説明

質量分析装置

【課題】分析目的に応じて繰り返し質量分析の回数を減らして作業効率を高めるとともに検出感度も高め、必要な場合には高い空間分解能での詳細な2次元物質分布測定も可能とする。
【解決手段】試料15を載せた試料プレート14を載置する試料ステージ13をz軸方向に移動させる駆動機構13bを設け、照射径制御部31の制御の下に試料ステージ13を移動させてレーザ集光光学系22と試料15との間の距離を変化させることにより、試料15上でのレーザ照射径を変化させる。例えば、試料15中に局在するもののその位置が不明である目的物質の分布を調べたい場合に、まず大きなレーザ照射径で以て大きな走査ステップ幅で試料15全域をほぼ漏れなく走査し、目的物質が存在する位置をおおよそ見い出す。その後、レーザ照射径を縮小して、目的物質が存在すると推定される付近のみを小さなステップ幅で漏れなく走査して詳細な物質分布を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を試料に照射してイオン化を行うイオン源を備える質量分析装置、具体的には、レーザ脱離イオン化法(LDI=Laser Desorption /Ionization)やマトリクス支援レーザ脱離イオン化法(MALDI=Matrix Assisted Laser Desorption /Ionization)によるイオン源を備える質量分析装置に関し、さらに詳しくは、試料上の1次元又は2次元領域の質量分析を行うための質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ脱離イオン化法(LDI)は、試料にレーザ光を照射し、レーザ光を吸収した物質の内部で電荷の移動を促進させてイオン化を行うものである。また、マトリクス支援レーザ脱離イオン化法(MALDI)は、レーザ光を吸収しにくい試料やタンパク質などレーザ光で損傷を受けやすい試料を分析するために、レーザ光を吸収し易く且つイオン化し易い物質をマトリクスとして試料に予め混合しておき、これにレーザ光を照射することで試料をイオン化するものである。特にMALDIを用いた質量分析装置は、分子量の大きな高分子化合物をあまり開裂させることなく分析することが可能であり、しかも微量分析にも好適であることから、近年、生命科学などの分野で広範に利用されている。なお、本明細書では、LDIやMALDIによるイオン源を備える質量分析装置を総称して、LDI/MALDI−MSと記すこととする。
【0003】
上記LDI/MALDI−MSでは、照射レーザ光のスポット径を小さく絞り、その照射位置を試料上で相対的に移動させることにより、例えば試料上で或る質量数を持つイオンの強度分布(2次元物質分布)を表す画像を得ることができる。こうした装置は質量分析顕微鏡又は顕微質量分析装置として知られており、特に、生化学分野、医療分野等において、生体内細胞に含まれるタンパク質の分布情報を得るといった応用が期待されている(例えば非特許文献1、特許文献1など参照)。
【0004】
上記のような様々な利用分野において試料についての有用な知見を得るには、空間分解能が高いことが望ましい。従来一般に市販されているLDI/MALDI−MSでは、レーザ光の集束径は数百μm程度であるが、例えば非特許文献2などにはレーザ光の集束径を数十μm程度まで絞って分析を行うことが記載されている。さらに、非特許文献3などにはレーザ光の集光径を約0.5μmにまで絞り込み、数十μm程度の大きさの細胞内において物質分布像を取得した例もある。しかしながら、レーザ光の集光径を絞って空間分解能を高くした場合に、次のような問題がある。
【0005】
例えば、試料中の或る領域にのみ目的物質が局在している場合、その目的物質が存在する領域のみの詳細な分布画像を取得したい。ところが、目的物質が局在している部位が不明である場合には、試料の全体に亘って順番に質量分析を行っていって目的物質が存在する位置を見い出さなければならない。空間分解能が高いと1回の質量分析で以て分析可能な範囲はかなり狭いため、目的物質が存在する位置に行き当たるまでに多数回の質量分析を繰り返す可能性が高い。そのため、目的の分布画像を取得するまでの所要時間がかなり長くなるおそれがある。こうした問題を回避するために、質量分析を行う位置の間隔(つまり位置走査のステップ幅)を大きくして試料全域を粗く分析し、その結果に基づいて目的物質が存在する領域を推測した後にステップ幅を小さくして注目領域の分析を行う、という方法も考えられる。しかしながら、この方法では、目的物質の局在範囲が狭い場合に最初の粗い分析において見逃しが生じるおそれがある。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5808300号公報
【非特許文献1】内藤康秀、「生体試料を対象にした質量顕微鏡」、 J. Mass Spectrom. Soc. Jpn., Vol. 53, No. 3, 2005, pp. 125-132.
【非特許文献2】チャウランド(P. Chaurand)ほか3名、「プロファイリング・アンド・イメージング・プロテインズ・イン・ティッシュ・セクションズ・バイ・MS(Profiling and imaging proteins in tissue sections by MS)」、アナリティカル・ケミストリ(Analytical Chemistry)、2004, Vol.76, No.5, p.86A-93A
【非特許文献3】スペングラー(B. Spengler)ほか1名、「スキャンニング・マイクロプローブ・マトリクス−アシステッド・レーザ・デソープション・イオナイゼイション(SMALDI)・マス・スペクトロメトリー: インストゥルメンテイション・フォー・サブ−マイクロメータ・リソルブド・LDI・アンド・MALDI・サーフェイス・アナリシス(Scanning Microprobe Matrix-Assisted Laser Desorption Ionization (SMALDI) Mass Spectrometry: Instrumentation for Sub-Micrometer Resolved LDI and MALDI Surface Analysis)」、ジャーナル・オブ・アメリカン・ソサイエティ・フォー・マス・スペクトロメトリ(Jounal of American Society for Mass Spectrometry)、2002, Vol.13, No.6, p.735-748
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように一般的には空間分解能は高いことが望ましいが、場合によっては空間分解能が高いことによって質量分析範囲が狭いことが不利になる場合もあり得る。本発明はこうした点に鑑みて成されたものであり、その主な目的とするところは、分析目的等に応じて、必要な場合に高い空間分解能を達成しながら分析に要する時間を短縮化して分析作業を効率良く行うことができる質量分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る質量分析装置は、
a)試料に含まれる成分をイオン化するために該試料にレーザ光を照射するレーザ照射手段と、
b)前記レーザ照射手段による前記試料上のレーザ照射位置を1次元的又は2次元的に走査するための走査手段と、
c)前記試料上のレーザ照射面積を変化させる照射範囲調整手段と、
d)前記レーザ照射により試料から発生したイオンを質量分離して検出する質量分析手段と、
を備えることを特徴としている。
【0009】
本発明の一実施態様として、前記照射範囲調整手段は、前記レーザ照射手段に対する前記試料の位置を変化させることで照射面積を変化させる構成とすることができる。
【0010】
この構成において、照射範囲調整手段は、例えば試料を載置する又は保持する試料台をレーザ照射手段に近づける又は遠ざけるように移動させる手段である。一般にレーザ照射手段ではレーザ光は収束されるから完全な平行光線ではなく進行方向に向かって絞られる光であり、焦点よりも前方では光は広がる。したがって、レーザ照射手段に対する試料の離間距離を変化させることにより試料上でのレーザの照射面積は変化する。
【0011】
いま焦点よりもレーザ照射手段に近い側における移動のみを考えると、試料がレーザ照射手段に近づくほど照射面積は大きくなり、空間分解能は相対的に低くなる。逆に、試料がレーザ照射手段から遠ざかるほど照射面積は小さくなり、空間分解能は相対的に高くなる。したがって、例えば試料中に局在する目的物質の位置を知りたいような場合や試料全体の概略的な物質の分布を調べたいような場合には、照射面積を大きくすれば、試料の全域に亘って2次元的な分析を実行しても分析の繰り返し回数を少なくすることができる。それにより、分析の所要時間を短縮することができる。そして、目的物質が局在している領域が判明した後には、レーザの照射面積を小さくして、即ち空間分解能を高くして、限定された領域を漏れなく走査して質量分析を実行すればよい。
【0012】
またレーザの照射面積が大きいとその面積内に存在する分子の数も多く、発生するイオンの量が増加することによって質量スペクトルのS/N比が良くなり、目的物質の分子の存在密度が低くても高感度での検出が可能である。したがって、例えば試料に含まれる目的物質の同定を行いたい場合であってその物質の分布の精度はあまり重要でないような場合には、あえてレーザの照射面積を大きくして高い感度で以て質量スペクトルを取得し、目的物質の同定を行い易くするということも可能である。このように分析目的に応じて適切な方法を選択できる。
【0013】
本発明の他の実施態様として、レーザ照射手段は、レーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光を収束する収束手段、と含み、照射範囲調整手段は、試料に対する上記収束手段の位置を変化させることで照射面積を変化させる構成としてもよい。
【0014】
この構成によっても、収束手段により収束されるレーザ光束の焦点よりも収束手段に近い側では、収束手段を試料に近づけると照射面積は大きくなり、収束手段を試料から遠ざけると照射面積は小さくなる。したがって、上記実施態様と同様の作用を有する。
【0015】
また、それ以外にも照射範囲調整手段として様々な形態が考え得る。即ち、照射範囲調整手段はレーザ光の一部を遮蔽する遮蔽手段、例えば光の遮蔽領域が可変であるアパーチャなどを用いることができる。また、レーザ照射手段は、レーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光を収束する収束手段、と含み、照射範囲調整手段は、レーザ光源と収束手段との間の空間に介挿された、レーザ光の断面積を変化させる光学素子、例えば収束倍率可変のレンズなどを用いることもできる。
【0016】
なお、上述したようにレーザ光の一部を遮蔽することで照射面積を変化させる場合を除いては、試料上へのレーザの照射面積を変化させても試料上でのレーザ光パワーの総量は同一であるため、照射面積を絞ると単位面積当たりのレーザ光パワー(パワー密度)が大きくなる。例えばレーザの照射径が1/10になれば、パワー密度は100倍になる。一般に、LDI/MALDIによるイオン化では、イオン化の閾値で以てレーザ光強度の下限値が決まる。一方、レーザ光強度の上限値は、装置構成等に依存する様々な要素、例えば、試料への損傷の許容程度、過度なイオン量による質量分析器の性能劣化や検出器のレンジオーバーなどにより決まる。そのため、上述したようにレーザ光のパワー密度が大きくなり過ぎると上限値を超える可能性がある。
【0017】
こうしたことを避けるために、本発明に係る質量分析装置では、前記試料に照射されるレーザ光の強度を変化させる強度調整手段をさらに備える構成とすることが好ましい。また、この強度調整手段はレーザの照射面積の大きさに連動して、つまりは照射範囲調整手段の動作に連動してレーザ強度を調節する構成としてもよい。
【0018】
さらにまた、本発明に係る質量分析装置では、走査手段は走査ステップを任意又は複数に設定可能であり、その走査ステップに応じてレーザ光の照射面積を変化させるべく照射範囲調整手段を制御する制御手段を備える構成とするとよい。
【0019】
具体的には制御手段は、走査ステップが大きいときに照射面積を大きくするように照射範囲調整手段を制御する。これにより、例えば試料全体又は所定範囲内の目的物質の分布を低い空間分解能でもよいから概略的に知りたいような場合に、走査ステップを大きく設定すればレーザ光の照射面積も大きくなり、試料全体又は所定範囲内をできるだけ漏れなく、高速且つ高感度で以て分析を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る質量分析装置によれば、一回の質量分析で観察可能な領域を大きくしたい場合にはレーザ光の照射面積を大きくし、高い質量分解能で以て観察を行いたい場合にはレーザ光の照射面積を小さくするというように、分析目的に応じて適宜に切り替えて試料上の1次元又は2次元的な物質分布画像を得ることができる。それにより、目的とする物質分布画像を得るための所要時間を従来よりも短縮することができ、分析作業を効率的に進めてスループットを向上させることができる。そして、詳細に観察したい部分については高い空間分解能で以て目的物質の分布画像を得ることができる。
【0021】
また、空間分解能があまり重要でない場合に、レーザ照射面積を大きくして存在密度の低い物質も検出し易くすることにより、その検出結果に基づいた同定を行う際の同定精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[第1実施例]
以下、本発明に係る質量分析装置の一実施例(第1実施例)であるLDI/MALDI−MSについて図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1は本実施例によるLDI/MALDI−MSの全体構成図である。図示しない真空ポンプにより真空排気される真空チャンバ10の内部には、試料ステージ13、イオン輸送光学系16、質量分析器17、検出器18等が配設され、真空チャンバ10の外側には、レーザ照射部20、レーザ集光光学系22、CCDカメラ23、観察用光学系24などが配置されている。イオン輸送光学系16は例えば、静電的な電磁レンズや多極型の高周波イオンガイド、或いはそれらの組み合わせなどが用いられる。質量分析器17は例えば四重極型質量分析器や飛行時間型質量分析器、磁場セクター型質量分析器などが用いられる。
【0024】
分析対象である試料15が載せられた試料プレート14は試料ステージ13上に載置され、この試料ステージ13は、互いに直交するx軸、y軸の二軸方向に高い位置精度で以て駆動するための第1駆動機構13aと、x−y平面に直交するz軸方向に高い位置精度で以て駆動するための第2駆動機構13bとにより移動可能となっている。x−y軸駆動部33は走査制御部32及び照射径制御部31の制御の下に、第1駆動機構13aに含まれるステッピングモータ等を駆動し、z軸駆動部34は照射径制御部31の制御の下に第2駆動機構13bに含まれるステッピングモータ等を駆動する。
【0025】
レーザ照射部20から出射されたイオン化用のレーザ光21はレーザ集光光学系22により絞られ、真空チャンバ10の側面に設けられた照射用窓11を通して試料15に向けて照射される。試料ステージ13がz軸方向に或る位置に在るときレーザ光照射位置は固定されているから、第1駆動機構13aにより試料ステージ13がx−y面内で移動されると、試料15上でレーザ光21が当たる位置、つまり試料15上で質量分析の実行対象となる微小測定領域15aが移動する。これにより、試料15上で質量分析が実行される位置の走査が行われる。
【0026】
一方、CCDカメラ23は真空チャンバ10の側面に設けられた観察用窓12及び観察用光学系24を介して試料プレート14上の所定の範囲を撮像し、ここで得られた画像信号は画像処理部37に送られて2次元観察画像が構成される。中央制御部30は本装置の全体的な動作の制御を司るものであり、具体的には、走査制御部32及び照射径制御部31を介してx−y軸駆動部33による移動量や移動方向を制御し、照射径制御部31を介してz軸駆動部34による移動量を制御する。さらに、照射制御部35を介してレーザ照射部20でのレーザ光21の出射/停止やレーザ光強度などを制御する。また、図1では繁雑さを避けるために信号線の記載を省略しているが、中央制御部30はイオン輸送光学系16、質量分析器17、検出器18などの動作も制御する。
【0027】
検出器18による検出信号、つまりイオン強度信号は質量分析データ処理部36に入力され、ここで適宜のデータ処理が実行されて、例えば後述するような2次元物質分布画像が作成される。また、中央制御部30にはオペレータの操作により空間分解能や測定対象領域などの分析条件を設定するための操作部38が接続され、さらに試料15の2次元観察画像や2次元物質分布画像などを表示するための表示部39も接続されている。
【0028】
本実施例のLDI/MALDI−MSを用いた、質量数が既知である目的物質の2次元物質分布画像の取得のための基本的な動作は次の通りである。
まずオペレータは試料15上のどの箇所を分析するのかを決める。そのために、CCDカメラ23は真空チャンバ10の側面に設けられた観察用窓12及び観察用光学系24を介して試料15の2次元観察画像を取得し、表示部39の画面上に表示させる。オペレータはその中で質量分析を行う範囲を決めて操作部38により範囲の設定を行い、目的物質の質量数を設定した上で、分析開始を指示する。
【0029】
分析が開始されると、レーザ照射部20から出射したレーザ光21がレーザ集光光学系22で集光され、真空チャンバ10の側面に設けられた照射用窓11を通して試料15上に照射される。レーザ光21が照射されると、試料15上の微小測定領域15a付近に存在する各種物質がイオン化されて、主として試料15表面に略直交する方向つまり真上にイオンが放出される。このイオンはイオン輸送光学系16で収束されて質量分析器17に導入され、質量分析器17により目的物質の質量数を持つイオンのみが分離されて検出器18に到達する。検出器18は到達したイオンの個数に応じた電流を検出信号として出力する。データ処理部36はこの検出信号を受け取って、試料15上のレーザ照射位置(微小測定領域15a)に対応する目的物質の相対強度を求める。
【0030】
走査制御部32は試料15上に設定された分析範囲の中で、レーザ光21が照射される微小測定領域15aが順次移動するようにx−y軸駆動部33を介して第1駆動機構13aを制御し、試料ステージ13をステップ状に移動させる。そして、試料ステージ13が微小距離移動して停止する毎に、上述したようにレーザ光21を照射してその微小測定領域15aに対応する目的物質の相対強度を求める。このようにして、初めに設定された分析範囲の全体に亘って質量分析を行い、目的物質の相対強度のマップを作成しこれを表示部39の画面上に表示する。
【0031】
次に本実施例のLDI/MALDI−MSにおける特徴的な動作について説明する。上述したようにレーザ光21はレーザ集光光学系22により絞られて試料15上に当たるが、試料ステージ13をz軸方向に移動させることにより試料15上でのレーザ照射面積(つまりは微小測定領域15aの面積)が変更できるようになっている。即ち、図2の概略図に示すように、レーザ集光光学系22は距離Dだけ離れた位置に焦点を持つが、その位置に試料15表面があるときに微小測定領域15aの面積は最小になり(図2(b)、その位置から試料15がレーザ集光光学系22に近づくほど微小測定領域15aの面積は大きくなる(図2(a))。これにより、試料15上での1回の質量分析の対象とする範囲の大きさと空間分解能とを変更することができる。
【0032】
但し、図2に示すように試料15の真上からレーザ光21を照射する場合には、z軸方向に試料15を移動しても微小測定領域15aの中心点の位置は変化しないが、図1に示すように試料15に対し斜め方向からレーザ光21を照射する場合には、z軸方向に試料15を移動した場合に微小測定領域15aの中心点の位置がずれる。レーザ光21の入射角度は決まっているため、z軸方向の移動量に対して微小測定領域15aの中心点の位置すれ量は計算により容易に求まる。したがって、z軸方向に試料ステージ13を移動させることによりレーザ照射面積を変更する場合には、その移動量に応じて微小測定領域15aの中心点の位置ずれが生じることを考慮してx−y軸方向の位置も制御することとする。これにより、試料15上で微小測定領域15aの中心点の位置を維持したままその面積(レーザ照射径)を変更することができる。
【0033】
また、図1の構成でz軸方向に試料ステージ13を移動させることで微小測定領域15aの面積を変更する場合、観察用光学系24やイオン輸送光学系16と試料15との相対位置や距離が変化するため、それに対する配慮が必要になる場合もある、例えば観察用光学系24の焦点深度が浅かったり視野が狭かったりする場合には、試料15がz軸方向に移動すると試料画像を捉えられなくなるため、試料ステージ13の移動に連動して観察用光学系24を光軸に直交する方向に移動させる必要がある。また、質量分析器17が飛行時間型である場合、試料ステージ13の移動に応じてイオン加速電圧を適切に調節したり、或いは得られた信号に対する時間軸を修正したりする必要が生じる場合もある。もちろん、レーザ照射面積を変えるための試料ステージ13の移動量が、試料15の観察位置や空間分解能、或いは分析における信号強度や質量精度、質量分解能などに有意な影響を与えない程度である場合には、上記のような配慮は不要である。
【0034】
続いて、本実施例のLDI/MALDI−MSにおいて上記特徴的な動作を利用した各種の分析手法について説明する。
【0035】
(1)分析個所の絞り込みを行う場合
いま、目的物質が試料15中の或る領域にのみ局在していることが判明しているものの、その位置が不明であるという状況を想定する。この場合、試料15の全域を高い空間分解能で以て満遍なく走査しつつ質量分析を繰り返して目的物質の位置を探すと多大な時間を要するし、大きなステップ幅を設定して高い空間分解能で以て疎らな質量分析を実行すると目的物質の見逃しが発生するおそれがある。そこで、本実施例の装置では、次のような手順で分析を実行する。
【0036】
まず、試料ステージ13をレーザ集光光学系22に近づけるようにz軸方向に移動させ、試料15上でのレーザ光の照射径を比較的大きくする。その状態で、図3(a)又は(b)に示すように、試料15の全域(又はオペレータにより設定された分析範囲全体)をカバーするようにステップ状に走査を行いながら、レーザ光が照射された各微小測定領域151の質量分析を実行してデータ処理部36では目的物質の強度を求める。そして、各個所での強度に基づいて、それぞれ目的物質の有無を確認する。なお、図3(b)は図3(a)よりもさらにレーザ照射面積を大きくした例であり、同一のステップ幅でも試料15上で分析対象に入らない領域をより小さくすることができる。
【0037】
いま、上記分析において微小測定領域151aにおいてのみ目的物質が検出されたものとする。次に、試料ステージ13をレーザ集光光学系22から遠ざけるようにz軸方向に移動させ、試料15上でのレーザ光の照射径を小さく絞る。そして、図3(c)に示すように、先に目的物質の存在が確認された微小測定領域151a付近の領域40に絞って、その領域40をカバーするように小さな移動間隔でステップ状に走査を行いながら、レーザが照射された各微小測定領域152の質量分析を実行してデータ処理部36では目的物質の強度を求める。その結果、例えば微小測定領域152aにおいてのみ目的物質の存在が確認される。これにより、目的物質が存在する部分がより詳細に、つまり高い空間分解能で以て求まる。
【0038】
最初に大きなレーザ照射面積で走査を行う際には、微小測定領域151に存在する分子の絶対数が多いため、質量スペクトルのS/N比が良好になる。したがって、目的物質の分子の密度が低くても、この分子に由来するイオンを高い感度で検出することができる。
【0039】
(2)目的物質の概略的な分布を調べたい場合
例えば生体切片などの生体試料を観察・測定する場合、顕微観察において試料が複数の領域に形態的(例えば色など)に分かれていることが明瞭に分かる場合がある。こうした場合、目的物質の存在部位を細かく知る必要はなく、形態的に区分されるいずれの領域に目的物質が存在するのかを知れば十分なことも多い。いま、一例として、図4(a)に示すように、試料41が明瞭に4つの領域Ua、Ub、Uc、Udに区分可能であるとしたときを考える。このとき、図4(c)に示すように、レーザ光の照射径を比較的小さくして高い空間分解能で且つ小さいステップ幅で走査を行いながら試料41全体をカバーするように質量分析を行うことも可能である。これによって目的物質が存在する微小測定領域152aが分かるから、領域Uaに目的物質があることが判明する。しかしながら、質量分析の繰り返し回数が非常に多くなるため効率が悪い。
【0040】
そこで、試料ステージ13をレーザ集光光学系22に近づけるようにz軸方向に移動させ、試料15上でのレーザ光の照射径をあえて大きくする。そして、図4(b)に示すように、試料15の全域をカバーするようにステップ状に走査を行いながら、レーザ光が照射された各微小測定領域151の質量分析を実行し、その結果により目的物質の有無を判別する。これにより、質量分析の繰り返し回数を少なくして短時間で領域Uaに目的物質があることを検出できる。この場合にも、大きなレーザ照射面積で走査を行うために微小測定領域151に存在する分子の絶対数が多く、目的物質の分子密度が低くても高い感度で検出することができる。
【0041】
(3)顕微観察の倍率を切り替える場合
CCDカメラ23(又は別に設けた顕微鏡)での試料の顕微観察を行いながら、目的物質の2次元物質分布を調べたいような場合に、例えばいま、或る観察倍率で以て図5(a)に示す2次元観察画像が得られているものとする。そして、この画像の中で特定の領域42を細かく観察するために観察倍率を上げて、図5(b)に示す画像が観察されたものとする。上記実施例の構成では、観察倍率を切り替えるために例えば観察用光学系24を制御するが、その際に中央制御部30は観察倍率を上げるに従ってレーザ照射径を縮小するように照射径制御部31に指令を与える。これにより、図5(b)に示すように高い観察倍率で観察が行われているときには、試料上でのレーザ照射径は小さく、図5(d)に示すようにより詳細な2次元分布を得ることが可能である。一方、図5(a)に示すように低い観察倍率で観察が行われているときには、試料上でのレーザ照射径は大きく、図5(c)に示すように大まかな2次元物質分布画像を得ることが可能である。これにより、観察倍率が切り替えられても、2次元物質分布を得るために必要な質量分析の繰り返し回数を同じ程度にすることができるので、分析に多大な時間を要することを回避できる。
【0042】
また、上記(1)〜(3)のような分析手法では、いずれも試料全体や試料上の所定の範囲内をできるだけ漏れなく走査する必要があるから、レーザ照射径と走査のステップ幅とは連動しているほうが都合がよい。したがって、中央制御部30は例えば質量分析の2次元的な走査ステップ幅に応じて自動的にレーザ照射径を変化させるような制御を行う構成とするとよい。
【0043】
(4)目的物質の同定等、特に高感度での検出が必要な場合
いま、例えば或る試料43に対して所定の空間分解能で以て2次元物質分布を測定し、図6(a)に示すような結果が得られたとする。ここで、未知の目的物質が微小測定領域43に示すように分布していることが判明し、その物質を同定したい場合について考える。同定を行うために物質由来のイオンを開裂させて、それにより生成されるイオンの質量数を調べて元の物質の構造を推定する方法があり、その開裂の手法として、イオンの内部エネルギーを利用する方法(Post Source Decay)やイオントラップに一旦イオンを捕捉した後にガスと衝突させる方法(Collision-Induced Dissociation)などが知られている。いずれもしても、着目するイオンを高いS/N比で検出できれば、それだけ同定が容易で且つ同定精度も向上する。
【0044】
そこで、図6(a)において未知物質が存在することが確認できた範囲について、図6(b)に示すように先の2次元物質分布測定時と同程度の小さなレーザ照射径45ではなく、図6(c)に示すようにレーザ照射径46をあえて大きくして、未知物質が存在することが確認できた範囲が大部分を占めるように照射位置を設定する。これによれば、1回の質量分析の対象とする目的物質の分子数が多くなるので、それに由来するイオンを直接検出する場合はもちろんのこと、例えば上述のように開裂により生じたイオンを検出する場合でもイオン強度が相対的に大きくなり、同定を行い易くなる。
【0045】
なお、一般的なMALDI−TOFMSでは、試料を溶媒に溶解させてさらにマトリクスと混合した後に試料プレート上に滴下し、そこにレーザ光を照射して分析を行う。この場合には、2次元的且つ離散的に配列された試料に対し順番にレーザ光を照射するから、空間分解能は全く問わない。こうした場合にも感度向上のためにレーザ照射径を大きくしたほうがよい。
【0046】
次に、上記第1実施例とはレーザ照射径の可変方法が相違する、いくつかの他の実施例に係る質量分析装置について説明する。
【0047】
[第2実施例]
図7は第2実施例におけるレーザ照射部と試料との間の光路の概略図である。図2で説明したように、レーザ集光光学系22と試料15表面との間の距離を変えることにより試料15上でのレーザ照射径(面積)は変化するが、これは試料15の位置、即ち試料ステージ13の位置を固定して、レーザ集光光学系22の位置をレーザ光21の光軸に沿って変化させても同じことである。図7(b)に示すように、レーザ集光光学系22が試料15表面から距離Dだけ離れた位置にあるとき試料15での微小測定領域15aの面積は最小になり、その位置からレーザ集光光学系22が試料15に近づくように移動すると試料15での微小測定領域15aの面積は大きくなる。
【0048】
この構成の場合、試料15はz軸方向に移動させる必要がないため、上記実施例とは異なり、レーザ照射径を変える際にレーザ集光光学系22以外の要素(例えば観察用光学系24など)には配慮する必要がない。そのため、構成は簡単になる。レーザ集光光学系22は、単レンズであってもよいし、組み合わせレンズやミラーを用いてもよい。なお、図7ではレーザ集光光学系22への入射レーザ光を平行光束として描いているが、必ずしも平行光束である必要はない。
【0049】
[第3実施例]
レーザ光は理論上、大きな開口数で集光させるほど小さな集光径となることが知られている。具体的には、ガウシアン・ビーム理論によれば、レーザ光の集光に関して、開口数(NA)と集光径(2w0)との関係は次の式になる。
0=λ/(π・sin-1NA)
一例としてレーザ光の波長(λ)が355nmであるときの開口数と集光径との関係を計算した結果を図8に挙げる。したがって、レーザ集光についての開口数を大きくするように変えることにより試料上でのレーザ集光径を小さくするように変えることができる。
【0050】
レーザ集光に関する開口数を変えるために様々な構成が考え得る。例えば図9は、レーザ照射部20とレーザ集光光学系22との間に、開口部51の径が可変(又は切替え可能)であるアパーチャ部材50を挿入したものである。また図10は、レーザ集光光学系22と試料15との間に、同様の構成のアパーチャ部材50を挿入したものである。このアパーチャ部材50の開口部51の径(つまり面積)は中央制御部30により制御可能であり、図9(a)及び図10(a)に示すように開口部51を小さくした場合には試料15上でのレーザ照射径(微小測定領域15の面積)は大きくなり、図9(b)及び図10(b)に示すように開口部51を大きくした場合には試料15上でのレーザ照射径は小さくなる。
【0051】
[第3実施例の変形例]
図11は、アパーチャ部材の代わりにレーザ照射部20とレーザ集光光学系22との間にズームレンズ52を挿入したものである。このズームレンズ52は倍率可変のビームエクスパンダーであり、これによりレーザ光21の光束を拡大すれば試料15上でのレーザ照射径はより小さくなる。
【0052】
図12は、アパーチャ部材50をレーザ照射部20とレーザ集光光学系22との間でレーザ照射部20の直近に設けたものである。この構成による光学系は、アパーチャ部材50の開口部51を光源とする縮小結像型の光学系として機能する。即ち、試料15とレーザ集光光学系22との間の距離D1と、レーザ集光光学系22とアパーチャ部材50との間の距離D2との比率を縮小率とする縮小結像系であるから、レーザ照射径を小さくするためには、距離D2を距離D1よりも大きくする必要があり、これを実現するためにアパーチャ部材50をレーザ照射部20の直近に配置してある。
【0053】
図12(a)、(b)に示すように、アパーチャ部材50の開口部51を大きな状態から小さくしてゆくと、図9に示した構成と同様の原理によって、試料15上でのレーザ照射径は大きくなる。しかしながら、開口部51が或る程度小さくなった状態からさらに開口部51を小さくすると、アパーチャ部材50の開口部51は微小な光源として振る舞うようになり、その縮小光学系として機能する。そのため、図12(c)に示すように、開口部51を小さくするほどレーザ光照射径は小さくなる。
【0054】
一例として、ガウシアン・ビームの理論に従い、レーザ光の波長を355nm、レーザ集光光学系22の焦点距離を100mm、レーザ照射部20とレーザ集光光学系22との間の距離を1000mmとし、レーザ照射部20の出射部にアパーチャ部材50を置くことにより、その開口部51にビームウエストが位置するとしたときのアパーチャ開口径とレーザ照射径との関係を計算した結果を図13に示す。図中のPの領域を用いるのが図12の構成の光学系であり、それよりも右方の領域を用いるのが図9の構成の光学系である。
【0055】
図14は、レーザ照射部20とレーザ集光光学系22との間に、集光レンズ56とピンホール57とから成るスペイシャルフィルタ55を挿入したものである。この構成では、ピンホール57の孔径を変えることにより試料15上のレーザ照射径を変えることができる。この場合も、ピンホール57の孔を光源をみなした縮小結像系として機能することは上記例と同様である。
【0056】
上記第3実施例及びその変形例はいずれも、伝播するレーザ光の断面積を変化させることにより理論的なレーザ集光径を変化させるものである。これらについての上記説明はいずれもガウシアン・ビーム理論に則っているが、定性的には、例えばマルチモード発振のガスレーザなど、ガウシアン・ビームではないものについても同様の構成を利用することができる。
【0057】
第3実施例及びその変形例の構成の大きな利点は、図11を除き、既存の装置にアパーチャ部材50と、それの切替え制御回路を追加すればよいだけであるので、簡単で安価に実現できることである。また、ズームレンズ52を用いた場合には、アパーチャ部材50よりは高価になるが、レーザパワーの損失がなく、しかもレーザ光伝播経路のいずれかにズームレンズ52を挿入すればよいので、装置を設計する上でレイアウトの自由度が大きい。また、第3実施例の構成では、第2実施例と同様に、レーザ照射径の変更に伴う観察用光学系24など別の要素の移動も不要であるという利点がある。
【0058】
前述のように上記第1実施例の構成では、レーザ照射部20から出射するレーザ光21の強度(レーザパワー)は照射制御部35の制御の下に調整可能である。そこで、質量分析に際して、レーザ出射光は分析に適当なレーザ光強度に調整される。一般に、適切なイオン化を行うためにはレーザ光強度について適切な範囲があり、その下限は主としてイオン化の閾値で決まり、上限は装置構成等に依存する様々な制約で決まる。具体的には、試料への損傷の程度、過度なイオン量が入射してくることによる質量分析器の性能劣化、検出器のレンジオーバーなどが制約条件である。
【0059】
上述のように試料15上でのレーザ照射面積が大きな状態でレーザ光強度を適切に調整してあるとき、レーザ照射面積を小さくしてゆくと試料15上でのレーザ光束密度は上がる(但し、第3実施例においてアパーチャ部材を用いる場合を除く)。例えばレーザ照射径を1/10にすればレーザ光束密度は100倍になる。そのため、レーザ照射部20からの出射レーザ光強度を調整しないと、試料15に当たる時点でのレーザ光強度が上記のような適切な範囲を逸脱する可能性が高い。そこで、中央制御部30はレーザ光の照射面積を調整する際には、それに連動してレーザ光強度を調整するように照射制御部35を制御することが好ましい。なお、レーザ光強度の調整は様々な方法により実現できるが、例えば無段階アッテネータなどを用いるとよい。
【0060】
なお、上記実施例は本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲で適宜に変更、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施例によるLDI/MALDI−MSの全体構成図。
【図2】第1実施例によるLDI/MALDI−MSのレーザ照射部から試料までの光路の概略図。
【図3】分析個所の絞り込みを行う場合の分析方法の一例の説明図。
【図4】目的物質の概略的な分布を調べたい場合の分析方法の一例の説明図。
【図5】顕微観察の倍率を切り替える場合の分析方法の一例の説明図。
【図6】特に高感度での検出が必要な場合の分析方法の一例の説明図。
【図7】第2実施例によるLDI/MALDI−MSのレーザ照射部から試料までの光路の概略図。
【図8】レーザ光の波長が355nmであるときの開口数と集光径との関係を計算した結果を示す図。
【図9】第3実施例によるLDI/MALDI−MSのレーザ照射部から試料までの光路の概略図。
【図10】第3実施例によるLDI/MALDI−MSのレーザ照射部から試料までの光路の概略図。
【図11】第3実施例の変形によるLDI/MALDI−MSのレーザ照射部から試料までの光路の概略図。
【図12】第3実施例の変形によるLDI/MALDI−MSのレーザ照射部から試料までの光路の概略図。
【図13】レーザ照射部の出射部にビームウエストが位置するとしたときのアパーチャ開口径とレーザ照射径との関係を計算した結果を示す図。
【図14】第3実施例の変形によるLDI/MALDI−MSのレーザ照射部から試料までの光路の概略図。
【符号の説明】
【0062】
10…真空チャンバ
11…照射用窓
12…観察用窓
13…試料ステージ
13a…第1駆動機構
13b…第2駆動機構
14…試料プレート
15…試料
15a、151、151a、152、152a…微小測定領域
16…イオン輸送光学系
17…質量分析器
18…検出器
20…レーザ照射部
21…レーザ光
22…レーザ集光光学系
23…CCDカメラ
24…観察用光学系
30…中央制御部
31…照射径制御部
32…走査制御部
33…y軸駆動部
34…z軸駆動部
35…照射制御部
36…質量分析データ処理部
37…画像処理部
38…操作部
39…表示部
50…アパーチャ部材
51…開口部
52…ズームレンズ
55…スペイシャルフィルタ
56…集光レンズ
57…ピンホール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)試料に含まれる成分をイオン化するために該試料にレーザ光を照射するレーザ照射手段と、
b)前記レーザ照射手段による前記試料上のレーザ照射位置を1次元的又は2次元的に走査するための走査手段と、
c)前記試料上のレーザ照射面積を変化させる照射範囲調整手段と、
d)前記レーザ照射により試料から発生したイオンを質量分離して検出する質量分析手段と、
を備えることを特徴とする質量分析装置。
【請求項2】
前記照射範囲調整手段は、前記レーザ照射手段に対する前記試料の位置を変化させることで照射面積を変化させることを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
【請求項3】
前記レーザ照射手段は、レーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光を収束する収束手段、と含み、前記照射範囲調整手段は、前記試料に対する前記収束手段の位置を変化させることで照射面積を変化させることを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
【請求項4】
前記照射範囲調整手段はレーザ光の一部を遮蔽する遮蔽手段であることを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
【請求項5】
前記レーザ照射手段は、レーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光を収束する収束手段、と含み、前記照射範囲調整手段は、前記レーザ光源と前記収束手段との間の空間に介挿された、レーザ光の断面積を変化させる光学素子であることを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
【請求項6】
前記試料に照射されるレーザ光の強度を変化させる強度調整手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の質量分析装置。
【請求項7】
前記走査手段は走査ステップを任意又は複数に設定可能であり、その走査ステップに応じてレーザ光の照射面積を変化させるべく前記照射範囲調整手段を制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の質量分析装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−257851(P2007−257851A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76686(P2006−76686)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【出願人】(504261077)大学共同利用機関法人自然科学研究機構 (156)
【Fターム(参考)】