説明

質量分析計のバックグラウンドノイズを低減するための構成要素

新規な構成要素は、質量分析システムにおいて準安定性エンティティのボンバードにより生成された二次イオンによって生じるバックグラウンドノイズを低減する。出口電極および偏向板の層状構造は、局所の低いエネルギー井戸に二次イオンを閉じ込め、二次イオンが検出器に入るのを阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析計に関する。特に、本発明は、質量分析計において中性の準安定性エンティティ(準安定性物質)により生じるバックグラウンドノイズ(背景雑音)を低減するための方法および装置を提供する。より具体的には、機器の構成要素は、準安定性エンティティが構成要素にボンバードすることにより生じた二次イオンを捕捉(トラップ)することに関して説明される。
【0002】
背景情報
質量分析計は、電場および磁場を通じてイオン質量/電荷比でイオン軌道の依存性を利用する分析技術である。一般に、成分イオンの存在率(prevalence)は、質量/電荷比の関数として測定され、そのデータは物理的サンプルの質量スペクトルを生成するために集められる。例えば、質量スペクトルは、正体のわからない化合物を特定するために、既知の化合物における元素の同位体組成を求めるために、化合物の構造を解明するために、及び較正された標準を用いてサンプルの化合物を定量化するために有用である。
【0003】
質量分析計による分析は、一連の3つの成分プロセスを必要とし、当該プロセスのそれぞれは、幾つかのタイプのデバイスの任意の1つにより実施され得る。第1に、イオン源は、サンプルを成分イオンに変化させる。第2に、イオン源から出た後、バラバラにされたサンプルの荷電種は、質量分析器において質量/電荷比による仕分け(分類)を受ける。最後に、分類されたイオンが検出器のチャンバに入り、そのチャンバにおいて検出器が各分離されたイオン部分量を、その相対存在量を示す信号に変換する。質量分析計を構成するように組み立てられた特定のイオン源、質量分析器、及び検出器の特性は、機器の能力を特定のサンプルタイプの分析または特殊なデータの取得に適応される。
【0004】
幾つかの用途の場合、質量分析計による分析は、質量分析器におけるイオン化の前に、サンプルを成分に分離する他の分析技術と組み合わせることにより、強化され得る。例えば、一般的な強化において、ガスクロマトグラフは、サンプルが質量分析計のイオン源に遭遇する前にサンプルを構成成分に分離して、比較的低い分子量の化合物の区別を改善する。この構成は、ガスクロマトグラフ質量分析計(「GC/MS」)と呼ばれ、特に環境分析、並びに薬物、火、及び爆発物の調査において未知のサンプルを特定するために広く使用されている。
【0005】
ガスクロマトグラフの分離能力により、GC/MSは、質量分析計のアセンブリを単独で使用する際に可能である確実性よりもはるかに大きな確実性で物質を特定することが可能になる。しかしながら、不活性キャリアガスのその必然的な使用は、バックグラウンドノイズの形態で分析の困難ももたらす。
【0006】
ヘリウムのような不活性キャリアガスの幾つかの原子は、例えば、イオン源における電子衝撃に起因して、又は集束要素により加速されたヘリウムイオンとの衝突により、質量分析計においてより高いエネルギーの準安定状態に励起される。一般的なヘリウムの準安定状態、例えば2は、約20eVのエネルギーレベルを有し、数秒間存続することができる。
【0007】
準安定原子は荷電されず、従って任意のイオン光学系により集束されない。それらは、見通し線経路に沿って進み、それらの経路における器具構成要素にボンバードする傾向がある。衝突は、ペニング電離として知られるプロセスにより二次イオンを生成し、それによりイオン化が、励起された準安定状態の原子と二次イオン源との間のポテンシャルエネルギーの移動に起因して生じる。二次イオン源は主として、構成要素の表面上の汚染物質(例えば、炭化水素)(ポンプオイルから、サンプルの残留物、及び減圧雰囲気から生じる)であると考えられる。
【0008】
イオン源において、又は分析器の上流部分においてのような、物質の流れの初期に生じた二次イオンは、分析器により分類されるべき機会を有し、それらの化学成分および構造の標本として検出器によりカウントされる。しかしながら、その代わりに二次イオンが、検出器チャンバをゲーティングするイオン集束レンズに衝突することにより、又は検出器チャンバ自体においてのように、分析器からの出口の近くで生じる場合、二次イオンは分析器により解明されることができない。これら後の方で生じた二次イオンが検出器に入る場合、それらは非常に不規則にふるまい、バックグラウンドノイズを生じる。準安定ヘリウム原子は、ヘリウムのキャリアガスを使用するGC/MSシステムの主要なノイズ源である。
【0009】
また、二次イオンは、例えば、誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、又は液体クロマトグラフィー質量分析計(「LC/MS」)及び大気圧または減圧でサンプルをイオン化する他の手法によりもたらされる他の元素の励起された中性粒子によっても生成され得る。
【0010】
発明の概要
本発明は、質量分析システムにおいて準安定性の中性原子および中性分子により生じたバックグラウンドノイズを低減し、質量分析計による分析の新規な方法に関連した新規な構成要素を提供する。
【0011】
一態様において、本発明は、質量分析器からのイオンを検出器システムに入れるための新規な多層構造のレンズを提供する。対象のイオンを伝達するための中央アパーチャを有するレンズは、二次イオンに対する局所ポテンシャルエネルギー井戸をレンズ内に生じるようにバイアスされた外部電極および中間電極を含む。中間電極の粒子ボンバードにより生じた二次イオンは、ポテンシャルエネルギー井戸に捕捉され、中間電極の表面に閉じ込められたままである。従って、係る二次イオンは、検出器においてバックグラウンドノイズの一因になることができない。
【0012】
特に、レンズは、互いに電気的に絶縁された前部電極、中間電極、及び後部電極の層状構造からなる。前部電極は、中間電極の静電遮蔽を提供すると同時に、中性粒子および荷電粒子が通過することを可能にするように、レンズの前面上で前部電極の電位を分配するグリッドを含む。対象のイオンは、中央アパーチャに集束されると同時に、中性粒子が前部電極を通過してグリッドの背後の中間電極の表面に衝突する。
【0013】
中間電極は、中間電極の二次イオンが前部電極および後部電極のいずれかのポテンシャルエネルギーよりも低いポテンシャルエネルギーにあるように、前部電極および後部電極に対してバイアスされる。即ち、負に帯電された二次イオンが捕捉されるべきである場合、中間電極は、前部電極および後部電極のそれぞれの電位より高い電位にあり、逆に、正に帯電された二次イオンの場合、中間電極は、前部電極および後部電極のそれぞれの電位より低い電位にある。
【0014】
好適な実施形態において、ポテンシャルエネルギー井戸から対象のイオンを遮蔽する外部電極は、接地される。この構成は、中間電極により生じた電場を抑制し、中央アパーチャを通る対象のイオンの軌道に対する中間電極の影響を制限し、その結果、イオンに対して、構造は単一の接地された電極に類似するように考えられる。
【0015】
同様な層状偏向板は、質量分析器から検出器チャンバに入る中性の準安定粒子の衝突により生じた二次イオンを閉じ込める。グリッドで覆われた低いポテンシャルエネルギーの、層状偏向板の中間電極の表面は、導入アパーチャに面しており、その結果、チャンバに入る中性粒子がグリッドを通過して表面に衝突する。このように生じた二次イオンは、偏向板の中間電極の表面に閉じ込められる。
【0016】
これら層状の、バイアスされた構造は、中性の準安定性エンティティにより生じたシステムのバックグラウンドノイズを低減する。改善された信号対雑音比は、結果として本発明の質量分析システムの検出能の制限をより低くする。
【0017】
本発明の以下の説明は、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に適合する質量分析システムを概略的に示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に従って構築されたイオン集束レンズの組立分解図である。
【図3A】本発明のイオン集束レンズの実施形態の斜視図を示し、完成したアセンブリを示す図である。
【図3B】本発明のイオン集束レンズの実施形態の斜視図を示し、視認の容易性のためにグリッドを取り外した状態のレンズを示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に従って構築された偏向板を有する質量分析システムを示す図である。
【図5】本発明の偏向板の実施形態の断面図である。
【0019】
図面の要素は、概して一律の縮尺に従わずに描かれている。
【0020】
本発明の詳細な説明
図1を参照すると、従来技術の質量分析システム10は、3つの主要な構成要素、即ちイオン源16、質量分析器18、及び検出器システム20を含む。サンプルのイオン化、イオンの分類および検出を達成するための技術、並びに質量分析法による分析を実施するためにこれら技術の組み立てを特徴付ける考慮事項は、質量分析法の技術分野の当業者に知られている。
【0021】
イオン源16は、電子イオン化、化学イオン化、エレクトロスプレイイオン化、マトリックス支援レーザー脱離イオン化、及びプラズマの誘導結合を含む幾つかの技術の任意の1つにより、サンプルのイオン化をもたらす。
【0022】
イオン化技術は、物理的なサンプルに関係のない中性粒子を、質量分析器に入るイオン流へ偶発的に導入する可能性がある。例えば、アルゴン原子またはヘリウム原子は一般に、ICPイオン源の下流に存在する故に、大気圧で動作するイオン源から移動したイオンは、窒素分子による汚染の危険性がある。事前イオン化分離技術は、ヘリウムのキャリアガスを一般に使用するGC/MSで一般に看取される励起されたヘリウム原子のような無関係な中性粒子の別の供給源である。また、LC/MSは、霧化ガスのようなイオン源の活性物質から、又はそれが動作する雰囲気から窒素分子をもたらす可能性がある。
【0023】
イオン源16による処理後、偶発的な中性粒子が、サンプルの成分イオンと共に、ゲート24の入口22を通って質量分析器18へ静電的に進められる。ゲート24は、イオンを分析器へ導入するための、集束レンズ、コリメータ、又は質量分析システムの他の構成要素の機能に適合する他の良く知られた装置とすることができる。
【0024】
質量分析器18(例えば、二重集束型、飛行時間型、又は四重極分析器)は、イオンの質量/電荷比に従ってイオンを分類する。分類されたイオンは、出口レンズ30(例えば、標準的な8mmの中央アパーチャを備える接地された板)のアパーチャを通過して、検出器システム20によりカウントされる。
【0025】
分析器18の中性粒子は、印加された電場および磁場により分類されず、主に衝突の間の直線経路に沿って分析器18を通過する。機器の構成要素上の表面汚染物に衝突する十分なエネルギーの中性粒子は、二次イオンを生成する。レンズ30のアパーチャの近くでのレンズ30のボンバードから生じた二次イオンは、そのアパーチャを通り抜けて分析器を出る。また、アパーチャから外に出る励起された中性粒子は、検出器システム20の要素に衝突することにより二次イオンを生成する可能性がある。これらの場所から生じる二次イオンは、分類しない検出器に入り、検出器システム20により無作為にカウントされ、バックグラウンドノイズの一因となる。
【0026】
図2は、質量分析システム10において従来技術のレンズ30の代わりに使用するのに適した、本発明のノイズ低減複合型出口レンズ34の例示的な実施形態の層の組立分解図を示す。レンズ34は、介在する絶縁層50及び55と共に、2つの外部電極40と60との間に挟まれた中間電極36を含む。前部電極40は、中央開口44を取り囲む固体導電性リング42からなり、開口44を覆う導電性グリッド(格子)46が取り付けられる。
【0027】
前部絶縁層50は、開口44のサイズ及び形状に対応する窓52を有する。導電性中間電極36、後部絶縁層55、及び後部電極60はそれぞれ、窓52よりも小さい共通の形状およびサイズのアパーチャ開口62を有する。
【0028】
図3Aは、図2の組み立てられた複合レンズを示す。図3Bは、説明を容易にするために、グリッド46を備えていないレンズ34を示す。ここで、図2、図3A及び図3Bを参照すると、グリッドで覆われた開口44及び窓52は、質量分析器18の方へ向けられた前面64を中間電極36上で露出されたままにする。中間電極、後部絶縁層55、及び後部電極60の開口62は、中間電極の露出された表面64に垂直な軸に沿ってレンズ34を貫通する共通のアパーチャ66を形成する。実施形態において、共通のアパーチャ66は、窓52に対して中心に位置決めされる。必要に応じて、グリッド46は、アパーチャ66が前部電極40を貫いて延びるように、開口(図示せず)を有する。
【0029】
動作において、中間電極36は、前部電極40の電位、及び後部電極60の電位と異なる電位に維持され、その結果、中間電極36のイオンは、ポテンシャルエネルギーの局所極小を蒙る。前部電極40及び後部電極60より大きな正電位の中間電極36は、負イオンに対するポテンシャルエネルギー井戸を生じさせる。前部電極40及び後部電極60より小さい正電位の中間電極36は、正イオンに対するポテンシャルエネルギー井戸を生じさせる。一実施形態において、中間電極36の電位は、10〜75V、又はそれ以上だけ外部電極40及び60の電位と異なる。
【0030】
好適な実施形態において、2つの外部電極40及び60は接地され、中間電極36は、20〜75V、又はそれ以上だけ接地と異なる電位にある。負の二次イオンを閉じ込めるように構成されたレンズにおいて、中間電極の電位は、接地に対して正である。正の二次イオンを閉じ込めるために、中間電極の電位は、接地に対して負である。接地された外部電極40及び60は、中間電極36の電位により形成された電場を抑制し、アパーチャ66を通る対象のイオンの軌道に対する中間電極の影響を制限する。電圧源(図示せず)を用いて、中間電極36を所望の相対電位に維持することができる。
【0031】
質量分析器18からレンズ34に接近するイオンは、グリッド46を通過し、アパーチャ66を通って集束される。レンズ34は、任意の中性粒子を電気的に集束しない。十分なエネルギーでレンズ34に衝突する中性粒子は、二次イオンを生成する。グリッド46を透過して中間電極の露出した表面64と衝突する中性粒子により、アパーチャ66の近くで生成された二次イオンは、層状電極34における局所極小のポテンシャルエネルギーに起因して表面64から出ることが阻止される。局所化された二次イオンは、検出器20に到達せず、それらが生成していたノイズは、前もって阻止される。これは、図1の従来技術のレンズ30の前面が二次イオンを放出し、ひいては二次イオンが検出器システム20に入ることを許容して、バックグラウンドノイズの一因となる、従来技術のレンズ30とは対照的である。
【0032】
別の態様(図4に示された実施形態)において、本発明は、軸外検出器70を有する検出器チャンバ69内に二次イオンを閉じ込めるための偏向板68を提供する。
【0033】
図5を参照すると、本実施形態の偏向板68は好適には、以下の層、即ち前部電極72、前部絶縁層80、中間電極86、後部絶縁層90、及び後部電極92を含む。
【0034】
前部電極72は、内側開口76を取り囲む固体導電性リング74であり、内側開口76を覆う導電性グリッド78が取り付けられる。前部絶縁層80は、内側開口76と同一の広がりを持つ窓84を取り囲む固体フレーム82である。中間電極86は、出口レンズ30に面し、内側開口76及び窓84を介して露出された表面88を有する。
【0035】
中間電極86は、負または正の二次イオンが目標にされるか否かに応じて、前部電極72及び後部電極92のそれぞれの電位より約20〜75V又はそれ以上高いまたは低い電位に、電圧源94により維持される。好適な実施形態において、前部電極72及び後部電極92は接地される。
【0036】
質量分析器18から出たイオンは、出口レンズ30を通過してチャンバ69内へ入り、数千ボルトだけ負にバイアスされた軸外検出器70内へ入る。チャンバ69に入る中性粒子は、レンズ30に面する中間電極86の露出した表面88に衝突するまで、それらの軌道を続ける。結果として生じる二次イオンは、表面88で拘束され、検出器70へ進入することが阻止される。これは、中性粒子がチャンバの壁またはチャンバ69の他の表面と衝突することによって二次イオンを生成し、当該二次イオンが検出器に入って、バックグラウンドノイズの一因となる、従来技術の質量分析システムとは対照的である。
【0037】
本発明の偏向板85は、原理的には後部絶縁層90及び後部電極92を用いずに機能することができる。接地された後部電極92は、中間電極86により生成された電場が、検出器チャンバ69に入るイオンの軌道に対するその影響を最小限にするように抑制されることを保証する。
【0038】
本実施形態の層状構造は、ステンレス鋼板、ポリ(テトラフルオロエチレン)シート、及びタングステンのメッシュから容易に構築される。例えば、外部および中間電極は、0.5mm厚のステンレス鋼から作成されることができ、前部電極上にメッシュを備え、0.25mm厚のプラスチック絶縁層により分離される。メッシュは、50×50ワイヤ/インチ、及び0.0762mm(0.003インチ)のワイヤ直径のタングステンワイヤのメッシュとすることができ、それは対象のイオンの透過を必要以上に妨げない。当該層は、クランプ又はネジのような従来の手段により互いに保持され得る。
【0039】
他の実施形態において、前部電極は、任意の固体縁部を備えずに、全てメッシュから構成されてもよい。本明細書で使用される場合、メッシュは、織り合わされた構造またはからみ合わされた構造だけでなく、同様な意味合いで中間電極の電位を分配させることができると同時に中性粒子および荷電粒子が通過することを可能にするグリッド又は有孔材料とすることもできることを意味する。開口および窓の相対的サイズ及び位置は、本実施形態において説明されたように必ずというわけではない。むしろ、開口および窓は、メッシュの背後に中間電極の表面、及び出口レンズの場合に、対象イオンを分析器から出すためのアパーチャを設定する任意の関係にあることができる。更に、中間電極に隣接する絶縁層は、完全に存在しなくてもよい。例えば、電極は、エッジで捕らえられることができ、それらの互いの絶縁は、装置の低圧雰囲気においてギャップにより維持される。
【0040】
所定の電圧範囲は、四重極分析器およびダイノード検出器を有するGC/MSシステムを用いて決定される。同様の電圧範囲が、異なる主要な構成要素を有する質量分析システムに有効であると予想される。
【0041】
本発明の特定の特徴要素が幾つかの実施形態および図面に含められ、他の実施形態には含められていないが、留意すべきは、各特徴要素は、本発明に従って任意または全ての他の特徴要素と組み合わされ得る。
【0042】
従って、看取されるように、上記の説明は、質量分析、特に機器内へ不活性ガスを導入することに依存する技術の多様態に対する高度に有利な手法を提供する。本明細書で使用される用語および表現は、制限ではなくて説明の点で使用されており、係る用語および表現の使用において、図示および説明された特徴要素またはその一部の任意の等価物を除外する意図はないけれども、様々な変更が、特許請求の範囲で請求された本発明の範囲内で可能であることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷を有する二次イオンを閉じ込めるための装置であって、
a)後部電位にある後部電極と、
b)前部電位にあり、グリッドを含む前部電極と、
c)前記電荷が負である場合に前記後部電位および前記前部電位のそれぞれより高く、及び前記電荷が正である場合に前記後部電極および前記前部電極のそれぞれより低い中間電位にあり、前記前部電極と前記後部電極との間にあり、前記前部電極と前記後部電極から電気的に絶縁されており、前記二次イオンが前記中間電位で閉じ込められる表面を前記グリッドの背後に有し、前記二次イオンが中性粒子による前記表面のボンバードにより生成される、中間電極とを含む、装置。
【請求項2】
共通のアパーチャが前記中間電極および前記後部電極を貫通する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記グリッドが開口を有し、前記共通のアパーチャが前記開口を介して延びている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記アパーチャが、質量分析計における質量分析器からの物質流のイオンを検出器システムへ入れるためのイオン集束レンズであり、前記表面が前記物質流に面している、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記装置が、質量分析計の検出器チャンバ内の偏向板であり、前記中間電極の表面が質量分析器からの出口に対向して配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記中間電位が、前記前部電位および前記後部電位のそれぞれから少なくとも20Vだけ異なる、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記前部電極および前記後部電極が接地電位にある、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記質量分析器が四重極分析器である、請求項4に記載の装置。
【請求項9】
a)前記後部電極と前記中間電極との間の後部絶縁層と、
b)前記前部電極と前記中間電極との間の前部絶縁層とを更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
イオン集束レンズであって、質量分析計における質量分析器からの物質流のイオンを検出器システムへ入れると共に、前記レンズと衝突する中性粒子により生じた二次イオンを閉じ込めるものにおいて、
a)後部電位にある後部電極と、
b)前部電位にあり、グリッドを含む前部電極と、
c)前記後部電極と前記前部電極との間にあり、前記後部電極と前記前部電極から電気的に絶縁されており、電荷が負である場合に前記後部電位および前記前部電位のそれぞれより高く、及び前記電荷が正である場合に前記後部電位および前記前部電位のそれぞれより低い中間電位にあり、前記二次イオンが前記中間電位で閉じ込められる表面を前記グリッドの背後に有し、前記二次イオンが中性粒子による前記表面のボンバードにより生成される、中間電極と、
d)前記中間電極および前記後部電極を貫通する共通のアパーチャとを含む、イオン集束レンズ。
【請求項11】
前記中間電極が、前記前部電位および前記後部電位のそれぞれから少なくとも20Vだけ異なる、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記前部電極および前記後部電極が接地されている、請求項10に記載のイオン集束レンズ。
【請求項13】
前記前部電極および前記後部電極が接地されている、請求項11に記載のイオン集束レンズ。
【請求項14】
前記質量分析器が四重極分析器である、請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記共通のアパーチャが前記グリッドを貫通する、請求項10に記載の装置。
【請求項16】
a)前記後部電極と前記中間電極との間の後部絶縁層と、
b)前記前部電極と前記中間電極との間の前部絶縁層とを更に含み、
前記共通のアパーチャが前記後部絶縁層と前記前部絶縁層を貫いて延びている、請求項10に記載の装置。
【請求項17】
質量分析計によりサンプルを分析する方法であって、
a)イオン源を準備するステップと、
b)質量分析器を準備するステップと、
c)検出器チャンバ内に検出器を設けるステップと、
d)前記質量分析器と前記検出器チャンバとの間にレンズを設けるステップであって、そのレンズが、
i)後部電位にある後部電極と、
ii)前部電位にあり、グリッドを含む前部電極と、
iii)電荷が負である場合に前記後部電位および前記前部電位のそれぞれより高く、及び前記電荷が正である場合に前記後部電位および前記前部電位のそれぞれより低い中間電位にあり、前記前部電極と前記後部電極との間にあり、前記前部電極と前記後部電極から電気的に絶縁されており、前記グリッドの背後の表面を有する、中間電極と、
iv)前記後部電極および前記中間電極を貫通する共通のアパーチャとを含む、ステップと、
e)前記イオン源を用いて前記サンプルを成分イオンに変化させるステップと、
f)前記成分イオン及び励起された中性粒子を含む物質流を、前記質量分析器を介して前記レンズの方へ移動させるステップであって、前記質量分析器がそれぞれの質量/電荷比に従って前記成分イオンを分類する、ステップと、
g)前記成分イオンを前記アパーチャを介して前記検出器チャンバ内へ入れるステップと、
h)励起された中性粒子が前記中間電極の表面に衝突し、結果として生じた二次イオンが前記中間電位の前記表面に閉じ込められるように、前記励起された中性粒子を前記グリッドに通すステップと、
i)前記検出器において前記成分イオンを信号に変換するステップとを含む、方法。
【請求項18】
a)前記アパーチャに対向して、前記検出器チャンバ内にイオン偏向器を設けるステップであって、そのイオン偏向器が、
i)偏向器前部電位にあり、グリッドを含む偏向器前部電極と、
ii)電荷が負である場合に前記偏向器前部電位より高く、及び前記電荷が正である場合に前記偏向器前部電位より低い偏向器中間電位にあり、前記偏向器前部電極の背後にあり、前記偏向器前部電極から電気的に絶縁されており、二次イオンが前記偏向器中間電位で閉じ込められる偏向器表面を前記グリッドの背後に有し、前記二次イオンが中性粒子による前記表面のボンバードにより生成される、偏向器中間電極とを含む、ステップと、
b)励起された中性粒子を前記偏向器中間電極の前記偏向器表面に送り、結果として生じた二次イオンを、前記偏向器中間電位の前記偏向器表面に閉じ込めるステップとを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記イオン偏向器が、前記中間電極の背後にあり、前記中間電極から電気的に絶縁されている偏向器後部電極を更に含み、前記偏向器中間電位は、前記電荷が負である場合に前記偏向器前部電位より高く、及び前記電荷が正である場合に前記偏向器前部電位より低い、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記サンプルを成分イオンに変化させる前に、ガスクロマトグラフィーにより前記サンプルを準備するステップを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記励起された中性粒子が、ヘリウム原子である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記中間電位が、前記前部電位および前記後部電位のそれぞれから少なくとも20Vだけ異なる、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記質量分析器が四重極分析器である、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−510472(P2011−510472A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544310(P2010−544310)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/000278
【国際公開番号】WO2009/094115
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(510203304)パーキンエルマー ヘルス サイエンセズ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】