説明

質量分析計の入口端および出口端にてイオンバリアを提供するための方法と装置

イオンガイドを有する線形イオントラップおよびそれを操作する方法を提供する。イオンガイドは第1端部および第2端部を有する。本方法は、a)イオンガイド内に第1群のイオンを提供する工程と、b)イオンガイド内に第1群のイオンと反対の極性を有する第2群のイオンを提供する工程と、c)イオンガイド内で第1群のイオンおよび第2群のイオンを半径方向に拘束するためのRF駆動電圧をイオンガイドに提供する工程と、d)第1群のイオンおよび第2群のイオンをイオンガイドの第1端部からはじくために、イオンガイドの第1端部からイオンガイドの中央に向かって、第1の軸方向に不活性ガスのガス流を提供する工程と、e)第1群のイオンおよび第2群のイオンをイオンガイドの第2端部からはじくために、捕捉領域バリアを提供する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(分野)
本発明は、概して、マススペクトルに関し、より具体的には、線形イオントラップ質量分析計の入口端および出口端にてイオンバリアを提供する方法とシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
(導入)
一般に、線形イオントラップは、細長いロッドセットのロッドに印加される半径方向のRF場と、ロッドセットの入口端および出口端に印加される軸方向直流(DC)場との組み合わせを用いてイオン群を保存する。線形イオントラップは三次元イオントラップと比較して、非常に大きい捕捉量の提供、保存されたイオン集団を他の下流方向のイオン処理ユニットに容易に運ぶ能力等の利点を有する。しかしながら、そのような線形イオントラップの使用に関していくつかの問題がある。
【0003】
そのような問題の1つは、線形イオントラップ内に正電荷イオン群および負電荷イオン群を同時に保存することは通常不可能であるということである。この問題は、特定の軸方向直流磁界は1つの極性のイオンに対して有効バリアを提供するが、同一の直流磁界は反対の極性を有するイオンを線形イオントラップ外に向かって加速するという事実に起因する。したがって、直流バリア磁界を利用する線形イオントラップは、対立する極性を有するイオン群を同時に保存することに通常使用されていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、対立する極性を有するイオン群を同時に捕捉できる線形イオントラップの線形イオントラップシステムおよび操作方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要旨)
本発明の第1の実施形態の側面によると、イオンガイドを有する線形イオントラップを操作する方法を提供する。イオンガイドは、第1端部および第2端部を有する。本方法は、a)イオンガイド内に第1群のイオンを提供する工程と、b)イオンガイド内に第2群のイオンを提供する工程であって、第2群のイオンは、第1群のイオンに対して反対の極性を有する工程と、c)イオンガイド内で第1群のイオンおよび第2群のイオンを半径方向に拘束するためにRF駆動電圧を提供する工程と、d)第1群のイオンおよび第2群のイオンとの双方をイオンガイドの第1端部からはじくために、イオンガイドの第1端部から中央に向かって、第1の軸方向に不活性ガスのガス流を提供する工程と、e)第1群のイオンおよび第2群のイオンをイオンガイドの第2端部から離れてはじくために捕捉領域バリアを提供する工程と、を含み、第1の軸方向へのガス流および捕捉領域バリアは、第1群のイオンおよび第2群のイオンを捕捉するための主要捕捉領域を画定する。
【0006】
本発明の第2の実施形態によると、第1端部と第2端部とを有するイオンガイドと、イオンガイドにRF駆動電圧を提供し、イオンガイド内に両方の極性のイオンを半径方向に拘束するために、イオンガイドに接続されたRF駆動電圧電源と、イオンガイド内で、イオンガイドの第1端部からイオンガイドの中央に向かって、第1の軸方向に不活性ガスの第1ガス流を提供するための第1ガス源であって、第1ガス流は、両方の極性のイオンを第1端部から第2端部に向かってはじくために十分な密度と速度とを有する第1ガス源と、イオンガイドの第2端部から両方の極性のイオンをはじくための第2端部の捕捉領域バリアと、を備える、線形イオントラップが提供される。第1の軸方向へのガス流および捕捉領域バリアは、両方の極性のイオンを捕捉するための主要捕捉領域を共に画定する。
【0007】
出願者の教示するこれらおよびその他の特性を本明細書に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(種々の実施形態の説明)
図1を参照すると、本発明の一実施形態による、線形イオントラップ質量分析計100の概要図を図示する。線形イオントラップ質量分析計100は、第1端部102および第2端部104と、第1端部102と第2端部104の間に伸びたロッドセット106を有する。イオン群108は、ロッドセット106内の内空間に注入されることが可能であり、その空間内で、イオン群108は、ロッドセット106の半径方向RFフィールドを提供するRF駆動電圧電源109により、半径方向に拘束されることが可能である。本発明の側面によると、イオン群108は、第1群のイオンおよび第2群のイオンを含むことができる。ここに、第2群のイオンは、第1群のイオンと反対の極性を有する。ロッドセット106内でイオン群108を半径方向に拘束するため、ロッドセット106の第1端部102に第1不活性ガス流110が提供され、一方、ロッドセット106の第2端部104に第2不活性ガス流112が提供される。図示するように、第1および第2ガス流は、第1ガス源110および第2ガス源112からそれぞれ提供される。あるいは、当然ながら、単一ガス源を用いて第1ガス流110および第2ガス流112を提供することができる。第1ガス流の第1不活性ガスは、第2ガス流の第2不活性ガスと同質であっても異質であってもよい。
【0009】
第1ガス流110は、ロッドセット106内をロッドセット106の第1端部102から中央に向かって略軸方向に流れるように、第1端部プレート116の第1端部アパーチャ114を通して提供される。同様に、第2ガス流112は、ロッドセット106の第2端部104から中央に向かって略軸方向に流れるように、第2端部プレート120の第2端部アパーチャ118を通して、ロッドセット106の内部に提供される。第1ガス流110および第2ガス流112は共に、ガス流制御弁123により制御される。
【0010】
第1ガス流110および第2ガス流112は、ポンプ122によって、ロッドセットの中央に向かって導かれる。ポンプ位置122において、第1不活性ガスおよび第2不活性ガスは共に、ロッドセット106より、ポンピングされる。イオン群がポンプ122により捕捉からポンピングされることを防ぐために、半径方向RFフィールドがロッドセット106に提供される。さらに、端部102、104の近い方の端部に向かう軸方向速度上における、ガス流110および112の衝突緩衝効果により、イオン群はロッドセット106内で軸方向に拘束される。
【0011】
イオン群108を抑制するために十分な第1ガス流110および第2ガス流112の速度はいくつかの手段で決められることができ、そのうちの1つは実験による手段である。実験の場合、線形イオントラップ質量分析計100の両端部102、104にイオン検知器を設置し、特定のガス流速度における、イオン群108の捕捉からの脱出率が測定される。ガス流速度が有効であれば、ガス流なしと比較してガス流ありの場合、イオン脱出率は著しく低くなる。ガス流速度は理論的にも決められる。例えば、最高効率流の概算推定速度は、バリア領域(ガスが注入される領域からガスがポンピングされる領域)での軸方向の圧力の積分が1mTorr*cmになるように最小流速度を調整することにより達成される(例えば、参照することにより内容が本明細書に組み入れられる、米国特許番号第4,963,736号を参照)。あるいは、ガス流の要求条件は下記の数式で求められる。
【0012】
【数1】

ここで、Lはバリア領域の長さ、v(g)はバリア領域内でのガス速度、そしてDは着目イオンの拡散係数である。
【0013】
任意選択で、いくつかの実施形態において、ガス源110より提供されるガス流110ではなく、ガス流110は、質量分析計の前段階より高い圧力からもたらされてもよい。本質量分析計の前段階より高い圧力は、採取インターフェースの設計の結果もしくはガス流を用いて意図的に作られたものである。
【0014】
図2を参照すると、本発明の第2の実施形態による、線形質量分析計200の概要図を図示する。明瞭にするため、図1の線形イオントラップ質量分析計システム100の要素に類似した線形イオントラップ質量分析計システム200の要素の指定に、同じ参照番号に100を加えた番号を用いる。簡潔さのため、図1のいくつかの記述は図2で繰り返されない。
【0015】
図1の線形イオントラップ質量分析計100と同様に、図2の線形イオントラップ質量分析計200において、第1ガス流210は、ロッドセット206内をロッドセット206の第1端部202から中央に向かって略軸方向に流れるよう、第1端部プレート216の第1端部アパーチャ214を通して提供される。同様に、第2ガス流212は、ロッドセット206内をロッドセット206の第2端部204から中央に向かって略軸方向に流れるよう、第2端部プレート220の第2端部アパーチャ218を通して提供される。
【0016】
第1ガス流210および第2ガス流212を、互いに反対の軸方向に導くため、ロッドセット206の各端部にスリーブ224が提供される。いくつかの実施形態において、スリーブは円筒状で、半径はロッドセット206の半径(ロッドセットの中心縦軸からロッドの中間点までの距離)より大きい。本スリーブ224は、端部アパーチャ214および218にてロッドセット206を囲み、ロッドセット206の中央に向かって少なくとも部分的に伸びる。図1のロッドセット106と同様に、イオン群は、ロッドセット206への半径方向RFフィールドの印加により、ロッドセット206の半径方向に拘束され、そして拘束スリーブ224により高い効率を有する第1ガス流210および第2ガス流212により、縦軸方向に拘束される。図2の実施形態において、拘束スリーブ224は第1端部プレート216および第2端部プレート220に付属されていない。任意選択で、別の実施形態において、拘束スリーブは、端部プレート216および220に付属されるかもしくはそれに至るまで延在してもよい。ガスの流れは、隣接するロッド間の隙間を閉じる挿入物を用いて、拘束されることができる。挿入物の機能は、ガス流の抑制を援助する拘束スリーブの機能と類似する。
【0017】
図3を参照すると、本発明の第3の実施形態による、線形イオントラップ質量分析計システム300の概要図を図示する。明瞭にするため、図2の線形イオントラップ質量分析計200の要素に類似した線形イオントラップ質量分析計300の要素の指定に、同じ参照番号に100を加えた番号を用いる。簡潔さのため、図1および2のいくつかの記述は図3で繰り返されない。
【0018】
図2の線形イオントラップ質量分析計200と同様に、図3の線形イオントラップ質量分析計300は、ガス流310および312で提供されるガスバリアを向上するスリーブ324を有する。しかしながら、線形イオントラップ質量分析計100および線形イオントラップ質量分析計200と異なり、線形イオントラップ質量分析計300において、ガス流310および312の各々は、第1および2端部プレート316および320の第1および2端部アパーチャ314および318を通して提供されない。代わりに、第1ガス流310は、ロッドセット306に第1ガス入口ポート326を通して提供される一方、第2ガス流312は、ロッドセット306に第2ガス入口ポート328を通して提供される。第1ガス入口ポート326は、ロッドセット306の第1端部302にロッドセット306の中央に向かって配置される。同様に、第2ガス入口ポート328は、ロッドセット306の第2端部304にロッドセット306の中央に向かって配置される。結果として、第1ガス流310は、第1ガス入口ポート326から二軸方向に提供される。すなわち、図1および2の線形イオントラップ質量分析計と同様に、第1ガス流310は、ロッドセット306の第1ガス入口ポート326から中央に向かって提供される。さらに、ガス流310は、ロッドセット306の第1ガス入口ポート326から第1端部302に向かって逆軸方向(第1ガス逆流)に提供される。両実施例において、ロッドセット306内の第1ガス流310は、スリーブ324により略軸方向に流れるように導かれる。同様に、第2ガス入口ポート328は、ロッドセット306の第2端部304にロッドセット306の中央に向かって配置されるため、第2ガス流312は、ロッドセット306の第2ガス入口ポート328からロッドセット306の中央に向かって、そしてロッドセット306の第2ガス入口ポート328から第2端部304に向かって逆軸方向(第2ガス逆流)に提供される。両実施例において、ふたたび、第2ガス流は、スリーブ324により略軸方向に導かれる。第1端部電極330および第2端部電極329は、有効なバリアフィールドを提供するため第1端部プレート316および第2端部プレート320に有効な電圧を提供する。
【0019】
図3の線形イオントラップ質量分析計300の形状は、イオン群308をロッドセット306の両端部302および304から離して拘束する。本形状は、補助捕捉領域をロッドセット306の各端部に提供する工程も可能にする。特に、本図に示すように、第1端部302に有効なバリアフィールドを提供する工程により、第1端部補助捕捉領域308aを提供できる。すると、イオン群は、第1端部302向けの第1ガス流310および端部302に提供されたバリアフィールド間の捕捉領域308aに捕捉される。例えば、本バリアフィールドは、第1端部プレート316もしくは代わりに他の電極で提供される。
【0020】
同様に、第2補助捕捉領域308bは、線形イオントラップ質量分析計300の第2端部304に提供された有効なバリアフィールドと第2ガス入口ポート328の間に提供される。特に、第2ガス入口ポート328からの第2ガス流312は、第2端部捕捉領域308b内にイオン群を捕捉するため、第2端部304に向かって流れる。
【0021】
ロッドセット306の端部302および304に提供されるバリアフィールドは直流または交流/RFであり得る(以下の記述において、「交流/FR」は交流もしくは交流/RFのうちの1つを意味する、RFフィールドを用いる当業者には理解されるであろう、RF周波数外の交流でも働く)。代わりに、ある当業者は直流、別の当業者はRFを使うことができる。バリアフィールドとしてのRFもしくは直流の選択は、捕捉領域308aおよび308bに捕捉されるイオン群に依存する。特に、例えば、正電荷イオン群のみ捕捉領域308aおよび308bに保存され、また両方の極性のイオンがガス入口ポート326および328の間の主要捕捉領域に保存される。この場合、RFもしくは正値直流バリア磁界を端部302および304に提供する。例えば、正電荷イオン群が捕捉領域308aに保存され、負電荷イオン群が捕捉領域308bに保存されるとする。本イオン群を捕捉するため、RFバリアフィールドを両端部302および304に提供する。代わりに、正値直流バリア磁界を端部302に、そして負値直流バリア磁界を端部304に提供する。一方、補助捕捉領域308aおよび308bに捕捉されたイオン群が正電荷および負電荷を有するならば両端部にRFバリアフィールドが提供されなければならない。
【0022】
図4を参照すると、本発明の第4の実施形態による、線形イオントラップ質量分析計400の概要図を図示する。明瞭にするため、図3の線形イオントラップ質量分析計300の要素に類似した線形イオントラップ質量分析計400の要素の指定に、同じ参照番号に100を加えた番号を用いる。簡潔さのため、図3の記述は図4において繰り返されない。
【0023】
線形イオントラップ質量分析計300と同様に、線形イオントラップ質量分析計400は、ロッドセット406の第1端部402からロッドセット406の中央に向かって位置した第1ガス入口ポート426を有する。しかしながら、図3の線形イオントラップ質量分析計300とは異なり、図4の線形イオントラップ質量分析計400は第2ガス入口ポートを含まない。結果として、線形イオントラップ質量分析計400は、イオン群408の捕捉のためのガス入口ポート426と第2端部404の間の主要捕捉領域、それと第1端部402とガス入口ポート426の間の第1補助捕捉領域408aを共に含む。
【0024】
イオン群408の捕捉のための主要捕捉領域の左側イオンバリアは、ガス入口ポート426から第2端部404へ第一略軸方向に流れる第1ガス流410で提供される。本左側イオンバリアは、イオン群408が正電荷または負電荷に関わらず、イオン群408が第1端部402に向かって主要捕捉領域から脱出するのを妨ぐ。イオン群408が正電荷および負電荷の両方であれば、第2端部404においてイオン群408が第2端部アパーチャ418を通して脱出するのを防ぐため、第2端部補助電極429を用いてRFまたは交流電圧を第2端部プレート420に提供できる。代わりに、イオン群408が単一極だけであれば、第2補助電極429は第2端部プレート420にRF/交流電圧を提供する。もしくは、ロッドセット406の主要捕捉領域内にイオン群408を有効的に捕捉するために、イオン群408と同じ極性の直流を提供できる。
【0025】
第1の軸方向の第1ガス流410に加えて、第1ガス逆流410は、第1ガス入口ポート426から第1端部402に向かって流れる。これは第2端部404に向かう第1の軸方向での補助捕捉領域からどちらかの極性のイオン群が脱出するのを妨ぐため、第1補助捕捉領域408aに右側バリアを提供する。第1補助捕捉領域408aの右側イオンバリアは、第1補助電極430で第1端部プレート416に提供するバリアフィールドで提供できる。上記で議論したように、第1端部プレート416に提供される電圧は、両方の極性のイオンが第1補助捕捉領域408aに捕捉されるのであれば、RF/交流でなければならない。一方、単一の極性を持つイオン群のみが第1補助捕捉領域408aに捕捉されるのであれば、第1端部補助電極430は、第1端部プレート416に捕捉されるイオン群と同一極性の直流を代わりに提供できる。当然ながら、単一の極性を有するイオン群のみ第1補助捕捉領域408aにて捕捉される場合でも、第1端部電極430は、本イオン群を捕捉するために、第1端部プレート416にRF/交流電圧を提供することができる。
【0026】
図5を参照すると、本発明の第5の実施形態による、線形イオントラップ質量分析計500の概要図が図示されている。明瞭にするため、図4の線形イオントラップ質量分析計400の要素に類似した線形イオントラップ質量分析計500の要素の指定に、同じ参照番号に100を加えた番号を用いる。簡潔さのため、図4の記述は図5において繰り返されない。
【0027】
図5の線形イオントラップ質量分析計500は端部502と504のほぼ中間点に位置する壁532に関して非対称である。図4の線形イオントラップ質量分析計400と同様に、図5の線形イオントラップ質量分析計500において、ガスイオンバリアは一端のみに提供され、他端には有効なバリアフィールドが提供される。
【0028】
ロッドセット506の第1端部502から中央に向かって略第1の軸方向に流れるように、第1ガス流510を、第1端部プレート516の第1端部アパーチャ514を通して、線形イオントラップ質量分析計500のロッドセット506に提供する。第1ポンプ場522aは、ロッドセット506の第1端部502と中央532の間に提供される。本第1ポンプ場は第1ガス流510の第1不活性ガスの大部分をポンピングする。しかしながら、第1不活性ガスの一部分およびその他のガスは、第1ポンプ場522aと第2端部504の間に到達する。したがって、線形イオントラップ質量分析計500の主要捕捉領域内のガス圧を減らすため、ロッドセット506の第2端部504に第2ポンプ場522bを提供する。当然ながら、壁532は両端部502および504の中間点に位置される必要はなく、ロッドセット506の長さ方向に沿った異なる点に位置されることができる。
【0029】
図4のイオントラップ質量分析計400と同様に、図5のイオントラップ質量分析計500は、第1ポンプ場522aと第2端部504の間に主要捕捉領域、を有する。しかしながら、イオントラップ質量分析計500は補助捕捉領域を有しない。すなわち、いくつかの実施形態において、第1端部502から第1ポンプ場522aへの第1ガス流510は十分に強力で、どちらかの極性を有するイオン群508に対しても第1ポンプ場522aを超えて第1端部502に向かって進行するのを防ぐ。
【0030】
第1の軸方向の本第1ガス流510に加えて、イオン群508が第2端部504の第2端部アパーチャ518を通して脱出するのを防ぐため、第2補助電極を用いてRF/交流電圧は第2端部プレート520に適用されることができる。
【0031】
前記の実施形態において、軸方向流れは、両方の極性のイオンにバリアを提供するために用いられる。いくつかの実施形態において、ロッドセットのどちらかの端部においてイオン群を押し出すために、軸方向の場を使用することは有利である(代わりに、当然ながら、イオン群は半径方向にポンピングされることができる)。そのような軸方向のフィールドを提供する有効な電極については説明がなされている。例えば、Loboda A.,Krutchinsky,A.,Loboda O.,McNabb J.,Spicer,V,Ens,W.,and Standing K.,”LINAC II Electrode Geometry for Creating an Axial Field in a Multipole Ion Guide”,Department of Physics and Astronomy, University of Manitoba, Winnipeg,Canada Eur.J.Mass Spectrom,6,531−563,(2000);(http://www.impub.co.uk/abs/EMS06_0531.html)で利用可能(以下「Loboda文献」)。本参考文献で記述された電極に類似した電極を採用したイオントラップ質量分析計システム600は以下に記述されている。軸方向の場をRFイオンガイドに導入する本方法もしくは他の有効な方法は採用されることができる。それらの方法の変形例は米国特許第6,111,250号に記述されている。
【0032】
図6を参照して、本発明の第6の実施形態による、線形イオントラップ質量分析計600の概要図が図示されている。明瞭にするため、図1の線形イオントラップ質量分析計100の要素に類似した線形イオントラップ質量分析計600の要素の指定に、同じ参照番号に500を加えた番号を用いる。簡潔さのため、図1の記述は図6において繰り返されない。
【0033】
図1の線形イオントラップ質量分析計100の要素に加えて、図6の線形イオントラップ質量分析計600は、T形状の断面を有する電極634を有する。電極634はT形状の断面を有するが、図示された電極の配置はイオンガイドのm/zウインドウを著しく制限することなく多極イオンガイドに小さな軸方向の場を形成するのに使用できる。本特別形状は電極634の剛性と便利性のために選択されたが、他の形状を有する電極も採用できる。
【0034】
イオンガイドの軸上のポテンシャル、UはU(直流ポテンシャル)と次の数式で得られる主要ロッドセットの直流ポテンシャルバイアス、Uの線形結合にて求められる。
【0035】
【数2】

Loboda文献に記述されているように、数式内のパラメータ、αとβは主要ロッドと追加ロッド両方の幾何学に依存し、したがって、電極の形状または位置の縦軸方向の変化はz軸に沿っての電気ポテンシャルの変動を導く。本ポテンシャル変動のz勾配は軸方向電気フィールドを決定する。
【0036】
図7を参照すると、ロッドセット606の断面図およびイオントラップ質量分析計システム600の電極634が図示される。図7に図示されるように、各電極634はベース634aおよびステム634bを有する、そして補助電圧電源634cで提供される補助電圧により駆動される。図6に図示されるように、電極634の断面はステム634bの寸法を変更することにより縦軸方向において変化される。
【0037】
Loboda文献および米国特許第6,111,250号で記述されているように、軸方向の場の変動は、ステムの縦軸方向に沿った寸法を変更することによって提供される。代わりに、いくつかの実施形態において、有効な軸方向の場を形成するために主要ロッドセットが使用される。それはロッドセットの長さ方向の断面面積を変化し軸方向の場を制御するため、ロッドペアのうちの1つに追加電圧を提供する工程により達成される。例えば、米国特許第6,110,250号には、追加電極を使用せずに有効な軸方向の場を提供する別の方法が記載されている。上記特許の中の、図3から5はテーパを有するロッドを図示し、図6から9は傾斜したロッドを図示する。両適用において、軸方向に変化する形状を有する主要ロッドは、有効な軸方向の場を提供できる。補助電極は要求されない。さらに、前記特許の中の図27および28に図示されているように、抵抗塗装を有するもしくは分割されたロッドは、追加電極を必要とせずに、有効な軸方向の場を生成するのに使用できる。
【0038】
図6を再度参照すると、電極634のステム634bは、上記の有効な軸方向の場を提供するために、第1端部602から第2端部604に向かって非線形に減少する。ガスバリアフィールドと組み合わせた本電極の実際操作は、図8a、8bおよび8cを参照すると、以下に記述されている。
【0039】
図8aを参照すると、図6の線形イオントラップ質量分析計システム600は、第1端部602および第2端部604にてイオン群を半径方向に拘束するため各々提供されるガス流610(図6に図示)および612と共に図示される。さらに、イオントラップ質量分析計システム600の右側に図示されるように、軸方向ポテンシャルU(z)は、質量分析計システム600の端部604で正値(図6に図示)および端部602で負値を提供する。結果として、正電荷イオン群608aは質量分析計システムの端部602に引き寄せられ、一方、負電荷イオン群608bは第2端部604に引き寄せられる。このように、正電荷および負電荷イオンはともにロッドセット606内に捕捉されることができるが、互いに疎なイオン雲により両イオン群が互いに反応することが妨げられる。
【0040】
図8bを参照すると、軸方向の場が停止されると(U(z)=0)、イオン集団608内の正荷電および負荷電イオン群は互いに自由に反応する。イオン群608は、ガス流610および612により、ロッドセット606の第1端部602および第2端部604に拘束され続ける。
【0041】
図8cを参照すると、ガス流610および612は、停止されるまたは少なくとも減少される。代わりに、軸方向の場、U(z)は、ガス流610および612を克服するために十分なだけ増強される。同時に、軸方向の場、U(z)(図8c中において、質量分析計システム600の右側に図示)は図8aで提供されている方向と反対の方向に提供される。すなわち、軸方向の場、U(z)はロッドセット606の第1端部602で正値、そしてロッドセット606の第2端部604で負値を有し、負電荷イオン群608b’はロッドセット606の第1端部602で軸方向に排斥され、一方、正電荷イオン群608a’はロッドセット606の第2端部604で軸方向に排斥される。当然ながら、図8bに図示されている段階で起こるイオンの反応のため、図8cのイオン集団608b’は図8aのイオン集団608bと同一である必要はなく、また、図8cのイオン集団608a’は図8aのイオン集団608aと同一である必要がないことを留意されたい。
【0042】
操作例
例えば、次の3つの論文に記述されているように、前記方法および装置はイオン/イオンの反応を促進するために使用できる。(1) Syka,John E.P.,Coon,Joshua J.,Schroeder,Melanie J.,Shabanowitz,Jeffrey and Hunt,Donald F.−”Peptide and Protein Sequence Analysis by Electron Transfer Dissociation Mass Spectrometry”−The National Academy of Science of the U.S.A.(2004),Vol.101,No.26,pp9528−9533(以下「Syka文献」)、(2) Xia,Y.,Liang,A.,McLuckey Scott A.−“Pulsed Dual Electrospray Ionization for Ion/Ion Reactions”−American Society for Mass Spectrometry (2005) 16,pp1750−1756 (以下「Xia文献」)、(3) McLuckey,Scott A.,Reid,Gavin E.,and Wells,J.Mitchell−“Ion Parking during Ion/Ion Reactions in Electrodynamic Ion Traps”−Analytical Chemistry, Vol.74,No.2,January 15,2002(以下「McLuckey文献」)。
【0043】
前記SykaとMcLuckey文献は、イオン/イオンの反応に使用される線形イオントラップの配置について記述する。Xia文献は、線形イオントラップで採用可能な技術であるイオンパーキングの利点について記述する。特に、考察中のサンプルに関して追加情報を得るために、反応のいくつかのクラスを採用できる。以下に記述される反応のこれらのクラスは、反対の極性を有するイオン群を捕捉できる捕捉領域で起こるため促進される。
【0044】
電荷減少
このクラスの反応において、着目される多重荷電イオン群は、反対極性を有するイオン群を捕捉するために使用可能な上記の捕捉領域にまず捕捉される。次に、着目多重荷電イオン群の極性と反対の極性を有するイオン群を、着目多重荷電イオン群の電荷状態を減少するため追加する。反対極性を有するイオン群を追加することは、より鮮明なスペクトルの獲得および干渉回避の補助となる。
【0045】
イオンパーキング
例えば、多重に荷電されたアナライトイオン群は前記されたように線形イオントラップの捕捉領域に保存される。線形イオントラップは捕捉領域が反対極性を有するイオン群を同時に捕捉できるように構成される。多重に荷電されたアナライトイオン群は着目質量電荷比を有するイオン群および興味のないその他のイオン群を含む。着目質量電荷比を有するイオン群を「加温する」ために線形イオントラップに励起フィールドを重ね合わせる。この励起フィールドの適用は着目加温イオン群のイオン/イオンの反応率を抑制する。次に、反対の極性を有するイオン群を捕捉に保存された多重に荷電されたアナライトイオン群に追加する。反対の極性を有するこれらのイオン群はその他のアナライトイオン群と比較して、着目加温イオン群と著しく低い程度で反応する。反応率抑制の理由は(1)イオン/イオンの反応ペアの相対的速度の増加はイオン/イオン捕獲のためのクロスセクションを減少できる、(2)着目イオン群を含む正電荷および負電荷有するイオン群が物理的に重なる時間を減らす。電荷減少の結果として、着目加温イオン群の反応率は著しく低いため、アナライトイオン群の大部分は励起フィールドが目標とする質量電荷比に最終的にまとめられる。このことは、一般的にマススペクトルは幅広い電荷状態分布有するため、個々のピーク強度が低められた多重に荷電されたアナライトイオン群の着目イオン群のシグナルを著しく増幅する。
【0046】
電荷転移分離
このクラスの反応において、反対の極性を有するイオン群はアナライトイオン群を分裂するように反応する。したがって、アナライトイオン群の構造解明を促進する。
【0047】
電荷逆転反応
このクラスの反応によると、アナライトイオン群の電荷はイオン/イオンの反応の結果、反対の極性に転換される。これはイオン分裂がイオンの初期電荷状態に依存するため構造解明を促進できる。すなわち、衝突誘発分裂(CID)を用いて、着目イオン群をまずその状態で分裂させることができ、次にその条件のもとでMS/MSスペクトルを記録することができる。次に、同種類の別イオン群を電荷逆転反応させ、それからCID分裂させる。結果として代替のMS/MSスペクトルを得る。これら2つのMS/MSスペクトルは調査下のイオン群の構造に関する相補的な情報をもたらす。本発明の側面によると、採用できるイオン取り扱いの追加方法が記述されている。例えば、McLuckey S.A.,Stephenson J.L.Jr.−“Ion/ion chemistry of high−mass multiply charged ions”−Mass Spectrom Rev.1998 Nov−Dec;17(6);(369−407)。
【0048】
本発明の別の変形例および修正も可能である。例えば、イオン群を半径方向にポンピングする代わりに、選択されたイオン群はロッドの隙間を通して検知器に半径方向にポンピングされる。さらに、前記述は、ロッドセットと質量分析計を参照しているが、本発明はロッドセット外のイオンガイド、例えば、らせんおよび輪ガイドに適用できることは当業者に理解される。さらに、質量分析計とは異なる線形イオントラップも採用できる。全ての修正および変形例は請求項で定義されている本発明の分野および範囲内であると考えられる。
【0049】
当業者は、以下に示される図画が例図目的のみであることを理解するであろう。図画は、いかなる理由であっても出願者の教示の範囲を制限することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、本発明の一実施形態による、互いに反対方向のガス流を線形イオントラップの各端部に提供する線形イオントラップ質量分析計を図示する概要図である。
【図2】図2は、本発明のさらなる実施形態による、拘束スリーブにより導かれる互いに反対方向のガス流を線形イオントラップの各端部に提供する線形イオントラップ質量分析計を図示する概要図である。
【図3】図3は、本発明のさらなる実施形態による、軸方向ガス流を線形イオントラップ質量分析計の他端と線形イオントラップ質量分析計の中間点との間のガス入口点部分路に提供し、軸方向のガス流を拘束スリーブにより導く、線形イオントラップ質量分析計を図示する概要図である。
【図4】図4は、本発明のさらなる実施形態による、ロッドセットの一端にバリアフィールドを提供し、一方、軸方向ガス流を線形イオントラップ質量分析計の他端と線形イオントラップ質量分析計の中間点との間のガス入口点部分路に提供する線形イオントラップ質量分析計を図示する概要図である。
【図5】図5は、本発明のさらなる実施形態による、線形イオントラップ質量分析計の一端にガス流、一方、他端にバリアフィールドを提供し、さらに線形イオントラップ質量分析計の長さ方向に差動排気を提供する線形イオントラップ質量分析計を図示する概要図である。
【図6】図6は、本発明のさらなる実施形態による、線形イオントラップの各端部に対立方向のガス流を提供し、さらに質量分析計の長さ方向に軸方向の場を形成する電極を提供する線形イオントラップ質量分析計を図示する概要図である。
【図7】図7は、図6に図示される線形イオントラップ質量分析計のロッドおよび電極を図示する断面図である。
【図8】図8a、8b、8cは、本発明の実施形態のさらなる側面による、図6に図示される線形イオントラップ質量分析計操作の種々の段階とともに、それぞれの操作段階の際に適用された種々の軸方向の場を図示する概要図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンガイドを有する線形イオントラップを操作する方法であって、該イオンガイドは第1端部および第2端部を有し、該方法は、
a)該イオンガイド内に第1群のイオンを提供する工程と、
b)該イオンガイド内に第2群のイオンを提供する工程であって、該第2群のイオンは、該第1群のイオンと反対の極性を持つ工程と、
c)該イオンガイド内で該第1群のイオンおよび該第2群のイオンを半径方向に拘束するために、RF駆動電圧を該イオンガイドに対して提供する工程と、
d)該第1群のイオンおよび該第2群のイオンの両方を該イオンガイドの該第1端部からはじくために、該イオンガイドの該第1端部から該イオンガイドの中央に向かって、第1の軸方向に不活性ガスのガス流を提供する工程と、
e)該第1群のイオンおよび該第2群のイオンを該イオンガイドの該第2端部から離れてはじくために捕捉領域バリアを提供する工程と、
を含み、
該第1の軸方向の該ガス流および該捕捉領域バリアは、該第1群のイオンおよび該第2群のイオンを捕捉するための主要捕捉領域を共に画定する、方法。
【請求項2】
前記捕捉領域バリアは、第2不活性ガスの第2ガス流により提供され、工程d)は、前記第1群のイオンおよび前記第2群のイオンを前記イオンガイドの前記第2端部からはじくために、該イオンガイドの該第2端部から該イオンガイドの前記中央に向かって、第2の軸方向に該第2ガス流を提供する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記捕捉領域バリアは、第2端部補助交流/RF電圧を備え、工程d)は、該第2端部補助交流/RF電圧を前記イオンガイドの前記第2端部に提供する工程を含み、該第2端部補助交流/RF電圧は、交流電圧およびRF電圧のうちの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程d)は、前記第1端部にて、前記第1の軸方向に前記ガス流を前記イオンガイド内に提供する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程d)は、前記第1の軸方向に前記ガス流を提供するために、前記イオンガイドの前記第1端部から前記中央に向かって間隔があいたポンピング位置にて、該イオンガイドから前記不活性ガスをポンピングする工程をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程d)は、ガス入口ポートにて、前記イオンガイド内へ前記ガス流を提供する工程を含み、該ガス入口ポートは、該イオンガイドの前記第1端部から前記中央に向かって間隔があいている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記イオンガイドの前記第1端部から離れて、前記第1群のイオンおよび前記第2群のイオンのうちの少なくとも1つをはじくための第1端部バリアを提供する工程と、
前記ガス入口ポートと該第1端部バリアとの間の第1端部補助捕捉領域を画定するために、前記ガス入口ポートから該第1端部に向かって、前記第2の軸方向にガス逆流を提供する工程と、
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2ガス流を提供する前記工程は、第2ガス入口ポートにて、前記イオンガイド内に該第2ガス流を提供する工程を含み、該第2ガス入口ポートは、該イオンガイドの前記第2端部から前記中央に向かって間隔があいている、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記イオンガイドの前記第2端部から離れて、前記第1群のイオンおよび前記第2群のイオンのうちの少なくとも1つをはじくための第2端部バリアを提供する工程と、
前記ガス入口ポートと該第2端部バリアとの間の第2端部補助捕捉領域を画定するために、該ガス入口ポートから該第2端部に向かって、前記第1の軸方向に第2ガス逆流を提供する工程と、
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2不活性ガスは、前記不活性ガスと同一である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1端部バリアは、第1端部補助電圧によって提供される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記第1端部補助電圧が直流であることによって、前記第1端部補助捕捉領域は、単一極性のイオン群のみ捕捉するように操作可能である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1端部補助電圧が交流/RFであることによって、前記第1端部バリアは、前記イオンガイドの前記第1端部から離れて、前記第1群のイオンおよび前記第2群のイオンの両方をはじくように操作可能であって、前記補助捕捉領域は、反対極性のイオンを同時に捕捉するように操作可能であって、該第1端部補助交流/RF電圧は、交流電圧およびRF電圧のうちの1つである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の軸方向に前記ガス流を提供するために、前記イオンガイドの前記第1端部から前記中央に向かって間隔があいた第1のポンピング位置にて、該イオンガイドから前記不活性ガスをポンピングする工程と、
前記主要捕捉領域内のガス圧を減らすために、該イオンガイドの該第1ポンピング位置から該イオンガイドの前記第2端部に向かって間隔があいた第2ポンピング位置にて、該イオンガイドから残余の量の該不活性ガスをポンピングする工程と、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第1群のイオンと前記第2群のイオンとの間のイオンの反応を促進させ、生成イオン群を生じさせるために、工程d)および工程e)の時期を選ぶ工程と、
工程d)および工程e)の後、
f)前記イオンガイドの前記第1端部を介する、該生成イオンの透過を促進するために、前記ガス流を減らす工程と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第1群のイオンと前記第2群のイオンとの間のイオンの反応を促進させ、生成イオン群を生じさせるために、工程d)および工程e)の時期を選ぶ工程と、
工程d)と工程e)の後、
f)前記イオンガイドの前記第1端部を介しての透過のために、該生成イオンを、前記ガス流を通過させて押すため軸方向の場を提供する工程と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
工程f)は、前記イオンガイドの前記第1端部を介して前記生成イオンの透過を促進するために、前記ガス流を減らす工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程f)は、工程d)および工程e)の間、(i)前記第1群のイオンおよび前記第2群のイオンを分離するために、前記軸方向の場を配向する工程と、次いで、(ii)該第1群のイオンと該第2群のイオンとの間のイオンの反応を促進し、前記生成イオン群を生じさせるために、該軸方向の場を調整する工程と、を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
線形イオントラップであって、
第1端部と第2端部とを有するイオンガイドと、
該イオンガイドにRF駆動電圧を提供し、該イオンガイド内に両方の極性のイオンを半径方向に拘束するために、該イオンガイドに接続されたRF駆動電圧電源と、
該イオンガイド内で、該イオンガイドの該第1端部から該イオンガイドの中央に向かって、第1の軸方向に不活性ガスの第1ガス流を提供するための第1ガス源であって、該第1ガス流は、該両方の極性のイオンを該第1端部から該第2端部に向かってはじくために十分な密度と速度とを有する第1ガス源と、
該イオンガイドの該第2端部から両方の極性のイオンをはじくための該第2端部の捕捉領域バリアと、
を含み、該第1の軸方向の該ガス流および該捕捉領域バリアは、両方の極性のイオンを捕捉するための主要捕捉領域を共に画定する、線形イオントラップ。
【請求項20】
前記捕捉領域バリアを提供するために、第2不活性ガスの第2のガス流を提供するための第2ガス源をさらに備え、該第2ガス流は、前記イオンガイドの前記第2端部から該イオンガイドの前記中央に向かって、第2の軸方向にあって、両方の極性のイオンを該イオンガイドの該第2端部からはじくために十分な密度と速度とを有する、請求項19に記載の線形イオントラップ。
【請求項21】
前記捕捉領域バリアは、前記イオンガイドの前記第2端部から両方の極性のイオンをはじくために、第2端部材と、該第2端部材に第2端部補助交流/RF電圧を提供するための第2端部補助電極と、を含む、請求項19に記載の線形イオントラップ。
【請求項22】
前記第1の軸方向に前記ガス流を導くために、前記イオンガイドの前記第1端部から前記中央に向かって間隔があいたポンピング位置にて、該イオンガイドから前記不活性ガスをポンピングするためのポンプをさらに含む、請求項19に記載の線形イオントラップ。
【請求項23】
前記第1ガス源は、前記イオンガイドに前記ガス流を提供するためのガス入口ポートを含み、該ガス入口ポートは、該イオンガイドの前記第1端部から前記中央に向かって間隔があいている、請求項19に記載の線形イオントラップ。
【請求項24】
前記イオンガイドの前記第1端部からイオンをはじくために、該第1端部に補助捕捉領域バリアをさらに含み、該補助捕捉領域バリアは、第1端部材と、該イオンガイドの該第1端部からイオンをはじくために、該第1端部材に第1端部補助交流/RF電圧を提供するための第1端部補助電極と、を備え、該第1端部補助交流/RF電圧は、交流電圧およびRF電圧のうちの1つであって、前記ガス入口ポートは、該ガス入口ポートと第1端部バリアとの間の第1端部補助捕捉領域を画定するために、該ガス入口ポートから該第1端部に向かって、第2の軸方向にガス逆流を提供するように操作可能であって、該ガス逆流は、該第1端部補助捕捉領域内の両方の極性のイオンを該ガス入口ポートからはじくために十分な密度と速度とを有する、請求項23に記載の線形イオントラップ。
【請求項25】
前記第2ガス源は、前記イオンガイド内に前記ガス流を提供するための第2ガス入口ポートを含み、該第2ガス入口ポートは、該イオンガイドの前記第2端部から前記中央に向かって間隔があいている、請求項20に記載の線形イオントラップ。
【請求項26】
前記イオンガイドの前記第2端部からイオンをはじくために、該第2端部に補助捕捉領域バリアをさらに含み、該補助捕捉領域バリアは、第2端部材と、該イオンガイドの該第2端部からイオンをはじくために、該第2端部材に第2端部補助交流/RF電圧を提供するための第2端部補助電極と、を備え、該第2端部補助交流/RF電圧は、交流電圧およびRF電圧のうちの1つであって、前記第2ガス入口ポートは、該第2ガス入口ポートと第2端部バリアとの間の第2端部補助捕捉領域を画定するために、前記ガス入口ポートから該第2端部に向かって、第1の軸方向にガス逆流を提供するように操作可能であって、該ガス逆流は、該第2端部補助捕捉領域内の両方の極性のイオンを該ガス入口ポートからはじくために十分な密度と速度とを有する、請求項25に記載の線形イオントラップ。
【請求項27】
前記第2不活性ガスは、前記不活性ガスと同一である、請求項26に記載の線形イオントラップ。
【請求項28】
前記第1ガス源は、前記第2ガス源でもある、請求項26に記載の線形イオントラップ。
【請求項29】
前記第1ガス源からの前記第1ガス流を囲み、前記第1の軸方向に該第1ガス流を導くためのガス流制限手段をさらに含む、請求項19に記載の線形イオントラップ。
【請求項30】
前記第1ガス源は、前記第1ガス流の流速を制御するためのガス制御バルブを含む、請求項19に記載の線形イオントラップ。
【請求項31】
前記イオンガイドは、
該イオンガイドに沿って軸方向の場を提供するための少なくとも1つの電極と、
該軸方向の場を提供するために、該少なくとも1つの電極に補助電圧を提供するための該少なくとも1つの電極に接続された補助電圧電源をさらに含み、該補助電圧電源は、該軸方向の場を変化させるために、該補助電圧を変化するように操作可能である、請求項19に記載の線形イオントラップ。
【請求項32】
前記第1の軸方向に前記ガス流を導くために、前記イオンガイドの前記第1ポンピング位置から前記第2端部に向かって間隔があいた第2ポンピング位置にて、該イオンガイドから残余の量のガスをポンピングするための第2ポンプをさらに含む、請求項22に記載の線形イオントラップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【公表番号】特表2009−532681(P2009−532681A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503376(P2009−503376)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際出願番号】PCT/CA2007/000467
【国際公開番号】WO2007/112549
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(508153855)エムディーエス アナリティカル テクノロジーズ, ア ビジネス ユニット オブ エムディーエス インコーポレイテッド, ドゥーイング ビジネス スルー イッツ サイエックス ディビジョン (17)
【出願人】(508298514)アプライド バイオシステムズ インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】