説明

質量分析装置、質量分析方法および質量分析用プログラム

【課題】検出したいフラグメントイオンのイオンピークがスキャンの範囲外にならないように、スキャンする質量対価数比の範囲を狭くできる質量分析装置を提供する。
【解決手段】質量対価数比をスキャンしながら試料をイオン化したイオン種を分離する分離部14と、質量対価数比毎にイオン種の検出強度を検出する検出部15とを有し、検出強度に基づいてマススペクトルのピークの出現する質量対価数比を抽出する質量分析装置1において、ピークの出現する質量対価数比に基づいて、ターゲットイオンの質量数の自然数分の1を測定上限値として設定する設定部4と、イオン種からターゲットイオンを選んで解離しフラグメントイオンを生成する解離部13とを有し、分離部14は測定上限値を上限とする範囲内で質量対価数比をスキャンしながらフラグメントイオンを分離し、検出部15は質量対価数比毎にフラグメントイオンの検出強度を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料をイオン化して解離したフラグメントイオンの質量分析を行うタンデム型の質量分析装置、質量分析方法およびこれらを実現するための質量分析用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析では、まず、イオン化部において試料をイオン化したイオン種を生成し、次に、分離部においてイオン種の質量数mの価数zに対する比である質量対価数比(m/z)をスキャンしながら質量対価数比の大きさに応じて複数の前記イオン種を分離する。そして、最後に、検出部において前記質量対価数比毎に前記イオン種の検出強度を検出することで、マススペクトルを得ることができる。マススペクトルには、質量対電荷比に対するイオン種の検出強度のピーク(イオンピーク)が現れるので、前記イオンピークの出現する質量対価数比を、前記イオン種の質量対価数比として、抽出することができる。このような、試料をイオン化したイオン種を解離しない質量分析は、タンデム型でない質量分析であり、MSと呼ばれている。
【0003】
タンデム型の質量分析では、前記イオン化部、前記分離部と前記検出部に加えて、解離部が設けられており、まず、MSが実施される。そして、前記解離部において、MSで検出されたイオンピークの中から特定の質量対価数比を示すイオンピークに対応するターゲットイオンを選んで、そのターゲットイオンをガス分子との衝突等により解離分解させフラグメントイオンを生成している。そして、再び、前記分離部において、前記質量対価数比をスキャンしながら、前記フラグメントイオンを質量対価数比の大きさに応じて分離する。前記検出部において、前記質量対価数比毎に前記フラグメントイオンの検出強度を検出することで、MSと同様にマススペクトルを得ることができる。このように、ターゲットイオンを1段選択・解離して、その1段の選択・解離により生成したフラグメントイオンを前記のように前記分離部で分離し前記検出部で検出することはMSと呼ばれている。一般化すると、ターゲットイオンをn(nは自然数)段選択・解離して、そのn段選択・解離したフラグメントイオンを前記分離部で分離し前記検出部で検出することはMSn+1と呼ばれる。なお、n段の選択・解離のように多段に選択・解離する場合は、各段において、前段で解離したフラグメントイオン中から新たなターゲットイオンを選択して解離し、新たなフラグメントイオンを生成している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
前記タンデム型の質量分析によれば、試料中に含まれる物質の同定や、その物質の定量解析が可能であり、近年では、特に、クルードな生体サンプル中のタンパク質・ペプチドや代謝物などの同定や定量解析に用いられている。特に、患者と健常者間での比較や、投薬前と投薬後での比較のために、複数の検体の生体サンプルを質量分析することが行われ、生成の有無や生成量が変化している変動成分がつきとめられることで、病気の診断の為のバイオマーカの発見や、薬の代謝メカニズム解明や薬効予測などが可能になっている。
【特許文献1】特開平11−154486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の質量分析においては、分離部において前記質量対価数比を繰り返しスキャンし、検出部においてイオン種及びフラグメントイオンの検出強度を積算することで、検出感度を高めている。しかし、スキャンの繰り返し回数を増やすと、繰り返しを含めたスキャンのトータルの時間が長くなり、結果的に質量分析に要する時間が長くなるという課題があった。
【0006】
ただ、スキャンのトータルの時間を決めているのはスキャンの繰り返し回数だけではなく、スキャン1回に要する時間もトータルの時間を左右する。具体的に、フラグメントイオンの検出強度の検出に寄与しない範囲の質量対価数比のスキャンが省ければ、スキャン1回に要する時間を短縮でき、スキャンの繰り返しを含めたトータルの時間も短縮できる。逆に、トータルの時間を変えなければ、スキャンの繰り返し回数を増やすことができ、検出感度を一層高めることができる。
【0007】
しかし、スキャンする質量対価数比の範囲を単に狭くしたのでは、検出したいフラグメントイオンのイオンピークがスキャンの範囲外になってしまうと考えられた。
【0008】
そこで、本発明の目的は、検出したいフラグメントイオンのイオンピークがスキャンの範囲外にならないように、スキャンする質量対価数比の範囲を狭くできる質量分析装置、質量分析方法および質量分析用プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ターゲットイオンの質量数の自然数分の1を測定上限値として設定し、前記測定上限値を上限とする範囲内で質量対価数比をスキャンしながら、フラグメントイオンを質量対価数比の大きさに応じて分離することを特徴とする質量分析装置、質量分析方法およびこの特徴をコンピュータに実行させるための質量分析用プログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、検出したいフラグメントイオンのイオンピークがスキャンの範囲外にならないように、スキャンする質量対価数比の範囲を狭くできる質量分析装置、質量分析方法および質量分析用プログラムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0012】
図1に、本発明の実施形態に係る質量分析装置1の構成図を示す。質量分析装置1は、制御部2と、ユーザインタフェースを備えた表示部10と、イオン化部12と、解離部13と、分離部14と、検出部15とを有している。制御部2は、抽出部3と、設定部4と、変換部9とを有している。さらに、設定部4は、ピーク選択部5と、質量数決定部6と、測定下限価数決定部7と、算出部8とを有している。そして、制御部2、さらに、抽出部3、設定部4と変換部9、設定部4を構成するピーク選択部5、質量数決定部6、測定下限価数決定部7と算出部8は、コンピュータにプログラムを実行させることによって実現することができる。
【0013】
図2に、前記質量分析装置1を用いての本発明の実施形態に係る質量分析方法のフローチャートを示す。
【0014】
まず、ステップS1で、MS(MS)の質量分析を行う。具体的には、ステップS11で、イオン化部12が、試料11をイオン化したイオン種を生成する。ステップS12で、分離部14が、質量対価数比をスキャンしながら質量対価数比の大きさに応じて複数の前記イオン種を分離する。ステップS13で、検出部15が、前記質量対価数比毎に前記イオン種の検出強度を検出する。図3に、表示部10に表示される表示画面16の一例を示すが、表示画面16には、質量対価数比毎の前記イオン種の検出強度に基づいたMS(MS)測定のマススペクトルが作成され表示される。
【0015】
図2のステップS14で、制御部2の抽出部3が、前記検出強度に基づいてマススペクトルのピークP11〜P14の出現する前記質量対価数比を抽出する。例えば、図3の例では、ピークP11の質量対価数比の500.0と、ピークP12の質量対価数比の333.3と、ピークP13の質量対価数比の250.0と、ピークP14の質量対価数比の200.0とが抽出される。
【0016】
次に、ステップS2で、制御部2の設定部4が、MSn+1(MS)の質量分析における質量対価数比の測定範囲を決定する。具体的には、設定部4が、前記ピークP11〜P14の出現する前記質量対価数比に基づいて、ターゲットイオンの質量数の自然数分の1を測定上限値として設定する。
【0017】
詳細には、まず、ステップS21で、ピーク選択部5が、前記ピークP11〜P14の中からターゲットイオンの対応するピークを選択する。図3の例のマススペクトルでは、出現している全てのピークP11〜P14の質量対価数比に、対応する価数をかけた測定質量数が互いに等しく1000.0になるので、全てのピークP11〜P14がターゲットイオンに対応し選択される。
【0018】
次に、ステップS22で、質量数決定部6が、選択された前記ピークP11〜P14に基づいて前記ターゲットイオンの質量数を決定する。具体的には、質量数決定部6は、ターゲットイオンの質量数として前記測定質量数の1000.0を設定する。そして、図3の例に示すように、表示部10は、表示画面16に設けられたターゲットイオンの質量数の欄に、ターゲットイオンの質量数として1000.0を表示する。
【0019】
さらに、ステップS23で、測定下限価数決定部7が、前記ターゲットイオンの測定下限価数を決定する。なお、測定下限価数の決定では、ユーザによる測定下限価数の指定に基づいて、測定下限価数を決定してもよい。具体的に、表示部10には、ユーザが前記測定下限価数を入力するためのユーザインタフェースが設けられている。このユーザインタフェースとして、表示画面16に測定下限価数の欄はリストボックスになっており、選択枝をリスト表示可能であることを示す逆三角形ボタンが設けられている。ユーザがこの逆三角形ボタンをクリックすると、「1価」、「2価」、「3価」等の複数通りの自然数の価数がリスト表示され、ユーザは、表示された価数の中から所望の価数をクリックすることで、容易に測定下限価数を指定することができる。前記ユーザにより前記測定下限価数が指定されると、前記測定下限価数決定部7はその指定を以って測定下限価数を決定し、表示画面16の測定下限価数の欄に決定した測定下限価数を表示する。図3の例では、測定下限価数として1価の場合を表示している。なお、リストボックスは文字入力のためのテキストボックスと組み合わさったコンボボックスでもよい。
【0020】
ステップS24で、算出部8が、ターゲットイオンの質量数を自然数の測定下限価数で割り、測定上限値を算出する。具体的には、図3の例に示すように、ターゲットイオンの質量数の1000.0を、測定下限価数の1価(自然数)で割り、測定上限値として1000.0を算出し、表示画面16の測定上限値の欄に、算出した測定上限値の1000.0を表示する。なお、図3の例では、測定下限価数が1価であるので、測定上限値が、ターゲットイオンの質量数に等しくなっている。前記で設定部4による測定上限値の設定が完了する。
【0021】
また、表示画面16には、ユーザがMSn+1(MS)の質量分析におけるスキャン回数と予想(希望)測定時間を入力するためのユーザインタフェースが設けられていてもよい。
【0022】
このユーザインタフェースでは、スキャン回数の欄を表示画面16に設けて、スキャン回数の欄はリストボックスになっており、選択枝をリスト表示可能であることを示す逆三角形ボタンが設けられている。ユーザがこの逆三角形ボタンをクリックすると、「5回」、「10回」、「20回」等の複数通りの回数がリスト表示され、ユーザは、表示された回数の中から所望の回数をクリックすることで、容易にスキャン回数を指定することができる。図3の例に示すように、スキャン回数の欄に、指定したスキャン回数の10回を表示することができる。ユーザによりスキャン回数が指定されると、前記設定部4は、既に設定されている測定上限値から求まる測定範囲(スキャン範囲)と、指定されたスキャン回数とに基づいて、MSn+1(MS)の質量分析に要する予想(希望)測定時間を算出する。予想(希望)測定時間は、基本的には、前記測定範囲とスキャン回数の積に係数をかけて算出することができる。算出された予想(希望)測定時間は、表示画面16に設けられた予想(希望)測定時間の欄に表示される。
【0023】
ユーザは、予想(希望)測定時間の表示を見ることで、表示された予想(希望)測定時間が、ユーザの所望の希望測定時間以内であるか否かを容易に判定することができる。この判定で、表示された予想(希望)測定時間がユーザの所望の希望測定時間以内であれば、ユーザは、表示画面16に設けられた「MSn+1(MS)測定のスタート」をクリックし、質量分析装置1に後記するステップS3のMSn+1(MS)の質量分析をスタートさせることができる。一方、判定で、表示された予想(希望)測定時間がユーザの所望の希望測定時間を超えていれば、ユーザは、ユーザインタフェースを介して、測定下限価数を変更して大きくしたり、スキャン回数を変更して少なくしたりして、再度算出される予想(希望)測定時間がユーザの所望の希望測定時間以内になるように調整する。そして、この調整の後に、表示画面16に設けられた「MSn+1(MS)測定のスタート」をクリックし、質量分析装置1に後記するステップS3のMSn+1(MS)の質量分析をスタートさせる。
【0024】
また、このユーザインタフェースには、予想(希望)測定時間の欄はリストボックスになっており、選択枝をリスト表示可能であることを示す逆三角形ボタンが設けられている。ユーザがこの逆三角形ボタンをクリックすると、「30秒間」、「2分間」、「6分間」等の複数通りの時間がリスト表示され、ユーザは、表示された時間の中から所望の時間をクリックすることで、容易に希望測定時間を指定することができる。図3の例に示すように、予想(希望)測定時間の欄に、指定した希望測定時間の2分間を表示することができる。ユーザにより予想(希望)測定時間が指定されると、前記設定部4は、既に設定されている測定上限値から求まる測定範囲(スキャン範囲)と、指定された予想(希望)測定時間とに基づいて、MSn+1(MS)の質量分析に要するスキャン回数を算出する。スキャン回数は、基本的には、予想(希望)測定時間を前記測定範囲で割った商に係数をかけて算出することができる。算出されたスキャン回数は、表示画面16に設けられたスキャン回数の欄に表示される。
【0025】
ユーザは、スキャン回数の表示を見ることで、表示されたスキャン回数が、ユーザの所望のスキャン回数以上であるか否かを容易に判定することができる。この判定で、表示されたスキャン回数がユーザの所望のスキャン回数以上であれば、ユーザは、表示画面16に設けられた「MSn+1(MS)測定のスタート」をクリックし、質量分析装置1に後記するステップS3のMSn+1(MS)の質量分析をスタートさせることができる。一方、判定で、表示されたスキャン回数がユーザの所望のスキャン回数未満であれば、ユーザは、ユーザインタフェースを介して、測定下限価数を変更して大きくしたり、予想(希望)測定時間を変更して長くしたりして、再度算出されるスキャン回数がユーザの所望のスキャン回数以上になるように調整する。そして、この調整の後に、表示画面16に設けられた「MSn+1(MS)測定のスタート」をクリックし、質量分析装置1に後記するステップS3のMSn+1(MS)の質量分析をスタートさせる。
【0026】
また、このユーザインタフェースでは、前記のように、図3の例のスキャン回数の欄のリスト表示と、予想(希望)測定時間の欄のリスト表示とにより、ユーザは、スキャン回数と予想(希望)測定時間とを指定することができる。前記設定部4は、指定されたスキャン回数と予想(希望)測定時間とに基づいて、MSn+1(MS)の質量分析で測定可能な最大測定範囲を算出する。前記最大測定範囲は、基本的には、予想(希望)測定時間をスキャン回数で割った商に係数をかけて算出することができる。設定部4は、前記最大測定範囲に、前記測定上限値が含まれるように、前記測定下限価数を設定する。具体的には、前記測定下限価数を1価ずつ大きくしながら、その価数毎の測定上限値を算出し前記最大測定範囲に含まれるか否かを判定する。表示部10は、最大測定範囲に含まれる最大の測定上限値と、この最大の測定上限値に対応する最小の測定下限価数を、表示画面16に設けられた測定上限値の欄と測定下限価数の欄にそれぞれ表示する。
【0027】
ユーザは、表示された測定下限価数と測定上限値とを見ることで、表示された測定下限価数と測定上限値が、ユーザの所望の測定下限価数と測定上限値であるか否かを容易に判定することができる。この判定で、表示された測定下限価数と測定上限値がユーザの所望の測定下限価数と測定上限値であれば、ユーザは、表示画面16に設けられた「MSn+1(MS)測定のスタート」をクリックし、質量分析装置1に後記するステップS3のMSn+1(MS)の質量分析をスタートさせることができる。一方、判定で、表示された測定下限価数と測定上限値がユーザの所望の測定下限価数と測定上限値でなければ、ユーザは、ユーザインタフェースを介して、スキャン回数を変更して少なくしたり、予想(希望)測定時間を変更して長くしたりして、再度算出される測定下限価数と測定上限値がユーザの所望の測定下限価数と測定上限値になるように調整する。そして、この調整の後に、表示画面16に設けられた「MSn+1(MS)測定のスタート」をクリックし、質量分析装置1に後記するステップS3のMSn+1(MS)の質量分析をスタートさせる。前記によっても、図2のステップS2の設定部4による測定上限値の設定を実施することができる。
【0028】
そして、ステップS2の最後に、ステップS25で、変換部9が、前記測定上限値を、前記分離部14で制御可能な物理量において対応する閾値に変換する。なお、変換部9は、ステップS1のMS(MS)の質量分析と、ステップS3のMSn+1(MS)の質量分析とにおいて、前記質量対価数比を、前記分離部14で制御可能な前記物理量に変換していてもよい。
【0029】
最後に、ステップS3で、MSn+1(MS)の質量分析を行う。
【0030】
具体的には、まず、ステップS31で、解離部13が、前記ステップS11で生成した前記イオン種から前記ターゲットイオンを選んで解離(選択・解離)しフラグメントイオンを生成する。
【0031】
次に、ステップS32で、前記分離部14が、前記測定上限値を上限とする範囲内で前記質量対価数比をスキャンしながら、複数の前記フラグメントイオンを前記質量対価数比の大きさに応じて分離する。ただし、分離部14を、前記測定上限値で直接制御できないので、前記測定上限値を上限とする範囲内で前記質量対価数比をスキャンするために、ステップS25で求めた前記測定上限値に対応する分離部14を制御可能な前記物理量における前記閾値を限度として、その物理量を可変制御することになる。
【0032】
最後に、ステップS33で、前記検出部15が、前記質量対価数比毎に前記フラグメントイオンの検出強度を検出する。
【0033】
図4に、前記フラグメントイオンの検出強度で、図3の表示画面16の後に表示部10に表示される表示画面17の一例を示す。図4に示す表示画面17には、質量対価数比毎の前記フラグメントイオンの検出強度に基づいたMSn+1(MS)測定のマススペクトルが作成され表示される。マススペクトルの横軸には、質量対価数比が設定され、この質量対価数比の測定範囲が、横軸の長さにほぼ一致している。そして、横軸の右端、すなわち、質量対価数比の測定範囲の上限(最大値)には、前記測定上限値である1000.0が設定されている。図4の例では、質量対価数比が1000.0以下の測定範囲が測定でき、フラグメントイオンのピークとして、質量対価数比が612.7であるピークP23と、質量対価数比が317.2であるピークP22と、質量対価数比が212.4であるピークP21が検出されている。
【0034】
ステップS2において、設定部4が、ターゲットイオンの質量数の自然数(s)分の1を測定上限値として設定し、ステップS3において、この測定上限値をMSn+1(MS)の質量分析の質量対価数比の測定範囲の上限としているので、価数が1価のターゲットイオンより大きい質量対価数比の範囲を測定することがない。この測定することがない範囲では、フラグメントイオンが測定されることがないので、この範囲を省けば、フラグメントイオンの測定もれを起こすことなく、一回のスキャンに要する時間を短縮できる。そして、スキャンの繰り返しを含めたトータルの測定時間を短縮できる。この測定することがない範囲でフラグメントイオンが測定されることがないのは、フラグメントイオンは、ターゲットイオンを解離して生成されるので、フラグメントイオンの質量数はターゲットイオンの質量数より小さくなっているからである。
【0035】
このように、フラグメントイオンが測定されない質量対価数比の範囲を省くのであれば、ターゲットイオンの質量数の自然数(s)分の1を測定上限値として設定する中で、特に、自然数(s)を1に限定し、ターゲットイオンの質量数を測定上限値として設定してもよい。ターゲットイオンの質量数を測定上限値として設定するのであれば、測定下限価数は1に固定されるので、前記ステップS23の測定下限価数の決定や、前記ステップS24の測定上限値の算出を省くことができる。
【0036】
また、図5に示すように、前記測定下限価数(前記自然数(s))が2以上の自然数である場合には、価数が自然数(s)−1以下のターゲットイオンの質量数の自然数(s)分の1より大きい質量対価数比を有するフラグメントイオンを測定できない可能性がある。例えば、図3と図5とでは、ターゲットイオンの質量数は1000.0で等しいが、測定下限価数は、図3では1価のところ、図5では2価に設定されている。このため、測定上限値は、図3では1000.0であるが、図5では、ターゲットイオンの質量数の1000.0を測定下限価数の2価で割るため、500.0になっている。このため、図6に示すように、マススペクトルの横軸の質量対価数比の測定範囲の上限(最大値)には、前記測定上限値である500.0が設定されている。図4では検出されていた質量対価数比が612.7であるピークP23が、図6では検出されていない。
【0037】
しかし、一回のスキャンに要する時間を前記自然数(s)が1である場合の自然数(s)分の1に短縮できるので、スキャンの繰り返しを含めたトータルの測定時間(予想(希望)測定時間)も短縮できる。例えば、予想(希望)測定時間は、図3では2分間であるが、図5では、1分間に短縮されている。
【0038】
逆に、予想(希望)測定時間一定 の下であれば、スキャン回数を前記自然数(s)が1である場合の自然数(s)倍に増やせ、測定感度を自然数(s)倍にすることができる。そして、自然数(s)(測定下限価数)を定めながら、検出したいフラグメントイオンのイオンピークがスキャンの範囲外にならないように、スキャンする質量対価数比の範囲を狭くできる。
【0039】
(実施例1)
図7に、本発明の実施例1に係るイオントラップ飛行時間型の質量分析装置1の構成図を示す。図7の質量分析装置1では、解離部13にイオントラップ部24を備え、分離部14と検出部15として飛行時間型質量分析部30が備えられている。
【0040】
試料11は、試料導入部20から配管21に流入し、配管21を通過してイオン化部(イオン源)12に達する。試料11はイオン化部12においてESI(Electron Spray Ionization)等によってイオン化し、複数のイオン種が生成される。イオン化された試料11(イオン種)は、サンプリング部22に印加された電圧によって、サンプリング部22に吸引され、サンプリング部22を通過し、イオン輸送部23に達する。イオン種は、イオン輸送部23に与えられた電圧により移動し、解離部13のイオントラップ部24に達する。
【0041】
MSの質量分析では、イオン種は、イオントラップ部24とこれに連なる解離部13の四重極フィルタ25を通過する。
【0042】
MSの質量分析では、イオントラップ部24において、MSの質量分析で決定したイオン種の中のターゲットイオンをトラップしターゲットイオンの他のイオン種を放出することで、ターゲットイオンを1回選択する。そして、イオントラップ部24で、ターゲットイオンを、CID(Collision Induced dissociation)反応により1回解離し、フラグメントイオンを生成している。MS(nは3以上の自然数)の質量分析では、生成したフラグメントイオンの中からターゲットイオンを選択するためにターゲットイオンをトラップして他のイオンを放出し残ったターゲットイオンを解離し一回上のフラグメントイオンを生成している、このような選択・解離をn−1回繰り返す。
【0043】
解離部13の四重極フィルタ25によって前記イオン種及び前記フラグメントイオン以外のイオンが取り除かれ、前記イオン種及び前記フラグメントイオンは、飛行時間型質量分析部30に達する。
【0044】
飛行時間型質量分析部30において、前記イオン種及び前記フラグメントイオンの質量対価数比が測定される。飛行時間型質量分析部30は、前記イオン種及び前記フラグメントイオンを質量対価数比の大きさに応じて分離する分離部14と、質量対価数比毎に前記イオン種及び前記フラグメントイオンの検出強度を検出する検出部15とを有している。また、分離部14は、集束レンズ26と、押し出し電極27と、引き出し電極28と、リフレクトロン29とを有している。
【0045】
集束レンズ26は、前記イオン種及び前記フラグメントイオンを集束させ、空間的に分散した前記イオン種及び前記フラグメントイオンを一点に集める。押し出し電極27及び引き出し電極28は、前記イオン種及び前記フラグメントイオンに運動エネルギを与える。前記イオン種及び前記フラグメントイオンが受け取る運動エネルギの大きさは質量数に依存せず価数に依存するので、価数一定とした場合、受け取る運動エネルギも一定になり、質量対価数比が大きいほど飛行速度が遅くなる。このため、リフレクトロン29によって反射され検出部15に達するまでの飛行時間は質量対価数比が大きいほど長くなる。このことから逆に、飛行時間を測定することにより、質量対価数比を求めることができる。なお、飛行時間は、前記イオン種及び前記フラグメントイオンに押し出し電極27と引き出し電極28とで運動エネルギを与えた時刻と、検出部15が前記イオン種及び前記フラグメントイオンを検出した時刻との差から求めることができる。
【0046】
なお、飛行時間tは、式1の関係を有している。
t=L/v=L/(2qV/m)^0.5=(L*m^0.5)/(2qV)^0.5 ・・・・(式1)
ここで、Lは飛行距離、vはイオンの速度、q(=ez)はイオンの電荷(eは素電荷、zは価数)、Vはイオンに与えられる電位、mはイオンの質量数である。これより、飛行時間tは、イオンの質量数mの0.5乗に比例することがわかる。このため、イオンの質量数mが大きいほど、そのイオンの飛行時間tは長くなる傾向が、式1からもわかる。質量対価数比の測定範囲の上限を大きくすると、長い飛行時間tを測定するために、スキャン一回の測定時間(スキャン時間)が長くなる。そこで、前記した実施形態により、前記制御部2の設定部4(図1参照)を用いて前記測定上限値を設定し、前記制御部2の変換部9(図1参照)を用いて前記測定上限値を、フラグメントイオンの飛行時間tの上限値に変換する。そして、分離部14は、飛行時間tの前記上限値を上限とする範囲内でフラグメントイオンの飛行時間tを計測する。このことにより、質量対価数比の測定範囲が制限でき、スキャン一回の測定時間(スキャン時間)を短くすることができる。
【0047】
(実施例2)
図8に、本発明の実施例2に係る四重極飛行時間型の質量分析装置1の構成図を示す。実施例2の質量分析装置1が、実施例1の質量分析装置1と異なる点は、解離部13に、イオントラップ部24に替えて、線形イオントラップ33を備えている点である。線形イオントラップ33は、入口電極34と、四重極フィルタ(四重極)31と、出口電極32とを有している。
【0048】
前記試料11をイオン化したイオン種は、入口電極34と出口電極32とにより印加された電圧により四重極フィルタ31内に閉じ込めることができ、四重極フィルタ31は、閉じ込められているイオン種の中からターゲットイオンのみをトラップすることで、イオン種の中からターゲットイオンを選択することができる。そして、四重極フィルタ31で、選択されたターゲットイオンを、CID反応により解離し、フラグメントイオンを生成している。このフラグメントイオンは、四重極フィルタ25を介して飛行時間型質量分析部30に移動し、飛行時間型質量分析部30において実施例1と同様の質量対価数比の測定が行われる。
【0049】
(実施例3)
図9に、本発明の実施例3に係るECD(Electron Capture Dissociation、電子捕獲解離)反応部45付き四重極飛行時間型の質量分析装置1の構成図を示す。実施例3の質量分析装置1が、実施例2の質量分析装置1と異なる点は、解離部13において、線形イオントラップ33に加え、線形イオントラップ33と飛行時間型質量分析部30の間に、さらにイオン旋回電極46及びECD反応部45を備えている点である。ECD反応部45は、ECD反応部試料入口電極40と、ECD反応部四重極電極41、ECD反応部留め電極42と、ECD反応部電子流入電極43と、フィラメント44とを有している。
【0050】
線形イオントラップ33からターゲットイオンが放出され、そのターゲットイオンは、四重極フィルタ35とイオン旋回電極46と四重極フィルタ36を介して、ECD反応部45に移動する。ターゲットイオンは、ECD反応部試料入口電極40とECD反応部留め電極42によってECD反応部四重極電極41内に留められる。フィラメント44により電子が放射され、この電子はECD反応部電子流入電極43によりECD反応部四重極電極41に流入し、ターゲットイオンに照射される。ターゲットイオンはこの電子照射によりECD反応を起こし解離する。そして、フラグメントイオンが生成する。このフラグメントイオンは、四重極フィルタ36とイオン旋回電極46と四重極フィルタ25を介して、飛行時間型質量分析部30に移動する。飛行時間型質量分析部30において、フラグメントイオンに対して実施例1と同様の質量対価数比の測定が行われる。
【0051】
(実施例4)
図10に、本発明の実施例4に係るイオントラップ四重極型の質量分析装置1の構成図を示す。実施例4の質量分析装置1が、実施例1の質量分析装置1と異なる主な点は、分離部14に、飛行時間型質量分析部30に替えて、四重極型質量分析部47を備えている点である。四重極型質量分析部47は、基本的に、線形イオントラップ33(図8参照)と同じ構造であるので、理解を容易にするために、構成部品である入口電極34、四重極フィルタ(四重極)31、出口電極32には同じ符号を付している。
【0052】
前記イオン種及び前記フラグメントイオンは、イオントラップ部24からの放出後、入口電極34に吸引され、入口電極34と出口電極32とにより印加された電圧により四重極フィルタ31内を通過させる。四重極フィルタ31には、直流電圧及び交流電圧が制御部2によって印加されている。高周波の交流電圧が印加されることで、前記イオン種及び前記フラグメントイオンに摂動をかけることができる。ある周波数の交流電圧が印加されていると、一意に対応する大きさの質量対価数比を有する前記イオン種及び前記フラグメントイオンは、四重極フィルタ31内を通過して出口電極32から取り出すことができる。そして、交流電圧の周波数を小さくなる方向にスキャンすることにより、取り出せる前記イオン種及び前記フラグメントイオンの質量対価数比を大きくなる方向にスキャンすることができる。
【0053】
前記した実施形態と同様に、制御部2の設定部4(図1参照)において、前記測定上限値が設定されると、制御部2の変換部9(図1参照)において、前記測定上限値を、前記の一意の対応と同様に対応させた前記周波数の下限値に変換する。四重極フィルタ31は、前記下限値を下限とする範囲内で周波数をスキャンする中で、前記フラグメントイオンを通過させる。このことにより、質量対価数比の測定範囲が制限でき、スキャン一回の測定時間(スキャン時間)を短くすることができる。
【0054】
(実施例5)
図11に、本発明の実施例5に係るイオントラップ電場フーリエ変換型の質量分析装置1の構成図を示す。実施例5の質量分析装置1が、実施例1の質量分析装置1と異なる主な点は、分離部14及び検出部15に、飛行時間型質量分析部30に替えて、電場フーリエ変換型質量分析部48を備えている点である。電場フーリエ変換型質量分析部48は、楕円型電極49を有している。
【0055】
前記イオン種及び前記フラグメントイオンは、イオントラップ部24からの放出後、入口電極50に吸引され、楕円型電極49内に達する。楕円型電極49内には、静電場と静磁場が生成されており、楕円型電極49に高周波の交流電圧が制御部2によって印加される。高周波の交流電圧が印加されることで、前記イオン種及び前記フラグメントイオンはサイクロトロン運動を行う。このサイクロトロン運動の周回周期を検出することで、サイクロトロン条件から質量対価数比を算出することができる。そして、サイクロトロン運動の周回周期を大きくなる方向にスキャンすることにより、取り出せる前記イオン種及び前記フラグメントイオンの質量対価数比を大きくなる方向にスキャンすることができる。
【0056】
前記した実施形態と同様に、制御部2の設定部4(図1参照)において、前記測定上限値が設定されると、制御部2の変換部9(図1参照)において、前記測定上限値を、対応する前記フラグメントイオンのサイクロトロン運動の周回周期の上限値に変換する。楕円型電極49では、前記上限値を上限とする範囲内で周回周期をスキャンする中で、前記イオン種及び前記フラグメントイオンのサイクロトロン運動により変化した電圧を制御部2でフーリエ変換し、前記フラグメントイオンの周回周期を計測する。このことにより、質量対価数比の測定範囲が制限でき、スキャン一回の測定時間(スキャン時間)を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態に係る質量分析装置の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る質量分析方法のフローチャートである。
【図3】測定下限価数を1価に決定し、測定上限値をターゲットイオンの質量数の1000.0に決定する際の、表示部における画面表示の一例である。
【図4】測定下限価数を1価に決定し、測定上限値をターゲットイオンの質量数の1000.0に決定した場合に得られる、MS測定のマススペクトルを表示している表示部の画面表示の一例である。
【図5】測定下限価数を2価に決定し、測定上限値をターゲットイオンの質量数の半分の500.0に決定する際の、表示部における画面表示の一例である。
【図6】測定下限価数を2価に決定し、測定上限値をターゲットイオンの質量数の半分の500.0に決定した場合に得られる、MS測定のマススペクトルを表示している表示部の画面表示の一例である。
【図7】本発明の実施例1に係るイオントラップ飛行時間型の質量分析装置の構成図である。
【図8】本発明の実施例2に係る四重極飛行時間型の質量分析装置の構成図である。
【図9】本発明の実施例3に係るECD反応部付き四重極飛行時間型の質量分析装置の構成図である。
【図10】本発明の実施例4に係るイオントラップ四重極型の質量分析装置の構成図である。
【図11】本発明の実施例5に係るイオントラップ電場フーリエ変換型の質量分析装置の構成図である。
【符号の説明】
【0058】
1 質量分析装置
2 制御部
3 抽出部
4 設定部
5 ピーク選択部
6 質量数決定部
7 測定下限価数決定部
8 算出部
9 変換部
10 表示部(ユーザインタフェース)
11 試料
12 イオン化部(イオン源)
13 解離部
14 分離部
15 検出部
16、17 表示画面
20 試料導入部
21 配管
22 サンプリング部
23 イオン輸送部
24 イオントラップ部
25 四重極フィルタ
26 集束レンズ
27 押し出し電極
28 引き出し電極
29 リフレクトロン
30 飛行時間型質量分析部
31 四重極フィルタ(四重極)
32 出口電極
33 線形イオントラップ
34 入口電極
35、36 四重極フィルタ
40 ECD反応部試料入口電極
41 ECD反応部四重極電極
42 ECD反応部留め電極
43 ECD反応部電子流入電極
44 フィラメント
45 ECD反応部
46 イオン旋回電極
47 四重極型質量分析部
48 電場フーリエ変換型質量分析部
49 楕円型電極
50 入口電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料をイオン化したイオン種を生成するイオン化部と、質量対価数比をスキャンしながら質量対価数比の大きさに応じて複数の前記イオン種を分離する分離部と、前記質量対価数比毎に前記イオン種の検出強度を検出する検出部とを有し、前記検出強度に基づいてマススペクトルのピークの出現する前記質量対価数比を抽出する質量分析装置において、
前記ピークの出現する前記質量対価数比に基づいて、ターゲットイオンの質量数の自然数分の1を測定上限値として設定する設定部と、
前記イオン種から前記ターゲットイオンを選んで解離しフラグメントイオンを生成する解離部とを有し、
前記分離部は、前記測定上限値を上限とする範囲内で前記質量対価数比をスキャンしながら、複数の前記フラグメントイオンを前記質量対価数比の大きさに応じて分離し、
前記検出部は、前記質量対価数比毎に前記フラグメントイオンの検出強度を検出することを特徴とする質量分析装置。
【請求項2】
前記設定部は、前記測定上限値に前記質量数を設定することを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
【請求項3】
前記質量対価数比を、前記分離部で制御可能な物理量に変換する変換部を有し、
前記変換部は、前記測定上限値を、前記物理量において対応する閾値に変換し、
前記分離部は、前記測定上限値を上限とする範囲内で前記質量対価数比をスキャンするために、前記閾値を限度として前記物理量を可変制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の質量分析装置。
【請求項4】
前記設定部は、
前記ピークの中からターゲットイオンの対応する前記ピークを選択するピーク選択部と、
選択された前記ピークに基づいて前記ターゲットイオンの質量数を決定する質量数決定部と、
前記ターゲットイオンの測定下限価数を決定する測定下限価数決定部と、
前記質量数を前記測定下限価数で割り前記測定上限値を算出する算出部とを有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の質量分析装置。
【請求項5】
前記ピーク選択部は、前記ピークの出現する前記質量対価数比に価数をかけた測定質量数が互いに等しくなる複数の前記ピークを選択し、
前記質量数決定部は、前記ターゲットイオンの前記質量数として前記測定質量数を設定することを特徴とする請求項4に記載の質量分析装置。
【請求項6】
前記ターゲットイオンの前記質量数と前記測定下限価数とを表示する表示部を有することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の質量分析装置。
【請求項7】
ユーザが前記測定下限価数を入力するためのユーザインタフェースを有し、
前記ユーザインタフェースでは、前記ユーザによる前記測定下限価数の指定を可能にし、前記ユーザにより前記測定下限価数が指定されると、前記下限価数決定部は前記測定下限価数を決定し、前記表示部に前記測定下限価数を表示することを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の質量分析装置。
【請求項8】
前記測定上限値を、前記フラグメントイオンの検出強度の検出が行われる前記質量対価数比の範囲の上限として表示する表示部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の質量分析装置。
【請求項9】
前記測定上限値を、前記フラグメントイオンの飛行時間の上限値に変換する変換部を有し、
前記分離部は、飛行時間型であり、前記飛行時間の前記上限値を上限とする範囲内で前記フラグメントイオンの前記飛行時間を計測することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の質量分析装置。
【請求項10】
前記測定上限値を、四重極の電極間に印加される高周波電圧の周波数の下限値に変換する変換部を有し、
前記分離部は、四重極型であって前記四重極を有し、前記周波数の前記下限値を下限とする範囲内で前記フラグメントイオンを通過させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の質量分析装置。
【請求項11】
前記測定上限値を、前記フラグメントイオンの周回周期の上限値に変換する変換部を有し、
前記分離部は、電場フーリエ変換型であり、前記周回周期の前記上限値を上限とする範囲内で前記フラグメントイオンの前記周回周期を計測することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の質量分析装置。
【請求項12】
前記解離部は、四重極を有し、前記四重極を用いて前記ターゲットイオンを解離することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の質量分析装置。
【請求項13】
前記解離部は、イオントラップを有し、
前記イオントラップは、前記ターゲットイオンをトラップすることで、前記ターゲットイオンを選ぶことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の質量分析装置。
【請求項14】
前記解離部は、電子を照射する機構を有し、電子捕獲解離を用いて前記ターゲットイオンを解離することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の質量分析装置。
【請求項15】
試料をイオン化したイオン種を生成するイオン化ステップと、質量対価数比をスキャンしながら質量対価数比の大きさに応じて複数の前記イオン種を分離する第1分離ステップと、前記質量対価数比毎に前記イオン種の検出強度を検出する第1検出ステップとを有し、前記検出強度に基づいてマススペクトルのピークの出現する前記質量対価数比を抽出する質量分析方法において、
前記ピークの出現する前記質量対価数比に基づいて、ターゲットイオンの質量数の自然数分の1を測定上限値として設定する設定ステップと、
前記イオン種から前記ターゲットイオンを選んで解離しフラグメントイオンを生成する解離ステップと、
前記測定上限値を上限とする範囲内で前記質量対価数比をスキャンしながら、複数の前記フラグメントイオンを前記質量対価数比の大きさに応じて分離する第2分離ステップと、
前記質量対価数比毎に前記フラグメントイオンの検出強度を検出する第2検出ステップとを有することを特徴とする質量分析方法。
【請求項16】
試料をイオン化したイオン種を生成するイオン化部と、質量対価数比をスキャンしながら質量対価数比の大きさに応じて複数の前記イオン種を分離する分離部と、前記質量対価数比毎に前記イオン種の検出強度を検出する検出部と、前記検出強度に基づいてマススペクトルのピークの出現する前記質量対価数比を抽出する抽出部と、前記イオン種からターゲットイオンを選んで解離しフラグメントイオンを生成する解離部とを有し、前記分離部が測定上限値を上限とする範囲内で前記質量対価数比をスキャンしながら複数の前記フラグメントイオンを前記質量対価数比の大きさに応じて分離し、前記検出部が前記質量対価数比毎に前記フラグメントイオンの検出強度を検出する質量分析装置に用いられるコンピュータを実行させる質量分析用プログラムであって、
前記ピークの出現する前記質量対価数比に基づいて、前記ターゲットイオンの質量数の自然数分の1を前記測定上限値として設定する設定手順を、前記コンピュータに実行させるための質量分析用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−222664(P2009−222664A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69713(P2008−69713)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】