説明

質量分析計のイオン源用の複数の入口を備えている試料抽出装置

【課題】 質量分析計による分析の前に、試料を混合するための新規な装置を提供する。
【解決手段】 本発明の装置は、周囲の圧力で動作するイオン源用の複数の入口を備えている試料抽出装置であって、第1のイオン入口ポートを有する第1の試料入口毛細管と、第2のイオン入口ポートを有する第2の試料入口毛細管と、イオン出口ポートを有する単一の試料出口毛細管とを備え、毛細管が、流体が流れるように接続され、ポートが、周囲の圧力でイオン源が動作中、周囲の圧力又はそれに近い圧力であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン源用の試料抽出装置に関する。より詳細には、本発明は、質量分析計で使用されるイオン源用の複数の入口を備えている試料抽出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析法(MS)と液体クロマトグラフィ(LC)の組み合わせは、化合物の分析に利用可能な方法のうち最も強力な方法の1つであり、化学、環境、薬学及び生物学の研究において広く利用されている。液体クロマトグラフィの場合、化合物の混合物を含む試料は、液体移動相で分離用カラムにポンプ作用で通される。試料混合物の成分は、分離用カラムの通過時に分離され、分離用カラムから次々に排出される。検出器が、分離用カラムの出口において流体流に接続され、分離用カラムからの排出時にそれらの成分を検出する。
【0003】
質量分析計において、化合物は、イオン化源において正又は負に帯電される。結果生じるイオンの質量は、イオンの質量/電荷(m/z)比を測定する質量分析計によって真空中で求められる。液体クロマトグラフィの検出器として使用される場合、質量分析計は、クロマトグラフによって分離される各化合物の分子量及び化学構造に関する情報をもたらすことができ、これにより混合物中の各成分を同定することが可能となる。
【0004】
多くの場合、単一の質量分析計を利用して、複数のLCカラム又は他の液相試料源から生じる複数の注入流を分析可能であることが望ましい。すなわち、試料内の検体の分子量をより正確に測定できるようにするため、分析前に、問題となる試料に、いわゆる「較正標準」、「基準質量標準」又は「内部標準」と呼ばれる既知の分子量の化合物を組み合わせることが望ましい場合が多い。例えばクロマトグラフィのシステムからの一次液体流の成分及び、基準質量標準を含む明確に同定できる液体流の成分を同時に分析することが望ましいことがある。しかしながらイオン化直前に2つの試料を混合することによって、望ましくない分析結果を生じる可能性がある。例えば試料中の一部の成分は、試料中の他の成分と反応するか、他の成分のイオン化を抑圧することがあり、試料が同じ種類ではない可能性があるので、試料輸送及びイオン化に予測できない影響を及ぼすことがあり、不相溶の試料を混合すると、成分の一部が沈殿するか、又は溶けなくなることがある。またイオン化源に入る液体流は、流量が大幅に異なる可能性があり、液体流を混合することによって、クロマトグラフ分離により得られる分解能が低下する可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明は、質量分析計による分析の前に、試料を混合するための新規な方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって、イオン源用の複数入口試料抽出装置又はイオン源用の複数の入口を備えている試料抽出装置を提供する。一般に試料抽出装置には、流体が流れるように接続されている2つの試料入口毛細管と単一の試料出口毛細管が含まれている。実施態様によっては、一方の入口毛細管の内径がもう一方の入口毛細管の内径よりも大きく、入口毛細管の太い方と出口毛細管が同軸をなすように整列されている。質量分析計のイオン源及び、複数の入口を備えている試料抽出装置を含む質量分析計のシステムもまた提供される。また本発明によって、質量分析計に対して少なくとも2つの試料を同時に注入する方法も提供する。本発明のさまざまな分析方法における利用が見出される。例えば、本発明は、化学、環境、法医学、食品、薬学及び生物学の研究において利用することができる。詳細には、本発明は、例えば、ペプチド質量指紋法又はペプチド質量分析法(PMF)及び蛋白質の塩基配列を決定する用途、無傷の無傷蛋白質の分析、蛋白質-蛋白質又は蛋白質-リガンド非共有複合体分析、オリゴヌクレオチド及び核酸分析を含む蛋白質消化の質量分析計による分析に利用することが可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、イオン源用の複数の入口を備えている試料抽出装置に関する。概して試料抽出装置は、少なくとも2つの試料入口毛細管と単一の試料出口毛細管からなり、これらの毛細管は全て流体が流れるように接続されている。複数の入口を備えている試料抽出装置を含む質量分析計のイオン源及び質量分析計システムもまた提供する。試料抽出装置は、質量分析計の真空を破ることなく、周囲の圧力において、容易に取り外し、取り付けられる。また質量分析器に少なくとも2つの試料を同時に導入するための方法が本発明によって提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明によって、イオン源用の複数入口試料抽出装置又はイオン源用の複数の入口を備えている試料抽出装置を提供する。一般に試料抽出装置には、流体が流れるように接続されている2つの試料入口毛細管と単一の試料出口毛細管が含まれている。特定の実施態様では、一方の入口毛細管の内径がもう一方の入口毛細管の内径よりも大きく、入口毛細管の太い方と出口毛細管が同軸をなすように整列されている。代替的な実施態様では、流量が等しいか又はほぼ等しい2つ又はそれ以上の試料流を個別に試料抽出するために、入口毛細管の内径及び長さの寸法が適切に選択される。質量分析計のイオン源及び、複数入口試料抽出装置を含む質量分析計のシステムもまた提供する。また本発明によって、質量分析計に対して少なくとも2つの試料を同時に注入する方法を提供する。
【0009】
本明細書に列挙する方法は、論理的に可能である列挙する事象の任意の順序及び、事象の列挙する順序で実施することが可能である。さらに、値の範囲がもたらされる場合には、その値の範囲の上限と下限の間にある全ての値、及びその提示された値の範囲内に提示された又は介在する他の任意の値が本発明内に包含されることが理解される。
【0010】
ただ単に本出願の提出日より前に開示されているということで、関連項目が提示される。これには、本発明が、先行発明に照らして、こうした要素に先行する資格がないことを承認するものとみなされるべき点は何もない。
【0011】
単一項目への言及には、同じ項目が複数存在する可能性が含まれる。すなわち本明細書及び付属の特許請求の範囲で使用されている限りにおいて、その文脈により、明らかに別段の指示がなされていなければ、単数形の「ある(「a」、「an」)」、「前記(「said」)」及び「その(「the」)」には複数の指示対象が含まれている。さらに特許請求の範囲は、いかなる任意の要素も排除するように作成することが可能であるという点に留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の範囲の列挙に関連して「単に(「solely」)」、「だけ(「only」)」のような排除する用語又は、「否定的(「negative」)」制限を利用するための根拠として役立つように意図したものである。
【0012】
複数の入口を備えている試料抽出装置
本明細書で説明する発明は、質量分析計用の複数噴霧器イオン源に利用可能な複数入口試料抽出装置又は複数の入口を備えている試料抽出装置に関する。概して云えば、試料抽出装置は、イオン源の一部であり、周囲圧力又はそれに近い圧力のイオン化源と周囲圧力よりも低い圧力の中間領域の間で、インターフェイスとして機能する。特定の実施態様において、複数の入口を備えている試料抽出装置は、例えば収集毛細管又は他のオリフィスを含む構成要素を介し、イオン源から質量分析計への輸送の前に、イオンの混合を容易にする。複数の入口を備えている試料抽出装置には、本明細書では「試料出口毛細管」と呼び、一つにまとめられて単一の毛細管を形成する複数の(すなわち少なくとも2つの)試料入口毛細管が含まれている。さらに詳細に後述するように、2つ又はそれ以上の試料が、入口毛細管に注入され(通常、毛細管毎に1つの試料)、試料は装置を介して輸送される際に混合され、周囲圧力に近いか又は、わずかに下回る圧力で単一の出口毛細管を介して排出される。出口毛細管の排出オリフィスは、イオン源内に設けることが可能であり、イオン源の動作中は、周囲圧力又はほぼ周囲圧力とすることができる。
【0013】
複数の入口を備えている試料抽出装置によって、噴霧干渉並びに、イオン化及び/又は非イオン化溶質と溶媒との間において可能性のある抑制的な分子相互作用を回避する試料の混合方法が可能になる。特定の実施態様においては、試料抽出装置を利用して、問題となる試料の量を顕著に増やすことなく、問題となるイオンを抑圧することなく、分析前にイオン化された試料中の問題となるイオンを著しく薄めることなく、試料(例えば、問題となる試料及び基準質量標準を含む試料)を混合することが可能である。さらに試料抽出装置は、質量分析計にガス抜きを施すことなく、周囲圧力で容易に設置される。したがって本発明では、関連する先行技術による試料抽出装置に関連したいくつかの問題が回避され、したがって分析技術に対して相当の貢献をすることになる。
【0014】
複数の入口を備えている試料抽出装置のさまざまな特徴については、図に関連して説明するのが最も容易である。当該技術者には明らかなように、複数入口試料抽出装置又は複数の入口を備えている試料抽出装置には、複数(すなわち、例えば3、4又は5又はそれ以上といったように2つを超える)試料入口毛細管を含むことが可能である。しかし説明を容易にするため、図に示す試料抽出装置は、2つの試料入口毛細管を備えている。図に示す試料抽出装置は、より多くの試料に対応するため、より多くの毛細管を設けるように簡単に改変することができる。図に示す試料抽出装置は、やはりマイクロフロー及びナノフローイオン化装置(例えば噴霧装置)に対応するように容易に改変することができる。
【0015】
図1Aには、質量分析計のイオン源用の典型的な複数の入口を備えている試料抽出装置を示す。図1Aに示す試料抽出装置には、第1の試料入口毛細管b及び第2の試料入口毛細管cと、単一の試料出口毛細管fが含まれている。各毛細管はそれぞれ、試料抽出装置の外側表面に単一のポート(すなわち開口部又はオリフィス)d、e及びgを備え、入口毛細管のポート(すなわちd及びe)を本明細書では入口ポートと呼び、出口毛細管のポート(すなわちg)を本明細書では出口ポートと呼ぶ。全ての毛細管の内腔が、領域hにおいて接続され、すなわち結合されて、毛細管の間で流体が流れるように連絡される。「流体が流れるように連絡される」とは、試料出口毛細管の出口を真空又は部分的に真空にすると、ガス又は流体(例えばイオン又は、荷電もしくは非荷電小滴のような小滴といった任意の同伴成分を含む)が、2つの試料入口毛細管の内腔に流入して、輸送され、試料出口毛細管の内腔に流入することが可能となるということを意味している。
【0016】
多くの実施態様では、毛細管はまっすぐであるが(すなわち湾曲、屈曲又は凹凸がなく、角度が付いていない)、他の実施態様では、毛細管は湾曲している。特定の実施態様において、第1の試料入口毛細管dが試料出口毛細管fと直列に同軸をなすように整列し、その結果第1の試料入口毛細管と試料出口毛細管によって、試料抽出装置の一方の側をもう一方の側に連絡する連続した線形の管が形成される(第2の試料入口毛細管がその管と結合する領域hを除いて)。第1の試料入口毛細管及び試料出口毛細管が同軸をなして直列である実施態様の場合、第2の試料入口毛細管は、一般に毛細管の長手軸に対して角度kをなして毛細管の接合部と結合する。角度kは一般に90°未満である。例えば角度kを15°〜60°とすることもでき、又は特定の実施態様では25°〜50°とすることも可能である。特定の実施態様では、入口毛細管は、複数の入口を備えている試料抽出装置内において結合し、出口毛細管は、例えば長さ0.2cm〜3cm又は0.3cm〜2cmというように、長さ0.1cm〜10 cmとすることができる。特定の実施態様では、入口毛細管を複数の入口を備えている試料抽出装置の表面で結合することも可能である。
【0017】
特定の実施態様において、第2の試料入口毛細管は、第1の試料入口毛細管よりも小さい内腔直径、すなわち内径を備え、したがって第1の試料入口毛細管よりもガス流量が少ない(毛細管の長さが等しい場合)。これらの実施態様において、第2の試料入口毛細管の内腔の直径は、第1の試料入口毛細管の内腔の直径の約70 %以下である。例えば、第2の試料入口毛細管の内腔の直径は、第1の試料入口毛細管の内腔の直径の約60 %未満、約50 %未満、約40 %未満、約30 %未満、約20 %未満又は約10 %未満であり、一般には約5%、10 %又は20 %を超える。したがって特定の実施態様では、第1の試料入口毛細管の内腔の直径が0.5mm〜0.8mmである場合、第2の試料入口毛細管の内腔の直径は、200 μm〜425μm又はそれ以下になる。特定の実施態様では、第1の試料入口毛細管の内腔が直径約0.8mmであり、第2の試料入口毛細管の内腔が直径約330 μm(22番径)又は410 μm(23番径)となる。
【0018】
第2の試料入口毛細管は、第1の試料入口毛細管の長さより長いか、短いか又は同じである。特定の実施態様では、第2の入口毛細管の長さは、第1の入口毛細管の長さの約30 %、約50 %、約70 %、約80 %、約90 %、約100 %又は約150 %である。
【0019】
使用時、第1及び第2の試料入口毛細管の内腔直径が異なるので、第1の試料入口毛細管に比べて、第2の試料入口毛細管のガス流量が小さくなる。多くの実施態様では、第2の試料入口毛細管のガス流量は、第1の試料入口毛細管の流量の約20 %未満であり、例えば約15%未満、約10 %未満、約5%未満、約3%未満、約2%未満であり、約1%を超える。例えば内腔直径が330 μm及び410 μmの第2の試料入口毛細管の流量は、どちらの場合にも第1の試料入口毛細管の長さが第2の試料入口毛細管の2倍であれば、内腔直径が約0.8mmの第1の試料入口毛細管の流量のそれぞれ約1/17及び約1/7になる。一般に、第2の試料入口毛細管の直径は、毛細管を通過するイオンを検出できない程度にまでガス流を制限することなく、最小限に抑えられる。特定の実施態様では、試料出口毛細管のガス流量が約0.5L/分及び約3L/分の場合もあるが、特定の用途によっては、通常より多くの又はより少ないガス流量を利用することができる。換言すれば、試料抽出装置の所望の用途にしたがって、毛細管の直径を調整することができる。複数の入口を備えている試料抽出装置に注入される試料の流量は異なることがあるので、それらの試料に対する入口毛細管の直径も異なることがある。例えば液体試料流の一方の流量がわずか20 nl/分であり、これに対してもう一方の液体試料流の流量は、ずっと多い、例えば300 nl/分といった場合があり得る。換言すれば、入口毛細管の内径及び長さは、注入試料流の流量に適応するように選択することが可能である。
【0020】
特定の実施態様では、第1の試料入口毛細管の内腔直径が、第2の試料入口毛細管の内腔直径と同じ場合があり、したがって毛細管の長さが同じであれば、それら毛細管を通過するガス流量は同じになる。
【0021】
特に問題となる特定の実施態様では、また複数の入口を備えている試料抽出装置が、少なくとも1つの向流乾燥ガスノズル、すなわち一般には加熱した超高純度窒素ガスである乾燥ガスをイオン源内の試料噴霧領域に供給して、試料の脱溶媒を助ける構成要素を含む。図2に例示するように、このようなノズルは、一般に、試料入口毛細管の入口に近接した位置に向かって乾燥ガス26を噴射する。特定の実施態様では、複数の入口を備えている試料抽出装置は、各試料入口毛細管毎に向流乾燥ガスノズルを備えている。しかしながら特定の他の実施態様では、第1の試料入口毛細管だけしか、向流乾燥ガスノズルと関連づけられないこともある。ノズルには、一般に、試料入口毛細管に対する入口を取り囲む内側要素又は「内側円錐体」及び、外側要素又は「外側円錐体」を含む。乾燥ガスは、ノズルを介して、入口毛細管におけるイオン流の反対方向(すなわち逆方向)に供給され、入口毛細管への注入前及び注入中に、試料の脱溶媒を助ける。図2に示す実施態様の場合、乾燥ガスは、両方の入口毛細管のすぐ外側の領域に供給される。試料が異なれば、脱溶媒を助けるために異なる程度の乾燥ガスが必要になるので、ノズルを介する乾燥ガスの流れは、ガス調節要素(例えばレストリクタ)を利用して調節される。特定の実施態様では、ガス調節要素を、ノズルに適合し、ノズルを介するガス流量を調節する有孔カラー(例えばボア、すなわち穴の開いたリング)とすることができる。ノズルを通過する乾燥ガスの量は、カラーを、例えば孔がより大きい、より小さい、より多い又はより少ない別のカラーと交換することによって変更することが可能である。各ノズルは、調節要素を備えることができ、複数の入口を備えている試料抽出装置の各ノズルにおける調節要素によって、試料抽出装置の各ノズルから異なる量の乾燥ガスを噴出させることができる。試料のイオン化がAPCI、APPI又は電子衝撃法を利用して行われる場合、他の方法によってイオン化される試料と比較して、イオン化された試料に供給される乾燥ガスを少なくすることができる。特定の実施態様において、脱溶媒を助けるため、向流乾燥ガスノズル以外の手段によって、複数の入口を備えている試料抽出装置の入口毛細管の1つ又はそれ以上(あるいは全て)の入口オリフィスに近接したイオン化領域に熱を適用することができる。したがって、試料は、向流乾燥ガス以外の方法で脱溶媒することができ、複数の入口を備えている試料抽出装置において任意の向流乾燥ガスノズルが不要となる。例えば本発明の特定の実施態様では、試料抽出装置に対して独立し、かつ試料小滴を含む領域に向けられた毛細管(例えば加熱することが可能な加熱セラミック又は石英管)によって、噴霧器によって生じる小滴に加熱乾燥ガスを供給することができる。これらの実施態様において、使用される噴霧器を、加熱窒素ガスを利用して試料を噴霧するエレクトロスプレーネブライザとすることができる。このようなネブライザの流量は、1ml/分又はそれ以上とすることができる。他の実施態様では、噴霧器によって生じる小滴に熱を放射することが可能であり(例えば石英赤外線(IR)ヒータを利用して)、したがって向流ノズルによって供給される乾燥ガスを必要とせずに、試料の脱溶媒が可能になる。したがって複数の入口を備えている試料抽出装置の各入口毛細管オリフィスは、向流乾燥ガスノズルと関連づけられるが、入口毛細管が向流乾燥ガスノズルと関連づけられていない試料抽出装置を、イオン源の構成要素として容易に利用することができ、動作させることができる。
【0022】
特定の実施態様では、複数の入口を備えている試料抽出装置の試料出口毛細管は、移送毛細管(図1Bの要素4として示す)のオリフィスへの接続に適応され、それによって移送毛細管の内腔は、試料出口毛細管の内腔と流体が流れるように接続されている。移送毛細管は、一般に、内腔直径が、複数の入口を備えている試料抽出装置の試料出口毛細管の内腔直径以下である。多くの実施態様では、移送毛細管の長さは、例えば約18cmである5cm〜30 cmの範囲の長さであり、イオンを輸送するように機能し、ほぼ周囲圧力6か又はわずかにそれを下回る圧力(約66.7kPa〜101.3kPa(約500〜760トル))の出口毛細管から、例えば133Pa〜1.33kPa(1〜10トル)の中間真空チャンバー2へと放出されるイオンクラスタの脱溶媒を助ける。したがって複数の入口を備えている試料抽出装置は、一般に、真空領域とは物理的に直接接続されていない。イオンは、移送毛細管に沿って輸送される際、試料出口毛細管を出て移送毛細管に入る際のほぼ周囲圧力から、移送毛細管を出る際の例えば267Pa〜400Pa(2〜3トル)である約1.33kPa(約10トル)未満までの圧力において小滴と遭遇する。イオン化された試料は、真空内ではなく、ほぼ周囲圧力か又はわずかにそれを下回る圧力において混合される。移送毛細管は、一般に、例えばガラスのような誘電体材料から形成されているが、例えば金属のような他の材料から形成された移送毛細管もまた想定される。さらに試料は移送毛細管を通過する時に脱溶媒することもできる。図2の要素27で示すように、特定の実施態様では、複数の入口を備えている試料抽出装置と結合した移送毛細管の端部に、金、白金、ロジウム又は適合する耐食性金属もしくは合金により被覆(例えばメッキ又はスパッタリング)を施すことができる。
【0023】
特定の実施態様では、移送毛細管の代わりに、複数の入口を備えている試料抽出装置をオリフィスを含む構成要素との接続に適応させ(すなわち接続可能にして)、出口毛細管の内腔がオリフィスと流体が流れるように接続し、イオン化された試料が、試料抽出装置を出ると、オリフィスを通過できるようにすることも可能である。複数の入口を備えている試料抽出装置は、質量分析システムのイオン源の壁面にあるオリフィスに接続可能とすることもできる。オリフィスを、例えば真空段である質量分析システムの第2のチャンバーからイオン源を分離する壁面に設けることができる。これらの実施態様の場合、イオンは、装置の出口毛細管を介して複数の入口を備えている試料抽出装置を出ると、オリフィスを通過し、第2のチャンバーに流入する。第2のチャンバーには、結果として検体イオンを濃縮し(より薄い溶媒イオン及びガスに対して)、イオン輸送手段をもたらすことになる(2つの隣接領域間における圧力差のため)スキマと、例えば多極イオンガイド等のような、第2のチャンバーを介してイオンを輸送するための他のイオン輸送装置が含まれる。これらの実施態様において、チャンバー壁は、二重壁のチャンバー又は「カーテンのかかった」チャンバーとすることができ、乾燥ガスは、壁間の空間にポンプ作用で送り込まれる。
【0024】
ノズルを含み複数の入口を備えている試料抽出装置の本体は、任意の適合する材料から形成されている。適合する材料は、一般に、非腐食性であり、ガス放出を生じることなく、中程度の熱、中熱に耐えることが可能である。適合する材料は、電極として機能可能であり、上述の仕様に合わせて製造される(例えば機械加工される)。したがって複数の入口を備えている試料抽出装置の本体は、ステンレス鋼又は超合金のような合金から製造可能であるが、他の材料も容易に利用することができる。例えば熱可塑性ポリイミドVESPELTM及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である高温絶縁体を利用して、極めて近接した電圧を絶縁することも可能である。試料入口及び/又は出口毛細管を、ステンレス鋼のような合金から製造することもできるが、電位によってイオンをそれぞれの入口に引き込むことが可能であれば、ガラスライニング(石英)を施したステンレス鋼、PEEK又は他の適合材料を利用することも可能である。
【0025】
複数の入口を備えている試料抽出装置の多くの特徴は、上述のように、イオン源の移送毛細管に関連して動作するように接続されるよう構成されているという点にある。したがって複数の入口を備えている試料抽出装置には、上述のように、例えば出口毛細管と移送毛細管が整列するように、試料抽出装置を移送毛細管にしっかりと嵌合、すなわちしっかりと結合する結合領域が含まれる。所望の場合には、試料抽出装置と移送毛細管の結合にシーリング要素を利用することができる。複数の入口を備えている試料抽出装置が使用される質量分析システムの動作中、出口毛細管の出口オリフィスは、周囲圧力に近いか又は周囲圧力をわずかに下回るので、複数の入口を備えている試料抽出装置は、複数の入口を備えている試料抽出装置(又はそれに取り付けられている任意の移送毛細管)が供給する装置に隣接した任意のチャンバーのガス抜きを行うことなく、取り外して再取り付けするか又は、第2の複数の入口を備えている試料抽出装置もしくは他の試料抽出装置と取り替えることが可能である。
【0026】
図3に示す典型的な実施態様及び配向において、複数の入口を備えている試料抽出装置は、全高が約2cm〜約4cmというように、約1cm〜約5cmであり、全幅が約2cm〜約4cmというように、約1cm〜約5cmであり、全奥行が約2cm〜約4cmというように、約1cm〜約5cmである。
【0027】
質量分析計イオン源
また本発明によって、複数の入口を備えている試料抽出装置を含む質量分析計イオン源を提供する。一般に、イオン源には、上述の試料抽出装置の各試料入口毛細管毎に噴霧器が含まれている。図1Bには、複数の入口を備えている試料抽出装置を含む典型的なイオン源を示す。図2は、複数の入口を備えている試料抽出装置が向流乾燥ガスノズルを含む点を除いて、図1に示すのと同じイオン源を示す。
【0028】
試料噴霧器は、当該技術において通常のものであり、一般に、ナノ噴霧器(流量が、例えば20〜80 nl/分又は100〜500 nl/分である約20〜500 nl/分)、マイクロ噴霧器(流量が、例えば4〜20 nl/分である約1〜50 nl/分)及び、流量がナノ噴霧器とマイクロ噴霧器の間の他の噴霧器を含む。典型的な噴霧装置(この用語は試料ネブライザを含む)は、ESI、APCI及びAPPIイオン源、並びに他の種々の形式のイオン源に見出される。特定の実施態様では、特に内径が75μmのLCカラムが使用される場合、試料抽出装置で利用される試料噴霧器の流量は、280〜320 nl/分とすることができる。また当該技術において周知のように、イオン源には、エレクトロスプレーイオン化(ESI)装置、大気圧化学イオン化(APCI)装置、大気圧光イオン化(APPI)装置、又はこれらを任意に組み合わせた装置(いわゆる「マルチモード」イオン化源が得られるようにするための)が含まれる。イオン化源には、任意の形式の試料噴霧器又は、異なる形式の試料噴霧器を結合したものを含む。問題となる噴霧器には、PICOTIPTM噴霧器、噴霧器ノズルが一体化されているマイクロ加工された「チップ」装置及び、マイクロフロー噴霧器が含まれる。他の特定の実施態様では、複数の入口を備えている試料抽出装置に、流量が20 μl〜5ml/分までの(例えば約1ml/分)よりも大流量の噴霧器が使用される。
【0029】
図1Bを参照すると、任意の適合するイオン化法を利用して、流体流中の試料がイオン化され、各流体流から生じるイオンが入口11及び12に流入する限り、相互に汚染されない、すなわち噴霧は交差しない。したがって試料噴霧器は、生じる噴霧間における相互汚染(すなわち噴霧干渉による何らかの物理的又は化学的な障害)を回避するように、互いに間隔があけられている。特定の実施態様では、噴霧器11及び12は、エレクトロスプレー法を利用して、イオン化する同軸空気圧ネブライザである。これらの噴霧器では、中空の針の端部における高電界勾配によって、流体流表面が、針を出る際に帯電され、大流量の不活性ガスが、針のまわりの外側中空管を通過し、液体の噴霧を助ける。他の可能性のあるイオン化方法には、大気圧化学イオン化法(APCI)、大気圧光イオン化法(APPI)及び誘導結合プラズマ(ICP)イオン化法が含まれている。
【0030】
図1Bに示すイオン源には、それぞれの入口毛細管の長手軸に対して約90°の角度で、すなわち長手軸に対して直交するように配置されている噴霧器8及び14を例示する。しかしながら当該技術において周知であるように、噴霧器を、例えば180°又は90°〜180°の間の任意の角度を含む他の角度で配向することも可能である(米国特許第6、649、908号明細書参照)。噴霧器は、その噴霧器用の入口毛細管の長手軸のまわりで回転させることができる。特定の実施態様では、噴霧器を試料入口毛細管の入口に直接向けることも可能である。
【0031】
またイオン源には、試料入口毛細管へのイオン移送を促進するように、1つ又はそれ以上の電極10が随意的に含まれる。電極電圧は、利用される試料抽出装置(及びそれに印加される電圧)及び、検討されるイオンの電荷(すなわちイオンが正に帯電されているか又は負に帯電されているか)によって大幅に異なることがある。このような電極は、当該技術において通常のものであり、本明細書ではこれ以上の詳しい記述は不要である。
【0032】
上述の特定の実施態様において、複数の入口を備えている試料抽出装置に、1つ又はそれ以上の入口毛細管のオリフィス(単数又は複数)(図2に矢印で表示された)に近接した領域に乾燥ガスを供給するためのノズルが含まれ得る。このような実施態様の場合、図2を参照すると、複数の入口を備えている試料抽出装置の外側要素28(「外側円錐体」)は、装置の内側要素29(「内側円錐体」)の電圧と異なる電圧とすることができる。正の帯電イオンを検討する場合、内側要素の電圧の大きさを外側要素の電圧よりも大きくする(例えば-400 V〜-600 V大きくするか、又は約-500 V外側要素の電圧よりも大きくする)。同様に、負の帯電イオンを検討する場合、内側要素の電圧の大きさを外側要素の電圧より大きくする(例えば+400 V〜+600 V大きくするか、又は、約+500 V外側要素の電圧よりも大きくする)。特定の実施態様において、利用される電圧の大きさは、例えば1.7 kV〜2.5 kVである1.3 kV〜3.0 kVの範囲とすることができる。内側要素及び外側要素は、互いに電気的に絶縁されている。電極が、向流乾燥ガスノズルを含む複数の入口を備えている試料抽出装置を備えているイオン源において使用される場合、一般に、電極は、ノズルの外側要素の電圧と同様か又は同じ電圧(すなわち検討するイオンの極性に基づき内側要素の電圧に対して±400 V〜600 V)で使用される。
【0033】
正の帯電イオンが問題となる場合、したがって、複数の入口を備えている試料抽出装置の入口オリフィスを、例えば-1.7kV-2.5kVとすることができ、それぞれの試料噴霧器は、接地電位又はそれに近い電位とされる。複数入口イオン源内において、1つ又はそれ以上の追加電極が使用される場合(例えば図1Bに示す装置の電極10)、それらの電極は、外側要素と同じ電圧か又はそれに近い電圧(例えば-1.3kV〜-2.1kV又は内側要素よりも大きさが約400〜600 Vボルト小さい電圧)とすることができる。同様に、負の帯電イオンが問題となる場合、複数の入口を備えている試料抽出装置の入口オリフィスを、例えば+1.7kV〜+2.5kVとすることができ、それぞれの試料噴霧器は、接地電位又はそれに近い電位とされる。複数入口試料イオン源内において、1つ又はそれ以上の追加電極が使用される場合(例えば図1Bに示す装置の電極10)、それらの電極は、外側円錐体と同じ電圧(例えば+1.3kV〜+2.1kV)又はそれに近い電圧、すなわち円錐体の内側要素よりも大きさが約400〜600ボルト小さい電圧とすることができる。代替的にはまた、噴霧器が高電圧(例えば1.5kV〜6.0 kVの大きさ)に保持され、入口毛細管が接地電位又はそれに近い電位に保持される逆電界構成を利用することができる。両方の構成によって、特定極性の帯電イオンを試料抽出装置の入口オリフィスに向けて移動させる正味電位差がもたらされる。
【0034】
図3は、本発明による複数の入口を備えている試料抽出装置の典型的な実施態様を示す。図3に示す装置には、上述のように第1の入口毛細管102、第2の入口毛細管104及び出口毛細管106が含まれ、要素107によって、例えば移送毛細管のようなオリフィスを含むもう1つの構成要素に接続するように適合されている。図3に示す試料抽出装置には、絶縁体要素111及び120によって互いに電気的に絶縁されている(互いに所定位置に保持されている)内側要素108(「内側円錐体」とも称する)と外側要素110(「外側円錐体」とも称する)が含まれている。第2の入口毛細管は、内側要素108と電気的に接続され、外側要素110から絶縁されている。第2の入口毛細管104は、外装114によって装置内の所定位置に保持されている。要素111及び120は、要素108及び114を包囲するとともにそれらを所定位置に保持するカラーとすることができる。参照番号118により示されているように、外装114には、乾燥ガスを通過させる少なくとも1つのアパーチャ(例えば孔)が含まれる。外装114は、特定の実施形態においてネジ又はネジと同様のものである取付要素112を介して試料抽出装置に取り付けることができる。外装114は、複数の入口を備えている試料抽出装置から取り外し可能であり、取り付け要素112によって試料抽出装置に再び取り付けることができる。異なる穿孔からなる入口毛細管を含む外装要素は、取り付け要素112を利用して、複数の入口を備えている試料抽出装置内で交換可能である。外装要素114は、例えば摩擦嵌合といった任意の形式の嵌合によって入口毛細管104に接続することができる。特定の実施態様では、外装114を金属とすることができ、外側要素110と電気的に接続することができる。これらの実施態様では、第2の入口毛細管104を、内側要素108と電気的に接続し、外装114から絶縁することができる。しかしながら代替的な実施態様では、要素114及び108は互いに電気的に接続される。
【0035】
使用に際して、上述のように、複数の入口を備えている試料抽出装置の外側要素110は、イオンを入口毛細管に選択的に吸引するために、内側要素108の電圧よりも高い又は低い(例えば400 V〜600 Vだけ高い又は低い)電圧に保たれる(検討するイオンにしたがって)。矢印によって示すように、乾燥ガス116は、試料抽出装置に流入し、伝導要素を介して、入口毛細管のオリフィスにごく隣接する位置から試料抽出装置を出る。特定の実施態様において、絶縁要素111には、第1の入口毛細管のオリフィスへのガスの流れを許す(及び調節する)穿孔(すなわち構成要素の一方の側からもう一方の側に通じる穴又は開口)が含まれる。乾燥ガス116は、1つ又はそれ以上の穿孔(すなわち穴)118を介して毛細管104と外装114の間の空隙に流入し、入口毛細管104のオリフィスから流出する。
【0036】
質量分析システム
本発明によって、上述のイオン源を含む質量分析システムを提供する。図4に、典型的な質量分析システムを示す。概して云えば、質量分析システムには、上述のように、少なくとも2つのイオン化装置42及び46と複数入口試料抽出器装置50を含むイオン源44、並びに質量分析器58が含まれている。当該技術における従来のやり方で、イオン源及び質量分析器は、イオンが上述の移送毛細管52を介して(又は代替的な実施態様では、チャンバーを分離する壁面の開口を介して)イオン源44から送り込まれる1つ又はそれ以上の中間真空チャンバー54によって分離されている。また当該技術における従来のやり方で、中間真空チャンバーには、高真空の質量分析器58に通じるイオン移送光学素子(例えばイオンガイド等)に入る前に、移送毛細管を出るイオンビームに含まれる検体イオンを濃縮する(溶媒イオン及びガスに対して)スキマ56が含まれている。
【0037】
飛行時間(TOF)、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)、イオントラップ、四重極又は二重収束型磁場電場型質量分析器、又はそれらの任意の混成体を含む種々の異なる質量分析器を、上述のシステムの一部とすることが可能である。
【0038】
特定の実施態様では、質量分析システムのイオン源を、試料噴霧器に液体流を供給するための装置40及び48に接続することができる。多くの実施態様では、それらの装置の少なくとも1つは、高性能液体クロマトグラフ(HPLC)、マイクロ又はナノ液体クロマトグラフ及び超高圧液体クロマトグラフ(UHPLC)装置を含む液体クロマトグラフ(LC)、細管電気泳動(CE)又は細管電気泳動クロマトグラフ(CEC)装置のような分析用分離装置であるが、任意の手動もしくは自動注入、又は計量分配ポンプシステムを利用することが可能である。特定の実施態様では、例えばナノポンプ又はマイクロポンプによって液体流を供給することができる。
【0039】
使用に際して、イオン源44は周囲圧力に保持され、中間チャンバー54は周囲圧力より約2桁低い圧力に保持され、質量分析器58は中間チャンバーより約2〜4桁低い圧力に保持される。第1及び第2の試料噴霧器42及び46から放出されるイオンはそれぞれ、複数の入口を備えている試料抽出装置の第1及び第2の試料入口毛細管61及び63に向けられるか又は、吸引されて、それぞれの毛細管に入り、複数の入口を備えている試料抽出装置内において、周囲圧力又はそれに近い圧力で混合され、試料出口毛細管65を介して試料抽出装置(周囲圧力に近いか又はそれよりわずかに低い圧力)から出る。混合イオンは、移送毛細管52に入り、イオン源44と真空チャンバー54との圧力差に起因するガス流によって第1の真空チャンバー54に送り込まれる。イオンは、移送毛細管52を出て、スキマ56(及び存在する任意のイオンガイド、イオンビーム整形及び集束レンズ)を通過し、質量分析器58に集束され、送り込まれる。質量分析器58は、イオンのm/z比を求め、したがって試料中における検体の分子量を求めるのに役立つ。
【0040】
典型的な実施態様では、問題となる試料を含む第1の液体は、LCのような分析用の分離装置によってイオン源の第1の試料噴霧器42に供給される。例えば有機溶媒である適切な溶媒に溶解している基準質量標準を含む第2の液体が、ポンプ作用で連続して第2の試料噴霧器46に送られる。両方の液体が、連続流として、それぞれの試料噴霧器に供給され、それによってイオン化される。先に議論したように、第1及び第2のイオン化された試料がそれぞれ、第1及び第2の試料入口毛細管61及び63に流入し、複数の入口を備えている試料抽出装置又は複数入口試料抽出装置50において混合され、移送毛細管52及びスキマ56を介して第1の真空チャンバー54に送り込まれ、存在する可能性のあるイオンガイド及び/又は任意のビーム整形光学素子を介して輸送され、その後質量分析計58によって分析される。寸法の異なる試料入口毛細管を含む複数の入口を備えている試料抽出装置が利用される場合、一般に、基準質量標準を含む試料が、2つの毛細管のより小さいほうに流入する。
【0041】
本発明は、試料質量分析の方法において利用が見出され、この場合、試料は任意の液体材料(可溶化固形物又は溶存固形物を含む)又は、必ずしもそうとは限らないが、一般に、溶媒に溶解している材料の混合物とすることができる。一般に、試料には、1つ又はそれ以上の問題となる成分が含まれている。食品及び環境材料や、制限するわけではないが、例えば血漿、漿液、脊髄液、精液、リンパ液、皮膚の外部切片、気道の外部切片、腸管の外部切片、尿生殖路の外部切片、涙液、唾液、乳液、血液細胞、腫瘍、臓器、さらに試験管内細胞培養成分の試料(制限するわけではないが、細胞培地内の細胞の成長から結果生じる馴化培地、ウイルス感染したと推定される細胞、組替え細胞及び細胞成分を含む)又はそれらの任意の生化学断片を含む被検体(例えば植物又は動物被検体)から分離された組織又は体液のような生物学的試料のような、さまざまな原料から試料を取り出すことが可能である。また「試料」という用語には、較正標準又は基準質量標準を含む試料も含まれている。
【0042】
多くの実施態様では、この方法に、a)上述のように、複数の入口を備えている試料抽出装置及び各入口毎の試料噴霧器を含むイオン源において、少なくとも2つの試料をイオン化するステップと、b)イオン化されたイオン化試料を入口毛細管に注入するステップと、c)ほぼ周囲圧力の試料抽出装置内でイオン化された試料を混合するステップと、d)移送毛細管又は、例えばチャンバー壁のオリフィスである他の手段を介して、例えば中間真空チャンバーである第2のチャンバーに混合されたイオン化試料を同時に注入するステップが含まれている。
【0043】
本発明によれば、問題となる試料に基準質量標準を直接添加することができるので、問題となる試料内の成分の分子量及び断片の質量を高い確度で求めることが可能になる。したがって本発明は、ペプチド又は蛋白質消化物の複雑混合物の分析、無傷蛋白質又はその複合体の分析、核酸分析等を含むさまざまな質量分析測定に利用することができる。特定の実施態様では、基準質量標準は、市販のナノ流体送出モジュール(例えばシリンジポンプ)を使用して、約0.1〜1マイクロモル濃度の範囲の濃度で、単独で又は混合物として供給される(例えば送り出される又は噴霧される)。
【0044】
一実施態様では、300 nl/分の流量による蛋白質消化物のナノスプレー分析には、Zorbax 300SB-C18(3.5μm、50×0.075mm内径)毛細管カラムを利用することが可能であり、4.5μl/分(マイクロフロー)流量による同じ分析には、Zorbax 300SB-C18(5μm、250×0.3mm内径)毛細管カラムを利用することが可能である。
【0045】
キット
本発明に関して利用されるキットもまた提供される。このようなキットには、上述のような、複数の入口を備えている試料抽出装置を含む構成体の任意のものが含まれる。またキットには、複数噴霧器イオン源に複数の入口を備えている試料抽出装置を取り付ける指示、複数噴霧器イオン源を複数の入口を備えている試料抽出装置で改装する指示又は、上記方法のうち任意のものを実施するための指示を含み、指示は、一般に、例えばキットに関連した1枚又はそれ以上の紙である被印刷物上に記されている。またキットには、特定の実施態様において、混合物として又は独立したバイアル中に存在する1つ又はそれ以上の基準質量標準が含まれる。
【0046】
上述のコンポーネント以外に、さらにキットには、キットのコンポーネントを利用して、その方法を実施するための指示が含まれる。例えば、基準質量標準に関する情報(例えば化合物の分子量又は化合物の同一性)が含まれる。
【0047】
方法を実施するための指示は、一般に、適切な記録媒体に記録される。例えば、指示は、紙又はプラスチック等のような被印刷物に印刷することができる。したがって指示は、パッケージ挿入物として、キット又はそのコンポーネントの容器のラベル表示(すなわちパッケージ又はサブパッケージに関連した)等の形でキット内に存在する。他の実施態様では、指示は、例えばCD-ROM、ディスケット等の適合するコンピュータ可読記憶媒体に納められている電子記憶データファイルとして存在する。さらに他の実施態様では、キットには実際の指示が存在しないが、例えばインターネットを介して、遠隔情報源から指示を得るための手段が提供される。この実施態様の一例が、ウェブアドレスを含むキットであり、指示を見ることもできるし、及び/又はそこから指示をダウンロードすることもできる。指示と同様、指示を得る手段も、適切な被印刷物に記録される。
【0048】
実験結果
下記の例は、本発明の実施態様のいくつかを構成し、利用する方法を、通常の当該技術者に説明するために提示するものであって、発明者が発明であるとみなすものの範囲を制限することを意図したものではない。
【実施例】
【0049】
例1
図5は、大気圧ナノエレクトロスプレーイオン化源(改良されたアジレントG1982B)及び飛行時間質量分析器(アジレントG1969 API-TOF)と関連して複数の入口を備えている試料抽出装置を利用することによって得られた典型的な正イオンモードの結果を示す。上のグラフは、50フェムトモルのウシ血清アルブミン(BSA)トリプシン消化物の分析から得られたいくつかの抽出ペプチドイオンを同定する基準ピーククロマトグラムである(Michrom Bioresources、カリフォルニア州オーバーン)。凍結消化物は、利用前に、0.1%の蟻酸を含む95:5(v/v)の水/アセトニトリル内で元に戻された。
【0050】
アジレントテクノロジ1100シリーズのナノフローLCシステム(アジレント、デラウェア州リトルフォールズ)によって、溶媒供給及び分離を行った。50フェムトモルのBSA消化物を、粒径が3.5μmで、孔径が30 nm(300 Å)の、30 ℃に保たれたZorbax 300SB-C18カラム(50×0.075内径)(アジレント)に装入した。300 nl/分で流れる、移動相A(0.1%(v/v)の蟻酸を含む水)において平衡化した後、0.1%(v/v)の蟻酸を含むアセトニトリルから構成される移動相Bを利用して、6分間にわたり、洗浄して、5%Bで平衡化し、20 %Bに進み、次に19分にわたって上昇させて65%Bとし、10分間持続し、さらに10分間にわたって上昇させて80 %Bとする勾配溶離によってカラムからペプチドを溶離した。その後カラムを5%移動相Bで再び平衡化した。
【0051】
LC溶出物を、噴霧器1によって一次入口のすぐ近くに導入した。噴霧器1及び一次入口は、図1A及び図1Bに示す装置の第1の試料噴霧器及び第1の入口毛細管に相当する。95:5(v/v)のアセトニトリル/水に2つの基準質量水準を含む溶液(濃度0.1〜1.0 μM)を、噴霧器2によって二次入口のすぐ近くに導入した。噴霧器2及び二次入口は、図1A及び図1Bに示す装置の第2の試料噴霧器及び第2の入口毛細管に相当する。Cole-Parmer 74900シリーズのシリンジポンプ(イリノイ州ヴァーノンヒルズ)を利用して、基準質量溶液を100 nl/分の低流量で注入した。噴霧器1及び2は、部品番号FS360-50-8-D-5の先端内径が8μmの溶融石英PicotipTMエミッタ(New Objective、マサチューセッツ州ウォバーン)を利用した。
【0052】
中央のグラフは、16.75分で溶離するBSAトリプシンペプチド、すなわちアミノ酸配列KVPQVSTPTLVEVSRを有する残留物A(437-451)の質量スペクトラムである。547.3183で表示されているピークは、単一同位体分子イオンのペプチドの測定(すなわち観測)質量を表わしている。理論(すなわち計算)値を括弧内に示す。質量スペクトラムに表示されている他の2つのピークは、理論質量がそれぞれ、m/z 1221.9906及びm/z 2421.9140の基準質量イオンに対応する。基準イオン質量測定値は、データシステムによって、一般に、質量軸の較正を実時間で調整するために利用される。下のグラフは、+3帯電状態の同じBSAトリプシンペプチドA(437-451)の分子イオングラフを10、000の分解能で示す。
【0053】
図6は、複数レベル(縦欄の5〜250フェムトモル)で分析した+3帯電状態のBSAトリプシンペプチドA(437-451)の分子イオンの最初の4つの同位体ピークに関する質量測定誤差(ppm単位)の表を示す。上述のように、複数の入口を備えている試料抽出装置と、大気圧ナノエレクトロスプレーイオン化源(改良されたアジレントG1982B)及び飛行時間質量分析器(アジレントG1969 API-TOF)を併用して、試料の分析を行った。
【0054】
図7は、複数の入口を備えている試料抽出装置と、大気圧ナノエレクトロスプレーイオン化源及び飛行時間質量分析器を併用することにより、複数の濃度レベルのBSA消化物を分析して得られた典型的な結果を示す。BSA消化物を、250、100、50、20、10及び5フェムトモルで分析したが、質量測定誤差(ppm単位)を、マサチューセッツ州ケンブリッジのMillenium Pharmaceuticalsから入手可能な自動スペクトルデータ抽出ソフトウェア及び蛋白質データベース探索ツール(SPECTRUMMILLTM)によって同定されたいくつかのトリプシンペプチドに関する表に報告する。
【0055】
注:250 fmレベルのBSAトリプシン消化物分析の場合、3つのペプチドに関する質量測定誤差値は、SPECTRUMMILLTMソフトウェアによって報告されていないが、ペプチドは、試料中において検出可能レベルである。欠測ペプチドの分子イオンは、手動で抽出され、下記の表のように報告される。
【0056】
【表1】

【0057】
この分子イオン種に関する大きい質量測定誤差は、2つの要因、すなわち低いm/zにおける決して最適とはいえない質量軸補正及び高い帯電状態(+4)による可能性が最も高い。
【0058】
ポリジメチルシクロシロキサン(5-mer)が、一般的な系の背景混入物であり、そのイオン(m/z 371.101233)を2つの基準質量標準と併用して(噴霧器2によって第2の入口毛細管に同時に注入して)、データ収集中に質量軸を調整した。この場合、混入物による弱い信号によって、低いm/zにおける質量測定値の正確さが低下した。本明細書で説明するように、1つ又はそれ以上の中質量から高質量の基準質量標準と共に、低質量の基準質量標準を同時に注入することにより、一般に、質量範囲全体にわたって質量測定の正確さが結果として向上した。
【0059】
図7を参照すると、50 fmレベル以下のペプチドの分子イオンに関する他の報告されていない質量測定値は、それらの信号が実際の検出限界未満であることに起因するものと考えられる。
【0060】
図8は、大気圧ナノエレクトロスプレーイオン化源(改良されたアジレントG1982B)及び飛行時間質量分析器(アジレントG1969 API-TOF)と併用して、複数の入口を備えている試料抽出装置を利用することによって得られた典型的な負イオンモードの結果を示す。100 ugの凍結ウシインスリン酸化B鎖が、Sigma-Aldrich Fine Chemicals(ミズーリ州セントルイス)から得られ、0.1%の蟻酸を含む95:5(v/v)の水/アセトニトリル内で元に戻された。アジレントテクノロジ1100シリーズのナノフローLCシステム(アジレント、デラウェア州リトルフォールズ)によって、溶媒供給及び分離を行った。1.0ピコモルのペプチドを、粒径が3.5μmで、孔径が300 Åの、30 ℃に保たれたZorbax 300SB-C18カラム(50×0.075mm内径)(アジレント、デラウェア州リトルフォールズ)に装入した。300 nl/分で流れる移動相A(0.1%(v/v)の蟻酸を含む水)において平衡化した後、0.1%(v/v)の蟻酸を含むアセトニトリルから構成されている移動相Bを利用して、5分間にわたり、洗浄して、10 %Bで平衡化し、15分にわたって上昇させて65%Bとし、5分間持続し、さらに上昇させて80 %Bとし、10分間持続する勾配溶離によってカラムからペプチドを溶離した。その後カラムを10 %移動相Bで再び平衡化した。LC溶出物及び基準質量溶液を、先に説明したやり方と同じやり方で注入した。
【0061】
上のグラフは、12、500の分解能による-2帯電状態のペプチドの分子イオングラフである。下のグラフは、-2及び-3帯電状態の分子イオンの最初の4つの同位体ピークに関するペプチド質量測定誤差(ppm単位)の表から構成されている。
【0062】
対応する中性基準質量標準に対して蟻酸を付加することによって形成された2つの基準質量負イオン(理論質量m/z 1265.9816及びm/z 2465.9049)を、先に説明したように、データシステムによって質量軸較正を実時間で調整するために利用した。
【0063】
上記結果及び議論から明らかなように、本発明によって、質量分析のために試料を混合するための重要な手段が提供される。したがって本発明は当該技術に大いに貢献する。
【0064】
本明細書において言及する全ての刊行物及び特許は、個々の刊行物又は特許のそれぞれが、具体的に個別に指示されて、参照することにより取り込まれるように、本明細書において参照することによりその内容を全て取り込む。どの刊行物についての言及も、提出日に先立って開示されたという理由によるものであり、本発明が、先行発明に照らして、こうした刊行物に先行する資格がないことを承認するものとみなされるべきではない。
【0065】
本発明の説明を、その特定の実施態様に関連して行ってきたが、当該技術者には明らかなように、本発明の真の精神及び範囲を逸脱することなく、さまざまな変更を加え、同等物に置き換えることが可能である。さらに特定の状況、材料、合成物、プロセス、1つ又は複数のプロセスのステップを本発明の目的、精神及び範囲に適応させるために、多くの修正を加えることも可能である。このような全ての修正は、添付の特許請求の範囲の記載内に含まれることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1A】本発明の特定の実施態様によるイオン源の複数の入口を備えている試料抽出装置及び他の構成要素の断面図である。
【図1B】本発明の特定の実施態様によるイオン源の複数の入口を備えている試料抽出装置及び他の構成要素の断面図である。
【図2】本発明の特定の他の実施態様によるイオン源の複数の入口を備えている試料抽出装置及び他の構成要素の断面図である。
【図3】本発明の特定の実施態様による複数の入口を備えている試料抽出装置の断面図である。
【図4】本明細書で説明するイオン質量分析のシステムの一実施形態を概略的に示す図である。
【図5】本明細書で説明する発明を利用して得られた典型的な結果を示す図であり、上は基準ピーククロマトグラフグラフ、中は質量スペクトラム、下は分子イオングラフを示す図である。
【図6】本明細書で説明する発明を利用し、ナノエレクトロスプレーLC/API-TOFによって複数のレベルで分析された、+3帯電状態のBSAトリプシンペプチドA(437-451)の分子イオンの最初の4つの同位体ピークに関する典型的な質量測定誤差結果を示す図である。
【図7】本明細書で説明する発明を利用し、ウシ血清アルブミン(BSA)トリプシン消化物の複数レベルのナノエレクトロスプレーLC/API-TOF分析について得られた典型的なペプチド質量測定結果を示す図である。ペプチドイオン抽出、同定及び質量測定結果を、市販の自動質量スペクトルデータ処理ツール及び蛋白質データベース探索ソフトウェアを利用して得た。
【図8】本明細書で説明する発明を利用し、負イオンモードにおけるインスリン酸化B鎖のナノエレクトロスプレーAPI-TOF分析に関する典型的な結果を示す分子イオングラフ及び表である。
【符号の説明】
【0067】
4 移送毛細管
8 噴霧器
10 追加電極
11 入口
12 入口
14 噴霧器
102 第1の入口毛細管
104 第2の入口毛細管
106 出口毛細管
108 内側円錐体
110 外側円錐体
111 絶縁体
112 ネジ
114 外装
116 乾燥ガス
118 穿孔
120 絶縁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の圧力で動作するイオン源用の複数の入口を備えている試料抽出装置であって、
第1のイオン入口ポートを有する第1の試料入口毛細管と、
第2のイオン入口ポートを有する第2の試料入口毛細管と、
イオン出口ポートを有する単一の試料出口毛細管とを備え、
前記毛細管が、流体が流れるように接続され、前記ポートが、周囲の圧力で前記イオン源が動作中、周囲の圧力又はそれに近い圧力であることを特徴とする試料抽出装置。
【請求項2】
前記試料抽出装置が、移送毛細管に接続するように適合されている請求項1に記載の試料抽出装置。
【請求項3】
前記試料抽出装置が、前記イオン源の壁部の開口に接続するように適合されている請求項1に記載の試料抽出装置。
【請求項4】
前記第2の試料入口毛細管の内径が、前記第1の試料入口毛細管の内径よりも小さい請求項1に記載の試料抽出装置。
【請求項5】
さらに前記試料入口毛細管の少なくとも一方のための向流乾燥ガスノズルを備えている請求項1に記載の試料抽出装置。
【請求項6】
質量分析計のイオン源であって、周囲の圧力で動作するものにおいて、
複数の入口を備えている試料抽出装置を備え、この試料抽出装置が
第1のイオン入口ポートを有する第1の試料入口毛細管と、
第2のイオン入口ポートを有する第2の試料入口毛細管と、
イオン出口ポートを有する単一の試料出口毛細管を備え、
前記毛細管が、流体が流れるように接続され、前記ポートが、前記イオン源の動作中、周囲の圧力又はそれに近い圧力であり、
前記第1及び第2のイオン入口ポートに近接した位置において、前記イオン源に試料を供給するための第1及び第2の噴霧装置を備えていることを特徴とする質量分析計のイオン源。
【請求項7】
前記イオン源が、エレクトロスプレーイオン化(ESI)装置、大気圧化学イオン化(APCI)装置、大気圧光イオン化(APPI)装置又は、誘導結合プラズマ(ICP)イオン化装置である請求項6に記載の質量分析計のイオン源。
【請求項8】
a)複数の入口を備えている試料抽出装置を含むイオン源であって、
第1のイオン入口ポートを有する第1の試料入口毛細管と、
第2のイオン入口ポートを有する第2の試料入口毛細管と、
イオン出口ポートを有する単一の試料出口毛細管を備え、
前記毛細管が、流体が流れるように接続され、前記ポートが、前記イオン源が周囲の圧力で動作中、周囲の圧力又はそれに近い圧力であり、
前記第1及び第2のイオン入口ポートに近接した位置において、前記イオン源に試料を供給するための第1及び第2の噴霧装置を備えているイオン源と、
b)前記出口毛細管と流体が通じるオリフィスと、
c)質量分析計と
を備えていることを特徴とする質量分析システム。
【請求項9】
前記質量分析器が、飛行時間質量分析器、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)質量分析計、イオントラップ質量分析計、四重極質量フィルタ又は、それらの任意の混成体である請求項8に記載の質量分析システム。
【請求項10】
質量分析器に少なくとも2つの試料を導入するための方法であって、
a)イオン源において少なくとも2つの試料をイオン化し、
b)複数の入口を備えている試料抽出装置に前記イオン化された試料を導入し、
c)混合試料が得られるように、前記試料抽出装置内において、周囲の圧力又はそれに近い圧力で前記イオン化された試料を混合し、
d)周囲の圧力又はそれに近い圧力で、前記複数の入口を備えている試料抽出装置から前記混合された試料を放出し、
e)前記混合された試料を質量分析器に導入する
ことを特徴とする方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−86124(P2006−86124A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264627(P2005−264627)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】395 Page Mill Road Palo Alto,California U.S.A.
【Fターム(参考)】