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質量分析装置
説明

質量分析装置

【課題】分子量の大きな試料分子であってもCIDによる分解を行うことのできる質量分析装置を提供する。
【解決手段】試料をイオン化するイオン化部10、試料イオンを質量分離する質量分離部40、60、質量分離されたイオンを検出する検出部20、及び前記イオン化部10から質量分離部40,60を経て検出部20に至るまでのイオン経路上に設けられた衝突部(コリジョンセル)51を有する質量分析装置において、所定の原子又は分子のクラスターを生成するクラスター生成装置30を設け、該クラスター生成装置30によって生成されたクラスターを衝突部51に導入する。CIDにおける標的ガスとして質量数の大きなクラスターを用いることで、試料イオンの衝突エネルギーを効率よく該イオンの分解に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析装置に関し、特に分析対象であるイオンの解離分解及び発生した解離イオンの質量分析を行うことのできる質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、質量分析によって試料分子の構造情報を得るための手法として、MS/MS分析(又はMS分析)が知られている。一般的なMS/MS分析では、まず分析対象物から目的とする特定の質量電荷比を有するイオンを前駆イオン(親イオン)として選別し、その選別した前駆イオンを衝突誘起解離(Collision-Induced Dissociation:CID)によって分解する。その後、解離分解によって生成した解離イオン(娘イオン)を質量分析することで、そのマススペクトルから目的とするイオン(前駆イオン)の分子構造についての情報を得ることができる。
【0003】
CID法は、試料イオンを衝突部においてガス(標的ガス)と衝突させ、その衝突エネルギによって試料イオンを分解する手法である。MS/MS分析(又はMS分析)を行う装置としては、複数台の質量分析器を連結したものや、イオントラップによって特定イオンの捕捉と分解を行うもの等が知られており、前者においては各質量分析器の間に設けられたコリジョンセル(衝突室)が上記衝突部として用いられ、後者においてはイオントラップ内部の空間が衝突部として用いられる(特許文献1、特許文献2参照)。また、飛行時間型質量分析装置の場合には、フライトチューブ内の一部領域に衝突部が設けられる場合もある(特許文献3参照)。
【0004】
衝突部としてコリジョンセルを用いるものの場合、コリジョンセル内に標的ガスを導入し、試料イオンがコリジョンセル内を通過する間に該試料イオンと標的ガスとを衝突させて試料イオンを分解する。衝突部としてイオントラップを利用するものの場合は、イオントラップに標的ガスを導入し、イオントラップ内部に形成された電場によりその中心に集められた特定の質量数範囲にあるイオンと前記標的ガスとを衝突させることにより、イオンの分解を行う。また、フライトチューブ内の一部領域を衝突部とする場合は、該衝突部を試料イオンが通過する間にイオンと標的ガスとを衝突させ、これによりイオンの分解を行う。
【0005】
【特許文献1】米国特許第4234791号明細書
【特許文献2】特開2002−184349号公報
【特許文献3】米国特許第5202563号明細書
【非特許文献1】志田保夫ほか著「これならわかるマススペクトロメトリー」、化学同人、2001年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来のCIDによるイオンの分解を行う質量分析装置においては、衝突部に導入する標的ガスとして、アルゴンやヘリウム等の不活性ガス原子を用いるのが一般的である(非特許文献1参照)。しかし、このような不活性ガスを用いたCIDでは標的ガスの質量が小さいため、分子量5000Da程度以上の大きな分子を分離させることができず、このような分子の構造情報を得ることができなかった。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、分子量の大きな試料分子であってもCIDによる分解を行うことのできる質量分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る質量分析装置は、試料をイオン化するイオン化部、試料イオンを質量分離する質量分離部、及び質量分離されたイオンを検出する検出部を有する質量分析装置において、a)前記イオン化部から質量分離部を経て検出部に至るまでのイオン経路上に設けられた衝突部と、b)所定の原子又は分子のクラスターを生成するクラスター生成手段と、c)前記クラスターを前記衝突部に導入するクラスター導入手段とを有することを特徴とする。
【0009】
ここで、クラスターとは複数個の原子又は分子が弱い結合力で結合して成る集合体のことであり、その種類は特に限定されないが、典型的には、アルゴン等の希ガス原子を集合させて成る希ガスクラスターを用いることが望ましい。
【0010】
また、上記クラスター生成手段としては、断熱膨張法によりクラスターの生成を行う従来既知のクラスター生成装置等を好適に用いることができる。
【0011】
本発明における衝突部とは、CIDによるイオンの分解を行う領域であり、従来の質量分析装置において衝突部として用いられるものと同様の領域を本発明の衝突部とすることができる。例えば、従来より、複数台の質量分析器を連結し、各質量分析器の間にイオンと標的ガスとを衝突させるためのコリジョンセルを設けた空間型タンデム質量分析装置が知られている。このような質量分析装置に本発明を適用する場合には、前記コリジョンセルを本発明における衝突部とし、更に、クラスター生成手段及びクラスター導入手段を設けて該コリジョンセルにクラスターを導入する構成とする。また、イオントラップ型質量分析器等の一台の質量分析器でMS/MS分析又はMS分析を行う時間型タンデム質量分析装置の場合、通常、イオントラップ内部の空間に標的ガスを導入し、イオントラップ内に捕捉されたイオンと該標的ガスとを衝突させることでイオンの分解を行っている。このような質量分析装置に本発明を適用する場合には、該イオントラップを本発明における衝突部とし、更に、クラスター生成手段及びクラスター導入手段を設けて該イオントラップにクラスターを導入する構成とする。
【発明の効果】
【0012】
上記構成を有する本発明の質量分析装置は、CIDにおける標的ガスとして原子又は分子の集合体であるクラスターを使用するものであり、該クラスターは、従来の標的ガスよりもはるかに大きな質量数を持つため、入射した試料イオンの運動エネルギーを高い効率で該イオンの分解に用いることができる。これにより、従来の質量分析装置ではCIDによる分解を行うことができなかった比較的大きな分子であっても分解することができ、その構造情報を得ることができる。
【0013】
また、一般的にクラスターの結合エネルギーは通常の化学結合のエネルギーよりもはるかに小さいため、試料イオンと衝突することによってクラスターは質量数の小さい原子や分子に粉砕される。そのため、クラスターから生成した粒子が該試料イオンから得られる解離イオンスペクトル上の障害となるおそれは殆どない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、複数台の質量分析器を連結して成る空間型タンデム質量分析装置に本発明を適用した場合の構成例を示すものである。本実施例の質量分析装置は、質量分析器として四重極質量フィルタを用いたMS/MS型質量分析装置であり、イオン源10と、第1段四重極40、第2段四重極50、第3段四重極60という3段の四重極、及び検出器20が真空室(図示略)内に配設されている。また、第2段四重極50にはその周囲を覆うようにコリジョンセル51が設けられている。なお、これら各部の動作は、CPUを中心に構成される制御部(図示略)により制御される。
【0016】
コリジョンセル51にはクラスター生成装置30が付設されている。クラスター生成装置30は、ガス供給部31から供給された原子又は分子の気体を真空槽内で断熱膨張法により冷却させ、スキマー32によって切り出すことで、高強度のクラスタービームを生成する。生成されたクラスタービームは、クラスター導入孔52からコリジョンセル51内に導入される。
【0017】
イオン源10から発した各種イオンは、まず第1段四重極40に導入され、特定質量数を有する目的イオンのみが選択されて第1段四重極40を通過する(プリカーサ選択)。通過した目的イオンは前駆イオンとして第2段四重極50内に導入されるが、コリジョンセル51内にはクラスター生成装置30で生成された原子又は分子のクラスター(例えばアルゴンクラスター)が導入されており、イオンはこのコリジョンセル51内で該クラスターと衝突して分解する。生成された解離イオンは第3段四重極60に導入され、ここで特定質量数を有する解離イオンのみが選択されて通過し、検出器20に到達して検出される。
【実施例2】
【0018】
図2は、一台の質量分析器で目的イオンの捕捉・分解及び質量分析を行う時間型タンデム質量分析装置に本発明を適用する場合の構成例を示す概略図である。本実施例の時間型タンデム質量分析装置は、上記質量分析器としてイオントラップ型質量分析器を用いるものであり、イオン源10、イオントラップ70、検出器20、及びクラスター生成装置30が真空室(図示略)内に配設されている。イオントラップ70は、1つのリング電極71と2つの互いに対向するエンドキャップ電極72、73により構成されている。リング電極71には高周波高電圧が印加され、リング電極71と一対のエンドキャップ電極72、73とで囲まれる空間内に形成される四重極電場によってイオン捕捉空間74を形成し、そこにイオンを捕捉する。一方、エンドキャップ電極72、73にはそのときの分析モードに応じて適宜の補助交流電圧が印加される。また、イオントラップ70の内部には、イオン捕捉空間74に捕捉されているイオンの分解を促進するために、クラスター生成装置30で生成されたクラスターが導入され得るようになっている。なお、これらイオン源10、イオントラップ70、検出器20、クラスター生成装置30等の動作は、図示しない制御部により制御される。
【0019】
上記構成の質量分析装置では、イオン源10において試料がイオン化され、発生したイオンがイオントラップ70の内部に導入される。イオントラップ70では、リング電極71及びエンドキャップ電極72、73により形成される電場によってプリカーサ選択を行い、目的イオンをイオン捕捉空間74に捕捉する。その後にクラスター生成装置30で生成されたクラスターをイオン捕捉空間74に入射させ、前記目的イオンを共鳴励振によって加速して該クラスターに衝突させることによって該イオンを分解する。生成した解離イオンはイオントラップ70によって質量分離され、検出器20によって検出される。
【実施例3】
【0020】
図3は、本発明を空間型タンデム質量分析装置に適用した場合の別の構成例を示す概略図である。本実施例の空間型タンデム質量分析装置は、第1の質量分離部としてイオントラップ70を、第2の質量分離部として飛行時間型質量分析器(以下、TOFMS(=Time Of Flight Mass Spectrometer)という)80を用いるものであり、イオン源10、イオントラップ70、及びTOFMS80が真空室(図示略)内に配設され、更にイオントラップ70にはクラスター生成装置30が付設されている。これら各部の動作は、図示しない制御部により制御される。
【0021】
イオン源10から発した試料イオンは、イオントラップ70内部に導入される。イオントラップ70では、プリカーサ選択された目的イオンがトラップされると共に、クラスター生成装置30で生成されたクラスターがイオン捕捉空間74に導入され、CIDによるイオンの分解が行われる。続いて、十分に解離分解が行われた後に電極71、72、73へ印加する電圧が変更され、イオントラップ70内部にイオンを排出するような電場が形成されてイオンが放出される。イオントラップ70から出たイオンはTOFMS80の飛行空間81を飛行し、その質量電荷比に応じた飛行時間で以て検出器20に到達して検出される。このように、本実施例の空間型タンデム質量分析装置によれば、目的イオンの捕捉・分解をイオントラップ型質量分離器で、得られた解離イオンの質量分析をTOFMSで行うことにより、高分解能且つ高スループットな分析を実現することができる。
【0022】
以上のように、上記実施例1〜3に示す質量分析装置は、CIDの標的ガスとして、従来用いられる不活性ガス原子等に比べてはるかに大きな質量数を有するクラスターを使用するため、試料イオンの衝突エネルギーを効率よく該イオンの分解に用いることができる。従って、従来の質量分析装置では分解が困難だった分子量5000Da程度以上の大きな試料分子についてもCIDによる分解を行うことができ、得られた解離イオンのマススペクトルから該試料分子の分子構造を知ることが可能となる。
【0023】
以上、実施例を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の変更が許容されるものである。例えば、本発明を空間型タンデム質量分析装置に適用する場合の構成は、上記実施例1又は実施例3に示したものに限られず、3台以上の質量分析器を連結した構成としてもよい。また、本発明における質量分離部としては、上記実施例に示したもののほか、種々の質量分析器を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施例に係る空間型タンデム質量分析装置を示す概略構成図。
【図2】本発明の第2の実施例に係る時間型タンデム質量分析装置を示す概略構成図。
【図3】本発明の第3の実施例に係る空間型タンデム質量分析装置の変形例を示す概略構成図。
【符号の説明】
【0025】
10…イオン源
20…検出器
30…クラスター生成装置
31…ガス供給部
32…スキマー
40…第1段四重極
50…第2段四重極
51…コリジョンセル
52…クラスター導入孔
60…第3段四重極
70…イオントラップ
71…リング電極
72、73…エンドキャップ電極
74…イオン捕捉空間
75…クラスター導入孔
80…TOFMS
81…飛行空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料をイオン化するイオン化部、試料イオンを質量分離する質量分離部、及び質量分離されたイオンを検出する検出部を有する質量分析装置において、
a)前記イオン化部から質量分離部を経て検出部に至るまでのイオン経路上に設けられた衝突部と、
b)所定の原子又は分子のクラスターを生成するクラスター生成手段と、
c)前記クラスターを前記衝突部に導入するクラスター導入手段と、
を有することを特徴とする質量分析装置 。
【請求項2】
上記クラスター生成手段が、断熱膨張法によりクラスターの生成を行うものであることを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
【請求項3】
上記所定の原子又は分子が希ガス原子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の質量分析装置。
【請求項4】
上記衝突部がコリジョンセルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の質量分析装置 。
【請求項5】
上記衝突部がイオントラップであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の質量分析装置 。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−115434(P2007−115434A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303162(P2005−303162)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】