説明

質量分析法のためのイオン化修飾剤

【課題】本発明は、ポリペプチドを修飾し、それによって、以前には質量分析法による検出から免れていたポリペプチドの質量分析法を用いた検出を可能にする、新規の分子を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、以下の一般式の化合物、およびイオン化修飾剤としての該化合物の使用に関する:


式中、R、R'、R''、R'''、R''''、Xおよびnは本明細書ならびに特許請求の範囲に規定した通りである。本発明はさらに、以下の段階を含む、ポリペプチドまたはそれらのフラグメントを、標識形および非標識形の該ポリペプチドを含有する供給源から定量するための方法に関する:(a)イオン化修飾剤により、単離されたポリペプチドを修飾する段階、(b)調製されたポリペプチドまたはそれらのフラグメントを質量分析法によって分析し、それによりポリペプチドまたはそれらのフラグメントの供給源内に存在したポリペプチドまたはそれらのフラグメントの量を決定する段階。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析法のためのイオン化修飾剤に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析法は、分析に基づくタンパク質生化学において多目的に使用できる技術へ発展してきた。選択される最適な機器のタイプはMALDI-TOF質量分析計であり、分析範囲はトリプシンまたはエンドプロテイナーゼ-Cのようなエンドペプチダーゼによる開裂によって産生する0.8〜3kDaの分子量を有するタイプのペプチドに対して最適化されている。
【0003】
しかし、開裂方法がイオン化を保証する塩基性残基の均一な分布を有するペプチドを産生するように設計されているという事実にもかかわらず、一部の分子は他の分子よりも容易に検出される。これは、一部のペプチドの完全消光を生じさせる可能性があるイオン化競合のためである。顕著な例は、アルツハイマー病のアミロイドペプチド(Aβ)である。エンドペプチダーゼLys-Cを用いて産生されるAβの3つのペプチドフラグメントの挙動が極めて異なることは公知である(非特許文献1参照)。アミノ末端フラグメントおよび中間フラグメントは優れたイオン化特性を有する一方、カルボキシ末端フラグメントは好ましいMALDI-TOF法を用いてもこれまで全く検出されていない(非特許文献2参照)。
【0004】
しかし、カルボキシ末端は、アミロイドペプチドにとって不可欠の部分であると考えられる。Aβは様々な鎖長で発生する。ペプチドの大多数は残基40位で終了する一方、少数のペプチドは残基42位で終了する。より長い形は、繊維を形成するためのはるかに高い傾向を有するために病因となると考えられる。
【0005】
さらに、Aβ(11-16)およびAβ(pyroGlu 11-16)フラグメント(非特許文献3参照)またはメチオニンとしての天然形に加えて35位にメチオニンスルホキシドを有するAβなどの、修飾によって生ずる様々なAβ種の量を識別することが関心対象となる。Houら(非特許文献4参照)は、Met-35側鎖からメチオニンスルホキシド(Met-35(ox))への酸化が、生理的pHでの42残基Aβ(1-42)についてのフィブリル形成率を有意に妨害することを示した。Met-35(ox)はさらにまた、特徴的なAβのフィブリル形態も変化させ、βアミロイドーシスおよび関連する神経毒性における重要な中間体であるプロトフィブリルの形成を防止する。
【0006】
そこで、以前は質量分析法による検出から免れていた、そのような分子を検出する方法に対する強い必要がある。
【0007】
このため本発明は、ポリペプチドを修飾し、それによって、質量分析法による、以前にはこの方法による検出から免れていたポリペプチドの検出を可能にする新規の分子に関する。
【0008】
【非特許文献1】Gruninger et al. 2000, Identification of beta-secretase-like activity using a mass spectrometry-based assay system. Nature Biotechnology, 18:66-70
【非特許文献2】Rufenacht et al. 2005, Quantification of the Aβ peptide in Alzheimer's plaques by laser dissection microscopy combined with mass spectrometry. J. Mass Spectrom.; 40:193-201
【非特許文献3】Huse et al., 2002, γ-Secretase processing in the trans-Golgi network preferentially generates truncated amyloid species that accumulate in Alzheimer's disease brain. J. Biol Chem. 277:16278-16284
【非特許文献4】Hou et al., 2002, Methionine-35 oxidation reduces fibril assembly of the amyloid Ab(1-42) peptide of Alzheimer's disease. J. Biol. Chem.; 277:40172-40176
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ポリペプチドを修飾し、それによって、以前には質量分析法による検出から免れていたポリペプチドの質量分析法による検出を可能にする、新規の分子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の一般式の化合物を提供する:

式中、
n=0、1、2、3、4、5、6、7もしくは8;
X=H、OH、F、Cl、Br、CH3、C2H5、C3H7もしくはC4H9
R=残基なし、H、CH3、C2H5、C3H7もしくはC4H9
R'=残基なし、H、CH3、C2H5、C3H7もしくはC4H9
R''=H、CH3、C2H5、C3H7もしくはC4H9
R'''=H、CH3、C2H5、C3H7もしくはC4H9
R''''=H、CH3、C2H5、C3H7もしくはC4H9
または、R'およびR''、もしくはR''およびR'''、もしくはR'''およびR''''、もしくはRおよびR''''は相互に結合し、それらが隣接する窒素原子と共に環を形成し、かつ、R'およびR''、もしくはR''およびR'''、もしくはR'''およびR''''、もしくはRおよびR''''は共に、
-CH2-(CH2)p-(式中、pは1、2または3);
または、XおよびRは相互に結合して、それらが隣接する窒素原子および炭素原子それぞれと共に環を形成し、かつXおよびRは共に、
-(CH2)k-(式中、kは1、2、3または4)である。
【0011】
好ましくは、n=1、X=OHまたはH、R=H、R'=残基なし、R''=H、R'''=HおよびR''''=Hである。さらに好ましくは、式中、n=4、X=H、R=H、R'=残基なし、R''=H、R'''=HおよびR''''=Hである、上記の化合物である。
【0012】
Xは、分析物とイオン化修飾剤との間のアミド結合を得るための転換反応の反応性を決定する。XがClまたはBrである場合は、複合ピークパターンにおいて修飾されたアミンを同定することが可能である。イオン化修飾剤中に含有される塩素もしくは臭素は、同位体の混合物として存在し、独特の二重結合のパターンを生じる。分析物がそのような標識を用いて修飾されると、対応する付加物はピークパターンによって他のピークとの間で容易に同定される。
【0013】
本発明は、イオン化修飾剤としての上述した化合物の使用法をさらに提供する。
【0014】
本明細書で使用する「イオン化修飾剤」もしくは「飛行修飾剤」という用語は、関心対象のポリペプチドに結合でき、かつ結合によって質量分析法において関心対象のポリペプチドの挙動を修飾できる分子を指す。イオン化修飾剤は、少なくとも1つの電子を受容もしくは放出することができる。好ましくは、イオン化修飾剤は1つのアミノ酸(すなわち、リジン)に対して特異的である。
【0015】
本明細書で使用する「ポリペプチド」もしくは「関心対象のポリペプチド」という用語は、様々な長さのアミノ酸鎖を指す。ポリペプチドは、すなわち、タンパク質もしくはそのフラグメント、またはペプチドもしくはそのフラグメントである可能性がある。好ましくは、ポリペプチドは、例えばAβ(29-40)およびAβ(29-42)などの、βアミロイドペプチドAβ1-40およびAβ1-42のC末端フラグメントである。
【0016】
さらに、本発明は、以下の段階を含む、標識形および未標識形にあるポリペプチドを含む供給源から関心対象のポリペプチドを定量するための方法を提供する:
(a)イオン化修飾剤により単離されたポリペプチドを修飾する段階、
(b)調製されたポリペプチドを質量分析法によって分析し、かつそれにより、ポリペプチドの供給源内に存在した関心対象のポリペプチドの量を決定する段階。
【0017】
本発明(1)は、以下の一般式の化合物である:

式中、
n=0、1、2、3、4、5、6、7もしくは8;
X=H、OH、F、Cl、Br、CH3、C2H5、C3H7もしくはC4H9
R=残基なし、H、CH3、C2H5、C3H7もしくはC4H9
R'=残基なし、H、CH3、C2H5、C3H7もしくはC4H9
R''=H、CH3、C2H5、C3H7もしくはC4H9
R'''=H、CH3、C2H5、C3H7もしくはC4H9
R''''=H、CH3、C2H5、C3H7もしくはC4H9
または、R'およびR''、もしくはR''およびR'''、もしくはR'''およびR''''、もしくはRおよびR''''は相互に結合し、それらが隣接する窒素原子と共に環を形成し、かつ、R'およびR''、もしくはR''およびR'''、もしくはR'''およびR''''、もしくはRおよびR''''は共に、
-CH2-(CH2)p-(式中、pは1、2または3);
または、XおよびRは相互に結合して、それらが隣接する窒素原子および炭素原子それぞれと共に環を形成し、かつXおよびRは共に、
-(CH2)s-(式中、sは1、2、3または4)である。
本発明(2)は、
n=1
X=OHまたはH
R=H
R'=残基なし
R''=H
R'''=H
R''''=H
である、本発明(1)の化合物である。
本発明(3)は、
n=4
X=H
R=H
R'=残基なし
R''=H
R'''=H
R''''=H
である、本発明(1)の化合物である。
本発明(4)は、イオン化修飾剤としての、本発明(1)〜(3)のいずれか一発明の化合物である。
本発明(5)は、以下の段階を含む、標識形および未標識形にある関心対象のポリペプチドを含む供給源から、関心対象のポリペプチドを定量するための方法である:
(a)イオン化修飾剤により、単離されたポリペプチドを修飾する段階、
(b)調製されたポリペプチドを質量分析法によって分析し、かつ、それによりポリペプチドの供給源内に存在した関心対象のポリペプチドの量を決定する段階。
本発明(6)は、イオン化修飾剤が本発明(1)〜(3)のいずれか一発明の化合物である、本発明(5)の方法である。
本発明(7)は、ポリペプチドがβアミロイドペプチドのC末端フラグメントであるAβ(29-40)、Aβ(29-42)である、本発明(5)または(6)の方法である。
本発明(8)は、標識されたポリペプチドが少なくとも1種の安定同位体により標識される、本発明(5)〜(7)のいずれか一発明の方法である。
本発明(9)は、標識されたポリペプチドが15N、13C、18Oおよび2Hを含む群より選択される安定同位体により標識される、本発明(8)の方法である。
本発明(10)は、段階(b)において調製されたポリペプチドが質量分析法による分析の前に脱塩される、本発明(5)〜(9)のいずれか一発明の方法である。
本発明(11)は、段階(b)において調製されたポリペプチドがMALDI-TOF質量分析法によって分析される、本発明(5)〜(10)のいずれか一発明の方法である。
本発明(12)は、以下の段階を含む、関心対象のポリペプチドを検出および定量するための方法である:
(a)ポリペプチドの供給源を提供する段階、
(b)安定同位体により標識された規定量のポリペプチドを、段階(a)の供給源へ添加する段階、
(c)標識されていないポリペプチド、および標識されたポリペプチドを単離する段階、
(d)質量分析法による分析のために、単離されたポリペプチドを調製する段階、
(e)イオン化修飾剤により、単離されたポリペプチドを修飾する段階、
(f)質量分析法により、調製されたポリペプチドを分析する段階、および
(g)ポリペプチドの供給源内に存在したポリペプチドの量を決定する段階。
本発明(13)は、イオン化修飾剤が本発明(1)〜(3)のいずれか一発明の化合物である、本発明(12)の方法である。
本発明(14)は、段階(a)におけるポリペプチドの供給源が組織試料から入手される、本発明(12)または(13)の方法である。
本発明(15)は、段階(a)におけるポリペプチドの供給源が組織試料から入手されたアミロイド沈着物である、本発明(12)〜(14)のいずれか一発明の方法である。
本発明(16)は、アミロイド沈着物がレーザー解剖顕微鏡による切除によって組織試料から入手される、本発明(15)の方法である。
本発明(17)は、組織試料が脳に由来する、本発明(15)または(16)の方法である。
本発明(18)は、脳がヒトまたは齧歯動物の脳である、本発明(17)の方法である。
本発明(19)は、段階(a)におけるポリペプチドの供給源が体液である、本発明(12)〜(14)のいずれか一発明の方法である。
本発明(20)は、段階(b)において添加される標識されたポリペプチドが、組換えにより生成され、かつ、少なくとも1種の安定同位体により標識されるポリペプチドである、本発明(12)〜(19)のいずれか一発明の方法である。
本発明(21)は、段階(b)において添加される標識されたポリペプチドが、合成により生成され、かつ、少なくとも1種の安定同位体により標識されるポリペプチドである、本発明(12)〜(19)のいずれか一発明の方法である。
本発明(22)は、段階(b)において添加されるポリペプチドが、15N、13C、18Oおよび2Hを含む群より選択される安定同位体により標識される、本発明(12)〜(21)のいずれか一発明の方法である。
本発明(23)は、段階(c)におけるポリペプチドが、ポリペプチド化学および免疫化学を含む方法によって体液から単離される、本発明(12)、(13)、(19)〜(22)のいずれか一発明の方法である。
本発明(24)は、段階(c)におけるポリペプチドが、可溶化剤による溶解を含む方法によって沈着物から単離される、本発明(12)〜(18)、(20)〜(22)のいずれか一発明の方法である。
本発明(25)は、段階(d)における単離されたポリペプチドが、質量分析法による分析のために、化学的断片化および酵素的消化を含む方法によって調製される、本発明(12)〜(24)のいずれか一発明の方法である。
本発明(26)は、段階(d)における単離されたポリペプチドが、質量分析法による分析のために、エンドポリペプチダーゼLys-C、トリプシン、およびエンドポリペプチダーゼGlu-Cを含む群より選択されるプロテアーゼによる酵素的消化によって調製される、本発明(25)の方法である。
本発明(27)は、段階(f)における調製されたポリペプチドが質量分析法による分析の前に脱塩される、本発明(12)〜(26)のいずれか一発明の方法である。
本発明(28)は、段階(f)における調製されたポリペプチドがMALDI-TOF質量分析法によって分析される、本発明(12)〜(27)のいずれか一発明の方法である。
本発明(29)は、関心対象のポリペプチドが、鎖長変異体AβX-40および/またはAβX-42であり、ここでXは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくは11である、本発明(12)〜(28)のいずれか一発明の方法である。
本発明(30)は、段階(g)の供給源内に存在したβアミロイドペプチドAβX-40および/またはAβX-42の量を決定する段階が、C末端フラグメントの鎖長変異体の量を決定する段階によって実施される、本発明(29)の方法である。
本発明(31)は、段階(g)において決定されたC末端フラグメントの鎖長変異体が、Aβ29-40および/またはAβ29-42である、本発明(30)の方法である。
本発明(32)は、段階(g)において決定されたC末端フラグメントの鎖長変異体が、Aβ11-40および/またはAβ11-42である、本発明(30)の方法である。
本発明(33)は、Xが1である、本発明(29)の方法である。
本発明(34)は、関心対象のポリペプチドが、βアミロイドペプチドのC末端フラグメントであるAβ(29-40)またはAβ(29-42)である、本発明(12)〜(28)のいずれか一発明の方法である。
本発明(35)は、関心対象のポリペプチドが修飾されたアミロイドペプチドAβである、本発明(12)〜(28)のいずれか一発明の方法である。
本発明(36)は、修飾がアミロイドペプチドの35位メチオニンの酸化である、本発明(35)の方法である。
本発明(37)は、修飾がアミロイドペプチドの11位グルタミン酸の環化である、本発明(35)の方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、ポリペプチドを修飾し、それによって、以前には質量分析法による検出から免れていたポリペプチドの質量分析法による検出を可能にする新規の分子が提供された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の1つの態様は、以下の段階を含む、関心対象のポリペプチドを定量するための方法に関する:
(a)ポリペプチドの供給源を提供する段階、
(b)段階(a)の供給源へ、安定同位体により標識された規定量のポリペプチドを添加する段階、
(c)関心対象の、標識されていないポリペプチドおよび標識されたポリペプチドを単離する段階、
(d)質量分析法によって分析するために、関心対象の単離されたポリペプチドを調製する段階、
(e)イオン化修飾剤により、単離されたポリペプチドを修飾する段階、
(f)質量分析法によって関心対象の調製されたポリペプチドを分析する段階、
(g)ポリペプチドの供給源内に存在した関心対象のポリペプチドの量を決定する段階。
【0020】
関心対象のポリペプチドの供給源は血液などの体液であってよく、または、関心対象のポリペプチドは組織試料(例、ホモジナイズされた脳試料)もしくは細胞培養物から入手されてもよい。組織試料、体液もしくは細胞培養物は、哺乳動物組織試料、哺乳動物体液または哺乳動物細胞であってよい。好ましい組織試料、細胞および体液は、ヒトまたはマウスに由来し得る。
【0021】
供給源内では、関心対象のポリペプチドは可溶形または凝集形で存在し得る。関心対象の凝集したポリペプチドは斑(plaque)を形成することがあり、ここで本明細書で使用する用語「斑」は凝集したポリペプチドの沈着物を指す。凝集したポリペプチド(すなわち、凝集したβアミロイドを含有するアミロイド沈着物)を含有する関心対象のポリペプチドの供給源は、一般的な生化学的ポリペプチド精製方法を含む方法、およびレーザー解剖顕微鏡を含む、組織から構造を特異的に切除するための方法によって組織試料から入手できる。
【0022】
レーザー解剖顕微鏡法は、低温剥離法(cold ablation)およびレーザー圧力カタパルティング法(laser pressure catapulting)の段階を含む(Schutze et al(1998), Identification of expressed genes by laser-mediated manipulation of single cells, Nature Biotechnology 16:737-742; Simone et al(1998), Laser-capture microdissection: opening the microscopic frontier to molecular analysis, TIG 14: 272-276)。レーザー解剖顕微鏡は、光顕微鏡によって同定できる任意の特異的な表現型または表現型性組織変化を把握するために使用することができる。1つの例として、単離された試料の個別の顕微解剖および分析(例えば、マイクロアレイによる)によって、正常細胞もしくは組織と病理的試料との間の遺伝子発現における差を検出する際に、この技術は有用であろう。したがって、重要な変化についての定性的および定量的分析は、レーザー解剖を使用しない場合には必要とされるような組織全体の分析と比較して、より容易に、かつより正確に実施することができる。ポリペプチド組成を分析する前にレーザー解剖によって関心対象の構造を単離することの長所は、平均的なポリペプチドの組成または濃度は必要とされないが、特定の生物学的構造を分析する必要がある場合に有用である。
【0023】
関心対象の凝集したポリペプチドを含有する切除された供給源は、斑全体の一画分しか表さない可能性がある。Aβの場合には、斑は球状である。斑全体における関心対象のポリペプチドの量を決定するためには、斑の切除した部分において決定された関心対象のポリペプチドの量を、補正因子によって平衡化しなければならない。補正因子は、組織切片の厚さおよび斑の平均径に左右され、かつ、切除したディスクのアミロイド含量を球全体へ外挿する(Andreas Guntert "laser dissection microscopy in the comparison of plaques from human and transgenic mice" Diploma thesis 2002, Biozentrum der Universitat Basel, Switzerland)。
【0024】
さらに、切除後に、斑は静電効果によって容器へ移すことができる。
【0025】
組織試料、細胞培養物または体液における関心対象のポリペプチドの存在は、ポリペプチド生化学、組織化学および免疫化学を含む方法によって決定することができる。関心対象の凝集したポリペプチドは、好ましくは、コンゴレッド(Congo Red)もしくはチオフラビン(Thioflavin)Sによる染色を含む組織試料組織化学的方法において、または免疫組織化学的方法によって決定することができる。より好ましくは、組織試料中の関心対象の凝集したポリペプチドの存在は、組織化学的および免疫組織化学的方法により二重染色する段階によって決定される。そのような方法は、当技術分野において周知である。最も好ましくは、組織試料中の関心対象の凝集したポリペプチドの存在は、最初のコンゴレッドによる染色、および引き続く免疫組織化学的方法によって決定される。好ましくは、体液中の関心対象のポリペプチドの存在は、体液試料のウエスタンブロッティング法によって決定される。
【0026】
本発明の方法では、安定同位体により標識された関心対象のポリペプチドは、溶解および/または単離の手順の開始前に、関心対象のポリペプチドの供給源へ標準物質として添加される。安定同位体により標識された関心対象のポリペプチドであるこの標準物質は、ホモジナイズされた組織試料、切除したポリペプチド沈着物、体液試料または細胞培養物へ直接的に添加される。
【0027】
標準物質(安定同位体を用いて標識された関心対象のポリペプチド)は、まず最初に関心対象のポリペプチドの供給源内へ、例えば切除したポリペプチド沈着物または体液の試料中へスパイクすることができる。定量すべき標識されていない関心対象のポリペプチド、および標識された標準物質の関心対象のポリペプチドは、同一原子中の質量の相違を除いて化学的に同一であるので、他のポリペプチドによって結合される可能性のある、関心対象の凝集性ポリペプチドまたは関心対象の可溶性ポリペプチド(例えば、凝集したアミロイドまたは可溶性アミロイド)の所要の溶解および/または単離手順において同等に挙動し、このことは分析物および標準物質の同等の消失を生じさせる。手順の前後における標識された標準物質の量の比較は、供給源内に元来存在する関心対象の標識されていないポリペプチドの量の決定を可能にする。
【0028】
関心対象の標準物質のポリペプチドは、2H、13C、15N、および18Oを含む群より選択される少なくとも1種の安定同位体を用いて標識される。好ましくは、関心対象の標準物質のポリペプチドは15Nまたは13Cを用いて標識される。より好ましくは、関心対象の標準物質のポリペプチドは15Nを用いて標識される。好ましくは、関心対象の標準物質のポリペプチドは、質量スペクトルにおける同位体パターンを分離する必要に応じた、できるだけ多くの安定同位体を用いて標識される。
【0029】
安定同位体により標識された関心対象の標準物質のポリペプチドは規定量で添加される。好ましくは、標識された関心対象の標準物質のポリペプチドは、関心対象のポリペプチドの供給源内に存在する関心対象のポリペプチドの有効量と同一範囲内の量で添加される。この量は、例えばRufenachtら(Quantification of the Aβ peptide in Alzheimer's plaques by laser dissetion microscopy combined with mass spectrometry, J, Mass Spectrom.;2005;40:193-201)に記載されているように予備実験において決定できる。
【0030】
本発明の方法における、標準物質として使用される安定同位体により標識された関心対象のポリペプチドは、組換え的に生成できる。発現構築物を調製するための方法、およびポリペプチドを組換え生成するための方法、およびポリペプチドは当技術分野において公知であり、Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology/Polypeptide science, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y.(1994)に要約されている。
【0031】
本発明の方法における、標準物質として使用される安定同位体により標識された関心対象のポリペプチドは、化学合成によって生成できる。ポリペプチドまたはそれらのフラグメントを合成的に生成するための方法、例えばポリペプチドの固相合成法は当技術分野において公知であり、Ausubel, Current Protocols in Polypeptide science, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y.(1994)に要約されている。固相ペプチド合成法は合成ペプチドを調製するために使用される最も一般的な方法であり、合成の成功はα-アミノ保護のためのFmoc(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル)法(Burdick, D.; et al., J Biol Chem 1992, 267, 546-554)およびBoc(t-ブチルオキシカルボニル)法(Barrow, C.J.; et al., J Mol Biol 1992, 225, 1075-1093)の両方を用いて得られている。
【0032】
関心対象の標準物質のポリペプチドを添加した後に、関心対象の標識されたポリペプチドおよび標識されていないポリペプチドを含む、関心対象の全ポリペプチドは、体液から、好ましくは血清またはCSFから、免疫沈降および免疫親和性クロマトグラフィーを含むポリペプチド化学的方法によって単離することができる。
【0033】
したがって、さらなる態様では、段階(c)における関心対象のポリペプチドは、ポリペプチド化学的および免疫化学的方法を含む方法によって体液から単離される。
【0034】
関心対象の凝集したポリペプチドを含有する関心対象のポリペプチドの供給源における関心対象のポリペプチドの含量を決定するために、関心対象の凝集したポリペプチドは溶解されなければならない。本発明の方法では、関心対象の凝集したポリペプチドは、可溶化剤による溶解、および任意で、関心対象の標準物質の標識されたポリペプチドの存在下での機械的可溶化を含む方法によって溶解される。本発明の可溶化剤は、関心対象の凝集したポリペプチドを溶解させるための能力を有する全ての物質、例えばヘキサフルオロプロパノール、ギ酸などの酸、尿素-SDSなどであってよい。機械的可溶化は超音波処理を含み得る。関心対象の凝集したポリペプチドの溶解手順は、添加された、関心対象の標識された標準物質のポリペプチドの存在下で行われるので、それによって関心対象の標準物質のポリペプチドおよび定量すべき関心対象のポリペプチドの同等の損失を保証する。
【0035】
このため、さらなる態様では、段階(c)における関心対象のポリペプチドは、可溶化剤による溶解を含む方法、および任意で超音波処理によって、関心対象のポリペプチドの沈着物から単離される。
【0036】
関心対象の単離されたポリペプチドは、続いて質量分析法によって分析するために調製される。質量分析法による分析のための調製は、分析すべきAβのイオン化の改善をもたらす方法を含む。イオン化の改善をもたらす方法は、化学的断片化および酵素的消化を含む方法による断片化を含む。
【0037】
引き続き、任意で断片化されたポリペプチドは、化学反応を用いて飛行修飾剤へ結合させられる。飛行修飾剤による化学反応は、感受性を増強し、かつポストソースディケイ(post-source decay)MALDI質量分析法によるフラグメントイオンの形成を促進するために、ペプチドの遊離N末端の電荷誘導を含む(J. Stults et al.(1993) Anal. Chem. 65, 1703-1708; B, Spengler et al.(1997) Int. J. Mass Spectrom. 169-170, 127-140; Z. Huang et al.(1999) Anal. Biochem. 268, 305-317; Staudenmann W. and James P. in Proteome Research: Mass Spectrometry (P.James, Ed) Springer Verlag, Berlin (2001) 143-166)。単離されたポリペプチドは、質量分析法による分析のために調製する目的で、飛行修飾剤と直接的に反応させることができる。または、単離されたポリペプチドは、断片化の後に飛行修飾剤と反応させることができる。化学的断片化は、臭化シアンを使用することによって実施できる。酵素消化は、エンドポリペプチダーゼLys-C、トリプシン、エンドポリペプチダーゼGlu-Cおよびペプシンを含む群より選択されるプロテアーゼにより実施できる。本発明の方法では、単離されたポリペプチドを乾燥させ、プロテアーゼによる消化前にバッファー中に再溶解させてよい。溶解したポリペプチドの断片化は、質量分析法による分析におけるより良好な検出限界をもたらす可能性がある(Gruenigner et al. (2000). Identification of β-secretase-like activity using a mass spectrometry-based assay system. Nature biotechnology 18:66-70)。
【0038】
したがって、さらなる態様では、段階(d)における関心対象の単離されたポリペプチドは、質量分析法による分析のために、化学的断片化および酵素的消化を含む方法によって調製される。
【0039】
質量分析法による分析の前に、溶解させ、任意で断片化した関心対象のポリペプチドを脱塩することができる。試料の脱塩(例えばZipTipによる)は、イオン性化合物がイオン化の競合剤(例えばバッファーによって導入される)として存在する場合に推奨される。これらのイオンは、関心対象のシグナルを完全に抑制することがある。
【0040】
単離され、任意で断片化された関心対象のポリペプチドは、次に質量分析法によって分析される。生物学的材料に対して使用される現在のイオン化技術は、ESI(エレクトロスプレーイオン化)およびMALDI(マトリックス支援レーザ脱離イオン化)を含む。好ましくは、使用される質量分析はMALDI-TOF(飛行時間)質量分析法による分析である。MALDI-TOF-MS分析のスペクトルは、主として無傷の、一価分子イオンから構成される。ポリペプチドのようなより大きな分子は、多価イオン、およびそれらの濃度に依存して、一価多量体も産生する可能性がある。
【0041】
関心対象のポリペプチドとしてのAβについては、天然の14N Aβのピークパターンは、質量分析法においてその人工15Nホモログから分離されるベースラインであり、それによって質量スペクトルにおける関心対象のポリペプチドの天然物と標準物質との識別を可能にする。
【0042】
関心対象の凝集したポリペプチドの供給源内に存在した、Aβなどの関心対象のポリペプチドの量は、質量スペクトルを分析するための、以下の様々なアプローチで決定され得る:a)標識された標準物質(Aβについては、15N-標識されたアミロイド標準物質)および関心対象のポリペプチドの供給源からの関心対象のポリペプチドの、2つの優勢なピークの高さを比較するアプローチ、b)分離されたピークパターンの全てのピークの高さを比較するアプローチ、c)2つの優勢なピーク下の面積を比較するアプローチ、または、d)2つの異なるピークパターンの全ピーク下の面積の合計を比較するアプローチ。本手順の最初に添加される関心対象の標準物質の標識されたポリペプチドの、規定された既知量を用いると、ポリペプチドの供給源内に存在するポリペプチドの量を計算することができる。三次元アミロイド沈着物において、例えば斑において存在するAβなどのポリペプチドの量を決定しなければならない場合は、計算に補正係数を含めなければならない。
【0043】
アルツハイマー病は、患者の脳内のアミロイドフィブリルの細胞外沈着物を特徴とする。Aβの異なる様々な変異体は、アミノ末端ならびにカルボキシ末端のいずれかに不均一性を有して発生することが公知である。特に重要であるのはカルボキシ末端での不均一性であるが、それは42アミノ酸を有する長い形(Aβ1-42)は、40アミノ酸を含有する短い形(Aβ1-40)よりも凝集する傾向がはるかに高いためである。したがって、2つの鎖長変異体を識別することが重要である。ここで極めて重要な部分はC末端である。しかし、エンドペプチダーゼLys-Dを用いて生成した3つの部分の中で、C末端ペプチドフラグメントは質量分析法を用いて検出することができない。死亡前にアミロイド沈着を定量する方法は、軽症もしくは臨床的に紛らわしい症例における診断ツールとして、ならびにAβ沈着を防止することを目標とする療法の有効性をモニターすることにおいて、いずれも必要とされる。
【0044】
このため本発明は、以下の段階を含む、AβX-40および/またはAβX-42を検出および定量するための方法をさらに提供する:
(a)アミロイドペプチドAβX-40および/またはAβX-42の供給源を提供する段階、
(b)安定同位体により標識された規定量のβアミロイドペプチドAβX-40および/またはAβX-42を添加する段階、
(c)標識されたβアミロイドの存在下でβアミロイドAβX-40および/またはAβX-42を単離する段階、
(d)プロテアーゼにより、単離されたβアミロイドAβX-40および/またはAβX-42を消化する段階、
(e)イオン化修飾剤を用いてβアミロイドAβX-40および/またはAβX-42のフラグメントを修飾する段階、
(f)質量分析法により、消化したβアミロイドペプチドフラグメントを分析する段階、および
(g)C末端フラグメントの鎖長変異体の量を決定する段階によって、供給源内に存在したβアミロイドペプチドAβX-40および/またはAβX-42の量を決定する段階。
【0045】
好ましくは、Xは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11(Aβ1-40、Aβ2-40、Aβ3-40、Aβ4-40、Aβ5-40、Aβ6-40、Aβ7-40、Aβ8-40、Aβ9-40、Aβ10-40、Aβ11-40、Aβ1-42、Aβ2-42、Aβ3-42、Aβ4-42、Aβ5-42、Aβ6-42、Aβ7-42、Aβ8-42、Aβ9-42、Aβ10-42およびAβ11-42)である。より好ましくは、Xは1である。
【0046】
段階(g)のC末端フラグメントの好ましい鎖長変異体は、Aβ29-40およびAβ29-42である。段階(g)のC末端フラグメントの好ましい鎖長変異体はまた、Aβ11-40およびAβ11-42である。
【0047】
上述したこれらの方法は、C末端フラグメントの2つの変異体(AβX-40およびAβX-42)の間を識別すること、かつ、試料において、すなわち組織試料から入手したアミロイド沈着物において、変異体それぞれの量を定量することを可能にする。
【0048】
本発明のまた別の態様は、以下の段階を含む、修飾されたアミロイドペプチドを定量するための方法である:
(a)修飾されたアミロイドペプチドAβの供給源を提供する段階、
(b)安定同位体を用いて標識された、規定量の修飾されたβアミロイドペプチドAβを添加する段階、
(c)標識されたβアミロイドの存在下で、修飾されたβアミロイドAβを単離する段階、
(d)プロテアーゼにより、単離された修飾βアミロイドAβを消化する段階、
(e)イオン化修飾剤により、修飾されたβアミロイドAβのフラグメントを修飾する段階、
(f)質量分析法によって消化された修飾βアミロイドペプチドフラグメントを分析する段階、および
(g)供給源内に存在した修飾されたβアミロイドペプチドAβの量を決定する段階。
【0049】
Aβペプチドの修飾は、Aβ(11-16)の11位グルタミン酸の環化であってよく、それによりN末端N-ピログルタミン酸塩の分子種Aβ(pyroGlu 11-16)を産生する。好ましくは、アミロイドペプチドの修飾は、35位メチオニンの側鎖からメチオニンスルホキシド(Met-35(ox))への酸化である。35位メチオニンとは、βアミロイドペプチドのアミノ酸側鎖の35位におけるアミノ酸であるメチオニンを意味する。アミロイドペプチドの好ましい供給源は、脳内のアミロイド斑である。脳は、哺乳動物由来であってよい。好ましい脳は、ヒト脳またはマウス脳である。
【0050】
本発明の方法によって定量すべきβアミロイドのまた別の形態は、Aβ(X-38)、Aβ(X-39)、Aβ(X-40)、Aβ(X-41)、Aβ(X-42)、Aβ(X-43)(このとき、Xは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11であり、ペプチドは3位および/または11位でピログルチネート化(pyroglutinated)されている)などの架橋ペプチドを含む。これらの架橋ペプチドは、本明細書に記載した方法の分析範囲に適合させるために一連のタンパク質分解酵素によって任意に断片化することができる。βアミロイドおよびAβといった用語は本発明において同等に使用される。
【0051】
βアミロイドおよびそれらのフラグメントの好ましい供給源は、組織試料、血清およびCSFから入手したアミロイド沈着物である。組織試料から入手したアミロイド沈着物は、緻密な(神経性もしくは老年性)斑、散在性斑、および微小血管障害を生じる小さな細動脈および細静脈におけるアミロイド沈着物を含む。アミロイド沈着物は、少量の他の構成要素の他に、凝集したβアミロイドを主に含む。最も好ましいのは、脳組織から入手されたアミロイド斑である。
【0052】
好ましくは、アミロイド沈着物はレーザー解剖顕微鏡によって組織試料から切除される。好ましくは、アミロイド沈着物は組織切片から切除され、より好ましくは、それらは脳切片から切除される。
【0053】
βアミロイドは、凝集形または可溶形でβアミロイドの供給源内に存在する可能性がある。斑内のAβはアミロイドフィブリル内に組み込まれることは公知である一方、Aβの可溶性非フィブリル形はインビボに存在する。Tellerら(Teller, J.K.; et al., Nat Med 1996, 2, 93-95)は、ダウン症候群被験者および正常高齢対照群由来の脳の水性抽出物中で可溶性Aβ種を検出した;これらの試料は胎児および4歳から61歳の年齢範囲の被験者の検死時に入手された。可溶性Aβの量は、ダウン症候群被験者においては数倍高く、かつこれは加齢に伴って増加した。さらに、可溶性Aβの上昇は、神経斑形成に明らかに先立って発生した。Kuoら(KuO, Y.M.; et al., J Biol Chem 1996, 271, 4077-4081)は、8例のAD被験者および4例の正常対照群由来の脳の水性抽出物を試験し、可溶性Aβの量における6倍の増加を見いだした。可溶性Aβについての限外濾過実験は、Aβオリゴマーの存在を示した。
【0054】
凝集したβアミロイドは、「βひだ(beta-pleated)」シートフィブリンに折り畳まれているアミロイドフィブリルであってよいが、ここでアミロイドフィブリルは、以下を含む基準に従って分類される:(1)コンゴレッドの結合の証明および直交ポラライザ(crossed polarizers)間で視認したときの緑色複屈折の表示;(2)直径が6〜10nmの微細非分岐性繊維の電子顕微鏡による証明;(3)特徴的な構造の存在;および(4)シルクフィブロイン(silk fibroin)中で見られる交差パターンに類似したX線繊維回折パターン。
【0055】
組織試料または体液中のβアミロイドの存在は、タンパク質生化学、組織化学および免疫化学を含む方法によって決定することができる。好ましくは、組織試料中の凝集したβアミロイドの存在は、コンゴレッドまたはチオフラビンSにより染色する段階を含む組織化学的方法において、または免疫組織化学的方法によって決定される。より好ましくは、組織試料中の凝集したβアミロイドの存在は、組織化学的および免疫組織化学的方法を用いた二重染色によって決定される。最も好ましくは、組織試料中の凝集したβアミロイドの存在は、最初のコンゴレッドによる染色、および引き続く免疫組織化学的方法によって決定される。好ましくは、体液中のβアミロイドの存在は、体液試料のウエスタンブロッティング法によって決定される。
【0056】
安定同位体を用いて標識され、かつ標準物質として添加されたAβは、Aβの供給源内で定量すべきものと同一のAβ形を表す。このため、安定同位体により標識されたAβは、以下を含む群から選択することができる:Aβ1-40、Aβ2-40、Aβ3-40、Aβ4-40、Aβ5-40、Aβ6-40、Aβ7-40、Aβ8-40、Aβ9-40、Aβ10-40、Aβ11-40、Aβ1-42、Aβ2-42、Aβ3-42、Aβ4-42、Aβ5-42、Aβ6-42、Aβ7-42、Aβ8-42、Aβ9-42、Aβ10-42、Aβ11-42およびAβ29-X(ここでXは37、38、39、40、41、42または43である)。Aβ標準物質は、2H、13C、15N、および18Oを含む群より選択される少なくとも1種の安定同位体により標識される。好ましくは、Aβ標準物質は15Nまたは13Cを用いて標識される。より好ましくは、Aβ標準物質は15Nにより標識される。好ましくは、Aβ標準物質は、質量スペクトルにおける同位体パターンを分離するための必要に応じて、できるだけ多くの安定同位体を用いて標識される。
【0057】
安定同位体により標識されたAβ標準物質は規定量で添加される。好ましくは、標識されたAβ標準物質は、関心対象のポリペプチドの供給源内に存在するAβの有効量と同一範囲内の量で添加される。この量は、予備実験において決定することができる。
【0058】
本発明の方法における標準物質として使用される、安定同位体により標識されたAβは化学合成によって産生できる。ポリペプチドを合成生成するための方法、例えばポリペプチドの固相合成法は当技術分野において公知であり、Ausubel, Current Protocols in Polypeptide science, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y.(1994)に要約されている。合成Aβペプチドを用いてインビトロで形成されたアミロイドフィブリルが老年斑から単離されたアミロイドフィブリルと同一であるという証明(Kirschner, D.A.; Inouye, H.; Duffy, L.K,; Sinclair, A.; Lind, M.; Selkoe, D.J. Proc Natl Acad Sci USA 1987, 84, 6953-6957)は、様々な研究における合成ペプチドの有用性を実証した。固相ペプチド合成法は、合成ペプチドを調製するために使用される最も一般的な方法であり、合成の成功はα-アミノ保護のためのFmoc(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル)法(Burdick, D.; et al., J Biol Chem 1992, 267, 546-554)およびBoc(t-ブチルオキシカルボニル)法(Barrow, C.J.; et al., J Mol Biol 1992, 225, 1075-1093)の両方を用いて得られている。Aβペプチドは合成するのがやや困難であるが、標準的なカップリング法および側鎖保護戦略は合成の成功のために十分であることが証明されている。Aβ標準物質へ安定同位体を導入するために、合成法において安定同位体により標識されたアミノ酸が使用される。
【0059】
本発明の方法における標準物質として使用される安定同位体により標識されたAβアミロイドペプチドは組換え的に生成できる。天然Aβを組換え生成するための方法は、当技術分野において、例えば欧州特許第0641861号に記載されている。好ましくは、標識されたAβは、組換え大腸菌に15N塩化アンモニウムを供給することによって生成できる。安定同位体のための他の供給源は、13C標識されたグルコース、および15N標識された基質上で増殖させた藻類の抽出物を含む。
【0060】
本発明を一般的に説明してきたが、添付の図面と結び付けると、例示のためのみに本明細書に含まれ、他に特記しない限り限定することを意図しない、下記の特定の実施例を参照することによって、本発明はより明確に理解されるであろう。
【実施例】
【0061】
本実施例で言及する市販されている試薬は、他に特記しない限り、製造業者の取扱説明書にしたがって使用した。
【0062】
実施例1
アルツハイマー病班中のAβのカルボキシ末端の検出におけるアルギニン酸-NHS付加物およびその応用
【0063】

【0064】
L-アルギニン酸の、そのHBF4塩への転換
350mgのL-アルギニン酸(2ミリモル)を8mLのH2Oに溶解させた。pHがpH6からpH2〜3への低下を示すまで、約0.25mLの8Mテトラフルオロホウ酸によりこの溶液を滴定した。凍結乾燥、1mLのジメチルホルムアミド(DMF)の添加および2回目の凍結乾燥後に、透明な極めて粘性の油が得られた。
【0065】
L-アルギニン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドの合成
25.5mgのO-(N-スクシンイミジル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレートを0.32mLのDMF中に溶解した。この溶液に、70.6mgのL-アルギニン酸HBF4塩調製物および60μLのピリジンを添加した。この混合液を20℃でインキュベートし、この反応液を電子スプレー質量分析計(型:API 150MCA)によってモニターした。L-アルギニン酸N-ヒドロキシスクシンイミドは極めて反応性であり、試料を希釈し注入するために必要とされる数秒間以内に(質量分析法のために使用されるバッファー系中に含有されるアンモニウムイオンのために)、かなりの量が既に遊離酸またはアミドへ転換される。所望の生成物の比率は5時間後に最適であった。この調製物を粗イオン化修飾剤と称する。
【0066】
脳切片から入手した断片化Aβペプチドによる反応
この手順は、既に記載された手順(欧州特許出願第03024739.9号およびRufenacht et al. 2005)を拡張したものである。この記載にしたがって、斑を脳の薄切片から切除し、抗Aβ抗体またはコンゴレッドにより染色し、顕微鏡下でレーザー解剖により切除し、かつレーザー圧力カタパルティング法によってエッペンドルフ管中に採取した。次に、70%ギ酸により、斑中に含有された凝集したAβを溶解させ、真空下で乾燥させ、かつエンドプロテイナーゼLys-Cにより消化した。
【0067】
典型的には、消化物の容量は、10mMのNaHCO3により緩衝した10μLであった。この消化物に5μLの粗イオン化修飾剤溶液を添加し、20℃で1時間インキュベートした。
【0068】
この誘導段階の後、本手順は(Rufenacht et al. 2005)に記載されたものと同一であり、最初にZipTipにより脱塩し、MALDI-TOF MSを実施するためにマトリックスと混合する段階を含む。
【0069】
任意で、既知量の15N標識されたAβは、70%ギ酸による繊維の溶解直前にスパイクすることができる。これは、斑内に含有されたAβの量の定量を可能にする。天然の14N Aβおよび組換え生成した15N Aβは化学的に同一であるので、吸着に起因する消失、ならびにプロテアーゼ開裂およびイオン化に関して同一の挙動をする。しかし、質量分析法によって分析した場合は、15N Aβ由来のピークはより高い質量へとシフトした。対応する14Nおよび15Nのピーク間の比率を決定することによって、内因性Aβの量を決定することができる。カルボキシ末端を重視する場合には、適切なAβスパイクを選択しなければならない。これまでに分析した組織試料中で、いずれの起源に脳試料が由来するのかに依存して、本発明者らは様々な比率で以下の4つの異なるカルボキシ末端を検出した:Aβ(29-40)WT、Aβ(29-40)M35Mox、Aβ(29-42)WTおよびAβ(29-42)M35Mox。WTは35位でメチオニン残基を有する野生型を意味するが、一方、M35Moxは酸化型を意味する。M35Mox形の定量のためには、15N Aβ(1-40)または15N Aβ(1-42)または任意の他の15N Aβ(X-Y)形を使用できる(Riek et al. NMR studies in aqueous solution fail to identify significant conformational differences between the monomeric forms of two Alzheimer peptides with widely different plaque-competence, Aβ(1-40)ox and Aβ(1-42)ox; Eur. J. Biochem. 268, 5930-5936(2001))。CNBr開裂法はメチオニンスルホキシドを生成する(Dobeli et al. A biotechnological method provides access to aggregation competent monomeric Alzheimer's 1-42 residue amyloid peptide; BioTechnology 13, 988-993(1995))。WT形を定量するためには、組換え融合タンパク質を使用できる。エンドプロテイナーゼLys-Cによる消化は真正フラグメントAβ(17-28)およびAβ(29-X)を生成する。例は図1、2および3に示す。
【0070】
実施例2
6-グアニドヘキサン酸-NHS付加物の合成、および質量分析計の分析範囲内への分析物ピークのシフト
【0071】

【0072】
6-グアニドヘキサン酸から、そのHBF4塩への転換
6-グアニドヘキサン酸は有機溶媒中では溶解性に乏しいが、そのHBF4塩に転換されると、メタノールにおいて溶解性である。346mgの6-グアニドヘキサン酸(2ミリモル)を0.25mLのH2O中に溶解させ、次に約250μLの8Mテトラフルオロホウ酸により中和した。凍結乾燥後、463mgの白色粉末が得られた。理論収量:466mg。
【0073】
6-グアニドヘキサン酸-N-ヒドロキシスクシンイミド付加物の合成
120μLのメタノール中に溶解させた6.3mgの6-グアニドヘキサン酸HBF4塩(200mM)および120μLのジメチルホルムアミド中に溶解させた2.8mgのN-ヒドロキシスクシンイミド(200mM)を、70mgのN-シクロヘキシルカルボジイミド,N'-メチルポリスチレンビーズ(Novo Biochem, Laufelfingen, Switzerland)へ添加した。スラリー(slurry)を20℃に設定した回転式振とう機上で静かに攪拌し、電子スプレー質量分析計によって反応をモニターした。8時間後、この反応はほぼ完了し、その後48時間までは所望のアッセイへ導入することができた。
【0074】
m/z値を電子スプレー質量分析計の分析範囲内へとシフトさせるための、6-グアニドヘキサン酸-N-ヒドロキシスクシンイミド付加物による小型第一級アミンの誘導
塩化アンモニウム、エタノールアミン、グリシンおよびシステアミン(各20mM)を含有する10μLの混合液を、20℃で1時間、10μLの6-グアニドヘキサン酸-N-ヒドロキシスクシンイミド付加物(概算濃度は100mM)により処理した。MS分析の前に、30μLの水を添加し、次に5μLを、500μLのMSバッファー(50%のアセトニトリルおよび50%の10mM酢酸アンモニウム)により希釈し、このうち2μLを電子スプレー質量分析計(型:API 150 MCA)内に注入した。誘導されないアミンのm/z値は18(NH4イオン)、62(エタノールアミンイオン)、76(グリシンイオン)および77(システアミンイオン)であると考えられるので、質量分析計の分析範囲から外れるであろう。図5に示したように、修飾されたアミンの予想ピークは、イオン化修飾剤と共役させた場合には視認できた。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】例としてAβアミロイドのC末端フラグメントの同定を考慮する、本発明の方法の原理を概略的に示す図である。エンドペプチダーゼLys-DによるAβの消化は3種のフラグメントを作製する(段階1)。3つのフラグメントは、この場合は遊離アミノ基(黒丸印)へ特異的に結合する飛行修飾剤(斜線付丸印)により処理される(段階2)。結合した飛行修飾剤はフラグメントの飛行挙動を変化させ、C末端フラグメントの検出およびAβ(1-40)とAβ(1-42)との識別を可能にする。
【図2】25検体のヒトの密な斑を用いて、イオン化修飾剤(IM)を伴わずに入手されたMALDI-TOF質量分析図(MS)を示す図である。βアミロイドペプチドのC末端フラグメントは同定できず、定量もできない。Aβ1-40とAβ1-42とを識別することは不可能である。
【図3】35検体のヒトの密な斑を用いて、イオン化修飾剤(IM)を伴って入手されたMALDI-TOF質量分析図を示す図である。IMの効果により、AβのC末端フラグメントの検出が可能であり、かつAβ1-40とAβ1-42とを識別することが可能である。
【図4】45 PS2APPトランスジェニックマウス(Richards et al. (2003) PS2APP transgenic mice, coexpressing hAPPswe and hPS2mut, show age-related discrete brain amyloid deposition and inflammation associated with cognitive deficits. J Neurosci. 23, 8989)の密な斑の、イオン化修飾剤(IM)を伴うMALDI-TOF質量分析図を示す図である。IMは、Aβ1-40とAβ1-42とを識別することを可能にする。さらに、35位でのメチオニンのスルホキシド化のような小さな修飾を本発明の方法によって検出することができる。
【図5】イオン化修飾剤(IM)により誘導した、アンモニアおよび3種の小型アミン(エタノールアミン、グリシンおよびシステアミン)由来のイオンスプレー質量分析図を示す図である。
【図6】イオン化修飾剤の例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式の化合物:

式中、
n=0、1、2、3、4、5、6、7もしくは8;
X=H、OH、F、Cl、Br、CH3、C2H5、C3H7もしくはC4H9
R=残基なし、H、CH3、C2H5、C3H7もしくはC4H9
R'=残基なし、H、CH3、C2H5、C3H7もしくはC4H9
R''=H、CH3、C2H5、C3H7もしくはC4H9
R'''=H、CH3、C2H5、C3H7もしくはC4H9
R''''=H、CH3、C2H5、C3H7もしくはC4H9
または、R'およびR''、もしくはR''およびR'''、もしくはR'''およびR''''、もしくはRおよびR''''は相互に結合し、それらが隣接する窒素原子と共に環を形成し、かつ、R'およびR''、もしくはR''およびR'''、もしくはR'''およびR''''、もしくはRおよびR''''は共に、
-CH2-(CH2)p-(式中、pは1、2または3);
または、XおよびRは相互に結合して、それらが隣接する窒素原子および炭素原子それぞれと共に環を形成し、かつXおよびRは共に、
-(CH2)s-(式中、sは1、2、3または4)である。
【請求項2】
n=1
X=OHまたはH
R=H
R'=残基なし
R''=H
R'''=H
R''''=H
である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
n=4
X=H
R=H
R'=残基なし
R''=H
R'''=H
R''''=H
である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
イオン化修飾剤としての、請求項1〜3のいずれか一項記載の化合物。
【請求項5】
以下の段階を含む、標識形および未標識形にある関心対象のポリペプチドを含む供給源から、関心対象のポリペプチドを定量するための方法:
(a)イオン化修飾剤により、単離されたポリペプチドを修飾する段階、
(b)調製されたポリペプチドを質量分析法によって分析し、かつ、それによりポリペプチドの供給源内に存在した関心対象のポリペプチドの量を決定する段階。
【請求項6】
イオン化修飾剤が請求項1〜3のいずれか一項記載の化合物である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ポリペプチドがβアミロイドペプチドのC末端フラグメントであるAβ(29-40)、Aβ(29-42)である、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
標識されたポリペプチドが少なくとも1種の安定同位体により標識される、請求項5〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
標識されたポリペプチドが15N、13C、18Oおよび2Hを含む群より選択される安定同位体により標識される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
段階(b)において調製されたポリペプチドが質量分析法による分析の前に脱塩される、請求項5〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
段階(b)において調製されたポリペプチドがMALDI-TOF質量分析法によって分析される、請求項5〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
以下の段階を含む、関心対象のポリペプチドを検出および定量するための方法:
(a)ポリペプチドの供給源を提供する段階、
(b)安定同位体により標識された規定量のポリペプチドを、段階(a)の供給源へ添加する段階、
(c)標識されていないポリペプチド、および標識されたポリペプチドを単離する段階、
(d)質量分析法による分析のために、単離されたポリペプチドを調製する段階、
(e)イオン化修飾剤により、単離されたポリペプチドを修飾する段階、
(f)質量分析法により、調製されたポリペプチドを分析する段階、および
(g)ポリペプチドの供給源内に存在したポリペプチドの量を決定する段階。
【請求項13】
イオン化修飾剤が請求項1〜3のいずれか一項記載の化合物である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
段階(a)におけるポリペプチドの供給源が組織試料から入手される、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
段階(a)におけるポリペプチドの供給源が組織試料から入手されたアミロイド沈着物である、請求項12〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
アミロイド沈着物がレーザー解剖顕微鏡による切除によって組織試料から入手される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
組織試料が脳に由来する、請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
脳がヒトまたは齧歯動物の脳である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
段階(a)におけるポリペプチドの供給源が体液である、請求項12〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
段階(b)において添加される標識されたポリペプチドが、組換えにより生成され、かつ、少なくとも1種の安定同位体により標識されるポリペプチドである、請求項12〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
段階(b)において添加される標識されたポリペプチドが、合成により生成され、かつ、少なくとも1種の安定同位体により標識されるポリペプチドである、請求項12〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
段階(b)において添加されるポリペプチドが、15N、13C、18Oおよび2Hを含む群より選択される安定同位体により標識される、請求項12〜21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
段階(c)におけるポリペプチドが、ポリペプチド化学および免疫化学を含む方法によって体液から単離される、請求項12、13、19〜22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
段階(c)におけるポリペプチドが、可溶化剤による溶解を含む方法によって沈着物から単離される、請求項12〜18、20〜22のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
段階(d)における単離されたポリペプチドが、質量分析法による分析のために、化学的断片化および酵素的消化を含む方法によって調製される、請求項12〜24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
段階(d)における単離されたポリペプチドが、質量分析法による分析のために、エンドポリペプチダーゼLys-C、トリプシン、およびエンドポリペプチダーゼGlu-Cを含む群より選択されるプロテアーゼによる酵素的消化によって調製される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
段階(f)における調製されたポリペプチドが質量分析法による分析の前に脱塩される、請求項12〜26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
段階(f)における調製されたポリペプチドがMALDI-TOF質量分析法によって分析される、請求項12〜27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
関心対象のポリペプチドが、鎖長変異体AβX-40および/またはAβX-42であり、ここでXは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくは11である、請求項12〜28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
段階(g)の供給源内に存在したβアミロイドペプチドAβX-40および/またはAβX-42の量を決定する段階が、C末端フラグメントの鎖長変異体の量を決定する段階によって実施される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
段階(g)において決定されたC末端フラグメントの鎖長変異体が、Aβ29-40および/またはAβ29-42である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
段階(g)において決定されたC末端フラグメントの鎖長変異体が、Aβ11-40および/またはAβ11-42である、請求項30記載の方法。
【請求項33】
Xが1である、請求項29記載の方法。
【請求項34】
関心対象のポリペプチドが、βアミロイドペプチドのC末端フラグメントであるAβ(29-40)またはAβ(29-42)である、請求項12〜28のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
関心対象のポリペプチドが修飾されたアミロイドペプチドAβである、請求項12〜28のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
修飾がアミロイドペプチドの35位メチオニンの酸化である、請求項35記載の方法。
【請求項37】
修飾がアミロイドペプチドの11位グルタミン酸の環化である、請求項35記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−10658(P2007−10658A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176031(P2006−176031)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】