Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
質量分析法を用いて異性体を識別するための方法
説明

質量分析法を用いて異性体を識別するための方法

本発明は、ジメチルアルギニン異性体を識別する方法に関する。また、心臓血管疾患を診断するための方法および組成物を特徴とする。一態様において、本開示は、ジメチルアルギニン異性体を識別する方法を特徴とする。この方法は、試料をイオン化してイオンを生成するステップと、質量電荷比(m/z)が、あるm/z範囲内にあるイオンを選択するステップと、選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成するステップと、非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)に固有のm/zにおける娘イオンm/z信号および対称性ジメチルアルギニン(SDMA)に固有のm/zにおける娘イオンm/z信号の一方または両方を検出することによって、試料中のADMAおよびSDMAの一方または両方を検出するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2006年3月2日に出願された米国特許出願第60/778,483号に対する優先権を主張する。この出願は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
要旨
本発明は、とりわけ、質量分析法を用いて分子異性体を識別することに関する。例えば、本開示は、タンデム質量分析法を用いてジメチルアルギニンの異性体の一方または両方を検出する方法を特徴とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
これらの方法には様々な用途があり、これらの方法を使用して試料(例えば、合成による試料または被検者からの試料)中のジメチルアルギニンを検出することができる。診断との関連においては、これらの方法を使用して、被検者(例えば、ヒト)についての代謝プロファイルを得ることができる。代謝プロファイルは、代謝産物の一組の異性体の一方または両方の要素の、例えば、ジメチルアルギニンの下記2つの異性体、非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)および対称性ジメチルアルギニン(SDMA)の一方または両方の状態についての情報を含む情報である。
【0004】
【化1】

一部の実施形態においては、代謝プロファイルが、他の分子、例えば、他の代謝産物についての情報を含む。得られた代謝プロファイルは、疾患、例えば血管障害(例えば、心臓血管疾患または高血圧障害)の有無など、被検者(例えば、ヒト)の健康状態を評価するために使用することができる。
【0005】
一態様において、本開示は、ジメチルアルギニン異性体を識別する方法を特徴とする。この方法は、試料をイオン化してイオンを生成するステップと、質量電荷比(m/z)が、あるm/z範囲内にあるイオンを選択するステップと、選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成するステップと、非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)に固有のm/zにおける娘イオンm/z信号および対称性ジメチルアルギニン(SDMA)に固有のm/zにおける娘イオンm/z信号の一方または両方を検出することによって、試料中のADMAおよびSDMAの一方または両方を検出するステップとを含む。
【0006】
別の態様において、本開示はジメチルアルギニン異性体を識別する方法を特徴とする。この方法は、試料をイオン化してイオンを生成するステップと、質量電荷比(m/z)が、あるm/z範囲内にあるイオンを選択するステップと、選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成するステップと、試料が非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)を含むことを示す、約m/z46における娘イオンm/z信号の存在、および試料が対称性ジメチルアルギニン(SDMA)を含むことを示す、約m/z172における娘イオンm/z信号の存在の一方または両方を検出するステップを含む。m/z範囲は、約m/z203でよい。
【0007】
別の態様において、本開示は、対称性ジメチルアルギニン(SDMA)を検出する方法を特徴とする。この方法は、試料をイオン化してイオンを生成するステップと、質量電荷比(m/z)が、あるm/z範囲内にあるイオンを選択するステップと、選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成するステップと、約m/z172における娘イオンm/z信号を検出することによって、試料中の対称性ジメチルアルギニン(SDMA)を検出することを含む。m/z範囲は、約m/z203でよい。
【0008】
別の態様において、本開示は、非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)の方法を特徴とする。この方法は、試料をイオン化してイオンを生成するステップと、質量電荷比(m/z)が、あるm/z範囲内にあるイオンを選択するステップと、選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成するステップと、約m/z46における娘イオンm/z信号を検出することによって、試料中の非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)を検出することを含む。m/z範囲は、約m/z203でよい。
【0009】
上述の方法のいずれかの一部の実施形態において、試料をイオン化する前に試料に内部標準を添加する。この内部標準は、少なくとも1つの重原子を含むジメチルアルギニン異性体であってもよく、または少なくとも1つの重原子を含むジメチルアルギニン異性体を含むこともできる。この内部標準は、少なくとも1つの重原子を有する参照SDMA異性体および少なくとも1つの重原子を有する参照ADMA異性体を含むことも、あるいは少なくとも1つの重原子を有する参照SDMA異性体および少なくとも1つの重原子を有する参照ADMA異性体であってもよく、これら参照SDMAおよびADMA異性体は互いに異なる原子量を有する。
【0010】
別の態様において、本開示は、ジメチルアルギニン異性体を検出する方法を特徴とする。この方法は、少なくとも1つの内部標準が少なくとも1つの重原子を含むジメチルアルギニン異性体である、1つまたは複数の内部標準を含む試料を用意するステップと、試料をイオン化してイオンを生成するステップと、ジメチルアルギニン異性体(例えば、天然の)を分離するために適している範囲に対応するm/z範囲を有するイオンを選択し、1つまたは複数の内部標準を分離するために適している1つまたは複数の追加のm/z範囲内にあるイオンを選択するステップと、選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成するステップと、娘イオンを用いて、非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)に固有の1つもしくは複数の娘イオンm/z信号および/または対称性ジメチルアルギニン(SDMA)に固有の1つもしくは複数の娘イオンm/z信号を検出することによって、試料中のADMAおよび/またはSDMAを検出するステップと、1つまたは複数の内部標準を検出するステップとを含む。
【0011】
一部の実施形態において、ジメチルアルギニン異性体を分離するために適している範囲に対応するm/z範囲が、約m/z203である。一部の実施形態において、試料が、少なくとも1つの重原子を有するSDMA異性体である第1の内部標準と、少なくとも1つの重原子を有するADMA異性体である第2の内部標準とを含むことができ、SDMAおよびADMA異性体が異なる原子量を有する。一部の実施形態において、試料が、少なくとも1つの重原子を有するSDMA異性体である第1の内部標準と、少なくとも1つの重原子を有するADMA異性体である第2の内部標準とを含み、SDMAおよびADMA異性体が同じ原子量を有する。
【0012】
上述の方法のいずれかの一部の実施形態において、方法は、試料中のSDMAおよび/またはADMAのレベルを測定するステップをさらに含むことができる。
【0013】
上述の方法のいずれかの一部の実施形態において、イオン化される試料は生体試料であってもよい。この生体試料は、血液、血清、血漿、リンパ、羊水、唾液、脳骨髄液、涙液、粘液、尿、痰または汗であってもよく、あるいは生体試料が、血液、血清、血漿、リンパ、羊水、唾液、脳骨髄液、涙液、粘液、尿、痰または汗を含むことができる。
【0014】
上述の方法のいずれかの一部の実施形態において、イオン化する試料は、ジメチルアルギニンに加えて化合物を含むことができる。イオン化する試料は、サイズ排除クロマトグラフィカラム上を共に移動することがない化合物を含むことができる。
【0015】
上述の方法のいずれかの一部の実施形態において、1つまたは複数の追加の検体を検出することができる。1つまたは複数の追加の検体は、代謝生体分子であってもよい。1つまたは複数の追加の検体は、アミノ酸またはアシルカルニチンであってもよい。1つまたは複数の追加の検体は、シトルリン、ジメチルアミン、アルギニン、オルトニチン(orthnithine)、ホモシステインおよびクレアチンからなる群から選択される。一部の実施形態において、1つまたは複数の追加の検体を、例えば、タンデム質量分析法を用いて測定することができる。
【0016】
上述の方法のいずれかの一部の実施形態においては、試料をイオン化する前に試料を化学修飾しない。上述の方法のいずれかの一部の実施形態においては、試料をイオン化する前に試料を化学修飾する。
【0017】
上述の方法のいずれかの一部の実施形態において、約m/z46における信号のレベルおよび約m/z172における信号のレベルを、例えば、約m/z46における娘イオンm/z信号および約m/z172における娘イオンm/z信号に応じて関数の結果を決定することによって測定することができる。
【0018】
別の態様において、本開示は、ADMAまたはSDMAレベルの変化によって特徴付けられる疾患を診断する方法を特徴とする。この方法は、被検者からの生体試料を用意すること、生体試料をイオン化してイオンを生成すること、質量電荷比(m/z)が、あるm/z範囲内にあるイオンを選択すること、選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成すること、ならびに約m/z46における娘イオンm/z信号の関数としてのADMAのレベルおよび約m/z172における娘イオンm/z信号の関数としてのSDMAのレベルを測定することを含み、参照試料におけるレベルに対する、生体試料中のADMAおよびSDMAの一方または両方のレベルの変化は、被検者がADMAまたはSDMAレベルの変化によって特徴付けられる疾患を有する、または発症する危険性がある指標である。疾患は、ADMAレベルの増大および/またはSDMAレベルの増大によって特徴付けられる。ADMAまたはSDMAレベルの変化によって特徴付けられる疾患は、血管障害および/または高血圧障害であってもよい。高血圧障害は子癇前症であってもよい。m/z範囲は約m/z203でよい。イオン化する生体試料は、ジメチルアルギニンに加えて化合物を含む。被検者は哺乳類、例えば、ヒトであってもよい。血管障害は、心臓血管疾患または高血圧障害であってよい。高血圧障害は子癇前症であってもよい。心臓血管疾患はアテローム性動脈硬化症であってもよい。血管障害は、糖尿病、高コレステロール血症、腎機能不全または高血圧症であってもよい。一部の実施形態においては、約m/z46における娘イオンm/z信号のレベルおよび約m/z172における娘イオンm/z信号のレベルを測定することができる。参照試料は、心臓血管疾患のない、心臓血管疾患の疑いのない、または心臓血管疾患を発症する危険性のない被検者からのものでもよい。生体試料は、血液、血清、血漿、リンパ、羊水、唾液、脳骨髄液、涙液、粘液、尿、痰または汗であっても、または血液、血清、血漿、リンパ、羊水、唾液、脳骨髄液、涙液、粘液、尿、痰または汗を含むこともできる。
【0019】
一部の実施形態においては、1つまたは複数の追加の検体を測定することができる。1つまたは複数の追加の検体は、シトルリン、ジメチルアミン、アルギニン、オルトニチン、ホモシステインおよびクレアチンであってもよい。1つまたは複数の追加の検体は、アミノ酸またはアシルカルニチンであってもよい。1つまたは複数の追加の検体は、例えば質量分析法を用いて測定することができる。
【0020】
一部の実施形態においては、試料をイオン化する前に生体試料に内部標準を添加することができる。内部標準は、少なくとも1つの重原子を含むジメチルアルギニン異性体であってもよく、または少なくとも1つの重原子を含むジメチルアルギニン異性体を含むことができる。内部標準は、少なくとも1つの重原子を有するSDMA異性体および少なくとも1つの重原子を有するADMA異性体であってもよく、あるいは少なくとも1つの重原子を有するSDMA異性体および少なくとも1つの重原子を有するADMA異性体を含むこともでき、SDMAおよびADMA異性体は互いに異なる原子量を有する。
【0021】
さらに別の態様において、本開示は、被検者の血管障害を診断する方法を特徴とする。この方法は、被検者からの生体試料を用意するステップと、生体試料をイオン化してイオンを生成するステップと、質量電荷比(m/z)が、あるm/z範囲内にあるイオンを選択するステップと、選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成するステップと、約m/z46における娘イオンm/z信号の関数としてのADMAのレベルおよび約m/z172における娘イオンm/z信号の関数としてのSDMAのレベルの一方または両方を測定するステップとを含み、参照試料におけるレベルに対する、生体試料中のADMAおよびSDMAの一方または両方のレベルの上昇は、被検者が血管障害を有する、または発症する危険性がある指標である。m/z範囲は約m/z203でよい。イオン化する生体試料は、ジメチルアルギニンに加えて化合物を含むことができる。被検者は哺乳類、例えばヒトであってもよい。血管障害は、心臓血管疾患または高血圧障害であってもよい。高血圧障害は子癇前症であってもよい。心臓血管疾患はアテローム性動脈硬化症であってもよい。血管障害は、糖尿病、高コレステロール血症、腎機能不全または高血圧症であってよい。
【0022】
一部の実施形態においては、約m/z46における娘イオンm/z信号のレベルおよび約m/z172における娘イオンm/z信号のレベルを測定することができる。参照試料は、心臓血管疾患のない、心臓血管疾患の疑いのない、または心臓血管疾患を発症する危険性のない被検者からのものでもよい。
【0023】
一部の実施形態においては、1つまたは複数の追加の検体を測定することができる。1つまたは複数の追加の検体は、シトルリン、ジメチルアミン、アルギニン、オルトニチン、ホモシステインおよびクレアチンであってもよい。1つまたは複数の追加の検体は、アミノ酸またはアシルカルニチンであってもよい。1つまたは複数の追加の検体は、例えば質量分析法を用いて測定することができる。生体試料は、血液、血清、血漿、リンパ、羊水、唾液、脳骨髄液、涙液、粘液、尿、痰または汗であっても、あるいは血液、血清、血漿、リンパ、羊水、唾液、脳骨髄液、涙液、粘液、尿、痰または汗を含むこともできる。イオン化する生体試料は、ジメチルアルギニンに加えて化合物であってもよく、または化合物を含むことができる。
【0024】
一部の実施形態においては、この方法が、血管障害を有する、または発症する危険性があるものと被検者を診断した後、被検者に1つまたは複数の治療薬を投与するステップを含むことができる。1つまたは複数の治療薬は、1つまたは複数の抗高血圧症薬、1つまたは複数のコレステロール降下薬、あるいは1つまたは複数のベータ遮断薬である。1つまたは複数の抗高血圧症薬は、利尿薬、アンギオテンシン変換酵素阻害薬、血管拡張薬またはアルファ遮断薬であってもよい。1つまたは複数のコレステロール降下薬はスタチンであってもよい。
【0025】
一部の実施形態においては、試料をイオン化する前に生体試料に内部標準を添加することができる。内部標準は、少なくとも1つの重原子を含むジメチルアルギニン異性体であってもよく、または少なくとも1つの重原子を含むジメチルアルギニン異性体を含むことができる。内部標準は、少なくとも1つの重原子を有するSDMA異性体および少なくとも1つの重原子を有するADMA異性体であってもよく、あるいは少なくとも1つの重原子を有するSDMA異性体および少なくとも1つの重原子を有するADMA異性体を含むこともでき、これらSDMAおよびADMA異性体は互いに異なる原子量を有する。
【0026】
別の態様においては、本開示は、被検者の子癇前症を診断する方法を提供する。この方法は、被検者からの生体試料を用意するステップと、生体試料をイオン化してイオンを生成するステップと、質量電荷比(m/z)が、あるm/z範囲内にあるイオンを選択するステップと、選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成するステップと、約m/z46における娘イオンm/z信号の関数としてのADMAのレベルおよび約m/z172における娘イオンm/z信号の関数としてのSDMAのレベルの一方または両方を測定するステップとを含み、参照試料におけるレベルに対する、生体試料中のADMAおよびSDMAの一方または両方のレベルの上昇は、被検者が子癇前症を有する、または発症する危険性がある指標である。m/z範囲は約m/z203でよい。被検者は哺乳類、例えば、ヒトであってもよい。
【0027】
さらに別の態様においては、本開示は、治療薬に対する被検者の反応を評価する方法を提供する。この方法は、治療薬で治療した被検者からの生体試料を用意するステップと、生体試料をイオン化してイオンを生成するステップと、質量電荷比(m/z)が、あるm/z範囲内にあるイオンを選択するステップと、選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成するステップと、約m/z46における娘イオンm/z信号の関数としてのADMAのレベルおよび約m/z172における娘イオンm/z信号の関数としてのSDMAのレベルの一方または両方を測定するステップとを含むことができ、治療前の被検者から得られる生体試料におけるレベルに対して、生体試料中のADMAおよびSDMAの一方または両方のレベルが同じであることまたは上昇することは、被検者が治療に反応していない指標であり、治療前の被検者から得られる生体試料に対して、生体試料中のADMAおよびSDMAの一方または両方のレベルが低下することは、被検者が治療に反応している指標である。m/z範囲は約m/z203でよい。被検者は哺乳類、例えば、ヒトであってもよい。一部の実施形態においては、1つまたは複数の追加の検体を測定することができる。1つまたは複数の追加の検体は、シトルリン、ジメチルアミン、アルギニン、オルトニチン、ホモシステインおよびクレアチンであってもよい。1つまたは複数の追加の検体は、アミノ酸またはアシルカルニチンであってもよい。1つまたは複数の追加の検体は、例えば質量分析法を用いて測定することができる。生体試料は、血液、血清、血漿、リンパ、羊水、唾液、脳骨髄液、涙液、粘液、尿、痰または汗であっても、あるいは血液、血清、血漿、リンパ、羊水、唾液、脳骨髄液、涙液、粘液、尿、痰または汗を含むこともできる。イオン化する生体試料は、ジメチルアルギニンに加えて化合物であってもよく、または化合物を含むことができる。被検者は、血管障害を有する、または有する疑いがある被検者であってもよい。血管障害は、子癇前症などの高血圧障害であってもよい。血管障害は、アテローム性動脈硬化症などの心臓血管疾患であってもよい。血管障害は、糖尿病、高コレステロール血症、腎機能不全または高血圧症であってもよい。
【0028】
一部の実施形態においては、ADMAのレベルおよびSDMAのレベルを測定することができる。一部の実施形態においては、この方法が、被検者が治療に反応していない場合、1つまたは複数の異なる治療薬を被検者に投与することもさらに含むことができる。1つまたは複数の治療薬は、1つまたは複数の抗高血圧症薬、1つまたは複数のコレステロール降下薬、あるいは1つまたは複数のベータ遮断薬である。1つまたは複数の抗高血圧症薬は、利尿薬、アンギオテンシン変換酵素阻害薬、血管拡張薬またはアルファ遮断薬である。1つまたは複数のコレステロール降下薬はスタチンであってもよい。
【0029】
一部の実施形態においては、この方法は、被検者が治療に反応している場合、同じ治療薬を被検者に投与し続けることをさらに含むことができる。
【0030】
別の態様においては、本開示が、被検者についての代謝プロファイルを提供する方法を提供する。この方法は、被検者からの生体試料を用意すること、生体試料をイオン化してイオンを生成すること、質量電荷比(m/z)が、あるm/z範囲内にあるイオンを選択すること、選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成すること、約m/z46における娘イオンm/z信号および約m/z172における娘イオンm/z信号の一方または両方を検出すること、ならびに約m/z46における娘イオンm/z信号および約m/z172における娘イオンm/z信号の一方または両方の関数であるパラメータを含む、被検者の代謝プロファイルを出力することを含む。m/z範囲は約m/z203でよい。被検者は哺乳類、例えば、ヒトであってもよい。被検者は、心臓血管疾患を有する疑いがある被検者であってもよい。一部の実施形態においては、1つまたは複数の追加の検体を測定することができる。1つまたは複数の追加の検体は、シトルリン、ジメチルアミン、アルギニン、オルトニチン、ホモシステインおよびクレアチンであってもよい。1つまたは複数の追加の検体は、アミノ酸またはアシルカルニチンであってもよい。1つまたは複数の追加の検体は、例えば質量分析法を用いて測定することができる。生体試料は、血液、血清、血漿、リンパ、羊水、唾液、脳骨髄液、涙液、粘液、尿、痰または汗であっても、あるいは血液、血清、血漿、リンパ、羊水、唾液、脳骨髄液、涙液、粘液、尿、痰または汗を含むこともできる。イオン化する生体試料は、ジメチルアルギニンに加えて、化合物であってもよく、または化合物を含むことができる。被検者は、血管障害を有する、または血管障害を有する疑いがある被検者であってもよい。血管障害は、子癇前症などの高血圧障害であってもよい。血管障害は、アテローム性動脈硬化症などの心臓血管疾患であってもよい。血管障害は、糖尿病、高コレステロール血症、腎機能不全または高血圧症であってもよい。
【0031】
一部の実施形態においては、約m/z46における娘イオンm/z信号のレベルと、約m/z172における娘イオンm/z信号の存在とを測定することができる。
【0032】
一部の実施形態においては、1つまたは複数の追加の検体を測定することができる。1つまたは複数の追加の検体は、本明細書中に記載の検体のいずれであってもよい。1つまたは複数の追加の検体は、質量分析法を用いて測定することができる。
【0033】
さらに別の態様においては、本開示が、被検者からの生体試料を用意すること、生体試料をイオン化してイオンを生成すること、質量電荷比(m/z)が、あるm/z範囲内にあるイオンを選択すること、選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成すること、ならびに約m/z46における娘イオンm/z信号の関数としてのADMAのレベルおよび約m/z172における娘イオンm/z信号の関数としてのSDMAのレベルの一方または両方を測定して、被検者の代謝プロファイルを得ることを含む方法によって得られる、被検者についての代謝プロファイルを特徴とする。m/z範囲は約m/z203でよい。被検者は哺乳類、例えば、ヒトであってもよい。被検者は、血管障害を有する疑いがある被検者であってもよい。一部の実施形態においては、1つまたは複数の追加の検体を測定することができる。1つまたは複数の追加の検体は、本明細書中に記載の検体のいずれであってもよい。1つまたは複数の追加の検体は、質量分析法を用いて測定することができる。
【0034】
別の態様においては、本開示は、被検者の血管障害を診断する方法を提供する。この方法は、本明細書中に記載の代謝プロファイルを提供すること、ならびにこの代謝プロファイルにおけるADMAのレベルおよびSDMAのレベルの一方または両方を、参照代謝プロファイルにおけるADMAのレベルおよびSDMAのレベルと比較することを含み、参照代謝プロファイルにおけるレベルと比較して、ADMAおよびSDMAの一方または両方のレベルが上昇することは、被検者が血管障害を有する、または発症する危険性がある指標である。
【0035】
別の態様においては、本開示は、化合物を評価する方法を提供する、この方法は、細胞または被検者を化合物と接触させること、細胞または被検者からの試料をイオン化してイオンを生成すること、質量電荷比(m/z)が、あるm/z範囲内にあるイオンを選択すること、選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成すること、ならびに約m/z46における娘イオンm/z信号の関数としてのADMAのレベルおよび約m/z172における娘イオンm/z信号の関数としてのSDMAのレベルの一方または両方を測定することを含み、化合物と接触していない細胞または被検者からの試料におけるレベルと比較して、化合物と接触している細胞または被検者から得られる試料におけるADMAのレベルおよびSDMAのレベルの一方または両方の変化は、化合物がADMAまたはSDMAレベルのモジュレータである化合物であることを示している。細胞は哺乳類細胞、例えば、ヒト細胞であってもよい。細胞は、内皮細胞であってもよい。細胞は、eNOSを発現する細胞であってもよい。細胞は、血管障害を有する、または発症する危険性がある被検者から得ることができる。
【0036】
一部の実施形態においては、1つまたは複数の追加の検体を測定することができる。1つまたは複数の追加の検体は、本明細書中に記載の検体のいずれであってもよい。1つまたは複数の追加の検体は、質量分析法を用いて測定することができる。
【0037】
別の態様においては、本開示は、非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)および対称性ジメチルアルギニン(SDMA)を検出するためのキットを特徴とする。このキットは、少なくとも1つの重原子同位体を含む、ADMAおよびSDMAの一方または両方と、場合により、SDMAおよびADMAの検知の仕方についての取扱説明書とを備える。このキットは、シュウ酸などの有機酸を含むことができる。
【0038】
別の態様においては、本開示は、非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)および対称性ジメチルアルギニン(SDMA)のためのキットを特徴とする。このキットは、少なくとも1つの重原子同位体を含む、ADMAおよびSDMAの一方または両方と、有機酸と、場合により、SDMAおよびADMAの検知の仕方についての取扱説明書とを備える。有機酸は、シュウ酸であってもよい。
【0039】
本明細書中に記載のキットのいずれかの一部の実施形態においては、キットが、ADMAまたはSDMAの一方または両方を検出するために有用なコンピュータソフトウエアを含むこともできる。
【0040】
本明細書中に記載のキットのいずれかの一部の実施形態においては、キットが、本明細書中に記載の生体分子(例えば、代謝生体分子)のいずれかの1つまたは複数を検出する際に有用な1つまたは複数の追加の内基準を含むこともできる。
【0041】
本明細書中に記載のこれらの方法には、様々な用途がある。例えば、これらの方法を使用して試料の純度、例えば、化学合成の生成物の、または精製の純度を評価することができる。例えば、ジメチルアルギニン異性体が反応物、中間体または生成物である化学反応を決定するために、この方法を使用することができる。反応は体外で、例えば、無細胞系で起こっても、または細胞内、すなわち、体内で起こってもよい。
【0042】
本開示は、少なくとも1つの重原子同位体を含有するADMAを含む組成物も特徴とする。この組成物の純度は、少なくとも10、20、60、80、90、95、97、98、98、99.5%である。この組成物は、約1pMを超える(例えば、約1nMを超える)濃度を有することができる。例えば、ADMA分子は、天然ADMAを超える少なくとも1、2、3、4、原子単位の原子量を有する。この組成物は、原子電荷比が約203であるADMAを実質的には含んでいなくてもよい。この組成物は、内部標準として使用することができる。例えば、この組成物を試料に添加することができる。
【0043】
本開示は、少なくとも1つの重原子同位体を含有するSDMAを含む組成物も特徴とする。この組成物の純度は、少なくとも10、20、60、80、90、95、97、98、98、99.5%である。この組成物は、約1pMを超える(例えば、約1nMを超える)濃度を有することができる。例えば、SDMA分子は、天然SDMAを超える少なくとも1、2、3、4、原子単位の原子量を有する。この組成物は、原子電荷比が約203であるSDMAを実質的には含んでいなくてもよい。この組成物は、内部標準として使用することができる。例えば、この組成物を試料に添加することができる。
【0044】
この開示は、少なくとも1つの重原子同位体を含有するADMAおよび少なくとも1つの重原子同位体を含有するSDMAを含む組成物をさらに特徴とする。通常、ジメチルアルギニンのこれらの重原子同位体は、互いに異なる質量電荷比を有する。この組成物は、内部標準として使用することができる。例えば、この組成物を試料に添加することができる。一部の実施形態においては、この組成物は、原子電荷比(m/z)が約203であるADMAを実質的には含んでいない。別の実施形態においては、この組成物が、原子電荷比が約203であるSDMAをさらに含む。
【0045】
多くの質量分析計が、高分解能に対する質量精度を有する。例えば、一重荷電イオン(例えば、一重荷電ADMAまたはSDMAイオン)の場合、この範囲は0.6m/zに対応する。本開示において、ジメチルアルギニン異性体の一重荷電正イオンは、公称m/z203を有する。したがって、本明細書中ではこのような範囲を使用することができる。例えば、202.7〜203.3の範囲に及ぶチャネルを使用することによって、約203の質量電荷比(m/z)を有するイオンの選択を実施することができる。本明細書中に記載の方法は、多重(例えば、二重または三重)荷電ジメチルアルギニンイオンの使用も包含し、これら多重荷電イオンは、それらに応じて質量精度および分解能amu範囲をもたらすはずであることが理解される。例えば、二重荷電イオンでは、amu範囲は0.3m/z等に対応するはずである。質量分析計における軽微な変動(例えば、較正における変動)により、本明細書中に述べられている信号と一致しないジメチルアルギニン異性体親および娘イオンm/z信号が生じることがあるが、開示の信号に対応するm/z信号は、例えば、較正におけるオフセットを補償することによって容易に識別し使用することができる。
【0046】
本明細書中に記載の公報、特許出願、特許および他の文献はすべて、参照によりそれら全体が本明細書中に援用される。本明細書中に開示されている材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定的なものではない。
【0047】
本発明の他の特徴および利点は、以下の説明から、添付の図面から、また添付の特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
詳細な説明
本明細書中に記載の技術は、各異性体を独自に識別するやり方で分子異性体の1つまたは複数の型を検出することに関する。一実施形態においては、この方法が、試料をイオン化してイオンを生成すること、異性体の組に対応するm/z範囲内に質量電荷比(m/z)があるイオンを選択すること、選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成すること、異性体の1つに固有の娘イオンについての少なくとも1つのm/z信号を検出することによって、異性体の1つ、2つまたはそれ以上を検出することを含む。多くの実施において、この方法により、異性体の組の各異性体を同時に検出することが可能となる。
【0049】
本明細書中に記載の方法を使用して、ジメチルアルギニン異性体(SDMAおよび/またはADMA)を区別(および測定)することができる。これらの方法の用途においては、被検者(例えば、ヒト)について代謝プロファイルを得ることができ、このプロファイルは、少なくとも非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)および/または対称性ジメチルアルギニン(SDMA)の状態を反映する。代謝障害または血管障害(例えば、心臓血管疾患または高血圧障害)の有無など、被検者(例えば、ヒト)の健康状態を評価するために、得られた代謝プロファイルを使用することができる。
【0050】
質量分析法
タンデム質量分析法を使用して異性体を区別および/または測定することができる。タンデム質量分析法では、衝突セルを介して2つの質量分析器を直列に連結する。第1の質量分析器(MS−1)を使用して、関心のあるイオン(例えば、特定の質量電荷比(m/z)のイオン)を選択する。次いで、選択したイオンを衝突セルに移動させ、そこで不活性ガスとの衝突によって分裂させる。この過程を衝突活性化解離(CAD)と呼ぶ。親(前駆体と称されることもある)イオンが分裂したら、第2の質量分析器(MS−2)を使用して、生成された娘イオンのすべてを走査し検出する、または特定のフラグメントイオンを選択し検出する。
【0051】
実施例1(以下の)では、タンデム質量分析法を用いて、ADMAの前駆イオンとSDMAの前駆イオンとを分離し、イオンを分断し、試料中のこれら2種の化合物の存在を示す特定のピークを検出した。SDMAおよびADMAは異性体分子で(図1を参照のこと)、それら自体は同じ分子量を有する(図2および図3を参照のこと)。しかしながら、これら2種の分子は、それらの2つのメチル基の位置が異なる。図1に示すように、SDMAは、使用可能な各グアニジノ窒素部分上にメチル基を1つ有するメチル置換の対称分布を有するが、ADMAはグアニジノ基の同じ窒素上に2つのメチル基を含む。
【0052】
プロダクトイオンスキャンとして知られているタンデム質量分析法の1つのタイプにおいては、親イオン(この場合、m/z203のSDMAまたはm/z203のADMA)をMS−1において選択し、衝突セルに移動させ、そこで分断する(図2および図3の概略図に例示)。各親イオンによって生成されるフラグメントを走査MS−2によって検出し、それにより選択した各親のプロダクト(または娘)イオンスキャンがもたらされる。図2は、172m/zにおけるSDMAに対応する固有ピークを示し、一方図3は、46m/zにおけるADMAに対応する固有ピークを示す。したがって、一回の分析で単一の試料中のSDMAとADMAとを区別することができる。
【0053】
図4は、Multiple Reaction Monitoring(MRMスキャン)を用いて、1回の分析で単一の試料中のSDMAと、ADMAと、アルギニンとを区別することができることを示している。multiple reaction monitoring(MRM)として知られているタンデム質量分析法の1つのタイプにおいては、関心のある親イオンをMS−1において選択し、衝突セル内で分裂させ、衝突活性化により得られる特定のフラグメントイオンをMS−2において選択し、最終的に検出する。MS−1およびMS−2を固定して、それぞれ対応する関心のある親およびフラグメントイオン対を所定の時間(数ミリ秒)で選択する。この特定の親イオン−プロダクトイオン遷移は、1つの検出チャネルと見なすことができる。追加の検体を検出する必要がある場合には、特定の質量遷移を伴う追加の検出チャネルを実験に導入することができる。選択したすべての質量遷移(チャネル)からのデータを順次取得して、所望の情報を得ることができる。これらの化合物各々について特定の質量遷移を以下のように採用することによって、混合物中のSDMAおよびADMAの検出および定量を得ることができる。ADMAについては、MS−1を固定してm/z203における親イオンを選択および伝達し、MS−2を固定してm/z46における特定のプロダクトイオンを選択および伝達する(チャネル1またはMRM遷移1)。SDMAについては、MS−1を固定してm/z203における親イオンを選択および伝達し、MS−2を固定してm/z172における特定のプロダクトイオンを選択および伝達する(チャネル2またはMRM遷移2)。これら2種のMRM遷移を、所定の時間同じ試料から順次測定して、このような試料中のこれらの化合物の混合物の存在および/または濃度を検出する。このようなMRM実験では、実際のフラグメントイオン(m/z46またはm/z172)が検出される。しかしながら、MRMスペクトルに記録されるのは、対応する親イオンのm/zである。
【0054】
この例では、SDMAおよびADMA親イオンが同じm/zを有するため、各チャネルにより、これら2種の異性体間に最大分解能を提供する各チャネル自体のスペクトルが生成される。図4に示すスペクトルは上述のように取得したが、親イオンのm/zが検体の質量遷移と異なる場合には両方の質量遷移を同じスペクトルに記録することができることを示すために、アルギニンに特異的な質量遷移を各チャネルに追加した。これらの方法を使用して他の分子異性体同士を区別することもできる。ただし、分裂の際、m/z比の異なるイオンが生成されることが前提となる。
【0055】
アルギニンの同時検出(例えば、図4に示すような)により、ADMAおよびSDMSの一方または両方についての安定同位体標識内部標準を試料に添加することができ、それによりADMAおよびSDMAの定量を行うことができることが実証される。安定同位体によるADMAおよびSDMAのこのような標識化により、標識化合物と非標識化合物との間で非常に類似した物理化学的特性を保持しながらも質量シフトが生じる。
【0056】
一般に、関心のある検体(例えば、ADMAおよび/またはSDMA)の定量を可能にするために、試料に1つまたは複数の内部標準を既知の濃度で加えることができる。例えば、タンデム質量分析法を用いて分析する試料については、ADMA、SDMAおよびそれらの対応する内部標準によって生成される信号の比率を使用して、試料中のこれらの化合物の量を決定することができる。これらの内部標準を添加して、天然(内因性)分子を区別することもできる。試料(例えば、血液試料)と抽出溶液と混ぜ合わせる前に、内部標準を抽出溶液中で調製することができる。あるいは、内部標準が試料処理中に(例えば、液液抽出または固相抽出後に)混合物から取り除かれないことが確実となる試料調製における任意の段階で、混合物に内部標準を添加することができる。
【0057】
本明細書中に記載の方法によって検出される異性体(または他の分子、例えば、本明細書中に記載の生体分子)についての内部標準、すなわち参照検体は、質量分析法によって検出可能な異性体の任意の修飾体または類似体であってもよい。参照検体は、固有質量や質量電荷比など固有の物理的特性に基づき、生体分子と別々に検出可能である。上述のように、質量分析法向けの一般的に使用される内部標準は、異性体の安定同位体標識形または化学的誘導体である。例えば、安定同位体標識類似体を使用して、検体および内部標準を同じ試料中で処理する同位体希釈質量分析として知られている技法を用いたSDMAおよびADMAの定量を行うことができる。1)標識化により少なくとも1質量単位の質量のシフトが生じるように、また2)交換を防止するために安定同位体標識のいずれも不安定な部位に位置しないように、内部標準を設計することができる。標識は、任意の組合せのH(D)、15N、13Cまたは18Oであってもよい。分子上の標識の実際の位置は、必要条件2(上記)が満たされるのであれば変動することができる。さらに、標識の位置およびフラグメントイオンの質量のポテンシャル変化を使用して、内部標準と検体との分離を確認することもできる。本明細書中に記載の方法で有用なポテンシャル内部標準の例には下記が含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
【化2】

いくつかのタイプの質量分析計が利用可能であるが、これらの質量分析計を様々な構成で製造することもでき、これらの構成のすべてが本明細書中に記載の方法において有用となることができる。一般に、質量分析計は以下の重要な構成要素、試料注入口、イオン源、衝突セル、質量分析器、検出器、真空系、および機器制御系ならびにデータシステムを有する。試料注入口、イオン源および質量分析器の違いにより通常、機器のタイプおよびその機能が定義される。例えば、注入口は、毛管カラム液体クロマトグラフィ源であっても、あるいはマトリックス支援レーザ離脱において使用されるような直接プローブまたはステージであってもよい。一般的なイオン源は、例えば、ナノスプレーおよびマイクロスプレーを含めたエレクトロスプレーあるいはマトリックス支援レーザ離脱である。一般的な質量分析器には、四重極質量フィルタ、飛行時間型質量分析器(好ましくは、直交加速飛行時間型分析器)、イオントラップ質量フィルタ、磁場型分析器またはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析器が含まれる。衝突セルは、例えば、四重極ロッドセット、六重極ロッドセットまたは八重極ロッドセットであってもよい。この衝突セルにより、イオン入口およびイオン出口開口は別としてかなり気密性の高い容器が好ましくは形成される。ヘリウム、アルゴン、窒素、空気、メタンなどの衝突ガスを、衝突セルに導入することができる。
【0059】
本明細書中に記載の具体例は、タンデム質量分析計を用いて行った(例えば、実施例1を参照のこと)。
【0060】
本明細書中に記載の方法に適した試料には、代謝状態を示す生体分子を含む任意の体液、細胞、組織、またはこれらの分画が含まれる。試料は、例えば、被検者(例えば、ヒトなどの哺乳類)から得られる標本であってもよく、またはこのような被検者から得ることができる。例えば、試料は、生検によって得られる組織切片であっても、あるいは組織培養において設置したまたは組織培養に適応させた細胞であってもよい。したがって、例示的な試料には、培養線維芽細胞、培養羊水細胞および柔毛膜柔毛試料が含まれる。試料は、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、痰、脳骨髄液、涙液、粘液などの体液標本であってもよい。必要に応じて、特定の細胞型を含む分画に試料をさらに分画することができる。例えば、血清に、または赤血球や白血球(leukocyte)など特定の型の血球を含む分画に血液試料を分画することができる。必要に応じて、試料は、組織および流体試料の組合せなど、被検者からの試料の組合せであってもよい。試料中の分子の活性また完全性を維持する試料を得るための方法が、当業者には周知である。このような方法には、試料中の分子の変化を維持するまたは最小限に抑える、ヌクレアーゼ、プロテアーゼおよびホスファターゼ抑制剤を含めた適切な緩衝剤および/または抑制剤の使用が含まれる。このような抑制剤には、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコールビス(P−アミノエチルエーテル)N,N,N1,N1−四酢酸(EGTA)などのキレート化剤、フッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、アプロチニン、ロイペプチン、アンチパインなどのプロテアーゼ抑制剤、およびホスファターゼ、フッ化ナトリウム、バナジン酸塩などのホスファターゼ抑制剤が含まれる。分子を分離するための適切な緩衝剤および条件は当業者には周知で、例えば、特徴付けようとする試料中の分子の型に応じて変えることができる(例えば、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology (Supplement 47), John Wiley & Sons, New York (1999); Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press (1988); Harlow and Lane, Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press (1999); Tietz Textbook of Clinical Chemistry, 3rd ed. Burtis and Ashwood, eds. W.B. Saunders, Philadelphia, (1999)を参照のこと)。また、妨害物質の存在を排除するまたは最小限に抑えるために試料を処理することもできる。本明細書中に記載の方法で使用するために、試料は様々な物理的状態で存在することができる。例えば、試料は液体または固体であってもよく、液体に溶解または懸濁させることもでき、エマルションまたはゲルで存在することもでき、材料に吸収させることもできる。非限定的な例として、試料は、液体血液試料、液体血清試料、液体白血球試料、乾燥血液、血清、または白血球試料であってもよく、あるいはこのような試料を紙またはポリマーの基材上に吸収させることもできる。
【0061】
質量分析を行う前に、抽出溶液を用いて試料を抽出することができる(下記参照)。本明細書中に記載の方法では、試料(例えば、抽出試料)は、タンデム質量分析法を用いる分析の前にはさらなる化学修飾を必要としない。例えば、特定の誘導体化ステップが、ADMAおよびSDMAの具体的な同時検出に必要不可欠なわけではない。しかしながら、試料中の他の検体の検出に何らかのタイプの試料誘導体化が必要となる場合、この誘導体化を適切または好都合な場合にはSDMAおよびADMAに適用することができる。この場合、SDMAおよびADMAについての親イオンの質量は変化することになるが、SDMAおよびADMAからのプロダクトイオンの特異性は変化しない。例えば、アシルカルニチンやアミノ酸などの検体群を検出および測定するためにエステル化ステップが必要となる場合、SDMAおよびADMAをエステル化することもできるが、このエステル化によりADMAおよびSDMAあるいは追加の検体の具体的な同時検出が生じることはない。より具体的には、抽出した検体をブチルエステルに変換する必要がある場合には、SDMAおよびADMAをブチルエステルに変換することもできる。この場合、SDMAおよびADMAの質量、したがってm/zが203から259に変化することになる。しかしながら、ADMAおよびSDMAそれぞれに固有の46および172おけるm/zピークの生成は不変である。したがって、ADMAについては259から46、SDMAについては259から172のMS−1およびMS−2のMRMチャネルをモニターすることによって、誘導体化SDMAおよびADMAを検出することができる。ろ紙(または他の試料)上で乾燥させた全血試料中に存在するアミノ酸およびアシルカルニチンの分析には、ブチル化ステップを使用することができる。したがって、質量分析法を使用して、例えば、アミノ酸、アシルカルニチンおよび他の検体と同時に、このような試料からSDMAおよびADMAを検出することができる。
【0062】
本明細書中に記載の方法の一部の用途においては、抽出溶液に、または試料に直接シュウ酸などの有機酸を添加することができる。例えば、抽出試料において約0.1%(例えば、約0.01%、約0.05%、約0.15%、約0.2%、約0.25%、約0.3%、約0.4%、約0.45%または約0.5%)v/vの終末濃度まで有機酸を添加することができる。抽出前に有機酸を試料に添加する場合、これらの条件により有機酸の損失を最小限に抑えることができる。一部の用途では、試料分析に続いて機械に注入される溶液(例えば、洗浄またはすすぎ溶液)に有機酸を添加することができる。
【0063】
例示的用途
本明細書中に記載の方法を使用して、試料についての分子プロファイルを得ることができる。このプロファイルは、特定の分子異性体が存在するかどうかを示す情報を含むことができ、特定の組の各異性体の存在(定性的または定質的)についての情報を通常含む。
【0064】
これら質量分析法の一部の用途においては、被検者(例えば、ヒト)についての代謝プロファイルを得ることができる。例えば、これらのプロファイルは、被検者(例えば、ヒト患者)内のADMAおよび/またはSDMAのレベルを含むことができる。タンデム質量分析法を用いて生体試料中の他の生体分子、例えば、NMMA、オルニチン、シトルリン、ホモシステインおよびクレアチニンのうちの1つまたは複数を含めた他の生体分子を検出、定量および/または評価することもできる。疾患、例えば代謝障害または血管障害(例えば、高血圧障害または心臓血管疾患)の有無など、被検者(例えば、ヒト患者)の健康状態を評価するために、あるいは疾患の危険性を評価するために、得られた情報(代謝プロファイル)を使用することができる。
【0065】
被検者(例えば、ヒトなどの哺乳類)の代謝状態は、例えば、体内のアミノ酸の存在、量、比率および修飾によって反映することができる。翻訳後のメチル化は、代謝状態を示唆することができるアミノ酸修飾の例である。タンパク質の代謝回転の過程において生成される主なメチル化生成物は、ADMAまたはSDMAである。アルギニンのこれらのメチル化体は、生物体の正常な機能に関与し、したがって、その量の異常な増加または減少は、生物体内の生理機能を変えることがある。一例としては、ADMAならびに別のアルギニン誘導体、NMMA(モノメチルアルギニン)が、酵素、内皮一酸化窒素合成酵素(eNOS)用の公知の抑制剤である。eNOSは、内皮機能および心臓血管機能の調節に関与する(例えば、Kingら(1995) Reprod. Fertil. Dev. 7(6):1581〜1584頁およびJinら(1996) J Cardiovasc. Pharmacol. 28(3):439〜446頁を参照のこと)。生物体内のADMA濃度が増大すると、eNOS活性が抑制され、生理学的結果は内皮機能の低下、高血圧症、子癇前症、糖尿病、腎機能不全および高コレステロール血症を含めた多くの疾患において生じる状態である。SDMAはeNOSを抑制しないが、ADMAと同じ細胞への侵入経路を有し、したがって内皮機能に影響を及ぼすことがある。一例としては、いくつかの研究により、腎機能障害を有する被検者のSDMAレベルの変化が示されている(例えば、Lluch P.ら(2006) Experimental Biology and Medicine 231:70〜75頁およびKielstein J.T.ら(2006) Nephrology Dialysis Transplantation 21(9):2446〜2451頁を参照のこと)。
【0066】
他のアミノ酸の量および/または比率は、内皮機能および対応する疾患の状態を反映することもできる。例えば、アルギニンをシトルリンと酸化窒素とに変換する。このシトルリンは、内皮機能における別のメディエイタである。さらにADMAをシトルリンとジメチルアミン(DMA)とに変換する。したがって、アルギニンおよび/またはシトルリンの量は、内皮細胞機能の状態を明らかにすることができる。様々な研究により、ADMAおよび他の生体分子のレベルと病状との関係が示されている。例えば、Millattら((2003) Circulation 108(12):1420〜1421頁)は、ラットの慢性低酸素誘導性の肺高血圧症モデルがNOS抑制剤ADMAの肺濃度の増加に関係していることを実証するデータを示した。さらには、肺高血圧ラットは、ADMA代謝酵素DDAH Iの肺での発現および活性の低下を示した。ホモシステインおよびクラチニンは、血管疾患に関与する他の生体分子である。例えば、ホモシステインのレベルを決定することが、高血圧人口における心臓血管疾患の危険性の評価に役立つことができることが研究により示されている(例えば、Bortolottoら(1999) Hypertension 34(4 Pt 2):837〜842頁を参照のこと)。さらには、酸化窒素−シンターゼを抑制すると、不十分な酸化窒素しか生成されないことが研究により示されている。酸化窒素は血管拡張薬であり、酸化窒素のレベルの低下は、高血圧に関連していることがわかっている。したがって、このような生体分子の量の知識を、高血圧障害または心臓血管疾患を発症する危険性についての予測資料として使用することができる。
【0067】
したがって、ジメチルアルギニン異性体、ADMAおよびSDMA、を単独または他の生体分子(例えば、代謝生体分子)と共に区別する能力は、被検者の健康状態を評価するために有用となることができる。したがって、NMMA、アルギニン、オルニチン、シトルリン、ホモシステインなど他のアミノ酸と、さらにはクレアチニンなど試料中の他の生体分子とを、例えば、質量分析においてこのような分子に固有のピークを識別することによって、同時に検出することが可能である。表1には、本明細書中に記載の方法を用いてADMAおよび/またはSDMAと共に同時に検出することができる検体(例えば、生体分子)の限定的なリストが含まれる。
【0068】
【表1−1】

【0069】
【表1−2】

本明細書中に記載の方法によって得られる代謝プロファイルを、様々な代謝障害または血管障害(例えば、心臓血管疾患または高血圧障害)に対する感受性を診断または予測する際に使用することができる。というのは、試験する生化学的指標(例えば、SDMAおよび/またはADMA)は、疾患の生理的症状または行動症状が明らかとなった(例えば、代謝障害あるいは血管障害(例えば、心臓血管疾患または高血圧障害)を有する疑いがある)かどうか、このような疾患を示唆することができるからである。本明細書中に記載されているような代謝プロファイルは、代謝障害に対する治療を受けている被検者など、被検者(例えば、ヒトなどの哺乳類)の代謝をモニターするために有用となることができる。非限定的な例として、これらの方法は、特定の治療の治療効果を決定するために使用することができる。この決定に基づき、被検者に追加または代替の治療の選択肢が提供される。この代謝プロファイルは、食事制限など、特定の治療法での患者のコンプライアンスを評価するためにも有用となることができる。したがって、本明細書中に記載の技術は、スクリーニング、診断、予後、モニタリング療法およびコンプライアンス、ならびに、ADMA、SDMA、NMMA、アルギニン、オルニチン、シトルリン、ホモシステインおよびクレアチニンのうちの2種またはそれ以上など、2種またはそれ以上の生体分子のパネルの存在または量を決定することが有用である他の任意の用途に適用可能である。
【0070】
本明細書中に記載の方法を用いて生成される代謝プロファイルは、様々な生体試料を用いて得ることができる。適切な試料には、上述のものが含まれる。
【0071】
一態様においては、本明細書中に記載されているような代謝プロファイルを使用して、高血圧障害の有無を診断することができる。高血圧障害は、最も頻度の高い内科的妊娠合併症であり、世界的に母体および乳児の疾患および死亡の主な原因である。それら高血圧障害には少なくとも2つの異なる実体が含まれる。一方(妊娠誘発性高血圧、PHI)は妊娠中に初めて出現し、出産によって好転する。他方(慢性高血圧症)は、妊娠とは関係がないが妊娠と同時に現れる既存の状態であり、妊娠中初めて正体を現すことがあるが、出産により解決されることなない。妊娠しているか妊娠していないかにかかわらず、高血圧は多くの場合、細い血管の痙縮(血管収縮)の結果である。したがって、胎児への重大な危険性が胎盤かん流の低下により生じ、胎児の成長および健康(well−being)にとって必要な酸素および栄養の供給が減少する。母体の危険性には、腎臓、肝臓、脳など、主要な器官の血流低下が含まれる。高血圧障害には、例えば、子癇前症、子癇、妊娠高血圧症(HIP)、ゴールドブラット高血圧症、副腎性高血圧症、悪性高血圧症、高眼圧症、腎性高血圧症または慢性高血圧症が含まれる。高血圧障害により、脳水腫または腎性浮腫ならびに出血および脳卒中が生じることがある。
【0072】
さらなる態様においては、本明細書中に記載されているような代謝プロファイルを使用して、高ホモシステイン血症、糖尿病、高コレステロール血症、高血糖症、インスリン耐性、冠状動脈性心臓病、脳血管疾患、アテローム性動脈硬化症、末梢血管障害などの心臓血管疾患の有無を評価することができる。本明細書中に記載の方法を用いる検出用の生体分子のパネルは、検出しようとする特定の健康状態に基づいて選択することができる。ADMA、SDMA、NNMA、アルギニン、シトルリン等に関連する健康状態は、当業者には公知である。一例としては、ADMAおよび他の生体分子に関連する健康状態が、Lin and Lin (2004) Acta Cardiol Sin 2:201〜211頁に記載されている。一部の場合においては、例えば、被験者の疾患の状態、特定の治療法に対する被験者の反応、または治療計画についての被験者のコンプライアンスをモニターするために、代謝障害、または心臓血管疾患や高血圧障害などの血管障害を有するまたは発症する危険性があると既に特定された被験者から、代謝プロファイルを生成することができる。
【0073】
あらゆる年齢の被検者が、本明細書中に記載の代謝プロファイルを用いて診断される代謝障害または血管障害の影響を受けることがある。したがって、本明細書中に記載の方法において使用する試料を、新生児(neonate、newborn)、乳児、子供、および妊婦などの大人を含めた任意の年齢の被検者(例えば、ヒト)から得ることができる。代謝障害あるいは血管障害を発症する危険性がある個人に、これらの方法を使用することもできる。このような個人には、(i)このような疾患(についての遺伝的素因)の家族歴、あるいは(ii)このような疾患を発症する1つまたは複数の危険因子を有する個人が含まれる。心臓血管疾患障害または高血圧障害の例示的な危険因子には、長期ストレス(情緒的または物理的)にさらされること、喫煙、脂肪またはコレステロールの高い食事、座りがちなライフスタイル、あるいは血圧を上昇させる1種または複数種の薬物が含まれる。
【0074】
本明細書中に記載の方法は、少なくとも2種の生体分子(例えば2種またはそれ以上の異性体)の存在または量を、例えば同時に決定することを含み、各生体分子の存在または量は、代謝障害、心臓血管疾患または高血圧障害の有無と相互に関連がある。本明細書中に記載の方法を、必要に応じて定量的に使用して、(例えば、上述のように内部標準を使用することによって)試験試料の結果を特定の検体の既知または所定の標準量と比較することを可能にすることができる。試験試料を、通常の参照であっても代謝障害の参照であってもよい参照試料と比較する場合に、これらの方法を定量的に使用することもできる。この形式においては、生体分子の相対量が、代謝障害を示唆することができる。参照試料は、例えば、代謝障害あるいは血管障害(例えば、心臓血管疾患または高血圧障害)などの疾患を有する、有する疑いのない、または発症する危険性がない被検者からのものであってもよい。
【0075】
一般に、所与の生体分子についてのカットオフ値は変動することがあり、試験されることが多い検体および酵素については当技術分野において公知となっているはずである。ルーチン、当技術分野において公知である方法の明らかな適応を使用して、まれにしか試験されない検体についてのカットオフ値を確立することができる。カットオフ値は通常、生体分子の量または他の生体分子との比率であり、それより高いか低いと代謝障害または再試験の原因を示唆すると考えられている。したがって、本明細書中に記載の技術に従って、特定の試料タイプにおける少なくとも1種の生体分子の基準レベルがカットオフ値と特定され、この値を超えると、少なくとも1種の生体分子の存在と代謝障害の存在(または非存在)との間に重要な相関関係が存在する。生体分子パネルを全体的に、部分的にまたは検体ごとに解釈することができることが理解される。
【0076】
カットオフの両側のある範囲の値にわたって臨床相関が依然として重要であるという点で一部のカットオフ値は絶対的ではないが、特定のサンプルタイプについて生体分子の最適なカットオフ値(例えば、変動するH−score等)を選択することが可能であることが当業者には理解されよう。本明細書中に記載の方法において使用するために決定されるカットオフ値は、一般的に公表されている範囲と比較されるが、使用する方法論および患者集団に対して個別に調節することができる。使用する統計的方法の高度化に応じて、また異なる生体分子および試料タイプについての基準レベル値を決定するために使用する試料の数および試料源に応じて、最適なカットオフ値の改善が決まることがあることが理解される。したがって、確立されたカットオフ値は、定期的な再評価あるいは方法論または集団分布の変化に基づいて、上方または下方調節することができる。加えて、機器に固有のカットオフ値を、例えば、機器間性能の比較可能性が<10%である場合など、必要に応じて使用することができる。
【0077】
基準レベルは、様々な方法によって決定することができる。ただし、得られた基準レベルにより、各生体分子についての量が正確に提供され、代謝検体または酵素の活動量が基準レベルを下回る被験者からなる第2の群とは代謝障害の可能性が異なる被験者(例えば、ヒト)からなる第1の群がこの量を超えて存在する。基準レベルは、例えば、同じ代謝障害を有する被験者(例えば、患者)の集団内で、生体分子の量を比較することによって決定することもできる。これは、例えば、患者のコホート全体がグラフで示され、生体分子の量を第1の軸が示し、その試料が所与の量で1種または複数種の生体分子を含むコホート内の被験者の数を第2の軸が示すヒストグラム分析によって実現することができる。同じレベルまたは類似のレベルの生体分子を有するコホートの小集団を特定することによって、被験者の2つまたそれ以上の別々の群を決定することができる。その場合、これら別々の群を最も良く区別する量に基づいて基準レベルを決定することができる。この基準レベルは、すべての被験者に一様に適用可能な単一の数字のこともあり、またはこの基準レベルが、被験者の特定の部分集団に応じて変動することもある。例えば、より年老いた被験者は、同じ代謝障害について、より若い被験者とは異なる基準レベルを有することができる。加えて、疾患がより進行した(例えば、より進行した型の心臓血管疾患)被験者は、疾患が軽症型である被験者とは異なる基準レベルを有することができる。
【0078】
ADMAまたはSDMAのレベルを調節する化合物を識別する方法
細胞内のADMAおよび/またはSDMAのレベルを調節する(例えば、減少させる)化合物を識別する方法も、本明細書中に示される。これら2種の代謝産物の未調整レベルは、特定の障害(例えば、心臓血管疾患および高血圧障害)の危険性の増大と関係するため、そのように識別された化合物は、心臓血管疾患および高血圧障害の治療に有用となることがある。候補化合物と接触させることができる細胞は、ADMAまたはSDMAを(合成的または自然に)生成するような任意の種であってよい。これらの細胞は一次細胞または細胞系でよく、任意の組織型、例えば、これらに限定されないが、上皮細胞、線維芽細胞、リンパ球様細胞、マクロファージ/単球、顆粒球、ケラチノサイト、神経細胞または筋肉細胞であってよい。これらの細胞は、組織培養皿内で培養することができる。多くの場合、複数の候補化合物を一度に評価することができるように、マルチウェルアッセイプレート(例えば、96ウェルまたは384ウェルのアッセイプレート)内で細胞を成長させることが好ましい。細胞を含む溶液(例えば、培地)に、候補化合物(場合により、様々な濃度、例えば、0.001nM〜10mMの範囲に及ぶ濃度で)を添加することができ、あるいは該化合物がタンパク質である場合には、細胞が組み換えによりタンパク質を発現することができる。ADMAおよび/またはSDMAを発現する細胞のインキュベーションに続き、ADMAおよび/またはSDMAの存在またはレベルを、本明細書中に記載の質量分析法を用いて決定することができる。検出前に、タンデム質量分析法に適合する試料の調製を可能にする条件下で、細胞を溶解させることができる。多くの場合、陽性対照または陰性対照として、一組の細胞に対照化合物を添加することができる。例えば、ADMAまたはSDMA量を増加または減少させることで知られている化合物を、一組の細胞に添加することができる(例えば、タンパク質アルギニンのメチル基転移酵素を抑制する化合物、例えば、Leiperら(2005) Eur. J Clin. Pharma. 62(Suppl):33〜35頁を参照のこと)。ADMAまたはSDMAのレベルを調節しないことで知られている化合物を一組の細胞に添加することもできる。
【0079】
本明細書中に記載の方法のいずれかで同定される化合物には、様々な化学的分類が含まれる。化合物は、ペプチド類、ポリペプチド類、ペプチド模倣物(例えば、ペプトイド)、アミノ酸、アミノ酸類似体、糖類、脂肪酸、ステロイド類、プリン類、ピリミジン類、これらの誘導体または構造類似体、ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチド類似体を含むが、これらに限定されない生体分子であってもよい。化合物がいずれも小分子または大分子化合物であってもよい。
【0080】
本明細書中に記載の様々なライブラリの使用による試験化合物の同定により、後に続く試験化合物「ヒット」または「リード」の修飾が、細胞中のADMAおよび/またはSDMAのレベルを調節するために「ヒット」または「リード」の能力を最適化することが可能となる。
【0081】
本発明の様々な実施形態の活性に実質的には影響を及ぼさない修飾も、本明細書中に提供される本発明の定義に含まれることが理解される。したがって、以下の実施例は、本発明を限定するものではなく例示するためのものである。
【実施例】
【0082】
(実施例1)
本実施例では、質量分析法を用いて単一試料中に存在するADMAおよびSDMAを区別した実験について説明する。試料は、ADMAおよびSDMAをほぼ等モル濃度で全血にスパイクすることよって調製した。相対強度基準として働くように、アルギニンも同じアリコートの血液にスパイクした。次いで、この血液をろ紙上に分配し、室温で24時間乾燥させた。小さいパンチ(各1/8インチ(0.3175cm))を乾燥血液試料から切除し、マイクロタイタープレートのウェル中に分配した。次いで、このように生成した血斑パンチを、メタノール水溶液(メタノール80%、水20%および酢酸0.1%を含む)によりマイクロタイタープレート内で約30分間抽出した。この抽出物を、さらなる化学修飾なしで、また事前のクロマトグラフィー分離(例えば、予備HPLC)なしでオートサンプラの助けを借りて質量分析計に直接注入した。これらの実験は、Sciex API 2000三連四重極またはWaters Quattro Micro三連四重極を用いて行った。質量分析計は共に、エレクトロスプレーイオン源を備えている。
【0083】
試料のタンデム質量分析は、2組のMultiple Reaction Monitoring(MRM)チャネルで構成されていた。一方の組では、以下の質量遷移、m/z175からm/z70およびm/z203からm/z46、がモニターされた(図2および図3を参照のこと)。第1の質量遷移はアルギニンの特異的な分裂に対応し、第2の質量遷移はADMAの特異的な分裂に対応する。MRMチャネルの第2の組では、以下の質量遷移、アルギニンおよびSDMAのそれぞれm/z175からm/z70およびm/z203からm/z172への質量遷移によって、アルギニンおよびSDMAがモニターされた。アルギニンについての遷移は、105原子質量単位(amu)のニュートラルロスに対応し、プロトン化イオンからのカルボン酸基およびグアニジノ基の公称損失を示す。ADMAの特異的な遷移は、プロトン化ADMAからのジメチルアンモニウムイオンの形成を示し、SDMAの特異的な遷移は、メチルアミンのニュートラルロスに相当する31amuのニュートラルロスを示す。
【0084】
たとえ絶対的な定量なしであっても、アルギニンの強度に対するADMAおよびSDMAの強度の検査により、これら2種類の異性体イオンは区別される。この実施例では、アルギニンの強度に対するSDMAの強度がアルギニンに対するADMAの強度よりも高いことがわかる。この傾向により、このタンデム質量分析実験においてこれら2種の異性体が異なる感受性を示すことが示唆される。アルギニン、SDMAおよびADMAの測定値は、質量分析計内に残っている残留(キャリーオーバー)検体分子(例えば、ADMAまたはSDMA)の影響を受けることがある。試料調製物へのシュウ酸の添加により、観測されるキャリーオーバー効果が著しく低下した。図4は、上述の実施例によるMRMスペクトルの例を示す。
【0085】
本発明をその特定の諸実施形態に関して説明してきたが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく様々な変更を加えることができ、また均等物で置き換えることができることを当業者には理解されたい。加えて、特定の状況、材料、物質組成、プロセス、プロセスステップまたはステップを本発明の目的、精神および範囲に適合させるために、多くの変更を加えることができる。このような変更はすべて、本発明の範囲内にあるものである。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】アルギニン、非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)および対称性ジメチルアルギニン(SDMA)の化学構造を示す概略図である。
【図2】SDMAのタンデム質量スペクトルと、SDMAの分裂ならびに分裂により生成されるフラグメント(イオンおよびニュートラル)を示す概略図であり、「A」は質量電荷比(m/z)が203である親イオンSDMAを示し、「B」はm/zが172であるSDMAに固有の娘フラグメントイオンを示し、質量スペクトルは、親イオン(m/z203)およびSDMAに固有のフラグメント(m/z172、矢印で示す)を含むSDMAを含有する試料の分裂の後に検出される娘イオンm/z信号を示し、X軸は質量電荷比(m/z)を示し、Y軸は試料中の各イオンの相対存在量(百分率)を示す。
【図3】ADMAのタンデム質量スペクトルと、ADMAの分裂ならびに分裂により生成されるフラグメント(イオンおよびニュートラル)を示す概略図であり、「A」は質量電荷比(m/z)が203である親イオンADMAを示し、「B」はm/zが46であるADMAに固有の娘フラグメントイオンを示し、質量スペクトルは、親イオン(m/z203)およびADMAに固有のフラグメント(m/z46、矢印で示す)を含むADMAを含有する試料の分裂の後に検出される娘イオンm/z信号を示し、X軸は質量電荷比(m/z)を示し、Y軸は試料中の各イオンの相対存在量(百分率)を示す。
【図4】SDMAおよびADMAについての重ね合わせた全イオン電流(TIC)時間プロファイル(上図、Multiple Reaction Monitoring)を示す血液試料のタンデム質量スペクトル(multiple reaction monitoringまたはMRMとして知られている実験)と、アルギニン(対照)に対する試料中のADMA(左図)およびSDMA(右図)の相対量を示す一組の相互に関連がある質量スペクトルとを示す図であり、ADMAおよびSDMAそれぞれについてのTIC時間プロファイルは矢印で示され(上図)、TICプロファイルのX軸は走査回数を単位とし、Y軸は相対存在量を示し、下部の2つの質量スペクトルについては、X軸は質量電荷比(m/z)を示し、Y軸は試料中の各イオンの相対存在量(百分率)を示す。
【図5】本明細書中に記載の方法において有用な2つの内部標準、重水素標識した対称性ジメチルアルギニン(SDMA、左)および重水素標識した非対称性ジメチルアルギニン(ADMA、右)の化学構造を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチルアルギニン異性体を識別する方法であって、
試料をイオン化してイオンを生成すること、
質量電荷比(m/z)が、あるm/z範囲内にあるイオンを選択すること、
前記選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成すること、ならびに
非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)に固有のm/zにおける娘イオンm/z信号および対称性ジメチルアルギニン(SDMA)に固有のm/zにおける娘イオンm/z信号の一方または両方を検出することによって、前記試料中のADMAおよびSDMAの一方または両方を検出することを含む方法。
【請求項2】
ジメチルアルギニン異性体を識別する方法であって、
試料をイオン化してイオンを生成すること、
質量電荷比(m/z)が、あるm/z範囲内にあるイオンを選択すること、
前記選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成すること、ならびに
前記試料が非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)を含むことを示す、約m/z46における娘イオンm/z信号の存在、および前記試料が対称性ジメチルアルギニン(SDMA)を含むことを示す、約m/z172における娘イオンm/z信号の存在の一方または両方を検出することを含む方法。
【請求項3】
対称性ジメチルアルギニン(SDMA)を検出する方法であって、
試料をイオン化してイオンを生成すること、
質量電荷比(m/z)が、あるm/z範囲内にあるイオンを選択すること、
前記選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成すること、および
約m/z172における娘イオンm/z信号を検出することによって、前記試料中の対称性ジメチルアルギニン(SDMA)を検出することを含む方法。
【請求項4】
非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)を検出する方法であって、
試料をイオン化してイオンを生成すること、
質量電荷比(m/z)が、あるm/z範囲内にあるイオンを選択すること、
前記選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成すること、および
約m/z46における娘イオンm/z信号を検出することによって、前記試料中の非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)を検出することを含む方法。
【請求項5】
前記m/z範囲が約m/z203である、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ジメチルアルギニン異性体を検出する方法であって、
少なくとも1つの重原子を含むジメチルアルギニン異性体である1つまたは複数の内部標準を含む試料を用意すること、
試料をイオン化してイオンを生成すること、
ジメチルアルギニン異性体を分離するために適している範囲に対応するm/z範囲を有するイオンを選択し、前記1つまたは複数の内部標準を分離するために適している1つまたは複数の追加のm/z範囲内にあるイオンを選択すること、
前記選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成すること、
前記娘イオンを用いて、非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)に固有の1つもしくは複数の娘イオンm/z信号および/または対称性ジメチルアルギニン(SDMA)に固有の1つもしくは複数の娘イオンm/z信号を検出することによって、前記試料中のADMAおよび/またはSDMAを検出すること、ならびに
前記1つまたは複数の内部標準を検出することを含む方法。
【請求項7】
ジメチルアルギニン異性体を分離するために適している前記範囲に対応する前記m/z範囲が、約m/z203である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
試料が、少なくとも1つの重原子を有するSDMA異性体である第1の内部標準と、少なくとも1つの重原子を有するADMA異性体である第2の内部標準とを含み、前記SDMAおよびADMA異性体が異なる原子量を有する、請求項6または7に記載の方法。
【請求項8】
試料が、少なくとも1つの重原子を有するSDMA異性体である第1の内部標準と、少なくとも1つの重原子を有するADMA異性体である第2の内部標準とを含み、前記SDMAおよびADMA異性体が同じ原子量を有する、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記試料中のSDMAのレベルを測定することをさらに含む、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ADMAのレベルを測定することをさらに含む、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
SDMAおよびADMAのレベルを測定することをさらに含む、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
イオン化される前記試料が生体試料である、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記生体試料が、血液、血清、血漿、リンパ、羊水、唾液、脳骨髄液、涙液、粘液、尿、痰または汗を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
イオン化する前記試料が、ジメチルアルギニンに加えて化合物を含む、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
イオン化する前記試料が、サイズ排除クロマトグラフィカラム上を共に移動することがない化合物を含む、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
1つまたは複数の追加の検体が検出される、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記1つまたは複数の追加の検体が代謝生体分子である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記1つまたは複数の追加の検体がアミノ酸である、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記1つまたは複数の追加の検体がアシルカルニチンである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項20】
前記1つまたは複数の追加の検体が、シトルリン、ジメチルアミン、アルギニン、オルトニチン、ホモシステインおよびクレアチンからなる群から選択される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項21】
前記1つまたは複数の追加の検体が測定される、請求項16から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記1つまたは複数の追加の検体がタンデム質量分析法を用いて測定される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記試料をイオン化する前に前記試料を化学修飾しない、請求項1から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記試料をイオン化する前に前記試料を化学修飾する、請求項1から22のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記試料をイオン化する前に前記試料に内部標準を添加する、請求項1から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記内部標準が、少なくとも1つの重原子を含むジメチルアルギニン異性体を含む、請求項1から5または9から25に記載の方法。
【請求項27】
前記内部標準が、少なくとも1つの重原子を有する参照SDMA異性体および少なくとも1つの重原子を有する参照ADMA異性体を含み、前記参照SDMAおよびADMA異性体が互いに異なる原子量を有する、請求項1から5または9から25に記載の方法。
【請求項28】
約m/z46における信号のレベルおよび約m/z172における信号のレベルが測定される、請求項1から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
約m/z46における娘イオンm/z信号および約m/z172における娘イオンm/z信号に応じて関数の結果を決定することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ADMAまたはSDMAレベルの変化によって特徴付けられる疾患を診断する方法であって、
被検者からの生体試料を用意すること、
前記生体試料をイオン化してイオンを生成すること、
質量電荷比(m/z)が、あるm/z範囲内にあるイオンを選択すること、
前記選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成すること、ならびに
約m/z46における娘イオンm/z信号の関数としてのADMAのレベルおよび約m/z172における娘イオンm/z信号の関数としてのSDMAのレベルを測定することを含み、
参照試料におけるレベルに対する、前記生体試料中のADMAおよびSDMAの一方または両方のレベルの変化は、前記被検者がADMAまたはSDMAレベルの変化によって特徴付けられる疾患を有するか、または発症する危険性があることの指標である方法。
【請求項31】
前記疾患が、ADMAレベルの増大によって特徴付けられる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記疾患が、SDMAレベルの増大によって特徴付けられる、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記疾患が、ADMAレベルの増大およびSDMAレベルの増大によって特徴付けられる、請求項30から32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
ADMAまたはSDMAレベルの変化によって特徴付けられる前記疾患が血管障害である、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
ADMAまたはSDMAレベルの変化によって特徴付けられる前記疾患が腎機能障害である、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
ADMAまたはSDMAレベルの変化によって特徴付けられる前記疾患が高血圧障害である、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記高血圧障害が子癇前症である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
被検者の血管障害を診断する方法であって、
被検者からの生体試料を用意すること、
前記生体試料をイオン化してイオンを生成すること、
質量電荷比(m/z)が、あるm/z範囲内にあるイオンを選択すること、
前記選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成すること、ならびに
約m/z46における娘イオンm/z信号の関数としてのADMAのレベルおよび約m/z172における娘イオンm/z信号の関数としてのSDMAのレベルの一方または両方を測定することを含み、
参照試料におけるレベルに対する、前記生体試料中のADMAおよびSDMAの一方または両方のレベルの上昇は、前記被検者が血管障害を有するか、または発症する危険性があることの指標である方法。
【請求項39】
前記m/z範囲が約m/z203である、請求項30から38に記載の方法。
【請求項40】
イオン化する前記生体試料が、ジメチルアルギニンに加えて化合物を含む、請求項30から39に記載の方法。
【請求項41】
前記被検者が哺乳類である、請求項30から40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記哺乳類がヒトである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記血管障害が心臓血管疾患である、請求項38から42に記載の方法。
【請求項44】
前記血管障害が高血圧障害である、請求項38から40のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記血管障害が、糖尿病、高コレステロール血症、腎機能不全、高血圧症および子癇前症からなる群から選択される、請求項38から40のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
前記血管障害がアテローム性動脈硬化症である、請求項38から45のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
前記高血圧障害が子癇前症である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
約m/z46における娘イオンm/z信号のレベルおよび約m/z172における娘イオンm/z信号のレベルが測定される、請求項38から46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記参照試料が、心臓血管疾患のない、心臓血管疾患の疑いのない、または心臓血管疾患を発症する危険性のない被検者からのものである、請求項38から46のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
1つまたは複数の追加の検体を測定することをさらに含む、請求項30から48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
前記1つまたは複数の追加の検体が、シトルリン、ジメチルアミン、アルギニン、オルトニチン、ホモシステインおよびクレアチンからなる群から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記1つまたは複数の追加の検体がアミノ酸である、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記1つまたは複数の追加の検体がアシルカルニチンである、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記1つまたは複数の追加の検体が、質量分析法を用いて測定される、請求項49から52のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
血管障害を有する、または血管障害を発症する危険性があるものと前記被検者を診断した後、前記被検者に1つまたは複数の治療薬を投与することをさらに含む、請求項38から53のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
前記1つまたは複数の治療薬が、1つまたは複数の抗高血圧症薬、1つまたは複数のコレステロール降下薬、あるいは1つまたは複数のベータ遮断薬である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記1つまたは複数の抗高血圧症薬が、利尿薬、アンギオテンシン変換酵素阻害薬、血管拡張薬またはアルファ遮断薬である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記1つまたは複数のコレステロール降下薬がスタチンである、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記生体試料が、血液、血清、血漿、リンパ、羊水、唾液、脳骨髄液、涙液、粘液、尿、痰または汗を含む、請求項30から57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
前記試料をイオン化する前に前記生体試料に内部標準を添加する、請求項30から58のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
前記内部標準が、少なくとも1つの重原子を含むジメチルアルギニン異性体を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記内部標準が、少なくとも1つの重原子を有するSDMA異性体および少なくとも1つの重原子を有するADMA異性体を含み、前記SDMAおよびADMA異性体が互いに異なる原子量を有する、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
被検者の子癇前症を診断する方法であって、
被検者からの生体試料を用意すること、
前記生体試料をイオン化してイオンを生成すること、
質量電荷比(m/z)が、あるm/z範囲内にあるイオンを選択すること、
前記選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成すること、ならびに
約m/z46における娘イオンm/z信号の関数としてのADMAのレベルおよび約m/z172における娘イオンm/z信号の関数としてのSDMAのレベルの一方または両方を測定することを含み、
参照試料におけるレベルに対する、前記生体試料中のADMAおよびSDMAの一方または両方のレベルの上昇は、前記被検者が子癇前症を有するか、または発症する危険性があることの指標である方法。
【請求項63】
前記m/z範囲が約m/z203である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記被検者が哺乳類である、請求項62または63に記載の方法。
【請求項65】
前記哺乳類がヒトである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
治療薬に対する被検者の反応を評価する方法であって、
治療薬で治療した被検者からの生体試料を用意すること、
前記生体試料をイオン化してイオンを生成すること、
質量電荷比(m/z)が、あるm/z範囲内にあるイオンを選択すること、
前記選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成すること、ならびに
約m/z46における娘イオンm/z信号の関数としてのADMAのレベルおよび約m/z172における娘イオンm/z信号の関数としてのSDMAのレベルの一方または両方を測定することを含み、
治療前の前記被検者から得られる生体試料におけるレベルに対して、前記生体試料中のADMAおよびSDMAの一方または両方のレベルが同じであることまたは上昇することは、前記被検者が前記治療に反応していない指標であり、治療前の前記被検者から得られる前記生体試料に対して、前記生体試料中のADMAおよびSDMAの一方または両方のレベルが低下することは、前記被検者が前記治療に反応している指標である方法。
【請求項67】
前記ADMAのレベルおよび前記SDMAのレベルが測定される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記m/z範囲が約m/z203である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
イオン化する前記生体試料が、ジメチルアルギニンに加えて化合物を含む、請求項66から69のいずれかに記載の方法。
【請求項70】
前記被検者が治療に反応していない場合、1つまたは複数の異なる治療薬を前記被検者に投与することをさらに含む、請求項66から70のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
前記被検者が血管障害を有する、または血管障害を有する疑いがある、請求項66から70のいずれかに記載の方法。
【請求項72】
前記血管障害が高血圧障害である、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記血管障害が、糖尿病、高コレステロール血症、腎機能不全、高血圧症および子癇前症からなる群から選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項75】
前記血管障害が心臓血管疾患である、請求項71に記載の方法。
【請求項76】
前記心臓血管疾患がアテローム性動脈硬化症である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記高血圧障害が子癇前症である、請求項72に記載の方法。
【請求項78】
前記1つまたは複数の治療薬が、1つまたは複数の抗高血圧症薬、1つまたは複数のコレステロール降下薬、あるいは1つまたは複数のベータ遮断薬である、請求項70から77のいずれかに記載の方法。
【請求項79】
前記1つまたは複数の抗高血圧症薬が、利尿薬、アンギオテンシン変換酵素阻害薬、血管拡張薬またはアルファ遮断薬である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記1つまたは複数のコレステロール降下薬がスタチンである、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記被検者が治療に反応している場合、前記同じ治療薬を前記被検者に投与し続けることをさらに含む、請求項66から69のいずれかに記載の方法。
【請求項82】
前記被検者が哺乳類である、請求項66から82のいずれかに記載の方法。
【請求項83】
前記哺乳類がヒトである、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
被検者についての代謝プロファイルを提供する方法であって、
被検者からの生体試料を用意すること、
前記生体試料をイオン化してイオンを生成すること、
質量電荷比(m/z)が、あるm/z範囲内にあるイオンを選択すること、
前記選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成すること、
約m/z46における娘イオンm/z信号および約m/z172における娘イオンm/z信号の一方または両方を検出すること、ならびに
約m/z46における前記娘イオンm/z信号および約m/z172における前記娘イオンm/z信号の一方または両方の関数であるパラメータを含む、前記被検者の代謝プロファイルを出力することを含む方法。
【請求項85】
前記m/z範囲が約m/z203である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
イオン化する前記生体試料が、ジメチルアルギニンに加えて化合物を含む、請求項84または85に記載の方法。
【請求項87】
約m/z46における娘イオンm/z信号のレベルと、約m/z172における娘イオンm/z信号の存在とが測定される、請求項84から86のいずれかに記載の方法。
【請求項88】
1つまたは複数の追加の検体を測定することをさらに含む、請求項84から87のいずれかに記載の方法。
【請求項89】
前記1つまたは複数の追加の検体が代謝生体分子である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記1つまたは複数の追加の検体が、シトルリン、ジメチルアミン、アルギニン、オルトニチン、ホモシステインおよびクレアチンからなる群から選択される、請求項88または89に記載の方法。
【請求項91】
前記1つまたは複数の追加の検体がアミノ酸である、請求項88または89に記載の方法。
【請求項92】
前記1つまたは複数の追加の検体がアシルカルニチンである、請求項88または89に記載の方法。
【請求項93】
前記1つまたは複数の追加の検体が、質量分析法を用いて測定される、請求項88から92のいずれかに記載の方法。
【請求項94】
前記被検者が哺乳類である、請求項88から93のいずれかに記載の方法。
【請求項95】
前記被検者がヒトである、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記被検者が、心臓血管疾患を有する疑いがある被検者である、請求項88から95のいずれかに記載の方法。
【請求項97】
被検者からの生体試料を用意すること、
前記生体試料をイオン化してイオンを生成すること、
質量電荷比(m/z)が、あるm/z範囲内にあるイオンを選択すること、
前記選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成すること、ならびに
約m/z46における娘イオンm/z信号の関数としてのADMAのレベルおよび約m/z172における娘イオンm/z信号の関数としてのSDMAのレベルの一方または両方を測定して、前記被検者の代謝プロファイルを得ること、
を含む方法によって得られる、被検者についての代謝プロファイル。
【請求項98】
前記m/z範囲が約m/z203である、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
1つまたは複数の追加の検体を測定することをさらに含む、請求項97または98に記載の方法。
【請求項100】
前記1つまたは複数の追加の検体が代謝生体分子である、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記1つまたは複数の追加の検体が、シトルリン、ジメチルアミン、アルギニン、オルトニチン、ホモシステインおよびクレアチンからなる群から選択される、請求項98または99に記載の方法。
【請求項102】
前記1つまたは複数の追加の検体がアミノ酸である、請求項98または99に記載の方法。
【請求項103】
前記1つまたは複数の追加の検体がアシルカルニチンである、請求項98または99に記載の方法。
【請求項104】
前記1つまたは複数の追加の検体が、質量分析法を用いて測定される、請求項98から103のいずれかに記載の方法。
【請求項105】
前記被検者が哺乳類である、請求項97から105のいずれかに記載の方法。
【請求項106】
前記被検者がヒトである、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記被検者が、血管障害を有する疑いがある被検者である、請求項97から106のいずれかに記載の方法。
【請求項108】
被検者の血管障害を診断する方法であって、
請求項97に記載の前記代謝プロファイルを用意すること、ならびに
前記代謝プロファイルにおける前記ADMAのレベルおよび前記SDMAのレベルの一方または両方を、参照代謝プロファイルにおけるADMAのレベルおよびSDMAのレベルと比較することを含み、
前記参照代謝プロファイルにおける前記レベルと比較して、ADMAおよびSDMAの一方または両方のレベルが上昇することは、前記被検者が血管障害を有するか、または発症する危険性があることの指標である方法。
【請求項109】
化合物を評価する方法であって、
細胞または被検者を前記化合物と接触させること、
前記細胞または被検者からの試料をイオン化してイオンを生成すること、
質量電荷比(m/z)が、あるm/z範囲内にあるイオンを選択すること、
前記選択したイオンを分裂させて娘イオンを生成すること、ならびに
約m/z46における娘イオンm/z信号の関数としてのADMAのレベルおよび約m/z172における娘イオンm/z信号の関数としてのSDMAのレベルの一方または両方を測定することを含み、
前記化合物と接触していない細胞または被検者からの試料におけるレベルと比較して、前記化合物と接触している前記細胞または被検者から得られる前記試料におけるADMAのレベルおよびSDMAのレベルの一方または両方の変化は、前記化合物がADMAまたはSDMAレベルのモジュレータである化合物であることを示している方法。
【請求項110】
前記細胞が哺乳類細胞である、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記哺乳類細胞がヒト細胞である、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記細胞が内皮細胞である、請求項110または111に記載の方法。
【請求項113】
前記細胞がeNOSを発現する、請求項109から112のいずれかに記載の方法。
【請求項114】
前記細胞が、血管障害を有するか、または発症する危険性がある被検者から得られる、請求項109から113のいずれかに記載の方法。
【請求項115】
1つまたは複数の追加の検体を測定することをさらに含む、請求項109から114のいずれかに記載の方法。
【請求項116】
前記1つまたは複数の追加の検体が代謝生体分子である、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記1つまたは複数の追加の検体が、シトルリン、ジメチルアミン、アルギニン、オルトニチン、ホモシステインおよびクレアチンからなる群から選択される、請求項115または116に記載の方法。
【請求項118】
前記1つまたは複数の追加の検体がアミノ酸である、請求項115または116に記載の方法。
【請求項119】
前記1つまたは複数の追加の検体がアシルカルニチンである、請求項115または116に記載の方法。
【請求項120】
少なくとも1つの重原子同位体を含有する非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)を含む組成物。
【請求項121】
少なくとも1つの重原子同位体を含有する対称性ジメチルアルギニン(SDMA)を含む組成物。
【請求項122】
非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)および対称性ジメチルアルギニン(SDMA)を含む組成物であって、ADMAおよびSDMAの一方または両方が少なくとも1つの重原子同位体を含む組成物。
【請求項123】
前記重原子同位体が重水素である、請求項120から122のいずれかに記載の組成物。
【請求項124】
非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)および対称性ジメチルアルギニン(SDMA)を検出するためのキットであって、
少なくとも1つの重原子同位体を含む、ADMAおよびSDMAの一方または両方と、
SDMAおよびADMAの検出の仕方についての取扱説明書とを備えるキット。
【請求項125】
有機酸をさらに備える、請求項124に記載のキット。
【請求項126】
非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)および対称性ジメチルアルギニン(SDMA)を検出するためのキットであって、
少なくとも1つの重原子同位体を含む、ADMAおよびSDMAの一方または両方と、
有機酸と、
SDMAおよびADMAの検出の仕方についての取扱説明書とを備えるキット。
【請求項127】
前記有機酸がシュウ酸である、請求項125または126に記載のキット。
【請求項128】
ADMAまたはSDMAの一方または両方を検出するために有用なコンピュータソフトウエアをさらに備える、請求項124から127のいずれかに記載のキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2009−528544(P2009−528544A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557381(P2008−557381)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/005279
【国際公開番号】WO2007/103124
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(507191854)パーキンエルマー エルエーエス, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】