説明

質量分析計のイオン光学系への動的バイアス

例えば質量分析計における、イオン光学エレメントを動的にバイアスするためのデバイスが提供される。該デバイスは電圧ソース、電圧ソースと結合される第1のイオン光学エレメント、第1のイオン光学エレメントと抵抗結合される第2のイオン光学エレメント、および第2のイオン光学エレメントと容量結合されるパルス発生器を含む。パルス発生器は第2のイオン光学エレメントに一連のパルスを加えるように構成される。定常状態オペレーションにおいて、第1のイオン光学エレメントと第2のイオン光学エレメントとの間に動的バイアス電圧が生成される。動的バイアス電圧は、加えられるパルスのパルス幅、パルス振幅、およびパルス繰り返し速度などの、加えられるパルスの特性を制御することによって、制御可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、米国特許仮出願第60/585,349号(2004年7月1日出願)の利益を主張し、該仮出願はその全てが、本明細書において参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、概して質量分析計に関し、特にレーザー脱離イオン化(laser desorption and ionization)質量分析計(「LDI−MS」)に関する。
【背景技術】
【0003】
分析化学の分野において、過去数十年間に目覚しい発展と汎用性とを示した技術には、飛行時間(Time−of−Flight)質量分析計(「TOF−MS」)の使用が含まれる。TOF−MSは一般に、イオンソース、イオン光学アセンブリ、フライトチューブ(自由飛行領域)およびイオン検出器を含む。より一般的には、TOF−MSは、イオンソース、質量分析器、および検出器システムに分けられ得る。
【0004】
LDI/TOF−MSのイオンソースはプローブエレメントおよびレーザーを含み、そのプローブエレメントの上にサンプルが置かれ、このレーザーは、サンプルの上にレーザー光のパルスを向け、プローブの表面から分析物分子を脱離させ、それらをイオン化する。
【0005】
TOF−MSのサブアセンブリである、イオン光学アセンブリは、イオンソースからのイオンを、それらがTOF−MSの自由飛行領域に入る前に、フォーカスし加速する。例えば、TOF−MSのイオン光学アセンブリは3つの電極を伴って実現され得る。すなわち、(1)ソースエレメント(リペラーレンズまたはサンプルプレートとも呼ばれる);(2)引き出し(extraction)レンズエレメント;(3)加速レンズエレメント、である。ある場合には、引き出しレンズと加速電極との間に、第4の電極が置かれる。大部分のLDI−MS装置においては、ソースエレメントは、プローブの穴と嵌合するピンのような、またはプローブが滑り込む溝のような、プローブと係合するための手段を備える。このような方法で、サンプルはソースエレメントと結合される。一部の装置においては、一部のまたは全てのレンズの開口に、電導性の格子(conducting grid)が使用され、周囲の高い電場領域からの、これら開口を通じての電場の侵入を制限する。例えば、引き出しエレメントの開口を横切る格子は、引き出しエレメントと加速エレメントとの間の電場の、引き出しエレメントとソースエレメントとの間の空間への侵入を阻止するために使用され得る。格子は引き出しレンズとソースとの間の電場を制御することを助けるが、イオンが格子と衝突する可能性のために、または格子の小さな開口それ自身がフォーカスエレメントとして働く可能性のために、格子はまたイオン光学系(ion optics)の性能を低下させる可能性がある。
【0006】
現代のLDI/TOF−MS装置は、質量分析計の解像度を改善するために、パルス(pulsed)イオン引き出し(PIE)を使用する。パルス引き出しにおいては、ソースおよび引き出しレンズに独立の電位が加えれ得、レーザー脱離/イオン化の前に、プレートの間に適切な電場を生成する。一部のアプリケーションにおいては、ソースおよび引き出しエレメントは、ソースの表面において、またはその付近で本質的にゼロ電場を生成するように、初期に特定の電位に保たれる。一部の場合においては、サンプルから生成されたイオンを遅延する、または加速するために、ソースの表面に初期電場を生成することが望まれ得る。何れにしても、レーザーパルスは、分析体分子をソースから脱離させ、イオン化し、ソースと引き出し器(extractor)との間にイオンのプルーム(plume)を生成する。イオン化後の所定の時間経過後に、所定の電圧、すなわち引き出しパルスが、ソースおよび引き出しエレメントに加えられ、加速場を生成する。その加速場は適切な電荷のイオンを、引き出しレンズの開口を通過して次の光学系の中へと進ませ、そこでイオンは一般的に、自由飛行領域に入る前にフォーカスされ、加速される。(例えば、非特許文献1を参照すること。)
今日のLDI/TOF−MSシステムにおいては一般的に、2つのイオン光学エレメントの間の電圧差のそれぞれに対して、電圧ソースが要求される。例えば、パルスイオン引き出しを有するシステムにおいては、電圧ソースは一般的に、1)加速エレメントに対するイオンソースの電圧を設定すること、2)イオンソースに対する引き出しエレメントのDC電圧を設定すること、および3)引き出し場を生成するために引き出しエレメントと容量結合された(capacitively coupled)パルスを生成すること、を要求される。これらのそれぞれに対する個別の電圧ソースは、イオン光学エレメントの電圧の完全な制御を提供するが、それはまた装置の費用を追加する。
【0007】
アッセイデバイスとしての質量分析計の使用に対するニーズが拡大しつつある。この観点において有用であるためには、質量分析計は高感度であり、かつ低コストであることが求められる。感度は、サンプルプレートから脱離される可能な限り多数のイオンを検出する能力を要求する。これを達成するためには、適切なイオン光学系および電圧ソースが必要である。質量分析計のコストは、不必要なエレメントを削除すること、および高価なエレメントを低コストのバージョンにより置き換えることによって削減され得る。
【非特許文献1】Weinberger他、「Time−of−flight Mass Spectrometry」、Encyclopedia of Analytical Chemistry、R.A.Meyers(編)、John Wiley&Sons Ltd、Chichester、2000年、11915〜11984頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高感度を損なうことなく、低コストの質量分析計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、通常は質量分析計のオペレーションに影響を与えない、加えられるパルスの特性を利用して、質量分析計デバイスのイオンソースとイオン引き出しエレメントとの間に、所望のバイアス電圧(voltage bias)を提供するための回路、システムおよび方法を提供する。ある局面においては、本発明に従ったデバイスは、電圧ソース、電圧ソースと結合される第1のイオン光学エレメント、第1のイオン光学エレメントと抵抗結合される(resistively coupled)第2のイオン光学エレメント、および第2のイオン光学エレメントと容量結合されるパルス発生器を含む。パルス発生器は第2のイオン光学エレメントに一連のパルスを加えるように構成される。定常状態オペレーションにおいては、第1のイオン光学エレメントと第2のイオン光学エレメントとの間に、バイアス電圧が生成される。この動的に生成されるバイアス電圧の大きさは、自動的にまたは手動により、すなわち、加えられるパルスのパルス幅、パルス振幅、およびパルス繰り返し速度などの、加えられるパルスの特性を制御することによって、制御可能である。
【0010】
本発明の一局面に従って、電圧ソース、電圧ソースと結合される第1のイオン光学エレメント、および第1のイオン光学エレメントと抵抗結合される第2のイオン光学エレメントを典型的に含む、デバイスが提供される。該デバイスはまた、第2のイオン光学エレメントと容量結合されるパルス発生器を典型的に含み、パルス発生器は第2のイオン光学エレメントに複数のパルスを加えるように構成され、複数のパルスは制御可能なパルスパターンおよび制御可能なパルス形状を有し、その結果として定常状態オペレーションにおいて、第1のイオン光学エレメントと第2のイオン光学エレメントとの間に定常状態バイアス電圧が生成され、該バイアス電圧はパルス振幅の約0.1%よりも大きい。一局面においては、該デバイスは質量分析計システムの中に実装される。ある局面においては、基準電圧(voltage reference)は約0kVと約±30kVとの間の電圧レベルを提供するように構成される。
【0011】
本発明の別の局面においては、デバイスの第1のイオン光学エレメントと第2のイオン光学エレメントとの間に定常状態バイアス電圧を加えるための方法が提供される。該方法は、電圧源、電圧源と結合される第1のイオン光学エレメント、第1のイオン光学エレメントと抵抗結合される第2のイオン光学エレメント、および第2のイオン光学エレメントと容量結合されるパルス発生器を有するデバイスを提供することを、典型的に含む。該方法は、パルス発生器を使用して第2のイオン光学エレメントに複数のパルスを加えることを典型的に含み、該複数のパルスは、定常状態オペレーションにおいて、第1のイオン光学エレメントと第2のイオン光学エレメントとの間に定常状態バイアス電圧が生成されるように構成される、制御可能なパルスパターンおよび制御可能なパルス形状を有する。
【0012】
別の局面においては、本発明は、(1)電圧ソース;(2)電圧ソースと結合される第1のイオン光学エレメント;(3)第1のイオン光学エレメントと抵抗結合される第2のイオン光学エレメントであって、開口を備える第2のイオン光学エレメント;(4)該第2のイオン光学エレメントと容量結合されるパルス発生器、および(5)グランドと結合される第3のイオン光学エレメント、を備え、第2のイオン光学エレメントは第1と第3のイオン光学エレメントとの間に置かれ、開口は電気的にシールドされていない、デバイスを提供する。
【0013】
さらに別の局面においては、電圧源と、電圧源と結合される第1のイオン光学エレメントと、第1のイオン光学エレメントと抵抗結合される第2のイオン光学エレメントと、第2のイオン光学エレメントと容量結合されるパルス発生器と、を有するデバイスにおいて、第1のイオン光学エレメントと第2のイオン光学エレメントとの間に定常状態バイアス電圧を加えるための方法が提供される。該方法は、パルス発生器を使用して第2のイオン光学エレメントに複数のパルスを加えることであって、該複数のパルスは制御可能なパルスパターンおよび制御可能なパルス形状を有することと、定常状態オペレーションにおいては、第1のイオン光学エレメントと第2のイオン光学エレメントとの間に定常状態バイアス電圧が生成されるように、パルスパターンおよびパルス形状のうちの1つ以上を調整することとを、典型的に含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の本質および利益のさらなる理解のために、添付の図面と共に、以下の記載内容が参照されるべきである。
【0015】
本発明の実施形態は、パルス電圧(pulsed voltage)を使用して、イオン光学エレメントまたはレンズ上にDCバイアスを動的に生成し制御するための回路および方法を提供する。パルス電圧および動的に生成されたDCバイアスの両方がイオン光学エレメント上に現れるために、これは、時間に依存する電圧により駆動され得る、または駆動される必要があるレンズエレメント、例えば、イオンソースの中にパルス引き出しを提供するためにパルスにより駆動されるレンズエレメント、に対して特に有用である。
【0016】
本発明は、単一のパルス生成電源、または電圧ソースを使用して、イオン引き出しとイオンソースエレメントとの間に定常状態バイアス電圧を生成するために使用され得る回路を提供する。電圧パルスの定常的な流れに応答して、定常状態バイアス電圧、または動的なバイアスが、一連のレーザー脱離パルスの中のそれぞれのパルスに対して一回生成される。オペレーションにおいては、パルス振幅およびパルス幅のようなパルス特性が、定常状態バイアスの大きさを制御するために調節され得る。パルス特性の適切な選定により、引き出し領域の動的バイアスは、例えば、イオンをイオンソースから離れるように加速するために、脱離されたイオンの初期速度を減らすために、または引き出しパルスが加えられる前の電場のない領域を生成するために、使用され得る。追加として、イオン引き出しとソースエレメントとの間の所望の定常状態バイアス電圧を生成するために、および引き出しパルスを加えるために、単一のパルス電圧ソースのみが必要とされる。この回路はあるLDI/TOF−MS設計において利点を有する。特に、単一の電源の使用は装置のコストを削減する。
【0017】
図1はLDI−MSデバイス100の例示的なブロック図であり、それは本発明に従って、質量分析計のイオンレンズを動的にバイアスするように構成された回路配置を具体化し得る。簡潔に言えば、示されるように、質量分析計100はイオン光学系システム120、イオン検出システム125、光光学系(light optics)システム150および制御システム170を含む。
【0018】
示されるように、イオン光学系システム120はリペラーレンズ121、引き出し器プレート122および加速レンズ124を含む。示されるように、引き出し器122は円錐形であり、加速レンズ124は平面であるが、しかしながら、必要に応じて他の形状が使用され得る。例えば、引き出し器122および加速レンズ124の両方が平面であり得る。引き出し器122および加速レンズ124の両方は開口を有し、その開口は一緒に、サンプル130から脱離されたイオンに対する飛行経路を規定する。装置の感度を改善するための1つの設計においては、円錐形の引き出しレンズの開口は格子またはスクリーンを含まない。これはより多くの分析物イオンがレンズを通過することを可能とするが、それはまた、ソースと引き出しレンズとの間の空間に、グランドプレートからの加速電場の侵入をも許容する。これは、パルス引き出しを促進するために脱離/イオン化のときにサンプルの表面においてゼロの電場が所望される場合には、問題である。1つの解決策は、異なる電源を使用して引き出しプレートをソースよりも高い電位に保つことである。別の解決策は、引き出し器とソースとの間に動的なバイアスを生成することであり、それは上述した構成においては、加速エレメントからの電場の侵入に対抗して作用し、その後のパルス引き出しに対してソース付近にゼロ電場を生成する。動的なバイアスの生成は以下で詳細に記述される。
【0019】
フライトチューブ(示されていない)または他の囲いが、一般的にイオン光学系システム、検出システム、およびイオン光学系システム120と検出システム125との間の飛行経路を囲む。この囲いはイオンの飛行中の好ましくない相互作用を防止するために、一般的には空気を排除される。
【0020】
検出システム125は、イオン検出器140およびデジタイザモジュール144を含む。イオン検出器140はサンプル130から脱離されたイオンを検出し、検出されたイオンフラックスを表す信号を生成する。適切な検出エレメントの例は、電子増倍管デバイス、その他のチャージベースの検出器、およびボロメータ検出器(bolometric detector)を含む。例は、離散式または連続式ダイノード電子増倍管を含む。デジタイザ144は検出器からのアナログ信号をデジタル形式に、例えばアナログデジタル変換器(ADC)を使用して変換する。プリアンプ142はイオン検出器140からの信号を、それがデジタル化される前に調整するために含まれ得る。
【0021】
質量分析計デバイス100はまた、光ソース152を含む光光学系システム150を含む。光光学系システム150はサンプル130への光を生成し、送達するように設計される。好適な局面においては、光学系システム150は複数の光学エレメントを含み、そのエレメントは光を必要に応じて調整し、向け直し、フォーカスし、その結果として、既知のエネルギー、およびフォーカスの光パルスがサンプル130に送達される。光ソース152は好ましくはレーザーを含むが、しかしながら、アークランプまたはフラッシュチューブ(例えば、キセノン)のような、他の光発生エレメントが使用され得る。送達されたた光は好適にも既知の継続時間、強度および周期を有する1つ以上のパルスとして提供される。かくして、好適な局面においては、光システム150はサンプル130に対するパルスレーザー光を生成し送達する。
【0022】
適切なレーザーベースの光ソースは、固体レーザー、ガスレーザー、およびその他を含む。一般に、最適のレーザーソースは所望の特定の波長によって指定され得る。一般的には、所望の波長は、紫外部スペクトル(例えば、350nmよりも短い)から可視(例えば、350nm〜650nm)を経て赤外(例えば、1,000nm)および遠赤外までの範囲に及ぶ。光ソースは他のパルス生成エレメントを有するパルスレーザーまたは連続(cw)レーザーを含み得る。パルス生成エレメントは、光ソースのダウンストリームの光光学系システムの中でまた現れ得る。例えば、連続の光ソースは、光がサンプルに当たる直前に、パルスを生成するためにチョップされ得る。適切なレーザーの例は、窒素レーザー、エキシマレーザー、Nd:YAG(例えば、周波数2倍、3倍、4倍)レ−ザー、ER:YAGレーザー、炭酸ガス(CO)レーザー、HeNeレーザー、ルビーレーザー、光パラメトリック発振器レーザー、チューナブル色素レーザー、エキシマポンプド色素レーザー、半導体レーザー、自由電子レーザー、および当業者であれば容易に思いつくその他のものを含む。
【0023】
図1に示された実施形態において、光光学系システム150はまた、パルス配向(directing)エレメント154およびフォーカシングエレメント156を含む。追加的な有用な光学エレメントは、ビーム拡大レンズセット158、減衰器エレメント160、ビームスプリッタ127、および1つ以上の追加のビームスプリッティングエレメント162を含み得る。パルス配向エレメント154は、ソース152からの光パルス131をサンプル130に向けるように構成される。一局面においては、光配向エレメント154はサンプルを横切る1つ以上の方向に沿ってパルスをラスターするように構成されるミラーを含む。しかしながら、1つ以上の反射する、回折する、または屈折するエレメントの他のセットが使用され得る。フォーカシングエレメント156は、光パルス131のフォーカスを調整し、光パルス131とサンプル130との交点において所望のスポットサイズおよび形状を得る働きをする。例えば、フォーカシングエレメント156はパルスを所望のサイズの円形スポットまたは楕円形スポットにフォーカスし得る。一局面においては、フォーカシングエレメント156は、制御システム170からの制御信号に応答して、スポットサイズを自動的に調整するように制御される。
【0024】
オプションのビーム拡大レンズセット158は、パルスを拡大しビームのフォーカシング、例えば小さいスポットサイズに向けることを助長するために提供される。ビーム拡大器の1つの機能は、レーザービームの発散角度を減らすこと、およびビームのフォーカスされた直径をより小さくすることを助けることである。またオプションの減衰器エレメント160は、パルスまたはパルスの1部分の強度を調整するために使用され得る。適切な減衰器エレメントは、固定のまたは可変のND(neutral density)フィルタ−、干渉フィルター、フィルターホイール、開口、および拡散エレメントを含む。ビームスプリッタエレメント127は、それぞれのパルスの1部分を光検出エレメント132に提供するために含まれる。光検出エレメント132は光センサーと、検出された光を電気信号に変換するための関連する回路網とを含み得る。例えば、一実施形態においては、エレメント132は光パルスを検出し、様々な目的のために制御システム170によって使用される信号を生成する、光ダイオードを含む。ここで様々な目的とは、レーザーパルスのタイミングを検証するため、およびイオン引き出し場のタイミングおよびイオン光学系システム120の動的バイアス(レーザーパルスに対する)の特性を調整するため、などである。例えば、あるクロックによって制御されるレーザーパルスの検出は、別のクロックによって制御されるイオン引き出しパルスまたはパルス発生器パルスのタイミングを検証または調整するために使用され得る。
【0025】
ビームスプリッティングエレメント162は、レーザーソース152の出力特性を決定するために有用である。例えば、ビームスプリッタエレメント162および162は、減衰器160によって調整される以前および以後のパルス特性を決定するために、パルスの1部分を光センサー回路エレメントに提供し得る。必要に応じて代替のまたは追加の光学エレメントが、光パルスを調整するために使用され得ることが、理解されるべきである。光学系システム150の様々な光学エレメントの代替の構成が本発明の範囲内にあることが、また理解されるべきである。
【0026】
図1に示されたイオン光学系システム120にもどり、リペラー121は好適にもプローブインターフェース119を受容するように構成される。プローブインターフェース119はそれ自身が、光光学系システム150からの照明(例えば、レーザー照明)がプローブの上のサンプル提示表面を照射するように、プローブと係合するように構成される。サンプル提示表面は、図1に示されるように、堆積されたまたは他の方法でその上に形成されたサンプル130を含み得る。プローブは1つまたは複数のサンプル提示表面を含み得る。プローブインターフェース119は好適にも、プローブインターフェース119とプローブとリペラー121とが一緒にリペラーとして働くように、リペラー121と電気的に接触するように設計される。一局面においては、プローブインターフェース119は少なくとも1つの方向に沿ってプローブを、それ故にサンプル提示表面を移動するように構成される。例えば、図1に示されるように、プローブインターフェース119はプローブをz−方向に(ここで、図1の面はx−およびy−方向を表す)移動するように構成され得る。例えば、プローブインターフェース119は、ステッパモータまたはプローブを制御可能な方法で移動するように構成される他のエレメントを含み得、またはそれと結合され得る。
【0027】
制御システム170は、パルス引き出しオペレーションを含む質量分析計デバイス100の全体のオペレーションを制御するために提供される。制御システム170は、システム170がユーザー入力を受信し様々なシステムコンポーネントに制御信号を提供することを可能とする、制御ロジックを実装する。
【0028】
制御ロジックは、そのようなロジックを通信する任意の手段を使用して、例えば、コンピュータネットワークを介して、キーボード、マウスまたは他の入力手段を介して、CD、DVDまたはフロッピディスクなどの携帯可能な媒体上で、または、RAM、ROM、ASICまたは他の類似のデバイスなどのハードワイヤード媒体上で、制御システム170に提供され得る。制御システム170は単独のコンピュータシステムおよび/または、当業者にとって明らかであるような、マイクロプロセッサと質量分析計デバイス100の様々なシステムコンポーネントを接続するための関連するインターフェース回路網とのような、統合された知能モジュールを含み得る。例えば、制御システム170は好適にも、光ダイオードエレメント132からトリガ信号を受信し、タイミング信号を生成するための、およびタイミング制御信号をイオン光学系システム(例えば、イオン引き出しパルス信号)および検出システム125(例えば、ブランキング信号のための)に提供するための、回路網を含む。
【0029】
図2は、本発明の一実施形態に従った、第1のイオン光学エレメント(例えば、ソース)と第2のイオン光学エレメント(例えば、引き出しエレメント)との間のバイアス電圧を生成するための、例示的な回路図200である。例えば、図2の回路は、例えば質量分析計デバイス100のイオン光学エレメント122(図1に示す)のようなイオン光学エレメントまたはレンズ上に、パルス電圧を使用することによってDCバイアスを動的に生成し制御するために、図1のLDI−MS100と共に使用され得る。基準電圧202はソース抵抗器206を経由して第1のイオン光学エレメント204(例えば、図1のイオンソースエレメント119)と結合される。ソース抵抗器206は動的に制御されたDCバイアスを生成するためには必要ではない。本明細書において使用されるように、基準電圧は電圧ソース、電圧源または調整された電圧源と同義語である。第2のイオン光学エレメント210(例えば、図1のイオン引き出しエレメント122)は抵抗Rpを有するパルス抵抗器212を介して第1のイオン光学エレメント204と抵抗結合される。パルス発生器213は電気容量Cpを有するパルスカップリングコンデンサ214を介して第2のイオン光学エレメント210と容量結合される。パルス発生器213は第2のイオン光学エレメントに対して一連のパルスを加えるように構成され、そのパルスは制御可能なパルス振幅、パルス幅およびパルス繰り返し速度を有する。これらのパルス特性のうちの1つ以上を制御することによって、以下においてより詳細に説明されるように、第1のイオン光学エレメント204と第2のイオン光学エレメント210との間に定常状態バイアス電圧が確立され、維持され得る。一実施形態においては、バイアス電圧はパルス振幅の約0.1%よりも大きいから1%までである。
【0030】
図3は、図2の第2のイオン光学エレメント210(例えば、イオン引き出しエレメント)に対する電圧対時間の例示的なグラフであり、回路200のオペレーションをより詳細に説明するために役立つ。オペレーションにおいて、システムが静止状態にあるときには、第2のイオン光学エレメント210、またはイオン引き出しエレメントの電圧Veはソース電圧Vsと等しい。パルス発生器213からのパルス(この例においては、パルスは負の方向のスクエアパルスとして考えられているが、他の極性および形状のパルスがここに記載される発明の文脈の中で使用され得る)が送達されたとき、VeはVsから値Aにまで低下する。一般的に、ソースは少なくとも浮遊容量(stray capacitances)(これらは図3には示されていない)によってイオン引き出しエレメントと容量結合されているので、ソースの電圧もまたVsに回復する以前にある量だけ低下する。パルス継続時間またはパルス幅の間に、第1のイオン光学、またはイオンソースエレメント204から抵抗器212を介してイオン引き出しエレメント210に電流が流れるので、Veは電圧値Bにまで上昇する。突然にパルスが終了するとき、パルス直後のVeはパルス以前の電圧よりも高い。イオンソースエレメント204からイオン引き出しエレメント210に向かってパルス継続時間の間に流れる電流は、イオン引き出しエレメントの電圧Veをして、パルスの直後にはそれがパルス以前に有した値(すなわち、Vs)よりも高い電圧(すなわち、C)をとらせる。パルス発生器がオフに留まり別のパルスを送達しない場合には、イオン引き出しエレメント上の電圧レベルは、図3に示される(「単一パルス」)ように、イオンソースエレメントの電圧Vsに復帰する。DCバイアスの動的な生成のためには、パルスは突然に終了する必要はなく、パルスの後縁の変化速度が十分に遅い場合には、ここに記載されたオーバーシュートは必ずしも起こらない。
【0031】
しかしながら、パルス発生器213が繰り返してパルスを送達するように制御される場合には、イオン引き出しエレメントは「定常状態」電圧レベルに、例えば、パルスの特性(すなわち、パルスの振幅、幅、繰り返し速度、および形状)およびパルスの周期、ならびに回路のRC特性によって決定される、図3に示されるレベルDにまで上向きにバイアスされる。このようにして、イオンソースエレメント204の電圧に対して相対的な、イオン引き出しエレメント210に対するベースラインバイアス電圧が、追加的なDC電源または電圧ソースを使用することなく、動的に生成され制御され得る。イオン引き出しエレメントとイオンソースエレメントとの間に生成される定常状態バイアス電圧は、パルス振幅、パルス幅、パルス繰り返し速度、およびパルス形状のうちの任意のものを調整することによって制御され得る。例えば、遅延引き出しを有するTOF−MSにおいては、パルス振幅はそれ自身が重要なパラメータであり、パルス速度を固定することがしばしば好都合であり、それ故にこのようなシステムにおいてはバイアス電圧はパルスの有効幅の制御を通じて制御されることが望ましい。スクエアでないパルスに対しては、有効幅はパルスの面積をパルスの振幅によって割り算することによって定義され得る。生成される動的バイアスの大きさはこの有効幅に直接的に依存し、それはパルスの実際の形状にはごく僅かしか依存しない。遅延引き出しを有するTOF−MSにおいてはしばしば、問題のイオンがイオンソースを離れるためにパルスは十分に長く加えられる必要がある。この状況においては、動的バイアスを生成する回路網は、例えばRpおよびCpの適切な選択によって、適切な長さのパルスを用いて所望のバイアスを供給するように設計され得る。
【0032】
引き出し器レンズが、加速エレメントと引き出しエレメントとの間の電圧差に基ずく場から、ソースをシールドする場合においては(通常これはイオンが通過する引き出しレンズの開口を横切る格子の使用を含む)、動的バイアスはソースと引き出しレンズとの間に遅延場を生成するために使用され得る。この遅延場は一部のアプリケーションにおいて有用であり得る。しかしながら、このような格子を有しないイオン光学システムに対して利点が存在する。これらの利点は、二次イオン、電子、およびスパッタリングの生成を減らすこと、および格子があれば格子と衝突することになるイオンの損失を除去することを含む。この構成の不利益は、加速と引き出しエレメントとの間の電場の一部分が引き出しエレメントの開口を通ってソースの表面にまで侵入することである。これは引き出しパルスを加える前に自由な場(free−field)の領域の中で分析物分子を脱離/イオン化することと両立しない。引き出しエレメント上の動的バイアスは、引き出しエレメントを通過する加速場の侵入を効果的に打ち消し、それによって脱離/イオン化の時にソースの付近にゼロ電場を有効に生成するために使用され得る。
【0033】
回路エレメントは所望のバイアス特性に応じて、多くの可能な特性値を有するように設計され得る。例えば、本発明の実施形態に従った回路においては、電圧ソースは約10kVと約30kVとの間の電圧を提供するように構成される。さらに、この例示的な回路においては、パルス発生器によって生成されるパルスのそれぞれの振幅は約1kVと約5kVとの間にある。しかしながら、特定のアプリケーションに対する必要に応じて、異なる電圧レベルおよび異なるパルス振幅電圧レベルが使用され得ることが理解される。
【0034】
追加として、図2の回路を使用するときには、第2のイオン光学エレメント210(例えば、イオン引き出しエレメント)の時間の関数としての電圧は、パルス特性の変化によって、または回路エレメントの変化によって変更され得る。例えば、該エレメントと容量結合されるパルスに対する引き出しエレメント上の電圧のドループ(図3におけるAからBへの)は、例えばRp212、Cp214またはその両方の値を調整することによって、図2の回路のRC時定数、T=Rp*Cpを増加することによって、任意に小さくされ得る。第2の例として、それぞれのパルスまたは一連のパルスの、後続のパルスに対する影響は、固有時間T=Rp*Cpをより短くするようにRpおよびCpを選択することによって、任意に小さくされ得る。特にこの固有時間がパルス周期よりもはるかに短い場合には、それぞれのパルスによる引き出しエレメント上の電圧は先行するパルスの存在とは本質的に無関係となり、このような場合には動的に生成されるDCバイアスは本質的に存在しない。動的バイアス電圧は、加えられるパルストレインを変更することによって制御される。例えば、パルス振幅、パルス幅、パルス繰り返し速度、またはデューティサイクルの変更は全て生成されるDCバイアスを制御するために使用され得る。これらは動的バイアスを制御する時間にわたる、パルスの形状、パルスの数、およびパルスの分布を使用する特別なケースである。特に別の理由のためにこれらのパラメータの一部が一定に保たれる必要がある場合には、残りのパラメータが生成されるDCバイアスを制御するために使用され得る。例えば、他のパルスの特性が動的バイアスを制御するために使用される間に、一部のパルスの特性は一定に保たれ得る。
【0035】
パルス発生器213はパルスを生成し、そのパルスの特性(すなわち、幅、周期、振幅、その他)は、第1と第2のイオン光学エレメントとの間の定常状態または過渡時の調整可能なバイアス電圧の設定を可能とするために、自動的に調整可能である。例えば、制御システム170は自動的にまたはユーザー入力に基づいてパルス発生器に制御信号を提供し得る。
【0036】
図2の回路が、例えば図1に示されるような、レーザーソースがイオンソースエレメントに衝突する複数のレーザーパルスを生成するように構成された、遅延引き出しを使用する質量分析計デバイスに使用されるときには、パルス発生器のパルスの1つが加えられる前の期間において、それぞれのレーザーパルスがイオンソースエレメントに衝突することが望ましい。このような質量分析計の一実施形態においては、レーザーは約20Hzで発射し、電圧パルスは3倍の速度の60Hzで発生し、レーザーの発射は電圧パルスに先行する約0.01マイクロ秒から約10マイクロ秒の制御された時間で起こり、イオンソースは約10から約30kVにバイアスされ、パルス特性は約1から約5kVの振幅および約100マイクロ秒またはそれ以下から1500マイクロ秒またはそれ以上までの有効幅である。ソース電圧および加えられるパルスの極性は特定のアプリケーションに対して選択され得る。パルス幅は、それぞれのレーザーパルスによってイオンソースから脱離されるイオンが約75Vの定常状態バイアス電圧(例えば、図3のD)を受けるように調整される。この定常状態バイアス電圧は、脱離されたイオンが、イオンソースから離れるようにイオンを加速するための引き出しパルスが加えられる以前にそこに移動するための、無電場領域(field free region)を有することを保証する。これは遅延引き出しまたはタイムラグフォーカシングとして公知である。別の例においては、図2の回路は、遅延引き出し質量分析計デバイスにおいて使用され得、パルス幅およびパルス繰り返し速度は、定常状態オペレーションにおいて定常状態バイアス電圧が、イオンソースエレメントから脱離されたイオンの初期イオン速度を遅延し、または削減するために十分であるように選定される。これは一部の状況において達成可能な分解能を改善することが示された。
【0037】
さらに、図2の回路が、イオン引き出しエレメント210がイオンソースエレメント204とイオン加速器エレメント216との間に置かれるような、イオン加速器エレメント216を含む質量分析計デバイスに使用されるときには、加速器エレメント216によって生成される加速場は、ソースと検出器との間の経路を規定する開口を含む、イオン引き出しエレメントの任意の開口を通じて侵入し得る。時には好ましくない、この侵入する場はソースとイオン引き出しエレメントとの間でイオンを加速し得る。このような構成においては、パルス特性、例えばパルス幅およびパルス周期は、定常状態オペレーション時に動的バイアス電圧がこの侵入する場を実質的に打ち消し、例えば、タイムラグフォーカシングに対して有用な無電場領域を生成するために十分であるように、選択され得る。
【0038】
代替案の実施形態においては、図2の回路、回路200は、抵抗器のようなインピーダンスエレメントを経由してイオン引き出しエレメント210と結合される、第2の電圧ソースをまた含み得る。この例においては、生成される動的バイアスはイオン引き出しエレメント210とイオンソースブロック204との間の全体の電位差を設定はしないが、しかし全電位差を調整するために使用され得る。
【0039】
本発明の実施形態は、TOF−MSのイオン光学エレメントのベースライン電位を生成するための既存の手法に対して、多数の利点を提供する。本発明の実施形態に従った手法によって、例えばTOF質量分析計のパルス引き出しエレメントのような、その電圧が動的に制御されるエレメントのベースライン電位を生成するために、例えば追加の電源または抵抗器ネットワークからの別の電位は必要でなくなる。このことは別の電源を所有する必要性を消去し、重要なコスト節約をもたらす。追加として、そうではなく、抵抗器分配器ネットワークがベースライン電位を生成するために使用されるときには、本発明の実施形態に従った手法は高電圧源から必要とされる電流を減らし、かくして追加のコスト節約をもたらす。追加として、第2の電源または抵抗分配器ネットワークがイオン光学エレメントのベースライン電圧を設定するために使用されるときには、本発明の実施形態に従った手法は、他の調整エレメントを必要とせずにその電位を変えるために使用され得、これもまたコスト節約をもたらす。
【0040】
従って、当業者によって理解されるように、例えば質量分析計のイオン光学エレメントのような、イオン光学エレメント上にDCバイアスを動的に生成し制御するために、パルス電圧を使用することに関する本発明は、その本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態において具体化され得る。例えば、回路エレメントに対して選定された特定の特性値は、イオン光学エレメントの間の任意の所望のバイアス値を提供するための任意の範囲を含み得る。従って、前述の開示は、本発明の範囲の例示のために意図されたものであって、それを制限するものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲において示される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、LDI−MSデバイスの実施形態のブロック図である。
【図2】図2は、波本発明の一実施形態に従った、第1と第2のイオン光学エレメントとの間にバイアス電圧を生成するための回路図である。
【図3】図3は、図2の第2のイオン光学エレメントに対する、電圧対時間のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電圧と、
該基準電圧と結合される第1のイオン光学エレメントと、
該第1のイオン光学エレメントと抵抗結合される第2のイオン光学エレメントと、
該第2のイオン光学エレメントと容量結合されるパルス発生器と
を備えるデバイスであって、
該パルス発生器は該第2のイオン光学エレメントに複数のパルスを加えるように構成され、該複数のパルスは制御可能なパルスパターンおよび制御可能なパルス形状を有し、その結果として定常状態オペレーションにおいて、該第1のイオン光学エレメントと該第2のイオン光学エレメントとの間に定常状態バイアス電圧が生成され、該バイアス電圧はパルス振幅の約0.1%よりも大きい、
デバイス。
【請求項2】
前記第1のイオン光学エレメントは、そこからイオンが脱離される、質量分析計のイオンソースエレメントであり、前記第2のイオン光学エレメントは該質量分析計のイオン引き出しエレメントである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第2のイオン光学エレメントは、1つ以上の抵抗器、コンデンサ、および/またはインダクタを含むインピーダンスエレメントにより、前記第1のイオン光学エレメントと結合される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記基準電圧は約0kVと約±30kVとの間の電圧レベルを提供するように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記バイアス電圧は前記パルス振幅の約1%よりも大きい、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記イオンソースエレメントに衝突する複数のレーザーパルスを生成するように構成されるレーザーソースをさらに備える、請求項2に記載のデバイスであって、
該レーザーパルスはレーザーパルス周期を有し、該レーザーパルス周期は、該複数のレーザーパルスのそれぞれが、前記パルス発生器のパルスの1つを加える前の最初の期間に前記イオンソースエレメントに衝突するように制御される、
デバイス。
【請求項7】
定常状態オペレーションにおいて、前記定常状態バイアス電圧が前記イオンソースエレメントから脱離されるイオンを遅延するために十分であるように、パルス幅およびパルス周期が選定される、請求項2に記載のデバイス。
【請求項8】
前記イオン引き出しエレメントが前記イオンソースエレメントと第3のイオン光学エレメントとの間に位置するような、該第3のイオン光学エレメントをさらに備える、請求項2に記載のデバイスであって、
定常状態オペレーションにおいて、前記定常状態バイアス電圧が、該イオンソースエレメントと該イオン引き出しエレメントとの間の領域内に該第3のイオン光学エレメントによって生成される任意の場のイオンへの影響を、実質的に消去するために十分であるように、パルス幅およびパルス周期が選定される、
デバイス。
【請求項9】
インピーダンスエレメントにより前記第2のイオン光学エレメントと結合される第2の電圧ソースをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
パルス幅およびパルス周期のうちの1つまたは両方が、自動的に調整可能である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記パルス発生器によって生成される前記パルスの振幅は約1kVと約5kVとの間である、請求項4に記載のデバイス。
【請求項12】
前記最初の周期は約0.01マイクロ秒と約10マイクロ秒との間の範囲内にある、請求項6に記載のデバイス。
【請求項13】
前記イオンソースエレメントから脱離されるイオンを検出する検出器をさらに備える、請求項6に記載のデバイス。
【請求項14】
前記制御可能なパルスパターンおよび制御可能なパルス形状は、パルス幅、パルス振幅、およびパルス繰り返し速度のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記パルス幅、パルス振幅、およびパルス繰り返し速度のそれぞれは、独立にかつ自動的に調整可能である、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
デバイスの中の第1のイオン光学エレメントと第2のイオン光学エレメントとの間に定常状態バイアス電圧を加える方法であって、
電圧源と、
該電圧源と結合される第1のイオン光学エレメントと、
該第1のイオン光学エレメントと抵抗結合される第2のイオン光学エレメントと、
該第2のイオン光学エレメントと容量結合されるパルス発生器と
を含むデバイスを提供することと、
該パルス発生器を使用して該第2のイオン光学エレメントに複数のパルスを加えることであって、該複数のパルスは制御可能なパルスパターンおよびパルス形状を有し、それらは定常状態オペレーションにおいて該第1のイオン光学エレメントと該第2のイオン光学エレメントとの間に定常状態バイアス電圧が生成されるように構成されることと
を包含する、方法。
【請求項17】
前記第1のイオン光学エレメントは、そこからイオンが脱離される、質量分析計のイオンソースエレメントであり、前記第2のイオン光学エレメントは該質量分析計のイオン引き出しエレメントである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記デバイスは、前記イオン引き出しエレメントが前記イオンソースエレメントと第3のイオン光学エレメントとの間に位置するような、該第3のイオン光学エレメントをさらに備え、
定常状態オペレーションにおいて、前記定常状態バイアス電圧が、該イオンソースエレメントと該イオン引き出しエレメントとの間の領域内に該第3のイオン光学エレメントによって生成される任意の場のイオンへの影響を、実質的に消去するために十分であるように、パルス幅およびパルス周期が選定される、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
最初の期間は約0.01マイクロ秒と約10マイクロ秒との間の範囲内にある、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記デバイスはレーザーパルス周期を有する複数のレーザーパルスを生成するレーザーソースをさらに含む、請求項17に記載の方法であって、該方法は、該複数のレーザーパルスのそれぞれが、前記パルス発生器のパルスの1つを加える前の最初の期間に前記イオンソースエレメントに衝突するように、レーザーパルスのタイミングを制御することをさらに包含する、方法。
【請求項21】
定常状態オペレーションにおいて、前記定常状態バイアス電圧が前記イオンソースエレメントから脱離されるイオンを遅延するために十分であるように、パルス幅、パルス周期、およびパルス振幅のうちの1つ以上が調整される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記制御可能なパルスパターンおよび制御可能なパルス形状は、パルス幅、パルス振幅、およびパルス繰り返し速度のうちの1つ以上を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記パルス幅、パルス振幅、およびパルス繰り返し速度のそれぞれは、独立にかつ自動的に調整可能である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
電圧ソースと、
該電圧ソースと結合される第1のイオン光学エレメントと、
該第1のイオン光学エレメントと抵抗結合され、開口を備える第2のイオン光学エレメントと、
該第2のイオン光学エレメントと容量結合されるパルス発生器と、
グランドと結合される第3のイオン光学エレメントと
を備えるデバイスであって、
該第2のイオン光学エレメントは該第1のイオン光学エレメントと第3のイオン光学エレメントの間に置かれ、該開口は電気的にシールドされていない、
デバイス。
【請求項25】
前記電圧ソースが前記第1のイオン光学エレメントに第1の電位を加え、前記第2のイオン光学エレメントと前記第3のイオン光学エレメントとの間に電場が生成され、それが充分に前記開口に侵入し、その結果として、該第1のイオン光学エレメントから脱離されたイオンが電位の影響を受ける、請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
前記パルス発生器は前記第2のイオン光学エレメントに対して、前記第1のイオン光学エレメントと第2のイオン光学エレメントの間に動的バイアスが生成されるような周期および継続時間を有する周期的なパルスを加え、該バイアスは前記電場に対して反対に作用し、その結果として、該第1のイオン光学エレメントから脱離されたイオンが電位の影響を受けない、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
電圧源と、
該電圧源と結合される第1のイオン光学エレメントと、
該第1のイオン光学エレメントと抵抗結合される第2のイオン光学エレメントと、
該第2のイオン光学エレメントと容量結合されるパルス発生器と
を有するデバイスの中の、第1のイオン光学エレメントと第2のイオン光学エレメントとの間に定常状態バイアス電圧を加える方法であって、該方法は、
該パルス発生器を使用して該第2のイオン光学エレメントに、制御可能なパルスパターンおよび制御可能なパルス形状を有する複数のパルスを加えることと、
定常状態オペレーションにおいて、該第1のイオン光学エレメントと該第2のイオン光学エレメントとの間に定常状態バイアス電圧が生成されるように、該パルスパターンおよび該パルス形状のうちの1つ以上を調整することと
を、包含する方法。
【請求項28】
前記制御可能なパルスパターンおよび制御可能なパルス形状は、パルス幅と、パルス振幅と、パルス周期またはパルス繰り返し速度とのうちの1つ以上を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記パルス幅と、パルス振幅と、パルス周期またはパルス繰り返し速度とのそれぞれは、独立にかつ自動的に調整可能である、請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−505455(P2008−505455A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519496(P2007−519496)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/023607
【国際公開番号】WO2006/014374
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(501497253)ヴァーミリオン インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】