説明

質量分析用のイオン源

イオン源、イオンを形成する方法、および質量分析計システムが提供される。本教示はさまざまな実施例において、イオン源、イオン源からイオンを集束させる方法、および飛行時間型質量分析計を操作する方法を提供する。本教示はさまざまな実施例において、質量分析計とともに使用する場合の、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)イオン源およびMALDIイオン源の操作方法に関連する。さまざまな側面において、複数の操作モードが構成されるTOF質量分析計の感度と分解能のうち1つ以上の向上を促進するイオン源およびその操作方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、米国仮出願第60/651,567号(2005年2月9日出願)および米国特許出願第11/129,658号(2005年5月13日出願)の利益および優先権を主張し、これら出願の全開示は、参照により本明細書に引用される。
【背景技術】
【0002】
(導入)
マトリックス支援レーザー脱離イオン化(Matrix−Assisted Laser Desorption/Ionization:MALDI)技術の開発は、質量分析計によって研究できる生体分子の範囲を大きく広げた。MALDI技術によって、通常、不揮発性分子をイオン化させて、分析に好適な、気相状態にある完全な分子イオンを生成することができる。MALDI機器のうちの1つの種類(生体分子の研究において特定の用途が見出されている)には、MALDIタンデム飛行時間型質量分析装置があり、以降、MALDI−TOF MS/MS機器と称する。
【0003】
従来のタンデム質量分析機器(MS/MS)では、直列の多重質量分離器を使用している。MS/MS機器を使用して、例えばタンパク質の配列のような構造的情報を特定することができる。従来のMS/MS技術では、第一の質量分離器(しばしば質量分析の第一の次元と称する)を使用して、選択された質量電荷(m/z)範囲にある分子イオン(しばしば「親イオン」または「前駆イオン」と称する)をイオンフラグメンター(例、衝突セル、光解離領域など)に送ってフラグメントイオン(しばしば「娘イオン」と称する)を生成し、第二の質量分離器(しばしば質量分析の第二の次元と称する)を使用してそれらの質量スペクトルを得る。
【0004】
飛行時間型(Time−Of−Flight:TOF)質量分析装置は、イオンの電荷に対するイオンの質量の割合に基づいてイオンを識別し、しばしばm/zと略記される。従来のTOF技術は、異なる質量電荷比(m/z)のイオンは、それらが全て同じ電場に曝されると、異なる速度に達するという事実に依存しており、その結果、イオンが検出器に到達する時間(イオン到着時間または飛行時間と呼ばれる)は、イオン質量を代表するものとなる。理論的には、所与の質量電荷比の各イオンは、一意の到着時間を有するはずである。その結果、質量が異なるイオンの混合物は、それぞれが異なるイオン質量に対応する到着時間信号のスペクトルを生成するはずである。当該のスペクトルは、一般的に到着時間スペクトル、または単純に質量スペクトルと称される。しかし、実用上は、正確な結果を得ることは容易ではなく、分析に要求される正確さが増すほど、そのタスクがより困難になる。
【0005】
MALDI質量分析装置の複数の操作構成(生体分子の研究において特定の用途が見出されている)には、線形飛行時間型(「TOF」)質量分析装置、リフレクトロンTOF質量分析装置、およびタンデムTOF質量分析装置があり、以降、MS/MS TOF機器と称するこれらの構成のそれぞれには、例えば、対象となる生体分子、研究の内容などに依存して、それ自体の利点と不利点がある。したがって、調査者がある操作モード(例、線形TOF、リフレクトロンTOF、およびMS/MS TOF)から別のモードに切り替えることができるように構成された市販の機器が存在する。
【0006】
操作モードを切り替えることができる機器が存在するが、ある操作モード(例、線形TOF、リフレクトロンTOF、およびMS/MS TOF)に良好な分解能および感度を提供する前記機器の構成および操作条件によって、他の操作モードに対する分解能および感度が著しく悪化する可能性がある。その結果、従来の機器では、しばしば、これら3つの操作モードのうちの少なくとも1つの解像度および/または感度を備え、3つ全てのモードにおいて許容可能な分解能および感度を有する機器を提供しなければならない。
【0007】
質量分析計を用いた多くの生体分子研究(例、プロテミオクス研究など)では、対象となる生体分子の質量が2桁以上にわたることが容易にありうる。加えて、多くの生物学的研究では、研究に利用可能な試料(例、希少タンパク質、法医学的試料、考古学的試料など)の量が制限される。
【0008】
タンデム質量分析計(MS/MS)では、一般的に、イオンがイオンフラグメンター、例えば衝突セルに入る前に、イオンの衝突エネルギーを制御することも望まれる。一般に、これは、TOF/TOFタンデム質量分析計において、最初に、第一のTOF領域(MSの第一の次元)から初期のエネルギーまでイオンを加速して、次に、衝突セルの入口での電位を調整してイオンを所望の衝突エネルギーとなるまで減速させることによって行われる。通常、衝突セルに従った第二のTOF領域への良好な集束を提供する、単一の衝突エネルギーに対するイオン光学システムの最適化は容易であるが、イオン伝送効率およびそれによる機器の感度を損なわずに、衝突エネルギーの範囲にわたって第二のTOF領域に良好な集束を提供する、イオン光学システムを提供することは極めて困難である。
【0009】
MALDI−TOF MS/MS機器はまた、有用な操作のための無数の構成要素の正確な調整および相互作用を必要とする、非常に複雑な機械にもなりうる。質量分析では、イオンの集束、加速、減速、操作、および選択のためのイオン光学を必要とする。これらのずれ、およびそれらの電場における不均一性は、質量分析機器の性能を著しく低下させる可能性がある。イオン光学素子は、互いに、また機器の他の構成要素に対して、X、Y、およびZ方向に正に配置される。配置されると、イオン光学素子の以降の動作が、機器の性能を著しく低下させる可能性がある。例えば、ある要素を、機器の調整後に移動した場合、その機器の質量精度、感度、および分解能に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0010】
従来のイオン光学スタック組立体では、可能な場合に治具を使用して、光学をねじ付き締結具で適所に固定した後に、イオン光学素子を配置していた。例えば、一連の光学要素を、組立治具を使用したり、自動調整機能を使用するなどして積層し、端板をスタックの端部を覆うようにボルトで固定し、前記ボルトを締め付けて光学要素を端版で圧迫してスタックを固定する。加えて、当該の従来の組立方法では、ボルトを特定のパターンおよび特定のトルクで締め付け、例えばワーピングせずに、イオン光学素子を適切に調整する組立者をしばしば必要とする。しかし、当該の手順は、時間がかかり、それを実行するための熟練した組立者が必要になる可能性がある。加えて、(例えば、感度を向上させるため、機器の大きさを減じるため、などで)機器の調整の許容範囲が狭くなると、次第に肉眼ではずれが認識できなくなり、熟練していない組立者によるずれの検出がより困難になる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(概要)
本教示は、MALDI−TOF機器、機器の構成要素、およびその操作方法に関する。さまざまな側面において、MALDI−TOF機器は、MS/MS機器の役目を果たし、動作することができる。さまざまな実施例において、感度の向上、分解能の向上、動的質量範囲の増加、試料支持部のスループットの向上、および操作の中断時間の低減のうちの1つ以上を促進する、MALDI−TOF機器、およびMALDI−TOF機器の1つ以上の構成要素を操作する方法が提供される。
【0012】
さまざまな側面において、本教示は、試料イオンを提供するためのシステム、試料イオンを提供するための方法、試料支持部処理機構、イオン源、遅延引き出しイオン源からのイオンを集束させるための方法、飛行時間型質量分析計を操作するための方法を提供する。
【0013】
さまざまな側面において、本教示は、試料イオンを提供するためのシステム、試料イオンを提供するための方法、試料支持部処理機構、イオン源、遅延引き出しイオン源からのイオンを集束させるための方法、飛行時間型質量分析計を操作するための方法、イオンフラグメンターに対するイオンを集束させるための方法、イオン光学組立部を操作するための方法、イオン光学組立部、および本教示のイオンの光学的要素を取り付けおよび調整するための方法、のうちの1つ以上を備える質量分析計を提供する。
【0014】
(試料処理機構)
さまざまな側面において、本教示は、質量分析計のための試料支持部処理機構に関する。さまざまな実施例において、試料支持部は、プレート(例、3.4インチ×5インチ)、マイクロタイターサイズのMALDIプレートなどを備える。本教示の試料支持部処理機構は、試料支持部移動機構部と、試料支持部変更機構部とを備え、試料支持部処理機構は、真空密閉チャンバー内に配置される。
【0015】
さまざまな実施例において、試料支持部移動機構は、実質的に平坦な前面と、左アームと、右アームとを有する基礎部材を備え、これらのアームは、前記前面に実質的に垂直に、前記前面からX方向に延在し、前記前面に実質的に平行に、互いにY方向に隔設され、その距離は、それらの間に試料支持部を収めるに十分である。左アームおよび右アームは、それぞれベアリング支持部構造を有する。さまざまな実施例において、左アームおよび右アームのそれぞれは、両アーム間の距離よりも短い距離で、他方のアームに向かってY方向に延在する保持突起部を有する。
【0016】
さまざまな実施例において、試料支持部は、フレーム部材内に保持される。本教示では、詳細な処理(例、取り込み、係合、解放など)および試料支持部のレジストレーションは、フレーム部材に保持される試料支持部に等しく適用可能であり、例えば、試料移動および変更機構のさまざまな構造が、フレーム部材と直接接触し、そこに保持される試料支持部と必ずしも直接接触するわけではない、ということを理解されたい。
【0017】
さまざまな実施例において、試料支持部は、米国特許第6,844,545号および第6,825,478号(これらの内容は参照することにより全て本願明細書に組み込まれる)に記載されているようなフレーム上に保持される。さまざまな実施例において、フレーム部材は、周辺陵部を有し、これは、例えば、本教示の試料変更機構の取り込み機構の周辺の少なくとも一部を係合(例、スリップオーバー)して、例えば、変更機構の非装着領域における試料支持部の保持を促進することができる。
【0018】
試料支持部移動機構は、左アームと右アームとの間に位置する係合部材をさらに備え、第一の位置では、係合部材は、基礎部材の前面によって試料支持部の前面をレジストレーションに付勢し、試料支持部の前面をZ方向(Z方向は、実質的にXおよびY方向の両方に対して垂直である)におけるレジストレーションに付勢するように構成され、左右のベアリング支持部構造は、第一の位置において、試料支持部の後端をZ方向におけるレジストレーションに付勢する。
【0019】
さまざまな実施例において、試料支持部移動機構は、左カム構造、右カム構造、および左右のカム構造の間に配置される中央カム構造の、3つのカム構造を備える。左および中央カム構造間が試料支持部装着領域であり、中央および右カム構造間が試料支持部非装着領域である。
【0020】
試料支持部装着領域は、係合部材を第二の位置に付勢することができる第一の解放部材と、試料支持部を前面および左アームに対して付勢することができるレジストレーション部材とを備える。左カム構造は、(a)左アームベアリング支持部構造を摺動可能に係合して、左アームベアリング支持部構造を第二の位置に付勢すること、および(b)レジストレーション部材を係合して、レジストレーション部材が前面および左アームに対して試料支持部を付勢させること、ができる。中央カム構造は、右アームベアリング支持部構造を摺動可能に係合して、右アームベアリング支持部構造を第二の位置に付勢することができるので、係合部材、左アームベアリング支持部構造、および右アームベアリング支持部構造が、それぞれの第二の位置にあるときに、試料支持部移動機構は、試料支持部移動機構の右および左アーム間に試料支持部を係合することができる。
【0021】
試料支持部非装着領域は、係合部材を第三の位置に付勢することができる第二の解放部材と、試料支持部移動機構から解放された後に、試料支持部非装着領域内に試料支持部を保持するように構成した試料支持部取り込み機構とを備える。中央カム構造は、左アームベアリング支持部構造を摺動可能に係合して、左アームベアリング支持部構造を第三の位置に付勢することができ、右カム構造は、右アームベアリング支持部構造を摺動可能に係合して、右アームベアリング支持部構造を第三の位置に付勢することができるので、係合部材、左アームベアリング支持部構造、および右アームベアリング支持部構造が、それぞれの第三の位置にあるときに、試料支持部移動機構は、試料支持部移動機構の右および左アーム間に試料支持部を係合することができる。
【0022】
さまざまな実施例において、試料移動処理機構の係合部材は、基礎部材に取り付けられたラッチを備える。さまざまな実施例では、ラッチは、第二の解放部材と接触し、試料支持部を試料支持部移動機構からゆっくりと解放することができる、ローラーを備える。
【0023】
さまざまな実施例では、試料支持部移動機構は、電気的導電面を有するフレームを備える。さまざまな実施例では、当該のフレームは、試料支持部の周縁部における、および/またはその近くでの電場線の不連続部の削減を促進する。
【0024】
さまざまな実施例では、試料支持部移動機構は、低真空領域(例、真空密閉チャンバー)から高真空領域(例、試料チャンバー)に試料支持部を移動させる。さまざまな実施例では、試料チャンバーは、圧力が約10−6トル以下になるように構成される。さまざまな実施例では、試料チャンバーは、圧力が約10−7トル以下になるように構成される。その点を考慮して、さまざまな実施例において、試料支持部移動機構は、真空適合材料で作成される。
【0025】
さまざまな実施例において、試料支持部処理機構は、以降のMALDIによるイオン発生に対する試料支持部の安定した位置決めの提供を促進する。さまざまな実施例において、試料支持部処理機構は、試料支持部が試料移動機構において、(a)Z方向において約±0.005インチ以内、(b)X方向において約±0.01インチ以内、(c)Y方向において約±0.01インチ以内、または(d)それらの組み合わせとなるような位置に配置されるように構成される。さまざまな実施例において、試料支持部処理機構は、試料支持部が試料移動機構において、(a)Z方向において約±0.002インチ以内、(b)X方向において約±0.005インチ以内、(c)Y方向において約±0.005インチ以内、または(d)それらの組み合わせとなるような位置に配置されるように構成される。
【0026】
さまざまな側面において、本教示は、真空密閉チャンバーと、真空密閉チャンバーに接続された試料チャンバーとを備える、試料イオンを提供するためのシステムを提供し、真空密閉チャンバーには、試料支持部変更機構が配置され、試料チャンバーには試料支持部移動機構が配置される。試料支持部移動機構は、試料支持部が、試料支持部移動機構内に配置されるように、試料支持部兼官機構の装着領域から試料支持部を引き出すように構成される。さまざまな実施例では、試料支持部は、Z方向において約±0.005インチ以内に、X方向において約±0.01インチ以内に、また、Y方向において約±0.01インチ以内に配置され、X、Y、およびZ方向は互いに直行する。さまざまな実施例では、試料支持部は、Z方向において約±0.002インチ以内に、X方向において約±0.005インチ以内に、また、Y方向において約±0.005インチ以内に配置され、X、Y、およびZ方向は互いに直行する。さまざまな実施例において、試料支持部は、試料支持部移動機構内のフレーム内に配置される。試料支持部移動機構はまた、試料支持部の表面の試料のレーザー照射によって試料イオンを発生させることができ、一方で、前記試料支持部が、試料支持部移動機構内に保持され、前記試料イオンが、試料支持部の表面に実質的に垂直な方向において質量分析システム内に引き出される位置に、試料支持部を移動させることができるように、多軸移動ステージ上に取り付けられる。さまざまな実施例において、Z方向は試料支持部の表面に実質的に垂直である。
【0027】
さまざまな実施例において、試料イオンは、レーザー照射と実質的に同軸である第一のイオン光軸に沿って、試料支持部の表面に実質的に垂直な方向に引き出される。例えば、さまざまな実施例において、試料イオンを提供するためのシステムは、試料イオンを発生する試料に衝突するレーザーエネルギーのパルスのポインティング(Poynting)ベクトルと実質的に同軸である方向に沿って、試料イオンが、試料チャンバーから引き出されるように構成される。さまざまな実施例において、第一のイオン光軸は、試料表面の法線から約5度以下である角度を形成する。さまざまな実施例において、第一のイオン光軸は、試料表面の法線から約1度以下である角度を形成する。
【0028】
さまざまな実施例において、フレーム部材は、少なくともイオン引き出し方向に面する表面上において、電気的導電面を有する。さまざまな実施例において、当該のフレームは、試料支持部の周縁部における、および/またはその近くでの電場線の不連続部の削減を促進する。
【0029】
さまざまな側面において、本教示は、質量分析のための試料イオンを提供するための方法を提供し、試料支持部の表面上に複数の試料を支持するステップと、試料支持部を装着するための領域と、試料支持部を脱着するための領域とを有する真空密閉チャンバーを提供するステップと、その中に配置される試料移動機構を有する試料チャンバーを提供するステップとを含む。本方法では、試料支持部が、試料支持部移動機構内に配置されるように、試料移動機構によって装着するための領域内に配置された試料支持部を引き出す。さまざまな実施例において、試料支持部は、試料支持部移動機構内のフレーム内に配置される。さまざまな実施例では、試料支持部は、Z方向において約±0.005インチ以内に、X方向において約±0.01インチ以内に、また、Y方向において約±0.01インチ以内に配置され、X、Y、およびZ方向は互いに直行し、Z方向は試料支持部の表面に実質的に垂直である。さまざまな実施例では、試料支持部は、Z方向において約±0.002インチ以内に、X方向において約±0.005インチ以内に、また、Y方向において約±0.005インチ以内に配置され、X、Y、およびZ方向は互いに直行する。試料支持部は、試料チャンバー内の第一の位置の位置に平行移動され、ここでは、試料支持部上の第一の試料にエネルギーパルスが照射され、第一群の試料イオンを形成し、試料支持部は、試料移動機構によって保持され、第一群の試料イオンの少なくとも一部が、Z方向に引き出される。次いで、試料支持部は、試料チャンバー内の第二の位置の位置に平行移動され、ここでは、試料支持部上の第二の試料にエネルギーパルスが照射され、第二群の試料イオンを形成し、試料支持部は、試料移動機構によって保持され、第二群の試料イオンの少なくとも一部が、Z方向に引き出される。試料支持部を脱着するための領域内の試料支持部移動機構によって試料支持部を配置する前に、更なる試料を試料支持部上で分析することができる。本方法では、試料支持部を引き出すステップに続けて、少なくとも2つの試料に対する平行移動、照射、および引き出しのステップを繰り返し行う。
【0030】
さまざまな実施例では、エネルギーパルスを試料に照射するステップのうちの少なくとも1つは、試料支持部の表面の法線の5度以下の照射角度で試料に照射して、マトリックス支援レーザー脱離イオン化によって試料イオンを形成するステップを含む。さまざまな実施例では、エネルギーパルスを試料に照射するステップのうちの少なくとも1つは、試料支持部の表面の法線の1度以下の照射角度で試料に照射して、マトリックス支援レーザー脱離イオン化によって試料イオンを形成するステップを含む。
【0031】
さまざまな実施例では、試料イオンの少なくとも一部を引き出すステップのうちの少なくとも1つは、第一のイオン光軸に沿って、Z方向に試料イオンを引き出すステップを含み、第一のイオン光軸は、エネルギーパルスと実質的に同軸である。
【0032】
イオン源)
さまざまな側面において、本教示は、TOF機器のためのイオン源およびその操作方法に関する。さまざまな実施例において、本教示は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)イオン源および質量分析計とともに使用するための、MALDIイオン源の操作方法に関する。さまざまな側面において、多重モードの操作に対して構成されたTOF質量分析計の感度および分解能のうちの1つ以上の向上を促進する、イオン源およびその操作方法が提供される。
【0033】
汎用MALDI TOF質量分析装置では、異なる操作方法(すなわち、MS/MSのための線形、反射器(イオンミラー)、および前駆(親イオン)の選択)に対して、最適な分解能が得られるように、イオン源の速度空間集束面の位置を変更することが望ましい。遅延引き出しを用いた2ステージワイリーマクラレン(Wiley McLaren)型供給源は、あらゆる操作モードに対して理想的な集束を提供するように構成することができる。しかし、他の部分の性能を落とさずに、1つ以上の操作モードにおいて最適化された性能を提供する単一のジオメトリをデザインすることはより困難である。特に、MS/MSのためのタイムドイオンセレクションに求められるような、表面付近の焦点面に対する供給源を最適化するために、(x,yにおける)ビームの空間的集束は、イオンビームの多数の部分が限界口径を通して送られなくなる点まで低下され、したがって、機器の感度の実質的な損失が観測される。本教示は、さまざまな実施例において、従来の2ステージイオン源と比較して、調整可能な速度空間集束面を可能とし、x,y空間的焦点特性が改善された、斬新な3ステージイオン源を提供する。さまざまな実施例において、イオン源は、半径方向の空間的集束を実質的に低下させずに、初期のイオン速度によるイオン到着時間の広がりの補償を促進する。
【0034】
当業者は、用語「速度空間焦点」および「x,y空間的焦点」を使用して本願明細書に記載された概念が、異なる用語を使用して記述される可能性があることを認識されよう。遅延引き出し使用して、異なる初期速度だが同じm/z値で、実質的に同時に特定の面にイオンを導くことができるが、このプロセスは、従来技術では、「時間集束」および「空間的集束」、「速度集束」および「タイムラグ集束」を含む、さまざまな用語で称されている。加えて、例えば、用語「空間集束」、「空間集束面」、「空間焦点面」、「時間集束」、「速度集束」、および「時間集束面」は、従来技術において全て使用されており、本願明細書において速度空間集束面と称されるもののうちの1つ以上を指す。不都合にも、用語「時間集束」、「時間的集束」、「空間集束」、「空間集束面」、「空間焦点面」、「時間集束」、および「時間集束面」もまた、従来技術の飛行時間型質量分析装置で使用され、遅延引き出しを使用したイオン源の速度空間集束とは根本的に異なるプロセスを描写している。x,y空間的集束は、その主たる伝搬方向(z)に垂直な方向において、イオンビームの直径を狭めることができるので、このプロセスはまた、従来技術において、用語「半径方向の集束」とも称される。しかし、用語「空間的集束」および「半径方向の集束」はまた、従来技術の飛行時間型質量分析装置においても使用され、本教示のx,y空間的集束とは根本的に異なるプロセスを描写している。したがって、質量分析技術に見出される用語の複雑な語法を鑑みて、本願明細書で使用される用語「速度空間集束」および「x,y空間的集束」は、単に説明における簡潔さ、および一貫性に対して選択したものであり、本教示の内容をいかなる形であれ記述された内容に制限するものと解釈すべきではない。
【0035】
さまざまな側面において、本教示の3ステージイオン源は、試料表面を有する試料支持部から間隔を隔てた第一の電極と、試料支持部に対向する方向に第一の電極から間隔を隔てた第二の電極と、第一の電極に対向する方向に第二の電極から間隔を隔てた第三の電極とを備える。試料支持部、第一、第二、および第三の電極は、電源に電気的に連結され、(a)第一の電位を試料表面に付加し、第二の電位を第一の電極および第二の電極のうちの少なくとも1つに付加して、実質的に試料表面にエネルギーパルスを衝突させて試料イオンを形成する前に、第一の所定時間で非引き出し電場を構築し、前記非引き出し電場は、実質的に試料イオンを試料表面から離れる方向に加速しない、(b)試料表面および第一の電極のうちの少なくとも1つの電位を変化させて、第一の所定時間後の第二の所定時間で第一の引き出し電場を構築し、前記引き出し電場は、試料表面から離れる方向に試料イオンを加速する、および(c)第三の電位を第二の電極に付加して、第一の方向に実質的に垂直な方向にイオンを集束させるような状態になるように構成される。
【0036】
さまざまな実施例において、非引き出し電場は、試料表面から離れる方向において試料イオンの動作を遅延させる遅延電場とすることができる。さまざまな実施例において、非引き出し電場は、実質的にゼロ電場とすることができ、例えば、実質的に電気的フィールドフリー領域が構築される。実質的にゼロ電場は、例えば、第一の電位および第二の電位が実質的に等しいときに構築することができる。
【0037】
さまざまな実施例において、第一の方向は、エネルギーパルスと実質的に同軸である。例えば、さまざまな実施例において、試料イオンは、試料イオンを発生する試料に衝突するレーザーエネルギーのパルスのポインティング(Poynting)ベクトルと実質的に同軸である方向に沿って引き出される。さまざまな実施例において、第一の方向は、試料表面の法線から約5度以下である角度を形成する。さまざまな実施例において、第一の方向は、試料表面の法線から約1度以下である角度を形成する。
【0038】
試料支持部と、試料表面から間隔を隔てて試料イオンを加速する第一の電極との間の電位差の付加は、レーザーエネルギーのパルスを発生させた後の所定時間だけ遅らせて、例えば遅延引き出しを行うことができる。いくつかの実施例では、例えば、米国特許第5,625,184号(1995年5月19日出願、1997年4月29日発行)、米国特許第5,627,369号(1995年6月7日出願、1997年5月6日発行)、米国特許第6,002,127号(1998年4月10日出願、1999年12月14日発行)、米国特許第6,541,765号(1998年5月29日出願、2003年4月1日発行)、米国特許第6,057,543号(1999年7月13日出願、2000年5月2日発行)、米国特許第6,281,493号(2000年3月16日出願、2001年8月28日発行)、および米国特許第10/308,889号(2002年12月3日出願)などの米国特許に記載されているように、遅延引き出しを行ってタイムラグ集束を提供し、初期の試料イオン速度の分布を補正する。これらの内容は参照することにより全て本願明細書に組み込まれる。他の実施例では、例えば、W.C.WileyおよびI.H.McLarenの「Time−of−Flight Mass Spectrometer with Improved Resolution」(Review of Scientific Instruments、Vol.26、No.12、1150〜1157ページ、1955年12月)に記載されているように、引き出しを行って、初期の試料イオンの空間分布を補正することができ、これらの内容は参照することにより全て本願明細書に組み込まれる。
【0039】
操作のさまざまな実施例において、ある照射角度でレーザーエネルギーのパルスを試料に照射して、MALDIによって試料イオンを生成する。以前の試料イオンの引き出し後、および試料へのレーザーエネルギーのパルスの照射中に、電源は第一の電位を試料支持部に付加し、第二の電位を第一の電極および第二の電極のうちの少なくとも1つに付加して、エネルギーパルスの発生に対する第一の所定時間で第一の電場を構築し、第一の電場は、試料支持部から離れる方向に試料イオンを加速しない。いくつかの実施例では、第一の電位は、正の試料イオンを測定したときに、第二の電位よりも負であり、第一の電位は、負の試料イオンを測定したときに、第二の電位よりも負であり、それによって、試料イオンの引き出し前に遅延電場を生成する。さまざまな実施例において、第一の電場は、実質的にゼロ電場とすることができ、例えば、実質的に電気的フィールドフリー領域が構築される。実質的にゼロ電場は、例えば、第一の電位および第二の電位が実質的に等しいときに構築することができる。
【0040】
さまざまな実施例において、レーザーエネルギーのパルスの発生後の第二所定時間で、電源は、試料支持部および第一の電極のうちの少なくとも1つの電位を変化させて、試料支持部から間隔を隔てて試料イオンを加速して試料イオンを引き出し、第三の電位を第二の電極に付加してx,y空間的集束を提供する、第二の電場を構築する。
【0041】
多種多様な構造を使用して、電位を発生させるタイミングを制御することができる。例えば、光検出器を使用して、レーザーエネルギーのパルスを検出して、エネルギーパルスに同期させた電気信号を発生させることができる。同期させた信号に対応する入力を有する遅延発生器を使用して、電源がさまざまな電位を起動してアプリケーションを制御するための、同期させた信号に対して所定時間だけ遅延させた、出力電気信号を提供することができる。
【0042】
さまざまな実施例において、本教示の3ステージイオン源は、試料表面の実質的に法線方向に試料イオンを引き出すように構成され、試料表面に実質的に法線の角度で、試料支持部の試料表面上の試料にレーザーエネルギーのパルスを照射するように構成された光学システムを含む。さまざまな実施例において、第一の電極および第二の電極は、それぞれ開口を有する。いくつかの実施例において、第一および第二の電極は、第一のイオン光軸(第一の電極の開口の中心と第二の電極の開口の中心との間の線によって確定される)が、試料表面に実質的に法線の角度で、試料表面と交差するように配置される。さまざまな実施例において、光学システムは、レーザーエネルギーのパルスをイオン光軸と実質的に同軸に調整するように構成される。
【0043】
さまざまな側面において、イオンビーム経路内の電極への材料の付着の低減を促進する、3ステージイオン源が提供される。イオンビーム経路内の電極への材料の付着を低減することによって、例えば、質量分析計の感度、分解能、またはその両方の向上を促進し、質量分析計の操作の中断時間の減少を促進することができる。
【0044】
一側面において、イオン源の要素のうちの1つ以上が加熱システムに接続され、温度制御された表面が、3ステージイオン源の少なくとも一部の実質的に周囲に配置された、3ステージイオン源を提供することができる。好適な加熱システムは、これに限定されないが、電気抵抗加熱器および放射加熱器を含む。いくつかの実施例において、加熱システムは、イオン源内の要素のうちの1つ以上の温度を、マトリックス材を脱着させるに十分な温度に上昇させることができる。さまざまな実施例において、加熱システムは、イオン源内の要素のうちの1つ以上を、約70℃を超える温度に加熱することができる加熱器を含む。
【0045】
温度制御された表面の温度は、例えば加熱および冷却ユニットによって動的に制御するか、または、例えば温度制御された表面の熱的な質量、温度制御された表面が放熱板と熱的に接触するような配置、またはそれらの組み合わせによって静的に制御することができる。
【0046】
他のさまざまな側面において、質量分析のための試料イオンを提供する3ステージイオン源および方法が提供される。さまざまな実施例において、本イオン源および方法は、これに限定されないが、多次元質量分析装置を含む、飛行時間型質量分析装置によって、質量分析のための試料イオンの提供に好適である。好適な飛行時間型質量分析システムおよび方法は、例えば、米国特許第6,348,688号(1999年1月19日出願、2002年2月19日発行)、米国特許出願第10/023,203号(2001年12月17日出願)、米国特許出願第10/198,371号(2002年7月18日出願)、および米国特許出願第10/327,971号(2002年12月20日出願)に記載されており、これらの内容は参照することにより全て本願明細書に組み込まれる。
【0047】
さまざまな側面において、本教示は、イオン源からイオンを集束させる方法を提供する。さまざまな実施例において、イオン源は、遅延引き出しイオン源を備える。さまざまな実施例において、本方法では、試料支持部、試料支持部から間隔を隔てた第一の電極と、試料支持部ホルダーに対向する方向に第一の電極から間隔を隔てた第二の電極と、第一の電極に対向する方向に第二の電極から間隔を隔てた第三の電極とを有する、イオン源からのイオンを集束させる。イオン化のための試料は、試料支持部の試料表面上に配置され、イオンのエネルギーは、試料表面と第三の電極との間の電位差によって構築される。さまざまな実施例において、イオンは、試料表面と第一の電極との間の電位差の付加によって、Z方向におけるイオン源の時間集束面の位置を選択することによって集束され、この電位差は、第一の電位を試料表面に付加し、第二の電位を第一の電極に付加すること、および第三の電位を第二の電極に付加することによって、Z方向に実質的に垂直な方向における集束イオンによって構築される。
【0048】
さまざまな側面において、本教示は、2つ以上の操作モードと、イオン源とを有する飛行時間(Time−Of−Flight:TOF)型質量分析計の操作方法を提供する。操作モードの例には、これに限定されないが、線形TOF、リフレクトロンTOF、およびMS/MS TOFが挙げられる。さまざまな実施例において、イオン源は、試料支持部、試料支持部から間隔を隔てた第一の電極と、試料支持部ホルダーに対向する方向に第一の電極から間隔を隔てた第二の電極と、第一の電極に対向する方向に第二の電極から間隔を隔てた第三の電極とを有する。
【0049】
さまざまな実施例において、2つ以上の操作モードを有するTOF質量分析計の操作方法は、(a)試料表面と第三の電極との間の電位差を選択することによってイオンエネルギーを構築するステップと、(b)第一の操作モードに対して、第一の電位を試料表面に付加し、第二の電位を第一の電極に付加することによって、Z方向における時間集束面の位置を選択ステップと、(c)第一の操作モードに対して、第三の電位を第二の電極に付加することによって、Z方向に実質的に垂直な方向にイオンを集束させるステップとを含む。さまざまな実施例において、本方法は、(d)飛行時間型質量分析計の操作モードを第二の操作モードに変更するステップと、(e)第二の操作モードに対して、第一の電極に付加される電位を変化させることによって、Z方向における時間集束面のを選択するステップと、(f)第二の操作モードに対して、第二の電極に付加される電位を変化させることによって、Z方向に実質的に垂直な方向にイオンを集束させるステップとをさらに含む。さまざまな実施例において、時間集束面とは、遅延引き出しイオン源の時間集束面である。
【0050】
2つ以上の操作モード、またはそれらの組み合わせを有する飛行時間型質量分析計を操作する、イオン源からのイオンを集束させるさまざまな実施例において、試料イオンは、試料にレーザーエネルギーのパルスを照射することによって生成され、その照射角度は、試料表面の実質的に法線である。いくつかの実施例では、そのように生成された試料イオンは、試料表面の実質的に法線である引き出し方向に引き出され、レーザーエネルギーのパルスは、引き出し方向と実質的に一致する。さまざまな実施例において、試料イオンは、試料にレーザーエネルギーのパルスを照射することによって生成され、試料表面と交差するエネルギーパルスのポインティングベクトルは、イオン引き出し方向と実質的に同軸である。例えば、さまざまな実施例において、試料イオンは、試料表面に実質的に法線方向に第一のイオン光軸に沿って引き出され、エネルギーパルスは、第一のイオン光軸と実質的に一致する。
【0051】
例えば、さまざまな実施例において、本方法は、試料支持部表面の法線の1度以下で試料表面上の試料にエネルギーパルスを照射して、マトリックス支援レーザー脱離イオン化によって試料イオンを形成するステップと、試料支持部表面と第一の電極との間の電位差を所定の時間付加することによって、試料支持部表面に実質的に法線方向に、第一のイオン光軸に沿って試料イオンを引き出すステップとを含む。さまざまな実施例において、第一のイオン光軸は、エネルギーパルスと実質的に同軸である。
【0052】
イオン光学)
さまざまな側面において、本教示は、イオンフラグメンターに対するイオンを集束させる方法、およびイオンフラグメンターを備えたイオン光学組立部の操作方法を提供する。さまざまな実施例において、本教示は、広範囲の衝突エネルギーにわたって入射イオンビームの焦点の位置を実質的に保持し、それによって広範囲のエネルギーにわたって衝突セルに平行イオンビームを供給する方法を提供する。さまざまな実施例において、本教示は、広範囲の衝突エネルギーにわたるイオンの伝送損を減少させる方法を提供する。
【0053】
さまざまな側面において、本方法のイオン光学組立部は、減速レンズと衝突セルへの入口との間に配置された第一のイオンレンズを備える。さまざまな実施例において、減速レンズおよび第一のイオンレンズは、複数の要素を備え、要素を共有することができる。例えば、さまざまな実施例において、減速レンズは、第一の電極と、第二の電極と、第三の電極とを備え、第一のイオンレンズは、第三の電極と、第四の電極と、第五の電極とを備える。さまざまな実施例において、試料イオンは、第三の電極と第四の電極との間の焦点に集束され、焦点の後ろ、かつ衝突セルへの入口の前に、実質的に平行なイオンビームを形成する。
【0054】
さまざまな側面において、本教示は、減速レンズと衝突セルへの入口との間に配置された第一のイオンレンズを備える、イオン光学組立部を操作するための方法を提供し、減速レンズへの位置口から距離F離れ、衝突セル内の中性ガスに対する試料イオンの第一の衝突エネルギーで、試料イオンの実質的に平行なイオンビームを形成する第一のイオンレンズ内の焦点で、試料イオンを集束させるステップと、遅延イオンレンズへの電位を実質的に保持し、第一のイオンレンズ上の電位を変化させることによって、第一の衝突エネルギーとは異なる衝突エネルギーに対して、実質的に距離Fにおける焦点を保持するステップとを含む。
【0055】
さまざまな側面において、本教示は、イオンフラグメンターに対するイオンを集束させるための方法を提供し、イオン光学組立部を使用した前記方法は、減速レンズとイオンフラグメンターへの入口との間に配置された第一のイオンレンズを備える。さまざまな実施例において、本方法は、減速レンズに減速電位を付加し、減速レンズと第一のイオンレンズとの間に加速電位差を付加し、第一のイオンレンズと衝突セルへの入口との間に減速電位差を付加する。さまざまな実施例において、試料イオンは、第一のイオンレンズ内の焦点に実質的に集束され、例えば、焦点の後ろ、かつ衝突セルへの入口の前に、実質的に平行なイオンビームを形成する。さまざまな実施例において、この焦点の位置は、減速レンズと第一のイオンレンズとの間の加速電位差を変化させて、減速レンズに付加された加速電位を実質的に保持することによって、異なる衝突エネルギーに対して保持される。
【0056】
さまざまな実施例において、減速レンズと衝突セルへの入口との間に配置された第一のイオンレンズを備える、イオン光学組立部を操作するための本教示の方法は、(a)第一の衝突エネルギーで、第一のイオンレンズ内の焦点に試料イオンを実質的に集束させ、第一のイオンレンズ内の焦点の後ろ、かつ衝突セルへの入口の前に、試料イオンの実質的に平行なイオンビームを形成するステップを含み、このステップは、(i)第一の電位を減速レンズの電極に付加することによって、減速レンズに入る試料イオンに対する減速電場を構築するステップと、(ii)第二の電位を第一のイオンレンズの電極に付加することによって、減速レンズと第一のイオンレンズとの間に加速電場を構築して、減速レンズから第一のイオンレンズ内へ試料イオンを加速するステップと、(iii)第三の電位を衝突セルへの入口に付加することによって、第一のイオンレンズと衝突セルへの入口との間に減速電場を構築して、第一のイオンレンズからの試料イオンを減速するステップとによってなされる。本方法は、(b)第一の衝突エネルギーとは異なる第二の衝突エネルギーに、第一の衝突エネルギーを変化させるステップによって進行する。本方法のための試料イオンは、次いで、(c)第二の衝突エネルギーで、第一のイオンレンズ内の焦点に試料イオンを実質的に集束させ、第一のイオンレンズ内の焦点の後ろ、かつ衝突セルへの入口の前に、試料イオンの実質的に平行なイオンビームを形成するステップを含み、このステップは、(i)第四の電位を減速レンズの電極に付加することによって、減速電場を構築して、減速レンズに入る試料イオンを減速し、前記第四の電位は、実質的に第一の電位に等しいステップと、(ii)第五の電位を第一のイオンレンズの電極に付加することによって、減速レンズと第一のイオンレンズとの間に加速電場を構築して、減速レンズから第一のイオンレンズ内へ試料イオンを加速するステップと、(iii)第六の電位を衝突セルへの入口に付加することによって、第一のイオンレンズと衝突セルへの入口との間に減速電場を構築して、第一のイオンレンズからの試料イオンを減速するステップとによってなされる。
【0057】
さまざまな実施例において、試料イオンは、減速レンズへの入口から距離F離れた焦点に実質的に集束される。さまざまな実施例において、第一の衝突エネルギーと第二の衝突エネルギーとの間の差が、約5000電子ボルト未満である場合、距離Fは、(a)約±4%未満、(b)約±2%未満、および/または(c)約±1%未満で変動する。さまざまな実施例において、第四の電位は、第一の電位の約±5%以下の範囲内である。例えば、さまざまな実施例において、第四の電位は、第一の電位の約±2.5%以下の範囲内である。
【0058】
イオン光学組立部)
さまざまな側面において、本教示は、イオン光学素子の調整を容易にする機能を有するイオン光学組立部を提供する。さまざまな実施例において、前面部材と取り付け本体の前側との間に配置された第一の複数のイオン光学素子を備える、イオン光学組立体が提供される。前面部材は、少なくとも1つの取り付け部材によって取り付け本体に取り付けられ、前面部材は、前面固定部材のねじ付き表面を受けるように構成されたねじ付き開口部を有する。前面部材のねじ付き開口部は、前面固定部材のねじ付き表面が、前面部材のねじ付き開口部内に係合されたときに、前面固定部材の接触面が、第一の複数のイオン光学素子と接触して、第一の複数のイオン光学素子に対して圧縮力を付加できるように構成される。第一の複数のイオン光学素子のそれぞれは、補助的レジストレーション構造を受けるように構成された凹構造と、前部固定部材によって圧縮力が付加されて、レジストレーション構造が補助的凹構造内に配置されたときに、他の第一の複数のイオン光学素子のうちの少なくとも1つに対して、第一の複数のイオン光学素子を調整するレジストレーション構造とを有する。
【0059】
さまざまな実施例において、本教示に記載されているように、固定部材によるイオン光学素子の圧縮によるそれらの調整は、イオン光学素子の調整および組立てを簡素化することができる。本教示において、イオン光学素子の圧縮および調整には、トルクパターンが不要である。さまざまな実施例において、固定部材は、イオン光学部材を適所に固定することができるので、輸送のためにイオン光学組立部を固定する更なる部品を必要としない。
【0060】
さまざまな側面において、本教示は、それらの調整を促進するイオンの光学的要素を取り付けおよび調整するためのシステムを提供する。さまざまな実施例において、基礎の取り付け表面から突出する複数対の突出部を有する取り付け基部と、突出部の各対に関連付けられた1つ以上の取り付け構造とを備える。少なくとも1つの電気的接続要素は、突出部の各対に関連付けられ、接続要素は、背面から取り付け表面まで取り付け基礎を貫通する。本システムは、2つ以上のイオンの光学的要素支持部をさらに備え、各イオンの光学的要素支持部は、複数対の凹部のうちの1つ以上を受けるように構成された1対の凹部を有する。凹部は、イオンの光学的要素支持部の一対の凹部が、(1対の突出部に関連付けられた1つ以上の取り付け構造を使用して、イオンの光学的要素を取り付け基礎に取り付けることによって)対応する1対の突出部によってレジストレーションに導かれるときに、支持部内のイオンの光学的要素は、そのように取り付けられた別のイオンの光学的要素によって実質的に調整され、前記イオンの光学的要素上の電気的接続は、対応する電気的接続要素に隣接する。
【0061】
さまざまな実施例において、複数対の突出部は、イオンの光学的要素支持部の1つの配向だけが、イオンの光学的要素支持部内の対応する凹部を、対応する対の突出部によってレジストレーションに導くことができるように構成される。例えば、さまざまな実施例において、一意の凹部および突出部パターンを使用して、イオンの光学的要素支持部を配向することができる。さまざまな実施例において、複数対の突出部は、異なるイオンの光学的要素に対して、異なる形状を有するように構成される。さまざまな実施例において、イオンの光学的要素を取り付けおよび調整するためのシステムは、例えば、要素を置き換えず、またはそれらを誤って配向する恐れなしに、光学的要素の迅速な変更を容易にする。
【0062】
質量分析計システム)
さまざまな側面において、本教示は、MALDI−TOF質量分析計システムを提供する。さまざまな実施例において、質量分析計システムは、(a)エネルギーパルスが、試料表面に実質的に法線の角度で試料表面の試料に衝突するように、試料表面上の試料にエネルギーパルスを照射するように構成された光学システムと、(b)本教示のMALDIイオン源と、(c)第一のイオン光軸からのイオンを偏向させるように構成されたイオン偏向板であって、それに沿ってイオンが質量分析計システムおよび第二のイオン光軸に引き出されるイオン偏向板と、(d)イオン偏向板とタイムドイオンセレクタとの間に配置された第一の実質的にフィールドフリー領域であって、タイムドイオンセレクタは、第一の実質的にフィールドフリー領域と衝突セルとの間に配置されたフィールドフリー領域と、(e)衝突セルと第一のイオン検出器との間に配置された第二の飛行時間と、(f)第二の飛行時間と第一のイオン検出器との間に配置されたイオンミラーと、(g)イオンミラーと第二のイオン検出器との間に配置される第二の飛行時間とを備える。タイムドイオンセレクタは、第二のイオン光軸に沿って移動するイオンを受けるように配置され、衝突セルへ伝送するイオンを選択するように構成される。
【0063】
さまざまな実施例において、MALDIイオン源は、試料表面を有する試料支持部から間隔を隔てた第一の電極と、試料支持部に対向する方向に第一の電極から間隔を隔てた第二の電極と、第一の電極に対向する方向に第二の電極から間隔を隔てた第三の電極とを備える。試料支持部、第一、第二、および第三の電極は、電源に電気的に連結され、(a)第一の電位を試料表面に付加し、第二の電位を第一の電極および第二の電極のうちの少なくとも1つに付加して、実質的に試料表面にエネルギーパルスを衝突させて試料イオンを形成する前に、第一の所定時間で非引き出し電場を構築し、前記非引き出し電場は、実質的に試料イオンを試料表面から離れる方向に加速しない、(b)試料表面および第一の電極のうちの少なくとも1つの電位を変化させて、第一の所定時間後の第二の所定時間で第一の引き出し電場を構築し、前記引き出し電場は、試料表面から離れる方向に試料イオンを加速する、および(c)第三の電位を第二の電極に付加して、第一の方向に実質的に垂直な方向にイオンを集束させるような状態になるように構成される。
【0064】
さまざまな実施例において、非引き出し電場は、試料表面から離れる方向において試料イオンの動作を遅延させる遅延電場とすることができる。さまざまな実施例において、非引き出し電場は、実質的にゼロ電場とすることができ、例えば、実質的に電気的フィールドフリー領域が構築される。実質的にゼロ電場は、例えば、第一の電位および第二の電位が実質的に等しいときに構築することができる。
【0065】
さまざまな実施例において、質量分析計システムは、真空密閉チャンバーと、真空密閉チャンバーに接続された試料チャンバーとをさらに備える。試料支持部変更機構は真空密閉チャンバー内に配置され、試料支持部移動機構は試料チャンバー内に配置される。試料支持部移動機構は、試料支持部が、試料支持部移動機構内のフレーム内に配置されるように、試料支持部変更機構の装着領域から試料支持部を引き出すように構成される。試料支持部移動機構は、エネルギーパルスによる試料支持部の表面上の試料のレーザー照射によって試料イオンを発生させることができ、前記試料支持部は、試料支持部移動機構内に保持される位置に、試料支持部を移動させることができるように、多軸移動ステージ上に装着され、試料支持部は、試料チャンバー内にあり、前記試料イオンは、第一のイオン光軸に沿って引き出すことができる。
【0066】
さまざまな実施例において、質量分析計システムは、その中に配置された1つ以上の温度制御された表面をさらに備える。
【0067】
さまざまな実施例において、タイムドイオンセレクタおよび衝突セルは、イオン光学組立部の部分を備え、イオン光学組立体は、前面部材と取り付け本体の前側との間に配置された第一の複数のイオン光学素子を備える。前面部材は、少なくとも1つの取り付け部材によって取り付け本体に取り付けられ、前面部材は、前面固定部材のねじ付き表面を受けるように構成されたねじ付き開口部を有する。取り付け本体は、衝突セルを収容し、タイムドイオンセレクタは、イオン光学素子のうちの少なくとも1つを備える。前面部材のねじ付き開口部は、前面固定部材のねじ付き表面が、前面部材のねじ付き開口部内に係合されたときに、前面固定部材の接触面が、第一の複数のイオン光学素子と接触して、第一の複数のイオン光学素子に対して圧縮力を付加できるように構成される。第一の複数のイオン光学素子のそれぞれは、補助的レジストレーション構造を受けるように構成された凹構造と、前部固定部材によって圧縮力が付加されて、レジストレーション構造が補助的凹構造内に配置されたときに、他の第一の複数のイオン光学素子のうちの少なくとも1つに対して、第一の複数のイオン光学素子を調整するレジストレーション構造とを有する。
【0068】
さまざまな側面において、本教示は、2つ以上の操作モードおよび、試料表面を有する試料支持部と、試料支持部から間隔を隔てた第一の電極と、試料支持部ホルダーに対向する方向に第一の電極から間隔を隔てた第二の電極と、第一の電極に対向する方向に第二の電極から間隔を隔てた第三の電極とを備えたイオン源を有するMALDI−TOF質量分析計システムを操作するための方法を提供する。さまざまな実施例において、第一の操作モードのための方法は、(a)第一の操作モードに対して、試料表面と第一の電極との間に電位差を付加することによって、Z方向におけるイオン源の時間集束面の位置を選択するステップであって、この電位差は、第一の電位を試料表面に付加し、第二の電位を第一の電極に付加し、また、第三の電位を第二の電極に付加することによってZ方向に実質的に垂直な方向にイオンを集束させることによって構築されるステップと、(b)試料表面上の試料に、エネルギーパルスを試料表面の実質的に法線の照射角度で照射して、マトリックス支援レーザー脱離イオン化によって試料イオンを形成するステップと、(c)エネルギーパルスと実質的に同軸で、実質的に一致する第一のイオン光軸に沿って、試料表面の実質的に法線方向に試料イオンを引き出すステップと、(d)第一の操作モードを使用した質量分析のために、第一のイオン光軸から第二のイオン光軸に試料イオンを偏向させるステップとを含む。質量分析計システムの操作モードは、次いで、第二の操作モードに変更され、その方法は、(a)第二の操作モードに対して、試料表面と第一の電極との間に電位差を付加することによって、Z方向におけるイオン源の時間集束面の位置を選択するステップであって、この電位差は、第一の電位と実質的に等しい第四の電位を試料表面に付加し、第五の電位を第一の電極に付加し、また、第六の電位を第二の電極に付加することによってZ方向に実質的に垂直な方向にイオンを集束させることによって構築されるステップと、(b)試料表面上の試料に、エネルギーパルスを試料表面に対して実質的に法線である照射角度で照射して、マトリックス支援レーザー脱離イオン化によって試料イオンを形成するステップと、(c)エネルギーパルスと実質的に同軸で、実質的に一致する第一のイオン光軸に沿って、試料表面の実質的に法線方向に試料イオンを引き出すステップと、(d)第二の操作モードを使用した質量分析のために、第一のイオン光軸から第二のイオン光軸に試料イオンを変更させるステップとを含む。
【0069】
操作モードのうちの1つが衝突誘起解離を含むさまざまな実施例において、MALDI−TOF質量分析計システムを操作するための方法は、衝突セルにイオンを集束させるための方法のうちの、本教示のさまざまな実施例を含むことができ、また、イオン光学組立部を操作するための方法のうちの、本教示のさまざまな実施例を含むことができる。
【0070】
本発明の上述および他の側面、実施例、目的、機能、および利点は、以下の添付図面に関連した記述によってさらに理解することができる。図中、同じ参照符号のものは、種々の図面を通じて概ね同じ機能および構造の要素を示すものである。これらの図面は原寸に比例して示されておらず、代わりに本発明の原理を示す部分が強調されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
さまざまな側面において、本教示は、斬新なMALDI−TOFシステムを提供する。さまざまな実施例において、例えば、試料支持部処理機構、イオン源、イオン光学、およびイオン光学組立部のような、1つ以上の斬新な構成要素を備えた斬新なMALDI−TOFシステムが提供される。さまざまな実施例において、試料分析システムとともに使用して、例えば、試料イオンを提供したり、試料イオンを集束させたり、異なる操作モードで質量分析システムを操作したり、イオンフラグメンターを操作したりするための斬新な方法が提供される。
【0072】
図1A乃至1Dは、本教示のさまざまな実施例による、MALDI−TOFシステム100の図を原寸に比例した図である。図1Aは正面断面図を示し、図1Bは側断面図を示し、図1Cおよび1Dはそれぞれ図1Aおよび図1Bの一部を拡大して示した図である。図1A乃至1Dを見やすくするために、システム100は、床が方向101で、天井が方向102となるように配向することができ、機器の「正面」は、視点103からのものとすることができる。
【0073】
図1A乃至1Dによって示されるさまざまな実施例は、制限することを意図したものではない。例えば、本教示によるMALDI−TOFシステムは、図1A乃至1Dに示されるシステムよりも少ない構成要素を備えるか、またはシステムよりも多い構成要素を備えることができる。加えて、本教示のMALDI−TOFシステムは、図1A乃至1Dに示される部品の配置に必ずしも制限されるものではない。むしろ、示された配置は、本教示を実施する多数のモードの一部である。例えば、図1A乃至1Dに示されるシステムのさまざまな実施例は、例えば線形MS操作、イオンミラーMS操作、MS/MS操作などのような、さまざまなモードで操作することができる。
【0074】
さまざまな実施例において、MALDI−TOFシステム100は、試料支持部を装着および脱着することができる、真空密閉チャンバー106を備えた試料支持部処理機構105と、試料支持部を真空密閉チャンバー106からイオン領域111に移送するように構成された試料支持部移動機構108とを備える。試料支持部移動機構は、イオン源内の1つ以上の次元に試料支持部を平行移動させるための移動機構を備えて、例えば、試料支持部上の2つ以上の試料の連続的な分析を促進することができる。さまざまな実施例において、平行移動機構は、多軸(例、2次元ならばx−y;3次元ならばx−y−z)平行移動ステージ112を備える。質量分析システムは、観察システム113を備えて、一連の視界114に沿って、例えば、試料支持部がイオン源領域におけるイオン形成のために配置された場合は、試料支持部の表面上の試料を観察することができる。
【0075】
図1A乃至1Dに示されるMALDI−TOFシステムのさまざまな実施例は、例えば線形MS操作、イオンミラーMS操作、MS/MS操作などのような、さまざまなモードで操作することができ、電場120、122、124が実質的にない1つ以上の領域を含むことができる。例えば、さまざまな実施例において、TOFシステムは、線形TOF質量分析装置として動作させることができる。線形TOFの操作モードにおいて、イオン源領域111で生成されたイオンは、1つ以上のイオン源電極によって構築された電場によって、実質的に電場のない第一の領域(第一のフィールドフリー領域)120に引き出され、第一の検出器125に移動する。
【0076】
さまざまな実施例において、TOFシステムは、リフレクトロンTOF質量分析装置として動作させることができる。イオンミラーTOF操作モードにおいて、イオンは、1つ以上の実質的に電気的フィールドフリー領域120および122を通ってドリフトした後に、イオンミラーに入り、例えば、イオンの運動エネルギーの差異を補正する。イオンミラー130から出射するイオンは、次いで別のフィールドフリー領域124を通って検出器135にドリフトすることができる。
【0077】
さまざまな側面において、MALDI−TOFシステムは、MS/MS機器として機能し、動作させることができる。例えば、さまざまな実施例において、MALDI−TOFシステムは、イオンフラグメンター140を備える。イオン源領域111内で生成されたイオンは、1つ以上のイオン源電極によって構築された電場によって、実質的に電場のない第一の領域(第一のフィールドフリー領域)120に引き出され、タイムドイオンセレクタ142を使用して、イオンフラグメンター144の、例えば衝突セルへ伝送するイオンを選択すること、および実質的に電場のない第二の領域(第二のフィールドフリー領域)122に引き出されたフラグメントイオンを、例えば線形−線形TOFを実行するときは第一の検出器125に移動させ、例えば線形−反射器TOFを実行するときは第二の検出器135に移動させることができる。
【0078】
さまざまな側面および実施例において、本教示は、エネルギーパルスを用いて試料イオンを形成する。エネルギーパルスは、干渉性、非干渉性、またはその組み合わせとすることができる。さまざまな実施例において、エネルギーパルスは、レーザーエネルギーのパルスである。レーザーエネルギーのパルスは、例えば、パルスレーザーまたは連続波(cw)レーザーによるレーザーシステム150によって提供することができる。cwレーザーの出力は、例えば、音響光学変調器(AOM)、交差偏光子、回転チョッパー、およびシャッターを使用して、パルスを生成するように変調することができる。MALDIによって対象となる試料イオンを生成するための好適な照射波長のあらゆるタイプのレーザーには、これに限定されないが、ガスレーザー(例、アルゴンイオン、ヘリウム−ネオン)、色素レーザー、化学レーザー、固体レーザー(例、ルビー、ネオジムベース)、エキシマレーザー、ダイオードレーザー、およびそれらの組み合わせ(例、ポンプレーザーシステム)が挙げられ、本教示とともに使用することができる。
【0079】
試料処理機構)
質量分析装置システムは、構成要素の正確かつ反復可能な調整を必要とする複雑な機器となる可能性がある。正確かつ反復可能な調整を一般に必要とする1つの領域には、イオン源がある。MALDI−TOF質量分析計システムにおいて、イオンを引き出す方向(本願明細書ではZ方向と称する)における試料の配置のばらつきによって、飛行長さ(飛行時間)のばらつきがもたらされ、質量分解能が減少する可能性がある。加えて、XおよびY位置と同様に、Z位置のばらつきは、機器のイオン光学が調整されない位置での試料イオンの形成をもたらす可能性があり、イオン信号および質量分解能が減少する可能性がある。これらのばらつきは、一般的に、質量分析計システムのイオン源から、MALDIプレートなどのような試料支持部上に担持される試料の装着および脱着の繰り返しを必要とする、多数の試料の分析が求められる調査では、さらに大きな懸念となりうる。
【0080】
さまざまな側面において、本教示は、試料支持部処理機構を提供する。さまざまな実施例において、試料時支部処理機構は、試料支持部変更機構と、試料支持部移動機構とを備え、ユーザーが、変更機構内に試料支持部を配置することができるように構成することができ、イオン源領域への移動のために試料支持部移動機構によって取り込まれたときに、X、Y、およびZ方向に配置して、イオン源におけるX、Y、およびZ方向のサンプルの正確かつ反復可能な調整を促進する。さまざまな実施例において、試料支持部処理機構は、試料支持部が試料支持部移動機構において、(a)Z方向において約±0.002インチ以内、(b)X方向において約±0.005インチ以内、(c)Y方向において約±0.005インチ以内、または(d)それらの組み合わせとなるような位置に配置されるように構成される。さまざまな実施例において、試料支持部処理機構は、試料支持部が試料移動機構において、(a)Z方向において約±0.005インチ以内、(b)X方向において約±0.01インチ以内、(c)Y方向において約±0.01インチ以内、または(d)それらの組み合わせとなるような位置に配置されるように構成される。さまざまな実施例において、試料支持部は、複数の試料を保持することができる。
【0081】
さまざまな実施例において、試料支持部は、プレート(例、3.4インチ×5インチ)、マイクロタイターサイズのMALDIプレートなどを備える。好適な試料支持部には、これに限定されないが、64スポット、96スポット、および384スポットのプレートが挙げられる。電気的絶縁層は、試料と試料支持部の試料表面との間に挿入することができる。試料は、レーザーエネルギーのパルスの波長で吸収し、試料内の対象となる分子の脱離およびイオン化を促進する、マトリックス材を含むことができる。
【0082】
試料支持部の位置のずれに加えて、イオン化されている試料付近の電場線の歪みも、イオン信号および分解能の減少をもたらす可能性がある。例えば、MALDIを受ける試料付近の電場線の不連続部は、イオンを引き出す電場線を乱す可能性があり、イオンプルームの経路を生じさせ、引き出し電極への所望の飛行から外れる。
【0083】
さまざまな実施例において、本教示の試料支持部処理機構は、導電面を有し、試料支持部を実質的に囲んで試料支持部の周囲の導電領域を拡張するフレームを提供する。
【0084】
図2を参照する。さまざまな実施例において、本教示の試料支持部処理機構は、試料チャンバー205内に配置された試料支持部移動機構200と、真空密閉チャンバー215内に配置された試料支持部変更機構210とを備える。さまざまな実施例において、試料支持部移動機構200は、移動ステージ217(例、2軸または3軸のステージ)を備える。試料支持部移動機構は、試料チャンバーに配置されているが、真空密閉チャンバーへの部分を拡張して、試料支持部を試料支持部変更機構から引き出し、そこに戻すことができる。
【0085】
操作中に、試料支持部を、真空密閉チャンバー215内の変更機構210の装着領域220(例、装着パッド上)内に配置し、真空密閉チャンバー225を閉じることができる。真空密閉チャンバーの空気を(約80ミリトル以下に)抜いて、真空密閉と試料チャンバーとの間の試料チャンバードア(例えば、ゲート値)を開く。試料支持部移動機構は、左アームが、変更機構の左カム構造234と十分に一致し、右アーム236が変更機構の中央カム構造238と十分に一致するまで、Y方向に平行移動させることができる。試料移動機構は、次いで、左および右アーム232および236を係合し、装着領域220内の試料支持部(他の構造を明確にするために図2には示さず)を取り込むように、X方向に平行移動させることができる。左および右アームが試料支持部に近づいたとき、左カム構造234および中央カム構造238が、それぞれ左および右アームの左および右ベアリング支持部構造を係合して、それらを(例えば押し下げて)第二の位置に付勢し、第一の解放部材239は、係合部材240を(例えば押し下げて)第二の位置に付勢し、試料支持部が移動機構の前面に対して係合できるようにする。さまざまな実施例において、試料支持部のためのフレーム(他の構造を明確にするために図2には示さず)は、装着領域における試料支持部の係合の前に、左アームと右アームとの間か、または装着領域内の試料支持部上に配置することができる。例えば、フレームが左アームと右アームとの間にあるとき(図3を参照のこと)、移動機構は、フレームが試料支持部のわずかに上にあって、フレームが、試料支持部上の対象となる試料に実質的に接触せずに、試料支持部上を通過することができるように配置される。さまざまな実施例において、試料支持部(他の構造を明確にするために図2には示さず)は、それが装着領域内に装着されるときに、フレーム内に配置することができ、試料移動機構は、フレームに入れられた試料支持部を係合して装着する。例えば、試料支持部が、試料移動機構による係合の前にフレーム内にある場合、フレームは、移動機構内に配置することができる。試料支持部を取り込んだ後、試料支持部を試料チャンバーに平行移動させ、試料チャンバードアを閉じて、イオン形成に好適な圧力まで試料チャンバーの空気を抜いて、例えばMALDIによってイオンの形成を始める。図2に示される試料チャンバーにおいて、試料イオンは、試料チャンバーから実質的にZ方向に引き出される。図2の等角図におけるX、Y、およびZ方向を、インセット座標241によって概略的に示す。
【0086】
操作中に、例えばMALDI分析の後に試料支持部を取り除くには、左アーム232が、変更機構の中央カム構造234と十分に一致し、右アーム236が、変更機構の右カム構造242と十分に一致するまで、試料移動ステージをY方向に移動させることができる。試料移動機構は、次いで、左および右アーム232および236が中央カム構造238および右カム構造242を係合し、第二の解放部材243が移動機構上の係合部材240を解放するように、X方向に平行移動させることができる。さまざまな実施例において、係合部材は、ローラーを備え、これは、傾斜した第二の解放部材243の表面(例、解放部材243の裏面)に追従することができ、それによって、試料支持部は、非装着領域245にゆっくりと解放され(例、急に落とさずに)、試料支持部取り込み部材250を押し下げることができる。試料移動機構がX方向に連なるとき、試料支持部は、移動機構の左および右アームから完全に解放され、試料支持部(および/またはそれが保持されるフレーム部材)の前縁部(非装着領域に最も遠い周縁部)は、取り込み部材に対して圧力を加え、係合部材240は、試料支持部から完全に解放される。さまざまな実施例において、試料支持部(および/またはそれが保持されるフレーム部材)の前縁部が、取り込み部材250の外縁部をクリアにすると、取り込み部材は、試料支持部(および/またはそれが保持されるフレーム部材)を(例、ばねで)係合して、試料支持部が移動機構によって引き出されないようにする。
【0087】
図3は、本教示の試料処理機構のさまざまな実施例による、試料支持部移動機構300の拡張部分を示し、取り込まれた試料支持部305およびフレーム310を示す図である。図3の等角図におけるX、Y、およびZ方向を、インセット座標311によって概略的に示す。図3を参照する。試料支持部移動機構は、基礎315と、前面(本図では、試料支持部305およびフレーム310によって隠れている)に実質的に垂直である、左アーム320と、右アーム330とを備える。さまざまな実施例において、移動機構の基礎315は、試料チャンバー内のX−Y移動ステージに取り付けられる。移動ステージを使用して、試料をイオン形成領域に移動させ、また試料支持部を真空密閉と試料チャンバーとの間に移動させることができる。
【0088】
さまざまな実施例において、右アームベアリング支持部構造は、ピボットアーム340と、クランプアーム345とを備える。変更機構の装着領域または非装着領域への平行移動中に、変更機構の中央カム構造(装着操作)または右カム構造(脱着操作)は、第一の位置から第二の位置(装着操作)または第三の位置(脱着操作)へ下方に付勢するピボットアーム340を係合し、その後、クランプ機構345を押し下げて、右アームが、試料支持部を係合(装着操作)するか、または試料支持部を解放(脱着操作)できるようにする。
【0089】
例えば、さまざまな実施例において、装着操作時に、移動ステージを装着領域へX方向に動かすと、試料支持部処理機構の左アーム330が装着領域のレジストレーション部材(図4Bのロッカーアーム)を作動させる。レジストレーション部材は、試料支持部を試料支持部移動機構のコーナー部に押し、左アームが基礎315の前面と接触する。移動機構が、装着領域へX方向に連なるとき、ピボットアーム340が解放され、クランプアーム345がフレーム上の保持構造350に対して試料支持部を押して、試料支持部の背面(すなわち、基礎の前面から離れた試料支持部の側面)をZ方向に配置する。
【0090】
さまざまな実施例において、フレームは、少なくともイオン源のイオン引き出し電極に面する面上に、導電面を備える。さまざまな実施例において、試料支持部周囲に導電領域を拡張することによって、試料支持部と引き出し電極との間の電場線の不連続部の減少が促進される。さまざまな実施例において、試料支持部をZ方向に配置できる面に対向するフレームのコーナー部は低プロファイルを有し、電場の外乱の減少を促進する。
【0091】
さまざまな実施例において、ピボットアームおよびクランプアームは、例えば、両側からの作動のために、移動機構の右アーム330および左アーム320の両方に実質的に複製される。動作は、例えばピボット点の固体ロッド355によって、アクティブ側からスレーブ側に移動させることができる。脱着操作において、例えば、移動機構は、非装着領域へX方向に動かすことができ、カム構造のうちの1つ以上が、ベアリング支持構造のうちの1つ以上を係合してクランプアームを解放し、第二の解放部材が係合部材を解放することによって、試料支持部は、移動機構の左および右アームの間から抜けることができる。移動機構を非装着領域から引き込ませると、取り込み機構(図4Bにストリッパプレートとして示す)は、試料支持部移動機構が引き込まれる時に、試料支持部がそれに追従しないようにする。
【0092】
図4Aおよび4Bを参照する。本教示の試料処理機構のさまざまな実施例による、試料支持部移動機構部(図4A)および試料支持部変更機構部(図4B)の拡大図を示す。試料支持部処理機構は、試料支持部移動機構400と、試料支持部変更機構405とを備え、試料変更機構は、真空密閉チャンバー内に配置される。試料支持部は、真空密閉チャンバーを通して出し入れすることができる。
【0093】
例えば、操作中に、試料支持部を変更機構405の装着領域410内に配置して、真空密閉チャンバーのドアを閉じることができる。真空密閉チャンバーの空気が抜かれ、真空密閉チャンバー内が所望の真空度に達すると、2つのチャンバーを分離するドア412(例、仕切り弁)を開くことができる。Y方向において、試料移動機構が装着領域410と一致すると、それを装着領域410へX方向に平行移動させることができる。左および右アームが試料支持部に近づいたとき、左カム構造415および中央カム構造420が、それぞれ左425および右430ベアリング支持構造を係合して、それらを(例えば押し下げて)第二の位置に付勢し、第一の解放部材435は、係合部材440を(例えば押し下げて)第二の位置に付勢する。さまざまな実施例において、係合部材は、基礎部材の前面455から離れる方に傾斜する傾斜表面442を備え、例えば、試料支持部のスムーズなレジストレーションを促進する。さまざまな実施例において、基礎部材の前面455は、ベアリングを備え、例えば、試料支持部のスムーズなレジストレーションを促進する。移動機構が装着領域へ連なるとき、左アーム445は、例えばロッカーアームピボット452の左カム側上に、レジストレーション部材450(ロッカーアームとして示す)を係合し、その後前面455および左アーム445に対して試料支持部を押すロッカーアームを回転させ、さまざまな実施例では、左アーム445および基礎の前面455に対してX−Y方向に試料支持部を配置する。移動機構がX方向に装着領域へ連なるとき、係合部材440は、解放部材435の端部に到達し、係合部材は、試料支持部の前面(すなわち、基礎の前面により近い試料支持部の側面)をZ方向に配置し、X方向に固定する、その第一の位置に(例、ばねで)戻る。さまざまな実施態様において、試料支持部は、左アームの保持突起部456(例、レッジ)、右アームの保持突起部457(例、レッジ)に対してZ方向に配置される。保持突起部は、2つアーム間の距離部分のY方向にのみ延在する。移動機構が装着領域から試料チャンバーに引き込まれるとき、ベアリング支持ブロックが跳ね返り(それぞれの第一の位置に戻る)、プレートの背面をZ方向に配置する。図4Aおよび図4Bの等角図におけるX、Y、およびZ方向を、インセット座標458によって概略的に示す。
【0094】
操作中に、例えば以下のように、試料支持部の脱着を進行することができる。真空密閉チャンバー内が所望の真空度に達したとき、2つのチャンバーを分離しているドア412(例、仕切り弁)を開くことができる。試料移動機構がY方向に非装着領域460と一致すると、それをX方向に非装着領域460へ平行移動させることができる。移動機構の左および右のアームが近づいたとき、それらは非装着領域に入り、中央カム構造420および右カム構造464が、左425および右430ベアリング支持構造を係合して、それらを(例えば押し下げて)第三の位置に付勢し、第二の解放部材465は、係合部材440を(例えば解放したまま)第三の位置に付勢する。さまざまな実施例において、ランプ部465は、係合部材440をゆっくりと下ろし、試料支持部は、(例えば押し下げて)第一の位置から第二の位置に付勢する試料支持部取り込み機構470(例えば、図4Aにばね懸架式ストリッパプレートとして示される)を係合する。さまざまな実施例において、係合部材440は、第二の解放部材465を係合するローラー472を備える。試料支持部の前縁部がストリッパプレート470の外延部475を通過するときに、ストリッパプレートが(例えば第三の位置に)跳ね返り、移動機構が試料チャンバー内に引き込まれたときに、試料支持部を非装着領域内に保持する。
【0095】
さまざまな側面において、本教示は、質量分析のための試料イオンを提供する方法を提供する。図1A乃至4Bを参照する。さまざまな実施例において、本方法は、複数の試料370を試料支持部305の試料表面375上に支持するステップと、試料支持部220を装着するための領域および試料支持部245を脱着するための領域を有する真空密閉チャンバー106および215を提供するステップと、試料チャンバー内に配置された試料移動機構108および200を有する試料チャンバー160および205を提供するステップとを含む。
【0096】
本方法では、試料支持部が、例えば、Z方向において約±0.002インチ以内に、X方向において約±0.005インチ以内に、また、Y方向において約±0.005インチ以内に、試料支持部移動機構内のフレーム310内に配置されるように、試料移動機構108および200によって装着220のための領域内に配置され、X、Y、およびZ方向は互いに直交し、Z方向は、試料支持部の表面に実質的に垂直である。試料支持部は、試料チャンバー160および205内の第一の位置に配置され、(例えば、試料表面上の第一の試料をイオン源引き出し電極162と一致させる)が、試料支持部の表面上の第一の試料には、エネルギーパルス164が照射され、第一群の試料イオンを形成し、一方で、試料支持部は試料移動機構によって保持され、少なくとも一部の第一群の試料イオンがZ方向166に引き出される。試料支持部は、次いで、試料チャンバー内の第二の位置に平行移動され、(例えば、試料表面上の第二の試料をイオン源引き出し電極162と一致させる)が、試料支持部の表面上の第二の試料には、エネルギーパルス164が照射され、第二群の試料イオンを形成し、一方で、試料支持部は、試料移動機構によって保持され、少なくとも一部の第二群の試料イオンがZ方向166に引き出される。さらに、試料支持部が、試料支持部を脱着245するための領域内の試料支持部移動機構によって配置される前に、試料を試料支持部上で分析することができる。本方法は、少なくとも1つの他の試料支持部を引き出すステップに続けて、試料支持部上の少なくとも2つの試料に対する平行移動、照射、および引き出しのステップを繰り返し行う。
【0097】
さまざまな実施例では、エネルギーパルスを試料に照射するステップのうちの少なくとも1つは、試料支持部の表面の法線の5度以下の照射角度で試料に照射して、マトリックス支援レーザー脱離イオン化によって試料イオンを形成するステップを含む。さまざまな実施例では、エネルギーパルスを試料に照射するステップのうちの少なくとも1つは、試料支持部の表面の法線の1度以下の照射角度で試料に照射して、マトリックス支援レーザー脱離イオン化によって試料イオンを形成するステップを含む。さまざまな実施例では、試料イオンの少なくとも一部を引き出すステップのうちの少なくとも1つは、第一のイオン光軸に沿って、Z方向に試料イオンを引き出すステップを含み、第一のイオン光軸は、エネルギーパルスと実質的に同軸である。
【0098】
例えば、図1A乃至1Dを参照すると、さまざまな実施例において、試料イオンは、エネルギーパルス164と実質的に同軸で、実質的に一致する第一のイオン軸168に沿って引き出される。
【0099】
イオン源)
さまざまな側面において、本教示は、質量分析計とともに使用するための、MALDIイオン源およびMALDIイオン源の操作方法に関する。さまざまな側面において、本教示は、さまざまな実施例において、イオンの半径方向の空間的集束を実質的に低下させずに初期のイオン速度によるイオン到着時間の広がりの補償を促進し、調整可能な速度空間焦点面を可能にする、3ステージイオン源を提供する。当業者に概ね理解されているように、速度空間焦点面の所望の位置は、主にTOF機器の操作モードによって特定される。
【0100】
図5を参照する。本教示の3ステージイオン源500は、試料表面504、第一の電極506、第二の電極508、および第三の電極510を有する、試料支持部502を備える。さまざまな実施例において、第一ステージ520は、試料表面504および第一の電極506によって画定され、第二ステージ522は、第一の電極506および第二の電極508によって画定され、第三ステージ524は、第二の電極508および第三の電極510によって画定される。さまざまな実施例において、第一ステージ520は、試料表面504および第二の電極508によって画定され、第二ステージ522は、第一の電極506および第二の電極508によって画定され、第三ステージ524は、第二の電極508および第三の電極510によって画定される。使用可能なさまざまな電極の形状および構成には、これに限定されないが、プレート、グリッド、円錐、およびそれら組み合わせが挙げられる。例えば、第一の電極506は、円錐部511を有するスキマー状とすることができる。
【0101】
さまざまな実施例において、2つ以上の操作モードを有するTOF質量分析計の操作方法は、試料表面504と第三の電極510との間に電位差を設定することによってイオンエネルギーを構築するステップと、第一の電極506および第二の電極508のうちの1つへの電位を変化させることによってイオンを集束させるステップとを含む。さまざまな実施例において、第一の操作モードでは、Z方向における時間集束面の位置は、第一の電位を試料表面504に付加し、第二の電位を第一の電極506に付加することによって選択され、イオンは、第三の電位を第二の電極508に付加することによって、Z方向に実質的に垂直な方向に集束される。TOF質量分析計の集束では、第二の操作モードに対するZ方向における時間集束面の位置は、第一の電極506に付加された電位を変化させることによって選択され、イオンは、第二の電極508に付加された電位を変化させることによって、Z方向に実質的に垂直な方向に集束される。
【0102】
試料イオンは、ホルダーの試料表面上に配置された試料にエネルギーパルスを照射することによって発生させることができる。さまざまな実施例において、速度空間焦点面およびx,y空間的集束を提供するために、3ステージイオン源は、電源と、試料支持部に電気的に連結された、第一、第二、および第三の電極とを備え、(a)第一の電位を試料表面に付加し、第二の電位を第一の電極および第二の電極のうちの少なくとも1つに付加して、実質的に試料表面にエネルギーパルスを衝突させて試料イオンを形成する前に、第一の所定時間で非引き出し電場を構築し、前記非引き出し電場は、実質的に試料イオンを試料表面から離れる方向に加速しない、(b)試料表面、第一の電極、および第二の電極のうちの少なくとも1つの電位を変化させて、第一の所定時間後の第二の所定時間で第一の引き出し電場を構築し、前記引き出し電場は、試料表面から離れる方向に試料イオンを加速する、(c)第三の電位を第二の電極に付加して、第一の方向に実質的に垂直な方向にイオンを集束させるような状態になるように構成される。非引き出し電場を構築するために、試料表面、第一の電極、および第二の電極のうちの1つ以上に付加される電位は、ゼロ電位とすることができる。第一の引き出し電場のうちの1つ以上を構築するために、また第一の方向に実質的に垂直な方向にイオンを集束させるために、試料表面、第一の電極、第二の電極、および第三の電極のうちの1つ以上に付加される電位は、ゼロ電位とすることができる。
【0103】
さまざまな実施態様において、非引き出し電場を遅延電場とすることができ、遅延電場は、試料表面から離れる方向において試料イオンの動作を遅延させる。さまざまな実施例において、非引き出し電場は、実質的にゼロ電場とすることができ、例えば、実質的に電気的フィールドフリー領域が構築される。実質的にゼロ電場は、例えば、第一の電位および第二の電位が実質的に等しいときに構築することができる。
【0104】
図5を参照する。第二の所定時間での試料表面、第一の電極、第二の電極、および第三の電極の相対的な電位の一例を、Z座標557の関数として、電位555のインセット概略線図550に示す。図1および表1のデータのための座標系をインセット座標系基準560によって示す。Z軸は、イオン引き出し軸570に沿って位置し、Y軸は、図の平面のZ軸に対して垂直であり、X軸は、図の平面から外へZ軸に対して垂直であり、原点は、イオン引き出し軸570と試料表面504との交点575である。
【0105】
いくつかの実施例において、第一および第二の電極は、開口を有する。さまざまな実施例において、試料イオンは、第一の電極506および第二の電極508内の開口の中央を通り抜ける軸によって画定される、第一のイオン光軸570に沿って引き出される。さまざまな実施例において、光学システムは、レーザーエネルギーのパルスと第一のイオン光軸とを実質的に一致させるように構成される。例えば、さまざまな実施例において、試料イオンは、試料表面に実質的に法線方向に第一のイオン光軸に沿って引き出され、エネルギーパルスは、第一のイオン光軸と実質的に一致する。第三の電極は、実質的に平坦なプレートまたはグリッドである、開口電極とすることができる。さまざまな実施例において、第三の電極は、第一、第二、第三の開口電極の開口の中心が実質的に共通の軸となるように配置される。
【0106】
第一および第二の電極内の開口が、照射される試料の実質的に中央にあり、第一および第二の電極が、試料表面の法線周辺で実質的に対称である場合、第一のイオン光軸は、試料表面の実質的に法線の角度で試料表面と交差し、引き出し方向は、試料表面の実質的に法線の角度となり、引き出し方向は、第一のイオン光軸に実質的に平行となり、試料イオンは、第一のイオン光軸に沿って引き出される。
【0107】
本教示の3ステージイオン源は、イオン源のための更なる調整可能なパラメータを導入することができ、これを使用して、(Z方向における)特定の位置での速度空間焦点面の最適化による、イオンビームのx,y空間的集束特性の変化を補償することができる。この更なるパラメータによって、本教示の3ステージイオン源のオペレータは、イオン源の第二ステージの有効長を静電気的に変化させることができ、したがって、速度空間焦点面の位置を損なわずに、イオンビームのx,y空間的集束特性の最適化を促進し、その位置は、主にイオン源の第一ステージの電圧比およびジオメトリによって決定される。2ステージイオン源の性質および速度空間焦点面を形成するための操作は、上述した通りであり、例えば、M.VestalおよびP.Juhasz、J.American Soc.Mass Spec、9、892−911(1998)を参照のこと。これらの内容は参照することにより全て本願明細書に組み込まれる。
【0108】
表1乃至6は、実質的に図1に示される3ステージイオン源のイオンビーム特性を2ステージイオン源と比較したものである(すなわち、第三に電極に電位を付加せずに動作する図1の供給源の構成)。表1乃至6のデータは、SIMION(v7.0、Idaho National Engineering and Environmental Laboratory)を使用して計算したものであり、その入力パラメータは、d1 580=2mm、d2 582=13.675mm、d3 584=3.175mm、および初期のイオン速度=300m/sである。表1乃至6は、試料支持部の表面の法線に関して、さまざまな初期の速度ベクトル角度(列1)によって形成したイオンに対する、イオンビームの拡散α(すなわち、供給源出口586でのイオンビームの角度偏差α)(列5)および2つのZ位置、供給源出口588(列3)、および74.4mmの位置590(列4)でのイオンビームの半径方向位置(例、XまたはY)を比較したものである。列2は、第三の電極に付加された電位をリストしたものであり、この場合、イオン源の2ステージ操作に対応するゼロ電位である。
【0109】
表1乃至3は、試料支持部の表面の法線に対して、0、15、30、45度の初期の速度ベクトルで、原点575において形成されたイオンに対する結果を比較したものである。表4乃至6は、試料支持部の表面の法線に対して、0、15、30、45度の初期の速度ベクトルで、Y方向に+50ミクロンにて形成されたイオンに対する結果を比較したものである。
【0110】
表1乃至6はまた、速度空間焦点面を提供するようにイオン源を動作させた場合の、3つの操作モード(線形TOF、イオンミラーTOF、およびMS/MS TOF)に対するイオンビーム特性を比較したものでもある。表1および4は、試料支持部への電位が20kV、第一の電極への電位が19.1kVで、遅延引き出しに対する時間遅延が370nsである場合の線形TOFモード操作に対する結果を比較したものである。表2および5は、試料支持部への電位が20kV、第一の電極への電位が16kVで、遅延引き出しに対する時間遅延が600nsである場合のイオンミラーTOFモード操作に対する結果を比較したものである。表3および6は、試料支持部への電位が8kV、第一の電極への電位が7.3kVで、遅延引き出しに対する時間遅延が460nsである場合のMS/MS TOFモード操作に対する結果を比較したものである。
【0111】
表1乃至6では電位が与えられているが、本教示には、電位の絶対値はそれほど重要ではないことを理解されたい。さらに、さまざまな電位をゼロまたはグランドと表しているが、これは、単に本願明細書に出現する式における表記の利便性および簡潔さのためのものであることを理解されたい。当業者は、電極における電位が真のグランド電位でなくてもよいことを容易に認識されよう。例えば、電極における電位は、真のアースグランドを著しく(例えば、数千ボルト以上)超える(または下回る)電位の「フローティンググランド」とすることができる。したがって、本願明細書において、ゼロまたはグランドという電位の記述は、いずれにせよ、アースグランドに関して電位の値を制限するものと解釈されてはならない。
【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

【0114】
【表3】

【0115】
【表4】

【0116】
【表5】

【0117】
【表6】

比較したデータには、イオンビームにおける角拡散が、全ての操作モードに対して、3ステージイオン源は、2ステージイオン源よりも約1桁またはそれ以下であることが示されている。表1乃至6において、イオン光軸を形成するイオンおよびイオンミラーTOFモード操作に対して、その差異がより顕著である傾向がある。
【0118】
図6を参照する。さまざまな実施例において、3領域イオン源600は、試料支持部602、第一の電極604、第二の電極606、および第三の電極608を備える。使用可能なさまざまな電極の形状および構成には、これに限定されないが、プレート、グリッド、円錐、およびそれら組み合わせが挙げられる。例えば、第一の電極は、円錐部609を有するスキマー状とすることができる。
【0119】
試料イオンは、支持部602の試料表面612上に配置された試料610にエネルギーパルスを照射することによって、また、表面612と第三の電極608との間の電位差を選択することによって構築した試料イオンエネルギーによって発生させることができる。絶縁層は、試料と試料表面との間に挿入することができる。電源614は、試料表面612、第一の電極604、第二の電極606、および第三の電極608のそれぞれに電気的に連結され、実質的に試料イオンを試料表面から離れる方向に加速しない第一の領域620内の第一の非引き出し電場を構築するように構成される。さまざまな実施例において、非引き出し電場は、対象となる試料イオンの試料表面から離れる方向への動作を遅延させる、遅延領域とすることができる。電源は、例えば、第一の電位を試料表面に付加し、第二の電位を第一の電極に付加することによって遅延電場を構築することができ、(a)第一の電位は、対象となる試料イオンが正のイオンである場合、第二の電位よりも負であり、(b)第一の電位は、対象となる試料イオンが負のイオンである場合、第二の電位よりも正である。さまざまな実施例において、非引き出し電場は、実質的にゼロ電場とすることができ、例えば、実質的に電気的フィールドフリー領域が構築される。非引き出し電場を構築するために、試料表面、第一の電極、および第二の電極のうちの1つ以上に付加される電位は、ゼロ電位とすることができる。
【0120】
電源はまた、試料表面から離れる第一の方向623に、対象となる試料イオンを加速する第一の引き出し電場を、所定時間で少なくとも第一の領域620内に構築し、第一の方向623に実質的に垂直な方向に、対象となるイオン試料を空間的に集束させる空間的集束電場を、第二の領域622と第三の領域624のうちの少なくとも1つ以上にわたって構築するように構成される。電源は、例えば、試料表面612、第一の電極604、および第二の電極606のうちの1つ以上への電位を変化させることによって、第一の引き出し電場を構築することができる。1つ以上の第一の引き出し電場および空間的集束電場を構築するために、試料表面、第一の電極、第二の電極、および第三の電極のうちの1つ以上に付加される電位は、ゼロ電位とすることができる。
【0121】
例えば、対象となるイオンが正のイオンである場合、電源は、試料表面の電位が第一の電極の電位よりも正であるように、試料表面および第一の電極のうちの1つ以上の電位を変化させることによって、第一の引き出し電場を構築することができ、電源はまた、第二の電極への電位が第三の電極への電位よりも正であるように、第二の電極と第三の電極との間に電位差を構築することによって、第二の引き出し電位を構築することができる。
【0122】
例えば、対象となるイオンが負のイオンである場合、電源は、試料表面の電位が第一の電極の電位よりも負であるように、試料表面および第一の電極のうちの1つ以上の電位を変化させることによって、第一の引き出し電場を構築することができ、電源はまた、第二の電極への電位が第三の電極への電位よりも負であるように、第二の電極と第三の電極との間に電位差を構築することによって、第二の引き出し電位を構築することができる。
【0123】
電極は、単一の装置、複数のスタンドアロンの装置、複数の統合装置、またはその組み合わせを備えることができる。例えば、電源は、試料支持部および第一の電極に電気的に連結された第一の電源と、第一の電極および第二の電極に電気的に連結された第二の電源と、第二の電極および第三の電極に電気的に連結された第三の電源とを備えることができる。電源は、例えば、手動制御、電子制御、および/またはプログラム可能なものとすることができる。
【0124】
本願明細書で使用される用語「電源」は、簡潔な記述を容易にするものであり、制限することを意図したものではない。本願明細書で使用される用語「電源」は、電源が必ずしも単一の装置を備えるわけではないこと、すなわち、試料支持部、第一の電極、第二の電極、および第三の電極のそれぞれが、複数の装置のそれぞれに電気的に連結された、複数の装置を電源が備える場合、を示唆することを意図したものではない。例えば、再び図6を参照して、さまざまな実施例において、電源614は、複数の電源650および652を備えることができる。電源は、例えばフローティンググランドのような、別の電源に電気的に連結して、例えば基準電位を提供することができる。
【0125】
さまざまな実施例において、本教示の3ステージイオン源は、試料支持部の試料表面上の試料にレーザーエネルギーのパルスを照射するように構成された光学システムを含む。さまざまな実施例において、光学システムは、レンズまたは窓を備えることができる。光学システムはまた、ミラーまたはプリズムを備えて、レーザーエネルギーのパルスを試料上に導くことができる。さまざまな実施例において、光学システムは、レーザーエネルギーのパルスとイオンの取り出し方向とが実質的に一致するように構成される。
【0126】
再び図6を参照する。さまざまな実施例において、3ステージイオン源は、供給源の少なくとも一部の周囲に配置された温度制御された表面660と、第一の電極、第二の電極、および第三の電極のうちの1つ以上に接続され、これを加熱することができる加熱システム670とを含む。いくつかの実施例において、加熱システム670は、その周囲に温度制御された表面660が配置されたイオン源の全ての要素、中性ビームの経路内のイオン光学要素、またはその両方に接続される。さまざまな実施例において、加熱システム670は、第一の電極604、第二の電極606、および第三の電極608に接続される。
【0127】
さまざまな実施例において、加熱システム670を使用して、イオン源の要素のうちの1つ以上の温度を上昇させて、供給源の要素上に付着する中性物の量を減少させる。中性の付着物の量は、イオン源の要素を加熱して、例えば、加熱された表面上に中性物が固着する可能性を減少させるか、付着物を揮発させるか、またはその両方によって減少させることができる。さまざまな実施例において、温度制御された表面660は、イオン源の要素のうちの1つ以上の温度よりも低く保持され、それを使用して中性分子を取り込み、それらが他の表面に付着しないようにする。さまざまな実施例において、温度制御された表面は、中性分子を取り込むように構成および使用され、それによって、イオン源の要素上に付着する中性分子の量が減じられる。イオン光学上の中性の付着物の量は、イオン源の要素の温度よりも、温度制御された表面の温度を低く設定して、例えば、温度制御された表面上に中性物が固着する可能性を増加させるか、脱離した中性物を取り込むか、またはその両方によって減少させることができる。
【0128】
さまざまな実施例において、イオン源の要素の1つ以上は、マトリックス分子がこれらの要素に固着しないように加熱され、それによって、これらの要素への絶縁層の蓄積が減じられる。MALDI内に発生する中性のプルームは、絶縁層を構築する可能性もある不揮発性の非マトリックス材を少量含むことができるが、この非マトリックス材の濃度は、一般に、マトリックス材のものよりも数桁低い。これによって、一般に、非マトリックス材の付着が顕著になるまでの時間が、より長くなる。加えて、さまざまな実施例において、イオン源の要素の表面を加熱することによって、当該の付着の抵抗率が減少し、したがって、イオンビームを偏向させる非対称の荷電効果をさらに減少させる。
【0129】
さまざまな実施例において、加熱システムは、イオン源の要素を加熱することができる加熱システムを含み、これらの要素は、表7にリストされたマトリックス材のうちの1つ以上を脱離するに十分な温度に加熱される。表7の右欄は、MALDI研究における関連するマトリックス材に対する代表的な要素の一部をリストしたものである。
【0130】
【表7−1】

【0131】
【表7−2】

さまざまな実施例において、加熱システムは、イオン源の要素の温度を上昇させることができ、これらの要素は、マトリックス材を脱離するに十分な温度に加熱される。
【0132】
さまざまな実施例において、イオン源の要素の1つ以上は、十分に高い温度まで定期的に加熱され、これらの要素の表面上のあらゆる付着物を迅速に気化させる。さまざまな実施例において、「ブランク」または「ダミー」の試料支持部を、例えばイオン源の1つ以上の要素上に形成された付着物が、ブランク(機器から取り除くことができる)上か、温度制御された表面上か、またはその両方に再付着するように、MALDI試料支持部の代わりに用いることができる。
【0133】
さまざまな実施例において、本教示の3ステージイオン源は、第四の電極を含む。いくつかの実施例において、第四の電極は、第三の電極に実質的に平行な、平坦なプレートまたはグリッドである。
【0134】
第四の電極は、実質的に平坦なプレートまたはグリッドである、開口電極とすることができる。さまざまな実施例において、第四の電極は、第二および第三の開口電極の開口の中心が、実質的に共通の軸となるように配置される。さまざまな他の実施例において、第四の電極は、第二の電極および第三の電極内の開口の中心を通り抜ける軸から外れて配置される。さまざまな実施例において、第四の電極が、第二の電極および第三の電極内の開口の中心を通り抜ける軸から外れて配置された場合、第四の電極は、試料支持部から引き出す方向に沿って移動する中性分子が、第四の電極と実質的に衝突しないように配置される。
【0135】
さまざまな実施例において、本教示の3ステージイオン源は、第一のイオン偏向板を含み、試料イオンを、引き出す方向とは異なる方向に偏向させる。さまざまな実施例において、第一のイオン偏向板は、第三の電極と第四の電極との間に配置される。さまざまな実施例において、第四の電極は、偏向させた試料イオンを第四の電極が受けられるように、第二の電極と第三の電極内の開口の中心を通り抜ける軸から外れて配置され、また、いくつかの実施例では、第四の電極は、それが質量分析計に試料イオンを導くことを促進にするように配置される。
【0136】
MALDIによるイオン発生は、イオンに加えて中性分子のプルームを生成する。さまざまな実施例において、この中性のプルームの一部は、1つ以上の電極内の開口を通って、実質的に引き出す方向に沿った軸を有する基本的に円錐を形成する。最後の電極の開口サイズおよび最後の電極と試料表面と間の距離は、最後の電極を越えて移動する中性ビームの軸の周囲に、前記円錐の半角(δ)を決定する。さまざまな実施例において、イオン光学素子(例、第四の電極など)が、第二の電極および第三の電極内の開口の中心を通り抜ける軸から外れて配置された場合、これらのイオン光学素子は、中性ビーム内の中性分子が軸外のイオン光学素子と実質的に衝突しないように配置することができる。さまざまな実施例において、当該の軸外のイオン光学素子は、中性ビームの軸に垂直な方向に、中性ビームの軸から距離Lだけ離れて配置される。さまざまな実施例において、軸外の光学要素は、距離Lにおける中性ビームの輝度が少なくとも、中性ビームの軸における中性ビームの輝度の14%未満、中性ビームの軸における中性ビームの輝度の5%未満、または中性ビームの軸における中性ビームの輝度の1%未満であるように、距離Lに配置される。さまざまな実施例において、軸外の光学要素は、距離Lが、少なくとも距離Lmin離れるように配置され、Lminは次式で与えられる:
min=Dz tan(δ) (1)
ここで、Dzは、軸外のイオン光学素子と試料表面との間の引き出す方向における距離であり、δは、最後の要素を越えて移動する中性ビームの円錐の半角であり、中性ビームの円錐の半角(δ)を決定する。
【0137】
図7Aおよび7Bは、本教示の3ステージイオン源のさまざまな実施例を取り入れた、MALDI−TOFシステム700の実質的に原寸に比例した図である。図7Aは前部断面図であり、図7Bは断面図である。図7Aおよび7Bの表示を容易にするために、システム700は、床を方向701に、天井を方向702に配向し、機器の「前部」は、視点703からのものとすることができる。図7Cは、図7A一部分の拡大図である。
【0138】
図7A乃至7Cによって示されるさまざまな実施例は、制限することを意図したものではない。例えば、本教示のイオン源を取り入れたMALDI−TOFシステムは、図7A乃至7Cに示されるシステムよりも少ない構成要素を備えるか、またはシステムよりも多い構成要素を備えることができる。加えて、本教示のイオン源を取り入れたMALDI−TOFシステムは、図7A乃至7Cに示される部品の配置に必ずしも制限されるものではない。むしろ、示された配置は、本教示を実施する多数のモードの一部である。
【0139】
図7A乃至7Cを参照する。図示されたシステムは、試料支持部を装着および脱着することができる、真空密閉チャンバー706を備えた試料支持部処理システム705と、試料支持部を真空密閉チャンバー706からイオン源領域720に移送するように構成された試料支持部移動機構708とを備える。試料支持部移動機構は、イオン源内の1つ以上の次元に試料支持部を平行移動させるための移動機構を備えて、例えば、試料支持部上の2つ以上の試料の連続的な分析を促進することができる。いくつかの実施例において、移動機構は、x−y(2次元)平行移動ステージを備える。
【0140】
図7Cを参照する。イオン源領域720は、試料表面724を有する試料支持部722と、試料支持部722から間隔を隔てた第一次電極726と、試料支持部722に対向する方向に第一の電極726から間隔を隔てた第二の電極728と、第一の電極726に対向する方向に第二荷の電極728から間隔を隔てた第三の電極730とを備えた、本教示による3ステージイオン源を備えることができる。
【0141】
さまざまな実施例において、3ステージイオン源は、イオンビームの実質的に中心で、試料イオン源の加速領域からの出口での軌跡の角度が、実質的に試料イオンの質量に依存しないイオンビームを提供することができる。いくつかの実施例において、当該の軌跡は、試料表面の実質的に法線の照射角度で、試料支持部の試料表面上の試料にレーザーエネルギーのパルスを照射し、試料表面の実質的に法線方向に試料イオンを引き出して、イオンビームを形成することによって提供される。さまざまな実施例において、エネルギーパルスは、引き出す方向に実質的に平行な第一のイオン光軸と実質的に同軸である。試料表面の実質的に法線の照射角度で、試料支持部の試料表面上の試料にレーザーエネルギーのパルスを照射し、試料表面の実質的に法線方向に試料イオンを引き出す例は、米国特許第10/700,300号(2003年10月31日出願)に見出すことができ、これらの内容は参照することにより全て本願明細書に組み込まれる。
【0142】
図7Aおよび7Bに示されるシステムは、例えば、線形TOF操作、イオンミラー(リフレクトロン)TOF操作、およびMS/MS TOF操作などの、さまざまなモードで操作することができる。線形TOFの操作モードにおいて、イオン源領域720で生成されたイオンは、(1つ以上のイオン源電極によって構築された電場によって)第一の実質的に電場のない領域(第一の実質的にフィールドフリー領域)740に引き出され、第一の検出器742にドリフトする。実質的にフィールドフリー領域は、領域全体にわたって実質的に一定の電位ではなく、ゼロ電位を必ずしも示唆するものではないことを理解されたい。線形TOFモードにおいて、衝突セル750にはガスが付加されず、イオンミラー760はオフである。線形TOFモードにおいて、イオン源の時間集束面は、一般に、第一の検出器742と一致するように設定される。
【0143】
イオンミラー(リフレクトロン)モードにおいて、イオン源領域720で生成されたイオンは、(1つ以上のイオン源電極によって構築された電場によって)第一の実質的にフィールドフリー領域740に引き出され、イオンミラー760に移動し、第二の検出器762に反射される。線形TOFモードのように、イオンミラーTOFモードにおいて、衝突セル750にはガスが付加されない。イオンミラーTOFモードにおいて、イオン源の時間集束面は、一般に、イオンミラー760の焦点面と一致するように設定される。その結果、イオンミラーTOFモードにおける時間焦点面の所望の位置は、線形TOFモード操作におけるものよりもイオン源に近い。
【0144】
MS/MS TOFモードにおいて、イオン源領域720内で生成されたイオンは、(1つ以上のイオン源電極によって構築された電場によって)第一の実質的にフィールドフリー領域740に引き出され、親イオンのm/z範囲外に偏向させることによって、イオンフラグメンター(ここでは、衝突セル750を備える)に送られる親イオンのm/z範囲を選択する、タイムドイオンセレクタ770に移動する。MS/MS TOFモードにおいて、衝突セル750は、適切な衝突ガスで満たされ、衝突誘起解離(Collision Induced Dissociation:CID)によって親イオンをフラグメント化して、フラグメントイオンを生成する。さまざまな実施例において、フラグメントイオンは、例えば、単分子プロセスが、単分子イオンの流束量を増加させる可能性が高くなるような、試料イオンの単分子解離によって生成することができる。フラグメントイオンは、別の実質的にフィールドフリー領域772への1つ以上の出口電極によって構築された電場によって引き出すことができ、フラグメントイオンは、例えば、イオンミラー760を使用して分析して、第二の検出器762を使用して検出するか、またはイオンミラー760を使用せずに分析して、第一の検出器742を使用して検出することができる。MS/MS TOFモードにおいて、イオン源の時間集束面は、一般に、タイムドイオンセレクタ770と一致するように設定される。その結果、MS/MS TOFモードにおける時間焦点面の所望の位置は、イオンミラーまたは線形TOFモード操作におけるものよりもイオン源に近い。
【0145】
さまざまな実施態様において、3ステージイオン源は、試料表面に実質的に法線の角度で、試料支持部722の試料表面724上の試料にレーザーエネルギーのパルス780を照射するように構成される。さまざまな実施例において、光学システムは、窓782およびプリズムまたはミラーを784を備えて、レーザーエネルギーのパルスを試料上に導くことができる。レーザーエネルギーのパルスは、例えば、パルスレーザーまたは連続波(cw)レーザーによるレーザーシステム790によって提供することができる。cwレーザーの出力は、例えば、音響光学変調器(AOM)、交差偏光子、回転チョッパー、およびシャッターを使用して、パルスを生成するように変調することができる。MALDIによって対象となる試料イオンを生成するための好適な照射波長のあらゆるタイプのレーザーには、これに限定されないが、ガスレーザー(例、アルゴンイオン、ヘリウム−ネオン)、色素レーザー、化学レーザー、固体レーザー(例、ルビー、ネオジムベース)、エキシマレーザー、ダイオードレーザー、およびそれらの組み合わせ(例、ポンプレーザーシステム)が挙げられ、本教示のイオン源および質量分析計システムとともに使用することができる。
【0146】
さまざまな実施例において、3ステージイオン源は、試料表面の実質的に法線方向に試料イオンを引き出すように構成される。図7A乃至7Cにおいて、イオン源は、第一の開口電極726と、第二の開口電極728とを備える。第一の電極内の開口の中心と、第二の電極内の開口の中心との間の線を使用して、第一のイオン光軸792を画定することができる。したがって、さまざまな実施例において、3ステージイオン源は、放射のパルスおよび第一のイオン光軸が、実質的に同軸であるように、また、さまざまな実施例において、放射のパルスおよび第一のイオン光軸が実質的に一致するように構成される。
【0147】
さまざまな実施例において、第一の電極内の開口は、試料支持部722を移動することによって照射される試料上に実質的に中心がある。いくつかの実施例において、試料支持部722は、1軸平行移動動作、x−y(2軸)平行移動動作、またはx−y−z(3軸)平行移動動作が可能な試料支持部移動機構794によって保持され、照射のために試料を配置する。第一の電極内の開口が実質的に照射される試料の中心にあり、第一の開口が、試料表面の法線の周囲に実質的に対称である場合、引き出す方向は、実質的に試料表面の法線となる。
【0148】
いくつかの実施例において、試料支持部は、複数の試料を保持することができる。好適な試料支持部は、これに限定されないが、64スポット、96スポット、および384スポットのプレートが挙げられる。試料は、レーザーエネルギーのパルスの波長で吸収し、試料内の対象となる分子の脱離およびイオン化を促進する、マトリックス材を含む。
【0149】
さまざまな実施例において、3ステージイオン源は、イオン源の少なくとも一部の周囲に配置された温度制御された表面と、第一の電極726、第二の電極728、および第三の電極730のうちの1つ以上に接続された加熱システム795と、第一のイオン偏向板796とを含む。いくつかの実施例において、加熱システムは、その周囲に温度制御された表面が配置されたイオン源の全ての要素、中性ビームの経路内のイオン光学要素、またはその両方に接続される。
【0150】
さまざまな実施態様において、第一のイオン偏向板796は、第三の電極730と第四の電極797との間に配置され、引き出す方向とは異なる方向に、第二のイオン光軸798上に試料イオンを偏向させる。管または他の好適な構造799を使用して、例えば、イオンを偏向させた後に、浮遊電場から試料イオンを遮蔽するか、電場の均一性を保つか、またはその両方を行う。さまざまな実施態様において、当該の構造799は、温度制御された表面としての機能を果たすか、加熱システムに接続するか、またはその両方を行うことができる。
【0151】
本教示の3ステージイオン源は、多種多様な質量分析計および質量分析計システムとともに使用することが可能である。質量分析計は、単一の質量分析機器、または例えばタンデム質量分析(しばしばMS/MSと称される)または多次元質量分析(しばしばMSと称される)を用いた複数の質量分析器とすることができる。好適な質量分析装置には、これに限定されないが、飛行時間型(TOF)質量分析装置、四重極質量分析装置(Quadrupole Mass Spectrometer:QMS)、およびイオンモビリティ分析装置(IMS)が挙げられる。好適な質量分析計システムはまた、イオン反射器および/またはイオンフラグメンターを含むことができる。好適な質量分析計および好適なイオンフラグメンターには、これに限定されないが、本願明細書の他の箇所に記載されたものも挙げられる。
【0152】
好適なイオンフラグメンターには、これに限定されないが、衝突セル(イオンを中性ガス分子と衝突させることによってイオンをフラグメント化する)、光解離セル(イオンに光子のビームを照射することによってイオンをフラグメント化する)、およびイオンフラグメンター(イオンを固体または液体の表面に衝突させることによってイオンをフラグメント化する)が挙げられる。
【0153】
イオン光学)
さまざまな側面において、本教示は、イオンフラグメンターに対するイオンを集束させる方法、およびイオンフラグメンターを備えたイオン光学組立部の操作方法を提供する。さまざまな実施例において、本教示は、広範囲の衝突エネルギーにわたって入射イオンビームの焦点の位置を実質的に保持し、それによって広範囲のエネルギーにわたって衝突セルに平行イオンビームを供給する方法を提供する。
【0154】
図8Aおよび9を参照する。さまざまな実施例において、イオン光学組立部800および900は、減速レンズ810および910と衝突セル815および915との間に配置された、第一のイオンレンズ805および905を備える。第一のイオンレンズは、本願明細書において「集束レンズ」とも称されるが、これは、さまざまな実施例において、半径方向の焦点が第一のレンズ内のイオンビームに対して存在することによるものである。減速レンズ810および910、および集束レンズ805および905は、複数のレンズ要素(例、電極)で構成することができる。使用可能なさまざまな電極の形状および構成には、これに限定されないが、プレート、グリッド、円錐、およびそれら組み合わせが挙げられる。イオン光学組立部は、試料イオンを衝突セルに送る試料イオンを選択するためのタイムドイオンセレクタ907を含むことができる。
【0155】
減速レンズおよび集束レンズは、レンズ要素を共有することができる。例えば、さまざまな実施例において、減速レンズ810および910は、第一の電極822および922と、第二の電極824および924と、第三の電極826および926とを備え、集束レンズ805および905は、第三の電極826および926と、第四の電極828および928と、第五の電極830および930とを備える。さまざまな実施例において、それぞれの電極は、実質的に同じ電位であり、例えば、さまざまな実施例において、第五の電極は、実質的に衝突セルの入口と同じ電位であり、さまざまな実施例において、第一の電極は、実質的に第二の電極と電位であり、さまざまな実施例において、第三の電極は、実質的に第五の電極と同じ電位である。
【0156】
図8Bを参照する。イオン光学組立部のイオン光軸835に沿った方向D 834の関数として、電位832の概略線図を示したものである。電位の絶対値および相対値は、原寸に比例したものではなく、図8Bは、単に、方向Dに進むにつれて電位が増加するのか、減少するのかを示すことを意図するものであると理解されたい。さらに、一般的な規則によって、電位の線図は、対象となる試料イオンが正のイオンである場合について描画されたのもであるが、負のイオンについての図は、電位が、方向V 832に減少するとみなされる場合に得ることができることも理解されたい。
【0157】
図8A乃至9を参照する、さまざまな側面において、本教示は、ある供給源の電位で形成された試料イオンを集束させるための方法を含む。さまざまな実施例において、本方法では、減速レンズ810によって第一の電場(減速電場)を形成し、第一の電位を減速レンズの電極に付加することによって、入ってくる試料イオンを減速し、減速レンズ810と第一のイオンレンズ805との間に第二の電場(加速電場)を構築し、第二の電位を第一のイオンレンズの電極に付加することによって、減速レンズから離れるように第一のイオンレンズに試料イオンを加速し、第一のイオンレンズ805と入口837との間に第三の電場(減速電場)を構築して、第三の電位を衝突セルの入口に付加することによって、衝突セルに入る前に試料イオンを減速する。
【0158】
例えば、さまざまな実施例において、減速電位を第一の電極822および第二の電極824にのうちの1つ以上に付加することによって、減速電位を減速レンズ810に付加することができる。例えば、第一の電極842の電位および/または第二の電極844の電位が入力(entry)電位840よりも大きい場合、入力電位840の領域から減速レンズに入る正の試料イオン(例、プロシーディングドリフト領域、イオン光学素子など)は減速電位に遭遇する。図8Bでは第一の電極および第二の電極への電位が異なるように示されているが、それらは同じになる可能性もある。正の試料イオンに対する加速電位差は、減速レンズへの電位844未満である電位846を第一のイオンレンズの電極828に付加することによって、減速レンズ810と第一のイオンレンズ805との間に構築することができる。正の試料イオンに対する減速電位差は、イオンレンズの電位846を超える電位848を衝突セルの入口に付加することによって、第一のイオンレンズ805と衝突セルへの入口837との間に構築することができる。さまざまな実施例において、それぞれの電極は、実質的に同じ電位であり、例えば、さまざまな実施例において、第三の電極と、第五の電極と、衝突セルへの入口は、実質的に同じ電位848である。
【0159】
さまざまな実施例において、試料イオンは、減速レンズ810および910への入口852から距離F離れた焦点に実質的に集束される。さまざまな実施例において、本方法は、集束レンズ805への電位を変化させることによって、衝突エネルギーの範囲にわたって、イオン光学組立部内の実質的に同じ位置で、平行入力イオンビームの焦点を保持する。さまざまな実施例において、第一の衝突エネルギーと第二の衝突エネルギーとの間の差が、約5000電子ボルト未満である場合、距離Fは、(a)約±4%未満、(b)約±2%未満、および/または(c)約±1%未満で変動する。
【0160】
表8は、入口852からの距離Fの焦点に集束させた入力直径860の、および出力直径864の平行イオンビーム862を形成する平行入力イオンビームに対する、2つの異なる衝突エネルギー、500電子ボルト(eV)および1000eVでの焦点位置に関するデータを示す。図8Aにおいて、衝突セル815の後ろのイオン光学素子870に電位を付加した。表8を参照する。本教示により、衝突エネルギーを500eVから1000eVに変化させ、減速レンズ810への電位を変化させたときに、算出した焦点位置の変化が1%未満であることがわかる。
【0161】
表9および図10Aは、本教示のさまざまな実施例による、衝突エネルギーの範囲にわたって実質的に34mmの距離Fに焦点を保持する、減速レンズ810および集束レンズ805の適用のための、算出した電位に関するデータを示す。
【0162】
表10および図10Bは、本教示のさまざまな実施例による、衝突エネルギーの範囲にわたって実質的に34mmの距離Fに焦点を保持する、減速レンズ810および集束レンズ805の適用のための、算出した電位に関するデータを示し、焦点は、減速イオンレンズ810への電位を実質的に保持し、第一のイオンレンズ805への電位を変化させることによって、実質的に距離F=34mmに保持される。例えば、500eVの衝突エネルギーデータの場合、減速イオンレンズの電位(6200V)は、他の衝突エネルギーで付加された電位(6350V)の2.5%未満である。
【0163】
表8、9、および10、ならびに図10Aおよび10Bのデータは、SIMION(v7.0、Idaho National Engineering and Environmental Laboratory)を使用して計算したものであり、入力および出力パラメータは表にリストしたものである。表9および10は、それぞれ、図10Aおよび10Bにプロットされた値を提供する。SIMION計算に使用した構造は、実質的に図8Aに示されるものであり、その構造要素は実質的に原寸に比例する。図8Aにおける構造の絶対的なサイズの推定は、図8Aに示されるように、第一の電極822への入口と焦点距離Fとの間の距離が約34mmであることに注目することによって行うことができる。
【0164】
表8乃至10および図10Aおよび10Bでは電位が与えられているが、本教示には、電位の絶対値はそれほど重要でないことを理解されたい。さらに、さまざまな電位をゼロまたはグランドと表しているが、これは、単に本願明細書の表記の利便性および簡潔さのためのものであることを理解されたい。当業者は、電極における電位が真のグランド電位である必要がないことを容易に認識されよう。例えば、電極における電位は、真のアースグランドを著しく(例えば、数千ボルト以上)超える(または下回る)電位の「フローティンググランド」とすることができる。したがって、本願明細書において、ゼロまたはグランドという電位の記述は、いずれにせよ、アースグランドに関して電位の値を制限するものと解釈されてはならない。
【0165】
【表8】

【0166】
【表9】

【0167】
【表10】

イオン光学組立部
さまざまな側面において、本教示は、イオン光学素子の調整を容易にする機能を有するイオン光学組立部を提供する。図11および12を参照する。さまざまな実施例において、本教示のイオン光学組立部1100および1200は、取り付け本体1105および1205と、第一の複数のイオン光学素子1110および1210と、前面部材1114および1214と、前面固定部材1118(図12では前面部材に隠れている)と、第二の複数のイオン光学素子1120および1220と、背面部材1124および1224と、背面固定部材1128および1228とを備える。前面部材1114および1214、ならびに背面部材1124および1224は、少なくとも1つの取り付け部材1130および1230によって取り付け本体1105に取り付けられる。
【0168】
端部部材(前面部材1114および1214、ならびに背面部材1124および1224)は、それらが関連する固定部材(それぞれ、前面1118、および背面1128および1228)に係合されたときに、固定部材の接触面が、関連する複数の要素(例えば、第一の複数の要素1142と接触する前面部材接触面1140、および第二の複数の要素1146と接触する背面部材接触面1144)と接触することができ、複数のイオン光学素子に対して圧縮力を付加することができるようにねじが付けられる。
【0169】
さまざまな実施例において、イオン光学素子のそれぞれは、補助的レジストレーション構造を受けるように構成された凹構造と、それぞれの固定部材によって圧縮力が付加されて、前記レジストレーション構造が補助的凹構造内に配置されたときに、その近傍に対してイオン光学素子を調整するイオン光学素子を調整するレジストレーション構造とを有する。
【0170】
例えば、凹部構造1150は、補助的レジストレーション構造(例、ピン、スペーサなど)を受けうるように構成された、例えばスロット、カウンターボア、孔などを備えることができ、凹部構造1152は、イオン光学素子面と交差する第一の表面を備えて、例えば、要素の面上にコーナー部を形成し、それに対して隣接するイオン光学素子を調整することができる。さまざまな実施例において、レジストレーション構造は、スペーサ1154(電気的に絶縁することができる)としての機能を果たし、イオン光学要素に適切な間隔を隔てることができる。さまざまな実施例において、レジストレーション構造は、例えば、隣接するようその面上のコーナー部に対して調整することができるコーナー部1156のような、イオン光学素子の形状によって提供される。
【0171】
本教示において、イオン光学素子は、それぞれの固定部材によって圧縮力を付加することによって調整される。圧縮力は、固定部材上のねじをそれぞれの端部部材上のねじと係合させることによって付加される。本願明細書で使用する場合、用語「ねじ」および「ねじ付き」は、これに限定されないが、ヘリカル稜、スパイラル稜、および円形稜を含む。したがって、これらの用語は、これに限定されないが、完全な円または完全な円の部分を形成する平行の陵を含む。稜は、連続的または断続的とすることができる。例えば、陵に切り欠きを付けて、これらの空間に閉じ込められたガス、または供給されるガスの排出を容易にする。
【0172】
ねじがヘリカルまたはスパイラル陵を有する場合のさまざまな実施例において、固定部材をそれぞれの端部部材にねじ込んで、圧縮力を付加することができる。ねじが円形陵を有する場合のさまざまな実施例において、固定部材を(例えばスナップ取り付けを提供する)それぞれの端部部材に押し込んで、圧縮力を付加することができる。さまざまな実施例において、固定部材は自己固定であり、例えば、イオン光学レンズが、輸送時または機器の振動によって緩まないようにすることができる。さまざまな実施例において、固定部材は、予め選択されたトルクが付加されたときに自己固定となる。さまざまな実施例において、固定部材は、押し込んだとき(例えばスナップ取付けを提供する)に自己固定となり、固定部材の調整を含み、例えば、固定部材(押し込んだときにねじ内の切り欠きを貫通する)上の構造をねじの後ろの位置まで回転させて、固定部材を適所に固定することもできる。
【0173】
端部部材は、あらゆる適切な手段によって取り付け本体に取り付けることができる。取付けは、永続的または可逆的とすることができる。図11は、取り付け手段の限定されない一例を示すが、当業者は、多数の他の手段が利用可能であると認識されよう。例えば、さまざまな実施例において、端部部材は、ねじ付きロッドを使用して取り付けられ、このロッドの一端は、取り付け本体に押されるか、またはねじ込まれ、他端は、ボルトによって端部部材に取り付けられる。
【0174】
さまざまな実施例において、取り付け本体は、イオンフラグメンテーションを行うための領域を備える。例えば、さまざまな実施例において、取り付け本体は、例えば衝突ガスを提供するための流路1172を有する衝突セル1170と、真空ポンプとの流体連通のための開口部1176とを備える。
【0175】
さまざまな実施例において、本教示に記載されているように、固定部材によるイオン光学素子の圧縮によるそれらの調整は、イオン光学素子の調整および組立てを簡素化することができる。本教示において、イオン光学素子の圧縮および調整には、トルクパターンが不要である。さまざまな実施例において、固定部材は、イオン光学部材を適所に固定することができるので、輸送のためにイオン光学組立部を固定する更なる部品を必要としない。
【0176】
さまざまな側面において、本教示は、イオンの光学的要素を取り付けおよび調整するためのシステムを提供する。図12を参照する。さまざまな実施例において、取り付けおよび調整システムは、取り付け表面1242を有する取り付け基礎1240と、取り付け表面に対向する背部表面1244とを有する。複数対の突出部1250は、取り付け表面1242から突出し、1つ以上の取り付け構造1252は、突出部の各対に関連付けられ、少なくとも1つの電気的接続要素1254は、突出部の各対に関連付けられ、電気的接続要素は、背部表面から取り付け表面まで取り付け基礎を貫通する。本システムは、2つ以上のイオンの光学的要素支持部1260も備え、それぞれのイオンの光学的要素支持部は、複数対の突出部のうちの1つ以上を受けるように構成された一対の凹部を有する(取り付け表面と接触させるイオンの光学的要素支持部の面上の各凹部の一般的な位置は、対応する突出部に接続する破線1262によって示される)。
【0177】
取り付け表面上の複数対の突出部およびそれらの対応する凹部の位置は、イオンの光学的要素支持部の一対の凹部が、一対の突出部に関連付けられた1つ以上の取り付け構造を使用してイオンの光学的要素を取り付け基礎に取り付けることによって、対応する対の突出部と調整されるときに、前記イオンの光学的要素に取り付けられたイオンの光学的要素が、そのように取り付けられた他のイオンの光学的要素と実質的に一致し、前記イオンの光学的要素上の電気的接続部位(例、1280)は、対応する一対に突出部に関連付けられた対応する電気的接続要素に隣接するように構成される。
【0178】
多種多様な突出部および補助的な凹部の形状には、これに限定されないが、孔および/またはスロットと嵌合するピンを使用することができる。さまざまな実施例において、複数対の突出部は、イオンの光学的要素支持部の1つの配向だけが、イオンの光学的要素支持部の対の凹部を、対応する対の突出部によってレジストレーションに導くことができるように構成される。例えば、さまざまな実施例において、一意の凹部および突出部パターンを使用して、イオンの光学的要素支持部を配向することができる。さまざまな実施例において、複数対の突出部は、異なるイオンの光学的要素に対して、異なる形状を有するように構成される。
【0179】
質量分析計システム)
さまざまな側面において、本教示は、MALDI−TOF質量分析計システムを提供する。図1A乃至1D、2、3、および7A乃至7Cを参照する。さまざまな実施例において、質量分析計システムは、(a)エネルギーパルスが、試料表面に実質的に法線の角度で試料表面の試料に衝突するように、試料表面192および375上の試料370にエネルギーパルス165を照射するように構成された光学システム782および784と、(b)本教示のMALDIイオン源720と、(c)第一のイオン光軸166および792からのイオンを偏向させるように構成されたイオン偏向板796であって、それに沿ってイオンが質量分析計システムおよび第二のイオン光軸194および798に引き出されるイオン偏向板と、(d)イオン偏向板796とタイムドイオンセレクタ142および770との間に配置された第一の実質的にフィールドフリー領域120および740であって、タイムドイオンセレクタは、第一の実質的にフィールドフリー領域と衝突セル144および750との間に配置されるフィールドフリー領域と、(e)衝突セルと第一のイオン検出器125との間に配置された第二の実質的にフィールドフリー領域122と、(f)第二の実質的にフィールドフリー領域と第一のイオン検出器との間に配置されたイオンミラー130と、(g)イオンミラーと第二のイオン検出器135との間に配置された第三の実質的にフィールドフリー領域124とを備える。タイムドイオンセレクタは、第二のイオン光軸に沿って移動するイオンを受けるように配置され、衝突セルへ伝送するイオンを選択するように構成される。
【0180】
さまざまな実施例において、光学システムは、窓782およびプリズムまたはミラー784を備えて、レーザーエネルギーのパルスを試料上に導くことができる。さまざまな実施例において、1つ以上の構造190が提供され、例えば、試料イオンがイオンミラー130から第二の検出器135に移動するときに、浮遊電場から試料イオンを遮蔽するか、電場の均一性を保つか、またはその両方を行う。
【0181】
さまざまな実施例において、MALDIイオン源720は、試料支持部722から間隔を隔てた第一の電極726と、試料支持部ホルダーに対向する方向に第一の電極から間隔を隔てた第二の電極728と、第一の電極に対向する方向に第二の電極から間隔を隔てた第三の電極730とを備え、試料支持部、第一、第二、および第三の電極は、電源に電気的に連結され、第一の電位を試料表面に付加し、第二の電位を第一の電極および第二の電極のうちの少なくとも1つに付加して、実質的に試料表面にエネルギーパルスを衝突させて試料イオンを形成する前に、第一の所定時間で非引き出し電場を構築し、前記非引き出し電場は、実質的に試料イオンを試料表面から離れる方向に加速しない、試料表面および第一の電極のうちの少なくとも1つの電位を変化させて、第一の所定時間後の第二の所定時間で第一の引き出し電場を構築し、前記引き出し電場は、試料表面から離れる方向に試料イオンを加速し、第一の引き出し電場は、エネルギーパルスと実質的に同軸の第一のイオン光軸に沿って、試料表面から離れる第一の方向に試料イオンを加速する、および第三の電位を第二の電極に付加して、第一の方向に実質的に垂直な方向にイオンを集束させるような状態になるように構成される。
【0182】
さまざまな実施例において、質量分析計システムは、真空密閉チャンバー106と、真空密閉チャンバーに接続された試料チャンバー160とをさらに備える。試料支持部変更機構210は真空密閉チャンバー内に配置され、試料支持部移動機構108は試料チャンバー内に配置される。試料支持部移動機構は、試料支持部が、試料支持部移動機構内のフレーム310内に配置されるように、試料支持部変更機構の装着領域220から試料支持部を引き出すように構成される。試料支持部移動機構は、エネルギーパルス164による試料支持部の表面上の試料のレーザー照射によって試料イオンを発生させることができ、前記試料支持部は、試料支持部移動機構内に保持される位置に、試料支持部を移動させることができるように、多軸移動ステージ112上に装着され、試料支持部は、試料チャンバー内にあり、前記試料イオンは、第一のイオン光軸166および792に沿って引き出される。
【0183】
さまざまな実施例において、非引き出し電場は、試料表面から離れる方向において試料イオンの動作を遅延させる遅延電場とすることができる。さまざまな実施例において、非引き出し電場は、実質的にゼロ電場とすることができ、例えば、実質的に電気的フィールドフリー領域が構築される。実質的にゼロ電場は、例えば、第一の電位および第二の電位が実質的に等しいときに構築することができる。
【0184】
さまざまな実施例において、質量分析計システムは、その中に配置された1つ以上の温度制御された表面をさらに備える。
【0185】
さまざまな実施例において、タイムドイオンセレクタ142および770、および衝突セルは、イオン光学組立部195の部分144および750を備え、イオン光学組立体は、前面部材197と取り付け本体198の前側との間に配置された第一の複数のイオン光学素子196を備える。前面部材は、少なくとも1つの取り付け部材199によって取り付け本体に取り付けられ、前面部材は、前面固定部材のねじ付き表面を受けるように構成されたねじ付き開口部を有する。取り付け本体は、衝突セルを収容し、タイムドイオンセレクタは、イオン光学素子のうちの少なくとも1つを備える。前面部材のねじ付き開口部は、前面固定部材のねじ付き表面が、前面部材のねじ付き開口部内に係合されたときに、前面固定部材の接触面が、第一の複数のイオン光学素子と接触して、第一の複数のイオン光学素子に対して圧縮力を付加できるように構成される。第一の複数のイオン光学素子のそれぞれは、補助的レジストレーション構造を受けるように構成された凹構造と、前部固定部材によって圧縮力が付加されて、レジストレーション構造が補助的凹構造内に配置されたときに、他の第一の複数のイオン光学素子のうちの少なくとも1つに対して、第一の複数のイオン光学素子を調整するレジストレーション構造とを有する。
【0186】
MALDIによってイオンを発生させると、イオンに加えて中性分子のプルームを生成する。イオン光学素子が、第一のイオン光軸166および792内の開口の中心を通り抜ける軸から外れて配置される場合のさまざまな実施例において、これらの光学素子は、中性ビーム内の中性分子が、軸外のイオン光学素子と実質的に衝突しないように配置することができる。さまざまな実施例において、当該の軸外のイオン光学素子は、式(1)で求められるように、距離Lだけ離して配置することができる。
【0187】
質量分析計)
多種多様な質量分析計を、本教示のさまざまな側面とともに使用することが可能である。質量分析計は、単一の質量分析機器、または例えばタンデム質量分析(しばしばMS/MSと称される)または多次元質量分析(しばしばMSと称される)を用いた複数の質量分析器とすることができる。好適な質量分析装置には、これに限定されないが、飛行時間型(TOF)質量分析装置、四重極質量分析装置(Quadrupole Mass Spectrometer:QMS)、およびイオンモビリティ分析装置(IMS)が挙げられる。好適な質量分析計システムはまた、イオン反射器および/またはイオンフラグメンターを含むことができる。
【0188】
好適なイオンフラグメンターには、これに限定されないが、衝突セル(イオンを中性ガス分子と衝突させることによってイオンをフラグメント化する)、光解離セル(イオンに光子のビームを照射することによってイオンをフラグメント化する)、およびイオンフラグメンター(イオンを固体または液体の表面に衝突させることによってイオンをフラグメント化する)が挙げられる。
【0189】
さまざまな実施例において、質量分析計は、主イオンを選択し、および/またはそのフラグメントイオンを検出および分析するための三連四重極質量分析装置を備える。さまざまな実施例において、第一の四重極は、主イオンを選択する。第二の四重極は、イオンの一部をフラグメント化させる複数の低エネルギー衝突が生じるように、十分に高い圧力および電圧に保持される。第三の四重極は、走査されてフラグメントイオンのスペクトルを分析する。
【0190】
さまざまな実施例において、質量分析計は、主イオンを選択し、および/またはそのフラグメントイオンを検出および分析するための、2つの四重極質量フィルタと、TOF質量分析装置とを備える。さまざまな実施例において、第一の四重極は、主イオンを選択する。第二の四重極は、イオンの一部をフラグメント化させる複数の低エネルギー衝突が生じるように、十分に高い圧力および電圧に保持され、TOF質量分析装置は、フラグメントイオンのスペクトルを検出および分析する。
【0191】
さまざまな実施例において、本教示とともに使用する質量分析計は、2つのTOF質量分析計と、1つのイオンフラグメンター(例えば、CIDまたはSIDなど)とを備える。さまざまな実施例において、第一のTOFは、イオンフラグメンターへの導入のための主イオンを選択し、第二の質量分析装置は、フラグメントイオンのスペクトルを検出および分析する。TOF分析器は、線形または反射分析器とすることができる。
【0192】
さまざまな実施例において、質量分析計は、飛行時間型質量分析装置と、イオン反射器とを備える。イオン反射器は、TOFのフィールドフリードリフト領域の端部に配置され、これを使用して、イオンの飛行経路を変更することによって、初期の運動エネルギーの影響を補償する。さまざまな実施例において、イオン反射器は、加速電圧よりもわずかに大きなレベルまで上昇させる電位によって付勢される一連のリングから構成される。操作中に、イオンが反射器を貫通するとき、それらの電場の方向における速度がゼロになるまで、イオンが減速される。ゼロ速度点では、イオンの方向が反転し、反射器を通って逆方向に加速される。イオンは、入ったときのエネルギーと同じエネルギーだが、反対方向の速度で反射器を出る。より大きなエネルギーを有するイオンは、より深く反射器を貫通し、結果的に、より長い時間反射器内に残存する。反射機内で使用する電位は、質量および電荷と同等のイオンが実質的に同時に到着するように選択されて、イオンの飛行経路を変更する。
【0193】
さまざまな実施例において、質量分析計は、対象となる主試料イオンを選択するタンデムイオンセレクタと、試料イオンのフラグメントを生成するフラグメンテーションチャンバー(またはイオンフラグメンター)と、フラグメントイオンを分析する質量分析計とを有する第一のフィールドフリードリフト領域を備えた、タンデムMS−MS機器を備える。さまざまな実施例において、タイムドイオンセレクタは、パルスイオン偏向板を備える。さまざまな実施例において、第二のイオン偏向板を、さまざまな前記タンデムMS/MS機器内のパルスイオン偏向板として使用することができる。操作のさまざまな実施例において、パルスイオン偏向板によって、選択した質量電荷比の範囲内にあるイオンだけをイオンフラグメンテーションチャンバーに送ることができる。さまざまな実施例において、質量分析計は、飛行時間型質量分析装置である。質量分析計は、イオン反射器を含むことができる。さまざまな実施例において、フラグメンテーションチャンバーは、イオンのフラグメンテーションを生じさせ、引き出しを遅延させるようにデザインされた衝突セルである。さまざまな実施例において、フラグメンテーションチャンバーは、飛行時間型質量分析装置によるフラグメントイオンの分析のための、遅延引き出しイオン源としての機能を果たすこともできる。
【0194】
さまざまな実施例において、質量分析計は、パルスイオン源によって発生された複数のイオンの経路に沿って配置された、第一、第二、および第三のTOF質量分離器を有する、タンデムTOF−MSを備える。第一の質量分離器は、パルスイオン源によって発生された複数のイオンを受けるように配置される。第一の質量分離器は、パルスイオン源によって発生された複数のイオンを加速し、それらの質量電荷比に基づいて複数のイオンを分離し、それらの質量電荷比に基づいて、前記複数のイオンから第一の群のイオンを選択する。第一の質量分離器はまた、第一の群のイオンの少なくとも一部をフラグメント化する。第二の質量分離器は、第一の質量分離器によって発生された第一の群のイオンおよびそのフラグメントを受けるように配置される。第二の質量分離器は、第一の群のイオンおよびそのフラグメントを加速し、それらの質量電荷比に基づいて第一の群のイオンおよびそのフラグメントを分離し、それらの質量電荷比に基づいて、第一の群にイオンおよびそのフラグメントから第二の群のイオンを選択する。第二の質量分離器はまた、第二の群のイオンの少なくとも一部をフラグメント化する。第一および/または第二の質量分離器はまた、イオンガイドと、イオン集束要素および/またはイオン操作要素とを含むことが可能である。さまざまな実施例において、第二のTOF質量分離器は、第一の群のイオンおよびそのフラグメントを減速させる。さまざまな実施例において、第二のTOF質量分離器は、フィールドフリー領域と、実質的に第二の所定の範囲内の質量電荷比であるイオンを選択するイオンセレクタとを含む。さまざまな実施例において、第一および第二のTOF質量分離器のうちの少なくとも1つは、フラグメント化されたイオンを選択するタイムドイオンセレクタを含む。さまざまな実施例において、第一および第二の質量分離器のうちの少なくとも1つは、イオンフラグメンターを含む。第三の質量分離器は、第二の質量分離器によって発生されたイオンおよびそのフラグメントを受けるように配置される。第三の質量分離器は、第二の群のイオンおよびそのフラグメントを加速し、それらの質量電荷比に基づいて、第二の群のイオンおよびそのフラグメントを分離する。さまざまな実施例において、第三の質量分離器は、パルス加速を使用して、第二の群のイオンおよびそのフラグメントを加速する。さまざまな実施例において、イオン検出器は、第二の群のイオンおよびそのフラグメントを受けるように配置される。さまざまな実施態様において、イオン反射器は、フィールドフリー領域内に配置され、第一または第二の群のイオンおよびそのフラグメントがイオン検出器に到達する前に、それらのうちの少なくとも1つのエネルギーを補正する。
【0195】
さまざまな実施例において、実量分析計は、複数の飛行経路か、同時に実行することができる複数の操作モードか、またはその両方を有するTOF質量分析計を備える。前記TOF質量分析計は、第一のイオン経路、第二のイオン経路、または第三のイオン経路に沿って質量分析計に入る試料イオンのパケットから選択されるイオンを導く、経路選択イオン偏向板を含む。いくつかの実施例において、より多くのイオンの経路を用いることが可能である。さまざまな実施例において、第二のイオン偏向板を、経路選択イオン偏向板として使用することができる。時間依存電圧は、経路選択イオン偏向板に付加され、利用可能なイオン経路の中から選択し、所定の質量電荷比の範囲内にある質量電荷比を有するイオンは、選択されたイオン経路に沿って伝播することができる。
【0196】
例えば、複数の飛行経路を有するTOF質量分析計の操作のさまざまな実施例では、第一の所定の電圧が、第一の所定の質量電荷比の範囲に対応する第一の所定時間の間、経路選択イオン偏光板に付加され、それによって、第一の質量電荷比の範囲内にあるイオンを、第一のイオン経路に沿って伝播させる。さまざまな実施例において、前記第一の所定の電圧はゼロであり、イオンが初期の経路に沿って伝播し続けられるようにする。第二の所定の電圧は、第二の所定の質量電荷比の範囲に対応する第二の所定時間の間、経路選択イオン偏光板に付加され、それによって、第二の質量電荷比の範囲内にあるイオンを、第二のイオン経路に沿って伝播させる。第三、第四などを含む更なる時間範囲および電圧を用いて、特定の測定に必要とされるだけの数のイオン経路に適応することができる。第一の所定電圧の振幅および極性は、イオンを第一のイオン経路へと変更させるように選択され、第二の所定電圧の振幅および極性は、イオンを第二のイオン経路へと変更させるように選択される。第一の時間間隔は、第一の所定の質量電荷比の範囲内にあるイオンが経路選択イオン偏向板を通って伝播するの時間に対応するように選択され、第二の所定の質量電荷比の範囲内にあるイオンが経路選択イオン偏向板を通って伝播するの時間に対応するように選択される。第一のTOF質量分離器は、第一のイオン経路に沿って伝播する第一の質量電荷比の範囲内にあるイオンのパケットを受けるように配置される。第一のTOF質量分離器は、第一の質量電荷比の範囲内にあるイオンを、それらの質量に基づいて分離する。第一の検出器は、第一のイオン経路に沿って伝播している第一の群のイオンを受けるように配置される。第二のTOF質量分離器は、第二のイオン経路に沿って伝播するイオンのパケットの一部を受けるように配置される。第二のTOF質量分離器は、第二の質量電荷比の範囲内にあるイオンを、それらの質量に基づいて分離する。第二の検出器は、第二のイオン経路に沿って伝播している第二の群のイオンを受けるように配置される。いくつかの実施例において、第三、第四などを含む更なる質量分離器および検出器は、対応する経路に沿って導かれたイオンを受けるように配置することが可能である。一実施例では、第三の所定に質量範囲内にあるイオンを破棄する第三のイオン経路を用いる。第一および第二の質量分離器は、あらゆるタイプの質量分離器とすることができる。例えば、第一および第二の質量分離器のうちの少なくとも1つは、フィールドフリードリフト領域、イオン加速器、イオンフラグメンター、またはタイムドイオンセレクタを含むことができる。第一および第二の質量分離器は、複数の質量分離機器を含むこともできる。さまざまな実施例において、イオン反射器を含み、第一の群のイオンを受けるように配置され、それによって、イオン反射器は、第一の群のイオンに対するTOF質量分析計の分解能を向上させる。さまざまな実施例において、イオン反射器を含み、第二の群のイオンを受けるように配置され、それによって、イオン反射器は、第二の群のイオンに対するTOF質量分析計の分解能を向上させる。
【0197】
全ての文献、および特許、特許出願書、記事、書籍、専門書、論文、およびウェブページを含む、本出願に引用した類似した資料は、当該の文献および類似した資料のフォーマットに関係なく、参照することによりそれらの全体が明白に組み込まれる。定義された用語、用語の使用、記述された技術などを含む、組み込まれた文献および類似した資料のうちの1つ以上が、本出願と異なるか、または矛盾する場合、本出願が管理する。
【0198】
本願明細書に使用された項見出しは、単に構成目的のためであり、いずれにせよ、記述された内容を制限するものとして解釈されるものではない。
【0199】
本教示は、さまざまな実施例および例とともに記述されているが、本教示が当該の実施例または例を制限することを意図するものではない。逆に、本教示は、さまざまな代替案、改良、および同等物を包含することが、当業者に理解される。
【0200】
請求項は、そのような趣旨で述べられたものでない限り、記述された順序または要素に制限するものであると読み取るべきではない。本発明は、特定の例示的実施例を参照して特に示され、記述されているものであるが、添付の請求項の範囲を逸脱しない限り、形態および詳細におけるさまざまな変更が可能であると理解されたい。一例として、開示された機能のうちのいずれかを他の開示された機能のうちのいずれかと組み合わせて、本教示のさまざまな実施例によるMALDIイオン形成および質量分析計の作成を行うことができる。例えば、開示された試料処理機構、イオン源、光学システム、イオン光学システム、加熱システム、温度制御された表面の構成、イオン光学組立部、および質量分析計のいずれかの2つ以上を組み合わせて、本教示のさまざまな実施例による質量分析計を作成することができる。したがって、以下の請求項およびその同等物の範囲および趣旨に入る全ての実施例を主張するものである。
【図面の簡単な説明】
【0201】
【図1A】図1Aは、本教示のMALDI−TOFシステムのさまざまな実施例の正面断面図である。
【図1B】図1Bは、本教示のMALDI−TOFシステムのさまざまな実施例の側面断面図である。
【図1C】図1Cおよび図1Dは、図1Aおよび図1Bの真空密閉チャンバー、試料チャンバーおよびイオン形成領域部分を拡大した図である。
【図1D】図1Cおよび図1Dは、図1Aおよび図1Bの真空密閉チャンバー、試料チャンバーおよびイオン形成領域部分を拡大した図である。
【図2】図2は、本教示のさまざまな実施例による、試料支持部処理機構および真空密閉チャンバーの等角図である。
【図3】図3は、本教示のさまざまな実施例による、試料支持部処理機構を装着した試料支持部を備えた試料支持部移動機構の等角図である。
【図4A】図4Aおよび図4Bは、本教示のさまざまな実施例による、試料支持部処理機構の等角図であって、図4Aは、試料支持部移動機構部を示す図であり、図4Bは、試料支持部変更機構部を示す図である。
【図4B】図4Aおよび図4Bは、本教示のさまざまな実施例による、試料支持部処理機構の等角図であって、図4Aは、試料支持部移動機構部を示す図であり、図4Bは、試料支持部変更機構部を示す図である。
【図5】図5は、例示的なイオン軌道を有する本教示の3ステージイオン源のさまざまな実施例を概略的に示す図である。
【図6】図6は、本教示の3ステージイオン源のさまざまな実施例を概略的に示す図である。
【図7A】図7Aおよび図7Bは、本教示の3ステージイオン源のさまざまな実施例を取り入れた、MALDI−TOFシステムの断面図である。
【図7B】図7Aおよび図7Bは、本教示の3ステージイオン源のさまざまな実施例を取り入れた、MALDI−TOFシステムの断面図である。
【図7C】図7Cは、イオン源の部分に注目した、図7Aの一部の拡大図である。
【図8A】図8Aは、イオンフラグメンターと、イオン光学素子とを備えたイオン光学組立部の図である。
【図8B】図8Bは、組立部のさまざまな素子への電位を概略的に示す図である。
【図9】図9は、イオンフラグメンターと、イオン光学素子とを備えたイオン光学組立部の断面図である。
【図10A】図10Aおよび図10Bは、図8Aのイオン光学組立部に対する、異なる衝突エネルギーでのさまざまなイオン光学への電位の棒グラフである。
【図10B】図10Aおよび図10Bは、図8Aのイオン光学組立部に対する、異なる衝突エネルギーでのさまざまなイオン光学への電位の棒グラフである。
【図11】図11は、本教示のイオン光学組立部のさまざまな実施例の側断面図である。
【図12】図12は、本教示のイオンの光学的要素を取り付けおよび調整するためのシステムのさまざまな実施例の等角図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料表面を有する試料支持部と、
前記試料支持部から間隔があけられた第一の電極と、
前記第一の電極から、前記試料支持部ホルダーと反対方向に間隔があけられた第二の電極と、
前記第二の電極から、前記第一の電極と反対方向に間隔があけられた第三の電極と、
前記試料支持部と、前記第一の電極と、前記第二の電極と、前記第三の電極とに電気的に結合された電源と
を備える、質量分析計のためのイオン源であって、
前記電源は、
第一の電位を前記試料表面に印加し、第二の電位を前記第一の電極と前記第二の電極とのうちの少なくとも1つに印加して、試料イオンを形成するためのエネルギーのパルスを前記試料表面上の試料に当てるよりも実質的に前である第一の所定時間に、非抽出電場であって、試料イオンを前記試料表面から離れる方向に実質的に加速しない非抽出電場を確立することと、
前記試料表面と前記第一の電極とのうちの少なくとも1つの電位を変更することにより、前記第一の所定時間の後である第二の所定時間に、第一の抽出電界であって、試料イオンを前記試料表面から離れる第一の方向に加速する第一の抽出電界を確立することと、
第三の電位を前記第二の電極に印加することにより、試料イオンを実質的に前記第一の方向に抽出する第二の抽出電界を確立することと
を実行するように構成されている、イオン源。
【請求項2】
第一のイオン光軸が、前記第一の電極における開口の中心と前記第二の電極における開口の中心との間の線によって規定され、前記第一のイオン光軸は、前記試料表面の法線から5度以下の角度内で前記試料表面と交差する、請求項1に記載のイオン源。
【請求項3】
前記第一のイオン光軸が、前記試料表面の法線から1度以下の角度内で前記試料表面と交差する、請求項2に記載のイオン源。
【請求項4】
前記電源が2つ以上の電力供給を備え、前記2つ以上の電力供給のうちのそれぞれは、前記試料表面、前記第一の電極、前記第二の電極、前記第三の電極のうちの2つ以上と、あるいは互いに電気的に結合される、請求項1に記載のイオン源。
【請求項5】
光学システムは、エネルギーのパルスが前記試料表面の法線から1度以下の角度内で前記試料表面上の試料に当たるように、前記エネルギーのパルスを前記試料表面上の試料に照射するよう構成される、請求項1に記載のイオン源。
【請求項6】
前記第一の方向が、実質的に前記試料表面の法線であり、前記エネルギーのパルスが、前記第一の方向と実質的に同軸で、実質的に一致する、請求項1に記載のイオン源。
【請求項7】
前記エネルギーのパルスが干渉性電磁放射を備える、請求項1に記載のイオン源。
【請求項8】
前記第一の電極と、前記第二の電極と、前記第三の電極とのうちの1つ以上に接続されたヒーターシステムと、
実質的に、前記第一の電極と、前記第二の電極と、前記第三の電極とのうちの1つ以上の周囲に配置される温度制御された表面と
をさらに備える、請求項1に記載のイオン源。
【請求項9】
前記第三の電極から、前記第二の電極と反対の方向に間隔があけられたイオン偏向板であって、試料イオンを第二の方向に偏向させるよう構成されるイオン偏向板をさらに備える、請求項1に記載のイオン源。
【請求項10】
前記イオン偏向板に接続されたヒーターシステムを備える、請求項9に記載のイオン源。
【請求項11】
前記イオン源が、前記イオン偏向板から、前記第三の電極と反対の方向に間隔があけられた第四の電極であって、前記第二の方向に移動する試料イオンを受けるよう位置付けられる第四の電極をさらに備える、請求項9に記載のイオン源。
【請求項12】
前記第四の電極は、前記試料支持部から前記第一の方向に移動する中性分子が、実質的に前記第四の電極に衝突しないように、位置付けられる、請求項11に記載のイオン源。
【請求項13】
前記第一の電極と、前記第二の電極と、前記第三の電極とが、イオンビームを形成するための前記試料イオンを抽出するように配置され、照射角度および第一の方向は、実質的に前記イオンビームの中心における、前記試料イオンの第三の電極からの出口での軌跡の角度が、前記試料イオンの質量と実質的に無関係である、請求項1に記載のイオン源。
【請求項14】
前記非抽出電場が、遅延電場であって、前記試料表面から離れる方向に、前記試料イオンの動作を遅延させる遅延電場を含む、請求項1に記載のイオン源。
【請求項15】
2つ以上の操作モードを有する飛行時間型質量分析計の操作方法であって、前記飛行時間型質量分析計は、試料表面を有する試料支持部と、前記試料支持部から間隔があけられた第一の電極と、前記第一の電極から、前記試料支持部ホルダーと反対の方向に間隔があけられた第二の電極と、前記第二の電極から、前記第一の電極と反対の方向に間隔があけられた第三の電極とを有するイオン源を備え、前記方法は、
前記試料表面と前記第三の電極との電位差を選択することによって、イオンエネルギーを確立するステップと、
第一の操作モードのために、第一の電位を前記試料表面に印加し、第二の電位を前記第一の電極に印加することによって、z方向の時間集束面の位置を選択するステップと、
前記第一の操作モードのために、第三の電位を前記第二の電極に印加することによって、実質的に前記z方向に垂直な方向にイオンを集束するステップと
を含む、方法。
【請求項16】
前記試料支持部の表面上に配置される試料を提供するステップと、
前記試料支持部表面の法線から1度以下の範囲内の照射角度で、前記試料にエネルギーのパルスを照射することにより、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化によって試料イオンを形成するステップと、
所定時間において前記試料支持部表面と前記第一の電極との間に電位差を印加することによって、実質的に前記試料支持部の法線方向に、第一のイオン光軸に沿って、試料イオンを抽出するステップと
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第一のイオン光軸が、前記エネルギーのパルスと実質的に同軸で、実質的に一致する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記飛行時間型質量分析計の操作モードを、第二の操作モードに変更するステップと、
前記第二の操作モードのために、前記第一の電極に印加される電位を変化させることによって、z方向の時間集束面の位置を選択するステップと、
前記第二の操作モードのために、前記第二の電極に印加される電位を変化させることによって、実質的にz方向に垂直な方向にイオンを集束するステップと
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記試料支持部の表面上に配置される試料を提供するステップと、
前記試料支持部表面の法線から1度以下の範囲内の照射角度で、前記試料にエネルギーのパルスを照射することにより、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化によって試料イオンを形成するステップと、
所定時間において前記試料支持部表面と前記第一の電極との間に電位差を印加することによって、実質的に前記試料支持部の法線方向に試料イオンを抽出するステップと
を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第一のイオン光軸が、前記エネルギーのパルスと実質的に同軸で、実質的に一致する、請求項19に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2008−530557(P2008−530557A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555222(P2007−555222)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/004640
【国際公開番号】WO2006/086585
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(505123697)アプレラ コーポレイション (21)
【出願人】(506183133)エムディーエス インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】