質量分析計とともに使用するための複数の試料供給源、ならびにそのための装置、デバイスおよび方法
質量分析計のサンプリング注入口と同軸上にある入口点でチャンバを部分的に画定する境界部材を通じて、試料を導入するための方法を記載する。無電界状態が、チャンバの少なくとも1つの領域に確立され得る。試料は、サンプリング注入口の近接に導入され得て、少なくとも第2の試料の導入は、該サンプリング注入口に近接しないチャンバ内の少なくとも1つの他の入口点を通じて導入され得る。サンプリング注入口およびチャンバを部分的に画定する境界部材を有する装置もまた、記載する。無電界状態が、チャンバの少なくとも1つの領域において確立され得て、源が通って試料を放出する境界部材において、第1の開口が存在し得る。関連デバイス、使用、および質量分析計もまた、記載する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2006年9月25日に出願された米国仮特許出願第60/826,811号および2006年11月23日に出願された米国仮特許出願第60/867,123号(これらの内容は、全て参考として援用される)の利益を主張する。
【0002】
分野
本出願人の教示は、質量分析計に関し、より具体的には質量分析計での複数の試料供給源の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
導入
質量分析法(MS)は、イオン化分子を分析するための強力なツールである。質量的に正確な結果を得ることは、分子の同定および/または複合混合物の内容の解読に極めて重要であり得る。一般的に、気圧インターフェース(API)または気圧インターフェース装置と呼ばれる、大気と真空のインターフェースは、試料が質量分析計の他のチャンバに入る前に、脱溶媒和および試料調整を提供するように設計される。質量分析計内において、気圧源領域を第1の減圧チャンバから分離するために、開口、毛細管チューブ、加熱パイプ、およびそれらの種々の組み合わせを含む、多くの異なるインターフェース構成が現在使用されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本出願人の教示は、質量分析計による分析のための試料の調整に好適である、チャンバまたは類似の装置もしくはデバイスとの、複数の試料供給源の使用に関連する方法、装置、およびデバイスに関する。試料の分析に最低限の有害な影響を呈する、多重噴霧器システム法、装置、およびデバイスを提供する。
【0005】
一側面によると、本出願人の教示は、少なくとも1つの試料を質量分析計に導入するためのインターフェース装置であって、サンプリング注入口と、チャンバを少なくとも部分的に画定する境界部材であって、該チャンバは無電界状態が確立され得る少なくとも1つの領域を有する境界部材と、第1の源が試料を放出することのできる境界部材において画定される第1の開口であって、該第1の開口はサンプリング注入口の同軸上にあり、試料は、そこを通って通過するためにサンプリング注入口の方へ方向付けられる第1の開口と、少なくとも1つ他の源が通って分子をチャンバに導入することのできる、チャンバにおいて画定される少なくとも1つの他の開口と、を備える、インターフェース装置を提供する。インターフェース装置は、ガスのチャンバへの導入を可能にするための、チャンバにおいて画定される少なくとも1つのガス入口をさらに備え、ガスフロー流は、ガスフローが部分的に第1の開口を通って、また部分的にサンプリング注入口の方へ流れるように確立され、分子は、ガスフロー流によりサンプリング注入口へ方向付けられる。サンプリング注入口は、チャンバよりも低圧である質量分析計の一領域に通じ得る。第1の源は、電磁界と関連付けられ得、第2の源は、第2の源が試料の分析に有害な影響を与えないように、第1の源から十分に離すことが可能である。第1の源と第2の源とは、少なくとも1つの他の源から少なくとも3ミリメートルの距離に位置することができる。本出願人の教示の種々の実施形態において、該距離は、約3ミリメートルから約10センチメートル以上であり得る。サンプリング注入口は、例えば、開口、オリフィス、または毛細管を含み得る。試料および分子の少なくとも1つは、イオンを含み得る。該分子は、試料と同一もしくは反対の極性のイオン等のイオン、または中性分子を含み得る。該中性分子は、質量分析計により分析される前に荷電され得る。該分子は、較正用分子を含み得る。インターフェース装置は、少なくとも1つの熱源をさらに含み得る。少なくとも1つの熱源は、第1の源内等の、チャンバの外側に位置してもよい。熱源は、薄層チューブを含み得る。サンプリング注入口は、加熱され得る。インターフェース装置内のガスは、カーテンガスであり得、加熱されてもよい。インターフェース装置を使用して、イオン−イオン化学実験を行うことができる。試料および分子を混合して、イオン−イオン反応、イオン−中性反応、電荷反転実験、外部または内部較正を行うことができる。インターフェース装置は、イオン源の電磁界または他の電位を制御すること等により、少なくとも1つの他の源からサンプリング注入口への試料および分子の導入を制御または「ゲーティング」するために、空気圧式または他のゲート等の手段をさらに含み得る。ゲートは、試料および分子の少なくとも1つの導入を遮断する等による、機械的側面を備えてもよい。ゲートは、第1の源および少なくとも1つの他の源のうちの少なくとも1つへの動力を減少もしくは中断する、または境界部材等のレンズ要素に印加される電位を変化させる等の、電気的側面を備えてもよい。ゲートは、さらなるガスを試料または分子の一方または両方へ送るための、かつ試料または分子がサンプリング注入口に達するのを防ぐように、第1および第2の源の一方または両方と実質的に垂直である、第2のガス源をさらに含む等による、空気圧式側面をさらに有してもよく、空気圧式ゲートは、さらなるガスフローを制御するための手段、またはコントローラを備える。ゲートは、試料または分子の導入のための制御を提供するが、全ての実施形態において試料または分子への物的障壁を含む必要はなく、試料または分子の動きを制御するために電気的または他のシステムを含むことができる。
【0006】
インターフェース装置は、少なくとも1つの他の源からサンプリング注入口へ試料および分子を導入するための手段を備えることができる。ゲーティング手段は、質量分析計を較正するために使用され得る、試料および分子の指数分析を作成することができる。インターフェース装置は、第1の源に印加される電位を変更することにより少なくとも1つの他の源をゲーティングするために、上述の空気圧式または他のゲーティング装置等の手段を備えることができる。インターフェース装置は、境界部材に印加される電位を変化させることによるゲーティングを含むことができる。本出願人の教示の種々の側面において、第1の源は第1の極性の荷電液滴のスプレーを導入することができ、少なくとも1つの他の源は、第1の源の荷電液滴と反対の極性の液滴のスプレーを、あるいは中立極性の液滴のスプレーとして、導入することができ、少なくとも1つの他の源からの液滴は、第1の源からの液滴と混合され得る。
【0007】
本出願人の教示の種々の側面によると、インターフェース装置は、少なくとも1つの他の開口に取り付けられたチャネル部材であって、少なくとも1つの他の源が、該少なくとも1つの他の開口を通って中に分子を導入することのできる、チャネル部材と、および/または境界部材の内側に取り付けられた通過部材であって、チャンバに導入される分子に無電界状態を提供するために、該少なくとも1つの他の開口に近接して位置付けられる、通過部材とをさらに含み得る。チャネル部材は、チューブを含んでもよく、通過部材は、シートメタル、チューブ、または他の任意の好適な構造等の、伝導性材料を含んでもよい。
【0008】
本出願人の教示の別の側面による、少なくとも2つの異なる源から質量分析計に試料を導入するための方法を提供する。該方法は、チャンバを少なくとも部分的に画定する境界部材において画定される第1の入口点を通じて、第1の試料を導入するステップであって、該入口点は質量分析計のサンプリング注入口の同軸上にあり、ここでチャンバの少なくとも1つの領域で無電界状態が確立され得、第1の試料はサンプリング注入口の実質的に近接に導入される、ステップと、チャンバ内のサンプリング注入口に近接しない位置に画定される少なくとも1つの他の入口点を通じて少なくとも第2の試料を導入するステップと、を含むことができる。該方法に使用されるチャンバは、ガスのチャンバへの導入を可能にするためのガス入口をさらに画定することができ、ガスフロー流は、ガスフローが部分的に概して第1の試料の入口点の方に、また部分的にサンプリング注入口の方へ流れるように確立され、少なくとも第2の試料は、ガスフロー流によりサンプリング注入口へ方向付けられ得る。第1の試料の導入は、電磁界と関連付けられ、少なくとも第2の試料の導入は、少なくとも第2の試料の導入が、質量分析計による第1の試料の分析に有害な影響を与えないように、第1の試料の導入から十分に離すことができる。第1の試料は、少なくとも第2の試料から少なくとも3ミリメートルの距離に位置することができる。第1の試料は、少なくとも第2の試料の導入から約3ミリメートルから約10センチメートル以上の位置で導入され得る。サンプリング注入口は、チャンバよりも低圧である質量分析計の一領域に通じ得る。第1の源は、電磁界と関連付けられ得、第2の源は、第2の源が該試料の分析に有害な影響を与えないように、第1の源から十分に離すことが可能である。第1の源と第2の源とは、少なくとも3ミリメートルの距離に位置することができる。本出願人の教示の種々の実施形態において、該距離は、約3ミリメートルから約10センチメートル以上であり得る。サンプリング注入口は、例えば、開口、オリフィス、または毛細管を含み得る。少なくとも1つの試料は、イオンを含み得る。少なくとも第2の試料は、第1の試料と同一もしくは反対の極性のイオン等のイオン、または中性分子を含み得る。中性分子は、質量分析計により分析される前に荷電され得る。少なくとも第2の試料は、較正分子を含み得る。
【0009】
該方法は、少なくとも1つの熱源を提供するステップをさらに含むことができる。熱源は、第1の試料および少なくとも第2の試料を加熱する能力があり得る。少なくとも1つの熱源は、第1の源内等の、チャンバの外側に位置することができる。熱源は、薄層チューブを含み得る。サンプリング注入口は、加熱され得る。インターフェース装置内のガスは、カーテンガスであり得、加熱されてもよい。該方法を使用して、イオン−イオン化学実験を行うことができる。第1の試料および少なくとも第2の試料を混合して、イオン−イオン反応、イオン−中性反応、電荷反転実験、外部または内部較正を行うことができる。第1の試料からのイオンと少なくとも第2の試料からのイオンとを合わせて混合して、イオン−イオン反応を行うことができる。第1の試料からのイオンと少なくとも第2の試料からの中性物(neutrals)とを合わせて混合して、イオン−中性反応を行うことができる。第1の試料からのイオンと、第1の試料のイオンと反対の極性のイオンとを合わせて混合して、電荷反転実験を行うことができる。第1の試料からのイオンおよび少なくとも第2の試料からのイオンは、外部較正を行うためにゲーティングされ得る。第1の試料と少なくとも第2の試料とを合わせて混合して、内部較正を行うことができる。第1の試料は、第1の極性の荷電液滴のスプレーとして導入され得、少なくとも第2の試料は、第1の試料の荷電液滴と反対の極性の液滴のスプレーとして、あるいは中立極性の液滴のスプレーとして導入され、少なくとも第2の試料からの液滴は、第1の試料からの液滴と混合される。
【0010】
該方法は、イオン源の電磁界または他の電位を制御すること等により、少なくとも1つの他の源からサンプリング注入口への試料および分子の導入をゲーティングするステップをさらに含むことができる。ゲーティングするステップは、試料および分子の少なくとも1つの導入を遮断する等の、機械的手段を備え得る。ゲーティングするステップは、第1の源および少なくとも1つの他の源の少なくとも1つへの動力を減少もしくは中断する、または境界部材等のレンズ要素に印加される電位を変化させる等の、電気的手段を備え得る。ゲーティングするステップは、さらなるガスを試料または分子の一方または両方へ送るための、かつ試料または分子がサンプリング注入口に達するのを防ぐように、第1および第2の源の一方または両方と実質的に垂直である、第2のガス源をさらに含む等による、空気圧式手段を備えることができ、空気圧式ゲーティング手段は、さらなるガスフローを制御するためのコントローラを備える。該方法は、少なくとも第2の源からサンプリング注入口へ、試料および分子を同時に導入するステップを含むことができる。ゲーティングするステップは、質量分析計を較正するために使用され得る、試料および分子の指数分析を作成することができる。該方法は、第1の試料に印加される電位を変更することにより、少なくとも第2の試料をゲーティングするステップを含むことができる。該方法は、境界部材に印加される電位を変化させることによりゲーティングするステップを含むことができる。
【0011】
該方法は、少なくとも第2の試料が少なくとも1つの他の入口点を通って中に導入され得る、少なくとも1つの他の入口点に取り付けられるチャネル部材を提供するステップをさらに含むことができる。該方法は、境界部材の内側に取り付けられる通過部材であって、チャンバに導入される分子に無電界状態を提供するために、少なくとも1つの他の入口点に近接して位置付けられる通過部材を提供するステップをさらに含むことができる。
【0012】
本出願人のこれらおよび他の教示の特徴を、本明細書において説明する。
【0013】
当業者は、以下に記載する図面が例証目的に過ぎないことを理解する。これらの図面が、本出願人の教示の範囲を多少なりとも限定することは意図していない。類似の参照は、類似または対応する部分を参照することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本出願人の教示の実施における使用に好適である、典型的なチャンバの概略図を示す。
【図2】本出願人の教示の実施における使用に好適である、異なるチャンバの実施形態の概略図を示す。
【図3】本出願人の教示の実施における使用に好適である、異なるチャンバの実施形態の概略図を示す。
【図4】本出願人の教示の実施における使用に好適である、異なるチャンバの実施形態の概略図を示す。
【図5】本出願人の教示の実施における使用に好適である、本出願人の教示の種々の実施形態に係る、チャンバの概略図を示す。
【図6】本出願人の教示の結果生じる、エミッタの電界効果の欠如を示す、質量スペクトルを示す。
【図7】本出願人の教示の方法に従って発生した較正用イオンの存在を示す、質量スペクトルを示す。
【図8】本出願人の教示の方法に従って発生したMRM痕跡を示す。
【図9】本出願人の教示の方法によるエミッタを使用した、レセルピンのタンデム質量スペクトルデータを示す。
【図10】本出願人の教示の種々の実施形態による、電界を有する注入口の同軸上にある境界部材開口に近接する、イオンエミッタを示す概略図を示す。
【図11】低カーテンガス圧力設定を使用した、ナノスプレー先端電位が上昇する際の較正信号を示す、質量スペクトルデータを示す。
【図12】高カーテンガス圧力設定を使用した、ナノスプレー先端電位が上昇する際の較正信号を示す、質量スペクトル結果を示す。
【図13】本出願人の教示の方法による、2価の較正物質を指標化(indexing)する較正および分析信号を示す。
【図14】本出願人の教示の方法による、1価の較正物質を指標化する較正および分析信号を示す。
【図15】本出願人の教示の方法による、一連の荷電状態を指標化する較正および分析信号を示す。
【図16】ナノスプレー先端電位を使用した、較正物質の指標化を示す、MRM痕跡を示す。
【図17】ナノスプレー先端電位を使用した、再現性を指標化する較正物質を示すMRM痕跡を示す。
【図18】本出願人の教示に係る、典型的な質量分析計の構成要素を示す。
【図19】図18に従って構成された質量分析計を使用して生成された、データの実施例を示す。
【図20】本出願人の教示に係る分析における、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)プレート電位と信号強度との間の関係を示す。
【図21】本出願人の教示に従って行われた分析からの荷電強度痕跡を示す。
【図22】本出願人の教示に従って行われた分析からの荷電強度痕跡を示す。
【図23】本出願人の教示に従って行われた分析からの荷電強度痕跡を示す。
【図24】本出願人の教示に係る較正物質の指標化を示す、MRM痕跡を示す。
【図25】本出願人の教示の実施における使用に好適なインターフェースの実施形態の、概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
種々の実施形態の説明
ここで図1を参照すると、本出願人の教示の種々の実施形態に係る、質量分析計の上流にあるチャンバ10を含む、装置の一実施例、および試料供給源20の構成が示される。試料供給源20は、試料エミッタ28を備える。チャンバ10は、気圧インターフェースを備えることができ、粒子弁別器インターフェース、または他の一般に既知である類似のインターフェースもまた含んでもよい。種々の実施形態において、試料供給源20は、例えば、ナノフローエレクトロスプレー源を含むことができ、試料エミッタ28は、ナノスプレー先端を含むことができる。チャンバ10は、しばしばカーテンプレートと称される境界部材18およびオリフィスプレート14を備える。境界部材は、境界部材開口26を備える。図1にはそのように示していないが、チャンバ10は種々の開口を除き、本質的に完全に封入され得る。チャンバ10内の大気は、本質的に該領域の外側の大気の気圧であり得、またはそれよりも高いあるいは低い圧力であってもよい。示した実施例において、試料は、試料供給源20および試料エミッタ28を介して放出され得、試料エミッタ28は、境界部材開口26の略軸方向に整列され得る。代替として、試料エミッタ28と境界部材開口26との間の整列は、一般に既知である90度等の角度であり得る。
【0016】
当業者は、本構成において、分析される種類の試料に好適である任意のイオン源が使用され得ることを理解するであろう。例えば、イオンに関して、源は、任意のイオンスプレーデバイス、エレクトロスプレーデバイス、コロナ放電ニードル、プラズマイオン源、電子衝撃もしくは化学イオン化源、光イオン化源、大気圧(AP)MALDI供給源、脱離エレクトロスプレー(DESI)源、Direct Analysis in Real Time (DART)源、熱脱離源、SONICスプレー、Turbo VTM源、または本明細書に記載の本出願人の教示の実施における使用に好適な、他の任意の既知のもしくは後に開発される源、あるいは上記の任意の複数の組み合わせであり得る。エレクトロスプレーまたはナノスプレーエミッタ等の多岐にわたる好適なイオンエミッタ、ならびに当技術分野で現在既知であるその他のもの、および現在開発中もしくは将来開発されるものが、本出願人の教示の種々の実施形態において使用され得る。本出願人の教示によれば、当業者には、境界部材が移動度分析器を封入することが可能であり、サンプリング注入口が移動度分析器とインターフェースをとり得ることが理解されよう。
【0017】
試料供給源20は、大気圧、大気圧以上、大気圧付近、または真空で動作可能である。試料は、例えば、現在当技術分野で既知の方法、または現在開発中もしくは将来開発される方法に従って放出される前等に、任意の好適な手段により調整され得、T字接合または他の好適な手段を介して試料供給源20に送出され得る。一実施例として、チャンバ10は、一般的に約0.1nL/分から約5000nL/分の範囲の試料液流速で動作可能であるが、当業者には、より高速または低速のフローもまた可能であり得ることが理解されよう。本出願人の教示の範囲から逸脱することなく、他のインターフェース構成が種々のフロー様式で動作可能である。
【0018】
図1に示す実施例において、境界部材18は、試料エミッタ28に近位または近接する境界部材開口26を画定し、そこを通って試料がチャンバ10に入ることができる。オリフィスプレート14はオリフィスプレート開口38を画定し、そこを通って試料が質量分析計チャンバ40(図示されない完全に封入されたチャンバ40)に入ることができる。現在の多くの実施形態において、質量分析計チャンバ40は、概してチャンバ10よりも低圧である。開口38は、サンプリング注入口として機能でき、オリフィスを備えることができる。図1に示すように、オリフィスプレート14の上流の境界部材開口26は、サンプリング注入口の同軸上および同心配置であり得る。本出願人の教示の種々の実施形態において、開口38は、毛細管注入口、イオンパイプ、または加熱毛細管等の、任意の好適な既知のサンプリング注入口により提供され得る。例えば、開口38は、チャンバ10の中に延在する毛細管の形態であり得る。本出願人の教示の種々の実施形態において、開口38は加熱されてもよい。これらの実施形態において、熱エネルギーが開口38に伝達される様式で、当技術分野において既知、あるいは知られることになる種々の源により、オリフィスプレート14または毛細管もしくはパイプに直接印加され得る。
【0019】
図1に示す構成をさらに参照すると、チャンバ10は、スペーサー16を介してオリフィスプレート14に接続される、加熱層流チャンバ12をさらに備える。加熱層流チャンバ12は、加熱層流チャンバ12を通って、境界部材開口26に近位の注入口42から出口44に延在する、加熱層流チャンバ内腔30を画定する。加熱層流チャンバ出口44とオリフィスプレート開口38との間の領域は、間隙32と称され、粒子弁別器間隙を含み得る。試料エミッタ28と注入口42との間の領域は、試料領域24と称される。図1に示す実施形態について、加熱層流チャンバ12のオリフィスプレート14上への密閉が、チャネル30を通じて層流状態を確立し、したがって、注入口42は、実質的にサンプリング注入口として機能することができる。
【0020】
試料供給源20は、開口38の方へ方向付けられるイオン化された液滴流を生成することができる。イオン化された液滴は、試料の調整の結果、溶媒分子を含み得る。多くの用途において、イオンの分析の前に、溶媒からイオンを実質的に除去する、つまりイオンを実質的に脱溶媒和することが、好都合であり得る。試料を実質的に脱溶媒和するということは、質量分析計で分析される際、イオンが読み取り可能な信号を発生できるように、試料から十分な溶媒を除去することを意味することが、当業者には理解されよう。少なくとも部分的に第1の開口26を通って流れ、いずれかの放出された試料に逆流するように、しばしばカーテンガスと称される、実質的に不活性なガスをチャンバ10に提供して、該脱溶媒和を助けることができる。溶媒とカーテンガスとの間の分子間相互作用の組み合わせ、および出願人の教示の種々の実施形態において、加熱層流チャンバ12または任意の他の好適な熱源により提供される熱効果の結果、試料の実質的な脱溶媒和が生じ得る。
【0021】
ガス入口62を通して、ガスをチャンバ10に提供することができる。ガス入口62は、ノズルまたは他の好適な構造形態であり得る。種々の実施形態において、ガスは、ガス入口またはガス源(図示せず)に関連付けられる熱源を用いる等、種々の方法で加熱され得る。ガス入口62は、ガスが概してチャンバ10に提供されるのを可能にする、チャンバ10周囲の位置に位置することができ、例えば、オリフィスプレート14付近に位置することができる。本出願人の教示の種々の実施形態によると、ガスは、ガスフロー流を形成するために、チャンバ10内でランダム化してもよい。チャンバ10に対する質量分析計(MS)チャンバ40の低圧が、オリフィスプレート開口38を通じてガスの引き込みを確立する。このガスの引き込みのために、チャンバ10内のガスの一部分が、特定の構成においては加熱層流チャンバ12を介して、概してオリフィスプレート開口38を通じて引き込まれる。ガスは、少なくとも部分的に境界部材開口26を通じて出て、少なくとも部分的に注入口42の方へ、次いでオリフィスプレート開口38の方へ流れる。図1に示す構成要素に加えて、熱を試料に提供するための試料供給源に関連付けられる熱源等、少なくとも1つの熱源(図示せず)をチャンバ10の外側に提供することができ、および/または少なくとも1つの熱源をチャンバ10の内側に位置することができる。例えば、チャンバ10内に位置する熱源は、薄層チューブを含み得る。
【0022】
さらに図1を参照すると、第2の試料供給源46が示される。第2の試料供給源46は、第2の試料を放出することのできる第2の試料エミッタ48を備え得る。第2の試料注入口50が、チャンバ10において画定され得る。第2の試料注入口50は、境界部材18、または第2の試料がチャンバ10に導入され得るように、チャンバ10周囲の他の位置により画定される1つ以上の開口を備え得る。出願人の教示の種々の実施形態によると、第2の試料供給源46は、第2の試料をチャンバ10に導入するための手段を備え得る。第2の試料を導入するための手段は、ノズルもしくはチューブ、または当技術分野で既知である他の導入手段であり得るが、それらに限定されない。第2の試料供給源46は、試料供給源20のものと同一であっても異なってもよい。例えば、第2の試料供給源46は、任意のイオンスプレーデバイス、コロナ放電ニードル、プラズマイオン源、電子衝撃もしくは化学イオン化源、光イオン化源、大気圧(AP)MALDI供給源、DESI源、DART源、熱脱離源、SONICスプレー、Turbo VTM源、または任意の上記の複数の組み合わせを含み得る。他の種類のイオン源を使用することができ、該イオン源は、大気圧、大気圧以上、大気圧付近、または真空で動作可能である。本出願人の教示によれば、当業者には、境界部材が移動度分析器を封入することが可能であり、サンプリング注入口が移動度分析器とインターフェースをとり得ることが理解されよう。さらに、第2の試料エミッタ48は、チャンバ10内または質量分析計のさらに下流での、後続する脱溶媒和およびイオン化のために、非荷電および/または荷電試料をチャンバ10に送るための噴霧器アセンブリ(図示せず)を含むことができる。試料供給源20および第2の試料供給源46は、同一電源に接続されてもよく、2つの異なる電源に接続されてもよい。種々の実施形態において、1つの電源が使用され、それぞれのイオン源の電圧を個別に制御するのに好適な手段が提供される。さらに、図のいくつかは第2の試料供給源を第1の試料供給源と並列構成に示しているが、これは、必ずしもそうである必要はない。第2の試料供給源は、試料がチャンバ10に導入され得る限り、いずれの配向であってもよい。
【0023】
試料は、中性分子またはイオン等の分子を含み得る。第2の試料のイオンは、試料エミッタ28により放出されるイオンと同一または反対の極性であり得る。
【0024】
出願人の教示の種々の実施形態によると、チャンバ10は、チャンバ10に導入される複数の第2の試料が存在し得るように構成され得る。例えば、チャンバ10は、第1の試料の導入のための第1の開口を画定可能であり、少なくとも第2の試料、つまり少なくとも1つの他の試料、の導入のための少なくとも1つの他の開口を画定可能である。例えば、チャンバ10は、全体で、2つ、3つ、4つ、あるいはそれ以上の試料の導入のための、2つ、3つ、4つ、あるいはそれ以上の開口を画定することが可能である。
【0025】
種々の実施形態において、試料供給源20は電磁界に関連付けられ得る。当業者には理解されるように、例えば、エレクトロスプレーイオン源等のイオン源の動作中、イオンを発生するためにイオン源に電位電圧を印加することが可能である。電磁界は、ほとんどのイオン源と、一部はイオンの形成中に直接、また一部は形成後のイオンに直接、関連付けられ得る。エレクトロスプレー源の場合、電磁界の強度は、加電圧および間隙、ならびに形状に依存する。電磁界が検出され得る距離は、イオンエミッタの形状等の様々な要因に依存する。2つのイオン源の間の電磁界の相互作用は、イオンビーム偏向またはイオン生成率の変化により、不安定性および信号低減をもたらす影響を有し得る。第2の試料供給源に印加された電位が、例えば、第1の試料供給源の安定性、強度、または調整に最小限の影響しか与えない場合、電磁界の相互作用は最小限、あるいは本質的に存在しないのは明らかである。また、試料供給源20との密接な関連は、1つ以上の試料の導入から生じるガスフローの相互作用の結果、第1の試料の分析に有害な影響を有し得る。これらのいずれの影響も、第1の試料の分析に有害な影響を有しかねない。
【0026】
第2の試料供給源を有するということは、形状的な制約もまた課し得る。MALDIプレート等の特定の試料供給源(図3参照。以下に記載)は、第2の試料供給源を極めて近位に置かせない寸法を有し、その形状的制約により、第2の試料はサンプリング注入口の極めて近接に位置できない。
【0027】
出願人の教示の種々の実施形態によると、第2の試料供給源46は、第1の試料の分析に最小限の有害な影響しか与えないように、試料供給源20から十分に距離を置くことが可能である。例えば、任意の2つの試料供給源の間の距離は、約3ミリメートルから20cmを超える範囲、あるいは約1センチメートルから約10cmの範囲であり得る。使用されるインターフェースと試料供給源との構成により、任意の2つの試料供給源の間の最適距離が決定される。例えば、4000 QTRAP(登録商標)質量分析計を用い、第1の試料供給源がナノスプレー先端を備え、第2の試料供給源がエレクトロスプレー装置を備える場合、2つの試料供給源の間の好適な距離は、例えば、約2センチメートルから約7センチメートルの範囲、または約3センチメートルから約6センチメートルの範囲、または約4センチメートルから約5センチメートルの範囲であり得る。例えば、2つの試料供給源の間の好適な距離は、約4.5センチメートルであり得る。
【0028】
図1に示す実施形態において、第2の試料エミッタ48は、第2の試料が注入口42(続いてオリフィスプレート開口38)に直接送られないように、注入口42の位置からチャンバ10に第2の試料を放出することができる。例えば、図1に示すもの等の構成を使用して、第2の試料は、チャンバ10内のガスにより確立されたガスフロー流の助けを得て、実質的に注入口42に引き込まれ得る。このようにして、注入口42および/または開口38へ方向付けられる、チャンバ10内で確立されたガスフロー流は、概して、第2の試料をサンプリング領域24へ、また続いて注入口42およびオリフィスプレート開口38へ搬送するための導管の役割を果たし、第2の試料のサンプリングを可能、および/または著しく改善する。ガスフロー流の確立により、複数の試料供給源を十分遠くに離れて位置付けることが可能になり、磁場および/もしくはガスフローの相互作用、または必要に応じて、他の任意の相互作用の有害な影響を削減または排除する。種々の実施形態において、境界部材18および加熱層流チャンバ12は、イオン源と関連付けられる外部電磁界が存在しない場合、無磁場、またはほぼ無磁場である領域をチャンバ10内に確立することができるように、電気的に接続され得る。これらの条件下では、ガスフロー流は、より効果的に働き、イオンを注入口42/オリフィスプレート開口38へ運ぶ。本出願人の教示における無電界状態が、無電界状態またはほぼ無電界状態を含み得ることが理解されよう。
【0029】
図2は、異なるインターフェース構成が提供される、本出願人の教示の種々の実施形態を例示する。本構成において、示すように、チャンバ10が使用される。チャンバ10は、オリフィスプレート開口38を画定するオリフィスプレート14と、開口26を画定する境界部材18とを備える。試料は、質量分析計チャンバ40(完全に封入されたチャンバ40。図示せず)に入ることができる。チャンバ10は、境界部材18およびオリフィスプレート14により、少なくとも部分的に画定される。ガス注入口66を介して、チャンバ10にガスを提供することができる。境界部材18およびオリフィスプレート14は、試料供給源/試料エミッタと関連付けられる電磁界が存在しない場合、それらの間に本質的に無磁場、またはほぼ無磁場である領域を確立するように、電気的に接続され得る。本構成において、試料エミッタ28を備える試料供給源20が、開口26に近位または近接して示される。第2の試料エミッタ48を備えるさらなる試料供給源46は、開口26から十分距離を置いた位置に位置し得る。さらなる開口を境界部材18またはチャンバ10の他の領域に画定し、さらなる試料がチャンバ10に入るのを可能にすることができる。上述のように、エレクトロスプレーイオン源を含む種々のイオン源が、本出願人の教示の実施に好適である。さらに、オリフィスプレート開口38を、毛細管注入口、イオンパイプ、または加熱毛細管等の、他の任意の既知のサンプリング注入口デバイスと差換えることができる。
【0030】
図3は、異なるインターフェース構成が提供される、本出願人の教示の種々の実施形態を例示する。本実施形態において、試料供給源20は、プレート82と、MALDIシステム等のレーザー照射84を備え、プレート82上の試料のレーザー照射84により、試料を生成することができる。当業者には理解されるように、十分なイオン化を容易にするために、任意で試料を1つ以上のマトリクスと混合することができる。代替として、周知の他の手段により、後続のイオン化のために、試料を中性物として脱離させることができる。第2の試料エミッタ48を備える第2の試料供給源46が位置する位置において、該プレートが形状的制約を呈する場合がある。図3は、熱チャンバ12の近位に主要開口26を備える、チャンバ10を確立する境界部材18を示す。開口26は、熱チャンバ12内の注入口42と同一平面、上流、または下流に確立され得るが、ただし、ポート62により確立されたガスフローは、分子を第2の源46から注入口42へ運ぶことができる。
【0031】
図4は、異なるインターフェース構成が提供される、本出願人の教示の種々の実施形態を例示する。本実施形態において、第2のイオン源は、注入口50に近接または近位に位置しない。第2の試料は、チャネル部材80を通って、またはそこから助けを得て、チャンバ10に導入される。チャネル部材80は、丸みを帯びる必要も、直線的である必要もないが、チューブ、または試料のチャンバ10への搬送を可能にする他の構造であり得る。種々の実施形態に従って、試料のチャンバ10への搬送を助けるために、ガス源を用いてガスをチャネル部材80に導入することができる。本出願人の教示から、図4に示す実施形態を使用して、または本明細書に開示されるいずれの他の実施形態との組み合わせでも、複数の試料供給源が、複数の試料をチャンバ10に導入可能であることが、理解されよう。チャネル部材80および源46の形状を、源の原理から逸脱することなく変更することが可能であり、例えば、チャネル部材80に沿った異なる位置で試料を導入することができることもまた、明白であろう。
【0032】
種々の実施形態において、図4に示すように、第1の源20は第1の源ハウジング86に封入され得、もう1つの源46は、対応する第2の源ハウジング88に封入され得る。代替として、もう1つの源46は、少なくとも1つの他の源46が、同一または個別の対応する源ハウジング88にそれぞれ封入され得るように、複数の源を含むことができる。
【0033】
上述の種々の実施形態により、1つ以上のさらなる試料供給源からのイオンまたは分子の、質量分析計の注入口から上流にあるチャンバへの送出が可能になる。例えば、イオンの場合、第1の試料供給源からのイオンと同時に機器の中にサンプリングされることが可能であり、あるいは種々の試料供給源からのイオンのサンプリングは、指標化を達成するためにゲーティングされてもよい。中性分子の場合、中性分子を、第1の試料供給源からのイオン流または別の試料供給源からの試料流と組み合わすことができ、続いてガス相の電荷移動または他のイオン化過程によりイオン化される。
【0034】
本出願人の教示の種々の実施形態に従って、質量分析計およびデバイスへのイオンの導入を指標化する方法を提供する。第1の試料の、開口38から上流にあるチャンバ10への導入は、第1の試料が導入される際、質量分析計で分析するために、第1の試料が開口38を通過することができるように、第1の電磁界と関連付けられ得る。第2またはそれ以上の試料供給源によりチャンバ10に導入される、イオン化分子、またはイオン化される中性分子の少なくとも第2の試料は、第1の試料の導入と関連付けられる電磁界により実質的に拒絶され、開口38の通過から実質的に阻まれ得る。較正物質として使用され得る第2の試料は、本質的にチャンバ10に留まる。第2の試料の導入は、第2の電磁界と関連付けられ得る。第2の電磁界は、第2の電磁界が質量分析計での試料の分析に有害な影響を与えないように、第1の電磁界から十分離すことができる。第1の電磁界が除去されて、第1の試料がチャンバ10に導入されなくなると、第2の試料は開口38を通過することができる。第1の電磁界は、続いて、再度第1の試料を導入するために再確立され得る。本方法は、試料を指標化させる様式で、第1の試料とは別に、第2の試料を質量分析計に導入する方法を提供する。試料のそのような指標化により、質量分析計の外部較正が可能になる。
【0035】
本出願人の教示の種々の実施形態による、少なくとも2つの源から質量分析計に試料を導入するための方法を提供する。本方法は、質量分析計のオリフィスプレート開口38から上流にある入口点で、第1の試料をチャンバ10に導入するステップであって、該第1の試料は、オリフィスプレート開口38に実質的に近接して導入されるステップと、オリフィスプレート開口38に近接しない位置で、少なくとも1つの他の試料をチャンバ10に導入するステップと、を含み得る。チャンバ10は、ガスフロー流が、ガスが部分的に概して第1の試料の入口点の方へ、また部分的にサンプリング注入口の方へ流れるように確立されるように、ガスのチャンバ10への導入を可能にするための、ガス入口62をさらに画定することができる。種々の実施形態において、第1の試料の導入は、電磁界と関連付けられ、少なくとも1つの他の試料の導入は、少なくとも1つの他の試料の導入が、質量分析計での第1の試料の分析に有害な影響を与えないように、第1の試料の導入から十分離れている。
【0036】
第1の試料および少なくとも1つの他の試料の質量スペクトル分析をゲーティングするために、現在当技術分野で既知である種々の方法およびデバイス、および後に開発される好適な方法およびデバイスが、使用され得る。例えば、1つ以上のイオン源の電磁界を制御することにより、試料をゲーティングすることができる。他のゲーティング方法およびデバイスは、例えば、機械的、電気的、または空気圧式手段を含み得る。機械的手段は、例えば、試料の少なくとも1つのチャンバ10への導入の遮断を含み得る。これは、例えば、1つ以上のビームチョッピングレンズの使用、または物理的に1つ以上のエミッタを軸外に移動させ、その開口から離すことにより達成され得る。電気的手段は、例えば、試料供給源の少なくとも1つへの動力を減少もしくは中断することを含み得る。空気圧式手段は、例えば、試料がサンプリング注入口に達するのを実質的に防ぐように、試料の一方または両方へ高速ガス流等のさらなるガスを送るための、さらなるガス源のフローの制御を含み得る。他のゲーティング方法およびデバイスは、試料のエミッタへのフローが急速に切り替えられる、流体切替弁を含む。例えば、油圧弁および/または電磁弁がこれに使用され得る。他の方法およびデバイスは、エミッタ先端で試料の放出を許可および解除することにより動作する、スプレーコントローラを含む。これは、機械的および空気圧式手段もまた考えられるが、通常電場により制御される。指標化は、エレクトロスプレー電位の制御により達成され得る。エミッタの電気的指標化もまた、それぞれのエミッタの先端に近位のチャンバ内に位置するレンズを使用することにより達成され得る。他の方法およびデバイスは、エミッタをそれぞれの開口から回転させる、あるいは試料がチャンバに入るのを防ぐように、開口を回転させることを含む。他の方法およびデバイスは、チャンバ内に位置し、部分的または高真空のいずれかで1つ以上の試料をゲーティングするイオンビーム切替器を含む。さらに、電極が、試料をサンプリング注入口から迂回させる抽出電位を印加するためにチャンバに追加され得る。また、ゲーティングは、個別にまたは同時に少なくとも1つ以上の他の源に試料を提供する、1つ以上のイオン源からのイオン送出の制御を含む。
【0037】
図5は、出願人の教示の種々の実施形態を明示する。加熱層流チャンバ12により画定され、そこを通って半径方向に延在する、さらなるチャネル64を示す。複合フロー流が、加熱層流チャンバ12内で混合され、間隙32およびオリフィス開口38を通って単一流を生成する。さらなるチャネル64は、少なくとも1つの他の試料が第1の試料とほぼ同時に機器内にサンプリングされ得るように、チャンバ10内でさらなる注入口として機能し得る、注入口を提供する。このような様式で、複数の個別のイオン流が同時にサンプリングされ得る。そのようなシステムにより、例えば、機器の内部較正が可能になる。本出願人の教示の種々の実施形態において、試料供給源20からの試料および第2の試料供給源46からの試料が異なる注入口の中に搬送され、その後大気圧または真空領域のいずれかにおいて混合されるように、複数のサンプリング注入口が有効になる。
【0038】
しかしながら、本出願人の教示を、例えば、質量較正物質を追加するための、さらなるイオン源を使用して記載したが、本出願人の教示の種々の実施形態は、イオンの複合流または異なる種類のイオン源により生成されるイオンの、同一質量分析計への供給に有用である、いずれの用途にも使用され得る。これらには、イオン−イオン反応用の異なる極性のイオンの生成、イオン−中性反応用に中性物を供給するための手段、液滴−液滴混合実験、電荷反転実験、内部および外部較正等が挙げられるが、それらに限定されない。例えば、本出願人の教示によると、第1の源は帯電スプレーを含むことができ、少なくとも1つの他の源は、中性スプレーまたは第1の源のものと逆帯電したスプレーを含むことができる。第1および少なくとも1つの他の源からのスプレーを合わせて混合し、イオン−イオンまたはイオン−中性反応を行うことができる。中性物は荷電されてもよく、極性は反転されてもよい。
【0039】
例えば、さらなるレンズ、電源、真空ポンプ等、本明細書に必ずしも図示または記載する必要はないが、質量分析計の使用に際し必要とされるか有用のいずれかであることが当業者に理解されるであろう、質量分析計の他の側面がある。さらに、本明細書で使用される用語は、それらの機能により定義され、他の当業者には異なる名称で称される場合がある。例えば、本明細書で記載するチャンバ10は、特定の状況においては気圧インターフェース、または同一もしくは異なる状況においてはカーテンチャンバと称される場合があり、チャンバ10に関してここで記載される特徴の全てを有してもよいが、有さなくてもよい。本出願人の教示が有利に適用され得る現在利用可能なMSデバイスの実施例には、四重極(三重四重極および単一四重極)、TOF(QqTOFを含む)、およびイオントラップ質量分析計が挙げられる。概して、第2またはそれ以上のイオン源の使用が好適であるいずれのMSデバイスも、本出願人の教示の実施における使用に好適である。
【0040】
本出願人の教示の側面は、以下の実施例を考慮に入れるとさらに理解され得るが、それらは多少なりとも本出願人の教示の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
上述のように、イオン源の能力は、イオン源等の別の試料供給源が極めて近位に位置する場合、電場の相互作用により妨げられる場合がある(例えば、Rulison and Flagan, Rev. Sci. Instrum., 1993, 64, 683−686を参照されたく、これは参照することにより本明細書に組み込まれる)。図6は、本出願人の教示に従った、イオン源の電界効果の排除を検証するように設計された実験結果を明示する。図6に提示されたデータについては、レセルピン試料が第1の試料エミッタを介してナノスプレーされ、加熱層流チューブ注入口の遠位に位置する第2の試料エミッタを介して、溶媒がエレクトロスプレーされた。第2の試料供給源に印加した電位を変化させながら、プロトン化されたレセルピン断片イオンの信号をモニタリングした。図6に明示されるように、第1の試料供給源から生成された信号は、第2の試料供給源に関連付けられる電磁界により影響されず、有害な電界効果の欠如を明示した。2つの試料供給源の間の距離は、約3センチメートルであった。さらに、第1のイオン源が注入口の近位に試料を放出し、また境界部材における開口が注入口と同心円上にあるため、(第2の源および第2のカーテンプレート開口が除去された)標準的な構成と比較して信号低減はない。
【0042】
(実施例2)
本実験は、図1に示すものと類似の構成を使用して行われた。試料供給源によりチャンバに導入された中性種は、しばしば分析フロー流と称される、第1の試料供給源により導入されたイオンに曝露されると、ガス相の電荷移動を受けて、図7に示す分析的質量スペクトルにおいて質量較正用イオンの役割を果たすイオン化種の存在をもたらし得る。図7は、中性レセルピン分子の大気圧領域への導入とともに、第1の試料供給源のナノスプレー先端を介してスプレーされたミノキシジル試料で得られたデータを示す。この場合、第2の試料供給源は噴霧器アセンブリを備え、噴霧器には電位は印加されなかった。噴霧器流速は、先端で生成された溶媒をチャンバの中に噴霧するのに十分な高流速に設定された。溶媒流速は、約5マイクロL/分であった。第1の試料供給源は、ミノキシジルを約500nL/分でスプレーする、ナノフローエレクトロスプレー源を含んだ。スペクトルは、プロトン化されたミノキシジルイオン(210m/z)、および同一スペクトル内のプロトン化されたレセルピンイオン(609m/z)、ならびに第1の試料供給源の分析用噴霧器に提供された溶媒中に存在する、多くのより強度のフタル酸エステルのピークを示す。レセルピンイオンは、第1の試料供給源により形成されたイオン流からのガス相の電荷移動により形成された。第2の源からチャンバの中への分子の浸透を防ぐように、ナノスプレー先端への噴霧器ガスフローを停止させることにより、指標化が達成された。本動作モードでは、ナノスプレー先端からの較正物質およびイオンは、単一質量スペクトル内に存在する。このようにして、ナノスプレー実験または他の種類の源を用いる実験用の内部質量較正の達成が可能になり得る。
【0043】
図8に示すように、中性の較正用分子の荷電は、ガス相の電荷移動の結果、着目イオン上の電荷の純損失をもたらし得る。図8で収集されたデータについて、ミノキシジル試料は、ナノスプレー先端を介してエレクトロスプレーされ、レセルピン試料(較正物質)は、第2の噴霧器アセンブリを介して噴霧された。データは、多重反応モニタリング(MRM)動作モードで収集され、レセルピンおよびミノキシジルの痕跡が、それぞれ図8の上部ウィンドウ枠および下部ウィンドウ枠に表示される。MRM滞留時間は、それぞれ100ミリ秒で、ミノキシジル用のイオンエミッタに2800Vを印加し、第2のエミッタアセンブリ用の噴霧器設定は20であった。第2の噴霧器用の初期設定は、ESI電位については0V、噴霧器ガス設定は0であった。最初、MRM痕跡は、ミノキシジル断片については、秒当たり約25000カウント(cps)を表示した。約0.6分の時点で、第2のイオンエミッタの噴霧器が、設定55(約3から3.5L/分)で作動され、それにより、カーテンプレートの周辺近くの2mmの較正物質注入口を介して、中性の較正物質液滴をチャンバの中に噴霧した。本実験のために、加熱層流チャンバは200℃に維持され、約100℃のカーテンガス温度を生じさせた。噴霧された較正物質液滴の脱溶媒和により、中性のガス相のレセルピン分子の形成に至った。ガス相の電荷移動は、約500ミリ秒以内にプロトン化されたレセルピンイオンの信号をもたらした。レセルピンイオンの強度の相当な上昇には、ミノキシジルイオンの強度の低下が付随したが、恐らくガス相の較正物質への電荷移動の負の結果であろう。約1分マークで、第2のイオンエミッタ噴霧器が停止された。レセルピンイオンの信号は、次の1〜2秒の間に低下し、初期背景強度に戻った。較正信号の除去に要した時間は第2のナノスプレー先端噴霧器の供給ライン上の残圧を失わせるために必要な時間、ならびに大気圧領域から中性較正物質を一掃するために必要な時間の結果である。図8は、分析用噴霧器(第1の試料供給源)のプルームの結果の中性イオン化が、分析試料の信号に影響を及ぼし得ることを明示している(これらのデータについてはほぼ2の要素)。
【0044】
(実施例3)
質量較正を達成する別の方法は、荷電較正用イオンの大気圧領域への追加、または第1の試料エミッタから十分に距離を置いた位置での、大気圧領域内での荷電較正用分子のイオン化を伴う。大気圧領域が本質的に無磁場であると仮定すると(例えば、図1に示すものと類似のカーテンプレート上で500V、熱チャンバ上で500V)、イオンは、また、サンプリングのために、カーテンガスフロー内で加熱層流チャンバ注入口へ運ばれ得る。この実施例が図9に示され、100pg/マイクロLのレセルピン試料が、カーテンプレートの周辺に位置する第2のナノスプレー先端を介して注入された(1μL/分)。ESI電位は3000V、噴霧器は55(約3〜3.5L/分)に設定された。これらのデータに関して、第1のナノスプレー先端は、実質的に注入口に近位の無磁場構成を確実にするために除去された。図7に示すように、第2のイオンエミッタが、注入口から隔絶された位置で荷電種を大気圧領域中に注入したにもかかわらず、この試料には、相当量のMS/MS信号(信号は、注入口からの距離および境界部材開口および注入口の非同心性により、同一システムでの標準的な最適化構成に対して約50倍下回った)が生成された。大気圧領域およびカーテンガスフローの複合効果のために、該信号が生成された(つまり、もし大気圧領域およびカーテンガスフローが除去されていたら、この信号は起こり得なかっただろう。したがって、図9は、イオンの大気圧領域中への播種およびそれらを注入口へ運ぶためのカーテンガスフローの使用は、較正に対する実行可能なアプローチであり得ることを示している。較正用イオンの信号の改善は、較正物質がチューブ等のチャネル部材を介してサンプリング注入口へ噴霧される、図4に示すものと類似の構成を使用して、達成される傾向がある場合がある。
【0045】
(実施例4)
電場の浸透は、ガスフローおよび電場の相対的強度により、荷電粒子をカーテンガスフローから抽出し得る、電位障壁を生じ得る。図10は、第1のイオンエミッタがナノフローESI噴霧器であり、第1のカーテンプレート開口とほぼ同一平面上に位置する場合の、加熱層流チャンバ注入口付近の等電位を図式的に示す(点線)。これは、また、較正用イオンが、チャネルにより生じさせた本質的に無磁場である構造を介して、噴霧器ガスフローにより運ばれるように、カーテンプレートの裏側または内側にチャネルを加工することにより達成され得る。動作中、第1のイオンエミッタは、約3000Vの電位で作動する。これは、中性の較正物質に影響を及ぼさない一方、注入口から正荷電イオンを拒絶する。さらに、第1のイオンエミッタから生成される荷電液滴流もまた、カーテンガスフロー中に存在するイオンを拒絶する。
【0046】
これを裏付ける実験データを、図11および12に提示する。図11および12に提示したデータについて、質量較正物質は、カーテンプレートの周辺における小径孔を通って注入された1000pg/μLのレセルピンを含む(ESI電位3000V、噴霧器55)。しかしながら、第1のイオンエミッタを介して流れた溶媒はないが、第1のイオンエミッタをカーテンプレートの近接に位置し、標準的な噴霧器ガス設定(Analyst(登録商標)ソフトウェアで10)を使用した。分析用噴霧器電位は、図11のデータについては0Vから3000V(標準的な作動電位は、本構成では約3000V)、図12のデータについては0Vから3000Vに変化させた。両方の図は、第1のイオンエミッタの電位が、較正用イオンのためのイオンサンプリングに著しい影響を及ぼすことを示している)。分析用噴霧器に印加された磁場により付与された電気力は、分析用噴霧器から噴霧器により付与された空気圧力よりもはるかに大きな影響を、較正用イオンに及ぼした(データ示さず)。最低のカーテンガス設定を使用し(図11)、分析用噴霧器電位が2000Vに設定されると、レセルピンイオンの信号はほとんど完全に排除された。3000Vの設定では、信号は完全に排除された(データ示さず)。カーテンガス設定を最大に上げると(図12)、より多くのレセルピンイオンの加熱層流チャンバ注入口への駆動が(磁場の障壁をよりうまく克服して)助けられ、2000Vの分析用噴霧器電位の信号は、78000cpsであった。これらの結果は、電気斥力と較正用イオンをサンプリング注入口の方へ運ぶカーテンガス力との間の均衡の明示に役立つ。
【0047】
(実施例5)
本発明者らは、第1のイオンエミッタにより発生された電気斥力が、荷電液のスプレーがそこから放射されるとさらに顕著であり得ることを見出した。図13に示すように、事実、磁場の斥力および加熱された注入口の前のカーテンチャンバの存在の競合する力は、較正物質の導入および噴霧器の指標化の新規な方法の可能性を開く。図13に提示したデータは、ESI電位および噴霧器ガス設定を、それぞれ2800Vと10に設定して、第1のイオンエミッタを介して10pg/μLのレセルピンをエレクトロスプレーすることにより生成された。1000pg/μLのグルフィブリノペプチドb試料が、較正用ESI電位および噴霧器設定に、それぞれ3000Vおよび55の設定を使用して、大気圧チャンバにエレクトロスプレーされた。まず、第1のイオンエミッタの電位は、加熱層流チャンバ注入口付近に本質的な無磁場領域を生成して、500Vに設定された。較正用イオン(グルフィブリノペプチドb)は、注入口の中に引き込まれ、二重にプロトン化されたペプチドに対応するピークを生じた(中央ウィンドウ枠)。約0.07分の時点で、第1のイオンエミッタに印加された電位を、安定したエレクトロスプレーを生成するために、約2800Vに上昇させた。較正用イオンはこの電位により拒絶され、グルフィブリノペプチドbピークの完全な排除、および単一にプロトン化されたレセルピンの信号の開始に至った(下部ウィンドウ枠)。約0.21分の時点で第1のイオンエミッタの電位を再び低下させると、レセルピンイオンの信号が排除され、較正用イオン(二重にプロトン化されたグルフィブリノペプチドb)が加熱層流チャンバ注入口に再度運ばれ、較正用イオンの非常に鮮明なスペクトルをもたらした。図13は、較正物質導入の指標化を達成する非常に効果的な手段を明示する。図14および15は、較正用イオンが1価であり(図14、ロイシンエンケファリン)、一連の荷電状態(図15、ダイノルフィンA)を呈する、さらなる実施例を示す。
【0048】
(実施例6)
図16に示すように、本手法を使用し、較正物質を有効化または無効化する速度を決定するために、MRMモードでもまた、実験を実行した。これらのデータは、レセルピン較正用イオンのMRMのために、滞留時間20ミリ秒を使用して、1000pg/μLのレセルピン較正用イオン溶液が第2の噴霧器を介してスプレーされ、溶媒が第1のイオンエミッタを介してスプレーされるという条件下で、生成された。まず、第1のイオンエミッタの電位は2800Vにされ、分析用スプレーであるため、低残留背景を生じさせた。約0.55分時点で、第1のイオンエミッタの電位は、加熱層流チャンバ注入口に無磁場領域を生じさせるために、500Vに低下させた。レセルピン較正用イオンの信号の開示時間は、44ミリ秒であった。第1のイオンエミッタの電位を2800Vに上昇させて分析フロー流を再有効化すると、約34ミリ秒以内に較正信号を排除した。有効化および無効化は3回繰り返され、43±2ミリ秒の有効化時間、および34±4ミリ秒の無効化時間を生じた。図17は、ミノキシジル較正用イオンを含有する試料を使用して有効化および無効化の再現性を明示する、さらなるデータを示す。これらのデータの収集に使用されたシステムは、好適な質量分析計のための、改善された高性能のナノフロー質量較正システムを提供し得る。
【0049】
(実施例7)
本実験は、大気圧MALDI供給源および噴霧器補助のナノフローエレクトロスプレーエミッタ(MicroIonSpray II)を使用して、図18に示すものと類似の構成を使用して行われた。当業者には、源ハウジング、MALDI供給源のための転換段階、レーザー光学、および電源等の、さらなる特定の構成要素は、明確にするために、図18から省略されていることが明らかであろう。図18は、大気圧源領域を質量分析計の真空系から隔てるオリフィスを備える、オリフィスプレートを示す。しかしながら、加熱層流チャンバは、図1に記載の構成に類似したTeflonスペーサーでオリフィスまで密閉されているが、加熱層流チャンバは異なる形状および長さを有する(≒3cm)。カーテンプレートと標示される境界部材18は、第1のガスフローをチャンバに導入するためのガスポートを備える、チャンバを形成する。層流チャンバのサンプリング注入口は、チャンバ内で確立されたガスフローが、サンプリング注入口の方へ、カーテンプレート開口を通って外側へ方向付けられるように、開口からカーテンプレート内に外側に突出する。レーザー照射条件下で、MALDIプレートの表面から生成されたイオンおよび中性物のプルームを効率的にサンプリングするため、加熱層流チャンバの注入口から約3mmに、MALDI試料プレートを位置する。サンプリング注入口から実質的に隔絶された位置に、さらなる噴霧器補助のエレクトロスプレーエミッタを示す。(搬送チューブと標示される)7cmの金属チューブがカーテンプレートの中に通され、噴霧器補助のエレクトロスプレー源からカーテンプレートにより確立されたチャンバの中に、中を通ってイオンおよび荷電液滴を搬送するための約2.4mmのチャネルを有する。噴霧器補助の噴霧器に印加されたエレクトロスプレー電位に加えて、さらなる噴霧器ガスを使用して、イオンおよび荷電液滴のチャンバの中への伝達を改善することができる。搬送チューブの出口をサンプリング注入口のより近くへ移動させることもまた、さらなる源からサンプリング注入口への、中性または荷電試料の伝達を改善する傾向がある。
【0050】
図19は、図18に例示した構成を使用して生成されたデータの一実施例を示す。−2500Vのエレクトロスプレー電位、および約3L/分の噴霧器ガス設定を使用し、1000pg/μLのタウロコール酸試料が、MicroIonSpray II噴霧器を介して7cmの長さのチューブの中に約3μL/分でエレクトロスプレーされた。噴霧器ガスフローが液滴のチューブへの搬送を支援できるように、噴霧器は直接チューブの中に向けられた。ステンレス製のMALDIプレートを、加熱層流チャンバの注入口の前、約3mmの場所に位置させ(2mmチャネル)、電位は図19に示すデータ用に調節された。較正用イオンのために生成された信号は、MALDI標的プレートに印加された電位により相当影響を受けた。これらのデータについて、カーテンプレートおよび加熱層流チャンバは、−605Vに維持された。MALDIプレートに印加された電位は、−620Vから−600V、そして−560Vへと調節された。カーテンガスフローがサンプリング注入口の先端の約4mm後方で放射される本構成において、先端を通過したカーテンガスフローは、イオンを注入口へ運ぶのに十分であった。しかしながら、タウロコール酸イオン用に測定されたイオン電流は、MALDIプレートに印加された電位により影響を受けた。カーテンガスがサンプリング注入口からさらに遠くまで放射される条件下では、サンプリング注入口の方へのイオンの動きを補完するために、電場勾配が使用され得る。
【0051】
図20は、較正物質噴霧器を介してスプレーされるレセルピン較正用イオンの信号への、MALDIプレートに印加された電位の影響を示す。本実験について、カーテンプレートおよび注入口に印加された電位は、583Vであった。この値の周辺でMALDIプレート電位を約+/−30Vを超えて変化させると、較正信号は非常に顕著に減衰された。較正用イオンのサンプリングに対する最適な標的プレート電位の幅は、プレートと注入口との間の間隙、ならびにプレートの物理的な寸法およびカーテンガスがサンプリング注入口の先端の後方に放射される距離により異なった。
【0052】
図21は、カーテンガスが、サンプリング注入口とMALDI標的プレートとの間の小さな磁場により増大される条件下で達成された、指標化の実施例を示す。この図で提示されたデータについて、3つのペプチド(アンジオテンシンI、ブラジキニン、およびアンジオテンシンII)を含有する試料が、好適なMALDIマトリックス(α−シアノマトリックス)と混合され、ペプチド当たり約200fmolの濃度で、MALDIプレートの表面に付着された。本実験を通して、約2500Vのエレクトロスプレー電位および約3L/分の噴霧器ガスフロー設定で、1000pg/μLのレセルピン試料が、MicroIonSpray IIアセンブリを介して7cmの長さのチューブの中にエレクトロスプレーされた。MALDI供給源は、窒素レーザーから試料表面へ出力を方向付ける100μmの光ファイバーを使用して、試料を照射するように構成された。MALDIプレートは、レーザー光が、本実験にわたって、約1μLの試料/マトリックス混合物からの付着物の生試料表面に連続的に方向付けられるように、再構成された。まず、MALDIプレートは、MALDI供給源から生成されたイオンが機器(4000QTRAP(登録商標))の中にサンプリングされるように、約2500Vに維持され、下のウィンドウ枠に示すように、約1047、1061、および1297のm/z値に3つのペプチドのピークを表示した。次に、標的プレートに印加された電位が560V(つまり、熱チャンバおよびカーテンプレートに印加された580Vよりもわずかに低い電位)まで低下され、MALDIイオンの全ての信号を完全に排除した。これらの条件下で、カーテンチャンバ内に収容された、エレクトロスプレーされたイオンは、カーテンガスフローと該源内の電位勾配との組み合わせによりサンプリング注入口へ運ばれ、中央ウィンドウ枠に示すように、プロトン化されたレセルピンイオンが優勢な質量スペクトルを生じた。このようにして、MALDI標的プレートに印加される電位を制御することにより、2つの異なる源からの指標化されたイオンサンプリングが、やはり達成され得る。
【0053】
(実施例8)
しかしながら、本実験は、図18に示すものと類似のハードウェア構成を使用したが、例えば、イオントラッピングデバイスを使用した、当技術分野で既知のイオン−イオン化学反応の応用のための可能性を明示するために、ナノフロー源を使用して、MALDI供給源により生成されたペプチドと反対の極性のイオンを生成した。カーテンプレートが、加熱された注入口の約4mm以内に位置され、カーテンガスフローがサンプリング注入口を通過するように方向付けるように設計された。イオン−イオン化学反応実験における問題は、必要とされる異なる電位が放電または完全な信号損失をもたらし得るため、正と負の極性のイオンを信号質量分析計注入口の前で同時に生成することである。図18に示す配置は、第1の源がサンプリング注入口の近位で所与の極性のイオンを生成し、さらなる源が第1の源から実質的に隔絶された位置で反対の極性のイオンを生成することが可能であるため、これらの問題を排除し、したがって第1の源からのイオンのサンプリングには有害な影響を及ぼさない。同一、または好ましくは異なる源ハウジング内に、複数の源が収容され得る。図22に示すデータについて、大気圧MALDI供給源を使用して、図21に提示したデータを生成するために使用したものと同じ3つのペプチドの混合物から正イオンを生成した。さらなるナノフロー源が、7cmのサンプリングチューブの中に直接スプレーされた1000pg/μLのタウロコール酸試料用に負イオンを生成した。MALDIプレート、カーテンプレート、加熱層流チャンバ、オリフィス、およびナノフロー噴霧器に印加された初期電位は、それぞれ、2500V、580V、580V、150V、および−2500Vであった。カーテンガスは約1L/分に、ナノフロー噴霧器用の噴霧器は約3L/分に設定された。両方の源は、連続的にイオンを生成するように設定された。上部ウィンドウ枠に示すように、正モードの質量スペクトルは、最初、MALDI供給源からの3つのペプチドの存在を示したが、ナノフロー源から明らかな信号はなかった。約1分後、MALDIプレートに印加された電位が低下され、機器の極性が負イオンモードに切り替えられた。MALDIプレート、加熱された注入口、カーテンプレート、オリフィスプレート、およびナノフロー噴霧器に印加された新規電位は、それぞれ、−620V、−620V、−620V、−150V、および−2500Vであった。中央ウィンドウ枠に示すように、約514m/zでピークを示す、ナノスプレー供給源からの脱プロトン化されたタウロコール酸イオンが直後に観察された。サンプリング注入口を通過した効果的なカーテンガスフローにより、MALDIプレートとサンプリング注入口との間にさらに電場を印加する必要性は排除された。約0.5分後、機器の極性が正イオンモードに切り替えて戻され、MALDIプレートに印加される電位は、MALDI供給源からのペプチドイオンのサンプリングを可能にするため、再び2500Vに上昇された。図22のデータは、複数の源から反対の極性のイオンを同時に生成することが可能であり、機器の極性を切り替えて、第1の源に印加される電位を調節することにより、指標化を達成することが可能であることを示している。当業者には既知であるように、本デバイスを用いて生成される正および負イオンは、イオン−イオン反応を行うために単一イオントラップに含まれ得る。
【0054】
(実施例9)
本実験は、図10に示す構成で、1対の噴霧器補助のナノフロー噴霧器(MicroIonSpray II)を使用して行われた。ベラパミルおよびサフラニンオレンジを含有する試料が、それぞれ分析用噴霧器および較正物質噴霧器を介してスプレーされた。図23に提示したデータに関して、2つの噴霧器に印加された電位は変化させたが、分析用噴霧器および較正物質噴霧器の噴霧器ガスフローは、それぞれ0.4L/分および3L/分に固定された。層流チャンバは100℃に加熱され、580V、580V、および50Vの電位が、それぞれ加熱層流チャンバ、カーテンプレート、およびオリフィスに印加された。検体および較正用イオンが同一スペクトルに存在しないため、ウィンドウ枠CおよびDは、外部較正のための複合源の作動を明示する。ウィンドウ枠Dは、分析用噴霧器および較正物質噴霧器に、それぞれ580Vおよび3000Vの電位を印加して生成されたデータを示す。該質量スペクトルは、サフラニンオレンジの較正物質フローからのイオンに相当する主ピークの存在を示す。分析用噴霧器電位を3000Vに上昇させると(ウィンドウ枠C)、較正用イオンの全ての信号が排除され、ベラパミルからのイオンに相当する主ピークを形成した。ウィンドウ枠AおよびBに提示するように、本源構成は、検体および較正物質が同一スペクトル上に存在する内部較正のためにもまた使用され得る。較正物質噴霧器の電圧を切ると、中性液滴および較正用分子が搬送ガス中に導入される。注入口開口の前で移動する中性液滴および分子は、分析用噴霧器からの荷電液滴と衝突し、それにより電荷を受け取り、部分蒸発すると、イオン蒸発によりイオンを放出する。すでに図8で示したように、中性の自由分子もまた、ガス相の電荷移動によりイオン化され得る。ウィンドウ枠Aは、分析用噴霧器に印加された電位が3000V、較正物質噴霧器に印加された電位が0Vである、この実施例を示す。本スペクトルは、ベラパミル(分析用噴霧器)とサフラニンオレンジ(較正物質噴霧器)の両方からのイオンに相当するピークの存在を示している。較正物質噴霧器に負の電位を印加することにより、分析用噴霧器からの正の液滴に静電的に引き付けられる、負に荷電した液滴を搬送ガス中に導入する(またはその逆)。ここで作動されるように、負の液滴が正の分析エレクトロスプレーと混合され、これらの相互作用の結果、極性を逆転させ正イオンを放出する。ウィンドウ枠Bは、分析用噴霧器に印加された電位が3000V、較正物質噴霧器に印加された電位が−3000Vである、この実施例を示す。図23に明示されるように、本作動モードは、中性液滴の導入よりも、正の較正用イオンの発生(ウィンドウ枠Bをウィンドウ枠Aに比較するとサフラニンオレンジの信号が約5倍増)においてより効果的であり、恐らく静電気引力が液滴の相互作用の効率を改善するためであろう。アズトレオナム、シクロスポリン、スクシニルコリン、ステロイド類、およびペプチド類等の他の較正用分子での実験もまた、較正物質噴霧器が負のモードのエレクトロスプレーとして作動された場合、噴霧器とは対照的に、約3〜5倍の改善を示した。本様式で作動すると、加熱器温度が下げられるにつれ(溶媒がカーテンチャンバ内により浸透)、また分析用噴霧器がサンプリング注入口からより遠くに位置付けられるにつれ(分析スプレーの、逆流のガスフロー中の液滴とのより長い相互作用時間)、較正信号は改善した。
【0055】
(実施例10)
実施例10は、本出願人の教示に係る内部較正および無電界状態を提供する実施例を明示する。本実験について、図25に示すように、較正用イオンが、カーテンプレートの周辺付近の第2の開口50の端部から、カーテンプレートと導電性のオリフィスプレート38との間の領域へガスフローにより搬送される際に無電界状態に曝されるように、シートメタルで加工された通過部材90がカーテンプレート(境界部材)18の裏側に定置された。エレクトロスプレープローブ(本実施例においてはTurbo VTM)を備える第1の源は、サンプリング注入口と同心円上に位置するカーテンプレート開口26(3mm)に直角にスプレーするように位置付けられ、ナノフロー噴霧器を備える第2の源は、噴霧器ガスを使用して、第2の開口上にはんだ付けされたチューブ等のチャネル部材80を介して搬送ガスフローを確立した。このようにして、較正用イオンおよび荷電液滴は、カーテンプレートとサンプリング注入口との間の領域に出る前に、チャネル部材80、次いで第2のカーテンプレート開口50、その後シートメタル通過部材90を通過した。エレクトロスプレー源は、第1のカーテンプレート開口の約1cm上方、また当業者には理解される直交構成に位置付けられ、第2の源がレセルピンイオンをチャネル部材80中に放出する間、グルフィブリノペプチド試料からイオンを連続的に生成した。本構成を用いて、較正用イオンが、第1の源からの分析用イオンとともに、注入口内にサンプリングされ得た。図24に示すように、較正用イオンの指標化は、カーテンプレート(境界部材)に印加する電位を変化させることにより、達成することができた。図24に提示したデータについて、第1の源、較正物質源、および注入口オリフィスに印加された加電圧は、4500V、2800V、および100Vであった。カーテンプレートに印加された電圧は、400Vと100Vとの間で変化させた。第1のエレクトロスプレー源により生成された信号は、カーテンプレートに印加された400Vで最適化され、較正用イオンに対する信号はなかった。カーテンプレートの裏側または内側表面上の通過部材を出る較正用イオン(無磁場通過)は、カーテンプレートと導電性のオリフィスとの間の電場300V/mmにより駆動され、オリフィスプレートの金属表面に放電された。カーテンプレート電位を100Vに低下させることにより、カーテンプレートとオリフィスとの間に本質的な無電界状態が生成され、それにより、較正用イオンを分析試料の一部とともに注入口内にサンプリングすることが可能になった。このようにして、約50〜70ミリ秒の切替時間で内部較正が達成され得る。
【0056】
当業者には理解されるように、本開示に精通すれば、本出願人の教示の実施における使用に際し、多岐にわたり異なるインターフェース構成が好適であり得る。種々の実施形態に関連して、本出願人の教示を記載および例示したが、当業者には明白になるように、本出願人の教示の精神および範囲から逸脱することなく、多くの変形および修正を行うことが可能であり、したがって、これら変形および修正されたものは本出願人の教示の範囲内に含まれると意図されるため、本出願人の教示は、上記で説明した方法論および構造の正確な詳細に限られるものではない。上記過程自体に必要または特有である場合を除き、本開示に記載の方法または過程のステップまたは段階に対して、図を含み、特段の順序は示唆されていない。多くの場合、過程のステップの順序は、記載した方法の目的、効果、または趣旨を変えることなく、変更することができる。
【0057】
本開示を読むことにより、添付の特許請求の範囲における本出願人の教示の真の範囲から逸脱することなく、形態および詳細において種々の変更を行い得ることが、当業者には認識される。
【技術分野】
【0001】
この出願は、2006年9月25日に出願された米国仮特許出願第60/826,811号および2006年11月23日に出願された米国仮特許出願第60/867,123号(これらの内容は、全て参考として援用される)の利益を主張する。
【0002】
分野
本出願人の教示は、質量分析計に関し、より具体的には質量分析計での複数の試料供給源の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
導入
質量分析法(MS)は、イオン化分子を分析するための強力なツールである。質量的に正確な結果を得ることは、分子の同定および/または複合混合物の内容の解読に極めて重要であり得る。一般的に、気圧インターフェース(API)または気圧インターフェース装置と呼ばれる、大気と真空のインターフェースは、試料が質量分析計の他のチャンバに入る前に、脱溶媒和および試料調整を提供するように設計される。質量分析計内において、気圧源領域を第1の減圧チャンバから分離するために、開口、毛細管チューブ、加熱パイプ、およびそれらの種々の組み合わせを含む、多くの異なるインターフェース構成が現在使用されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本出願人の教示は、質量分析計による分析のための試料の調整に好適である、チャンバまたは類似の装置もしくはデバイスとの、複数の試料供給源の使用に関連する方法、装置、およびデバイスに関する。試料の分析に最低限の有害な影響を呈する、多重噴霧器システム法、装置、およびデバイスを提供する。
【0005】
一側面によると、本出願人の教示は、少なくとも1つの試料を質量分析計に導入するためのインターフェース装置であって、サンプリング注入口と、チャンバを少なくとも部分的に画定する境界部材であって、該チャンバは無電界状態が確立され得る少なくとも1つの領域を有する境界部材と、第1の源が試料を放出することのできる境界部材において画定される第1の開口であって、該第1の開口はサンプリング注入口の同軸上にあり、試料は、そこを通って通過するためにサンプリング注入口の方へ方向付けられる第1の開口と、少なくとも1つ他の源が通って分子をチャンバに導入することのできる、チャンバにおいて画定される少なくとも1つの他の開口と、を備える、インターフェース装置を提供する。インターフェース装置は、ガスのチャンバへの導入を可能にするための、チャンバにおいて画定される少なくとも1つのガス入口をさらに備え、ガスフロー流は、ガスフローが部分的に第1の開口を通って、また部分的にサンプリング注入口の方へ流れるように確立され、分子は、ガスフロー流によりサンプリング注入口へ方向付けられる。サンプリング注入口は、チャンバよりも低圧である質量分析計の一領域に通じ得る。第1の源は、電磁界と関連付けられ得、第2の源は、第2の源が試料の分析に有害な影響を与えないように、第1の源から十分に離すことが可能である。第1の源と第2の源とは、少なくとも1つの他の源から少なくとも3ミリメートルの距離に位置することができる。本出願人の教示の種々の実施形態において、該距離は、約3ミリメートルから約10センチメートル以上であり得る。サンプリング注入口は、例えば、開口、オリフィス、または毛細管を含み得る。試料および分子の少なくとも1つは、イオンを含み得る。該分子は、試料と同一もしくは反対の極性のイオン等のイオン、または中性分子を含み得る。該中性分子は、質量分析計により分析される前に荷電され得る。該分子は、較正用分子を含み得る。インターフェース装置は、少なくとも1つの熱源をさらに含み得る。少なくとも1つの熱源は、第1の源内等の、チャンバの外側に位置してもよい。熱源は、薄層チューブを含み得る。サンプリング注入口は、加熱され得る。インターフェース装置内のガスは、カーテンガスであり得、加熱されてもよい。インターフェース装置を使用して、イオン−イオン化学実験を行うことができる。試料および分子を混合して、イオン−イオン反応、イオン−中性反応、電荷反転実験、外部または内部較正を行うことができる。インターフェース装置は、イオン源の電磁界または他の電位を制御すること等により、少なくとも1つの他の源からサンプリング注入口への試料および分子の導入を制御または「ゲーティング」するために、空気圧式または他のゲート等の手段をさらに含み得る。ゲートは、試料および分子の少なくとも1つの導入を遮断する等による、機械的側面を備えてもよい。ゲートは、第1の源および少なくとも1つの他の源のうちの少なくとも1つへの動力を減少もしくは中断する、または境界部材等のレンズ要素に印加される電位を変化させる等の、電気的側面を備えてもよい。ゲートは、さらなるガスを試料または分子の一方または両方へ送るための、かつ試料または分子がサンプリング注入口に達するのを防ぐように、第1および第2の源の一方または両方と実質的に垂直である、第2のガス源をさらに含む等による、空気圧式側面をさらに有してもよく、空気圧式ゲートは、さらなるガスフローを制御するための手段、またはコントローラを備える。ゲートは、試料または分子の導入のための制御を提供するが、全ての実施形態において試料または分子への物的障壁を含む必要はなく、試料または分子の動きを制御するために電気的または他のシステムを含むことができる。
【0006】
インターフェース装置は、少なくとも1つの他の源からサンプリング注入口へ試料および分子を導入するための手段を備えることができる。ゲーティング手段は、質量分析計を較正するために使用され得る、試料および分子の指数分析を作成することができる。インターフェース装置は、第1の源に印加される電位を変更することにより少なくとも1つの他の源をゲーティングするために、上述の空気圧式または他のゲーティング装置等の手段を備えることができる。インターフェース装置は、境界部材に印加される電位を変化させることによるゲーティングを含むことができる。本出願人の教示の種々の側面において、第1の源は第1の極性の荷電液滴のスプレーを導入することができ、少なくとも1つの他の源は、第1の源の荷電液滴と反対の極性の液滴のスプレーを、あるいは中立極性の液滴のスプレーとして、導入することができ、少なくとも1つの他の源からの液滴は、第1の源からの液滴と混合され得る。
【0007】
本出願人の教示の種々の側面によると、インターフェース装置は、少なくとも1つの他の開口に取り付けられたチャネル部材であって、少なくとも1つの他の源が、該少なくとも1つの他の開口を通って中に分子を導入することのできる、チャネル部材と、および/または境界部材の内側に取り付けられた通過部材であって、チャンバに導入される分子に無電界状態を提供するために、該少なくとも1つの他の開口に近接して位置付けられる、通過部材とをさらに含み得る。チャネル部材は、チューブを含んでもよく、通過部材は、シートメタル、チューブ、または他の任意の好適な構造等の、伝導性材料を含んでもよい。
【0008】
本出願人の教示の別の側面による、少なくとも2つの異なる源から質量分析計に試料を導入するための方法を提供する。該方法は、チャンバを少なくとも部分的に画定する境界部材において画定される第1の入口点を通じて、第1の試料を導入するステップであって、該入口点は質量分析計のサンプリング注入口の同軸上にあり、ここでチャンバの少なくとも1つの領域で無電界状態が確立され得、第1の試料はサンプリング注入口の実質的に近接に導入される、ステップと、チャンバ内のサンプリング注入口に近接しない位置に画定される少なくとも1つの他の入口点を通じて少なくとも第2の試料を導入するステップと、を含むことができる。該方法に使用されるチャンバは、ガスのチャンバへの導入を可能にするためのガス入口をさらに画定することができ、ガスフロー流は、ガスフローが部分的に概して第1の試料の入口点の方に、また部分的にサンプリング注入口の方へ流れるように確立され、少なくとも第2の試料は、ガスフロー流によりサンプリング注入口へ方向付けられ得る。第1の試料の導入は、電磁界と関連付けられ、少なくとも第2の試料の導入は、少なくとも第2の試料の導入が、質量分析計による第1の試料の分析に有害な影響を与えないように、第1の試料の導入から十分に離すことができる。第1の試料は、少なくとも第2の試料から少なくとも3ミリメートルの距離に位置することができる。第1の試料は、少なくとも第2の試料の導入から約3ミリメートルから約10センチメートル以上の位置で導入され得る。サンプリング注入口は、チャンバよりも低圧である質量分析計の一領域に通じ得る。第1の源は、電磁界と関連付けられ得、第2の源は、第2の源が該試料の分析に有害な影響を与えないように、第1の源から十分に離すことが可能である。第1の源と第2の源とは、少なくとも3ミリメートルの距離に位置することができる。本出願人の教示の種々の実施形態において、該距離は、約3ミリメートルから約10センチメートル以上であり得る。サンプリング注入口は、例えば、開口、オリフィス、または毛細管を含み得る。少なくとも1つの試料は、イオンを含み得る。少なくとも第2の試料は、第1の試料と同一もしくは反対の極性のイオン等のイオン、または中性分子を含み得る。中性分子は、質量分析計により分析される前に荷電され得る。少なくとも第2の試料は、較正分子を含み得る。
【0009】
該方法は、少なくとも1つの熱源を提供するステップをさらに含むことができる。熱源は、第1の試料および少なくとも第2の試料を加熱する能力があり得る。少なくとも1つの熱源は、第1の源内等の、チャンバの外側に位置することができる。熱源は、薄層チューブを含み得る。サンプリング注入口は、加熱され得る。インターフェース装置内のガスは、カーテンガスであり得、加熱されてもよい。該方法を使用して、イオン−イオン化学実験を行うことができる。第1の試料および少なくとも第2の試料を混合して、イオン−イオン反応、イオン−中性反応、電荷反転実験、外部または内部較正を行うことができる。第1の試料からのイオンと少なくとも第2の試料からのイオンとを合わせて混合して、イオン−イオン反応を行うことができる。第1の試料からのイオンと少なくとも第2の試料からの中性物(neutrals)とを合わせて混合して、イオン−中性反応を行うことができる。第1の試料からのイオンと、第1の試料のイオンと反対の極性のイオンとを合わせて混合して、電荷反転実験を行うことができる。第1の試料からのイオンおよび少なくとも第2の試料からのイオンは、外部較正を行うためにゲーティングされ得る。第1の試料と少なくとも第2の試料とを合わせて混合して、内部較正を行うことができる。第1の試料は、第1の極性の荷電液滴のスプレーとして導入され得、少なくとも第2の試料は、第1の試料の荷電液滴と反対の極性の液滴のスプレーとして、あるいは中立極性の液滴のスプレーとして導入され、少なくとも第2の試料からの液滴は、第1の試料からの液滴と混合される。
【0010】
該方法は、イオン源の電磁界または他の電位を制御すること等により、少なくとも1つの他の源からサンプリング注入口への試料および分子の導入をゲーティングするステップをさらに含むことができる。ゲーティングするステップは、試料および分子の少なくとも1つの導入を遮断する等の、機械的手段を備え得る。ゲーティングするステップは、第1の源および少なくとも1つの他の源の少なくとも1つへの動力を減少もしくは中断する、または境界部材等のレンズ要素に印加される電位を変化させる等の、電気的手段を備え得る。ゲーティングするステップは、さらなるガスを試料または分子の一方または両方へ送るための、かつ試料または分子がサンプリング注入口に達するのを防ぐように、第1および第2の源の一方または両方と実質的に垂直である、第2のガス源をさらに含む等による、空気圧式手段を備えることができ、空気圧式ゲーティング手段は、さらなるガスフローを制御するためのコントローラを備える。該方法は、少なくとも第2の源からサンプリング注入口へ、試料および分子を同時に導入するステップを含むことができる。ゲーティングするステップは、質量分析計を較正するために使用され得る、試料および分子の指数分析を作成することができる。該方法は、第1の試料に印加される電位を変更することにより、少なくとも第2の試料をゲーティングするステップを含むことができる。該方法は、境界部材に印加される電位を変化させることによりゲーティングするステップを含むことができる。
【0011】
該方法は、少なくとも第2の試料が少なくとも1つの他の入口点を通って中に導入され得る、少なくとも1つの他の入口点に取り付けられるチャネル部材を提供するステップをさらに含むことができる。該方法は、境界部材の内側に取り付けられる通過部材であって、チャンバに導入される分子に無電界状態を提供するために、少なくとも1つの他の入口点に近接して位置付けられる通過部材を提供するステップをさらに含むことができる。
【0012】
本出願人のこれらおよび他の教示の特徴を、本明細書において説明する。
【0013】
当業者は、以下に記載する図面が例証目的に過ぎないことを理解する。これらの図面が、本出願人の教示の範囲を多少なりとも限定することは意図していない。類似の参照は、類似または対応する部分を参照することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本出願人の教示の実施における使用に好適である、典型的なチャンバの概略図を示す。
【図2】本出願人の教示の実施における使用に好適である、異なるチャンバの実施形態の概略図を示す。
【図3】本出願人の教示の実施における使用に好適である、異なるチャンバの実施形態の概略図を示す。
【図4】本出願人の教示の実施における使用に好適である、異なるチャンバの実施形態の概略図を示す。
【図5】本出願人の教示の実施における使用に好適である、本出願人の教示の種々の実施形態に係る、チャンバの概略図を示す。
【図6】本出願人の教示の結果生じる、エミッタの電界効果の欠如を示す、質量スペクトルを示す。
【図7】本出願人の教示の方法に従って発生した較正用イオンの存在を示す、質量スペクトルを示す。
【図8】本出願人の教示の方法に従って発生したMRM痕跡を示す。
【図9】本出願人の教示の方法によるエミッタを使用した、レセルピンのタンデム質量スペクトルデータを示す。
【図10】本出願人の教示の種々の実施形態による、電界を有する注入口の同軸上にある境界部材開口に近接する、イオンエミッタを示す概略図を示す。
【図11】低カーテンガス圧力設定を使用した、ナノスプレー先端電位が上昇する際の較正信号を示す、質量スペクトルデータを示す。
【図12】高カーテンガス圧力設定を使用した、ナノスプレー先端電位が上昇する際の較正信号を示す、質量スペクトル結果を示す。
【図13】本出願人の教示の方法による、2価の較正物質を指標化(indexing)する較正および分析信号を示す。
【図14】本出願人の教示の方法による、1価の較正物質を指標化する較正および分析信号を示す。
【図15】本出願人の教示の方法による、一連の荷電状態を指標化する較正および分析信号を示す。
【図16】ナノスプレー先端電位を使用した、較正物質の指標化を示す、MRM痕跡を示す。
【図17】ナノスプレー先端電位を使用した、再現性を指標化する較正物質を示すMRM痕跡を示す。
【図18】本出願人の教示に係る、典型的な質量分析計の構成要素を示す。
【図19】図18に従って構成された質量分析計を使用して生成された、データの実施例を示す。
【図20】本出願人の教示に係る分析における、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)プレート電位と信号強度との間の関係を示す。
【図21】本出願人の教示に従って行われた分析からの荷電強度痕跡を示す。
【図22】本出願人の教示に従って行われた分析からの荷電強度痕跡を示す。
【図23】本出願人の教示に従って行われた分析からの荷電強度痕跡を示す。
【図24】本出願人の教示に係る較正物質の指標化を示す、MRM痕跡を示す。
【図25】本出願人の教示の実施における使用に好適なインターフェースの実施形態の、概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
種々の実施形態の説明
ここで図1を参照すると、本出願人の教示の種々の実施形態に係る、質量分析計の上流にあるチャンバ10を含む、装置の一実施例、および試料供給源20の構成が示される。試料供給源20は、試料エミッタ28を備える。チャンバ10は、気圧インターフェースを備えることができ、粒子弁別器インターフェース、または他の一般に既知である類似のインターフェースもまた含んでもよい。種々の実施形態において、試料供給源20は、例えば、ナノフローエレクトロスプレー源を含むことができ、試料エミッタ28は、ナノスプレー先端を含むことができる。チャンバ10は、しばしばカーテンプレートと称される境界部材18およびオリフィスプレート14を備える。境界部材は、境界部材開口26を備える。図1にはそのように示していないが、チャンバ10は種々の開口を除き、本質的に完全に封入され得る。チャンバ10内の大気は、本質的に該領域の外側の大気の気圧であり得、またはそれよりも高いあるいは低い圧力であってもよい。示した実施例において、試料は、試料供給源20および試料エミッタ28を介して放出され得、試料エミッタ28は、境界部材開口26の略軸方向に整列され得る。代替として、試料エミッタ28と境界部材開口26との間の整列は、一般に既知である90度等の角度であり得る。
【0016】
当業者は、本構成において、分析される種類の試料に好適である任意のイオン源が使用され得ることを理解するであろう。例えば、イオンに関して、源は、任意のイオンスプレーデバイス、エレクトロスプレーデバイス、コロナ放電ニードル、プラズマイオン源、電子衝撃もしくは化学イオン化源、光イオン化源、大気圧(AP)MALDI供給源、脱離エレクトロスプレー(DESI)源、Direct Analysis in Real Time (DART)源、熱脱離源、SONICスプレー、Turbo VTM源、または本明細書に記載の本出願人の教示の実施における使用に好適な、他の任意の既知のもしくは後に開発される源、あるいは上記の任意の複数の組み合わせであり得る。エレクトロスプレーまたはナノスプレーエミッタ等の多岐にわたる好適なイオンエミッタ、ならびに当技術分野で現在既知であるその他のもの、および現在開発中もしくは将来開発されるものが、本出願人の教示の種々の実施形態において使用され得る。本出願人の教示によれば、当業者には、境界部材が移動度分析器を封入することが可能であり、サンプリング注入口が移動度分析器とインターフェースをとり得ることが理解されよう。
【0017】
試料供給源20は、大気圧、大気圧以上、大気圧付近、または真空で動作可能である。試料は、例えば、現在当技術分野で既知の方法、または現在開発中もしくは将来開発される方法に従って放出される前等に、任意の好適な手段により調整され得、T字接合または他の好適な手段を介して試料供給源20に送出され得る。一実施例として、チャンバ10は、一般的に約0.1nL/分から約5000nL/分の範囲の試料液流速で動作可能であるが、当業者には、より高速または低速のフローもまた可能であり得ることが理解されよう。本出願人の教示の範囲から逸脱することなく、他のインターフェース構成が種々のフロー様式で動作可能である。
【0018】
図1に示す実施例において、境界部材18は、試料エミッタ28に近位または近接する境界部材開口26を画定し、そこを通って試料がチャンバ10に入ることができる。オリフィスプレート14はオリフィスプレート開口38を画定し、そこを通って試料が質量分析計チャンバ40(図示されない完全に封入されたチャンバ40)に入ることができる。現在の多くの実施形態において、質量分析計チャンバ40は、概してチャンバ10よりも低圧である。開口38は、サンプリング注入口として機能でき、オリフィスを備えることができる。図1に示すように、オリフィスプレート14の上流の境界部材開口26は、サンプリング注入口の同軸上および同心配置であり得る。本出願人の教示の種々の実施形態において、開口38は、毛細管注入口、イオンパイプ、または加熱毛細管等の、任意の好適な既知のサンプリング注入口により提供され得る。例えば、開口38は、チャンバ10の中に延在する毛細管の形態であり得る。本出願人の教示の種々の実施形態において、開口38は加熱されてもよい。これらの実施形態において、熱エネルギーが開口38に伝達される様式で、当技術分野において既知、あるいは知られることになる種々の源により、オリフィスプレート14または毛細管もしくはパイプに直接印加され得る。
【0019】
図1に示す構成をさらに参照すると、チャンバ10は、スペーサー16を介してオリフィスプレート14に接続される、加熱層流チャンバ12をさらに備える。加熱層流チャンバ12は、加熱層流チャンバ12を通って、境界部材開口26に近位の注入口42から出口44に延在する、加熱層流チャンバ内腔30を画定する。加熱層流チャンバ出口44とオリフィスプレート開口38との間の領域は、間隙32と称され、粒子弁別器間隙を含み得る。試料エミッタ28と注入口42との間の領域は、試料領域24と称される。図1に示す実施形態について、加熱層流チャンバ12のオリフィスプレート14上への密閉が、チャネル30を通じて層流状態を確立し、したがって、注入口42は、実質的にサンプリング注入口として機能することができる。
【0020】
試料供給源20は、開口38の方へ方向付けられるイオン化された液滴流を生成することができる。イオン化された液滴は、試料の調整の結果、溶媒分子を含み得る。多くの用途において、イオンの分析の前に、溶媒からイオンを実質的に除去する、つまりイオンを実質的に脱溶媒和することが、好都合であり得る。試料を実質的に脱溶媒和するということは、質量分析計で分析される際、イオンが読み取り可能な信号を発生できるように、試料から十分な溶媒を除去することを意味することが、当業者には理解されよう。少なくとも部分的に第1の開口26を通って流れ、いずれかの放出された試料に逆流するように、しばしばカーテンガスと称される、実質的に不活性なガスをチャンバ10に提供して、該脱溶媒和を助けることができる。溶媒とカーテンガスとの間の分子間相互作用の組み合わせ、および出願人の教示の種々の実施形態において、加熱層流チャンバ12または任意の他の好適な熱源により提供される熱効果の結果、試料の実質的な脱溶媒和が生じ得る。
【0021】
ガス入口62を通して、ガスをチャンバ10に提供することができる。ガス入口62は、ノズルまたは他の好適な構造形態であり得る。種々の実施形態において、ガスは、ガス入口またはガス源(図示せず)に関連付けられる熱源を用いる等、種々の方法で加熱され得る。ガス入口62は、ガスが概してチャンバ10に提供されるのを可能にする、チャンバ10周囲の位置に位置することができ、例えば、オリフィスプレート14付近に位置することができる。本出願人の教示の種々の実施形態によると、ガスは、ガスフロー流を形成するために、チャンバ10内でランダム化してもよい。チャンバ10に対する質量分析計(MS)チャンバ40の低圧が、オリフィスプレート開口38を通じてガスの引き込みを確立する。このガスの引き込みのために、チャンバ10内のガスの一部分が、特定の構成においては加熱層流チャンバ12を介して、概してオリフィスプレート開口38を通じて引き込まれる。ガスは、少なくとも部分的に境界部材開口26を通じて出て、少なくとも部分的に注入口42の方へ、次いでオリフィスプレート開口38の方へ流れる。図1に示す構成要素に加えて、熱を試料に提供するための試料供給源に関連付けられる熱源等、少なくとも1つの熱源(図示せず)をチャンバ10の外側に提供することができ、および/または少なくとも1つの熱源をチャンバ10の内側に位置することができる。例えば、チャンバ10内に位置する熱源は、薄層チューブを含み得る。
【0022】
さらに図1を参照すると、第2の試料供給源46が示される。第2の試料供給源46は、第2の試料を放出することのできる第2の試料エミッタ48を備え得る。第2の試料注入口50が、チャンバ10において画定され得る。第2の試料注入口50は、境界部材18、または第2の試料がチャンバ10に導入され得るように、チャンバ10周囲の他の位置により画定される1つ以上の開口を備え得る。出願人の教示の種々の実施形態によると、第2の試料供給源46は、第2の試料をチャンバ10に導入するための手段を備え得る。第2の試料を導入するための手段は、ノズルもしくはチューブ、または当技術分野で既知である他の導入手段であり得るが、それらに限定されない。第2の試料供給源46は、試料供給源20のものと同一であっても異なってもよい。例えば、第2の試料供給源46は、任意のイオンスプレーデバイス、コロナ放電ニードル、プラズマイオン源、電子衝撃もしくは化学イオン化源、光イオン化源、大気圧(AP)MALDI供給源、DESI源、DART源、熱脱離源、SONICスプレー、Turbo VTM源、または任意の上記の複数の組み合わせを含み得る。他の種類のイオン源を使用することができ、該イオン源は、大気圧、大気圧以上、大気圧付近、または真空で動作可能である。本出願人の教示によれば、当業者には、境界部材が移動度分析器を封入することが可能であり、サンプリング注入口が移動度分析器とインターフェースをとり得ることが理解されよう。さらに、第2の試料エミッタ48は、チャンバ10内または質量分析計のさらに下流での、後続する脱溶媒和およびイオン化のために、非荷電および/または荷電試料をチャンバ10に送るための噴霧器アセンブリ(図示せず)を含むことができる。試料供給源20および第2の試料供給源46は、同一電源に接続されてもよく、2つの異なる電源に接続されてもよい。種々の実施形態において、1つの電源が使用され、それぞれのイオン源の電圧を個別に制御するのに好適な手段が提供される。さらに、図のいくつかは第2の試料供給源を第1の試料供給源と並列構成に示しているが、これは、必ずしもそうである必要はない。第2の試料供給源は、試料がチャンバ10に導入され得る限り、いずれの配向であってもよい。
【0023】
試料は、中性分子またはイオン等の分子を含み得る。第2の試料のイオンは、試料エミッタ28により放出されるイオンと同一または反対の極性であり得る。
【0024】
出願人の教示の種々の実施形態によると、チャンバ10は、チャンバ10に導入される複数の第2の試料が存在し得るように構成され得る。例えば、チャンバ10は、第1の試料の導入のための第1の開口を画定可能であり、少なくとも第2の試料、つまり少なくとも1つの他の試料、の導入のための少なくとも1つの他の開口を画定可能である。例えば、チャンバ10は、全体で、2つ、3つ、4つ、あるいはそれ以上の試料の導入のための、2つ、3つ、4つ、あるいはそれ以上の開口を画定することが可能である。
【0025】
種々の実施形態において、試料供給源20は電磁界に関連付けられ得る。当業者には理解されるように、例えば、エレクトロスプレーイオン源等のイオン源の動作中、イオンを発生するためにイオン源に電位電圧を印加することが可能である。電磁界は、ほとんどのイオン源と、一部はイオンの形成中に直接、また一部は形成後のイオンに直接、関連付けられ得る。エレクトロスプレー源の場合、電磁界の強度は、加電圧および間隙、ならびに形状に依存する。電磁界が検出され得る距離は、イオンエミッタの形状等の様々な要因に依存する。2つのイオン源の間の電磁界の相互作用は、イオンビーム偏向またはイオン生成率の変化により、不安定性および信号低減をもたらす影響を有し得る。第2の試料供給源に印加された電位が、例えば、第1の試料供給源の安定性、強度、または調整に最小限の影響しか与えない場合、電磁界の相互作用は最小限、あるいは本質的に存在しないのは明らかである。また、試料供給源20との密接な関連は、1つ以上の試料の導入から生じるガスフローの相互作用の結果、第1の試料の分析に有害な影響を有し得る。これらのいずれの影響も、第1の試料の分析に有害な影響を有しかねない。
【0026】
第2の試料供給源を有するということは、形状的な制約もまた課し得る。MALDIプレート等の特定の試料供給源(図3参照。以下に記載)は、第2の試料供給源を極めて近位に置かせない寸法を有し、その形状的制約により、第2の試料はサンプリング注入口の極めて近接に位置できない。
【0027】
出願人の教示の種々の実施形態によると、第2の試料供給源46は、第1の試料の分析に最小限の有害な影響しか与えないように、試料供給源20から十分に距離を置くことが可能である。例えば、任意の2つの試料供給源の間の距離は、約3ミリメートルから20cmを超える範囲、あるいは約1センチメートルから約10cmの範囲であり得る。使用されるインターフェースと試料供給源との構成により、任意の2つの試料供給源の間の最適距離が決定される。例えば、4000 QTRAP(登録商標)質量分析計を用い、第1の試料供給源がナノスプレー先端を備え、第2の試料供給源がエレクトロスプレー装置を備える場合、2つの試料供給源の間の好適な距離は、例えば、約2センチメートルから約7センチメートルの範囲、または約3センチメートルから約6センチメートルの範囲、または約4センチメートルから約5センチメートルの範囲であり得る。例えば、2つの試料供給源の間の好適な距離は、約4.5センチメートルであり得る。
【0028】
図1に示す実施形態において、第2の試料エミッタ48は、第2の試料が注入口42(続いてオリフィスプレート開口38)に直接送られないように、注入口42の位置からチャンバ10に第2の試料を放出することができる。例えば、図1に示すもの等の構成を使用して、第2の試料は、チャンバ10内のガスにより確立されたガスフロー流の助けを得て、実質的に注入口42に引き込まれ得る。このようにして、注入口42および/または開口38へ方向付けられる、チャンバ10内で確立されたガスフロー流は、概して、第2の試料をサンプリング領域24へ、また続いて注入口42およびオリフィスプレート開口38へ搬送するための導管の役割を果たし、第2の試料のサンプリングを可能、および/または著しく改善する。ガスフロー流の確立により、複数の試料供給源を十分遠くに離れて位置付けることが可能になり、磁場および/もしくはガスフローの相互作用、または必要に応じて、他の任意の相互作用の有害な影響を削減または排除する。種々の実施形態において、境界部材18および加熱層流チャンバ12は、イオン源と関連付けられる外部電磁界が存在しない場合、無磁場、またはほぼ無磁場である領域をチャンバ10内に確立することができるように、電気的に接続され得る。これらの条件下では、ガスフロー流は、より効果的に働き、イオンを注入口42/オリフィスプレート開口38へ運ぶ。本出願人の教示における無電界状態が、無電界状態またはほぼ無電界状態を含み得ることが理解されよう。
【0029】
図2は、異なるインターフェース構成が提供される、本出願人の教示の種々の実施形態を例示する。本構成において、示すように、チャンバ10が使用される。チャンバ10は、オリフィスプレート開口38を画定するオリフィスプレート14と、開口26を画定する境界部材18とを備える。試料は、質量分析計チャンバ40(完全に封入されたチャンバ40。図示せず)に入ることができる。チャンバ10は、境界部材18およびオリフィスプレート14により、少なくとも部分的に画定される。ガス注入口66を介して、チャンバ10にガスを提供することができる。境界部材18およびオリフィスプレート14は、試料供給源/試料エミッタと関連付けられる電磁界が存在しない場合、それらの間に本質的に無磁場、またはほぼ無磁場である領域を確立するように、電気的に接続され得る。本構成において、試料エミッタ28を備える試料供給源20が、開口26に近位または近接して示される。第2の試料エミッタ48を備えるさらなる試料供給源46は、開口26から十分距離を置いた位置に位置し得る。さらなる開口を境界部材18またはチャンバ10の他の領域に画定し、さらなる試料がチャンバ10に入るのを可能にすることができる。上述のように、エレクトロスプレーイオン源を含む種々のイオン源が、本出願人の教示の実施に好適である。さらに、オリフィスプレート開口38を、毛細管注入口、イオンパイプ、または加熱毛細管等の、他の任意の既知のサンプリング注入口デバイスと差換えることができる。
【0030】
図3は、異なるインターフェース構成が提供される、本出願人の教示の種々の実施形態を例示する。本実施形態において、試料供給源20は、プレート82と、MALDIシステム等のレーザー照射84を備え、プレート82上の試料のレーザー照射84により、試料を生成することができる。当業者には理解されるように、十分なイオン化を容易にするために、任意で試料を1つ以上のマトリクスと混合することができる。代替として、周知の他の手段により、後続のイオン化のために、試料を中性物として脱離させることができる。第2の試料エミッタ48を備える第2の試料供給源46が位置する位置において、該プレートが形状的制約を呈する場合がある。図3は、熱チャンバ12の近位に主要開口26を備える、チャンバ10を確立する境界部材18を示す。開口26は、熱チャンバ12内の注入口42と同一平面、上流、または下流に確立され得るが、ただし、ポート62により確立されたガスフローは、分子を第2の源46から注入口42へ運ぶことができる。
【0031】
図4は、異なるインターフェース構成が提供される、本出願人の教示の種々の実施形態を例示する。本実施形態において、第2のイオン源は、注入口50に近接または近位に位置しない。第2の試料は、チャネル部材80を通って、またはそこから助けを得て、チャンバ10に導入される。チャネル部材80は、丸みを帯びる必要も、直線的である必要もないが、チューブ、または試料のチャンバ10への搬送を可能にする他の構造であり得る。種々の実施形態に従って、試料のチャンバ10への搬送を助けるために、ガス源を用いてガスをチャネル部材80に導入することができる。本出願人の教示から、図4に示す実施形態を使用して、または本明細書に開示されるいずれの他の実施形態との組み合わせでも、複数の試料供給源が、複数の試料をチャンバ10に導入可能であることが、理解されよう。チャネル部材80および源46の形状を、源の原理から逸脱することなく変更することが可能であり、例えば、チャネル部材80に沿った異なる位置で試料を導入することができることもまた、明白であろう。
【0032】
種々の実施形態において、図4に示すように、第1の源20は第1の源ハウジング86に封入され得、もう1つの源46は、対応する第2の源ハウジング88に封入され得る。代替として、もう1つの源46は、少なくとも1つの他の源46が、同一または個別の対応する源ハウジング88にそれぞれ封入され得るように、複数の源を含むことができる。
【0033】
上述の種々の実施形態により、1つ以上のさらなる試料供給源からのイオンまたは分子の、質量分析計の注入口から上流にあるチャンバへの送出が可能になる。例えば、イオンの場合、第1の試料供給源からのイオンと同時に機器の中にサンプリングされることが可能であり、あるいは種々の試料供給源からのイオンのサンプリングは、指標化を達成するためにゲーティングされてもよい。中性分子の場合、中性分子を、第1の試料供給源からのイオン流または別の試料供給源からの試料流と組み合わすことができ、続いてガス相の電荷移動または他のイオン化過程によりイオン化される。
【0034】
本出願人の教示の種々の実施形態に従って、質量分析計およびデバイスへのイオンの導入を指標化する方法を提供する。第1の試料の、開口38から上流にあるチャンバ10への導入は、第1の試料が導入される際、質量分析計で分析するために、第1の試料が開口38を通過することができるように、第1の電磁界と関連付けられ得る。第2またはそれ以上の試料供給源によりチャンバ10に導入される、イオン化分子、またはイオン化される中性分子の少なくとも第2の試料は、第1の試料の導入と関連付けられる電磁界により実質的に拒絶され、開口38の通過から実質的に阻まれ得る。較正物質として使用され得る第2の試料は、本質的にチャンバ10に留まる。第2の試料の導入は、第2の電磁界と関連付けられ得る。第2の電磁界は、第2の電磁界が質量分析計での試料の分析に有害な影響を与えないように、第1の電磁界から十分離すことができる。第1の電磁界が除去されて、第1の試料がチャンバ10に導入されなくなると、第2の試料は開口38を通過することができる。第1の電磁界は、続いて、再度第1の試料を導入するために再確立され得る。本方法は、試料を指標化させる様式で、第1の試料とは別に、第2の試料を質量分析計に導入する方法を提供する。試料のそのような指標化により、質量分析計の外部較正が可能になる。
【0035】
本出願人の教示の種々の実施形態による、少なくとも2つの源から質量分析計に試料を導入するための方法を提供する。本方法は、質量分析計のオリフィスプレート開口38から上流にある入口点で、第1の試料をチャンバ10に導入するステップであって、該第1の試料は、オリフィスプレート開口38に実質的に近接して導入されるステップと、オリフィスプレート開口38に近接しない位置で、少なくとも1つの他の試料をチャンバ10に導入するステップと、を含み得る。チャンバ10は、ガスフロー流が、ガスが部分的に概して第1の試料の入口点の方へ、また部分的にサンプリング注入口の方へ流れるように確立されるように、ガスのチャンバ10への導入を可能にするための、ガス入口62をさらに画定することができる。種々の実施形態において、第1の試料の導入は、電磁界と関連付けられ、少なくとも1つの他の試料の導入は、少なくとも1つの他の試料の導入が、質量分析計での第1の試料の分析に有害な影響を与えないように、第1の試料の導入から十分離れている。
【0036】
第1の試料および少なくとも1つの他の試料の質量スペクトル分析をゲーティングするために、現在当技術分野で既知である種々の方法およびデバイス、および後に開発される好適な方法およびデバイスが、使用され得る。例えば、1つ以上のイオン源の電磁界を制御することにより、試料をゲーティングすることができる。他のゲーティング方法およびデバイスは、例えば、機械的、電気的、または空気圧式手段を含み得る。機械的手段は、例えば、試料の少なくとも1つのチャンバ10への導入の遮断を含み得る。これは、例えば、1つ以上のビームチョッピングレンズの使用、または物理的に1つ以上のエミッタを軸外に移動させ、その開口から離すことにより達成され得る。電気的手段は、例えば、試料供給源の少なくとも1つへの動力を減少もしくは中断することを含み得る。空気圧式手段は、例えば、試料がサンプリング注入口に達するのを実質的に防ぐように、試料の一方または両方へ高速ガス流等のさらなるガスを送るための、さらなるガス源のフローの制御を含み得る。他のゲーティング方法およびデバイスは、試料のエミッタへのフローが急速に切り替えられる、流体切替弁を含む。例えば、油圧弁および/または電磁弁がこれに使用され得る。他の方法およびデバイスは、エミッタ先端で試料の放出を許可および解除することにより動作する、スプレーコントローラを含む。これは、機械的および空気圧式手段もまた考えられるが、通常電場により制御される。指標化は、エレクトロスプレー電位の制御により達成され得る。エミッタの電気的指標化もまた、それぞれのエミッタの先端に近位のチャンバ内に位置するレンズを使用することにより達成され得る。他の方法およびデバイスは、エミッタをそれぞれの開口から回転させる、あるいは試料がチャンバに入るのを防ぐように、開口を回転させることを含む。他の方法およびデバイスは、チャンバ内に位置し、部分的または高真空のいずれかで1つ以上の試料をゲーティングするイオンビーム切替器を含む。さらに、電極が、試料をサンプリング注入口から迂回させる抽出電位を印加するためにチャンバに追加され得る。また、ゲーティングは、個別にまたは同時に少なくとも1つ以上の他の源に試料を提供する、1つ以上のイオン源からのイオン送出の制御を含む。
【0037】
図5は、出願人の教示の種々の実施形態を明示する。加熱層流チャンバ12により画定され、そこを通って半径方向に延在する、さらなるチャネル64を示す。複合フロー流が、加熱層流チャンバ12内で混合され、間隙32およびオリフィス開口38を通って単一流を生成する。さらなるチャネル64は、少なくとも1つの他の試料が第1の試料とほぼ同時に機器内にサンプリングされ得るように、チャンバ10内でさらなる注入口として機能し得る、注入口を提供する。このような様式で、複数の個別のイオン流が同時にサンプリングされ得る。そのようなシステムにより、例えば、機器の内部較正が可能になる。本出願人の教示の種々の実施形態において、試料供給源20からの試料および第2の試料供給源46からの試料が異なる注入口の中に搬送され、その後大気圧または真空領域のいずれかにおいて混合されるように、複数のサンプリング注入口が有効になる。
【0038】
しかしながら、本出願人の教示を、例えば、質量較正物質を追加するための、さらなるイオン源を使用して記載したが、本出願人の教示の種々の実施形態は、イオンの複合流または異なる種類のイオン源により生成されるイオンの、同一質量分析計への供給に有用である、いずれの用途にも使用され得る。これらには、イオン−イオン反応用の異なる極性のイオンの生成、イオン−中性反応用に中性物を供給するための手段、液滴−液滴混合実験、電荷反転実験、内部および外部較正等が挙げられるが、それらに限定されない。例えば、本出願人の教示によると、第1の源は帯電スプレーを含むことができ、少なくとも1つの他の源は、中性スプレーまたは第1の源のものと逆帯電したスプレーを含むことができる。第1および少なくとも1つの他の源からのスプレーを合わせて混合し、イオン−イオンまたはイオン−中性反応を行うことができる。中性物は荷電されてもよく、極性は反転されてもよい。
【0039】
例えば、さらなるレンズ、電源、真空ポンプ等、本明細書に必ずしも図示または記載する必要はないが、質量分析計の使用に際し必要とされるか有用のいずれかであることが当業者に理解されるであろう、質量分析計の他の側面がある。さらに、本明細書で使用される用語は、それらの機能により定義され、他の当業者には異なる名称で称される場合がある。例えば、本明細書で記載するチャンバ10は、特定の状況においては気圧インターフェース、または同一もしくは異なる状況においてはカーテンチャンバと称される場合があり、チャンバ10に関してここで記載される特徴の全てを有してもよいが、有さなくてもよい。本出願人の教示が有利に適用され得る現在利用可能なMSデバイスの実施例には、四重極(三重四重極および単一四重極)、TOF(QqTOFを含む)、およびイオントラップ質量分析計が挙げられる。概して、第2またはそれ以上のイオン源の使用が好適であるいずれのMSデバイスも、本出願人の教示の実施における使用に好適である。
【0040】
本出願人の教示の側面は、以下の実施例を考慮に入れるとさらに理解され得るが、それらは多少なりとも本出願人の教示の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
上述のように、イオン源の能力は、イオン源等の別の試料供給源が極めて近位に位置する場合、電場の相互作用により妨げられる場合がある(例えば、Rulison and Flagan, Rev. Sci. Instrum., 1993, 64, 683−686を参照されたく、これは参照することにより本明細書に組み込まれる)。図6は、本出願人の教示に従った、イオン源の電界効果の排除を検証するように設計された実験結果を明示する。図6に提示されたデータについては、レセルピン試料が第1の試料エミッタを介してナノスプレーされ、加熱層流チューブ注入口の遠位に位置する第2の試料エミッタを介して、溶媒がエレクトロスプレーされた。第2の試料供給源に印加した電位を変化させながら、プロトン化されたレセルピン断片イオンの信号をモニタリングした。図6に明示されるように、第1の試料供給源から生成された信号は、第2の試料供給源に関連付けられる電磁界により影響されず、有害な電界効果の欠如を明示した。2つの試料供給源の間の距離は、約3センチメートルであった。さらに、第1のイオン源が注入口の近位に試料を放出し、また境界部材における開口が注入口と同心円上にあるため、(第2の源および第2のカーテンプレート開口が除去された)標準的な構成と比較して信号低減はない。
【0042】
(実施例2)
本実験は、図1に示すものと類似の構成を使用して行われた。試料供給源によりチャンバに導入された中性種は、しばしば分析フロー流と称される、第1の試料供給源により導入されたイオンに曝露されると、ガス相の電荷移動を受けて、図7に示す分析的質量スペクトルにおいて質量較正用イオンの役割を果たすイオン化種の存在をもたらし得る。図7は、中性レセルピン分子の大気圧領域への導入とともに、第1の試料供給源のナノスプレー先端を介してスプレーされたミノキシジル試料で得られたデータを示す。この場合、第2の試料供給源は噴霧器アセンブリを備え、噴霧器には電位は印加されなかった。噴霧器流速は、先端で生成された溶媒をチャンバの中に噴霧するのに十分な高流速に設定された。溶媒流速は、約5マイクロL/分であった。第1の試料供給源は、ミノキシジルを約500nL/分でスプレーする、ナノフローエレクトロスプレー源を含んだ。スペクトルは、プロトン化されたミノキシジルイオン(210m/z)、および同一スペクトル内のプロトン化されたレセルピンイオン(609m/z)、ならびに第1の試料供給源の分析用噴霧器に提供された溶媒中に存在する、多くのより強度のフタル酸エステルのピークを示す。レセルピンイオンは、第1の試料供給源により形成されたイオン流からのガス相の電荷移動により形成された。第2の源からチャンバの中への分子の浸透を防ぐように、ナノスプレー先端への噴霧器ガスフローを停止させることにより、指標化が達成された。本動作モードでは、ナノスプレー先端からの較正物質およびイオンは、単一質量スペクトル内に存在する。このようにして、ナノスプレー実験または他の種類の源を用いる実験用の内部質量較正の達成が可能になり得る。
【0043】
図8に示すように、中性の較正用分子の荷電は、ガス相の電荷移動の結果、着目イオン上の電荷の純損失をもたらし得る。図8で収集されたデータについて、ミノキシジル試料は、ナノスプレー先端を介してエレクトロスプレーされ、レセルピン試料(較正物質)は、第2の噴霧器アセンブリを介して噴霧された。データは、多重反応モニタリング(MRM)動作モードで収集され、レセルピンおよびミノキシジルの痕跡が、それぞれ図8の上部ウィンドウ枠および下部ウィンドウ枠に表示される。MRM滞留時間は、それぞれ100ミリ秒で、ミノキシジル用のイオンエミッタに2800Vを印加し、第2のエミッタアセンブリ用の噴霧器設定は20であった。第2の噴霧器用の初期設定は、ESI電位については0V、噴霧器ガス設定は0であった。最初、MRM痕跡は、ミノキシジル断片については、秒当たり約25000カウント(cps)を表示した。約0.6分の時点で、第2のイオンエミッタの噴霧器が、設定55(約3から3.5L/分)で作動され、それにより、カーテンプレートの周辺近くの2mmの較正物質注入口を介して、中性の較正物質液滴をチャンバの中に噴霧した。本実験のために、加熱層流チャンバは200℃に維持され、約100℃のカーテンガス温度を生じさせた。噴霧された較正物質液滴の脱溶媒和により、中性のガス相のレセルピン分子の形成に至った。ガス相の電荷移動は、約500ミリ秒以内にプロトン化されたレセルピンイオンの信号をもたらした。レセルピンイオンの強度の相当な上昇には、ミノキシジルイオンの強度の低下が付随したが、恐らくガス相の較正物質への電荷移動の負の結果であろう。約1分マークで、第2のイオンエミッタ噴霧器が停止された。レセルピンイオンの信号は、次の1〜2秒の間に低下し、初期背景強度に戻った。較正信号の除去に要した時間は第2のナノスプレー先端噴霧器の供給ライン上の残圧を失わせるために必要な時間、ならびに大気圧領域から中性較正物質を一掃するために必要な時間の結果である。図8は、分析用噴霧器(第1の試料供給源)のプルームの結果の中性イオン化が、分析試料の信号に影響を及ぼし得ることを明示している(これらのデータについてはほぼ2の要素)。
【0044】
(実施例3)
質量較正を達成する別の方法は、荷電較正用イオンの大気圧領域への追加、または第1の試料エミッタから十分に距離を置いた位置での、大気圧領域内での荷電較正用分子のイオン化を伴う。大気圧領域が本質的に無磁場であると仮定すると(例えば、図1に示すものと類似のカーテンプレート上で500V、熱チャンバ上で500V)、イオンは、また、サンプリングのために、カーテンガスフロー内で加熱層流チャンバ注入口へ運ばれ得る。この実施例が図9に示され、100pg/マイクロLのレセルピン試料が、カーテンプレートの周辺に位置する第2のナノスプレー先端を介して注入された(1μL/分)。ESI電位は3000V、噴霧器は55(約3〜3.5L/分)に設定された。これらのデータに関して、第1のナノスプレー先端は、実質的に注入口に近位の無磁場構成を確実にするために除去された。図7に示すように、第2のイオンエミッタが、注入口から隔絶された位置で荷電種を大気圧領域中に注入したにもかかわらず、この試料には、相当量のMS/MS信号(信号は、注入口からの距離および境界部材開口および注入口の非同心性により、同一システムでの標準的な最適化構成に対して約50倍下回った)が生成された。大気圧領域およびカーテンガスフローの複合効果のために、該信号が生成された(つまり、もし大気圧領域およびカーテンガスフローが除去されていたら、この信号は起こり得なかっただろう。したがって、図9は、イオンの大気圧領域中への播種およびそれらを注入口へ運ぶためのカーテンガスフローの使用は、較正に対する実行可能なアプローチであり得ることを示している。較正用イオンの信号の改善は、較正物質がチューブ等のチャネル部材を介してサンプリング注入口へ噴霧される、図4に示すものと類似の構成を使用して、達成される傾向がある場合がある。
【0045】
(実施例4)
電場の浸透は、ガスフローおよび電場の相対的強度により、荷電粒子をカーテンガスフローから抽出し得る、電位障壁を生じ得る。図10は、第1のイオンエミッタがナノフローESI噴霧器であり、第1のカーテンプレート開口とほぼ同一平面上に位置する場合の、加熱層流チャンバ注入口付近の等電位を図式的に示す(点線)。これは、また、較正用イオンが、チャネルにより生じさせた本質的に無磁場である構造を介して、噴霧器ガスフローにより運ばれるように、カーテンプレートの裏側または内側にチャネルを加工することにより達成され得る。動作中、第1のイオンエミッタは、約3000Vの電位で作動する。これは、中性の較正物質に影響を及ぼさない一方、注入口から正荷電イオンを拒絶する。さらに、第1のイオンエミッタから生成される荷電液滴流もまた、カーテンガスフロー中に存在するイオンを拒絶する。
【0046】
これを裏付ける実験データを、図11および12に提示する。図11および12に提示したデータについて、質量較正物質は、カーテンプレートの周辺における小径孔を通って注入された1000pg/μLのレセルピンを含む(ESI電位3000V、噴霧器55)。しかしながら、第1のイオンエミッタを介して流れた溶媒はないが、第1のイオンエミッタをカーテンプレートの近接に位置し、標準的な噴霧器ガス設定(Analyst(登録商標)ソフトウェアで10)を使用した。分析用噴霧器電位は、図11のデータについては0Vから3000V(標準的な作動電位は、本構成では約3000V)、図12のデータについては0Vから3000Vに変化させた。両方の図は、第1のイオンエミッタの電位が、較正用イオンのためのイオンサンプリングに著しい影響を及ぼすことを示している)。分析用噴霧器に印加された磁場により付与された電気力は、分析用噴霧器から噴霧器により付与された空気圧力よりもはるかに大きな影響を、較正用イオンに及ぼした(データ示さず)。最低のカーテンガス設定を使用し(図11)、分析用噴霧器電位が2000Vに設定されると、レセルピンイオンの信号はほとんど完全に排除された。3000Vの設定では、信号は完全に排除された(データ示さず)。カーテンガス設定を最大に上げると(図12)、より多くのレセルピンイオンの加熱層流チャンバ注入口への駆動が(磁場の障壁をよりうまく克服して)助けられ、2000Vの分析用噴霧器電位の信号は、78000cpsであった。これらの結果は、電気斥力と較正用イオンをサンプリング注入口の方へ運ぶカーテンガス力との間の均衡の明示に役立つ。
【0047】
(実施例5)
本発明者らは、第1のイオンエミッタにより発生された電気斥力が、荷電液のスプレーがそこから放射されるとさらに顕著であり得ることを見出した。図13に示すように、事実、磁場の斥力および加熱された注入口の前のカーテンチャンバの存在の競合する力は、較正物質の導入および噴霧器の指標化の新規な方法の可能性を開く。図13に提示したデータは、ESI電位および噴霧器ガス設定を、それぞれ2800Vと10に設定して、第1のイオンエミッタを介して10pg/μLのレセルピンをエレクトロスプレーすることにより生成された。1000pg/μLのグルフィブリノペプチドb試料が、較正用ESI電位および噴霧器設定に、それぞれ3000Vおよび55の設定を使用して、大気圧チャンバにエレクトロスプレーされた。まず、第1のイオンエミッタの電位は、加熱層流チャンバ注入口付近に本質的な無磁場領域を生成して、500Vに設定された。較正用イオン(グルフィブリノペプチドb)は、注入口の中に引き込まれ、二重にプロトン化されたペプチドに対応するピークを生じた(中央ウィンドウ枠)。約0.07分の時点で、第1のイオンエミッタに印加された電位を、安定したエレクトロスプレーを生成するために、約2800Vに上昇させた。較正用イオンはこの電位により拒絶され、グルフィブリノペプチドbピークの完全な排除、および単一にプロトン化されたレセルピンの信号の開始に至った(下部ウィンドウ枠)。約0.21分の時点で第1のイオンエミッタの電位を再び低下させると、レセルピンイオンの信号が排除され、較正用イオン(二重にプロトン化されたグルフィブリノペプチドb)が加熱層流チャンバ注入口に再度運ばれ、較正用イオンの非常に鮮明なスペクトルをもたらした。図13は、較正物質導入の指標化を達成する非常に効果的な手段を明示する。図14および15は、較正用イオンが1価であり(図14、ロイシンエンケファリン)、一連の荷電状態(図15、ダイノルフィンA)を呈する、さらなる実施例を示す。
【0048】
(実施例6)
図16に示すように、本手法を使用し、較正物質を有効化または無効化する速度を決定するために、MRMモードでもまた、実験を実行した。これらのデータは、レセルピン較正用イオンのMRMのために、滞留時間20ミリ秒を使用して、1000pg/μLのレセルピン較正用イオン溶液が第2の噴霧器を介してスプレーされ、溶媒が第1のイオンエミッタを介してスプレーされるという条件下で、生成された。まず、第1のイオンエミッタの電位は2800Vにされ、分析用スプレーであるため、低残留背景を生じさせた。約0.55分時点で、第1のイオンエミッタの電位は、加熱層流チャンバ注入口に無磁場領域を生じさせるために、500Vに低下させた。レセルピン較正用イオンの信号の開示時間は、44ミリ秒であった。第1のイオンエミッタの電位を2800Vに上昇させて分析フロー流を再有効化すると、約34ミリ秒以内に較正信号を排除した。有効化および無効化は3回繰り返され、43±2ミリ秒の有効化時間、および34±4ミリ秒の無効化時間を生じた。図17は、ミノキシジル較正用イオンを含有する試料を使用して有効化および無効化の再現性を明示する、さらなるデータを示す。これらのデータの収集に使用されたシステムは、好適な質量分析計のための、改善された高性能のナノフロー質量較正システムを提供し得る。
【0049】
(実施例7)
本実験は、大気圧MALDI供給源および噴霧器補助のナノフローエレクトロスプレーエミッタ(MicroIonSpray II)を使用して、図18に示すものと類似の構成を使用して行われた。当業者には、源ハウジング、MALDI供給源のための転換段階、レーザー光学、および電源等の、さらなる特定の構成要素は、明確にするために、図18から省略されていることが明らかであろう。図18は、大気圧源領域を質量分析計の真空系から隔てるオリフィスを備える、オリフィスプレートを示す。しかしながら、加熱層流チャンバは、図1に記載の構成に類似したTeflonスペーサーでオリフィスまで密閉されているが、加熱層流チャンバは異なる形状および長さを有する(≒3cm)。カーテンプレートと標示される境界部材18は、第1のガスフローをチャンバに導入するためのガスポートを備える、チャンバを形成する。層流チャンバのサンプリング注入口は、チャンバ内で確立されたガスフローが、サンプリング注入口の方へ、カーテンプレート開口を通って外側へ方向付けられるように、開口からカーテンプレート内に外側に突出する。レーザー照射条件下で、MALDIプレートの表面から生成されたイオンおよび中性物のプルームを効率的にサンプリングするため、加熱層流チャンバの注入口から約3mmに、MALDI試料プレートを位置する。サンプリング注入口から実質的に隔絶された位置に、さらなる噴霧器補助のエレクトロスプレーエミッタを示す。(搬送チューブと標示される)7cmの金属チューブがカーテンプレートの中に通され、噴霧器補助のエレクトロスプレー源からカーテンプレートにより確立されたチャンバの中に、中を通ってイオンおよび荷電液滴を搬送するための約2.4mmのチャネルを有する。噴霧器補助の噴霧器に印加されたエレクトロスプレー電位に加えて、さらなる噴霧器ガスを使用して、イオンおよび荷電液滴のチャンバの中への伝達を改善することができる。搬送チューブの出口をサンプリング注入口のより近くへ移動させることもまた、さらなる源からサンプリング注入口への、中性または荷電試料の伝達を改善する傾向がある。
【0050】
図19は、図18に例示した構成を使用して生成されたデータの一実施例を示す。−2500Vのエレクトロスプレー電位、および約3L/分の噴霧器ガス設定を使用し、1000pg/μLのタウロコール酸試料が、MicroIonSpray II噴霧器を介して7cmの長さのチューブの中に約3μL/分でエレクトロスプレーされた。噴霧器ガスフローが液滴のチューブへの搬送を支援できるように、噴霧器は直接チューブの中に向けられた。ステンレス製のMALDIプレートを、加熱層流チャンバの注入口の前、約3mmの場所に位置させ(2mmチャネル)、電位は図19に示すデータ用に調節された。較正用イオンのために生成された信号は、MALDI標的プレートに印加された電位により相当影響を受けた。これらのデータについて、カーテンプレートおよび加熱層流チャンバは、−605Vに維持された。MALDIプレートに印加された電位は、−620Vから−600V、そして−560Vへと調節された。カーテンガスフローがサンプリング注入口の先端の約4mm後方で放射される本構成において、先端を通過したカーテンガスフローは、イオンを注入口へ運ぶのに十分であった。しかしながら、タウロコール酸イオン用に測定されたイオン電流は、MALDIプレートに印加された電位により影響を受けた。カーテンガスがサンプリング注入口からさらに遠くまで放射される条件下では、サンプリング注入口の方へのイオンの動きを補完するために、電場勾配が使用され得る。
【0051】
図20は、較正物質噴霧器を介してスプレーされるレセルピン較正用イオンの信号への、MALDIプレートに印加された電位の影響を示す。本実験について、カーテンプレートおよび注入口に印加された電位は、583Vであった。この値の周辺でMALDIプレート電位を約+/−30Vを超えて変化させると、較正信号は非常に顕著に減衰された。較正用イオンのサンプリングに対する最適な標的プレート電位の幅は、プレートと注入口との間の間隙、ならびにプレートの物理的な寸法およびカーテンガスがサンプリング注入口の先端の後方に放射される距離により異なった。
【0052】
図21は、カーテンガスが、サンプリング注入口とMALDI標的プレートとの間の小さな磁場により増大される条件下で達成された、指標化の実施例を示す。この図で提示されたデータについて、3つのペプチド(アンジオテンシンI、ブラジキニン、およびアンジオテンシンII)を含有する試料が、好適なMALDIマトリックス(α−シアノマトリックス)と混合され、ペプチド当たり約200fmolの濃度で、MALDIプレートの表面に付着された。本実験を通して、約2500Vのエレクトロスプレー電位および約3L/分の噴霧器ガスフロー設定で、1000pg/μLのレセルピン試料が、MicroIonSpray IIアセンブリを介して7cmの長さのチューブの中にエレクトロスプレーされた。MALDI供給源は、窒素レーザーから試料表面へ出力を方向付ける100μmの光ファイバーを使用して、試料を照射するように構成された。MALDIプレートは、レーザー光が、本実験にわたって、約1μLの試料/マトリックス混合物からの付着物の生試料表面に連続的に方向付けられるように、再構成された。まず、MALDIプレートは、MALDI供給源から生成されたイオンが機器(4000QTRAP(登録商標))の中にサンプリングされるように、約2500Vに維持され、下のウィンドウ枠に示すように、約1047、1061、および1297のm/z値に3つのペプチドのピークを表示した。次に、標的プレートに印加された電位が560V(つまり、熱チャンバおよびカーテンプレートに印加された580Vよりもわずかに低い電位)まで低下され、MALDIイオンの全ての信号を完全に排除した。これらの条件下で、カーテンチャンバ内に収容された、エレクトロスプレーされたイオンは、カーテンガスフローと該源内の電位勾配との組み合わせによりサンプリング注入口へ運ばれ、中央ウィンドウ枠に示すように、プロトン化されたレセルピンイオンが優勢な質量スペクトルを生じた。このようにして、MALDI標的プレートに印加される電位を制御することにより、2つの異なる源からの指標化されたイオンサンプリングが、やはり達成され得る。
【0053】
(実施例8)
しかしながら、本実験は、図18に示すものと類似のハードウェア構成を使用したが、例えば、イオントラッピングデバイスを使用した、当技術分野で既知のイオン−イオン化学反応の応用のための可能性を明示するために、ナノフロー源を使用して、MALDI供給源により生成されたペプチドと反対の極性のイオンを生成した。カーテンプレートが、加熱された注入口の約4mm以内に位置され、カーテンガスフローがサンプリング注入口を通過するように方向付けるように設計された。イオン−イオン化学反応実験における問題は、必要とされる異なる電位が放電または完全な信号損失をもたらし得るため、正と負の極性のイオンを信号質量分析計注入口の前で同時に生成することである。図18に示す配置は、第1の源がサンプリング注入口の近位で所与の極性のイオンを生成し、さらなる源が第1の源から実質的に隔絶された位置で反対の極性のイオンを生成することが可能であるため、これらの問題を排除し、したがって第1の源からのイオンのサンプリングには有害な影響を及ぼさない。同一、または好ましくは異なる源ハウジング内に、複数の源が収容され得る。図22に示すデータについて、大気圧MALDI供給源を使用して、図21に提示したデータを生成するために使用したものと同じ3つのペプチドの混合物から正イオンを生成した。さらなるナノフロー源が、7cmのサンプリングチューブの中に直接スプレーされた1000pg/μLのタウロコール酸試料用に負イオンを生成した。MALDIプレート、カーテンプレート、加熱層流チャンバ、オリフィス、およびナノフロー噴霧器に印加された初期電位は、それぞれ、2500V、580V、580V、150V、および−2500Vであった。カーテンガスは約1L/分に、ナノフロー噴霧器用の噴霧器は約3L/分に設定された。両方の源は、連続的にイオンを生成するように設定された。上部ウィンドウ枠に示すように、正モードの質量スペクトルは、最初、MALDI供給源からの3つのペプチドの存在を示したが、ナノフロー源から明らかな信号はなかった。約1分後、MALDIプレートに印加された電位が低下され、機器の極性が負イオンモードに切り替えられた。MALDIプレート、加熱された注入口、カーテンプレート、オリフィスプレート、およびナノフロー噴霧器に印加された新規電位は、それぞれ、−620V、−620V、−620V、−150V、および−2500Vであった。中央ウィンドウ枠に示すように、約514m/zでピークを示す、ナノスプレー供給源からの脱プロトン化されたタウロコール酸イオンが直後に観察された。サンプリング注入口を通過した効果的なカーテンガスフローにより、MALDIプレートとサンプリング注入口との間にさらに電場を印加する必要性は排除された。約0.5分後、機器の極性が正イオンモードに切り替えて戻され、MALDIプレートに印加される電位は、MALDI供給源からのペプチドイオンのサンプリングを可能にするため、再び2500Vに上昇された。図22のデータは、複数の源から反対の極性のイオンを同時に生成することが可能であり、機器の極性を切り替えて、第1の源に印加される電位を調節することにより、指標化を達成することが可能であることを示している。当業者には既知であるように、本デバイスを用いて生成される正および負イオンは、イオン−イオン反応を行うために単一イオントラップに含まれ得る。
【0054】
(実施例9)
本実験は、図10に示す構成で、1対の噴霧器補助のナノフロー噴霧器(MicroIonSpray II)を使用して行われた。ベラパミルおよびサフラニンオレンジを含有する試料が、それぞれ分析用噴霧器および較正物質噴霧器を介してスプレーされた。図23に提示したデータに関して、2つの噴霧器に印加された電位は変化させたが、分析用噴霧器および較正物質噴霧器の噴霧器ガスフローは、それぞれ0.4L/分および3L/分に固定された。層流チャンバは100℃に加熱され、580V、580V、および50Vの電位が、それぞれ加熱層流チャンバ、カーテンプレート、およびオリフィスに印加された。検体および較正用イオンが同一スペクトルに存在しないため、ウィンドウ枠CおよびDは、外部較正のための複合源の作動を明示する。ウィンドウ枠Dは、分析用噴霧器および較正物質噴霧器に、それぞれ580Vおよび3000Vの電位を印加して生成されたデータを示す。該質量スペクトルは、サフラニンオレンジの較正物質フローからのイオンに相当する主ピークの存在を示す。分析用噴霧器電位を3000Vに上昇させると(ウィンドウ枠C)、較正用イオンの全ての信号が排除され、ベラパミルからのイオンに相当する主ピークを形成した。ウィンドウ枠AおよびBに提示するように、本源構成は、検体および較正物質が同一スペクトル上に存在する内部較正のためにもまた使用され得る。較正物質噴霧器の電圧を切ると、中性液滴および較正用分子が搬送ガス中に導入される。注入口開口の前で移動する中性液滴および分子は、分析用噴霧器からの荷電液滴と衝突し、それにより電荷を受け取り、部分蒸発すると、イオン蒸発によりイオンを放出する。すでに図8で示したように、中性の自由分子もまた、ガス相の電荷移動によりイオン化され得る。ウィンドウ枠Aは、分析用噴霧器に印加された電位が3000V、較正物質噴霧器に印加された電位が0Vである、この実施例を示す。本スペクトルは、ベラパミル(分析用噴霧器)とサフラニンオレンジ(較正物質噴霧器)の両方からのイオンに相当するピークの存在を示している。較正物質噴霧器に負の電位を印加することにより、分析用噴霧器からの正の液滴に静電的に引き付けられる、負に荷電した液滴を搬送ガス中に導入する(またはその逆)。ここで作動されるように、負の液滴が正の分析エレクトロスプレーと混合され、これらの相互作用の結果、極性を逆転させ正イオンを放出する。ウィンドウ枠Bは、分析用噴霧器に印加された電位が3000V、較正物質噴霧器に印加された電位が−3000Vである、この実施例を示す。図23に明示されるように、本作動モードは、中性液滴の導入よりも、正の較正用イオンの発生(ウィンドウ枠Bをウィンドウ枠Aに比較するとサフラニンオレンジの信号が約5倍増)においてより効果的であり、恐らく静電気引力が液滴の相互作用の効率を改善するためであろう。アズトレオナム、シクロスポリン、スクシニルコリン、ステロイド類、およびペプチド類等の他の較正用分子での実験もまた、較正物質噴霧器が負のモードのエレクトロスプレーとして作動された場合、噴霧器とは対照的に、約3〜5倍の改善を示した。本様式で作動すると、加熱器温度が下げられるにつれ(溶媒がカーテンチャンバ内により浸透)、また分析用噴霧器がサンプリング注入口からより遠くに位置付けられるにつれ(分析スプレーの、逆流のガスフロー中の液滴とのより長い相互作用時間)、較正信号は改善した。
【0055】
(実施例10)
実施例10は、本出願人の教示に係る内部較正および無電界状態を提供する実施例を明示する。本実験について、図25に示すように、較正用イオンが、カーテンプレートの周辺付近の第2の開口50の端部から、カーテンプレートと導電性のオリフィスプレート38との間の領域へガスフローにより搬送される際に無電界状態に曝されるように、シートメタルで加工された通過部材90がカーテンプレート(境界部材)18の裏側に定置された。エレクトロスプレープローブ(本実施例においてはTurbo VTM)を備える第1の源は、サンプリング注入口と同心円上に位置するカーテンプレート開口26(3mm)に直角にスプレーするように位置付けられ、ナノフロー噴霧器を備える第2の源は、噴霧器ガスを使用して、第2の開口上にはんだ付けされたチューブ等のチャネル部材80を介して搬送ガスフローを確立した。このようにして、較正用イオンおよび荷電液滴は、カーテンプレートとサンプリング注入口との間の領域に出る前に、チャネル部材80、次いで第2のカーテンプレート開口50、その後シートメタル通過部材90を通過した。エレクトロスプレー源は、第1のカーテンプレート開口の約1cm上方、また当業者には理解される直交構成に位置付けられ、第2の源がレセルピンイオンをチャネル部材80中に放出する間、グルフィブリノペプチド試料からイオンを連続的に生成した。本構成を用いて、較正用イオンが、第1の源からの分析用イオンとともに、注入口内にサンプリングされ得た。図24に示すように、較正用イオンの指標化は、カーテンプレート(境界部材)に印加する電位を変化させることにより、達成することができた。図24に提示したデータについて、第1の源、較正物質源、および注入口オリフィスに印加された加電圧は、4500V、2800V、および100Vであった。カーテンプレートに印加された電圧は、400Vと100Vとの間で変化させた。第1のエレクトロスプレー源により生成された信号は、カーテンプレートに印加された400Vで最適化され、較正用イオンに対する信号はなかった。カーテンプレートの裏側または内側表面上の通過部材を出る較正用イオン(無磁場通過)は、カーテンプレートと導電性のオリフィスとの間の電場300V/mmにより駆動され、オリフィスプレートの金属表面に放電された。カーテンプレート電位を100Vに低下させることにより、カーテンプレートとオリフィスとの間に本質的な無電界状態が生成され、それにより、較正用イオンを分析試料の一部とともに注入口内にサンプリングすることが可能になった。このようにして、約50〜70ミリ秒の切替時間で内部較正が達成され得る。
【0056】
当業者には理解されるように、本開示に精通すれば、本出願人の教示の実施における使用に際し、多岐にわたり異なるインターフェース構成が好適であり得る。種々の実施形態に関連して、本出願人の教示を記載および例示したが、当業者には明白になるように、本出願人の教示の精神および範囲から逸脱することなく、多くの変形および修正を行うことが可能であり、したがって、これら変形および修正されたものは本出願人の教示の範囲内に含まれると意図されるため、本出願人の教示は、上記で説明した方法論および構造の正確な詳細に限られるものではない。上記過程自体に必要または特有である場合を除き、本開示に記載の方法または過程のステップまたは段階に対して、図を含み、特段の順序は示唆されていない。多くの場合、過程のステップの順序は、記載した方法の目的、効果、または趣旨を変えることなく、変更することができる。
【0057】
本開示を読むことにより、添付の特許請求の範囲における本出願人の教示の真の範囲から逸脱することなく、形態および詳細において種々の変更を行い得ることが、当業者には認識される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの源から質量分析計へ試料を導入するための方法であって、
サンプリング注入口と連通するチャンバ内の第1の入口点を通じて、第1の試料(a first of the sample)を該質量分析計へ導入するステップであって、該第1の入口点は、該チャンバを少なくとも部分的に画定する境界部材において画定され、該第1の入口点は、該サンプリング注入口の同軸上にあり、該チャンバは、無電界状態が確立される少なくとも1つの領域を有し、該第1の試料は、該サンプリング注入口の実質的に近接に導入される、ステップと、
該チャンバ内の、該サンプリング注入口に近接しない位置に画定される、少なくとも1つの他の入口点を通じて、少なくとも第2の試料(a second of the sample)を導入するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記チャンバは、ガスを該チャンバに導入するためのガス入口をさらに画定し、ガスフロー流は、該ガスフロー流が、部分的に前記第1の入口点の方へ、また部分的に前記サンプリング注入口の方へ流れるように確立され、それにより少なくとも前記第2の試料は、該ガスフロー流により該サンプリング注入口に方向付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の試料を導入する前記ステップは、電磁界に関連付けられ、少なくとも1つの他の入口点を導入する前記ステップは、少なくとも前記第2の試料の導入が、前記質量分析計による前記第1の試料の分析に有害な影響を与えないように、前記第1の入口点から十分に離れている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の入口点は、前記少なくとも1つの他の入口点から少なくとも3ミリメートルの距離に位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試料の少なくとも1つは、イオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも前記第2の試料は、前記第1の試料と反対の極性のイオンを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも前記第2の試料は、中性分子を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記中性分子は、前記質量分析計により分析される前に荷電される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの熱源を提供するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプリング注入口は、加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも前記第2の試料は、較正用分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の試料および前記第2の試料を、前記サンプリング注入口に導入する前記ステップをゲーティングするステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の試料に印加される電位を変更することにより、前記少なくとも前記第2の試料をゲーティングするステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ゲーティングするステップは、前記境界部材に印加される電位を変化させるステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の試料のイオンと前記第2の試料のイオンとを合わせて混合し、イオン−イオン反応を行う、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の試料のイオンと前記第2の試料の中性物とを合わせて混合し、イオン−中性反応を行う、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の試料と前記第2の試料とを合わせて混合し、電荷反転実験を行う、請求項6に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の試料のイオンおよび前記第2の試料のイオンは、外部較正を行うためにゲーティングされる、請求項5に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の試料と前記第2の試料とを合わせて混合し、内部較正を行う、請求項5に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の試料は、前記第1の入口点を通じて第1の極性の荷電液滴のスプレーとして導入され、前記第2の試料は、前記少なくとも1つの他の入口点を通じて、該第1の試料の荷電液滴と反対の極性の液滴のスプレーの1つとして導入され、中立極性の液滴のスプレーおよび該第2の試料からの液滴が、該第1の試料の液滴と混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの他の入口点に取り付けられるチャネル部材を提供するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記境界部材の内側に取り付けられる通過部材を提供するステップをさらに含み、前記通過部材は、前記チャンバの少なくとも1つの領域に無電界状態を提供するために、前記少なくとも1つの他の入口点に近接して位置付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記境界部材の内側に取り付けられる通過部材を提供するステップをさらに含み、該通過部材は、前記チャンバの少なくとも1つの領域に無電界状態を提供するために、前記少なくとも1つの他の入口点に近接して位置付けられる、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
質量分析計に少なくとも1つの試料を導入するためのインターフェース装置であって、
該質量分析計へのサンプリング注入口と、
該サンプリング注入口と連通するチャンバを少なくとも部分的に画定する境界部材であって、該チャンバは、無電界状態が確立される少なくとも1つの領域を有する、境界部材と、
第1の源が試料を放出することのできる、該境界部材において画定される第1の開口であって、該第1の開口は、該サンプリング注入口の同軸上にあり、該試料は、そこを通って通過するために該サンプリング注入口の方へ方向付けられる、開口と、
少なくとも1つの他の源が、該試料または別の試料の少なくとも1つを該チャンバに導入することのできる、該チャンバにおいて画定される少なくとも1つの他の開口と、
を備える、インターフェース装置。
【請求項25】
ガスの前記チャンバへの導入を可能にするための、該チャンバにおいて画定される少なくとも1つのガス入口をさらに含み、ガスフロー流は、該ガスフロー流が部分的に前記第1の開口を通って、また部分的に前記サンプリング注入口の方へ流れるように確立され、前記試料または別の試料の少なくとも1つが、該ガスフロー流により該サンプリング注入口へ方向付けられる、請求項24に記載のインターフェース装置。
【請求項26】
前記第1の源は、電磁界に関連付けられ、前記少なくとも1つの他の源は、前記第2の源が、前記質量分析計による前記試料の分析に有害な影響を与えないように、該第1の源から十分に離れている、請求項24に記載のインターフェース装置。
【請求項27】
前記第1の源は、前記少なくとも1つの他の源から少なくとも3ミリメートルの距離に位置する、請求項24に記載のインターフェース装置。
【請求項28】
前記試料または別の試料の少なくとも1つは、イオンを含む、請求項24に記載のインターフェース装置。
【請求項29】
前記別の試料は、前記試料と反対の極性のイオンを含む、請求項28に記載のインターフェース装置。
【請求項30】
前記別の試料は、中性分子を含む、請求項28に記載のインターフェース装置。
【請求項31】
前記中性分子は、前記質量分析計により分析される前に荷電される、請求項30に記載のインターフェース装置。
【請求項32】
少なくとも1つの熱源をさらに備える、請求項24に記載のインターフェース装置。
【請求項33】
前記少なくとも1つの熱源は、前記チャンバの外側に位置する、請求項32に記載のインターフェース装置。
【請求項34】
前記少なくとも1つの熱源は、前記第1の源に位置する、請求項32に記載のインターフェース装置。
【請求項35】
前記熱源は、薄層チューブを含む、請求項32に記載のインターフェース装置。
【請求項36】
前記サンプリング注入口は、加熱される、請求項24に記載のインターフェース装置。
【請求項37】
前記別の試料は、較正用分子を含む、請求項24に記載のインターフェース装置。
【請求項38】
前記試料および前記別の試料の前記サンプリング注入口への導入を制御するためのゲートをさらに備える、請求項24に記載のインターフェース装置。
【請求項39】
前記ゲートは、前記第1の源に印加される電位を変更することにより動作する、請求項38に記載のインターフェース装置。
【請求項40】
前記ゲートは、前記境界部材に印加される電位を変化させることにより動作する、請求項38に記載のインターフェース装置。
【請求項41】
さらなるガスを前記試料または別の試料の少なくとも1つの方へ送るための、かつ該試料または該別の試料の少なくとも1つが前記サンプリング注入口に達するのを防ぐように、前記第1および第2の源の少なくとも1つに対して実質的に垂直である、第2のガス源をさらに備え、前記ゲートは、該さらなるガスフローを制御するためのコントローラを備える、請求項38に記載のインターフェース装置。
【請求項42】
前記第1の源は、第1の極性の荷電液滴のスプレーを導入し、前記少なくとも1つの他の源は、該第1の源の荷電液滴と反対の極性の液滴のスプレーの1つを導入し、中立極性の液滴のスプレーおよび該少なくとも1つの他の源からの液滴は、該第1の源からの液滴と混合される、請求項24に記載のインターフェース装置。
【請求項43】
前記少なくとも1つの他の源が、前記少なくとも1つの他の開口を通じて前記別の試料を導入することのできる、該少なくとも1つの他の開口に取り付けられるチャネル部材をさらに備える、請求項24に記載のインターフェース装置。
【請求項44】
前記境界部材の内側に取り付けられる通過部材をさらに備え、該通過部材は、前記チャンバの少なくとも1つの領域に無電界状態を提供するために、前記少なくとも1つの他の開口に近接して位置付けられる、請求項24に記載のインターフェース装置。
【請求項45】
前記境界部材の内側に取り付けられる通過部材をさらに備え、前記通過部材は、前記チャンバの少なくとも1つの領域に無電界状態を提供するために、前記少なくとも1つの他の開口に近接して位置付けられる、請求項43に記載のインターフェース装置。
【請求項46】
前記チャネル部材は、チューブを含む、請求項43に記載のインターフェース装置。
【請求項47】
前記通過部材は、伝導性材料を含む、請求項44に記載のインターフェース装置。
【請求項48】
前記伝導性材料は、シートメタルを含む、請求項47に記載のインターフェース装置。
【請求項1】
少なくとも2つの源から質量分析計へ試料を導入するための方法であって、
サンプリング注入口と連通するチャンバ内の第1の入口点を通じて、第1の試料(a first of the sample)を該質量分析計へ導入するステップであって、該第1の入口点は、該チャンバを少なくとも部分的に画定する境界部材において画定され、該第1の入口点は、該サンプリング注入口の同軸上にあり、該チャンバは、無電界状態が確立される少なくとも1つの領域を有し、該第1の試料は、該サンプリング注入口の実質的に近接に導入される、ステップと、
該チャンバ内の、該サンプリング注入口に近接しない位置に画定される、少なくとも1つの他の入口点を通じて、少なくとも第2の試料(a second of the sample)を導入するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記チャンバは、ガスを該チャンバに導入するためのガス入口をさらに画定し、ガスフロー流は、該ガスフロー流が、部分的に前記第1の入口点の方へ、また部分的に前記サンプリング注入口の方へ流れるように確立され、それにより少なくとも前記第2の試料は、該ガスフロー流により該サンプリング注入口に方向付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の試料を導入する前記ステップは、電磁界に関連付けられ、少なくとも1つの他の入口点を導入する前記ステップは、少なくとも前記第2の試料の導入が、前記質量分析計による前記第1の試料の分析に有害な影響を与えないように、前記第1の入口点から十分に離れている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の入口点は、前記少なくとも1つの他の入口点から少なくとも3ミリメートルの距離に位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試料の少なくとも1つは、イオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも前記第2の試料は、前記第1の試料と反対の極性のイオンを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも前記第2の試料は、中性分子を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記中性分子は、前記質量分析計により分析される前に荷電される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの熱源を提供するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプリング注入口は、加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも前記第2の試料は、較正用分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の試料および前記第2の試料を、前記サンプリング注入口に導入する前記ステップをゲーティングするステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の試料に印加される電位を変更することにより、前記少なくとも前記第2の試料をゲーティングするステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ゲーティングするステップは、前記境界部材に印加される電位を変化させるステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の試料のイオンと前記第2の試料のイオンとを合わせて混合し、イオン−イオン反応を行う、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の試料のイオンと前記第2の試料の中性物とを合わせて混合し、イオン−中性反応を行う、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の試料と前記第2の試料とを合わせて混合し、電荷反転実験を行う、請求項6に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の試料のイオンおよび前記第2の試料のイオンは、外部較正を行うためにゲーティングされる、請求項5に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の試料と前記第2の試料とを合わせて混合し、内部較正を行う、請求項5に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の試料は、前記第1の入口点を通じて第1の極性の荷電液滴のスプレーとして導入され、前記第2の試料は、前記少なくとも1つの他の入口点を通じて、該第1の試料の荷電液滴と反対の極性の液滴のスプレーの1つとして導入され、中立極性の液滴のスプレーおよび該第2の試料からの液滴が、該第1の試料の液滴と混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの他の入口点に取り付けられるチャネル部材を提供するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記境界部材の内側に取り付けられる通過部材を提供するステップをさらに含み、前記通過部材は、前記チャンバの少なくとも1つの領域に無電界状態を提供するために、前記少なくとも1つの他の入口点に近接して位置付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記境界部材の内側に取り付けられる通過部材を提供するステップをさらに含み、該通過部材は、前記チャンバの少なくとも1つの領域に無電界状態を提供するために、前記少なくとも1つの他の入口点に近接して位置付けられる、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
質量分析計に少なくとも1つの試料を導入するためのインターフェース装置であって、
該質量分析計へのサンプリング注入口と、
該サンプリング注入口と連通するチャンバを少なくとも部分的に画定する境界部材であって、該チャンバは、無電界状態が確立される少なくとも1つの領域を有する、境界部材と、
第1の源が試料を放出することのできる、該境界部材において画定される第1の開口であって、該第1の開口は、該サンプリング注入口の同軸上にあり、該試料は、そこを通って通過するために該サンプリング注入口の方へ方向付けられる、開口と、
少なくとも1つの他の源が、該試料または別の試料の少なくとも1つを該チャンバに導入することのできる、該チャンバにおいて画定される少なくとも1つの他の開口と、
を備える、インターフェース装置。
【請求項25】
ガスの前記チャンバへの導入を可能にするための、該チャンバにおいて画定される少なくとも1つのガス入口をさらに含み、ガスフロー流は、該ガスフロー流が部分的に前記第1の開口を通って、また部分的に前記サンプリング注入口の方へ流れるように確立され、前記試料または別の試料の少なくとも1つが、該ガスフロー流により該サンプリング注入口へ方向付けられる、請求項24に記載のインターフェース装置。
【請求項26】
前記第1の源は、電磁界に関連付けられ、前記少なくとも1つの他の源は、前記第2の源が、前記質量分析計による前記試料の分析に有害な影響を与えないように、該第1の源から十分に離れている、請求項24に記載のインターフェース装置。
【請求項27】
前記第1の源は、前記少なくとも1つの他の源から少なくとも3ミリメートルの距離に位置する、請求項24に記載のインターフェース装置。
【請求項28】
前記試料または別の試料の少なくとも1つは、イオンを含む、請求項24に記載のインターフェース装置。
【請求項29】
前記別の試料は、前記試料と反対の極性のイオンを含む、請求項28に記載のインターフェース装置。
【請求項30】
前記別の試料は、中性分子を含む、請求項28に記載のインターフェース装置。
【請求項31】
前記中性分子は、前記質量分析計により分析される前に荷電される、請求項30に記載のインターフェース装置。
【請求項32】
少なくとも1つの熱源をさらに備える、請求項24に記載のインターフェース装置。
【請求項33】
前記少なくとも1つの熱源は、前記チャンバの外側に位置する、請求項32に記載のインターフェース装置。
【請求項34】
前記少なくとも1つの熱源は、前記第1の源に位置する、請求項32に記載のインターフェース装置。
【請求項35】
前記熱源は、薄層チューブを含む、請求項32に記載のインターフェース装置。
【請求項36】
前記サンプリング注入口は、加熱される、請求項24に記載のインターフェース装置。
【請求項37】
前記別の試料は、較正用分子を含む、請求項24に記載のインターフェース装置。
【請求項38】
前記試料および前記別の試料の前記サンプリング注入口への導入を制御するためのゲートをさらに備える、請求項24に記載のインターフェース装置。
【請求項39】
前記ゲートは、前記第1の源に印加される電位を変更することにより動作する、請求項38に記載のインターフェース装置。
【請求項40】
前記ゲートは、前記境界部材に印加される電位を変化させることにより動作する、請求項38に記載のインターフェース装置。
【請求項41】
さらなるガスを前記試料または別の試料の少なくとも1つの方へ送るための、かつ該試料または該別の試料の少なくとも1つが前記サンプリング注入口に達するのを防ぐように、前記第1および第2の源の少なくとも1つに対して実質的に垂直である、第2のガス源をさらに備え、前記ゲートは、該さらなるガスフローを制御するためのコントローラを備える、請求項38に記載のインターフェース装置。
【請求項42】
前記第1の源は、第1の極性の荷電液滴のスプレーを導入し、前記少なくとも1つの他の源は、該第1の源の荷電液滴と反対の極性の液滴のスプレーの1つを導入し、中立極性の液滴のスプレーおよび該少なくとも1つの他の源からの液滴は、該第1の源からの液滴と混合される、請求項24に記載のインターフェース装置。
【請求項43】
前記少なくとも1つの他の源が、前記少なくとも1つの他の開口を通じて前記別の試料を導入することのできる、該少なくとも1つの他の開口に取り付けられるチャネル部材をさらに備える、請求項24に記載のインターフェース装置。
【請求項44】
前記境界部材の内側に取り付けられる通過部材をさらに備え、該通過部材は、前記チャンバの少なくとも1つの領域に無電界状態を提供するために、前記少なくとも1つの他の開口に近接して位置付けられる、請求項24に記載のインターフェース装置。
【請求項45】
前記境界部材の内側に取り付けられる通過部材をさらに備え、前記通過部材は、前記チャンバの少なくとも1つの領域に無電界状態を提供するために、前記少なくとも1つの他の開口に近接して位置付けられる、請求項43に記載のインターフェース装置。
【請求項46】
前記チャネル部材は、チューブを含む、請求項43に記載のインターフェース装置。
【請求項47】
前記通過部材は、伝導性材料を含む、請求項44に記載のインターフェース装置。
【請求項48】
前記伝導性材料は、シートメタルを含む、請求項47に記載のインターフェース装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図25】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図25】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2010−504504(P2010−504504A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528565(P2009−528565)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【国際出願番号】PCT/CA2007/001716
【国際公開番号】WO2008/037073
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(508153855)エムディーエス アナリティカル テクノロジーズ, ア ビジネス ユニット オブ エムディーエス インコーポレイテッド, ドゥーイング ビジネス スルー イッツ サイエックス ディビジョン (17)
【出願人】(500069057)アプライド バイオシステムズ インコーポレイテッド (120)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【国際出願番号】PCT/CA2007/001716
【国際公開番号】WO2008/037073
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(508153855)エムディーエス アナリティカル テクノロジーズ, ア ビジネス ユニット オブ エムディーエス インコーポレイテッド, ドゥーイング ビジネス スルー イッツ サイエックス ディビジョン (17)
【出願人】(500069057)アプライド バイオシステムズ インコーポレイテッド (120)
【Fターム(参考)】
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