質量分析装置及び質量分析方法
【課題】 サンプルを効率的にイオン化し、かつキャリーオーバーの少ない質量分析装置を実現する。
【解決手段】 サンプルを保持した試料容器の内部を減圧することにより、ヘッドスペースガス中におけるサンプル密度を上昇させ、サンプルを効率的にイオン化する。
【解決手段】 サンプルを保持した試料容器の内部を減圧することにより、ヘッドスペースガス中におけるサンプル密度を上昇させ、サンプルを効率的にイオン化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析装置及びその動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌や大気の汚染の測定、食品の農薬検査、血中代謝物による診断、尿中薬物検査など、混合試料中の微量物質をその場で簡便に、高感度に測定する装置が求められている。微量物質の高感度測定が可能な方法の一つとして、質量分析が用いられている。
【0003】
質量分析装置では、イオン源において物質を気相のイオンとし、これを真空部に導入して質量分離を行う。質量分析装置の高感度化のためには、イオン源、質量分析部、検出器の改良のほかに、サンプルを効率的にイオン源に輸送するためのサンプル導入部の改良が重要な点である。
【0004】
サンプルをガスクロマトグラフや質量分析装置にガス状態で導入する手法では、ヘッドスペース法が一般的である。ヘッドスペース法には、スタティックヘッドスペース法とダイナミックヘッドスペース法が存在する(非特許文献1)。
【0005】
スタティックヘッドスペース法は、サンプルをバイアルなどに一定の空間を残すように注入して密閉し、一定温度で気液平衡に達するまで放置後、気相中に存在するガス、すなわちヘッドスペースガスをシリンジで採取して分析する手法である。サンプル溶液の溶媒の影響が少なく、サンプル溶液中の微量の揮発性物質を定量できる方法である。サンプル溶液を高温に過熱する方法や、塩を試料液に添加して塩析効果により気化を促進するなどして、ヘッドスペースガス中のサンプルガス濃度を上昇させることができる。
【0006】
ダイナミックヘッドスペース法では、サンプルを注入したバイアルにヘリウムや窒素などの不活性ガスを導入しサンプルガスを押し出す手法である。不活性ガスは、バイアルの気相中に導入する場合と液相中に導入してサンプルをパージする場合がある。液相にガスを導入すると、気泡が発生することで気液界面の表面積が増加し、より気化が促進される。
【0007】
スタティックヘッドスペース法、ダイナミックヘッドスペース法共に、ヘッドスペースガスを吸着剤で捕集することで濃縮する手法も提案されている。
【0008】
バイアル瓶内のヘッドスペース部から効率的にガスを抽出方法も提案されている(特許文献1)。バイアル瓶とイオン源を接続する配管のイオン源側末端をベンチュリ効果により減圧することでヘッドスペースガスを吸引し、その後大気圧化学イオン化によりイオン化している。
【0009】
サンプルの気化を促進するために、サンプル溶液を微小液滴化するデバイスも提案されている(特許文献2)。サンプル溶液を0.4 nL程度の微小液滴として容器に吐出することで、気液界面の表面積が増加し迅速な気液平衡が実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US5869334
【特許文献2】特開2011-27557
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】TrAC Trends in Analytical Chemistry, 21 (2002) 608-617
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
非特許文献1に記載される従来のヘッドスペース法だけでなく、特許文献1、2に記載される特殊なヘッドスペース法においてもその問題点は,ヘッドスペースガス中のサンプルガス密度はサンプルの飽和蒸気圧に依存する点である。バイアル瓶にサンプル溶液を入れ、長時間放置したり不活性ガスを導入したりしたとしても、ヘッドスペースガス中のサンプルガス量は飽和蒸気圧以上には増加できない。水の場合、飽和蒸気圧は25℃で約3000 Paである。上記のヘッドスペース法では、ヘッドスペース部の圧力は大気圧近傍もしくは大気圧以上に加圧されている。例えば大気圧約100,000 Paにおける分圧比で考えれば、気中の水分子の存在量は約3%である。溶液を加熱すると水及びサンプル分子の飽和蒸気圧を上昇させることができるが、加熱に必要な電力の問題や、加熱されたガスが配管のコールドスポットで結露してしまう等の問題が出てくる。
【0013】
吸着剤を用いてサンプルガスを捕集することで、サンプルを濃縮することができるが、再び吸着剤からサンプルを脱離させるプロセスが必要になる等、操作が煩雑でスループットも悪い。
【課題を解決するための手段】
【0014】
サンプルを保持した試料容器の内部を減圧することにより、ヘッドスペースガス中におけるサンプル密度を上昇させ、サンプルを効率的にイオン化する。
【0015】
質量分析装置の一例を挙げるならば、試料を封入する試料容器と、試料容器と接続され、試料容器内に存在する試料ガスを取り込んでイオン化するイオン源を備え、試料容器内圧以下であるイオン化室と、イオン化室と接続されイオン化された試料を分析する質量分析部を有する真空チャンバーと、試料容器内を減圧する手段とを有することを特徴とする。
【0016】
また、質量分析方法の一例を挙げるならば、試料を封入した試料容器と、試料容器と接続され試料をイオン化するイオン源を備えたイオン化室と、イオン化室と接続されイオン化された試料を分析する質量分析部を有する真空チャンバーとを用い、真空チャンバーの圧力を減圧する工程と、試料容器の圧力を減圧する工程と、試料容器内に存在する試料ガスをイオン化室内に取り込んでイオン化する工程と、イオン化された試料を質量分析部において分析する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、サンプルを効率的にイオン化でき、かつキャリーオーバーの少ない質量分析装置及び方法が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の装置構成図
【図2】実施例1の放電電極構成
【図3】実施例1の測定フロー
【図4】実施例1のシステム構成図
【図5】実施例1の装置構成図2
【図6】実施例2の装置構成図
【図7】実施例2の装置構成図2
【図8】マススペクトル
【図9】実施例3の装置構成図
【図10】実施例4の装置構成図
【図11】実施例4の測定フロー
【図12】実施例5の装置構成図
【図13】実施例6の装置構成図
【図14】実施例7の装置構成図
【図15】実施例8の装置構成図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0019】
図1は本発明の質量分析装置の一実施例を示す構成図である。本装置は主にサンプル7を保持するためのバイアル瓶1、バイアル瓶を減圧するポンプ2、加えてガラス、プラスチック、セラミック、樹脂などの誘電体で形成されたイオン化室3と真空ポンプ4により0.1 Pa以下に維持された真空チャンバー5で構成されている。典型的なイオン化室3は外径4 mm程度、内径1〜4 mm程度の管である。図1中でバイアル瓶1とイオン化室3は配管で接続されているが、後述するような圧力条件を保てるのであれば配管ではなくオリフィスを介して接続してもよい。
【0020】
サンプル7は液体でも固体でも構わない。バイアル瓶1の内部はポンプ2によって減圧される。真空チャンバー5は0.1 Pa以下に維持されており、イオン化室3の圧力はポンプ4の排気速度、細孔11のコンダクタンス、バイアル瓶1とイオン化室3を繋ぐチューブ13のコンダクタンス及びバイアル瓶1内の圧力により決定される。ただし、イオン化室3の圧力はバイアル瓶1圧以下であり、ヘッドスペースガスはバイアル瓶1からイオン化室3へと流入する。イオン化室3の圧力が真空チャンバー5の圧力に近いほど、イオンがイオン化室3から真空チャンバー5へ導入される際のロスは減少する。このため、大気圧下でイオン化するよりも減圧下でイオン化すると装置の感度が向上する。本実施例では、イオン化室3内でバリア放電によるプラズマ10を発生させる。プラズマ10によって生じた荷電粒子と水分子との反応を介し、サンプル分子をイオン化している。プラズマ10が安定的に発生する圧力範囲が存在し、典型的な値は100〜5000 Paである。また効率的にイオン化できる圧力範囲は500〜3000 Paであり、それ以下の圧力だとイオンのフラグメンテーションが強くなる。また、1 Pa以下ではプラズマ10が発生しない。3000 Pa以上でもプラズマ10が発生しづらくなり、イオン化効率が低下する。
【0021】
サンプルの飽和蒸気圧は周囲の圧力に依存しないため、バイアル瓶1内の圧力を減少させるほどサンプルの分圧が高まることになる。たとえば、サンプルの蒸気圧が10 Paで一定だと仮定する。バイアル瓶1の内圧が大気圧100,000 Paである時、ヘッドスペースガス中に占めるサンプル割合は0.01%である。バイアル瓶1の内圧を50,000 Paにまで減圧すれば、サンプル割合は0.02%、5,000 Paにまで減圧すれば0.2%である。このように理論的には、バイアル瓶1の内圧を20分の1にするとヘッドスペースガス中のサンプルガス割合が20倍になる。イオン化室3の圧力及び真空チャンバー5の圧力を一定とした場合、バイアル瓶1の内圧によらず、真空チャンバー5内に導入されるヘッドスペースガスの流量は変化しない。よって、上述したようにバイアル瓶1内圧を減少させるほどヘッドスペースガス中のサンプルガス割合が上昇することは、真空チャンバー5に導入されるサンプルガス量の増大を意味し、装置感度が上昇する。
【0022】
バイアル瓶1内の圧力を50,000、30,000、10,000 Paと減圧していけば、約2倍, 3.5倍, 10 倍と導入されるサンプルガス量が増大し、同濃度のサンプルで計測されるマススペクトルのピーク強度が大きくなるが、減圧の程度が大きくなるほどバイアル瓶1に求められる密閉度が厳しくなる。これはバイアル瓶1のコスト上昇に繋がる。加えて、大きく減圧するためには排気量の大きなポンプを接続する必要があり、コスト高及び重量の上昇に繋がる。上記の問題点と感度向上のバランスを考えて装置を設計する必要がある。
【0023】
また、蒸発速度は気体の拡散速度に比例し、気体の拡散速度は圧力に反比例する。よって、圧力を減少させるほど蒸発速度が上昇し、サンプルが飽和蒸気圧にまで達する時間が短くなる。しかし、サンプルが液体の場合突沸してしまうため、その液体の飽和蒸気圧以下までにはヘッドスペース部を減圧することはできない。
【0024】
イオン化室に第一放電電極8と第二放電電極9を配置し、それらの間に電圧を印加することにより誘電体バリア放電が発生させ、プラズマ10が生成される。プラズマ10によって荷電粒子が発生し、それを基に水クラスターイオンが発生、そして水クラスターイオンと試料ガスのイオン分子反応により試料7がイオン化される。これは、フラグメンテーションの多いEIイオン源と比べ、本手法は放電プラズマを利用したソフトイオン化であり、試料イオンのフラグメンテーションが少ない。フラグメンテーションを意図的に起こしたい場合は、後述するように放電電極に加える電力を大きくすればよい。放電プラズマ10により発生した試料イオンは細孔11を通って真空チャンバー5へと導入される。真空チャンバー内5には質量分析部12と検出器6が設置されている。導入されたイオンは四重極質量フィルター、イオントラップ、飛行時間型質量分析計など質量分析部12でm/zごとに分離されて、電子増倍管などの検出器6で検出される。
【0025】
典型的な第一放電電極8と第二放電電極9の距離は5 mm程度であり、放電電極間距離が長くなるほど放電に必要な電力は高くなる。例えば、放電電極の片方に電源51から交流電圧が印加され、もう片方の放電電極にはDC電圧が印加されるようにする。印加される交流電圧は矩形波でも正弦波でもよい。印加電圧は0.5〜10 kV、周波数は1〜100 kHz程度が典型例である。同じ電圧振幅なら矩形波を用いた方がプラズマ10の密度が高くなる。一方、正弦波では周波数が高い場合にコイルによって電圧を昇圧できるため、矩形波を用いる場合よりも電源51が安価になるという利点がある。電圧と周波数が高いほど投入電力が高くなるのでプラズマ10の密度は高くなりやすいが、投入電力が高すぎるとプラズマ温度が高くなりフラグメンテーションが起こりやすくなる。交流電圧の周波数や電圧を試料や測定対象イオンごとに変えてもよい。例えば無機物イオンのようにフラグメンテーションしにくい分子を測定する場合や意図的に対象イオンをフラグメンテーションさせてフラグメントイオンを測定した場合には投入電力を高くし、フラグメンテーションし易い分子を測定する場合は投入電力を低くする等である。また、必要時のみ放電電極に電圧を印加するようにスイッチングすれば電源51の消費電力を低減することができる。
【0026】
放電電極の配置は誘電体を介して放電するのであれば様々に変更できる。図2に筒を横から見た図と断面図を示す。図2(A)は図1に示した放電電極の配置であり円筒電極を2つ用いている。図2(B)のように平面形状の電極を用いてもよい。図2(C)のように電極の片方を誘電体内部に挿入してもよい。電極の数も2つに限られず、3つ、4つと増やしてもよい。
【0027】
誘電体バリア放電では、水クラスターイオンとのイオン分子反応によってサンプルがイオン化する。このため、水クラスターイオンの増加はサンプルイオンの増加に繋がる。ここで、サンプルが水溶液である場合を考える。水の飽和蒸気圧は25℃で約3000 Paである。通常、大気の約80%が窒素である。しかし、例えばバイアル瓶1圧をポンプで5000 Paまで減圧した場合、ヘッドスペース部の約60%が水分子となる。水分子の割合が上昇することによりイオン化室3内での水クラスターイオンの発生量が増加し、それがサンプルのイオン化効率を上昇させる。
【0028】
ヘッドスペース法を用いた質量分析で常に問題となってくるのがサンプルのキャリーオーバーである。サンプルを交換する度に配管の洗浄や交換を行っているとスループットが悪くなる。バイアル瓶1圧を減圧することで、イオン化室3や真空チャンバー5の圧力を最適値に維持するために必要な配管コンダクタンスを減少し、配管の内径を大きくすることができる。これにより、サンプルの吸着が低減されキャリーオーバーを抑えられる。上述したように、減圧することによって蒸発速度が高まる。これは配管に吸着してしまった分子が素早く取り除かれていくことを意味し、キャリーオーバーを低減する。
【0029】
図3に典型的な計測ワークフローを示した。まず、装置の電源を入れ、その後ポンプによって真空チャンバーを減圧する。この段階ではイオン化室は大気圧である外部と接続されている。サンプルをバイアル瓶に入れ密閉する。バイアル瓶内の圧力をポンプによって減圧後、装置にセットするとよい。減圧されたバイアル瓶がセットされることによりイオン化室3及び真空チャンバー5がより減圧される。上述したように、計測にあたって真空チャンバーは0.1 Pa以下、イオン化室3は500〜3000 Paにする必要があり、減圧したバイアル瓶1をセットした状態でそれらの圧力になるように真空系を設計する必要がある。バイアル瓶1をセットした後にバリア放電の電源を入れサンプルをイオン化及び質量分析を行う。計測後、サンプルの入ったバイアル瓶1を外し、キャリーオーバーが無いことを確認するためにサンプルの入っていないバイアル瓶1をセットする。キャリーオーバーが無ければ、次のサンプルの計測に移行する。キャリーオーバーが存在する場合、イオン化室3の洗浄が必要になる。
【0030】
室温ではサンプルの蒸気圧が低すぎる場合は、図5に示すようにバイアル瓶1にヒータ14を取り付けて加熱し、蒸気圧を上昇させる。この場合、加熱しない場合に比べて減圧できるバイアル瓶1内圧の下限が上昇する。例えば、60℃まで加熱した場合、水の飽和蒸気圧は約20,000 Paであるためバイアル瓶圧を20,000 Pa以下には減圧することはできない。
【0031】
図4は装置のシステム構成図である。システムはコンピュータ100によって制御する。バイアル瓶及び真空チャンバーに取り付けた圧力計20、21によって圧力を計測しながら、ポンプ2、4によって圧力をコントロールする。図3に示す計測フローにしたがい、操作手順をモニタ画面102に出力する。バイアル瓶1を装置にセット後、イオン源の電源を入れ、イオン化及び計測を開始する。質量分析の結果はコンピュータ100に取り込まれ、必要な解析結果をモニタ画面102に出力する。
【実施例2】
【0032】
図6は本発明の質量分析装置の一実施例を示す構成図である。プラズマ10の圧力条件と電源51の出力電圧も実施例1と同様である。実施例1と異なり、イオン化室3とバイアル瓶1の間にパルスバルブ30を導入し、間欠的にガスをイオン化室1に導入する。ガスを導入する時に一時的にイオン化室3の圧力が増加し、パルスバルブ30が閉じるとイオン化室3の圧力が低下する。このため、実施例1のガス連続導入系と比べ、細孔11の内径を大きくして真空チャンバー5に導入される流量を増加させても、パルスバルブ30が閉じた後は真空チャンバー5内の圧力を0.1 Pa以下に維持することができる。パルスバルブ30が閉じている間はヘッドスペースガスがイオン化室3に流れていかないため、ガスのイオン化室3での滞留時間が短くなり吸着が低減される。連続導入系と真空チャンバー5へのガス導入量が同じであれば、排気速度の低いより小型のポンプを用いることができる。イオン源の圧力及びチャンバー圧は配管のコンダクタンス及びバルブ開時間によって制御できる。また、イオンを質量分析部12にトラップした状態でパルスバルブ30を再度開くことで真空チャンバー5内圧を衝突誘起解離が効率的に発生する圧力まで上昇させることができる。すなわち、パルスバルブ30が存在することで真空チャンバー5内の圧力を簡便に調節することができる。実施例1と比較して一時的とはいえ、バルブ開閉によって真空チャンバー5内の圧力が上昇するためポンプ4に負担がかかりポンプ4の交換頻度が高まる。また、パルスバルブ30をコントロールする回路や電源が必要になり実施例1に比べ構成が煩雑である。
【0033】
計測フローは実施例1とほぼ同様である。減圧したバイアル瓶1を装置にセット後、バリア放電の電源を入れ、パルスバルブ30を開閉することでヘッドスペースガスをイオン化室に導入する。
【0034】
実施例2の構成で、メトキシフェナミン(MP)を1 ppmの濃度で60% K2CO3水溶液に溶かし、計測した結果を図8に示す。図8(A)はバイアル瓶を25000 Pa程度まで減圧した場合、(B)はバイアル瓶を減圧しなかった場合の結果である。どちらの場合もm/z 180の位置にMPの[M+H]+が確認できたが、ピーク強度はバイアル瓶を減圧した場合の方が約4倍大きかった。
【0035】
図7に示すように、イオン化室3にポンプ2を接続し、パルスバルブ30をイオン化室3と真空チャンバー5の間に設置することも可能である。この場合、パルスバルブ30が閉状態の間、ヘッドスペースガスはバイアル瓶1から常時イオン化室3へと流入している。パルスバルブ30を開状態とした時にサンプルをイオン化し、生成したイオンを真空チャンバー5に導入する。チューブ13を無くし、バイアル瓶1とイオン化室3を直接接続してもよい。
【0036】
実施例1で示したバイアル瓶1を加熱するためのヒータ14は本実施例でも適用可能である。
【実施例3】
【0037】
図9は本発明の質量分析装置の一実施例を示す構成図である。プラズマ10の圧力条件と電源51の出力電圧も実施例1と同様である。実施例1、2と異なり、バイアル瓶用ポンプ2をバイアル瓶1ではなくチューブ13に接続している。実施例1、2と同様にバイアル瓶1は減圧され、サンプルのヘッドスペースガス中の割合が高まる。バイアル瓶1に接続される配管が一本に減少するため、バイアル瓶1の構成が簡略化されコストダウンが期待できる。一方で、チューブ13内を新鮮なガスが常時流れ続けるため吸着が激しくなるという欠点がある。
【0038】
実施例1で示したバイアル瓶1を加熱するためのヒータ14は本実施例でも適用可能である。
【実施例4】
【0039】
図10は本発明の質量分析装置の一実施例を示す構成図である。プラズマ10の圧力条件と電源51の出力電圧も実施例1と同様である。実施例1,2とは異なり、バイアル瓶1にポンプを接続していない。実施例4の計測フローを図11に示す。バイアル瓶1にサンプルを注入して密閉するまでは実施例1,2と同様である。実施例4では、ポンプでバイアル瓶1を減圧せず、内圧が大気圧のまま装置へセットする。その後、パルスバルブ30を一定時間開け続ける、もしくはパルス的に何度も開閉することで、真空チャンバー5側からバイアル瓶1を減圧する。真空チャンバー5に取り付けた圧力計の数値からバイアル瓶1の圧力を推定することができる。サンプル溶液から発生する流量とポンプの排気量が釣り合ったところで、圧力が一定になる。サンプル溶液から発生する流量は溶液の温度に依存するため、一定になる圧力は溶液の温度で調整する。圧力一定後、バリア放電の電源を入れ、質量分析を開始する。
【0040】
実施例1,2と比較して、バイアル瓶1を減圧するためのポンプ、配管が必要ないため、装置が小型化する。また、バイアル瓶1を減圧してから装置にセットするという工程もなくなり計測者自身で行う計測フローが単純化する。しかし、バイアル瓶1内が大気圧の状態で装置にセットしてパルスバルブ30を開閉するため、大流量のヘッドスペースガスが真空チャンバー5に導入され、ポンプを痛める可能性がある。また、大量のガスによってイオン化室3が汚染される可能性もある。
【実施例5】
【0041】
図12は本発明の質量分析装置の一実施例を示す構成図である。プラズマ10の圧力条件も実施例1と同様である。実施例1〜3と異なり、2つの放電電極をイオン化室内3に配置し、電極間にDC電圧を印加することで誘電体を介さないグロー放電を発生させ、それによりプラズマ10を生じさせる。また、電極と電源51の間に制限抵抗50を入れることで電流を制限し放電をソフトにする。誘電体を介する放電の場合は、交流電圧を印加する必要があるが、誘電体を介さないグロー放電の場合、DC電圧を印加すればよく電源の設計が簡単である。一方、電極がイオン化室3内部にあるため汚染される可能性があり、ロバスト性は実施例1の方が高い。本実施例において、実施例2で示すようなパルスバルブ30を取り入れても構わない。また、実施例4で示すようにバイアル瓶をポンプを用いずに真空チャンバー5側から減圧しても構わない。実施例1で示したバイアル瓶1を加熱するためのヒータ14は本実施例でも適用可能である。
【実施例6】
【0042】
図13は本発明の質量分析装置の一実施例を示す構成図である。イオン化室3にエレクトロスプレーイオン化用プローブ60を挿入する。高圧電源52が接続されたエレクトロスプレーイオン化用プローブ60とイオン化室3内に設けた対向電極40との間に1-10 kVの電位差を作る。溶液を送るためのポンプ70が接続されたエレクトロスプレーイオン化用プローブ60から溶液を噴き出すことで帯電液滴を発生させる。チューブ13により噴霧されたヘッドスペースガス中の分子が帯電液滴と衝突し、イオンが発生する。イオンは、イオン化室3と真空チャンバー5との圧力差によって真空チャンバー5へと導入される。エレクトロスプレーイオン化法では、バリア放電やグロー放電イオン化法に比べ多価イオンが発生しやすい。このため、高質量イオンを質量分析しやすい。本手法では、イオン化室3の圧力が低すぎると帯電液滴が周囲の気体から熱エネルギーをもらえず、帯電液滴が分裂・気化できなくなりイオン化効率が低下する。このため、イオン化効率とイオンの真空チャンバー5への導入効率を共に高いレベルに維持できるイオン化室3圧とする。具体的には100-5000 Paが良好である。
【0043】
帯電液滴を発生させるための溶液をエレクトロスプレーイオン化用プローブ60に送り込むためのポンプ70が必要になり構造が煩雑になる。また、安定的に帯電液滴を発生されるためには、エレクトロスプレーイオン化用プローブ60の噴出口の同心円状に窒素のような不活性ガスを補助ガスとして導入するとよい。図13ではエレクトロスプレーイオン化用プローブ60がチューブ13に対して垂直に位置しているが、感度が最大となるように位置関係は調節してよい。
【0044】
実施例1で示したバイアル瓶1を加熱するためのヒータ14や実施例2で示したパルスバルブ30は本実施例でも適用可能である。
【実施例7】
【0045】
図14は本発明の質量分析装置の一実施例を示す構成図である。本実施例ではイオン化室3の外部からレーザ102を照射し、レーザイオン化法によってサンプルをイオン化する。サンプルの吸収波長に近い波長のレーザを用いるとイオン化効率が高まる。一方でレーザ用の光源101や光学系が必要になり、装置全体の構成が煩雑になる。また、レーザ102の照射位置等を精密に調整する必要がある.
実施例1で示したバイアル瓶1を加熱するためのヒータ14や実施例2で示したパルスバルブ30は本実施例でも適用可能である。
【実施例8】
【0046】
図15は本発明の質量分析装置の一実施例を示す構成図である。本実施例では、金属フィラメント74により熱電子を発生させ、電源54に接続された引き出し電極75によって50-100 eVまで電子を加速させた状態で試料ガスに衝突させることで試料をイオン化する電子イオン化法(Electron ionization: EI)を用いる。生成されたイオンは電源55に接続されたイオン加速レンズ76による電界で質量分析部へと運ばれる。EIでは小型のEI用のDC電源53のみで実現できるため装置を小型化しやすい。一方で、イオン化の際に分子をフラグメンテーションさせやすく、スペクトルが煩雑になり解析を難しくする。
【0047】
実施例1で示したバイアル瓶1を加熱するためのヒータ14や実施例2で示したパルスバルブ30は本実施例でも適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…バイアル瓶、2…バイアル瓶用ポンプ、3…イオン化室、4…真空チャンバー用ポンプ、5…真空チャンバー、7…サンプル、8…第一放電電極、9…第二放電電極、10…放電プラズマ、11…細孔、12…質量分析部、13…チューブ、14…ヒータ20…真空チャンバー用圧力計、21…バイアル瓶用圧力計、30…パルスバルブ、40…対向電極、50…制限抵抗、51…電源、52…高圧電源、53…EI用電源、54…引き出し電極用電源、55…イオン加速レンズ用電源、60…エレクトロスプレー用プローブ、70…送液用ポンプ、74…EI用フィラメント、75…引き出し電極、76…イオン加速レンズ、101…レーザ光源、102…レーザ
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析装置及びその動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌や大気の汚染の測定、食品の農薬検査、血中代謝物による診断、尿中薬物検査など、混合試料中の微量物質をその場で簡便に、高感度に測定する装置が求められている。微量物質の高感度測定が可能な方法の一つとして、質量分析が用いられている。
【0003】
質量分析装置では、イオン源において物質を気相のイオンとし、これを真空部に導入して質量分離を行う。質量分析装置の高感度化のためには、イオン源、質量分析部、検出器の改良のほかに、サンプルを効率的にイオン源に輸送するためのサンプル導入部の改良が重要な点である。
【0004】
サンプルをガスクロマトグラフや質量分析装置にガス状態で導入する手法では、ヘッドスペース法が一般的である。ヘッドスペース法には、スタティックヘッドスペース法とダイナミックヘッドスペース法が存在する(非特許文献1)。
【0005】
スタティックヘッドスペース法は、サンプルをバイアルなどに一定の空間を残すように注入して密閉し、一定温度で気液平衡に達するまで放置後、気相中に存在するガス、すなわちヘッドスペースガスをシリンジで採取して分析する手法である。サンプル溶液の溶媒の影響が少なく、サンプル溶液中の微量の揮発性物質を定量できる方法である。サンプル溶液を高温に過熱する方法や、塩を試料液に添加して塩析効果により気化を促進するなどして、ヘッドスペースガス中のサンプルガス濃度を上昇させることができる。
【0006】
ダイナミックヘッドスペース法では、サンプルを注入したバイアルにヘリウムや窒素などの不活性ガスを導入しサンプルガスを押し出す手法である。不活性ガスは、バイアルの気相中に導入する場合と液相中に導入してサンプルをパージする場合がある。液相にガスを導入すると、気泡が発生することで気液界面の表面積が増加し、より気化が促進される。
【0007】
スタティックヘッドスペース法、ダイナミックヘッドスペース法共に、ヘッドスペースガスを吸着剤で捕集することで濃縮する手法も提案されている。
【0008】
バイアル瓶内のヘッドスペース部から効率的にガスを抽出方法も提案されている(特許文献1)。バイアル瓶とイオン源を接続する配管のイオン源側末端をベンチュリ効果により減圧することでヘッドスペースガスを吸引し、その後大気圧化学イオン化によりイオン化している。
【0009】
サンプルの気化を促進するために、サンプル溶液を微小液滴化するデバイスも提案されている(特許文献2)。サンプル溶液を0.4 nL程度の微小液滴として容器に吐出することで、気液界面の表面積が増加し迅速な気液平衡が実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US5869334
【特許文献2】特開2011-27557
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】TrAC Trends in Analytical Chemistry, 21 (2002) 608-617
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
非特許文献1に記載される従来のヘッドスペース法だけでなく、特許文献1、2に記載される特殊なヘッドスペース法においてもその問題点は,ヘッドスペースガス中のサンプルガス密度はサンプルの飽和蒸気圧に依存する点である。バイアル瓶にサンプル溶液を入れ、長時間放置したり不活性ガスを導入したりしたとしても、ヘッドスペースガス中のサンプルガス量は飽和蒸気圧以上には増加できない。水の場合、飽和蒸気圧は25℃で約3000 Paである。上記のヘッドスペース法では、ヘッドスペース部の圧力は大気圧近傍もしくは大気圧以上に加圧されている。例えば大気圧約100,000 Paにおける分圧比で考えれば、気中の水分子の存在量は約3%である。溶液を加熱すると水及びサンプル分子の飽和蒸気圧を上昇させることができるが、加熱に必要な電力の問題や、加熱されたガスが配管のコールドスポットで結露してしまう等の問題が出てくる。
【0013】
吸着剤を用いてサンプルガスを捕集することで、サンプルを濃縮することができるが、再び吸着剤からサンプルを脱離させるプロセスが必要になる等、操作が煩雑でスループットも悪い。
【課題を解決するための手段】
【0014】
サンプルを保持した試料容器の内部を減圧することにより、ヘッドスペースガス中におけるサンプル密度を上昇させ、サンプルを効率的にイオン化する。
【0015】
質量分析装置の一例を挙げるならば、試料を封入する試料容器と、試料容器と接続され、試料容器内に存在する試料ガスを取り込んでイオン化するイオン源を備え、試料容器内圧以下であるイオン化室と、イオン化室と接続されイオン化された試料を分析する質量分析部を有する真空チャンバーと、試料容器内を減圧する手段とを有することを特徴とする。
【0016】
また、質量分析方法の一例を挙げるならば、試料を封入した試料容器と、試料容器と接続され試料をイオン化するイオン源を備えたイオン化室と、イオン化室と接続されイオン化された試料を分析する質量分析部を有する真空チャンバーとを用い、真空チャンバーの圧力を減圧する工程と、試料容器の圧力を減圧する工程と、試料容器内に存在する試料ガスをイオン化室内に取り込んでイオン化する工程と、イオン化された試料を質量分析部において分析する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、サンプルを効率的にイオン化でき、かつキャリーオーバーの少ない質量分析装置及び方法が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の装置構成図
【図2】実施例1の放電電極構成
【図3】実施例1の測定フロー
【図4】実施例1のシステム構成図
【図5】実施例1の装置構成図2
【図6】実施例2の装置構成図
【図7】実施例2の装置構成図2
【図8】マススペクトル
【図9】実施例3の装置構成図
【図10】実施例4の装置構成図
【図11】実施例4の測定フロー
【図12】実施例5の装置構成図
【図13】実施例6の装置構成図
【図14】実施例7の装置構成図
【図15】実施例8の装置構成図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0019】
図1は本発明の質量分析装置の一実施例を示す構成図である。本装置は主にサンプル7を保持するためのバイアル瓶1、バイアル瓶を減圧するポンプ2、加えてガラス、プラスチック、セラミック、樹脂などの誘電体で形成されたイオン化室3と真空ポンプ4により0.1 Pa以下に維持された真空チャンバー5で構成されている。典型的なイオン化室3は外径4 mm程度、内径1〜4 mm程度の管である。図1中でバイアル瓶1とイオン化室3は配管で接続されているが、後述するような圧力条件を保てるのであれば配管ではなくオリフィスを介して接続してもよい。
【0020】
サンプル7は液体でも固体でも構わない。バイアル瓶1の内部はポンプ2によって減圧される。真空チャンバー5は0.1 Pa以下に維持されており、イオン化室3の圧力はポンプ4の排気速度、細孔11のコンダクタンス、バイアル瓶1とイオン化室3を繋ぐチューブ13のコンダクタンス及びバイアル瓶1内の圧力により決定される。ただし、イオン化室3の圧力はバイアル瓶1圧以下であり、ヘッドスペースガスはバイアル瓶1からイオン化室3へと流入する。イオン化室3の圧力が真空チャンバー5の圧力に近いほど、イオンがイオン化室3から真空チャンバー5へ導入される際のロスは減少する。このため、大気圧下でイオン化するよりも減圧下でイオン化すると装置の感度が向上する。本実施例では、イオン化室3内でバリア放電によるプラズマ10を発生させる。プラズマ10によって生じた荷電粒子と水分子との反応を介し、サンプル分子をイオン化している。プラズマ10が安定的に発生する圧力範囲が存在し、典型的な値は100〜5000 Paである。また効率的にイオン化できる圧力範囲は500〜3000 Paであり、それ以下の圧力だとイオンのフラグメンテーションが強くなる。また、1 Pa以下ではプラズマ10が発生しない。3000 Pa以上でもプラズマ10が発生しづらくなり、イオン化効率が低下する。
【0021】
サンプルの飽和蒸気圧は周囲の圧力に依存しないため、バイアル瓶1内の圧力を減少させるほどサンプルの分圧が高まることになる。たとえば、サンプルの蒸気圧が10 Paで一定だと仮定する。バイアル瓶1の内圧が大気圧100,000 Paである時、ヘッドスペースガス中に占めるサンプル割合は0.01%である。バイアル瓶1の内圧を50,000 Paにまで減圧すれば、サンプル割合は0.02%、5,000 Paにまで減圧すれば0.2%である。このように理論的には、バイアル瓶1の内圧を20分の1にするとヘッドスペースガス中のサンプルガス割合が20倍になる。イオン化室3の圧力及び真空チャンバー5の圧力を一定とした場合、バイアル瓶1の内圧によらず、真空チャンバー5内に導入されるヘッドスペースガスの流量は変化しない。よって、上述したようにバイアル瓶1内圧を減少させるほどヘッドスペースガス中のサンプルガス割合が上昇することは、真空チャンバー5に導入されるサンプルガス量の増大を意味し、装置感度が上昇する。
【0022】
バイアル瓶1内の圧力を50,000、30,000、10,000 Paと減圧していけば、約2倍, 3.5倍, 10 倍と導入されるサンプルガス量が増大し、同濃度のサンプルで計測されるマススペクトルのピーク強度が大きくなるが、減圧の程度が大きくなるほどバイアル瓶1に求められる密閉度が厳しくなる。これはバイアル瓶1のコスト上昇に繋がる。加えて、大きく減圧するためには排気量の大きなポンプを接続する必要があり、コスト高及び重量の上昇に繋がる。上記の問題点と感度向上のバランスを考えて装置を設計する必要がある。
【0023】
また、蒸発速度は気体の拡散速度に比例し、気体の拡散速度は圧力に反比例する。よって、圧力を減少させるほど蒸発速度が上昇し、サンプルが飽和蒸気圧にまで達する時間が短くなる。しかし、サンプルが液体の場合突沸してしまうため、その液体の飽和蒸気圧以下までにはヘッドスペース部を減圧することはできない。
【0024】
イオン化室に第一放電電極8と第二放電電極9を配置し、それらの間に電圧を印加することにより誘電体バリア放電が発生させ、プラズマ10が生成される。プラズマ10によって荷電粒子が発生し、それを基に水クラスターイオンが発生、そして水クラスターイオンと試料ガスのイオン分子反応により試料7がイオン化される。これは、フラグメンテーションの多いEIイオン源と比べ、本手法は放電プラズマを利用したソフトイオン化であり、試料イオンのフラグメンテーションが少ない。フラグメンテーションを意図的に起こしたい場合は、後述するように放電電極に加える電力を大きくすればよい。放電プラズマ10により発生した試料イオンは細孔11を通って真空チャンバー5へと導入される。真空チャンバー内5には質量分析部12と検出器6が設置されている。導入されたイオンは四重極質量フィルター、イオントラップ、飛行時間型質量分析計など質量分析部12でm/zごとに分離されて、電子増倍管などの検出器6で検出される。
【0025】
典型的な第一放電電極8と第二放電電極9の距離は5 mm程度であり、放電電極間距離が長くなるほど放電に必要な電力は高くなる。例えば、放電電極の片方に電源51から交流電圧が印加され、もう片方の放電電極にはDC電圧が印加されるようにする。印加される交流電圧は矩形波でも正弦波でもよい。印加電圧は0.5〜10 kV、周波数は1〜100 kHz程度が典型例である。同じ電圧振幅なら矩形波を用いた方がプラズマ10の密度が高くなる。一方、正弦波では周波数が高い場合にコイルによって電圧を昇圧できるため、矩形波を用いる場合よりも電源51が安価になるという利点がある。電圧と周波数が高いほど投入電力が高くなるのでプラズマ10の密度は高くなりやすいが、投入電力が高すぎるとプラズマ温度が高くなりフラグメンテーションが起こりやすくなる。交流電圧の周波数や電圧を試料や測定対象イオンごとに変えてもよい。例えば無機物イオンのようにフラグメンテーションしにくい分子を測定する場合や意図的に対象イオンをフラグメンテーションさせてフラグメントイオンを測定した場合には投入電力を高くし、フラグメンテーションし易い分子を測定する場合は投入電力を低くする等である。また、必要時のみ放電電極に電圧を印加するようにスイッチングすれば電源51の消費電力を低減することができる。
【0026】
放電電極の配置は誘電体を介して放電するのであれば様々に変更できる。図2に筒を横から見た図と断面図を示す。図2(A)は図1に示した放電電極の配置であり円筒電極を2つ用いている。図2(B)のように平面形状の電極を用いてもよい。図2(C)のように電極の片方を誘電体内部に挿入してもよい。電極の数も2つに限られず、3つ、4つと増やしてもよい。
【0027】
誘電体バリア放電では、水クラスターイオンとのイオン分子反応によってサンプルがイオン化する。このため、水クラスターイオンの増加はサンプルイオンの増加に繋がる。ここで、サンプルが水溶液である場合を考える。水の飽和蒸気圧は25℃で約3000 Paである。通常、大気の約80%が窒素である。しかし、例えばバイアル瓶1圧をポンプで5000 Paまで減圧した場合、ヘッドスペース部の約60%が水分子となる。水分子の割合が上昇することによりイオン化室3内での水クラスターイオンの発生量が増加し、それがサンプルのイオン化効率を上昇させる。
【0028】
ヘッドスペース法を用いた質量分析で常に問題となってくるのがサンプルのキャリーオーバーである。サンプルを交換する度に配管の洗浄や交換を行っているとスループットが悪くなる。バイアル瓶1圧を減圧することで、イオン化室3や真空チャンバー5の圧力を最適値に維持するために必要な配管コンダクタンスを減少し、配管の内径を大きくすることができる。これにより、サンプルの吸着が低減されキャリーオーバーを抑えられる。上述したように、減圧することによって蒸発速度が高まる。これは配管に吸着してしまった分子が素早く取り除かれていくことを意味し、キャリーオーバーを低減する。
【0029】
図3に典型的な計測ワークフローを示した。まず、装置の電源を入れ、その後ポンプによって真空チャンバーを減圧する。この段階ではイオン化室は大気圧である外部と接続されている。サンプルをバイアル瓶に入れ密閉する。バイアル瓶内の圧力をポンプによって減圧後、装置にセットするとよい。減圧されたバイアル瓶がセットされることによりイオン化室3及び真空チャンバー5がより減圧される。上述したように、計測にあたって真空チャンバーは0.1 Pa以下、イオン化室3は500〜3000 Paにする必要があり、減圧したバイアル瓶1をセットした状態でそれらの圧力になるように真空系を設計する必要がある。バイアル瓶1をセットした後にバリア放電の電源を入れサンプルをイオン化及び質量分析を行う。計測後、サンプルの入ったバイアル瓶1を外し、キャリーオーバーが無いことを確認するためにサンプルの入っていないバイアル瓶1をセットする。キャリーオーバーが無ければ、次のサンプルの計測に移行する。キャリーオーバーが存在する場合、イオン化室3の洗浄が必要になる。
【0030】
室温ではサンプルの蒸気圧が低すぎる場合は、図5に示すようにバイアル瓶1にヒータ14を取り付けて加熱し、蒸気圧を上昇させる。この場合、加熱しない場合に比べて減圧できるバイアル瓶1内圧の下限が上昇する。例えば、60℃まで加熱した場合、水の飽和蒸気圧は約20,000 Paであるためバイアル瓶圧を20,000 Pa以下には減圧することはできない。
【0031】
図4は装置のシステム構成図である。システムはコンピュータ100によって制御する。バイアル瓶及び真空チャンバーに取り付けた圧力計20、21によって圧力を計測しながら、ポンプ2、4によって圧力をコントロールする。図3に示す計測フローにしたがい、操作手順をモニタ画面102に出力する。バイアル瓶1を装置にセット後、イオン源の電源を入れ、イオン化及び計測を開始する。質量分析の結果はコンピュータ100に取り込まれ、必要な解析結果をモニタ画面102に出力する。
【実施例2】
【0032】
図6は本発明の質量分析装置の一実施例を示す構成図である。プラズマ10の圧力条件と電源51の出力電圧も実施例1と同様である。実施例1と異なり、イオン化室3とバイアル瓶1の間にパルスバルブ30を導入し、間欠的にガスをイオン化室1に導入する。ガスを導入する時に一時的にイオン化室3の圧力が増加し、パルスバルブ30が閉じるとイオン化室3の圧力が低下する。このため、実施例1のガス連続導入系と比べ、細孔11の内径を大きくして真空チャンバー5に導入される流量を増加させても、パルスバルブ30が閉じた後は真空チャンバー5内の圧力を0.1 Pa以下に維持することができる。パルスバルブ30が閉じている間はヘッドスペースガスがイオン化室3に流れていかないため、ガスのイオン化室3での滞留時間が短くなり吸着が低減される。連続導入系と真空チャンバー5へのガス導入量が同じであれば、排気速度の低いより小型のポンプを用いることができる。イオン源の圧力及びチャンバー圧は配管のコンダクタンス及びバルブ開時間によって制御できる。また、イオンを質量分析部12にトラップした状態でパルスバルブ30を再度開くことで真空チャンバー5内圧を衝突誘起解離が効率的に発生する圧力まで上昇させることができる。すなわち、パルスバルブ30が存在することで真空チャンバー5内の圧力を簡便に調節することができる。実施例1と比較して一時的とはいえ、バルブ開閉によって真空チャンバー5内の圧力が上昇するためポンプ4に負担がかかりポンプ4の交換頻度が高まる。また、パルスバルブ30をコントロールする回路や電源が必要になり実施例1に比べ構成が煩雑である。
【0033】
計測フローは実施例1とほぼ同様である。減圧したバイアル瓶1を装置にセット後、バリア放電の電源を入れ、パルスバルブ30を開閉することでヘッドスペースガスをイオン化室に導入する。
【0034】
実施例2の構成で、メトキシフェナミン(MP)を1 ppmの濃度で60% K2CO3水溶液に溶かし、計測した結果を図8に示す。図8(A)はバイアル瓶を25000 Pa程度まで減圧した場合、(B)はバイアル瓶を減圧しなかった場合の結果である。どちらの場合もm/z 180の位置にMPの[M+H]+が確認できたが、ピーク強度はバイアル瓶を減圧した場合の方が約4倍大きかった。
【0035】
図7に示すように、イオン化室3にポンプ2を接続し、パルスバルブ30をイオン化室3と真空チャンバー5の間に設置することも可能である。この場合、パルスバルブ30が閉状態の間、ヘッドスペースガスはバイアル瓶1から常時イオン化室3へと流入している。パルスバルブ30を開状態とした時にサンプルをイオン化し、生成したイオンを真空チャンバー5に導入する。チューブ13を無くし、バイアル瓶1とイオン化室3を直接接続してもよい。
【0036】
実施例1で示したバイアル瓶1を加熱するためのヒータ14は本実施例でも適用可能である。
【実施例3】
【0037】
図9は本発明の質量分析装置の一実施例を示す構成図である。プラズマ10の圧力条件と電源51の出力電圧も実施例1と同様である。実施例1、2と異なり、バイアル瓶用ポンプ2をバイアル瓶1ではなくチューブ13に接続している。実施例1、2と同様にバイアル瓶1は減圧され、サンプルのヘッドスペースガス中の割合が高まる。バイアル瓶1に接続される配管が一本に減少するため、バイアル瓶1の構成が簡略化されコストダウンが期待できる。一方で、チューブ13内を新鮮なガスが常時流れ続けるため吸着が激しくなるという欠点がある。
【0038】
実施例1で示したバイアル瓶1を加熱するためのヒータ14は本実施例でも適用可能である。
【実施例4】
【0039】
図10は本発明の質量分析装置の一実施例を示す構成図である。プラズマ10の圧力条件と電源51の出力電圧も実施例1と同様である。実施例1,2とは異なり、バイアル瓶1にポンプを接続していない。実施例4の計測フローを図11に示す。バイアル瓶1にサンプルを注入して密閉するまでは実施例1,2と同様である。実施例4では、ポンプでバイアル瓶1を減圧せず、内圧が大気圧のまま装置へセットする。その後、パルスバルブ30を一定時間開け続ける、もしくはパルス的に何度も開閉することで、真空チャンバー5側からバイアル瓶1を減圧する。真空チャンバー5に取り付けた圧力計の数値からバイアル瓶1の圧力を推定することができる。サンプル溶液から発生する流量とポンプの排気量が釣り合ったところで、圧力が一定になる。サンプル溶液から発生する流量は溶液の温度に依存するため、一定になる圧力は溶液の温度で調整する。圧力一定後、バリア放電の電源を入れ、質量分析を開始する。
【0040】
実施例1,2と比較して、バイアル瓶1を減圧するためのポンプ、配管が必要ないため、装置が小型化する。また、バイアル瓶1を減圧してから装置にセットするという工程もなくなり計測者自身で行う計測フローが単純化する。しかし、バイアル瓶1内が大気圧の状態で装置にセットしてパルスバルブ30を開閉するため、大流量のヘッドスペースガスが真空チャンバー5に導入され、ポンプを痛める可能性がある。また、大量のガスによってイオン化室3が汚染される可能性もある。
【実施例5】
【0041】
図12は本発明の質量分析装置の一実施例を示す構成図である。プラズマ10の圧力条件も実施例1と同様である。実施例1〜3と異なり、2つの放電電極をイオン化室内3に配置し、電極間にDC電圧を印加することで誘電体を介さないグロー放電を発生させ、それによりプラズマ10を生じさせる。また、電極と電源51の間に制限抵抗50を入れることで電流を制限し放電をソフトにする。誘電体を介する放電の場合は、交流電圧を印加する必要があるが、誘電体を介さないグロー放電の場合、DC電圧を印加すればよく電源の設計が簡単である。一方、電極がイオン化室3内部にあるため汚染される可能性があり、ロバスト性は実施例1の方が高い。本実施例において、実施例2で示すようなパルスバルブ30を取り入れても構わない。また、実施例4で示すようにバイアル瓶をポンプを用いずに真空チャンバー5側から減圧しても構わない。実施例1で示したバイアル瓶1を加熱するためのヒータ14は本実施例でも適用可能である。
【実施例6】
【0042】
図13は本発明の質量分析装置の一実施例を示す構成図である。イオン化室3にエレクトロスプレーイオン化用プローブ60を挿入する。高圧電源52が接続されたエレクトロスプレーイオン化用プローブ60とイオン化室3内に設けた対向電極40との間に1-10 kVの電位差を作る。溶液を送るためのポンプ70が接続されたエレクトロスプレーイオン化用プローブ60から溶液を噴き出すことで帯電液滴を発生させる。チューブ13により噴霧されたヘッドスペースガス中の分子が帯電液滴と衝突し、イオンが発生する。イオンは、イオン化室3と真空チャンバー5との圧力差によって真空チャンバー5へと導入される。エレクトロスプレーイオン化法では、バリア放電やグロー放電イオン化法に比べ多価イオンが発生しやすい。このため、高質量イオンを質量分析しやすい。本手法では、イオン化室3の圧力が低すぎると帯電液滴が周囲の気体から熱エネルギーをもらえず、帯電液滴が分裂・気化できなくなりイオン化効率が低下する。このため、イオン化効率とイオンの真空チャンバー5への導入効率を共に高いレベルに維持できるイオン化室3圧とする。具体的には100-5000 Paが良好である。
【0043】
帯電液滴を発生させるための溶液をエレクトロスプレーイオン化用プローブ60に送り込むためのポンプ70が必要になり構造が煩雑になる。また、安定的に帯電液滴を発生されるためには、エレクトロスプレーイオン化用プローブ60の噴出口の同心円状に窒素のような不活性ガスを補助ガスとして導入するとよい。図13ではエレクトロスプレーイオン化用プローブ60がチューブ13に対して垂直に位置しているが、感度が最大となるように位置関係は調節してよい。
【0044】
実施例1で示したバイアル瓶1を加熱するためのヒータ14や実施例2で示したパルスバルブ30は本実施例でも適用可能である。
【実施例7】
【0045】
図14は本発明の質量分析装置の一実施例を示す構成図である。本実施例ではイオン化室3の外部からレーザ102を照射し、レーザイオン化法によってサンプルをイオン化する。サンプルの吸収波長に近い波長のレーザを用いるとイオン化効率が高まる。一方でレーザ用の光源101や光学系が必要になり、装置全体の構成が煩雑になる。また、レーザ102の照射位置等を精密に調整する必要がある.
実施例1で示したバイアル瓶1を加熱するためのヒータ14や実施例2で示したパルスバルブ30は本実施例でも適用可能である。
【実施例8】
【0046】
図15は本発明の質量分析装置の一実施例を示す構成図である。本実施例では、金属フィラメント74により熱電子を発生させ、電源54に接続された引き出し電極75によって50-100 eVまで電子を加速させた状態で試料ガスに衝突させることで試料をイオン化する電子イオン化法(Electron ionization: EI)を用いる。生成されたイオンは電源55に接続されたイオン加速レンズ76による電界で質量分析部へと運ばれる。EIでは小型のEI用のDC電源53のみで実現できるため装置を小型化しやすい。一方で、イオン化の際に分子をフラグメンテーションさせやすく、スペクトルが煩雑になり解析を難しくする。
【0047】
実施例1で示したバイアル瓶1を加熱するためのヒータ14や実施例2で示したパルスバルブ30は本実施例でも適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…バイアル瓶、2…バイアル瓶用ポンプ、3…イオン化室、4…真空チャンバー用ポンプ、5…真空チャンバー、7…サンプル、8…第一放電電極、9…第二放電電極、10…放電プラズマ、11…細孔、12…質量分析部、13…チューブ、14…ヒータ20…真空チャンバー用圧力計、21…バイアル瓶用圧力計、30…パルスバルブ、40…対向電極、50…制限抵抗、51…電源、52…高圧電源、53…EI用電源、54…引き出し電極用電源、55…イオン加速レンズ用電源、60…エレクトロスプレー用プローブ、70…送液用ポンプ、74…EI用フィラメント、75…引き出し電極、76…イオン加速レンズ、101…レーザ光源、102…レーザ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を封入する試料容器と、
前記試料容器と接続され、前記試料容器内に存在する試料ガスを取り込んでイオン化するイオン源を備え、前記試料容器内圧以下であるイオン化室と、
前記イオン化室と接続され、イオン化された試料を分析する質量分析部を有する真空チャンバーと、
前記試料容器内を減圧する手段とを有することを特徴とする質量分析装置。
【請求項2】
前記試料容器内を減圧する手段は、前記試料容器に接続されたポンプであることを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
【請求項3】
前記試料容器内を減圧する手段は、前記真空チャンバーに接続されたポンプであることを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の質量分析装置において、前記試料容器内を減圧する手段は、前記試料容器を50,000 Pa以下まで減圧することを特徴とする質量分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載の質量分析装置において、前記試料容器内を減圧する手段は、前記試料容器を30,000 Pa以下まで減圧することを特徴とする質量分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の質量分析装置において、前記試料容器内を減圧する手段は、前記試料容器を10,000 Pa以下まで減圧することを特徴とする質量分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の質量分析装置において、前記試料容器を加熱する手段を有することを特徴とする質量分析装置。
【請求項8】
試料ガスの導入を制御する開閉機構を、前記試料容器と前記真空チャンバーの間に備えることを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項9】
前記試料容器と前記イオン化室は配管で接続され、前記試料容器内を減圧する手段は、前記配管に接続されたポンプであることを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
【請求項10】
前記イオン源は、誘電体で形成される前記イオン化室の一部を挟んで設けられた電極対と電源とで形成され、前記電極対に電圧を印加することにより発生する誘電体バリア放電により放電プラズマを発生させてイオンを生成することを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項11】
前記イオン源は、前記イオン化室の内部に設けられた電極対と電源とで形成され、前記電極対に電圧を印加することにより発生するグロー放電により放電プラズマを発生させてイオンを生成することを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項12】
前記イオン源は、エレクトロスプレーイオン化用プローブと、溶液ポンプを備え、前記エレクトロスプレーイオン化用プローブを用いて前記溶液ポンプにより供給される溶液をイオン化することによりイオンを生成することを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項13】
前記イオン源に導入された試料ガスに対し光を照射することにより試料をイオン化することを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項14】
前記イオン源は、熱電子を発生させるための金属フィラメントと熱電子を加速するための電極を備え、前記熱電子を試料ガスに衝突させることで試料イオンを発生させることを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項15】
試料を封入した試料容器と、前記試料容器と接続され前記試料をイオン化するイオン源を備えたイオン化室と、前記イオン化室と接続されイオン化された試料を分析する質量分析部を有する真空チャンバーとを用いた質量分析方法であって、
前記真空チャンバーの圧力を減圧する工程と、
前記試料容器の圧力を減圧する工程と、
前記試料容器内に存在する試料ガスを前記イオン化室内に取り込んでイオン化する工程と、
前記イオン化された試料を前記質量分析部において分析する工程とを有することを特徴とする質量分析方法。
【請求項16】
前記試料容器の圧力を減圧する工程は、前記試料容器に接続されたポンプにより減圧することを特徴とする請求項15に記載の質量分析方法。
【請求項17】
前記試料容器と前記真空チャンバーの間に設けられた前記試料の導入を制御する開閉機構をさらに用い、前記開閉機構を閉の状態で前記真空チャンバーの圧力を減圧する工程を行い、前記開閉機構を閉から開の状態にして、前記試料容器の圧力を減圧する工程を行うことを特徴とする請求項15に記載の質量分析方法。
【請求項1】
試料を封入する試料容器と、
前記試料容器と接続され、前記試料容器内に存在する試料ガスを取り込んでイオン化するイオン源を備え、前記試料容器内圧以下であるイオン化室と、
前記イオン化室と接続され、イオン化された試料を分析する質量分析部を有する真空チャンバーと、
前記試料容器内を減圧する手段とを有することを特徴とする質量分析装置。
【請求項2】
前記試料容器内を減圧する手段は、前記試料容器に接続されたポンプであることを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
【請求項3】
前記試料容器内を減圧する手段は、前記真空チャンバーに接続されたポンプであることを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の質量分析装置において、前記試料容器内を減圧する手段は、前記試料容器を50,000 Pa以下まで減圧することを特徴とする質量分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載の質量分析装置において、前記試料容器内を減圧する手段は、前記試料容器を30,000 Pa以下まで減圧することを特徴とする質量分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の質量分析装置において、前記試料容器内を減圧する手段は、前記試料容器を10,000 Pa以下まで減圧することを特徴とする質量分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の質量分析装置において、前記試料容器を加熱する手段を有することを特徴とする質量分析装置。
【請求項8】
試料ガスの導入を制御する開閉機構を、前記試料容器と前記真空チャンバーの間に備えることを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項9】
前記試料容器と前記イオン化室は配管で接続され、前記試料容器内を減圧する手段は、前記配管に接続されたポンプであることを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
【請求項10】
前記イオン源は、誘電体で形成される前記イオン化室の一部を挟んで設けられた電極対と電源とで形成され、前記電極対に電圧を印加することにより発生する誘電体バリア放電により放電プラズマを発生させてイオンを生成することを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項11】
前記イオン源は、前記イオン化室の内部に設けられた電極対と電源とで形成され、前記電極対に電圧を印加することにより発生するグロー放電により放電プラズマを発生させてイオンを生成することを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項12】
前記イオン源は、エレクトロスプレーイオン化用プローブと、溶液ポンプを備え、前記エレクトロスプレーイオン化用プローブを用いて前記溶液ポンプにより供給される溶液をイオン化することによりイオンを生成することを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項13】
前記イオン源に導入された試料ガスに対し光を照射することにより試料をイオン化することを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項14】
前記イオン源は、熱電子を発生させるための金属フィラメントと熱電子を加速するための電極を備え、前記熱電子を試料ガスに衝突させることで試料イオンを発生させることを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項15】
試料を封入した試料容器と、前記試料容器と接続され前記試料をイオン化するイオン源を備えたイオン化室と、前記イオン化室と接続されイオン化された試料を分析する質量分析部を有する真空チャンバーとを用いた質量分析方法であって、
前記真空チャンバーの圧力を減圧する工程と、
前記試料容器の圧力を減圧する工程と、
前記試料容器内に存在する試料ガスを前記イオン化室内に取り込んでイオン化する工程と、
前記イオン化された試料を前記質量分析部において分析する工程とを有することを特徴とする質量分析方法。
【請求項16】
前記試料容器の圧力を減圧する工程は、前記試料容器に接続されたポンプにより減圧することを特徴とする請求項15に記載の質量分析方法。
【請求項17】
前記試料容器と前記真空チャンバーの間に設けられた前記試料の導入を制御する開閉機構をさらに用い、前記開閉機構を閉の状態で前記真空チャンバーの圧力を減圧する工程を行い、前記開閉機構を閉から開の状態にして、前記試料容器の圧力を減圧する工程を行うことを特徴とする請求項15に記載の質量分析方法。
【図3】
【図11】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図11】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−45730(P2013−45730A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184266(P2011−184266)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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