説明

質量分析装置

【課題】高いイオン輸送効率を示すファンネル構造の電極部にイオンを導入する効率を高めることで、総合的な輸送効率一層高める。
【解決手段】大気圧下で試料のイオン化を行うイオン化室1から、直管状のキャピラリ管3を通してイオンを、第1中間真空室4内に配置されたファンネル構造の電極部10の内部空間に導入する。複数のリング電極の一部を、周方向に一部を切り欠いた略C形状の電極に置き換えることでキャピラリ管3を配設する空間を確保し、イオンの導入方向をイオン輸送方向と略直交させる。導入されたイオンは衝突冷却によりエネルギーを減じ、高周波電場の閉じ込め作用によりイオン光軸C近傍に収束し、直流電場の電位勾配に従って出口開口に向かって効率良く移動する。ガス流はリング電極間の空隙を抜けるのでリング電極内空間の出口付近のガス圧が高くならず、後段の真空を損なうことも防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は質量分析装置に関し、さらに詳しくは、略大気圧の雰囲気の下で試料をイオン化して質量分析する大気圧イオン化質量分析装置に好適な質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロスプレイイオン化(ESI)法、大気圧化学イオン化(APCI)法、誘導結合プラズマイオン化(ICP)法、大気圧マトリックスレーザ支援イオン化(AP−MALDI)法など、略大気圧雰囲気の下で試料をイオン化する大気圧イオン源を用いた質量分析装置では、四重極質量フィルタ等の質量分析器が設置された真空室内を高真空雰囲気に維持するために多段差動排気系の構成が採用されている。こうした質量分析装置では、1〜10[Pa]程度のガス圧の低真空雰囲気の下で効率良くイオンを輸送する必要があり、従来、様々な形態・構成のイオン輸送光学系(イオンガイド、イオンレンズ等を呼ばれることもある)が提案され、実用に供されている。
【0003】
なお、イオン輸送光学系はイオンが通過する空間に電場を形成する電極部のみを指す場合もあるが、実際には、電極部に印加される電圧によって電場の状態は異なるから、ここでは、電極部のみならず電極部に電圧を印加するための電圧印加部(回路部)まで含めてイオン輸送光学系と呼ぶ。
【0004】
上記イオン輸送光学系の一つとして、特許文献1などに開示されているイオンファンネルと呼ばれるものが知られている。イオンファンネルの基本的な電極の構造は、図9に示したように、中央にイオンが通過する円形開口が形成されたリング電極が、イオン輸送方向に沿って等間隔に複数枚並べられたものである。複数のリング電極の開口径は同一ではなく、イオン入射側の端部で最大の開口径、イオン出射側の端部で最小の開口径であって、イオン輸送方向に開口径は漸減するように構成されている。イオン輸送方向に隣接するリング電極には、電圧印加部から位相が180°ずれた(位相が反転した)高周波電圧が印加される。これにより、イオンを閉じ込めるための高周波電場がリング電極内空間に形成される。これに加えて、イオン輸送方向にイオンの進行を促進させる電位勾配を形成するべく、電圧印加部から各リング電極に直流電圧が印加される。
【0005】
リング電極内空間はイオン輸送方向に先細りの漏斗形状であるため、この空間に形成される高周波電場はイオンをリング電極の中心軸(イオン光軸)C付近に収束させる比較的強い空間収束作用を有する。また、イオンファンネルが10〜10[Pa]程度の低真空雰囲気中に設置されている場合、残留ガスが多いために衝突冷却(コリジョナルクーリング)の作用による収束作用も働く。このため、イオン輸送方向に最後端のリング電極から出射する際のイオンの拡がり径は非常に小さくなり、出射されるイオンのエミッタンスは小さい。また、中心軸の周りの周方向に高周波電場は一様であるため、多重極ロッド型の構成で起こる隣接ロッド電極間を通したイオンの漏れも抑えられ、高い効率でイオンを輸送することができるという利点がある。
【0006】
上述したイオンファンネルを利用した大気圧イオン化質量分析装置としては、特許文献2〜4などに記載のものがある。こうした質量分析装置では、エレクトロスプレイイオン化が行われるイオン化室の次段の低真空室内にイオンファンネルの電極部が配置され、イオン化室で生成されたイオンがキャピラリ管を通して低真空室へ送られる。そして、最前部に位置するリング電極の円形開口に対しイオン輸送方向にイオンが導入され、最後端のリング電極の開口から小径に絞られたイオンが出射される。
イオンファンネルは上述したようにイオン輸送効率や収束性の点で優れていると言えるものの、以下に説明するような課題がある。
【0007】
非特許文献1に開示されたようなAP−MALDIを用いた顕微質量分析装置では、光学顕微鏡により試料の顕微観察を行う都合上、試料は略大気圧である試料室内に水平配置される。そのため、レーザ照射により試料から発生したイオンは上方に取り出される。一方、真空室内にはイオン輸送光学系(RFイオンガイド)やイオントラップ、飛行時間型質量分析計が水平に並べて配置され、イオン輸送方向は略水平方向である。そのため、試料室内と真空室内とをつなぐインターフェイスとしてのキャピラリ管の入口は下向き、出口は横向きであり、このキャピラリ管は途中でほぼ直角に屈曲された形状である。イオン輸送光学系として上記のイオンファンネルを用いる場合も同様であり、屈曲したキャピラリ管の出口からほぼ水平方向に吐き出されたイオンがリング電極の開口に入射されることになる。
【0008】
キャピラリ管の入口端と出口端とでは差圧があり、イオンは主としてこの差圧により生じるガス流に乗ってキャピラリ管入口に吸い込まれ、出口端まで運ばれて真空室内に吐き出される。ところが、キャピラリ管に上記のように大きく屈曲した部分があるとガス流に乱れが生じ、イオンが管内壁に衝突して損失が起き易くなる。特に、真空室内のガス圧を低く保つため、真空室内を真空排気するポンプの排気性能をできるだけ低いもので済ませるため、等の理由でキャピラリ管のコンダクタンスを制限するべくその内径は小さくなっている。そのため、上記のようなガス流の乱れの影響が大きく、イオン損失の割合が多くなる。つまり、イオンファンネル自体のイオン輸送効率は高くても、そこに至るまでのイオン損失が多く、総合的にイオン輸送効率を上げることが難しい。
【0009】
また、キャピラリ管の出口から吐き出されたイオンはガス流とともにリング電極の開口からリング電極内空間に導入される。イオンファンネルにおいては、隣接するリング電極の間隔は狭いため、この隣接リング電極間の隙間を通してガスは拡散しにくく、そのためガスの多くはリング電極内空間を流れ、最後端のリング電極の狭い開口から排出される。このため、イオンファンネル出口付近のガス圧が周囲に比べて高くなり、後続のイオン輸送光学系や質量分析器の設置雰囲気の真空度が悪化するという問題がある。こうした問題を解決するために、特許文献4に記載の装置では、リング電極内空間のイオン光軸上に円板状電極を設置し、ガス流を該電極に衝突させ流れ方向の外側に向くようにしている。しかしながら、リング電極内空間にこうした電極を配置すると構造が複雑になる。また、電極自体が汚れてリング電極内空間の電場を乱す要因となり易い。
【0010】
一方、特許文献5に開示されたようなICPイオン源を用いた質量分析装置では、イオン源から発した光や中性分子等、バックグランドノイズの原因となる要素を除去するために、軸ずらしイオン輸送光学系が利用される。イオンファンネルで軸ずらしを行うためには、例えば各リング電極の軸を徐々にずらす等の方法が考えられるが、こうした方法では高周波電場や直流電場が乱れ、イオン輸送効率が大幅に低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第97/49111号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6107628号明細書
【特許文献3】米国特許第6803565号明細書
【特許文献4】米国特許第6583408号明細書
【特許文献5】特開2008−192519号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】原田、ほか8名、「顕微質量分析装置による生体組織分析」、島津評論、島津評論編集部、第64巻、第3・4号、2008年4月24日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、イオンファンネルの利点を活かしつつ総合的なイオン輸送効率を改善して高い分析感度を達成することができる質量分析装置を提供することにある。また、本発明の別の目的は、イオンファンネルの利点を活かしつつ、ファンネル構造のリング電極の後端部付近のガス圧の上昇を抑制することができる質量分析装置を提供することにある。本発明のさらに別の目的は、イオンファンネルの利点を活かしつつ軸ずらしの効果を得ることができる質量分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために成された本発明は、第1ガス圧であるイオン源で生成したイオンを第1ガス圧よりも低い第2ガス圧の真空雰囲気中に配設された質量分析部へ輸送して分析する質量分析装置において、
a)第1ガス圧よりも低く第2ガス圧よりも高いガス圧の真空雰囲気中に配置され、イオン輸送方向に沿った少なくとも一部範囲で開口径が漸減するように複数のリング電極をイオン輸送方向に並べたファンネル構造である電極部と、イオン輸送方向に隣接するリング電極に位相が反転した高周波電圧を印加するとともに、イオン輸送方向にイオンを進行させる電位勾配が形成されるように各リング電極に直流電圧を印加する電圧印加部と、を含むイオン輸送光学系と、
b)前記電極部の複数のリング電極で囲まれるリング電極内空間の中でイオン輸送方向に最も手前に位置するリング電極よりも後方の位置に、イオン輸送方向と略直交する方向にイオンを導入するイオン導入部と、
を備えることを特徴としている。
【0015】
上記質量分析部は、例えば四重極質量フィルタ、飛行時間型質量分析器、三次元四重極型イオントラップ等の質量分析器と、イオン検出器とを、含むものとすることができる。こうした質量分析部は高真空雰囲気中に設置され、通常、第2ガス圧は10−3〜10−5[Pa]程度の範囲である。一方、第1ガス圧は略大気圧又は大気圧以上のガス圧とするとよい。即ち、イオン源は、例えば、ESI、APCI、AP−MALDI,ICPなどの大気圧イオン源を用いることができる。
【0016】
本発明に係る質量分析装置において、イオン輸送光学系の電極部はファンネル構造であるが、イオン輸送方向に最も手前に位置するリング電極の開口に対しイオン輸送方向にイオンが導入されるのではなく、イオン導入部により、電極部の側方からイオン輸送方向と略直交する方向にリング電極内空間にイオンが導入される。このイオン導入方向はイオン輸送方向とは一致しないが、イオンはリング電極内空間に導入された後、リング電極内空間に形成されている高周波電場の作用、及び、残留ガスとの衝突による冷却(クーリング)作用によって、リング電極の中心軸、つまりイオン光軸付近に収束するように軌道が曲がる。それとともにイオンは、主としてリング電極内空間に形成されている直流電場の作用によってイオン輸送方向に進行する。特に、リング電極の内周縁部の近傍には高周波電場による擬ポテンシャル障壁が形成されているため、イオン輸送方向と略直交する方向から導入されたイオンも対面するリング電極壁面に衝突することなく、出口側のリング電極に向かって空間的に収束されながら輸送される。したがって、側方からイオンを入射しながら、イオンファンネル自体の高い輸送効率を活かすことができる。
【0017】
また、イオン導入部からイオンとともにリング電極内空間に導入されるガスはリング電極壁面に当たり、多くは、隣接するリング電極の間の空隙を通って電極部の外部に抜ける。このため、前方開口を通してイオン輸送方向にイオンを導入した場合とは異なり、開口面積が縮小された出口側のリング電極の開口部付近での極端なガス圧上昇が生じない。そのため、後段のイオン輸送光学系や質量分析部等の設置雰囲気の真空度が悪化することを防止することができる。また、イオン導入部を通してイオンとともに流入してくる中性粒子や光などは電場の影響を受けないため、リング電極内空間に入った後、直進してリング電極壁面に当たったり電極部の外部に抜けたりする。このため、軸ずらしと同じ効果が得られる。
【0018】
本発明に係る質量分析装置の一態様として、前記イオン導入部は、出口端がリング電極内空間に、入口端が前記イオン源で生成されたイオンを収集可能な位置に配置された細管であり、該細管の少なくとも出口端にイオンを反発する直流電位が与えられる構成とすることができる。
【0019】
この構成によれば、細管を通して確実に、つまり効率よくイオンをリング電極内空間に導入することができる。この場合、隣接するリング電極間の空間に細管を通す構造としてもよいが、一般に、リング電極の間隔はかなり狭くする必要があるために細管を通す空間的余裕がない場合もある。そこで、複数のリング電極の少なくとも1つをその一部を切り欠いた略C形状とし、その切り欠きにより形成された空間に前記細管を配置した構成とするとよい。リング電極を略C形状とすると形成される電場に乱れが生じるが、細管を通して導入されたイオンはその後、リング電極の切欠部から離れるように進むため、上記のような電場の乱れのイオンの挙動に対する影響は非常に小さい。
【0020】
イオン源で生成されたイオンをできるだけ効率良く収集してリング電極内空間に送り込むには、細管の内径(流路断面積)を大きくするか、又は細管を複数備えるようにするとよい。また、イオンが細管中を通過する際にその内壁に接触して消滅することを抑えるには、細管の長さをできるだけ短くするとともに、途中に屈曲部を設けないことが有効である。即ち、細管は入口端から出口端まで直線形状であることが好ましい。
【0021】
なお、イオン源からリング電極内空間までイオンを輸送する細管は、イオンを含む又は帯電した微小液滴から溶媒を気化させる脱溶媒管の機能を果たし得る。そこで、本発明に係る質量分析装置の好ましい一態様として、前記イオン源はエレクトロスプレイイオン源、大気圧化学イオン源、大気圧光イオン源のいずれかであり、前記細管は加熱された脱溶媒管であるものとすることができる。
【0022】
また本発明に係る質量分析装置の別の態様として、前記複数のリング電極の中のイオン輸送方向に連続する所定数をそれぞれその一部を切り欠いた略C形状とし、前記イオン導入部は、前記切り欠きにより形成される空間に配設された、イオンサンプリング用のオリフィスを有する電極であり、該電極にイオンを反発する直流電位が与えられる構成とすることができる。この場合も、イオンの導入量を増やすために、オリフィスの開口面積を大きくしたりオリフィスを複数設けたりすることができる。
【0023】
また本発明に係る質量分析装置では、リング電極の開口を通してイオンをリング電極内空間に導入しないので、前記電極部は、前記複数のリング電極の中のイオン輸送方向に最も手前に位置するリング電極の前方に開口を有さない円板状電極をさらに備え、該円板状電極にイオンを反発する直流電位が与えられる構成とすることができる。
【0024】
これにより、リング電極内空間に導入されたイオンは例えばガス流などに乗ってイオン輸送方向とは反対方向に向かった場合でも、円板状電極により形成される電場の作用により反発され、イオン輸送方向に進行するようになる。これにより、イオン輸送効率を一層高めることができる。
【0025】
なお、上述したように、リング電極内空間に側方から導入されるイオンを適切に収束させるには衝突冷却も十分に利用する必要があり、そのためには適度なガス圧力が必要である。そこで、リング電極内空間のガス圧を10〜10[Pa]の範囲内にするとよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る質量分析装置によれば、複数のリング電極を用いたファンネル構造の電極部に対し側方からリング電極内空間にイオンを導入し、高周波電場や衝突冷却による収束作用、及び、直流電場による搬送作用を利用して、高い効率でイオンを後段へと輸送することができる。このため、イオン源におけるイオンの収集方向とイオン輸送光学系におけるイオン輸送方向とが一致しておらず、略直交する状態であったとしても、イオン源から収集したイオンをそのまま例えば直線状の細管を通してイオン輸送光学系のリング電極内空間に導入することができる。したがって、イオン源でのイオンの収集効率やリング電極内空間までイオンを搬送する間の効率が従来より改善され、総合的に質量分析部により多くのイオンを供給することができ、分析感度の向上を図ることができる。また、イオン源とイオン輸送光学系の電極部との配置上の制約が少なくなるので、装置の小型化などのための装置設計が容易になるという利点もある。
【0027】
また、上述したように従来のイオンファンネルで問題であった出口端付近でのガス圧上昇をイオン光軸上に電極等を設置することなく回避することができる。これにより、後段の真空室の真空度を確保するためのポンプの負荷を軽減し、例えば従来よりも性能を落とした廉価な真空ポンプの使用が可能となる。また、ファンネル構造を採りながら軸ずらしを達成して、分析に不所望な中性粒子や光の影響を除去することができる。それにより、ノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例(第1実施例)であるAP−MALDI質量分析装置の概略構成図。
【図2】第1実施例の質量分析装置におけるイオン輸送光学系の構成図。
【図3】第1実施例の変形例のイオン輸送光学系の構成図。
【図4】第1実施例の変形例のイオン輸送光学系の構成図。
【図5】第1実施例のイオン輸送光学系を用いたESI質量分析装置の概略構成図。
【図6】第1実施例のイオン輸送光学系におけるイオン軌道のシミュレーション結果を示す図。
【図7】本発明の第2実施例であるICP質量分析装置の概略構成図。
【図8】第2実施例の質量分析装置におけるイオン輸送光学系の構成図。
【図9】一般的なイオンファンネルの電極部の概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施例]
本発明に係る質量分析装置の一実施例(第1実施例)について添付図面を参照して説明する。
図1は第1実施例によるAP−MALDI質量分析装置の概略構成図、図2はこの質量分析装置におけるイオン輸送光学系の構成図である。
【0030】
この質量分析装置は、略大気圧雰囲気であるイオン化室1と図示しない高性能真空ポンプ(ターボ分子ポンプ)により真空排気される高真空室7との間に、2つの中間真空室4、5が配設された多段差動排気系の構成を有する。イオン化室1において、分析対象の試料成分を含むサンプルSにレーザ光源2からレーザ光が照射され、これにより試料成分はイオン化される。第1中間真空室4内には特徴的なファンネル構造の電極部10がイオン輸送光学系の一部として配設され、第2中間真空室5内には多重極(例えば八重極)ロッド型のイオンガイド6が配設されている。さらに高真空室7内には質量分析器としての四重極質量フィルタ8とイオン検出器9とが配設されている。高真空室7内のガス圧は10−3〜10−5[Pa]程度の範囲、第2中間真空室5内のガス圧は10−1〜10−2[Pa]程度の範囲、第1中間真空室4内のガス圧は10〜10[Pa]程度の範囲にそれぞれ維持される。
【0031】
イオン化室1と第1中間真空室4とは本発明における細管に相当する直管状のキャピラリ管3を介して連通しており、その入口端はサンプルSの直上に、出口端は電極部10の内部に位置している。このキャピラリ管3の入口端と出口端との間には圧力差があるため、イオン化室1内の空気はキャピラリ管3を通して第1中間真空室4内に流れ込む。レーザ光の照射によりサンプルSから主として上方に放出されたイオンはキャピラリ管3内に吸い込まれ、ガス流に乗って第1中間真空室4内に運ばれる。
【0032】
図2(a)はイオン輸送光学系の電極部10をイオン光軸Cを含む平面で切断した端面を示し、図2(b)は(a)中のリング電極(切欠有り)13をイオン光軸Cに直交する平面で切断した端面を示している。図2(a)には電極部10のほかに回路部20も記載してある。電極部10は、複数のリング電極12が、その開口径がAの範囲では同一で、Bの範囲ではイオン輸送方向に向かって徐々に縮小するように、一定間隔で並べられたファンネル構造である。イオン輸送方向に一番手前側に位置するリング電極12の前方には、外径がそのリング電極12と同一で開口がない、円板状の電極14が配置されている。また、イオン輸送方向に手前側から4番目のリング電極13は、図2(b)に示すように、完全な環形状ではなくその一部が切欠部13aである平面略C形状である。この切欠部13aが第1中間真空室4とイオン化室1とを隔てる隔壁に向けて位置するように該リング電極13は設置されており、切欠部13aにより形成される空間にキャピラリ管3が設置されている。
【0033】
これは、通常、隣接するリング電極12の間隔を狭くする必要があるためにキャピラリ管3を通す十分な空間を確保するのが難しいためであり、隣接するリング電極12の間にキャピラリ管3を通す空間を確保できるのであれば、あえて平面略C形状のリング電極13を設ける必要はない。逆に、イオン輸送方向に連続する複数のリング電極を平面略C形状として、キャピラリ管3を通す空間を広く確保するようにしてもよい。
【0034】
上述したようにイオン光軸Cに沿って並ぶリング電極12、13には、制御部25の制御の下に高周波電源部23からコンデンサ22を介して、一枚おきに同一の高周波電圧(+RF)が印加され、隣接するリング電極12、13には位相が180°だけずれて振幅が同一である高周波電圧(−RF)が印加される。一方、リング電極12、13の中で開口径が漸減する範囲Bにおいては、印加する高周波電圧の振幅を開口径の減少に合わせて小さくすることで、イオンの輸送効率を向上させることができる。また、イオン輸送方向に最も手前に位置するリング電極12には直流電源部24から直流電圧Vが印加され、出口側のリング電極12には直流電圧Vが印加される。その間の各リング電極12、13には抵抗アレイ21を介して、電圧VとVとの間の直流電圧が段階的に印加される。円板状電極14には直流電源部24からイオンを反発させるような電場を近傍に形成するために直流電圧Vが印加され、さらにキャピラリ管3にも同様の目的で直流電圧Vが印加される。
【0035】
正イオンが分析対象である場合、Vは例えば100[V]、Vは0[V](接地電位)であって、イオン輸送方向に順次下がる電位勾配が形成される。また、V、Vは例えばVと同じ100[V]とすればよい。もちろん、電圧値はこれに限るものではなく、適宜変更することができる。また、負イオンが分析対象である場合には、電圧の極性が変わることは当然である。
【0036】
上記のような印加電圧により、リング電極12、13で囲まれる略漏斗形状の空間(リング電極内空間)にはイオンを閉じ込めるような高周波電場が形成され、これに重畳して、イオンをイオン輸送方向に搬送するような直流電場が形成される。上述の如くリング電極13は平面略C形状であるが、キャピラリ管3からは切欠部13aから遠ざかる方向にイオンが吐き出されるため、切欠部13aがあることで生じる電場の乱れはイオンの挙動には殆ど影響しない。
【0037】
上述したように、イオン化室1内でレーザ光照射によりサンプルSから発生したイオンはキャピラリ管3を通して第1中間真空室4に送られ、キャピラリ管3の出口端からリング電極内空間にイオン光軸Cと略直交する方向に放出される。キャピラリ管3は途中に屈曲部が存在しない直線状であるため、サンプルSの上方から吸い込まれたイオンはキャピラリ管3の内壁などに衝突する確率が相対的に低く、効率良くキャピラリ管3を通過する。キャピラリ管3の出口端から吐き出されるガス流はほぼ直進してリング電極12、13に当たり、その多くが隣接するリング電極12、13間の間隙を通って電極部10の外側に出る。このため、従来のイオンファンネルのように、リング電極内空間の出口開口16付近でガス圧が異常に高くなることがない。また、イオンと共にイオン化室1から運ばれて来た中性粒子等の非荷電粒子は、電場の影響を受けないためガス流と同様にほぼ直進し、リング電極内空間から排除される。
【0038】
上述のようにイオンはイオン輸送方向とは異なる方向に導入されるが、リング電極内空間にはイオンを閉じ込める高周波電場が形成されている。また、第1中間真空室4内には残留ガスが比較的多く、イオンは残留ガスとの衝突により冷却されて電場に捕捉され易くなる。特に、リング電極12、13の開口に向いた内縁部近傍には比較的高いポテンシャル障壁が形成されているため、衝突冷却により運動エネルギーが減衰したイオンはこの障壁を乗り越えられずにイオン光軸C方向へと押し戻される。このため、上記のようにイオン輸送方向とは異なる方向にイオンを導入しても、イオンの損失は少なくて済む。また、上述のように円板状電極14からイオン輸送方向にイオンを搬送する電位勾配が形成されているので、高周波電場により閉じ込められたイオンは電位勾配に従ってイオン輸送方向に、つまり出口開口16に向かって移動する。
【0039】
一部のイオンは乱れたガスの流れなどに乗ってイオン輸送方向と反対方向へ進む場合もあるが、円板状電極14に近付くと強い反発力を受けてイオン輸送方向へと向きを変え、最終的には出口開口16へと向かうことになる。したがって、イオン輸送方向と略直交する方向にリング電極内空間にイオンが導入されたにも拘わらず、イオンは効率良く出口開口16に向けて搬送される。出口開口16に近づくに従って開口径は縮小するため、イオンはイオン光軸C付近に収束され、最終的に小さな径(例えば1[mm]以下)のイオンビームとなって出射し、次の第2中間真空室5に効率良く送り込まれる。
【0040】
本実施例に係る質量分析装置におけるイオン輸送光学系ではイオンは上述したような挙動を示すが、これを確認するために本願発明者は上記とほぼ同様の構成のイオン輸送光学系におけるイオン軌道のシミュレーション計算を行った。その結果を図6を用いて説明する。この軌道計算の条件は、イオンの質量電荷比m/z:1000、イオンの初期運動エネルギー(リング電極内空間に放出される際の運動エネルギー):100[eV]、リング電極内空間のガス圧:133[Pa](1[Torr])、電極部10に印加する高周波電圧の振幅:60[Vp-p]、周波数:1.0[MHz]、V=V=100[V]、V=0[V]、リング電極の開口径:最大3[mm]、最小1[mm]、である。図6より、リング電極内空間に導入されたイオンが良好に収束されつつ出口開口16に向けて搬送されていることが分かる。
【0041】
キャピラリ管3を通してリング電極内空間へと流入するガスの速度を2.5×10 [m/s]と仮定し、分析対象のイオンの質量電荷比の上限を1000であるとすると、ガス流に乗ったイオンの運動エネルギーは最大でも30[eV]程度である。また、イオンの質量電荷比が2000であってもガス流に乗ったイオンの運動エネルギーは約65[eV]である。
上記のガス流速度:2.5×10 [m/s]は、大気圧雰囲気と低真空雰囲気とを結ぶ典型的なイオン輸送系である、サンプリングコーンとスキマーとで構成されるインターフェイスにおいて、サンプリングコーンとスキマーとの間に形成される約100[Pa]の空間(上述の第1中間真空室4に相当)へ、大気圧雰囲気から流れ込むガス流速の典型値である。上記実施例の構成における、大気圧雰囲気であるイオン化室1と第1中間真空室4とを結ぶ細いキャピラリ管3から噴出するガス流の流速もほぼ上記値程度であると推測でき、キャピラリ管3から噴出するガス流に乗ってリング電極12、13内空間へと導入されるイオン速度の上限はこの程度になっていると推測できる。したがって、上記イオン軌道シミュレーションにおける運動エネルギー:100[eV](m/z=1000)は、大気圧雰囲気からリング電極内空間へと導入されるイオンの運動エネルギーを、実際の状況よりも大きく見込んだ値であると考えられる。その仮定の下でも、イオンが良好に輸送されているシミュレーション結果から考えて、実際の装置でも、本発明における特徴的なイオン輸送系が良好な輸送特性を有するものと推測できる。
【0042】
一般に、キャピラリ管3の内径は0.5[mm]〜数[mm]程度であり、イオン化室1から第1中間真空室4へのイオンの供給量はこのキャピラリ管3のコンダクタンスに依存する。したがって、電極部10へのイオンの導入量を増やすには、キャピラリ管3のコンダクタンスを大きくすればよい。そのためには、キャピラリ管3の内径を大きくする、長さを短くする、といったことが考えられる。また、図3に示すように、同一内径(異なる内径でもよい)のキャピラリ管3を複数(この例では3本)設けるようにしてもよい。ただし、キャピラリ管3のコンダクタンスを大きくし過ぎると、第1中間真空室4内の真空度を確保するために真空排気ポンプの能力を上げる必要が生じることがあるから注意を要する。
【0043】
また、図4に示すように、キャピラリ管3のほかにガス導入管30を設け、該ガス導入管30を通して第1中間真空室4内に積極的に特定の目的のためのガスを導入し、リング電極内空間において上記ガスの作用によりイオンに対する操作等を行うことも可能である。例えば、N、Ar、Xe等の衝突ガスを導入し、リング電極内空間で衝突誘起解離を生じさせてフラグメントイオンの質量分析を行うようにすることができる。また、He、Arのような希ガス、又はN2ガスを長寿命の励起状態にした準安定ガスなどを導入し、イオン化室1内でイオン化されずにリング電極内空間に導入された試料分子をポストイオン化することもできる。
【0044】
また、四重極質量フィルタのように比較的質量分解能の低い質量分析器では、組成が異なるものの質量電荷比m/zが質量分解能以上に近い分子(原子)イオンが存在すると、区別して検出できないため、検出対象イオンが非検出対象イオンの干渉を受けて分析が困難になる。検出対象イオン(信号イオン)に対して上述の関係にある非検出対象イオンを、妨害イオンと呼ぶ。高質量分解能を有する質量分析器(飛行時間型又はセクタ型質量分析器)を用いれば、妨害イオンと信号イオンとを分離することが可能であるが、四重極質量フィルタなどの質量分析器を用いた場合には、妨害イオンを除去する工夫が必要となる。妨害イオンを除去する方法として、HN3、O2、H2などを反応ガスとして作用させ妨害イオンを除去する(別の組成のイオン又は中性ガスに変化させる)方法や、Heガスを衝突ガスとして作用させ、衝突断面積の違いによるエネルギー損失の違いを利用し、衝突過程後に持つエネルギーにより選別する方法、などが開発されている。上記実施例(及び後述の各実施例)の構成においても、第1中間真空室4内に上記のような反応ガスや衝突ガスを導入することにより、リング電極空間内で妨害イオンを除去し、四重極質量フィルタのような低分解能質量分析器へ妨害イオンが導入されることを回避することができる。
【0045】
また第1実施例の質量分析装置は大気圧MALDIをイオン源としていたが、他の大気圧イオン源を用いた構成に容易に変形することができる。図5はESIイオン源を用いた例である。即ち、ESIスプレイ部31に供給された試料液は、ESIスプレイ部31から略大気圧雰囲気のイオン化室1内に微細な帯電液滴として噴霧される。この帯電液滴が周囲の空気等と衝突を繰り返して微細化される過程でイオンが生成される。生成されたイオンは微細液滴とともに直管状の脱溶媒管32に吸い込まれ、加熱されている脱溶媒管中で液滴中の溶媒が気化されることでさらに一層イオン化が進む。そして、ガス流に乗ってイオンは脱溶媒管32の出口端からリング電極内空間に吐き出され、上述したように出口開口16に向かって輸送される。APCIやAPPIをイオン源とする場合でも、基本的には同様である。
【0046】
なお、図1〜図5では、ファンネル構造の電極部10内のイオン光軸Cとキャピラリ管3の中心軸とを直交させているが、両者は完全に直交した状態でなくてもよいことは明らかであり、直交しているとみなし得る程度の角度傾きがあったとしても上記のような効果を得ることができる。
【0047】
[第2実施例]
本発明に係る質量分析装置の他の実施例(第2実施例)について添付図面を参照して説明する。
図7は第2実施例によるICP質量分析装置の概略構成図、図8はこの質量分析装置におけるイオン輸送光学系の構成図である。上記第1実施例における質量分析装置及びイオン輸送光学系と同じ構成要素には同一符号を付して詳しい説明を略す。
【0048】
この質量分析装置では、イオン化室1と第1中間真空室4とを隔てて円錐形状のサンプリングコーン41が設けられ、サンプリングコーン41の頂部に穿設された微小径のオリフィス42を通してイオンが電極部10のリング電極内空間に導入されるようになっている。このために、イオン輸送方向に前半部のリング電極の多くは、全周の2/5程度の範囲が切り欠かれた略C形状のリング電極(実際には環状ではないが、便宜的に「リング電極」と呼ぶ)17となっている。それ以外の点は、第1実施例におけるイオン輸送光学系と同じである。
【0049】
このICP質量分析装置において、イオン源であるプラズマトーチ40で生成されるプラズマ炎中で発生したイオンは、サンプリングコーン41のオリフィス42を経て第1中間真空室4内のリング電極内空間に導入される。このときのイオンの導入方向は第1実施例と同様に、イオン輸送方向と略直交する方向である。プラズマ炎に由来する光や中性粒子などは直進するため、第2中間真空室5に送られることはない。一方、イオンは高周波電場及び直流電場の作用と衝突冷却の作用とにより、効率良く収束されて出口開口16から小径のビームとして出射される。これにより、この質量分析装置においても、より多くのイオンを質量分析に供し、高い分析感度を実現することができる。
【0050】
ただし、ICP質量分析装置が分析対象とするイオンは、Li+〜U+のような元素イオンで、その質量電荷比m/zはおよそ7〜238と小さく、リング電極開口径が漸減するイオンファンネル後部において輸送効率が低下することが知られている。そのため、本発明をICP質量分析装置に適用し、元素イオンのような質量電荷比m/zの小さいイオンを効率良く輸送する場合には、輸送効率とイオン収束性(又は後段の真空室の圧力)との兼ね合い(トレードオフ)により、ファンネル構造の電極部の開口径を設定することが望ましい。
【0051】
もちろん、この第2実施例の質量分析装置においても第1実施例と同様に、オリフィス42を複数設けることでコンダクタンスを大きくし、イオン量を増やすことができる。
【0052】
なお、上記実施例はいずれも本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜、変更、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
【符号の説明】
【0053】
1…イオン化室
2…レーザ光源
3…キャピラリ管
4…第1中間真空室
5…第2中間真空室
6…イオンガイド
7…高真空室
8…四重極質量フィルタ
9…イオン検出器
C…イオン光軸
S…サンプル
10…電極部
12、13、17…リング電極
13a…切欠部
14…円板状電極
16…出口開口
20…回路部
21…抵抗アレイ
22…コンデンサ
23…高周波電源部
24…直流電源部
25…制御部
30…ガス導入管
31…ESIスプレイ部
32…脱溶媒管
40…プラズマトーチ
41…サンプリングコーン
42…オリフィス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガス圧であるイオン源で生成したイオンを第1ガス圧よりも低い第2ガス圧の真空雰囲気中に配設された質量分析部へ輸送して分析する質量分析装置において、
a)第1ガス圧よりも低く第2ガス圧よりも高いガス圧の真空雰囲気中に配置され、イオン輸送方向に沿った少なくとも一部範囲で開口径が漸減するように複数のリング電極をイオン輸送方向に並べたファンネル構造である電極部と、イオン輸送方向に隣接するリング電極に位相が反転した高周波電圧を印加するとともに、イオン輸送方向にイオンを進行させる電位勾配が形成されるように各リング電極に直流電圧を印加する電圧印加部と、を含むイオン輸送光学系と、
b)前記電極部の複数のリング電極で囲まれるリング電極内空間の中でイオン輸送方向に最も手前に位置するリング電極よりも後方の位置に、イオン輸送方向に略直交する方向にイオンを導入するイオン導入部と、
を備えることを特徴とする質量分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の質量分析装置であって、
前記イオン導入部は、出口端がリング電極内空間に、入口端が前記イオン源で生成されたイオンを収集可能な位置に配置された細管であり、該細管の少なくとも出口端にイオンを反発する直流電位が与えられることを特徴とする質量分析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の質量分析装置であって、
前記細管を複数備えることを特徴とする質量分析装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の質量分析装置であって、
前記複数のリング電極の少なくとも1つをその一部を切り欠いた略C形状とし、その切り欠きにより形成された空間に前記細管を配置したことを特徴とする質量分析装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかに記載の質量分析装置であって、
前記細管は入口端から出口端まで直線形状であることを特徴とする質量分析装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれかに記載の質量分析装置であって、
前記イオン源はエレクトロスプレイイオン源、大気圧化学イオン源、大気圧光イオン源のいずれかであり、前記細管は加熱された脱溶媒管であることを特徴とする質量分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の質量分析装置であって、
前記複数のリング電極の中のイオン輸送方向に連続する所定数をそれぞれその一部を切り欠いた略C形状とし、
前記イオン導入部は、前記切り欠きにより形成される空間に配設された、イオンサンプリング用のオリフィスを有する電極であり、該電極にイオンを反発する直流電位が与えられることを特徴とする質量分析装置。
【請求項8】
請求項7に記載の質量分析装置であって、
前記オリフィスを複数備えることを特徴とする質量分析装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の質量分析装置であって、
前記電極部は、前記複数のリング電極の中のイオン輸送方向に最も手前に位置するリング電極の前方に開口を有さない円板状電極をさらに備え、該円板状電極にイオンを反発する直流電位が与えられることを特徴とする質量分析装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の質量分析装置であって、
リング電極内空間のガス圧力が10〜10[Pa]の範囲内であることを特徴とする質量分析装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の質量分析装置であって、
第1ガス圧は略大気圧又は大気圧以上のガス圧であることを特徴とする質量分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−159422(P2011−159422A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18326(P2010−18326)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】