説明

質量分析器内のイオン流束を計算するためのシステムおよび方法

イオン流束を計算するためのシステムおよび方法。一実施形態において、質量分析器は、分析期間中に複数のパルスによってサンプルからイオンのビームを発するためのイオン源と、前記イオン源の下流に配置される検出器とを含む。すべてのパルスの対応パルス時間セグメントに各ビンが対応する、繰り返し可能な一連のビンを決定するように構成されるクロックが提供される。さらに、検出器とクロックとに動作可能に結合され、分析期間中の合計パルス数を決定するように構成される制御装置が提供される。制御装置はさらに、繰り返し可能な一連のビンにおける少なくとも1つビンについて、分析期間中にイオン衝撃が検出されなかった対応パルス時間セグメントの数を決定するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、質量分析の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
サンプルの質量スペクトルを作成し、その組成を決定するのに質量分析器が用いられる。これは、サンプルをイオン化し、異なる質量のイオンを分離し、イオン流束の強度を測定し、それらの相対存在度を記録することにより通常実施される。例えば、飛行時間(TOF)質量分析器では、イオンがパルス化され、所定の飛行経路を移動する。イオンは引き続いて検出器によって記録される。イオンが検出器に達するのに必要な時間である「飛行時間」は、イオンの質量電荷数(m/z)を計算するのに用いられる場合もある。
【0003】
しかしながら、今日まで、質量分析器で典型的に用いられる(アノードとしても知られている)検出器は、特定の時間セグメントあるいはビン中の1つ以上のイオン衝撃を区別することができない。結果として、ビン期間中に2つ以上のイオンが検出器に影響を与えると、検出器が判定できなくなる。情報が失われ、分析器の動作範囲が減少する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、出願人らは、質量分析において、さらに効率的にイオン流束を計算するシステムおよび方法に対する必要性を認識した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本発明は、分析期間中にサンプルに対する少なくとも1つのイオン流束を計算する方法に関する。本方法は、
(a)おのおののパルス中にイオンのビームがサンプルから放出される複数のパルスを生成するステップと、
(b)すべてのパルスの対応パルス時間セグメントに各ビンが対応する、繰り返し可能な一連のビンを決定するステップと、
(c)各パルスの間にイオンが検出器に与える衝撃を検出するステップと、
(d)分析期間中にパルスの合計数を決定するステップと、
(e)繰り返し可能な一連のビンにおける少なくとも1つのビンについて、対応パルス時間セグメント中にイオン衝撃が検出されなかったパルス数を決定するステップと、
(f)イオン流束が計算され、ここで、繰り返し可能な一連のビンにおける少なくとも1つのビンに対応するパルス時間セグメント中にイオン衝撃を検出しない確率にイオン流束が関連付けられるステップと、を含む。
【0006】
別の態様において、本発明は質量分析器に関するものである。質量分析器は、分析期間中に複数のパルスによってサンプルからイオンのビームを発するためのイオン源と、前記イオン源の下流に配置される検出器とを含む。すべてのパルスの対応パルス時間セグメントに各ビンが対応する、繰り返し可能な一連のビンを決定するように構成されるクロックが提供される。さらに、検出器とクロックとに動作可能に結合され、分析期間中の合計パルス数を決定するように構成される制御装置が提供される。制御装置はさらに、繰り返し可能な一連のビンにおける少なくとも1つビンについて、分析期間中にイオン衝撃が検出されなかった対応パルス時間セグメントの数を決定するように構成される。制御装置はまた、少なくとも1つのビンに対応するイオン流束を計算するように構成され、ここで、繰り返し可能な一連のビンにおける少なくとも1つのビンに対応するパルス時間セグメント中にイオン衝撃を検出しない確率に関連付けられるように前記イオン流束が計算される。
【0007】
さらなる態様において、本発明は、サンプルに対して少なくとも1つのイオン流束を計算するための方法に関する。本方法は、
(a)イオンのグループ内の各イオンが同グループ内の他の全てのイオンと実質的に同じm/zをもつグループをサンプルから集めるステップと、
(b)イオンのグループを放出するステップと、
(c)所定の検出期間中に、放出されたイオンの検出器への衝撃を検出するステップと、
(d)放出されたイオンの衝撃を検出器が検出しなかった検出期間内の合計時間を決定するステップと、
(e)イオンのイオン流束を計算し、ここで前記イオン流束が検出期間中にイオン衝撃を検出しない確率に関連付けられるステップと、を含む。
【0008】
さらに別の態様において、本発明は、光源、検出器、クロック、および制御装置を含む質量分析器に関する。イオン源は、イオンのグループ内の各イオンが同グループ内の他の全てのイオンと実質的に同じm/zをもつグループをサンプルから放出するように構成される。検出器は前記イオン源の下流に配置され、所定の検出期間中に、放出されたイオンの検出器に対する衝撃を検出するように構成される。クロックは、放出されたイオンの衝撃を検出器が検出しなかった検出期間内の合計時間を決定するように構成される。制御装置は、検出器とクロックとに動作可能に結合され、イオンのイオン流束を計算するように構成され、ここで、前記イオン流束が、検出期間中にイオン衝撃を検出しない確率に関連付けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ここで本発明は、単に例であるが、同じ符号が同様の部品を示す以下の図面を参照して記述される。
【0010】
本明細書で用いられる場合、
「検出器」は、検出器により測定されるイオン数に対応するアナログ信号あるいはデジタル信号のいずれかを出力するイオン検出器を意味する。
【0011】
「分析期間」は、検出器からの信号が分析で用いられる持続時間を意味する。
【0012】
「ビン」は、1つあるいは繰り返し可能な一連のビンで構成できる分析期間の時間の1つ以上のセグメントを意味する。各ビンは、特定のm/z値あるいはm/z値の範囲に対応させることができる。
【0013】
「ビン期間」は、単一ビンの持続時間を意味する。
【0014】
「イオンビーム」は、イオンの不連続なグループ、イオンの連続ストリーム、あるいはイオンの擬似連続ストリームを全般的に意味する。
【0015】
「パルス」は、質量分析のためにイオンを放出させるのに用いられる波形を全般的に意味する。パルスの立ち上がり区間といったパルスの一部を用いて一連のビンを開始させることができる。同様に、イオンのビームをパルス化してイオンのパルス化ビームを生成するか、あるいはさらに、パルスを用いてイオンのビームの分析期間を開始することができる。
【0016】
図1を参照すると、本発明により作製され、全体が10で示されるTOF質量分析器が示される。分析器10は、適切にプログラムされたイオン流束計算エンジン14を有するプロセッサまたは中央演算処理装置(CPU)12を備える。(典型的には、キーボードあるいは制御ボタンといった入力構成要素16と、ディスプレイ16といった出力構成要素を含む)入力/出力(I/O)装置16も同様にCPU12に対して動作可能に結合される。好ましくは、データ記憶装置17も同様に設けられる。CPU12はまた、以下でさらに詳細に論じる繰り返し可能な一連のビンを決定するように構成される(計算エンジン14の一部を形成する場合もある)クロックモジュール18を含む。
【0017】
分析器10はまた、分析されるサンプルから生成されるイオンビームを放出するように構成されるイオン源20を含む。当然のことながら、イオン源20からのイオンビームはイオンの連続ストリームの形態が可能であるか、あるいはストリームはパルス化されてイオンのパルス化ビームを生成することが可能であるか、あるいはイオン源20は、イオンのパルス化ビームが放出される一連のパルスを生成するように構成することが可能である。典型的には、パルス数は分析期間中に約10,000個の場合もあるが、この数は用途に応じて増減できる。
【0018】
したがって、当然のことながら、イオン源20は、例えば(ガスクロマトグラフィ源とともに用いられることのある)電子衝撃、化学イオン化、または電界イオン化イオン源といった連続イオン源、あるいは(液体クロマトグラフィ源とともに用いられる場合のある)電気スプレーまたは大気圧化学イオン化イオン源、あるいは脱離電気スプレーイオン化(DESI)、あるいはレーザ脱離イオン化源で構成できる。マトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)といったレーザ脱離イオン化源は、典型的には、イオンのパルス化ビームの放出される一連のパルスを生成することができる。イオン源20はまた、(図示されていない)従来技術で公知のとおり、多重極イオンガイド、リングガイドといったイオン伝送イオンガイド、あるいは四重極マスフィルタといったイオンマスフィルタ、あるいはイオントラップ装置を備えることが可能である。簡潔さのため、イオン源20という用語は、化合物からイオンを発生させる構成要素を記述し、分析対象イオンの検出で利用可能にするものに用いた。タンデムマスフィルタおよびイオントラップで構成されるシステムといった他のタイプのイオン源20が同様に用いられる場合もある。
【0019】
イオン源20の下流に置くことのできる(1つ以上のアノード23を有する)検出器22は、放出イオンの経路上に同様に設けられる。光学素子24、あるいは静電レンズといった他の集束要素はまた、イオンを検出器22に収束させるために、イオン源20と検出器22との間で、放出イオンの経路内に設けることができる。
【0020】
図2は、分析期間中に分析器システム10によって実行され、全体が100で示される方法のステップを示す。(典型的にはI/O装置を通して)分析期間をユーザが開始するという命令を受けとると、計算エンジン14は分析期間(ブロック102)を始めるようにプログラムされる。分析期間が始まると、イオン源20からイオンビームが放出される(ブロック104)。前述のとおり、これらのイオンは一連のパルスで、あるいは連続ストリームで放出できる。典型的には、分析期間が始まる前に、エンジン14によりクロック18が繰り返し可能な一連のビンを決定し、一連のビンは分析期間中に繰り返すことが可能である(ブロック106)。繰り返し可能な一連のビンにおける各ビンのビン期間が他の全てのビンと等しい長さである必要はない。当然のことながら、TOF質量分析器において、例えば、イオンのビームがパルス形態(上で定義されたとおりイオンのパルス化ビーム)で放出されると、すべてのパルスについて、繰り返し可能な一連のビンにおける各ビンに対して、クロック18は対応パルス時間セグメントを生成するか、あるいは追跡する。結果として、「飛行時間」分析は、分析期間中の対応パルス時間セグメントに対して集められるデータに基づいて実施できる。典型的には、ビン期間は通常、アノード23の「不感」時間、すなわち、例だけであるが約14nsの、アノード23がイオン衝撃を検出してから、後のイオン衝撃を検出できるように再設定するまでの間の期間に関連付けるように決定される。
【0021】
すべてのパルス中において、1つ以上のイオンがアノード23に衝撃を与える毎に、衝撃信号がアノード23から送られ、この信号はエンジン14で受信され、エンジン14はまた、そのアノード23に対して、衝撃信号が送られるパルス時間セグメントに対応するビンデータを追跡してデータ記憶装置に保存する(ブロック108)。計算エンジン14はまた、分析期間におけるパルス数をカウントするか、あるいは決定するようにプログラムされる(ブロック110)。典型的には、パルス数は、ユーザによる用途に対してあらかじめ決められ、分析期間の開始前にCPU12内に入力される。一連のビンにおける少なくとも1つのビンについて、各アノード23に対して、計算エンジン14は、衝撃信号がアノード23から受信されなかった分析期間中の対応パルス時間セグメントの数を決定するようにさらにプログラムされる(ブロック112)。
【0022】
精度を改善するため、ブロック112において、アノード23から衝撃信号が受信されず、さらにアノード23が有効でイオン衝撃を検出できる対応パルス時間セグメントの数を計算するように構成されることが全般的に好ましい。前述のとおり、イオンが検出器22上のアノード23に衝撃を与えると、その後の短期間(典型的には、およそ14ns)にわたり、アノード23(あるいはチャネル)は「不感」になり、イオンの衝撃を検出することができなくなる。したがって、精度を改善するために、検出器22のアノード23の「不感時間」内でイオン衝撃が検出された対応パルス時間セグメントを計算エンジン14が除外するのが好ましい。
【0023】
分析期間が終わると(ブロック114)、エンジン14は、各アノード23とは別個にサンプルからイオンビームの1つ以上のイオン流束を計算するように構成される(ブロック116)。これは、繰り返し可能な一連のビンにおける1つのビン(またはビンの範囲)に対応するイオン衝撃データを分析することで実施される。典型的には、各アノード23について、おのおの慎重なm/z、あるいは繰り返し可能な一連のビンでカバーされる全質量範囲にわたる間隔に対して計算される。
【0024】
当然のことながら、「イオン流束を計算する」、あるいはこれに似たような表現は、実際のイオン流束の推定値を計算することを意味するものである。イオン流束はパルス時間セグメント中でイオンを検出しない確率に関連付けられる。好ましくは、イオン流束は以下の式で計算される。
(式1)ψ=−ln(p(x=0))
ここで、ψは(実際のイオン流束を示すWと対比される)推定イオン流束を示し、p(x=0)は、繰り返し可能な一連のビンにおける特定ビン(あるいはビンの間隔)に対応するパルス時間セグメント中に(ブロック112における計算エンジン14で決定される)イオンを検出しない確率を示す。
【0025】
エンジン14はまた、式1で計算されるイオン流束に対する信頼区間を計算するように構成される場合もある(ブロック118)。信頼度はまず以下の式で計算され得る。
【0026】
【化1】

【0027】
【化2】

の間よりもψとψとの間の差を定義する方が都合がよい。流束許容差tが次式(式3)で定義される場合、
(式3) t=|ψ−ψ|/ψ
信頼区間cは次式で計算され得る。
【0028】
【化3】

cは、信頼区間を示し、ψは、式1で計算される推定イオン流束を示し、tは、(I/O装置16を通してユーザが入力する)推定イオン流束に対する許容値あるいは所望の相対誤差を示す。
【0029】
背景説明として、初期のイオン速度に差があるために、同一のm/z(質量/電荷)のビーム収束(および他の効果の)イオンは、TOF機器において、同じ瞬間(すなわち、繰り返し可能な一連のビンにおける同一ビンに対応する同一時間ビンまたはパルス時間セグメント内)に検出器22に対して衝撃を与えない。測定されたイオンのm/zと実際のm/zとの間の差(記録されたm/z−実際のm/z)はランダムな変数であり、平均=0で標準偏差σの正規分布になるが、ここでσの値はシステム10の特性に依存するものの、モデルには無関係であり、有効な仮定としてσは分析中に同じ状態を維持する点だけを重要とする。さらに、イオンが何らかのパルスの分布に似ており、流束が繰り返し可能な一連のビンにおける各ビンに対するパルス座標にわたって一定であるとする。
【0030】
各ビンに対するイオン検出は、対応するビンでイオン流束に等しいパラメータλを用いてポアソン過程としてモデル化できる。
【0031】
【化4】

イオン流束は以下の式で計算される。
【0032】
【化5】

ここで、ψは実際のイオン流束ψの推定値である。検出器22が、放出されるのと同じ程度のイオンを検出できれば、ψの信頼度は母集団の大きさ(すなわち、検出器22(またはアノード23)が不感でなかったパルス数)だけに依存する。
【0033】
実際には、上で説明したとおり、検出器22に対する制限のため、測定されたイオン流束は常にψと等しいか、それより小さい。例えば、2つのイオンが、4つの等しい大きさのアノード23を有する検出器22に達すると、4つのアノードがすべて有効であると仮定すれば、両方のイオンを検出する確率は.75になる。検出器22に衝撃を与える(4個までの)全イオンを検出してカウントする確率は、イオンの数がさらに多くなれば低下する。この例は、上記の式6による信頼性の低い流束の推定値がどのようになるかを示している。
【0034】
あるいは、アノード23に達するイオンが0個であれば、カウントされるのは0個であり、すなわち以下の式となる。
【0035】
【化6】

ここで、確率p(0)は、放出されるイオン数に対して信頼できる統計量である。
【0036】
検出器22に影響を与え(カウントしない)イオンがパラメータλ=ψのポアソン過程であり、ここでψが実際のイオン流束と仮定すると、式1は式5および7から導かれる。
【0037】
「ゼロカウント」の確率を計測することで、実際のイオン流束は、式6よりも高い信頼度で式1から推定できる。
【0038】
システム10は、式1によってイオン流束を計算するものとして示され、記述されてきたが、本発明の精神から離れることなく、この式を変形したものが用いられる場合もあることは理解されるべきである。
【0039】
本方法は、飛行時間型質量分析器に関連付けられた計数システムに対する用途で記述されたが、イオン計数が用いられ、イオン到達時間がランダムな質量分析器に対しても本方法は適用できることは明らかである。
【0040】
例えば、三重四極子質量分析器システムにおいて、1つの質量電荷値(あるいは、前駆/製品質量値の一つの組み合わせ)のイオンを伝送し、一定期間、例えば100ミリ秒にわたってイオン強度を測定するように質量分析器を設定するのが一般的である。この時間間隔中、イオンは平均速度で検出器に達する。測定時間中に到達するイオン数をカウントし、測定時間間隔(例えば、100ms)で分割することでイオン計数率が決定される。
【0041】
しかしながら、検出器(典型的にはチャネル型電子増倍管)、増幅器および弁別器の応答時間のために、検出器システムは実効離散時間ビンを有する。1つの応答時間中に2つ以上のイオンが検出器に達すれば、1つのイオンだけがカウントされる。検出器システムの典型的な応答時間は約15ナノ秒である。したがって、応答時間が既知であれば、こういった計数システムに対して計数補正を行うことができる。測定時間を有効時間ビン(おのおの15ns長)に分割することで、「0カウントのビン」数が測定でき、式4を用いて補正値を得ることができる。
【0042】
例えば、測定時間が100ミリ秒であり、この時間で合計1,00,000個のイオンがカウントされ、検出器システムの応答時間が15nsであることが分かっていれば、以下の補正が適用できる。
測定カウント数=1e6
100ミリ秒の時間ビン数=6.66e6
15ns時間ビン当たりの測定イオン数=1e6/6.66e6=0.16
0カウント時間ビンの確率=0.84
イオン流束は以下の式で計算される。
(式1A)ψ=−ln(p(x=0))
したがって、−ln(p(x=0))=0.174
このように、時間ビン当たり補正イオンカウントが0.174であるため、100ミリ秒当たりの補正イオンカウントは1.16e6である。
【0043】
この場合、不感時間が時間ビンと同じであるため、不感時間に対して別個の補正はない。
【0044】
このように、本明細書で示されて記述されたものは本主題発明の好ましい実施形態を構成するが、範囲が添付請求項で規定される本主題発明から離れることなく、種々の変更を行うことができることを理解するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、本発明により作製された質量分析器の略線図である。
【図2】図2は、本発明の方法のステップを示すフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析期間中にサンプルに対して少なくとも1つのイオン流束を計算する方法であって、前記方法が、
(a)複数のパルスを生成するステップであって、各パルス中にイオンビームが前記サンプルから放出される、ステップと、
(b)繰り返し可能な一連のビンを決定するステップであって、前記繰り返し可能な一連のビンの各ビンが、それぞれのパルスの対応パルス時間セグメントに対応する、ステップと、
(c)各パルス中にイオンが検出器に与える衝撃を検出するステップと、
(d)前記分析期間中にパルスの合計数を決定するステップと、
(e)前記繰り返し可能な一連のビンにおける少なくとも1つのビンについて、イオン衝撃が検出されなかった対応パルス時間セグメントの数を決定するステップと、
(f)前記イオン流束を計算し、前記繰り返し可能な一連のビンにおける前記少なくとも1つのビンに対応するパルス時間セグメント中にイオン衝撃を検出しない確率に前記イオン流束が関連付けられるステップと
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記イオン流速が実質的に式ψ=−ln(p(x=0))により計算され、
(a)ψが前記イオン流束を示し、
(b)p(x=0)が、前記繰り返し可能な一連のビンにおける前記少なくとも1つのビンに対応するパルス時間セグメント中にイオン衝撃を検出しない確率を示す、方法。
【請求項3】
ステップ(d)が、イオン衝撃の検出されなかった前記繰り返し可能な一連のビンにおける前記少なくとも1つのビンに対応するパルス時間セグメントの数を決定することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(d)がさらに、イオン衝撃の検出できなかった前記少なくとも1つのビンに対応する対応パルス時間セグメントの数を決定することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
(a)分析期間中に複数のパルスを通してサンプルからイオンビームを放出するイオン源と、
(b)前記イオン源の下流に置かれる検出器と、
(c)繰り返し可能な一連のビンを決定するように構成されるクロックであって、前記繰り返し可能な一連のビンの各ビンが、それぞれのパルスの対応パルス時間セグメントに対応する、クロックと、
(d)前記検出器と前記クロックとに動作可能に結合され、前記分析期間中の合計パルス数を決定するように構成される制御装置と、
を備え、
(e)前記制御装置はさらに、前記繰り返し可能な一連のビンにおける少なくとも1つのビンについて、前記分析期間中にイオン衝撃が検出されなかった対応パルス時間セグメントの数を決定するように構成され、
(f)前記制御装置は、前記少なくとも1つのビンに対応するイオン流束を計算するように構成され、前記繰り返し可能な一連のビンにおける前記少なくとも1つのビンに対応するパルス時間セグメント中にイオン衝撃を検出しない確率に関連付けられるように前記イオン流束が計算される、質量分析器。
【請求項6】
請求項5に記載の質量分析器であって、前記制御装置が、式ψ=ln(p(x=0))に関連付けられた前記イオン流束を計算するように構成され、
(a)ψが前記イオン流束を示し、
(b)p(x=0)が、前記繰り返し可能な一連のビンにおける前記少なくとも1つのビンに対応するパルス時間セグメント中にイオン衝撃を検出しない確率を示す、質量分析器。
【請求項7】
前記制御装置がさらに、イオン衝撃が検出されなかった前記繰り返し可能な一連のビンにおける前記少なくとも1つのビンに対応するパルス時間セグメントの数を決定するように構成される、請求項6に記載の質量分析器。
【請求項8】
前記制御装置がさらに、前記検出器がイオン衝撃を検出できなかった前記少なくとも1つのビンに対応するパルス時間セグメントの数を決定するように構成される、請求項7に記載の質量分析器。
【請求項9】
サンプルに対して少なくとも1つのイオン流束を計算する方法であって、前記方法が、
(a)イオンのグループ内の各イオンが前記グループ内の他の全イオンと実質的に同じm/zをもつ前記グループを前記サンプルから集めるステップと、
(b)イオンの前記グループを放出するステップと、
(c)所定の検出期間中に、放出されたイオンの検出器への衝撃を検出するステップと、
(d)放出されたイオンの前記衝撃を前記検出器が検出しなかった前記検出期間内の合計時間を決定するステップと、
(e)前記イオンの前記イオン流束を計算し、前記イオン流束が前記検出期間中にイオン衝撃を検出しない確率に関連付けられるステップと、
を含む方法。
【請求項10】
(a)イオンのグループ内の各イオンが前記グループ内の他の全イオンと実質的に同じm/zをもつ前記グループを前記サンプルから放出するイオン源と、
(b)前記イオン源の下流に配置され、所定の検出期間中に、放出されたイオンの前記検出器に対する衝撃を検出するように構成される検出器と、
(c)放出されたイオンの前記衝撃を前記検出器が検出しなかった前記検出期間内の合計時間を決定するように構成されるクロックと、
(d)前記検出器と前記クロックとに動作可能に結合され、前記イオンのイオン流束を計算するように構成され、前記イオン流束が、前記検出期間中にイオン衝撃を検出しない確率に関連付けられる制御装置と、
を備える質量分析器。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−522557(P2009−522557A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548910(P2008−548910)
【出願日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【国際出願番号】PCT/CA2007/000009
【国際公開番号】WO2007/076605
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(508153855)エムディーエス アナリティカル テクノロジーズ, ア ビジネス ユニット オブ エムディーエス インコーポレイテッド, ドゥーイング ビジネス スルー イッツ サイエックス ディビジョン (17)
【出願人】(505123697)アプレラ コーポレイション (21)
【Fターム(参考)】