説明

質量分析用プレートとそれを用いた薄層クロマトグラフィ−質量分析方法及び装置

【課題】有機化合物の合成や創薬分野に制限されず、環境、食品、工業品、その他における被測定成分の同定、定量分析を、複雑なインターフェースを必要とせず、且つ濃度の低い被測定成分にも適用して、簡単に、低コストで行うことを可能とする質量分析用プレートとそれを用いた薄層クロマトグラフィ−質量分析方法及び装置の提供を課題とする。
【解決手段】薄層クロマトグラフィ用プレート上で分離された被測定成分を該薄層クロマトグラフィ用プレートから転写させて質量分析に供するための質量分析用プレート30であって、プレート基板31上に被測定成分を担持するための固定相32として、吸着活性のない担体を積層してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は質量分析用プレートとそれを用いた薄層クロマトグラフィ−質量分析方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境、食品、生物、工業品等に含まれる化学物質の同定及び定量技術として、ガスクロマトグラフィ−質量分析装置(GC−MS装置)や液体クロマトグラフィ−質量分析装置(LC−MS装置)が広く利用されている。
GC−MS装置は一般に高揮発性〜中揮発性の有機化合物の分析を得意とするのに対して、LC−MS装置は一般に難揮発性の有機化合物や極性物質或いは熱的に不安的な有機化合物の分析を得意としている。
ところで、近年、分析ニーズが高まっている残留農薬や内分泌かく乱物質等の極微量の残留性有機汚染物質の多くは、難揮発性の有機化合物や極性物質或いは熱的に不安定な有機化合物であるため、分離・定量にはLC−MS装置を必要としている。しかしながらLC−MS装置ではキャリア相となる液体を高圧力・高流量で使用するため、高真空化で機能する質量分析器との接続がGC−MS装置と比べて難しく、必要なインターフェースが非常に高価になるという問題がある。
【0003】
一方、反応生成物の確認等を迅速、簡便に行えるツールとして薄層クロマトグラフィ(Thin Layer Chromatography、以下TLCとする。)が広く利用されている。薄層クロマトグラフィは、固定相としてシリカゲルやアルミナ等の多孔質吸着剤を表面に積層したTLCプレートを用い、このTLCプレートに被測定成分を含む試料溶液をスポット状等に載せた後、TLCプレートの端等を展開溶媒に浸して、該展開溶媒を展開し、試料溶液中の各被測定成分の固定相に対する吸着性の差により分離する方法である。
しかしながら薄層クロマトグラフィの場合、得られる情報は分離された各被測定成分の保持ファクター(Retention factor、略してRf値)だけであり、情報量が少ないという欠点がある。このため補完として、薄層クロマトグラフィにより分離した被測定成分のバンド(スポット)をTLCプレートから固定相ごと掻き出し、溶媒抽出等の方法によって被測定成分を分離し、これを赤外吸光分析装置や質量分析装置を用いて同定することが一般に行われている。
【0004】
前記薄層クロマトグラフィに質量分析装置を組み合わせた装置として、下記特許文献1に示す薄層クロマトグラフィ−質量分析装置(TLC−MS装置)がある。
前記特許文献1に示す薄層クロマトグラフ質量分析装置は、TLCプレートから被測定成分の抽出操作を行うことなく、TLCプレート上の被測定成分を質量分析器で直接測定する装置である。その分離工程はLC−MS装置と類似しており、薄膜を形成する固定相(固定担体)と展開溶媒(キャリア)である液体の間での被測定成分の分配と吸収作用により、各被測定成分の分離を行う。その後、展開溶媒を室温で気化させて乾燥させたTLCプレート上の分離した各被測定成分を、局所加熱手段により、順次、熱抽出し、ガス化した被測定対象成分をイオン化し、これを質量分析器に直接導入して、被測定成分の分離・定性分析を行うものである。
【特許文献1】特開平7−209252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に示す薄層クロマトグラフ質量分析装置では、LC−MS装置と類似の分離工程を持ち、且つ展開溶媒となる液体を除いて、質量分析器に導入するための特殊なインターフェースを必要としない。このため、極めて低コストにLC−MS装置が対象とする被測定成分を測定することができる。
しかしながらTLCプレート上の被測定成分を測定する際の感度は、同じ濃度の被測定成分がガラスプレートの如き表面が平滑な担体上に存在する場合に比べて、低下する。またTLCプレート上で分離した被測定成分のバンド(スポット)は広面積に拡がりやすいため、質量分析での定量性を確保することが難しいという問題がある。
このため従来のTLC−MS装置の利用分野は、創薬や有機合成分野等の高濃度試料が得られる分野に制限されており、環境、食品、工業品等の低濃度試料しか得られないような分野での化学物質の同定及び定量技術としての利用に難があった。
【0006】
そこで本発明は上記従来の薄層クロマトグラフィ−質量分析装置の問題を解消し、有機化合物の合成や創薬分野に制限されず、環境、食品、工業品、その他における被測定成分の同定、定量分析を、複雑なインターフェースを必要とせず、且つ濃度の低い被測定成分にも適用して、簡単に、低コストで行うことを可能とする、質量分析用プレートとそれを用いた薄層クロマトグラフィ−質量分析方法及び装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の質量分析用プレートは、薄層クロマトグラフィ用プレート上で分離された被測定成分を該薄層クロマトグラフィ用プレートから転写させて質量分析に供するための質量分析用プレートであって、プレート基板上に被測定成分を担持するための固定相として、吸着活性のない担体を積層してあることを第1の特徴としている。
また本発明の質量分析用プレートは、上記第1の特徴に加えて、担体の比表面積が0.1〜5m/gの範囲にあることを第2の特徴としている。
また本発明の質量分析用プレートは、上記第1又は第2の特徴に加えて、固定相の積層厚を1〜2000μmとしたことを第3の特徴としている。
また本発明の質量分析用プレートは、上記第1〜第3の何れかの特徴に加えて、プレート基板上の担体による固定相の積層は、分離された被測定成分を薄層クロマトグラフィ用プレートから転写させるための転写用積層部の他に、転写させた被測定成分を更に展開液の下流方向に展開して濃縮させるための濃縮用積層部を有することを第4の特徴としている。
また本発明の質量分析用プレートは、上記第4の特徴に加えて、濃縮用積層部は、転写用積層部から展開液の下流に向けてその幅を細く且つ複数に分岐したパターンに構成してあることを第5の特徴としている。
また本発明の質量分析用プレートは、上記第4又は第5の特徴に加えて、プレート基板には、被測定成分が濃縮される位置に対応した裏面の位置に、熱抽出用の熱線を吸収しやすい受光部を設けていることを第6の特徴としている。
また本発明の質量分析用プレートは、上記第1〜第6の何れかに記載の特徴に加えて、薄膜クロマトグラフィ用プレートを一体的に結合させてあることを第7の特徴としている。
また本発明の薄層クロマトグラフィ−質量分析方法は、上記第1〜第7の特徴の何れかに記載の質量分析用プレートを用いた薄層クロマトグラフィ−質量分析方法であって、被測定成分を薄層クロマトグラフィ用プレートを用いて分離する第1工程と、分離された被測定成分を薄層クロマトグラフィ用プレートから質量分析用プレートに転写させる第2工程と、質量分析用プレートに転写された被測定成分を、熱抽出、イオン化して、質量分析に供する第3工程とからなることを第8の特徴としている。
また本発明の薄層クロマトグラフィ−質量分析方法は、上記第8の特徴に加えて、第2工程においては、薄層クロマトグラフィ用プレートに対して質量分析用プレートを接面させ、展開液を用いて薄層クロマトグラフィ用プレートの被測定成分を質量分析用プレートに移動させて転写を行わせることを第9の特徴としている。
また本発明の薄層クロマトグラフィ−質量分析方法は、上記第8又は第9の特徴に加えて、第2工程には、転写させた被測定成分を質量プレート上で濃縮させる付属動作を含むことを第10の特徴としている。
また本発明の薄層クロマトグラフィ−質量分析装置は、上記第1〜第7の特徴の何れかに記載の質量分析用プレートを用いた薄層クロマトグラフィ−質量分析装置であって、質量分析用プレートを位置調節可能に走査して分析に供するための質量分析用プレート設置ステージを設けてあることを第11の特徴としている。
また本発明の薄層クロマトグラフィ−質量分析装置は、上記第11の特徴に加えて、質量分析用プレート設置ステージに配置された質量分析用プレートを局所加熱する加熱手段と、該加熱手段による加熱によって熱抽出された被測定成分を含むガスをイオン化するイオン化手段と、該イオン化手段によってイオン化されたガスから被測定成分イオンを検出するイオン検出手段とを、少なくとも有することを第12の特徴としている。
また本発明の薄層クロマトグラフィ−質量分析装置は、上記第12の特徴に加えて、イオン化手段が、ソフトイオン化法を用いたイオン化手段であることを第13の特徴としている。
また本発明の薄層クロマトグラフィ−質量分析装置は、上記第13の特徴に加えて、イオン化手段が、ソフトイオン化法としてイオン付着イオン化法を用いたイオン化手段であることを第14の特徴としている。
また本発明の薄層クロマトグラフィ−質量分析装置は、上記第12〜第14の何れかの特徴に加えて、質量分析用プレート設置ステージに配置された質量分析用プレートからの被測定成分の熱抽出を減圧下で行うための減圧手段を有することを第15の特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の質量分析用プレートによれば、プレート基板上に吸着活性のない担体を積層してあるので、質量分析用プレートを質量分析に供する際、固定相からの被測定成分の熱抽出を、より高濃度で確実に且つ低エネルギーで行うことができる。即ち、薄層クロマトグラフィ用プレートを直接的に質量分析に供する場合には、多孔質吸着剤からなる固定相に担持された被測定成分を熱抽出しなければならず、吸着エネルギーに打ち勝って熱抽出を行わねばならないことから、熱抽出効率が悪く、熱抽出される被測定物の濃度が低く、よって測定感度が低く、また抽出に要するエネルギーを大きくする必要があった。本発明の質量分析用プレートは吸着活性のない担体を積層状態に用いているので、薄層クロマトグラフィ用プレートから転写された被測定成分を熱抽出する際、非常に担持エネルギーが低い状態で熱抽出が行われことになり、熱抽出効率よく、担持されている被測定成分の大半を確実に、高濃度で熱抽出することがでる。勿論、低エネルギーで熱抽出ができるので、分解されやすい被測定成分にも適用できる。
よって本発明の質量分析用プレートを用いることで、従来の薄層クロマトグラフィ−質量分析では困難であった、低濃度物質の同定及び定量を感度よく行うことが実現できる。
勿論、請求項1の質量分析用プレートは、固定相として吸着活性のない担体を積層してなるので、溶媒によって洗浄することで、被測定成分を十分に除去することが可能となり、繰り返し使用が可能となる。
【0009】
請求項2に記載の質量分析用プレートによれば、上記請求項1に記載の構成による作用効果に加えて、担体の比表面積が0.1〜5m/gの範囲にあるので、
担体の比表面積が小さく、即ち担体に細孔が少ないことから、被測定成分の担体中での移動を十分容易にすることができると共に、担体からの被測定成分の熱抽出に際しても、被測定成分を容易に担体から離脱させることができる。
【0010】
請求項3に記載の質量分析用プレートによれば、上記請求項1又は2に記載の構成による作用効果に加えて、固定相の積層厚を1〜2000μmとしたので、
積層厚が薄すぎることなく、よって分析に必要な量の被測定成分を積層内に担持することができる。また積層厚が厚すぎることなく、よって被測定成分の展開液による展開を容易に行うことができる。
【0011】
請求項4に記載の質量分析用プレートによれば、上記請求項1〜3の何れかに記載の構成による作用効果に加えて、固定相の積層が転写用積層部の他に、転写させた被測定成分を更に展開液の下流方向に展開して濃縮させるための濃縮用積層部を有するので、
薄層クロマトグラフィ用プレートから質量分析用プレートの転写用積層部に転写した被測定成分を、更に濃縮用積層部において展開しながら濃縮してゆくことができる。よって、この被測定成分を濃縮させた質量分析用プレートを用いて質量分析に供することで、濃度の低い試料を用いて、また薄層クロマトグラフィ用プレートに拡がって分離された被測定成分を濃縮して、より効率よく、より確実な質量分析が可能となる。
【0012】
請求項5に記載の質量分析用プレートによれば、上記請求項4に記載の構成による作用効果に加えて、濃縮用積層部は、転写用積層部から展開液の下流に向けてその幅を細く且つ複数に分岐したパターンに構成してあるので、
転写用積層部に転写された被測定成分を展開液によって下流方向に展開してゆくことで、その被測定成分の担持幅(スポット幅)を自動的に狭めてゆくことができる。よって被測定成分の濃縮を容易に行うことができる。また濃縮用積層部は展開液の下流に向けて複数に分岐されているので、転写用積層部に転写された複数の被測定成分のスポットを、それぞれ別々に濃縮用積層部の各分岐した積層部に展開、濃縮してゆくことができる。
【0013】
請求項6に記載の質量分析用プレートによれば、上記請求項4又は5に記載の構成による作用効果に加えて、被測定成分が濃縮される位置に対応した裏面の位置に、熱抽出用の熱線を吸収しやすい受光部を設けたので、
該受光部に熱線を当てることで、効率よく被測定成分を加熱して熱抽出させることができる。
【0014】
請求項7に記載の質量分析用プレートによれば、上記請求項1〜6の何れかに記載の構成による作用効果に加えて、薄層クロマトグラフィ用プレートを一体的に結合させてあるので、
一体となったプレートのうちの薄層クロマトグラフィ用プレートで先ず被測定成分を一次展開させて分離させ、次に分離された被測定成分を薄層クロマトグラフィ用プレートから一体的に結合されている質量分析用プレートに向けて、特別な接合作業等を行うことなく、そのまま二次展開させて転写を行うことができる。よって、薄層クロマトグラフィ用プレートと質量分析用プレートを別葉にしたものを用いて操作を行う場合に比べて、作業、操作を簡単で効率よく行うことができ、取り扱いも容易であるメリットがある。
【0015】
請求項8に記載の薄層クロマトグラフィ−質量分析方法によれば、請求項1〜7の何れかに記載の質量分析用プレートを用い、被測定成分を薄層クロマトグラフィ用プレートを用いて分離する第1工程と、分離された被測定成分を薄層クロマトグラフィ用プレートから質量分析用プレートに転写させる第2工程と、質量分析用プレートに転写された被測定成分を、熱抽出、イオン化して、質量分析に供する第3工程とからなるので、
薄層クロマトグラフィで分離した被測定成分を、熱抽出性能のよくない薄層クロマトグラフィ用プレートから熱抽出性能のよい質量分析用プレートに転写して、質量分析に供することができる。よって質量分析用プレートに担持された被測定成分を、高い回収率で効率よく熱抽出することができ、良好な質量分析ができる。また本分析方法によれば、有機化合物の合成や創薬分野に限定されず、環境、生物、食品、工業品を対象として、より濃度の低い試料の成分同定や定量分析が可能となる。
【0016】
請求項9に記載の薄膜クロマトグラフィ−質量分析方法によれば、上記請求項8に記載の構成による作用効果に加えて、第2工程においては、薄層クロマトグラフィ用プレートに対して質量分析用プレートを接面させ、展開液を用いて薄層クロマトグラフィ用プレートの被測定成分を質量分析用プレートに移動させて転写を行わせるので、
被測定成分を薄層クロマトグラフィ用プレートから質量分析用プレートに、接面を介して毛細管現象によってスムーズに、短時間で確実に移動させて転写させることができる。
【0017】
請求項10に記載の薄膜クロマトグラフィ−質量分析方法によれば、上記請求項8又は9に記載の構成による作用効果に加えて、第2工程には、転写させた被測定成分を質量分析用プレート上で濃縮させる付属動作を含むことにより、
質量分析用プレートに担持された被測定成分の濃度を、薄層クロマトグラフィ用プレート上に分離された際の被測定成分の濃度よりも更に高くすることができ、より性能のよい質量分析を行うことができる。
【0018】
請求項11に記載の薄層クロマトグラフィ−質量分析装置によれば、請求項1〜7の何れかに記載の質量分析用プレートを用いた薄層クロマトグラフィ−質量分析装置であって、質量分析用プレートを位置調節可能に走査して分析に供するための質量分析用プレート設置ステージを設けてあるので、
熱抽出性能のよくない薄層クロマトグラフィ用プレートではなく、熱抽出性能のよい質量分析用プレートを現に質量分析用プレート設置ステージにセットすることができ、質量分析用プレートを用いた性能のよい質量分析に供することができる。
また質量分析用プレート設置ステージを走査することで、セットされた質量分析用プレート上の各被測定成分が担持されている各スポットをそれぞれ確実に所定位置にセットし、熱抽出等の作業を行うことができる。
よって本装置によれば、質量分析用プレートに担持された被測定成分を、高い回収率で効率よく熱抽出することができ、良好な質量分析ができる。またこのため、有機化合物の合成や創薬分野に限定されず、環境、生物、食品、工業品を対象として、より濃度の低い試料の成分同定や定量分析が可能となる。
【0019】
請求項12に記載の薄層クロマトグラフィ−質量分析装置によれば、上記請求項11に記載の構成による作用効果に加えて、質量分析用プレート設置ステージに配置された質量分析用プレートを局所加熱する加熱手段と、該加熱手段による加熱によって熱抽出された被測定成分を含むガスをイオン化するイオン化手段と、該イオン化手段によってイオン化されたガスから被測定成分イオンを検出するイオン検出手段とを、少なくとも有することで、
質量分析用プレート設置ステージに設置された質量分析用プレートを加熱手段によって局所加熱することで、質量分析用プレートの各担持スポットだけを加熱し、これによってそのスポットにある被測定成分だけを、夾雑物なく、ガスとして熱抽出し、更にイオン化手段でイオン化し、このイオン化された被測定成分がイオン検出手段によって検出されて、質量分析を現に行うことができる。
【0020】
請求項13に記載の薄層クロマトグラフィ−質量分析装置によれば、上記請求項12に記載の構成による作用効果に加えて、イオン化手段が、ソフトイオン化法を用いたイオン化手段であるので、
イオン化のための印加エネルギーを低くすることができ、被測定成分のフラグメント化による質量スペクトルの複雑化を回避することができる。
【0021】
請求項14に記載の薄層クロマトグラフィ−質量分析装置によれば、上記請求項12に記載の構成による作用効果に加えて、イオン化手段が、ソフトイオン化法としてイオン付着イオン化法を用いたイオン化手段であるので、
被測定成分のフラグメント化を十分に抑制した状態でイオン化を行うことができ、分析のしやすい質量スペクトルを得ることができる。
【0022】
請求項15に記載の薄層クロマトグラフィ−質量分析装置によれば、上記請求項12〜15の何れかに記載の構成による作用効果に加えて、質量分析用プレート設置ステージに配置された質量分析用プレートからの被測定成分の熱抽出を減圧下で行うための減圧手段を有するので、
熱的に不安定な被測定成分の熱抽出においても、該被測定成分の分解、フラグメント化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施形態を以下に説明する。
図1は本発明に係る質量分析用プレートを用いた薄層クロマトグラフィ−質量分析装置の実施形態を示す概略構成図である。
図2〜図7に本発明の質量分析用プレートの実施形態を示す。図2は質量分析用プレートの第1の実施形態を示す斜視図である。図3は質量分析用プレートの第2の実施形態を示し、(A)は上面側の斜視図、(B)は底面側の斜視図である。図4は質量分析用プレートの第3の実施形態を示し、(A)は上面側から見た斜視図、(B)は底面側から見た斜視図である。図5は質量分析用プレートの第4の実施形態を示し、(A)は上面側から見た斜視図、(B)は底面側から見た斜視図である。図6は質量分析用プレートの第5の実施形態を示し、上面側から見た斜視図、図7は質量分析用プレートの第6の実施形態を示し、上面側から見た斜視図である。
図8〜図12は本発明に係る質量分析用プレートを用いた薄層クロマトグラフィ−質量分析方法の実施形態を説明する図で、それぞれ薄層クロマトグラフィ用プレートと質量分析用プレートとによる被測定成分の展開、転写、濃縮を説明する図である。
【0024】
先ず図1を参照して、本発明の実施形態に係る薄層クロマトグラフィ−質量分析装置(以下、TLC−MS装置と称する)10は、薄層クロマトグラフィ用プレ−ト(以下、TLCプレートと称する)から被測定成分を転写させた質量分析用プレート(以下、MSプレートと称する)20〜60を設置(セット)するための質量分析用プレート設置ステージ(以下、MSプレート設置ステージ)13を備えている点において、これまでの質量分析装置と異なっている。他の点は従来の質量分析装置と大きくは異ならない。
【0025】
TLC−MS装置10は、試料室11と質量分析室12とを有している。前記試料室11に対しては、MSプレート設置ステージ13が設備されている。またMSプレート設置ステージ13に設置されたMSプレート20〜60の所定の位置を局所加熱するための加熱手段14と、該加熱手段14による加熱によって熱抽出された被測定成分を含むガスをイオン化するイオン化手段15と、イオン化したガスを整流して質量分析室12へ送り込むイオン送込み手段16とを、少なくとも有する。
また前記質量分析室12には、質量分析室12に送り込まれてきたイオンを質量分離する質量分離手段17と、質量分離されたイオンを検出するイオン検出手段18とを、少なくとも有する。
また前記試料室11と質量分析室12を、必要に応じて所定の減圧状態に排気する減圧手段19が設けられている。
【0026】
前記MSプレート設置ステージ13は、MSプレート20〜60を設置した状態で、該MSプレート20〜60の所定の位置を所定の地点に位置決めできるように、即ち位置調節可能に、走査できる構成としている。MSプレート20〜60の位置調節は、試料室11の外部から走査できるようになされている。走査は、少なくともX−Yの二次元平面での位置が、手動或いは自動的に行えるようにしている。勿論、MSプレートの所定の位置を三次元的に位置決めできるように構成してもよい。
【0027】
前記加熱手段14は、前記MSプレート設置ステージ13に設置されたMSプレート20〜60の所定の位置を局所加熱し、これによってMSプレート20〜60に担持されている被測定成分を熱抽出するために用いられる。該加熱手段14は、例えば赤外線レーザ等の熱線源14aと、該熱線源14aから発せられた熱線を集光させる反射板やレンズ等の集光手段14bとから構成することができる。勿論、MSプレート20〜60を局所加熱できるものであれば、具体的構成を特に限定されるものではない。
MSプレート設置ステージ13を走査してMSプレート上に担持された被測定成分のスポットを所定の目標位置として位置合わせし、該目標位置を加熱手段14で局所加熱することで、被測定成分の担持スポットを局所加熱し、被測定成分をガス状に熱抽出することができる。
なお当然であるが、上記MSプレート設置ステージ13は、加熱手段14からの熱線によって、MSプレートの所定のスポット位置を加熱するのを妨げないような構造にしておく必要がある。
【0028】
前記イオン化手段15は、熱抽出された被測定成分を含むガスをイオン化し、質量分析に供することができるようにするためのもので、イオン化室15a内に導入された抽出ガスをイオン化する。イオン化手段15は、例えばイオン付着イオン化法を用いたイオン化手段とすることができる。が、その他のいわゆるソフトイオン化法を用いたイオン化手段であってもよい。ソフトイオン化法は低エネルギーでイオン化を行うイオン化法で、フラグメントフリーのイオン化が可能となる。勿論、一般的な電子イオン化法(電子衝撃イオン化法)を用いたイオン化手段であっても可能である。
前記イオン付着イオン化法を用いる場合は、隣接のイオン源室15bで、例えばLiイオンを発生させ、このLiイオンをイオン化室15a内に導いて、前記抽出された被測定成分ガスに付着させることで、被測定成分のイオン化を行う。
【0029】
前記イオン送込み手段16は、前記イオン化室15aでイオン化されたガスを、整流して質量分析室12へ送り込むために、例えば電場を加えて、ガスイオンを一定方向に加速して、質量分析室12内へ飛行させる構成とされている。
【0030】
前記質量分離手段17は、質量分析室12に送り込まれてきたイオンを質量分離するための手段で、例えば電磁場を付加した飛行空間17aを構成しており、被測定成分のイオンが真空状態にある飛行空間17aを飛行する間に、質量電荷比(m/z)によって飛行運動に違いが生じるようにして、イオンの分離を行う。具体的なイオンの分離の仕方は、イオン振幅の違い、飛行時間の違い、軌道の違い等を利用した周知の分離手段を用いることができる。
【0031】
前記イオン検出手段18は、質量分離手段17を経てきたイオンを検出するためのもので、例えば二次電子倍増管等を用いることができる。しかしながら、イオンを高精度で検出し、増幅できるものが好ましい。イオン検出手段18による検出によって、質量電荷比(m/z)とイオンのシグナル強度とからなるデータ(マススペクトル)が得られる。このデータから被測定成分の同定、或いは構造決定が可能となる。
【0032】
前記減圧手段19は、前記試料室11と質量分析室12を、必要に応じて所定の減圧状態に排気するためのもので、種々の真空ポンプを用いることが可能である。
【0033】
なお既述したが、本発明のTLC−MS装置10は、MSプレート設置ステージ13以外の各手段、設備、要素において、従来周知の質量分析装置の各手段、設備、要素を用いることが可能である。
【0034】
次に図2〜図7を参照して、TLC−MS装置10のMSプレート設置ステージ13に対して設置されるMSプレート20〜60について説明する。
先ず図2に、本発明に係る質量分析用プレート(MSプレート)の第1の実施形態を示す。この実施形態のMSプレート20はプレート基板21と、該プレート基板21の上面に被測定成分を担持するための固定相22とからなる。固定相22は薄膜を積層したものである。
前記プレート基板21としては、ガラス、石英、樹脂を用いることができる。これらの材料は熱伝導性が悪いために、前記TLC−MS装置で加熱手段14による加熱を行う際に効率よく局部を加熱することができる。ただし樹脂の場合は加熱温度に限界がある。
プレート基板21の厚みは、特に限定されないが、上面に積層させる固定相22に亀裂等が入ることなく安定した均質な状態にその積層状態を維持できる強度となる厚みを低限とし、また前記加熱手段14によってMSプレート20の裏面にスポットされた熱線による加熱が効率よく上面の固定相22に伝熱される厚みを上限とすることができる。この厚みは例えば、0.1〜数ミリの範囲とすることができる。
【0035】
前記固定相22は、吸着活性のない担体をプレート基板21の上面に積層して構成している。この担体の材料としては、例えばガラス、石英、二酸化珪素、ポリマーを用いることができる。これらの材料を1μm〜1mmからなる粒状、繊維状として用いる。MSプレート20はTLCプレートから被測定成分の転写を行うプレートであるが、この転写は、溶媒の展開速度とその際の溶媒と固体担体での被測定成分の分配とによる影響を受ける。担体のサイズが1μm未満の場合は、粒子が小さすぎて、転写時の圧損抵抗が大きくなり、溶媒の展開に時間がかかる。また担体のサイズが1mmを超えると、TLCプレートの担体サイズ(5μm〜300μm)に比べて大きすぎて、溶媒の展開が速くなりすぎ、短い時間の間に溶媒と固体担体とでの被測定成分の分配が十分に起こらず、転写に必要な溶媒量が多くなる。MSプレート20の固定相22の担体のサイズは、好ましくは10〜500μmとする。
MSプレート20の固定相22の担体は、その比表面積が0.1〜5m/gの範囲とする。この程度の小さい比表面積を有する担体粒子を用いることで、吸着不活性ないし吸着活性の少ない固定相とすることができる。よって担体に細孔が少ないことから、被測定成分の担体中での移動を十分容易にすることができると共に、担体からの被測定成分の熱抽出に際しても、被測定成分を容易に担体から離脱させることができる。
固定相22の担体の比表面積は、好ましくは0.1〜1m/gの範囲とする。
【0036】
前記固定相22は、バインダーを用いて前記担体材料をプレート基板21上に、例えば塗布して、成形固定することで構成される。これによって担体材料が均一に積層された薄層が形成される。
固定相22の積層厚は1〜2000μmとする。積層厚が1μm未満では、測定に必要な被測定成分を積層内に担持することができない。また積層厚が2000μmを超えると、展開液による展開速度が遅くなりすぎる。積層厚は、好ましくは10〜300μmとする。
前記バインダーは、MSプレート20が前記加熱手段14等により加熱された際に、引き続きバインダーとしての機能を発揮することができるもので、且つ加熱時に質量分析の妨害となる成分の気化が生じない、有機バインダー、無機バインダーを用いることができる。例えば無機バインダーのギブス(CaSO)を用いることができる。
【0037】
図3に本発明に係るMSプレートの第2の実施形態を示す。この実施形態のMSプレート30は、プレート基板31と固定相32とからなる。このプレート基板31は、既述した第1の実施形態のMSプレート20のプレート基板21と同じであるので、説明を省略する。また固定相32は、既述した固定相22と基本的に同じ構成であるので説明を省略する。
ただしMSプレート30では、固定相32の積層を、転写用積層部32aと、濃縮用積層部32bとから構成している。
転写用積層部32aは、TLCプレートと接面する領域である。この転写用積層部32aでTLCプレートから被測定成分の転写を受ける。
また前記濃縮用積層部32bは、前記転写用積層部32aで転写された被測定成分を、更に展開液の下流方向(図3のY矢符)に展開、移動させながら、濃縮させるための領域である。
【0038】
前記濃縮用積層部32bは、前記Y矢符で示す展開液の下流方向に向けて、複数の分岐通路321を分岐させたパターンとしている。該パターンにおいて、各分岐通路321は、その分岐開始領域321aで分岐通路321の幅が下流に向けて狭くなるように構成されている。
また各分岐通路321は、その先端付近を袋小路状に行き止まる行き止まり部321bに構成している。
前記分岐開始領域321aで分岐通路321の幅が下流に向けて狭くなることで、MSプレート30に転写された被測定成分を更に展開液の下流方向の分岐通路321に展開させることで、被測定成分を濃縮させることができる。
また前記分岐通路321に行き止まり部321bを設けることで、分岐通路321に展開された被測定成分を行き止まり状態に濃縮することができる。
【0039】
MSプレート30のプレート基板31には、前記分岐通路321の先端領域、即ち行き止まり部321b付近に対応する裏面の位置に、それぞれ受光部31aを設けている。該受光部31aを設ける位置を、より一般的に言えば、被測定成分が濃縮される位置に対応したプレート基板30の裏面位置ということができる。
受光部31aは、熱線吸収率の高い黒色の集光材や熱伝導率の高い金属薄膜を、プレート基板31裏面の、各行き止まり部321bに対応する位置に、貼り付けたり或いは蒸着させたりして設けることができる。
受光部31aを設けることで、加熱手段14からの熱線を受けて、被測定成分が担持されたスポット付近を、それぞれ局所的に効率よく加熱することができる。これによって、被測定成分の熱抽出を効率よく速やかに行うことができる。また他の位置にある他の被測定成分が同時に熱抽出されて混じってしまうといったことも防止できる。
【0040】
図4に本発明に係るMSプレートの第3の実施形態を示す。この実施形態のMSプレート40は、プレート基板41と固定相42とからなる。プレート基板41には受光部41aを設けている。また固定相42には転写用積層部42aと濃縮用積層部42bとを設けている。また濃縮用積層部42bには複数の分岐通路421を設け、分岐通路421には分岐開始領域421aと行き止まり部421bとを設けている。
以上の点は上記第2の実施形態で既述したので、説明を省略する。第3の実施形態におけるMSプレート40、プレート基板41、固定相42、受光部41a、転写用積層部42a、濃縮用積層部42b、分岐通路421、分岐開始領域421a、行き止まり部421bは、第2の実施形態におけるMSプレート30、プレート基板31、固定相32、受光部31a、転写用積層部32a、濃縮用積層部32b、分岐通路321、分岐開始領域321a、行き止まり部321bに対応する。
ただし、この第3の実施形態に係るMSプレート40では、固定相42の転写用積層部42aと濃縮用積層部42bとのうち、転写用積層部42aについては、その途中領域を非積層領域422としている。この非積層領域422には展開液が展開しない。
【0041】
図5に本発明に係るMSプレートの第4の実施形態を示す。この実施形態のMSプレート50も、基本的には上記第2の実施形態のMSプレート30と同じである。
このMSプレート50の場合は、展開液の流れ方向における転写用積層部52aの寸法が短い点に特徴がある。
MSプレート50、プレート基板51、固定相52、受光部51a、濃縮用積層部52b、分岐通路521、分岐開始領域521a、行き止まり部521bは、既述した第2の実施形態におけるMSプレート30、プレート基板31、固定相32、受光部31a、濃縮用積層部32b、分岐通路321、分岐開始領域321a、行き止まり部321bに対応するので、説明を省略する。
【0042】
図6に本発明に係るMSプレートの第5の実施形態を示す。この実施形態のMSプレート60も、基本的には上記第2の実施形態のMSプレート30と同じである。
本MSプレート60では、分岐通路621を交互に短路、長路にすることで、受光部61a間の距離を相互に離し、これによって分岐通路621の数を増やし、1枚のMSプレート60で測定できる被測定成分の数を多くしたものである。
前記分岐通路621を同じ長さで増やした場合には、被測定成分を熱抽出するために用いる受光部61aの距離がそれだけ近接し、熱抽出の際に隣接の被測定成分が混入抽出される問題が生じるが、本実施形態のように構成することで、隣接被測定成分の混入のおそれを無くすることができる。
なお受光部61aは、既述した受光部31aの場合と同様に、プレート基板61の裏面に設ける。
MSプレート60に、プレート基板61、固定相62、受光部61a、転写用積層部62a、濃縮用積層部62b、分岐通路621、分岐開始領域621a、行き止まり部621bを設けることは、既述した第2の実施形態の場合と同様である。それらの構成、機能は、対応するMSプレート30、プレート基板31、固定相32、受光部31a、転写用積層部32a、濃縮用積層部32b、分岐通路321、分岐開始領域321a、行き止まり部321bと同様である。
また上記第4の実施形態において構成した非積層領域422と同様の非積層領域を、本第5の実施形態においても、固定相62の転写用積層部62aの途中領域に同様に構成することができる。
【0043】
図7に本発明に係るMSプレートの第6の実施形態を示す。この実施形態では、MSプレート70に対してTLCプレート80を一体的に結合させている。即ち、TLCプレート80を一体的に結合させたMSプレート70を提供する。
ここで、MSプレート70は、プレート基板71と固定相72とからなる。このプレート基板71と固定相72は、図2に示す上記第1の実施形態のMSプレート20のプレート基板21、固定相72と同様であってもよい。
また固定相72には、図3〜図6に示す分岐通路321、421、521、621と同様な役割を果たす濃縮用の分岐通路を設けてもよい。またプレート基板71には、図3〜図5に示す受光部31aと同様な役割を果たす受光部を設けてもよい。
その他、MSプレート70のプレート基板71や固定相72の材料等は既述したものを用いることができる。
またTLCプレート80はプレート基板81と、その上面に積層された固定相82とからなっている。TLCプレート80のプレート基板81や固定相82は既に知られているTLCプレート用の周知の材料を用い、周知の製造方法を用いて構成することができる。ただしプレート基板81は、MSプレート70のプレート基板71と一体的に結合させるのに際して、MSプレート70のプレート基板71と強固に接着させることができる材料が好ましい。この材料は、例えばMSプレート70のプレート基板71と同じ材料を用いることができる。
なお、MSプレート70とTLCプレート80とは、展開溶媒による展開方向が相互の直角方向になるように結合される。
【0044】
図8〜図12を用いて、本発明の薄層クロマトグラフィ−質量分析方法(以下、TLC−MS方法と称する)における第2工程、即ちTLCプレートに担持された被測定成分をMSプレートに移動させて転写を行わせる工程を説明する。
【0045】
図8を参照して、図2に示す第1の実施形態に係るMSプレート20を用いたTLC−MS方法における第2工程を説明する。
符号80はTLCプレートで、プレート基板81の上面に固定相82が積層されている。図8ではTLCプレート80が裏返された状態で、MSプレート20に接面されている状態を示し、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【0046】
ところで本発明のTLC−MS方法における第2工程に先立つ第1工程では、TLCプレート80を用いて被測定成分を分離する。TLC(薄層クロマトグラフィ)プレートは既に周知の分析方法であるTLC法に用いられるもので、固定相としてシリカゲルやアルミナ等の多孔質吸着剤を表面に積層したプレートである。
第1工程では、TLCプレート80の固定相82上に被測定成分を含む試料溶液をスポットF状等に載せた後、試料溶液スポットFのある一端側を展開溶媒に浸して、該展開溶媒をX矢符で示す方向に展開させる。
これによって、試料溶液中の各被測定成分が、固定相82に対する吸着性の差により、複数の各測定成分毎のスポットF〜Fに分離される。その後、TLCプレートを乾燥して、展開溶媒を除去する。
【0047】
第2工程では、先ず前記被測定成分が各スポットF〜Fに分離された状態で安定したTLCプレート80をMSプレート20に接面させる。
接面は、TLCプレート80を裏返して、各スポットF〜Fを担持した固定相82をMSプレート20の固定相22に接面させ、その状態でクランプする。
そしてMSプレート20の一端側(図8の(A)の手前側、(B)の左端側)を展開溶媒に浸漬して、溶媒を展開させる。
展開溶媒は、例えばアルコール類等、被測定成分の溶媒となることができる液を用いることができる。
また展開溶媒による展開方向(二次展開方向)は、Y矢符で示す方向、即ち前記TLCプレート80での展開方向(一次展開方向)のX矢符方向に対して直角な方向とする。
図8の(B)に示すように、溶媒はMSプレート20の固定相22を一端側(図上で左側)から展開移動し、その途中から溶媒の一部がTLCプレート80の固定相82に移動し、各スポットF〜Fの各被測定成分を担持して、再びMSプレート20に戻る。
以上によって、TLCプレート80の各スポットF〜Fに担持された各被測定成分がMSプレート20の固定相22にそれぞれ転写される。転写された各被測定成分は、二次展開スポットS〜Sとして固定相22に担持される。
なお、MSプレート20に転写された各被測定成分を更にY矢符方向に展開移動させながら、各被測定成分を濃縮することが可能である。例えばMSプレート20上での展開溶媒の濃度を濃縮領域付近で制御することで、溶媒の展開速度を調整し、これによって任意の箇所に各被測定成分が濃縮されるようにすることが可能である。
【0048】
図9を参照して、図3に示す第2の実施形態に係るMSプレート30を用いたTLC−MS方法における第2工程を説明する。
図9の(A)はTLCプレート80を裏返してMSプレート30に接面した状態を示す斜視図、(B)は断面図である。
先ず前記被測定成分が各スポットF〜Fに分離された状態で安定したTLCプレート80を用いて、これを裏返して、固定相82をMSプレート30上面の固定相32の転写用積層部32aに接面し、その状態でクランプする。
そしてMSプレート30の転写用積層部32aの一端側(図9の(A)の手前側、(B)の左端側)を展開溶媒に浸漬して、溶媒を展開させる。これによって、溶媒がY矢符で示す二次展開方向に展開して、TLCプレート80の各スポットF〜Fの各被測定成分がMSプレート30の固定相32にそれぞれ転写される。以上までは、第1の実施形態に係るMSプレート20を用いたTLC−MS方法における第2工程と同じである。
【0049】
この第2の実施形態に係るMSプレート30を用いたTLC−MS方法では、第2工程に、転写させた被測定成分をMSプレート30上で濃縮させる付属動作を含ませている。
即ち、前記MSプレート30に転写された各被測定成分の二次展開スポットS〜Sは、更にY矢符方向に展開されることで、それぞれのスポットS〜Sが何れかの分岐通路321の分岐開始領域321aに達する(図の破線で示す各スポットS〜S)。そして、そこで通路幅を狭められながら分岐通路321に進入して行き、やがて分岐通路321の先端付近の行き止まり部321bに達して、そこで行き止まり状態に濃縮される(図の実線で示すスポットS〜S)。
前記行き止まり部321bに達した各被測定成分の二次展開スポットS〜Sは、MSプレート30の裏側の受光部31aに対応することになる。従ってMSプレート30をTLC−MS装置で加熱、熱抽出する際には、加熱手段14による二次展開スポットS〜Sの被測定成分の加熱、抽出が効率よく行われる。
【0050】
図10を参照して、図4に示す第3の実施形態に係るMSプレート40を用いたTLC−MS方法における第2工程を説明する。
図10の(A)はTLCプレート80を裏返してMSプレート40に接面した状態を示す斜視図、(B)は断面図、(C)は変形例を示す断面図である。
このMSプレート40を用いたTLC−MS方法の第2工程においても、TLCプレート80上で分離された一次展開スポットF〜Fを、MSプレート40上に二次展開スポットS〜Sとして転写し、更に分岐通路421の先端付近の行き止まり部421bまで展開して濃縮を行う点は、第2の実施形態に係るMSプレート30を用いたTLC−MS方法の場合と同じである。
【0051】
ただし本実施形態のMSプレート40の場合、図10の(B)に示すように、TLCプレート80を、MSプレート40の非積層領域422を挟む転写用積層部42aの両側に掛け渡すようにして接面させるようにしている。
このようにTLCプレート80をMSプレート40上の非積層領域422に掛け渡すように接面させることで(図10の(B)参照)、MSプレート40の一端側(図10の(A)の手前側、(B)の左端側)から展開されて移動する溶媒の全量が一旦TLCプレート80に移動し、再びMSプレート40に戻る。このため第3の実施形態のMSプレート40を用いた場合には、第2の実施形態のMSプレート30を用いた場合よりも、溶媒展開による被測定成分の転写をより効率的に行えるメリットがある。
【0052】
図10の(C)に示す変形例では、TLCプレート80の一方の側端面を、MSプレート40における非積層領域422の溶媒展開上流側の端面に接面し、TLCプレート80の他方の側端付近の下面を、MSプレート40の溶媒展開下流側の端面の上面に接面させている。
図10の(C)に示すような状態にTLCプレート80とMSプレート40とを接面させることで、展開溶媒がMSプレート40からTLCプレート80に容易に、スムーズに移行でき、TLCプレート80上の被測定成分からなる一次展開スポットF〜FをスムーズにMSプレート40に転写させることができる。
【0053】
図11を参照して、図5に示す第4の実施形態に係るMSプレート50を用いたTLC−MS方法における第2工程を説明する。
図11の(A)はTLCプレート80を裏返してMSプレート50に接面させた状態を示す斜視図、(B)は断面図である。
このMSプレート50を用いたTLC−MS方法の第2工程では、一次展開スポットF〜Fを分離したTLCプレート80を、その一側で、MSプレート50の転写用積層部52a上面に接面する。
そしてTLCプレート80の他側(図11の(A)の手前側、(B)の左端側)を展開溶媒に浸漬して、溶媒を展開させる。これによって、溶媒がY矢符で示す二次展開方向に展開して、TLCプレート80の各スポットF〜Fの各被測定成分がMSプレート50の固定相52にそれぞれ転写される。
その後、転写されてなる二次展開スポットS〜Sは、更に展開されて、分岐通路521に進入して行き止まり部521bに達する。この点は既述した第2、第3の実施形態のMSプレート30、40の場合と同じである。
【0054】
図12を参照して、図7に示す第6の実施形態に係るMSプレート70を用いたTLC−MS方法における第1工程と第2工程を説明する。
先ず第1工程では、TLCプレート80を一体的に結合したMSプレート70のうち、TLCプレート80部分を用いて、被測定成分を分離する。被測定成分の分離は、試料溶液スポットFをTLCプレート80の展開基端側近くに形成し、TLCプレート80の一次展開基端(図面上TLCプレートの左端)から一次展開溶媒を用いて図面のX方向に一次展開する。これにより複数の一次展開スポットF、F、F、Fに被測定成分が分離される。
その後、TLCプレート80部分を乾燥して、一次展開溶媒を除去する。
次に第2工程では、2次展開溶媒を用いて、前記一次展開スポットF〜Fを一次展開方向Xとは直角な方向であるY方向に二次展開する。即ち、二次展開基端(図面上TLCプレートの手前端)から二次展開溶媒を用いて、一次展開スポットF〜FをY方向(MSプレート70の方向)に展開する。これにより、一次展開スポットF〜Fが二次展開溶媒によって移動し、TLCプレート80からMSプレート70に転写される。そして更にMSプレート70に奥深く、二次展開スポットS、S、S、Sとして展開される。
MSプレート70に被測定成分の濃縮用の分岐通路(分岐通路321、421、521、621に対応するもの)を設けたものでは、二次展開スポットS〜Sがそれぞれ分岐通路に分岐されて、濃縮されてゆく。
【0055】
本発明のTLC−MS方法では以上で説明した第1工程、第2工程が終了すると、第3工程を行う。第3工程では、MSプレート20〜60に転写された被測定成分を、熱抽出、イオン化して、質量分析に供する。
前記熱抽出は、被測定成分の二次展開スポットS〜Sが得られたMSプレート20〜60を、TLC−MS装置10の質量分析用プレート設置ステージ13にセットし、加熱手段14により所定のスポットを局部加熱し、そのスポットに担持されている被測定成分をガス化して行う。
前記イオン化は、前記ガス化した被測定成分をイオン化手段15でイオン化することで行う。既述したようにイオン化の方法は種々の既存のイオン化方法、その他のイオン化方法を採用することができる。
前記質量分析は、前記イオン化した被測定成分を、質量分離手段17で質量電荷比(m/z)により分離し、これをイオン検出手段18で検出することにより行う。イオン化検出手段18は、検出されたイオンのデータを自動処理するデータ処理手段を含む概念であってもよい。
【実施例】
【0056】
[実施例1]
TLCプレートとMSプレート間での転写試験(転写効率、時間)を行った。測定結果を表1に示す。
測定試料の10μlをTLCプレートにアプライし、該TLCプレートをMSプレート(第2の実施形態のMSプレート30、或いは第3の実施形態のMSプレート40)と接面状態にし、エタノールを展開溶媒として4−ジメチルアミノアゾベンゼンを転写、濃縮した。転写、濃縮した4−ジメチルアミノアゾベンゼンを二酸化珪素ごと掻き取り、エタノールで抽出した。該抽出液はエタノールで10mlにメスアップし、吸光光度計を用いて393nmの吸光度を測定した。転写率は以下の式に従って求めた。
転写率=(転写、濃縮した4−ジメチルアミノアゾベンゼンの吸光度)/(1μg/mlの4−ジメチルアミノアゾベンゼン溶液の吸光度)×100
測定試料 :4−ジメチルアミノアゾベンゼンをエタノールで1mg/mlに溶解したもの
展開溶媒 :エタノール
TLCプレート:メリク製シリカゲル60プレート
MSプレート :メルク製TLCプレート濃縮ゾーン(二酸化珪素担体)
【0057】
【表1】

【0058】
[実施例2]
TLCプレートとMSプレートでの感度比較を行った。測定結果を表2に示す。
測定試料の10μgを、TLCプレート用の担体であるシリカゲル60と、MSプレート用担体である吸着不活性担体(二酸化珪素担体)にそれぞれ添加し、イオン付着質量分析装置(キヤノンアネルバテクニクス製IA−Lab)を用いて、測定した。各担体での相対感度は、担体なしの場合のシグナル強度を基準に以下の式に従って求めた。
相対感度=(各担体に10μgのヘキサブロモシクロドテカンを添加した試料でのシグナル強度)/(担体なしで10μgのヘキサブロモシクロドデカンでのシグナル強度)×100
測定試料:ヘキサブロモシクロドデカンをアセトンで1g/mlに溶解したもの
担体 :メルク製シリカゲル60プレートとメルク製TLCプレート濃縮ゾーン(二酸化珪素担体)からそれぞれ担体であるシリカゲル60と二酸化珪素とを掻き出したもの
【0059】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る質量分析用プレートを用いた薄層クロマトグラフィ−質量分析装置の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】質量分析用プレートの第1の実施形態を示す斜視図である。
【図3】質量分析用プレートの第2の実施形態を示し、(A)は上面側の斜視図、(B)は底面側の斜視図である。
【図4】質量分析用プレートの第3の実施形態を示し、(A)は上面側から見た斜視図、(B)は底面側から見た斜視図である。
【図5】質量分析用プレートの第4の実施形態を示し、(A)は上面側から見た斜視図、(B)は底面側から見た斜視図である。
【図6】質量分析用プレートの第5の実施形態を示し、上面側から見た斜視図である。
【図7】執拗分析用プレートの第6の実施形態を示し、上面側から見た斜視図である。
【図8】第1の実施形態に係る質量分析用プレートを用いた場合における薄層クロマトグラフィ用プレートとの接面方法とそれによる被測定成分の展開による転写を説明する図で、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【図9】第2の実施形態に係る質量分析用プレートを用いた場合における薄層クロマトグラフィ用プレートとの接面方法とそれによる被測定成分の展開による転写、濃縮を説明する図で、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【図10】第3の実施形態に係る質量分析用プレートを用いた場合における薄層クロマトグラフィ用プレートとの接面方法とそれによる被測定成分の展開による転写、濃縮を説明する図で、(A)は斜視図、(B)は断面図、(C)は変形例を示す断面図である。
【図11】第4の実施形態に係る質量分析用プレートを用いた場合における薄層クロマトグラフィ用プレートとの接面方法とそれによる被測定成分の展開による転写、濃縮を説明する図で、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【図12】第6の実施形態に係る質量分析用プレートを用いた場合のおける被測定成分の一次展開による分離と二次展開による転写を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
10 薄層クロマトグラフィ−質量分析装置
11 試料室
12 質量分析室
13 質量分析用プレート設置ステージ
14 加熱手段
14a 熱線源
14b 集光手段
15 イオン化手段
15a イオン化室
15b イオン源室
16 イオン送込み手段
17 質量分離手段
17a 飛行空間
18 イオン検出手段
19 減圧手段
20 MSプレート
21 プレート基板
22 固定相
30 MSプレート
31 プレート基板
31a 受光部
32 固定相
32a 転写用積層部
32b 濃縮用積層部
321 分岐通路
321a 分岐開始領域
321b 行き止まり部
40 MSプレート
41 プレート基板
41a 受光部
42 固定相
42a 転写用積層部
42b 濃縮用積層部
421 分岐通路
421a 分岐開始領域
421b 行き止まり部
422 非積層領域
50 MSプレート
51 プレート基板
51a 受光部
52 固定相
52a 転写用積層部
52b 濃縮用積層部
521 分岐通路
521a 分岐開始領域
521b 行き止まり部
60 MSプレート
61 プレート基板
61a 受光部
62 固定相
62a 転写用積層部
62b 濃縮用積層部
621 分岐通路
621a 分岐開始領域
621b 行き止まり部
70 MSプレート
71 プレート基板
72 固定相
80 TLCプレート
81 プレート基板
82 固定相
試料溶液スポット
〜F 一次展開スポット
〜S 二次展開スポット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄層クロマトグラフィ用プレート上で分離された被測定成分を該薄層クロマトグラフィ用プレートから転写させて質量分析に供するための質量分析用プレートであって、
プレート基板上に被測定成分を担持するための固定相として、吸着活性のない担体を積層してあることを特徴とする質量分析用プレート。
【請求項2】
担体の比表面積が0.1〜5m/gの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の質量分析用プレート。
【請求項3】
固定相の積層厚を1〜2000μmとしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の質量分析用プレート。
【請求項4】
プレート基板上の担体による固定相の積層は、分離された被測定成分を薄層クロマトグラフィ用プレートから転写させるための転写用積層部の他に、転写させた被測定成分を更に展開液の下流方向に展開して濃縮させるための濃縮用積層部を有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の質量分析用プレート。
【請求項5】
濃縮用積層部は、転写用積層部から展開液の下流に向けてその幅を細く且つ複数に分岐したパターンに構成してあることを特徴とする請求項4に記載の質量分析用プレート。
【請求項6】
プレート基板には、被測定成分が濃縮される位置に対応した裏面の位置に、熱抽出用の熱線を吸収しやすい受光部を設けていることを特徴とする請求項4又は5に記載の質量分析用プレート。
【請求項7】
薄膜クロマトグラフィ用プレートを一体的に結合させてあることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の質量分析用プレート。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の質量分析用プレートを用いた薄層クロマトグラフィ−質量分析方法であって、
被測定成分を薄層クロマトグラフィ用プレートを用いて分離する第1工程と、分離された被測定成分を薄層クロマトグラフィ用プレートから質量分析用プレートに転写させる第2工程と、質量分析用プレートに転写された被測定成分を、熱抽出、イオン化して、質量分析に供する第3工程とからなることを特徴とする薄層クロマトグラフィ−質量分析方法。
【請求項9】
第2工程においては、薄層クロマトグラフィ用プレートに対して質量分析用プレートを接面させ、展開液を用いて薄層クロマトグラフィ用プレートの被測定成分を質量分析用プレートに移動させて転写を行わせることを特徴とする請求項8に記載の薄層クロマトグラフィ−質量分析方法。
【請求項10】
第2工程には、転写させた被測定成分を質量分析用プレート上で濃縮させる付属動作を含むことを特徴とする請求項8又は9に記載の薄層クロマトグラフィ−質量分析方法。
【請求項11】
請求項1〜7の何れかに記載の質量分析用プレートを用いた薄層クロマトグラフィ−質量分析装置であって、質量分析用プレートを位置調節可能に走査して分析に供するための質量分析用プレート設置ステージを設けてあることを特徴とする薄層クロマトグラフィ−質量分析装置。
【請求項12】
質量分析用プレート設置ステージに配置された質量分析用プレートを局所加熱する加熱手段と、該加熱手段による加熱によって熱抽出された被測定成分を含むガスをイオン化するイオン化手段と、該イオン化手段によってイオン化されたガスから被測定成分イオンを検出するイオン検出手段とを、少なくとも有することを特徴とする請求項11に記載の薄層クロマトグラフィ−質量分析装置。
【請求項13】
イオン化手段が、ソフトイオン化法を用いたイオン化手段であることを特徴とする請求項12に記載の薄層クロマトグラフィ−質量分析装置。
【請求項14】
イオン化手段が、ソフトイオン化法としてイオン付着イオン化法を用いたイオン化手段であることを特徴とする請求項13に記載の薄層クロマトグラフィ−質量分析装置。
【請求項15】
質量分析用プレート設置ステージに配置された質量分析用プレートからの被測定成分の熱抽出を減圧下で行うための減圧手段を有することを特徴とする請求項12〜14の何れかに記載の薄層クロマトグラフィ−質量分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−190573(P2010−190573A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159672(P2007−159672)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年5月5日に日本分析化学会第68回分析化学討論会の講演要旨集にて発表
【出願人】(500483781)ツルイ化学株式会社 (8)
【出願人】(503421139)キヤノンアネルバテクニクス株式会社 (26)
【Fターム(参考)】