説明

質量分析法を用いる、タンパク質および/または他の分子の測定

本発明は一般的に、自己組織化膜上のタンパク質および/または低分子などの化学種を、質量分析法を用いて測定することに関する。場合によっては、このタンパク質および/または低分子を、たとえばマイクロアレイなどのアレイ内の担体上に配置してもよい。態様の一つのセットにおいては、本発明は、自己組織化膜に結合したタンパク質および/または低分子を、MALDI技術およびMALDI‐TOF技術などの質量分析技術を用いて測定することに関する。この組み合わせによって、たとえば、細胞溶解物からの未知のタンパク質を系統的に同定することが可能になる。場合によっては、特定のターゲット化学種に対する結合相手が未知である例において、新たな相互作用を同定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、Kirschnerらによって2003年3月26日に出願された「Detection of Interactions of Proteins and Other Molecules Using Mass Spectroscopy」と称する米国仮特許出願第60/458,105号の利益を主張し、引用によって本明細書に取り込まれる。
【0002】
(連邦政府の後援による研究)
本発明は、NIHの補助金番号R01GM39023およびR0lHD37277による後援を受けた。政府は本発明についていくらかの権利を有する可能性がある。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、自己組織化膜上のタンパク質および/または低分子に広く関し、とりわけ質量分析法を用いて、自己組織化膜上のタンパク質および/または低分子を検出することに関する。
【背景技術】
【0004】
(背景)
タンパク質マイクロアレイは、短時間で数千のサンプルを分析することができる。しかしながら、あいまいな結合の化学的性質および非特異的な吸着などの因子のせいで、タンパク質マイクロアレイは一般的に、すべての細胞溶解物の複合体内のタンパク質を体系的に同定することができない。多くの場合において、このような溶解物内にある特定のタンパク質についての適切な結合相手を同定することが困難な可能性もある。
【0005】
多くの場合、タンパク質マイクロアレイは、結合用に活性化されたスライドガラス上に印刷される。タンパク質を検出するための典型的な方法としては、ELISA検出および蛍光標識された抗体が挙げられ、これらのそれぞれは、既知のタンパク質に対するタンパク質の相互作用を検出することに制限する可能性がある。さらに、タンパク質を同定するために、蛍光標識された抗体を用いることは、研究されるタンパク質の相互作用の性質を変化または修正するかもしれない。というのは、蛍光標識は一般的に、何らかの方法でタンパク質と相互作用することができる有機部分であって、タンパク質を変化または修正する有機部分だからである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は一般的に、自己組織化膜上のタンパク質および/または低分子を、質量分析法を用いて検出することに関する。本出願の対象には、場合によっては、相互関係のある生産物、特定の課題に対する選択的な解決法および/または単一のシステムもしくは物品の複数種類の異なる用途が含まれる。
【0007】
一つの側面においては、本発明は方法を含む。態様の一つのセットにおいては、その方法は、それに結合する実体のアレイを有する担体に結合すると推測される化学種を、質量分析法を用いる測定工程を含み、ここで、少なくとも一つの化学種が少なくとも一つの実体と結合する能力があると推測される。
【0008】
態様の別のセットにおいては、この方法には、それに結合する実体のアレイを有する担体を提供する工程、化学種を少なくとも一つの実体に結合させる工程、および担体を実質的に脱塩することなく、質量分析をそれに適用する工程が含まれる。
【0009】
別の側面においては、本発明には物品が含まれる。態様の一つのセットにおいては、物品には、担体上の実体の少なくとも一つのアレイに結合した化学種であって、実体に結合したその化学種を質量分析法を用いて検出できるものが含まれる。
【0010】
別の側面においては、本発明は、本明細書に記載された一つ以上の態様を構成する方法を対象とする。さらに別の側面においては、本発明は、本明細書に記載された一つ以上の態様を用いる方法を対象とする。なお、さらに別の側面においては、本発明は、本明細書に記載された一つ以上の態様を促進する方法を対象とする。
【0011】
添付の図面と共に考察すれば、本発明のその他の利点および新しい特徴は、次に続く本発明の種々の非限定的な態様の詳細な説明によって明らかになるだろう。本明細書および引用によって取り込まれる文献の開示に対立点がある場合においては、本明細書が支配すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(詳細な説明)
本発明は一般的に、自己組織化膜上のタンパク質および/または低分子などの化学種を、質量分析法を用いて測定することに関する。場合によっては、このタンパク質および/または低分子を、たとえばマイクロアレイなどのアレイ内の担体上に配置してもよい。態様の一つのセットにおいては、本発明は、自己組織化膜に結合したタンパク質および/または低分子を、MALDI技術およびMALDI−TOF技術などの質量分析技術を用いて測定する方法に関する。この組み合わせによって、たとえば、細胞溶解物からの未知のタンパク質を系統的に同定することが可能になる。場合によっては、特定のターゲット化学種に対する結合相手が未知である例において、新たな相互作用を同定することができる。態様の別のセットにおいては、本発明は、場合によっては、担体を水にさらに暴露する必要がないように、担体を質量分析装置で用いることができるように化学種を担体上の自己組織化膜に付着させる方法に関する。たとえば、類似の化学種すなわち「汚染」化学種の存在下で、その汚染化学種をまず最初に除去することなく、ターゲット化学種を質量分析法を用いて検出および/または分析してもよい。
【0013】
次のもののそれぞれは、引用によってその全体が本明細書に取り込まれる:Kumarらによる1996年4月30日に発行された米国特許第5,512,131号、Whitesidesらによる1996年6月26日に発行された国際特許公報WO 96/29629号、Jackmanらによる1999年10月28日に発行された国際特許公報WO 99/54786号、Ostuniらによる2001年9月27日に発行された国際特許公報WO 01/70389号、Kirschnerらによって2003年3月26日に出願された「Detection of Interactions of Proteins and Other Molecules Using Mass Spectroscopy」と称する米国仮特許出願第60/458,105号も、引用によって本明細書に取り込まれる。
【0014】
本明細書で用いられる用語の「測定すること」とは、一般的には化学種を分析することという意味であり、たとえば、定量的にもしくは定性的に分析すること、および/またはその化学種が存在するか否かを検出することという意味である。「測定すること」が、二以上の化学種の間の相互作用を分析することという意味であってもよく、たとえば、定量的にまたは定性的に分析すること、および/または相互作用が存在するか否かを検出することにより分析することという意味であってもよい。本発明の一つの側面においては、化学種を測定することには下記でさらに議論される質量分析法を用いることが含まれる。
【0015】
本発明の一つの側面においては、担体に結合し得るタンパク質および/または低分子などの化学種を測定するための方法を提供する。たとえば、図6Aおよび図6Bにおいては、化学種10が、担体の表面上に配置された自己組織化膜20を介して担体30に結合している。この結合は適用例に応じて特異的でもまたは非特異的でもよい。特定の例においては、以下でさらに記載されるように、この化学種は結合相手と結合する能力を有する。場合によっては、担体が自己組織化膜を含んでいてもよく、この自己組織化膜を、たとえば、種々のタンパク質および/または低分子を担体上に配置するために用いてもよい。任煮の適切な技術、たとえば、MALDI技術およびMALDI−TOF技術などの質量分析技術を用いて、この化学種を測定してもよい。
【0016】
本明細書で用いられる「特異的に結合した」または「特異的に結合するように適合化された」とは、「固定された」、「付着した」、「固定されるように適合化された」および「付着するように適合化された」ということに関しての上記の定義のように、化学種が化学的にまたは生化学的にそれぞれ別の試料または表面に結合したまたは結合するように適合化されたことを意味し、本質的にすべての非特異的な結合を除く。「共有的に固定された」とは、本質的に一つ以上の共有結合のみを介して固定されたという意味である。一例として、本質的に一つ以上の共有結合のみによって、カルボン酸塩が提示されたアルキルチオールに付着する化学種、このものは次には担体の金をコーティングした表面に固定される、は、その担体と共有的に固定される。
【0017】
本明細書で用いられる「タンパク質」または「ペプチド」には、本技術分野におけるその通常の意味が与えられる。すなわち少なくとも二つのアミノ酸から構成されるポリマーである。タンパク質またはペプチドには、場合によっては、少なくとも約5アミノ酸のアミノ酸配列、少なくとも約10アミノ酸のアミノ酸配列、少なくとも約50アミノ酸のアミノ酸配列、少なくとも約100アミノ酸のアミノ酸配列、または少なくとも約300アミノ酸のアミノ酸配列が含まれ得る。いくつかの例においては、タンパク質またはペプチドには、アミノ酸以外のその他の実体、たとえば炭水化物またはリン酸基が含まれてもよい。「アミノ酸」には本技術分野において用いられるその通常の意味が与えられ、天然のアミノ酸(すなわち自然界に普通に見られる20種のアミノ酸)でもよく、または非天然のアミノ酸でもよい。単離されたアミノ酸は一般的に、(たとえばプロリンの場合のように)いつもではないが、NH−CHR−COOHの一般構造を有する。この構造においては、Rは任意の適切な部分であってよい。たとえば、Rは水素原子、メチル部分またはイソプロピル部分であってよい。一方のアミノ酸の−NHともう一方のアミノ酸の−COOHとの反応によってペプチド結合(−CO−NH−)を形成させることによって、単離された一連のアミノ酸を結合させてペプチドまたはタンパク質を形成させてもよい。このような場合において、ペプチドまたはタンパク質上のR基のそれぞれはアミノ酸残基として言及され得る。
【0018】
本明細書で用いられる「低分子」とは、5キロダルトン(「kDa」)未満の分子量を有する分子、より典型的には1キロダルトン未満の分子量を有する分子という意味である。「ダルトン」(Da)は、統一原子質量単位(グラム/モル)の別名であり、「キロダルトン」(kDa)は1000ダルトンである。場合によっては、低分子はタンパク質またはペプチド配列であってよい。しかしながら、別の場合では、低分子は各種の有機物の任意の一員であってもよく、非限定的な例として、低分子は一つ以上の炭水化物、糖、薬物、アルコール、カルボン酸、アミン、アルデヒドもしくはケトン、チオール、環状化合物または非環式化合物などであってもよい。
【0019】
場合によっては、本発明の方法を用いて、(たとえば低分子よりも大きな)より大きな化学種、具体的には、約1kDaよりも大きな分子量を有する化学種、約3kDaよりも大きな分子量を有する化学種、約5kDaよりも大きな分子量を有する化学種、約7kDaよりも大きな分子量を有する化学種、約10kDaよりも大きな分子量を有する化学種、約20kDaよりも大きな分子量を有する化学種、約30kDaよりも大きな分子量を有する化学種、約40kDaよりも大きな分子量を有する化学種、約50kDaよりも大きな分子量を有する化学種、約100kDaよりも大きな分子量を有する化学種、約200kDaよりも大きな分子量を有する化学種、または約350kDaよりも大きな分子量を有する化学種を検出してもよい。このような化学種の具体例としては、タンパク質、ペプチド、オリゴ糖、オリゴヌクレオチド、ポリマー、バイオポリマーなどがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0020】
タンパク質および/または低分子などの化学種を、任意の適切な技術によって担体に結合してもよい。たとえば、化学種を担体に直接結合させてもよく(すなわち結合によって化学種と担体とが繋がる)、または間接的に結合させてもよい(下記にさらに記載するように、すなわち化学種は「スペーサー」または「リンカー」に結合し、このものは次には担体に結合する)。場合によっては、二つ以上のスペーサーまたはリンカーが化学種と担体との間に存在してもよい。結合は化学結合でもよく、物理結合でもよい。結合の具体例としては、(飽和でも不飽和でもよい)共有結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合、金属配位結合、半極性結合、配位結合、疎水性相互作用などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0021】
担体の特性は、使用目的に応じて広範囲に変化してもよい。この担体は、本質的に任意の形状を形成してもよい。態様の一つのセットにおいては、担体は、実質的に平面的な少なくとも一つの表面を有する。しかしながら、その他の態様においては、担体はくぼみ、隆起、段差、ネジ山、段丘などを含んでもよい。特定の例においては、担体は非平面的でもよく、たとえば、凹状の表面、凸状の表面、円形、管状、円錐状、球体および/またはその他の幾何学的形などの形状でもよい。場合によっては、何らかの方法で、いくつかの担体の表面を組み合わせてもよい。たとえば、二枚の平らな担体表面を互いに結合してもよい。場合によっては、この二つの担体を一体化して結合してもよい。本明細書で用いられる用語の、二以上の物体についての「一体化して結合する」とは、その物体を手動で分離することはできないが、少なくとも道具を用いることを要するという意味である。場合によっては、一体化して結合した部分を、少なくとも一つの部分にダメージを与えることなく分離することはできない。
【0022】
担体に用いるのに適した素材としては、ガラス、セラミック、プラスチック、金属、合金、炭素、紙、アガロース、シリカ、石英、セルロース、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリイミドおよびゼラチン、ならびにその他のポリマー支持体、その他の固形物の支持体または柔軟な膜の支持体が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。担体に用いることができるポリマーとしては、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンジフルオリド、ポリカーボナート、ポリメチルメタクリル酸、ポリビニルエチレン、ポリエチレンイミン、ポリオキシメチレン(POM)、ポリビニルフェノール、ポリ乳酸、ポリメタクリルイミド(PMI)、ポリアルケンスルホン(PAS)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリヒドロキシエチルメタクリル酸(HEMA)、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリルアミド、ポリイミド、種々のブロックコポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。担体は、素材の組み合わせから構成されてもよく、いくつかの態様においては、必要に応じて水を浸透させるものでもよい。一つの態様においては、担体は使い捨てのものである。別の態様においては、担体は再利用できる。
【0023】
場合によっては、何らかの方法で、担体の表面を修飾して、たとえば適切な反応性基を作製してもよい。このような反応性基としては、たとえば、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシル、カルボン酸塩、アルデヒド、エステル、エーテル(たとえばチオエーテル)、アミド、アミン、ニトリル、ビニル、スルフィド、スルホニル、ホスホリルまたは類似の化学的反応性基などの単純な化学的部分が挙げられる。この反応性基としては、マレイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド、ニトリロ三酢酸、活性化ヒドロキシル、ハロアセチル(たとえばブロモ、ヨードアセチル)、活性化カルボキシル、ヒドラジド、エポキシ、アジリジン、スルホニルクロリド、トリフルオロメチルジアジリジン、ピリジルジスルフィド、N−アシル−イミダゾール、カルバミン酸イミダゾール、ビニルスルホン、スクシンイミジルカーボナート、アリールアジド、無水物、ジアゾ酢酸、ベンゾフェノン、イソチオシアナート、イソシアナート、イミドエステル、フルオロベンゼン、ビオチンおよびアビジンなどのより複雑な部分が含まれてもよいが、これらに限定されるわけではない。この反応性基としては、たとえば、シラン、Si−OH、酸化ケイ素、窒化ケイ素、第一アミンまたはアルデヒド基でもよい。機械的な方法、物理的な方法、電気的な方法または化学的な方法によって、このような反応性基を担体上に設置する技術は本技術分野において周知である。場合によっては、表面上に反応性基を作製する前に、最初に担体を強酸などの試薬で処理してもよい。当業者であれば、特定の適用例に必要なように、担体の表面を修飾するための適切な技術を容易に特定することができるだろう。アルデヒド基はタンパク質のN−末端と反応するので、いくつかの態様においては、アルデヒド基を使用してタンパク質を担体に付着させてもよい。それによって、タンパク質をその他のタンパク質および/または低分子と溶液中で相互作用させることができる。
【0024】
場合によっては、担体は導電性であってもよい。導電性の担体は、たとえば、担体に結合した化学種の質量分析の間に、担体から化学種の脱離を促進させることにとって有用である。場合によっては、導電性の担体によって、SEM、AFM、SIMS、GAFTIRなどの技術、これらに限定されるわけではないが、を用いて表面のキャラクタライズをすることが可能になるかもしれない。
【0025】
特定の態様においては、担体を処理して、たとえば、タンパク質および/または低分子などの特定の化学種と担体の表面との間の非特異的な結合をブロックまたは阻害してもよい。場合によっては、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼインおよび/または脱脂乳を含む緩衝液を担体に添加して、化学種と担体上の非反応基との間の遅れた非特異的な結合をブロックしてもよい。
【0026】
場合によっては、一つ以上の化学種を担体の表面上に配置して、アレイを形成してもよい。本明細書で用いられる担体上の「アレイ」には、第二の領域で囲まれた一つ以上の別個の領域が含まれ、たとえば、第一の化学種を担体上の一つ以上の別個の領域内に配置して、第一の化学種が無い領域で囲んでもよい。この別個の領域はそれぞれ独立して、同じであっても異なっていてもよい。たとえば、一つの領域は第一の化学種を含んでいてもよく、一方第二の領域は第一の化学種および/または第二の異なる化学種などを含んでいてもよい。一つ以上の別個の領域は、規則正しく配置されていてもよく(たとえば格子パターン)、または規則正しく配置されていなくてもよい(たとえば担体の表面上でランダムに分布している)。一例として、化学種のそれぞれが担体の表面上に別個に配置されていてもよい。たとえば一連の領域すなわち「スポット」を形成してもよい。このスポットは任意の形状、たとえば、円形、楕円形、長方形、正方形、不定形などでよく、そして表面上でのスポットの配置は規則的でも不規則でもよい。このスポットはそれぞれ独立して同一のまたは異なる化学種、たとえば、一つ以上のタンパク質、低分子、その他の実体などを含んでもよい。場合によっては、少なくともいくつかのスポットの最大の大きさは約1mm未満であればよい。そのような大きさのスポットを有するアレイも、本明細書では「マイクロアレイ」と称する。場合によっては、高密度のマイクロアレイ、たとえば、約10スポット/cmを超える密度のもの、約20スポット/cmを超える密度のもの、約30スポット/cmを超える密度のもの、約50スポット/cmを超える密度のもの、約75スポット/cmを超える密度のもの、約100スポット/cmを超える密度のもの、または約200スポット/cmを超える密度のものを用いてもよい。当業者によって知られている多数の手段によって、本発明のアレイまたはマイクロアレイを製造してもよい。このような方法としては、マイクロフルイディクス・プリンティング、マイクロスタンピング(たとえば、米国特許第5,515,131号および米国特許第5,731,152号を参照すること。それぞれは、引用によって本明細書に取り込まれる)、マイクロコンタクトプリンティング(たとえば、PCT公報WO 96/29629号を参照すること。このものは引用によって本明細書に取り込まれる)およびインクジェット・ヘッド・プリンティングが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0027】
別個のスポットのアレイを有する担体を用いる場合、場合によっては、弾性膜を用いてそのスポットを維持してもよい。本明細書で用いられる「弾性」は、伸縮するポリマーを定義する。ポリマー材料から膜(または類似の物品)を作製してもよく、柔軟なポリマー材料が、本発明のいくつかの態様においては好ましい。いくつかの態様においては、膜は弾性材料から構成される。種々の弾性材料が適しており、特にシリコンポリマー、エポキシポリマーおよびアクリル酸ポリマーの一般的なクラスのポリマーが好ましい。一般的にエポキシ基と称される三員環のエーテル基、1,2−エポキシドまたはオキシランが存在することによって、エポキシポリマーがキャラクタライズされる。芳香族アミン、トリアジンおよび脂環式の骨格を基礎とする化合物に加えて、たとえば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルを用いてもよい。別の例としては、周知のNovolacポリマーが挙げられる。膜としての使用に適したシリコンエラストマーの例としては、メチルクロロシラン、エチルクロロシラン、フェニルクロロシランなどのクロロシランを含む前駆体から形成されるものが挙げられる。有用なシリコンエラストマーの一例はポリジメチルシロキサンである。場合によっては、この膜も再利用できる。
【0028】
いくつかの態様において、下記でさらに議論されるように、リンカー分子または「リンカー」を必要に応じて担体の表面に付加してもよく、それによってさらなる結合の化学的性質に適した表面、たとえば、自己組織化膜の付着に適した表面を作製する。本明細書で用いられる用語の「リンカー」とは、たとえば担体上で反応性基を利用することによって、担体に関して化学種を固定することができる化学的部分という意味である。本明細書で用いられる、別の実体「に関して固定した」実体または別の実体「と結合した」いずれかの実体とは、たとえばその他の実体も固定される第三の実体に固定されることによって、その他の実体に固定されたかまたはその他の実体に間接的に固定されたものである。化学種に固定された(リンカーなどの)実体が表面に付着し、そこで化学種が単一の実体、複数の構成要素の複雑な実体などとなり得る場合、たとえば、化学種を担体に固定する。特定の例においては、別の実体に関して固定した実体を、たとえば溶液内でまたは懸濁液内で安定した結合を利用して固定する。場合によっては、特異的結合の相互作用を利用して、実体を別の実体に固定してもよい。
【0029】
任意の適した化合物のクラスからリンカーを選択することができ、そしてリンカーは有機酸のポリマーまたはコポリマー、アルデヒド、アルコール、チオール、アミンなどを含んでもよい。一つの側面においては、次でさらに記載されているように、リンカーは自己組織化膜であってもよい。さらなる例としては、リンカーとしては、たとえばグリコール酸、乳酸、セバシン酸またはサルコシンなどのヒドロキシ−、アミノ−またはジカルボン酸のポリマーもしくはコポリマーが挙げられ得る。あるいは、エチレングリコール、プロピレングリコール、糖などの飽和炭化水素または不飽和炭化水素のポリマーもしくはコポリマーを、特定の態様におけるリンカーとして用いてもよい。場合によっては、リンカーを、化学種が分子と溶液内で自由に相互作用でき、そして効率的に結合を形成できるような適切な長さにしてもよい。
【0030】
任意の適切な方法を用いて、化学種をリンカーまたは担体に結合または固定してもよく、そのような適切な方法は、本技術分野において知られている。別の実体に関する実体または(担体などの)物品の表面に関する実体との関連で使用されるような、本明細書で用いられる(「固定された」もしくは「付着した」)または(「固定されるように適合化された」もしくは「付着するように適合化された」)とは、互いに共有的な付着を介して、特異的な生物学的結合(たとえばビオチン/ストレプトアビジン)による付着を介して、キレート/金属結合などの配位結合を介して、実体および/または表面がそれぞれ化学的にまたは生化学的に結合したかまたは結合するように適合化されたという意味である。たとえば、これに関連して、「固定された」または「付着した」とは、複数の化学結合、複数の化学結合/生物学的結合なども含む。別の例としては、チオールに共有的に結合した部分は、金をコーティングした表面に固定されるように適合化されている。というのは、チオールは金と共有結合する能力があるからである。表面が特定のヌクレオチド配列を保持し、その化学種が相補的なヌクレオチド配列を含む場合、実体は表面に固定されるかまたは表面に付着するように適合化されてもいる。
【0031】
場合によっては、リンカーには自己組織化膜を形成する実体が含まれてもよい。本明細書で用いられる用語の「自己組織化膜」(「SAM」)とは、表面上に化学吸着した分子が比較的規則正しく組織化しているという意味であり、ここではこの分子は互いにほぼ平行の位置にあり、表面に対してほぼ直立している。それぞれの分子には、担体の表面に付着することができる官能基が含まれ、そして単一層膜内で隣接する分子と相互作用する位置で比較的規則正しいアレイを形成する。SAMを形成するために用いられるいくつかの方法は米国特許第5,620,850号に記載され、このものは引用によって本明細書に取り込まれる。さらに、たとえば、Laibinis, P. E., Hickman, J., Wrighton, M. S., Whitesides, G. M., Science, 245: 845 (1989); Bain, C., Evall, J., Whitesides, G. M., J Am. Chem. Soc., 111: 7155−7164 (1989); Bain, C., Whitesides, G. M., R Am. Chem. Soc., 111: 7164−7175 (1989)を参照すること。ここでこれらのそれぞれは、引用によって本明細書に取り込まれる。
【0032】
本発明の特定の態様では、担体の表面に付着した自己組織化膜が活用される。態様の一つのセットにおいては、本質的に完全な合成分子で形成されたSAMsを、担体の少なくとも一部に用いてもよい。この文脈において、「合成分子」とは天然の分子ではなく、むしろ人間の指示の下でまたは人間が創造したコントロールもしくは人間が指示したコントロールの下で合成される分子を意味する。場合によっては、表面において密集したSAMsを形成する、SAMが形成する実体から、および/またはSAMに加わる能力を有するその他の実体と結合したこれらの実体からSAMを形成することができる。いくつかの態様においては、SAMが形成する実体のいくつかには、表面に結合する機能、必要に応じて共有的に結合する機能が含まれ、たとえば、金表面または銀表面と共有的に結合するだろうチオールが含まれる。当業者が知っている種々の検出方法および同定方法、たとえば、SPR、蛍光顕微鏡検査法、シンチレーション計数測定、蛍光体による画像化およびMALDI−質量分析法を用いて、SAMsをキャラクタライズしてもよい。
【0033】
本発明の態様に従って、担体の表面上の自己組織化膜を、本質的に任意の化学的機能または生物学的機能を提示する(発現する)ことができる実体の混合物(たとえばコロイドが金表面を有する場合の一つ以上のチオール種)で構成してもよい。たとえば、このような実体に、非特異的な吸着に抵抗するために、トリエチレン末端がグリコール化された化学種(たとえば末端がトリエチレングリコール化されたチオール)および/またはその他の実体、たとえばチオールを含めてもよい。特定の態様においては、表面上のSAMsには、末端がEG化されたチオール、HS−(CH11−(O−CH−CH−OH(「C11EG」)が含まれてもよい。表面上の末端がEG化されたSAMsはタンパク質の吸着に抵抗する能力があるかもしれない。場合によっては、たとえば、タンパク質が結合するだろう領域で囲まれた、末端がEG化されたSAMsを図1に示す。タンパク質の吸着に抵抗するSAMの別の例を図7に示す。ここで、オリゴ(エチレングリコール)鎖72によってタンパク質の吸着が妨害され、そしてポリ(メチレン)鎖74によって構造上の秩序が与えられる。
【0034】
担体の表面上に化学種が配置された態様においては、表面上に配置された化学種が、たとえば別個のスポットにて自己組織化膜(「SAM」)を伴ってもよい。たとえば、アレイの一つ以上のスポットを、担体上のSAMsで規定することができる。場合によっては、それぞれが選択的に特定の表面に付着する官能基を有する分子で、自己組織化膜を規定してもよく、この分子のほとんどまたはすべての残りは、それらが単一層膜内で隣接する分子と相互作用することを可能にする特性を有し、比較的規則正しいアレイを形成する。この分子は一般的に、大部分または完全に有機物であってもよい。特性の変化を有し、SAMを形成する分子の遊離端(表面からSAMが付着するところへ離れた方向)において種々の官能基を有する単一層膜を生産してもよい。従って、一般的に疎水性もしくは親水性のSAMs、一般的に細胞非親和性もしくは細胞親和性のSAMs、または一般的に生体非親和性もしくは生体親和性のSAMsを形成してもよい。さらに、これらの特性またはその他の特性を有するSAMsを形成し、次いで異なる機能を発揮するように修飾することもできる。特定の例においては、特異的な結合親和性が高いSAMsを生産することができ、このものによって、特異的でかつ予め定められたパターンが付いた表面上で一つ以上の化学種と結合することになるパターンが付けられたSAMsを生産することが可能になる。微小パターンが付けられたSAMsの非限定的な例およびそれらの適用例が、1998年7月7日に発行された、「Method of Formation of Microstamped Patterns on Plates for Adhesion of Cells and other Biological Materials, Devices and Uses Therefor」と称する、Singhviらによる米国特許第5,776,748号に記載されており、このものは引用によって本明細書に取り込まれる。
【0035】
場合によっては、化学種は結合相手でもよい。「結合相手」という用語は、特定の分子と結合することができる分子という意味である。場合によっては、市販されている分子ライブラリーなどの分子ライブラリーから結合相手を選択してもよい。結合相手は直接担体に結合してもよく、または結合相手がリンカーに付着してもよい。結合相手としては、生物学的な意義を有する分子(「生体高分子」)を含む種々のタイプのあらゆる天然分子または合成分子であってよい。いくつかの態様においては、結合相手は上記の化学種、たとえば低分子、ペプチド、タンパク質などである。その他の例としては、結合相手には、核酸、核酸アナログ(たとえばペプチド核酸)、多糖類、リン脂質、糖タンパク質を含むキャプチャータンパク質、ペプチド、酵素、細胞レセプター、免疫グロブリン、抗原、天然のリガンド、ポリマー、および抗原−結合断片(Fabs)、Fab’断片、ペプシン断片(F(ab’)断片)、scFv、Fv断片、単一ドメインの抗体、dsFvs、Fd断片、および二重特異性抗体などの(抗体断片を含む)抗体、全長ポリクローナルまたはモノクローナル抗体、ならびに修飾されたフィブロネクチン、CTL−A4およびT細胞レセプターなどの抗体様断片などの天然の分子または分子断片が含まれてもよい。
【0036】
生物学的な結合相手は、結合相手の例である。たとえば、プロテインAは生物学的な分子のIgGの結合相手であり、逆も同様である。「結合」という用語は、典型的には特異的な結合もしくは非特異的な結合または相互作用に基づく、互いの親和性または結合能が発揮される、対応する分子のペアまたは表面間の相互作用という意味であり、生化学的、生理学的および/または化学的相互作用が含まれるが、これらに限定されるわけではない。「生物学的な結合」は、タンパク質、核酸、糖タンパク質、炭水化物、ホルモンなどを含む分子のペア間に生じる相互作用のタイプを定義する。具体的に限定されない例としては、抗体/抗原、抗体/ハプテン、酵素/担体、酵素/インヒビター、酵素/コファクター、結合タンパク質/担体、輸送タンパク質/担体、レクチン/炭水化物、レセプター/ホルモン、レセプター/エフェクター、核酸の相補鎖、タンパク質/核酸、リプレッサー/インデューサー、リガンド/細胞表面レセプター、ウイルス/リガンド、ウイルス/細胞表面レセプターなどが挙げられる。
【0037】
担体またはリンカーに対する結合相手をカップリングする方法の具体例としては、チオエーテル結合、ジスルフィド結合、アミド結合、カルバマート結合、尿素結合、エステル結合、カーボナート結合、エーテル結合、ヒドラゾン結合、シッフ塩基結合などの結合を生じさせる反応、ならびにイオン性または疎水性相互作用などによって仲介される非共有結合などの結合を生じさせる反応が含まれる。当然のことながら、反応の種類は担体/リンカーおよび結合相手の両方で利用可能な反応性基に依存するだろう。
【0038】
場合によっては、何らかの方法で、結合相手に、たとえば蛍光性標識、放射性標識、染色性標識およびその他の物理的または化学的標識またはエピトープなどのタグを付けてもよい。しかしながら、別の場合では、結合相手を標識しなくてもよく、質量分析を利用して検出すればよい。
【0039】
本発明において、各種の既知の質量分析技術を用いてもよい。一般的に、質量分析装置は分子から荷電粒子(イオン)を生じさせる能力(たとえば「イオン化」)を有する。次いで、荷電粒子を操作してこのイオンを加速させ、それと同時に非荷電分子および断片が除去される。具体的には、たとえばイオンを検出器または質量分析装置に導くためのイオンの通路をコントロールするための電圧の操作によって、この操作を行ってもよい。これらのイオンを分析することによって、オリジナルの分子についての情報、たとえば分子量、構造情報などの情報を提供してもよい。広範囲の分析を可能とするための質量分析装置およびサンプルの導入技術には、多数のタイプがあり、それらのうちのいくつかは下記のとおりである。
【0040】
当業者に知られている、質量分析法に適したイオン化方法の非限定的な例としては、電子衝撃、化学イオン化、エレクトロスプレー、高速原子衝撃およびマトリックス支援レーザーイオン化(「MALDI」)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ペプチド、タンパク質またはヌクレオチドなどのより大きな分子を含む状態には、MALDI法は有用であろう。MALDIにおいては、分子量のリストを、算出されたすべての分子量のリスト、たとえばデータベースからのリストと適合させることによって分子を同定してもよい。場合によっては、イオン化された塊の配列決定を行ってもよい。
【0041】
イオン化された生体高分子を、検出器に向けて(典型的には電場を利用して)加速する。検出器へ向けての飛行の間に、異なる分子を、それらの質量電荷比に従って分離することができ、そして異なる時間で検出器に達する。このようにして、それぞれの分子が識別可能なシグナルを生じさせることになる。タンパク質および/または低分子、ならびに既に記載したような生体高分子を含む化学種の検出およびキャラクタライズにこの方法を利用してもよい。
【0042】
当業者が知っている質量分析装置の非限定的な例としては、四極型、(磁場型および/または静電型)扇形、飛行時間型(TOF)またはイオンサイクロトロン共鳴(ICR)型が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。場合によっては、二つ以上の質量分析技術を用いてもよく、および/または質量分析技術をその他の技術、たとえばGC/MS、LC/MS、MS/MS、MALDI/MSなどとして組み合わせてもよい。質量分析の二つの段階をカップリングすること(たとえばMS/MSとして)は、特定の場合において、複雑な混合物中の化合物を同定する場合および未知物質の構造を決定する場合において有用であろう。たとえば、このような特定の技術において、源領域におけるまたはイオントラップに集められた「親」イオンもしくは「前駆体」イオンまたはイオン混合物を断片化して、次いで断片化によって生じるプロダクトイオンを質量分析の第二段階で分析してもよい。構造分析のための更なる情報をこのような技術から得てもよい。
【0043】
いくつかの態様において、本発明を用いて新たなタンパク質−タンパク質間の相互作用および/またはタンパク質−低分子間の相互作用を、高速処理方式、たとえば、上記のようなMALDI・MSと表面化学とを直列に組み合わせて同定してもよい。MALDI・MSを利用して生物学的な界面科学を準備し研究するために、態様の一例に従って金上の自己組織化膜を用いて、容易に調整することができる表面を提供してもよい。この表面によって、カップリング化学を規定することが可能になるだろう。タンパク質に結合したターゲットが見出される場合、位置的なあいまいさを排除するためにこのカップリング化学を用いてもよい。さらに、非特異的な結合によって生じる問題を軽減するために、および付着したタンパク質の三次構造を維持するために、場合によっては具体的な化学的性質を調整してもよい。
【0044】
特定の場合においては、この質量分析技術は極めて感度が高い。すなわち質量分析技術によって、場合によっては約0.1%〜0.01%の正確さをもって少量(10−15モルから10−18モル)のサンプルを検出することが可能となるだろう。一例として、(下記にさらに説明されている)MALDI・TOFを用いて、タンパク質またはペプチド分析および配列決定を行うことができ、または微小な不均一性についての情報(たとえばグリコシル化)、ならびに副産物についての情報を提供することができる。特定の例においては、核酸の配列決定のために質量分析技術を用いることができる。
【0045】
特定の場合においては、本発明によって、質量分析技術を利用してより高い分子量を有する分子の配列決定が可能となる。たとえば、約1kDaよりも大きい分子量を有する分子、約3kDaよりも大きい分子量を有する分子、約5kDaよりも大きい分子量を有する分子、約7kDaよりも大きい分子量を有する分子、約10kDaよりも大きい分子量を有する分子、約20kDaよりも大きい分子量を有する分子、約30kDaよりも大きい分子量を有する分子、約40kDaよりも大きい分子量を有する分子、約50kDaよりも大きい分子量を有する分子、約100kDaよりも大きい分子量を有する分子、約200kDaよりも大きい分子量を有する分子、または約350kDaよりも大きい分子量を有する分子を測定でき、このような質量分析法の技術についての非限定的な例のうちの一つは、MALDI・TOFである。
【0046】
マトリックス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF MS)は、紫外光を吸収するマトリックスおよび生体高分子の共沈物に、たとえばナノ秒程度の短時間のレーザーパルスを照射するという技術である。レーザーエネルギーの一部はマトリックスに吸収され、これによって生体高分子の不必要な断片化が防がれる。当業者であれば、MALDIに用いるためのマトリックスについて適切な材料を特定する能力を有するだろう。典型的には、この材料は、紫外光を吸収する能力を有する。このようなマトリックスの例としては、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシケイ皮酸(シナピン酸)、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸、シナピン酸、特定のケイ皮酸誘導体、トランス−ケイ皮酸などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0047】
特定の場合においては、表面上のタンパク質を直接同定するために、MALDIタンデム型TOF MSなどの質量分析技術を採用することができる。担体上のターゲットに結合したタンパク質を同定するために、オンアレイ(「オンチップ」)の消化方法を用いて、本発明の一つの側面において、結合したタンパク質からペプチドを生じさせてもよい。場合によっては、タンパク質を変性させることなく、および/または塩の存在下でオンチップでのタンパク質消化を生じさせてもよい。たとえば、態様の一つのセットにおいては、クロマトグラフィーによる精製を行うことなく、その上に付着した一つ以上の化学種を有する担体を(たとえばLC/MS技術として)質量分析することができる。場合によっては、その上に存在する塩を実質的に除去することなく、質量分析法に担体を用いてもよい。いくつかの態様においては、オンチップでの消化を行うために、たとえばトリプシン、キモトリプシン、ペプシンなどの一つ以上の酵素を用いてもよいが、これらに限定されるわけではない。
【0048】
本発明の適用例としては、タンパク質および/または低分子を測定すること、ならびにタンパク質−タンパク質間の相互作用および/またはタンパク質−低分子間の相互作用を測定することが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。場合によっては、測定されるタンパク質および/または低分子は、複数のタンパク質および/または低分子を含む混合物、たとえば細胞溶解物中に存在するはずのものであってもよい。たとえば、本発明のアレイが抗体を含む場合、そのアレイをまず最初に細胞溶解物にさらして、次いで上記のようにアレイを質量分析に付すことによって、種々のタンパク質またはその他の低分子を測定することができる。場合によっては、本発明によって、従来の質量分析技術ではその化学種の測定を妨害するだろう類似の化学種の存在下で、担体に結合していると推測される化学種を質量分析法を利用して測定することが可能となる。
【0049】
次の実施例は、本発明の特定の態様の特定の側面を例証することを意図するものであり、本発明の全範囲を例証するものではない。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
本実施例においては、金をコーティングしたスライドガラス上に自己組織化膜を調製し、空間的なアドレス指定が可能なタンパク質アレイおよび低分子アレイを作製するために用いた。本実施例では、金表面上の自己組織化膜とMALDIタンデム型MSの能力とを組み合わせる。この組み合わせによって、下記のような新たなタンパク質−タンパク質間の相互作用およびタンパク質−低分子間の相互作用を同定することも可能になった。タンパク質または低分子に対する結合相手を捕捉するために、このアレイを細胞溶解物と一緒にインキュベートした。修正されたPBS緩衝液、0.1%のTriton X−100中で、組織培養溶解物用の1×プロテアーゼインヒビターカクテル(Sigma−Aldrich社)ならびに400マイクロモーラーのNaVO、20mMのNaFおよび2mMのモリブデン酸ナトリウムと一緒にホモジナイズすることによって、溶解物を調製した。遠心分離によって細胞残渣を除去した。
【0051】
いくつかの場合に分けて、アレイ上で種々の酵素を用いるインサイチュ消化を行った。インサイチュ消化のために、10mMの濃度のN−オクチルグルコピラノシドを界面活性剤としてアレイに添加した。次いでこのアレイを70℃に加熱した。次いでこのアレイを冷却し、pH7.8の20mMの重炭酸アンモニウム緩衝液中のトリプシンの最終濃度を約4.1mg/mLで用いるように、トリプシン消化混合物を表面に添加した。このサンプルを、50℃の加湿チャンバー内で5時間インキュベートした。5%のギ酸をこの表面に添加して重炭酸アンモニウムを揮発させ、このアレイを真空チャンバー内で乾燥させた。次いでこの表面を0.1%のTFAで洗浄し、マトリックスを添加した。すべてのタンパク質のMALDIについては、アセトニトリル:水が1:2(vol/vol)中のジヒドロキシ安息香酸(DHB)、またはアセトニトリル:水が1:1中のシナピン酸を10mg/mLの濃度で用いた。ペプチドのMALDIについては、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸のマトリックス(5mg/mL)をチップに添加し、風乾した。
【0052】
このアレイをMALDIターゲットとしても用い、質量分析法を用いて応答指令信号を送った。この実施例において用いた質量分析装置は、MALDI TOF、Voyager DE STR(Applied Biosystems社、フレーミングハム、マサチューセッツ州)およびMALDI‐TOF/TOF、ABI 4700(Applied Biosystems社)であった。アレイ上の低分子またはタンパク質に結合したタンパク質についての検出器としてMALDI−TOF質量分析装置を使用できるように、それぞれのアレイを質量分析装置に設置した。これらのアレイ上のスポットを用いて、無傷のタンパク質をMALDIターゲットとして検出した。たとえば、低分子のコンビナトリアルライブラリーを、特定のタンパク質を用いるリガンドについてスクリーニングするために、これが有用であることが分かった。次いで、プログラムのMascot(Matrix Science社、ロンドン、英国)、Protein ProspectorおよびPepSea(Protana社、オーデンセ、デンマーク)を用いてタンパク質データベースに応答指令信号を送った。
【0053】
このシステムを発見用のツールとして用いるために、すなわち細胞溶解物などの複雑なサンプルからたとえば抗体に結合するタンパク質を同定するために、その後の洗浄工程またはクロマトグラフィー工程が伴わない、目的に適った効果的な消化方法を採用した。次いで、タンパク質を明確に同定するために十分な配列情報を与えるMALDI−TOF/TOFタンデム型質量分析装置を用いて、生じたペプチドの配列決定/断片化を行った。
【0054】
(実施例2)
本実施例では、マイクロアレイを用いてタンパク質−タンパク質間の相互作用を同定するために、MALDIタンデム型TOF質量分析法を使用することについて記載する。マイクロアレイ上でタンパク質を同定するための自己組織化膜、インサイチュタンパク質消化およびMALDI質量分析法についてのこの方法を、「SPaM」と称してもよい。本実施例も、低分子と相互作用するタンパク質を検出するための特定の方法を使用することを例証する。
【0055】
MALDIタンデム型MSと共にマイクロアレイのインサイチュタンパク質消化を用いることによって、結合タンパク質の同定を実現することができた。インサイチュ消化によって、高感度で配列決定された結合タンパク質からペプチドを生じさせ、これによって、タンパク質の結合相手を明確に同定することが可能になった。実施例1に記載された技術と類似の技術を用いて、スライドガラスを調製した。質量分析法は高感度であり、非特異的な相互作用はバックグランドを高くする傾向があるので、下記のような表面処理を行って、非特異的な表面相互作用を軽減した。選択された分子を低濃度で提示するように散布されたオリゴ(エチレングリコール)基によって非特異的な相互作用が軽減されるようにSAMsが設計され、そして金表面で用いた。金上のアルカンチオラートによって一以上のアルカンチオラートを含む均質で複雑な単一層膜が可能となり、その表面が少なくとも部分的には非特異的なタンパク質の吸着に対して不活性となり得、そして場合によってはその表面がいくつかの検出および同定方法、たとえば、SPR、蛍光顕微鏡検査法、シンチレーション計数測定、蛍光体による画像化、およびMALDI−質量分析法と適合するかもしれないので、SAMsはアルカンチオラートを含んでいた。多数の表面技術、たとえばSEM、AFM、SIMS、GAFTIRなどを用いて、表面をキャラクタライズすることもできた。分析対象の分子のイオン化および加速にはターゲットに電圧を加える必要があるので、金表面を使用することは、本実施例におけるMALDIタンデム型MSにとっても有利であった。場合によっては、担体をタンパク質の溶液に浸漬し、このタンパク質が、末端がメチル化された単一層膜の領域に吸着したか、または低分子のスポットが付けられた単一層膜の領域と特異的に相互作用した。次いで、このアレイを用いて後期促進複合体(APC)の新規のおよび既知の結合相手を同定した。
【0056】
場合によっては、相補的なリフトオフ膜を用いた。このリフトオフ膜によって、アレイのその他のスポットからそれぞれのスポットを単離してもよい。プラズマ酸化によってリフトオフ膜を親水性にし、担体上に置かれた時の封を形成した。逆のパターンを有するスタンプによって作られた相補的なパターンが付けられた表面上にこのリフトオフ膜を置くことによって、登録がなされた。
【0057】
サンプル中のタンパク質を同定するために、MALDIイオン化に適合する、アレイ上での消化方法を開発した。目的に適った消化(たとえばトリプシン消化)によって、タンパク質を同定する二つの方法、すなわちペプチド質量のマッピングによる方法または対象のペプチドの配列決定による方法が容易になった。両方の方法によって、表面上のタンパク質の数に基づいて、タンパク質が一般的に明確に同定された。質量分析装置は極めて感度が高く、非特異的な相互作用はバックグランドを高く導く傾向があるので、非特異的な相互作用も最低限に抑制して、アレイ上でのターゲットの同定を可能にした。それによって、真の相互作用からペプチドを抑制した。
【0058】
本実施例において、低分子および/またはタンパク質の固定が可能であって、特定のリガンドと結合する複雑な混合物からタンパク質を同定するための、および/または新たなタンパク質の相互作用を同定するための発見用のツールとして用いることができる、化学的に柔軟なマイクロアレイのプラットフォームを設計した。このことを実現するために、設計のいくつかの側面:非特異的な結合の減少;MALDIに適合するインサイチュトリプシン消化の開発;アレイを質量分析装置内に設置するための、質量の正確さと分解能に関して妥協することのない解決法の企画、が考えられた。ペプチド配列の情報に基づいてタンパク質を明確に同定するために、MALDI−TOF/TOF質量分析法を用いた。
【0059】
MALDI−TOFを、SAMに基づくアレイを読み取るための検出器として用いることには、いくつかの利点があった。金表面は蛍光を消光する能力があり、それによって蛍光による検出の感度が制限された。このことによって、低分子アレイおよび/またはタンパク質アレイに関する結合性の研究を分析することが可能になった。これは、たとえば未知で新たな相互作用を分析するための発見用のツールとして有用なペプチドの配列決定用ツールだけでなく、単純なリーダー/検出器として機能するその感度およびその能力が原因であった。MALDI質量分析法は一般的に極めて高感度なので、不活性な表面を減少させるために、好ましくは生じるかもしれない偽の相互作用を除去するために用いられた。生体高分子との特異的な相互作用を行うために選択された特定の金表面が用いられた。たとえば、米国特許第5,776,748号であり、引用によって本明細書に取り込まれる。この表面は、オリゴ(エチレングリコール)基を提示する自己組織化膜(SAM)を基にした。
【0060】
概略図を図1に示す。カバーガラス(18x18mm、No.2、Coming社)の表面上に、最初に粘着性のチタン層(約3nm)を、次いで金(約15nm)を電子ビームエバポレータで蒸着させることによって、担体を調製した。約2×10−7Torrの圧力にて、そして両金属について0.5nm/sの速度で、この蒸着を実施した。アルカンチオールの吸着の前に、金をコーティングしたカバーガラスを無水エタノールで洗浄した。
【0061】
ソフトリソグラフィー、たとえばマイクロコンタクトプリンティング法を用いて、金をコーティングした表面上に、ヘキサデカンチオール[HS(CH15CH]または末端がアルカンチオール化された低分子のいずれかのパターンを付けた。本実施例で用いられたこのパターンは、円形のスポットであった。アルキル化のスポットの間にある露出した金表面を、続いて末端がポリエチレングリコール(PEG)化されたアルカンチオール[HS(CH11−(OCHCHOH]で誘導体化した。このアルカンチオールから作られたSAMsによって、非特異的な吸着が最小限に抑えられた、一般的に不活性な表面が提供された。ヘキサデカンチオール(エタノール中に2mM)を含む溶液で湿らされた綿棒で、ポリジセミルシロキサンのスタンプの表面を横切るように一回引っかいた。このスタンプを窒素の気流で約30秒間乾燥させ、スタンプと担体との間が等角的に接触しやすくなるように十分に圧力を加えて、金をコーティングしたスライドガラス上に静かに設置した。約20秒後、このスタンプを担体からはがした。直ちに、末端がテトラ(エチレングリコール)化されたアルカンチオール(エタノール中に1mM)溶液に、スライドガラスを8〜14時間浸漬した。スライドガラスを取り出し、無水エタノールでリンスして窒素気流の下で乾燥させた。次いで担体をタンパク質の溶液に約4時間浸漬し、タンパク質をヘキサデカンチオラートの領域に吸着させた。
【0062】
登録され、かつアドレス指定が可能な方式でスポットにパターンが付けられたので、次いで、ロボットスポッターを用いて対象のタンパク質をこれらのパターンの上に配列した。ヘキサデカンチオールの担体をタンパク質溶液に暴露した結果、オリジナルのSAMのパターンによって規定された形状および分布を伴った、タンパク質がコーティングされた島状のものが形成された。MALDI−TOF MSによる応答指令信号の送信に最適な、配列されたスポットの直径は、実験的に400ミクロン〜800ミクロンであり、約1mm〜2mmの不活性な表面で隔てられたことが決定された。この分布によって、タンパク質の消化およびそれに続くサンプル調製工程の間のスポットのにじみが最小限に抑制されたスポットとなった。
【0063】
ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)をDow Coming社(Sylgard 184)から購入した。フォトリソグラフィによって作られた原版から、引用によって本明細書に取り込まれる米国特許第5,512,131号に既に記載されたようにして、PDMSのスタンプを調製した。ヘキサデカンチオールをAldrich社から購入し、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。
【0064】
純粋な化学吸着を利用する代わりに、本実施例で記載されるように、共有的に固定するための種々の化学反応、たとえばマイケル付加(図7A)またはディールス・アルダー反応(図7B)を用いて低分子を配列することも可能であった。
【0065】
低分子アレイまたはタンパク質アレイを一旦調製して、以降のいくつかの実験、それぞれの実験は読み取るために異なる検出器/分析方法を必要とするが、を実施した。チップを(a)単一のタンパク質、(b)既知タンパク質の混合物または(c)すべての細胞溶解物などの複雑でキャラクタライズされていない混合物とインキュベートした。対象のタンパク質溶液とインキュベートした後、緩衝液成分および未結合タンパク質を除去するために必要なストリンジェンシーでアレイを洗浄した。(a)および(b)の適用例については、無傷のタンパク質が検出された(下記の図2に関する議論を参照すること)のに対して、(c)の適用例については、目的に適った消化によってタンパク質分解されたペプチドが生成して、感度が向上し、ペプチドの配列決定も容易になった。前者は、すべてのタンパク質の分析に適したMALDIマトリックス、たとえばジヒドロキシ安息香酸(DHB)またはシナピン酸(SA)を表面上に添加することによって達成され、アレイ上の異なるスポットについてのMALDIスペクトルを収集した。
【0066】
(実施例3)
タンパク質の同定を明確にするためにペプチドを分析に利用した場合、ある一つのスポットから別のスポットにキャリーオーバーするサンプルが無いという、目的に適った消化の課題を、本実施例において次のように解決した。事前に還元およびアルキル化を行うこと無く、加湿チャンバー内のアレイ上で消化をインサイチュで行った。その後、ペプチドの分析に適した、たとえばα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸などのMALDIマトリックスを消化アレイに添加し、減圧下で溶液を乾燥させた。次いで、チップの表面上の電圧を維持した状態でチップを提供できるように具体的に加工されたターゲット上に、アレイを伴う金担体を設置した。金をコーティングしたアレイは、金属層が導電性だったのでこのタイプの分析に有用であった。その結果、正確さおよび分解能に関して不当に妥協することの無い高感度のMALDIが実現しやすくなった。
【0067】
この計画を低分子−タンパク質間の相互作用で実証するために、末端がPEO−ビオチン(ポリエチレンオキシド)化されたチオール(図2C)を提示するSAMで表面を調製した。用いたPEO−ビオチンは、分子を親水性にするエチレンオキシドリンカーを有し、それによって、ストレプトアビジン以外のタンパク質による非特異的な吸着を減少させた。
【0068】
チップをリンスし、乾燥させ、そしてFITCが結合したストレプトアビジンの2pmol/mLの溶液でインキュベートした。このものを振盪器上で一晩インキュベートし、その後にリンスした。チップの蛍光画像を図2Aに示す。この画像は、PEO−ビオチンで処理された表面領域上でのストレプトアビジンタンパク質の、不要なものが除かれた一般的な分布を示す。ストレプトアビジンの結合部位は、一般的に可溶性のビオチンで占められているため、ビオチンに固定されたストレプトアビジンが見られない領域は、表面が一般的に不活性な領域を示す。
【0069】
次の実験においては、マトリックスとしての5マイクログラム/マイクロリットルの濃度のDHBを含むチップ上に、ストレプトアビジンと一緒にインキュベートしたPEO−ビオチンチップをかぶせた。得られたMALDI−TOF質量スペクトルを図2Bに示す。このスペクトルは、すべての細胞溶解物中に存在するタンパク質に非特異的に付着するその他のあらゆるものが除かれた一般的なものである。このことは、新たなタンパク質−低分子間の相互作用を見出すためのこの計画の実現可能性を実証するものである。これは質量が知られた既知のタンパク質なので、ペプチドをより詳細に分析するために消化を行うことは、この特定の例では不要であった。
【0070】
(実施例4)
本実施例においては、SPaMの計画のための単一のタンパク質マイクロアレイを実証する。シトクロムCを、SAMに基づく金チップに添加した。マイクロコンタクトプリンティングを用いて、疎水性の円形の領域(直径が約400ミクロン、端から端までの距離が1.6mm)のパターンが付けられた表面を作製した。上記の技術と同様の技術を用いてタンパク質アレイを作製し、溶液中で単一のタンパク質と一緒にインキュベートした。偏光解析法およびSEMによってキャラクタライズされるように、100マイクログラム/mLのシトクロムCを添加して、25℃で4時間かけてタンパク質の単一層膜をマイクロアレイの疎水性領域に吸着させた(データは示さず)。632.8nmで操作するヘリウムネオンレーザをと、パーソナルコンピュータへのインターフェイスが備わったGaertner Model L116C単色光学偏光解析装置で、偏光フィルムの厚さを測定した。70°の入射角で測定した。単一層膜の形成前に、それぞれの担体に関して四箇所以上の位置で実際の屈折率および架空の屈折率を測定した。次いで、これらの数の平均をソフトウェアに入力して、得られたフィルムの厚さを決定した。四つ以上の点について、このフィルムを測定した。それぞれの担体について、露出した金フィルムについての標準としての光学定数を測定した。すべての厚さおよび屈折率の独立した測定について、屈折率を1.46と仮定した。
【0071】
このアレイを洗浄し、末端がポリエチレングリコール化されたアルカンで誘導体化された金表面上だけでなく、タンパク質をコーティングしたスポット上で、すなわち非特異的なタンパク質結合に対して不活性な表面領域上で、MALDIマトリックスをこのアレイに添加した。「不活性」な表面領域上だけでなくスポット上のスペクトルも、MALDI−TOF MSによって収集した。これらの実験の結果を図3Aに示す。不活性な表面は、あらゆる不要なタンパク質が除かれた一般的なものであることが分かったのに対して、タンパク質が物理吸着したスポットからは、11.564kDa、5.782kDaおよび3.855kDaにおいて、識別可能な一価、二価および三価のシトクロムCのシグナルが示された。単一のタンパク質をタンパク質、ペプチドまたは低分子ライブラリーに対してスクリーニングした場合、このタイプの分析、すなわちその質量に基づいて対象のタンパク質を検出するために単純な「チップリーダー」としてMALDI−TOF質量分析装置を活用することもできる。
【0072】
(実施例5)
複雑なタンパク質混合物を用いる場合、結合タンパク質の質量は明確に同定するためには十分ではないかもしれない。これらの場合においては、そのペプチド質量のマップによって、または一つもしくはいくつかのペプチドからのMS/MSデータに基づいてタンパク質を同定するために、ターゲット上でインサイチュ消化を行ってもよい。インサイチュ消化のためのいくつかの条件を判断する場合、このことの一例に従う。
【0073】
本実施例で用いたアレイにおいては、シトクロムCを種々のサイズ(直径が1mm〜200ミクロン)のパターン上に固定し、チップ上でのインサイチュタンパク質消化とそれに続くMALDI−TOF MS分析を行った。本実施例においては、次の消化条件を検討した:不安定な緩衝液としての低濃度の重炭酸アンモニウム(20mM)および温度の約50℃への上昇。タンパク質の消化が難しい場合、MALDI MSに低濃度で適合する洗剤、たとえば10mMのN−オクチルグルコピラノシド(OGP)または酸に不安定な界面活性剤(RapiGest、Waters社)を、そのタンパク質のために用いた。消化後、0.1%のトリフルオロ酢酸TFAを洗浄溶液として用いて、重炭酸アンモニウム緩衝液および消化を助けるために用いた過剰の界面活性剤を除去した。
【0074】
消化の結果として生じるペプチドは、タンパク質がそうであったように、疎水性のスポットの表面に物理吸着したように見えた。このことによって、チップ表面を簡単に洗浄することが可能になった。疎水性領域に対するペプチドの高い親和性によって、ミリメートル未満のサイズの範囲の小さな直径のサンプルスポットにこのペプチドが濃縮されることに基づいて技術の感度も改善し、次には従来のMALDIサンプル調製物にしばしば見られるショット−ツー−ショットの異質性も減少した。図3Cは、シトクロムCのインサイチュ消化後に得られるペプチド質量のフィンガープリントを示す。消化によって、約78%の範囲の配列を伴う多数のペプチドが生じた。トリプシンの自己消化ペプチドからのシグナルを用いて校正した後、そのスペクトルをMASCOT検索用に提供した。この検索によって、このタンパク質がシトクロムCとして明確に同定された。
【0075】
チップ上で見られるペプチドの濃度でこの表面上のペプチド配列を決定する目的のためにプロダクトイオンの実験を実施することの実現可能性についても、本実施例で研究した。MALDI−TOF/TOFの技術およびMALDI四極/TOFの技術を含めたMALDI MS/MSの技術によって、新たな相互作用を検出し同定するためにMALDIを利用することが可能になった。断片化のためにいくつかのペプチドを選択し、1169.3Daの前駆体ペプチドに由来するスペクトルを図3Dに示す。集められたスペクトルのほとんどをカバーする、不要なものが除かれた配列の範囲は、ペプチド配列のほぼ全体を導くのに十分な質であり、従って、MASCOT、Protein ProspecterおよびPepSeaなどの一般的に用いられる検索アルゴリズムを用いて明確な同定結果が得られた。
【0076】
(実施例6)
低分子に結合したタンパク質またはこれらの表面に物理吸着したタンパク質を、ペプチド質量についてフィンガープリントを行い断片化も行うことによって、すなわちペプチドの配列決定を行うことによって、そのインサイチュ消化および同定を実施することができたので、次の実験によって、質量分析法で結合相手を同定することを含めたタンパク質−タンパク質間の相互作用を研究するために、SAMに基づくアレイを用いることができることが確立された。
【0077】
端から端までの距離が1.6mmの、400ミクロンのスポットのパターンが付けられた表面に、このアレイを抗N−WASP抗体溶液と一緒に25℃で4時間インキュベートすることによって、抗N−WASP抗体を物理吸着させた。200ng(36pmol)の組み換えN−WASPを混合した1mLのHeLa細胞のすべての溶解物とインキュベートする前に、過剰の抗体を除去するためにこの表面を洗浄した。その後、目的に適ったトリプシンでのインサイチュ消化を一晩(約12時間)行う前に、チップをPBS(pH7.4)で十分に洗浄し、窒素気流下で乾燥させた。
【0078】
次いで、マトリックスを表面に添加し、この表面を減圧下で乾燥させた。この消化物のMALDI−TOF質量スペクトルを図4Aに示す。トリプシンの自己消化ペプチド、およびこの実験に用いた抗体から派生するペプチドに由来する極めて強いイオンシグナルから離れた位置に、いくつかのその他のペプチドのイオンシグナルが見られた。次のような自己消化物のピークを利用する内部校正の後に、ペプチド質量のフィンガープリントの検索のためにこれらのシグナルを用いた。MASCOT検索のソフトウェアをタンパク質の同定のために用いた。N−WASPは、トップスコアのタンパク質が適合したものと認定された。MASCOTの確率スコアでは同定できなかったので、いくつかのペプチドについて、より明瞭に同定するMALDIタンデム型質量分析法による配列決定を行った。
【0079】
m/zが1990.2におけるペプチドは、MS/MSによって配列決定するために選択されたペプチドの一つであった。得られたプロダクトイオンのスペクトルを図4Bに示す。このプロダクトイオンのスペクトルをMASCOT検索エンジンに提供し、トップスコアのペプチドとして、配列GGPPPPPPPHSSGPPPPPAR(配列番号:1)を伴う、N−WASPに由来するペプチドを検索した。それによってN−WASPタンパク質を同定した。図4Aに見られるその他のペプチドのシグナルには、m/zが2162.049におけるウシのトリプシンおよびm/zが2172.1522におけるIgGペプチドが含まれる。上記のようなシトクロムCの消化に由来するいくつかのプロダクトイオンのスペクトルと同様、このスペクトルは、6アミノ酸残基までのペプチド配列の範囲を手動で解釈するには十分な質であった。タンパク質複合体をアレイの表面上に落としてもよいかどうかを調べるために、CDC27に対する抗体をそのアレイの表面上に固定した。
【0080】
(実施例7)
本実施例においては、後期促進複合体(APC)を精製するために、抗CDC27抗体をSAMマイクロアレイ上に固定した。このSAMマイクロアレイに、400ミクロンの直径の疎水性の領域のパターンを付けた。CDC27は、十分にキャラクタライズされた後期促進複合体(APC)のメンバーの一つである。次いで、このアレイをHeLa細胞溶解物と一緒に25℃でインキュベートし、その後に洗浄した。このアレイ表面上でインサイチュ消化を行い、溶解物から結合したタンパク質を、MALDI MS/MSを用いて同定した。次いで、新たな結合相手だけでなく後期促進複合体の既知のメンバーも次のように同定した。
【0081】
α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸をその表面に添加してスペクトルを収集した。図5に示す。MALDI MS1スペクトルを図5Aに示す。ペプチドのうちの一つ、1758.8のm/zを有するものについて配列決定を行い、配列HYNAWYGLGMIYYK(配列番号:2)を伴うペプチドであるCDC27に由来するペプチドと適合した。1992.7のm/zを有するペプチドは配列VRDQQLVYSAGVYRLPK(配列番号:3)を有することが分かり、APCの別のサブユニットのAPC2ペプチドとして同定した。1266.9のm/zを有するペプチドは配列QHTLLQEELR(配列番号:4)を有することが分かり、GTP交換因子ペプチド(GEF)として同定した。GTP交換因子は、タンパク質がAPCの担体であることを支持するかもしれないいくつかの識別可能なドメインを有する。次いで、表面上のペプチドのいくつかを断片化し、Protein Prospector、MS−Tag、MascotおよびPepseaを用いてこのデータについて問い合わせた。図2Bは、Cullinとホモロジーを有する内在性タンパク質であるAPCサブユニット2に由来するペプチドと同定したスペクトルの例を示す。
【0082】
本発明のいくつかの態様を本明細書に記載し例証してきたが、当業者であれば、機能を果たすための、および/または本明細書に記載された結果および/または一つ以上の利点を得るためのその他の種々の手段および/または構造を想像するだろう。そしてそのような変形物および/または修飾物のそれぞれが本発明の範囲内であると考える。より一般的には、当業者であれば、本明細書に記載されたすべてのパラメータ、大きさ、素材および配置は模範例であることを意味し、実際のパラメータ、大きさ、素材および/または配置は、本発明の単数または複数の教示が用いられる具体的な単数または複数の適用例に左右されることを容易に理解できるだろう。当業者であれば、ありきたりの程度に過ぎない実験を行って、本明細書に記載された本発明の具体的な態様についての多数の均等物を理解するか、または確認することができるだろう。それゆえに、前記の態様が実施例のみによって公開されること、そして添付の請求の範囲およびその均等物の範囲内において、具体的に記載され権利主張された方法とは別の方法で本発明を実施してもよいことが理解される。本発明は、本明細書に記載された個々の特徴、システム、物品、素材、キットおよび/または方法のそれぞれを対象とする。さらに、このような特徴、システム、物品、素材、キットおよび/または方法が互いに矛盾しない場合、このような特徴、システム、物品、素材、キットおよび/または方法の二以上の任意の組み合わせは本発明の範囲に含まれる。
【0083】
本明細書に規定され用いられたすべての定義づけは、辞書の定義、引用によって取り込まれる文献中の定義および/または規定された用語の通常の意味を支配すると理解されるべきである。
【0084】
本明細書で権利主張された、二以上の行為を含むあらゆる方法において明白に逆のことを示さない限り、その方法の行為の順序をその方法の行為が列挙された順序に制限する必要は無いことも理解されるべきである。
【0085】
明白に逆のことを示さない限り、明細書および請求の範囲において用いられる不定冠詞の「a」および「an」は、「少なくとも一つ」という意味であると理解すべきである。
【0086】
明細書および請求の範囲において用いられるフレーズの「および/または」は、そのように結合した要素、すなわちある場合においては接合的に存在し、他の場合においては離接的に存在する要素の「いずれかまたは両方」という意味であると理解すべきである。必要に応じて、「および/または」の節によって具体的に同定された要素に関係するか否かに関わらず、具体的に同定されたこれらの要素以外のその他の要素が存在してもよい。従って、限定されない例として、「Aおよび/またはB」に言及することは、一つの態様においては、Aのみ(必要に応じてB以外の要素を含んでもよい)という意味であり得;別の態様においては、Bのみ(必要に応じてA以外の要素を含んでもよい)という意味であり得;さらに別の態様においては、AおよびBの両方(必要に応じてその他の要素を含んでもよい)という意味であり得る。
【0087】
明細書および請求の範囲において用いられる「または」は、上記に規定の「および/または」と同じ意味を持つことと理解すべきである。たとえば、リスト中の項目を分ける場合、「または」または「および/または」は包括的なものとして、すなわち数または要素のリストの少なくとも一つを含むだけでなく、数または要素のリストの二以上を含むものとして判断すべきであり、必要に応じてリストにない項目がさらにあってもよい。これとは逆に、明白に示された用語だけは、たとえば「一つのみ」または「正確に一つ」などは、数または要素のリストの正確に一つの要素を含むことを意味することになる。排他的な用語、たとえば「一つのみ」または「正確に一つ」が先行する場合、一般的に、本明細書で用いられる用語の「または」は、唯一の選択肢を示すこと(すなわち「一方または他方だが両方ではない」)としてのみ判断すべきである。
【0088】
明細書および請求の範囲において用いられる、一つ以上の要素のリストに関連するフレーズの「少なくとも一つ」とは、要素のリストにおける任意の一つ以上の要素から選択される少なくとも一つの要素を意味するものと理解すべきであり、要素のリスト内に具体的に列挙されたありとあらゆる要素の少なくとも一つを必ず含むものではなく、要素のリストにおける要素のいくつかの組み合わせを排除するものではない。この定義は、「少なくとも一つ」というフレーズが言及する要素のリスト内に具体的に同定された要素以外の要素が、必要に応じて存在してもよいことをも許容し、具体的に同定されたこれらの要素に関係するか否かには関係がない。従って、限定されない例として、一つの態様においては、「AおよびBのうちの少なくとも一つ」(もしくはこれと同等のものとして「AまたはBのうちの少なくとも一つ」、またはこれと同等のものとして「Aおよび/またはBのうちの少なくとも一つ」)とは少なくとも一つという意味であり得、必要に応じて二以上のAを含みBが存在しなくてもよく(そして必要に応じてB以外の要素を含んでもよい);別の態様においては、少なくとも一つという意味であり得、必要に応じて二以上のBを含みAが存在しなくてもよく(そして必要に応じてA以外の要素を含んでもよい);さらに別の態様においては、少なくとも一つという意味であり得、必要に応じて二以上のAを含み、そして少なくとも一つ、必要に応じて二以上のBを含んでもよい(および必要に応じてその他の要素を含んでもよい)などである。
【0089】
上記の明細書だけでなく、請求の範囲において、すべての移行句、たとえば「含む(comprising)」、「含む(including)」、「保持する(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」などは、オープンエンドである、すなわちあるものを含むがそれに限定されるわけではないという意味であると理解すべきである。米国特許庁の特許審査便覧第2111.03節に記載のように、「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」という移行句だけは、それぞれ閉鎖系移行句または一部閉鎖系移行句であるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
本発明の非限定的な態様は、添付の図面を参照しつつ、実施例を利用して説明されるだろう。この図面は概略図であり、一定の比率に拡大して描かれることを意図するものではない。この図面においては、単一の数詞によって図示されたそれぞれの同一のまたはほぼ同一の構成要素は、典型的な代表例である。当業者に本発明を理解させるために図解が必要ではない場合、明確さのために、それぞれの図中のすべての構成要素を標識したわけではなく、本発明のそれぞれの態様のすべての構成要素を示したわけでもない。本図面において、
【図1】図1は本発明の一例の方法を図示し、
【図2】図2A〜2Cは、細胞溶解物内のタンパク質に結合させるために用いる本発明の態様を図示し、
【図3−1】図3A〜3Dは、単一のタンパク質を質量分析法を用いて測定する場合の本発明の態様を図示し、
【図3−2】図3A〜3Dは、単一のタンパク質を質量分析法を用いて測定する場合の本発明の態様を図示し、
【図4】図4A〜4Bは、タンパク質の断片を質量分析法を用いて測定する場合の本発明の態様を図示し、
【図5】図5A〜5Bは、タンパク質−タンパク質間の相互作用を質量分析法を用いて測定する場合の本発明の態様を図示し、
【図6】図6A〜6Bは、自己組織化膜をマイクロアレイ内の担体上に配置する場合の本発明の態様を図示し、
【図7】図7A〜7Bは、本発明の特定の態様に有用な自己組織化膜を図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体に結合すると推測される化学種を、質量分析法を用いて測定する工程であって、該担体は、該担体に結合した実体のアレイを有し、ここで該種は、少なくとも一つの実体と結合する能力があると推測される化学種である、工程、を包含する、方法。
【請求項2】
前記測定する工程が、MALDI質量分析法を用いて前記化学種を測定する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定する工程が、MALDI−TOF質量分析法を用いて前記化学種を測定する工程を包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記測定する工程が、第一の質量分析技術と第二の質量分析技術を用いて前記化学種を測定する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記化学種が低分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記低分子は、低分子ライブラリーから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記化学種はタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記測定する工程は、タンパク質の一次配列の少なくとも一部を測定する工程を包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記化学種は、物質の混合物の一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記混合物は、細胞溶解物を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記担体は、マイクロアレイを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記担体は、タンパク質アレイを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記担体は、低分子アレイを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記担体は自己組織化膜を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記担体は金表面を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記実体は細胞溶解物に起因する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記実体は担体に付着している、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記実体はタンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記実体は低分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記化学種は、少なくとも一つの実体に特異的に結合する能力を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記実体は抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記測定する工程は前記化学種の存在を測定する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
それぞれの実体が、質量分析法により個々にアドレス指定することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
以下:
担体を提供する工程であって、該担体は、該担体に結合する実体のアレイを有する、工程、
化学種を少なくとも一つの実体に結合させる工程、および
担体を実質的に脱塩することなく、質量分析を該担体に適用する工程、
を包含する、方法。
【請求項25】
前記化学種はタンパク質を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記担体はマイクロアレイを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記担体はタンパク質アレイを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記担体は低分子アレイを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記担体上の実体の少なくとも一つのアレイに結合した化学種であって、ここで該実体に結合したその化学種は、質量分析法を用いて検出できる、化学種、
を含む、物品。
【請求項30】
前記化学種はタンパク質を含む、請求項29に記載の物品。
【請求項31】
前記担体はマイクロアレイを含む、請求項29に記載の物品。
【請求項32】
前記担体はタンパク質アレイを含む、請求項29に記載の物品。
【請求項33】
前記担体は低分子アレイを含む、請求項29に記載の物品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質を含むサンプルを担体に曝す工程;
該タンパク質を該担体に固定された状態にする工程;
該担体に対して固定されたタンパク質を、イオン化断片を生成するために質量分析イオン化条件に曝す工程;
該イオン化断片の正体の解析によって、該タンパク質の正体を測定する工程、
を包含する、質量分析のための方法。
【請求項2】
前記サンプルは、タンパク質の混合物を含み、前記方法は、前記曝す工程および測定する工程の前に、以下の工程:
タンパク質の混合物を含む該サンプルを、担体に曝す工程;
該少なくとも1つのタンパク質を、該担体に対して固定された状態にする工程;および
全ての結合していないタンパク質を該担体から除去する工程、
を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記曝す工程は、MALDI質量分析法を用いて、前記固定されたタンパク質を質量分析イオン化条件に曝す工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記曝す工程は、MALDI TOF質量分析法を用いて、前記固定されたタンパク質を質量分析イオン化条件に曝す工程を包含する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記測定する工程は、第一の質量分析技術と第二の質量分析技術を用いて前記化学種を測定する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記測定する工程は、タンパク質の一次配列の少なくとも一部を測定する工程を包含する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記タンパク質は、物質の混合物の一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記混合物は、細胞溶解物を含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記担体は、マイクロアレイを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記担体は、タンパク質アレイを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記担体は自己組織化膜を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記担体は金表面を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記タンパク質種は、前記担体に結合した実体に特異的に結合する能力を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記実体は抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
それぞれの実体が、質量分析法により個々にアドレス指定することができる、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−521567(P2006−521567A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509366(P2006−509366)
【出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/009376
【国際公開番号】WO2004/088325
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(592257310)プレジデント・アンド・フェロウズ・オブ・ハーバード・カレッジ (31)
【Fターム(参考)】