり、これがインデクスの2行目に書き込まれる。
【0044】
次いで、圧縮データ配列上で現位置からintensity+1だけ進んだ位置のデータ値を読み込んでintensityに代入する(ステップS6)。上記例では、intensityが5であるときに1番目から6だけ進んだ位置、つまり7番目のデータ値を読み込む。もし、ここにデータ値が存在しなければ(ステップS9でNo)処理を終了するが、データ値が存在すればステップS3に戻る。上記例では、7番目のデータ値を読み込むとintensityは「0004」となり、ステップS3に戻るとMSBが0であるためにステップS7に進む。ステップS7では、変数i、jをそれぞれ、i←i+intensity、j←j+1と置き換え、その置き換え後のi、jをインデクスの次の行に書き込む。したがって、上記例では、i=6+4=10、j=7+1=8となり、この組み合わせがインデクスの3行目に書き込まれる。
【0045】
その後、圧縮データ配列上で現位置から1だけ進んだ位置のデータ値を読み込んでintensityに設定し(ステップS8)上述のステップS9に進む。上記例では、圧縮データ配列上で7番目から1だけ進んだ位置、つまり8番目のデータ値を読み込むのでintensityは「8006」となり、ステップS9からS3へと戻って上述したステップS3、S4、S5、S6の処理を実行することになる。それによって、インデクスの4行目に、i=16、j=15が書き込まれることになる。
【0046】
以上のような処理により、原スペクトルデータ配列において強度ゼロの連続部分の開始位置又は強度ゼロ以外の有意な強度の並びの開始位置と、圧縮データ配列において上記開始位置にそれぞれ対応する位置とを示すリスト(対応位置情報)が作成される。このインデクスは圧縮データに基づいて原スペクトルデータを復元する際に必須のものではないが、以下に説明するように、このインデクスを利用することで任意の質量電荷比に対する強度値の算出が高速に行えるようになる。
【0047】
[インデクスを用いた指定質量電荷比に対する強度値の取得]
圧縮データとインデクスとが保存されている状態で、例えば任意の質量電荷比に対する強度値を求めたい場合には以下の処理を実行する。
インデクスを用いた強度値読み出し処理手順の詳細を図5のフローチャートに示す。
【0048】
まず、任意の質量電荷比が指定されると、原スペクトルデータ配列上で、指定された質量電荷比に対する位置Xが算出される(ステップS11)。実際には、原スペクトルデータの1次元配列の要素の中で指定された質量電荷比に最も近い位置を求めればよい。或いは、指定された質量電荷比の前後の2以上の位置を求め、最終的な強度計算時にそれらの加重平均をとった値を、指定された質量電比における強度値として出力してもよい。
【0049】
なお、原スペクトルデータの1次元配列の要素が質量電荷比でなく飛行時間である場合には、指定された質量電荷比を質量分析装置特有の質量電荷比―飛行時間変換テーブルに従って飛行時間値に変換し、その飛行時間値に最も値の近い位置を求めればよい。
【0050】
上述のようにXが決まったならば、インデクスを参照し、該インデクスの原データの位置情報のリストの中からXよりも小さい値で且つ最大のものを選出する。この選出された値が存在する位置がSである。そして、インデクスにおいて選出された値と組になっている圧縮データ配列上の位置Tを求める(ステップS12)。次いで、圧縮データにアクセスし、T行目のデータ値を読み出してintensityに設定する(ステップS13)。
【0051】
上述したように、ここで採用している圧縮アルゴリズムの規定によれば、読み出された圧縮データの値のMSBが0であれば、この位置以降、このデータ値で示される個数だけ強度ゼロが連続していることを意味している。他方、MSBが1であれば、この位置以降、MSBを除外した値に相当する個数だけ有意な強度データが連続していることを意味する。そこで、intensityのMSBが0であるか否かを判定し(ステップS14)、MSBが0であると分かればintensityをゼロデータに置き換え(ステップS15)、これを指定された質量電荷比m/zに対応する原スペクトルデータ配列上の位置Xにおける強度値として出力する(ステップS17)。
【0052】
他方、ステップS14においてintensityのMSBが0でないと判定されると、圧縮データ配列上で、T行目から(X−S)行目行先のデータ値を読み出してintensityに設定し(ステップS16)、ステップS17へ進む。これにより、原スペクトルデータ配列上の位置Xにおける強度値が求まる。
【0053】
[質量分析装置の構成及び動作]
図1は、上述した質量分析データ処理方法を実施するためのイメージング質量分析装置の一実施例の概略構成図である。この質量分析装置は、試料に対して図9で説明したような2次元的な質量分析を実行して測定点毎にマススペクトルデータを取得するイメージング質量分析部1と、上述した質量分析データ処理方法を実行するデータ処理部2と、該データ処理部2により圧縮されたデータやインデクスを保存するデータ保存部3と、ユーザが操作する操作部4と、分析結果等を表示する表示部5と、を備える。データ処理部2の実体はCPU、RAM、ROMなどを含むパーソナルコンピュータであり、機能ブロックとして、スペクトルデータ収集部20、メインメモリ21、データ圧縮処理部22、データ伸張処理部23、インデクス作成処理部24、データ読み出し処理部25、イメージング画像作成処理部26などを含む。また、データ保存部3は、圧縮データを格納する圧縮データ記憶領域30とインデクスを格納するインデクス記憶領域31とを独立に有する。
【0054】
スペクトルデータ収集部20は、イメージング質量分析部1において質量分析により得られたマススペクトルデータを読み込み、メインメモリ21若しくは図示しない外部のハードディスク等の補助記憶装置、又はデータ保存部3において図示した記憶領域30、31以外の領域に一時的に格納する。そして、データ圧縮処理部22は上述した圧縮アルゴリズムに従って、各測定点に対するマススペクトルデータをそれぞれデータ圧縮し、データ保存部3の圧縮データ記憶領域30に格納する。また、インデクス作成処理部24は測定点毎に、マススペクトルデータ(原スペクトルデータ)と圧縮データとを利用して、上述した処理手順によりインデクスを作成し、データ保存部3のインデクス記憶領域31に格納する。
【0055】
マススペクトルデータ(原スペクトルデータ)配列と圧縮データ配列との組毎にインデクスが作成されるから、測定点数と同数のインデクスが作成されることになる。質量分析により収集された全てのマススペクトルデータに対する圧縮データとインデクスとがデータ保存部3に格納されたならば、元のマススペクトルデータは不要であるので破棄される。
【0056】
データ保存部3に保存されているデータを用いてユーザが質量分析イメージング画像を表示したい場合、ユーザは観察したい質量電荷比の値をマススペクトル上などにおいて決定し操作部4より指示する。この指示を受けて、データ読み出し処理部25はデータ保存部から必要な圧縮データとインデクスとをメインメモリ21に読み込み、データ伸張処理部23は測定点毎に、上述した処理手順により、指定された質量電荷比に対応する強度値を算出する。ここでは、データ圧縮に可逆的なランレングス符号化が利用されているため、圧縮データから原スペクトルデータと同じ強度値が復元される。イメージング画像作成処理部26は測定点毎に得られた強度値を2次元的に配置することにより、指定された質量電荷比に対する質量分析イメージング画像を作成し、これを表示部5の画面上に描出する。
【0057】
前述のように、インデクスを利用することにより目的の質量電荷比に対する強度値が迅速に求まるため、質量分析イメージング画像の表示を短時間で行うことができる。また、インデクスは圧縮データ記憶領域30と別のインデクス記憶領域31に保存されているため、圧縮データ記憶領域30から読み出した圧縮データに対しインデクスを利用しない従来のデータ伸張処理を実行することにより、処理時間は掛かるものの、目的とする質量電荷比に対する強度値を求めることができ、それにより質量分析イメージング画像を作成・表示することができる。したがって、インデクスを利用したデータ復元処理を実行しない装置においても、データ保存部3に保存されているデータを用いて質量分析イメージング画像の表示を行うことができる。
【0058】
[質量分析データ処理方法の別の実施例]
収集されるマススペクトルデータの質量電荷比範囲が広い場合や質量電荷比範囲が狭くても質量分解能が高い場合には、原スペクトルデータ配列の要素数が多くなる。さらに、スペクトルが複雑な場合にはインデクスが複雑になり(行数が多くなり)、インデクスを参照した検索処理に要する時間が長くなるおそれがある。このような場合に、検索時間を短くするためには、インデクスを参照する際に2次インデクスを補助的に使用することが有効である。以下、インデクスに加えて2次インデクスを用いる実施例について、図6〜図8を参照して説明する。
【0059】
図6は2次インデクス作成処理手順を示すフローチャート、図7は図3に示したデータに基づいて作成されたインデクスに対する2次インデクスの作成例を示す図、図8は2次インデクスを用いた強度値読み出し処理手順を示すフローチャートである。
【0060】
まず図6、図7を参照して、インデクスが作成された後に引き続き実行される2次インデクス作成処理手順を説明する。図6において、変数iは2次インデクス内の位置(行)、変数jは原スペクトルデータ配列上の位置である。2次インデクスを作成する際には、任意のデータ点数間隔Dを定義しておく。以下の例では、D=10であるとする。
【0061】
2次インデクス作成処理が開始されると、まず、インデクスの1行目の原スペクトルデータ位置の値を読み出し、これをPに設定する(ステップS21)。図7の例では、P=1である。次に、i=1、j=1とし、2次インデクスのi行目にjを書き込む(ステップS22)。したがって、図7に示すように、2次インデクスの1行目に1が書き込まれる。
【0062】
次に、i×10(=D)の値がP以上であるか否かを判定する(ステップS23)。i=1、P=1である場合、ステップS23においてYesと判定されるからステップS26へと進み、インデクスの次の行の原スペクトルデータ位置の値を読み出してこれをPに設定し、jの値をインクリメントする(ステップS27)。図7の例では、インデクスの2行目の原スペクトルデータ位置の値は6であるからP=6、j=2となる。インデクスに読み出すべき値がないときにはステップS28でNoと判定されて処理を終了するが、データ値が存在すればステップS23へ戻る。i=1、P=6の場合、ステップS23において再びYesと判定されるから、上述のようにS26、S27と進み、図7の例では、インデクスの3行目の原スペクトルデータ位置の値が読み出されてP=10、j=3となってステップS28からS23へと戻る。
【0063】
i=1、P=10の場合でもステップS23で再びYesと判定されるから、上述のようにS26、S27と進み、図7の例では、インデクスの4行目の原スペクトルデータ位置の値が読み出されてP=16、j=4となってステップS28からS23へと戻る。i=1、P=16の場合にはステップS23でNoと判定されるため、2次インデクスのi+1行目の位置にj−1が書き込まれる(ステップS24)。つまり、i=1、j=4であれば、図7に示すように、2次インデクスの2行目にj−1=3が書き込まれる。そしてiをインクリメントし(ステップS25)、ステップS23に戻る。
【0064】
即ち、図6に示す処理では、インデクスの先頭行から順に原スペクトルデータ位置の値を読み出して、2次インデクスの書き込み対象の行数の値(i)にデータ点数間隔Dを乗じた値と比較する。インデクスから読み出された値がi×Dを初めて超えたときに、インデクスにおける値の読み出し行の一つ手前の行の位置情報を、2次インデクスの書き込み対象の行(i+1)に格納する。この処理をインデクスの最終行まで実行することにより2次インデクスが完成する。Dの値は任意に決めることができる。Dの値を大きくするほど2次インデクスは粗くなり、インデクスを参照した検索の際の時間が長くなるが、インデクスを含めたデータ量は少なくなるため圧縮効率は高いといえる。
【0065】
次に、2次インデクス使用してデータを復元する際の処理について図8を参照して説明する。
目的とする質量電荷比(又は飛行時間等)が指定され、それに対応する原スペクトルデータ配列上の位置Xが得られたならば、そのXをデータ点数間隔Dで除しその商Mを求める(ステップS31)。そして2次インデクスにアクセスし、M+1行目の位置に格納されている数値を読み出しVに設定する(ステップS32)。図3、図7の例では、例えば原スペクトルデータ配列上の12番目(「0800」)の強度値を求めたいときには、X=12、D=10であるから、M=1であり、2次インデクスの2行目の値を読み出してV=3とする。
【0066】
次に、インデクスのU=V+1行目に格納されている原スペクトルデータ位置の値を読み出し、この値をWとする(ステップS33)。そして、このWとXとを比較し、XがW以上であれば、インデクスのU−1行目に格納されている圧縮データ位置を読み出してWに設定する(ステップS35)。そして、圧縮データ配列上でW行目のデータ値を読み出して、上述したようにW行目以降のデータ値を用いた復元処理を実行する。
【0067】
例えば、V=3ではインデクスの4行目に格納されている原スペクトルデータ位置の値は16であるから、W=16、X=12でステップS34ではNoと判定される。したがって、インデクスでU−1、つまり3行目に格納されている圧縮データ位置の値として8を読み出してT=8に設定し、圧縮データ配列上では8番目の値「8006」を読み出して、上述したようなデータ復元処理を実行して「0800」の強度値を取得する。
【0068】
一方、ステップS34でXがWよりも小さければ、インデクスで次の行の原スペクトルデータ位置の値を読み出してこれをWとし(ステップS36)、Uをインクリメントして(ステップS37)ステップS34へと戻る。したがって、インデクス内で原スペクトルデータ位置の値がXよりも大きくなるまでステップS34、S36、S37の処理を繰り返し、原スペクトルデータ位置の値がXよりも大きくなると、インデクス内でその原スペクトルデータ位置の一行手前に格納されている値と組である圧縮データ位置の数値を読み出し、後は上述したデータ復元処理を行う。
【0069】
以上のようにして2次インデクスを使用することにより、インデクス内で必要となる情報に迅速にアクセスできるので、インデクスを参照したデータ復元を迅速に実行することができる。なお、この2次インデクスはインデクスに付随するものであるから、実際の装置においては、インデクスと同じ記憶領域に格納しておけばよい。
【0070】
また、上記実施例はいずれもデータ圧縮にランレングス符号化を用いるものであったがデータ圧縮にエントロピー符号化を用いる場合でも同様である。
また、上記実施例は本発明の一例であり、上記記載以外の点において本発明の趣旨の範囲で適宜に変更、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
【符号の説明】
【0071】
1…イメージング質量分析部
2…データ処理部
20…スペクトルデータ収集部
21…メインメモリ
22…データ圧縮処理部
23…データ伸張処理部
24…インデクス作成処理部
25…データ読み出し処理部
26…イメージング画像作成処理部
3…データ保存部
30…圧縮データ記憶領域
31…インデクス記憶領域
4…操作部
5…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析により収集された強度情報の1次元配列である原スペクトルデータを処理する質量分析データ処理方法であって、
a)原スペクトルデータに対し所定のアルゴリズムに従って圧縮処理を実行し、得られた1次元配列である圧縮データを第1記憶領域に格納する圧縮ステップと、
b)前記原スペクトルデータの1次元配列上の位置と、該位置における強度情報に対応した圧縮後情報が前記圧縮データの1次元配列上で存在する位置と、を関連付けるインデクス情報を作成し、該インデクス情報を前記第1記憶領域とは異なる第2記憶領域に格納するインデクス情報作成ステップと、
c)原スペクトルデータの1次元配列上の或る位置が指定されて該指定位置における強度情報の出力が指示されたとき、前記第2記憶領域に格納されている前記インデクス情報を参照して前記指定位置に対応する必要な圧縮情報の格納位置を認識して前記第1記憶領域から該当する圧縮後情報を読み出し、該圧縮後情報に対する伸張処理を実行して前記指定位置における強度情報を求める情報再現ステップと、
を有することを特徴とする質量分析データ処理方法。
【請求項2】
試料上の複数の測定部位に対してそれぞれ質量分析を実行することにより収集された、強度情報の1次元配列である原スペクトルデータが前記測定部位の空間位置情報に関連付けられてなる質量分析イメージングデータを処理する質量分析データ処理方法であって、
a)各測定部位の原スペクトルデータに対し所定のアルゴリズムに従って圧縮処理を実行し、得られた1次元配列である圧縮データを第1記憶領域に格納する圧縮ステップと、
b)測定部位毎に、前記原スペクトルデータの1次元配列上の位置と、該位置における強度情報に対応した圧縮後情報が前記圧縮データの1次元配列上で存在する位置と、を関連付けるインデクス情報を作成し、該インデクス情報を前記第1記憶領域とは異なる第2記憶領域に格納するインデクス情報作成ステップと、
c)所望の質量分析イメージング画像の質量電荷比が指定されたとき、該質量電荷比に対応する原スペクトルデータの1次元配列上の位置を算出する位置取得ステップと、
d)全ての又は指定された範囲に含まれる測定部位毎に、前記第2記憶領域に格納されている前記インデクス情報を参照して前記位置取得ステップで算出された位置に対応する必要な圧縮情報の格納位置を認識して前記第1記憶領域から該当する圧縮後情報を読み出し、該圧縮後情報に対する伸張処理を実行して前記位置における強度情報を求める情報再現ステップと、
e)前記情報再現ステップにより取得された各測定部位の強度情報とそれら測定部位の空間位置情報とを用いて、所望の質量電荷比に対する強度情報の2次元分布を示す質量分析イメージング画像を作成する画像作成ステップと、
を有することを特徴とする質量分析データ処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の質量分析データ処理方法であり、試料上の顕微光学画像を撮影する画像撮影手段を具備するイメージング質量分析装置で収集された質量分析イメージングデータを処理する方法であって、
前記画像作成ステップでは、前記画像撮影手段により得られる試料の顕微光学画像上の対応位置に所望の質量電荷比に対する強度情報を表示することにより質量分析イメージング画像を作成することを特徴とする質量分析データ処理方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の質量分析データ処理方法であって、
前記圧縮ステップは、原スペクトルデータの少なくとも一部を、ランレングス符号化若しくはエントロピー符号化又はそれらを組み合わせた符号化のいずれかにより可逆圧縮することを特徴とする質量分析データ処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の質量分析データ処理方法であって、
前記圧縮ステップは、原スペクトルデータの1次元配列において一定の強度値以下を特定値に置き換えた後に、その配列順に従って前記特定値が2以上連続する部分をその連続する個数の値に置き換える一方、前記特定値以外の強度値の並びに対してはそれらの並びの個数をそれらの強度値の並びの先頭に挿入するという圧縮処理を行い、
前記インデクス情報作成ステップは、原スペクトルデータの1次元配列における前記特定値の連続開始位置及び該特定値以外の強度値の並びの開始位置についての位置情報と、圧縮データの1次元配列における前記特定値の連続開始位置及び前記特定値以外の強度値の並びの開始位置に対応する位置情報との、2つの数値を組にしたリストをインデクス情報として作成し、
前記情報再現ステップは、所定位置の強度値を取得する際に、所定位置が含まれる強度値の並びの開始位置を前記リストにおいて検索し、圧縮データの配列の該当位置から強度値を読み出すことを特徴とする質量分析データ処理方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の質量分析データ処理方法であって、
原スペクトルデータの1次元配列において所定のデータ位置間隔毎に、そのデータの位置よりも手前でその位置の値に最も近いデータがインデクス情報のリストにおいて存在する行の順番が示された2次インデクスを作成する2次インデクス作成ステップをさらに有することを特徴とする質量分析データ処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の質量分析データ処理方法であって、
前記2次インデクス作成ステップは、原スペクトルデータの1次元配列上でのデータ位置間隔Dを任意に定め、前記インデクス情報に保持された原スペクトルデータの1次元配置上の位置の要素の先頭から、原スペクトルデータ位置の値Pと位置間隔Dをχ倍した値との大小関係を順次比較し、値PがD・χを初めて上回った際の、当該インデクス情報内の一つ手前の要素における原スペクトルデータの格納位置の値を、2次インデクスのX番目の要素に順次書き込むという処理を、D・χが原スペクトルデータの1次元配列の要素数を上回るまで行うことにより、2次インデクスを作成するものであることを特徴とするデータ処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の質量分析データ処理方法であって、
前記情報再現ステップは、所定位置Pの強度値を取得する際に、所定位置Xを位置間隔Dで除した商をMとして、2次インデクスのM番目の要素に格納されている、所定位置Xに最も近いインデクス情報内の位置から原スペクトルデータの格納位置の値Wを読み出し、その読み出された値Wが所定位置Xの値を上回るまで、インデクス情報から原スペクトルデータ格納位置の値を順方向に読み出してゆき、その読み出された値が所定位置Xより大きくなったならば、その時点でのインデクス情報の原スペクトルデータの格納位置の要素の一つ手前の位置の値を読み出し、その読み出された値を圧縮データの1次元配列上で所定位置が含まれる強度値の並びの開始位置とし、所定位置Xの強度値を読み出すことを特徴とする質量分析データ処理方法。
【請求項9】
質量分析により収集された強度情報の1次元配列である原スペクトルデータを処理して記憶し、ユーザの指示に応じて記憶されたデータに基づいて原スペクトルデータを復元し該データ又は該データに基づく分析結果を出力する質量分析装置において、
a)原スペクトルデータに対し所定のアルゴリズムに従って圧縮処理を実行し、得られた1次元配列である圧縮データを第1記憶領域に格納する圧縮手段と、
b)前記原スペクトルデータの1次元配列上の位置と、該位置における強度情報に対応した圧縮後情報が前記圧縮データの1次元配列上で存在する位置と、を関連付けるインデクス情報を作成し、該インデクス情報を前記第1記憶領域とは異なる第2記憶領域に格納するインデクス情報作成手段と、
c)原スペクトルデータの1次元配列上の或る位置が指定されて該指定位置における強度情報の出力が指示されたとき、前記第2記憶領域に格納されている前記インデクス情報を参照して前記指定位置に対応する必要な圧縮情報の格納位置を認識して前記第1記憶領域から該当する圧縮後情報を読み出し、該圧縮後情報に対する伸張処理を実行して前記指定位置における強度情報を求める情報再現手段と、
を備えることを特徴とする質量分析装置。
【請求項10】
試料上の複数の測定部位に対してそれぞれ質量分析を実行することにより収集された、強度情報の1次元配列である原スペクトルデータが前記測定部位の空間位置情報に関連付けられてなる質量分析イメージングデータを処理して記憶し、ユーザの指示に応じて記憶されたデータに基づいて原スペクトルデータを復元し該データ又は該データに基づく分析結果を出力する質量分析装置において、
a)各測定部位の原スペクトルデータに対し所定のアルゴリズムに従って圧縮処理を実行し、得られた1次元配列である圧縮データを第1記憶領域に格納する圧縮手段と、
b)測定部位毎に、前記原スペクトルデータの1次元配列上の位置と、該位置における強度情報に対応した圧縮後情報が前記圧縮データの1次元配列上で存在する位置と、を関連付けるインデクス情報を作成し、該インデクス情報を前記第1記憶領域とは異なる第2記憶領域に格納するインデクス情報作成手段と、
c)所望の質量分析イメージング画像の質量電荷比が指定されたとき、該質量電荷比に対応する原スペクトルデータの1次元配列上の位置を算出する位置取得手段と、
d)全ての又は指定された範囲に含まれる測定部位毎に、前記第2記憶領域に格納されている前記インデクス情報を参照して前記位置取得手段で算出された位置に対応する必要な圧縮情報の格納位置を認識して前記第1記憶領域から該当する圧縮後情報を読み出し、該圧縮後情報に対する伸張処理を実行して前記位置における強度情報を求める情報再現手段と、
e)前記情報再現手段により取得された各測定部位の強度情報とそれら測定部位の空間位置情報とを用いて、所望の質量電荷比に対する強度情報の2次元分布を示す質量分析イメージング画像を作成する画像作成手段と、
を備えることを特徴とする質量分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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