質量分析装置における非線形増幅器およびその使用
非線形伝達関数を有する信号増幅器。入力信号の限られた範囲にわたって非線形関数を有する高速(高帯域)回路が提供される。コンポーネントの適切な選択により、非線形伝達関数は、平方根伝達関数など、任意の単調関数の近似値を正確に求めるために使用され得る。別の側面において、入力信号の拡張されたダイナミックレンジにわたって望ましい非線形伝達関数を正確に生成するために、非線形サブ回路のセットを使用する区分非線形回路配置が提供される。そのような回路の一実装において、サブ回路のそれぞれは、入力範囲の一部にわたって望ましい非線形関数を近似する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2004年7月1日に出願された米国仮出願第60/585,350号と、2004年7月15日に出願された米国仮出願第60/588,641号と、2005年6月1日に出願された米国仮出願第60/686,680号との利益を主張し、その各々の全体は、参照することによって本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、概して信号増幅器に関し、より具体的には、非線形伝達関数を有する信号増幅器に関する。本発明の増幅器は、例えば、質量分析装置またはカメラを含む、広範囲における適用性を有する。
【背景技術】
【0003】
多くの信号処理アプリケーションにおいて、アナログ信号をデジタル化することが望ましい場合が多い。例えば、検出された物理事象または現象を表すアナログ信号を、デジタルコンピュータシステムにおいてさらに処理するために、デジタル信号に変換することが望ましい場合が多い。そのために、アナログ信号は一般に一定のレートでサンプリングされ、デジタライザ、例えばアナログデジタル変換器(ADC)を使用してデジタルビットに変換される。
【0004】
高ダイナミックレンジおよび高帯域信号を扱うことができる理想的なデジタル化システムは、実現が困難である。ダイナミックレンジとは、電子システムによって扱うことができる最大信号レベルと最小信号レベルとの間の比率のことである。多くの場合、最大信号レベルはクリッピングまたはその他の実質的な歪みなしに扱うことができる最大信号に対応し、最小信号レベルは小信号用のより大きい雑音レベルまたは小信号用のデジタライザの分解能によって決定される。電送システムにおいて、帯域幅とは、伝送路の最高および最低周波数の間の範囲のことである。帯域幅は一般にヘルツ(Hz、秒当たりサイクル)で計測される。離散時間間隔でサンプリングされた信号について、信号の帯域幅はサンプリングレート(ナイキスト周波数)の半分に制限される。
【0005】
質量分析計は、高ダイナミックレンジおよび広帯域を有する質量分析計から生じた過渡信号を扱うことができるデジタル化システムを必要とするシステムの良い例である。タンパク質プロファイリング用に設計された質量分析計のダイナミックレンジは、血清内に存在するタンパク質の濃度のダイナミックレンジ、つまり約1015と一致するのが理想である。このダイナミックレンジは、質量分析計を用いるものを含む現在利用可能ないかなるタンパク質プロファイリングシステムの性能をも桁違いに超えるものである。質量分析計技術を使用するタンパク質プロファイリングシステムの実現可能なダイナミックレンジは、現在105前後である。このダイナミックレンジの一部は信号加算平均を使用して実際に実現され得るが、その多くは直接的にデジタル化システムを用いるものに占められなくてはならない。
【0006】
飛行時間型質量分析計(TOF−MS)システムにおいて、デジタル化システムの時間分解能は、システムによって実現され得る質量分解能を測定する因子の1つである。質量分析計の時間分解能は、デジタル化システムよりも検出システムまたは質量分析器のパフォーマンスによって制限されるのが理想的である。現在利用可能なイオン検出器は、1/10ナノ秒の数倍から数ナノ秒の範囲のパルス幅を持つ出力信号を生成する。これらの信号を時間分解能の損失なく効果的にデジタル化するには、約100から約5000MHzの帯域幅を持つデジタル化システムが必要である。
【0007】
約7000のダイナミックレンジおよび約320MHzの帯域幅を持つデジタル化システムを考察する。標準的な技術を使用すると、そのようなシステムは、320MHzより広い帯域幅を持つ13ビット線形アナログデジタル変換器(ADC)を必要とするであろう。現在、そのような高結合ダイナミックレンジおよび帯域幅を持つシステムを作り出すことは困難であり、かつ高価である。しかしながら、処理されている信号の雑音特性を考慮することによって、状況は改善され得る。概して、すべてのアナログ信号は雑音を有する。
【0008】
典型的なADCは、単に入力に比例する数を固定サンプリングレートで出力する実質的に線形の装置である。ダイナミックレンジは、通常、ADCが出力できる最大数によって決定される。ダイナミックレンジは、通常、2nであり、ここでnはこの出力数を表すために使用されたデジタルビットの数である。このダイナミックレンジの計算では、暗黙のうちに、効果的に計測される最小信号はADCの出力における1の変化によって表されると仮定している。したがって、特定のADCについて、計測された最大信号と達成された振幅分解能との間にトレードオフがある。有用な振幅分解能の選択は概して雑音によって制限され、信号上の雑音の振幅より細かい振幅分解能を持つ信号をデジタル化することによって得られるのはほんのわずかである。
【0009】
概して、信号の雑音特性は信号の振幅によって異なる場合がある。さらに、信号の雑音特性は、一般に、多くの異なるソースからのコントリビューションを含有する。多くの電子システムにおいて、例えば、雑音の振幅は本質的に信号の振幅とは独立(すなわち、一定)である。これは、通常、増幅器およびその他の回路コンポーネントにおいて、主な雑音コントリビューションが例えば熱雑音である場合に真である。別のタイプの雑音である散弾雑音は、信号が離散素子からなる場合に発生する。例えば、電流と関連する任意の電子信号は、電流が離散電荷担体、通常は電子でできているため、散弾雑音を有する。散弾雑音の振幅は、信号の振幅の平方根に比例する。ほとんどの電子信号は極めて多数の電子を伴うため、散弾雑音はこれらの信号の非常にわずかの振幅である場合が多く、また、システム内の全雑音のうちの、無視してよいほどわずかな一部である場合が多い。散弾雑音は、信号が光子または荷電もしくは中性粒子などの粒子の検出によるものである場合にも生じる。したがって、質量分析計などのシステムにおいて、検出されたイオンの数が数個または単一のイオンとさえ同じくらい低くなり得る場合、散弾雑音はその他すべての雑音源を支配し得る。
【0010】
信号の雑音特性およびデジタル化システムの分解能は、雑音振幅とほぼ同等になるようにデジタライザの分解能を選ぶことによって、一致させることができる(ピークトゥピーク雑音振幅は通常、例えば標準偏差で計測された雑音振幅の数倍となることに留意されたい)。このように、考えられる最大信号は受け入れられ、一方、システムの分解能はデジタル化の分解能(雑音制限分解能)によってではなく信号内の雑音によって制限される。これは、雑音振幅が一定である信号に対して直接的である。線形ADCについては、この手順は信号内の雑音を計測し、信号振幅ができる限り大きくなるのを可能にするのに充てられるデジタル化レベルを最小化することによって、計測システムのダイナミックレンジを最適化する。しかしながら、雑音振幅が信号振幅とともに変化する場合の信号については、状況はそう単純ではない。線形ADCを用いると、分解能を1つの信号振幅における雑音の振幅に一致させることによって、雑音が少ない信号振幅においてデジタライザが分解能制限因子になるか、雑音が多い信号振幅においてデジタライザ分解能が無駄になるかのいずれかになる。
【0011】
この状況は、分解能が常に雑音の振幅と一致するように、分解能が信号増幅とともに変化するデジタル化システムを構築することによって改善され得る。これを行うための一手法は、変換された信号の雑音振幅が一定になる、すなわち、雑音振幅が信号の振幅によって異ならないように、線形ADCでデジタル化される前に信号を変換することである。例えば、雑音振幅特性が散弾雑音によって支配される(雑音振幅が信号振幅の平方根とともに増加する)信号について、必要とされる変換は、線形ADCでデジタル化する前に信号の平方根をとることである。線形および対数変換は、信号の雑音特性が散弾雑音によって支配されている場合には最適ではない。例えば、線形ADCによるデジタル化の前に入力信号の線形変換をすることで、変換された信号の雑音振幅は、ちょうど変換さていない(untransformed)信号内で行われるように信号振幅が大きくなるとともに増加し得る。雑音振幅が最小となる低い信号レベルで分解能が雑音振幅と一致している場合、雑音振幅がより大きい高振幅信号において分解能は無駄になり得る。線形ADCによるデジタル化の前に入力信号の対数変換をすることで、変換された信号の雑音振幅は信号振幅が大きくなるにつれて減少し得る。雑音振幅が最小となる高い信号レベルで分解能が雑音振幅と一致している場合、雑音振幅がより大きい低振幅信号において分解能は無駄になり得る。
【0012】
しかしながら、平方根変換などの特定の非線形変換を持つ増幅器を設計することは困難であり、特に、例えば100MHzより広い帯域幅を持つ信号などの高帯域信号を扱うために該当する増幅器を設計することは困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、非線形伝達関数、特に平方根伝達関数を提供する増幅回路を提供することが望ましい。そのような増幅回路は、高ダイナミックレンジおよびより広い帯域幅で動作し得る。該当する増幅器を質量分析装置またはカメラにおいて使用することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(本発明の概要)
本発明は、非線形伝達関数を有する信号増幅器を提供する。一側面において、入力信号の限られた範囲にわたって非線形伝達関数を持つ高速(高帯域)回路が提供される。コンポーネントの適切な選択により、非線形伝達関数は、平方根伝達関数など、任意の単調関数を正確に近似するために使用することができる。別の側面において、入力信号の拡張された範囲にわたって望ましい非線形伝達関数を正確に生成するために、1つ以上の非線形サブ回路のセットを使用する区分非線形回路配置が提供され、ここでサブ回路のそれぞれは入力範囲の一部にわたって望ましい非線形関数を近似する。本明細書において使用する場合、望ましい出力信号が入力信号の非線形変換であれば、信号増幅器は「実質的に非線形である伝達関数」を有する。例えば、望ましい出力は、平方根もしくは平方などのべき乗、対数、指数(例えば、ex)、または望ましい範囲にわたる入力信号のその他の非線形関数であり得る。入力信号の線形変換である出力信号を作り出すよう設計された増幅器は、それらの伝達関数においてわずかな非線形性を持つ出力を作り出すことが認識されている。しかしながら、線形回路におけるこの非線形性は望ましくなく意図されない場合が多く、本明細書で使用されるように実質的に非線形であるとは見なされない。
【0015】
本発明の側面によると、非線形伝達関数を実装する回路ブロックが提供される。ブロックは一般に、インピーダンス素子と直列のダイオードを含む。該当する回路ブロックの例を、図1Cに示す。この回路は、作り出される伝達関数の形状を改変するために、電流バイアスを使用して望ましい伝達関数を一致させるように整形され得る非線形性を生成する。望ましい伝達関数に最も近い回路ブロックによって生成される伝達関数の一部が、選択または使用され得る。これは、特定の側面において、ゲインおよびオフセット調整(スケーリングおよびシフティング)を使用して、伝達関数のこの部分に入力および出力をマッピングすることによって行われる。
【0016】
本発明の別の側面によると、出力信号を作り出すために非線形伝達関数で入力信号を処理する回路配置は一般に、それぞれが異なる伝達関数を有し、それぞれが入力信号を受信し出力信号を作り出すように複数の構成される回路ブロックを含み、前記回路の少なくとも1つは非線形伝達関数と、出力信号を作り出すために複数の回路ブロックの出力を結合するように構成される結合回路とを有する。
【0017】
インピーダンス素子と直列のダイオード素子を含むブロックなど、本明細書において説明されている回路ブロックは、いくつかの入力範囲を、望ましいマッピングを近似するいくつかの出力範囲へマッピングするために伝達関数を作り出すことができる。一般に、マッピングの精度とマッピングが必要な精度を満たす範囲との間には逆相関がある。区分非線形アーキテクチャは、それぞれが望ましい範囲の一部にわたって望ましい精度を持つ望ましい伝達関数を作り出す、回路ブロックのセットを使用することによって、この制限を切り抜けるための手法を提供する。回路ブロックの出力は、任意の個別のブロックによって作り出されることができるよりも広い範囲にわたって望ましい精度を持つ、望ましい伝達関数を作り出すために、結び付けられる。
【0018】
本発明のまたさらなる側面によると、質量分析装置が提供される。前記装置は一般に、粒子を提供する粒子源と、前記粒子を検出し、検出された粒子束に比例する振幅を有する信号を提供する検出器と、信号振幅と実質的に無関係である雑音成分を有する増幅された信号を作り出す非線形伝達関数を有する信号増幅器と、前記増幅された信号をデジタル出力信号に変換するアナログデジタル変換器(ADC)とを含む。
【0019】
本発明のまたさらなる側面によると、質量分析計において質量スペクトル信号を増幅する方法が提供される。前記方法は一般に、過渡信号を信号源から受信することであって、過渡信号は、検出された粒子束に比例する振幅を有する、ことと、平方根伝達関数を近似する非線形伝達関数を有する非線形増幅器において過渡信号を増幅し、信号の振幅と実質的に独立な雑音成分を有する増幅された信号を生成することとを含む。
【0020】
本発明のまたさらなる側面によると、インピーダンス素子と直列のダイオードを備え、入力信号範囲にわたって入力信号の非線形関数である出力信号を生成する回路配置が提供される。
【0021】
本発明の別の側面によると、入力信号範囲にわたって入力信号の望ましい非線形関数を近似する出力信号を生成する回路配置が提供される。前記配置は一般に、2つ以上の回路であって、各回路が前記入力信号を受信し、回路出力を作り出すように構成され、前記回路の少なくとも1つが前記入力信号範囲の少なくとも一部にわたって非線形伝達関数を有する回路を含む。前記配置は一般に、前記出力信号を生成するために前記回路出力を結合する結合回路も含む。
【0022】
本発明のさらに別の側面によると、入力信号範囲にわたって入力信号の実質的に望ましい非線形関数である出力信号を生成する方法が提供される。前記方法は一般に、インピーダンス素子と直列のダイオードを有する回路、ならびに、a)前記入力信号を、前記ダイオードおよびインピーダンス素子を通過する電流に変換するための入力回路と、b)前記ダイオードおよびインピーダンス素子を通じてバイアス電流を提供するためのバイアス回路と、c)前記入力信号にオフセットを提供するための第1のオフセット回路と、d)前記出力信号にオフセットを提供するための第2のオフセット回路と、e)前記入力および/または出力信号にスケーリングを提供するためのスケーリング回路とのうち1つ以上を備える追加の回路を提供することを含む。前記方法は一般に、前記入力信号範囲にわたって前記入力信号の前記望ましい非線形関数を近似する出力信号を生成するように、前記入力回路、バイアス回路、第1のオフセット回路、第2のオフセット回路、およびスケーリングのうちの1つ以上を調整することも含む。
【0023】
本発明のさらに別の側面によると、入力信号範囲にわたって入力信号の実質的に望ましい非線形関数である出力信号を生成する方法が提供される。前記方法は一般に、インピーダンス素子と直列のダイオードを有する2つ以上の回路、ならびに、a)前記入力信号を、前記ダイオードおよびインピーダンス素子を通過する電流に変換するための入力回路と、b)前記ダイオードおよびインピーダンス素子を通じてバイアス電流を提供するためのバイアス回路と、c)前記入力信号にオフセットを提供するための第1のオフセット回路と、d)前記出力信号にオフセットを提供するための第2のオフセット回路と、e)前記入力および/または出力信号にスケーリングを提供するためのスケーリング回路とのうち1つ以上を備える追加の回路を提供することを含む。前記方法は一般に、前記2つ以上の回路のそれぞれについて、前記入力信号範囲の一部にわたって前記入力信号の前記望ましい非線形関数を近似する出力信号を生成するように、前記入力回路、バイアス回路、第1のオフセット回路、第2のオフセット回路、およびスケーリング回路のうちの1つ以上を調整することと、前記入力信号範囲にわたって前記入力信号の前記望ましい非線形伝達関数を近似する複合出力信号を形成するために、前記2つ以上の回路から生じた前記出力信号を結合することも含む。
【0024】
本発明の別の側面によると、一般に、複数のピクセル素子を備える光子検出器であって、各ピクセル素子は光子を検出し、検出された光子の数に比例する振幅を有するピクセル信号を提供する光子検出器と、前記信号振幅と実質的に独立な雑音成分を有する増幅された信号を作り出すためにピクセル信号を処理する実質的に非線形伝達関数を有する信号増幅器と、前記増幅された信号をデジタル出力信号に変換数アナログデジタル変換器(ADC)とを含むカメラが提供される。ある特定の側面において、前記ピクセルは、200kHzより速い、1MHzより高い、10MHzより高い、または100MHzより高いレートで読み出しまたは検出される。
【0025】
本発明のさらなる側面によると、入力信号範囲にわたって入力信号の望ましい非線形関数を近似する出力信号を生成する回路配置が提供される。前記配置は一般に、前記入力信号の第1の部分にわたって前記望ましい非線形変換を近似する第1の非線形変換を作り出すように構成される第1の回路素子と、前記入力信号範囲の第2の部分にわたって前記望ましい非線形変換を近似する第2の非線形変換を作り出すように構成される第2の回路素子とを含み、前記配置は一般に、前記望ましい非線形関数を近似しない前記第1および第2の回路素子の前記伝達関数の部分をキャンセルする伝達関数を作り出すように構成される第3の回路素子と、前記入力信号範囲全体にわたって前記望ましい非線形関数を近似する出力信号を作り出すために、前記第1、第2、および第3の回路素子の出力を結合するように構成される結合素子とも含む。ある一定の側面において、前記第1の回路素子は、特定の信号範囲にわたって前記望ましい非線形関数を近似する第1のサブ回路と、前記入力信号についてスケーリング関数を実行し、前記スケールされた入力信号を前記第1のサブ回路へ送達するスケーリング素子であって、前記スケーリング関数は、前記入力信号範囲の前記第1の部分が、前記第1のサブ回路が前記望ましい非線形関数を近似する前記特定の信号範囲にスケールされるように選択される、第1のスケーリング素子と、前記第1の素子の前記スケーリングを取り消しする第2のスケーリング素子を含む。ある特定の側面において、前記第1の回路素子は、特定の信号範囲にわたって前記望ましい非線形関数を近似する前記第1のサブ回路素子と、前記入力信号についてスケーリング関数を実行し、前記スケールされた入力信号を前記第1のサブ回路へ送達する第1のスケーリング素子であって、前記スケーリング関数は、前記入力信号範囲の前記第1の部分が、前記第1のサブ回路が前記望ましい非線形関数を近似する前記特定の信号範囲にスケールされるように選択される、第1のスケーリング素子と、前記第1のサブ回路の前記出力について第2のスケーリング関数を実行する第2のスケーリング素子を含む。ある特定の側面において、前記入力信号範囲の前記第1の部分は1からXユニットであり、前記スケーリング関数は前記入力信号にXの因数を乗じ、前記第2のスケーリング素子は前記第1のサブ回路の出力にl/(sqrt(X))の因数を乗じる。ある一定の側面において、Xは84である。ある一定の側面において、前記第2のスケーリング関数は、前記第1のスケーリング関数と完全に逆または部分的に逆となるように選択される。
【0026】
図面および特許請求の範囲を含む明細書の残りの部分を参照すると、本発明のその他の特徴および利点を認識するであろう。本発明の様々な実施形態の構造および動作に加えて、本発明のさらなる特徴および利点について、添付の図面を参照し、以下に詳述する。図面中、類似の参照番号は同一または機能的に同様の要素を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、非線形伝達関数(または非線形変換)を実装する回路および回路配置を提供する。一側面において、入力信号の限られた範囲にわたって非線形伝達関数を持つ高速(高帯域)回路が提供される。コンポーネントの適切な選択により、非線形伝達関数は、任意の単調関数を正確に近似するために使用することができる(例えば、平方根伝達関数は特例である)。別の側面において、入力信号の拡張された範囲にわたって望ましい非線形伝達関数を正確に生成するために、非線形サブ回路のセットを使用する回路配置が提供される。そのような回路の一実装において、サブ回路のそれぞれは入力範囲の一部にわたって望ましい非線形関数を近似するため、このタイプの回路を「区分非線形回路」と称する。
【0028】
一実施形態において、回路配置は、信号と線形アナログデジタル変換器(ADC)との間で適合する雑音制限一致を提供する高速平方根変換を実装し、ここで信号は信号振幅の平方根に比例する雑音成分を含む。そのような雑音統計は、例えば光子(光)、電子(電気)もしくはイオン(例えば、質量分析装置において)を表す、またはこれらでできた任意の信号など、検出された粒子を表す任意の信号において一般的である。このタイプの雑音は散弾雑音と称される。平方根変換を実装するそのような回路配置を含む増幅器は、質量分析装置の検出システムにおいても特に有用である。そのような増幅器の使用は、単一の質量スペクトル過渡信号において記録され得る強度範囲(例えば、ダイナミックレンジ)の増加を可能にする。該当する増幅器は、カメラにおいても特に有用である。カメラにおいて、各ピクセルの信号の雑音は、散弾雑音に対応する雑音特性を有するように、低照度でまたは短い露光時間のあいだ、取得された、限られた数の光子によって支配される。カメラにおいて、特定の例は、各ピクセルから(例えば、CCDアレイまたはその他の光子感知装置から)生じた信号に、当該ピクセル用の信号がADCでデジタル化される前に非線形変換を適用するために、該当する増幅器を使用することであり得る。
【0029】
本明細書において例として使用する回路への入力およびその出力は、概して電圧信号であると仮定する。当該技術分野では既知であるように、電圧または電流信号のいずれかを入力として受け入れ、電圧または電流信号を出力として作り出す、同様の回路が構築され得る。
【0030】
(ダイオードを使用して非線形伝達関数を生成すること)
それらの本質的指数電流−電圧特性により、ダイオードは、長きにわたり回路において対数および指数伝達関数を生成するために使用されてきた(例えば、図1B参照)。本発明の一側面によると、分圧器に挿入されたダイオードは、対数の他に非線形伝達関数を生成するために使用される。これの非常に単純な例を図1Cおよび1Dに示す。図1Cは、分圧器内のダイオードを含む、非線形および非対数伝達関数を生成するための2つの手法を示す。図1Eは、図1Aの単純分圧器、図1Bの対数ダイオードカーブを表す伝達関数、および、図1Cの分圧器−ダイオードハイブリッド回路の電圧の非線形非対数伝達関数の例を示す。図1Cに示すように、回路のある分岐上の様々な直列素子は、いかなる順序で配置されてもよい。図1Dは、前の回路のレジスタが様々な回路コンポーネントから構築される汎用インピーダンスとどのように置き換えられ得るかを示す。本明細書において論じられるような回路において使用され得る有用なダイオードの例は、Agilent社製のRFダイオード(HMPS−2822)である。
【0031】
図1に示す単純回路は非線形非指数伝達関数を有するが、特定のアプリケーションに望ましい特定の伝達関数を有する可能性は低い。例えば、これらの回路は、散弾雑音に支配される雑音特性を持つ信号を線形ADCに最適に連結するために望ましい平方根伝達関数を有する可能性が低い。様々な電圧オフセットおよびゲインステージを追加すること、ならびにダイオード(D3)を通じてバイアス電流を提供することによって、いくつかの入力範囲にわたり許容偏差内の望ましい伝達関数と一致する伝達関数が入手され得る。一実施形態に従って、該当する回路の例を図2に示す。図2において、ゲイン(G1およびG2)ならびに電圧オフセット(V1、V2、V3およびV4)は、入力の特定の範囲を、これらの調整をすることなく、回路の伝達関数の特定のセクションに一致させることを可能にする。分岐2、つまりV2とR2との回路の分岐は、ダイオード(D3)を通るバイアス電流が、その他の電圧および抵抗の選択における柔軟性を維持しながら調整されることを可能にする。先に述べたように、示されているそれぞれの抵抗は、1つ以上のコンポーネントからなるインピーダンスブロックに置き換えられ得ることに留意されたい。このタイプの回路の設計では、実現された伝達関数が望ましい伝達関数と一致する精度とその一致が大体同じと見なされる入力範囲との間において、しばしばトレードオフが存在し得る。満足のいく一致をより大きな入力範囲をカバーするように拡張できる回路の構築について、以下に説明する。
【0032】
帯域幅を増加させる、または周波数応答を制御するために、その他のコンポーネントが含まれ得る。これらの追加のコンポーネントは、その他のコンポーネントの理想的でない挙動を補正し得る。特に、より高い周波数を含むためにこの回路の帯域幅を増加させるためには、ダイオードの理想的でない特性をキャンセルし得るコンポーネントを含むダイオードと直列のインピーダンスブロックを有することが好都合である。
【0033】
ダイオードD3の非線形電流−電圧特性の一部は、特定の入力信号範囲にわたって望ましい非線形伝達関数の近似を生成するために、スケールされ、シフトされ、オフセット電圧V2、V3およびV4、抵抗R1、R2およびR3、ならびにゲインブロックG1およびG2で整形され得る。当業者であれば、オフセット電圧、抵抗およびゲインのこの特定のセットが、ダイオード特性のスケーリング、シフティング、および、整形における冗長制御を提供することを理解し得ることに留意されたい。したがって、この回路の任意の特定の実装において、いくつかのオフセット電圧および/または抵抗はゼロに設定され得、いくつかのゲインは1に設定され得る。当業者であれば、いかなるレジスタもゼロ以上のコンポーネントで構築されたその他のインピーダンスブロックと置き換えられ得ることも理解し得る。
【0034】
回路の伝達関数がどのようにして整形されることができるかの例を図3に示す。図3Aにおいて、伝達関数の中央部分はV2を変化させることによって変化する。V2を増加させると、伝達関数の中央部分における曲率が減少し、一方、V2を減少させると、逆の効果をもたらす。図3Bは、R1が伝達関数にどう影響するかを示している。終点が一致するようにカーブがスケールおよびオフセットされる場合、結果として生じる形状の変化は主に伝達関数の低信号部分にあることがわかる。
【0035】
一側面によると、オフセット電圧、抵抗(インピーダンス)およびゲインを決定するための手順は、以下のとおりである。
(1)回路を正確にモデリングする。
(2)望ましい入力範囲にわたって、テスト信号をモデルの入力に適用する。
(3)モデリングされた出力信号と望ましい出力信号との間の誤差を最小化するために、オフセット電圧、抵抗およびゲインを調整する。電圧、抵抗、およびゲインのパラメータセットにおける冗長性によって、いくつかのパラメータは、最小化手順が首尾よく行われるために制約されることが必要となり得ることに留意されたい。電圧誤差のみが回路の動作に影響を及ぼすため、例えば、電圧V1、V2、V3、V4のうち少なくとも1つは制約されなくてはならない。
(4)その他のコンポーネントを追加すること、またはレジスタをその他のインピーダンスと置き換えることによって、回路の周波数特性を調整する。
【0036】
オフセットおよびゲイン両方の安定性は、線形増幅器とは異なり、入力信号のオフセットにおける変化が入力信号の各特定の値に適用されるゲインを変化させるため、非線形増幅器にとって重要である。すなわち、伝達関数の勾配およびオフセットは、ともに連結されている。特に、高精度および高ダイナミックレンジアプリケーションのためにしばしば温度補正が必要となり得る。
【0037】
温度補正は、一側面において、V3とダイオードD3上の電流の関数としての電圧(一次の温度補正のため)との和が特定の電流においては温度の関数でないように、V3を制御することによって、達成され得る。これは、一側面において、図4に示すようにV3を制御するためにバイアス電流を持つ第2のダイオード素子(D3B)を使用することによって達成される。
【0038】
制限された入力範囲にわたる非線形伝達関数のこの実装は、特にクリーンなアーキテクチャによって、その他のコンポーネントによって整形される非線形性を生成するためのダイオードの使用によって、また、概してシステムが伝達関数を形成するためのフィードバックに依存しないことによって、きわめて高速(高帯域)で動作することが可能である。フィードバック要素は(特にゲインブロックにおいて)使用され、このアーキテクチャは、フォードバックを持つ回路において、またはフィードバックループ自体として使用され得るが、そのような実装は使用可能な帯域幅をしばしば制限し得る。これは、極めて高速のダイオードが利用可能であるために真である。この回路アーキテクチャおよび以下に説明する回路アーキテクチャはいずれも、ASIC(特定用途向け集積回路)内において、集積増幅器として、または、より大きな集積回路(例えば、集積デジタル化システム)内において関数ブロックとして、有利に実現されることがあり得ることに留意されたい。
【0039】
(区分非線形)
任意単調関数を用いて電子回路を生成するための標準的な技術は、複数の線形セグメントを用いて伝達関数を近似することである。図5を参照のこと(例えば、Cambridge University Press発行のHorowitzおよびHillによる、「The Art of Electronics」第2版、p252を参照)。電圧基準と連動するダイオードは、入力信号レベルの関数としての伝達関数の勾配を切り替えるために使用される。本明細書において記載されている技術は、入力信号範囲が、回路によってそれぞれ異なるように扱われるセクションに分割され得るという点で同様である。一例において、非線形伝達関数は入力範囲の少なくとも1つに適用され、回路を通じて異なるパスが異なる入力信号範囲を扱うために利用される。様々な入力信号範囲に異なる非線形伝達関数を適用することによって、極めて広いダイナミックレンジにわたる複合回路のための、または複雑な機能性のための、正確な非線形伝達関数が実現され得る。この回路アーキテクチャを「区分非線形」と称する。別の例において、この概念は、様々な信号範囲が互いに重複または合致することを可能にすることによって一般化され得る。入力信号がもはや明確な範囲に分割されないが、回路アーキテクチャが同じであるため、これは「区分非線形」回路と称される。いずれの例においても、回路を通る複数のパスが、対象となる入力信号範囲内のすべての入力信号についてアクティブであり得ることを理解することが重要である。
【0040】
図6は、本発明の実施形態に従って、区分非線形回路配置10のアーキテクチャ全般を説明している。図示するように、回路配置10は、複数の回路セグメント、またはサブ回路25を含む。入力信号20は、分けられて、2つ以上のサブ回路25に渡されることが可能である。サブ回路25のうち少なくとも1つの伝達関数は、非線形である。サブ回路25の出力30は、複合回路配置10の信号出力50を生成するために、加算セクション40に結合される。
【0041】
多くの場合、各サブ回路25は2つの部分の和として考えることができる伝達回路を有する。第1の部分は、限定された入力信号範囲における、出力に何らかのスケール因子を乗じたものにおいて望ましい非線形伝達関数である。第2の部分は、入力信号範囲全体における、入力信号の容易に除去可能(removable)な何らかの関数である。これは、除去される関数の反転版を回路の加算セクションに提供するサブ回路を提供することによって、伝達関数の第2の部分が減じられることを可能にする。多くの場合、伝達関数の第2の部分は、1)サブ回路を通過する入力信号の範囲を単純に制限すること、または、2)特定のサブ回路によって扱われる入力用に限定された範囲の外側の信号に対してその出力が線形となるように、非線形セクションを構築することによって確立される入力の定常、線形、または区分線形関数であろう。
【0042】
一側面において、少なくとも1つのサブ回路25は、その他のサブ回路の伝達関数の第2の部分をキャンセルする伝達関数を有する。その他のサブ回路の第2の部分が、定常、線形、または区分線形形態に限定される場合、キャンセルする伝達関数は線形または区分線形であり得る。
【0043】
一側面において、図示するように、すべてのサブ回路25の出力は、複合回路の出力50を生成するために合計される。総和回路40は、異なるサブ回路25の出力を、それらが和に含まれるように、重み付けおよび/または反転する。
【0044】
この回路の好適な実施例は一般に、それぞれが望ましい伝達関数を入力信号20の特定の範囲に適用する、2つ以上の非線形サブ回路25を含む。特定の範囲の外において、各サブ回路への入力は、特定のサブ回路の出力が一定となるように制限される。一側面において、それらの特定の入力範囲外のその他のサブ回路の出力をキャンセルするように設計された、線形または区分線形伝達関数を持つサブ回路25が含まれる。
【0045】
本発明の区分非線形回路アーキテクチャは、自己相似関数および異なるスケールまたは異なる入力範囲における同じようなその他の関数と同等の伝達関数の回路実現のために特に有用である。例としては、指数、対数、べき法則、および累乗根(例えば、平方根)関数があげられる。これらの関数について、任意の望ましいダイナミックレンジを持つ回路を構築するため、限定されたダイナミックレンジを持つ単一のサブ回路がスケーリングおよびオフセットとともに使用され得る。これが可能となることは、いくつかの単純な関数の以下の展開に見ることができる。
a)y(ax)=sqrt(ax)=sqrt(a)*sqrt(x)=sqrt(a)*y(x)、ここで、sqrt(x)はxの平方根を意味する。
b)y(ax)=log(ax)=log(a)+log(x)=log(a)+y(x)
c)y(a+x)−e(a+x)=ea*ex=ea*y(x)
具体例として、一実施例に従った、300MHz広ダイナミックレンジ平方根増幅回路200を表すブロック図を図7に示す。この回路例は、以下の関数方程式を実装することにより、それぞれ84のダイナミックレンジを持つ平方根関数ブロックから作られた7056(=842)のダイナミックレンジを持つ平方根伝達関数を実現する。
a)平方根関数ブロック225:x<84ならばsr(x)=x/sqrt(84)、およびx>=84ならばsr(x)=sqrt(x)。低い信号レベルにおける平方根から線形挙動への変化に留意されたい。このブロックの関数ダイナミックレンジは84以上と仮定されていることに留意されたい。平方根関数ブロックの好適な実装は、この例において使用されている平方根と線形セクションとの間に伝達関数の不連続勾配を有さないことに留意されたい。
b)線形関数ブロック235:x<7056ならばlim(x)=x、およびx>=7056ならばlim(x)=7056。
c)複合回路200は、図示するように、入力220から出力250への3つのパスを有する(それぞれのパスの伝達関数の例を図8に示す。図9において、平方根関数ブロックの線形−平方根の過渡において勾配が連続的である好適な実装を表す伝達関数の同様のセットを示す。):
(1)サブ回路2251およびゲインモジュール2451を通る高信号平方根パス:high(x)=sr(x)(図8B)
(2)ゲインモジュール215、リミッタ235、サブ回路2252およびゲインモジュール2453を通過する低信号平方根パス:low(x)=sr(lim(x*84))/sqrt(84)(図8A)。入力信号は因子84によって増幅され、高信号パスに使用されるものと同一の平方根ブロックに送り込まれる前に7056以下に制限される。平方根がとられた後、信号は、ブロック240内のその他のパスから信号に追加される前に、ゲインモジュール2453において再スケールされる。
(3)ゲインモジュール215、リミッタ235およびゲインモジュール2452を通過する線形パス:linear(x)=−lim(x*84)/(84*sqrt(84))(図8C)。図7でわかるように、低信号平方根パスからの増幅および制限された信号は、ブロック240内のその他のパスから信号に追加される前に、単純に反転およびスケールされる。
d)加算セクション240。回路の加算セクションが3つのパスを単純に合計して、全体的な関数方程式ができる:output(x)=sr(lim(x*84))/sqrt(84)+sr(x)−lim(x*84)/(84*sqrt(84))(図8D)。
e)回路の出力250は、1から7000の入力範囲においては入力の平方根に等しい。1を下回る入力については、出力は入力の線形関数である。極めて低い信号振幅でのこの線形限界挙動は、低レベル雑音を過増幅することを回避し、入力信号が正から負へと振れる際に回路を正常に挙動させておくための実際の実装において、概して好適である。このように、平方根変換は正の信号に適用され、一方、線形変換は負の信号および極めて小さい正の信号に適用される。
【0046】
区分非線形アーキテクチャは、広ダイナミックレンジと高速の両方を持つ正確な非線形伝達関数(例えば、3000を超えるダイナミックレンジおよび300MHzを超える帯域幅を持つ平方根伝達関数)を実現するために使用され得る。広ダイナミックレンジおよび高速の両方を達成することは、非線形伝達関数を生成するその他の方法では困難である。区分線形回路を用いると、例えば図5において説明および図示したように、広ダイナミックレンジを持つ信号のための非線形伝達関数を正確に生成することは難しい。区分線形アーキテクチャにより、広範囲の信号レベル(広ダイナミックレンジ)にわたって、平方根関数を含むほとんどの非線形伝達関数を正確に生成するには、多くの線形セグメントの使用が必要である。従来のダイオード切り替え区分−線形回路アーキテクチャを用いると、効果的に利用されることができるセグメントの数は、利用可能な電圧によって、および、ダイオードを切り替えるのに必要な電圧の振れによって制限される。高速では、この制限は、利用可能な電圧範囲が信号増幅器のスルーレートによって制限されてくるにつれて特に厳しくなる。1つの線形セグメントから別の線形セグメントへ切り替えるのに必要な電圧の振れを低減するために、フィードバック構成においてダイオードおよび増幅器を使用する方法あるが、これらの方法は高速において実装するのが難しい。平方根関数を生成するために使用される別の方法(Mark Shillによる「Circuit takes square root of input voltage」EDN Access、EDN Magazine、1997年を参照)は、ドレイン電流がゲート−ソース間電圧の二乗に比例する飽和領域内で動作するNMOSトランジスタを利用する。単純であるが、このアーキテクチャを用いて達成可能な速度は、MOSFETトランジスタのゲートキャパシタンスによって実質的に100MHz未満に制限される。
【0047】
(較正)
効率的なデジタル化のための非線形増幅器の利点は、伝達関数が理想的な伝達関数と同様である場合、すなわち実質的に同じである場合に実現される。換言すると、完全に理想的な伝達関数は概して必要とされない。完全に理想的な伝達関数は概して必要とされないが、非線形は概して可逆的でなくてはならない。これは、2つの手法で実現され得る。伝達関数が特定のアプリケーションにとって十分に正確であることが既知でなくてはならないか、あるいは、実現された回路の実際の伝達関数が計測されなくてはならない。
【0048】
較正は、実現された伝達関数の計測である。これは、既知の入力を非線形システムに供給すること、および出力を計測することによって達成することができる。例えば、非線形システムの伝達関数は、既知の振幅の正弦波信号が入力に適用された場合、および、既知の値の定常信号(例えば、地上およびヌル信号)が入力に適用された場合に、非線形システムの出力を計測することによって推定できる。正弦波入力信号の周波数および位相は、出力の周期的性質から測定することができ、一方、正弦波入力の振幅オフセットは、出力を既知の一定入力で生成された出力と比較することによって測定することができる。第2の、しかし異なる一定入力信号を用いて、正弦波を決定することもできる。好適な実装において、これらの計測は、そのままの位置で(動作機器内の増幅器によって)、周期的に、データ収集中に使用されるデジタル化システムを利用して生じる。いくぶん極端な例では、すべての計測期間前に自動的に較正を実行する。
【0049】
上述したように、基本的に別個の粒子(例えば、光、電流、イオン、原子、分子)からなるいかなる信号も、散弾雑音を含有する。この散弾雑音が信号の雑音特性を支配する場合、信号の平方根をとることによって、信号の振幅にともなう雑音の振幅内の変化を低減し得る。これは、線形ADCのダイナミックレンジが効率的に利用されることを可能にする。本明細書に記載されている回路および方法は、高帯域平方根増幅器の構築を可能にする。そのような増幅器は、質量分析、写真撮影およびその他の光検出ベース技術、ならびに、概して、任意の電子信号の高帯域記録を含む多くの領域において有用である。
【0050】
(質量分析計における平方根増幅器)
質量分析計は通常、個別のまたは少数の粒子を検出することができるため、出力信号の雑音特性は、検出された粒子に関連する散弾雑音によって支配されるのが普通である。質量分析計における雑音特性は散弾雑音に支配されるため、雑音制限分解能が達成され得るダイナミックレンジは、線形ADCによって信号をデジタル化する前に効果的に平方根をとることによって劇的に増加され得る。
【0051】
質量分析計において、特にレーザー脱離/イオン化質量分析計について、複数のスペクトルが通常は獲得され、次いで、改良された信号−雑音特性を持つ複合スペクトルを生成するために合計または平均化される。この加算平均が行われる前に、効果的に信号の平方根をとることによって導入された非線形性は概して正確に取り除かれなくてはならない。これは、合計または平均化された個別のスペクトルは概して同一でなく、数学的には、一般的に、非線形関数f(x)に対してf(a)+f(b)はf(a+b)に比例しないために必要である。ここで、aおよびbは合計されるスペクトルであり、f(x)は信号に適用された非線形関数である。質量分析計における非線形電子の較正は、いくつかの重要な目的を果たす。例えば、較正は、a)導入された非線形性の正確な除去、b)長期にわたる伝達関数の任意の残留ドリフトの除去、および、c)別個の機器のより正確な一致、を可能にする。
【0052】
図10は、本発明の回路実施例が有用となり得る、レーザー脱離/イオン化飛行時間質量分析装置100のコンポーネントの概略図を示している。簡潔に言うと、質量分析装置100は、イオン光学システム120、イオン検出システム125、光学顕微鏡システム150および制御システム170を含む。特に、回路10または回路200などの本発明の非線形変換増幅回路は、以下で論じるように、検出システム125において有用である。
【0053】
図示するように、イオン光学システム120は、反射電極レンズ121、抽出プレート122、および加速レンズまたは接地プレート124を含む。任意の質量フィルタ(図示せず)が含まれ得、一般にレンズ124と検出器140との間に置かれる。図示するように、抽出器122は円錐形であり、加速レンズ124は平面状であるが、必要に応じてその他の形状が使用され得る。例えば、抽出器122および加速レンズ124の両方が平面状であり得る。抽出器122および加速レンズ124の両方は、サンプル130から脱着したイオン用の飛行経路をともに特徴付ける開口を有する。飛行管(図示せず)またはその他の筐体は、イオン光学システム120と検出システム125との間の飛行経路を囲む。一般に、この筐体は、イオン飛行の間、望まない相互作用を防止するように、真空にされる。
【0054】
質量分析装置100は、光源152を含む光学顕微鏡システム150も含む。光学顕微鏡システム150は、光を生成し、サンプル130へ供給するように設計される。好適な側面において、光学システム150は、既知のエネルギーの光パルスおよび焦点がサンプル130に配信されるように、必要に応じて光を調節し、方向を変え、焦点に合わせることができる複数の光学素子を含む。光源152は、好ましくはレーザーを含むが、当業者には明らかであるように、素子を作り出すその他の光が使用され得る。送達された光は、好ましくは、既知の持続時間および強度の1つ以上のパルスとして提供される。したがって、好適な側面において、光システム150は、パルスレーザービームを生成し、サンプル130へ送達する。レーザー源は、パルス生成素子を持つパルスレーザーまたは連続(cw)レーザーを含み得る。
【0055】
イオン光学システム120および制御システム170に加えて、光システム150の素子のさらなる側面および詳細については、2004年4月26日に出願された「Laser Desorption Mass Spectrometer with Uniform Illumination of the Sample」と題された同時係属の米国非仮特許出願番号第10/832,822号[代理人整理番号016866−011800US]に見ることができ、これは、参照することにより援用される。
【0056】
検出システム125は、イオン検出器140、前置増幅器モジュール142、およびデジタライザモジュール144を含む。イオン検出器140は、サンプル130から脱着したイオンを検出し、検出されたイオンを、検出されたイオンスペクトルを表す信号(過渡信号)に変換するための回路素子を含む。適切な検出素子は、電子増倍管装置およびその他の電荷ベースの検出器を含む。例として、離散および連続ダイオード電子増倍管が挙げられる。デジタライザ144は、例えばアナログデジタル変換器(ADC)を使用して、アナログスペクトル信号をデジタル形態に変換する。前置増幅器142は、例えば、非線形(例えば、平方根)変換を過渡信号に適用することによって、デジタル化の前にイオン検出器140からの過渡信号を調節するために含まれる。検出システム125のイオン−電子変換効率は、概して、検出器のイオン−電子変換ダイオードの表面の電子特性、イオン検出器140のゲイン、および使用時の前置増幅器142を含む、それに関連する電子機器の関数である。
【0057】
一側面において、2.0ns以下の間隔で過渡信号をサンプリングすることは概して望ましい。この場合、デジタライザ144は、500Ms/秒を超えるサンプリングレートで動作し得る。また、約250MHzより広い帯域幅を有する増幅器の使用も望ましい。質量分析計過渡信号における信号振幅は、1000:1より広い範囲、すなわち、1000より広いダイナミックレンジにわたって変動し得る。従来、該当する信号のデジタル化に必要とされるような高サンプリングレートと広ダイナミックレンジの両方を達成することは困難であった。したがって、一実施例において、前置増幅器は、平方根変換を適用するように構成された回路10または回路200を含む。入力過渡信号は振幅の平方根に比例する雑音成分を有するため、前置増幅器142による過渡信号出力は、したがって、信号振幅と実質的に無関係である雑音成分を有利に有し得る。このような具合に、線形ADC144における効果的な数のビットが増加する、例えば、理論上7から14へ2倍になり得るが、小さい負の信号に対する望ましい線形応答のため、実用上、増加はこれを下回る場合が多い。
【0058】
図11は、本発明に従って、非線形回路素子の別の例を説明している。図11aは、図1の回路と同様に、インピーダンスと直列のダイオードを持つ回路の例を示す。図11bは、図11aの回路への有用な改変を示す。追加の回路を使用すると、非線形ビルディングブロックの応答を、特定の範囲外で線形または一定にすることが可能である。図11bに示すように、R3の追加は低信号応答を線形にする。当業者であれば、高い、および/または低い回路応答を線形にするために、同様の回路が使用され得ることを十分に理解し得る。
【0059】
特定の実施例を例示し、その観点から本発明を説明したが、本発明は開示されている実施例に限定されるものではないことを理解されたい。反対に、当業者には明らかなように、様々な改変および同様の配置をカバーすることを意図されている。例えば、特定の例を論じたが、本発明の増幅回路は0Hzから5または6GHzを超える信号で動作する。したがって、添付の特許請求項の範囲は、該当するすべての改変および同様の配置を包含するように、広い解釈を許容するものでなくてはならない。本明細書において言及するすべての文書は、参照することにより援用される。又、本出願は、参照することにより、2004年7月1日出願の「NON−LINEAR SIGNAL AMPLIFIERS AND USES THEREOF IN A MASS SPECTROMETER DEVICE」と題された、米国仮出願番号60/585,350[代理人整理番016866−011900US]を援用し、これは、参照することにより本明細書に援用される。当該仮出願において「knee」に言及される場合、「knee」は、本明細書において論じられているように整形および使用されることができるダイオード回路応答カーブの関連部分に関する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1A】図1Aは、単純抵抗分圧器回路を示す。
【図1B】図1Bは、出力が直接的にダイオードのI−Vカーブに比例する単純回路を示す。
【図1C】図1Cは、2つのハイブリッド分圧器−ダイオード回路を示す。回路の単一分岐にあるコンポーネントの順序は、回路の関数に影響を及ぼさない。これら2つの回路は、同一の伝達関数を有する。
【図1D】図1Dは、図1Cに示す単純レジスタの代わりに汎用インピーダンスブロックを持つハイブリッド分圧器−ダイオード回路を示す。
【図1E】図1Eは、図1A〜1D内の回路用の伝達関数例を示す。図1Aの回路の伝達関数は、線形である。図1Bの回路の伝達関数は、ダイオードカーブである。図1Cの回路の伝達関数は、他2つの間にあるハイブリッドカーブである。
【図2】図2は、一実施例に従って、ゲイン、オフセット、バイアス電流、および整形調整を可能にするコンポーネントを持つダイオードベースの非線形回路を示す。
【図3A】図3は、図2に示す回路の伝達関数が、2つの調整可能なパラメータV2およびR1を変更することにより、どのように整形されることができるかの例を示す。図3Aは、V2を変動させることの効果を示す。伝達関数の中央部分は、V2を変化させることによって変化する。V2を増加させると、伝達関数の中央部分における曲率が減少し、一方、V2を減少させると、逆の効果をもたらす。図3Bは、変動R1の効果を示す。
【図3B】図3は、図2に示す回路の伝達関数が、2つの調整可能なパラメータV2およびR1を変更することにより、どのように整形されることができるかの例を示す。図3Aは、V2を変動させることの効果を示す。伝達関数の中央部分は、V2を変化させることによって変化する。V2を増加させると、伝達関数の中央部分における曲率が減少し、一方、V2を減少させると、逆の効果をもたらす。図3Bは、変動R1の効果を示す。
【図4】図4は、動作温度における変化の効果をキャンセルするため、電圧オフセット(V3)を制御するために使用される第2のダイオードが、非線形性を生成するために使用されるダイオードにどのように適用されるかを実証する代替の回路配置を示す。温度補正を最適化するために、第2のダイオードは、(図示するように)非線形性を生成するために使用されるダイオードと同じパッケージ内に含有され得る。
【図5】図5は、区分線形伝達関数の典型的な実装を示す。回路および伝達関数の両方が示されている。Cambridge University Press発行のHorowitzおよびHillによる、「The Art of Electronics」、第2版、P252を参照のこと。
【図6】図6は、本発明の実施例に従って、複数の回路またはサブ回路の出力を結合することによって非線形伝達関数を実装するように構成される、区分非線形回路配置アーキテクチャを示している。
【図7】図7は、一実施例に従って、広ダイナミックレンジ平方根増幅回路の区分非線形実装を表すブロック図である。
【図8】図8は、図7の回路セグメントの特性方程式の代表的セットのグラフ表示を示す。図8Aは、低レンジ平方根関数セグメントを示す。図8Bは、高レンジ平方根関数セグメントを示す。図8Cは、区分線形セグメントを示す。図8Dは、低および高レンジ平方根セグメントの和から区分線形セグメントを引いたものを示し、これは、フルレンジ平方根関数である。
【図9】図9は、図7の回路セグメントの特性方程式の好適なセットのグラフ表示を示す。これらの図は、平方根関数ブロック内の線形−平方根過渡において勾配が連続的であることを除き、図8のものと同様である。この相違点は、図8Bと図9Bとの間において最も容易にわかる。横軸目盛はアンペアであり、縦軸目盛はボルトである。わずかに負の電流に至るまで信号のデジタル化を可能にするために、信号に追加される垂直オフセットがある。ここで使用されるデジタライザは、0から1.6Vで動作する。このシステムのための入力電流範囲は、−15μAから6.8mAである。
【図10】図10は、本発明の増幅回路配置が有用となり得る、レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析計を示している。
【図11A】図11は、本発明に従って、非線形回路素子の別の例を説明している。
【図11B】図11は、本発明に従って、非線形回路素子の別の例を説明している。
【図1】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2004年7月1日に出願された米国仮出願第60/585,350号と、2004年7月15日に出願された米国仮出願第60/588,641号と、2005年6月1日に出願された米国仮出願第60/686,680号との利益を主張し、その各々の全体は、参照することによって本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、概して信号増幅器に関し、より具体的には、非線形伝達関数を有する信号増幅器に関する。本発明の増幅器は、例えば、質量分析装置またはカメラを含む、広範囲における適用性を有する。
【背景技術】
【0003】
多くの信号処理アプリケーションにおいて、アナログ信号をデジタル化することが望ましい場合が多い。例えば、検出された物理事象または現象を表すアナログ信号を、デジタルコンピュータシステムにおいてさらに処理するために、デジタル信号に変換することが望ましい場合が多い。そのために、アナログ信号は一般に一定のレートでサンプリングされ、デジタライザ、例えばアナログデジタル変換器(ADC)を使用してデジタルビットに変換される。
【0004】
高ダイナミックレンジおよび高帯域信号を扱うことができる理想的なデジタル化システムは、実現が困難である。ダイナミックレンジとは、電子システムによって扱うことができる最大信号レベルと最小信号レベルとの間の比率のことである。多くの場合、最大信号レベルはクリッピングまたはその他の実質的な歪みなしに扱うことができる最大信号に対応し、最小信号レベルは小信号用のより大きい雑音レベルまたは小信号用のデジタライザの分解能によって決定される。電送システムにおいて、帯域幅とは、伝送路の最高および最低周波数の間の範囲のことである。帯域幅は一般にヘルツ(Hz、秒当たりサイクル)で計測される。離散時間間隔でサンプリングされた信号について、信号の帯域幅はサンプリングレート(ナイキスト周波数)の半分に制限される。
【0005】
質量分析計は、高ダイナミックレンジおよび広帯域を有する質量分析計から生じた過渡信号を扱うことができるデジタル化システムを必要とするシステムの良い例である。タンパク質プロファイリング用に設計された質量分析計のダイナミックレンジは、血清内に存在するタンパク質の濃度のダイナミックレンジ、つまり約1015と一致するのが理想である。このダイナミックレンジは、質量分析計を用いるものを含む現在利用可能ないかなるタンパク質プロファイリングシステムの性能をも桁違いに超えるものである。質量分析計技術を使用するタンパク質プロファイリングシステムの実現可能なダイナミックレンジは、現在105前後である。このダイナミックレンジの一部は信号加算平均を使用して実際に実現され得るが、その多くは直接的にデジタル化システムを用いるものに占められなくてはならない。
【0006】
飛行時間型質量分析計(TOF−MS)システムにおいて、デジタル化システムの時間分解能は、システムによって実現され得る質量分解能を測定する因子の1つである。質量分析計の時間分解能は、デジタル化システムよりも検出システムまたは質量分析器のパフォーマンスによって制限されるのが理想的である。現在利用可能なイオン検出器は、1/10ナノ秒の数倍から数ナノ秒の範囲のパルス幅を持つ出力信号を生成する。これらの信号を時間分解能の損失なく効果的にデジタル化するには、約100から約5000MHzの帯域幅を持つデジタル化システムが必要である。
【0007】
約7000のダイナミックレンジおよび約320MHzの帯域幅を持つデジタル化システムを考察する。標準的な技術を使用すると、そのようなシステムは、320MHzより広い帯域幅を持つ13ビット線形アナログデジタル変換器(ADC)を必要とするであろう。現在、そのような高結合ダイナミックレンジおよび帯域幅を持つシステムを作り出すことは困難であり、かつ高価である。しかしながら、処理されている信号の雑音特性を考慮することによって、状況は改善され得る。概して、すべてのアナログ信号は雑音を有する。
【0008】
典型的なADCは、単に入力に比例する数を固定サンプリングレートで出力する実質的に線形の装置である。ダイナミックレンジは、通常、ADCが出力できる最大数によって決定される。ダイナミックレンジは、通常、2nであり、ここでnはこの出力数を表すために使用されたデジタルビットの数である。このダイナミックレンジの計算では、暗黙のうちに、効果的に計測される最小信号はADCの出力における1の変化によって表されると仮定している。したがって、特定のADCについて、計測された最大信号と達成された振幅分解能との間にトレードオフがある。有用な振幅分解能の選択は概して雑音によって制限され、信号上の雑音の振幅より細かい振幅分解能を持つ信号をデジタル化することによって得られるのはほんのわずかである。
【0009】
概して、信号の雑音特性は信号の振幅によって異なる場合がある。さらに、信号の雑音特性は、一般に、多くの異なるソースからのコントリビューションを含有する。多くの電子システムにおいて、例えば、雑音の振幅は本質的に信号の振幅とは独立(すなわち、一定)である。これは、通常、増幅器およびその他の回路コンポーネントにおいて、主な雑音コントリビューションが例えば熱雑音である場合に真である。別のタイプの雑音である散弾雑音は、信号が離散素子からなる場合に発生する。例えば、電流と関連する任意の電子信号は、電流が離散電荷担体、通常は電子でできているため、散弾雑音を有する。散弾雑音の振幅は、信号の振幅の平方根に比例する。ほとんどの電子信号は極めて多数の電子を伴うため、散弾雑音はこれらの信号の非常にわずかの振幅である場合が多く、また、システム内の全雑音のうちの、無視してよいほどわずかな一部である場合が多い。散弾雑音は、信号が光子または荷電もしくは中性粒子などの粒子の検出によるものである場合にも生じる。したがって、質量分析計などのシステムにおいて、検出されたイオンの数が数個または単一のイオンとさえ同じくらい低くなり得る場合、散弾雑音はその他すべての雑音源を支配し得る。
【0010】
信号の雑音特性およびデジタル化システムの分解能は、雑音振幅とほぼ同等になるようにデジタライザの分解能を選ぶことによって、一致させることができる(ピークトゥピーク雑音振幅は通常、例えば標準偏差で計測された雑音振幅の数倍となることに留意されたい)。このように、考えられる最大信号は受け入れられ、一方、システムの分解能はデジタル化の分解能(雑音制限分解能)によってではなく信号内の雑音によって制限される。これは、雑音振幅が一定である信号に対して直接的である。線形ADCについては、この手順は信号内の雑音を計測し、信号振幅ができる限り大きくなるのを可能にするのに充てられるデジタル化レベルを最小化することによって、計測システムのダイナミックレンジを最適化する。しかしながら、雑音振幅が信号振幅とともに変化する場合の信号については、状況はそう単純ではない。線形ADCを用いると、分解能を1つの信号振幅における雑音の振幅に一致させることによって、雑音が少ない信号振幅においてデジタライザが分解能制限因子になるか、雑音が多い信号振幅においてデジタライザ分解能が無駄になるかのいずれかになる。
【0011】
この状況は、分解能が常に雑音の振幅と一致するように、分解能が信号増幅とともに変化するデジタル化システムを構築することによって改善され得る。これを行うための一手法は、変換された信号の雑音振幅が一定になる、すなわち、雑音振幅が信号の振幅によって異ならないように、線形ADCでデジタル化される前に信号を変換することである。例えば、雑音振幅特性が散弾雑音によって支配される(雑音振幅が信号振幅の平方根とともに増加する)信号について、必要とされる変換は、線形ADCでデジタル化する前に信号の平方根をとることである。線形および対数変換は、信号の雑音特性が散弾雑音によって支配されている場合には最適ではない。例えば、線形ADCによるデジタル化の前に入力信号の線形変換をすることで、変換された信号の雑音振幅は、ちょうど変換さていない(untransformed)信号内で行われるように信号振幅が大きくなるとともに増加し得る。雑音振幅が最小となる低い信号レベルで分解能が雑音振幅と一致している場合、雑音振幅がより大きい高振幅信号において分解能は無駄になり得る。線形ADCによるデジタル化の前に入力信号の対数変換をすることで、変換された信号の雑音振幅は信号振幅が大きくなるにつれて減少し得る。雑音振幅が最小となる高い信号レベルで分解能が雑音振幅と一致している場合、雑音振幅がより大きい低振幅信号において分解能は無駄になり得る。
【0012】
しかしながら、平方根変換などの特定の非線形変換を持つ増幅器を設計することは困難であり、特に、例えば100MHzより広い帯域幅を持つ信号などの高帯域信号を扱うために該当する増幅器を設計することは困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、非線形伝達関数、特に平方根伝達関数を提供する増幅回路を提供することが望ましい。そのような増幅回路は、高ダイナミックレンジおよびより広い帯域幅で動作し得る。該当する増幅器を質量分析装置またはカメラにおいて使用することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(本発明の概要)
本発明は、非線形伝達関数を有する信号増幅器を提供する。一側面において、入力信号の限られた範囲にわたって非線形伝達関数を持つ高速(高帯域)回路が提供される。コンポーネントの適切な選択により、非線形伝達関数は、平方根伝達関数など、任意の単調関数を正確に近似するために使用することができる。別の側面において、入力信号の拡張された範囲にわたって望ましい非線形伝達関数を正確に生成するために、1つ以上の非線形サブ回路のセットを使用する区分非線形回路配置が提供され、ここでサブ回路のそれぞれは入力範囲の一部にわたって望ましい非線形関数を近似する。本明細書において使用する場合、望ましい出力信号が入力信号の非線形変換であれば、信号増幅器は「実質的に非線形である伝達関数」を有する。例えば、望ましい出力は、平方根もしくは平方などのべき乗、対数、指数(例えば、ex)、または望ましい範囲にわたる入力信号のその他の非線形関数であり得る。入力信号の線形変換である出力信号を作り出すよう設計された増幅器は、それらの伝達関数においてわずかな非線形性を持つ出力を作り出すことが認識されている。しかしながら、線形回路におけるこの非線形性は望ましくなく意図されない場合が多く、本明細書で使用されるように実質的に非線形であるとは見なされない。
【0015】
本発明の側面によると、非線形伝達関数を実装する回路ブロックが提供される。ブロックは一般に、インピーダンス素子と直列のダイオードを含む。該当する回路ブロックの例を、図1Cに示す。この回路は、作り出される伝達関数の形状を改変するために、電流バイアスを使用して望ましい伝達関数を一致させるように整形され得る非線形性を生成する。望ましい伝達関数に最も近い回路ブロックによって生成される伝達関数の一部が、選択または使用され得る。これは、特定の側面において、ゲインおよびオフセット調整(スケーリングおよびシフティング)を使用して、伝達関数のこの部分に入力および出力をマッピングすることによって行われる。
【0016】
本発明の別の側面によると、出力信号を作り出すために非線形伝達関数で入力信号を処理する回路配置は一般に、それぞれが異なる伝達関数を有し、それぞれが入力信号を受信し出力信号を作り出すように複数の構成される回路ブロックを含み、前記回路の少なくとも1つは非線形伝達関数と、出力信号を作り出すために複数の回路ブロックの出力を結合するように構成される結合回路とを有する。
【0017】
インピーダンス素子と直列のダイオード素子を含むブロックなど、本明細書において説明されている回路ブロックは、いくつかの入力範囲を、望ましいマッピングを近似するいくつかの出力範囲へマッピングするために伝達関数を作り出すことができる。一般に、マッピングの精度とマッピングが必要な精度を満たす範囲との間には逆相関がある。区分非線形アーキテクチャは、それぞれが望ましい範囲の一部にわたって望ましい精度を持つ望ましい伝達関数を作り出す、回路ブロックのセットを使用することによって、この制限を切り抜けるための手法を提供する。回路ブロックの出力は、任意の個別のブロックによって作り出されることができるよりも広い範囲にわたって望ましい精度を持つ、望ましい伝達関数を作り出すために、結び付けられる。
【0018】
本発明のまたさらなる側面によると、質量分析装置が提供される。前記装置は一般に、粒子を提供する粒子源と、前記粒子を検出し、検出された粒子束に比例する振幅を有する信号を提供する検出器と、信号振幅と実質的に無関係である雑音成分を有する増幅された信号を作り出す非線形伝達関数を有する信号増幅器と、前記増幅された信号をデジタル出力信号に変換するアナログデジタル変換器(ADC)とを含む。
【0019】
本発明のまたさらなる側面によると、質量分析計において質量スペクトル信号を増幅する方法が提供される。前記方法は一般に、過渡信号を信号源から受信することであって、過渡信号は、検出された粒子束に比例する振幅を有する、ことと、平方根伝達関数を近似する非線形伝達関数を有する非線形増幅器において過渡信号を増幅し、信号の振幅と実質的に独立な雑音成分を有する増幅された信号を生成することとを含む。
【0020】
本発明のまたさらなる側面によると、インピーダンス素子と直列のダイオードを備え、入力信号範囲にわたって入力信号の非線形関数である出力信号を生成する回路配置が提供される。
【0021】
本発明の別の側面によると、入力信号範囲にわたって入力信号の望ましい非線形関数を近似する出力信号を生成する回路配置が提供される。前記配置は一般に、2つ以上の回路であって、各回路が前記入力信号を受信し、回路出力を作り出すように構成され、前記回路の少なくとも1つが前記入力信号範囲の少なくとも一部にわたって非線形伝達関数を有する回路を含む。前記配置は一般に、前記出力信号を生成するために前記回路出力を結合する結合回路も含む。
【0022】
本発明のさらに別の側面によると、入力信号範囲にわたって入力信号の実質的に望ましい非線形関数である出力信号を生成する方法が提供される。前記方法は一般に、インピーダンス素子と直列のダイオードを有する回路、ならびに、a)前記入力信号を、前記ダイオードおよびインピーダンス素子を通過する電流に変換するための入力回路と、b)前記ダイオードおよびインピーダンス素子を通じてバイアス電流を提供するためのバイアス回路と、c)前記入力信号にオフセットを提供するための第1のオフセット回路と、d)前記出力信号にオフセットを提供するための第2のオフセット回路と、e)前記入力および/または出力信号にスケーリングを提供するためのスケーリング回路とのうち1つ以上を備える追加の回路を提供することを含む。前記方法は一般に、前記入力信号範囲にわたって前記入力信号の前記望ましい非線形関数を近似する出力信号を生成するように、前記入力回路、バイアス回路、第1のオフセット回路、第2のオフセット回路、およびスケーリングのうちの1つ以上を調整することも含む。
【0023】
本発明のさらに別の側面によると、入力信号範囲にわたって入力信号の実質的に望ましい非線形関数である出力信号を生成する方法が提供される。前記方法は一般に、インピーダンス素子と直列のダイオードを有する2つ以上の回路、ならびに、a)前記入力信号を、前記ダイオードおよびインピーダンス素子を通過する電流に変換するための入力回路と、b)前記ダイオードおよびインピーダンス素子を通じてバイアス電流を提供するためのバイアス回路と、c)前記入力信号にオフセットを提供するための第1のオフセット回路と、d)前記出力信号にオフセットを提供するための第2のオフセット回路と、e)前記入力および/または出力信号にスケーリングを提供するためのスケーリング回路とのうち1つ以上を備える追加の回路を提供することを含む。前記方法は一般に、前記2つ以上の回路のそれぞれについて、前記入力信号範囲の一部にわたって前記入力信号の前記望ましい非線形関数を近似する出力信号を生成するように、前記入力回路、バイアス回路、第1のオフセット回路、第2のオフセット回路、およびスケーリング回路のうちの1つ以上を調整することと、前記入力信号範囲にわたって前記入力信号の前記望ましい非線形伝達関数を近似する複合出力信号を形成するために、前記2つ以上の回路から生じた前記出力信号を結合することも含む。
【0024】
本発明の別の側面によると、一般に、複数のピクセル素子を備える光子検出器であって、各ピクセル素子は光子を検出し、検出された光子の数に比例する振幅を有するピクセル信号を提供する光子検出器と、前記信号振幅と実質的に独立な雑音成分を有する増幅された信号を作り出すためにピクセル信号を処理する実質的に非線形伝達関数を有する信号増幅器と、前記増幅された信号をデジタル出力信号に変換数アナログデジタル変換器(ADC)とを含むカメラが提供される。ある特定の側面において、前記ピクセルは、200kHzより速い、1MHzより高い、10MHzより高い、または100MHzより高いレートで読み出しまたは検出される。
【0025】
本発明のさらなる側面によると、入力信号範囲にわたって入力信号の望ましい非線形関数を近似する出力信号を生成する回路配置が提供される。前記配置は一般に、前記入力信号の第1の部分にわたって前記望ましい非線形変換を近似する第1の非線形変換を作り出すように構成される第1の回路素子と、前記入力信号範囲の第2の部分にわたって前記望ましい非線形変換を近似する第2の非線形変換を作り出すように構成される第2の回路素子とを含み、前記配置は一般に、前記望ましい非線形関数を近似しない前記第1および第2の回路素子の前記伝達関数の部分をキャンセルする伝達関数を作り出すように構成される第3の回路素子と、前記入力信号範囲全体にわたって前記望ましい非線形関数を近似する出力信号を作り出すために、前記第1、第2、および第3の回路素子の出力を結合するように構成される結合素子とも含む。ある一定の側面において、前記第1の回路素子は、特定の信号範囲にわたって前記望ましい非線形関数を近似する第1のサブ回路と、前記入力信号についてスケーリング関数を実行し、前記スケールされた入力信号を前記第1のサブ回路へ送達するスケーリング素子であって、前記スケーリング関数は、前記入力信号範囲の前記第1の部分が、前記第1のサブ回路が前記望ましい非線形関数を近似する前記特定の信号範囲にスケールされるように選択される、第1のスケーリング素子と、前記第1の素子の前記スケーリングを取り消しする第2のスケーリング素子を含む。ある特定の側面において、前記第1の回路素子は、特定の信号範囲にわたって前記望ましい非線形関数を近似する前記第1のサブ回路素子と、前記入力信号についてスケーリング関数を実行し、前記スケールされた入力信号を前記第1のサブ回路へ送達する第1のスケーリング素子であって、前記スケーリング関数は、前記入力信号範囲の前記第1の部分が、前記第1のサブ回路が前記望ましい非線形関数を近似する前記特定の信号範囲にスケールされるように選択される、第1のスケーリング素子と、前記第1のサブ回路の前記出力について第2のスケーリング関数を実行する第2のスケーリング素子を含む。ある特定の側面において、前記入力信号範囲の前記第1の部分は1からXユニットであり、前記スケーリング関数は前記入力信号にXの因数を乗じ、前記第2のスケーリング素子は前記第1のサブ回路の出力にl/(sqrt(X))の因数を乗じる。ある一定の側面において、Xは84である。ある一定の側面において、前記第2のスケーリング関数は、前記第1のスケーリング関数と完全に逆または部分的に逆となるように選択される。
【0026】
図面および特許請求の範囲を含む明細書の残りの部分を参照すると、本発明のその他の特徴および利点を認識するであろう。本発明の様々な実施形態の構造および動作に加えて、本発明のさらなる特徴および利点について、添付の図面を参照し、以下に詳述する。図面中、類似の参照番号は同一または機能的に同様の要素を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、非線形伝達関数(または非線形変換)を実装する回路および回路配置を提供する。一側面において、入力信号の限られた範囲にわたって非線形伝達関数を持つ高速(高帯域)回路が提供される。コンポーネントの適切な選択により、非線形伝達関数は、任意の単調関数を正確に近似するために使用することができる(例えば、平方根伝達関数は特例である)。別の側面において、入力信号の拡張された範囲にわたって望ましい非線形伝達関数を正確に生成するために、非線形サブ回路のセットを使用する回路配置が提供される。そのような回路の一実装において、サブ回路のそれぞれは入力範囲の一部にわたって望ましい非線形関数を近似するため、このタイプの回路を「区分非線形回路」と称する。
【0028】
一実施形態において、回路配置は、信号と線形アナログデジタル変換器(ADC)との間で適合する雑音制限一致を提供する高速平方根変換を実装し、ここで信号は信号振幅の平方根に比例する雑音成分を含む。そのような雑音統計は、例えば光子(光)、電子(電気)もしくはイオン(例えば、質量分析装置において)を表す、またはこれらでできた任意の信号など、検出された粒子を表す任意の信号において一般的である。このタイプの雑音は散弾雑音と称される。平方根変換を実装するそのような回路配置を含む増幅器は、質量分析装置の検出システムにおいても特に有用である。そのような増幅器の使用は、単一の質量スペクトル過渡信号において記録され得る強度範囲(例えば、ダイナミックレンジ)の増加を可能にする。該当する増幅器は、カメラにおいても特に有用である。カメラにおいて、各ピクセルの信号の雑音は、散弾雑音に対応する雑音特性を有するように、低照度でまたは短い露光時間のあいだ、取得された、限られた数の光子によって支配される。カメラにおいて、特定の例は、各ピクセルから(例えば、CCDアレイまたはその他の光子感知装置から)生じた信号に、当該ピクセル用の信号がADCでデジタル化される前に非線形変換を適用するために、該当する増幅器を使用することであり得る。
【0029】
本明細書において例として使用する回路への入力およびその出力は、概して電圧信号であると仮定する。当該技術分野では既知であるように、電圧または電流信号のいずれかを入力として受け入れ、電圧または電流信号を出力として作り出す、同様の回路が構築され得る。
【0030】
(ダイオードを使用して非線形伝達関数を生成すること)
それらの本質的指数電流−電圧特性により、ダイオードは、長きにわたり回路において対数および指数伝達関数を生成するために使用されてきた(例えば、図1B参照)。本発明の一側面によると、分圧器に挿入されたダイオードは、対数の他に非線形伝達関数を生成するために使用される。これの非常に単純な例を図1Cおよび1Dに示す。図1Cは、分圧器内のダイオードを含む、非線形および非対数伝達関数を生成するための2つの手法を示す。図1Eは、図1Aの単純分圧器、図1Bの対数ダイオードカーブを表す伝達関数、および、図1Cの分圧器−ダイオードハイブリッド回路の電圧の非線形非対数伝達関数の例を示す。図1Cに示すように、回路のある分岐上の様々な直列素子は、いかなる順序で配置されてもよい。図1Dは、前の回路のレジスタが様々な回路コンポーネントから構築される汎用インピーダンスとどのように置き換えられ得るかを示す。本明細書において論じられるような回路において使用され得る有用なダイオードの例は、Agilent社製のRFダイオード(HMPS−2822)である。
【0031】
図1に示す単純回路は非線形非指数伝達関数を有するが、特定のアプリケーションに望ましい特定の伝達関数を有する可能性は低い。例えば、これらの回路は、散弾雑音に支配される雑音特性を持つ信号を線形ADCに最適に連結するために望ましい平方根伝達関数を有する可能性が低い。様々な電圧オフセットおよびゲインステージを追加すること、ならびにダイオード(D3)を通じてバイアス電流を提供することによって、いくつかの入力範囲にわたり許容偏差内の望ましい伝達関数と一致する伝達関数が入手され得る。一実施形態に従って、該当する回路の例を図2に示す。図2において、ゲイン(G1およびG2)ならびに電圧オフセット(V1、V2、V3およびV4)は、入力の特定の範囲を、これらの調整をすることなく、回路の伝達関数の特定のセクションに一致させることを可能にする。分岐2、つまりV2とR2との回路の分岐は、ダイオード(D3)を通るバイアス電流が、その他の電圧および抵抗の選択における柔軟性を維持しながら調整されることを可能にする。先に述べたように、示されているそれぞれの抵抗は、1つ以上のコンポーネントからなるインピーダンスブロックに置き換えられ得ることに留意されたい。このタイプの回路の設計では、実現された伝達関数が望ましい伝達関数と一致する精度とその一致が大体同じと見なされる入力範囲との間において、しばしばトレードオフが存在し得る。満足のいく一致をより大きな入力範囲をカバーするように拡張できる回路の構築について、以下に説明する。
【0032】
帯域幅を増加させる、または周波数応答を制御するために、その他のコンポーネントが含まれ得る。これらの追加のコンポーネントは、その他のコンポーネントの理想的でない挙動を補正し得る。特に、より高い周波数を含むためにこの回路の帯域幅を増加させるためには、ダイオードの理想的でない特性をキャンセルし得るコンポーネントを含むダイオードと直列のインピーダンスブロックを有することが好都合である。
【0033】
ダイオードD3の非線形電流−電圧特性の一部は、特定の入力信号範囲にわたって望ましい非線形伝達関数の近似を生成するために、スケールされ、シフトされ、オフセット電圧V2、V3およびV4、抵抗R1、R2およびR3、ならびにゲインブロックG1およびG2で整形され得る。当業者であれば、オフセット電圧、抵抗およびゲインのこの特定のセットが、ダイオード特性のスケーリング、シフティング、および、整形における冗長制御を提供することを理解し得ることに留意されたい。したがって、この回路の任意の特定の実装において、いくつかのオフセット電圧および/または抵抗はゼロに設定され得、いくつかのゲインは1に設定され得る。当業者であれば、いかなるレジスタもゼロ以上のコンポーネントで構築されたその他のインピーダンスブロックと置き換えられ得ることも理解し得る。
【0034】
回路の伝達関数がどのようにして整形されることができるかの例を図3に示す。図3Aにおいて、伝達関数の中央部分はV2を変化させることによって変化する。V2を増加させると、伝達関数の中央部分における曲率が減少し、一方、V2を減少させると、逆の効果をもたらす。図3Bは、R1が伝達関数にどう影響するかを示している。終点が一致するようにカーブがスケールおよびオフセットされる場合、結果として生じる形状の変化は主に伝達関数の低信号部分にあることがわかる。
【0035】
一側面によると、オフセット電圧、抵抗(インピーダンス)およびゲインを決定するための手順は、以下のとおりである。
(1)回路を正確にモデリングする。
(2)望ましい入力範囲にわたって、テスト信号をモデルの入力に適用する。
(3)モデリングされた出力信号と望ましい出力信号との間の誤差を最小化するために、オフセット電圧、抵抗およびゲインを調整する。電圧、抵抗、およびゲインのパラメータセットにおける冗長性によって、いくつかのパラメータは、最小化手順が首尾よく行われるために制約されることが必要となり得ることに留意されたい。電圧誤差のみが回路の動作に影響を及ぼすため、例えば、電圧V1、V2、V3、V4のうち少なくとも1つは制約されなくてはならない。
(4)その他のコンポーネントを追加すること、またはレジスタをその他のインピーダンスと置き換えることによって、回路の周波数特性を調整する。
【0036】
オフセットおよびゲイン両方の安定性は、線形増幅器とは異なり、入力信号のオフセットにおける変化が入力信号の各特定の値に適用されるゲインを変化させるため、非線形増幅器にとって重要である。すなわち、伝達関数の勾配およびオフセットは、ともに連結されている。特に、高精度および高ダイナミックレンジアプリケーションのためにしばしば温度補正が必要となり得る。
【0037】
温度補正は、一側面において、V3とダイオードD3上の電流の関数としての電圧(一次の温度補正のため)との和が特定の電流においては温度の関数でないように、V3を制御することによって、達成され得る。これは、一側面において、図4に示すようにV3を制御するためにバイアス電流を持つ第2のダイオード素子(D3B)を使用することによって達成される。
【0038】
制限された入力範囲にわたる非線形伝達関数のこの実装は、特にクリーンなアーキテクチャによって、その他のコンポーネントによって整形される非線形性を生成するためのダイオードの使用によって、また、概してシステムが伝達関数を形成するためのフィードバックに依存しないことによって、きわめて高速(高帯域)で動作することが可能である。フィードバック要素は(特にゲインブロックにおいて)使用され、このアーキテクチャは、フォードバックを持つ回路において、またはフィードバックループ自体として使用され得るが、そのような実装は使用可能な帯域幅をしばしば制限し得る。これは、極めて高速のダイオードが利用可能であるために真である。この回路アーキテクチャおよび以下に説明する回路アーキテクチャはいずれも、ASIC(特定用途向け集積回路)内において、集積増幅器として、または、より大きな集積回路(例えば、集積デジタル化システム)内において関数ブロックとして、有利に実現されることがあり得ることに留意されたい。
【0039】
(区分非線形)
任意単調関数を用いて電子回路を生成するための標準的な技術は、複数の線形セグメントを用いて伝達関数を近似することである。図5を参照のこと(例えば、Cambridge University Press発行のHorowitzおよびHillによる、「The Art of Electronics」第2版、p252を参照)。電圧基準と連動するダイオードは、入力信号レベルの関数としての伝達関数の勾配を切り替えるために使用される。本明細書において記載されている技術は、入力信号範囲が、回路によってそれぞれ異なるように扱われるセクションに分割され得るという点で同様である。一例において、非線形伝達関数は入力範囲の少なくとも1つに適用され、回路を通じて異なるパスが異なる入力信号範囲を扱うために利用される。様々な入力信号範囲に異なる非線形伝達関数を適用することによって、極めて広いダイナミックレンジにわたる複合回路のための、または複雑な機能性のための、正確な非線形伝達関数が実現され得る。この回路アーキテクチャを「区分非線形」と称する。別の例において、この概念は、様々な信号範囲が互いに重複または合致することを可能にすることによって一般化され得る。入力信号がもはや明確な範囲に分割されないが、回路アーキテクチャが同じであるため、これは「区分非線形」回路と称される。いずれの例においても、回路を通る複数のパスが、対象となる入力信号範囲内のすべての入力信号についてアクティブであり得ることを理解することが重要である。
【0040】
図6は、本発明の実施形態に従って、区分非線形回路配置10のアーキテクチャ全般を説明している。図示するように、回路配置10は、複数の回路セグメント、またはサブ回路25を含む。入力信号20は、分けられて、2つ以上のサブ回路25に渡されることが可能である。サブ回路25のうち少なくとも1つの伝達関数は、非線形である。サブ回路25の出力30は、複合回路配置10の信号出力50を生成するために、加算セクション40に結合される。
【0041】
多くの場合、各サブ回路25は2つの部分の和として考えることができる伝達回路を有する。第1の部分は、限定された入力信号範囲における、出力に何らかのスケール因子を乗じたものにおいて望ましい非線形伝達関数である。第2の部分は、入力信号範囲全体における、入力信号の容易に除去可能(removable)な何らかの関数である。これは、除去される関数の反転版を回路の加算セクションに提供するサブ回路を提供することによって、伝達関数の第2の部分が減じられることを可能にする。多くの場合、伝達関数の第2の部分は、1)サブ回路を通過する入力信号の範囲を単純に制限すること、または、2)特定のサブ回路によって扱われる入力用に限定された範囲の外側の信号に対してその出力が線形となるように、非線形セクションを構築することによって確立される入力の定常、線形、または区分線形関数であろう。
【0042】
一側面において、少なくとも1つのサブ回路25は、その他のサブ回路の伝達関数の第2の部分をキャンセルする伝達関数を有する。その他のサブ回路の第2の部分が、定常、線形、または区分線形形態に限定される場合、キャンセルする伝達関数は線形または区分線形であり得る。
【0043】
一側面において、図示するように、すべてのサブ回路25の出力は、複合回路の出力50を生成するために合計される。総和回路40は、異なるサブ回路25の出力を、それらが和に含まれるように、重み付けおよび/または反転する。
【0044】
この回路の好適な実施例は一般に、それぞれが望ましい伝達関数を入力信号20の特定の範囲に適用する、2つ以上の非線形サブ回路25を含む。特定の範囲の外において、各サブ回路への入力は、特定のサブ回路の出力が一定となるように制限される。一側面において、それらの特定の入力範囲外のその他のサブ回路の出力をキャンセルするように設計された、線形または区分線形伝達関数を持つサブ回路25が含まれる。
【0045】
本発明の区分非線形回路アーキテクチャは、自己相似関数および異なるスケールまたは異なる入力範囲における同じようなその他の関数と同等の伝達関数の回路実現のために特に有用である。例としては、指数、対数、べき法則、および累乗根(例えば、平方根)関数があげられる。これらの関数について、任意の望ましいダイナミックレンジを持つ回路を構築するため、限定されたダイナミックレンジを持つ単一のサブ回路がスケーリングおよびオフセットとともに使用され得る。これが可能となることは、いくつかの単純な関数の以下の展開に見ることができる。
a)y(ax)=sqrt(ax)=sqrt(a)*sqrt(x)=sqrt(a)*y(x)、ここで、sqrt(x)はxの平方根を意味する。
b)y(ax)=log(ax)=log(a)+log(x)=log(a)+y(x)
c)y(a+x)−e(a+x)=ea*ex=ea*y(x)
具体例として、一実施例に従った、300MHz広ダイナミックレンジ平方根増幅回路200を表すブロック図を図7に示す。この回路例は、以下の関数方程式を実装することにより、それぞれ84のダイナミックレンジを持つ平方根関数ブロックから作られた7056(=842)のダイナミックレンジを持つ平方根伝達関数を実現する。
a)平方根関数ブロック225:x<84ならばsr(x)=x/sqrt(84)、およびx>=84ならばsr(x)=sqrt(x)。低い信号レベルにおける平方根から線形挙動への変化に留意されたい。このブロックの関数ダイナミックレンジは84以上と仮定されていることに留意されたい。平方根関数ブロックの好適な実装は、この例において使用されている平方根と線形セクションとの間に伝達関数の不連続勾配を有さないことに留意されたい。
b)線形関数ブロック235:x<7056ならばlim(x)=x、およびx>=7056ならばlim(x)=7056。
c)複合回路200は、図示するように、入力220から出力250への3つのパスを有する(それぞれのパスの伝達関数の例を図8に示す。図9において、平方根関数ブロックの線形−平方根の過渡において勾配が連続的である好適な実装を表す伝達関数の同様のセットを示す。):
(1)サブ回路2251およびゲインモジュール2451を通る高信号平方根パス:high(x)=sr(x)(図8B)
(2)ゲインモジュール215、リミッタ235、サブ回路2252およびゲインモジュール2453を通過する低信号平方根パス:low(x)=sr(lim(x*84))/sqrt(84)(図8A)。入力信号は因子84によって増幅され、高信号パスに使用されるものと同一の平方根ブロックに送り込まれる前に7056以下に制限される。平方根がとられた後、信号は、ブロック240内のその他のパスから信号に追加される前に、ゲインモジュール2453において再スケールされる。
(3)ゲインモジュール215、リミッタ235およびゲインモジュール2452を通過する線形パス:linear(x)=−lim(x*84)/(84*sqrt(84))(図8C)。図7でわかるように、低信号平方根パスからの増幅および制限された信号は、ブロック240内のその他のパスから信号に追加される前に、単純に反転およびスケールされる。
d)加算セクション240。回路の加算セクションが3つのパスを単純に合計して、全体的な関数方程式ができる:output(x)=sr(lim(x*84))/sqrt(84)+sr(x)−lim(x*84)/(84*sqrt(84))(図8D)。
e)回路の出力250は、1から7000の入力範囲においては入力の平方根に等しい。1を下回る入力については、出力は入力の線形関数である。極めて低い信号振幅でのこの線形限界挙動は、低レベル雑音を過増幅することを回避し、入力信号が正から負へと振れる際に回路を正常に挙動させておくための実際の実装において、概して好適である。このように、平方根変換は正の信号に適用され、一方、線形変換は負の信号および極めて小さい正の信号に適用される。
【0046】
区分非線形アーキテクチャは、広ダイナミックレンジと高速の両方を持つ正確な非線形伝達関数(例えば、3000を超えるダイナミックレンジおよび300MHzを超える帯域幅を持つ平方根伝達関数)を実現するために使用され得る。広ダイナミックレンジおよび高速の両方を達成することは、非線形伝達関数を生成するその他の方法では困難である。区分線形回路を用いると、例えば図5において説明および図示したように、広ダイナミックレンジを持つ信号のための非線形伝達関数を正確に生成することは難しい。区分線形アーキテクチャにより、広範囲の信号レベル(広ダイナミックレンジ)にわたって、平方根関数を含むほとんどの非線形伝達関数を正確に生成するには、多くの線形セグメントの使用が必要である。従来のダイオード切り替え区分−線形回路アーキテクチャを用いると、効果的に利用されることができるセグメントの数は、利用可能な電圧によって、および、ダイオードを切り替えるのに必要な電圧の振れによって制限される。高速では、この制限は、利用可能な電圧範囲が信号増幅器のスルーレートによって制限されてくるにつれて特に厳しくなる。1つの線形セグメントから別の線形セグメントへ切り替えるのに必要な電圧の振れを低減するために、フィードバック構成においてダイオードおよび増幅器を使用する方法あるが、これらの方法は高速において実装するのが難しい。平方根関数を生成するために使用される別の方法(Mark Shillによる「Circuit takes square root of input voltage」EDN Access、EDN Magazine、1997年を参照)は、ドレイン電流がゲート−ソース間電圧の二乗に比例する飽和領域内で動作するNMOSトランジスタを利用する。単純であるが、このアーキテクチャを用いて達成可能な速度は、MOSFETトランジスタのゲートキャパシタンスによって実質的に100MHz未満に制限される。
【0047】
(較正)
効率的なデジタル化のための非線形増幅器の利点は、伝達関数が理想的な伝達関数と同様である場合、すなわち実質的に同じである場合に実現される。換言すると、完全に理想的な伝達関数は概して必要とされない。完全に理想的な伝達関数は概して必要とされないが、非線形は概して可逆的でなくてはならない。これは、2つの手法で実現され得る。伝達関数が特定のアプリケーションにとって十分に正確であることが既知でなくてはならないか、あるいは、実現された回路の実際の伝達関数が計測されなくてはならない。
【0048】
較正は、実現された伝達関数の計測である。これは、既知の入力を非線形システムに供給すること、および出力を計測することによって達成することができる。例えば、非線形システムの伝達関数は、既知の振幅の正弦波信号が入力に適用された場合、および、既知の値の定常信号(例えば、地上およびヌル信号)が入力に適用された場合に、非線形システムの出力を計測することによって推定できる。正弦波入力信号の周波数および位相は、出力の周期的性質から測定することができ、一方、正弦波入力の振幅オフセットは、出力を既知の一定入力で生成された出力と比較することによって測定することができる。第2の、しかし異なる一定入力信号を用いて、正弦波を決定することもできる。好適な実装において、これらの計測は、そのままの位置で(動作機器内の増幅器によって)、周期的に、データ収集中に使用されるデジタル化システムを利用して生じる。いくぶん極端な例では、すべての計測期間前に自動的に較正を実行する。
【0049】
上述したように、基本的に別個の粒子(例えば、光、電流、イオン、原子、分子)からなるいかなる信号も、散弾雑音を含有する。この散弾雑音が信号の雑音特性を支配する場合、信号の平方根をとることによって、信号の振幅にともなう雑音の振幅内の変化を低減し得る。これは、線形ADCのダイナミックレンジが効率的に利用されることを可能にする。本明細書に記載されている回路および方法は、高帯域平方根増幅器の構築を可能にする。そのような増幅器は、質量分析、写真撮影およびその他の光検出ベース技術、ならびに、概して、任意の電子信号の高帯域記録を含む多くの領域において有用である。
【0050】
(質量分析計における平方根増幅器)
質量分析計は通常、個別のまたは少数の粒子を検出することができるため、出力信号の雑音特性は、検出された粒子に関連する散弾雑音によって支配されるのが普通である。質量分析計における雑音特性は散弾雑音に支配されるため、雑音制限分解能が達成され得るダイナミックレンジは、線形ADCによって信号をデジタル化する前に効果的に平方根をとることによって劇的に増加され得る。
【0051】
質量分析計において、特にレーザー脱離/イオン化質量分析計について、複数のスペクトルが通常は獲得され、次いで、改良された信号−雑音特性を持つ複合スペクトルを生成するために合計または平均化される。この加算平均が行われる前に、効果的に信号の平方根をとることによって導入された非線形性は概して正確に取り除かれなくてはならない。これは、合計または平均化された個別のスペクトルは概して同一でなく、数学的には、一般的に、非線形関数f(x)に対してf(a)+f(b)はf(a+b)に比例しないために必要である。ここで、aおよびbは合計されるスペクトルであり、f(x)は信号に適用された非線形関数である。質量分析計における非線形電子の較正は、いくつかの重要な目的を果たす。例えば、較正は、a)導入された非線形性の正確な除去、b)長期にわたる伝達関数の任意の残留ドリフトの除去、および、c)別個の機器のより正確な一致、を可能にする。
【0052】
図10は、本発明の回路実施例が有用となり得る、レーザー脱離/イオン化飛行時間質量分析装置100のコンポーネントの概略図を示している。簡潔に言うと、質量分析装置100は、イオン光学システム120、イオン検出システム125、光学顕微鏡システム150および制御システム170を含む。特に、回路10または回路200などの本発明の非線形変換増幅回路は、以下で論じるように、検出システム125において有用である。
【0053】
図示するように、イオン光学システム120は、反射電極レンズ121、抽出プレート122、および加速レンズまたは接地プレート124を含む。任意の質量フィルタ(図示せず)が含まれ得、一般にレンズ124と検出器140との間に置かれる。図示するように、抽出器122は円錐形であり、加速レンズ124は平面状であるが、必要に応じてその他の形状が使用され得る。例えば、抽出器122および加速レンズ124の両方が平面状であり得る。抽出器122および加速レンズ124の両方は、サンプル130から脱着したイオン用の飛行経路をともに特徴付ける開口を有する。飛行管(図示せず)またはその他の筐体は、イオン光学システム120と検出システム125との間の飛行経路を囲む。一般に、この筐体は、イオン飛行の間、望まない相互作用を防止するように、真空にされる。
【0054】
質量分析装置100は、光源152を含む光学顕微鏡システム150も含む。光学顕微鏡システム150は、光を生成し、サンプル130へ供給するように設計される。好適な側面において、光学システム150は、既知のエネルギーの光パルスおよび焦点がサンプル130に配信されるように、必要に応じて光を調節し、方向を変え、焦点に合わせることができる複数の光学素子を含む。光源152は、好ましくはレーザーを含むが、当業者には明らかであるように、素子を作り出すその他の光が使用され得る。送達された光は、好ましくは、既知の持続時間および強度の1つ以上のパルスとして提供される。したがって、好適な側面において、光システム150は、パルスレーザービームを生成し、サンプル130へ送達する。レーザー源は、パルス生成素子を持つパルスレーザーまたは連続(cw)レーザーを含み得る。
【0055】
イオン光学システム120および制御システム170に加えて、光システム150の素子のさらなる側面および詳細については、2004年4月26日に出願された「Laser Desorption Mass Spectrometer with Uniform Illumination of the Sample」と題された同時係属の米国非仮特許出願番号第10/832,822号[代理人整理番号016866−011800US]に見ることができ、これは、参照することにより援用される。
【0056】
検出システム125は、イオン検出器140、前置増幅器モジュール142、およびデジタライザモジュール144を含む。イオン検出器140は、サンプル130から脱着したイオンを検出し、検出されたイオンを、検出されたイオンスペクトルを表す信号(過渡信号)に変換するための回路素子を含む。適切な検出素子は、電子増倍管装置およびその他の電荷ベースの検出器を含む。例として、離散および連続ダイオード電子増倍管が挙げられる。デジタライザ144は、例えばアナログデジタル変換器(ADC)を使用して、アナログスペクトル信号をデジタル形態に変換する。前置増幅器142は、例えば、非線形(例えば、平方根)変換を過渡信号に適用することによって、デジタル化の前にイオン検出器140からの過渡信号を調節するために含まれる。検出システム125のイオン−電子変換効率は、概して、検出器のイオン−電子変換ダイオードの表面の電子特性、イオン検出器140のゲイン、および使用時の前置増幅器142を含む、それに関連する電子機器の関数である。
【0057】
一側面において、2.0ns以下の間隔で過渡信号をサンプリングすることは概して望ましい。この場合、デジタライザ144は、500Ms/秒を超えるサンプリングレートで動作し得る。また、約250MHzより広い帯域幅を有する増幅器の使用も望ましい。質量分析計過渡信号における信号振幅は、1000:1より広い範囲、すなわち、1000より広いダイナミックレンジにわたって変動し得る。従来、該当する信号のデジタル化に必要とされるような高サンプリングレートと広ダイナミックレンジの両方を達成することは困難であった。したがって、一実施例において、前置増幅器は、平方根変換を適用するように構成された回路10または回路200を含む。入力過渡信号は振幅の平方根に比例する雑音成分を有するため、前置増幅器142による過渡信号出力は、したがって、信号振幅と実質的に無関係である雑音成分を有利に有し得る。このような具合に、線形ADC144における効果的な数のビットが増加する、例えば、理論上7から14へ2倍になり得るが、小さい負の信号に対する望ましい線形応答のため、実用上、増加はこれを下回る場合が多い。
【0058】
図11は、本発明に従って、非線形回路素子の別の例を説明している。図11aは、図1の回路と同様に、インピーダンスと直列のダイオードを持つ回路の例を示す。図11bは、図11aの回路への有用な改変を示す。追加の回路を使用すると、非線形ビルディングブロックの応答を、特定の範囲外で線形または一定にすることが可能である。図11bに示すように、R3の追加は低信号応答を線形にする。当業者であれば、高い、および/または低い回路応答を線形にするために、同様の回路が使用され得ることを十分に理解し得る。
【0059】
特定の実施例を例示し、その観点から本発明を説明したが、本発明は開示されている実施例に限定されるものではないことを理解されたい。反対に、当業者には明らかなように、様々な改変および同様の配置をカバーすることを意図されている。例えば、特定の例を論じたが、本発明の増幅回路は0Hzから5または6GHzを超える信号で動作する。したがって、添付の特許請求項の範囲は、該当するすべての改変および同様の配置を包含するように、広い解釈を許容するものでなくてはならない。本明細書において言及するすべての文書は、参照することにより援用される。又、本出願は、参照することにより、2004年7月1日出願の「NON−LINEAR SIGNAL AMPLIFIERS AND USES THEREOF IN A MASS SPECTROMETER DEVICE」と題された、米国仮出願番号60/585,350[代理人整理番016866−011900US]を援用し、これは、参照することにより本明細書に援用される。当該仮出願において「knee」に言及される場合、「knee」は、本明細書において論じられているように整形および使用されることができるダイオード回路応答カーブの関連部分に関する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1A】図1Aは、単純抵抗分圧器回路を示す。
【図1B】図1Bは、出力が直接的にダイオードのI−Vカーブに比例する単純回路を示す。
【図1C】図1Cは、2つのハイブリッド分圧器−ダイオード回路を示す。回路の単一分岐にあるコンポーネントの順序は、回路の関数に影響を及ぼさない。これら2つの回路は、同一の伝達関数を有する。
【図1D】図1Dは、図1Cに示す単純レジスタの代わりに汎用インピーダンスブロックを持つハイブリッド分圧器−ダイオード回路を示す。
【図1E】図1Eは、図1A〜1D内の回路用の伝達関数例を示す。図1Aの回路の伝達関数は、線形である。図1Bの回路の伝達関数は、ダイオードカーブである。図1Cの回路の伝達関数は、他2つの間にあるハイブリッドカーブである。
【図2】図2は、一実施例に従って、ゲイン、オフセット、バイアス電流、および整形調整を可能にするコンポーネントを持つダイオードベースの非線形回路を示す。
【図3A】図3は、図2に示す回路の伝達関数が、2つの調整可能なパラメータV2およびR1を変更することにより、どのように整形されることができるかの例を示す。図3Aは、V2を変動させることの効果を示す。伝達関数の中央部分は、V2を変化させることによって変化する。V2を増加させると、伝達関数の中央部分における曲率が減少し、一方、V2を減少させると、逆の効果をもたらす。図3Bは、変動R1の効果を示す。
【図3B】図3は、図2に示す回路の伝達関数が、2つの調整可能なパラメータV2およびR1を変更することにより、どのように整形されることができるかの例を示す。図3Aは、V2を変動させることの効果を示す。伝達関数の中央部分は、V2を変化させることによって変化する。V2を増加させると、伝達関数の中央部分における曲率が減少し、一方、V2を減少させると、逆の効果をもたらす。図3Bは、変動R1の効果を示す。
【図4】図4は、動作温度における変化の効果をキャンセルするため、電圧オフセット(V3)を制御するために使用される第2のダイオードが、非線形性を生成するために使用されるダイオードにどのように適用されるかを実証する代替の回路配置を示す。温度補正を最適化するために、第2のダイオードは、(図示するように)非線形性を生成するために使用されるダイオードと同じパッケージ内に含有され得る。
【図5】図5は、区分線形伝達関数の典型的な実装を示す。回路および伝達関数の両方が示されている。Cambridge University Press発行のHorowitzおよびHillによる、「The Art of Electronics」、第2版、P252を参照のこと。
【図6】図6は、本発明の実施例に従って、複数の回路またはサブ回路の出力を結合することによって非線形伝達関数を実装するように構成される、区分非線形回路配置アーキテクチャを示している。
【図7】図7は、一実施例に従って、広ダイナミックレンジ平方根増幅回路の区分非線形実装を表すブロック図である。
【図8】図8は、図7の回路セグメントの特性方程式の代表的セットのグラフ表示を示す。図8Aは、低レンジ平方根関数セグメントを示す。図8Bは、高レンジ平方根関数セグメントを示す。図8Cは、区分線形セグメントを示す。図8Dは、低および高レンジ平方根セグメントの和から区分線形セグメントを引いたものを示し、これは、フルレンジ平方根関数である。
【図9】図9は、図7の回路セグメントの特性方程式の好適なセットのグラフ表示を示す。これらの図は、平方根関数ブロック内の線形−平方根過渡において勾配が連続的であることを除き、図8のものと同様である。この相違点は、図8Bと図9Bとの間において最も容易にわかる。横軸目盛はアンペアであり、縦軸目盛はボルトである。わずかに負の電流に至るまで信号のデジタル化を可能にするために、信号に追加される垂直オフセットがある。ここで使用されるデジタライザは、0から1.6Vで動作する。このシステムのための入力電流範囲は、−15μAから6.8mAである。
【図10】図10は、本発明の増幅回路配置が有用となり得る、レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析計を示している。
【図11A】図11は、本発明に従って、非線形回路素子の別の例を説明している。
【図11B】図11は、本発明に従って、非線形回路素子の別の例を説明している。
【図1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子を提供する粒子源と、
該粒子を検出し、検出された粒子束に比例する振幅を有する信号を提供する検出器と、
該信号振幅と実質的に独立な雑音成分を有する増幅された信号を生成する実質的に非線形伝達関数を有する信号増幅器と、
該増幅された信号をデジタル出力信号に変換するアナログデジタル変換器(ADC)と
を備える、質量分析装置。
【請求項2】
前記粒子源はイオン源である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記検出器は、前記イオン源から脱着するイオンを検出するように構成されるイオン検出器を備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記イオン検出器は、チャンネル型電子増倍管、電子増倍管、およびマルチチャンネルプレートのうち1つを備える、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記非線形伝達関数は実質的に平方根関数である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記非線形伝達関数は非対数および非指数関数である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ADCは前記増幅された信号を約500Ms/秒より速いレートでサンプリングし、前記信号増幅器は約250MHzより広い帯域幅を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記ADCは約5ns未満のサンプリング間隔を有し、前記非線形増幅器の前記動作帯域幅は約100MHzより広い、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記信号増幅器は、
2つ以上の回路素子であって、各回路素子が前記信号の少なくとも一部を受信し、回路素子出力を生成するように構成され、該回路素子の少なくとも1つが非線形伝達関数を有する回路素子と、
前記増幅された信号を生成するために前記回路素子出力を結合する結合回路と
を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記信号増幅器の前記非線形伝達関数は、少なくとも一部分において、インピーダンス素子と直列のダイオードによって生成される、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
質量分析計において質量スペクトル信号を増幅する方法であって、該方法は、
過渡信号を信号源から受信することであって、該過渡信号は、検出された粒子束に比例する振幅を有する、ことと、
平方根伝達関数を近似する非線形伝達関数を有する非線形増幅器において該過渡信号を増幅し、該信号の振幅と実質的に独立な雑音成分を有する増幅された信号を生成することと
を含む、方法。
【請求項12】
実質的に線形のアナログデジタル変換器(ADC)を使用して、前記増幅された信号をデジタル出力信号に変換することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ADCのサンプリング間隔は5.0ns未満であり、前記非線形増幅器の前記動作帯域幅は約100MHzより広い、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記信号の前記振幅の関数として、前記信号の前記雑音成分の振幅の変化を低減するために、前記信号を増幅することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記非線形増幅器の前記非線形伝達関数は、少なくとも一部分において、インピーダンス素子と直列のダイオードによって生成される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記非線形増幅器は、
2つ以上の回路素子であって、各回路素子が前記過渡信号の少なくとも一部を受信し、回路素子出力を生成するように構成され、該回路素子の少なくとも1つが非線形伝達関数を有する回路素子と、
前記増幅された信号を生成するために前記回路素子出力を結合する結合回路と
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
入力信号範囲にわたって入力信号の非線形関数である出力信号を生成し、インピーダンス素子と直列のダイオードを備える回路配置。
【請求項18】
入力信号範囲にわたって入力信号の望ましい非線形関数を近似する出力信号を生成する回路配置であって、該回路配置は、
2つ以上の回路であって、各回路が前記入力信号を受信し、回路出力を生成するように構成され、該回路の少なくとも1つが前記入力信号範囲の少なくとも一部にわたって非線形伝達関数を有する回路と、
該出力信号を生成するために該回路出力を結合する結合回路と
を備える、回路配置。
【請求項19】
少なくとも1つの回路は、インピーダンス素子と直列のダイオードを含む、請求項18に記載の回路配置。
【請求項20】
前記非線形関数は実質的に平方根関数である、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項21】
前記ダイオードおよびインピーダンス素子は、分圧器構成において追加のインピーダンス素子を配置した第1の回路ブロックを形成する、請求項17または19に記載の回路配置。
【請求項22】
前記インピーダンス素子は1つ以上のレジスタを含む、請求項17または19に記載の回路配置。
【請求項23】
前記インピーダンス素子は、レジスタ、コンデンサ、またはインダクタのうちの1つ以上を含む、請求項17または19に記載の回路配置。
【請求項24】
前記回路配置の前記帯域幅は、約100MHzより広い、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項25】
前記回路配置の前記帯域幅は、約300MHzより広い、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項26】
前記非線形関数を計測するために使用される較正信号を提供するように構成される追加の回路素子をさらに含む、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項27】
温度補正を提供するように構成される追加の回路素子をさらに含む、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項28】
前記回路配置の周波数応答を平坦化または拡張するように構成される追加の回路素子をさらに含む、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項29】
前記非線形関数は、前記入力信号範囲の前記入力信号の関数として非定常である、請求項17に記載の回路配置。
【請求項30】
前記回路の前記少なくとも1つの前記非線形伝達関数は、前記入力信号範囲の前記入力信号の関数として非定常である、請求項18に記載の回路配置。
【請求項31】
前記非線形関数は、前記入力信号範囲の10%超にわたって実質的に非線形である、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項32】
前記非線形関数は、前記入力信号範囲の90%超にわたって実質的に非線形である、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項33】
前記入力信号および前記出力信号は、それぞれ電圧信号または電流信号の1つである、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項34】
前記出力信号は、前記入力信号の振幅と実質的に独立な雑音成分を有する、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項35】
前記入力および出力信号はアナログ信号である、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項36】
前記非線形関数は非対数および非指数関数である、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項37】
前記結合回路によって生成された前記出力信号は、前記回路出力の線形結合または該回路出力の和のうちの1つである、請求項18に記載の回路配置。
【請求項38】
前記回路のうち少なくとも2つの前記伝達関数の前記非線形部分は、前記入力信号範囲の異なる部分に対応する、請求項18に記載の回路配置。
【請求項39】
前記回路のうち1つは、前記入力信号の線形または区分線形関数である回路出力を有する、請求項18に記載の回路配置。
【請求項40】
前記出力信号は、前記入力信号の区分線形関数ではない、請求項18に記載の回路配置。
【請求項41】
前記入力および/または出力信号をスケールするように構成される追加の回路素子をさらに含む、請求項17に記載の回路配置。
【請求項42】
前記入力信号および/または出力信号および/または前記回路出力信号の1つ以上をスケールするように構成される追加の回路素子をさらに含む、請求項18に記載の回路配置。
【請求項43】
前記入力および/または出力信号にオフセットを提供するように構成される追加の回路素子をさらに含む、請求項17に記載の回路配置。
【請求項44】
前記入力信号および/または出力信号および/または前記回路出力信号の1つ以上にオフセットを提供するように構成される追加の回路素子をさらに含む、請求項18に記載の回路配置。
【請求項45】
前記少なくとも1つの回路の前記応答を、前記入力信号範囲の前記部分より高い、および/または低い入力信号に関して、実質的に線形にするように構成される追加の回路素子をさらに含む、請求項18に記載の回路配置。
【請求項46】
前記回路配置の前記応答を、前記入力信号範囲より高い、および/または低い入力信号に関して、実質的に線形にするように構成される追加の回路素子をさらに含む、請求項17に記載の回路配置。
【請求項47】
前記2つ以上の回路のそれぞれは、前記入力信号範囲の異なる部分にわたって非線形伝達関数を有する、請求項18に記載の回路配置。
【請求項48】
前記回路の各々は、前記それぞれの回路の前記伝達関数を、前記入力信号範囲の前記それぞれの部分の外側の入力信号の部分に関して実質的に線形にするように構成される回路素子を含み、それによって実質的に線形部分を有する回路出力を生成する、請求項47に記載の回路配置。
【請求項49】
前記入力信号を受信し、前記結合回路において前記回路出力と結合された際に、前記入力信号範囲内の入力に関して、前記回路出力の前記実質的に線形部分を実質的にキャンセルする線形または区分線形回路出力を生成するように構成されるキャンセル回路素子をさらに備える、請求項48に記載の回路配置。
【請求項50】
前記ダイオードおよびインピーダンス素子は、前記回路配置の前記帯域幅と実質的に等しいまたはそれより広い帯域幅を持つフィードバックループの一部ではない、請求項17または19に記載の回路配置。
【請求項51】
入力信号範囲にわたって入力信号の実質的に望ましい非線形関数である出力信号を生成する方法であって、
インピーダンス素子と直列のダイオードを有する回路、ならびに、
a)該入力信号を、該ダイオードおよびインピーダンス素子を通過する電流に変換するための入力回路と、
b)該ダイオードおよびインピーダンス素子を通じてバイアス電流を提供するためのバイアス回路と、
c)該入力信号にオフセットを提供するための第1のオフセット回路と、
d)該出力信号にオフセットを提供するための第2のオフセット回路と、
e)該入力および/または出力信号にスケーリングを提供するためのスケーリング回路と
のうち1つ以上を備える追加の回路を提供することと、
該入力信号範囲にわたって該入力信号の該望ましい非線形関数を近似する出力信号を生成するように、該入力回路、バイアス回路、第1のオフセット回路、第2のオフセット回路、およびスケーリング回路のうちの1つ以上を調整することと
を含む、方法。
【請求項52】
入力信号範囲にわたって入力信号の実質的に望ましい非線形関数である出力信号を生成する方法であって、
インピーダンス素子と直列のダイオードを有する2つ以上の回路、ならびに、
a)該入力信号を、該ダイオードおよびインピーダンス素子を通過する電流に変換するための入力回路と、
b)該ダイオードおよびインピーダンス素子を通じてバイアス電流を提供するためのバイアス回路と、
c)該入力信号にオフセットを提供するための第1のオフセット回路と、
d)該出力信号にオフセットを提供するための第2のオフセット回路と、
e)該入力および/または出力信号にスケーリングを提供するためのスケーリング回路と
のうちの1つ以上を備える追加の回路を提供することと、
該2つ以上の回路のそれぞれについて、該入力信号範囲の部分にわたって該入力信号の該望ましい非線形関数を近似する出力信号を生成するように、該入力回路、バイアス回路、第1のオフセット回路、第2のオフセット回路、およびスケーリング回路のうちの1つ以上を調整することと、
該入力信号範囲にわたって該入力信号の該望ましい非線形伝達関数を近似する複合出力信号を形成するために、該2つ以上の回路から生じた該出力信号を結合することと
を含む、方法。
【請求項53】
入力信号範囲にわたって入力信号の実質的に望ましい非線形関数である出力信号を生成する方法であって、
それぞれが該入力信号範囲の少なくとも一部にわたって非線形伝達関数を有する2つ以上の回路と、該入力信号範囲にわたって線形または区分線形伝達関数を持つ少なくとも1つの追加の回路を含む追加の回路とを提供することと、
該入力信号範囲にわたって該入力信号の該望ましい非線形伝達関数を近似する複合出力信号を形成するために、該2つ以上の回路から生じた出力信号と任意の追加の回路を結合することと
を含む、方法。
【請求項54】
前記回路の各々は、前記入力信号範囲の異なる部分にわたって前記入力信号の前記望ましい非線形関数を近似する出力信号を生成する、請求項52または53に記載の方法。
【請求項55】
複数のピクセル素子を備える光子検出器であって、各ピクセル素子は光子を検出し、検出された光子の数に比例する振幅を有するピクセル信号を提供する光子検出器と、
該信号振幅と実質的に独立な雑音成分を有する増幅された信号を生成するために、ピクセル信号を処理する実質的に非線形である伝達関数を有する信号増幅器と、
該増幅された信号をデジタル出力信号に変換するアナログデジタル変換器(ADC)と
を備える、カメラ。
【請求項56】
前記信号増幅器の前記非線形伝達関数は、少なくとも一部において、インピーダンス素子と直列のダイオードによって生成される、請求項55に記載のカメラ。
【請求項57】
前記光子検出器はCCDアレイを備える、請求項55に記載のカメラ。
【請求項58】
前記非線形伝達関数は実質的に平方根関数である、請求項55に記載のカメラ。
【請求項59】
前記ピクセルは1MHzより高いレートで検出される、請求項55に記載のカメラ。
【請求項60】
前記ピクセルは10MHzより高いレートで検出される、請求項55に記載のカメラ。
【請求項61】
前記ピクセルは100MHzより高いレートで検出される、請求項55に記載のカメラ。
【請求項62】
入力信号範囲にわたって入力信号の望ましい非線形関数を近似する出力信号を生成する回路配置であって、
該入力信号範囲の第1の部分にわたって該望ましい非線形変換を近似する第1の非線形変換を生成するように構成される第1の回路素子と、
該入力信号範囲の第2の部分にわたって該望ましい非線形変換を近似する第2の非線形変換を生成するように構成される第2の回路素子と、
該望ましい非線形関数を近似しない該第1および第2の回路素子の該伝達関数の部分をキャンセルする伝達関数を生成するように構成される第3の回路素子と、
該入力信号範囲全体にわたって該望ましい非線形関数を近似する出力信号を生成するために、前記第1、第2、および第3の回路素子の出力を結合するように構成される結合素子と
を備える、回路配置。
【請求項63】
前記第1の回路素子は、
特定の信号範囲にわたって前記望ましい非線形関数を近似する第1のサブ回路素子と、
前記入力信号についてスケーリング関数を実行し、スケールされた入力信号を該第1のサブ回路へ送達する第1のスケーリング素子であって、該スケーリング関数は、前記入力信号範囲の前記第1の部分が、該第1のサブ回路が該望ましい非線形関数を近似する特定の信号範囲にスケールされるように選択される、第1のスケーリング素子と、
該第1のサブ回路の出力について第2のスケーリング関数を実行する第2のスケーリング素子と
を備える、請求項62に記載の回路配置。
【請求項64】
前記入力信号範囲の前記第1の部分は1−Xユニットであり、前記スケーリング関数は前記入力信号にXの因数を乗じ、前記第2のスケーリング素子は前記第1のサブ回路の前記出力にl/(sqrt(X))の因数を乗じる、請求項63に記載の回路配置。
【請求項65】
Xは84である、請求項64に記載の回路配置。
【請求項66】
前記第2のスケーリング関数は、前記第1のスケーリング関数と完全に逆または部分的に逆となるように選択される、請求項63に記載の回路配置。
【請求項1】
粒子を提供する粒子源と、
該粒子を検出し、検出された粒子束に比例する振幅を有する信号を提供する検出器と、
該信号振幅と実質的に独立な雑音成分を有する増幅された信号を生成する実質的に非線形伝達関数を有する信号増幅器と、
該増幅された信号をデジタル出力信号に変換するアナログデジタル変換器(ADC)と
を備える、質量分析装置。
【請求項2】
前記粒子源はイオン源である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記検出器は、前記イオン源から脱着するイオンを検出するように構成されるイオン検出器を備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記イオン検出器は、チャンネル型電子増倍管、電子増倍管、およびマルチチャンネルプレートのうち1つを備える、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記非線形伝達関数は実質的に平方根関数である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記非線形伝達関数は非対数および非指数関数である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ADCは前記増幅された信号を約500Ms/秒より速いレートでサンプリングし、前記信号増幅器は約250MHzより広い帯域幅を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記ADCは約5ns未満のサンプリング間隔を有し、前記非線形増幅器の前記動作帯域幅は約100MHzより広い、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記信号増幅器は、
2つ以上の回路素子であって、各回路素子が前記信号の少なくとも一部を受信し、回路素子出力を生成するように構成され、該回路素子の少なくとも1つが非線形伝達関数を有する回路素子と、
前記増幅された信号を生成するために前記回路素子出力を結合する結合回路と
を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記信号増幅器の前記非線形伝達関数は、少なくとも一部分において、インピーダンス素子と直列のダイオードによって生成される、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
質量分析計において質量スペクトル信号を増幅する方法であって、該方法は、
過渡信号を信号源から受信することであって、該過渡信号は、検出された粒子束に比例する振幅を有する、ことと、
平方根伝達関数を近似する非線形伝達関数を有する非線形増幅器において該過渡信号を増幅し、該信号の振幅と実質的に独立な雑音成分を有する増幅された信号を生成することと
を含む、方法。
【請求項12】
実質的に線形のアナログデジタル変換器(ADC)を使用して、前記増幅された信号をデジタル出力信号に変換することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ADCのサンプリング間隔は5.0ns未満であり、前記非線形増幅器の前記動作帯域幅は約100MHzより広い、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記信号の前記振幅の関数として、前記信号の前記雑音成分の振幅の変化を低減するために、前記信号を増幅することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記非線形増幅器の前記非線形伝達関数は、少なくとも一部分において、インピーダンス素子と直列のダイオードによって生成される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記非線形増幅器は、
2つ以上の回路素子であって、各回路素子が前記過渡信号の少なくとも一部を受信し、回路素子出力を生成するように構成され、該回路素子の少なくとも1つが非線形伝達関数を有する回路素子と、
前記増幅された信号を生成するために前記回路素子出力を結合する結合回路と
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
入力信号範囲にわたって入力信号の非線形関数である出力信号を生成し、インピーダンス素子と直列のダイオードを備える回路配置。
【請求項18】
入力信号範囲にわたって入力信号の望ましい非線形関数を近似する出力信号を生成する回路配置であって、該回路配置は、
2つ以上の回路であって、各回路が前記入力信号を受信し、回路出力を生成するように構成され、該回路の少なくとも1つが前記入力信号範囲の少なくとも一部にわたって非線形伝達関数を有する回路と、
該出力信号を生成するために該回路出力を結合する結合回路と
を備える、回路配置。
【請求項19】
少なくとも1つの回路は、インピーダンス素子と直列のダイオードを含む、請求項18に記載の回路配置。
【請求項20】
前記非線形関数は実質的に平方根関数である、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項21】
前記ダイオードおよびインピーダンス素子は、分圧器構成において追加のインピーダンス素子を配置した第1の回路ブロックを形成する、請求項17または19に記載の回路配置。
【請求項22】
前記インピーダンス素子は1つ以上のレジスタを含む、請求項17または19に記載の回路配置。
【請求項23】
前記インピーダンス素子は、レジスタ、コンデンサ、またはインダクタのうちの1つ以上を含む、請求項17または19に記載の回路配置。
【請求項24】
前記回路配置の前記帯域幅は、約100MHzより広い、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項25】
前記回路配置の前記帯域幅は、約300MHzより広い、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項26】
前記非線形関数を計測するために使用される較正信号を提供するように構成される追加の回路素子をさらに含む、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項27】
温度補正を提供するように構成される追加の回路素子をさらに含む、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項28】
前記回路配置の周波数応答を平坦化または拡張するように構成される追加の回路素子をさらに含む、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項29】
前記非線形関数は、前記入力信号範囲の前記入力信号の関数として非定常である、請求項17に記載の回路配置。
【請求項30】
前記回路の前記少なくとも1つの前記非線形伝達関数は、前記入力信号範囲の前記入力信号の関数として非定常である、請求項18に記載の回路配置。
【請求項31】
前記非線形関数は、前記入力信号範囲の10%超にわたって実質的に非線形である、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項32】
前記非線形関数は、前記入力信号範囲の90%超にわたって実質的に非線形である、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項33】
前記入力信号および前記出力信号は、それぞれ電圧信号または電流信号の1つである、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項34】
前記出力信号は、前記入力信号の振幅と実質的に独立な雑音成分を有する、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項35】
前記入力および出力信号はアナログ信号である、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項36】
前記非線形関数は非対数および非指数関数である、請求項17または18に記載の回路配置。
【請求項37】
前記結合回路によって生成された前記出力信号は、前記回路出力の線形結合または該回路出力の和のうちの1つである、請求項18に記載の回路配置。
【請求項38】
前記回路のうち少なくとも2つの前記伝達関数の前記非線形部分は、前記入力信号範囲の異なる部分に対応する、請求項18に記載の回路配置。
【請求項39】
前記回路のうち1つは、前記入力信号の線形または区分線形関数である回路出力を有する、請求項18に記載の回路配置。
【請求項40】
前記出力信号は、前記入力信号の区分線形関数ではない、請求項18に記載の回路配置。
【請求項41】
前記入力および/または出力信号をスケールするように構成される追加の回路素子をさらに含む、請求項17に記載の回路配置。
【請求項42】
前記入力信号および/または出力信号および/または前記回路出力信号の1つ以上をスケールするように構成される追加の回路素子をさらに含む、請求項18に記載の回路配置。
【請求項43】
前記入力および/または出力信号にオフセットを提供するように構成される追加の回路素子をさらに含む、請求項17に記載の回路配置。
【請求項44】
前記入力信号および/または出力信号および/または前記回路出力信号の1つ以上にオフセットを提供するように構成される追加の回路素子をさらに含む、請求項18に記載の回路配置。
【請求項45】
前記少なくとも1つの回路の前記応答を、前記入力信号範囲の前記部分より高い、および/または低い入力信号に関して、実質的に線形にするように構成される追加の回路素子をさらに含む、請求項18に記載の回路配置。
【請求項46】
前記回路配置の前記応答を、前記入力信号範囲より高い、および/または低い入力信号に関して、実質的に線形にするように構成される追加の回路素子をさらに含む、請求項17に記載の回路配置。
【請求項47】
前記2つ以上の回路のそれぞれは、前記入力信号範囲の異なる部分にわたって非線形伝達関数を有する、請求項18に記載の回路配置。
【請求項48】
前記回路の各々は、前記それぞれの回路の前記伝達関数を、前記入力信号範囲の前記それぞれの部分の外側の入力信号の部分に関して実質的に線形にするように構成される回路素子を含み、それによって実質的に線形部分を有する回路出力を生成する、請求項47に記載の回路配置。
【請求項49】
前記入力信号を受信し、前記結合回路において前記回路出力と結合された際に、前記入力信号範囲内の入力に関して、前記回路出力の前記実質的に線形部分を実質的にキャンセルする線形または区分線形回路出力を生成するように構成されるキャンセル回路素子をさらに備える、請求項48に記載の回路配置。
【請求項50】
前記ダイオードおよびインピーダンス素子は、前記回路配置の前記帯域幅と実質的に等しいまたはそれより広い帯域幅を持つフィードバックループの一部ではない、請求項17または19に記載の回路配置。
【請求項51】
入力信号範囲にわたって入力信号の実質的に望ましい非線形関数である出力信号を生成する方法であって、
インピーダンス素子と直列のダイオードを有する回路、ならびに、
a)該入力信号を、該ダイオードおよびインピーダンス素子を通過する電流に変換するための入力回路と、
b)該ダイオードおよびインピーダンス素子を通じてバイアス電流を提供するためのバイアス回路と、
c)該入力信号にオフセットを提供するための第1のオフセット回路と、
d)該出力信号にオフセットを提供するための第2のオフセット回路と、
e)該入力および/または出力信号にスケーリングを提供するためのスケーリング回路と
のうち1つ以上を備える追加の回路を提供することと、
該入力信号範囲にわたって該入力信号の該望ましい非線形関数を近似する出力信号を生成するように、該入力回路、バイアス回路、第1のオフセット回路、第2のオフセット回路、およびスケーリング回路のうちの1つ以上を調整することと
を含む、方法。
【請求項52】
入力信号範囲にわたって入力信号の実質的に望ましい非線形関数である出力信号を生成する方法であって、
インピーダンス素子と直列のダイオードを有する2つ以上の回路、ならびに、
a)該入力信号を、該ダイオードおよびインピーダンス素子を通過する電流に変換するための入力回路と、
b)該ダイオードおよびインピーダンス素子を通じてバイアス電流を提供するためのバイアス回路と、
c)該入力信号にオフセットを提供するための第1のオフセット回路と、
d)該出力信号にオフセットを提供するための第2のオフセット回路と、
e)該入力および/または出力信号にスケーリングを提供するためのスケーリング回路と
のうちの1つ以上を備える追加の回路を提供することと、
該2つ以上の回路のそれぞれについて、該入力信号範囲の部分にわたって該入力信号の該望ましい非線形関数を近似する出力信号を生成するように、該入力回路、バイアス回路、第1のオフセット回路、第2のオフセット回路、およびスケーリング回路のうちの1つ以上を調整することと、
該入力信号範囲にわたって該入力信号の該望ましい非線形伝達関数を近似する複合出力信号を形成するために、該2つ以上の回路から生じた該出力信号を結合することと
を含む、方法。
【請求項53】
入力信号範囲にわたって入力信号の実質的に望ましい非線形関数である出力信号を生成する方法であって、
それぞれが該入力信号範囲の少なくとも一部にわたって非線形伝達関数を有する2つ以上の回路と、該入力信号範囲にわたって線形または区分線形伝達関数を持つ少なくとも1つの追加の回路を含む追加の回路とを提供することと、
該入力信号範囲にわたって該入力信号の該望ましい非線形伝達関数を近似する複合出力信号を形成するために、該2つ以上の回路から生じた出力信号と任意の追加の回路を結合することと
を含む、方法。
【請求項54】
前記回路の各々は、前記入力信号範囲の異なる部分にわたって前記入力信号の前記望ましい非線形関数を近似する出力信号を生成する、請求項52または53に記載の方法。
【請求項55】
複数のピクセル素子を備える光子検出器であって、各ピクセル素子は光子を検出し、検出された光子の数に比例する振幅を有するピクセル信号を提供する光子検出器と、
該信号振幅と実質的に独立な雑音成分を有する増幅された信号を生成するために、ピクセル信号を処理する実質的に非線形である伝達関数を有する信号増幅器と、
該増幅された信号をデジタル出力信号に変換するアナログデジタル変換器(ADC)と
を備える、カメラ。
【請求項56】
前記信号増幅器の前記非線形伝達関数は、少なくとも一部において、インピーダンス素子と直列のダイオードによって生成される、請求項55に記載のカメラ。
【請求項57】
前記光子検出器はCCDアレイを備える、請求項55に記載のカメラ。
【請求項58】
前記非線形伝達関数は実質的に平方根関数である、請求項55に記載のカメラ。
【請求項59】
前記ピクセルは1MHzより高いレートで検出される、請求項55に記載のカメラ。
【請求項60】
前記ピクセルは10MHzより高いレートで検出される、請求項55に記載のカメラ。
【請求項61】
前記ピクセルは100MHzより高いレートで検出される、請求項55に記載のカメラ。
【請求項62】
入力信号範囲にわたって入力信号の望ましい非線形関数を近似する出力信号を生成する回路配置であって、
該入力信号範囲の第1の部分にわたって該望ましい非線形変換を近似する第1の非線形変換を生成するように構成される第1の回路素子と、
該入力信号範囲の第2の部分にわたって該望ましい非線形変換を近似する第2の非線形変換を生成するように構成される第2の回路素子と、
該望ましい非線形関数を近似しない該第1および第2の回路素子の該伝達関数の部分をキャンセルする伝達関数を生成するように構成される第3の回路素子と、
該入力信号範囲全体にわたって該望ましい非線形関数を近似する出力信号を生成するために、前記第1、第2、および第3の回路素子の出力を結合するように構成される結合素子と
を備える、回路配置。
【請求項63】
前記第1の回路素子は、
特定の信号範囲にわたって前記望ましい非線形関数を近似する第1のサブ回路素子と、
前記入力信号についてスケーリング関数を実行し、スケールされた入力信号を該第1のサブ回路へ送達する第1のスケーリング素子であって、該スケーリング関数は、前記入力信号範囲の前記第1の部分が、該第1のサブ回路が該望ましい非線形関数を近似する特定の信号範囲にスケールされるように選択される、第1のスケーリング素子と、
該第1のサブ回路の出力について第2のスケーリング関数を実行する第2のスケーリング素子と
を備える、請求項62に記載の回路配置。
【請求項64】
前記入力信号範囲の前記第1の部分は1−Xユニットであり、前記スケーリング関数は前記入力信号にXの因数を乗じ、前記第2のスケーリング素子は前記第1のサブ回路の前記出力にl/(sqrt(X))の因数を乗じる、請求項63に記載の回路配置。
【請求項65】
Xは84である、請求項64に記載の回路配置。
【請求項66】
前記第2のスケーリング関数は、前記第1のスケーリング関数と完全に逆または部分的に逆となるように選択される、請求項63に記載の回路配置。
【図1E】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【公表番号】特表2008−505456(P2008−505456A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519526(P2007−519526)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/023738
【国際公開番号】WO2006/007589
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(501497253)ヴァーミリオン インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/023738
【国際公開番号】WO2006/007589
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(501497253)ヴァーミリオン インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】
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