説明

質量分析方法と装置

質量分析によって試料を調査するための方法と装置。本方法によれば、調査すべき試料を含む溶液を気化機で気化し、気化し試料溶液を気体流を用いてコロナ放電帯に噴霧し、ここで調査すべき試料をコロナ放電を用いてAPCI法によりイオン化して気相イオンを発生させ、該イオンを分離し、検出器に導く。本発明によれば、気化器を使用し、これを溶液用流路及び該溶液を供給するのに使用し得るキャリアガス用流路並びに気化器のヒーター備えるマイクロメカニカル構造として製造され、これらすべてをモノリシック構造に含める。この解決法は、極めて感度がよい分析技術が必要な場合又は入手可能な試料の量が非常に少ない(1μl未満)場合に特に適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を質量分析によって調べる請求項1の前提部分に係わる方法に関する。
【0002】
かかる方法によると、調査すべき試料を含む溶液をまず気化し、次いでガス流を用いて気化した試料溶液をコロナ放電針のすぐ近傍に吹き付け、ここで調査すべき試料をイオン化する。荷電粒子を分離し、電場及び/又は磁場を用いて検出器に導く。
【0003】
また、本発明は請求項17の前提部分に係わる装置、及び請求項30に係わる使用に関する。
【背景技術】
【0004】
質量分析は、薬剤研究、遺伝学、環境分析及び粒子研究のような多くの科学分野で使用される。質量分析(以後“MS”と略記する)において、材料をその質量についてのデータに基づいて調査し、特にMSにより複雑な試料マトリックスから化学試料の化合物を同定し、非常に小さい割合でその量(<10−11M)を決定することを可能にする。
【0005】
通常、調査すべき試料を質量分析器のイオン発生器内で気体状にイオン化し、このようにして発生した気相イオンを電界及び/又は磁界を用いてその質量/電荷の割合(m/z)に基づいて分離する。気相イオンを検出器を用いて観察する。質量のスペクトルを、イオンのm/z値の関数として検出器によって発生するイオン電流の強度のグラフから確定する。
【0006】
液体試料をイオン化する最も一般的に使用される方法はエレクトロスプレーイオン化(ESI)であり、この場合メタノールのような極性溶媒に溶解した試料を、細い針状の毛細管を経て質量分析器に導入する。毛細管を高電圧(3−5kV)に曝すと、強力な静電場が毛細管の先端に形成され、その結果として荷電したエアロゾルが毛細管から出てきた溶液から気相中に形成される。荷電したエアロゾルの飛沫は気相イオンを気相中に放出し、これらは別の大気圧イオン源を用いて質量分析器中に収集される。ESIにおいて、イオン化が標準圧で起こるので、一層大きな分子(MW>100kDa)を調査するのに適している。
【0007】
大気圧化学イオン化(APCI)法において、溶離液をより大きい鋼管の内側に取り付けた細い鋼製毛細管に通す。両管の間にスプレーガスを通して、溶離液を霧状にする。このエアロゾルの霧を加熱した石英管に導入し、ここで溶媒と調査すべき化合物を気化する。発生した蒸気を、高電圧(3−5kV)を印加したコロナ放電電極によってイオン化する。放電の結果、調査すべき化合物を気相中でイオン化する。発生したイオンを、APIディスパッチを用いて質量分析のために収集する。この方法は、電気噴霧と異なり、中性分子に適している。APCIおいては、極性溶媒及び非極性溶媒の両方を溶離液として使用できるが、ESIは極性溶媒のみにしか使用できない。
【0008】
図1にAPCIの原理をより詳細に示す。高電位が印加された電極(電極針)の先端のすぐ近傍において、電界の強度が大気のコロナ放電閾値を越えており、大気中の分子(例えばN2、O2)はイオン化され、一次イオン(N2+、O2+)に変わる。一次イオンが、試薬イオン(例えばHO+、CHOH2+、NH+)を形成する溶媒分子(例えばH2O、CHOH、NH)と反応する。試薬イオンが、プロトン化した分子([M+H+])又は脱プロトン化した([M−H])分子を形成する試料の分子と反応し、これを質量分析によって分析することができる。
【0009】
試料のタイプに応じて、APCIイオン化をポジティブモード又はネガティブモードのいずれかで実行する。ポジティブモードでは、電極針の電位がそのカーテンプレートのものより高く、イオン化が通常プロトン移動反応によって生じる。プロトン親和性が試薬ガスのプロトン親和性より高ければ、プロトン移動が式I(下記)によって生じる。
XH++M → X+MH+ (I)
【0010】
ネガティブモードでは、電極針の電位がカーテンプレートのものよりも高く、イオン化が脱プロトン化(下記II)又は電子移動(下記III)によって生じる。脱プロトン化において、試薬の分子は試料の分子よりも高いプロトン親和性を有する。電子移動においては、プラズマ中に発生した電子が高い電子親和性を有する試料の分子と反応する。
(X−H)+M → X+(M−H)(II)

M+e → M (III)
【0011】
最も一般的に使用する溶媒はメタノール(CHOH)又はメチルシアナイド(CHCN)の水溶液である。プロトン化又は脱プロトン化は、溶媒に少量の添加物を加えることによって強めることができる。例えば、酢酸アンモニウム(CHCOONH)をポジティブモードにおいて使用することができ、酢酸(CHCOOH)及びギ酸(HCOOH)はネガティブモードにおいて使用することができる。
【0012】
調査すべき化合物を加熱により気相にするので、該化合物はESI方法におけるものよりもさらに断片化される。しかし、加熱を極めて急速に行うので、かかる化合物がしばしば完全に断片化されず、プロトン化した分子又は脱プロトン化した分子がスペクトルに観察される。加熱による効果は、使用する溶媒/試料に応じて別々に最適化される。通常、毛細管の内面の温度は100−150℃である。効果的な噴霧の発生には約2l/分のスプレーガスの急速流を必要とする。APCIイオン化において、イオンの電荷数は通常1であり、化合物の分子量を決定するのを可能にする。発生した断片に基づいて、分子の構造についての情報を得ることができる。
【0013】
検体のAPCIイオン発生器への供給は、スプレーポンプ又はHPLC(高性能液体クロマトグラフィー)を用いて行う。ポンプを用いると、極少量の液体に対しても流量を調節することができる。従来のAPCIでは、液体の流量が通常約0.2−1ml/分である。それに対して、気体の流量はそれよりも明らかに高く、通常約2 l/分である。APCIはたかだか数千Daの分子のイオン化に最も適している。
【0014】
コロナ放電のための前提条件は、電界の強さがコロナ閾値を越えることである。電気的破壊を回避するために、電界は明らかに不均一である必要がある。不均一の電界を、例えば先鋭な針状の電極によって発生させることができる。この場合、電界のピーク値が針の先端付近に位置する。
【0015】
APCIは、ESIよりも中性化合物を分析するのに適している。APCIにおいては、極性及び非極性の溶媒の両方とも使用することができるが、ESIでは極性溶媒しか使用することができない。更に、高割合の緩衝材又は添加剤がAPCIよりもESIにおいてより明確にイオン化を干渉する。APCIの欠点は、必要な試料の速度及び流速が極めて高いことにある。APCIは100μl/分を超る流速に対してのみ適し、その結果従来のAPCI装置を例えば微流体システムに使用することができない。その上、従来のAPCI装置の感度が少量の試料に対し十分でない。
【0016】
既知の装置の他の欠点は、製造費及び運転費が比較的高いことである。後者の費用は、例えば装置の洗浄のために費やされる多くの時間を含む。
【発明の開示】
【0017】
本発明の目的は、従来技術に付随する欠点を取り除き、質量分析を用いて気相又は液相中で試料を調査する全く新しい方法をもたらすことにある。特に本発明の目的は、APCIイオン源に基づき、今日使用されている装置よりも少量の試料を分析するのにより適する作用液を生成することにある。本発明の別の目的は、APCI装置の感度及び気化器内部の熱移動をより改善することにある。本発明の他の目的は、APCI装置の製造費及び運転費を下げることにある。
【0018】
本発明は、少量の試料を分析するのに適したAPCIイオン発生器をマイクロ力学を用いて製造する考えに基づく。小型化ESI解決法が既に知られおり、この場合試料溶液用の流路及びイオン化に用いる噴射口がモノリシック小ガラスプレートに機械加工されている(以後かかる装置をESIマイクロチップ又はマイクロ−ESI装置と称する)。この既知の技術が米国特許第6、481,648号明細書及び米国特許第6、245,227号明細書に記載されている。一般に、ESI技術に関連した小型化装置はイオン様の化合物に適しているが、ESIでイオン化できないか又はイオン化効率が著しく弱い中性及び非極性化合物に適していない。
【0019】
また、ESI液体供給システムが、国際出願公開WO 00/41214,WO 01/53794,WO 00/62039号及び米国特許第5,917,184号明細書に開示されている。これら文献には、記述してある供給装置を試料を気化させるために使用し、該装置がAPCIに適しているかもしれないことについての示唆はない。WO 01/53794号においては加熱について言及しているが、既知装置における加熱が試料溶液の圧送に使用されている。該溶液は試料の熱膨張又は泡の形成に基づき、試料は気化されない。
【0020】
小型化装置として既知のESIマイクロチップを使用することに関する未解決の欠点は、高電圧の電界がマイクロ−ESI装置の先端、すなわち微流体システムの出口に集まったままで、すぐにこの先端を破壊し、言い換えるとマイクロ−ESI装置の動作寿命を制限し、適切で安定な分析を妨げることにある。加えてESI噴霧器の先端で生じる酸化及び還元反応が、チップの目詰まり及び泡の形成を導く。
【0021】
本発明において、プロセスの小型化が上述したESIイオン発生器よりもAPCI技術のイオン発生器に非常に適していることを見出した。本発明によれば、APCIイオン発生器の部品、少なくとも気体及び液体用の流路網並びに気化器の加熱器をモノリシック構造中に具備し、液体の流量が約100μl/分未満となるように流路を規定する。
【0022】
マイクロ−APCI法では、高電圧の電界をコロナ放電針の先端に集めるが、微流体システムの出口点に集めないので、この出口点が破壊されにくい。また同時に、適正で安定した分析を実行することが可能である。
【0023】
本発明による装置を使用することによって、少量の試料でさえ気化させることができ、コロナ放電帯、例えばマイクロチップの一部を形成するか又はマイクロチップと連結するよう配置したコロナ放電針内でイオン化することができる。。
【0024】
特に、本発明の方法は、主として請求項1の特徴部分に記述したことにより特徴づけられる。
【0025】
同様に、本発明による装置は、請求項17の特徴部分に記述したことにより特徴づけられる。
【0026】
本発明による使用は請求項30に特定されている。
【0027】
本発明に係わる解決法によって相当な利点を達成することができる。従って、この装置の製造プロセスは所要の結果をもたらすに十分に簡単である
【0028】
本発明は、微流体タイプ又は任意の他のタイプの微細分析システムと質量分析器との間の新しいインターフェイスをもたらす。本装置を特に小流量(5μl/分未満)に使用することができるが、約100μLのように少ない流量に適している。本発明の最も重要な応用分野は生物学的分析、薬理学的分析、薬剤分析、環境上の毒素分析、食品分析、臨床分析及び診断学である。本発明の方法及び装置は、非常に高感度の分析技術を必要としている場合、又は入手できる試料が非常に少ない(1μl未満)の場合に特に適している。
【0029】
本発明は多くの種類の化合物を分析するのに適用することができる。本発明は極性及び非極性化合物の両方、並びに中性化合物及びイオン性化合物に対して適している。原理上は、プロトン化できる官能基のような機能点を含むすべての化合物を分析することが可能である。特に興味深い適用例は、試料中の割合が極めて低い非極性に分類されるわずかに極性の化合物である。該化合物の例は、少なくとも一つの水酸基又は対応するケトン基を含む神経ステロイドのような種々のステロイドである。かかる化合物の生物学的試料中の量は10−100ピコグラム/ミリリットルの範囲にある。それに加えて、本発明は、例えば全ての薬理学的に活性な薬剤の主要部分を通常形成するアルカリ性の窒素化合物を分析するために使用することができる。
【0030】
その結果、解決法は液相及び気相の両方の試料を分析するために使用することができる。試料を溶解するのに用いる溶離液は極性及び/又は非極性の溶媒とすることができる。
【0031】
本発明によるマイクロ−APCI技術は、特に標準大気圧で気化することができ、通常約500−2500Daで、好ましくは高々2000Da、より好ましくは多くとも1000Daのモル質量を有する化合物に対して特に有用である。
【0032】
マイクロ−ESI技術と比較して、マイクロ−APCI技術は極性及び中性化合物の分析によりよい感度をもたらす。非極性溶離液をかかる分析に使用することができ、所要に応じて気相の試料も分析することができる。
【0033】
従来のAPCI技術と比較して、本発明は多くの利点を達成する。従って、本発明においては、流速がナノリットルから数十マイクロリットルの範囲にであるが、一方従来のAPCIは100μl/分より早い流速のみに適している。本発明は、より少容量の試料を分析するのに使用することができ、本装置は従来のAPCIよりも極めて感度が良い。加えて、熱移動及び気化が改善される。
【0034】
マイクロ−APCIの製造費が従来のAPCIよりも著しく低い。その結果、本発明は原則として使い捨てできる気化/イオン化装置を製造することを可能にし、この場合汚染後の消耗した装置を全体として新しい装置と交換することができる。このことはMS装置を洗浄するために必要な時間を著しく短縮する。
【0035】
既知の技術において、マイクロ電気機械システム(MEMS/MST)は、一般にマイクロメカニカル構造及びマイクロエレクトロニック構造を同一マイクロチップ(標準的な大きさは1mm−10cmの範囲)上に一体化したシステムを言及している。マイクロメカニカル構造(寸法が0.1μm−1mmの範囲)は基板ウエファをエッチングする(バルク−マイクロメカニクス)ことにより、又は基板ウエファ表面上に積み重ねた薄膜をパターン化する(表面マイクロメカニクス)ことによって製造し得ることが既知である。マイクロメカニクスに通常用いる基板の材料は、ケイ素、ガラス、GaAs、石英及びプラスチックである。例えば、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、アモルファス/多結晶シリコン、金属及びポリマーを薄膜(厚さの範囲は1nm−1mm)として使用する。
【0036】
本発明において、微細化構造は単に「マイクロメカニカル構造」と呼ぶ。これは、基板ウエファ/複数の基板ウエファ上に形成され、構成要素の操作必須である流路及び抵抗器のような構造を備えるユニット(大きさは約1mm−10cm)を意味する。
【0037】
本発明による方法では、調査すべき試料を含む溶液をマイクロメカニカル装置の形態の気化器中で気化する。気化器は、少なくとも試料溶液用流路並びに使用できるキャリアガス用流路と試料溶液用の加熱器を形成したモノリシックブロックからなる。気化した試料溶液を、ガス流を用いてコロナ放電帯に噴霧し、ここで調査すべき試料をコロナ放電を用いてイオン化して気相イオンを生成し、しかる後該イオンを分離し、それ自体既知の方法、例えば電界及び/又は磁界を用いて検出器に導びく。
【0038】
本発明において、「モノリシック」ブロックとは単一の部品からなるブロックか、又は二つ以上の部品を接合技術を用いてそれぞれ結合して単一のブロックを形成し、実質的に部品を壊すことなくこれら部品をそれぞれ切り離すことがもはやできないように強固したところのブロックを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の好ましい実施態様によれば、マイクロメカニカル構造を使用し、その一つは基板ウエファ又は数個の連結したディスクの積層体を備え、その中に気体及び液体用流路網並びに試料溶液を気化するためのヒーターが構築されている。この場合、モノリシックブロックを、互いに接合した2つ以上のブロックから形成されている。このような単一ブロックはより小さい複数のブロックを備えることができ、全てのブロックが同一又は異なったもので、例えばガラス又はケイ素からなる。その結果、注入開口を有する気体及び液体用流路と、気化器用ヒーターとを同一部品内又は互いに反対に位置している別々の部品内に構築することができる。例えば、ブロックは、気体及び液体用流路システムを形成したガラス板並びに試料溶液を気化するのに用いるヒーターを構築したシリコンウエファを備えることができる。この構造は逆にすることもできる。
【0040】
また、装置全体を一つの材料、例えばガラスで作製することができる。本発明の好ましい実施態様は、湿式又はプラズマ処理(DRIE、深い反応性イオンエッチング)を用いて作製できる装置を備え、又は経路システムをサンドブラストを用いて作製できる。マスキング材料は例えば多結晶シリコン、アモルファスシリコン、クロム、ニッケル又はSU−8エポキシ樹脂レジストとすることができ、これをスパッタリング、気化、電気化学的蒸着又は回転塗布によって形成される。スルーホールはサンドブラスト又は穿孔によっても達成できる。
【0041】
SU−8のマスキングが下記のアドレスに更に詳しく記述してある。
http://www. microchem.com/products/su eight. htm
【0042】
本発明によれば、流路網はこれを通した液体の流れが100μl/分未満、好ましくは大体約50μl/分、特に好ましくは大体約10μl/分であるように設計されている。一般に、流路の大きさはそこを流れる物質が気体か液体かによって変わる。気体を供給する流路の一般的な大きさ(横断面の幅又は深さ)は、約10−1000μm、特に約20−500μmであり、液体の流路の対応する大きさは約5−500μm、特に10−250μmであるが、これらサイズに限定するものではない。流路の深さは通常高さよりも小さく、この場合深さは通常200μm未満である。流路の横断面が円形であれば、その直径は通常上記の一般的な範囲内にある。
【0043】
霧状ガスを、図6a、6b及び7を参照して詳細に後述するように、試料の方向に又は試料の流れ方向とほぼ直行するように供給することができる。インジェクションに用いる気体流は、試料の流れ方向とほぼ直行するようにする。両方の適用において、気体流れを装置に、好ましくは液体の注入開口前の液体の流れの方向で供給する。気体流を直交方向に供給する場合、一つの注入開口を介して気体流が試料を含む液体の流れの周りに効率的に分布され、気体を溶液と極めて均質に混合する。
【0044】
一実施態様によると、本発明に係わる気化器は単一のマイクロメカニカル構造を作製するために一体化された気化帯及びコロナ放電帯の両方を含む。しかし、コロナ放電帯を装置と別の部分として組み立てることができる。
【0045】
かかる装置で気化させた試料溶液を、APCI法に従って大気の存在下コロナ放電によりイオン化する。これを通常の大気圧で行うことが最も適している。気化に際しては、化合物をまだ実質的に未分解の形状にしながら、調査すべき材料を十分に気化させるように試料を加熱する。一般に、試料をその沸点まで加熱するが、これは調査すべき材料に応じて約30−350℃の間で変化する。通常の気化温度は約200−300℃であり、調査すべき試料の少なくとも20モル%、特に少なくとも40モル%、好ましくは50−100モル%が気化される。気化した化合物/材料の5−100モル%、好ましくは少なくとも約10モル%、特に少なくとも20モル%(及び95モル%でさえ)が未分解の形で気相にある。
【0046】
一般に、コロナ放電帯は針状の電極を備え、この電極を少なくとも電極の先端のすぐ近傍における電界強度が空気のコロナ放電の閾値を超えるような質量分析器のカーテンプレートに関して高い電位に接続する。カーテンプレートに関して針状の電極の電位は、例えば少なくとも1kvであり、電極の先端の近傍における最大電場は約50kv/mmである。
【0047】
図3a−3dは、本発明の2つの実施態様を示す。図示するように、本発明に係わる装置は、例えば2つの異なった配置、すなわち水平方向(図3a及び3b)又は垂直方向(図3c及び3d)で組み立てることができる。水平方向の配置では、チップ(並びに、従って針及び流出口)が質量分析器のカーテンポートに対して垂直であり、垂直方向の配置ではチップがカーテンポートと平行である。
【0048】
図3a及び3bは、マイクロ−APCIイオン源の水平方向構造を示す。側面図が示すように、該装置はガラスプレート(1)を備え、その上にシリコンウエファ(2)を設ける。シリコンウエファ(2)中に液体(3)及び対応する気体(4)用の供給孔が機械加工されている。シリコンウエファは混合帯(5)を備え、これに液体及び気体用の供給孔(3及び4)がそれぞれ供給管システム(6、7)を介して接続されている。混合帯は、例えばシリコンウエファ内に配置され、加熱抵抗(8)を備えた毛細管からなる。液体を気化するために、加熱抵抗を用いて、毛細管に供給し、その中で混合する液体及び気体流を加熱することができる。電線(9)を加熱抵抗(8)に接続し、その一方の端、すなわちガラスプレートの表面に電源に接続しうる接触電極(10)を備える。
【0049】
図3aと3bの装置において、コロナ放電を生ずる電極針(11)をガラスプレート(1)および毛細管(5)と平行に配置する。電極針(11)を電線を経て電極(13)に接続する。毛細管の出口にはオリフィス(12)があり、これにより電極針(11)からもたらされるイオン化気体の霧を排出し、分析すべき質量分析器に導入することができる。
【0050】
図3c及び3dによる装置は、図3a及び3bに記載した装置と基本的に同じ構造である。従って、ガラスプレート(21)と、その上部にシリコンウエファ(22)がある。しかしながら、この場合、液体及び気体用の供給孔(23及び24)がそれぞれガラスプレートに設ける。シリコンウエファに混合帯(25)を機械加工し、これに気体および対応する液体をそれぞれ供給管システム(26及び27)を経て導くことができる。該装置は、混合帯(毛細管25)を取り囲む電線(29)及び接触電極(30)を含むヒーター(28)を備える。電極針(31)を混合帯のオリフィス(32)に対して水平に配置する。
【0051】
図3a−3dに示すイオン発生器は、例えば異方向湿式エッチングを用いて流路網(5−7;25)をシリコンディスクにエッチングすることにより作成することができる。金属製の平面針(11、31)及びヒーター(8、28)をガラスプレートにパターン化し、最終的に陽極ボンデイングを用いてシリコンウエファに取り付ける。
【0052】
この解決法の利点はエッチング及びボンデイングが容易なことにある。
【0053】
陽極ボンデイングの外に、接合を例えばガラスフリットボンデイング、熱圧接、又は接着剤によるボンデイングよって行うことができ、この場合従来のポリマー基接着剤を仲介物質として使用することができる。典型例は、エポキシポリマー、陰性及び陽性のレジスト、ポリイミド、PMMA、シリコーン、及びフルオロエラストマーである。
【0054】
一般に、ポリマー接着シームは密閉性がなく高温に耐えられないが、一方でボンデイングを低温(ポリマーに依存するが、100℃未満でも)で、例えばCMOSプロセスにおいて魅力的な選択肢となる様々な材料に対して行うことができる。接着剤ボンデイング法は、接続すべきディスク/チップの注意深い洗浄及び乾燥と、接着促進剤の塗布、接続すべき一方又は両方の表面へのポリマーのスピニング/噴霧(厚さは例えば1−20μm)、プレベーク熱処理(例えば60−100℃、10分)、ディスク/チップを真空室内に加圧下に置くこと、及びハードベイク熱処理(例えば、100−300℃、5分)を備える。
【0055】
また、本発明は全体をガラスで構築することができ、これは装置の熱的及び電気的特性をさらに改選するための解決法となる。
【0056】
試験装置に応じて、製造した試験装置の気体供給路の幅は、270、320又は370μmである。次に、液体供給路は120、130又は140μmであり、混合/加熱路の幅は1.27mmである。供給孔側の長さは、ガラス穴あけ許可量のため水平モデルで670μm、垂直モデルで2mmである。流路の深さは、エッチングの異方性(流路の狭小性)のため、85μmから190μmの間で変える。
【0057】
平面ヒーター及び針を、ガラスプレート(それぞれ1及び21)上に何らかの方法でスバッター、気化又は構築された金属層内にパターン化することができる。金属は、白金のような貴金属、又は高い電気及び/又は熱伝導性を有し、調査すべき試料に対して十分不活性なアルミニウムのような卑金属とすることができる。構築すべき金属層の厚さは、自由に選択できる;試験溶液では300nmの厚さを選択し、この場合室温での抵抗が水平方向チップに対し約85−90Ω、垂直方向チップに対し約43Ωである。
【0058】
電極針の長さは通常約0.5−10mm、好ましくは約1−6mmである。試験装置は、水平モデルで2又は3mm、垂直モデルで2又は2.5mmの針の長さを使用して製造する。
【0059】
接触電極の先端では、シリコンをエッチングによって薄くすることができ、これにより電極をシリコン−ガラス界面から出てくるようにする。これら先端でシリコンを通してエッチングすることは利点にはならない。その理由は、ウエファの物理的強度(結合に関して)が影響を受けるかもしれないからである。3次元のマイクロ針がこの問題を解消する。というのも、この場合、針の先端のすぐ近くでイオン化性気体の十分な容積があるからである。イオン源の小型化によって、少量の試料(流量の大きさがμl/分)を分析することがより容易になり、測定感度が改善する。
【0060】
次に、本イオン発生器の製造プロセスの一実施例を記載する。
【0061】
両側を研磨した厚さ380μmのn−型(100)ウエファをチップのシリコン基板として選択した。ヒーターからの電流漏洩を減ずるために、高抵抗(>500Ωcm)のウエファを用いて試作品を作成した。シリコンへ陽極的に接続できるコーニングパイレックス(登録商標)の7740番の厚さ0.5mmのガラスウエファをチップキャップとして使用した。
【0062】
製造プロセスは、シリコンウエファのRCA−洗浄で始める。有機汚染物をRCA−1洗浄により、金属汚染物をRCA−2洗浄により除去した。HF−浸漬をかかる洗浄間に行った。洗浄後、湿式の酸化処理を用いて約600nmの熱酸化物をシリコンウエファ上に形成した。HMDS層を酸化ウエファ上に気化してレジストの接着性を改善し、然る後1.4μmのフォトレジスト(AZ 5214)をウエファ上に塗布した。プレベーク後、レジストをマスクno.1に曝した。層の発現及びハードベーク後、酸化物を流路領域からのエッチングにより除去した。酸化物のエッチング後、レジストをアセトン及びイソプロパノールを用いて除去した。
【0063】
流路領域をシリコンウエファの前側にパターン化した場合、引込み線をウエファの逆側にパターン化した。この逆側へのレジストを、上述したと同じ方法で行った。ウエファの上下に顕微鏡を有するエレクトロニックビジョンズ社のAL−6装置を、両面位置合わせ用ロケータとして使用した。位置合わせと露曝の後、現像、ハードベーク、前側の可能なレジスティング、酸化物エッチング及びレジストの除去をもう一回行った。
【0064】
ウエファのエッチングを80℃で20m−%TMAH溶液中で行った。水循環加熱及びエッチング容器の防湿層のために、エッチング溶液全体の温度をプロセス全体にわたり一定に保持した。さらに、気化によるエッチング液の消耗はわずかである。エッチング時間は9時間である。エッチングが終了すると、ウエファを発泡DI水中で完全に洗浄して、THAM残渣がウエファの表面上に膜として残らないのを確実にする。
【0065】
パイレックスガラスウエファをガラスプレートの出発材料として選択し、アセトン及びイソプロパノールの洗浄で始める。注意深く乾燥した後、約300nmのアルミニウム層をオックスフォードスパッタ中でガラスウエファ上にスパッタした。スパッタリングに続いて、アルミニウム層に塗布するフォトレジストをフォトレジストグラフィーを用いてマスクno.3でパターン化した。過剰のアルミニウムを燐酸含有アルミニウムエッチング液で除去した。その後、ガラス中に垂直モデルチップの入口孔を穿孔した。穿孔に関して、ガラスウエファの両側をレジストし、結合側が最上面になるようにレジストを用いてシリコンウエファに接着した。0.8mmのダイアモンドでコートした超硬合金チップ及びDI水冷却を穿孔用に使用する。穿孔後、ウエファを超音波洗浄槽内でアセトン洗浄を用いてそれぞれ分離した。
【0066】
作業の最終段階は、処理したシリコンとガラスウエファを陽極ボンデイングを用いてそれぞれ接着することにある。結合チャンバー、制御ユニット及び機械真空ポンプを備えるタイプの結合機をボンデイング用に用いた。結合チャンバーは、ウエファ上下のヒーターと、温度測定用の四つの探針と、圧力探針と、圧搾空気によって作動するプレスとを備える。制御ユニットを用いてチャンバー温度、圧力、圧縮及びウエファのパッケージを横切る電圧/電流を調整することができる。
【0067】
ボンデイング後、チップの切断を行った。切断後の界面での接触パッドを、該パッドの頂部で薄いシリコンストリップを曲げ離すことにより露呈することが可能になる。最後に、流体のコネクタをエポキシ接着剤を用いてチップに接着した。
【0068】
マイクロホースの連結を可能にする入口コネクタをチップに接着した。市販の入口コネクタを使用して、毛細管をチップにねじ込むことによって取り付け、堅固で容易に解放し得る接続を可能にする。液体及び気体用毛細管の外径は360μm、内径は150μmである。
【0069】
顕微鏡に取り付けたビデオカメラを使用してマイクロ流路網の運転を研究することにした。窒素流を加熱したチップに接続し、インジェクションポンプを用いて試験試料をマイクロ流路網に供給した。使用した試験試料は、メタノールに溶解し、キセノンランプを用いて微発光するようにしたフルオロレジン(fluoresin)である。測定中、液体の流速を数μl/分に維持した。この方法を用いて、マイクロ流路網が異なった気体及び液体の流速の元でどのように動作するか観察することができる。液体流路の終端で形成する微細な液滴が分離する頻度は、気体の流速に大きく依存することを見出した。測定中には、使用する気体の供給圧力は大体数バールであるが、実際の流速を予測することは困難だった。加熱を実行すると、液滴が液体流路の終端から速やかに気化された。
【0070】
水平及び垂直モデルのチップを質量分析器に接続するために、テフロン(登録商標)製の支持体をそれらの両方に取り付けた。
【0071】
試験測定のために、チップをピーイーサイエックスインストルメンツ製のAPI300シリーズの質量分析器に接続した。
【0072】
質量分析器自身の8kVの電源を高圧源として使用した。電池(12V又は24V)をヒーター用電源として使用した。マルチメーターを用いてヒーターを通る電流を測定した。流れをμl/分レベルで調整するのに使用し得る別の流量ポンプを、試料溶液の圧送用に使用した。使用する気体に応じて、質量分析器自身の供給システム又は別の気体供給システムのいずれかを用いて霧状ガスを供給した。
【0073】
メタノールに溶解したミダゾラム(C1813ClFN、M=325.8)及びピリジン(CN、M=79.1)を試験溶液として使用した。ミダゾラムはきわめて高いプロトン親和性を有する薬物である。ピリジンは高いプロトン親和性と、低い沸点(115℃)を有する。
【0074】
測定をいわゆる「加熱ネブライザー」モードで行ない、質量分析器自身のコロナ放電針を使用して開始することにした。まず初めに、空気を霧状ガスとして使用した。その理由は、その流量を質量分析器の制御プログラムを用いて調整することが可能だからである。水平モデルの試験を、溶媒(メタノール)のみを使用して開始した。使用した基本的なパラメーターを以下に示す。
試料の流速:1μl/分
霧状ガスの流速:1.04l/分(理論設定値)
カーテンガスの流速:0.95l/分
コロナ放電電流:0.1μA
ヒーターの電圧:12/24V(水平モデルの温度、約70℃/195℃に対応)
他の値は測定プログラムの初期値である。
【0075】
明瞭なシグナルはメタノールのみを使用したときに得られた。続いて、ピリミジンを10μg/mlの濃度で用いて試験し、弱いシグナルが得られた。よりよいシグナルが1mg/mlのミダゾラムで得られた。窒素を霧状ガスとして用いたところ、バックグラウンド妨害シグナルが著しく減少した。
【0076】
しかし、霧状ガス及びカーテンガスの流量は顕著な効果がなかった。非常に低い(霧:0.03−0.41l/分、カーテン:0−0.44l/分)及び非常に高い(霧:1.49−1.58l/分、カーテン:1.58−1.84l/分)値のみが効果を有した。低いカーテンガス流量で、バックグラウンドノイズが増加し、高い流量で試料強度が減少した。霧状ガス流量の効果は試料の流速によって変化した。高い試料流速(10−100μl/分)で、霧状ガスの減少はピーク強度に著しい影響を与えなかった。低い流速(<10μl/分)で、強度が霧状ガス流量の増加とともに改善した。
【0077】
化合物を過度に分解させることなく調査した材料が十分に気化するような温度を選択した。
【0078】
装置の動作を改善するために、シリコン基板を電極針から電気的に分離することができる。これは、例えばガラスウエファ上の金属パターンの上部にPECVDを用いて酸化物又は窒化物の絶縁層を形成することによって行うことができる。また、ウエファのボンデイング後平面針をガラスウエファ上にパターン化することが可能である。チップを全体として絶縁材料で作製することができる。
【0079】
製造プロセスの簡略化に関し、マイクロ針の平面性により著しい利点を実現することができ、三次元の針を組み立てるのが困難である。図4は平面針(33及び43)を有する2つの変性チップ構造(ガラス31及び41、シリコン32及び42)を示す。該装置の部品は図3aのものと同じである。図4に示したとおり、針を直接気化した生成物の出口孔の前に毛細管と平行に位置させることができるか、又は該出口孔に側面から対角線上に方向付けることができる。ガラスおよびシリコンウエファ51および52上にそれぞれ設けた3次元マイクロ針53(図5参照、他の装置部品は図3aと同一)は、例えば膜応力により柔軟である針、金属被覆ポリマーに基づいた構造、結合金属線又はマイクロメカニックスで持ち上げ可能な溶液に基づいた針、又は白金線のような電気化学的に研がれた金属線を用いて組み立てることができる。
【0080】
図6a、6b、及び7は、窒素のような通常非活性(又は不活性)な霧状ガスがナノゲートのような供給ノズル(102)を介してチップ頭頂部(101)から入ってくる代替解決法を示す。その結果、気体は少なくとも試料と実質的に直交するように供給され、上述した実施態様のように試料方向に供給されない。
【0081】
図6a、6b、及び7中に参照番号(109)と記されている細管は、液体クロマトグラフ(LC)から来ている毛細管につながっている。
【0082】
液体(103)及び気体(104)用入口を、それぞれガラスプレート(114)上のシリコン又はガラスウエファ(101)に加工した。この位置に毛細管の終端を確保するため、先細孔を形成する楔状ガイド(113)をウエファに加工した。ウエファは混合帯(105)を備え、これにそれぞれ液体及び気体用供給口(103及び104)を流路(106及び107)を経て連結した(矢印参照)。
【0083】
図示するように、気体入口からの気体は、混合帯中の液体流れと混合する前に、矢印で示すように毛細管終端の周りを循環する。
【0084】
ウエファは加熱抵抗体(108)を備え、これは液体を気化するために毛細管を介して供給され、混合帯(105)内で霧状ガス流と混合される液体流を加熱するのに使用することができる。加熱抵抗体のコネクタに番号(110)を付し、図示したように流れ抵抗を減ずるために加熱抵抗体の前部を広くし、気体及び液体の混合帯の近傍のみを狭め、これにより実際の加熱帯(111)を形成し加熱抵抗体として作用させる。
【0085】
図6a、6b、及び7による解決法は上述した装置と同じ基本原則に基づくが、その解決法による構造はより単純で、死空間は最小化されている。気体の供給ノズルが液体の流れ方向の上流に位置しており、このことは気体が液体の入口開口の前で装置に(液体の流れ方向)もたらされることを意味する。霧状ガスは単一のノズル及び単一開口からもたらされ、これから試料流の両側/周りに分配されるので、この解決法を用いて均一混合物を発生させることは容易である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は質量分析装置の部品のブロック図を示す。
【図2】図2はAPCIイオン化の基本的な解決法の原理を示す。
【図3】図3は本発明による装置の二者択一の実施態様の構造を、それぞれ上部及び側面から簡略描画して示し、ここで図3a及び3bは水平方向のマイクロ−APCIイオン源の構造を、同様に図3c及び図3dは垂直方向のイオン源の構造を示す。
【図4】図4a及び4bは図3aに示した構造のチップ配置を平面針で変性した版として示す。
【図5】図5a及び5bはそれぞれ上部及び側面から簡略描画した3次元の針を備えマイクロチップを示す。
【図6】図6a及び6bは上部から描画した別の供給システム及びこのシステムの詳細について示す。
【図7】図7は図6a及び6bによる応用例を側面から描画して示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調査すべき試料を含む溶液を気化器内で気化し、気化した試料溶液を気体流を用いてコロナ放電帯内に噴霧し、ここで調査すべき試料をコロナ放電を用いてイオン化して気相イオンを発生させ、該イオンを分離し、検出器に指向させて試料を質量分析により調べるに当たり、マイクロメカニカル構造として製造された気化器を使用することを特徴とする質量分析により試料を調査する方法。
【請求項2】
溶液用流路網及び該溶液の供給に使用し得るキャリアガス用流路網並びにヒーターを備え、これらすべてをモノリシック構造内に含めた気化器を用いる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記流路網を、それらを通過する液体の流量が100μl/分未満、より好適には10μl/分未満であるような大きさにする請求項2記載の方法。
【請求項4】
気化帯及びコロナ放電帯を備え、これらを単一のマイクロメカニカル構造中に一体化してなる気化器を用いる請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
1つ以上のウエファ用に設計した流路網と、ヒーターとを備えるマイクロメカニカル構造を使用する前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
気体及び液体用流路網を形成する基板ウエファ及び該基板ウエファに付着し、試料溶液を気化させるためのヒーターをパターン化したカバーウエファとを備える構造を使用する請求項5記載の方法。
【請求項7】
気化した試料溶液を、空気の存在下通常の大気圧でコロナ放電によってイオン化する前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
コロナ放電帯が、少なくとも先端の近傍における電界強度が空気のコロナ放電閾値を超えるように質量分析器のカーテンプレートに対して高い電圧に接続した針状電極を備える前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
カーテンプレートに対する針状電極の電位が少なくとも1kV以上で、電極の先端近傍における最大の電界強度が約50kV/mmである請求項8記載の方法。
【請求項10】
極性化合物、非極性化合物、中性化合物又はイオン化合物を調査し、調査すべき試料を溶離液として用いる極性又は非極性溶媒に溶解して試料溶液を形成する前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記化合物を調査し、そのモル質量が大きくても2000Da、最も好適には大きくても1000Daである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
調査すべき試料の液体流量を約10μl/分未満の値に設定し、試料の供給に用いるキャリアガスの流量を少なくとも約50μl/分の値に設定する前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
試料を大気圧化学イオン化(APCI)法を用いてイオン化する前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
インジェクションに用いる気体の流れを試料の流れ方向と実質的に直交に供給する前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
気体の流れを、液体の流れの方向で該液体の供給開口前で装置に供給する前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
気体の流れを一つの供給開口を介して供給して、該気体流を試料を含む液体の流れの周りに分配して均質な混合物を形成する請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
調査すべき試料を含む溶液を気化するための気化器と、該気化器に接続し、調査すべき試料を大気圧化学イオン化(APCI)法によってイオン化して荷電粒子を発生させるコロナ放電装置と、該コロナ放電装置に接続して荷電粒子を検出するための検出装置と、電界及び/又は磁界を用いて荷電粒子をコロナ放電装置から検出器に指向させるための手段とを備える質量分析により試料を調べる装置において、前記気化器をマイクロメカニカル構造として製造することを特徴とする質量分析により試料を調査するための装置。
【請求項18】
前記気化器が溶液用の流路網および該溶液を供給するのに使用し得るキャリアガス用流路網並びに気化器のヒーターとを備え、これら全てをモノリシック構造内に含ませるものである請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記流路網が、それらを通過する液体の流量が100μl/分未満、より好適には10μl/分未満であるような大きさにする請求項18記載の装置。
【請求項20】
前記気化器が気化帯及びコロナ放電帯を備え、これらを単一のマイクロメカニカル構造に一体化して気化器とコロナ放電装置との組み合わせ物を形成する請求項18又は19記載の装置。
【請求項21】
2つ以上の部品を互いに接続してなるモノリシックブロックを備える請求項17−20のいずれかに記載の装置。
【請求項22】
前記ブロックが、気体及び液体用流路網を形成したシリコンウエファと、試料溶液を気化するためのヒーターを形成したガラスプレートとを備える請求項21記載の装置。
【請求項23】
前記ブロックが、気体及び液体用流路網を形成したガラスプレートと、試料溶液を気化するためのヒーターを形成したシリコンウエファとを備える請求項21記載の装置。
【請求項24】
前記コロナ放電装置が、少なくとも電極の先端の近傍における電界強度が空気のコロナ放電閾値を超えるように質量分析器のカーテンプレートに対して高い電圧に接続した針状電極を備える請求項17−23のいずれかに記載の装置。
【請求項25】
前記カーテンプレートに対する針状電極の電位を少なくとも1kVの値に設定し、電極の先端の近傍の電界の最大強度を少なくとも約50kV/分の値に設定する請求項24記載の装置。
【請求項26】
全体にガラス構造として製造する請求項17−25のいずれかに記載の装置。
【請求項27】
溶液を供給するために用いるキャリアガスの流路システムを気体の供給ノズルに接続し、該ノズルを溶液の流れ方向の上流に位置させ、これを通して気体を溶液の流れ方向と実質的に直交して装置に供給する請求項17−26のいずれかに記載の装置。
【請求項28】
供給開口を経て供給した気体流を溶液の流路システムの周りに分配して均質な混合物にする請求項27記載の装置。
【請求項29】
ヒーターが、加熱抵抗体からなり、その前部を広くして流れ抵抗を減じ、気体と液体の混合帯の近傍のみを狭くし、これにより加熱抵抗体として働き実際の加熱帯を形成する請求項17−28のいずれかに記載の装置。
【請求項30】
大気圧化学イオン化(APCI)法によってイオン化するために供給する気化試料を生成するためのマイクロメカニカル装置として製造した気化器の使用。
【請求項31】
少なくとも調査すべき試料用の流路網及び該試料を供給するのに使用し得るキャリアガス用流路網並びに試料を気化するためのヒーターを形成したモノリシックブロックを備え、ここで前記流路網を、それらを通過する流量が100μl/分未満であるような大きさにした請求項30記載の気化器の使用。
【請求項32】
調査すべき試料のモル質量がせいぜい約2000Daである請求項31記載の気化器の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−511755(P2007−511755A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538878(P2006−538878)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【国際出願番号】PCT/FI2004/000683
【国際公開番号】WO2005/047848
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(506162079)
【Fターム(参考)】