説明

質量分析装置

【課題】低コストで高スループットな分析をする。
【解決手段】多重極ロッド電極1を有するイオン透過部37と、多重極ロッド電極1へ電圧を印加する電源および回路部5と、電源部を制御する制御部とを備え、多重極ロッド電極1は、互いに軸方向の異なる位置で複数のセグメントロッド群に分割され、それぞれのセグメントロッド群にはロッド群毎に異なる直流電圧が印加され、ロッド電極の分割位置により異なる電位状態の領域を形成することを特徴とする質量分析装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低コストで高スループット分析が可能な質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析装置では、イオン源で生成したイオンの中から特定の質量のイオンを選択し、そのイオンを分解し、分解したイオンの質量を分析することで、試料の詳細な構造を同定するという手順のMS/MS分析が行われる場合が多い。例えば、イオン輸送部(Q0)、第1のイオン分離部(Q1)、イオン解離部(Q2)、第2のイオン分離部(Q3)の全てが多重極ロッド電極(代表的には四重極ロッド電極)で構成される質量分析装置の場合、イオン源で生成したイオンは、Q0の多重極ロッド電極への高周波(RF)電圧印加により、効率良くQ0を透過し、Q1に導入される。Q1は、多重極ロッド電極にRF電圧と直流(DC)電圧を印加することで、導入されたイオンの中から特定の質量を持つイオンのみを透過することができるため、四重極質量フィルター(QMF)と呼ばれる。Q1で選択、分離された特定イオンはQ2に導入される。Q2は、多重極ロッド電極にRF電圧を印加することでイオンを透過させながら、イオンをQ2雰囲気中の中性ガス(窒素、ヘリウム、アルゴンなど)と衝突させることで分解(CID)する機能を有するため、コリジョンセルと呼ばれる。Q2で分解したイオンはQ3に導入される。Q3は、Q1と同様に多重極ロッド電極にRF電圧とDC電圧を印加することで、導入されたイオンを質量に応じて分離しながら透過させることができるため、Q3もまたQMFとよばれる。Q3で分離されたイオンは、質量に応じて出口から排出され検出器で検出される。
【0003】
通常のQ2でのイオン解離は中性ガスとの衝突により行われるため、Q2に導入されたイオンは衝突を繰り返すことで、移動速度が遅くなり、Q2の透過時間が長くなる。Q2の長さやイオンの質量などにもよるが、Q2を透過するのに通常数ms以上要する。このため、分析のスループットを向上させるのが困難である。
【0004】
特許文献1では、Q2でのイオン透過時間の短縮のため、様々な方式を提案している。以下に、詳細を示す。
(1)多重極ロッド電極を軸方向に分割し、分割した電極に異なるDCオフセット電圧を印加することで軸上電場を形成し、その電場によりイオンを軸方向に加速させ透過する。
(2)多重極ロッド電極をテーパ形状のロッド電極で構成することで軸上電場を形成し、その電場によりイオンを軸方向に加速させ透過する。
(3)多重極ロッド電極のロッド電極を斜めに配置することにより軸上電場を形成し、その電場によりイオンを軸方向に加速させ透過する。
(4)多重極ロッド電極のロッド電極の間隙位置に軸上電場を形成する電極を配置し、その電場によりイオンを軸方向に加速させ透過する。
(5)抵抗体被膜を有するロッド電極で多重極ロッド電極を構成し、ロッド電極の両端に電位差をかけることで軸上電場を形成し、その電場によりイオンを軸方向に加速させ透過する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許5,847,386
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された各々の装置構成(1)〜(5)では、以下のような問題点がある。
(1)イオンを加速させるための効果的な軸上電場を得るためには、より連続的な電場を形成する必要がある。そのためには、ロッド電極をより短い長さに分割する必要があるが、電極数を多くする必要があるため、配線が煩雑なり、組立ても複雑になり、コスト増加を招く。
(2)テーパ形状のロッド電極は、電極自体の製法が複雑になる他、電極を保持する部品の形状も複雑になり、組立て精度を維持することが容易ではなくなる。
(3)テーパロッドとは異なり電極自体の製法は比較的単純であるが、電極を保持する部品の形状が複雑になり、組立て精度を維持することが容易ではなくなる。
(4)ロッド電極の間隙位置に電極を配置するため、部品数が多くなることに加え、組立ても複雑になり、コスト増加を招く。
(5)抵抗体被膜を有するロッド電極は、製作時に均一な膜厚を得る必要があるため、製法コストが高くなる。またRF電圧を印加するロッド電極を抵抗体で構成し、その両端に電位差をかけるため、電源の構成が複雑になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の代表的な構成として、多重極ロッド電極を有するイオン透過部を備えた質量分析装置であって、多重極ロッド電極は、互いに軸方向の異なる位置で複数のセグメントロッドに分割されたロッド電極を有することを特徴とする。
【0008】
さらに、多重極ロッドで形成されるセグメントロッド群ごとに電源を設けることにより、セグメントロッド群の数ではなく、ロッド電極の分割位置により異なる電位状態の領域を形成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、低コスト化が可能な構成でイオン透過時間を短縮できるイオン透過部を実現でき、高スループット分析が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の装置構成図
【図2】実施例1のロッド電極の分割位置の説明図
【図3】実施例1のシミュレーションモデルの説明図
【図4】実施例1の中心電位のシミュレーション結果の説明図
【図5】実施例1のイオン透過時間のシミュレーション結果の説明図
【図6】実施例1のLMCO下限のシミュレーション結果の説明図
【図7】実施例2の装置構成図
【図8】実施例2のロッド電極の分割位置の説明図
【図9】実施例3の装置構成図
【図10】実施例3のロッド電極の分割位置の説明図
【図11】実施例4の装置構成図
【図12】実施例4のロッド電極の分割位置の説明図
【図13】実施例5の装置構成図
【図14】実施例5のロッド電極の分割位置の説明図
【図15】実施例6のロッド電極の分割位置の説明図
【図16】実施例7のロッド電極の分割位置の説明図
【図17】実施例8の装置構成図
【図18】実施例9の装置構成図
【図19】実施例10の装置構成図
【図20】実施例11の装置構成図
【図21】実施例12のロッド電極の分割位置の説明図
【図22】実施例13の装置構成図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
実施例1では、イオン透過部を構成する多重極ロッド電極が4本のロッド電極からなる四重極ロッド電極において、全ての各ロッド電極を異なる軸方向位置で2分割している構成について説明する。
【0012】
図1および図2に本方式を用いた四重極ロッド電極の構成の説明図を示す。図1は各ロッド電極の配置や電圧印加方法に関する説明図であり、図2は各ロッド電極の分割位置の説明図である。
【0013】
多重極ロッド電極1は、4本のロッド電極2A-2Dで構成されている。4本のロッド電極2A-2Dは、各々セグメントロッド2A−1、2A−2、2B−1、2B−2、2C−1、2C−2、2D−1、2D−2に分割されている。多重極ロッド電極1をイオン透過部37として使用する場合、多重極ロッド電極1の片端からイオン3が導入され、多重極ロッド電極1を透過し、反対側からイオン4が排出される。
【0014】
次に、電源および回路5により多重極ロッド電極1に電圧を印加する方法について以下説明する。ロッド電極2A、2Bとロッド電極2C、2Dに逆位相の高周波電圧6が印加され、さらに、多重極ロッド(2A−1、2B−1、2C−1、2D−1)から成るセグメントロッド群と多重極ロッド(2A−2、2B−2、2C−2、2D−2)から成るセグメントロッド群には各々異なる直流電圧V1、V2が印加される。セグメントロッド2A−1、2B−1には、コンデンサC1を介して高周波電圧6が印加され、抵抗R1を介して直流電圧V1が印加される。セグメントロッド2C−1、2D−1には、コンデンサC2を介して高周波電圧6が印加され、抵抗R2を介して直流電圧V1が印加される。セグメントロッド2A−2、2B−2には、コンデンサC3を介して高周波電圧6が印加され、抵抗R3を介して直流電圧V2が印加される。セグメントロッド2C−2、2D−2には、コンデンサC4を介して高周波電圧6が印加され、抵抗R4を介して直流電圧V2が印加される。
【0015】
次に、各ロッド電極の分割位置について説明する。図2のように、4本のロッド電極2A-2Dを各々異なる軸方向位置で2分割することで、見かけ上5個のセグメントS1―S5に分割できる。このように、分割位置が径方向で重ならないように分割されたロッド電極を有することで、電位状態の異なる軸方向の領域を、セグメントロッドの数分だけではなく、それよりも多い軸方向の分割位置により区切られた領域の数だけ形成することができる。つまり図1のようにセグメントロッド2A−1、2B−1、2C−1、2D−1とセグメントロッド2A−2、2B−2、2C−2、2D−2に各々異なる直流電圧V1、V2を印加した場合、各々のセグメントS1−S5での平均電位が、セグメントS1では(4×V1)/4、セグメントS2では(3×V1+V2)/4、セグメントS3では(2×V1+2×V2)/4、セグメントS4では(V1+3×V2)/4、セグメントS5では(4×V2)/4となり、5種類の異なる平均電位を持つセグメントS1−S5に分割することができる。このときの分割された各々のセグメントS1−S5は、セグメントの長さL1−L5で表すこともできる。
【0016】
尚、互いに分割位置が径方向で重ならないように分割されたロッド電極が多重極ロッド電極の中に含まれていればよく、多重極ロッド電極の中には分割されていないロッド電極が含まれていてもよい。
【0017】
次に、図1、図2で説明した多重極ロッド電極1の中心電位などをシミュレーションするためのモデルについて図3を用いて説明する。多重極ロッド電極1の詳細な構造や電圧印加方法は図1および図2と同様である。図3では、A−A断面図を図3(A)、B−B断面図を図3(B)、C−C断面図を図3(C)とする。
【0018】
多重極ロッド電極1の片端から間隙距離G1だけ離れた位置に入口電極7を配置し、反対の端から間隙距離G2だけ離れた位置に出口電極8を配置しており、入口電極7と出口電極8は各々開口部9―10を有し、各々に直流電圧Vin、Voutが印加される。
【0019】
セグメントロッド2A−1〜2D−1に印加する直流電圧V1=5V、セグメントロッド2A−2〜2D−2に印加する直流電圧V2=0V、直流電圧Vin=5V、Vout=−10V、間隙距離G1=4mm、G2=2mmとしたときの中心電位のシミュレーション結果を図4に示す。図4の中心電位のシミュレーション結果11では、4本のロッド電極2A−2Dを異なる軸方向位置で2分割した本方式の結果12と、全てのロッド電極を同じ軸方向位置で3分割した結果13を示す。
【0020】
本方式の結果12は、多重極ロッド電極1のセグメントの長さL1、L2、L3、L4、L5を各々20mm、10mm、10mm、10mm、20mm(合計70mm)とした時の結果である。これに対し、3分割した結果13は、全てのロッドを20mm、30mm、20mm(合計70mm)の3分割にした時の結果である。図4の本方式の結果12から、異なる軸方向位置で4本のロッド電極2A−2Dを分割することで、少ない分割数でも見かけ上の分割数が増えるため、3分割した結果13のような階段状の電界にならずに、軸方向に対して連続した滑らかな傾斜電位が得られることが分かる。なお、図4の横軸の0mmの位置が入口電極7の位置、76mmの位置が出口電極8の位置である。また、多重極ロッド電極1の内接円半径r0=4.35mm、4本ロッド電極2A−2Dのロッド直径D=10mmとしている。
【0021】
次に図3のモデルを使用し、イオンが多重極ロッド電極1の雰囲気中のバッファーガスと衝突しながら透過する時間をシミュレーションした結果を図5に示す。図5のイオン透過時間のシミュレーション結果14には、セグメントロッド2A−1〜2D−1に印加する直流電圧V1とセグメントロッド2A−2〜2D−2に印加する直流電圧V2との電位差V1−V2が10V、5V、2V、1V、0.5V、0.2V、0.1V、0Vの結果15−22をそれぞれ示している。図5の横軸は透過時間(TOF)を示しており、横軸に示したTOFの範囲に透過しカウントされたイオンの個数を縦軸に示している。図5より0.5V以上の電位差の条件でイオン透過の時定数が100μs以内となり、短時間での多重極ロッド電極1のイオン透過が可能となる。なお、シミュレーションの条件は、イオンの質量電荷比(m/z)=600(正イオン)、衝突断面積=2.8e−18m、イオン個数=1000個、バッファーガス=窒素10mTorr(1.3Pa)、イオンの入射エネルギー=10eVで行った。
【0022】
次に図3のモデルを使用し、多重極ロッド電極1を透過可能なイオンのm/zに対して、そのときの低質量カットオフ(LMCO)の下限をシミュレーションにより求めた結果を図6に示す。図6のLMCO下限のシミュレーション結果23には、セグメントロッド2A−1〜2D−1に印加する直流電圧V1とセグメントロッド2A−2〜2D−2に印加する直流電圧V2との電位差V1−V2が5V、2V、1V、0.5Vの結果24−27をそれぞれ示している。
【0023】
LMCO下限とはその条件時に透過可能なm/z下限であり、透過イオンのm/zに対しLMCO下限のm/zが小さいほど、透過可能なm/z範囲(マスウインドウ)が広いと言える。特に、多重極ロッド電極1で構成されたイオン透過部37をイオン解離手段として用いる場合、透過イオンがバッファーガスと衝突し分解しフラグメントイオンが生成するため、特に低質量側に広いマスウインドウを要求される。
【0024】
本方式では、図1および図2に示したセグメントS2−S4では、異なる直流電圧V1またはV2が印加されるセグメントロッドが混在するため、径方向に対して電位勾配が生じる。LMCOが低い条件では、多重極ロッド電極内の擬ポテンシャルが低くなるため、セグメントロッドの電位差による径方向の電位勾配によりイオンが径方向に排除されてしまう可能性が高いが、図6から電位差1V程度では、例えばm/z=400の透過イオンに対してLMCO下限がm/z=30程度であり、10倍以上のマスウインドウが確保できるため、本方式が実用上問題ないことが分かる。
【0025】
また、図1および図2のように、片端(例えば図の左側)から見て最も短いセグメントロッド2A−1と、その次に短いセグメントロッド2B−1を、対向位置に配置させることで、径方向の電位勾配の影響を最小限に抑えることができる。詳しくは、セグメントS1の領域ではセグメントロッド2A−1〜2D−1の全てに同じ直流電圧V1が印加されているので、径方向において対象であるため径方向の電位勾配は生じない。セグメントS2の領域ではセグメントロッド2B−1〜2D−1には直流電圧V1が印加され、セグメントロッド2A−2には直流電圧V2が印加されるので、径方向において非対象になるため径方向の電位勾配が生じる。セグメントS3の領域ではセグメントロッド2C−1〜2D−1には直流電圧V1が印加され、セグメントロッド2A−2〜2B−2には直流電圧V2が印加されるので、対向位置のセグメントロッド同士には同じ直流電圧が印加されているため、多重極ロッド電極1の中心軸付近では径方向の電位勾配がほとんど生じない。つまり、イオンがセグメントS1からS3を通る際、セグメントロッド2A−1の次に短いセグメントロッド2B−1を対向位置に配置させることで、セグメントS2での径方向の電位勾配により軌道が不安定になっても、セグメントS3により再び中心軸付近にイオンを収束することができる。これに対し、セグメントロッド2C−1または2D−1をセグメントロッド2A−1の次に短い長さにすると、セグメントS3においても中心軸上で径方向の電位勾配が生じ、連続して電位勾配の影響を受ける領域が長くなることでイオン軌道の不安定状態も連続してしまうため、高周波電圧6の影響によりイオンが径方向に排除されてしまうことがある。
【0026】
本方式では、イオンが正イオンの場合として、セグメントロッド2A−1〜2D−1に印加する直流電圧V1とセグメントロッド2A−2〜2D−2に印加する直流電圧V2の関係がV1>V2の場合の説明をしたが、V1<V2の条件にすることで、図4とは逆の勾配の電位(出口電極8の方向が高い)が得られ、負イオンの加速に効果的な条件にすることも可能である。直流電圧の大きさは、イオン導入側のセグメントロッド群に印加する電圧値の絶対値が、イオン排出側のセグメントロッド群に印加する電圧値の絶対値よりも大きいようにすればよい。
【0027】
本方式では、このように、軸方向に異なる電位状態の領域を形成するのに、当該異なる電位状態の領域の数だけの直流電源が必要になるのではない。分割されたセグメントロッド群の数の直流電源があれば、ロッドの分割位置に応じて、セグメントロッド群の数よりも多くの異なる電位状態の領域を形成することができる。したがって、電源や配線が簡便な構成で、イオン透過時間を短縮させ、そして高スループットな分析を行うことができる。
【0028】
以上、実施例1では、イオン透過部を構成する多重極ロッド電極が4本のロッド電極からなる四重極ロッド電極において、全ての各ロッド電極を異なる軸方向位置で2分割している構成での、原理および効果について説明した。
【実施例2】
【0029】
実施例2では、イオン透過部を構成する多重極ロッド電極が4本のロッド電極からなる四重極ロッド電極において、全ての各ロッド電極を異なる軸方向位置で3分割している構成について説明する。
【0030】
図7および図8に本方式を用いた四重極ロッド電極の構成の説明図を示す。図7は各ロッド電極の配置や電圧印加方法に関する説明図であり、図8は各ロッド電極の分割位置の説明図である。
【0031】
多重極ロッド電極1は、4本のロッド電極2A-2Dで構成されている。4本のロッド電極2A-2Dは、各々セグメントロッド2A−1、2A−2、2A−3、2B−1、2B−2、2B−3、2C−1、2C−2、2C−3、2D−1、2D−2、2D−3に分割されている。多重極ロッド電極1をイオン透過部37として使用する場合、多重極ロッド電極1の片端からイオン3が導入され、多重極ロッド電極1を透過し、反対側からイオン4が排出される。
【0032】
次に、電源および回路5により多重極ロッド電極1に電圧を印加する方法について以下説明する。ロッド電極2A、2Bとロッド電極2C、2Dに逆位相の高周波電圧6が印加され、さらに、セグメントロッド2A−1、2B−1、2C−1、2D−1とセグメントロッド2A−2、2B−2、2C−2、2D−2とセグメントロッド2A−3、2B−3、2C−3、2D−3には各々異なる直流電圧V1、V2、V3が印加される。セグメントロッド2A−1、2B−1には、コンデンサC1を介して高周波電圧6が印加され、抵抗R1を介して直流電圧V1が印加される。セグメントロッド2C−1、2D−1には、コンデンサC2を介して高周波電圧6が印加され、抵抗R2を介して直流電圧V1が印加される。セグメントロッド2A−2、2B−2には、コンデンサC3を介して高周波電圧6が印加され、抵抗R3を介して直流電圧V2が印加される。セグメントロッド2C−2、2D−2には、コンデンサC4を介して高周波電圧6が印加され、抵抗R4を介して直流電圧V2が印加される。セグメントロッド2A−3、2B−3には、コンデンサC5を介して高周波電圧6が印加され、抵抗R5を介して直流電圧V3が印加される。セグメントロッド2C−3、2D−3には、コンデンサC6を介して高周波電圧6が印加され、抵抗R6を介して直流電圧V3が印加される。
【0033】
次に、各ロッド電極の分割位置について説明する。図8のように、4本のロッド電極2A-2Dを各々異なる軸方向位置で3分割することで、見かけ上9個のセグメントS1―S9に分割できる。つまり実施例1と同様に9種類の異なる平均電位を持つセグメントS1−S9に分割することができる。このときの分割された各々のセグメントS1−S9は、セグメントの長さL1−L9で表すこともできる。
【0034】
実施例2においても実施例1と同様の効果が得られるが、実施例1よりも分割数が多いので、より連続的で滑らかな軸方向の傾斜電位が得られる。
【0035】
また、図7および図8のように、片端(例えば図の左側)から見て最も短いセグメントロッド2A−1と、その次に短いセグメントロッド2B−1を、対向位置に配置させることで、径方向の電位勾配の影響を最小限に抑えことができる。
【0036】
以上、実施例2では、イオン透過部を構成する多重極ロッド電極が4本のロッド電極からなる四重極ロッド電極において、全ての各ロッド電極を異なる軸方向位置で3分割している構成での、原理および効果について説明した。
【実施例3】
【0037】
実施例3では、イオン透過部を構成する多重極ロッド電極が4本のロッド電極からなる四重極ロッド電極において、対向位置にある2本のロッド電極のペア同士は同じ軸方向位置で3分割し、異なるペア間では異なる軸方向位置で3分割する構成について説明する。
【0038】
図9および図10に本方式を用いた四重極ロッド電極の構成の説明図を示す。図9は各ロッド電極の配置や電圧印加方法に関する説明図であり、図10は各ロッド電極の分割位置の説明図である。
【0039】
多重極ロッド電極1は、4本のロッド電極2A-2Dで構成されている。4本のロッド電極2A-2Dは、各々セグメントロッド2A−1、2A−2、2A−3、2B−1、2B−2、2B−3、2C−1、2C−2、2C−3、2D−1、2D−2、2D−3に分割されている。多重極ロッド電極1をイオン透過部37として使用する場合、多重極ロッド電極1の片端からイオン3が導入され、多重極ロッド電極1を透過し、反対側からイオン4が排出される。
【0040】
次に、電源および回路5により多重極ロッド電極1に電圧を印加する方法について以下説明する。ロッド電極2A、2Bとロッド電極2C、2Dに逆位相の高周波電圧6が印加され、さらに、セグメントロッド2A−1、2B−1、2C−1、2D−1とセグメントロッド2A−2、2B−2、2C−2、2D−2とセグメントロッド2A−3、2B−3、2C−3、2D−3には各々異なる直流電圧V1、V2、V3が印加される。セグメントロッド2A−1、2B−1には、コンデンサC1を介して高周波電圧6が印加され、抵抗R1を介して直流電圧V1が印加される。セグメントロッド2C−1、2D−1には、コンデンサC2を介して高周波電圧6が印加され、抵抗R2を介して直流電圧V1が印加される。セグメントロッド2A−2、2B−2には、コンデンサC3を介して高周波電圧6が印加され、抵抗R3を介して直流電圧V2が印加される。セグメントロッド2C−2、2D−2には、コンデンサC4を介して高周波電圧6が印加され、抵抗R4を介して直流電圧V2が印加される。セグメントロッド2A−3、2B−3には、コンデンサC5を介して高周波電圧6が印加され、抵抗R5を介して直流電圧V3が印加される。セグメントロッド2C−3、2D−3には、コンデンサC6を介して高周波電圧6が印加され、抵抗R6を介して直流電圧V3が印加される。
【0041】
次に、各ロッド電極の分割位置について説明する。図10のように、4本のロッド電極2A-2Dの中で、対向位置にある2本のロッド電極2A、2Bおよび2C、2Dを同じ軸方向位置で3分割し、異なるペア間では異なる軸方向位置で3分割することで、見かけ上5個のセグメントS1―S5に分割できる。つまり実施例1と同様に5種類の異なる平均電位を持つセグメントS1−S5に分割することができる。このときの分割された各々のセグメントS1−S5は、セグメントの長さL1−L5で表すこともできる。
【0042】
実施例3においても実施例1または実施例2と同様の効果が得られるが、同じ3分割ロッド電極を用いた実施例2よりも見かけ上の分割数が少ないので軸方向の傾斜電位の連続状態は劣るが、対向位置のロッド電極の分割位置が軸方向で一致しているので、セグメントS1〜S5の全ての領域において対向位置のセグメントロッド同士に同じ直流電圧を印加される。従って、全領域において多重極ロッド電極1の中心軸付近での径方向の電位勾配の影響が低減することが可能である。
【0043】
以上、実施例3では、イオン透過部を構成する多重極ロッド電極が4本のロッド電極からなる四重極ロッド電極において、対向位置にある2本のロッド電極のペア同士は同じ軸方向位置で3分割し、異なるペア間では異なる軸方向位置で3分割する構成での、原理および効果について説明した。
【実施例4】
【0044】
実施例4では、イオン透過部を構成する多重極ロッド電極が6本のロッド電極からなる六重極ロッド電極において、全ての各ロッド電極を異なる軸方向位置で2分割している構成について説明する。
【0045】
図11および図12に本方式を用いた六重極ロッド電極の構成の説明図を示す。図11は各ロッド電極の配置に関する説明図であり、図12は各ロッド電極の分割位置の説明図である。
【0046】
多重極ロッド電極1は、6本のロッド電極2A-2Fで構成されている。6本のロッド電極2A-2Fは、各々セグメントロッド2A−1、2A−2、2B−1、2B−2、2C−1、2C−2、2D−1、2D−2、2E−1、2E−2、2F−1、2F−2に分割されている。多重極ロッド電極1をイオン透過部37として使用する場合、多重極ロッド電極1の片端からイオン3が導入され、多重極ロッド電極1を透過し、反対側からイオン4が排出される。
【0047】
電源および回路5による多重極ロッド電極1に電圧を印加する方法についての図による詳細な説明は省略するが、実施例1とほぼ同様で、ロッド電極2A、2D、2Eとロッド電極2B、2C、2Fに逆位相の高周波電圧6が印加され、さらに、セグメントロッド2A−1、2B−1、2C−1、2D−1、2E−1、2F−1とセグメントロッド2A−2、2B−2、2C−2、2D−2、2E−2、2F−2には各々異なる直流電圧V1、V2が印加される。
【0048】
次に、各ロッド電極の分割位置について説明する。図12のように、6本のロッド電極2A-2Fを各々異なる軸方向位置で2分割することで、見かけ上7個のセグメントS1―S7に分割できる。つまり7種類の異なる平均電位を持つセグメントS1−S7に分割することができる。このときの分割された各々のセグメントS1−S7は、セグメントの長さL1−L7で表すこともできる。
【0049】
本実施例においても、実施例1と同様の効果が得られるが、実施例1と同じ2分割であっても、ロッド電極の本数が多いため見かけ上の分割数が多くなり、より連続的で滑らかな軸方向の傾斜電位が得られる。
【0050】
また、六重極の多重極ロッド電極は、四重極に比べ一般的にマスウインドウが広いため、径方向の電位勾配の影響がある場合でも四重極よりも広いマスウインドウを確保することができる。
【0051】
また、図11および図12のように、片端(例えば図の左側)から見て最も短いセグメントロッド2A−1と、その次に短いセグメントロッド2B−1を対向位置に配置させ、さらに、3番目と5番目に短いセグメントロッド2C−1、2E−1の各々の次に短いセグメントロッド2D−1、2F−1を各々の対向位置に配置させることで、径方向の電位勾配の影響を最小限に抑えことができる。つまり、片端からみて奇数番目に短いセグメントロッドの対向位置に、その次に短いセグメントロッドを配置することが重要となる。
【0052】
以上、実施例4では、イオン透過部を構成する多重極ロッド電極が6本のロッド電極からなる六重極ロッド電極において、全ての各ロッド電極を異なる軸方向位置で2分割している構成での、原理および効果について説明した。
【実施例5】
【0053】
実施例5では、イオン透過部を構成する多重極ロッド電極が8本のロッド電極からなる八重極ロッド電極において、全ての各ロッド電極を異なる軸方向位置で2分割している構成について説明する。
【0054】
図13および図14に本方式を用いた八重極ロッド電極の構成の説明図を示す。図13は各ロッド電極の配置に関する説明図であり、図14は各ロッド電極の分割位置の説明図である。
【0055】
多重極ロッド電極1は、8本のロッド電極2A-2Hで構成されている。8本のロッド電極2A-2Hは、各々セグメントロッド2A−1、2A−2、2B−1、2B−2、2C−1、2C−2、2D−1、2D−2、2E−1、2E−2、2F−1、2F−2、2G−1、2G−2、2H−1、2H−2に分割されている。多重極ロッド電極1をイオン透過部37として使用する場合、多重極ロッド電極1の片端からイオン3が導入され、多重極ロッド電極1を透過し、反対側からイオン4が排出される。
【0056】
電源および回路5による多重極ロッド電極1に電圧を印加する方法についての図による詳細な説明は省略するが、実施例1とほぼ同様で、ロッド電極2A、2B、2C、2Dとロッド電極2E、2F、2G、2Hに逆位相の高周波電圧6が印加され、さらに、セグメントロッド2A−1、2B−1、2C−1、2D−1、2E−1、2F−1、2G−1、2H−1とセグメントロッド2A−2、2B−2、2C−2、2D−2、2E−2、2F−2、2G−2、2H−2には各々異なる直流電圧V1、V2が印加される。
【0057】
次に、各ロッド電極の分割位置について説明する。図14のように、8本のロッド電極2A-2Hを各々異なる軸方向位置で2分割することで、見かけ上9個のセグメントS1―S9に分割できる。つまり9種類の異なる平均電位を持つセグメントS1−S9に分割することができる。このときの分割された各々のセグメントS1−S9は、セグメントの長さL1−L9で表すこともできる。
【0058】
本実施例においても、実施例1や実施例4と同様の効果が得られるが、実施例1や実施例4と同じ2分割であっても、ロッド電極の本数が多いため見かけ上の分割数が多くなり、より連続的で滑らかな軸方向の傾斜電位が得られる。
【0059】
また、八重極の多重極ロッド電極は、四重極や六重極に比べ一般的にマスウインドウが広いため、径方向の電位勾配の影響がある場合でも四重極や六重極よりも広いマスウインドウを確保することができる。
【0060】
また、図13および図14のように、片端(例えば図の左側)から見て最も短いセグメントロッド2A−1と、その次に短いセグメントロッド2B−1を対向位置に配置させ、さらに、3番目と5番目と7番目に短いセグメントロッド2C−1、2E−1、2G−1の各々の次に短いセグメントロッド2D−1、2F−1、2H−1を各々の対向位置に配置させることで、径方向の電位勾配の影響を最小限に抑えことができる。つまり、片端からみて奇数番目に短いセグメントロッドの対向位置に、その次に短いセグメントロッドを配置することが重要となる。
【0061】
以上、実施例5では、イオン透過部を構成する多重極ロッド電極が8本のロッド電極からなる八重極ロッド電極において、全ての各ロッド電極を異なる軸方向位置で2分割している構成での、原理および効果について説明した。
【0062】
実施例1と実施例2と実施例4と実施例5から、全ての各ロッド電極を異なる軸方向位置で分割した多重極ロッド電極では、ロッド電極数をP、分割数をnとした場合、セグメント数が式1で定義でき、この値は説明した実施例以外のロッド電極数や分割数においても同様となる。また、ロッド電極数が偶数の場合、説明した実施例と同様に、片端からみて奇数番目に短いセグメントロッドの対向位置に、その次に短いセグメントロッドを配置することが重要となる。
【0063】
セグメント数=P×n−(P−1) (式1)
【実施例6】
【0064】
実施例6では、イオン透過部を構成する多重極ロッド電極が6本のロッド電極からなる六重極ロッド電極において、対向位置にある2本のロッド電極のペア同士は同じ軸方向位置で3分割し、異なるペア間では異なる軸方向位置で3分割する構成について説明する。
【0065】
図15に本方式を用いた六重極ロッド電極の各ロッド電極の分割位置の説明図を示す。なお、各ロッド電極の配置に関しては、図11に示したロッド電極の記号(2A〜2F)と同様とし、本実施例での図による詳細な説明は省略する。
【0066】
6本のロッド電極2A-2Fの中で、対向位置にある2本のロッド電極2A、2Bおよび2C、2Dおよび2E、2Fを同じ軸方向位置で3分割し、異なるペア間では異なる軸方向位置で3分割しセグメントロッド2A−1〜2F−3に分割することで、見かけ上7個のセグメントS1―S7に分割できる。つまり実施例4と同様に7種類の異なる平均電位を持つセグメントS1−S7に分割することができる。このときの分割された各々のセグメントS1−S7は、セグメントの長さL1−L7で表すこともできる。
【0067】
実施例6においても実施例4と同様の効果が得られるが、対向位置のロッド電極の分割位置が軸方向で一致しているので、径方向の電位勾配の影響が低減することが可能である。
【0068】
以上、実施例6では、イオン透過部を構成する多重極ロッド電極が6本のロッド電極からなる六重極ロッド電極において、対向位置にある2本のロッド電極のペア同士は同じ軸方向位置で3分割し、異なるペア間では異なる軸方向位置で3分割する構成での、原理および効果について説明した。
【実施例7】
【0069】
実施例7では、イオン透過部を構成する多重極ロッド電極が8本のロッド電極からなる八重極ロッド電極において、対向位置にある2本のロッド電極のペア同士は同じ軸方向位置で3分割し、異なるペア間では異なる軸方向位置で3分割する構成について説明する。
【0070】
図16に本方式を用いた八重極ロッド電極の各ロッド電極の分割位置の説明図を示す。なお、各ロッド電極の配置に関しては、図13に示したロッド電極の記号(2A〜2H)と同様とし、本実施例での図による詳細な説明は省略する。
【0071】
8本のロッド電極2A-2Hの中で、対向位置にある2本のロッド電極2A、2Bおよび2C、2Dおよび2E、2Fおよび2G、2Hを同じ軸方向位置で3分割し、異なるペア間では異なる軸方向位置で3分割しセグメントロッド2A−1〜2H−3に分割することで、見かけ上9個のセグメントS1―S9に分割できる。つまり実施例5と同様に9種類の異なる平均電位を持つセグメントS1−S9に分割することができる。このときの分割された各々のセグメントS1−S9は、セグメントの長さL1−L9で表すこともできる。
【0072】
実施例7においても実施例5と同様の効果が得られるが、対向位置のロッド電極の分割位置が軸方向で一致しているので、径方向の電位勾配の影響が低減することが可能である。
【0073】
以上、実施例7では、イオン透過部を構成する多重極ロッド電極が8本のロッド電極からなる八重極ロッド電極において、対向位置にある2本のロッド電極のペア同士は同じ軸方向位置で3分割し、異なるペア間では異なる軸方向位置で3分割する構成での、原理および効果について説明した。
【0074】
実施例3と実施例6と実施例7から、多重極ロッド電極の対向位置にある2本のロッド電極のペア同士は同じ軸方向位置で分割し、異なるペア間では異なる軸方向位置で分割する構成の多重極ロッド電極では、ロッド電極数をP、分割数をnとした場合、セグメント数が式2で定義でき、この値は説明した実施例以外のロッド電極数や分割数においても同様となる。
セグメント数=(P/2)×n−((P/2)−1) (式2)
【実施例8】
【0075】
実施例8では、イオン透過部を構成する多重極ロッド電極が、直角にL字型に曲がった4本のロッド電極からなる四重極ロッド電極で、全ての各ロッド電極を異なる軸方向位置で3分割している構成について説明する。
【0076】
図17に本方式を用いた四重極ロッド電極の各ロッド電極の配置に関する説明図を示す。
【0077】
多重極ロッド電極1は、4本のロッド電極2A-2Dで構成されている。4本のロッド電極2A-2Dは、各々セグメントロッド2A−1、2A−2、2A−3、2B−1、2B−2、2B−3、2C−1、2C−2、2C−3、2D−1、2D−2、2D−3に分割されている。多重極ロッド電極1をイオン透過部37として使用する場合、多重極ロッド電極1の片端からイオン3が導入され、多重極ロッド電極1を透過し、反対側からイオン4が排出される。
【0078】
電源および回路5による多重極ロッド電極1に電圧を印加する方法についての図による詳細な説明は省略するが、実施例2とほぼ同様で、ロッド電極2A、2Bとロッド電極2C、2Dに逆位相の高周波電圧6が印加され、さらに、セグメントロッド2A−1、2B−1、2C−1、2D−1とセグメントロッド2A−2、2B−2、2C−2、2D−2とセグメントロッド2A−3、2B−3、2C−3、2D−3には各々異なる直流電圧V1、V2、V3が印加される。
【0079】
4本のロッド電極2A-2Dを各々異なる軸方向位置で3分割することで、図による詳細な説明は省略するが、式1から見かけ上9個のセグメントに分割できる。
【0080】
本実施例の効果は、実施例2とほぼ同様であるが、多重極ロッド電極をL字型に曲げることで、直進するノイズ成分を除去する事が可能である。ノイズ成分には、ランダム的なノイズや帯電液滴などがあるが、前者は電荷を帯びていないために直進し、後者は多重極ロッド電極1を透過する質量範囲外となるためL字型に多重極電極1に沿って透過することができない。一方、イオンに関しては多重極ロッド電極1の高周波電圧6により中心軸上に収束されるためにL字型に沿って多重極ロッド電極1を透過することができる。
【0081】
さらに、実施例3のように、多重極ロッド電極の対向位置にある2本のロッド電極のペア同士は同じ軸方向位置で分割し、異なるペア間では異なる軸方向位置で分割する構成の多重極ロッド電極にすることで、本実施例のようなL字型の多重極ロッド電極においても径方向の電位勾配の影響が低減することが可能である。
【0082】
さらに、実施例4から7で示した六重極や八重極などの様々な多重極ロッド電極の構成においても、本実施例のようなL字型の多重極ロッド電極を用いることが可能である。
【0083】
以上、実施例8では、イオン透過部を構成する多重極ロッド電極が、直角にL字型に曲がった4本のロッド電極からなる四重極ロッド電極で、各ロッド電極を分割している構成について説明した。
【実施例9】
【0084】
実施例9では、イオン透過部を構成する多重極ロッド電極が、180度にU字型に曲がった4本のロッド電極からなる四重極ロッド電極で、全ての各ロッド電極を異なる軸方向位置で4分割している構成について説明する。
【0085】
図18に本方式を用いた四重極ロッド電極の各ロッド電極の配置に関する説明図を示す。
【0086】
多重極ロッド電極1は、4本のロッド電極2A-2Dで構成されている。4本のロッド電極2A-2Dは、各々セグメントロッド2A−1、2A−2、2A−3、2A−4、2B−1、2B−2、2B−3、2B−4、2C−1、2C−2、2C−3、2C−4、2D−1、2D−2、2D−3、2D−4に分割されている。多重極ロッド電極1をイオン透過部37として使用する場合、多重極ロッド電極1の片端からイオン3が導入され、多重極ロッド電極1を透過し、反対側からイオン4が排出される。
【0087】
電源および回路5による多重極ロッド電極1に電圧を印加する方法についての図による詳細な説明は省略するが、実施例2とほぼ同様で、ロッド電極2A、2Bとロッド電極2C、2Dに逆位相の高周波電圧6が印加され、さらに、セグメントロッド2A−1、2B−1、2C−1、2D−1とセグメントロッド2A−2、2B−2、2C−2、2D−2とセグメントロッド2A−3、2B−3、2C−3、2D−3とセグメントロッド2A−4、2B−4、2C−4、2D−4には各々異なる直流電圧が印加される。
【0088】
4本のロッド電極2A-2Dを各々異なる軸方向位置で4分割することで、図による詳細な説明は省略するが、式1から見かけ上13個のセグメントに分割できる。
【0089】
本実施例の効果は、実施例8とほぼ同様であるが、多重極ロッド電極をU字型に曲げることで、直進するノイズ成分を除去する事が可能な多重極ロッド電極を省スペースで実装することが可能になる。
【0090】
さらに、実施例3のように、多重極ロッド電極の対向位置にある2本のロッド電極のペア同士は同じ軸方向位置で分割し、異なるペア間では異なる軸方向位置で分割する構成の多重極ロッド電極にすることで、本実施例のようなU字型の多重極ロッド電極においても径方向の電位勾配の影響が低減することが可能である。
【0091】
さらに、実施例4から7で示した六重極や八重極などの様々な多重極ロッド電極の構成においても、本実施例のようなU字型の多重極ロッド電極を用いることが可能である。
以上、実施例9では、イオン透過部を構成する多重極ロッド電極が、直角にU字型に曲がった4本のロッド電極からなる四重極ロッド電極で、各ロッド電極を分割している構成について説明した。
【実施例10】
【0092】
実施例10では、実施例1から実施例9で説明したような多重極ロッド電極を用いたイオン透過部をイオン解離部(Q2)として機能させる構成の質量分析装置について説明する。
【0093】
図19に、本方式によるイオン透過部37をイオン解離部Q2として機能させるときの質量分析装置28の構成を示す。
【0094】
質量分析装置28は、主にイオン源29と真空チャンバ30で構成される。イオン源29には、大気圧化学イオン化法(APCI)やエレクトロスプレーイオン化法(ESI)やその他のさまざまなイオン化法を用いたイオン源を用いることができる。真空チャンバ30は、第1真空室31と第2真空室32と第3真空室33に分かれており、それぞれ独立して真空ポンプ(図示せず)により排気されており、各々、数百Pa以下、数Pa以下、0.1Pa以下の圧力領域に保持される。また、質量分析装置28は、ユーザからの指示入力を受け付けたり、電圧等の制御を受けたりするための制御部41を備える。具体的には、入出力部やメモリ等を備え、質量分析装置28の各電圧を制御するための電源操作に必要なソフトウェア等を有している。
【0095】
イオン源29で生成したイオンは、第1細孔34を通過し第1真空室31に導入される。その後、イオンは第2細孔35を通過し第2真空室32に導入される。その後イオンはイオン輸送部Q0を通過する。イオン輸送部Q0には、複数のロッド電極で構成した多重極ロッド電極や、複数の円板上の電極などで構成した静電レンズなどを用いることができる。イオン輸送部Q0を通過したイオンは第3細孔36を通過し第3真空室33に導入される。その後イオンは第1イオン分離部Q1を通過する。第1イオン分離部Q1には、4本のロッド電極で構成される四重極質量フィルター(QMF)などが用いられ、第1イオン分離部Q1に導入されたイオンの中から特定の質量電荷比(m/z)を有するイオンのみを分離し通過させる。第1イオン分離部Q1を通過した特定のm/zのイオンはイオン透過部37に導入される。本方式のイオン透過部37はイオン解離部Q2として機能するため、主に多重極ロッド電極1、入口電極7、出口電極8などから構成される。多重極ロッド電極1には、実施例1から実施例9で説明したような多重極ロッド電極1を用いることができる。入口電極7の開口部9から導入されたイオン3は、配管38から導入された中性ガスと衝突することで分解する。その後イオン4は出口電極8の開口部10から排出される。中性ガスには窒素、ヘリウム、アルゴンなどが用いられる。イオン解離部Q2は内部を中性ガスで満たす必要があるため、ケース39を有し内部を数Pa以下に保持している。イオン透過部37を透過したイオン4は、第2イオン分離部Q3に導入される。第2イオン分離部Q3には、4本のロッド電極で構成されるQMFなどが用いられ、第2イオン分離部Q3に導入されたイオンをm/zに応じて分離し通過させる。第2イオン分離部Q3を通過したイオンは検出器40で検出される。検出器40には、イオンを電子に変換し増幅させてから検出する電子増倍管やマルチチャンネルプレート(MCP)などの方式を用いるのが一般的である。
【0096】
本方式により、イオン解離部Q2のイオンの透過時間が短くなるため、スループットの高い分析が可能となる。
【0097】
以上、実施例10では、実施例1から実施例9で説明したようなイオン透過部をイオン解離部として機能させる構成の質量分析装置について説明した。
【実施例11】
【0098】
実施例11では、実施例1から実施例9で説明したような多重極ロッド電極を用いたイオン透過部をイオン輸送部(Q0)として機能させる構成の質量分析装置について説明する。
【0099】
図20に、本方式によるイオン透過部37をイオン輸送部Q0として機能するときの質量分析装置28の構成を示す。
【0100】
質量分析装置28は、主にイオン源29と真空チャンバ30で構成される。イオン源29には、APCIやESIやその他のさまざまなイオン化法を用いたイオン源を用いることができる。真空チャンバ30は、第1真空室31と第2真空室32と第3真空室33に分かれており、それぞれ独立して真空ポンプ(図示せず)により排気されており、各々、数百Pa以下、数Pa以下、0.1Pa以下の圧力領域に保持される。
【0101】
イオン源29で生成したイオンは、第1細孔34を通過し第1真空室31に導入される。その後、イオンは第2細孔35を通過し第2真空室32に導入される。その後イオンはイオン輸送部Q0を通過する。イオン輸送部Q0には、実施例1から実施例9で説明したような多重極ロッド電極1を用いることができ、電圧の印加方法なども基本的に同様であるが、イオン解離部Q2として使用する場合と比べ高周波電圧6や直流電圧V1―V3の電圧条件が異なることが一般的である。また、イオン解離部Q2で使用する入口電極7や出口電極8や配管38やケース39などは無くても良い。
【0102】
イオン輸送部Q0を通過したイオンは第3細孔36を通過し第3真空室33に導入される。その後イオンは第1イオン分離部Q1を通過する。第1イオン分離部Q1には、4本のロッド電極で構成されるQMFなどが用いられ、第1イオン分離部Q1に導入されたイオンの中から特定のm/zを有するイオンのみを分離し通過させる。第1イオン分離部Q1を通過した特定のm/zのイオンはイオン解離部Q2に導入される。イオン解離部Q2を透過したイオンは、第2イオン分離部Q3に導入される。第2イオン分離部Q3には、4本のロッド電極で構成されるQMFなどが用いられ、第2イオン分離部Q3に導入されたイオンをm/zに応じて分離し通過させる。第2イオン分離部Q3を通過したイオンは検出器40で検出される。また、質量分析装置28は、ユーザからの指示入力を受け付けたり、電圧等の制御を受けたりするための制御部41を備える。
【0103】
本方式により、イオン輸送部Q0のイオンの透過時間が短くなるため、スループットの高い分析が可能となる。
【0104】
また、本方式は実施例10と併用することも可能である。つまり、イオン輸送部Q0とイオン解離部Q2のどちらにも、実施例1から実施例9で説明したようなイオン透過部37を用いる構成も可能である。
【0105】
以上、実施例11では、実施例1から実施例9で説明したようなイオン透過部をイオン輸送部として機能させる構成の質量分析装置について説明した。
【実施例12】
【0106】
実施例12では、イオン透過部を構成する多重極ロッド電極が4本のロッド電極からなる四重極ロッド電極で、全ての各ロッド電極を異なる軸方向位置で2分割している構成で、イオンが導入される入口側の方が分割されたセグメントの長さが短い実施例について説明する。
【0107】
図21に本方式を用いた四重極ロッド電極の各ロッド電極の分割位置の説明図を示す。なお、各ロッド電極の配置に関しては、図1に示したロッド電極の記号(2A〜2D)と同様とし、本実施例での図による詳細な説明は省略する。また、電源および回路5による電圧印加方法も図1とほぼ同様であるので本実施例での説明は省略する。
【0108】
4本のロッド電極2A-2Dを各々異なる軸方向位置で2分割することで、見かけ上5個のセグメントS1―S5に分割できる。つまり実施例1と同様に5種類の異なる平均電位を持つセグメントS1−S5に分割することができる。このときの分割された各々のセグメントS1−S5は、セグメントの長さL1−L5で表すこともできる。本実施例では、全てのセグメントS1−S5の中で、セグメントS1がもっとも短いセグメント長さL1となっている。
【0109】
特に、図19で説明したような装置構成では、第1イオン分離部Q1を透過したイオン3がイオン解離部Q2に導入される際、イオンの導入効率を上げるため、入口電極7に印加する直流電圧Vinを直流電圧V1よりも低い値に設定する場合がある。Vin<V1の状態で、セグメントの長さL1が長すぎると、図4の3分割した結果13のように、平らな電位勾配の部分が生じ、イオンが効率的に加速されず、場合によってはイオンが停留し、さらには直流電圧Vinと直流電圧V1の電位差によって、イオンが逆流してしまう場合もある。よって、セグメントの長さL1は10mm以下程度にすることが望ましい。図21ではセグメントの長さがL1<L2<L3<L4<L5となっているが、全て同じ長さにしても良い。また、お互いのセグメント長さL1−L5の中で同じ長さのセグメントがあっても良い。但し、全てを10mm以下のセグメントの長さにした場合、分割数にもよるが、全体の長さが制限されてしまう。少ない分割数で比較的長い全体の長さを確保したい場合は、図21のように、入口電極7に近い場所のセグメントの長さL1を短くし、入口電極7から遠く直流電圧Vinの影響が少ないセグメントの長さは場所に応じてL1よりは長く設定するなどの工夫が必要となる。
【0110】
なお、本方式は各ロッド電極の分割数が2分割以外の分割数の構成にも適用できる。また、本方式は、六重極や八重極などの四重極ロッド電極以外の多重極ロッド電極にも適用できる。また、多重極ロッド電極の、対向位置にある2本のロッド電極のペア同士を同じ軸方向位置で分割し、異なるペア間では異なる軸方向位置で分割する構成にも適用できる。また、本方式はイオン解離部Q2だけでなくイオン輸送部Q0に適用することもできる。
【0111】
以上、実施例12では、イオン透過部を構成する多重極ロッド電極が4本のロッド電極からなる四重極ロッド電極で、全ての各ロッド電極を異なる軸方向位置で2分割している構成で、イオンが導入される入口側の方が分割されたセグメントの長さが短い実施例について説明した。
【実施例13】
【0112】
実施例13では、実施例1から実施例9で説明したような多重極ロッド電極を用いたイオン透過部を第2イオン分離部(Q3)として機能させる構成の質量分析装置について説明する。
【0113】
図22に、本方式によるイオン透過部37を第2イオン分離部Q3として機能させるときの質量分析装置28の構成を示す。
【0114】
質量分析装置28は、主にイオン源29と真空チャンバ30で構成される。イオン源29には、APCIやESIやその他のさまざまなイオン化法を用いたイオン源を用いることができる。真空チャンバ30は、第1真空室31と第2真空室32と第3真空室33に分かれており、それぞれ独立して真空ポンプ(図示せず)により排気されており、各々、数百Pa以下、数Pa以下、0.1Pa以下の圧力領域に保持される。
【0115】
イオン源29で生成したイオンは、第1細孔34を通過し第1真空室31に導入される。その後、イオンは第2細孔35を通過し第2真空室32に導入される。その後イオンはイオン輸送部Q0を通過する。イオン輸送部Q0には、複数のロッド電極で構成した多重極ロッド電極や、複数の円板上の電極などで構成した静電レンズなどを用いることができる。イオン輸送部Q0を通過したイオンは第3細孔36を通過し第3真空室33に導入される。その後イオンは第1イオン分離部Q1を通過する。第1イオン分離部Q1には、4本のロッド電極で構成されるQMFなどが用いられ、第1イオン分離部Q1に導入されたイオンの中から特定のm/zを有するイオンのみを分離し通過させる。第1イオン分離部Q1を通過した特定のm/zのイオンはイオン解離部Q2に導入される。イオン解離部Q2を透過したイオンは、第2イオン分離部Q3に導入される。第2イオン分離部Q3には、実施例1から実施例9および実施例12で説明したような多重極ロッド電極1を用いることができる。本実施例の第2イオン分離部Q3では、多重極ロッド電極1をイオントラップとして動作させる。イオントラップとは、導入されたイオンを一旦内部に蓄積し、その後イオンのm/zごとに排出する機能を持つ。第2イオン分離部Q3から排出されたイオンは検出器40で検出される。第2イオン分離部Q3をイオントラップとして使用する場合、多重極ロッド電極1の内部を数Pa以下の中性ガスで満たす必要があるため、イオン解離部Q2で使用するような入口電極7や出口電極8や配管38やケース39などを用いる場合もあるが、必ずしも必須ではないので図22では特に図示しない。また、質量分析装置28は、ユーザからの指示入力を受け付けたり、電圧等の制御を受けたりするための制御部41を備える。
【0116】
多重極ロッド電極1への電源および回路5による電圧印加方法は、基本的に図1と同様であり、軸方向に電位勾配を生成することができる。この電位勾配により、イオンを出口方向に集めることができ、これによりイオンの排出速度を速くすることができ、スループットの高い分析が可能となる。また、高周波電圧6をコンデンサC1−C4を介して印加しているので、前段のセグメントロッド2A−1、2B−1、2C−1、2D−1と後段のセグメントロッド2A−2、2B−2、2C−2、2D−2との間で異なる電圧振幅値の高周波電圧6を印加することができる。高周波電圧6の電圧振幅値も直流電圧と同様に軸方向に対して勾配状に電圧値の変化が生じる。四重極ロッド電極内で安定して蓄積されるイオンのm/zは高周波電圧6の電圧振幅値に依存する。よって、本方式により多重極ロッド電極1の軸方向に対してイオンをm/zにより分布させることができる。その結果、多重極ロッド電極1の内部の空間電荷の影響を低減することが可能となる。
【0117】
また、本方式は実施例10や実施例11と併用することも可能である。また、第1イオン分離部Q1に本実施例の多重極ロッド電極1を適用しても良い。
【0118】
以上、実施例13では、実施例1から実施例9および実施例12で説明したようなイオン透過部を第2イオン分離部(Q3)として機能する構成の質量分析装置について説明した。
【符号の説明】
【0119】
1…多重極ロッド電極、2A―2H…ロッド電極、2A―1〜2H―3…セグメントロッド、3…イオン、4…イオン、5…電源および回路、6…高周波電圧、7…入口電極、8…出口電極、9…開口部、10…開口部、11…中心電位のシミュレーション結果、12…本方式の結果、13…3分割した結果、14…イオン透過時間のシミュレーション結果、15…電位差10Vの結果、16…電位差5Vの結果、17…電位差2Vの結果、18…電位差1Vの結果、19…電位差0.5Vの結果、20…電位差0.2Vの結果、21…電位差0.1Vの結果、22…電位差0Vの結果、23…LMCO下限のシミュレーション結果、24…電位差5Vの結果、25…電位差2Vの結果、26…電位差1Vの結果、27…電位差0.5Vの結果、28…質量分析装置、29…イオン源、30…真空チャンバ、31…第1真空室、32…第2真空室、33…第3真空室、34…第1細孔、35…第2細孔、36…第3細孔、37…イオン透過部、38…配管、39…ケース、40…検出器、41…制御部
V1―V3…直流電圧、R1−R6…抵抗、C1−C6…コンデンサ、S1―S9…セグメント、L1―L9…セグメントの長さ、G1―G2…間隙距離、Vin…直流電圧、Vout…直流電圧、r0…内接円半径、D…ロッド直径、Q0…イオン輸送部、Q1…第1イオン分離部、Q2…イオン解離部、Q3…第2イオン分離部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重極ロッド電極を有するイオン透過部と、
前記多重極ロッド電極へ電圧を印加する電源部と、
前記電源部を制御する制御部と、を備えた質量分析装置であって、
前記多重極ロッド電極は、互いに軸方向の異なる位置で複数のセグメントロッドに分割されたロッド電極を有することを特徴とする質量分析装置。
【請求項2】
前記多重極ロッド電極は、さらに、互いに軸方向の同じ位置で複数のセグメントロッドに分割されたロッド電極を有することを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項3】
前記ロッド電極は、軸方向に複数分割されていることを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項4】
前記電源部は、前記多重極ロッド電極に高周波電圧を印加する高周波電源と、前記多重極ロッド電極の第1のセグメントロッド群に接続された第1の直流電源と、前記第1のセグメントロッド群と軸方向に異なる第2のセグメントロッド群に接続され、前記第1の直流電源とは異なる値の直流電圧を印加する第2の直流電源とを有することを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項5】
前記直流電圧の大きさは、イオン導入側のセグメントロッド群に印加する電圧値の絶対値が、イオン排出側のセグメントロッド群に印加する電圧値の絶対値よりも大きいことを特徴とする請求項4記載の質量分析装置。
【請求項6】
前記多重極ロッド電極は、ロッド電極の端部から分割位置の長さが奇数番目に短いセグメントロッドの対向位置に、それぞれ次に短いセグメントロッドが配置されていることを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項7】
前記イオン透過部は、前記多重極ロッド電極のイオン導入側に設けられた入口電極と、イオン排出側に設けられた出口電極を有することを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項8】
前記多重極ロッド電極の分割位置の軸方向の間隔が、イオンの導入側よりもイオン排出側の方が大きいことを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項9】
前記多重極ロッド電極は、四重極、六重極、八重極のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項10】
前記多重極ロッド電極は、イオンの導入方向とイオンの排出方向とが異なるように軸方向が変化するロッド電極からなることを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項11】
前記多重極ロッド電極は、L字型又はU字型であることを特徴とする請求項10記載の質量分析装置。
【請求項12】
前記イオン透過部は、ガスの供給配管を備え、導入されるイオンを前記ガスとの衝突により解離することを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項13】
前記イオン透過部は、前記高周波電源の制御によりイオンを質量毎に分離して排出することを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項14】
前記多重極ロッド電極は、それぞれ軸方向に異なる位置で2つのセグメントロッドに分割され、前記多重極ロッド電極から構成される、イオン導入側の第1のセグメントロッド群に第1の直流電圧を印加する第1の直流電源と、イオン排出側の第2のセグメントロッド群に対し、前記第1の直流電圧より低い第2の直流電圧を印加する第2の直流電源とを有することを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項15】
イオンを生成するイオン源と、
前記イオン源からのイオンを輸送するイオン輸送部と、
前記イオン輸送部からのイオンの中で特定のm/zを有するイオンを分離する第1のイオン分離部と、
前記イオン分離部により分離されたイオンを解離するイオン解離部と、
前記イオン解離部により解離されたイオンを蓄積し、質量選択的に排出する第2のイオン分離部と、
前記第2のイオン分離部から排出されたイオンを検出する検出器と、を備え、
前記イオン輸送部、前記イオン解離部、前記第1,2のイオン分離部の少なくともいずれか1つは、請求項1に記載のイオン透過部であることを特徴とする質量分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−84288(P2012−84288A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228069(P2010−228069)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】